JP6541504B2 - 製造安定性に優れた高強度高延性鋼板、及びその製造方法、並びに高強度高延性鋼板の製造に用いられる冷延原板 - Google Patents
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140≦442×C−7.7×Si+53×Mn+31×Cr≦168・・・(1)
式(1)中、C、Si、Mn、Crは、質量%で、各成分の含有量を示す。
140≦442×C−7.7×Si+53×Mn+31×Cr≦168・・・(1)
式(1)中、C、Si、Mn、Crは、質量%で、各成分の含有量を示す。
140≦442×C−7.7×Si+53×Mn+31×Cr≦168・・・(1)
式(1)中、C、Si、Mn、Crは、質量%で、各成分の含有量を示す。
140≦442×C−7.7×Si+53×Mn+31×Cr≦168・・・(1)
式(1)中、C、Si、Mn、Crは、質量%で、各成分の含有量を示す。
上記式(1)は、焼入れ開始温度が500〜650℃の範囲で変動しても、上記フェライト分率を安定して得るために設定されたパラメータである。詳細には、上記式(1)は、焼入れ向上元素であるC、Mn、SiおよびCrから構成されており、本発明者らによる種々の基礎実験を経て設定されたものである。上記式(1)のパラメータが140未満になると、焼入れ開始温度が低いときにフェライト分率が大きくなりやすく、強度が低下する。そのため、上記式(1)のパラメータの下限を140以上とする。上記式(1)のパラメータの下限は、好ましくは143以上、より好ましくは146以上とする。一方、上記式(1)のパラメータが168を超えると、焼入れ開始温度が高いときにフェライト分率が小さくなりやすく、延性が低下する。そのため、上記式(1)のパラメータの上限を168以下とする。上記式(1)のパラメータの上限は、好ましくは165以下、より好ましくは162以下とする。
Cは、焼入れ性を高めて高強度を確保するのに必要な元素であるため、C量の下限を0.07%以上とする。C量の下限は、好ましくは0.08%以上、より好ましくは0.09%以上である。しかしながら、C量が過剰であると溶接性が悪化する。よって、C量の上限を0.15%以下とする。C量の上限は、好ましくは0.14%以下、より好ましくは0.13%以下、更に好ましくは0.12%以下である。
Siは、固溶強化による強度向上に有効な元素であり、焼戻し軟化抵抗にも有効な元素である。これらの効果を有効に発揮させる観点からは、Si量の下限は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上、更により好ましくは0.2%以上とする。しかしながら、Siは、多く含まれると焼入れ性が損なわれて高強度を確保し難くなり、更に溶接性も悪化する。よって、Si量の上限を0.8%以下とする。Si量の上限は、好ましくは0.7%以下、より好ましくは0.6%以下、更に好ましくは0.5%以下、更により好ましくは0.3%以下である。
Mnは、焼入れ性を向上させて強度を高めるのに有効な元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、Mn量の下限を1.2%以上とする。Mn量の下限は、好ましくは1.4%以上、より好ましくは1.6%以上である。しかしながら、Mn量が過剰であると、耐遅れ破壊性および溶接性が悪化する。よって、Mn量の上限を2.1%以下とする。Mn量の上限は、好ましくは1.9%以下、より好ましくは1.7%以下である。
Crは、焼入れ性向上により強度を高めるのに有効な元素であり、マルテンサイト相の焼戻し軟化抵抗を高めるのに有効な元素である。これらの効果を有効に発揮させるためには、Cr量の下限を0.5%以上とする。Cr量の下限は、好ましくは0.7%以上、より好ましくは0.9%以上である。しかしながら、Cr量が過剰であると、耐遅れ破壊性が劣化する。よって、Cr量の上限を2.1%以下とする。Cr量の上限は、好ましくは1.9%以下、より好ましくは1.7%以下である。
Pは、鋼を強化するために有効な元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、P量の下限は、好ましくは0.002%以上とする。しかしながら、P量が過剰であると、脆性により延性を低下させる。よって、P量の上限を0.02%以下とする。P量の上限は、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.006%以下である。
Sは、硫化物系の介在物を生成し、加工性、溶接性を劣化させる元素である。そのため、S量の上限を0.01%以下とする。S量は少ないほどよく、S量の上限は、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.003%以下である。なお、Sは鋼中に不可避的に含まれる不純物であり、その量を0%にすることは工業生産上不可能である。
Alは、脱酸剤として添加される元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、Al量の下限を好ましくは0.020%以上、より好ましくは0.030%以上とする。しかしながら、Al量が過剰であると、C系介在物が多量に生成して表面疵の原因となる。よって、Al量の上限を0.15%以下とする。Al量の上限は、好ましくは0.14%以下、より好ましくは0.10%以下、更に好ましくは0.07%以下である。
Nは、過剰に添加すると窒化物の析出量が増大し、靭性に悪影響を与える元素である。よってN量の上限を0.01%以下とする。好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.006%以下である。なお製鋼上のコスト等を考慮すると、N量の下限は、好ましくは0.001%以上である。
Bは、微量の添加で焼入れ性を向上させる元素である。Bの固溶量が飽和する量を添加することで焼入れ性のばらつきが低減され、製造安定性が高くなる。こうした効果を十分に発揮させるために、B量の下限を0.0005%以上とする。B量の下限は、好ましくは0.0008%以上、より好ましくは0.0011%以上とする。しかしながら、B量が過剰であると延性が低下するため、B量の上限は0.01%以下とする。B量の上限は、好ましくは0.0080%以下、より好ましくは0.0065%以下である。
Ti、V、およびNbはいずれも炭化物の析出により強度向上に有効な元素である。これらの元素は、夫々単独でまたは適宜組み合わせて含有させても良い。こうした効果を有効に発揮させるためには、Ti、V、Nbのそれぞれの好ましい下限を0.01%以上とする。いずれの元素も、より好ましくは0.03%以上、更に好ましくは0.05%以上である。しかしながら、各元素の含有量が過剰になると、炭窒化物の析出が増大し、延性や加工性が劣化する。そのため、Ti、V、Nbのそれぞれの好ましい上限を0.1%以下とする。いずれの元素も、より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.06%以下である。
フェライトは、鋼板の延性向上に寄与する組織であり、金属組織全体に対するフェライト分率が20面積%未満では、鋼板の延性が低下し、強度−延性バランスが悪くなる。そのため、金属組織全体に対するフェライト分率の下限を20面積%以上とする。好ましくは21面積%以上、より好ましくは26面積%以上とする。一方、金属組織全体に対するフェライト分率が40面積%を超えると、鋼板の引張強度および降伏強度が低下する。従って金属組織全体に対するフェライト分率の上限を40面積%以下とする。好ましくは36面積%以下、より好ましくは32面積%以下とする。
焼鈍温度が820℃未満となるとオーステナイト単相組織を得ることができない。そのため、焼鈍温度の下限を820℃以上とする。焼鈍温度の下限は、好ましくは830℃以上、より好ましくは840℃以上とする。一方、焼鈍温度を過剰に高温にすると設備負荷が大きくなりコストが増加する。そのため、焼鈍温度の上限を930℃以下とする。焼鈍温度の上限は、好ましくは920℃以下、より好ましくは910℃以下とする。また、この焼鈍温度でオーステナイト変態を完了させるため30秒以上保持する必要がある。そのため、上記焼鈍温度での保持時間の下限を30秒以上とする。上記焼鈍温度での保持時間の下限は、好ましくは60秒以上、より好ましくは90秒以上とする。しかし、過剰な時間保持すると、組織が粗大になり靭性が劣化する。そのため、上記焼鈍温度での保持時間の上限を250秒以下とする。上記焼鈍温度での保持時間の上限は、好ましくは220秒以下、より好ましくは190秒以下とする。
次に、750℃から後述する焼入れ開始温度まで冷却する。750℃から焼入れ開始温度までの平均冷却速度が5℃/秒未満であるとフェライトが過剰に生成する。そのため、上記平均冷却速度の下限を5℃/秒以上とする。上記平均冷却速度の下限は、好ましくは8℃/秒以上、より好ましくは11℃/秒以上とする。一方、上記平均冷却速度が20℃/秒超であるとフェライト生成量が不足し、更に焼入れ開始温度の制御が難しくなり、結果として製造安定性が得られにくい。そのため、上記平均冷却速度の上限は、20℃/秒以下とする。上記平均冷却速度の上限は、好ましくは17℃/秒以下、より好ましくは14℃/秒以下とする。
焼入れ開始温度は、所望のフェライト分率を安定して得るため、500〜650℃の範囲とする。焼入れ開始温度が500℃未満ではフェライトが過剰に生成してしまい、さらにベイナイト変態温度域ではベイナイトが生成し、強度が低下する。そのため、焼入れ開始温度の下限を500℃以上とする。焼入れ開始温度の下限は、好ましくは520℃以上、より好ましくは540℃以上、更に好ましくは560℃以上とする。一方、焼入れ開始温度が650℃を超えると、フェライト生成量が不足する。そのため、焼入れ開始温度の上限を650℃以下とする。焼入れ開始温度の上限は、好ましくは630℃以下、より好ましくは610℃以下、更に好ましくは590℃以下とする。
熱間圧延時の加熱温度:1200℃
熱間圧延の仕上温度:870℃
熱間圧延後の巻取り温度:550℃
仕上厚さ:2.8mm
酸洗条件:20%塩酸、80℃、35秒
冷間圧延の冷延率:50%
本実施例では、点算法により、フェライトの面積率を算出した。詳細には、1.4mm×20mm×20mmの試験片の圧延方向と平行な断面を研磨し、ナイタール腐食を行った後、板厚の1/4部について1000倍でSEM(Scanning Electron Microscope)にて観察を行った。そして、1視野のサイズ100μm×100μmで、縦横それぞれ等間隔に10本の線を引き、フェライト組織内にある交点の数を全交点の数で割り、任意の10視野の平均値をフェライトの面積率とした。金属組織全体:100面積%から上記フェライトの面積率を引いた値を、焼き戻しマルテンサイトおよび他の残部組織の面積率とした。その結果を表2〜4に示す。
引張強度TS、降伏強度YS、および均一伸びuELの引張特性は、上記鋼板の圧延方向に垂直な方向が長手方向となるようにJIS5号引張試験片を鋼板から採取し、JIS
Z 2241に規定の方法に従って測定した。参考のため、全伸びELも同様に測定した。これらの結果を表2〜4に示す。
焼入れ開始温度が500〜650℃の範囲で変動しても、引張強度TS≧980MPa、降伏強度YS≧650MPa、および均一伸びuEL≧5.0%を全て満たすものを製造安定性が優れる(合格)と評価した。それ以外を製造安定性に劣る(不合格)と評価した。
Claims (5)
- 質量%で、
C :0.07〜0.15%、
Si:0%以上0.8%以下、
Mn:1.2〜2.1%、
Cr:0.5〜2.1%、
P :0%超0.02%以下、
S :0%超0.01%以下、
Al:0%超0.15%以下、
N :0%超0.01%以下、および
B :0.0005〜0.01%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、 前記C、Si、Mn、Crの含有量は下記式(1)を満たし、
金属組織は、フェライト:20〜40面積%、および焼戻しマルテンサイトを含むことを特徴とする製造安定性に優れた高強度高延性鋼板。
140≦442×C−7.7×Si+53×Mn+31×Cr≦168・・・(1)
式(1)中、C、Si、Mn、Crは、質量%で、各成分の含有量を示す。 - 更に、質量%で、
Ti:0%超0.1%以下、
V :0%超0.1%以下、および
Nb:0%超0.1%以下よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1に記載の高強度高延性鋼板。 - 請求項1または2に記載の鋼中成分を満たす冷延原板を、820〜930℃の温度域で30〜250秒保持した後、
750℃から、500〜650℃の焼入れ開始温度までの範囲を5〜20℃/秒の平均冷却速度で冷却してから焼入れおよび焼戻しを行うことを特徴とする請求項1または2に記載の高強度高延性鋼板の製造方法。 - 請求項1に記載の高強度高延性鋼板の製造に用いられる冷延原板であって、
質量%で、
C :0.07〜0.15%、
Si:0%以上0.8%以下、
Mn:1.2〜2.1%、
Cr:0.5〜2.1%、
P :0%超0.02%以下、
S :0%超0.01%以下、
Al:0%超0.15%以下、
N :0.0052%以上0.01%以下、および
B :0.0008〜0.01%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、 前記C、Si、Mn、Crの含有量は下記式(1)を満たすことを特徴とする冷延原板。
146≦442×C−7.7×Si+53×Mn+31×Cr≦168・・・(1)
式(1)中、C、Si、Mn、Crは、質量%で、各成分の含有量を示す。 - 請求項2に記載の高強度高延性鋼板の製造に用いられる冷延原板であって、
質量%で、
C :0.07〜0.15%、
Si:0%以上0.8%以下、
Mn:1.2〜2.1%、
Cr:0.5〜2.1%、
P :0%超0.02%以下、
S :0%超0.01%以下、
Al:0%超0.15%以下、
N :0.0052%以上0.01%以下、および
B :0.0008〜0.01%を含有し、
更に、Ti:0%超0.1%以下、V:0%超0.1%以下、およびNb:0%超0.1%以下よりなる群から選ばれる1種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
前記C、Si、Mn、Crの含有量は下記式(1)を満たすことを特徴とする冷延原板。
146≦442×C−7.7×Si+53×Mn+31×Cr≦168・・・(1)
式(1)中、C、Si、Mn、Crは、質量%で、各成分の含有量を示す。
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