JP6047037B2 - 鋼板形状に優れた高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

鋼板形状に優れた高強度冷延鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、引張強度が980MPa以上の高強度冷延鋼板を製造する方法に関するものであり、詳細には、鋼板形状に優れた高強度冷延鋼板の製造方法に関するものである。
近年、自動車の安全性向上に対する要求が強まっており、引張強度が980MPa以上の高強度冷延鋼板を用いた軽量で充分な衝撃吸収能を有する補強部材(例えば、バンパーリインホースメント、ドアインパクトバーなど)を積極的に設置しようとする動きがある。このような用途に用いられる高強度冷延鋼板には、加工性(特に、伸び)が良好であることも重要である。
上記高強度冷延鋼板としては、マルテンサイトに代表される硬質な低温変態組織を利用して組織強化したものが用いられている。硬質な低温変態組織を利用した高強度冷延鋼板は、水焼入れタイプの連続焼鈍設備を用いて製造できる。例えば、鋼材をAc1点以上の再結晶温度域で短時間加熱保持した後、水焼入れするか、或いは所定の温度域まで冷却してから水焼入れし、次いで過時効処理を施すことによって製造できる。
ところで成形ラインでの作業性の面からは、冷延鋼板の鋼板形状が良好であることも必要である。冷延鋼板の鋼板形状として鋼板の平坦度を低減する技術が特許文献1に提案されている。この文献に開示されている冷延鋼板は、金属組織がマルテンサイト単相で、引張強度が980MPa以上で、鋼板の平坦度が10mm以下であるところに特徴がある。この冷延鋼板は、冷間圧延後の鋼板をAc3変態点以上の均熱温度からMs点(マルテンサイト変態開始温度)〜Ms点+200℃の温度範囲まで20℃/秒以上の平均冷却速度で一次冷却し、上記温度範囲に0.1〜60秒間保持した後、100℃/秒以上の平均冷却速度で100℃以下まで二次冷却することによって製造している。Ms点〜Ms点+200℃の温度範囲における保持は、鋼板内の温度を均一化するために行われており、鋼板の板厚方向あるいは幅方向での冷却速度の違いに起因する温度ムラが生じると、鋼板内の応力が低減されず、鋼板形状が劣化することが記載されている。しかしMs点〜Ms点+200℃の温度範囲で保持するには、塩浴、金属浴、或いは誘導加熱装置などを新たに設ける必要があり、コスト高となる。また、所定の温度範囲で保持しているため、生産性が悪かった。
特開2011−202195号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、定盤上に冷延鋼板を載置したときに反りが少ない鋼板形状に優れた高強度冷延鋼板を生産性良く製造できる方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る鋼板形状に優れた高強度冷延鋼板の製造方法とは、C:0.1〜0.20%(質量%の意味。以下、成分について同じ。)、Si:0.2〜2%、Mn:1.0〜3%、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Ti:0.001〜0.2%、Al:0.01〜0.1%、B:0.0002〜0.01%、およびN:0.01%以下(0%を含まない)を満足し、残部が鉄および不可避不純物からなり、金属組織全体に対する比率は、焼戻しマルテンサイトは65面積%以上、残留オーステナイトは5面積%以下(0面積%を含む)、フェライトは20面積%以下(0面積%を含む)、ベイナイトは10面積%以下(0面積%を含む)を満足する高強度冷延鋼板の製造方法である。そして本発明の製造方法は、前記成分組成を満足する鋼材をオーステナイト単相域で15〜600秒間加熱して焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍後、650〜800℃の温度域における一次冷却停止温度まで平均冷却速度10℃/秒以下(0℃/秒を含まない)で徐冷する一次冷却工程と、前記一次冷却停止温度から下記式(1)で算出されるMs点の温度以上、500℃以下の温度域における二次冷却停止温度まで平均冷却速度20〜100℃/秒で冷却する二次冷却工程と、前記二次冷却停止温度から室温まで平均冷却速度100℃/秒超で急冷する三次冷却工程と、150〜300℃の温度域に加熱し、30〜1500秒間保持する過時効処理工程とをこの順で含む点に要旨を有している。下記式(1)において、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を意味している。
Ms=561−474×[C]−33×[Mn]−17×[Ni]−17×[Cr]−21×[Mo]・・・(1)
前記鋼材は、更に他の元素として、
(a)Cu:1%以下(0%を含まない)および/またはNi:1%以下(0%を含まない)、
(b)Cr:1%以下(0%を含まない)および/またはMo:1%以下(0%を含まない)、
等の元素を含有してもよい。
なお、本明細書において、「鋼板形状に優れた」とは、定盤上に冷延鋼板を設置したときに反りが少ないことを意味している。
本発明によれば、所定の成分組成を満足する鋼材をオーステナイト単相域で加熱して焼鈍した後、室温まで冷却してから過時効処理を施すにあたり、冷却過程では、所定の温度域を境に冷却速度を3段階に変えて冷却している。そして本発明では、特にオーステナイト単相域から650〜800℃の温度域における一次冷却停止温度までを徐冷しているため、鋼材内に温度分布を生じさせずに均一に冷却できる。その結果、上記特許文献1のように、Ms点〜Ms点+200℃の温度範囲で保持して鋼板内の温度を均一化するための新たな設備を設けなくても、鋼板形状に優れた高強度冷延鋼板を生産性良く製造できる。
図1は、急冷開始温度と、鋼板の反り高さとの関係を示すグラフである。
本発明者らは、定盤上に冷延鋼板を載置したときに反りが少ない鋼板形状に優れた高強度冷延鋼板を新たな設備投資をすることなく製造できる方法を提供するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、所定の成分組成を満足する鋼材をオーステナイト単相域で加熱して焼鈍した後、室温まで冷却してから過時効処理を施すにあたり、冷却過程では、オーステナイト単相域から650〜800℃の温度域における一次冷却停止温度までを平均冷却速度10℃/秒以下で徐冷(以下、一次冷却ということがある。)した後、一次冷却停止温度からMs点の温度以上、500℃以下の温度域における二次冷却停止温度まで平均冷却速度20〜100℃/秒で冷却(以下、二次冷却ということがある。)し、次いで二次冷却停止温度から室温まで平均冷却速度100℃/秒超で急冷(以下、三次冷却ということがある。)することが重要であること、このように3段階冷却を行えば、上述した特許文献1のように、所定の温度範囲で保持し、鋼板内の温度を均一にするための新たな設備を設けることなく鋼板形状に優れた高強度冷延鋼板を生産性良く製造できることを見出し、本発明を完成した。
特に、本発明では、オーステナイト単相域から650〜800℃の温度域における一次冷却停止温度までを徐冷することが重要である。この温度範囲を徐冷することによって、鋼材内における温度ムラを無くし、温度分布を均一にできる。そして、この温度分布を均一にした鋼材を、二次冷却停止温度から室温まで急冷することによって、マルテンサイト変態に伴う変態歪を均一に発生させつつマルテンサイトを生成させることができるため、上記特許文献1のように恒温保持するための新たな設備を設けなくても、鋼板の長手方向における変態歪のムラがなくなり、反りの発生を抑制でき、鋼板形状が良好となる。
以下、本発明に係る高強度冷延鋼板の製造方法について説明する。
本発明の高強度冷延鋼板は、C:0.1〜0.20%、Si:0.2〜2%、Mn:1.0〜3%、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Ti:0.001〜0.2%、Al:0.01〜0.1%、B:0.0002〜0.01%、およびN:0.01%以下(0%を含まない)を満足し、残部が鉄および不可避不純物からなるものであり、金属組織は、焼戻しマルテンサイト、残留オーステナイト、フェライト、およびベイナイトを有し、前記金属組織全体に対する比率は、前記焼戻しマルテンサイトは65面積%以上、前記残留オーステナイトは5面積%以下(0面積%を含む)、前記フェライトは20面積%以下(0面積%を含む)、前記ベイナイトは10面積%以下(0面積%を含む)を満足しているものである。
こうした高強度冷延鋼板は、前記成分組成を満足する鋼材をオーステナイト単相域で15〜600秒間加熱して焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍後、650〜800℃の一次冷却停止温度まで平均冷却速度10℃/秒以下(0℃/秒を含まない)で徐冷する一次冷却工程と、前記一次冷却停止温度から下記式(1)式で算出されるMs点の温度以上、500℃以下の温度域における二次冷却停止温度まで平均冷却速度20〜100℃/秒で冷却する二次冷却工程と、前記二次冷却停止温度から室温まで平均冷却速度100℃/秒超で急冷する三次冷却工程と、150〜300℃の温度域に加熱し、30〜1500秒間保持する過時効処理工程とをこの順で含む方法によって製造できる。下記式(1)において、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を意味している。
Ms=561−474×[C]−33×[Mn]−17×[Ni]−17×[Cr]−21×[Mo]・・・(1)
まず、焼鈍工程に供する鋼材を製造する手順について説明する。
上記鋼材は、常法に従って製造したものを準備すればよく、例えば、上記成分組成を満足するように成分調整を行なって得られた鋼片を熱間圧延し、次いで冷間圧延を行って製造すればよい。即ち、上記成分組成を満足する鋼片を、例えば、1100〜1300℃に加熱した後、仕上げ圧延温度(熱間圧延終了温度)を、例えば、850〜950℃として熱間圧延を行い、巻取り温度を、例えば、400〜700℃として巻き取って熱延鋼板を製造すればよい。
得られた熱延鋼板を、常法に従って酸洗し、表面の酸化スケールを除去した後、冷間圧延して冷延鋼板を製造すればよい。冷間圧延は、圧下率(冷延率)を、例えば、30〜80%として行えばよい。
なお、上記熱延鋼板は、通常の製鋼、鋳造および熱間圧延の各工程を経て製造することを想定しているが、例えば、薄手鋳造などにより熱間圧延工程の一部もしくは全部を省略して製造してもよい。
次に、焼鈍工程から順を追って説明する。
[焼鈍工程]
焼鈍工程では、上記成分組成を満足する鋼材をオーステナイト単相域で15〜600秒間均熱して焼鈍を行う。
焼鈍温度が低過ぎてオーステナイト単相域に到達していない場合は、鋼材中の炭化物が充分に溶解しなかったり、フェライトの再結晶が完了せず、所望の強度や延性が得られない。従って焼鈍温度はオーステナイト温度域とする。
上記オーステナイト単相域とは、Ac3点以上の温度域であり、Ac3点は、鋼材の成分組成と、「レスリー鉄鋼材料科学」(丸善株式会社、1985年5月31日発行、P.273)に記載されている下記式(a)から算出できる。下記式(a)中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を示しており、鋼材に含まれない元素の含有量は0質量%として計算すればよい。
Ac3(℃)=910−203×[C]1/2+44.7×[Si]−30×[Mn]−11×[Cr]+31.5×[Mo]−20×[Cu]−15.2×[Ni]+400×[Ti]+104×[V]+700×[P]+400×[Al]・・・(a)
上記焼鈍温度の上限は特に限定されないが、950℃を超えるとオーステナイト粒の成長が著しくなり、後の冷却によって生成する組織を粗大化させることがある。組織が粗大化すると、鋼板の延性、伸びフランジ性、靭性などが劣化することがある。従って焼鈍温度は、950℃以下とすることが好ましく、より好ましくは930℃以下、更に好ましくは920℃以下とする。
上記焼鈍時間が15秒未満の場合は、上記オーステナイト単相域で加熱しても時間が短過ぎるため、鋼材中の炭化物が充分に溶解しなかったり、フェライトの再結晶が完了せず、所望の強度や延性が得られないことがある。従って上記焼鈍時間は、15秒以上とし、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上とする。しかし上記焼鈍時間を600秒以上としてもその効果は飽和し、多大なエネルギーを消費してコスト増加を招く。従って上記焼鈍時間は600秒以下、好ましくは500秒以下、より好ましくは400秒以下とする。
[一次冷却工程]
一次冷却工程では、焼鈍後、上記焼鈍温度から、650〜800℃の温度域における一次冷却停止温度まで平均冷却速度10℃/秒以下(0℃/秒を含まない)で徐冷する。平均冷却速度10℃/秒以下で徐冷することによって、鋼材内における温度ムラを低減し、鋼板内における温度分布を均一にできる。その結果、後述する三次冷却工程ではマルテンサイト変態による変態歪を均一に導入させることができる。よって、上記特許文献1のように、新たな保持設備を設けなくても、鋼板形状に優れた高強度冷延鋼板を製造できる。
上記一次冷却停止温度が650℃を下回ると、フェライトが過剰に生成し、焼入れ時に所望のマルテンサイトの生成量を確保できないため、鋼板の強度が低下する。よって一次冷却停止温度は650℃以上、好ましくは670℃以上、より好ましくは680℃以上とする。しかし一次冷却停止温度が800℃を超えると、鋼材内の温度ムラを低減する効果が殆ど得られないため、他の製造条件を適切に制御しても後述する三次冷却工程で導入される変態歪が不均一となるため、鋼板形状が良好な高強度冷延鋼板を製造できない。従って一次冷却停止温度は800℃以下、好ましくは780℃以下、より好ましくは750℃以下とする。
なお、上記一次冷却停止温度は、フェライトを生成させて鋼板の延性を向上させる場合には、例えば、650〜700℃の低温側の温度域で設定すればよく、フェライトの生成を抑制して鋼板の強度を向上させる場合には、例えば、700〜800℃の高温側の温度域で設定することが推奨される。
上記一次冷却停止温度までの平均冷却速度が10℃/秒を超えると、鋼材内に温度ムラが生じ、鋼板内の温度分布が均一にならないため、他の製造条件を適切に制御しても後述する三次冷却工程で導入される変態歪が不均一となるため、鋼板形状が良好な高強度冷延鋼板を製造できない。従って一次冷却工程における平均冷却速度は10℃/秒以下、好ましくは8℃/秒以下、より好ましくは5℃/秒以下とする。
上記一次冷却工程における平均冷却速度の下限値は特に限定されず、生産性に問題ない範囲であればよい。
[二次冷却工程]
二次冷却工程では、上記一次冷却停止温度から、上記式(1)で算出されるMs点の温度以上、500℃以下の温度域における二次冷却停止温度まで平均冷却速度20〜100℃/秒で冷却する。この二次冷却によって、一次冷却工程で生成したフェライトが成長するのを抑制し、オーステナイトを過冷状態のまま、マルテンサイト変態を起こさせる温度域(Ms点の温度以上、500℃以下の温度域)まで冷却でき、金属組織を適切に制御できる。
上記二次冷却停止温度までの平均冷却速度が20℃/秒を下回ると、冷却途中でフェライトが生成、成長し、鋼板の強度が低下する。また、冷却途中でベイナイトが生成、成長し、鋼板の強度にバラツキが生じ、安定した材質の高強度冷延鋼板を製造できない。よって二次冷却工程における平均冷却速度は20℃/秒以上、好ましくは25℃/秒以上、より好ましくは30℃/秒以上とする。
しかし二次冷却工程における平均冷却速度が100℃/秒を超えると、鋼材を均一に冷却できないため、鋼材内に温度ムラが生じ、温度分布が発生する。従って後述する三次冷却工程でマルテンサイト変態に伴って導入される変態歪が不均一に導入されるため、鋼板形状を改善できなくなる。従って二次冷却工程における平均冷却速度は100℃/秒以下、好ましくは80℃/秒以下、より好ましくは60℃/秒以下とする。
上記二次冷却停止温度がMs点の温度を下回ると、二次冷却の途中でマルテンサイト変態が起こり、マルテンサイトが生成する。このマルテンサイトは、後述する三次冷却時に生成するマルテンサイトよりも強度が低いため、所望の強度が得られない。従って二次冷却停止温度はMs点の温度以上、好ましくはMs点+5℃以上、より好ましくはMs点+10℃以上とする。
しかし上記二次冷却停止温度が500℃を超えると、後述する三次冷却時に鋼材の温度低下量が大きくなり過ぎるため、冷却時の鋼材に導入される熱歪が大きくなる。従って反りが発生して鋼板形状を改善できない。よって二次冷却停止温度は500℃以下、好ましくはMs点+50℃以下、より好ましくはMs点+45℃以下とする。
上記二次冷却は、鋼材にガスを吹き付けて冷却するガスジェット冷却すればよい。吹き付けるガスとしては、不活性ガス(例えば、窒素ガス)を用いればよい。
[三次冷却工程]
三次冷却工程では、上記二次冷却停止温度から室温(27℃)まで平均冷却速度100℃/秒超で急冷する。この温度域を急冷することによって、過冷却状態のオーステナイトをマルテンサイトに変態させることができる。このとき本発明では、上記一次冷却工程で鋼材内の温度ムラを低減し、鋼材内の温度分布を均一にしているため、マルテンサイト変態に伴う変態歪を鋼材内に均一に導入できる。その結果、鋼材の材質が均一となるため、反りが発生し難く、鋼板形状が良好となる。また、マルテンサイトが生成することによって、鋼板の強度を高めることができる。平均冷却速度は、マルテンサイト組織が得られる速度であればよく、好ましくは150℃/秒以上、より好ましくは200℃/秒以上とする。なお、三次冷却工程における平均冷却速度の上限は特に限定されるものではない。
上記急冷の冷却方法は、例えば、水焼入れ、水冷ロール冷却、気水冷却、およびガスジェット冷却などその方法は問わない。例えば、鋼材を水槽に浸漬する水焼入れの場合には、水槽に浸漬したノズルから噴流水を鋼材に吹き付けて行えばよく、吹き付ける噴流水の量を調整することによって鋼材の平均冷却速度を制御できる。また、前述の冷却方法を変更することで、冷却速度を制御することができる。
[過時効処理工程]
過時効処理工程では、上記三次冷却工程において室温まで冷却した後、150〜300℃の温度域に加熱し、30〜1500秒間保持して過時効処理(低温焼戻し処理)を行う。この温度域で所定時間保持することによって、マルテンサイトを焼戻し、固溶Cが多く、熱的に不安定な焼入れままの鋼材を安定化させることができる。即ち、固溶Cが多量に存在すると熱的に不安定なため、室温で長時間保管している間に固溶Cが炭化物を形成して析出することで鋼板形状が変化したり、鋼板の機械的特性が変化する原因となる。従って本発明では過時効処理を必ず行う必要がある。
保持温度が150℃未満では、過時効処理が不充分となり、熱的に不安定な鋼材を安定化させることができない。従って保持温度は150℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上とする。しかし保持温度が300℃を超えると、マルテンサイトが軟化し、鋼材の強度が急激に低下する。従って保持温度は300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下とする。
保持時間が30秒未満では、過時効処理が不充分となり、熱的に不安定な焼入れままの鋼材を安定させることができない。従って保持時間は30秒以上、好ましくは60秒以上、より好ましくは120秒以上、更に好ましくは180秒以上とする。しかし保持時間が1500秒を超えてもその効果は飽和し、生産性が低下するだけである。従って保持時間は1500秒以下、好ましくは1200秒以下、より好ましくは900秒以下、更に好ましくは600秒以下とする。
[その他]
本発明の製造方法によれば、過時効処理した後、鋼材の形状修正を目的とする調質圧延を行う必要はないが、鋼材の表面粗度を調整したり、鋼材の材質を調整するために、必要に応じて調質圧延を行っても勿論構わない。
次に、上記製造方法で得られる本発明に係る高強度冷延鋼板の成分組成と金属組織について詳細に説明する。
<成分組成>
本発明の高強度冷延鋼板は、下記に示す範囲でC、Si、Mn、P、S、Ti、Al、B、およびNを含有するものである。
[C:0.1〜0.20%]
Cは、鋼板の高強度化に必要不可欠な元素であり、C量が0.1%未満では、鋼板の強度確保と延性との両立が困難となる。従ってC量は0.1%以上、好ましくは0.115%以上、より好ましくは0.120%以上とする。しかしC量が0.20%を超えて過剰になると、引張強度が高くなり過ぎるため、鋼板形状を改善できない。また、引張強度が高くなり過ぎるため、伸びが低下する。また、C量が過剰になると溶接部や熱影響部が著しく硬化し、溶接性が劣化する。従ってC量は0.20%以下、好ましくは0.18%以下、より好ましくは0.17%以下とする。
[Si:0.2〜2%]
Siは、フェライトの固溶強化に作用する元素であり、フェライトの硬度を確保すると共に、鋼板の伸びを高めるために作用する元素である。従ってSiは、0.2%以上、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.4%以上とする。しかしSiを過剰に含有すると、赤スケール等の発生により表面性状の劣化や、めっき付着性の劣化やめっき密着性の劣化を引き起こす。従ってSi量は2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.4%以下とする。
[Mn:1.0〜3%]
Mnは、鋼板の強化に作用する元素である。また、硬質相である焼戻しマルテンサイトの生成量を確保するために必要な元素である。従ってMn量は1.0%以上、好ましくは1.3%以上、より好ましくは1.50%以上、更に好ましくは1.7%以上とする。しかしMn量が3%を超えて過剰に含有すると、鋳造性を劣化させるなど生産性を低下させる。従ってMn量は3%以下、好ましくは2.7%以下、より好ましくは2.5%以下とする。
[P:0.05%以下(0%を含まない)]
Pは、鋼板を強化し、伸びを高めるために作用する元素であるが、過剰に含有すると、粒界偏析により脆化を引き起こし、衝撃特性を劣化させる。従ってP量は、0.05%以下、好ましくは0.03%以下、より好ましくは0.01%以下とする。
[S:0.01%以下(0%を含まない)]
Sは、不可避的に含有する元素であり、MnSなどの硫化物系介在物を形成して耐衝撃性を劣化させたり、溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となるので、極力低減させる必要がある。そこで製造コストを考慮し、本発明では、0.01%以下、好ましくは0.007%以下、より好ましくは0.005%以下とする。
[Ti:0.001〜0.2%]
Tiは、微細な炭化物や窒化物を形成することによって、結晶粒の微細化と粒成長抑制効果とを発揮させる元素である。また、Tiの微細な炭化物や窒化物は、鋼板内部の拡散性水素をトラップするトラップサイトとして作用し、鋼板の水素脆性感受性を低下させる。また、Tiの微細な炭化物や窒化物は、生成錆を緻密化し、耐食性を向上させるのに作用する。従ってTiは、0.001%以上、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.03%以上とする。しかしTiを過剰に含有すると、炭化物が粗大化し、強度が低下する。従ってTi量は0.2%以下、好ましくは0.15%以下、より好ましくは0.1%以下とする。
[Al:0.01〜0.1%]
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、本発明では、0.01%以上含有させる必要がある。好ましくは0.02%以上、より好ましくは、0.03%以上である。しかしAlを過剰に含有すると、鋼板中にアルミナ等の介在物が多く生成し、鋼板の加工性が劣化する。従ってAl量は0.1%以下、好ましくは0.09%以下、より好ましくは0.08%以下とする。
[B:0.0002〜0.01%]
Bは、オーステナイト粒界からのフェライトの生成、成長を抑制する作用を有している元素であり、鋼板形状を改善するために必要かつ重要な元素である。従ってB量は0.0002%以上、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0010%以上とする。しかしBを過剰に含有して0.01%を超えると、加工性が劣化する。従ってB量は0.01%以下、好ましくは0.007%以下、より好ましくは0.005%以下とする。
[N:0.01%以下(0%を含まない)]
Nは、不可避的に含有する元素であり、過剰に含有すると窒化物を形成して加工性を劣化させる元素である。特に、鋼板中のBと結合してBN析出物を形成すると、オーステナイト粒界からのフェライト生成抑制作用が充分に発揮されないため、鋼板形状を改善できない。また、BN析出物を形成すると、Bによる焼入れ性向上作用が阻害される。従ってNは0.01%以下、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.006%以下とする。
本発明に係る高強度冷延鋼板の成分組成は上述した通りであり、残部は鉄およびS、N以外の不可避不純物である。
本発明の高強度冷延鋼板は、更に他の元素として、下記に示す範囲で、(a)Cuおよび/またはNi、(b)Crおよび/またはMo、等の元素を含有してもよい。
[(a)Cu:1%以下(0%を含まない)および/またはNi:1%(0%を含まない)]
CuおよびNiは、鋼板の強度を高める作用を有する元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、Cuは0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.08%以上、更に好ましくは0.1%以上とする。Niは、0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.08%以上、更に好ましくは0.1%以上とする。しかしCu量が1%を超えると熱間圧延時に表面疵を発生し易くなるなど製造性が悪くなったり、鋼板の加工性が悪くなることがある。従ってCu量は1%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.9%以下、更に好ましくは0.8%以下とする。また、Ni量が1%を超えると鋼板の加工性が悪くなることがある。従ってNi量は1%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.9%以下、更に好ましくは0.8%以下とする。なお、Cuを単独で含有させると、熱間での脆化を引き起こす懸念があるため、Niと併用することが推奨される。Niは高価な元素であるため、鋼板の強化が必要な場合のみ添加することが推奨される。
[(b)Cr:1%以下(0%を含まない)および/またはMo:1%以下(0%を含まない)]
CrとMoは、鋼板の強度を高めるのに作用する元素である。また、CrとMoは、強度と延性のバランスを劣化させる炭化物の生成を抑制する作用も有している。特にMoは、溶接熱影響部の軟化防止にも作用する。こうした作用を有効に発揮させるには、Crは0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上とする。Moは0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.01%以上、更に好ましくは0.05%以上とする。しかし過剰に含有すると、鋼板の延性を劣化させる。従ってCrは1%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.5%以下とする。Moは1%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.5%以下とする。CrとMoは、夫々単独で、或いは併用して含有させればよい。CrとMoを併用する場合の合計量は、例えば、1.5%以下とすることが好ましく、より好ましくは1%以下とする。
<金属組織>
本発明の高強度冷延鋼板は、焼戻しマルテンサイト、残留オーステナイト(以下、残留γと表記することがある。)、フェライト、およびベイナイトを有しており、金属組織全体に対する比率は、下記の通りである。
[焼戻しマルテンサイト:65面積%以上]
焼戻しマルテンサイトとは、水焼入れによるマルテンサイト変態完了後に昇温して焼戻しすることにより生成する焼戻された組織を意味する。上記焼戻しマルテンサイトは、鋼板形状を改善し、特性を安定化するために必要な組織である。また、焼戻しマルテンサイトは、硬質相であり、鋼板の高強度化に寄与する。従って上記焼戻しマルテンサイトは、金属組織全体に対して65面積%以上、好ましくは75面積%以上、更に好ましくは85面積%以上、特に好ましくは90.0面積%以上、最も好ましくは100面積%である。
[残留オーステナイト(残留γ):5面積%以下(0面積%を含む)]
残留γは、成形加工時に変態して硬質なマルテンサイトとなり、鋼板の伸びフランジ性を低下させる。従って残留γはできるだけ低減することが好ましく、5面積%までであれば許容できる。好ましくは3面積%以下であり、より好ましくは2.5面積%以下、最も好ましくは0面積%である。
[フェライト:20面積%以下(0面積%を含む)]
鋼板形状を改善するには、フェライトをできるだけ低減し、焼戻しマルテンサイトの生成量を増大させる必要がある。また、フェライトが過剰に生成すると、硬質相である焼戻しベイナイトの生成量を確保できず、鋼板の強度が低下する。従ってフェライトは20面積%以下とする必要があり、好ましくは15面積%以下、より好ましくは13.0面積%以下であり、最も好ましくは0面積%である。
なお、フェライトは、鋼板の伸びを高めて加工性を向上させる作用を有している。従って加工性の向上が要求される場合には、フェライトを積極的に含有させてもよく、好ましくは1面積%以上、より好ましくは3面積%以上、更に好ましくは5面積%以上、特に好ましくは10面積%以上とする。
[ベイナイト:10面積%以下(0面積%を含む)]
ベイナイトは、上記焼戻しマルテンサイトと同様、鋼板の高強度化に寄与する硬質相である。しかしベイナイトが生成する温度域によってその特性は大きく変化し、材質のバラツキを生じさせることがある。従ってベイナイトはできるだけ低減することが推奨され、10面積%までであれば許容できる。好ましくは5面積%以下、より好ましくは3.0面積%以下、最も好ましくは0面積%である。
上記焼戻しマルテンサイト、フェライト、およびベイナイトの組織分率については、圧延方向に対して平行な断面を露出させ、鏡面研磨した後、ナイタールによる腐食を施し、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いて金属組織を観察し、写真撮影し、画像解析を行って算出すればよい。
上記残留オーステナイトの組織分率は、Cr管球を用いたX線回折法により測定すればよい。
本発明の高強度冷延鋼板は、例えば、バンパーリインホースメントなどの衝撃吸収能を有する部品や、ドアインパクトバーのような補強部材に用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
真空溶解により鋼を溶製し、下記表1に示す成分組成の鋼片(残部は鉄およびS、N以外の不可避不純物)を作製した。下記表1に示す成分組成に基づいて上記式(1)で算出されるMs点の温度を下記表1に併せて示す。得られた鋼片を1250℃に加熱し、仕上げ圧延温度を900℃として熱間圧延した後、650℃で巻取り、厚さ2.8mmの熱延鋼板を製造した。得られた熱延鋼板を酸洗し、冷間圧延して厚さ1.4mmの冷延鋼板(鋼材)を製造した。
次に、得られた鋼材を、水焼入れタイプの熱処理設備にて熱処理した。熱処理設備としては、アルバック理工株式会社製の鋼板熱処理シュミレータ(型番:CCT−AQV)を用いた。熱処理には、上記鋼材を厚み1.4mm×幅150mm×長さ250mmに切り出した試験片を用いた。熱処理は、上記試験片を専用治具に設置し、下記表2に示す熱パターンで行った。即ち、上記試験片を焼鈍温度920℃に加熱し、この温度で下記表2に示す時間保持した後、一次冷却として、下記表2に示す平均冷却速度(℃/秒)で下記表2に示す一次冷却停止温度(℃)まで冷却し、この一次冷却停止温度から、二次冷却として、下記表2に示す平均冷却速度(℃/秒)で下記表2に示す二次冷却停止温度(℃)まで冷却した後、試験片に噴流水を吹き付けて下記表2に示す平均冷却速度(℃/秒)で室温(27℃)まで水焼入れを行って三次冷却を行った。
なお、下記表2に示したNo.7、20、26は、焼鈍後、一次冷却停止温度まで冷却した後、この温度から上記と同じ条件で水焼入れを行って室温まで最終冷却を行った。この最終冷却を便宜上、三次冷却と呼ぶこととする。
下記表2に示したNo.8、21、27は、焼鈍後、この温度から上記と同じ条件で水焼入れを行って室温まで最終冷却を行った。この最終冷却を便宜上、三次冷却と呼ぶこととする。
下記表2には、説明の便宜上、三次冷却(最終冷却)を開始したときの温度(急冷開始温度)をまとめて示す。
室温まで冷却した後、下記表2に示す焼戻し温度に加熱し、この温度で下記表2に示す時間保持して過時効処理(低温焼戻し処理)を行った。過時効処理を施した試験片について、金属組織、引張特性、鋼板形状を評価した。
<金属組織>
焼戻しマルテンサイト、フェライト、およびベイナイトの組織分率については、上記焼戻し処理を施した試験片の圧延方向に対して平行な断面を露出させ、鏡面研磨した後、ナイタールによる腐食を施し、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いて板厚に対して1/4位置における金属組織を観察し、写真撮影し、画像解析を行って算出した。各組織の割合は、画像解析装置を用いて撮影した写真を2値化することにより求めた。
残留オーステナイトの組織分率は、リガク製RINT1500X線回折測定装置を用いて測定した。測定は、鋼板を板厚方向に1/4厚に減厚した面を電解研磨した面を測定面として行った。測定源としてCo Kα線を使用し、スキャン速度1.2°/分の条件でX線回折により、α―Feの回折ピーク(110)、(200)、(211)および、γ−Feの回折ピーク(111)、(200)、(220)、(311)面の積分強度を測定し、得られた各面の積分強度からそれぞれの組み合わせについて残留γの面積率を算出し、その平均値を残留γ量とした。
金属組織全体に対する各組織の分率(面積%)を下記表3に示す。
<引張特性>
過時効処理を施した試験片の圧延方向に対して垂直な方向が長手方向となるように、JIS 5号引張試験片を切り出し、JIS Z2241に基づいて、0.2%耐力(YS)、引張強度(TS)、および破断伸び(EL)を測定した。また、YSとTSに基づいて降伏比(YR)を算出した。結果を下記表3に示す。本発明では、YSが900MPa以上の場合を合格、900MPa未満の場合を不合格とし、TSが980MPa以上の場合を合格、980MPa未満の場合を不合格とし、ELが8.5%以上の場合を合格、8.5%未満の場合を不合格と判定した。本発明では、YSとTSの両方が合格と判定された場合を「高強度」と評価し、ELが合格と判定された場合を「加工性に優れる」と評価した。
<鋼板形状>
鋼板形状は、試験片の大きさを変更した点以外は上記特許文献2の図1と同様にして測定した反り高さに基づいて評価した。反り高さは、焼戻し処理を施した試験片を反りが上になるように定盤上に設置し、触針が測定物上を移動する接触式変位計を用いて測定した。具体的には、幅方向の中心位置および幅方向の両端から25mm離れた位置において鋼板の形状を連続的に測定し、定盤面からの高さの最大値を反り高さとして測定した。測定は、試験片(厚み1.4mm×幅150mm×長さ250mm)の長さ方向の全体に亘って測定した。測定結果を下記表3に示す。本発明では、反り高さが3mm以下で高い平坦度を有している場合を合格、反り高さが3mmを超え、平坦度が低い場合を不合格と判定した。本発明では、反り高さが合格と判定されたものを「鋼板形状に優れる」と評価した。
本実施例では、YS、TS、EL、および反り高さの全てが合格と判定された場合を発明例、一つでも不合格と判定された場合を比較例と評価した。
下記表1〜表3から次のように考察できる。No.1〜4、9、12、13、15〜18、22、24、28、30、40、41、43〜45、47、48、50は、いずれも本発明で規定している要件を満足している例であり、鋼板形状に優れた高強度冷延鋼板を生産性良く製造できていることが分かる。
一方、No.5、10、14、19、42、46、49、51は、二次冷却停止温度が高過ぎる例であり、三次冷却工程で熱歪が多く導入されたため、反り高さが大きくなり、鋼板形状を改善できなかった。No.6とNo.11は、二次冷却停止温度が低過ぎる例であり、ベイナイトが過剰に生成したため、YSが低くなり過ぎた。No.7、20、26は、いずれも一次停止温度からそのまま水焼入れした例であり、急冷開始温度が高過ぎるため、熱歪が大きくなり、反り高さが大きくなって鋼板形状を改善できなかった。
No.8、21、27は、いずれも920℃で180秒間保持して焼鈍した後、そのまま水焼入れした例である。鋼材内に温度分布が生じたまま冷却しているため、マルテンサイト変態に伴う変態歪が不均一に導入された。また、920℃から水焼入れしているため、熱歪も大きくなった。よって反り高さが大きくなり、鋼板形状を改善できなかった。No.23、25、29、31は、いずれも二次冷却工程における冷却速度が小さ過ぎ、また二次冷却停止温度が高過ぎる例である。従って三次冷却工程で熱歪が多く導入されたため、反り高さが大きくなり、鋼板形状を改善できなかった。
No.32〜39は、いずれも鋼片の成分組成が本発明で規定している要件を満足しない例である。No.32は、B量が少な過ぎる例であり、フェライトが過剰に生成したため、焼戻しマルテンサイトの生成量を確保できず、YSおよびTSが低下した。No.33は、B量が少な過ぎ、また二次冷却停止温度が高過ぎる例であり、フェライトが過剰に生成したため、YSおよびTSが低下し、鋼板形状を改善できなかった。
No.34は、C量が多過ぎる例であり、TSが高くなり過ぎたため、鋼板形状を改善できなかった。また、TSが高くなり過ぎたため、ELが低くなった。No.35は、C量が多過ぎ、また二次冷却停止温度が高過ぎる例であり、TSが高くなり過ぎたため、鋼板形状を改善できなかった。また、TSが高くなり過ぎたため、ELが低くなった。
No.36とNo.37は、Si量が少な過ぎる例であり、ELが低くなった。特にNo.37は、二次冷却速度が小さ過ぎ、二次冷却停止温度が高過ぎるため、三次冷却工程で熱歪が多く導入され、鋼板形状も改善できなかった。
No.38とNo.39は、Mn量が少な過ぎる例であり、フェライトが過剰に生成したため、焼戻しマルテンサイトの生成量を確保できず、TSが低下した。特にNo.39は、二次冷却停止温度が高過ぎるため、ベイナイトが過剰に生成し、反り高さが大きくなり、鋼板形状を改善できなかった。
次に、三次冷却工程における急冷開始温度と、反り高さとの関係を示すグラフを図1に示す。なお、図1には、下記表3に示したNo.1〜31、40〜51のデータのみをプロットし、鋼片の成分組成が本発明で規定している要件を満足しない例(No.32〜39)はプロットしていない。図1から明らかなように、三次冷却工程における急冷開始温度を500℃以下とすることによって、反り高さを3mm以下にでき、鋼板形状を改善できることが分かる。
Figure 0006047037
Figure 0006047037
Figure 0006047037

Claims (3)

  1. C :0.1〜0.20%(質量%の意味。以下、成分について同じ。)、
    Si:0.2〜2%、
    Mn:1.0〜3%、
    P :0.05%以下(0%を含まない)、
    S :0.01%以下(0%を含まない)、
    Ti:0.001〜0.2%、
    Al:0.01〜0.1%、
    B :0.0002〜0.01%、および
    N :0.01%以下(0%を含まない)を満足し、
    残部が鉄および不可避不純物からなり、
    金属組織全体に対する比率は、
    焼戻しマルテンサイトは82.8面積%以上、
    残留オーステナイトは5面積%以下(0面積%を含む)、
    フェライトは20面積%以下(0面積%を含む)、
    ベイナイトは10面積%以下(0面積%を含む)を満足する高強度冷延鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成を満足する鋼材をオーステナイト単相域で15〜600秒間加熱して焼鈍する焼鈍工程と、
    焼鈍後、650〜800℃の温度域における一次冷却停止温度まで平均冷却速度10℃/秒以下(0℃/秒を含まない)で徐冷する一次冷却工程と、
    前記一次冷却停止温度から下記式(1)で算出されるMs点の温度以上、500℃以下の温度域における二次冷却停止温度まで平均冷却速度20〜60℃/秒で冷却する二次冷却工程と、
    前記二次冷却停止温度から室温まで平均冷却速度100℃/秒超で急冷する三次冷却工程と、
    150〜300℃の温度域に加熱し、30〜1500秒間保持する過時効処理工程
    とをこの順で含むことを特徴とする鋼板形状に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
    Ms=561−474×[C]−33×[Mn]−17×[Ni]−17×[Cr]−21×[Mo]・・・(1)
    [式(1)において、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を意味している。]
  2. 前記鋼材は、更に他の元素として、
    Cu:1%以下(0%を含まない)および/または
    Ni:1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記鋼材は、更に他の元素として、
    Cr:1%以下(0%を含まない)および/または
    Mo:1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載の製造方法。
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