以下、図面を参照して、発明の各実施形態について説明する。この説明においては、全図にわたり共通の部分には共通の参照符号を付す。
(第1の実施形態)
本実施形態においては、電子記録債権管理装置1の概略を説明する。
図1は、本実施形態に係る電子記録債権管理装置1を備える電子記録債権管理システム10の構成の一例を示すブロック図である。
図2は、電子記録債権管理装置1の概略構成の一例を示すブロック図である。
図3は、電子債権記録機関の装置106に記憶される分割譲渡対象の抗弁付き電子記録債権データCと、当該抗弁付き電子記録債権データCの分割譲渡後における分割元の抗弁付き電子記録債権データC_Aと、分割譲渡後に譲渡された抗弁付き電子記録債権データC_Bとの例を示すデータ構造図である。
電子記録債権管理システム10は、電子記録債権管理装置1、発注企業の端末100、納入企業の端末104、電子契約システム102、金融機関の装置108、信用保証協会(以下、保証協会という)の装置110、代理装置111、電子債権記録機関の装置106を含む。
本実施形態において、電子記録債権管理装置1、発注企業の端末100、納入企業の端末104、電子契約システム102、金融機関の装置108、保証協会の装置110、代理装置111、電子債権記録機関の装置106は、例えば、情報処理装置又は情報処理システムであり、より具体的には、例えば、サーバ装置、クライアント装置、パーソナルコンピュータ、携帯端末等でもよい。
電子記録債権管理装置1は、発注企業の端末100、納入企業の端末104、電子契約システム102、金融機関の装置108、保証協会の装置110、代理装置111、電子債権記録機関の装置106と通信可能に接続されている。
電子契約システム102は、発注企業の端末100及び納入企業の端末104と通信可能に接続されている。
代理装置111は、電子記録債権管理装置1及び電子債権記録機関の装置106と通信可能に接続されている。代理装置111は、例えば、電子記録債権管理装置1と連携動作する。
本実施形態において、通信可能に接続されている装置間では、互いにデータ、情報、依頼、コマンド、指令、指示、通知、応答、信号等を送受信可能である。
電子記録債権管理装置1は、プロセッサ5と記憶装置113とを備える。
プロセッサ5は、記憶装置113に記憶されているプログラムPを実行することにより、第1の受信部114、第2の受信部115、抽出部54、発生依頼部117、第3の受信部118、第4の受信部119、分割譲渡依頼部120、抗弁切断依頼部121、抗弁切断通知部122として機能する。電子記録債権管理装置1は複数のプロセッサを備えており、複数のプロセッサが協働・連携してプロセッサ5と同様の機能を実現してもよい。
記憶装置113は、プログラムPに加えて、複数の雛形データ123_1〜123_n、条件データEを記憶する。さらに、記憶装置113は、プロセッサ5における処理で用いられる各種のデータ、電子記録債権管理装置1が他の装置から受信した各種のデータを記憶するとしてもよい。記憶装置113は、複数台の記憶装置で構成されてもよい。
雛形データ123_1〜123_nは、後述する抗弁内容データD6の生成に用いられる。雛形データ123_1〜123_nのそれぞれは、例えば、各種の抗弁内容の候補となる文書データを含む。
条件データEは、例えば、納入企業の端末104、発注企業の端末100、又は、電子契約システム102から受信した発注内容データから、後述する債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6を抽出ために用いられる条件を含む。条件データEは、例えば、データが下請法3条、5条に規定される発注書面、補充書面に相当するか否かを判断するための基準を含むとしてもよい。下請法3条、5条では、発注書面、補充書面を2年以上保存すべき旨規定されている。
本実施形態において、発注内容データは、例えば、第1に、親事業者及び下請事業者の名称、番号、記号、第2に、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日、第3に、下請事業者の給付の内容、第4に、下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供させる期日又は期間)、第5に、下請事業者の給付を受領する場所、第6に、下請事業者の給付の内容について検査をする場合は、検査を完了する期日、第7に、下請代金の額、第8に、下請代金の支払期日、第9に、手形を交付する場合は、手形の金額及び手形の満期、第10に、一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払可能額、親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日、第11に、電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日、第12に、原材料等を有償支給する場合は、品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日及び決済方法、などの情報を含む。
発注企業の端末100は、発注企業のオペレータが操作する端末である。
納入企業の端末104は、納入企業のオペレータが操作する端末である。
発注企業と納入企業との間で受発注の契約が締結される。当該契約は、発注企業の端末100と納入企業の端末104とが電子契約システム102を用いることにより電子的に締結されてもよく、オフラインにより締結されてもよい。
電子契約システム102を用いて電子的に契約が締結された場合、電子記録債権管理装置1の第1の受信部114は、電子契約システム102から、引渡し又は検収の前に発注に応じて生成される抗弁付き電子記録債権に関する債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6を受信する。
なお、第1の受信部114は、電子契約システム102を用いることなく、納入企業の端末104、又は、発注企業の端末100から、債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6を受信してもよい。
第1の受信部114は、納入企業の端末104、発注企業の端末100、又は、電子契約システム102から、上記の発注内容データを受信してもよい。
以下においては、納入企業が抗弁付き電子記録債権の発生を依頼し、発注企業が発生を承諾する場合を主に説明するが、これとは逆に、発注企業が抗弁付き電子記録債権の発生を依頼し、納入企業が発生を承諾するとしてもよい。
本実施形態において、第1の受信部114は、抗弁内容データD6の生成を支援するために、記憶装置113から複数の雛形データ123_1〜123_nの読み出し、複数の雛形データ123_1〜123_nを納入企業の端末104又は電子契約システム102に送信してもよく、納入企業の端末104又は電子契約システム102に複数の雛形データ123_1〜123_n及び抗弁内容の入力欄を表示させるための処理を実行してもよい。この場合、納入企業の端末104又は電子契約システム102は、納入企業のオペレータによって雛形データ123_1〜123_nの中から選択された選択雛形データ、又は、納入企業の端末104において入力欄に入力されたデータを抗弁内容データD6とし、当該抗弁内容データD6を第1の受信部114へ送信する。第1の受信部114は、抗弁内容データD6を、納入企業の端末104又は電子契約システム102から受信する。
電子契約システム102を用いて電子契約が締結された場合、電子記録債権管理装置1の第2の受信部115は、電子契約システム102から、債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6に基づく抗弁付き電子記録債権の発生を承諾することを示す発生承諾データ130を受信する。
なお、第2の受信部115は、電子契約システム102を用いることなく、例えば、発注企業の端末100から発生承諾データ130を受信してもよい。
抽出部54は、第1の受信部114が、例えば、納入企業の端末104又は電子契約システム102から上記の発注内容データ(例えば、図2の債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6を含む)を受信した場合に、発注内容データを記憶装置113へ記憶する。
また、抽出部54は、第2の受信部115が、納入企業の端末104又は電子契約システム102から発注内容データに含まれる部分データに対応する承諾データを受信した場合に、発注内容データから承諾データによって承諾された部分データを抽出して下請法3条、5条を遵守するために必要なデータとして記憶装置113へ記憶する。
さらに、抽出部54は、記憶装置113から条件データEを読み出し、条件データEに基づいて、発注内容データから、抗弁付き電子記録債権に関する債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6を抽出し、及び、抽出した債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6が下請法を遵守する条件を満たすか否か判断する。
抽出部54は、下請法を遵守すると判断した場合に、発生依頼部117による動作を許可するとしてもよい。抽出部54は、下請法を遵守しないと判断した場合に、その旨を示す通知を、発注企業の端末100と納入企業の端末104と電子契約システム102とのうちの少なくとも1つの装置へ送信してもよい。
本実施形態において、抽出部54は、各種のデータを記憶装置113に記憶しているが、下請法を遵守するために発注内容データから抽出された部分データなどの各種データは、電子債権記録機関の装置106などの他の装置に記憶されてもよい。
発生依頼部117は、第2の受信部115が発生承諾データ130を受信した場合に、例えば、抗弁付き電子記録債権に関する識別データD1と、債権者データD2と、債務者データD3と、債権金額データD4と、支払期日データD5と、抗弁内容データD6とを含む電子記録債権データCを生成し、この生成した電子記録債権データCの発生を依頼する発生依頼データ131を、電子債権記録機関の装置106、又は、代理装置111へ送信する。
代理装置111は、電子債権記録機関の装置106の前段に設けられる装置であり、例えば、電子記録債権管理装置1と電子債権記録機関106の装置106との間を中継するブリッジシステムである。代理装置111は、電子記録債権管理装置1から受信した各種の依頼データに応じて電子債権記録機関の装置106へ依頼データを送信する。本実施形態において、代理装置111は、電子記録債権管理装置1に統合されてもよい。
電子債権記録機関の装置106は、電子記録債権管理装置1又は代理装置111から受信した依頼データに基づいて、電子記録債権データCの発生、読み出し、譲渡、変更(抗弁切断)、分割譲渡、消滅等を実行する。電子債権記録機関の装置106は、例えば、データベースマネジメントシステムである。
金融機関の装置108及び保証協会の装置110は、金融機関のオペレータ及び保証協会のオペレータの操作に応じて、電子記録債権管理装置1へ各種の依頼を送信する。また、金融機関の装置108及び保証協会の装置110は、電子記録債権管理装置1経由で、又は、電子記録債権管理装置1及び代理装置111経由で、電子債権記録機関の装置106に記録されている電子債権記録データを読み出し、閲覧することができる。
第3の受信部118は、金融機関の装置108から、分割譲渡の対象(基礎)となる抗弁付き電子記録債権データCを指定する指定データ132と譲渡先データD7と譲渡金額データD8とを受信する。なお、第3の受信部118は、例えば、発注企業の端末100、納入企業の端末104、保証協会の装置110、又は、電子契約システム102など、金融機関の装置108ではない他の装置から、指定データ132と譲渡先データD7と譲渡金額データD8とを受信してもよい。
第4の受信部119は、保証協会の装置110から、分割譲渡を承諾することを示す分割譲渡承諾データ135を受信する。なお、第4の受信部119は、例えば、発注企業の端末100、納入企業の端末104、金融機関の装置108、又は、電子契約システム102など、保証協会の装置110ではない他の装置から、分割譲渡承諾データ135を受信してもよい。
分割譲渡依頼部120は、第4の受信部119が分割譲渡承諾データ119を受信した場合に、指定データ132の示す抗弁付き電子記録債権データCに含まれる債権金額データD4の値から譲渡金額データD8の値を引き算することにより抗弁付き電子記録債権データCを分割元の抗弁付き電子記録債権データC_Aに変更することと、分割譲渡により譲渡された電子記録債権データC_Bを生成することとを依頼する分割譲渡依頼データ135を、電子債権記録機関の装置106又は代理装置111へ送信する。
この結果、図3に示すように、電子債権記録機関の装置106では、抗弁付き電子記録債権データCが分割譲渡により変更されて分割元の抗弁付き電子記録債権データC_Aとなり、譲渡された抗弁付き電子記録債権データC_Bが新たに生成され、追加記憶される。
分割譲渡後において、分割元の電子記録債権データC_Aに備えられる債権金額データD4_Aの値は、分割譲渡の基礎となった抗弁付き電子記録債権データCに備えられる債権金額データD4の値から譲渡金額データD8の値を引き算した値である。
分割譲渡後において、分割元の電子記録債権データC_Aに備えられる識別データD1、債権者データD2、債務者データD3、支払期日データD5、抗弁内容データD6は、例えば、分割譲渡の基礎となった抗弁付き電子記録債権データCに備えられる識別データD1、債権者データD2、債務者データD3、支払期日データD5、抗弁内容データD6のままであり、同じ値である。
本実施形態では、分割譲渡後における分割元の電子記録債権データC_Aの識別データD1は、分割譲渡の基礎となった電子記録債権データCの識別データD1と同じとしている。しかしながら、分割譲渡後における分割元の電子記録債権データC_Aは、分割譲渡の基礎となった(分割前の)電子記録債権データCの識別データD1と異なる識別データを持つとしてもよい。
分割譲渡後において、譲渡された電子記録債権データC_Bは、譲渡後の識別データD1_Bと、譲渡先データD7に対応する譲渡後の債権者データD2_Bと、債務者データD3と、譲渡金額データD8に対応する譲渡後の債権金額データD4_Bと、支払期日データD5と、抗弁内容データD6とを含む。
ここで、図3をより詳細に説明する。
抗弁付き電子記録債権データCは、識別データD1、債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6を含む。
さらに、識別データD1は、固有データ142、分割元データ143、分割回数データ144を含む。
固有データ142は、例えば、抗弁付き電子記録債権データCを識別するために、当該抗弁付き電子記録債権データCに付される固有の識別子である。
分割元データ143は、抗弁付き電子記録債権データCが分割譲渡によって生成された電子記録債権データの場合に、分割元の電子記録債権データの固有データを含む。これにより、電子記録債権データCが分割譲渡によって生成されたデータであるか否か認識可能であり、電子記録債権データCが分割譲渡によって生成されたデータの場合に、分割元(基礎又は親)のデータを認識可能である。分割元データ143は、電子記録債権データCが分割譲渡によって生成されたデータではない場合には、分割譲渡により生じたデータではないことを示す情報を含むとしてもよい。
分割回数データ144は、抗弁付き電子記録債権データCが何回目の分割譲渡により生成されたデータであるかを表す。分割回数データ144は、例えば、抗弁付き電子記録債権データCが分割譲渡依頼ではなく発生依頼に基づいて発生されたデータ(ルートデータ)の場合にはゼロであり、ルートデータを1回分割し譲渡されたデータの場合には1であり、1回分割し譲渡されたデータをさらに分割し譲渡されたデータの場合には2であり、以下、同様に、分割譲渡が繰り返されるほど増加する。分割回数データ144を参照することで、抗弁付き電子記録債権データCがルートデータであるかを認識可能であり、ルートデータから分割され、譲渡された回数を認識可能である。
本実施形態において、抗弁付き電子記録債権データCはルートデータであるため、分割元データ143は、分割譲渡によって生成されたデータではないことを示すデータを含み、分割回数データ144は、ゼロを示す。
抗弁付き電子記録債権データCに対して分割譲渡が実行されると、抗弁付き電子記録債権データCは、分割元の抗弁付き電子記録債権データC_Aとなる。
分割元の抗弁付き電子記録債権データC_Aは、識別データD1、債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4_A、支払期日データD5、抗弁内容データD6を含む。この分割元の抗弁付き電子記録債権データC_Aに含まれるデータは、抗弁付き電子記録債権データCの債権金額データD4が債権金額データD4_Aへ更新されているが、他のデータは抗弁付き電子記録債権データCに含まれる他のデータと同じである。
譲渡された抗弁付き電子記録債権データC_Bは、識別データD1_B、債権者データD2_B、債務者データD3、債権金額データD4_B、支払期日データD5、抗弁内容データD6を含む。
この譲渡された抗弁付き電子記録債権データC_Bに含まれる識別データD1_B、債権者データD2_B、債権金額データD4_Bは、抗弁付き電子記録債権データCに含まれている識別データD1、債権者データD2、債権金額データD4と異なる。
識別データD1_Bは、固有データ142B、分割元データ143B、分割回数データ144Bを含む。
固有データ142Bは、例えば、抗弁付き電子記録債権データC_Bを識別するために、抗弁付き電子記録債権データC_Bに付される固有の識別子である。
分割元データ143Bは、抗弁付き電子記録債権データC_Bが抗弁付き電子記録債権データCから分割譲渡されたデータであるため、抗弁付き電子記録債権データCの固有データ143を含む。これにより、抗弁付き電子記録債権データC_Bが分割譲渡されたデータであることを認識可能であり、抗弁付き電子記録債権データCが抗弁付き電子記録債権データC_Bの分割元(親)のデータであることを認識可能である。
分割回数データ144Bは、抗弁付き電子記録債権データC_Bが1回目の分割譲渡に関わるデータであることを表す。分割回数データ144Bを参照することで、抗弁付き電子記録債権データC_Bがルートデータではないことを認識可能であり、ルートデータから分割され譲渡された回数が1回であることを認識可能である。
本実施形態において、電子債権記録機関の装置106は、抗弁付き電子記録債権データCを分割譲渡する場合に、分割譲渡の基礎となった抗弁付き電子記録債権データCに対して分割譲渡を行ったことを示す履歴データを関連付けて記憶することで、分割元の抗弁付き電子記録債権データC_Aを生成してもよい。履歴データについては、後述する図5でより詳しく説明する。
電子債権記録機関の装置106は、抗弁付き電子記録債権データCを分割譲渡する場合に、分割譲渡の基礎となった抗弁付き電子記録債権データCを分割元の電子記録債権データC_Aで更新(又は上書き)する更新方式を用いるとしてもよい。あるいは、電子債権記録機関の装置106は、分割譲渡の基礎となった抗弁付き電子記録債権データCを無効とし、分割譲渡後における分割元の電子記録債権データC_Aを追記記憶し、分割元の電子記録債権データC_Aを抗弁付き電子記録債権データCに代えて有効とする追記記憶方式を用いるとしてもよい。
本実施形態において、抗弁付き電子記録債権データCの生成は、電子記録債権管理装置1で実行されるものとする。しかしながら、抗弁付き電子記録債権データCの生成は、電子債権記録機関の装置106が電子記録債権管理装置1から受信したデータ及び依頼に基づいて実行するとしてもよい。
本実施形態において、電子債権記録機関の装置106は、分割が依頼された抗弁付き電子記録債権データに含まれている識別データの分割回数データが閾値以上の場合には、当該抗弁付き電子記録債権データの分割を許可しないとしてもよい。また、この分割回数が閾値以上の場合に分割を許可しないための処理は、電子債権記録機関の装置106に代えて電子記録債権管理装置1で実行されてもよい。
抗弁切断依頼部121は、納入企業の端末104、発注企業の端末100、電子契約システム102、金融機関の装置108、保証協会の装置110のいずれかから、抗弁付き電子記録債権Cに関して引渡し又は検収が終了したことを示す抗弁切断(変更)データ137を受信する。
また、抗弁切断依頼部121は、納入企業の端末104、発注企業の端末100、電子契約システム102、金融機関の装置108、保証協会の装置110のうちの少なくとも1つから、抗弁切断データ137に対応する抗弁切断(変更)承諾データ138を受信する。
すると、抗弁切断依頼部121は、抗弁切断依頼データ139を電子債権記録機関の装置106、又は、代理装置111へ送信する。
電子債権記録機関の装置106は、抗弁切断依頼データ139に基づいて、抗弁切断依頼データ139に対応する抗弁付き電子記録債権データCに対する抗弁切断処理を実行する。例えば、電子債権記録機関の装置106は、抗弁付き電子記録債権データCに含まれている抗弁内容データD6を削除する。
このように、抗弁付き電子記録債権の抗弁が切断された場合に、対応する電子記録債権データCから抗弁内容データD6を削除することにより、電子記録債権データCを通常の電子記録債権データと同様のデータ構造に変更し、その後管理することができる。
そして、電子債権記録機関の装置106は、電子記録債権管理装置1へ、又は、代理装置111経由で電子記録債権管理装置1へ、抗弁切断依頼データ139に対応する抗弁切断通知140を送信する。
抗弁切断通知部122は、電子債権記録機関の装置106、又は、代理装置111から、抗弁切断通知140を受信した場合に、抗弁切断通知141を、金融機関の装置108、発注企業の端末100、納入企業の端末104のうちの少なくとも1つへ送信する。
金融機関の装置108、発注企業の端末100、又は、納入企業の端末104は、抗弁切断通知141を電子記録債権管理装置1から受信可能である。これにより、金融機関は、抗弁付き電子記録債権の抗弁が切断されたことを認識することができ、担保情報変更手続を行うことができ、当該抗弁の切断された電子記録債権を再評価し、新たな金額の融資、担保の設定をすることができる。発注企業は、支払期日変更手続、電子記録債務バランスシート計上を行うことができる。納入企業は、電子記録債権バランスシート計上及び担保設定バランスシート注記を行うことができる。
本実施形態において、プロセッサ5は、抽出部54によって発注内容データから抽出され記憶装置113に記憶された抗弁付き電子記録債権に関する各種のデータを記憶装置113から読み出し、他の装置へ送信可能としてもよい。これにより、他の装置は、電子記録債権管理装置1にアクセスすることにより、下請法を遵守するために保管されているデータなどを、電子債権記録機関の装置106をアクセスしなくても、取得することができる。
以上説明した本実施形態に係る電子記録債権管理装置1を用いることにより、受発注段階から電子記録債権を発生させることができる。
本実施形態においては、電子記録債権の発生、変更、分割譲渡、譲渡などを適切に管理することができ、発注内容データから抽出されたデータを記憶装置113に記憶しておくことで下請法を遵守することができる。
本実施形態においては、分割譲渡された抗弁付き電子記録債権データを、子(譲渡されたデータ)から親(基礎のデータ)へ順次辿っていくことができる。
本実施形態において、分割譲渡の基礎となった抗弁付き電子記録債権データCは、自データがいくつのデータに分割されたかを示す情報、自データを分割元とする子のデータを示す識別データなどを含むとしてもよい。これにより、分割譲渡の基礎となった抗弁付き電子記録債権データCから分割譲渡された抗弁付き電子記録債権データを順次辿ることができる。
本実施形態においては、分割譲渡を主に説明しているが、単に抗弁付き電子記録債権データCを分割し、譲渡はしなくてもよい。
現在、広く利用されている紙媒体の手形債権は分割不可である。しかしながら、本実施形態においては、抗弁付き電子記録債権の債権金額の一部を分割することができ、さらに分割後に譲渡することができ、債権を柔軟に運用することができる。
本実施形態において、抗弁付き電子記録債権データCの分割譲渡は、抗弁付き電子記録債権データCの第1の部分は元の債権者に継続して保有され、抗弁付き電子記録債権データCの他の部分は他の債権者に譲渡される場合を例として説明している。しかしながら、例えば、複数に分割された抗弁付き電子記録債権データCのそれぞれの部分が、元の債権者とは異なる債権者に譲渡されてもよい。また、例えば、複数に分割された抗弁付き電子記録債権データCの第1の部分は元の債権者に継続して保有され、抗弁付き電子記録債権データCの複数の他の部分は複数の他の債権者に譲渡されるとしてもよい。これらの例のように譲渡先が複数になる場合、電子記録債権管理装置1は、電子債権記録機関106又は代理装置111へ、それぞれの譲渡される部分に対応する譲渡先データと譲渡金額データとを送信する。
(第2の実施形態)
本実施形態においては、電子記録債権管理装置1の詳細を説明する。
本実施形態において、電子記録債権管理装置1は、例えば、金融機関標準のセキュリティ基準を満たすクラウド型電子決済サービスを提供する。本実施形態において、電子記録債権管理装置はPOFS(Purchase Order Finance System)と称されてもよい。電子記録債権管理装置1を利用する発注企業の端末100、納入企業の端末104、電子債権記録機関の装置106、金融機関の装置108、保証協会の装置110などは、例えばインターネット経由で、ID及びパスワードなどを入力することにより、当該電子記録債権管理装置1にアクセス可能である。
本実施形態において、電子記録債権管理装置1は、受発注契約に基づいて抗弁付き電子記録債権データCを発生させる。抗弁とは、例えば、引渡し、検収、又は、納品後に発注企業が債権に示された金額を支払うことを意味する。より具体的には、電子記録債権管理装置1は、発注企業の装置100、納入企業の装置104、又は、電子契約システム102より発注に伴って発生する債権に関する債権者を示す債権者データD2、債務者を示す債務者データD3、債権金額を示す債権金額データD4、支払期日を示す支払期日データD5、上述の抗弁内容を示す抗弁内容データD6を受信する。
また、電子記録債権管理装置1は、発注企業の装置100、納入企業の装置104、又は、電子契約システム102より上述の債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6に対して承諾することを示す発生承諾データ130を受信する。
電子記録債権管理装置1は、発生承諾データ130を受信した場合に、債権を識別可能とするための識別データD1、債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6を含む電子記録債権データCを生成し、生成した電子記録債権データCの発生を依頼する発生依頼データ131を、電子債権記録機関の装置106又は代理装置111へ送信する。
なお、本実施形態では、電子記録債権管理装置1が、代理装置111を経由することなく電子債権記録機関の装置106へアクセスする場合を例として説明し、代理装置111を用いる場合の説明は省略する。
図4は、本実施形態に係る電子記録債権管理装置1の一例を示すブロック図である。
電子記録債権管理装置1は、メモリ3、プロセッサ5、記憶部7などを備える。メモリ3、プロセッサ5、記憶部7は、バスBAを介して互いに通信可能に接続されている。
メモリ3及び記憶部7は、上記の記憶装置113に相当する。
記憶部7は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどにより記憶領域を構成する。記憶部7は、データベースなどの記憶装置でもよい。
記憶部7は、例えば、利用者データU、案件別データI、条件データE、プログラムPなどを記憶する。
利用者データUは、電子記録債権管理装置1を利用する発注企業の端末100、納入企業の端末104、電子債権記録機関の装置106、金融機関の装置108、保証協会の装置110などが電子記録債権管理装置1にアクセスするために必要な情報を含む。電子記録債権管理装置1へのアクセスに必要な情報としては、例えば、利用者ID、パスワードなどが用いられる。また、利用者データUには、電子記録債権管理装置1を利用する企業ごとに、例えば担当者、承認者、閲覧又は承認可能な案件別データIなどが関連付けて管理されていることが好ましい。
案件別データIは、受発注案件別に生成及び管理されるデータであり、受発注データB、債権関連データDなどを含む。
受発注データBは、発注企業と納入企業との間で発生する受発注契約の内容を示すデータである。受発注データBは、例えば、上記で説明した発注内容データに相当する。受発注データBは、例えば、発注企業の端末100、納入企業の端末104、又は、電子契約システム102により発注された成果物の内容、数量、単価、発注金額、納入企業への納入時期などを含むデータである。
債権関連データDは、電子記録債権管理装置1が電子債権記録機関の装置106に対して電子記録債権の発生を依頼する際に必要なデータを含む。債権関連データDは、例えば、識別データD1、債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6、譲渡先データD7、譲渡金額データD8、承諾データD9などを含む。
さらに、本実施形態において、受発注データBの中から承諾されたデータが抽出され、この抽出されたデータが、債権関連データDに含まれるとしてもよい。そして、債権関連データDは、下請法を遵守するために必要なデータとして管理されてもよい。
識別データD1は、電子記録債権を識別するためのデータである。識別データD1は、例えば、債権別に割り当てられた番号、記号などであることが好ましい。
債権者データD2は、電子記録債権の債権者を示すデータである。債権者は、例えば納入企業などである。
債務者データD3は、電子記録債権の債務者を示すデータである。債務者は、例えば発注企業などである。
債権金額データD4は、電子記録債権の債権金額を示すデータである。
支払期日データD5は、電子記録債権の支払い期日を示すデータである。支払い期日は、例えば、通常の売掛債権、手形債権などの支払い期日と同等である。
抗弁内容データD6は、電子記録債権の発生時に電子記録債権に付される抗弁の内容を示すデータである。抗弁内容データD6は、例えば、テキストデータである。より具体的には、発注段階で電子記録債権が発生した場合、当該電子記録債権の抗弁内容データD6は、引渡し、検収、又は、納品後に発注企業が債権に示された金額を支払う旨を含むことが好ましい。また、抗弁内容データD6は、契約に従った成果物の引渡しがなされていない場合、債務者は電子記録債権の支払いを拒むことができる旨を含むとしてもよい。
譲渡先データD7は、電子記録債権の譲渡先を示すデータである。譲渡先データD7は、例えば、譲渡後の電子記録債権の債権者を示すデータである。譲渡先データD7で示される譲渡先は、例えば、金融機関でもよく、保証協会でもよく、任意の第三者でもよい。
譲渡金額データD8は、電子記録債権が分割譲渡(一部譲渡)される場合に、電子記録債権の債権金額データD4から分割する金額を示すデータである。本実施形態においては、電子記録債権が例えば2つに分割される場合に、分割される前の電子記録債権を分割前の電子記録債権(分割元の電子記録債権に相当)と呼ぶ場合があり、分割されて発生した電子記録債権を分割後の電子記録債権(譲渡された電子記録債権に相当)と呼ぶ場合がある。譲渡金額データD8は、例えば、分割後の電子記録債権の債権金額を示すデータである。
承諾データD9は、電子記録債権管理装置1に対して発行する電子記録債権の発生依頼、変更依頼、譲渡依頼などに対し、承諾することを示すデータである。承諾データD9は、発注企業の装置100、納入企業の装置104、電子契約システム102、金融機関の端末108、又は、保証協会の装置110から送信可能である。より具体的には、例えば、納入企業の端末104が電子記録債権管理装置1に電子記録債権の発生依頼とともに、抗弁付き電子記録債権の内容を示す債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6などを送信した場合に、発注企業の端末100は、抗弁付き電子記録債権の内容を承諾することを示す承諾データD9を電子記録債権管理装置1に送信する。
電子記録債権の発生を承諾する場合の承諾データD9は、上記の発生承諾データ130に相当する。
電子記録債権の分割譲渡を承諾する場合の承諾データD9は、上記の分割譲渡承諾データ135に相当する。
なお、債権関連データDは、上述されていない他のデータを含むとしてもよい。例えば、債権関連データDは、抗弁内容の有無を示すデータを含むとしてもよい。
条件データEは、例えば、下請法を遵守するために用いられる条件を示すデータである。条件データEは、例えば、受発注データBから債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6を抽出するためのデータを含む。条件データEは、例えば、債権者適格となる条件を示すデータ、債務者適格となる条件を示すデータ、案件に応じた適正な債権金額及び支払期日などの条件を示すデータ、適正な抗弁内容である条件を示すデータ、その他適正な取引条件を示すデータなどを含むとしてもよい。
プログラムPは、電子記録債権管理に関する処理を実行するプログラムである。プログラムPは、例えば、プロセッサ5により読み出され、メモリ3に格納される。
メモリ3は、プロセッサ5が各種ソフトウェアを実行する際に使用される。メモリ3は、例えばRAM(Random Access Memory)により構成され、ワークエリアなどとして使用される。メモリ3には、例えば記憶部7からプロセッサ5により読み出された各種ソフトウェア又はデータが格納される。各種ソフトウェアは、オペレーティングシステム(OS)、データ管理プログラム、及び各種アプリケーションプログラム等を含む。
プロセッサ5は、各種ソフトウェア(プログラム)を実行し、電子記録債権管理装置1を制御する。プロセッサ5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などである。
本実施形態において、プロセッサ5は、メモリ3に読み出したプログラムPを実行することにより、例えば、利用者管理部51、依頼部52、データ処理部53、抽出部54、及び、通信部55として機能する。
利用者管理部51は、電子記録債権管理装置1の利用者を管理する。利用者管理部51は、利用者が電子記録債権管理装置1にアクセスするために必要な利用者データUを生成して記憶部7に記憶する。利用者管理部51は、利用者よりアクセスがあった場合に、例えば、当該利用者に利用者IDとパスワードの入力を促し、入力された利用者ID及びパスワードと、記憶部7より読み出した利用者データUとを照合する。照合成功の場合に、利用者管理部51は、電子記録債権管理装置1の利用を許可し、照合失敗の場合に、電子記録債権管理装置1の利用を不許可とする。
依頼部52は、電子債権記録機関の装置106に対し、各種依頼を発行する。依頼部52は、例えば、発生依頼部52A、変更依頼部52B、譲渡依頼部52C、支払完了部52Dなどを含む。
発生依頼部52Aは、電子債権記録機関の装置106に対し、電子記録債権データCの発生を依頼する。電子記録債権データCの詳細については、図5を用いて説明する。
発生依頼部52Aは、記憶部7に含まれる債権関連データDから、例えば識別データD1、債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6を読み出し、当該読み出したデータに基づいて電子記録債権データCを生成する。発生依頼部52Aは、例えば、生成した電子記録債権データC及び電子記録債権データCの発生の依頼を電子債権記録機関の装置106に送信する。この結果、電子債権記録機関の装置106に抗弁付き電子記録債権データCが記憶される。なお、発生依頼部52Aは、電子債権記録機関の装置106に送信した電子記録債権データCを、記憶部7にも記憶し、プロセッサ5は記憶部7に記憶されている電子記録債権データCを管理してもよい。この発生依頼部52Aは、例えば、上記の発生依頼部116に相当する。
変更依頼部52Bは、電子記録債権データCを変更する場合に、電子債権記録機関の装置106に対し、電子記録債権データCの変更を依頼する。変更の対象となる事項は、例えば、債権金額データD4の変更、支払期日データD5の変更、抗弁切断(抗弁の有無の変化)、抗弁内容データD6の変更などである。変更依頼部52Bは、電子記録債権データCの変更の依頼、また、必要であれば変更内容を示すデータを、電子債権記録機関の装置106に送信する。変更依頼部52Bは、例えば、上記の抗弁切断依頼部121に相当する。
譲渡依頼部52Cは、電子記録債権データCに関する電子記録債権が譲渡される場合に、電子債権記録機関の装置106に対し、譲渡先データD7及び電子記録債権データCに関する譲渡の依頼を送信する。本実施形態において、電子記録債権は、分割譲渡可能である。分割譲渡される場合に譲渡依頼部52Cによって実行される処理の詳細は、図12を用いて後述する。この譲渡依頼部52Cは、例えば、上記の分割譲渡依頼部120に相当する。
支払完了部52Dは、例えば、発注企業の端末100、納入企業の端末104、又は、金融機関の装置108から、債権金額の支払完了を受信した場合に、電子債権記録機関の装置106に対し、支払完了を送信する。
データ処理部53は、例えば、各種データの入力受付、比較、生成などを行う。データ処理部53は、例えば、電子記録債権データCを分割元の電子記録債権データC_A及び譲渡された電子記録債権データC_Bへ分割譲渡するために必要なデータを生成してもよい。また、データ処理部53は、例えば、利用者に各種データの入力を促すユーザインタフェースを生成し、当該入力されたデータを記憶部7に記憶してもよい。
通信部55は、電子記録債権管理装置1を有線又は無線通信により通信可能にネットワークに接続する。通信部55は、ネットワークを経由して電子記録債権管理装置1にアクセス可能な外部装置とのデータ、情報、依頼、コマンド、指令、指示、通知、応答、信号などの送受信を制御する。ネットワークは、例えば、インターネットなどである。
上記のデータ処理部53のうちデータの入力を受け付ける部分および通信部55は、例えば、上記の第1の受信部114、第2の受信部115、第3の受信部118、第4の受信部119に相当する。
上記のデータ処理部53のうち分割元の電子記録債権データC_A及び譲渡された電子記録債権データC_Bの生成に必要なデータを生成する部分は、例えば、譲渡依頼部52Cに含まれるとしてもよい。
抽出部54は、例えば、外部装置より受発注データBを受信し、受発注データBを記憶し、他の外部装置より承認データD9を受信し、受発注データBから承認データD9によって承認されたデータを抽出することにより債権関連データDを生成し、債権関連データDを記憶部7に記憶する。抽出部54は、例えば、条件データEにしたがって、受発注データBから債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6を抽出してもよい。
抽出部54は、上述したように、例えば、記憶部7に記憶されている条件データEを用いて、発注企業と納入企業との取引内容が下請法を遵守するか否かを判断してもよい。例えば、抽出部54は、記憶部7より受発注データB又は債権関連データDを読み出し、条件データEに含まれる条件と受発注データB又は債権関連データDとを比較することにより、受発注データB又は債権関連データDが条件データEで示される条件を満たすか否かを判断してもよい。また、例えば、抽出部54は、電子記録債権データCに含まれる債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、抗弁内容データD6などと条件データEとを比較し、電子記録債権データCに含まれる各データが条件データEで示される条件を満たすか否かを判断してもよい。
抽出部54は、条件を満たさないと判断した場合に、例えば、発注企業の端末100、納入企業の端末104、その他の外部装置に対し、その旨の通知を送信してもよい。
なお、本実施形態では、プログラムPの機能を便宜的に利用者管理部51、依頼部52、データ処理部53、抽出部54、通信部55に分割して説明している。しかしながら、プログラムPは、他の処理部を含んでいてもよく、例えばプログラム全体を制御する制御部などにより1つの処理部で構成されてもよく、又は、図4とは異なる態様で複数の処理部に分割されてもよい。すなわち、上記の利用者管理部51、依頼部52、データ処理部53、抽出部54、通信部55は、さらに分割されてもよく、逆に統合されてもよい。
図5は、本実施形態に係る電子記録債権データCの一例を示すデータ構造図である。
本実施形態において、電子債権記録機関の装置106は、電子記録債権データCと、当該電子記録債権データCに対する履歴データCHとを関連付けてデータベースに記憶する。
履歴データCHは、電子記録債権データCに対して実行されたデータ変更状態を時系列で表記する。なお、履歴データCHは、例えばツリー構造を持つとしてもよい。
この図5は、電子記録債権データCに対する発生依頼、分割譲渡依頼、譲渡依頼、変更依頼、抗弁切断依頼、支払完了が、電子記録債権管理装置1から電子債権記録機関の装置106へ送信された場合の電子記録債権データCの変更状態を例示している。
まず、電子記録債権管理装置1は、電子記録債権データCの発生依頼と当該電子記録債権データCとを電子債権記録機関の装置106へ送信する。すると、電子債権記録機関の装置106は、電子記録債権データCをデータベースに記憶する。
次に、電子記録債権管理装置1は、電子記録債権データCに対する分割譲渡依頼と、電子記録債権データCに対する分割譲渡後の譲渡金額データD4_Aと、譲渡された電子記録債権データC_Bの発生に必要なデータとを、電子債権記録機関の装置106へ送信したとする。この場合、電子債権記録機関の装置106は、分割譲渡を表す依頼内容R1と分割譲渡後の譲渡金額データD4_Aとを電子記録債権データCに関連する履歴データCHに含まれる形式で記憶する。この状態は、例えば、上記の電子記録債権データC_Aに相当する。さらに、電子債権記録機関の装置106は、譲渡された電子記録債権データC_Bをデータベースに記憶する。
次に、電子記録債権管理装置1は、電子記録債権データCに対する譲渡依頼と譲渡後の債権者データD10を電子債権記録機関の装置106へ送信したとする。この場合、電子債権記録機関の装置106は、譲渡を表す依頼内容R2と譲渡後の債権者データD10とを電子記録債権データCに関連する履歴データCHに含まれる形式で追加記憶する。この状態は、例えば、電子記録債権データCの債権者データD2が債権者データD10に更新された状態に相当する。
次に、電子記録債権管理装置1は、電子記録債権データCに対する変更依頼と変更後の債権金額データD11を電子債権記録機関の装置106へ送信したとする。この場合、電子債権記録機関の装置106は、変更を表す依頼内容R3と変更後の債権者データD11とを電子記録債権データCに関連する履歴データCHに含まれる形式で追加記憶する。この状態は、例えば、電子記録債権データCの債権金額データD11が債権金額データD11に更新された状態に相当する。
次に、電子記録債権管理装置1は、電子記録債権データCに対する抗弁切断依頼を電子債権記録機関の装置106へ送信したとする。この場合、電子債権記録機関の装置106は、抗弁切断を表す依頼内容R4を電子記録債権データCに関連する履歴データCHに含まれる形式で追加記憶する。なお、抗弁切断依頼に応じて、電子債権記録機関の装置106は、電子記録債権データCの抗弁内容データD6を削除してもよい。この状態は、例えば、電子記録債権データCの抗弁が切断された状態に相当する。
そして、電子記録債権管理装置1は、電子記録債権データCに対する支払完了を電子債権記録機関の装置106へ送信したとする。この場合、電子債権記録機関の装置106は、支払完了を表す内容R5を電子記録債権データCに関連する履歴データCHに含まれる形式で追加記憶する。なお、この状態は、例えば、電子記録債権データCが消滅した状態に相当する。
図6は、本実施形態に係る電子記録債権管理システム10の一例を示すブロック図である。
電子記録債権管理システム10は、上記図1で説明したように、電子記録債権管理装置(POFS)1、発注企業の端末100、電子契約システム102、納入企業の端末104、電子債権記録機関の装置106、金融機関の装置108、保証協会の装置110などを含む。
発注企業の装置100及び納入企業の装置104は、電子契約システム102に対し、受発注に関するデータを送信する(矢印A1,A2)。
電子契約システム102は、例えば、EDI(Electric Data Interchange:電子データ交換システム)でもよい。この場合、電子契約システム102は、例えば発注企業の端末100と納入企業の端末104との間で、ネットワークを経由して受発注に関するデータを交換可能なシステムである。電子契約システム102では、データ交換を通じて、広く合意された規約、又は、発注企業と納入企業との間で合意された規約、のうち少なくとも一方の規約が決定される。
なお、電子契約システム102は、発注企業の装置100及び納入企業の装置104の間のみではなく、発注企業の装置100、納入企業の装置104、金融機関の装置108、保証機関の装置110の任意の組み合わせの間で利用されてもよい。
電子記録債権管理装置1は、電子契約システム102より受発注データBを受信し(矢印A3)、記憶部7に記憶する。なお、データ処理部53は、広く合意された規約と発注企業と納入企業との間で合意された規約とを相互に変換する機能を有していてもよい。
なお、電子記録債権管理装置1が受信する受発注データBは、電子契約システム102が管理する受発注に関するデータのうち一部のデータでもよい。すなわち、データ処理部53は、例えば、電子契約システム102が管理する受発注に関するデータのうちの一部を受発注データBとして記憶部7に記憶し、抽出部54は、受発注データBのうち承諾データD9で承諾された部分データを抽出して債権関連データDを生成し、当該債権関連データDを記憶部7に記憶してもよい。
また、電子記録債権管理装置1は、電子契約システム102を経由せずに、受発注データBを発注企業の端末100及び/又は納入企業の端末104より取得してもよい(矢印A4,A5)。この場合、データ処理部53は、例えば、受発注データBなどを直接入力可能とするユーザインタフェースを発注企業の端末100及び/又は納入企業の端末104に提供してもよい。
データ処理部53及び抽出部54は、所定のフォーマットに基づいて受発注内容が記載された電子データなどを受信し、受信したデータに基づいて受発注データB、債権関連データDなどを生成する機能などを実現する。電子データは、例えば、メール、FAX、PDFデータ、その他の電子データなどでもよい。
電子債権記録機関の装置106は、電子記録債権データCの発生、分割譲渡、変更(抗弁切断、債権額変更)、譲渡(債権者変更、分割譲渡)、支払完了などの依頼及びこの依頼に関連する各種のデータを電子記録債権管理装置1より受信し、受信した依頼及び各種のデータに基づいて電子記録債権データCの発生、分割譲渡、変更(抗弁切断、債権額変更)、譲渡(債権者変更、分割譲渡)、支払完了などを実行する(矢印A6)。また、電子債権記録機関の装置106は、電子記録債権管理装置1に対して、各種処理が完了したことを示す通知を送信する。
金融機関の装置108は、例えば、電子記録債権管理装置1に記憶されているデータを読み出すことができ、また、電子記録債権管理装置1経由で、電子債権記録機関の装置106に記憶されている電子記録債権データCを読み出すことができる。金融機関は、電子記録債権管理装置1に記憶されているデータ、又は、電子債権記録機関の装置106に記憶されている電子記録債権データCを参照し、融資審査を行い、納入企業などに対し融資を実行する。より具体的には、金融機関は、例えば、納入企業が債権者となっている電子記録債権が融資担保として適切か否かを審査する。審査が合格である場合に、金融機関は、納入企業より当該電子記録債権の譲渡を受け、代わりに納入企業に対して融資を実行する。このように、電子記録債権に変更が生じた場合、金融機関の装置108は、当該変更に応じて担保情報に相当する電子記録債権データCの変更依頼を、電子記録債権管理装置1へ送信する。また、金融機関の装置108は、電子記録債権管理装置1に対して、例えば、電子債権記録機関の装置106が電子記録債権データCに対する変更、譲渡などを行うことを承諾することを示す承諾データD9を、電子記録債権管理装置1へ送信する(矢印A7)。
保証協会は、金融機関からの保証申し込みを受け付ける。保証協会は、金融機関が実行予定の融資に対して保証審査を行い、審査が合格であると判断した場合に、金融機関の融資金額に対する保証を行う。このように、保証協会が金融機関の融資金額に対する保証審査を行う場合、保証協会の装置110は、例えば、電子記録債権管理装置1に記憶されているデータを閲覧可能であり、また、電子記録債権管理装置1経由で、電子債権記録機関の装置106に記憶されている電子記録債権データCを受信し、保証対象となる電子記録債権データCを閲覧可能としてもよい。
図7は、本実施形態に係る電子記録債権に対する保証期間、及び、電子記録債権を担保とする融資期間の一例を示す図である。図7においては、左右に時間軸をとり、受発注が発生してから支払が行われるまでの期間の電子記録債権の状態、及び、電子記録債権に対する保証、融資、担保の状態を示す。
時点T1において、発注企業の端末100及び納入企業の端末104により受発注が発生する。受発注が発生した後、電子記録債権管理装置1及び電子債権記録機関の装置106により、引渡し、検収、又は、納品後に支払うという抗弁付き電子記録債権データC1が発生する。
この場合、金融機関は、第1の担保S1に基づいて第1の融資L1を実行する。また、保証協会は、第1の融資L1に対する第1の保証G1を行う。
次に、時点T2において、引渡し、検収、又は、納品が行われる。引渡し、検収、又は、納品後は、電子債権記録機関の装置106が変更を実行することにより、抗弁付き電子記録債権データC1は、抗弁が切断されて抗弁なしの電子記録債権データC2となる。
この場合、金融機関108は、第2の担保S2に基づいて第2の融資L2を実行する。また、保証協会110は、第2の融資L2に対する第2の保証G2を行う。
ここで、上述の第1の担保S1、第2の担保S2、第1の融資L1、第2の融資L2、第1の保証G1、第2の保証G2の例としては、以下のようなパターンが考えられる。
第1のパターンとして、金融機関は、第1の融資L1及び第2の融資L2が抗弁付き債権に対する融資であることを考慮し、いずれも債権金額より所定の割合を割り引いた金額の融資とする。この場合、保証協会は、第1の保証G1及び第2の保証G2をいずれも第1の融資L1及び第2の融資L2と同額の保証とする。所定の割合は、例えば、50%である。なお、第1の担保S1、第2の担保S2の区別はなくてもよいが、金融機関は、抗弁付きの段階(時点T2より前)では第1の担保S1を添え担保としてもよい。
第2のパターンとして、金融機関は、時点T2において抗弁が切断されることを考慮し、第1の融資L1を債権金額より所定の割合を割り引いた金額の融資とし、第2の融資L2を債権金額の上限までの金額の融資とする。すなわち、金融機関は、時点T2において既貸金額の期限前回収を行い、新規増額を行う。この場合、第1の担保S1は抗弁付きの担保とし、第2の担保S2は抗弁なしの担保となる。また、第1の保証G1は第1の融資L1と同額とし、第2の保証G2は第2の融資L2と同額とする。
第3のパターンとして、金融機関は、第1のパターンにおける第2の融資L2を債権金額の上限までの金額とするが、保証協会は、第2の保証G2は行わなくてもよい。すなわち、金融機関は、時点T2で抗弁がなくなることにより債権金額の支払いが確定したことを考慮して、保証協会による保証なしで債権金額の上限までの金額を融資可能としてもよい。
第4のパターンとして、金融機関は、第1のパターンにおける第2の融資L2を債権金額の上限までの金額としてもよい。すなわち、金融機関は、第2の融資L2を保証協会110による保証なしで貸増可能であるとしてもよい。
第5のパターンとして、金融機関は、保証協会による第1の保証G1及び第2の保証G2なしで第1の融資及び第2の融資を実行してもよい。すなわち、金融機関は、電子記録債権の信頼性(例えば、二重譲渡のリスク及び債権者が不明となるリスクが排除されることなど)を考慮し、保証協会による保証を付けない融資を実行可能であるとしてもよい。
なお、時点T3において、発注企業による支払が行われることにより、電子記録債権は消滅する。
以下、図8乃至図11を用いて、発注企業及び納入企業により受発注が発生してから発注企業による支払が行われるまでの期間に、電子記録債権管理システム10で行われる処理について説明する。
図8は、受発注フロー及び抗弁付き電子記録債権データCの発生処理の一例を示すフローチャートである。
発注企業及び納入企業は、事前に、受発注の内容、金額、支払条件、電子記録債権管理装置1の利用、及び、抗弁内容に関する相談などを行うことが好ましい。また、納入企業は、発注企業より事前に承諾の連絡と、金融機関より融資可能見通しの連絡とを受けていることが好ましい。
ステップS101において、発注企業の装置100は、例えば、電子契約システム102に対して発注内容データを送信する。
ステップS102において、納入企業の装置104は、例えば、電子契約システム102に入力された発注内容データを確認し、受注することを示すデータを電子契約システム102へ送信する。
ステップS103において、電子契約システム102は、ステップS101,S102により得られた受発注データBを電子記録債権管理装置1に送信する。電子記録債権管理装置1は、受発注データBに基づき、債権関連データDなどを生成する。なお、電子記録債権管理装置1は、上述のように、電子契約システム102を経由せずに発注企業の端末100及び/又は納入企業の端末104からのアクセスにより受発注データBなどを取得してもよい。
ステップS104において、電子記録債権管理装置1は、受発注データBを電子債権記録機関の装置106へ送信してもよい。
ステップS105において、納入企業の端末104は、抗弁付き電子記録債権の発生依頼を、電子記録債権管理装置1へ送信する。
なお、電子記録債権管理装置1は、当該発生依頼を受信した場合に、当該発生依頼に対応する承諾依頼を、発注企業の端末100へ送信してもよい。また、電子記録債権管理装置1は、当該発生依頼とともに受発注データBを受信してもよい。
ステップS106において、発注企業の端末100は、発生依頼に対応する発生承諾を含む承諾データD9を、電子記録債権管理装置1へ送信する。
ステップS107において、電子記録債権管理装置1は、発注企業の端末100から受信した承諾データD9を記憶部7に記憶し、承諾データD9と関連づけられる債権関連データDのうち抗弁付き電子記録債権データCの発生に必要なデータを記憶部7より読み出し、抗弁付き電子記録債権データCの発生依頼と必要なデータとを、電子債権記録機関の装置106へ送信する。抗弁付き電子記録債権データCの発生に必要なデータは、上記の図5を用いて説明されている。
ステップS108において、電子債権記録機関の装置106は、受信した発生依頼と必要なデータに基づき、抗弁付き電子記録債権データCの発生・記憶を行う。
ステップS109において、電子債権記録機関の装置106は、抗弁付き電子記録債権データCの発生通知を、電子記録債権管理装置1へ送信する。
ステップS110において、電子記録債権管理装置1は、納入企業の端末104及び発注企業の端末100へ、抗弁付き電子記録債権データCの発生通知を送信する。
図9は、担保設定フロー、融資実行フロー及び抗弁付き電子記録債権データCの譲渡処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS201において、納入企業の端末104は、例えば抗弁付き電子記録債権を担保に融資を希望することを示す融資申請を、金融機関の装置108へ送信する。
ステップS202において、金融機関の装置108は、融資申請に対する保証の申し込みを、保証協会の装置110へ送信する。
ステップS203において、金融機関は融資審査を行い、保証協会は保証審査を行い、金融機関の装置108及び保証協会の装置110は、それぞれ、融資審査結果及び保証審査結果を、納入企業の端末104へ送信する。以下では、融資審査及び保証審査はいずれも合格であるとする。
ステップS204において、保証協会の装置110は、融資に対する保証を行う場合に、例えば、金融機関の装置108に対して保証書データなどを交付する処理を実行する。
ステップS205において、納入企業の装置104と金融機関の装置108との間で、融資契約及び譲渡担保契約の締結が実行される。
ステップS206において、納入企業の装置104は、譲渡先が特定の金融機関であることを示す譲渡先データD7とともに、抗弁付き電子記録債権データCの譲渡依頼を、電子記録債権管理装置1へ送信する。電子記録債権管理装置1は、受信した譲渡先データD7に基づき、譲渡先データD7で示される金融機関を譲渡先として認識する。なお、電子記録債権管理装置1は、譲渡依頼を受信した場合に、当該譲渡依頼に対応する承諾依頼を金融機関の装置108へ送信してもよい。
ステップS207において、金融機関の装置108は、譲渡依頼に対応する譲渡承諾を含む承諾データD9を、電子記録債権管理装置1へ送信する。
ステップS208において、電子記録債権管理装置1は、金融機関の装置108から受信した承諾データD9を記憶部7に記憶し、承諾データD9と関連づけられる債権関連データDの譲渡先データD7を記憶部7より読み出し、譲渡先データD7とともに抗弁付き電子記録債権データCに対する譲渡依頼を、電子債権記録機関の装置106へ送信する。
ステップS209において、電子債権記録機関の装置106は、電子記録債権管理装置1から受信した譲渡依頼と譲渡先データD7と基づき、抗弁付き電子記録債権データCの譲渡を記憶する。より具体的には、電子債権記録機関の装置106は、電子記録債権データCの債権者データD2を譲渡先データD7で更新する。
ステップS210において、電子債権記録機関の装置106は、抗弁付き電子記録債権データCの譲渡通知を、電子記録債権管理装置1へ送信する。
ステップS211において、電子記録債権管理装置1は、電子記録債権管理装置1から譲渡通知を受信すると、納入企業の端末104と、発注企業の端末100と、金融機関の装置108とのうちの少なくとも1つに対し、抗弁付き電子記録債権データCの譲渡通知を送信する。なお、この譲渡が完了すると、納入企業は、電子債権記録機関に対して設備利用料又は手数料などを支払うとしてもよい。
ステップS212において、金融機関は、譲渡後の抗弁付き電子記録債権を担保に融資を実行してもよい。
図10は、納品フロー及び電子記録債権データCの変更処理の一例を示すフローチャートである。この変更処理は、抗弁付き電子記録債権の抗弁切断のための処理を含む。
ステップS301において、納入企業は、発注企業に対して納品(引渡しでもよい)を行う。この場合、納入企業の端末104又は発注企業の端末100は、納品完了を、電子記録債権管理装置1を経由して金融機関の装置108などへ送信してもよい。
ステップS302において、発注企業は、納品された成果物を検収する。この場合、発注企業の端末100は、検収完了を、納入企業の端末104、又は、電子記録債権管理装置1を経由して金融機関の装置108、などへ送信してもよい。
ステップS303において、納入企業の端末104は、電子契約システム102を用いて請求内容を入力する。
ステップS304において、電子契約システム102は、ステップS303において入力された請求内容を示す請求データを、電子記録債権管理装置1へ送信する。なお、納入企業の端末104は、電子契約システム102を経由せずに、電子記録債権管理装置1へ請求データを入力又は送信してもよい。この場合、電子記録債権管理装置1のデータ処理部53は、所定のフォーマットに基づいて請求内容が記載された請求データなどを取り込む機能などを備えていてもよい。
ステップS305において、電子記録債権管理装置1は、請求データを受信したことを示す通知を、納入企業の端末104へ送信する。
ステップS306において、納入企業の端末104は、抗弁付き電子記録債権データCの変更依頼を、電子記録債権管理装置1へ送信する。変更内容は、例えば、抗弁切断、抗弁の内容の変更、債権金額の変更などである。より具体的には、納品が行われると抗弁が切断可能となるため、例えば、納入企業の端末104は、抗弁内容データD6の削除を依頼する。また、発注企業の端末100、納入企業の端末104、金融機関の装置108は、自己が権限を持つ範囲で、電子記録債権データCに含まれるデータの変更を依頼可能である。例えば、請求金額(債権金額データD4)に変更がある場合は、発注企業の端末100、納入企業の端末104、又は、金融機関の装置108は、変更後の債権金額データを電子記録債権管理装置1へ送信する。
ステップS307において、発注企業の端末100は、変更依頼に対応する変更承諾を含む承諾データD9を、電子記録債権管理装置1へ送信する。
ステップS308において、金融機関の装置108は、例えば、発注企業の端末100から検収完了を受信した後に、電子記録債権管理装置1に対して、変更依頼に対応する変更承諾を含む承諾データD9を送信する。
ステップS309において、電子記録債権管理装置1は、ステップS307,S308により得られた承諾データD9を記憶部7に記憶し、承諾データD9と関連づけられる債権関連データDのうち変更に必要なデータがある場合には当該変更に必要なデータを記憶部7より読み出し、電子記録債権データCの変更依頼、また、変更に必要なデータがある場合には当該変更に必要なデータ、を電子債権記録機関の装置106へ送信する。
ステップS310において、電子債権記録機関の装置106は、変更依頼を受信し、変更に必要なデータがある場合には当該変更に必要なデータを受信し、電子記録債権データCの変更を実行する。
ステップS311において、電子債権記録機関の装置106は、電子記録債権データCの変更通知を電子記録債権管理装置1へ送信する。
ステップS312において、電子記録債権管理装置1は、納入企業の端末104と、発注企業の端末100と、金融機関の装置108とのうちの少なくとも1つに対し、電子記録債権データCの変更通知を送信する。
ステップS313において、金融機関の装置108は、例えば、担保情報の変更などを行う。担保情報の変更は、より具体的には、添え担保から適格担保への変更などである。
なお、納入企業の端末104は、ステップS301の納品とともにステップS306の変更依頼を、電子記録債権管理装置1へ送信してもよい。すなわち、納入企業の端末104は、納品後すぐに抗弁の切断を電子記録債権管理装置1へ依頼してもよい。
図11は、融資弁済フロー及び電子記録債権データCの支払完了処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS401において、電子記録債権管理装置1は、発注企業の装置100に対し、支払いを促す通知を送信する。当該通知は、例えば、支払期日データD5が示す支払期日の所定期間前に行われてもよい。
ステップS402において、発注企業の装置100は、債権者データD2で示される金融機関の装置108に対して、債権金額データD4に基づく代金の支払い(振込処理)を実行する。
ステップS403において、金融機関の装置108は、代金受領の通知を電子債権記録機関の装置106及び電子記録債権管理装置1に送信する。
ステップS404において、金融機関の装置108は、例えば融資の元利金回収後の残額を納入企業へ振り込む処理を実行する。なお、金融機関の装置108は、担保処分ではなく、予定通り弁済を受けたという処理を行ってもよい。
ステップS405において、電子記録債権管理装置1は、当該代金の支払完了を、電子債権記録機関の装置106へ送信する。
ステップS406において、電子債権記録機関の装置106は、受信した支払完了に基づき、支払完了に対応する電子記録債権データCに関して代金の支払いが行われたことを記憶する支払完了処理を実行する。なお、電子債権記録機関の装置106は、電子記録債権管理装置1からの支払完了を受信することなく、ステップS403の代金受領通知を受信した後に、電子記録債権データCに関する代金の支払完了処理を実行してもよい。
ステップS407において、電子債権記録機関の装置106は、支払完了通知を電子記録債権管理装置1へ送信する。
ステップS408において、電子記録債権管理装置1は、支払完了通知を、発注企業の端末100と金融機関の装置108とのうちの少なくとも1つへ送信する。
以下、図12を用いて、抗弁付き電子記録債権データCが分割譲渡される場合の処理及び分割譲渡後の電子記録債権データC_A,C_Bについて詳細に説明する。
図12は、本実施形態に係る抗弁付き電子記録債権データCの分割譲渡処理の一例を示すフローチャートであり、電子記録債権管理装置1が実行する処理を示す。
ステップS601において、電子記録債権管理装置1のデータ処理部53は、分割譲渡後の電子記録債権データC_A,C_Bに対して、それぞれ識別データD1,D1_Bを付与する。例えば、データ処理部53は、分割譲渡後に、分割元の電子記録債権データC_Aに対して分割譲渡の基礎となった電子記録債権データCと同じ識別データD1を付与し、譲渡される電子記録債権データC_Bに対して新たに生成した識別データD1_Bを付与する。なお、分割元の電子記録債権データC_Aの識別データとして、識別データD1と同じではなく、新たな識別データを生成してもよい。
ステップS602において、データ処理部53は、記憶部7より譲渡先データD7を読み出し、譲渡される電子記録債権データC_Bの債権者データD2_Bに譲渡先データD7を設定する。
ステップS603において、データ処理部53は、記憶部7から譲渡金額データD8を読み出し、分割元の電子記録債権データC_Aの債権金額データD4_A及び譲渡された電子記録債権データC_Bの債権金額データD4_Bを更新する。より具体的には、データ処理部53は、分割譲渡の基礎となる電子記録債権データCに含まれる債権金額データD4の値から譲渡金額データD8の値を減算した金額を、分割元の電子記録債権データC_Aの債権金額データD4_Aに設定し、譲渡金額データD8を譲渡された電子記録債権データC_Bの債権金額データD4_Bに設定する。
ステップS604において、データ処理部53は、分割譲渡の基礎となる電子記録債権データCより流用可能なデータを分割元の電子記録債権データC_A及び譲渡される電子記録債権データC_Bへコピーする。より具体的には、データ処理部53は、分割譲渡の基礎となる電子記録債権データCの債権者データD2、債務者データD3、支払期日データD5、抗弁内容データD6を、分割元の電子記録債権データC_Aの債権者データD2、債務者データD3、支払期日データD5、抗弁内容データD6へコピーする。また、データ処理部53は、分割譲渡の基礎となる電子記録債権データCの債務者データD3、支払期日データD5、抗弁内容データD6を、譲渡された電子記録債権データC_Bの債務者データD3、支払期日データD5、抗弁内容データD6へコピーする。
ステップS605において、譲渡依頼部52Cは、電子債権記録機関106へ、分割譲渡依頼を送信するとともに、例えば、電子記録債権データC_A,C_Bを送信する。
なお、分割譲渡依頼は、例えば、分割譲渡の基礎となる電子記録債権データCに対する債権金額データの変更依頼、譲渡された電子記録債権データC_Bの発生依頼を組み合わせて実現してもよい。この場合、発生依頼は発生依頼部52Aから送信されてもよい。分割時に分割元の電子記録債権データC_A及び/又は譲渡された電子記録債権データC_Bの内容に変更が生じた場合は、変更依頼部52Bは、電子債権記録機関の装置106へ変更依頼を送信してもよい。
また、分割譲渡は、まず、分割譲渡の基礎となる電子記録債権データCを分割依頼で複数の電子記録債権データC_A,C_Bへ分割し、その後複数の電子記録債権データC_A,C_Bに対する変更依頼(債権者の名義変更、債権金額の変更)を送信することで、実現してもよい。
このように、抗弁付き電子記録債権データCの分割譲渡は、抗弁付き電子記録債権データCに対する分割依頼、変更依頼、譲渡依頼などを適宜選択又は組み合わせて実現することもできる。
ステップS606において、譲渡依頼部52Cは、電子債権記録機関の装置106から分割譲渡通知を受信する。なお、ステップS605及びステップS606の処理は、図9のステップS206乃至S211の処理と同様としてもよい。
上記のステップS601〜S604におけるデータ処理部53の処理は、譲渡依頼部52Cで実行されてもよい。
以上説明した本実施形態において、電子記録債権管理装置1は、発注企業の端末100、納入企業の端末104、又は、電子契約システム102から、抗弁付き電子記録債権に関する債権者データD2、債務者データD3、債権金額データD4、支払期日データD5、及び、引渡し、検収、又は、納品後に支払を行うことを示す抗弁内容データD6を受信する。電子記録債権管理装置1は、発注企業の端末100、納入企業の端末104、又は、電子契約システム102から、これらのデータに対応する承諾データD9を受信した場合に、電子債権記録機関の装置106に対し、抗弁付き電子記録債権データCの発生依頼を送信する。これにより、電子記録債権管理装置1は、受発注段階から抗弁付き電子記録債権に対応する電子記録債権データCを発生させることができる。したがって、金融機関は、納入企業に対し、電子記録債権データCに関する抗弁付き電子記録債権を担保として受発注段階から融資可能となり、例えば納入企業及び金融機関などに対して電子記録債権の利便性を向上させることができる。
本実施形態において、電子記録債権管理装置1は、引渡し、検収、又は、納品後に、抗弁付き電子記録債権に関する電子記録債権データCに対して抗弁切断処理を実行し、抗弁切断通知を金融機関の装置108などへ送信することができる。これにより、金融機関は、抗弁切断後に融資金額を増額可能となり、例えば納入企業及び金融機関などに対して電子記録債権の利便性を向上させることができる。
本実施形態において、電子記録債権管理装置1は、抗弁付き電子記録債権の分割譲渡が行われる際に、抗弁付き電子記録債権データCを、抗弁内容データD6を維持した状態で、抗弁付き電子記録債権データC_Aと抗弁付き電子記録債権データC_Bに分割する。これにより、抗弁付き電子記録債権を分割及び譲渡することができ、紙媒体の手形より便利で柔軟な金融サービスを提供することができる。
本実施形態において、電子記録債権管理装置1は、受発注データBのうち承諾のなされた部分のデータを下請法遵守のために記憶部7に記憶する。電子記録債権管理装置1は、受発注データB及び/又は債権関連データDと条件データEとを比較し、発注企業と納入企業との間の取引内容が下請法を遵守するか否かを判断することができる。下請法では、発注企業は、下請け企業(納入企業)に対して発注書面を作成して発注すること、及び、発注内容からの変更が発生した場合には補充書面を作成することが義務付けられている。また、この発注書面及び補充書面は、2年以上保存することが義務付けられている。本実施形態においては、電子記録債権データCの発生、変更などは、発注企業及び納入企業の双方の応諾が必要である。電子記録債権管理装置1は、受発注データB及び債権関連データDを発注書面及び補充書面の代替として記憶し、必要に応じて読み出し可能である。したがって、本実施形態においては、受発注データB及び債権関連データDを、下請法を遵守する発注書面及び補充書面の代替として用いることができ、低コストで下請法を遵守す
ることができ、発注企業の利便性を向上させることができる。
本実施形態においては、変更依頼により、電子債権記録機関の装置106の電子記録債権データCに含まれている支払期日データD5を変更することができる。これにより、早期納品/検収、又は、納品遅延/検収に容易に対処することができる。
本実施形態においては、譲渡依頼により、電子債権記録機関の装置106の電子記録債権データCに含まれている債権者データD2を変更し、電子記録債権データCに関する電子記録債権を例えば金融機関、保証協会、又は任意の第三者などへ譲渡することができる。これにより、例えば、引渡し、検収、又は、納品前に納入企業が破産した場合などに容易に対処することができる。
なお、上述したように、電子記録債権管理装置1は、抗弁内容データD6の候補となる複数の雛形データ123_1〜123_nを記憶部7に記憶しておき、利用者に当該雛形データ123_1〜123_nのうち少なくとも1つを選択させることにより、抗弁内容データD6を生成してもよく、雛形データの選択後に当該選択された雛形データに対して利用者に編集させることにより、抗弁内容データD6を生成してもよく、入力欄に入力されたデータを抗弁内容データD6としてもよい。この場合、電子記録債権管理装置1のデータ処理部53は、利用者のアクセスにより、当該雛形データ123_1〜123_nをアクセス元へ提供し、さらに、選択された雛形データを編集させ、入力欄への入力を促すユーザインタフェースを提供する。データ処理部53は、利用者による選択、編集、入力によって得られる抗弁内容データD6を記憶部7に記憶する。これにより、納入企業又は発注企業が抗弁の作成に不慣れな場合でも、簡便に抗弁内容データD6を生成可能であり、利用者の利便性が向上する。
上記各実施形態において、受発注及び承諾のやり取りは一例であり、受発注の発信元及び承認の発信元は適宜変更可能である。
上記各実施形態において、抗弁付き電子記録債権の抗弁の切断は、例えば、納入企業から発注企業への引渡し、発注企業による検収完了、又は、納品完了に応じて行われる。
本発明は上記で説明した実施形態に限定されず、各実施形態は、構成要素を削除、付加又は変更等をして実施することができる。また、各実施形態の各構成要素を適宜組み合わせ又は交換などをすることで、さらに異なる形態で実施することができる。このように、上記で説明した実施形態と直接的には異なる実施形態であっても、本発明と同様の趣旨のものは、本発明の実施形態として説明したものとして、その説明を省略している。