JP6544370B2 - 往復動ピストンエンジン - Google Patents

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Description

本発明は、ピストン及びクランク機構を備えた往復動ピストンエンジンに関する。
往復動ピストンエンジンは、気筒内を往復動するピストンと、当該ピストンの往復動を回転運動に変換するクランク機構とを備える。このクランク機構は、クランクピン及びクランクジャーナル(主軸)からなるクランク軸と、該クランク軸とピストンとを連結するコンロッドとを備え、複数種の軸受け構造部を含む。具体的には、前記軸受け構造部として、コンロッドの大端部とクランクピンとの結合部、クランクジャーナルのロアシリンダブロックによる軸支部などが挙げられる。これら軸受け構造部では、軸受け部材の内周面(例えば、コンロッド大端部の内周面)と軸部材の外周面(クランクピンの外周面)とが、互いに対峙する摺動面となる。
上記摺動面の摩擦抵抗を可及的に低減することで、エンジンの燃費性能及び出力性能を一層向上させることができる。摩擦抵抗の低減手段として、特許文献1には、互いに対峙する摺動面に、CVDダイヤモンド等のコーティング処理及び鏡面研磨処理などの摩擦低減処理を施し、軸部材又は軸受け部材の相対速度が所定値以上となったときに、その一方を他方に対して浮揚させる方法が開示されている。この場合、前記浮揚によって摺動面同士が非接触となるので、摩擦抵抗が低減される。
特開2016−121600号公報
しかし、エンジンの運転状態によっては、上記の浮揚性能が低下する場合がある。例えば、エンジンが高回転域の回転数となると、上記軸受け構造部において軸受け荷重が増大し、浮揚効果の低減若しくは消失を招来させることがある。この場合、摺動面同士が接触するので、摩擦抵抗の低減効果が減殺される。また、特許文献1の方法では、摺動面のコーティング処理及び研磨処理などが必要であり、加工に手間を要する。
本発明の目的は、浮揚効果を利用して摩擦低減を図る軸受け構造部を備えた往復動ピストンエンジンにおいて、摺動面の加工に手間を要さず、エンジンの運転状態に拘わらず摩擦抵抗を低減することにある。
本発明の一局面に係るエンジンの往復動ピストンエンジンは、ピストン及びクランク機構を備えた往復動ピストンエンジンであって、前記クランク機構において軸受け部材となり、第1摺動面を内周に有する第1部材と、前記クランク機構において軸部材となり、前記第1摺動面と隙間を置いて対峙する第2摺動面を外周に有する第2部材と、オイルによる潤滑アシストを行う際に、前記第1摺動面と前記第2摺動面との間の隙間に潤滑性流体として、粘度が空気の粘度よりも大きく6.8×10−3[Pa・s]以下の低粘度オイルを供給する流体供給部と、前記流体供給部による前記低粘度オイルの供給動作を制御する制御部と、を備え、前記第1部材に対する前記第2部材の相対回転により、前記第1摺動面及び前記第2摺動面は各々所定の摺動方向に相対的に移動し、前記第1摺動面及び前記第2摺動面のいずれか一方は、軸方向と直交する断面において、前記対峙する方向へ張り出す張出形状部を有し、前記摺動方向への相対的な移動において、前記第1摺動面及び前記第2摺動面のうち前記張出形状部を有する方の摺動面を前記摺動方向への移動側、前記張出形状部を有していない方の摺動面を固定側と扱う場合に、前記張出形状部は、最も張り出した部分となる1つの頂部と、前記移動側の摺動面の前記摺動方向において前記頂部の下流側に配置され最も前記固定側の摺動面に対して離間した位置となる裾部とを含み、前記張出形状部において、前記頂部における前記隙間を最小隙間h1とし、前記裾部における前記隙間を最大隙間h2とするとき、
h1=0.5μm〜1.5μm、
h2/h1=1.5〜5.0、
の範囲に設定され、前記制御部は、当該往復動ピストンエンジンの回転数が所定の高回転領域に達したとき、前記潤滑アシストとして、前記隙間へ前記低粘度オイルが供給されるよう前記流体供給部を制御することを特徴とする。
本発明の他の局面に係るエンジンの往復動ピストンエンジンは、ピストン及びクランク機構を備えた往復動ピストンエンジンであって、前記クランク機構において軸受け部材となり、第1摺動面を内周に有する第1部材と、前記クランク機構において軸部材となり、前記第1摺動面と隙間を置いて対峙する第2摺動面を外周に有する第2部材と、オイルによる潤滑アシストを行う際に、前記第1摺動面と前記第2摺動面との間の隙間に潤滑性流体として、低粘度オイル0W−20を供給する流体供給部と、前記流体供給部による前記低粘度オイル0W−20の供給動作を制御する制御部と、を備え、前記第1部材に対する前記第2部材の相対回転により、前記第1摺動面及び前記第2摺動面は各々所定の摺動方向に相対的に移動し、前記第1摺動面及び前記第2摺動面のいずれか一方は、軸方向と直交する断面において、前記対峙する方向へ張り出す張出形状部を有し、前記摺動方向への相対的な移動において、前記第1摺動面及び前記第2摺動面のうち前記張出形状部を有する方の摺動面を前記摺動方向への移動側、前記張出形状部を有していない方の摺動面を固定側と扱う場合に、前記張出形状部は、最も張り出した部分となる1つの頂部と、前記移動側の摺動面の前記摺動方向において前記頂部の下流側に配置され最も前記固定側の摺動面に対して離間した位置となる裾部とを含み、前記張出形状部において、前記頂部における前記隙間を最小隙間h1とし、前記裾部における前記隙間を最大隙間h2とするとき、
h1=0.5μm〜1.5μm、
h2/h1=1.5〜5.0、
の範囲に設定され、前記制御部は、当該往復動ピストンエンジンの回転数が所定の高回転領域に達したとき、前記潤滑アシストとして、前記隙間へ前記低粘度オイル0W−20が供給されるよう前記流体供給部を制御することを特徴とする。
この往復動ピストンエンジンによれば、前記張出形状部が備える前記頂部における最小隙間h1が上記の数値範囲に設定されると共に、最小隙間h1と最大隙間h2との隙間比h2/h1が上記の数値範囲に設定される。このため、前記第2部材の相対移動時に、第1摺動面と第2摺動面との間に流入する流体によって、一方の摺動面を他方の摺動面から浮揚させることが可能となる。すなわち、第1摺動面及び第2摺動面の少なくとも一方の形状的特徴(プロファイル)によって浮揚効果を得ることができる。
さらに、クランク機構の各部位の慣性力が増大するエンジンの高回転領域、つまり浮揚効果が得にくくなる運転領域においては、制御部が、第1摺動面と第2摺動面との間の隙間に潤滑性流体を供給させる。これにより、高回転領域において良好な浮揚効果が得られない場合でも、潤滑性流体の介在によって、第1摺動面と第2摺動面との摩擦抵抗が低い状態を維持させることが可能となる。
上記の往復動ピストンエンジンにおいて、前記クランク機構が、クランクピンとクランクジャーナルを含むクランク軸と、前記クランクピンと前記ピストンとを連結するコンロッドとを備え、前記第1部材が、前記コンロッドの大端部であり、前記第2部材が、前記クランクピンである構成とすることができる。
コンロッドは、エンジンが高回転になるほど慣性力が増大する。この慣性力に基づく荷重、特に燃焼工程時にピストンから与えられる爆発荷重が、軸受け部材としてのコンロッド大端部と、軸部材としてのクランクピンとからなる軸受け構造部に伝達される。このため、エンジンの高回転領域において上記浮揚効果が阻害され易い。しかし、上記の往復動ピストンエンジンによれば、コンロッド大端部とクランクピンとからなる軸受け構造部において、上述の浮揚効果並びに低摩擦抵抗の維持効果を得ることができる。
上記の往復動ピストンエンジンにおいて、前記クランク機構が、クランクピンとクランクジャーナルとを含むクランク軸と、前記クランクピンと前記ピストンとを連結するコンロッドとを備え、前記第1部材が、前記クランク軸の軸受け部であり、前記第2部材が、前記クランクジャーナルである構成とすることができる。
この往復動ピストンエンジンによれば、軸受け部材としてのクランク軸(クランクジャーナル)の軸受け部と、軸部材としてのクランクジャーナルとからなる軸受け構造部について、エンジンの高回転領域において、上述の浮揚効果並びに低摩擦抵抗の維持効果を得ることができる。
この場合、前記制御部は、前記回転数が所定の高回転領域に達し、且つ、当該往復動ピストンエンジンの負荷が所定の高負荷領域に達したとき、前記隙間へ前記潤滑性流体が供給されるよう前記流体供給部を制御することが望ましい。
エンジンが高負荷領域に達すると、クランク軸に撓み変形が生じる傾向がある。クランク軸の軸受け構造部では、とりわけ前記撓み変形により、上記浮揚効果が阻害され易い。そこで、エンジンが高回転且つ高負荷領域に達したとき、前記隙間へ前記潤滑性流体が供給させることで、効率良く、上述の浮揚効果並びに低摩擦抵抗の維持効果を得ることができる。
上記の往復動ピストンエンジンにおいて、前記最小隙間h1が、0.5μm〜1.5μmの範囲に設定され、前記流体供給部は、前記潤滑性流体として低粘度オイルを前記隙間に供給することが望ましい。
この摺動構造体によれば、第1摺動面と第2摺動面との間に流入させる流体を、最も前記流入が容易な空気とした上で、大きな浮揚力を発生させることが可能となる。また、低粘度オイルを前記隙間に供給することで、エンジンの上記浮揚効果が得られ難い運転シーンにおいて、良好な潤滑性を得ることができる。
上記の往復動ピストンエンジンにおいて、前記第1部材と前記第2部材とが同一材質であることが望ましい。これにより、熱膨張差に起因する前記隙間の長さ変動、つまり最小隙間h1及び最大隙間h2の変動を抑止することができる。
本発明によれば、浮揚効果を利用して摩擦低減を図る軸受け構造部を備えた往復動ピストンエンジンにおいて、軸受け構造部における摺動面の加工に手間を要さず、また、エンジンの運転状態に拘わらず摺動面間の摩擦抵抗を低減することができる。
図1は、本発明に係る往復動ピストンエンジンが適用されたエンジン本体の一例を示す概略図である。 図2は、往復動ピストンエンジンのクランク軸方向の断面図である。 図3は、図2のIII−III線断面図である。 図4Aは、図3に示すコンロッドのビッグエンドとクランクピンとの軸受け構造部の拡大図であって、軸受けメタルの摺動面の張出形状部が誇張して描かれた図である。 図4Bは、図3に示すクランク軸の軸受け部の拡大図であって、軸受けメタルの摺動面の張出形状部が誇張して描かれた図である。 図5は、ピストンが上死点にあるときの、クランク軸の状態を示す断面図である。 図6は、上死点からクランク角が進行したときの、クランク軸の状態を示す断面図である。 図7Aは、前記摺動面のプロファイルの説明図であって、環状の前記摺動面とクランクピンの外周面とを平面状に展開した図である。 図7Bは、最適な摺動面のプロファイルを説明するための模式図である。 図8は、摺動面と気筒内周壁との間の最小隙間と最大隙間との比である隙間比と、負荷容量係数との関係を示すグラフである。 図9は、前記摺動面と前記外周面との間の最小隙間と、摩擦係数との関係を示すグラフである。 図10(A)は、隙間比が適正である場合の摺動面の浮揚状態を示す図、図10(B)は、隙間比が不適正である場合のスカート部の浮揚状態を示す図である。 図11は、筒内燃焼圧力に伴う荷重がコンロッドからピストンピンへ作用している状態を示す図である。 図12は、クランク軸の撓みを説明するための模式図である。 図13は、筒内燃焼圧力とエンジン回転数の関係を示すグラフである。 図14は、本実施形態の往復動ピストンエンジンの制御系を示すブロック図である。 図15は、上記制御系の動作を示すフローチャートである。
[エンジンの構造]
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。先ずは、本発明に係る往復動ピストンエンジンが適用されたエンジン本体1について、図1に基づいて説明する。ここに示されるエンジン本体1は、自動車等の車両の走行駆動用の動力源として前記車両に搭載されるエンジンであって、気筒内を往復動するピストン及びクランク機構を備えた往復動ピストン型の多気筒エンジンである。エンジン本体1に供給される燃料は、本実施形態では、ガソリンを主成分とするものである。
エンジン本体1は、シリンダブロック3、シリンダヘッド4及びピストン5を備える。シリンダブロック3は、図1の紙面に垂直な方向に並ぶ複数の気筒2(後述の図2、図3で4気筒エンジンを示す)を有している。気筒2内では、前記燃料と空気との混合気が燃焼する。シリンダヘッド4は、シリンダブロック3の上面に取り付けられ、気筒2の上部開口を塞いでいる。
ピストン5は、各気筒2に往復摺動可能に収容されており、コンロッド8を介してクランク軸7と連結されている。ピストン5の往復運動に応じて、クランク軸7はその中心軸回りに回転する。このピストン5の構造については、後記で詳述する。なお、図1では、クランク軸7が時計方向に回転するものとし、ピストン5が摺動する気筒2の内周壁として、スラスト側内周壁2Aと反スラスト側内周壁2Bとを示している。
ピストン5の上方には燃焼室6が形成されている。シリンダヘッド4には、燃焼室6と連通する吸気ポート9及び排気ポート10が形成されている。シリンダヘッド4の底面には、吸気ポート9の下流端である吸気側開口部4Aと、排気ポート10の上流端である排気側開口部4Bとが形成されている。吸気ポート9の上流端は吸気通路9Aに、排気ポート10の下流端は排気通路10Aに各々接続されている。シリンダヘッド4には、吸気側開口部4Aを開閉する吸気バルブ11と、排気側開口部4Bを開閉する排気バルブ12とが組み付けられている。本実施形態のエンジンは、ダブルオーバーヘッドカムシャフト式(DOHC)エンジンである。吸気側開口部4Aと排気側開口部4Bとは、各気筒2につき2つずつ設けられるとともに、吸気バルブ11および排気バルブ12も2つずつ設けられている。
吸気バルブ11及び排気バルブ12は、いわゆるポペットバルブであり、各々開口部4A、4Bを開閉する傘状の弁体と、この弁体から垂直に延びるステムとを含む。前記弁体は、燃焼室6に臨むバルブ面を有する。本実施形態において、燃焼室6は、気筒2の内壁面、ピストン5の冠面、シリンダヘッド4の底面、吸気バルブ11及び排気バルブ12の各バルブ面によって区画されている。
シリンダヘッド4には、吸気バルブ11、排気バルブ12を各々駆動する吸気側動弁機構13、排気側動弁機構14が配設されている。これら動弁機構13、14によりクランク軸7の回転に連動して、吸気バルブ11及び排気バルブ12の各ステムが駆動される。これらステムの駆動により、吸気バルブ11の弁体が吸気側開口部4Aを開閉し、排気バルブ12の弁体が排気側開口部4Bを開閉する。
吸気側動弁機構13には、吸気側可変バルブタイミング機構(吸気側VVT)15が組み込まれている。吸気側VVT15は、吸気カム軸に設けられた電動式のVVTであり、クランク軸7に対する吸気カム軸の回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更することにより、吸気バルブ11の開閉タイミングを変更する。同様に、排気側動弁機構14には、排気側可変バルブタイミング機構(排気側VVT)16が組み込まれている。排気側VVT16は、排気カム軸に設けられた電動式のVVTであり、クランク軸7に対する排気カム軸の回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更することにより、排気バルブ12の開閉タイミングを変更する。
シリンダヘッド4には、燃焼室6内の混合気に点火エネルギーを供給する点火プラグ17が各気筒2につき1つずつ取り付けられている。点火プラグ17は、その点火点が燃焼室6内に臨む姿勢でシリンダヘッド4に取り付けられている。点火プラグ17は、図外の点火回路からの給電に応じてその先端から火花を放電して、燃焼室6内の混合気に点火する。
シリンダヘッド4には、先端部から燃焼室6内にガソリンを主成分とする燃料を噴射するインジェクタ18が、各気筒2につき1つずつ取り付けられている。インジェクタ18は、図略の燃料供給管を通じて供給された燃料を噴射する。前記燃料供給管の上流側には、クランク軸7と連動連結されたプランジャー式のポンプ等からなる高圧燃料ポンプ(図示せず)が接続されている。この高圧燃料ポンプと前記燃料供給管との間には、全気筒2に共通の蓄圧用のコモンレール(図示せず)が設けられている。このコモンレール内で蓄圧された燃料が各気筒2のインジェクタ18に供給されることにより、各インジェクタ18からは、高い圧力の燃料が燃焼室6内に噴射される。
[クランク軸の詳細]
上述のクランク軸7について、より具体的な例を示す。図2は、往復動ピストンエンジンのクランク軸方向の断面図、図3は、図2のIII−III線断面図である。図2、図3では、シリンダヘッド4に取り付けられる付属品(吸気、排気バルブ11、12など)の記載が省かれている。ここでは4気筒エンジンを例示しており、4つの気筒2に、それぞれピストン5が往復動可能に収容されている。各ピストン5はコンロッド8によってクランク軸7と結合されている。すなわち、コンロッド8の上端のスモールエンド8Aとピストン5とが、ピストンピン40を介して連結されている。シリンダブロック3の下方には、クランク軸7を支持するロアシリンダブロック3Aと、オイルパン3Bとが配置されている。
クランク軸7は、クランクジャーナル71(第2部材)、クランクピン72(第2部材)及びクランクアーム73を備える。クランクジャーナル71は、クランク軸7の回転軸となる部分であり、ロアシリンダブロック3Aの軸受け部3Cに嵌め込まれた軸受けメタル21(図4B;第1部材)により軸支されている。クランクピン72は、コンロッド8の下端のビッグエンド8B(大端部)と連結される部分であり、ビッグエンド8Bの内周面に嵌め込まれた軸受けメタル20(図4A;第1部材)により軸支されている。クランクアーム73は、クランクジャーナル71とクランクピン72とを繋ぐ部分である。クランクアーム73の、クランクピン72との接続側端部とは反対側の端部には、バランスウェイト74が備えられている。ピストン5の往復運動はコンロッド8によりクランク軸7に伝達され、クランク軸7をクランクジャーナル71回りに回転させる。クランク軸7の一端側にはクランクシャフトプーリー75が取り付けられ、他端側にはフライホイル76が取り付けられている。
シリンダブロック3には、オイル供給機構60(流体供給部)が備えられている。オイル供給機構60は、クランク軸7における軸受け構造部、すなわちクランクジャーナル71及びクランクピン72の軸支部へ低粘度オイル(潤滑性流体)を供給する。オイル供給機構60は、オイルポンプ61、オイル濾過器62、圧力調整弁63、フィルター64及び給油管路65を備えている。低粘度オイルは、例えば0W−20(粘度=6.8×10−3[Pa・s])を用いることができる。
オイルポンプ61は、図略のオイルタンク(例えばオイルパン3B)に貯留された低粘度オイルを、給油管路65へ送り出す。オイルポンプ61によるオイル供給動作は、制御部81(図14)により制御される。オイル濾過器62は、オイルポンプ61の吸入口側に接続され、吸入されるオイル中の比較的大きな異物等を除去する。圧力調整弁63は、オイルポンプ61の吐出口側に接続され、給油管路65内の油圧を一定に保つための調整弁である。フィルター64は、オイルポンプ61から給油管路65へ送り出されるオイル中に含まれる微細金属粉などの、比較的小さな異物等を除去する。
給油管路65は、シリンダブロック3内にオイルギャラリー66を有する。また、給油管路65は、クランク軸7内にジャーナル流路67、アーム内流路68及びピン内流路69を備えている。オイルギャラリー66は、シリンダブロック3の内部に設けられたオイル通路であり、一端側がオイルポンプ61の吐出口側(フィルター64)に繋がり、他端側がクランク軸7の5つの軸受け部3Cに向けて分岐している。
ジャーナル流路67は、クランク軸7のクランクジャーナル71の内部に設けられたオイル通路である。ジャーナル流路67は、クランクジャーナル71の外周面71A(図4B)に、当該外周面71Aへオイルを供給する吐出口67Aを有している。アーム内流路68は、ジャーナル流路67に繋がり、クランクアーム73の内部に設けられたオイル通路である。ピン内流路69は、アーム内流路68に繋がり、クランクピン72の内部に設けられたオイル通路である。ピン内流路69は、クランクピン72の外周面72A(図4A)に、当該外周面72Aへオイルを供給する吐出口69Aを有している。
[摺動面の構造]
コンロッド8及びクランク軸7を含むクランク機構には、2つの軸受け構造部が存在する。コンロッド8のビッグエンド8Bと、ビッグエンド8Bの孔内で相対回転するクランクピン72とにより構成される軸受け構造部、及び、ロアシリンダブロック3Aの軸受け部3Cと、軸受け部3内で相対回転するクランクジャーナル71とにより構成される軸受け構造部である。これら軸受け構造部では、対峙する2つの摺動面が所定の摺動方向に相対的に移動(回転)することになる。以下、この摺動面について詳述する。
図4Aは、図3に示すコンロッド8のビッグエンド8Bとクランクピン72との軸受け構造部の拡大図である。ビッグエンド8Bは円形の軸受け孔8Cを有し、この軸受け孔8Cには軸受けメタル20(第1部材)が嵌め込まれている。軸受けメタル20は、帯状の金属片が環状に成型された滑り軸受けである。通常、半円形の半割片の突き合わせにより、環状の軸受けメタル20が形成される。当該軸受け構造部においては、軸受けメタル20が軸受け部材、クランクピン72(第2部材)が軸部材である。
軸受けメタル20は、クランクピン72が挿通される円筒型の内周面20A(第1摺動面)を有している。クランクピン72は、断面が真円の円柱型の部材であり、内周面20Aと径方向に所定の隙間Gを置いて対峙する外周面72A(第2摺動面)を外周に有している。そして、内周面20Aは、クランクピン72の軸方向と直交する断面(図4Aの断面)において、外周面72Aとの対峙方向へ張り出す張出形状部M1を備えている。なお、図4Aでは張出形状部M1が誇張して描かれているが、実際には目視では判別困難なミクロンオーダーの張り出しを有する形状である。
張出形状部M1は、内周面20Aの周方向一周で一つの張出を形成しており、頂部Pと裾部Qとを有している。頂部Pは、外周面72Aに向けて、最も張り出した部分である。裾部Qは、最も外周面62A(相手方摺動面)に対して離間した位置となる部分である。頂部Pにおける隙間Gの幅が最小隙間h1であり、裾部Qにおける隙間Gの幅が最大隙間h2である。本実施形態では、コンロッド8のスモールエンド8Aの軸心とビッグエンド8Bの軸心とを結ぶ線分Aが軸受けメタル20と交差する点の近傍に、頂部Pが配置されている例を示している。なお、張出形状部M1は、内周面20A又は外周面72Aの少なくとも一方に存在していれば良く、外周面72Aに設けられていても、或いは、内周面20A及び外周面72Aの双方に設けられていても良い。また、周方向に複数の張出形状部M1が連設されている構造としても良い。
張出形状部M1は、図4Aの時計方向において、裾部Qから頂部Pに亘って、徐々に外周面72Aに向けての張出が大きくなる形状を有する。つまり、張出形状部M1の軸方向と直交する断面形状は、内周面20Aの一周回の間に軸受け孔8Cの孔心に向けて徐々に径小となる螺旋形状を有する。そして、前記断面形状は、頂部Pにおいて最も突出し、続いて径方向外側へ急激に退行して、裾部Qに繋がっている。換言すると、内周面20Aと外周面72Aとの間の隙間Gは、裾部Qの最大隙間h2から、時計方向に周回するに連れて幅狭となり、頂部Pにおいて最小隙間h1となっている。さらに時計方向に周回すると、隙間Gは急激に広くなり、最大隙間h2となる。上述のオイル供給機構60は、所定のタイミングで、隙間Gに低粘度オイルを供給する。
図4Bは、図3に示すロアシリンダブロック3Aの軸受け部3Cとクランク軸7(クランクジャーナル71)との軸受け構造部の拡大図である。軸受け部3Cには軸受けメタル21(第1部材)が嵌め込まれている。軸受けメタル21は、上述の軸受けメタル20と同様な、帯状の金属円が環状に成型された滑り軸受けである。当該軸受け構造部においては、軸受けメタル21が軸受け部材、クランクジャーナル71(第2部材)が軸部材である。
軸受けメタル21は、クランクジャーナル71が挿通される円筒型の内周面21A(第1摺動面)を有している。クランクジャーナル71は、断面が真円の円柱型の部材であり、内周面21Aと径方向に所定の隙間Gを置いて対峙する外周面71A(第2摺動面)を外周に有している。そして、内周面21Aは、クランクジャーナル71の軸方向と直交する断面(図4Bの断面)において、外周面71Aとの対峙方向へ張り出す張出形状部M2を備えている。なお、図4Bにおいても張出形状部M2が誇張して描かれているが、実際には目視では判別困難なミクロンオーダーの張り出しを有する形状である。
張出形状部M2は、上述の張出形状部M1と同じ形状を有している。すなわち、張出形状部M2は、内周面21Aの周方向一周で一つの張出を形成しており、頂部Pと裾部Qとを有している。頂部Pにおける隙間Gの幅が最小隙間h1であり、裾部Qにおける隙間Gの幅が最大隙間h2である。なお、張出形状部M2は、内周面21A又は外周面71Aの少なくとも一方に存在していれば良く、外周面71Aに設けられていても、或いは、内周面21A及び外周面71Aの双方に設けられていても良い。また、周方向に複数の張出形状部M2が連設されている構造としても良い。
張出形状部M2は、図4Bの時計方向において、裾部Qから頂部Pに亘って、徐々に外周面71Aに向けての張出が大きくなる形状を有する。つまり、張出形状部M2の軸方向と直交する断面形状は、内周面21Aの一周回の間に軸受け部3Cの孔心に向けて徐々に径小となる螺旋形状を有する。そして、前記断面形状は、頂部Pにおいて最も突出し、続いて径方向外側へ急激に退行して、裾部Qに繋がっている。換言すると、内周面21Aと外周面71Aとの間の隙間Gは、裾部Qの最大隙間h2から、時計方向に周回するに連れて幅狭となり、頂部Pにおいて最小隙間h1となっている。さらに時計方向に周回すると、隙間Gは急激に広くなり、最大隙間h2となる。上述のオイル供給機構60は、所定のタイミングで、隙間Gに低粘度オイルを供給する。
図5は、ピストン5が上死点にあるときの、クランク軸7の状態を示す断面図、図6は、上死点からクランク角が進行したときの、クランク軸7の状態を示す断面図である。ピストン5が上死点にあるとき、コンロッド8のスモールエンド8Aの軸心とビッグエンド8Bの軸心とを結ぶ線分Aと、クランクジャーナル71の軸心からクランクピン72の軸心へ延びるアーム軸Bとは、同じ線上に並ぶ。
図6に示すように、クランク角が進行すると、線分Aとアーム軸Bとはクランク角に応じた角度をなして交差するようになる。そうすると、コンロッド8のビッグエンド8Bにおいて、クランクピン72は軸受けメタル20に対して相対回転し、各々の摺動面である内周面20A及び外周面72Aは、各々の摺動方向へ相対的に移動する。この場合、内周面20A(軸受けメタル20)の摺動方向は、反時計方向に向かう摺動方向C1であり、外周面72A(クランクピン72)の摺動方向は、クランクピン72の公転方向である時計方向に向かう摺動方向D1である。
また、軸受け部3Cにおいて、クランクジャーナル71は軸受けメタル21に対して相対回転し、各々の摺動面である内周面21A及び外周面71Aは、各々の摺動方向へ相対的に移動する。この場合、内周面21A(軸受けメタル21)の摺動方向は、反時計方向に向かう摺動方向C2であり、外周面71A(クランクジャーナル71)の摺動方向は、クランクジャーナル71の自転方向である時計方向に向かう摺動方向D2である。
本実施形態では、張出形状部M1、M2は、それぞれ軸受けメタル20、21側に設けられている。つまり、摺動方向C1、C2へ移動する内周面20A、21Aに設けられている。この場合、張出形状部M1、M2の裾部Qは各々、摺動方向C1、C2の下流側に設けられる。つまり、摺動方向C1、C2において、頂部Pが最も上流側に位置し、周方向に一周回して裾部Qが最も下流側に位置している。
このような張出形状部M1、M2とされることで、内周面20A、21Aが外周面72A、71Aに対して相対的に摺動すると、隙間Gに存在する流体にそれぞれ、摺動方向C1、C2とは逆方向の矢印E1、E2方向(流体流入方向E1、E2)のフローが生じる。つまり、裾部Qから頂部Pに向けて、流体が流れ込む。ここで、内周面20A、21Aのプロファイルを適正化することにより、内周面20A、21Aは外周面72A、71Aに対して浮揚(摺動浮揚)するようになる。この摺動浮揚により、内周面20A、21Aと外周面72A、71Aとの間の摺動抵抗を格段に低減することができる。以下、摺動浮揚を実現する張出形状部M1、M2のプロファイルについて説明する。
[摺動面のプロファイル]
図7Aは、摺動面のプロファイルの説明図であって、軸受けメタル20の環状の内周面20A(第1摺動面)と、円柱型のクランクピン72の外周面72Aとを平面状に展開した模式図である。なお、この展開図は、軸受けメタル21の内周面21Aとクランクジャーナル71の外周面71Aとの関係にも当て嵌まる。
上述の通り、内周面20Aと外周面72Aとは隙間Gを介して対峙している。内周面20Aが有する張出形状部M1は、最も外周面72A側に張り出した頂部Pを有し、摺動方向C1の下流端に最も外周面72A側への張り出しが小さい裾部Qを有している。軸受けメタル20の相対移動により内周面20Aに摺動方向C1へ速度uが与えられると、図中に流体流入方向E1で示す通り、周辺に存在する流体Fが裾部Q側から隙間Gに引き込まれる。行き場を失った流体Fは、内周面20Aと外周面72Aとの間を拡大させる方向に抗力を生じさせる。この抗力が、内周面20Aを外周面72Aから浮揚させるように作用する(摺動浮揚)。内周面20Aは、このような摺動浮揚が良好に発現するプロファイルに設定される。なお、流体Fは、例えば空気、水、或いは0W−20クラスの低粘度オイルであり、特に好ましくは空気である。
図7Aに示すように、張出形状部M1の頂部Pと外周面72Aとの間の隙間を最小隙間h1、裾部Qと外周面72Aとの間の隙間を最大隙間h2とし、両者の比率h2/h1を隙間比m(h2−h1に相当する)とする。良好な摺動浮揚を達成するには、流体Fの性質に応じて最小隙間h1を設定すると共に、その最小隙間h1に応じた隙間比mを設定することが肝要となる。最大隙間h2は、h1及びmが設定されることにより、自ずと決定される。
ここで、摺動浮揚の作用を効果的に得ることのできる内周面20Aのプロファイルについて、図7Bを参照して説明する。図7Bは、摺動面Saを有する摺動部材C1が、被摺動面Sbに沿って矢印Y10で示す方向に摺動することを示した模式図である。摺動面Saは、被摺動面Sb側に張り出す張出形状を有しており、最も張り出した部分となる頂部Paと、頂部Paの摺動方向(矢印Y10で示す方向)の下流側に配置されて被摺動面Sbに対して最も離間する裾部Qaとを有し、摺動方向の下流側に向かって被摺動面Sbから徐々に離間する形状を有している。
摺動部材C1が速度Uで摺動しているとき、摺動面Saと被摺動面Sbとの間に生じる摺動浮揚力Wは、次の式(1)により求めることができる。
Figure 0006544370
式(1)において、ηは摺動面Saと被摺動面Sbとの間に介在する流体Fの粘度であり、Bは摺動面の摺動方向の長さ(図7Bにおける頂部Paから裾部Qaまでの長さ)であり、Cは摺動面の摺動方向と直交する方向の長さ(図7Bの紙面と直交する方向の長さ)であり、Uは摺動面Saの摺動速度である。h1は、最小隙間であって、頂部Paと被摺動面Sbとの間の離間距離、つまり、摺動面Saと被摺動面Sbとの間の隙間寸法の最小値である。mは、上述の隙間比であって、裾部Qaと被摺動面Sbとの離間距離、つまり、摺動面Saと被摺動面Sbとの間の隙間寸法の最大値を最大隙間h2としたときの、最小隙間h1と最大隙間h2との比率であり、m=h2/h1で表される。
式(1)において、第2項目を負荷容量係数Kwとすると(Kw=6/(m−1){lnm−2(m−1)/(m+1)})、浮揚力Wはこの負荷容量係数Kwに比例する。
図8は、負荷容量係数Kwと隙間比mとの関係を示したグラフである。このグラフに示されるように、摺動浮揚力Wは、隙間比mが2.2のときに最大となり、隙間比mがこの値から離間するほど小さくなる。この知見より、隙間比mを2.2近傍に設定すれば高い摺動浮揚力Wを得ることができる。具体的には、隙間比mを1.5以上5.0以下とすることで、摺動浮揚力Wを、図8のラインL1以上とすることができる。この場合、摺動浮揚力Wとして、その最大値(隙間比mが2.2のときの値)の60%以上となる高い値を得ることができる。
ここで、式(1)に基づくと、最小隙間h1が小さいほど摺動浮揚力は大きくなる。従って、最小隙間h1は小さい方が好ましいように思われる。これに対して、本発明者らは、最小隙間h1について、摺動面Saと被摺動面Sbとの間に生じる摩擦係数μを小さく抑えることのできる最適な範囲が存在することを突き止めた。摩擦係数μの大小は、摺動面Saの摺動浮揚時における摩擦の大小に相当し、摩擦係数μが小さいほど良好な摺動浮揚が実現できることを示す。
図9は、流体Fを空気、水、オイルとしたときの、摩擦係数μと最小隙間h1との関係を示したグラフである。流体Fとして例示した空気の粘度は1.8×10−5[Pa・s]、水の粘度は8.9×10−4[Pa・s]、低粘度オイル0W−20の粘度は6.8×10−3[Pa・s]である。図9のグラフは、エンジン稼働時にピストン5の往復動に伴って所定の被摺動面に沿って摺動する摺動面Saに加えられる荷重の最大値と、式(1)で求められる摺動浮揚力Wとが釣り合い、摺動面Saが浮揚するときの最小隙間h1と摩擦係数μとの関係を示している。なお、図9のグラフは、最小隙間h1の変化に伴って隙間比mも変化することを示している。
より詳細には、式(1)において、Uに、エンジン回転数が代表的な所定の回転数のときの対象となる摺動面Saの平均移動速度を代入し、ηに、流体Fの粘度を代入し、摺動浮揚力Wに、前記荷重の最大値を代入する。そして、これら値を代入した式(1)から、最大隙間h2と最小隙間h1との差(h2−h1)を所定値としたときの、最小隙間h1の値を算出するとともに、この最小隙間h1等を用いて摩擦係数μを算出する。また、前記所定値の値を振って、最小隙間h1の値を変化させて、各値に対応する摩擦係数μを求めている。例えば、市街地走行を行うときを対象とすると、前記Uに対応するエンジン回転数として1350rpmを用い、摺動面Saに加えられる入力荷重を1175Nとすることができる。
図9には、流体Fの各々について、最適な最小隙間h1における摩擦係数μ、つまり最も低い摩擦係数μに比較して、+20%だけ摩擦係数μが増加するラインL2、L3、L4をそれぞれ付記している。この+20%のまでの範囲が、極めて良好な摺動浮揚が実現できる範囲である。具体的には、流体Fが空気の場合、最小隙間h1は0.7μm〜1.3μm、水の場合は4.9μm〜8.9μm、0W−20の場合は18μm〜26μmとなる。これらが理想的な範囲であるが、当該範囲から若干外れても良好な摺動浮揚を得ることができるので、好ましい最小隙間h1の範囲は、それぞれ、
空気の場合: 0.5μm〜1.5μm
水の場合 : 3μm〜11μm
0W−20の場合: 15μm〜30μm
と設定することができる。
上記の結果より、摺動浮揚を達成するために現状で利用可能な流体Fの範疇(空気、水、低粘度オイル)において、良好な摺動浮揚が実現できる最小隙間h1の範囲は、0.5μm〜30μmと設定することができる。この範囲は、エンジン本体1の運転時(クランク軸7の回転時)において確保されるべき最小隙間h1の範囲である。エンジン本体1が運転されると、軸受けメタル20及びクランクピン72は高熱を帯びて熱膨張し得る。従って、運転時において最小隙間h1の上限値=30μmを確保できるよう、常温を基準とする設計値としては、前記上限値をより大きく設定することが妥当である。この点に鑑み、本実施形態では、常温での最小隙間h1の範囲を0.5μm〜40μmと設定する。
摺動浮揚において、摺動抵抗の低減の観点から最も望ましい流体Fは空気である。空気を隙間Gに流入させれば(空気浮揚)、図9から明らかな通り、内周面20Aと外周面72Aとの間の摩擦を最も小さくすることができるからである。空気浮揚を採用する場合は、エンジン本体1の運転時に最小隙間h1=0.5μm〜1.5μmが確保されるよう、軸受けメタル20及びクランクピン72の熱膨張を考慮して、常温における最小隙間h1の設計値を定めることが望ましい。
ここで、内周面20Aは、平滑度が高い面であることが望ましい。最小隙間h1は、0.5μm〜40μmという微小な長さの範囲で選ばれることから、内周面20Aが粗い面であると、最小隙間h1の精度が低下する。従って、内周面20Aは、その表面粗さ(算術平均粗さRa)が0.4μm以下となるような平滑面であることが望ましい。
また、内周面20Aを有する軸受けメタル20とクランクピン72とは、同一材質とすることが望ましい。同様に、軸受けメタル21とクランクジャーナル71とは、同一材質とすることが望ましい。これにより、熱膨張差に起因する隙間Gの長さ変動、つまり最小隙間h1及び最大隙間h2の変動を抑止することができる。例えば、両者を、鋳型に鋼湯を注型して形成される鋳鋼にて形成することが望ましい。或いは、少なくとも軸受けメタル20を、線膨張係数の小さい金属、例えばステンレス鋼(鍛造品)にて形成すれば、隙間Gの長さ変動を抑制できるので好ましい。
図7Aでは、内周面20Aの張出形状部M1が、裾部Qから頂部Pへ向けて一定の割合で突出高さが高くなっている態様を例示している。しかし、張出形状部M1は、摺動方向C1において、最小隙間h1を形成する部分(頂部P)と、最大隙間h2を形成する部分(裾部Q)とが肝要であって、両者間の形状については、その態様を問わない。頂部Pと裾部Qとの間において、緩い膨らみ、窪みを持つ張出形状部M1、或いは頂部Pと裾部Qとの間において階段状に突出高さが変化するような張出形状部M1としても良い。
図10(A)は、隙間比mが適正値(m=2.2)である場合の内周面20Aの浮揚状態を示す図、図10(B)は、隙間比mが適正値よりも大きい場合の内周面20Aの浮揚状態を示す図である。最小隙間h1が流体Fの種別に応じて上記の範囲内に設定され、且つ、隙間比mが適正値に設定され、内周面20Aに速度uが与えられると、図10(A)に示す通り、周辺の流体Fが内周面20Aと外周面72Aとの間の隙間Gに流入する。流入した流体Fは、行き場を失うことになる(堰き止め効果)。この流体Fの堰き止め効果により、内周面20Aを外周面72Aから離間させる抗力(浮揚力)が発生し、内周面20Aが外周面72Aから浮揚する。
これに対し、隙間比mが適正値よりも大きい場合、すなわち、最大隙間h2が過度に大きい場合、図10(B)に示すように、周辺の流体Fは隙間Gに流入するものの、上記の堰き止め効果が過剰となって隙間Gに流入できない流体FAの割合が多くなる。このため、隙間Gへの流体Fの流入量が小さくなり、これに伴い浮揚力も小さくなる。従って、良好な摺動浮揚を実現できない。一方、隙間比mが適正値よりも大きい場合、内周面20Aが平板に近づくこととなる。このため、同様に隙間Gへの流体Fの流入量が小さくなり、浮揚力も小さくなる。
[摺動浮揚の阻害要因について]
エンジンの運転状態によっては、上記の摺動浮揚の性能が低下する場合がある。例えば、エンジンが高回転域の回転数となると、クランク軸7の軸受け構造部において軸受け荷重が増大し、浮揚効果の低減若しくは消失を招来させることがある。この点について、図11〜図13に基づいて説明する。
図11は、筒内燃焼圧力に伴う荷重Wがコンロッド8からピストンピン72へ作用している状態を示す図である。クランク機構の軸受け構造部には、燃焼工程の爆発荷重(筒内燃焼圧力)がピストン5に与えられた際に、コンロッド8を介して高い荷重Wが加わるようになる。この荷重Wは、エンジンが高回転域の回転数に達すると、コンロッド8の慣性力が大きくなるため、一層大きくなる。
荷重Wは、主に線分Aに沿って、コンロッド8からピストンピン72へ向かう。具体的には、ビッグエンド8Bへ一体的に取り付けられている軸受けメタル20と線分Aとが交差する部分(スモールエンド8Aに近い側の交差部分)の近傍の領域HW1において、荷重Wによって軸受けメタル20の内周面20Aがクランクピン72の外周面72Aへ向かうようになる。そして、荷重Wが大きいと、摺動浮揚の状態をキャンセルして、内周面20Aが外周面72Aに当接し、荷重Wを伝達することがある。この場合、荷重Wが伝達されたクランクピン72が慣性で下方に移動し、軸受けメタル20の線分Aと交差するもう一方の部分(スモールエンド8Aに遠い側の交差部分)の近傍の領域HW2において、外周面72Aの方が内周面20Aに当接し得る。これにより、内周面20Aと外周面72Aとの間の摩擦抵抗を低減させる浮揚効果が消失することになる。
さらに、クランクピン72に伝達された荷重Wは、クランクアーム73を介してクランクジャーナル71にも伝達される。そして、軸受け部3Cへ一体的に取り付けられている軸受けメタル21の内周面20Aとクランクジャーナル71の外周面71Aとの間でも、上記と同様に荷重Wによって摺動浮揚がキャンセルされてしまうことがある。以上のことから、エンジンの高回転域において、クランク機構の軸受け構造部において摩擦抵抗が増大する懸念がある。
また、上り坂走行時のように、エンジン本体1の負荷が高くなると、クランク軸7の撓みによって摺動浮揚がキャンセルされることもある。図12は、クランク軸7の撓みを説明するための模式図である。エンジン本体1が高回転且つ高負荷の状態になると、クランク軸7に大きな力が作用するようになり、クランク軸7が撓み変形することがある。図中では、点線にて撓み変形したクランク軸7Aを示している。ここでは、クランク軸7の両端の軸受け部3C間で湾曲しているクランク軸7Aを示す。クランク軸7の端部には、クランクシャフトプーリー75、フライホイル76といった重量物が取り付けられているので、高負荷状態となると、図示のような撓み変形が生じ易い。この撓み変形により、軸受け部3Cに組み付けられている軸受けメタル21の内周面21Aとクランクジャーナル71の外周面71Aとが接触し、摺動浮揚がキャンセルされることがある。
[オイル供給制御]
以上の摺動浮揚の阻害要因に鑑みて、本実施形態ではエンジン本体1の運転中において、摺動浮揚がキャンセルされ得る状況になると、隙間Gに潤滑性流体を供給させる。図13は、筒内燃焼圧力とエンジン回転数の関係を示すグラフである。ここでは、摺動浮揚を発現するに際して、隙間Gに流入させる流体Fを空気とする(空気浮揚)。そして、オイル供給機構60が供給する潤滑性流体は、低粘度のオイル(0W−20)とする。図13は、空気浮揚を実行させる領域と、オイルによる潤滑アシストを行う領域とを区分するグラフでもある。
エンジン回転数が所定の高回転領域に達するまでは、空気浮揚を実行させる領域とする。エンジン回転数が予め定めた閾値を超える回転数となる高回転領域では、潤滑アシストを実行領域とする。潤滑アシストは、オイルポンプ61の動作によって、クランクジャーナル71の吐出口67A、クランクピン72の吐出口69Aから各々の隙間Gへオイルを吐出させる動作である。
潤滑アシストは、種々の制御態様を取り得る。エンジン回転数が所定の高回転領域に達した場合に、クランクジャーナル71及びクランクピン72の双方に対して潤滑アシストを実行するというのが、最もシンプルな制御である。この場合、エンジン回転数が閾値回転数を超過したか否かにより、吐出口67A及び吐出口69Aからオイルを吐出させるか否かが決定されることになる。
これに代えて、ピストン5から一次的に荷重Wを受けるクランクピン72側だけに、前記閾値回転数を超過したときに潤滑アシストを行うようにしても良い。また、クランクジャーナル71(クランク軸7)については、高負荷となった場合に撓み変形が問題となる(図12)。従って、エンジン回転数が所定の高回転領域に達し、且つ、エンジン本体1の負荷が所定の高負荷領域に達したときに(図13の高回転・高負荷領域)、クランクジャーナル71に潤滑アシストを行うようにしても良い。なお、図13に示す低回転・高負荷領域についても、摺動浮揚の実現が困難な領域となる。従って、この低回転・高負荷領域においても、潤滑アシストを行うようにしても良い。
図14は、本実施形態の往復動ピストンエンジンの制御系を示すブロック図である。前記制御系は、オイル供給機構60(オイルポンプ61)によるオイルの供給動作(潤滑アシスト)を制御する制御部81を備える。また、往復動ピストンエンジンには、エンジン回転センサ82、筒内圧力センサ83及びアクセル開度センサ84が付設され、制御部81はこれらセンサからエンジン本体1の状態情報を取得する。
エンジン回転センサ82は、クランク軸7の回転数を検出する。筒内圧力センサ83は、気筒2内の燃焼圧力を検出する。アクセル開度センサ84は、図略のアクセルペダルの開度(スロットルバルブの開度)を検出する。制御部81は、エンジン回転センサ82の検出結果に基づいて、エンジン本体1が所定の高回転領域であるか否かを判定する。そして、エンジン本体1が前記高回転領域に達した場合、オイルポンプ61を動作させて、吐出口67A、吐出口69Aから隙間Gにオイルを吐出させる。一方、前記高回転領域に達していない場合は、前記オイルの吐出を停止させる。
制御部81は、筒内圧力センサ83及びアクセル開度センサ84の検出結果に基づいて、エンジン本体1が所定の高負荷領域であるか否かを判定する。この判定処理は、例えばエンジン本体1が高回転且つ高負荷の状態であるとの条件が満たされた場合のみ、クランクジャーナル71への潤滑アシストを行う場合などに実行される。この場合、制御部81は、高回転・低負荷の状態ではクランクピン72(吐出口69A)のみからオイルを吐出させる。一方、制御部81は、高回転・高負荷の状態では、クランクピン72(吐出口69A)及びクランクジャーナル71(吐出口67A)の双方からオイルを吐出させる。この実施形態では、図2に示す給油管路65の適所に、オイル供給及び停止を切り換える開閉弁が設けられる。
図15は、制御部81によるオイルの供給動作を示すフローチャートである。ここでは、エンジン本体1が高回転領域に達したか否かを潤滑アシストの実行条件とする制御例を示す。制御部81は、上述の空気浮揚(摺動浮揚)が実現されている運転時において、所定のサンプリングタイミングに、エンジン回転センサ82からクランク軸7の回転数(エンジン回転数)に関するデータを取得する(ステップS1)。次に制御部81は、予め定めた閾値回転数と取得したエンジン回転数とを比較し、現状の回転数が高回転領域か否かを判定する(ステップS2)。
高回転領域である場合(ステップS2でYES)、制御部81は、現状でオイルポンプ61が動作中であるか否かを確認する(ステップS3)。オイルポンプ61が動作していなければ(ステップS3でNO)、制御部81は、オイルポンプ61に動作信号を与えて動作を開始させ、所定量のオイルを吐出口67A、吐出口69Aから吐出させる(ステップS4)。一方、オイルポンプ61が既に動作している状態であれば(ステップS3でYES)、ステップS4はスキップする。
これに対し、エンジン回転数が高回転領域には至っていない場合(ステップS2でNO)、制御部81は、オイルポンプ61の停止状態を維持する。或いは、オイルポンプ61が動作中である場合には、制御部81はオイルポンプ61の動作を停止させる(ステップS5)。しかる後、エンジン本体1に停止指示が与えられているか否かが判定される(ステップS6)。停止指示が存在しない場合は(ステップS6でNO)、ステップS1に戻って処理が繰り返される。停止指示が存在する場合は(ステップS6でYES)、処理を終える。
[作用効果]
以上説明した本実施形態に係る往復動ピストンエンジンによれば、次のような作用効果を奏する。本実施形態のクランク機構は、軸受けメタル20の内周面20A(第1摺動面)とクランクピン72の外周面72A(第2摺動面)とが対峙する軸受け構造部と、軸受けメタル21の内周面21A(第1摺動面)とクランクジャーナル71の外周面71A(第2摺動面)とが対峙する軸受け構造部とを含む。内周面20A、21Aは、軸方向と直交する断面において、前記対峙する方向へ張り出す張出形状部M1、M2を有する。張出形状部M1、M2は、頂部Pにおける最小隙間h1が0.5μm〜40μmの範囲に設定されると共に、最小隙間h1と最大隙間h2との隙間比h2/h1が1.5〜5.0の範囲に設定される。このため、対峙する内周面20A、21Aと外周面72A、71Aとの相対移動時に、隙間Gに流入する流体によって、内周面20A、21Aを外周面72A、71Aから浮揚させることが可能となる。すなわち、内周面20A、21Aが有する張出形状部M1、M2の形状的特徴(プロファイル)によって、浮揚効果を得ることができる。従って、内周面20A、21Aと外周面72A、71Aとの間の摺動抵抗を格段に低減することができる。
さらに、クランク機構の各部位の慣性力が増大するエンジンの高回転領域、つまり浮揚効果が得にくくなる運転領域においては、制御部81がオイルポンプ61を制御して、内周面20A、21Aと外周面72A、71Aとの間の隙間Gに低粘度オイルを供給させる。これにより、高回転領域において良好な浮揚効果が得られない場合でも、オイルポンプ61の隙間Gへの介在によって、第1摺動面と第2摺動面との摩擦抵抗が低い状態を維持させることが可能となる。
張出形状部M1は、コンロッド8のビッグエンド8Bとクランクピン72との軸受け構造部に適用されている。コンロッド8は、エンジン本体1が高回転になるほど慣性力が増大する。この慣性力に基づく荷重、特に燃焼工程時にピストンから与えられる爆発荷重が、ビッグエンド8Bとクランクピン72とからなる軸受け構造部に伝達される。このため、エンジンの高回転領域において摺動浮揚の効果が阻害され易い。しかし、本実施形態では、エンジン本体1の高回転時に制御部81が隙間Gに低粘度オイルを供給させるので、摺動浮揚がキャンセルされた場合でも摩擦抵抗が低い状態を維持させることができる。
張出形状部M2は、軸受け部3Cとクランクジャーナル71との軸受け構造部にも適用されている。この軸受け構造部にも、前記爆発荷重が2次的に伝達されるが、エンジン本体1の高回転時に制御部81が隙間Gに低粘度オイルを供給させることで、摩擦抵抗が低い状態を維持する。特に、エンジンが高負荷領域に達すると、クランク軸7に撓み変形が生じる傾向があり、前記撓み変形により摺動浮揚効果が阻害され易い。しかし、エンジンが高回転且つ高負荷領域に達したとき、隙間Gへ低粘度オイルを供給させることで、摺動浮揚がキャンセルされた場合でも摩擦抵抗が低い状態を維持させることができる。
また、最小隙間h1が、0.5μm〜1.5μmの範囲に設定し、隙間Gへ空気を流入させる空気浮揚を発現させれば、最も摺動面間の摩擦抵抗を小さくすることができる。また、低粘度オイルを隙間Gに供給することで、摺動浮揚効果が得られ難いエンジンの運転シーンにおいて、良好な潤滑性を得ることができる。
[他の変形実施形態の説明]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、潤滑性流体として低粘度オイルを用い、オイル供給機構60が隙間Gへオイルを供給する例を示した。これに代えて、潤滑性流体として水を用い、オイル供給機構60に類する水供給機構にて、隙間Gへ水を供給するようにしても良い。
また、上記実施形態では隙間Gへ流入させ摺動浮揚を発現させる流体Fとして空気を例示したが、流体Fとして水を用いても良い(水浮揚)。この場合においても、潤滑性流体として低粘度オイルを用いることができる。なお、流体Fとして水を用いる場合は、防錆剤を添加することが望ましい。さらに、流体Fとして、0W−20のような低粘度オイルを用いることもできる(オイル浮揚)。この場合、潤滑性流体としては、0W−20よりも粘度の高いオイルを用いることができる。
1 エンジン本体
2 気筒
20 軸受けメタル(第1部材)
20A 内周面(第1摺動面)
21 軸受けメタル(第1部材)
21A 内周面(第1摺動面)
3 シリンダブロック3
3C 軸受け部
5 ピストン
60 オイル供給機構(流体供給部)
61 オイルポンプ
7 クランク軸
71 クランクジャーナル(第2部材)
71A 外周面(第2摺動面)
72 クランクピン(第2部材)
72A 外周面(第2摺動面)
8 コンロッド
8B ビッグエンド(大端部)
81 制御部
h1 最小隙間
h2 最大隙間
C1、C2 摺動方向
M1、M2 張出形状部
P 頂部
Q 裾部

Claims (6)

  1. ピストン及びクランク機構を備えた往復動ピストンエンジンであって、
    前記クランク機構において軸受け部材となり、第1摺動面を内周に有する第1部材と、
    前記クランク機構において軸部材となり、前記第1摺動面と隙間を置いて対峙する第2摺動面を外周に有する第2部材と、
    オイルによる潤滑アシストを行う際に、前記第1摺動面と前記第2摺動面との間の隙間に潤滑性流体として、粘度が空気の粘度よりも大きく6.8×10−3[Pa・s]以下の低粘度オイルを供給する流体供給部と、
    前記流体供給部による前記低粘度オイルの供給動作を制御する制御部と、を備え、
    前記第1部材に対する前記第2部材の相対回転により、前記第1摺動面及び前記第2摺動面は各々所定の摺動方向に相対的に移動し、
    前記第1摺動面及び前記第2摺動面のいずれか一方は、軸方向と直交する断面において、前記対峙する方向へ張り出す張出形状部を有し、
    前記摺動方向への相対的な移動において、前記第1摺動面及び前記第2摺動面のうち前記張出形状部を有する方の摺動面を前記摺動方向への移動側、前記張出形状部を有していない方の摺動面を固定側と扱う場合に、前記張出形状部は、最も張り出した部分となる1つの頂部と、前記移動側の摺動面の前記摺動方向において前記頂部の下流側に配置され最も前記固定側の摺動面に対して離間した位置となる裾部とを含み、
    前記張出形状部において、前記頂部における前記隙間を最小隙間h1とし、前記裾部における前記隙間を最大隙間h2とするとき、
    h1=0.5μm〜1.5μm、
    h2/h1=1.5〜5.0、
    の範囲に設定され、
    前記制御部は、当該往復動ピストンエンジンの回転数が所定の高回転領域に達したとき、前記潤滑アシストとして、前記隙間へ前記低粘度オイルが供給されるよう前記流体供給部を制御する、往復動ピストンエンジン。
  2. ピストン及びクランク機構を備えた往復動ピストンエンジンであって、
    前記クランク機構において軸受け部材となり、第1摺動面を内周に有する第1部材と、
    前記クランク機構において軸部材となり、前記第1摺動面と隙間を置いて対峙する第2摺動面を外周に有する第2部材と、
    オイルによる潤滑アシストを行う際に、前記第1摺動面と前記第2摺動面との間の隙間に潤滑性流体として、低粘度オイル0W−20を供給する流体供給部と、
    前記流体供給部による前記低粘度オイル0W−20の供給動作を制御する制御部と、を備え、
    前記第1部材に対する前記第2部材の相対回転により、前記第1摺動面及び前記第2摺動面は各々所定の摺動方向に相対的に移動し、
    前記第1摺動面及び前記第2摺動面のいずれか一方は、軸方向と直交する断面において、前記対峙する方向へ張り出す張出形状部を有し、
    前記摺動方向への相対的な移動において、前記第1摺動面及び前記第2摺動面のうち前記張出形状部を有する方の摺動面を前記摺動方向への移動側、前記張出形状部を有していない方の摺動面を固定側と扱う場合に、前記張出形状部は、最も張り出した部分となる1つの頂部と、前記移動側の摺動面の前記摺動方向において前記頂部の下流側に配置され最も前記固定側の摺動面に対して離間した位置となる裾部とを含み、
    前記張出形状部において、前記頂部における前記隙間を最小隙間h1とし、前記裾部における前記隙間を最大隙間h2とするとき、
    h1=0.5μm〜1.5μm、
    h2/h1=1.5〜5.0、
    の範囲に設定され、
    前記制御部は、当該往復動ピストンエンジンの回転数が所定の高回転領域に達したとき、前記潤滑アシストとして、前記隙間へ前記低粘度オイル0W−20が供給されるよう前記流体供給部を制御する、往復動ピストンエンジン。
  3. 請求項1又は2に記載の往復動ピストンエンジンにおいて、
    前記クランク機構が、クランクピンとクランクジャーナルとを含むクランク軸と、前記クランクピンと前記ピストンとを連結するコンロッドとを備え、
    前記第1部材が、前記コンロッドの大端部であり、
    前記第2部材が、前記クランクピンである、往復動ピストンエンジン。
  4. 請求項1又は2に記載の往復動ピストンエンジンにおいて、
    前記クランク機構が、クランクピンとクランクジャーナルとを含むクランク軸と、前記クランクピンと前記ピストンとを連結するコンロッドとを備え、
    前記第1部材が、前記クランク軸の軸受け部であり、
    前記第2部材が、前記クランクジャーナルである、往復動ピストンエンジン。
  5. 請求項4に記載の往復動ピストンエンジンにおいて、
    前記制御部は、前記回転数が所定の高回転領域に達し、且つ、当該往復動ピストンエンジンの負荷が所定の高負荷領域に達したとき、前記隙間へ前記低粘度オイルが供給されるよう前記流体供給部を制御する、往復動ピストンエンジン。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の往復動ピストンエンジンにおいて、
    前記第1部材と前記第2部材とが同一材質である、往復動ピストンエンジン。
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