以下に、本発明に係る印刷装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る印刷装置の模式図である。図2は、図1の右側方から見た印刷装置の概略図である。なお、説明のため一部は図1のA−A断面の概略図である。また、以下の説明では、印刷装置1の通常の使用態様における上下方向をZ方向とし、印刷装置1を用いた印刷時において後述するキャリッジ40が移動する方向をY方向とし、Y方向とZ方向との双方に対して直交する方向をX方向として説明する。印刷装置1は、布帛や樹脂シート(例えば、塩化ビニル、ポリエステル等からなる)等のシート状のメディアMの記録面(印刷面)に対して、インク等の液体を吐出することにより、文字や図形等の印刷加工を行う装置になっている。
<印刷装置>
印刷装置1は、横長矩形箱状に形成される本体部2と、本体部2を作業容易な高さの位置に支持する支持部3とを有している。支持部3は、Y方向における両側に脚部3aを有しており、印刷装置1は、この脚部3aが床面に接地することにより、所望の位置に設置される。また、支持部3のX方向における両側には、ロール状に巻かれた未加工状態のメディアM、即ち、印刷加工前のメディアMを本体部2に繰り出すメディア繰出し機構4と、印刷が終了したメディアMを巻き取るメディア巻取り機構5とが設けられている。これらのメディア繰出し機構4とメディア巻取り機構5は、メディアMの搬送を行う搬送部の一部として機能する。
本体部2は、ボディ10と、メディア支持部20と、メディア搬送機構30と、キャリッジ40と、キャリッジ移動機構50と、記録ヘッド60と、コントロールユニット70と、を有している。このうち、ボディ10は、各機構の取り付けベースとして設けられている。また、メディア搬送機構30は、メディアMをメディア繰出し機構4側からメディア巻取り機構5へ移動させることが可能になっており、メディア支持部20は、メディアMの搬送方向におけるメディア搬送機構30の上流側でメディアMを支持することが可能になっている。これらのメディア搬送機構30やメディア支持部20は、搬送するメディアMを支持面にて支持するプラテン6に設けられている。
また、キャリッジ40は、メディアMの搬送方向におけるメディア搬送機構30の下流側で、且つ、搬送されるメディアMの上方に配設されて、Y方向に移動自在に支持されており、キャリッジ移動機構50は、搬送されるメディアMに対してキャリッジ40をY方向に相対移動させることが可能になっている。記録ヘッド60は、メディアMとの間に所定のギャップが空く位置で、キャリッジ40に複数が保持されており、プラテン6に対向して設けられている。コントロールユニット70は、メディア搬送機構30によるメディアMの搬送や、キャリッジ移動機構50によるキャリッジ40の移動、及び記録ヘッド60の各ノズル(図示省略)からのインク噴射など、印刷装置1の各部の作動を制御することが可能になっている。
また、ボディ10は、メディア支持部20やメディア搬送機構30の送りローラ等が設けられる下部フレーム11bと、メディア搬送機構30のローラアッセンブリやキャリッジ40の支持構造が設けられる上部フレーム11aとからなる本体フレーム11を備えている。このように本体フレーム11を構成する上部フレーム11aと下部フレーム11bとの間には、搬送されるメディアMが挿通可能な横長窓状の挿通部であるメディア挿通部15が形成されている。ボディ10は、本体フレーム11の中央部を覆うフロントカバー13a、及び左右を覆うサイドカバー13bに囲まれており、全体として横長矩形の箱状に構成される。
また、メディア支持部20は、メディアMの搬送経路における、メディア搬送機構30の上流側の位置に設けられており、メディアMを下方側から支持すると共に、メディア繰出し機構4側から送られてくるメディアMを水平状態にしてメディア搬送機構30に向けて送り出すことが可能になっている。なお、メディア支持部20の上面であるメディア支持面は、メディア繰出し機構4側の端部からメディア搬送機構30側の端部にかけて滑らかな曲線状に形成されており、必要に応じて、メディアMを吸着保持する機構を設けてもよい。
メディア搬送機構30は、Y方向に延びる回動軸廻りに回動可能に設けられた円筒状の送りローラ31と、送りローラ31の上方に位置し、送りローラ31に対して弾性的に接触させた複数のピンチローラ36とを備えて構成されている。メディア搬送機構30は、このように設けられる送りローラ31とピンチローラ36とによってメディアMを上下方向から挟み込んだ状態で、送りローラ31を回転させることにより、送りローラ31の回転角度に応じた送り量でメディアMを搬送することができる。即ち、メディアMを搬送するメディア搬送機構30は、記録ヘッド60よりもメディアMの搬送方向における上流側でメディアMを挟持する挟持部としても設けられている。挟持部としての機能も有するメディア搬送機構30は、コントロールユニット70から出力される制御信号に基づいて送りローラ31が回転することにより、駆動制御値に応じた送り量で、搬送方向における下流側にメディアMを搬送することが可能になっている。
なお、メディア搬送機構30における駆動のための機構としては、送りローラ31を回転駆動するサーボモータ33と、送りローラ31の軸端に結合された従動プーリとサーボモータ33の軸端に結合された駆動プーリとの間に掛け渡されたタイミングベルト32等を備えて構成されている。送りローラ31は、サーボモータ33で発生した駆動力がタイミングベルト32を介して伝達されることにより、回転することが可能になっている。
メディアMの搬送方向における、キャリッジ40が配設される位置とメディア巻取り機構5との間には、メディアMに対して一定の送り方向の張力を付与する引張ローラ7が配設されている。この引張ローラ7は、Y方向に延びる回動軸廻りに回動可能に設けられた円筒状の形状で形成されており、Z方向における上端部の位置が、メディア搬送機構30が有する送りローラ31の上端部の位置とほぼ同じ位置となるように配設されている。
メディアMの搬送方向におけるメディア搬送機構30と引張ローラ7との間の位置において、X方向におけるキャリッジ40が配設される位置のキャリッジ40の下方側には、インク受け部25が配設されている。詳しくは、インク受け部25は、Z方向における上端部の位置が、引張ローラ7の上端部や、メディア搬送機構30の送りローラ31の上端部よりも下方に位置するようにプラテン6に設けられている。インク受け部25は、例えば、メディアMとして布帛を用いた場合において、記録ヘッド60から吐出したインクがメディアMを通過した際に、この通過したインクを貯留して排出させる機能を有している。
引張ローラ7と送りローラ31とは、インク受け部25の上端部の位置が、引張ローラ7や送りローラ31の上端部の位置よりも下方に位置していることにより、引張ローラ7と送りローラ31との間に位置するメディアMが、インク受け部25に接触しないようにして搬送することができる。
上部フレーム11aには、記録ヘッド60を保持するキャリッジ40を保持するガイドレール45が、送りローラ31と平行にY方向に延びて配設されており、キャリッジ40は、ガイドレール45に沿って移動することにより、Y方向に移動自在に支持されている。ガイドレール45は直動軸受の支持レールであり、このガイドレール45に嵌合されたスライドブロックにキャリッジ40が固定されて左右にスライド移動自在に支持されることにより、キャリッジ40は、キャリッジ移動機構50によりY方向に移動自在に支持される。
キャリッジ移動機構50は、Y方向におけるガイドレール45の両端近傍に設けられた駆動プーリ51及び従動プーリ52と、駆動プーリ51を回転駆動するサーボモータ53と、駆動プーリ51と従動プーリ52とに掛け渡された無端ベルト状のタイミングベルト55とからなり、キャリッジ40がタイミングベルト55に連結固定されて構成される。サーボモータ53の回転は、コントロールユニット70により制御され、コントロールユニット70から出力される制御信号に基づいてサーボモータ53が回転することにより、キャリッジ40は、駆動制御値に応じた送り量でY方向に移動する。
キャリッジ40よって保持される記録ヘッド60は、メディアMの搬送時にキャリッジ40の下方に位置するメディアMとの間に所定のギャップをあけて設けられている。記録ヘッド60の配置構成には種々の構成形態があり適宜な構成を用いることができるが、本実施形態では、各々微細なインク粒を噴射する多数のノズルがX方向に直線状に整列したノズル列が平行に並んで形成された記録ヘッド60を、X方向及びY方向のそれぞれに四つずつ並べて合計八個が配設されたヘッド構成を例示する。このようにインク粒を噴射するノズルを有する記録ヘッド60は、繰り出しローラ81から繰り出されたメディアMに向けてインクを吐出することにより、メディアMに画像を形成する画像形成部、或いは、メディアMに対して印刷を行う印刷部として設けられている。
コントロールユニット70は、メディア搬送機構30によるメディアMのX方向の移動や、キャリッジ移動機構50によるキャリッジ40のY方向の移動、記録ヘッド60の各ノズルからのインク噴射、後述するメディア繰出し機構4によるメディアMの繰出し動作やメディア巻取り機構5によるメディアMの巻取り動作など、印刷装置1の各部の作動を制御する制御装置として設けられている。コントロールユニット70は、メディア搬送機構30によるメディアMのX方向の移動と、キャリッジ移動機構50によるキャリッジ40のY方向の移動とを組み合わせてメディアMと記録ヘッド60とを相対移動させ、記録ヘッド60の各ノズルからメディアMにインクを吐出させることにより、メディアMに対して、加工プログラムに応じた文字や図形等の印刷加工を行う。
コントロールユニット70は、Y方向におけるボディ10の一端寄りの位置の上部付近に配設されている。このコントロールユニット70は、当該コントロールユニット70への入力操作等を行う操作パネル75に、各種の情報を表示する液晶ディスプレイや、設定する機能を選択するファンクションキー、実行内容を選択するジョグキー、選択内容を入力するエンターキーや設定を消去するクリアキーなどの各種操作ボタンを備えている。このため、オペレータが液晶ディスプレイの表示内容を確認しながらプリント条件を設定し、印刷加工を実行させることができるようになっている。
次に、引張ローラ7の駆動部の構成について説明する。図3は、図2に示す引張ローラの駆動部の模式図である。引張ローラ7は、トルクリミッタ37を介してモータ39によって駆動される構成を備えている。トルクリミッタ37は、モータ39から引張ローラ7に伝達する回転力を制限する回転力制限手段として設けられている。当該トルクリミッタ37は、トルクリミッタ37の入力軸37aにモータ39が連結されると共に、出力軸37bに、引張ローラ7の端部に設けられたギア7aが連結して構成されている。
トルクリミッタ37は、このように構成されることにより、モータ39による一定の回転力が入力軸37aに入力された際に、入力軸37aに対して出力軸37bが常にスリップを生じながら出力軸37bからギア7aに対して出力する。これにより、引張ローラ7は、出力軸37bからギア7aに対して一定の回動力を付与することができ、メディアMに対して一定の送り方向の張力を付与することが可能となる。なお、引張ローラ7は、トルクリミッタ37で回転力を制限する大きさを可変にすることによって、モータ39から引張ローラ7への伝達トルクを可変にしてもよい。これにより、引張ローラ7の回転トルクを、メディアMの材質等に応じて適切に調整することが可能になる。
また、引張ローラ7は、表面に樹脂起毛シートを巻設したり、表面を微細な凹凸を多数持つ梨地状に形成したりすることにより、メディアMとの接触抵抗を増加させることができるように構成するのが好ましい。このように、引張ローラ7とメディアMとの接触抵抗を増加させることにより、引張ローラ7とメディアMとの間のスリップの発生を抑制することができ、引張ローラ7は、メディアMに対して安定して張力を付与することができる。
次に、メディア繰出し機構4とメディア巻取り機構5の駆動部の構成について説明する。図4は、図2に示すメディア繰出し機構及びメディア巻取り機構の駆動部の模式図である。メディア繰出し機構4は、印刷前のメディアMが周囲にロール状に巻回された筒状の繰り出しローラ81を回転自在に、且つ、着脱可能に支持する支持手段80と、繰り出しローラ81から送り出すメディアMに対して搬送方向と反対の方向の張力を付与する張力付与機構である繰出し側張力付与機構90と、繰り出しローラ81から供給されるメディアMに対して適切に張力を付与しつつ、メディア支持部20に向けてスムーズに導く複数のガイドローラ101と、から構成される。
支持手段80は、Y方向における両側の脚部3aにおける、メディア繰出し機構4が配設される側の下方に設けられる本体部材82と、Y方向における両側の本体部材82に架設され繰り出しローラ81に抜き差し自在に挿通して繰り出しローラ81と一体に回転される棒状の供給軸83と、本体部材82内に配設され供給軸83の両端を回転自在で、且つ、着脱自在に支持する軸受け部84と、供給軸83を回転駆動するステッピングモータ85と、供給軸83の軸端に結合された従動プーリとステッピングモータ85の軸端に結合された駆動プーリとの間に掛け渡されたタイミングベルト86と、から構成される。
ステッピングモータ85は、回転がコントロールユニット70により制御され、コントロールユニット70からステッピングモータ85に出力される駆動制御値に応じて、タイミングベルト86を介して供給軸83を回転させる。Y方向に延びる繰り出しローラ81によって支持されるメディアMは、供給軸83の回転角度に応じた繰出し量、即ち、コントロールユニット70からステッピングモータ85に出力される駆動制御値に応じた繰出し速度で、繰り出しローラ81から繰り出される。
繰出し側張力付与機構90は、繰り出しローラ81から繰り出されるメディアMの中途部内側にY方向に横断して抱持される円柱状のテンションバー91と、Y方向における両側の本体部材82の外側面からY方向に延びる揺動軸に基端部が支持され、揺動軸を中心として揺動自在な一対の支持アーム92と、からなり、Y方向における両側に位置する支持アーム92の先端部に、テンションバー91の両端が回転自在に支持されて構成される。
支持アーム92は、本体部材82における繰り出しローラ81を支持している位置の下方の位置から、上方に向かいつつ、X方向においてメディア巻取り機構5が位置する側の反対方向に向かう斜めの方向に延びて配設されている。即ち、支持アーム92は、Z方向とX方向との双方に対して傾斜して設けられている。支持アーム92は、例えば、水平方向に対して60°程度傾斜して、本体部材82から斜め上方に向かって形成されている。
繰出し側張力付与機構90は、繰り出しローラ81からのメディアMの繰出し量やメディア搬送機構30でのメディアMの搬送速度に応じて自重によって支持アーム92が回動することにより、支持アーム92とテンションバー91とが一体となって下方に揺動可能になっている。また、テンションバー91と支持アーム92とは、テンションバー91をメディアMの内側に抱持させてメディアMを屈曲させ、テンションバー91とメディア支持部20との間に位置するメディアMに対して搬送方向と反対の方向に、テンションバー91の高さ位置、即ち、支持アーム92の揺動位置に応じた張力を付与するようになっている。これらにより、テンションバー91及び支持アーム92は、メディアMに対して張力を付与しつつ、水平方向に対する傾斜角度が、テンションバー91や支持アーム92の自重とメディアMに付与する張力とが釣り合う角度となる搖動位置になる。
また、ガイドローラ101は、繰り出しローラ81や繰出し側張力付与機構90の上方の位置に、繰り出しローラ81やテンションバー91と同様にY方向に延びて配設されている。詳しくは、Y方向における両側に配設されるそれぞれの脚部3aには、ガイドローラ101を支持するガイドローラ支持部102が、メディア巻取り機構5が位置する方向の反対方向に突出して設けられている。各ガイドローラ支持部102には、ガイドローラ101を支持する支持孔103が複数形成されており、ガイドローラ101は、両端付近をそれぞれ支持孔103に挿入することにより、両端付近がガイドローラ支持部102によって支持される。これにより、ガイドローラ101は、メディアMの搬送経路における繰り出しローラ81とテンションバー91との間、及びテンションバー91とメディア支持部20との間に配設され、メディアMに対する張力を適切な張力にすると共に、メディア支持部20へのメディアMの供給角度を、適切な角度にする。
なお、ガイドローラ支持部102には、支持孔103が複数形成されているが、ガイドローラ101は、メディアMの種類等に応じて、設置する位置、即ち、支持される支持孔103を適宜設定するのが好ましい。また、本実施形態に係る印刷装置1では、このガイドローラ101が3つ設けられているが、ガイドローラ101の数も、メディアMの種類等に応じて適宜設定するのが好ましい。
また、メディア巻取り機構5は、基本的にメディア繰出し機構4と同様に構成され、記録ヘッド60によって画像が形成されたメディアMを周囲にロール状に巻き取る巻取部である筒状の巻き取りローラ111を回転自在、且つ、着脱可能に支持する支持手段110と、引張ローラ7と巻き取りローラ111との間で、メディアMに対して搬送方向の張力を付与する張力付与機構である巻取り側張力付与機構120と、引張ローラ7から送出されるメディアMに対して適切に張力を付与しつつ、巻き取りローラ111に向けてスムーズに導く複数のガイドローラ161とから構成される。
支持手段110は、Y方向における両側の脚部3aにおける、メディア巻取り機構5が配設される側の下方に設けられる本体部材112と、Y方向における両側の本体部材112に架設され巻き取りローラ111に抜き差し自在に挿通して巻き取りローラ111と一体に回転される棒状の巻取り軸113と、本体部材112内に配設され巻取り軸113の両端で回転自在で、且つ、着脱自在に支持する軸受け部114と、巻取り軸113を回転駆動するステッピングモータ115と、巻取り軸113の軸端に結合された従動プーリとステッピングモータ115の軸端に結合された駆動プーリとの間に掛け渡されたタイミングベルト116と、から構成される。
ステッピングモータ115は、回転がコントロールユニット70により制御され、コントロールユニット70からステッピングモータ115に出力される駆動制御値に応じて、タイミングベルト116を介して巻取り軸113を回転させる。Y方向に延びる巻き取りローラ111は、引張ローラ7から送出されるメディアMを、巻取り軸113の回転角度に応じた繰出し量、即ち、コントロールユニット70からステッピングモータ115に出力される駆動制御値に応じた巻取り速度で巻き取る。
巻取り側張力付与機構120は、繰り出しローラ81と巻き取りローラ111との間に配設されてメディアMに張力を付与することが可能になっており、具体的には、引張ローラ7と巻き取りローラ111との間に配設されて、メディアMに張力を付与することが可能になっている。この巻取り側張力付与機構120は、メディアMの幅方向に略平行に設けられると共に、引張ローラ7から送出されて巻き取りローラ111で巻き取るメディアMの中途部内側にY方向に横断して抱持される円柱状の張力付与部121と、Y方向における両側の本体部材112の外側面からY方向に延びる揺動軸に基端部が支持され、揺動軸を中心として揺動自在な一対の支持アーム122と、からなり、Y方向における両側に位置する支持アーム122の先端部に、張力付与部121の両端が接続されることによって構成される。即ち、張力付与部121は、外周面がメディアMに接触することによりメディアMに対して張力を付与することが可能になっており、支持アーム122は、張力付与部121を支えつつ、張力付与部121を揺動させることが可能になっている。
支持アーム122は、本体部材112における巻き取りローラ111を支持している位置の下方の位置から、上方に向かいつつ、X方向においてメディア繰出し機構4が位置する側の反対方向に向かう斜めの方向に延びて配設されている。即ち、支持アーム122は、Z方向とX方向との双方に対して傾斜して設けられている。支持アーム122は、例えば、水平方向に対する傾斜角度θが60°程度となる角度で傾斜して、本体部材112から斜め上方に向かって形成されている。
巻取り側張力付与機構120は、引張ローラ7でのメディアMの送出速度や巻き取りローラ111でのメディアMの巻き取り量に応じて自重によって支持アーム122が回動することにより、支持アーム122と張力付与部121とが一体となって下方に揺動可能になっている。また、張力付与部121と支持アーム122とは、張力付与部121をメディアMの内側に抱持させてメディアMを屈曲させ、引張ローラ7と張力付与部121との間に位置するメディアMに対して搬送方向に、張力付与部121の高さ位置、即ち、支持アーム122の揺動位置に応じた張力を付与するようになっている。これらにより、張力付与部121及び支持アーム122は、メディアMに対して張力を付与しつつ、水平方向に対する傾斜角度が、張力付与部121や支持アーム122の自重とメディアMに付与する張力とが釣り合う角度となる搖動位置になる。
また、ガイドローラ161は、巻き取りローラ111や巻取り側張力付与機構120の上方の位置に、巻き取りローラ111や張力付与部121と同様にY方向に延びて配設されている。詳しくは、Y方向における両側に配設されるそれぞれの脚部3aには、ガイドローラ161を支持するガイドローラ支持部162が、メディア繰出し機構4が位置するX方向の反対方向に突出して設けられている。各ガイドローラ支持部162には、ガイドローラ161を支持するガイドローラ受け部163が複数形成されている。このガイドローラ受け部163は、上方に向けて開口する切欠き状、或いは溝状の形状で形成されており、上方側からガイドローラ受け部163内にガイドローラ161の端部を入り込ませることにより、ガイドローラ161を支持することが可能になっている。ガイドローラ161は、これらのように形成されるガイドローラ受け部163によって、両端付近がそれぞれ支持される。これにより、ガイドローラ161は、メディアMの搬送経路における張力付与部121と巻き取りローラ111との間に配設され、メディアMに対する張力を適切な張力にする。
なお、ガイドローラ支持部162には、ガイドローラ受け部163が複数形成されているが、ガイドローラ161は、メディアMの種類等に応じて、設置する位置、即ち、支持されるガイドローラ受け部163を適宜設定するのが好ましい。また、本実施形態に係る印刷装置1では、このガイドローラ161は1つが設けられているが、ガイドローラ161の数も、メディアMの種類等に応じて適宜設定するのが好ましい。
<張力付与部>
図5は、図2に示す張力付与部の断面図である。張力付与部121は、二重管で構成された回転型となって設けられている。詳しくは、張力付与部121は、第一の方向であるY方向に延在する内側部材130と、Y方向に延在する筒状の形状で形成され、且つ、内側部材130と同軸に配設されて内側部材130よりも径方向外側に設けられる外側部材140との二重管として構成されている。このうち、内側部材130は、Y方向における長さが支持アーム122同士の間隔と同等の長さになっており、両端が支持アーム122に接続されている。一方、外側部材140は、Y方向における長さが支持アーム122同士の間隔よりも短くなっており、内側部材130に対して回転可能に取り付けられていると共に、外周面141がメディアMに接触可能に設けられている。即ち、メディアMに対しては、外側部材140の外周面141が接触する。
相対的に回転可能な外側部材140と内側部材130との間には、内側部材130及び外側部材140とは別体で構成されて内側部材130と外側部材140との間に配設される軸受機構150が設けられている。この軸受機構150は、Y方向における外側部材140や内側部材130の両端部付近にそれぞれ1ヶ所ずつ配設されている。外側部材140は、内側部材130との間に軸受機構150を介在させることにより、内側部材130に対して回転可能に構成されている。
このように、二重管として構成される張力付与部121のうち、内側部材130は、Y方向に延びる軸である張力付与部121の中心軸CLを中心とする円筒形の形状で形成される円筒内管133と、中心軸CLが延びる方向における円筒内管133の両端において円筒内管133と固定接続された内側接続部134と、を有している。内側接続部134は、外形が円筒内管133の外径と近い径となる段付きの略円柱状の形状で、円筒内管133の両端から内側部材130の長さ方向に延びて設けられている。
詳しくは、内側接続部134は、円筒内管133に接続される側の端部が円筒内管133の内径と同程度の径で形成されており、この部分が円筒内管133に圧入されることにより、円筒内管133に接続されている。さらに、円筒内管133と内側接続部134とには、円筒内管133における内側接続部134が圧入されている部分の径方向における外側から、円筒内管133と内側接続部134との双方に接触するノックピン137が径方向に挿入されている。これにより、内側接続部134は、円筒内管133に対する周方向の相対回転が不可となって、内側接続部134に固定接続されている。
張力付与部121に接続される支持アーム122は、L字板金124と複数の取付ネジ125によって内側接続部134と固定接続されることにより、内側部材130に接続されている。詳しくは、支持アーム122は、支持アーム122を張力付与部121に取り付けるための取付ネジ125である支持アーム取付ネジ126を、支持アーム122を挟んで内側部材130の端部に取り付けることにより、支持アーム122は内側部材130の端部に取り付けられる。また、支持アーム122と内側部材130との固定接続に用いるL字板金124は、内側部材130が有する内側接続部134の端部に形成されるL字板金取付面138に、張力付与部側L字板金取付ネジ128によってL字の一片側が取り付けられる。また、L字板金124の他辺側は、支持アーム側L字板金取付ネジ127によって支持アーム122に取り付けられる。これらにより、支持アーム122は、内側部材130の端部に固定接続される。
また、軸受機構150は、内側部材130における内側接続部134の位置に配設されている。つまり、軸受機構150は、内側部材130の長さ方向において、円筒内管133の両端の位置よりも、内側部材130の両端寄りの位置に配設されている。軸受機構150が配設される内側接続部134は、外周面が円筒内管133から連続する部分の外径が、円筒内管133の外径と同程度の径になっており、内側部材130における端部寄りの位置の外径は、円筒内管133の径よりも小さくなっている。軸受機構150は、内側接続部134における、円筒内管133の径よりも小さくなっている部分に配設されている。
一方、外側部材140は、中心軸CLを中心とする円筒形の形状で形成される円筒外管143と、中心軸CLが延びる方向における円筒外管143の両端において円筒外管143と固定接続された外側接続部144と、を有している。外側接続部144は、外形が円筒外管143の外径と近い径となる略円柱状の形状で、円筒外管143の両端から外側部材140の長さ方向に延びて設けられている。
詳しくは、外側接続部144は、円筒外管143に接続される側の端部が円筒外管143の内径と同程度の外径で形成されており、この部分が円筒外管143に圧入されることにより、円筒外管143に接続されている。このように円筒外管143に接続される外側接続部144における、円筒外管143の両端の位置よりも、外側部材140の両端側の位置の部分の外径は、円筒外管143の外径とほぼ同じ径となって形成されている。軸受機構150は、外側部材140における外側接続部144の位置に配設されている。
図6は、図5のB部詳細図である。図7は、図5に示す内側部材と軸受機構の要部斜視図である。図8は、図5に示す張力付与部の要部斜視図である。外側部材140と内側部材130との間に配設される軸受機構150は、中心軸CLを中心とする径方向における荷重を受けることが可能になっており、外周面151が軸中心にて回転可能になっている。この軸受機構150は、内側部材130に形成される内側部材壁部136と、外側部材140に形成される外側部材壁部146とによってY方向における両側から挟まれることにより、つまり、中心軸CLに沿った方向である中心軸CL方向における両側から挟まれることにより、内側部材壁部136と外側部材壁部146とによって中心軸CL方向における移動が規制されている。また、軸受機構150は、径方向において外側部材140の内周面145と内側部材130の外周面135との間に配置されている。
このうち、内側部材壁部136は、中心軸CL方向における内側部材130の端部方向を向く壁面として内側接続部134に形成されており、張力付与部121の中心軸CLを中心として周方向に沿って内側接続部134に形成されている。また、外側部材壁部146は、外側部材140の長さ方向における中心が位置する方向を向く壁面として外側接続部144に形成されており、張力付与部121の中心軸CLを中心として周方向に沿って外側接続部144に形成されている。
軸受機構150は、第一の方向を中心軸とする径方向における荷重を受けることが可能であり、内側部材130及び外側部材140を相対的に回転可能に支持することができればよく、ころがり軸受(ボールベアリング)でも、すべり軸受けでもよい。なお、本実施形態では、軸受機構150は、ころがり軸受(ボールベアリング)が用いられており、例えば、NTN株式会社製の深溝玉軸受が用いられる。このため、軸受機構150は、環状に形成された内輪153と、内輪153よりも大きな径の環状に形成されており、径方向における内輪153の外側に配設される外輪152と、外輪152と内輪153との間に配設される複数のボール154と、を有している。これにより、軸受機構150は、外輪152と内輪153とが相対回転可能になっている。
このように構成される軸受機構150は、内輪153の内周面のうち少なくとも一部が、内側接続部134の外周面135と接触するように配置されており、外輪152の外周面のうち少なくとも一部が、外側接続部144の内周面145と接触するように配置されている。つまり、内側接続部134における、軸受機構150が配設される部分は、外径が軸受機構150の内輪153の内径と同程度の径になっており、内輪153の内側の孔に挿入される。一方、外側接続部144における、軸受機構150が配設される部分は、内径が軸受機構150の外輪152の外径と同程度の径となる孔状になっており、軸受機構150は、この外側接続部144における孔状の部分に挿入される。
さらに、内側接続部134の内側部材壁部136は、内側接続部134における軸受機構150が配設される部分よりも、内側部材130の長さ方向における中心が位置する側に位置して、内側部材130の端部側に面している。また、内側部材壁部136の内径側の部分は、軸受機構150の内輪153の内径と同程度の径になっており、内側部材壁部136の外径側の部分は、軸受機構150の外輪152の内径よりも小さくなっている。このため、内側部材壁部136は、内側部材130の長さ方向における中心が位置する側から、軸受機構150に接触する。
一方、外側接続部144の外側部材壁部146は、外側接続部144における軸受機構150が配設される部分よりも、外側部材140の長さ方向における端部が位置する側に位置して、外側部材140の長さ方向における中心が位置する側に面している。また、外側部材壁部146の外径側の部分は、軸受機構150の外輪152の外径と同程度の径になっており、外側部材壁部146の内径側の部分は、軸受機構150の内輪153の外径よりも大きくなっている。このため、外側部材壁部146は、外側部材140の長さ方向における端部が位置する側から、軸受機構150に接触することが可能となる。
つまり、内側部材壁部136の外周面の少なくとも一部は、張力付与部121の長さ方向における中心が位置する側から軸受機構150の内輪153に接触し、外側部材壁部146は、張力付与部121の長さ方向における端部が位置する側から軸受機構150の外輪152に接触可能に配置されることにより、内側部材壁部136と外側部材壁部146とは、中心軸CL方向における両側から軸受機構150を挟み込み、中心軸CL方向における軸受機構150の移動を規制している。また、これらのように構成されることにより、内側部材130は、軸受機構150の内輪153と一体となって、外側部材140や軸受機構150の外輪152に対して相対回転し、外側部材140は、軸受機構150の外輪152と一体となって、内側部材130や軸受機構150の内輪153に対して相対回転することが可能になっている。
なお、図6では、軸受機構150は内側部材130及び外側部材140と隙間なく配置されているが、軸受機構150と内側部材130、軸受機構150と外側部材140の間には隙間が形成されていてもよい。つまり、内側部材壁部136と外側部材壁部146とが、隙間の有無を問わず、中心軸CL方向における両側から軸受機構150を挟み込み、中心軸CL方向における軸受機構150の移動を規制していればよい。
<バネ交換>
図9は、図2に示す支持アームと本体部材との連結部分の詳細図である。図10は、図9に示す支持アーム側カバーと本体部材側カバーとを取り除いた状態を示す斜視図である。巻取り側張力付与機構120が有する支持アーム122は、張力付与部材121側と反対側の端部側が、当該支持アーム122を回転自在に回転保持部170によって保持されている。この回転保持部170は、支持アーム122を支持する本体部材112と、支持アーム122を本体部材112に対して回転自在に連結する回転軸171と、により構成されている。回転保持部170を構成する回転軸171は、巻き取りローラ111の中心軸に対して鉛直方向下方となる位置付近に配設され、支持アーム122における張力付与部材121が位置する側の端部の反対側の端部を本体部材112に連結している。これにより、支持アーム122は、張力付与部材121側を搖動させることができるように、回転軸171を中心として回転可能になっている。
また、支持アーム122は、当該支持アーム122の揺動範囲を規制する規制部180により、回転軸171を中心とする回転が規制されており、規制部180は、支持アーム122が水平方向と一致しないように支持アーム122の揺動範囲を規制可能になっている。詳しくは、規制部180は、支持アーム122に取り付けられる支持アーム側バネ受け部181と、本体部材112に取り付けられる本体部材側バネ受け部190と、支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190との間に配設され、両端が支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190とに接触するバネ205と、を有している。また、規制部180は、支持アーム側バネ受け部181を覆う支持アーム側カバー221と、本体部材側バネ受け部190を覆う本体部材側カバー222とを有している。
規制部180を構成する部材のうち、バネ205は、コイル状に形成された、いわゆる圧縮バネが用いられており、バネ205の内側には、棒状の軸部材200が通される。この軸部材200は、支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190との間にバネ205を保持させることのできる部材になっている。本体部材112に取り付けられる本体部材側バネ受け部190には、軸部材200が通る挿通孔191が形成されており、支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190との間にバネ205を配置する際には、軸部材200は、本体部材側バネ受け部190の挿通孔191に通される。これにより、軸部材200は、支持アーム側バネ受け部181が位置する側の端部の反対側の端部側が、本体部材側バネ受け部190における、支持アーム側バネ受け部181が位置する側の反対側から突出する。
図11は、図10に示す支持アーム側バネ受け部の挿通孔から軸部材を抜いた状態を示す斜視図である。支持アーム122に取り付けられる支持アーム側バネ受け部181にも、本体部材側バネ受け部190と同様に、軸部材200が通る挿通孔182が形成されており、支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190との間にバネ205を配置する際には、軸部材200は、支持アーム側バネ受け部181の挿通孔182に通される。これにより、軸部材200は、本体部材側バネ受け部190が位置する側の端部の反対側の端部側が、支持アーム側バネ受け部181における、本体部材側バネ受け部190が位置する側の反対側から突出する。
ここで、軸部材200には、支持アーム側バネ受け部181側の端部寄りの位置に、軸部材200の軸方向に交差する方向に突出する係合ピン201が設けられており、支持アーム側バネ受け部181における挿通孔182には、係合ピン201が通る切欠きが形成されている。これにより、軸部材200が挿通孔182に挿通される際には、係合ピン201も挿通孔182に挿通されて挿通孔182を通過することが可能になっている。
支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190との間にバネ205を配置する際には、軸部材200を支持アーム側バネ受け部181の挿通孔182に挿通し、係合ピン201が、支持アーム側バネ受け部181における本体部材側バネ受け部190が位置する側の反対側に位置する状態で、支持アーム側バネ受け部181に係合部材210(図10参照)を取り付ける。係合部材210は、係合部材210に形成される係合切欠部211(図13参照)内に軸部材200を位置させ、且つ、係合ピン201と支持アーム側バネ受け部181との間に係合部材210が位置する状態で支持アーム側バネ受け部181に取り付ける。
支持アーム側バネ受け部181は、係合部材210を取り付けるための固定ネジ212(図10参照)用の係合部材用切欠部185が形成されており、係合部材210は、この係合部材用切欠部185に固定ネジ212を通すことにより支持アーム側バネ受け部181に取り付けられる。係合ピン201は、支持アーム側バネ受け部181に取り付けられた係合部材210と係合することにより、本体部材側バネ受け部190に向かう方向への移動が規制され、軸部材200は、支持アーム側バネ受け部181の挿通孔182から抜けなくなる。
図12は、図11に示す軸部材とバネの斜視図である。バネ205の内側に通される軸部材200は、外径がバネ205の内径よりも若干小さい程度の径で形成されている。この軸部材200には、係合ピン201の近傍に、外径が共に軸部材200の外径よりも大きい径で形成される略リング状の部材である、支持アーム側ストッパーリング202とバネ側ストッパーリング203とが設けられている。これらの支持アーム側ストッパーリング202とバネ側ストッパーリング203とは、共に係合ピン201よりも、本体部材側バネ受け部190側の端部側に配設されている。
このうち、支持アーム側ストッパーリング202とバネ側ストッパーリング203とのうち、支持アーム側ストッパーリング202は、係合ピン201寄りに配設されており、外径が支持アーム側バネ受け部181の挿通孔182の径よりも大きくなっている。これにより、軸部材200は、支持アーム側バネ受け部181の挿通孔182に、係合ピン201が配設されている側の端部側が挿通された際には、支持アーム側ストッパーリング202が支持アーム側バネ受け部181に当接することにより、挿通方向への軸部材200の移動が規制される。
一方、バネ側ストッパーリング203は、支持アーム側ストッパーリング202から見て、係合ピン201が位置する側の反対側に配設されており、外径がバネ205の内径よりも大きくなっている。このため、係合ピン201が位置する側の面の反対側の面がバネ205の一端側に当接することにより、バネ205の移動を規制することができる。換言すると、バネ側ストッパーリング203は、バネ205に当接することにより、バネ205からの付勢力を受けることが可能になっている。つまり、軸部材200は、バネ205から受ける付勢力を、支持アーム側ストッパーリング202と支持アーム側バネ受け部181とを介して、支持アーム122に伝達することが可能になっている。
本実施形態に係る印刷装置1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。印刷装置1では、例えば、布帛からなるメディアMに対してインクを吐出することにより、当該メディアMに画像を形成し、メディアMに対して印刷を行う。
本実施形態に係る印刷装置1を用いてメディアMに印刷を行う際には、まず、メディア繰出し機構4が有する繰り出しローラ81にメディアMをロール状に巻き付け、メディアMにおいてロール状の部分から引き出された部分を、メディア繰出し機構4側のガイドローラ101及び繰出し側張力付与機構90のテンションバー91に巻き掛け、プラテン6上に位置させる。その際に、繰出し側張力付与機構90のテンションバー91に対しては、テンションバー91における、メディア巻取り機構5が位置する側の反対側に位置する外周面、或いは下側に位置する外周面にメディアMを接触させる側から巻き掛ける。
プラテン6上のメディアMは、メディア搬送機構30が有する送りローラ31とピンチローラ36との間を通し、記録ヘッド60とインク受け部25との間を通した上で、引張ローラ7に巻き掛ける。引張ローラ7に巻き掛けたメディアMは、さらに、メディア巻取り機構5が有するガイドローラ161や、巻取り側張力付与機構120が有する張力付与部121に巻き掛け、巻き取りローラ111に巻き付ける。その際に、巻取り側張力付与機構120の張力付与部121に対しては、張力付与部121における、メディア繰出し機構4が位置する側の反対側に位置する外周面、或いは下側に位置する外周面にメディアMを接触させる側から巻き掛ける。
印刷装置1は、このようにメディア繰出し機構4やメディア巻取り機構5、メディア搬送機構30でメディアMを搬送可能な状態で、コントロールユニット70によって各部を制御して作動させることにより、メディアMをメディア繰出し機構4側からメディア巻取り機構5側に搬送しながら印刷を行う。具体的には、メディア繰出し機構4が有するステッピングモータ85を作動させることにより、繰り出しローラ81を回転させ、繰り出しローラ81に巻かれているメディアMをプラテン6側に送り出す。その際に、繰出し側張力付与機構90が自重によって、テンションバー91が、メディア巻取り機構5が位置する方向の反対方向に向かう方向にテンションバー91と支持アーム92とが揺動することにより、プラテン6上のメディアMには張力が発生する。
また、コントロールユニット70は、メディア搬送機構30が有するサーボモータ33を作動させることにより、プラテン6上のメディアMを、メディア支持部20側から引張ローラ7が位置する側に搬送する。引張ローラ7は、トルクリミッタ37を介して伝達されるモータ39からの駆動力により、所定の範囲内の大きさのトルクで回転し、外周面に巻き掛けられるメディアMをメディア巻取り機構5側に送出する。さらに、コントロールユニット70は、ステッピングモータ115を作動させて巻き取りローラ111を回転させることにより、引張ローラ7から送出されたメディアMを、巻取り側張力付与機構120やガイドローラ161を介して巻き取りローラ111で巻き取る。その際に、巻取り側張力付与機構120が自重によって、張力付与部121が、メディア繰出し機構4が位置する方向の反対方向に向かう方向に張力付与部121と支持アーム122とが揺動することにより、張力付与部121と引張ローラ7との間のメディアMに張力が発生し、プラテン6上のメディアMに張力が発生する。
メディアMの搬送は、このように張力を発生させながら、メディア繰出し機構4側からメディア巻取り機構5側に向けて搬送するが、メディアMに対する印刷は、搬送中のメディアMにおける、記録ヘッド60の下方を通過する部分に記録ヘッド60からインクを吐出することにより行う。つまり、コントロールユニット70によってサーボモータ53を作動させ、キャリッジ40をY方向に往復移動させながら、記録ヘッド60から、所望の画像に応じた任意の色のインクを吐出することにより、搬送中のメディアMに対して印刷を行う。なお、メディアMが布帛である場合には、印刷に用いたインクの一部はメディアMの厚さ方向にメディアMを通過することがあるが、メディアMを通過したインクは、記録ヘッド60の下方に配設されるインク受け部25で受けて貯留され、必要に応じてインク受け部25から外部に排出される。
メディアMにおける印刷が完了した後の部分は、当該メディアMが搬送させることにより順次巻き取りローラ111に巻き取られる。印刷装置1でメディアMに印刷を行う際には、メディアMを搬送する各部と、記録ヘッド60の動き及び記録ヘッド60からのインクの吐出を協調させながら、メディアMに対してインクを吐出することにより、所望の画像をメディアMに形成する。
メディアMに対して印刷を行う際に、これらのようにメディアMに対して張力を付与しながら行うが、巻取り側張力付与機構120が有する張力付与部121は、支持アーム122に固定される内側部材130と、軸受機構150が介在することにより内側部材130に対して相対回転をする外側部材140と、により構成されている。このため、巻取り側張力付与機構120は、メディアMに対して張力を付与することにより、張力付与部121の中心軸CLと直交する方向の力が張力付与部121に対して作用した場合でも、外側部材140は、内側部材130に対してスムーズに回転することができる。これにより、巻取り側張力付与機構120は、メディアMに対して張力を付与しつつ、外側部材140が回転することによって引張ローラ7側から巻き取りローラ111側にスムーズにメディアMを移動させることができる。また、外側部材140が回転することによって、メディアMと張力付与部121との摩擦を軽減できる。
なお、巻取り側張力付与機構120は、支持アーム122が回転保持部170によって本体部材112に対して回転自在に設けられているが、張力付与部121が下方に向かう方向の回転は、規制部180によって回転範囲が規制されている。つまり、規制部180が有するバネ205は、支持アーム122に設けられる支持アーム側バネ受け部181と、本体部材112に設けられる本体部材側バネ受け部190との間に配設され、双方が離れる方向の付勢力を双方に対して付与することが可能になっている。このため、巻取り側張力付与機構120は、巻取り側張力付与機構120の自重によって張力付与部121が位置する側が下方に向かう方向へ回転する際の回転力と、規制部180が有するバネ205からの付勢力とが釣り合う位置まで回転をする。巻取り側張力付与機構120は、このように規制部180によって回転が規制される範囲内で、自重によって張力付与部121が下方に向かう方向に回転をすることにより、メディアMに対して張力を付与する。
規制部180は、このようにバネ205の付勢力によって巻取り側張力付与機構120の回転を規制するが、本実施形態では、規制部180は、バネ205を交換することが可能になっている。このため、規制部180は、バネ定数が異なるバネ205を予め複数用意し、必要に応じてバネ205を交換することにより、支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190とに付与する付勢力を変更することができ、自重によって巻取り側張力付与機構120が回転する範囲を変更することができる。
図13は、規制部のバネを交換する際の説明図であり、係合部材を取り外した状態の斜視図である。規制部180のバネ205を交換する際には、まず、支持アーム側バネ受け部181に取り付けられている係合部材210を支持アーム側バネ受け部181から取り外す。係合部材210の取り外しは、係合部材210を支持アーム側バネ受け部181に取り付けている固定ネジ212を緩めることにより行う。係合部材210は、軸部材200に設けられている係合ピン201が、支持アーム側バネ受け部181に対して相対的に、本体部材側バネ受け部190が位置する側に移動することを規制している部材になっている。このため、係合部材210を取り外すことにより、係合ピン201は、支持アーム側バネ受け部181に対して相対的に、本体部材側バネ受け部190が位置する側に移動することが可能になる。
係合部材210を取り外したら、支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190との間隔が大きくなる方向に支持アーム122を回転させる。これにより、軸部材200を、係合ピン201と共に支持アーム側バネ受け部181の挿通孔182から引き出す(図11参照)。
図14は、図11に示す本体部材側バネ受け部の挿通孔から軸部材を抜いた状態を示す斜視図である。軸部材200を、支持アーム側バネ受け部181の挿通孔182から引き出したら、軸部材200に設けられる係合ピン201が本体部材側バネ受け部190から離れる方向に、軸部材200を移動させる。これにより、軸部材200を本体部材側バネ受け部190の挿通孔191から引き抜く。軸部材200を引き抜いたら、バネ205は、バネ側ストッパーリング203に当接している側の端部の反対側の端部の方向に移動させることができるため、軸部材200に対してバネ205を移動させることにより、軸部材200からバネ205を取り外す。
軸部材200からバネ205を取り外したら、取り外したバネ205とは異なるバネ定数によって形成されるバネ205を軸部材200に取り付け、取り外し時とは反対の順序で、軸部材200及びバネ205を支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190とに組み付ける。これにより、支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190とに対して付勢力を付与するバネ205を、バネ定数が異なるバネ205に変更することができ、支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190とに対して付与する付勢力を変更することができる。
このように、支持アーム側バネ受け部181と本体部材側バネ受け部190とに対して付与する付勢力を変更することにより、規制部180は、巻取り側張力付与機構120が自重によって回転する範囲を変更することができる。従って、例えばメディアMの材質や、メディアMの長さに応じてバネ205を交換することにより、巻取り側張力付与機構120によってメディアMに付与する張力を変更することができ、メディアMの材質等に応じてメディアMの張力を調節して印刷を行うことができる。
次に、巻取り側張力付与機構120が有する支持アーム122の好ましい角度θについて説明する。図15は、支持アームの角度についての模式図である。支持アーム122が水平方向に設けられている場合において、張力付与部121が設けられる側の端部E1に、鉛直方向下方への張力付与部121の重量W1が作用する場合に、回転保持部170側の端部Oに作用するモーメントは、支持アーム122の長さをL1とすると、(W1×L1)で表すことができる。一方、支持アーム122が角度θで上方に傾斜している場合には、回転保持部170側の端部Oに作用するモーメントは、張力付与部121が設けられる側の端部E2の水平方向上の位置と端部Oとの距離L2と、端部E2に作用する鉛直方向下方への張力付与部121の重量W2との積である(W2×L2)で表すことができる。
ここで、本実施形態に係る印刷装置1では、張力付与部121は、二重管によって形成されているため、張力付与部121が二重管ではない場合と比較して、張力付与部121自体の重量が重くなり易くなっている。このため、支持アーム122が水平方向に設けられるものは、張力付与部121は二重管ではないとし、支持アーム122が角度θで傾斜するものを、張力付与部121が本実施形態のように二重管であるとすると、W1<W2となる。
このように、張力付与部121を二重管にすることにより、張力付与部121の重量が変化する場合において、回転保持部170側の端部Oに作用するモーメントを等しくする場合には、下記の式(1)を満たす必要がある。
(W1×L1)=(W2×L2)・・・(1)
式(1)は、下記の式(2)のように変形することができる。
(W1/W2)=(L2/L1)・・・(2)
ここで、(L2/L1)=cosθであるため、(W1/W2)も下記の式(3)になる。
(W1/W2)=cosθ・・・(3)
このため、二重管ではない張力付与部121を基準として、メディアMへの張力や巻取り側張力付与機構120の強度を設定した場合において、張力付与部121を二重管にすることに起因して張力付与部121の重量が重くなった場合の支持アーム122の角度θは、(W1/W2)=cosθを満たす角度にするのが好ましい。
具体的には、二重管ではない張力付与部121は、内側部材130が支持アーム122間に配設されているとすると、張力付与部121の重量W1は、(内側部材130の重量)で表すことができる。これに対し、二重管の張力付与部121の重量W2は、(内側部材130の重量+外側部材140の重量+軸受機構150の重量)で表すことができるので、これらを上記の式(3)に当てはめると、下記の式(4)になる。従って、支持アーム122の角度θは、式(4)を満たす角度にするのが好ましい。
(内側部材130の重量)/(内側部材130の重量+外側部材140の重量+軸受機構150の重量)=cosθ・・・(4)
なお、内側部材130と(外側部材140+軸受機構150)の重量がおよそ同等である場合にはθ≒60°となる。
以上の実施形態に係る印刷装置1は、外側部材140の外側部材壁部146と、内側部材130の内側部材壁部136とで、中心軸CL方向における両側から軸受機構150を挟んで中心軸CL方向における軸受機構150の移動を規制するため、軸受機構150を確実に保持することができる。つまり、内側部材130と外側部材140の間に軸受機構150を設ける際に、例えば組み立て時に偏った力が作用すると、軸受機構150は、径方向以外の方向から力を受けることとなる。この場合、軸受機構150は、内側部材130と外側部材140との相対回転を確保するのが困難となることがある。これに対し、実施形態に係る印刷装置1では、外側部材壁部146と内側部材壁部136とで、中心軸CL方向における軸受機構150の両側から軸受機構150を挟み込み、中心軸CL方向における軸受機構150の移動を規制するため、軸受機構150を軸方向及び径方向において保持することができる。これにより、張力付与部121としての組み立て時や揺動動作などで、張力付与部121に予期せぬ力が作用した場合であっても、軸受機構150を確実に保持することができる。この結果、二重管を用いた張力付与部121の外側部材140と内側部材130との接触を防ぐことができ、外側部材140を回転管として内側部材130に対して回転自在に保持することができる。
また、張力付与部121を二重管にしているため、支持アーム122に内側部材130を固定接続することによってY方向両側の支持アーム122と内側部材130との剛性を確保し、支持アーム122の搖動時の動作性を確保しつつ、外側部材140が回転することによってメディアMをスムーズに搬送することができる。この結果、メディアMの状態に関わらずメディアMに対して適切な張力を付与しつつ、メディアMをスムーズに搬送することができる。
また、内側部材130は、円筒内管133を用いて構成されているため、重量を軽くすることができる。この結果、張力付与部121が重くなり過ぎることを抑制することができ、張力付与部121を二重管とした場合であっても、メディアMに対する張力付与が大きくなり過ぎることを抑制することができる。
また、内側部材130は、円筒内管133と内側接続部134とで構成し、内側部材壁部136は、内側接続部134に形成することにより、中心軸CL方向への軸受機構150の移動を規制するための内側部材壁部136を容易に形成することができる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
また、外側部材140は、円筒外管143と外側接続部144とで構成し、外側部材壁部146は、外側接続部144に形成することにより、中心軸CL方向への軸受機構150の移動を規制するための外側部材壁部146を容易に形成することができる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
また、内側部材130の円筒内管133と内側接続部134とは、圧入とノックピン137とによって固定接続されているため、円筒内管133と内側接続部134とが周方向にずれることを抑制できる。この結果、張力付与部121の剛性を確保することができるため、巻取り側張力付与機構120全体の剛性を確保でき、メディアMに対して、より適切に張力を付与することができる。
また、支持アーム122の搖動範囲を規制する規制部180を設けることにより、張力付与部121を二重管にすることによって張力付与部121の重量が重くなる場合においても、メディアMに対して付与する張力が重量の増加に伴って大きくなり過ぎることを抑制することができる。この結果、メディアMの搬送性を確保しつつ、メディアMに対してより確実に、適切な張力を付与することができる。
また、規制部180は、規制部180を構成するバネ205を交換することが可能になっているため、バネ定数が異なるバネ205を予め用意して、メディアMの性質に応じてバネ205を交換することにより、メディアMに対して付与する張力を、メディアMに合わせることができる。この結果、印刷するメディアMの性質に関わらず、メディアMに対してより確実に適切な張力を付与することができる。
また、支持アーム122の角度θが、(内側部材130の重量)/(内側部材130の重量+外側部材140の重量+軸受機構150の重量)=cosθを満たすようにすることにより、張力付与部121を二重管にすることによって張力付与部121の重量が重くなる場合においても、メディアMに対して付与する張力が重量の増加に伴って大きくなり過ぎることを抑制することができる。この結果、メディアMの搬送性を確保しつつ、メディアMに対してより確実に、適切な張力を付与することができる。
〔変形例〕
なお、上述した実施形態に係る印刷装置1では、巻取り側張力付与機構120が、二重管の張力付与部121を有し、バネ205を交換できる規制部180によって搖動範囲が規制されながら搖動可能になっているが、繰出し側張力付与機構90も同様の構成で構成されていてもよい。繰出し側張力付与機構90も同様の構成にすることにより、より確実に、メディアMの搬送性を確保しつつメディアMに対して適切な張力を付与することができる。
また、上述した実施形態に係る印刷装置1では、引張ローラ7やガイドローラ101、161が設けられているが、巻取り側張力付与機構120や繰出し側張力付与機構90のみでメディアMの張力を確保できる場合には、引張ローラ7、ガイドローラ101、161は、設けなくてもよい。引張ローラ7やガイドローラ101、161は、印刷装置1で印刷を行う可能性のあるメディアMに応じて、このメディアMに対して適切な張力を付与できる位置に設けたり、或いは設けなかったりしてもよい。