以下、本実施形態における沈殿槽について、図面を参照しながら説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態における沈殿槽の概略構成を示す断面図であり、図2Aは、図1に示す沈殿槽に示した整流部材の平面図、図2Bは図2Aの整流部材のA−A断面図である。
図1に示すように、第1の実施形態の沈殿槽10は、槽体11と、槽体11の内部に配設され、該槽体11内に被処理水を供給する流入管12と、被処理水が清浄化された処理水を溢流させて集めることができ、槽体11の壁面上部に溝状に設けられた溢流堰13と、複数の開孔を有し、流入管12の周囲から溢流堰13の側面まで覆うように周回して設けられた整流部材14と、を備えてなる。
なお、槽体11の上端部には図中矢印で示すように、流入管12を介して槽体11内に被処理水を外部から供給する配管と、さらに、フロックの分離(沈殿)除去操作を実施して溢流堰13で集められる処理水を外部に排出するための流出管15が配設されている。
槽体11は円柱状又は多角柱状の形状をした槽である。この槽体11は、その壁面と底面とで構成される容器であり、内部に被処理水を貯留すると共に、フロックを沈殿させることが可能となっている。この槽体11は、内部に貯留する被処理水の流れを所定の方向に均一化できるよう、槽体11の中心軸を鉛直方向と一致するように配置する。このとき、槽体11を平面視したときの槽体の壁面の外形形状(図中上方あるいは下方から見た場合の形状)は円形状又は多角形状である。多角形状としては、正方形あるいは長方形などの矩形状であってもよいし、五角形以上の多角形状であってもよい。
なお、後述するように、槽体11内において被処理水をできるだけ均等に流れるようにすることがフロックを効率的に沈殿させることができる点で好ましい。そのため、槽体11の形状は、円形状であれば真円、多角形状であれば正多角形、の外形形状とすることがより好ましい。
また、槽体11の底部は、沈殿物を沈殿させ、効率的に回収できるように、底部中央が凹んだ形状であることが好ましい。このように凹んだ形状としては、円錐状又は多角錐状を上下逆さにした形状がより好ましい。すなわち、底部中央が錐体の頂点であり最下部となるような形状である。そして、この槽体11の底部の最下部には、槽体11の外部に沈殿物を排出できるよう排出口が設けられ、排出口には汚泥引抜管16が配設されている。
また、槽体11の大きさは処理すべき被処理水の量に応じて任意に調整することができる。この槽体11の大きさとしては、例えば、容量が6〜880m3、内径が2〜15m、高さが2〜5m、のものが例示できる。
流入管12は、槽体11の内部に被処理水の流入口12aが設けられるように配設される。そして、この流入管12から供給される被処理水は、流入口12aから槽体11の軸方向下方に向かって槽体11内に供給される。すなわち、流入口12aは槽体11の平面視形状においては、その槽体11の外形形状の中心部に位置し、槽体11の底部に向かって設けられている。
さらに、この流入口12aは、槽体11の直胴部の高さにおいて、その中央部分より低い位置に設けられることが好ましい。この位置に設けることで、後述する被処理水の槽体内における上昇流の形成を十分に行うことができる。なお、本明細書において、「直胴部」とは槽体11の筒状に形成された壁面部分を指し、底部は含まない。
また、流入管12の大きさは、被処理水の供給量にも係ってくるものであり、槽体11の大きさ等により適宜選択すればよい。この流入管12の径としては、例えば、槽体11の内径に対して0.1〜0.4倍の内径を有する配管が好ましい。
また、流入管12の中心部には、掻寄シャフト17が配設されている。掻寄シャフト17は、駆動モータ20により、槽体11の中心で回転する構成となっている。この掻寄シャフト17は、その下部に位置する支持部材18に連結されており、支持部材18には下方(槽体の底部)に向けて複数の掻寄板19が垂設されている。
掻寄シャフト17、支持部材18、掻寄板19及び駆動モータ20は掻寄機構を構成し、この掻寄機構は、以下に説明するように、被処理水の処理後の沈殿物を槽体の底部中央に位置する排出口付近に掻寄せることができる。掻寄せられた沈殿物は、当該排出口から槽体11の外部に沈殿物を排出できるように構成されている。
溢流堰13は、槽体11内でフロックの沈降処理が行われ、被処理水を清浄化処理して得られた処理水を得るためのものであり、槽体11の上部に設けられる。この溢流堰13は、その上端部から溢れた処理水を収容できるように槽体11の上部に溝状に、一般に槽体11の壁面に沿って、設けられる。そして、溢流堰13に収容された処理水を流出管15により槽体11の外部に流出させる。このように得られた処理水はさらに他の処理を行う等してユースポイントへ送出される。
整流部材14は、複数の開孔を有し、流入管12の周囲から溢流堰13の側面まで覆うように周回して設けられた部材である。この整流部材14は、複数の開孔によって、槽体11内に供給された被処理水を整流部材14より下方で均一な上昇流にさせることができる。
すなわち、整流部材14を備えてない場合は、流入口12aから供給される被処理水の主流は流入口12aから溢流堰13の上端部(溢流部)に向かって斜めに上昇し、流入管12の付近を水面に向かって垂直方向(流入管12と平行)に上昇する被処理水は少なく、槽体11の大きさによっては(大きくなると)流入管12の付近を流れる被処理水は下降流となることもある。従って、直胴部と流入管12との間を上昇する被処理水を均一な流速とするのが難しい。一方、本実施形態のように整流部材14を備えている場合は、被処理水は整流部材14の複数の開孔14aを通過することになり、複数の開孔14aは流入管12の付近にも有していることから、垂直方向への上昇流が多くなる。また、開孔14aの大きさや開孔率を調整することにより、整流部材14の下方の直胴部と流入管12との間を上昇する被処理水は、ほぼ均一な流速に制御することも可能になる。これにより被処理水は、フロック等を沈殿により分離しながら清浄化され、槽体11の上部へと流れる。
上部へと流れた清浄化して得られる処理水は、溢流堰13の上端部を越えて集められる。その際、本実施形態においては、溢流堰13を越える前に、整流部材14が設けられている。したがって、清浄化して得られた処理水は、整流部材14の開孔14aを通過した後、溢流堰13に流れるようになっている。この開孔14aは、被処理水を通過させることにより、分離しきれなかったフロック等の分離を促進する作用を有し、得られる処理水をより清浄なものとできる。
この整流部材14は、開孔14aの形成が容易で、かつ、清浄化処理にあたって安定して配置できるものであればよく、例えば、樹脂、金属等の材料により形成されたものが挙げられる。なかでも、ステンレス等の金属を用い、これにパンチングにより開口を設けたパンチングメタルが好ましい。
整流部材14は板状であり、その厚さは、3〜5mm程度が好ましい。この厚さが3mm未満であると、強度が低くなり、被処理水が開孔14aの通過時に、整流部材14が撓むなどにより安定した通水ができなくなるおそれがある。一方、この厚さが5mmを超えると、開孔14aを通水させるのに高い圧力が必要になり、通水処理を円滑に行えなくなるおそれがあり、さらに、開孔を設けるのに手間がかかり製造コストが増大する。
また、開孔14aは、平面視したときの形状が円形、多角形、スリット等が挙げられる。図1〜2には、円形の開孔を有する場合を一例として示している。なお、円形としては、楕円形等も含み、多角形としては、三角形、四角形、五角形や、それ以上の多角形が挙げられる。なお、これら円形および多角形においては、通水を安定して行うことができるように円としては真円、多角形としては正多角形であることが好ましい。さらに、スリットとしては、開孔が連続して細長くなっているものが挙げられ、そのスリットが整流部材の中心から放射状又は同心円状に沿って設けられていることが好ましい。
この開孔としては、円であればその直径(短径)が5〜50mm、多角形であれば、その外接円の直径が7〜70mm、スリットであればその幅が2〜20mmが好ましい。このような大きさの開孔としておけば、フロックが開孔を通過するのを抑制し、得られる処理水をより清浄なものとできる。
この開孔14aは、整流部材14の表面にその複数個が整列して有することが好ましい。さらに、開孔14aは、整流部材の単位面積当たりの開孔率が均一になるように又は槽体11の中央側よりも外周側(壁面側)になるほど開孔率が大きくなるように、形成することが好ましい。このときの開孔率としては、25〜60%が好ましく、30〜50%がより好ましく、35〜45%がさらに好ましい。槽体11の中央側よりも外周側になるほど開孔率が大きくなるようにする場合、例えば、中央側の開孔率を30〜40%、外周側の開孔率を40〜50%とすることが好ましく、中央側から外周側へは、段階的に開孔率が大きくなるように形成すればよい。
また、設ける開孔の径を、槽体11の中央側から外周側に向かって段階的に大きくなるように形成することもできる。このように開孔の径を段階的に大きくなるように形成した例として、図3A及び図3Bに、整流部材の変形例を示した。ここで示した整流部材24は、複数の開孔24aを有する部材である。そして、この開孔24aは、整流部材24において、槽体11の中央側に設ける開孔径を小さく、外周側に設ける開孔径を大きくしたものである。
このように開孔径を変えることで、開孔率の調整が容易になり、また、後述するように、開孔24aを通過して整流部材24の上方にある処理水が、溢流堰13側に向かって円滑に流れるようにして、処理水を効率的に得られるようにする作用もある。
汚泥引抜管16は、槽体11の底部に沈殿し滞留した汚泥を槽体11の外部に排出する排出管である。この汚泥は、槽体11内においてフロックが塊状物となって沈降し、滞留した混合物である。この汚泥は、槽体11の底部に配設された掻寄機構の掻寄シャフト17を駆動モータ20により、支持部材18に垂設された掻寄板19を回転させることによって底部中央(最下部)に掻き寄せられる。
さらに、沈殿槽10には被処理水中のフロックの沈殿効率を高めるための棚板21を設けてもよい。この棚板21は、流入管12から供給された被処理水が槽体11の壁面に沿って上昇流となって流れる高さに、水平面に対して主面を平行または傾斜した状態で設けられる。また、この棚板21は、槽体11の内壁面の周方向に円環状となるように設けられる。本明細書においては、円環状は、円環形状の平板状部材(棚板21)1枚により形成してもよいし、扇形状の平板状部材(棚板21)の複数枚を水平面に整列して設けて形成してもよい。扇状の平板状部材(棚板21)を複数枚用いる場合、内壁面の周方向において、棚板21同士の間に隙間ができるように配列してもよい。
なお、複数の棚板21を、棚板同士の間に隙間ができるように配列した場合、これらの隙間の鉛直方向の上下のいずれかに、所定の間隔を有して別の棚板を設け、棚板を多段に設けた構成とすることが好ましい。すなわち、同一高さの棚板同士の隙間に対して、その鉛直方向に他の棚板が設けられるようにする。さらに、この棚板は、異なる高さに形成された棚板同士が平面視したときに重なるように形成されていることが好ましい(すなわち、平面視したとき、同一平面に形成された棚板同士の隙間よりも、異なる高さに設けられた棚板が周方向に長い形状で形成され、該隙間の鉛直方向に必ず異なる高さの棚板が設けられている)。このような構成とすることで、槽体11内で上昇流となった被処理水は棚板21により流れ方向を変えることができ、それにより上昇流となった被処理水中のフロックの沈降を促進できる。
この棚板21は、槽体11の内壁面と接触させて固定されることが好ましい。また、棚板21は、その主面を水平面と平行に設置してもよいが、槽体11の壁面側(外周側)より中心側(内周側)の方が下方に存在するように水平面と所定の傾斜角度θsをなすように傾斜して設置してもよい。傾斜して設置する場合、この傾斜角度θsは、例えば30°〜70°の範囲に設定することが好ましい。
沈殿槽10を構成する上記した槽体11、流入管12、整流部材14、棚板21等は任意の材料から構成することができるが、腐食性の被処理水を取り扱う場合は、ステンレス、プラスチック、一般構造用圧延鋼材(SS400)等の金属板にエポキシ樹脂系等の樹脂素材を塗装した樹脂被覆材料などから構成することができ、特に強度が要求されるような場合はステンレスから構成する。
また、本実施形態における“フロック”とは、浮遊物質を含む被処理水中に、例えば凝集剤などを添加するときに生じる、綿くず状の塊状物を意味するものである。
次に、図1に示す沈殿槽10を用いた被処理水の沈殿処理方法について説明する。最初に、沈降性のあるフロックを含む被処理水を流入管12に流入させると、被処理水は、流入管12の内部を流通していき、流入口12aから槽体11内に供給され、槽体11内を満たすこととなる。
続けて供給される被処理水は、流入管12から槽体11の軸方向下方に向かって槽体11内に供給される。槽体11内に供給された被処理水は、その流れ方向が底部付近で槽体11の壁面に向かう流れとなり、徐々に上昇流として槽体11内を上昇する。また、被処理水の一部は槽体11の壁面に到達し、さらにその一部が槽体11の内壁面に沿って上昇し、他の一部は下降する。上昇流中に含まれるフロックは、近くのフロックと塊状になる等しながら沈降し、また下降流中に含まれるフロックは、そのまま沈降する。このようにして沈降したフロックは、槽体11の下部において汚泥として滞留するようになる。
一方、上昇流を形成する被処理水は、上記したように、槽体11内を上昇していくうちにフロックが沈殿により除去され、清浄化されながら上昇する。清浄化された処理水は、さらに上昇し整流部材14まで到達する。図4に示したように、整流部材14まで到達した処理水の一部は整流部材の開孔14aを通過して、整流部材14の上方に存在するようになる。この際、開孔14aの大きさを調整することで、処理水中に除去しきれなかったフロックが含まれる場合は、さらにフロックの沈降が促進され、清浄化することが可能である。
整流部材14の開孔14aを通過した処理水は、図4の矢印で示したように、溢流堰13に向かって流れ、溢流堰13を超えて処理水として集められる。なお、このとき処理水は、槽体11の外周側になるほど開孔14aを通過しにくくなる。これは、槽体11の中央側から流れてくる処理水がすでに開孔14aの上方に存在することとなり、それが抵抗となるためである。したがって、図3A及び図3Bに示したように、外周側に向かって開孔14aの径を大きくするようにすると、槽体11の外周側においても処理水が整流部材14の開孔14aを通りやすくなり、中央側と外周側とで万遍なく処理水を得ることができ好ましい。
したがって、本実施形態によれば、フロックの沈降による処理水の清浄化を効率的に行うことができ、より水質を向上させた処理水を得ることができる。
また、槽体11の底部に滞留した汚泥及びフロックの塊状物は、それぞれ汚泥の混合物として、槽体11の底部に配設された掻寄機構により、槽体11の底部中央に設けられた排出口付近に集められ、該排出口に接続された汚泥引抜管16により外部に排出される。
以上のような操作を経ることにより、沈殿槽10内に供給されたフロックを含む被処理水から当該フロックが分離除去された処理水は、槽体11の上部に配設された溢流堰13を越えて集められ、流出管15により外部に流出される。このように清浄化された処理水は、さらに所定の処理等を施されユースポイントに供給される。
以上説明したように、本実施形態では、槽体11内に整流部材14を配設するという簡易な槽内構造とするだけで、処理水中にフロックが混入することを効果的に抑制することができ、槽内構造の簡略化と沈殿効率向上を両立した沈殿槽を提供することができる。
さらに、このとき槽体11の内壁面にも棚板21を設けておくことが好ましい。この棚板21を設けておくと、供給後、槽体11の内壁面に沿って上昇する被処理水がこの棚板21に衝突し、棚板21の下面に沿って流れる方向が斜め上方に変わる。これに対して、被処理水中に含まれるフロックは、被処理水が棚板21に衝突すると、流れが乱れてフロック同士が塊状物を形成し、フロックの沈降が促進される。
また、棚板21との衝突によっても沈降せず、流れ方向が斜め上方、そして上昇流となった被処理水中に含まれるフロックは、棚板21の上方で、近くのフロックと塊状になる等しながら沈降する。このフロックの沈降の際、フロックは上昇流の流れの影響で棚板21よりも上方で沈降を開始し、棚板21の上面に沈降することとなる。そして、棚板21の上面にフロックがさらに堆積していき、ある程度堆積するとフロックの塊状物は槽体11内の底部へと崩落する。
棚板21を水平面に設置した場合には、フロックの堆積等の仕方などにより崩落の度合いが異なり、槽体11の底部へ沈降するフロックの大きさの変動の幅が大きい。このとき、堆積量が多く巨大化したフロックの塊状物が崩落すると、槽体11の底部に滞留した汚泥を巻き上げてしまうおそれがある。一方、棚板21を水平面に対して傾斜させた場合には、水平面に設けた場合に比べてフロックの塊状物の崩落を早め、棚板21に沈降したフロックの堆積量を少なく、その塊状物の巨大化を抑制することができる。そして、このように棚板21から滑り落ちるフロックの塊状物の巨大化を抑制することで、槽体11の底部に滞留した汚泥の巻き上げに与える影響も抑制することができる。また、棚板21の傾斜角度θsを大きくすると、フロックの塊状物が棚板21の上面を転がり落ちるようにすることができ、安定して、槽体11内の底部へとフロックを沈殿させることができる。
また、棚板21は、複数枚を同一水平面に整列して、内壁面の周方向に棚板同士の隙間ができるように配列した場合、上記したように、これらの隙間の鉛直方向の上下のいずれかに、所定の間隔を有して別の棚板を設け、棚板を多段に設けることが好ましい。この場合、効率的にフロックを分離するには、異なる水平面に形成された棚板同士が平面視したときに重なるように(同一平面に形成された棚板同士の隙間よりも、他の段に設けられた棚板が周方向に長い形状で形成され、該隙間の鉛直方向に必ず他の棚板が設けられるように)配置することが好ましい。
このとき、異なる水平面に形成された棚板同士の重なりをできるだけ大きくすることがより好ましい。ただし、重なっている部分が大きすぎると、上昇流の流れ方向が急激に変わることとなり乱流が発生したり、また、異なる水平面に設けられた棚板同士の鉛直方向の距離を狭くしすぎると、フロックが上昇流に巻き上げられたり、しやすくなる。なお、これらの棚板を傾斜させても同様の状態となる。したがって、棚板21の複数枚を同一水平面に整列して、内壁面の周方向に棚板同士の隙間ができるように配列して、これらの隙間の鉛直方向の上下のいずれかに所定の間隔を有して別の棚板を設け、棚板を多段に設けた場合、十分にフロックが沈降できるように適宜条件を設定することが求められる。
〔第2の実施形態〕
図5は、第2の実施形態における沈殿槽の概略構成を示す断面図である。
図5に示すように、第2の実施形態の沈殿槽30は、槽体11と、槽体11の内部に配設され、該槽体11内に被処理水を供給する流入管12と、被処理水が清浄化された処理水を溢流させて集めることができ、槽体11の壁面上部に溝状に設けられた溢流堰13と、複数の開孔を整列して有し、溢流堰13から槽体11中央付近まで覆うように円環状に設けられた整流部材31と、を備えてなる。
ここで、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、以下の説明では省略する。したがって、この図5に示した第2の実施形態における沈殿槽30は、図1に示した第1の実施形態の沈殿槽10において、整流部材31を設けた点が異なるもので、それ以外は同一の構成を有している沈殿槽である。
この整流部材31は、整流部材14と同一の形状、構成として設けることができる。異なるのは、整流部材31が、槽体11の外周側から槽体11の中央に向かって下り傾斜となるように設けられている点にある。このように下り傾斜とすることで、仮に、開孔31aをフロックが通過してしまい、整流部材31の上方でフロックが沈降を開始した場合でも、沈降したフロックを整流部材31の傾斜した上面により、中央よりに転がして移動させることができる。
このとき、整流部材31の主面の水平面に対する傾斜角度θfは、20〜60度が好ましく、25〜50度がより好ましく、30〜40度がさらに好ましい。また、このとき、開孔31aを上昇流の流れをできるだけ妨げないように、鉛直方向に沿って設けるようにしてもよい。この場合、平板状の整流部材31の主面に対して開孔31aは角度を有して設けられるようになる。
さらに、この整流部材31においては、流入管12と接触させずに、距離をあけて配置する。このように距離をあけることで、中央に移動してきたフロックを、槽体11の底部にさらに沈降させることができる。
距離をあけて設けるにあたって、槽体11の中央側に設けられる整流部材31の端部(中央側の端部)を、流入管12との間の距離が10〜30mm程度となるように離して設けることが好ましい。このとき、整流部材31の中央側の端部の高さは、溢流堰13の上端部から流入管12の流入口12aまでの鉛直方向の長さ(高さ)に対して、流入口12aから0.3〜0.4倍となる高さとすることが好ましい。このような配置とすることで、槽体11内の整流部材31の下方でのフロックの沈降を十分に行え、仮に、整流部材31の上方でのフロックの沈降が生じた場合でも、整流部材31の上面から沈殿槽の底部までフロックを誘導できる。
さらに、本実施形態では、第1の実施形態で奏する作用、効果を同様に奏するものである。
〔第3の実施形態〕
図6は、第3の実施形態における沈殿槽の概略構成を示す断面図である。
図6に示すように、第3の実施形態の沈殿槽40は、槽体11と、槽体11の内部に配設され、該槽体11内に被処理水を供給する流入管12と、被処理水が清浄化された処理水を溢流させて集めることができ、槽体11の壁面上部に溝状に設けられた溢流堰13と、複数の開孔を整列して有し、溢流堰13から槽体11中央付近まで覆うように円環状に設けられた整流部材14と、流入管12の下方に配設され、槽体11内に供給される被処理水との衝突により被処理水を水平方向に分散させる被処理水分配機構41と、を備えてなる。
ここで、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、以下の説明では省略する。したがって、この図6に示した第3の実施形態における沈殿槽40は、図1に示した第1の実施形態の沈殿槽10において、流入口12aの下方に被処理水分配機構41を設けている点が異なるもので、それ以外は同一の構成を有している沈殿槽である。
被処理水分配機構41は、流入管12から供給される被処理水を水平方向に分散させるものである。図6に示すように、被処理水分配機構41は、1枚の分散プレートから構成されている。その平面形状は特に限定されるものではないが、槽体11の平面視したときの外形形状と相似形状であることが好ましい。すなわち、円形、楕円形又は多角形状であることが好ましい。
この被処理水分配機構41の平面形状の直径又は一辺の長さは、流入管12の直径以上とするものであり、流入管12の内径の1〜3倍が好ましい。
また、この被処理水分配機構41は、複数枚の分散プレートで構成してもよい。外形形状が円形の複数枚の分散プレートを用いる場合、その外径が互いに同じ大きさの円形状の分散プレートと中心に開口部が設けられた円環状の分散プレートを用意し、この円形状及び円環状の分散プレートを互いに間隔をあけて、鉛直方向に整列して固定する例が挙げられる。このとき、上方の分散プレートから下方の分散プレートに向かって、開口部が小さくなるようにして、最下段に開口部のない円形状の分散プレートを設ける。また、これら開口部及び中心は流入管12の軸、すなわち掻寄シャフト17を中心として同心円状に形成されている。
なお、複数の分散プレートの外径は、流入管12の直径以上とするもので、流入管12の内径の1〜3倍が好ましい。また、例えば、円環状の分散プレートを2枚、円形状の分散プレートを1枚の計3枚の分散プレートを用いる場合、一番上の分散プレートに設けられる開口部の直径は、例えば流入管12の直径の0.7〜0.8倍とすることができ、上から2番目の分散プレートに設けられる開口部の直径は、流入管12の直径の0.5〜0.6倍とすることができる。そして、一番下の分散プレートを開口部の形成されていない円形状のものとする。
このように、上方に位置する分散プレートから下方に位置する分散プレートに向かって、順番に開口部の直径が小さくなるようにすることで、供給される被処理水の流束が外周側から順番に各分散プレートに衝突することとなる。分散プレートと衝突した被処理水は、外周側の水平方向に均等に分散される。また、このとき、分散は、各分散プレートで段階的に行われるため、一度に衝突させて被処理水の流れを変更するのに比べ負荷が少なく、効率的に分散させることができる。
被処理水分配機構41を構成する分散プレートは保持部材により所定の位置関係になるように保持、固定される。例えば、流入管12との位置関係も作用や効果に関わり、それぞれの分散プレートは鉛直方向に流入管12の中心(軸)が一致するように配置、固定されることが好ましい。したがって、この被処理水分配機構41は、流入管12に固定されることが好ましい。また、上記した被処理水分配機構41は、複数枚の分散プレートで構成する場合には、分散プレートの枚数は3〜5枚程度が好ましい。
この第3の実施形態によれば、流入管12から供給される被処理水が、槽体11の底部方向に流れることなく、その流れが水平方向へと変更されるため、汚泥の巻き上げを確実に防止できる。さらに、本実施形態では、第1の実施形態で奏する作用、効果を同様に奏するものである。
〔第4の実施形態〕
図7は、第4の実施形態における沈殿槽の概略構成を示す断面図である。
なお、図1に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素に関しては同一の符号を用いている。
この第4の実施形態の沈殿槽50では、図7に示すように、第3の実施形態の沈殿槽40において、被処理水分配機構41の代わりに被処理分配機構51を設けている点が異なるものであり、それ以外は同一の構成を有している沈殿槽である。
被処理水分配機構51は、流入管12から供給される被処理水を水平方向に分散させるものであり、槽体11内に高速流が生じないように均等に分散させる構成とするものである。この被処理水分配機構51は、分流部材51aと分散プレート51bとから構成されている。
この被処理水分配機構51においては、分流部材51aは、主に被処理水の分流機能を担う円筒状の分流筒と、その下端部に接続された円環状の分散プレートと、から構成されている。この円環状の分散プレートは、開口部が形成されており、分流筒の下端部の外周側に一体的に接続されている。すなわち、上方から供給される被処理水は分流筒により2つの流れに分離され、そのうち分流筒の内側を流れる被処理水は、そのまま分流筒の内部を通過して、分散プレート51bに衝突するようになっている。一方、分流筒の外側を流れる被処理水は、分流筒の外側面に沿って流れ、その下端に接続された分散プレートに衝突するようになっている。
このように、分流部材51aの分散プレートに衝突した被処理水は高い位置で、分散プレート51bに衝突した被処理水は低い位置で、それぞれ分散されることになる。
このように、分流筒により被処理水の流れを分離することで、供給される被処理水の流束が外周側から順番に各分散プレートに衝突することとなる。分散プレートと衝突した被処理水は、それぞれ水平方向に外周側に向かって分散される。また、この分散は、分流した後、各分散プレートで段階的に行われるため、一度に衝突させて被処理水の流れを変更するのに比べ負荷が少なく、効率的に分散させることができる。
分流筒は、上記したように筒形状の部材であり、流入管12から供給される被処理水の流れを分離するものである。そのため、この分流筒は、被処理水を効率的に分流させるように、流入管12の流入口12aに、流入管12と平行に配設される。分流筒がこのように配設されることで、被処理水を、その流れに逆らうことなく、分流筒の内側と外側の2つの流れに円滑に分離できる。
ここで、例えば、分流筒の外径は、流入管12の内径の0.5〜0.9倍とすることが好ましく、0.6〜0.7倍とすることがより好ましい。また、その他、沈殿を効率的に行う所望の条件が得られるように、分流部材51aの分散プレートと分散プレート51bの外径、流入管12の流入口と分流部材51aの分散プレートとの間隔、分流部材51aの分散プレートと分散プレート51bとの間隔、等を適宜設定すればよい。
このとき、分流部材51aの分散プレートの外径は、流入管12の内径以上とするもので、流入管12の直径の1〜3倍が好ましい。また、分散プレート51bの外径は、分流筒の内径以上とするもので、分流筒の内径の1〜4倍が好ましい。
この第4の実施形態においては、分流筒が分散プレートと接続されていることで分流筒において被処理水の流れを確実に分割し、槽体11内の被処理水の流れを安定させることができる。
これらの分流部材51a及び分散プレート51bは、図示していない保持部材によりそれぞれが所定の位置関係になるように保持、固定される。さらに、この被処理水分配機構51は、流入管12の流入口12aとの位置関係も作用や効果に関わり、それぞれ鉛直方向に中心(軸)が一致するように配置、固定される。したがって、この被処理水分配機構51は、流入管12に固定されることが好ましい。
なお、被処理水分配機構51は、1つの分流部材と1枚の分散プレートで構成されている例であるが、分流部材を2つ以上設けて、段階的に細かく被処理水を分流、分散させるようにしてもよい。このとき、分流部材の設置数は1〜3つ程度が好ましい。また、本実施形態では、第1の実施形態で奏する作用、効果を同様に奏するものである。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。