JP6541163B2 - 水晶振動片、および水晶振動子 - Google Patents

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Description

本発明は、水晶振動片、および水晶振動子に関する。
ATカットにより形成される水晶振動片において、厚み滑り振動による振動エネルギーを振動片の中央部に閉じ込めるために、端部の厚みを小さくし、端部へと伝わる振動を減衰する構造が知られている(特許文献1参照)。
特開2008−67345号公報
水晶振動片の端部の厚みを小さくするために、ウェットエッチングにより水晶振動片の端部に斜面を形成する。このとき、ATカット水晶振動片は結晶異方性を有しているため、ウェットエッチングにより形成される斜面は、特定の傾斜角度を有する自然結晶面となる。しかし、自然結晶面はある程度大きい傾斜角を有するため、水晶振動片の主面と自然結晶面である斜面との境界部において、十分な減衰が成されないままに伝わった振動が発振し、振動エネルギーを水晶振動片の中央部に十分に閉じ込めることが困難な場合があった。
本発明はかかる事情に考慮してなされたものであり、その目的は、ATカット水晶振動片において、自然結晶面の構造にかかわらず、振動エネルギーを水晶振動片の中央部に精度よく閉じ込めることができる水晶振動片を提供することである。また、その水晶振動片を用いた水晶振動子を提供することである。
本発明の水晶振動片の一つの態様は、ATカットにより形成された水晶振動板を備える水晶振動片において、前記水晶振動板は、対向して設けられる一対の基面と、前記基面に対して交差する側面と、前記基面の中央部に一体に設けられた四角錐台状の凸部と、を有し、前記凸部は、主面と、前記主面に対する角度が自然結晶面よりも緩やかに形成された斜面と、を有する。
本発明の水晶振動片は、ATカットにより形成される水晶振動片において、対抗して設けられる一対の基面と、前記基面に対して交差する側面と、前記基面の中央部に設けられた四角錐台状の凸部と、を有し、前記凸部は、主面と、前記主面に対する角度が自然結晶面よりも緩やかに形成された斜面と、を有する。
前記凸部は、前記一対の基面にそれぞれ設けられていてもよい。
本発明の水晶振動片は、ATカットにより形成される水晶振動片において、対向して設けられる一対の主面と、前記主面に対して交差し、自然結晶面として形成される側面と、前記主面と前記側面とを接続し、前記主面に対して前記自然結晶面より小さな傾斜角で形成される斜面と、を有する。
この構成によれば、主面と側面とを接続する斜面における、主面に対する傾斜角度は自然結晶面に比べて小さい。そのため、主面と斜面の境界部において振動が発振することを抑制でき、かつ端部に伝わる振動を減衰できる。したがって、振動エネルギーを水晶振動片の中央部に閉じ込める精度を向上できる。
前記斜面は、少なくとも一方の前記主面における対向する2辺に対応する位置に形成されていてもよい。
この構成によれば、中央部から斜面が備えられた両端部に伝わる振動を減衰でき、振動エネルギーの閉じ込め精度を向上できる。
前記側面は、X軸と交差する面であってもよい。
この構成によれば、屈曲振動の抑制効果が高い水晶振動片が得られる。
前記側面は、Z’軸と交差する面であってもよい。
この構成によれば、輪郭振動の抑制効果が高い水晶振動片が得られる。
前記主面は四角形であり、前記斜面は、少なくとも一方の前記主面における4辺に対応する位置にそれぞれ形成されていてもよい。
この構成によれば、振動エネルギーの閉じ込め精度に優れた水晶振動片が得られる。
前記斜面は、一方側の前記主面と、他方側の前記主面と、の辺に対応する位置に形成されていてもよい。
この構成によれば、振動エネルギーの閉じ込め精度に優れた水晶振動片が得られる。
前記傾斜角度は、20°以下であってもよい。
この構成によれば、振動エネルギーの閉じ込め精度に優れた水晶振動片が得られる。
前記斜面の中心線平均粗さが、0.2nm以上、10nm以下であってもよい。
この構成によれば、面粗度が低いため、水晶振動片のインピーダンスを低くできる。
本発明の水晶振動子は、本発明の水晶振動片を備える。
この構成によれば、前述した水晶振動片を備えるため、同様に性能の優れた水晶振動子が得られる。
本発明の水晶振動片の製造方法は、ATカットにより形成される水晶振動片の製造方法であって、ウエハの両面のうち少なくとも一方の面をドライエッチングする工程と、前記ドライエッチングされた面に、水晶振動片の外形パターンのマスクを形成する工程と、ウェットエッチングによって、前記ウエハの前記ドライエッチングされた面に、斜面を形成する工程と、前記マスクを除去する工程と、前記ウエハを前記外形パターンに沿って個片化する工程と、を有する。
この方法によれば、ウエハの一面と他面とのうち少なくとも一方をドライエッチングした後に、水晶振動片の外形パターンのマスクを形成し、ウェットエッチングをすることにより、ウエハの面上に斜面を形成する。これにより、ドライエッチングされたウエハ表面には、自然結晶面の傾斜角度に依存せず、傾斜が緩やかな斜面が形成される。そのため、ウエハを外形パターンに沿って、個片化することによって、自然結晶面よりも緩やかな斜面を備えた水晶振動片を製造できる。
前記個片化する工程において、ウェットエッチングにより、自然結晶面を形成してもよい。
この方法によれば、自然結晶面と、自然結晶面よりも緩やかな斜面と、を備えた水晶振動片が得られる。
本発明の水晶振動片によれば、端部に自然結晶面よりも傾斜角度が緩やかな傾斜面を備えるため、自然結晶面の構造にかかわらず、振動エネルギーを水晶振動片の中央部に精度よく閉じ込めることができる。
水晶振動子の実施形態を示す分解斜視図である。 水晶板の切断角度および水晶結晶の座標軸を説明するためのランバード原石の斜視図である。 第1実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。 第1実施形態の水晶振動片の製造工程を示すフローチャートである。 第1実施形態の水晶振動片の製造工程の手順を示す断面図および平面図である。 第1実施形態の水晶振動片の製造工程の手順を示す断面図および平面図である。 第1実施形態の水晶振動片の効果を説明する図である。 第1実施形態の変形例を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。 第2実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。 第3実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。 第4実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。 第5実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。 第6実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る水晶振動片、水晶振動片の製造方法および水晶振動子について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の水晶振動子を示す、分解斜視図である。
本実施形態の水晶振動子1は、図1に示すように、ベース基板2とリッド基板3とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティC内に水晶振動片4がマウントされている。
水晶振動片4は、水晶振動板10と、水晶振動板10の表裏主面上にそれぞれ形成された一対の電極膜20と、を備えている。
水晶振動板10は、図2に示すように、X軸、Y軸、Z軸で水晶結晶の座標軸が定義された水晶のランバード原石6をATカット(表裏主面がX軸回りにZ軸から半時計方向に約35度15分の角度となるようにカット)されることで得られた水晶板7を、その後、ウェットエッチング加工によって平面視矩形状に形成されたものである。
なお、図2は、水晶板7の切断角度及び水晶結晶の座標軸を説明するためのランバード原石6の斜視図である。また、本実施形態においてZ’軸とは、図1に示すように、水晶振動板10の表裏主面上においてX軸と直交する方向の結晶軸であり、Y’軸とはX軸およびZ’軸に対して直交する結晶軸をいう。
図3は、水晶振動片4を示す図であって、図3(a)は正面図、図3(b)は平面図、図3(c)は側面図である。
水晶振動板10は、図3に示すように、略直方体である。水晶振動板10における表主面10aの短辺方向(Z’軸方向)両端には、表主面10aと、自然結晶面である側面11bと、を接続するようにして斜面11aがそれぞれ形成されている。側面11bは、表裏主面10a,10bと略垂直であり、斜面11aは、表主面10aの長辺の全長に亘って表主面10aに対して角度θ1で傾斜している。
斜面11aの角度θ1は、自然結晶面と水晶振動片の主面とが形成する角度の値よりも小さく、たとえば、20°以下である。斜面11aの寸法としては、たとえば、高さh1を5μmとした場合において、幅w1が50μm以上、200μm以下である。
一対の電極膜20は、図1および図3に示すように、それぞれ励振電極21と、引出電極22と、マウント電極23と、を備えている。
励振電極21は、水晶振動板10の表裏主面10a,10bの略中央部分にそれぞれ形成され、水晶振動板10を挟んで向かい合うように形成されている。また、水晶振動板10の長辺方向における一方側の端部(−X方向側)における、短辺方向(Z’軸方向)の両端部にはマウント電極23がそれぞれ設けられている。マウント電極23は、表主面10aから、斜面11aおよび側面11bを介して、裏主面10bに亘って形成されている。
また、マウント電極23のうち、一方のマウント電極23は引出電極22を介して表主面10a上に形成された一方の励振電極21に電気的に接続され、他方のマウント電極23は引出電極22を介して裏側の主面10b上に形成された他方の励振電極21に電気的に接続されている。
なお、上述した励振電極21、引出電極22およびマウント電極23からなる電極膜20は、金等の単層膜や、クロム等の金属を下地層とした上に金等の金属層を積層した積層膜で形成されている。
このように構成された水晶振動片4は、バンプや導電性接着剤等の実装部材を利用して、図1に示すようにベース基板2の上面2aにマウントされる。より具体的には、ベース基板2の上面2aに形成されたインナー電極300に対して、水晶振動板10の裏主面10bに形成された一対のマウント電極23が実装部材を介してそれぞれ接触した状態でマウントされる。
これにより、水晶振動片4は、ベース基板2の上面2aに機械的に保持されると共に、インナー電極300とマウント電極23とがそれぞれ導通された状態となっている。
次に、図4から図6を参照して、水晶振動片4の製造方法について説明する。
図4は、水晶振動片4の製造工程を示すフローチャートである。
図5は、水晶振動片4の製造工程の手順を示す図であって、後述する凹部形成工程S2の手順を示す断面図および平面図である。
図6は、水晶振動片4の製造工程の手順を示す図であって、後述する個片化工程S3の手順を示す断面図および平面図である。
本実施形態の水晶振動片の製造方法は、図4に示すように、ウエハ準備工程S1と、凹部形成工程S2と、個片化工程S3と、電極形成工程S4と、を有する。
まず、図4に示すように、水晶のランバート原石をATカットして一定の厚みとしたウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、この後、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行なって所定の厚みのウエハS(図5(a)参照)を準備する(S1)。
凹部形成工程S2は、ウエハSの表面に後述する凹部42を形成する工程である。
まず、図5(a)に示すように、ウエハSの表面をドライエッチング加工する(S2a)。
ドライエッチングとしては、ウエハSの表面を、後述するウエハSを斜面エッチング加工する工程S2fにおいて、斜面11aが形成できる範囲内において、特に限定されない。たとえば、リアクティブイオンエッチング(RIE)や、逆スパッタ等を選択できる。
この工程により、ウエハSの表面が平坦化される。
次に、図5(b)に示すように、ウエハSの両面にエッチング保護膜40とフォトレジスト膜41とをそれぞれ成膜する(S2b)。
エッチング保護膜40は、たとえば、クロム(Cr)を数10nm成膜したエッチング保護膜と、金(Au)を数10nm成膜したエッチング保護膜とが、順次積層された積層膜である。
この工程S2bにおいては、まず、ウエハSの表裏主面に、順次、エッチング保護膜40を、それぞれスパッタリング法や蒸着法などにより成膜する。
次いで、エッチング保護膜40上に、スピンコート法などによりレジスト材料を塗布して、フォトレジスト膜41を形成する。
なお、本実施形態で用いるレジスト材料としては、環化ゴム(たとえば、環化イソプレン)を主体にしたゴム系ネガレジストが好適に用いられている。ゴム系ネガレジストは、環化ゴムを有機溶剤に溶解し、さらにビスアジド感光剤を加えて、ろ過し、不純物を除去することで精製されたものである。
次に、エッチング保護膜40およびフォトレジスト膜41が成膜されたウエハSの一方側(+Y’方向側)の面を、外形パターンが形成されたフォトマスクを用いて一括で露光し、現像する。
これにより、図5(c)に示すように、フォトレジスト膜41の一方側に外形パターン41aを形成する(S2c)。
外形パターン41aは、水晶振動板10の外形に沿った形状である。
次に、外形パターン41aが形成されたフォトレジスト膜41をマスクとしてエッチング加工を行ない、マスクされていないエッチング保護膜40を選択的に除去する(S2d)。
次に、エッチング加工後にフォトレジスト膜41を剥離する(S2e)。
これらにより、図5(d)に示すように、エッチング保護膜40の一方側に外形パターン40aを形成する。
なお、エッチング加工には、エッチング保護膜40とフォトレジスト膜41が形成されたウエハSを、薬液に浸漬して行うウェットエッチング方式を用いることができる。
具体的には、たとえば、エッチング保護膜40が、金(Au)からなる場合には、薬液としてヨウ素を用いてエッチングすることができる。
なお、このパターニングは、複数の水晶振動板10の数だけ、一括して行なう。
次に、エッチング保護膜40の外形パターン40aをマスクとして、マスクされていないウエハSを選択的に斜面エッチング加工する(S2f)。
これにより、図5(e)に示すように、マスクされていないウエハSの露出面から、マスクの下側の部分もエッチングされ、ウエハSの主面に対して緩やかな角度で交差する斜面11aを側面として有する凹部42が形成される。
ここで、通常、水晶のエッチングでは、水晶特有のエッチング異方性によって、特定の角度を有する自然結晶面が現れる。またマスクされていない露出面から、マスクの下側(内側)にエッチングが進行することはほとんどみられない。
これに対して、本実施形態では、斜面エッチングを行う前に、ウエハSの表面をドライエッチング加工(S1)しているため、エッチングがマスクの下側にまで進行し、自然結晶面の角度に依存しない緩やかな角度を有する斜面を形成できる。
次に、図5(f)に示すように、エッチング保護膜40を除去するエッチング加工を行なう(S2g)。
以上の工程により、凹部形成工程S2が終了し、凹部42が形成されたウエハSが得られる。
個片化工程S3は、凹部42が形成されたウエハSを個片化し、水晶振動板10を形成する工程である。
まず、図6(a)に示すように、前述した成膜工程S2bと同様にして、ウエハSの両面にエッチング保護膜50およびフォトレジスト膜51を形成する(S3a)。
次に、エッチング保護膜50およびフォトレジスト膜51が成膜されたウエハSの一方側(+Y’方向側)の面を、外形パターンが形成されたフォトマスクを用いて一括で露光し、現像する。
これにより、図6(b)に示すように、フォトレジスト膜51の一方側に外形パターン51aを形成する(S3b)。
外形パターン51aは、水晶振動板10の外形に沿った形状である。
次に、外形パターン51aが形成されたフォトレジスト膜51をマスクとしてエッチング加工を行ない、マスクされていないエッチング保護膜50を選択的に除去する(S3c)。
次に、エッチング加工後にフォトレジスト膜51を剥離する(S3d)。
これらにより、図6(c)に示すように、エッチング保護膜50の一方側に外形パターン50aを形成する。
次に、エッチング保護膜50の外形パターン50aをマスクとして、マスクされていないウエハSを選択的にエッチング加工する(S3e)。
これにより、図6(d)に示すように、自然結晶面である、水晶振動板10の側面11bが形成され、ウエハSは個片化される。
次に、図6(e)に示すように、エッチング保護膜50を除去するエッチング加工を行なう(S3f)。
以上の工程により、個片化工程S3が終了し、ウエハSが個片化された、水晶振動板10が製造される。
電極形成工程S4は、水晶振動板10の表面上に電極を形成する工程である。この工程により、水晶振動板10の表面上に電極膜20が形成される。
以上に述べたS1からS4までの工程により、水晶振動片4が製造される。
本実施形態の水晶振動片4によれば、斜面11aの表主面10aと成す角度θ1は、自然結晶面に比べて緩やかである。そのため、表主面10aと斜面11aとの境界部において振動が発振することを抑制でき、かつ水晶振動片4の端部に伝わる振動を十分に減衰できる。したがって、水晶振動片4の中央部に振動エネルギーを閉じ込める精度を向上できる。
また、水晶振動片においては、厚み滑り振動の他、屈曲振動、輪郭すべり振動等の振動モードがあることが知られている。これらの厚み滑り振動以外の振動(以下、不要振動という)の影響が大きいと、アクティビティディップが発生し、水晶振動片の振動特性が不安定になる。
厚み滑り振動が水晶振動片の厚さに依存するのに対して、不要振動の多くは水晶振動片の長さに依存するため、不要振動は水晶振動片の端部において発生しやすい。そのため、水晶振動片の中央部から端部に向けて水晶振動片の厚さを薄くし、端部での振動を減衰させることで、不要振動を抑制できる。水晶振動片の中央部から端部に向けて水晶振動片の厚さを薄くする方法としては、水晶振動片の端部に斜面を設ける方法があるが、従来の水晶振動片では、端部に設けられる斜面が水晶片の自然結晶面であったため、主面に対する角度が大きく、水晶振動片の端部ではなく、斜面と主面とが交差する位置において不要振動が発生してしまうという問題があった。
図7は、不要振動の発生に影響する寸法の違いを示した水晶振動片の正面図である。図7(a)は、従来の水晶振動片の一例である水晶振動片5を示しており、図7(b)は、本実施形態の水晶振動片4を示している。
図7(a)に示すように、従来の水晶振動片5では、表主面5aに対する斜面5cの角度θ2が自然結晶面の角度に依存するため、大きい(たとえば、30°、40°、50°)。そのため、不要振動が、両端部間の距離(短辺寸法)w4ではなく、斜面5cと表主面5aとが交差する線と、斜面5cと裏主面5bとが交差する線と、の幅方向(Z’軸方向)距離w2の長さに応じて発生しやすい。したがって、振動する部位の基準長さが短くなり、発生する不要振動の基本振動数が大きくなる。その結果、水晶振動片の厚み滑り振動と共に低次の不要振動が発生しやすくなり、不要振動による影響が大きくなっていた。
これに対して、本実施形態の水晶振動片4によれば、図7(b)に示すように、斜面11aの角度θ1が十分に緩やかに形成されているため(たとえば、20°以下)、斜面11aと表主面10aとが交差する位置において振動伝達が阻害されず、不要振動は端部において発生しやすい。そのため、振動する部位の基準寸法は、短辺寸法w3となり、前述した従来の水晶振動片5に比べて長くなる。これにより、発生する不要振動の基本振動数は低くなる。したがって、水晶振動片4と共に発生しやすい不要振動は高次の不要振動となり、不要振動による影響を低減できる。その結果、水晶振動片の振動特性を安定させることができる。
また、前述したように、水晶振動片4の端部における振動は十分に減衰されたものとなるため、端部において発生する不要振動の強度も小さくなる。したがって、不要振動が振動特性に与える影響を低減できる。
また、本実施形態によれば、水晶振動片4の短辺方向(Z’軸方向)の両端部に設けられた斜面11aは、どちらも表主面10aに対して角度θ1で傾いている。そのため、振動のバランスがよくなり、厚みすべり主振動と、厚み副振動との周波数差を大きくできる。また、厚み副振動の振動強度も下げることができる。したがって、安定した振動が得られる。
また、本実施形態では、自然結晶面である側面11bは、Z’軸と交差する面である。
そのため、不要振動のうちの、特に屈曲振動に対して抑制効果が高い。
また、本実施形態の水晶振動片4の製造方法によれば、ウエハSをウェットエッチングによって加工する前に、加工する面にドライエッチング加工を行う。
前述したように、通常水晶結晶は、水晶特有のエッチング異方性によって、マスクされていない露出面に、特定の角度を有する自然結晶面が現れるという性質を有している。この自然結晶面における特定の角度は、水晶結晶のどの位置や面をエッチングするかによって決まる角度であり、たとえば、30°、40°、50°、90°等の値となる。
これに対して、本実施形態によれば、ウエハSの主面にドライエッチング加工を施した後に、ウェットエッチングを行うと、ウエハのマスクされていない面から、マスクされた面側(マスクの内側)にエッチングが進み、上記のような自然結晶面の特定の角度に依存しない斜面を形成できる。
ウエハSの表面をドライエッチングすると、表面が平坦化されるとともに、極微小な突起がウエハSの表面上に形成される。詳しい原理は不明ではあるものの、このドライエッチングによって形成された微小突起により、その後に形成されるエッチング保護膜とウエハSの表面との間に微小な隙間が生じ、そこに、エッチング液が入り込むことによって、マスクの内側にエッチングが進行したのではないかと考えられる。
これにより、形成される自然結晶面の角度に依存しない斜面は、主面と成す角度が、自然結晶面における主面と成す角度に比べて緩やかな斜面となる。
したがって、本実施形態によれば、自然結晶面に比べて主面に対する傾き角度が緩やかな斜面を有する水晶振動片を製造することが可能であり、振動エネルギーの閉じ込め精度を向上できる。
また、この方法により、形成される斜面11aの面粗度は低くなる。そのため、水晶振動片4のインピーダンスを低くできる。面粗度の値としては、たとえば、中心線平均粗さが、0.2nm以上、10nm以下である。
[第1実施形態の変形例]
次に、水晶振動片の短辺方向をX軸、長辺方向をZ’軸とした第1実施形態の変形例について説明する。
図8は、第1実施形態の変形例の水晶振動片4Aを示した図であって、図8(a)は正面図、図8(b)は平面図、図8(c)は側面図である。
水晶振動片4Aは、図8に示すように、水晶振動板10Aと、水晶振動板10Aの表裏主面上にそれぞれ形成された一対の電極膜20と、を備えている。
水晶振動板10Aは、長辺側の側面に凸部60を備えている。凸部60は、X軸と交差する面に現れる自然結晶面によって形成される。
本実施形態によれば、自然結晶面(凸部60)は、X軸と交差する面である。そのため、不要振動のうち、特に輪郭振動に対して抑制効果が高い。
[第2実施形態]
次に、水晶振動片の短辺側に斜面が設けられた、第2実施形態ついて説明する。
図9は、第2実施形態の水晶振動片70を示した図であって、図9(a)は正面図、図9(b)は平面図、図9(c)は側面図である。
水晶振動片70は、図9に示すように、水晶振動板71と、水晶振動板71の表裏主面上にそれぞれ形成された一対の電極膜20と、を備えている。
水晶振動板71における、表裏主面71a,71bの短辺方向(X軸方向)に沿った側面72bは、自然結晶面であり、その全長に亘って表裏主面71a,71bに対して略直角な面とされている。
表主面71aの長辺方向(Z’軸方向)両端には、表主面71aの短辺の全長に亘って表主面71aに対して傾斜する斜面72aがそれぞれ形成されている。
本実施形態によれば、表主面71aの短辺に沿って、斜面72aが設けられているため、水晶振動片70の中央部から、長辺方向両側(±Z’方向側)に向かうにしたがって、振動が減衰する。そのため、マウント電極23が設けられている長辺方向一方側(−Z’方向側)の端部において、中央部から伝わる振動は十分に減衰されたものとなる。したがって、水晶振動片70が水晶振動子に実装された際に、マウント電極23が、実装部を介して、ベース基板上に形成されたインナー電極と接触することによる振動漏れを低減できる。
なお、本実施形態においては、長辺方向をZ’軸としたが、X軸としてもよい。その場合には、側面72bは、前述した第1実施形態の変形例に示した凸部60を形成するような斜面となる。
[第3実施形態]
次に、水晶振動片の短辺および長辺の4辺に斜面が設けられた、第3実施形態について説明する。
図10は、第3実施形態の水晶振動片100を示した図であって、図10(a)は正面図、図10(b)は平面図、図10(c)は側面図である。
本実施形態の水晶振動片100は、図10に示すように、水晶振動板101と、水晶振動板101の表裏主面上にそれぞれ形成された一対の電極膜20と、を備えている。
水晶振動板101における、表裏主面101a,101bの短辺方向(Z’軸方向)に沿った側面102bおよび長辺方向(X軸方向)に沿った側面103bは、その全長に亘って表裏主面101a,101bに対して略直角な面とされている。
表主面101aの短辺方向(Z’軸方向)両端には、表主面101aの長辺の全長に亘って表主面101aに対して傾斜する斜面103aがそれぞれ形成されている。
表主面101aの長辺方向(X軸方向)両端には、表主面101aの短辺の全長に亘って表主面101aに対して傾斜する斜面102aがそれぞれ形成されている。
斜面102a,103aの表裏主面101a,101bに対する傾斜角度は、自然結晶面よりも緩やかに形成されている。
本実施形態によれば、長辺方向(X軸方向)および短辺方向(Z’軸方向)の両端それぞれに、自然結晶面よりも主面に対する傾斜角度が緩やかな斜面が形成されているため、長辺方向および短辺方向両方の端部における振動を十分減衰できる。したがって、水晶振動片の中央部に振動エネルギーを閉じ込める効果をより向上できる。
[第4実施形態]
次に、表裏主面両方の4辺にそれぞれ斜面が設けられた、第4実施形態について説明する。
図11は、第4実施形態の水晶振動片110を示した図であって、図11(a)は正面図、図11(b)は平面図、図11(c)は側面図である。
水晶振動片110は、図11に示すように、水晶振動板111と、水晶振動板111の表裏主面上にそれぞれ形成された一対の電極膜20と、を備えている。
水晶振動片110の裏主面101bの4辺には、前述した第3実施形態と同様に、斜面102a,103aが形成されている。
本実施形態によれば、水晶振動片の中央部に振動エネルギーを閉じ込める効果をより向上できる。
[第5実施形態]
次に、メサ型の水晶振動片である、第5実施形態について説明する。
図12は、第5実施形態の水晶振動片120を示した図であって、図12(a)は正面図、図12(b)は平面図、図12(c)は側面図である。
水晶振動片120は、図12に示すように、水晶振動板121と、水晶振動板121の表裏主面上にそれぞれ形成された一対の電極膜20と、を備えている。
水晶振動板121は、直方体200aと、直方体200aの基面124a,124bの中央部にそれぞれ設けられている四角錐台状の凸部200bと、で構成されている。
直方体200aの側面122b,123bは、基面124a,124bに対して略垂直に設けられている。
凸部200bは、面積の大きい側の面が、直方体200aの基面124a,124bとそれぞれ当接するようにして設けられており、反対側の面は、それぞれ水晶振動片120の表裏主面121a,121bとなっている。表裏主面121a,121b上には励振電極21が設けられており、表裏主面121a,121bは、直方体200aの基面124a,124bと平行である。
凸部200bにおける、短辺方向(Z’軸方向)に沿った斜面122aおよび長辺方向(X軸方向)に沿った斜面123aは、それぞれ表裏主面121a,121bに対する角度が、自然結晶面よりも緩やかに形成されている。
[第6実施形態]
次に、逆メサ型の水晶振動片である、第6実施形態について説明する。
図13は、第6実施形態の水晶振動片130を示した図であって、図13(a)は正面図、図13(b)は平面図、図13(c)は側面図である。
水晶振動片130は、図13に示すように、水晶振動板131と、水晶振動板131の表裏主面上にそれぞれ形成された一対の電極膜20と、を備えている。
水晶振動板131は、直方体であり、基面134a,134bの中央部には、それぞれ凹部210が形成されている。水晶振動板131の側面132b,133bは、基面134a,134bに対して略垂直に設けられている。
凹部210は、側面が斜面となるように形成されている。凹部210の底面は、励振電極21が形成された表裏主面131a,131bであり、水晶振動板131の基面134a,134bと平行に形成されている。凹部210の長辺方向(X軸方向)に沿った側面である斜面133aおよび短辺方向(Z’軸方向)に沿った側面である斜面132aは、それぞれ表裏主面131a,131bに対する角度が、自然結晶面よりも緩やかに形成されている。
1…水晶振動子、4,4A,70,100,110,120,130…水晶振動片、1
0a,71a,101a,121a,131a…表主面(主面)、10b,71b,10
1b,121b,131b…裏主面(主面)、11a,72a,102a,103a,1
22a,123a,132a,133a…斜面、11b,72b,102b,103b,
122b,123b,132b,133b…側面、40a…マスク、S…ウエハ

Claims (7)

  1. ATカットにより形成された水晶振動板を備える水晶振動片において、
    前記水晶振動板は、
    して設けられる一対の基面と、
    前記基面に対して交差する側面と、
    前記基面の中央部に一体に設けられた四角錐台状の凸部と、
    を有し、
    前記凸部は、
    主面と、
    前記主面に対する角度が自然結晶面よりも緩やかに形成された斜面と、
    を有する水晶振動片。
  2. 前記斜面は、X軸と交差する面を含む、請求項1に記載の水晶振動片。
  3. 前記斜面は、Z’軸と交差する面を含む、請求項1または2に記載の水晶振動片。
  4. 前記凸部は、前記一対の基面にそれぞれ設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の水晶振動片。
  5. 前記角度は、20°以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の水晶振動片。
  6. 前記斜面の中心線平均粗さが、0.2nm以上、10nm以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の水晶振動片。
  7. 請求項1に記載の水晶振動片を備える水晶振動子。
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