JP6544471B1 - 含浸装置および含浸方法並びに加工装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成の装置により、強化繊維束に均一に樹脂を含浸できるようにする。【解決手段】溶融槽2のほぼ中央に超音波印加手段を構成するホーン8を配置し、ホーン8により、強化繊維束であるCF(炭素繊維束)6に超音波振動を印加する。これにより、CF6の周辺の溶融樹脂4に超音波振動を受けさせて溶融樹脂4の温度を上昇させ、溶融樹脂4の粘度を低下させてCF6の各繊維(フィラメント)間に溶融樹脂4が良好にかつ一様に入り込み易くし、CF6に樹脂を均一に含浸させる。【選択図】図1

Description

本発明は、強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させる含浸装置および含浸方法、並びに、当該含浸装置により熱可塑性樹脂を含浸された強化繊維束を加工する加工装置に関する。
従来、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の一方向強化繊維束を開繊して拡幅することにより一方向に引き揃えた扁平な状態の帯状の繊維束に、ポリオレフィン系樹脂や脂肪族ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂を含浸させた一方向プリプレグが提供されている。また、開繊前の一方向強化繊維束に樹脂を含浸させてから開繊することもある。このとき、例えば特許文献1に記載のように、熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂中に一方向強化繊維束を通過させることにより、一方向プリプレグを形成することが提案されている。
特開2014−145038号公報(段落0005など)
ところで、特許文献1に記載のように溶融樹脂中に一方向強化繊維束を通過させる場合、溶融樹脂の粘度を下げるために溶融樹脂の温度を所定温度以上に保持する必要がある。しかし、溶融樹脂の温度を保持するには装置構成が大掛かりになってコストがかかる上、単に所定温度以上の溶融樹脂中に一方向強化繊維束を通過させるだけでは、一方向強化繊維束の各繊維(フィラメント)間に効率よく樹脂が入り込まないという現象が生じるため、各繊維(フィラメント)間で樹脂が浸透した箇所と浸透していない箇所が生じて一方向強化繊維束の含浸状態が不均一になるという問題がある。さらに、繊維(フィラメント)を網目状に織りこんで成るクロス材と称される強化繊維束を含浸する場合にも、従来、クロス材を溶融樹脂中に通過させて含浸するため、上記した問題と同様の問題が生じ得る。また、上記した従来の含浸手法では樹脂の含浸が不均一なため、強化繊維束を所定の形状の型材に巻き付けるなどして加工する場合には、型材に巻き付ける際に熱可塑性樹脂を再度塗布し、これを加熱圧力容器であるオートクレーブ内に収容して加圧加熱することが行われており、装置構成が大掛かりになり加工コストがかさむという問題がある。
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、簡単かつ安価な構成の装置により、強化繊維束に均一に樹脂を含浸できるようにすることを目的とする。また、含浸した強化繊維束を所望形状に加工できるようにすることも目的とする。
上記した目的を達成するために、本発明にかかる含浸装置は、強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させる含浸装置において、前記強化繊維束が内部に導入される導入部を有し導入された前記強化繊維束を外部に導出する導出口が形成され内部に熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂が充填される溶融槽と、前記導入部から導入された前記強化繊維束を、該強化繊維束が前記溶融樹脂に浸漬された状態で水平方向に前記導出口まで移動させる移動手段と、前記溶融樹脂に浸漬された前記強化繊維束に対し接触しない状態で垂直方向の超音波を印加して前記強化繊維束に樹脂を含浸させる超音波印加手段とを備え、前記溶融槽内の前記溶融樹脂は、熱可塑性樹脂の溶融温度以上で樹脂分解温度以下に保持されることを特徴としている。
この構成によれば、移動手段により、溶融槽内の熱可塑性樹脂の溶融樹脂に浸漬された状態で強化繊維束が移動され、移動中の強化繊維束に超音波印加手段により超音波振動が印加されると、超音波振動が印加される強化繊維束の周辺の溶融樹脂も超音波振動を受け、溶融樹脂の温度が超音波振動により上昇して強化繊維束の周辺で局所的に溶融樹脂の粘度が下がり、さらに強化繊維束が共振してぬれ性が向上し、強化繊維束を構成する各繊維(フィラメント)間に溶融樹脂が入り込み易くなる。このとき、溶融槽内の溶融樹脂の温度が、熱可塑性樹脂の溶融温度以上で樹脂分解温度以下に保持されるので、溶融樹脂を高品質に維持できる。そのため、従来のように溶融樹脂中に強化繊維束を通過させて含浸する場合のように溶融樹脂の温度管理のための大掛かりな装置を必要とせず、強化繊維束の各繊維(フィラメント)間に溶融樹脂を良好にかつ一様に入り込ませることができ、強化繊維束に均一に含浸することができる。
また、前記溶融槽の前記導出口の外側に設けられ、前記導出口から引き出される前記強化繊維束を上下から押圧する押圧手段をさらに備えるとよい。この構成によれば、溶融槽の導出口の外側において、押圧手段により強化繊維束を上下から押圧することにより、樹脂が含浸された強化繊維束の厚さを所定値に簡単に調整することができる。また、強化繊維束が一方向強化繊維であって開繊されていない場合であっても、一方向強化繊維束の含浸後に押圧手段により上下から押圧することで、含浸された樹脂が硬化する前に一方向強化繊維束を開繊することができる。
また、前記溶融槽内の前記溶融樹脂を外部に排出して前記溶融槽内の前記溶融樹脂を所定量保持する排出口が前記溶融槽に形成されていてもよい。この構成によれば、溶融槽内の溶融樹脂を常に新しいものに入れ替えて溶融槽内の溶融樹脂の劣化を防止することができる。
また、前記超音波印加手段は、上方および/または下方から前記強化繊維束に超音波を印加するようにしてもよい。この構成によれば、超音波印加手段の設置スペースに応じて、上方および/または下方から強化繊維束に超音波を印加できるように超音波印加手段を適宜配置することができ、汎用性に優れる。
また、前記強化繊維束が内部に導入される導入部を有し導入された前記強化繊維束を外部に導出する導出口が形成され内部に熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂が充填される溶融槽と、前記導入部から導入された前記強化繊維束を、該強化繊維束が前記溶融樹脂に浸漬された状態で前記導出口まで移動させる移動手段と、前記溶融槽の前記導出口の外側に配設され、前記溶融樹脂に浸漬されて前記導出口から導出される前記強化繊維束に超音波を印加して前記強化繊維束に付着した前記溶融樹脂を含浸させる超音波印加手段と備えていてもよい。この構成によれば、溶融槽内で溶融樹脂に浸漬されて導出口から溶融槽の外部に導出された強化繊維束に超音波印加手段により超音波を印加して、強化繊維束に付着した溶融樹脂にも超音波振動を与えて温度上昇させて粘度を下げることができ、付着した溶融樹脂を強化繊維束の各繊維(フィラメント)間に良好かつ一様に入り込ませることができ、強化繊維束に均一に含浸することができる。
また、前記溶融槽は、前記導入部および前記導出口を除いて密閉されているのが望まし く、さらに排出口がある場合には、導入部、導出口および排出口を除いて密閉されている とよい。こうすると、溶融槽内の溶融樹脂が空気に触れにくくなって酸化が抑制されるので、溶融樹脂の変質を確実に防止することができ、良質の熱可塑性樹脂を強化繊維束に含浸させることが可能になる。
また、本発明にかかる含浸方法は、強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸する含浸方法において、溶融層内に熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂を充填し、導入部から前記溶融槽内に前記強化繊維束を導入し、導入した前記強化繊維束を記溶融樹脂に浸漬した状態で、前記溶融槽に形成した導出口まで水平方向に移動し、前記溶融樹脂中において超音波印加手段により前記強化繊維束に対し接触しない状態で垂直方向の超音波を印加して前記強化繊維束に樹脂を含浸することを特徴としている。
この構成によれば、溶融槽内の熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂に浸漬された状態で移動中の強化繊維束に、超音波印加手段により超音波振動が印加されると、超音波振動が印加される一強化繊維束の周辺の溶融樹脂も超音波振動を受け、溶融樹脂の温度が超音波振動により上昇して強化繊維束の周辺で局所的に溶融樹脂の粘度が下がり、さらに強化繊維束が共振してぬれ性が向上し、強化繊維束を構成する各繊維(フィラメント)間に溶融樹脂が入り込み易くなるため、従来のように溶融樹脂中に強化繊維束を通過させて含浸する場合のように溶融樹脂の温度管理のための大掛かりな装置を必要とせず、強化繊維束の各繊維(フィラメント)間に溶融樹脂を良好にかつ一様に入り込ませることができ、強化繊維束に均一に含浸することができる。ここで、溶融槽内の溶融樹脂の温度が、熱可塑性樹脂の溶融温度以上で樹脂分解温度以下に保持されるので、溶融樹脂を高品質に維持できる。
また、前記溶融槽の外部において、前記導出口から引き出される前記強化繊維束を、押圧手段により上下から押圧するとよい。この構成によれば、溶融槽の導出口から引き出される強化繊維束を、押圧手段により上下から押圧することにより、樹脂が含浸された強化繊維束の厚さを所定値に簡単に調整することができる。また、強化繊維束が一方向強化繊維であって開繊されていない場合であっても、一方向強化繊維束の含浸後に押圧手段により上下から押圧することで、含浸された樹脂が硬化する前に一方向強化繊維束を開繊することができる。
また、溶融層内に熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂を充填し、導入部から前記強化繊維束を導入し、導入した前記強化繊維束を記溶融樹脂に浸漬した状態で、前記溶融槽に形成した導出口まで移動し、前記導出口の外側において超音波印加手段により前記強化繊維束に超音波を印加して前記強化繊維束に付着した前記溶融樹脂の含浸するようにしてもよい。この方法によれば、溶融槽内で溶融樹脂に浸漬されて導出口から溶融槽の外部に導出された強化繊維束に超音波印加手段により超音波を印加して、強化繊維束に付着した溶融樹脂にも超音波振動を与えて温度上昇させて粘度を下げることができ、付着した溶融樹脂を強化繊維束の各繊維(フィラメント)間に良好かつ一様に入り込ませることができ、強化繊維束に均一に含浸することができる。
また、熱可塑性樹脂を含浸された前記強化繊維束を加工する加工装置であって、前記強 化繊維束が内部に導入される導入部を有し導入された前記強化繊維束を外部に導出する導 出口が形成され内部に熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂が充填される溶融槽と、前記導入 部から導入された前記強化繊維束を、該強化繊維束が前記溶融樹脂に浸漬された状態で前 記導出口まで移動させる移動手段と、前記溶融樹脂に浸漬された前記強化繊維束に超音波 を印加して前記強化繊維束に樹脂を含浸させる超音波印加手段と、前記溶融槽の外部であって前記導出口付近に回転自在に配設された所定の外形形状を有する型材と、前記型材を回転させることにより、前記導出口から含浸済の前記強化繊維束を引き出して前記型材に巻き付ける巻付け手段とを備え、記型材の外形形状に応じた形状に前記強化繊維束を加工するとよい。こうすると、超音波振動により熱可塑性樹脂が均一に含浸された状態の強化繊維束を、巻付け手段によって型材に巻き付けることができるため、従来のように、巻き付け前に再度樹脂を塗布して含浸させる必要がなく、しかもオートクレーブを使用しなくても、均一に樹脂を含浸した強化繊維を巻付け手段により型材に巻き付けるだけで、強化繊維束を所定形状に加工することができ、簡単かつ安価な構成の装置により強化繊維束に加工を施すことができる。
また、前記巻付け手段により前記型材に巻き付ける前記強化繊維束の温度を検出する検出手段と、前記型材を移動させて前記導出口から前記型材までの距離を可変する距離可変手段と、前記検出手段による検出温度に基づき、含浸した熱可塑性樹脂の溶融温度以下に低下しないように、前記溶融槽内に充填する前記溶融樹脂の温度、前記巻付け手段による前記強化繊維束の前記導出口からの引出速度、および、前記距離可変手段による前記導出口から前記型材までの距離の少なくとも1つを制御する制御手段とさらに備えるのが望ましい。このような構成によれば、巻付け手段により強化繊維束を型材に巻き付ける際に、含浸した樹脂の温度を溶融温度以上に保持して巻き付けることができ、強化繊維束に含浸した樹脂を低い粘度のまま型材への巻き付けを行うことができるため、含浸した強化繊維束の巻き付け作業を容易に行うことが可能になる。
また、前記巻付け手段による含浸済の前記強化繊維束の巻き付け開始位置付近に配設され、含浸した熱可塑性樹脂の溶融温度以上に前記強化繊維束を加熱して余分な熱可塑性樹脂を溶かす加熱手段と、前記加熱手段の近傍に配設され、前記加熱手段の加熱により溶けた熱可塑性樹脂の溶滴を除去する除去手段とをさらに備えるとよい。この場合、巻き付け前の強化繊維束に付着した余分な熱可塑性樹脂を加熱手段の加熱によって溶かし、除去手段によって溶けた余分な熱可塑性樹脂の溶滴を吸引するなどして除去するため、型材に巻き付けた強化繊維束を良好な状態に仕上げることができる。
また、前記型材の形状は、円筒、角筒、円柱、角柱、円錐、角錐等の筒状、柱状の形状であり、前記強化繊維束の巻き付けが完了したのちに除去されるとよい。こうすると、型材に巻き付けられた強化繊維束を冷却するなどして含浸した樹脂を硬化させた後に、型材を除去することにより、型材の外形形状に応じた形状に加工された強化繊維束から成る所望形状の加工物を得ることができる。
本発明に係る含浸装置および方法によれば、超音波印加手段により、強化繊維束に超音波振動を印加することで、強化繊維束の周辺の溶融樹脂も超音波振動を受けて溶融樹脂の温度を上昇させてその粘度を低下させることができるため、強化繊維束を構成する各繊維(フィラメント)間に溶融樹脂が入り込み易くなり、従来のように溶融樹脂中に強化繊維束を通過させて含浸する場合のように溶融樹脂の温度管理のための大掛かりな装置を必要とすることなく、簡単かつ安価な構成の装置により、強化繊維束の各繊維(フィラメント)間に溶融した熱可塑性樹脂を良好にかつ一様に入り込ませることができ、強化繊維束に均一に含浸することができる。
本発明に係る加工装置によれば、従来のように、巻き付け前に再度樹脂を塗布して含浸させる必要がなく、しかもオートクレーブを使用しなくても、均一に樹脂願視した強化繊維を巻付け手段により型材に巻き付けるだけで、強化繊維束を所望形状に加工することができ、簡単かつ安価な構成の装置により強化繊維束に加工を施すことができる。
本発明の第1実施形態に係る含浸装置の概略を示す正面図である。 図1の平面図である。 図1の側面図である。 本発明の第2実施形態に係る含浸装置の概略を示す正面図である。 図4の一部の分解図である。 本発明の第3実施形態に係る含浸装置の一部の平面図である。 図6の正面図である。 本発明の第4実施形態に係る加工装置の概略図である。 図8の加工装置の斜視図である。 図8の加工装置による加工物の斜視図である。 本発明の第5実施形態に係る加工装置の概略図である。 図11に示す加工装置の変形例の概略図である。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る含浸装置について図1ないし図3を参照して説明する。
本実施形態における含浸装置1は、図1ないし図3に示すように構成されている。すなわち、図1ないし図3に示すように、上面が開口した直方体状の溶融槽2が設けられ、溶融槽2の対向する左右の側面にそれぞれ導入口(本発明における「導入部」に相当)2aおよび導出口2bが形成され、充填手段3により溶融槽2の内部に溶融樹脂4が充填される。この溶融樹脂4は、例えばポリオレフィン系樹脂や脂肪族ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂を溶融したものであり、溶融槽2内において溶融樹脂4の温度が、当該熱可塑性樹脂の溶融温度以上で樹脂分解温度以下に保持されている。さらに、溶融槽2の左側面の導出口2bの下方位置には、溶融樹脂4を外部に排出する排出口2cが形成され、排出口2cから溶融樹脂4が排出されることにより、溶融槽2内の溶融樹脂4の量がほぼ一定に保持される。
そして、溶融槽2の右方に配置されたCFボビン5には、本発明における強化繊維束である帯状の炭素繊維束(以下、CFという)6が巻回され、CFボビン5からCF6が引き出されて導入口2aを介して溶融槽2内に導入され、溶融槽2内に回転自在に配設された複数個のローラから成る移動手段7により、溶融槽2内に導入されたCF6が、途中で溶融樹脂4に浸漬された状態で導出口2bまで移動される。
また、溶融槽2のほぼ中央には、超音波印加手段を構成するホーン8が配置され、ホーン8の下端が溶融樹脂4に浸漬されたCF6に接触しないようにCF6から少し離れて(0mmより大きく10数mm以下)位置し、ホーン8による超音波振動により溶融樹脂4が加熱されて溶融樹脂4の粘度が低下され、粘度が低下した溶融樹脂4に浸漬されたCF6に樹脂が含浸され、溶融槽2の導出口2bの外側に設けられた押圧手段9により、導出口2bから引き出されるCF6が上下から所定の押圧力で押圧され、樹脂が含浸されたCF6が所定の厚さに調整されて一方向プリプレグ(UDテープ)が形成され、図1中の矢印方向に一方向プリプレグが移動される。ここで、超音波印加手段は、周知のように、上記したホーン8のほか該ホーン8が接続される超音波振動子等を備え、ホーン8が図1中の矢印のように上下動して位置調整可能に保持されている。
なお、CF6はすでに開繊された状態でCFボビン5に巻回されたものであっても、開繊されずにCFボビン5に巻回されたものであってもよく、開繊されていない場合には、溶融槽2の導出口2bの外側において、含浸された樹脂が硬化する前に押圧手段9によりCF6に上下から所定の押圧力を加えることによりCF6を開繊することができる。
ところで、溶融槽2の導出口2bの左方には、CF6を引っ張って溶融槽2で移動させる移動手段(図示省略)が配設され、溶融槽2内に配設された複数のローラ7a,7b,7c,7d,7eが、移動するCF6のガイドとしての役割を果たす。このとき各ローラのうち溶融槽2のほぼ中央であってホーン8を挟んで右側および左側に配設されたローラ7c,7dにより、CF6が下方に押し下げられて溶融樹脂4中に浸漬された状態で左方に移動されるCF6に所定のテンションがかけられ、テンションがかけられた状態でホーン8の上下位置が調整されてホーン8の下端がCF6の少し上方の位置に配置され、ホーン8によりCF6に上下方向への超音波振動が印加される。
そして、ホーン8が上下動されてその下端位置が調整され、溶融樹脂4中に浸漬されて所定のテンションがけられた状態のCF6から上方に所定距離離れた位置にホーン8の下面が配置された状態で、ホーン8によりCF6に超音波振動が印加されるとともに、CF6の周辺の溶融樹脂4も超音波振動を受けて温度上昇して粘度が低下し、超音波振動によりCF6が共振してぬれ性が向上し、溶融樹脂4中を移動されるCF6の各繊維(フィラメント)間に溶融樹脂4の樹脂が良好かつ一様に入り込んで含浸される。その後、含浸されたCF6が順次溶融槽2の導出口2bから外部に導出され、導出口2bの外側で含浸されたCF6が押圧手段9により所定圧力で押圧され、さらに移動手段により図1中の矢印で示す左方に移動される。このとき、CF6は図示省略の冷却手段により冷却されて含浸された樹脂が硬化された状態で引き取られる。
ところで、強化繊維束は上記したCF(炭素繊維束)6に限らず、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維により形成されていてもよい。また、溶融樹脂4として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂や、脂肪族ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂などのマトリックス樹脂を用いるのが望ましく、溶融槽2内の溶融樹脂4が硬化しない溶融温度以上で、かつ、高温により溶融樹脂4の酸化反応が進んで重量減少が生じる樹脂分解温度以下の温度に保持するために、溶融槽2の前後の側面および上面などにヒータを配設して溶融樹脂4の温度を管理できるようにするとよい。
また、ホーン8は、その共振周波数が約15kHz〜約60kHz、その振動振幅が約2μm〜約300μmとなるように構成するのが望ましく、ホーン8の材質としては、チタン、チタン合金、鉄、ステンレス、アルミニウム、ジュラルミン等のアルミニウム合金など、一般的に超音波用共振器を形成するのに用いられる種々の金属材料を使用するとよい。
したがって、上記した第1実施形態によれば、ホーン8により、一方向強化繊維束であるCF6に超音波振動を印加することで、CF6の周辺の溶融樹脂4が超音波振動を受け、CF6の周辺の溶融樹脂4の温度を超音波振動により局所的に上昇させてその粘度を低下させることができ、さらにCF6も超音波振動に共振してぬれ性が向上するため、CF6を構成する各繊維(フィラメント)間に粘度が低下した溶融樹脂4が入り込み易くなり、従来のように溶融樹脂中に一方向強化繊維束を通過させて含浸する場合のように溶融樹脂4の温度管理のための大掛かりな装置を必要とすることなく、簡単な構成の装置により、CF6の各繊維(フィラメント)間に溶融樹脂を良好にかつ一様に入り込ませることができ、CF6に均一に樹脂を含浸することができる。
また、溶融槽2の導出口2bの外側において、押圧手段9によりCF6を上下から押圧するため、樹脂が含浸されたCF6の厚さを所定値に簡単に調整することができる。さらに、CF6が開繊されない状態で樹脂含浸される場合であっても、CF6の含浸後に押圧手段9により上下から押圧することで、含浸された樹脂が硬化する前にCF6を開繊することができる。
さらに、溶融槽2に排出口2cを形成したことにより、溶融槽2内の溶融樹脂4を常に新しいものに入れ替えて溶融槽2内の溶融樹脂4の劣化を防止することができる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る含浸装置について図4および図5を参照して説明する。
本実施形態におけるに示す含浸装置11が上記した第1実施形態と異なるのは、図4、図5に示すように、直方体状を成す溶融槽2の下面から、超音波印加手段を構成するホーン12が溶融槽2内に挿入されて溶融槽2内の溶融樹脂4に浸漬された状態の強化繊維束であるCF6に下方から超音波振動を印加するようにした点である。なお、溶融槽2は直方体状に限らない。
より詳細には、図4、図5に示すように、溶融槽2の下面には矩形状の開口2dが形成され、この開口2dに筒体13が溶接され、筒体13と押えプレート14とによりホーン12の外周に設けられたフランジ12aが挟持され、ホーン12の上半部が溶融槽2内に挿入された状態でホーン12が溶融槽2に取り付けられている。
このとき、筒体13の上半部の外周が一部切削されて外側段部13aが形成され、この外側段部13aが溶融槽2の下面の開口2dの周縁に当接するように、筒体13の上半部が開口2dに挿入され、溶融槽2の下面と筒体13との嵌め合い部分が溶接されることにより筒体13が溶融槽2の下面に取り付けられる。さらに、筒体13の内周が下面側から一部切削されて内側段部13bが形成され、ホーン12の外周のフランジ12aがその上面に貼付されたパッキン15aを介して内側段部13bに当接して配置される。
そして、内側段部13bにフランジ12aが当接されたホーン12に対して、押えプレート14の開口14aにホーン12の下半部が挿入されるようにして押えプレート14が配置され、押えプレート14の上面が筒体13の下面に当接されるとともに、ホーン12のフランジ12aがその下面に貼付されたパッキン15bを介して押えプレート14の上面に当接され、フランジ12aの外側位置で、複数個のボルト16により押えプレート14が筒体13に結合され、ホーン12が水密状態で溶融槽2の下面に取り付けられている。
ここで、ホーン12のフランジ12aは、ホーン12の上下方向の振幅がゼロになるノーダルポイントに設けられており、ノーダルポイントに設けられたフランジ12aを筒体13に固定することで、ホーン12が振動してもフランジ12aや筒体13が振動して変位することはなく、ホーン12の振動が溶融槽2に伝達されることはない。
ところで、溶融槽2内のローラ7c,7dは、図4に示すように、溶融槽2内に挿入されたホーン12の右側、左側に位置し、両ローラ7c,7dにより下方に押し下げられて所定のテンションがCF6にかかるように両ローラ7c,7dが配設されるとともに、そのテンションや、CF6とホーン12の上面との間の距離が調整できるように、両ローラ7c,7dが上下動可能に配設されている。
こうして、CF6にテンションがかけられた状態でホーン12の上端がCF6から少し離れて(0mmより大きく10数mm以下)配置され、ホーン12によりCF6付近に上下方向への超音波振動が印加され、CF6付近に超音波振動を印加することで、CF6の周辺の溶融樹脂4が超音波振動を受け、CF6の周辺の溶融樹脂4の温度を超音波振動により局所的に上昇させてその粘度を低下させることができ、さらにCF6が超音波振動に共振することによりぬれ性を向上させることができ、CF6が各繊維(フィラメント)間に溶融樹脂4を良好にかつ一様に入り込み、CF6に均一に樹脂を含浸することができる。
したがって、上記した第2実施形態によれば、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。加えて、設置スペースの制約から、ホーン12を溶融槽2の上面側から溶融槽2内に挿入することができない場合に、図4、図5に示すように、溶融槽2の下面側からホーン12を溶融槽2内に挿入することができて有効である。
(変形例)
ところで、第1、第2実施形態の変形例として、図1、図4中に2点鎖線で示すように、溶融槽2の導出口2bの外側であって超音波印加手段20をホーン8,12に代えて設けてもよい。この超音波印加手段20は、超音波振動子に共振するホーン20aと、導出口2bから導出されるCF6を下方から支持する支持体20bとを備える一般的な構成でよい。こうすると、CFボビン5に巻回されたCF6が開繊されていない場合に、超音波印加手段20により超音波を印加することにより、樹脂が含浸されたCF6を開繊することができる。なお、この場合、押圧手段9は必ずしも必要ではなく押圧手段9を設けなくてもよいが、超音波印加手段20のCF6の移動の下流側に押圧手段9を並設してもよい。
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る含浸装置について図6、図7を参照して説明する。本実施形態に係る含浸装置11aにおいて、上記した第1実施形態と相違するのは、図1に示す溶融槽2の上面開口を閉塞した密閉型の溶融槽とした点である。
すなわち、図6、図7において、31は左右方向に長尺の直方体状の溶融槽であり、内部に左右方向の空間31aが形成され、熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂37が、図6、図7中の細線矢印に示すように空間31aを右から左方向に通流するとともに、強化繊維束である帯状のCF(炭素繊維束)32が、図6、図7中の太線矢印に示すように空間31aを右から左方向に移動される。さらに、空間31aにCF32を導入するための導入路(本発明の導入部)31bが、溶融槽31の上面右端部に斜め左下方に向かい傾斜して空間31aに連通するように形成されるとともに、溶融樹脂37が充填される充填口31cが、溶融槽31の右側面に空間31aに連通するように形成され、含浸したCF32を外部に導出するための導出口31dが、溶融槽31の左側面に空間31aに連通するように形成され、超音波印加手段を構成するホーン33を空間31aに挿入するための挿入開口31eが、溶融槽31の上面中央部に空間31aに連通するように形成されている。
ここで、挿入開口31eに挿入されるホーン33の外周には2個のOリング34が装着され、これら両Oリング34が挿入開口31eの上下端部に位置するように配設され、水密状態でホーン33が挿入開口31eに挿入され、ホーン33の下端が空間31a内に配置される。また、溶融槽31の右端部には上、下流路31c1,31c2の2つの流路が形成されており、上流路31c1および下流路31c2の2つの流路を介して充填口31cが空間31aに連通され、充填口31cから充填される溶融樹脂37が上、下流路31c1,31c2を通流されて導入路31bの下端の左方で合流するように、上、下流路31c1,31c2が配設されている。
空間31a内であって、導入路31bの下端の左方および導出口31dの右方にはCF32の移動をガイドする前後方向の円柱状ガイド体35a,35bが配設され、これらのガイド体35a,35bによりガイドされるCF32の上方であってCF32に接触しない位置(0mmより大きく10数mm以下の距離の位置)にホーン33の下端が配設されて、ホーン33の超音波振動によりCF32近傍の溶融樹脂37が加熱されてその粘度が低下され、粘度が低下した溶融樹脂37に浸漬されたCF6に樹脂が含浸される。このとき、CF32がホーン33の超音波振動に共振してぬれ性が向上する。
ところで、導出口31dは、外部に向かうに連れて次第に窄まるように形成され、溶融槽31の左側面であって導出口31dの外部には開口36aを有するアタッチメント36が取り付けられ、このときの開口36aは、CF32に付着した余分な樹脂を除去しつつCF32を所定の断面形状に成形できる寸法に設定され、このアタッチメント36の開口36aから含浸されたCF32が開口36aによる所定の断面形状に成形されて外部に導出される。なお、アタッチメント36の開口36aからはCF32の導出に伴って空間31a内の溶融樹脂37が外部に漏出するようになっており、開口36aから漏出される溶融樹脂37がアタッチメント36の下方に設置された貯留容器38に貯留される。
このように、溶融槽31は、導入路31b、充填口31c、導出口31dおよび挿入開口31eを除いて密閉されているため、溶融槽31内に充填された溶融樹脂が空気に触れにくくなり、しかも充填口31cを介して空間31a内に充填された溶融樹脂37を、溶融温度以上で、かつ、高温により樹脂の酸化反応が進んで重量変化が始まる樹脂分解温度以下の温度に精度よく保持することができ、溶融樹脂37の変質を防止することが可能になる。
したがって、上記した第3実施形態によれば、溶融槽31内の溶融樹脂37が空気に触れにくくなって酸化を抑制でき、溶融槽31内の溶融樹脂37の温度を、溶融温度以上で樹脂分解温度以下に精度よく保持することができるので、溶融樹脂の変質を防止して良質の熱可塑性樹脂を強化繊維束に含浸させることができる。
なお、溶融槽31の上面や左右側面は、着脱可能な構成であってもよい。また、溶融槽31の形状は図6、図7に示すものに限られるものではなく、溶融槽内部の溶融樹脂が空気に触れにくくなるように密閉される形状であればよい。
例えば、上記した第1、第2実施形態では一方向強化繊維束であるCF6に含浸する場合について説明したが、繊維(フィラメント)を網目状に織り込んで成るクロス材と称される強化繊維束や、その他の強化繊維束を含浸する場合にも、上記した含浸装置1,11を適用することが可能である。このとき、クロス材は開繊する必要がない。また、強化繊維束である帯状のCF(炭素繊維束)6に代えて、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維束を含浸することもできる。
また、上記した第1および第2実施形態では、溶融槽2の右側面に導入口(導入部)を設けた場合について説明したが、溶融槽2の開口した上面右端部を導入部として、CF6等の強化繊維束を溶融槽2内に導入するようにしてもよい。
また、上記した第1ないし第3実施形態において、設置スペースの関係で、超音波印加手段のホーンを溶融槽2,31の側面から溶融槽2,31内に挿入するようにしてもよい。
また、上記した第1ないし第3実施形態において、溶融槽2の導出口2bの外側や内側に成形手段を設け、導出口2b,31dやアタッチメント36の開口36aから溶融槽2,31の外部に導出される含浸済のCF(強化繊維束)6,32を、例えば垂直断面が逆T字状などの所定形状に成形するようにしてもよい。このとき、導出口2b,31dやアタッチメント36の開口36aの形状を成形すべき断面形状に形成しておくとよい。
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態に係る加工装置について、図8ないし図10を参照して説明する。本実施形態における加工装置40は、例えば上記した図6、図7に示す第3実施形態の構成を有する含浸装置11aにより熱可塑性樹脂を含浸されたCF32(強化繊維束)を加工するものとして説明する。
図8に示すように、密閉型の溶融槽31の導出口31dおよびアタッチメント36の開口36aを経て外部に導出される含浸済みのCF(炭素繊維束)32を巻き取る型材41が溶融槽31の外部であって導出口31dに設けられたアタッチメント36の開口36a付近に回転自在に配設され、図9に示すコントローラ42により制御される巻付け手段43により型材41が所定の回転速度vで回転されることにより、溶融槽31の導出口31dおよびアタッチメント36の開口36aからCF32が引き出されて型材41に巻き付けられていく。ここで、型材41は、例えば中実の円柱形状または中空の円柱形状を有し、巻付け手段43により、型材41の溶融槽31のアタッチメント36からの距離L(図8参照)を変更できるように、型材41が図示省略の距離可変手段により移動自在に支持されている。
さらに、型材41の回転軸41aが平面視でCF32に対して90度ではない所定の角度を成すように型材41が配設されており、この状態で型材41が回転することにより、型材41の外周に斜めにCF32が巻き付けられ、型材41の外周に1層目のCF32の巻き付けが終了すると、CF32に対して1層目の回転軸41aの角度と対称な角度になるように巻付け手段43により型材41の向きが変更され、この状態で型材41の外周にCF32が巻き付けられることにより、1層目に巻き取られたCF32に対して斜めに重なるように2層目のCF32が巻き付けられ、型材41の外周に2層目のCF32が巻き付けられると、CF32に対して2層目の回転軸41aの角度と対称な角度つまり1層目と同じ回転軸41aの角度になるように型材41の向きが変更され、この状態で型材41の外周に3層目のCF32が巻き付けられ、以後、同様の動作の繰り返しにより、型材41の外周にCF32が多層に巻き付けられる。
その後、型材41ごと多層に巻き取られ他CF32を冷却して含浸樹脂を硬化させ、除去手段により型材41を除去することにより、図10に示すように、型材41の外形形状に応じた円筒状を有する加工物Pが形成される。なお、型材41は、除去し易い材料により形成するのが望ましく、例えば紫外線照射手段により紫外線を照射することによって分解可能な材料により型材41を形成することなどが考えられる。
ところで、図9に示すように、型材41にCF32を巻き付け開始する位置において、CF32の温度が非接触式の温度センサである放射温度計(本発明の検出手段に相当)44により検出され、放射温度計44の検出結果に基づき、巻き付け開始位置において、CF32に含浸された溶融樹脂の温度が、当該溶融樹脂を成す熱可塑性樹脂の溶融温度以上であるかどうかコントローラ42により判定され、巻き付け開始位置で、CF32に含浸された溶融樹脂の温度が溶融温度以上に保持されるように、溶融槽31内に充填する溶融樹脂の温度、型材41とアタッチメント36のとの間の距離L、および、巻付け手段43によるCF32のアタッチメント36からの引出速度を規定する巻付け手段43による型材41の回転速度vの少なくとも1つがフィードバック制御される。このように、コントローラ42の機能が本発明の制御手段に相当する。
なお、型材41の外形形状を上記した円柱ではなく、円筒、角柱や角筒、円錐や角錐など、形成される加工物Pの形状に合わせて型材41の外形形状を選択することにより、多様な形状の加工物Pを得ることができる。
したがって、上記した第4実施形態の加工装置40によれば、超音波振動により熱可塑性樹脂の溶融樹脂が均一に含浸された状態のCF32を、巻付け手段43によって型材41に巻き付けることができるため、従来のように、巻き付け前に再度樹脂を塗布して含浸させる必要がなく、しかもオートクレーブを使用しなくても、均一に樹脂を含浸したCF32を巻付け手段43により型材41に巻き付けるだけで、CF32を所望の形状に加工することができ、簡単かつ安価な構成の装置によりCF32に加工を施すことができる。
また、巻付け手段43によりCF32を型材41に巻き付ける際に、含浸した樹脂の温度を溶融温度以上にし、樹脂の粘度を低い状態に保持して型材41への巻き付けを行うことができるため、含浸したCF32の巻き付け作業を容易に行うことが可能になる。
また、型材41に巻き付けられたCF32全体を冷却するなどして含浸した樹脂を硬化させた後に、型材41を除去することにより、型材41の外形形状に応じた形状に加工されたCF32から成る所望形状の加工物Pを得ることが可能になる。
なお、上記した第4実施形態では、図6、図7に示す第3実施形態の構成を有する含浸装置11aにより熱可塑性樹脂を含浸されたCF32を加工する場合について説明したが、図1ないし図3に示す第1実施形態の含浸装置1や、図4および図5に示す第2実施形態の含浸装置11により熱可塑性樹脂が含浸されたCF32を加工するようにしてもよいのは勿論である。
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態に係る加工装置について、図11を参照して説明する。
溶融槽31から導出されたばかりのCF32の表面には余分な溶融樹脂が粒状に多数付着しているため、CF32の表面は凸凹しており、CF32の表面をできるだけ滑らかにしてから型材41に巻き付けることによって、加工物をより良好な状態に仕上げることができる。
そこで、本実施形態における加工装置40aでは、型材41へのCF32の巻き付け開始位置に、加熱手段である超音波振動装置のホーン45を配置し、型材41に巻き付けられるCF32に付着している余分な溶融樹脂をホーン45の超音波振動による加熱によって溶かし、除去手段である真空吸引手段46を型材41へのCF32の巻き付けの上流側に配置し、真空吸引手段46によって溶けた余分な樹脂の溶滴47を吸引して除去するようにしている。このとき、真空吸引手段46は、型材41へのCF32の巻き付けの下流側に配置してもよい。
このように、第5実施形態によれば、型材41へのCF32の巻き付け開始位置において、ホーン45の超音波振動による加熱によりCF32に付着した余分な樹脂を溶かし、真空吸引手段46によって溶けた余分な樹脂の溶滴47を吸引して除去することにより、型材41に巻き付けたCF32を良好な状態に仕上げることが可能になる。
(変形例)
本発明の第5実施形態に係る加工装置40aの変形例について図12を参照して説明する。この変形例では、図12に示すように、型材41へのCF32の巻き付け開始位置に、ホーン45および真空吸引手段46に加えて冷却手段48を配置している。この場合、冷却手段48を、真空吸引手段46よりもさらにCF32の巻き付け上流側に配置し、型材41に巻き付けられるCF32を一旦冷却して、CF32に含浸した樹脂およびCF32の表面に突出して付着した樹脂を硬化させた後、ホーン45の超音波振動による加熱によってCF32の表面に突出して付着した余分な樹脂が溶融され、真空吸引手段46により溶融された樹脂の溶滴47が吸引される。
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
例えば、溶融樹脂として使用する熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂や脂肪族ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等を挙げたがこれに限られるものではなく、その他の熱可塑性樹脂を使用してもよい。
また、第4実施形態における放射温度計44に代えて、サーモグラフィその他の非接触式温度センサを検出手段として設けてもよい。
また、上記した第5実施形態の加工装置40において、放射温度計44を設けない構成であってもよい。この場合、巻付け手段43によるCF32のアタッチメント36からの引出速度を規定する巻付け手段43による型材41の回転速度vのみがコントローラ42により制御される。
そして、強化繊維束に樹脂を含浸する含浸装置および含浸方法並びに加工装置に本発明を広く適用することができる。
1,11,11a …含浸装置
2 …溶融槽
2a …導入口(導入部)
2b …導出口
4 …溶融樹脂
6 …CF(強化繊維束)
8,12 …ホーン(超音波印加手段)
9 …押圧手段
20 …超音波印加手段
31 …溶融槽
31d …導入路(導入部)
32 …CF(強化繊維束)
33 …ホーン(超音波印加手段)
37 …溶融樹脂
40,40a …加工装置
41 …型材
42 …コントローラ(制御手段)
43 …巻付け手段
44 …放射温度計(検出手段)
45 …ホーン(加熱手段)
46 …真空吸引手段(除去手段)

Claims (15)

  1. 強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させる含浸装置において、
    前記強化繊維束が内部に導入される導入部を有し導入された前記強化繊維束を外部に導出する導出口が形成され内部に熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂が充填される溶融槽と、
    前記導入部から導入された前記強化繊維束を、該強化繊維束が前記溶融樹脂に浸漬された状態で水平方向に前記導出口まで移動させる移動手段と、
    前記溶融樹脂に浸漬された前記強化繊維束に対し接触しない状態で垂直方向の超音波を印加して前記強化繊維束に樹脂を含浸させる超音波印加手段とを備え、
    前記溶融槽内の前記溶融樹脂は、熱可塑性樹脂の溶融温度以上で樹脂分解温度以下に保持されることを特徴とする含浸装置。
  2. 前記溶融槽の前記導出口の外側に設けられ、前記導出口から引き出される前記強化繊維束を上下から押圧する押圧手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の含浸装置。
  3. 前記溶融槽内の前記溶融樹脂を外部に排出して前記溶融槽内の前記溶融樹脂を所定量保持する排出口が前記溶融槽に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の含浸装置。
  4. 前記超音波印加手段は、上方および/または下方から前記強化繊維束に超音波を印加することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の含浸装置。
  5. 強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させる含浸装置において、
    前記強化繊維束が内部に導入される導入部を有し導入された前記強化繊維束を外部に導出する導出口が形成され内部に熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂が充填される溶融槽と、
    前記導入部から導入された前記強化繊維束を、該強化繊維束が前記溶融樹脂に浸漬された状態で前記導出口まで移動させる移動手段と、
    前記溶融槽の前記導出口の外側に配設され、前記溶融樹脂に浸漬されて前記導出口から導出される前記強化繊維束に超音波を印加して前記強化繊維束に付着した前記溶融樹脂を含浸させる超音波印加手段と
    備えることを特徴とする含浸装置。
  6. 前記溶融槽は、前記導入部および前記導出口を除いて密閉されていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項1または2に従属する請求項4、請求項5のいずれか1項に記載の含浸装置。
  7. 前記溶融槽は、前記導入部、前記導出口および前記排出口を除いて密閉されていること を特徴とする請求項3または請求項3に従属する請求項4に記載の含浸装置。
  8. 強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸する含浸方法において、
    溶融層内に熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂を充填し、
    導入部から前記溶融槽内に前記強化繊維束を導入し、
    導入した前記強化繊維束を記溶融樹脂に浸漬した状態で、前記溶融槽に形成した導出口まで水平方向に移動し、
    前記溶融樹脂中において超音波印加手段により前記強化繊維束に対し接触しない状態で 垂直方向の超音波を印加して前記強化繊維束に樹脂を含浸する
    ことを特徴とする含浸方法。
  9. 前記溶融槽の外部において、前記導出口から引き出される前記強化繊維束を、押圧手段により上下から押圧することを特徴とする請求項記載の含浸方法。
  10. 強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸する含浸方法において、
    溶融層内に熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂を充填して当該溶融樹脂を熱可塑性樹脂の溶融温度以上で樹脂分解温度以下に保持し、
    導入部から前記溶融槽内に前記強化繊維束を導入し、
    導入した前記強化繊維束を記溶融樹脂に浸漬した状態で、前記溶融槽に形成した導出口まで移動し、
    前記導出口の外側において超音波印加手段により前記強化繊維束に超音波を印加して前記強化繊維束に付着した前記溶融樹脂を含浸する
    ことを特徴とする含浸方法。
  11. 熱可塑性樹脂を含浸された強化繊維束を加工する加工装置であって、
    前記強化繊維束が内部に導入される導入部を有し導入された前記強化繊維束を外部に導 出する導出口が形成され内部に熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂が充填される溶融槽と、
    前記導入部から導入された前記強化繊維束を、該強化繊維束が前記溶融樹脂に浸漬され た状態で前記導出口まで移動させる移動手段と、
    前記溶融樹脂に浸漬された前記強化繊維束に超音波を印加して前記強化繊維束に樹脂を 含浸させる超音波印加手段と、
    前記溶融槽の外部であって前記導出口付近に回転自在に配設された所定の外形形状を有 する型材と、
    前記型材を回転させることにより、前記導出口から含浸済の前記強化繊維束を引き出し て前記型材に巻き付ける巻付け手段とを備え、
    前記型材の外形形状に応じた形状に前記強化繊維束を加工することを特徴とする加工装 置。
  12. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の含浸装置により熱可塑性樹脂を含浸された前記強化繊維束を加工する加工装置であって、
    前記溶融槽の外部であって前記導出口付近に回転自在に配設された所定の外形形状を有する型材と、
    前記型材を回転させることにより、前記導出口から含浸済の前記強化繊維束を引き出して前記型材に巻き付ける巻付け手段とを備え、
    前記型材の外形形状に応じた形状に前記強化繊維束を加工することを特徴とする加工装置。
  13. 前記巻付け手段により前記型材に巻き付ける前記強化繊維束の温度を検出する検出手段と、
    前記型材を移動させて前記導出口から前記型材までの距離を可変する距離可変手段と、
    前記検出手段による検出温度に基づき、含浸した熱可塑性樹脂の溶融温度以下に低下しないように、前記溶融槽内に充填する前記溶融樹脂の温度、前記巻付け手段による前記強化繊維束の前記導出口からの引出速度、および、前記距離可変手段による前記導出口から前記型材までの距離の少なくとも1つを制御する制御手段と
    さらに備えることを特徴とする請求項11または12に記載の加工装置。
  14. 前記巻付け手段による含浸済の前記強化繊維束の巻き付け開始位置付近に配設され、含浸した熱可塑性樹脂の溶融温度以上に前記強化繊維束を加熱して余分な熱可塑性樹脂を溶かす加熱手段と、
    前記加熱手段の近傍に配設され、前記加熱手段の加熱により溶けた熱可塑性樹脂の溶滴を除去する除去手段と
    をさらに備えることを特徴とする請求項13に記載の加工装置。
  15. 前記型材の形状は、円筒、角筒、円柱、角柱、円錐、角錐等の筒状、柱状の形状であり、前記強化繊維束の巻き付けが完了したのちに除去されることを特徴とする請求項11な いし14のいずれか1項に記載の加工装置。
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