JP6542848B2 - レーザ切断用ノズル製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザ切断用ノズル製造方法に係る。
レーザ切断加工に用いる加工ノズルとして、インナノズルとアウタノズルとを一体化した二重ノズルが知られており、一例が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載された加工ノズルは、インナノズルの先端位置がアウタノズルの先端位置よりも内部に引き込んだ位置にある。
そして、レーザ光は、インナノズルの先端の中心孔からアウタノズルの先端アシストガス噴出口を通ってノズル外に出射させる。
一方、アシストガスは、インナノズルの中心孔を通ったガスと、インナノズルとアウタノズルとの間に設けられたバイパス用切り欠きを通ったガスと、を合流させ、アシストガス噴出孔からノズル外に噴出させるようになっている。
特許第3749356号公報
特許文献1に記載されたような加工ノズルは、アシストガスを酸素とした炭酸ガスレーザによる切断加工に用いた場合、軟鋼板の切断においては板厚によらず良好に切断することができる。
一方、この加工ノズルを、近年急速に普及したファイバレーザによる切断加工に用いた場合、軟鋼板の比較的厚いワークにおいてベベル量が増加する傾向にあることが経験的に把握されている。
ここでベベル量は、切断後の、ノズル側(ワークの表面側)のカーフ幅に対するノズル反対側(ワークの裏面側)のカーフ幅の増分である。すなわち、ベベル量が増加すると、切断面の傾斜が光軸に対してより大きくなり、ノズル反対側の切断幅が広がることになる。
このベベル量の増加を、板厚に応じて抑制する方法は未だ確立してなく、最適条件設定を探りながら加工を行っているのが現状である。
そのため、ワークの板厚によらず、良好な切断加工を、安定的、かつ効率的に実行できる工夫が望まれていた。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ワークの厚さによらず、良好な切断加工を安定的かつ効率的に行えるレーザ切断用ノズル製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明は次の手順を有する。
1) インナノズルとアウタノズルとを組み合わせた二重ノズルのレーザ切断用ノズルを製造するレーザ切断用ノズル製造方法であって、
前記インナノズルを、軸線上に延びる貫通孔を有して一端側が縮径した管状にすると共に他端側の外周面に前記軸線方向に延びる切り込み部を設けて形成し、
前記アウタノズルを、前記インナノズルの前記外周面に嵌合させた状態で、前記切り込み部を含み両端間を前記軸線方向に連通する通気路を有するよう形成し、
前記通気路の最小流路断面積を前記切り込み部の流路断面積にすると共に、前記他端側の端面における、前記切り込み部の開口面積の大小又は前記切り込み部の数の大小を、予め切断に供する軟鋼板の複数の板厚それぞれに対応してベベル量が所定値以下になるという判定基準で得た流量比に基づく前記最小流路断面積の大小に応じて決めることを特徴とするレーザ切断用ノズル製造方法である。
本発明によれば、軟鋼板のワークの厚さによらず、良好な切断加工を安定的かつ効率的に行える、という効果が得られる。
図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ切断用ノズルの実施例であるノズル51を説明するための断面図である。 図2は、ノズル51を構成するインナノズル1の断面図である。 図3は、インナノズル1の上面図である。 図4は、ノズル51を構成するアウタノズル11の断面図である。 図5は、図1におけるS1−S1位置での断面図である。 図6は、図1におけるS2−S2位置での断面図である。 図7は、図1におけるS3−S3位置での断面図である。 図8は、ノズル51を加工ヘッド61の筐体62に取り付けた状態及びアシストガスの流れを説明するための断面図である。 図9は、流路断面積Saとアウタ流FL2との関係を示すグラフである。 図10は、板厚Tとベベル量が許容範囲となる流量比Qとの関係を示すグラフである。 図11は、板厚Tと設定する流量比Qとの第1の対応づけを説明するためのグラフである。 図12は、板厚T11〜T15と流量比Q11〜Q15とノズル511〜515との対応づけを説明するための表である。 図13は、板厚Tと設定する流量比Qとの第2の対応づけを説明するためのグラフである。 図14は、板厚T21〜T25と流量比Q21〜Q25とノズル521,522との対応づけを説明するための表である。 図15は、ノズル1の基部1aの変形例を説明する図であり、(a)は基部1aAを、(b)は基部1aBを説明する図である。
本発明の実施の形態に係るレーザ切断用ノズルを、実施例のノズル51により説明する。ノズル51は、ファイバレーザ加工機における周知構造の加工ヘッドに着脱自在に装着される。
まず、ノズル51の構成について、図1〜図4を参照して説明する。以下の説明において、上下方向を、便宜的に使用姿勢における方向として図中矢印の方向に規定する。
ノズル51は、図1に示されるように、インナノズル1とアウタノズル11との組み合わせとして構成されている。まず、それぞれを詳述する。
(インナノズル1:図1〜図3を参照)
図2はインナノズルの縦断面図であり、図3は上面図である。図2は、図3におけるS−S位置での断面図である。
インナノズル1は、軸線CL1を中心軸とする管状に形成されている。
インナノズル1は、外径D1で上下方向に延びる基部1aと、基部1aの下部に連結された外径D1よりも小さい外径D2の中間部1bと、中間部1bの下部に接続し下方に向かうに従って傾斜角度θaで縮径して先端が外径D3となる縮径部1cと、を有する。傾斜角度θaは、図2において縮径部1cと軸線CL1とがなす劣角である。
基部1aには、周方向に角度ピッチPt1にて切り込み部として形成された複数のDカット部1a1〜1a3が形成されている。この例において角度ピッチPt1は120°であって3つのDカット部1a1〜1a3が形成されている。
Dカット部1a1〜1a3は、軸線CL1に平行で上下方向に延び、軸線CL1に対し距離L1の平行平面として形成されている。ここで、Dカット部1a1〜1a3の最大切り込み量を距離L2とする。
すなわち、距離L2=(外径D1/2)−距離L1である。
基部1aのDカット部1a1〜1a3が形成されていない部分の下端の周縁部には、下方に円弧状に突出した3つの突き当て部1a5が形成されている(図3において破線で図示)。
インナノズル1の製造工程に基づいて換言するならば、突き当て部1a5は、Dカット部1a1〜1a3を形成する前に環状で下方に突出した部分が、Dカット部1a1〜1a3の形成によってその部分が除去され円弧状に残存したものである。
インナノズル1は、貫通孔2を有する。貫通孔2は、インナノズル1の上端面3に開口し、下方へ向かうに従って縮径する内縮径部2aと、内縮径部2aの下部に接続し同一内径で下端面4に開口する出力孔2bと、を有する。
(アウタノズル11:図1及び図4参照)
アウタノズル11は、軸線CL11を中心軸とする管状に形成されている。
アウタノズル11は、雄ねじ部11a1を有する基部11aと、軸線CL11に対し直交する当て面11b1を有して径方向外側に張り出したフランジ部11bと、フランジ部11bの下面側に接続し、下方先端に向かうに従って、軸線11a側に凹む曲面で縮径する縮径部11cと、を有する。
アウタノズル11は、上端面15と下端面16とを繋ぐ貫通孔12を有する。
貫通孔12は、内径D4で上下方向に延びる基孔部12aと、基孔部12aの下端に、軸線CL11に直交する突き当て面13aを有する上段部13を形成して内径D4より小さい内径D5で下方に延びる中間孔部12bと、中間孔部12bの下端に軸線CL11に直交する段付き面14aを有する下段部14を形成して下方に向かうに従って縮径し、アウタノズル11の下端面16に開口する縮径孔部12cと、を有する。縮径孔部12cは、インナノズル1の縮径部1cと同じ傾斜角度θaで傾斜している。
内径D4と内径D5との径差は、例えば0.4mmとされる。従って、突き当て面13aの径方向幅は0.2mmである。
一方、Dカット部1a1〜1a3の切り込み量である距離L2(図3)は、0.6mmとされる。
アウタノズル11の内径D4は、インナノズル1の基部1aの外径D1に対し最適な圧入しろを有するように設定されている。
ノズル51の組み立てにおいて、インナノズル1とアウタノズル11とは、アウタノズル11の貫通孔12に対し上方からインナノズル1を強嵌合させることで一体化される。
詳しくは、インナノズル1の基部1aをアウタノズル11の貫通孔12の基孔部12aに圧入する。
アウタノズル11に対するインナノズル1の軸方向位置は、インナノズル1の突き当て部1a5が、アウタノズル11の突き当て面13aに当接することで位置決めされる。
この位置決め済みの状態で、ノズル51は、インナノズル1の上端面3及び下端面4と、アウタノズル11の上端面15及び下端面16のそれぞれとが、ほぼ同じ面(同じ軸方向位置)となっている。
図1に示されるように、ノズル51は、インナノズル1の貫通孔2とは別に独立して、インナノズル1とアウタノズル11との間に、軸線方向(上下方向)の両端面間を連通して気体流通を可能とする通気路GRを有する。
具体的には、通気路GRは、上方側から、上部通気路GRa,中間通気路GRb,及び下部通気路GRcの概ね3つの部分を有する。
この3つの部分について、図5〜図7を参照して説明する。図5〜図7は、それぞれ図1におけるS1−S1位置〜S3−S3位置での断面図である。ここでS3−S3位置の図7は、下部通気路GRcの傾斜した延在方向に直交する方向での断面図である。
まず、上部通気路GRaは、図5に示されるように、インナノズル1のDカット部1a1〜1a3と、アウタノズル11の基部11aとの間の上下に延びる隙間(網点部分)として形成される。この例で3つとなる各隙間の断面積(円弧と弦とに囲まれた弓形の断面積)の合計を、流路断面積Saとする。
中間通気路GRbは、図6に示されるように、3つの上部通気路GRaが下部で接続し1つの環状空間として形成されている。
詳しくは、中間通気路GRbは、インナノズル1の中間部1bの外周面1b1とアウタノズル11の中間孔部12bの内周面12b1との間の上下に延びる隙間(環状の網点部分)として形成される。この環状の隙間の断面積を、流路断面積Sbとする。
下部通気路GRcは、図7に示されるように、インナノズル1の縮径部1cの外周面1c1とアウタノズル11の縮径部11cの内周面11c1との間に上下で径拡縮する隙間(環状の網点部分)として形成される。下部通気路GRcは、ノズル51の下端面において、貫通孔2の出力孔2bを囲む開口部GRc1として開口している。この例において、開口部GRc1は環状であり、開口部GRc1の面積を開口面積Scとする。
ノズル51は、上部通気路GRaの流路断面積Saが、流路断面積Sb及び開口面積Scよりも小さく設定されている。
より詳しくは、上部通気路GRaの流路断面積Saは、そのノズル51の上端面15の流入開口部GRa1(図1参照)における開口面積Sa1と等しく、通気路GRにおける上部通気路GRaよりも下方のいずれの位置の断面積よりも小さく設定されている。
これにより、通気路GRの流路断面積は、上部通気路GRaにおいて最も狭い最小流路断面積Sminとなり、通気路GRに気体を流した場合の流量は、上部通気路GRaによって規制される。
従って、通気路GRの断面積が異なるノズル51を製造した場合、通気路GRに流せる流量の多少は、ノズル51を上方から見たときの流入開口部GRa1の開口面積Sa1の違いで判別可能である。
図8は、上述のノズル51を、加工ヘッド61に取り付けた状態の一例を示す縦断面図である。ノズル51は、加工ヘッド61の筐体62の先端に着脱自在に螺着される。ノズル51が筐体62に螺着した状態で、軸線CL1は集光レンズ63の光軸CL63と一致している。
ノズル51に対し、ファイバレーザ発振器(不図示)から供給されたレーザ光LSが、集光レンズ63により集光されてノズル51の貫通孔2を通して下方に出射される。
筐体62には、ガス供給口64が設けられており、外部からアシストガス(酸素など)が、ガス供給口64を通して筐体62の内部空間Vaに供給される。
内部空間Vaに供給されたアシストガスは、インナ流FL1とアウタ流FL2とに分流して外部に噴出する。すなわち、供給されたアシストガスの一部がインナ流FL1として貫通孔2の出力孔2bを通して下方に噴出すると共に、残りはアウタ流FL2として上部通気路GRaに流入開口部GRa1から進入し、中間通気路GRbを通って下部通気路GRcの開口部GRc1からインナ流FL1を環状に取り囲むように独立して下方に噴出される。
ここでインナ流FL1及びアウタ流FL2の流量を、それぞれQ1(L/min)、Q2(L/min)とする。インナ流FL1及びアウタ流FL2の圧力は、図8に示された共通の内部空間Vaからの分岐であり、等しくなる。
発明者らは、アウタ流FL2とインナ流FL1との流量比Q(=Q2/Q1)に着目し、流量比Qとベベル量との関係を実験により調べた。
具体的には、ノズル51の貫通孔2の形状を流路断面積が同じになるものとし、上部通気路GRaの流路断面積Saを、例えば、切り込み量である距離L2を変えるなどして異ならせ、アウタ流FL2とインナ流FL1との流量比Q(=Q2/Q1)の異なる複数種のノズル51を作成した。
そして、流路断面積Saと流量比Qとの関係、及びそれぞれのノズルを用いて、軟鋼板の異なる板厚のワークの切断加工を行い、得られた切断面のベベル量を調べた。軟鋼板としてSS400の板を用いた。
その結果、まず、図9に示されるように、上部通気路GRaの流路断面積Saが極端に小さくない実用領域において、流路断面積Saとアウタ流FL2の流量Q2とは、概ね正の相関で線形関係にあることがわかった。
また、板厚の異なる各ワークの切断加工においてベベル量が許容範囲となる流量比Qを抽出したところ、図10に示される結果を得た。ここで、ベベル量の許容範囲を、0.15mm以下と設定している。
図10は、軟鋼板のワークの板厚T(横軸)と、切断面のベベル量が許容範囲となった流量比Q(縦軸)の範囲との関係を示している。
以下、12mmの板厚を板厚T1とし、25mmの板厚を板厚T2として説明する。板厚T1〜T2は、ファイバレーザ切断加工に供される軟鋼板の一般的な板厚範囲である。
図10に示される結果について、具体的に説明する。
流量比下限特性Qaは、板厚T1からT2までの、ベベル量が許容範囲となる流量比Qの下限値を示している。
流量比上限特性Qbは、板厚T1からT2までの、ベベル量が許容範囲となる流量比Qの上限値を示している。
流量比中央特性Qcは、板厚T1からT2までの、流量比上限特性Qbと流量比下限特性Qaとの中央値を示している。
板厚16mm、19mm、22mmに対応したプロットは、図10に示される特性を得るべく測定した複数の実測データの一部として記載してある。
各プロットの具体的なデータは次の通りである。
板厚16mm : インナ流FL1の流量Q1=19.6(L/min)
アウタ流FL2の流量Q2=20.0(L/min)
流量比Q=1.02
ベベル量:0.07mm
板厚19mm : インナ流FL1の流量Q1=22.1(L/min)
アウタ流FL2の流量Q2=27.7(L/min)
流量比Q=1.25
ベベル量:0.08mm
板厚22mm : インナ流FL1の流量Q1=24.9(L/min)
アウタ流FL2の流量Q2=31.7(L/min)
流量比Q=1.27
ベベル量:0.09mm
ここで、任意の板厚Tk(T1≦Tk≦T2)における流量比上限特性Qbと流量比下限特性Qaと間の範囲を、適正流量比範囲ΔQkとする。
図10に示される結果から、次のことが判明した。
板厚T1から板厚T2の範囲で、ノズル51を用いた切断加工でベベル量が許容範囲となる流量比Qの範囲(適正流量比範囲ΔQk)が存在する。
適正流量比範囲ΔQkは、板厚T1から板厚T2の範囲で概ね一定となっている。
流量比中央特性Qcは、板厚T1〜T2の範囲において、板厚Tが増加するほど増加する傾向にある。
すなわち、板厚T1〜T2の範囲内において、薄厚いずれか一方(例えば薄い板厚)の板厚のワークの切断加工で適切なベベル量が得られる流量比Qで、他方(厚い板厚)の板厚のワークの切断加工を行った場合に、必ずしも適正なベベル量が得らないことを示している。これは、従来の二重ノズルを用いたファイバレーザ切断加工において、板厚が厚い場合にベベル量が増加して好ましい切断面が得られない傾向を、裏付けるものと言える。
図10からは直接得られないが、付随結果として、流量比中央特性Qcは、加工後の切断面の品質が、適正流量比範囲ΔQkの中で最も好ましくなる流量比であることが判明した。
この結果から、軟鋼板であるワークのファイバレーザでの切断加工を、加工するワークの板厚Tに適した流量比Qを有するノズル51を用いて実行することで、ベベル量が抑制された良好な切断品質が得られることが判明した。
そこで、ノズル51を用いたファイバレーザでの切断加工は、例えば、次の方法で行うとよく、図11及び図12を参照して説明する。
(S1)予め、JISなどで定められる標準板厚毎に、試加工によって流量比下限特性Qa及び流量比上限特性Qbを求めて適正流量比範囲ΔQkを把握しておく。ここでは、流量比下限特性Qa及び流量比上限特性Qbが図11に示される特性として得られたものとする。
(S2)ワークの標準板厚のうちの板厚T11〜T15それぞれに対応した適正流量比範囲ΔQk内の流量比を有するノズル511〜515を作成する。
ここでは、図12に示されるように、ノズル511〜515を、板厚T11〜T15それぞれに対応した流量比中央特性Qcである流量比Q11〜Q15を有するものとして作成する。
(S3)加工ヘッド61に、次に加工するワークの板厚T11〜T15それぞれに応じたノズル511〜515を選択装着し、本加工を行う。例えば、板厚T13のワークを切断加工する場合、ノズル513を選択して装着し、本加工を行う。
ノズル51の作成にあたり、板厚Tに対応して設定する流量比Qとして、流量比中央特性Qcの値を採用することは、良好な切断面品質を得る観点で望ましい。ただし、採用する流量比Qの値は、これに限らず、適正流量比範囲ΔQkで得られる適正流量比領域ARR(図11の点P1〜P4で囲まれたハッチング領域)内の、各板厚Tに対応した値であればよい。
そこで、加工するワークの板厚毎に異なるノズル51を用意する替わりに、適正流量比領域ARRに含まれる中で隣接する板厚を、できるだけ同じノズル51で対応づけるようにしてもよい。
この方法について図13及び図14を参照して説明する。
図13の流量比下限特性Qa及び流量比上限特性Qbは、板厚T21〜T25の範囲で便宜的に図11と同じとする。
図13及び図14に示されるように、板厚T21〜T23については、そのすべてにおいて適正流量比領域ARRに含まれる流量比Q21を設定する。そして、流量比Q21となるノズル521を作成し、図14のように板厚と対応づける。
一方、板厚T24,T25については、流量比Q21は適正流量比領域ARRから外れている。そこで、板厚T24,T25両方について適正流量比領域ARR内となる、流量比Q21とは異なる流量比Q22を設定し、流量比Q22となるノズル522を作成し、板厚と対応づける。
この方法によれば、流量比中央特性Qcの値が異なる板厚毎に必ずしもノズルを作成する必要がない。そのため、製造及びノズル管理の観点でコスト低減可能であり、ノズル交換時間が短縮でき生産効率低下を抑制できる。
流量比Qの異なるノズル、例えば図12に示されたノズル511〜515は、アウタノズル11に対するインナノズル1の軸方向の位置決め構造が次のようになっている。
すなわち、インナノズル1の突き当て部1a5が突き当てられるアウタノズル11の突き当て部1a5の径方向幅が、Dカット部1a1〜1a3の最大切り込み距離L2に対して十分小さく設定され、突き当て部1a5が最小絞りとならないようになっている。
このように、通気路GRにおける最小絞りの、すなわち最小流路断面積Sminとなる部位は、上部通気路GRaに設定されている。
流量比Qの違いが、上端面3と上端面15との間の開口面積Sa1の違いとして反映される。すなわち、ノズル511〜515の判別が外観上で可能となっている。
これにより、ノズル511〜515は、加工ヘッド61の筐体62に誤装着する可能性が低減し、ワークの板厚Tに応じた最適な切断加工をより確実に実行できる。
既述のように、ノズル51は、インナノズル1の下端面4と、アウタノズル11の下端面16とが、ほぼ同じ高さ位置(軸方向位置)にある。
これにより、インナ流FL1とアウタ流FL2とが混合して噴出することはなく、それぞれ独立した気流としてワークに噴射される。
そのため、流量比Qは切断態様に直接影響を与えるものとなり、ベベル量を制御するパラメータとして有効になっている。
もちろん、インナノズル1の下端面4とアウタノズル11の下端面16との高さが異なって段差が生じていたとしても、インナ流FL1とアウタ流FL2とが独立気流としてワークに噴出されていれば、流量比Qはベベル量を制御するパラメータとして有効である。また、下端面4,16の高さ方向の段差の程度(高さ方向の位置の差)が大きくなってインナ流FL1及びアウタ流FL2の独立程度が低下しても、ある程度の独立性が確保されていれば、流量比Qのベベル量制御効果は、程度が小さくとも発揮されることは言うまでもない。
上述のように、板厚の比較的大きな領域において、流量比Qを高くすることでベベル量の増加を抑制できる理由は、次のように推察される。
すなわち、流量比Qを高めるということは、インナ流FL1に対し、軸線CL1に収束する傾斜環流として噴出するアウタ流FL2の流量比率を高めることになり、ワークの下部(ノズルとは反対側)において、アシストガス全体の流束拡張が抑制されて酸素の供給過剰を回避できているため、と考えられる。
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
インナノズル1の基部1aを、上部通気路GRaを形成する切り込み部として3つのDカット部1a1〜1a3を有するものとして説明したが、切り込み部の数Nは3に限定されない。
例えば、図15(a)に示されるように、基部1aを、切り込み部として4つのDカット部1aA1〜1aA4を有する基部1aAとしてもよい。 また、断面形状はDカット態様でなくてもよい。例えば、図15(b)に示されるように、基部1aを、上下方向に、例えば矩形断面で延びる切り込み部としての溝部1aB1〜1aB4を有する基部1aBとしてもよい。
図15(a),(b)では、切り込み部により形成された通気路GRaに対応する部分に、網点を付してある。
図12及び図14で示された複数のノズルの流量比Qの違いを、上部通気路GRaを形成する切り込み部の数Nに対応させてもよい。
流量比Qの異なるノズルを、開口面積Sa1の違いではなく、切り込み部の数N、換言するならば、流入開口部GRa1の数Nで分別できるので、分別作業を、高効率かつ少ない判別エラーで行える。
流量比Qの異なるノズルを作成する場合、インナノズル1の貫通孔2の内径寸法を共通にする例を説明したが、貫通孔2の内径寸法を異ならせてもよい。
貫通孔2の内径寸法を異なるものとする場合は、上部通気路GRaの開口面積Sa1の違いが直接流量比Qの違いに対応しないことから、切り込み部の数Nと流量比Qとを対応させることが望ましい。
流量比下限特性Qa及び流量比上限特性Qbを、ベベル量が所定値以下となる、という基準で判定する例を説明したが、ベベル量のみならず、ベベル量を含む切断面の品質全体が流量比Qに依存している。そこで、流量比下限特性Qa及び流量比上限特性Qbは、ベベル量以外の項目、例えば、表面粗さの大小や付着物の量、などに基づいて判定してもよい。もちろん、切断面のトータル品質の良否で判定してもよい。
通気路GRの流路断面積は、下部通気路GRcの開口部GRc1における開口
面積Scを最小流路断面積Sminとしてもよい。この場合、通気路GRに気体を流した場合の流量は、開口部GRc1によって規制される。
換言するならば、下部通気路GRcにおける開口部GRc1の開口面積Scを、上部通気路GRaの流路断面積Saよりも小さく、かつ、中間通気路GRbの流路断面積Sbよりも小さく設定する。
この場合、最小流路断面積Sminが異なるノズル51を製造した場合、通気路GRに流せる流量の多少は、ノズル51を下方から見たときの開口部GRc1の開口面積Scの違いで判別可能となる。
1 インナノズル
1a,1aA,1aB 基部
1a1〜1a3,1aA1〜1aA4 Dカット部(切り込み部)
1aBa〜1aB4 溝部(切り込み部)、 1a5 突き当て部
1b 中間部、 1b1 外周面、 1c 縮径部、 1c1 外周面
2 貫通孔、 2a 内縮径部、 2b 出力孔
3 上端面
4 下端面
11 アウタノズル
11a 基部、 11a1 雄ねじ部、 11b フランジ部
11b1 当て面、 11c 縮径部、 11c1 内周面
12 貫通孔
12a 基孔部、 12b 中間孔部、 12b1 内周面
12c 縮径孔部
13 上段部、 13a 突き当て面
14 下段部、 14a 段付き面
15 上端面
16 下端面
51,511〜515,521,522 ノズル
61 加工ヘッド
62 筐体
63 集光レンズ
64 ガス供給口
ARR 適正流量比領域
CL1,CL11 軸線、 CL63 光軸
D1,D2,D3 外径、 D4,D5 内径
FL1 インナ流、 FL2 アウタ流
GR 通気路
GRa 上部通気路、 GRa1 流入開口部、 GRb 中間通気路
GRc 下部通気路、 GRc1 開口部
LS レーザ光、 L1,L2 距離
N (切り込み部の)数
Pt1 角度ピッチ
P1〜P4 点
Q,Q11〜Q15,Q21,Q22 流量比
Qa 流量比下限特性、 Qb 流量比上限特性、 Qc 流量比中央特性
Q1,Q2 流量
Sa,Sb 流路断面積
Sa1 開口面積、 Sc 開口面積、 Smin 最小流路断面積
T1〜T2,T11〜T15,T21〜T25 板厚
Va 内部空間
θa 傾斜角度
ΔQk 適正流量比範囲

Claims (1)

  1. インナノズルとアウタノズルとを組み合わせた二重ノズルのレーザ切断用ノズルを製造するレーザ切断用ノズル製造方法であって、
    前記インナノズルを、軸線上に延びる貫通孔を有して一端側が縮径した管状にすると共に他端側の外周面に前記軸線方向に延びる切り込み部を設けて形成し、
    前記アウタノズルを、前記インナノズルの前記外周面に嵌合させた状態で、前記切り込み部を含み両端間を前記軸線方向に連通する通気路を有するよう形成し、
    前記通気路の最小流路断面積を前記切り込み部の流路断面積にすると共に、前記他端側の端面における、前記切り込み部の開口面積の大小又は前記切り込み部の数の大小を、予め切断に供する軟鋼板の複数の板厚それぞれに対応してベベル量が所定値以下になるという判定基準で得た流量比に基づく前記最小流路断面積の大小に応じて決めることを特徴とするレーザ切断用ノズル製造方法。
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