JP6540377B2 - 親水性フィルム、電解質膜、及びその親水性フィルムの製造方法 - Google Patents

親水性フィルム、電解質膜、及びその親水性フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭化水素系高分子樹脂を基材とするフィルムの表面に親水性を付与した親水性フィルムに関する。特に表面が撥水性の炭化水素系高分子樹脂を基材とする親水性フィルムに関する。
いわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックといわれる炭化水素系高分子樹脂は、耐熱性や機械的強度に優れるため、工業製品に広範に利用される。近年、該炭化水素系高分子樹脂は、放射線グラフト重合法を適用してイオン交換基を結合できる。これにより、イオン交換容量を向上させたフィルムを作製できる。そのようなフィルムは電解質膜として、水処理装置用途、燃料電池用途、食塩電解装置用途等への利用が期待される(特許文献1)。
上記の炭化水素系高分子樹脂として、ポリエーテルエーテルケトン(PolyEtherEtherKeton、PEEK)が挙げられる。しかしPEEKの表面は撥水性であるため、水溶液中で使用される電解質膜としては、実用的でない。そのためPEEKを基材とするフィルムの表面に親水性を付与する方法が提案される。
親水性を付与する方法としては、プラズマ処理やコロナ放電処理等により表面改質する方法がある。しかし、上記の方法により親水性を付与されたPEEKフィルムは、一度水溶液中に浸漬させると、親水性が低下する場合や失われる場合があるため実用的でない。
他の方法としては、親水性の金属酸化物をPEEKフィルム表面に接着させる方法がある。しかし該PEEKフィルムを水溶液中に浸漬させると、PEEKフィルムから剥離した金属酸化物や、金属酸化物を接着させるために用いた接着剤が水溶液中に溶出する場合がある。例えば、該PEEKフィルムを食塩電解装置の電解質膜として適用する場合、食塩水への金属酸化物や接着剤等の溶出量が増加すると、不純物の含有量が多い食塩水となり、電解効率が低下する。また、電解質膜はイオン透過性を具備しなければならない。すなわち接着剤等の塗布により電解質膜が抵抗体、絶縁体または阻害物体になることは回避されなければならない。
そのため上記の接着剤は、金属酸化物を剥離させない強固な接着力を備え、PEEK膜を浸漬させる液に対し不溶性または難溶性であることが求められる。加えてイオン伝導性を備えることが求められる。親水性の金属酸化物を、接着剤を用いずに炭化水素系高分子樹脂フィルムに被覆させることができれば更に好ましい。
特開2009-67844号公報
本発明の課題は、炭化水素系高分子樹脂を基材とし、接着剤を使用することによる悪影響を回避できる親水性フィルムを提供することである。特に表面が撥水性の炭化水素系高分子樹脂を基材に親水性の金属酸化物を塗布して、親水性を付与することである。
本発明は、炭化水素系高分子樹脂を含む基材と、基材表面を被覆し親水性の金属酸化物を含む親水性層とを備える親水性フィルムである。本発明は、表面が撥水性の炭化水素系高分子樹脂を含む基材を備えることが好ましい。
本発明は、炭化水素系高分子樹脂が、ポリフェニレンサルファイドと、ポリエーテルエーテルケトンと、ポリエチレンナフタレートと、スーパーエンプラポリサルフォンと、ポリエーテルサルフォンと、ポリアリレートと、ポリアミドイミドと、ポリエーテルイミドと、ポリイミドとからなる重合体群と、重合体群に属する重合体の誘導体からなる誘導体群と、重合体群と誘導体群とから二種以上選択される重合体及び/または誘導体を含有するポリマーアロイからなるポリマーアロイ群とから一種以上選択される親水性フィルムを包含する。
上記の金属酸化物は、酸化ジルコニウムと、シリカと、アルミナと、酸化チタンからなる群から一種以上選択されることが好ましい。本発明は、親水性フィルムの基材に含まれる炭化水素系高分子樹脂にイオン交換基を結合させてなる電解質膜を包含する。
本発明は、表面が撥水性の炭化水素系高分子樹脂を成膜して炭化水素系高分子樹脂フィルムを作製するフィルム作製工程と、炭化水素系高分子樹脂フィルムに親水性の金属酸化物を含有する塗工液を塗布、乾燥させて、炭化水素系高分子樹脂フィルムを金属酸化物で被覆する被覆工程とを含む親水性フィルムの製造方法を包含する。
本発明は、炭化水素系高分子樹脂を用いたフィルムの親水性を向上できる。また接着剤を用いないため、接着剤を使用することによる悪影響を回避できる。
本発明の親水性フィルムの模式図である。 本発明の電解質膜の電解試験結果である。 本発明の電解質膜の例を示す透過型電子顕微鏡写真である。
[親水性フィルム]
本発明は、炭化水素系高分子樹脂を含む基材と、基材表面を被覆し親水性の金属酸化物を含む親水性層とを備える。図1は本発明の親水性フィルムの模式図である。図1において1は親水性フィルム、2は親水性層、3は基材である。本発明の基材を構成する炭化水素系高分子樹脂の表面は、親水性と撥水性とのいずれであってもよい。本発明において親水性は、接触角の測定結果により評価できる。
接触角とは、静止液体の自由表面が固体面に接する場所で液面と固体面とのなす角をいう。一般的には、接触角が40°未満の場合は親水性であると評価し、90°以上の場合は撥水性であると評価される。接触角が小さいほど親水性が高い。本発明においては、炭化水素系高分子樹脂を含む基材の任意に選択した3か所で、下記の方法により測定した接触角の平均値を評価した。
[接触角の測定方法]
接触角の測定方法は、水滴の写真を撮り、基準になる表面と水滴端の「角度」を測る方法である。その一連の手順(定量液滴形成、着滴、解析)を自動化した接触角計を用いて測定できる。測定条件は、JIS R 3257に規定されるガラス基板上の接触角の測定法に準拠する。
本発明に用いられる炭化水素系高分子樹脂としては、いわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックといわれる芳香族炭化水素系高分子樹脂が挙げられる。具体的には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)と、ポリエチレンナフタレート(PEN)と、スーパーエンプラポリサルフォン(PSU)と、ポリエーテルサルフォン(PES)と、ポリアリレート(PAR)と、ポリアミドイミド(PAI)と、ポリエーテルイミド(PEI)と、ポリイミド(PI)とからなる重合体群から一種以上選択できる。
上記の重合体群に属する重合体の誘導体からなる誘導体群から一種以上選択してもよい。もしくはPEEKの属する芳香族ポリエーテルケトンの重合体群から一種以上選択してもよい。該重合体群を構成する重合体としては、ポリエーテルケトン(PEK)と、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)と、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)を例示できる。芳香族ポリエーテルケトンに属する重合体と芳香族ポリエーテルケトンに属する重合体の誘導体とは、化学的安定性や耐強アルカリ性に優れるため、特に好ましい。
本発明に用いられる炭化水素系高分子樹脂は、上記の重合体群と誘導体群とから二種以上選択される重合体及び/または誘導体を含有するポリマーアロイからなるポリマーアロイ群から一種以上選択してもよい。ポリマーアロイとして少なくともPEEKまたはPEEKの誘導体を含有することが好ましい。PEEKまたはPEEKの誘導体とアロイ化させる他の炭化水素系高分子樹脂としては、PPS、PSU、PEI、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。
上記に例示するポリマーアロイは、PEEKだけで作製したフィルムと比較して、導電性に優れる。したがって、所定のポリマーアロイを基材として本発明所定の親水性層を備える親水性フィルムは、親水性と導電性とをさらに向上できる。
上記に例示するPEEK含有ポリマーアロイにおける、PEEKとアロイ化させる他の炭化水素系高分子樹脂の含有量は、得られるポリマーアロイ100質量部に対し、0.5〜40質量部が好ましく、3〜35質量部がより好ましく、1〜35質量部がさらに好ましい。上記の含有量が0.5質量部未満の場合、該ポリマーアロイを基材とする親水性フィルムの導電性に有意な向上は認められない。
本発明は所定の炭化水素系高分子樹脂に、タルク、シリカ、酸化マンガン、カーボン等をフィラーとして含有させることも好ましい。これにより、得られる親水性フィルムのラジカル耐性や導電性を向上させることができる。
上記のフィラーを含有させる場合、フィラーの平均粒子径は0.5〜40μmが好ましく、0.5〜15μmがより好ましく、0.5〜3μmがさらに好ましい。0.5μm未満の場合、フィラー含有の効果が認められない。40μmを超える場合、均一に混練できない場合がある。また炭化水素系高分子樹脂100質量部に対するフィラーの含有量は、0.5〜40質量部が好ましい。0.5質量部未満の場合、ラジカル耐性の十分な向上が認められない。40質量部を超える場合、親水性フィルム中の炭化水素系高分子樹脂の含有量が少なくなり強度が不十分になる。フィラーの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)やレーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置等によりフィラーの任意の粒子群の粒子径を測定し、得られた測定値の平均値である。
本発明の親水性フィルムの膜厚は、10〜200μmが好ましく、10〜180μmがより好ましく、10〜120μmが更に好ましい。該膜厚は、親水性フィルムの用途に応じて上記の好ましい範囲内で適宜調整される。膜厚が10μm未満の場合、親水性フィルムの機械的強度が不十分になる。
親水性フィルムの膜厚は基材と親水性層との膜厚の和であるが、後に説明する親水性層は薄膜であるため、親水性フィルムの膜厚は基材の膜厚とほぼ同じである。したがって基材を、上記の親水性フィルムの所望の膜厚に対応する膜厚で成膜することで、上記の好ましい範囲内の膜厚を備える親水性フィルムを得られる。
本発明の親水性層は親水性の金属酸化物を含む。基材表面のいずれにも均質に親水性を付与するため、該金属酸化物は基材表面に均質に付着させることが好ましい。親水性層を基材表面に平坦な親水性層を形成することで、金属酸化物を均質に付着させることができる。
本発明の親水性層は、上記の基材表面を完全に被覆させてもよい。しかし、所定のイオンが透過可能な非被覆領域を含むことで、イオン透過性を備える親水性フィルムにすることができる。そのため本発明を電解質膜として使用する場合、親水性層に所定の非被覆領域を均質に点在させることが好ましい。ただし該非被覆領域が本発明の不均質に点在していても、本発明はイオン透過性を備える。なお本発明を透過させるイオンの例としては、ナトリウムイオン、塩素イオン、水素イオン等が挙げられる。
各非被覆領域は、該非被覆領域を取り囲む金属酸化物の粒子間距離に対応してそのサイズが決まる。非被覆領域を取り囲む金属酸化物の粒子群において互いに最も離れた位置に存在する粒子同士の粒子間距離が、所望のイオンが透過可能な大きさであればよい。そのような粒子間距離としては、通常1〜20nmが好ましく、5〜10nmがより好ましい。上記の粒子間距離が1nm未満の場合、イオンを透過させることができない場合がある。また各非被覆領域の総面積は、基材表面の面積の50%未満であることが好ましく、30%未満であることがより好ましい。非被覆領域が50%以上の場合、親水性が不十分になり、水溶液中での使用が困難になる。
本発明の親水性層に含まれる金属酸化物は親水性で、好ましくは、酸化ジルコニウム、シリカ、アルミナ、酸化チタン等を含む群から一種以上選択される。上記に例示する金属酸化物は、1種を用いてもよく、2種以上用いてもよい。上記の金属酸化物の平均粒子径は、0.1〜5μmが好ましく、0.1〜3μmがより好ましい。5μmを超える場合、均一に分散されない場合がある。
本発明の親水性層の形成方法は、本発明の作用効果を得られる限り、限定されない。好ましい形成方法の例としては、上記の所定の金属酸化物を含有する塗工液を調製し、該塗工液をバーコーター、ダイコーター、ドクターブレード等を用いて基材表面に塗布する方法が挙げられる。他法として、塗工液を、スプレーを用いて基材表面に吐出する方法や、筆塗りする方法が挙げられる。さらに基材を塗工液にディッピングさせる方法でもよい。
親水性層の膜厚は、上記の親水性フィルムの好ましい膜厚の範囲内になるように、基材の膜厚を考慮して調節すればよい。通常、親水性層の平均膜厚は、0.01〜2μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。0.01μm未満の場合、期待する親水性を付与できない可能性がある。1μmを超える場合、得られる親水性フィルムの膜厚を増大させる。その場合、親水性フィルムの導電性が低下する。
[電解質膜]
本発明の電解質膜は、親水性フィルムの基材に含まれる炭化水素系高分子樹脂にイオン交換基を結合させてなる。上記の親水性フィルムは、機械的強度に優れるため、上記の所定の炭化水素系高分子樹脂にイオン交換基を結合させて良好なイオン伝導性を付与することで、優れた親水性を備える電解質膜となる。本発明の電解質膜は、親水性に優れるため水溶液中に浸漬して用いる食塩電解装置用途、水処理装置用途の電解質膜として好適である。
基材となる炭化水素系高分子樹脂に結合されるイオン交換基は、カチオン交換基とアニオン交換基とのいずれでもよい。結合されるカチオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、より好ましくはスルホン酸基が結合される。アニオン交換基としては、アンモニウム基が結合される。
本発明においては、炭化水素系高分子樹脂の機械的強度を保持するため、炭化水素系高分子樹脂の疎水性部分でのイオン交換基の結合を抑制させることが好ましい。そのような観点から、本発明に用いられる炭化水素系高分子樹脂にはグラフト鎖を形成させ、該グラフト鎖にイオン交換基を結合させることが好ましい。ただし本発明は、イオン交換基が炭化水素系高分子樹脂の主鎖に結合する構造を排除しない。
本発明の電解質膜の機械的強度は、引張強度として30〜70MPaであり、好ましくは40〜60MPaである。本発明において引張強度は公知の引張強度試験機を用いて測定できる。
電解質膜のプロトン伝導性向上の観点からは、本発明におけるイオン交換基の含有量は多いほど好ましい。具体的には、少なくとも電解質膜のイオン交換容量が0.05mmol/g以上になるように含有させることが好ましく、1mmol/g以上になるように含有させることがより好ましい。本発明の電解質膜のイオン交換容量は、0.05〜3mmol/gであり、より好ましくは1〜2.5mmol/gである。本発明においては、放射線グラフト重合法を適用してイオン交換基を炭化水素系高分子樹脂に結合させることで、上記の好ましいイオン交換容量を備える電解質膜を得られる。
本発明のイオン交換容量は、下記の方法により測定できる。
[イオン交換容量の測定方法]
寸法2cm×3cmで切り出したプロトン型の電解質膜の乾燥状態の重量を測定し、乾燥時重量をW1とする。該電解質膜を飽和食塩水に50℃で4時間浸漬させる。浸漬容器から電解質膜を取り出した後、水酸化ナトリウムを用いて中和滴定する。イオン交換容量は、中和滴定で得た飽和食塩水のブランクの滴定値N1(ml)と中和滴定値N2(ml)とを用いて、式(1)を用いて求められる。
本発明のイオン交換基は主にグラフト鎖に結合させるため、グラフト率が高いほどイオン交換基を結合させることができる。したがってプロトン伝導性を向上させる観点からは、該炭化水素系高分子樹脂のグラフト率が高いほど好ましく、50%がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。グラフト率が50%未満の場合、イオン交換基の結合量が少なくなり、イオン交換容量が不十分になる。なおグラフト率は、140〜180%が現実的な上限である。
所定の親水性層を備えることにより、本発明はイオン伝導性に優れる。本発明のイオン伝導性は例えば導電率で評価できる。導電率は、少なくとも0.05S/cmであり、より好ましくは0.1S/cmである。本発明の導電率は、膜抵抗値を用いて下記の方法で測定できる。
[導電率の測定方法]
膜抵抗値は、所定の膜面積の電解質膜を1M硫酸水溶液で湿潤させた後、対極となる2つのPt電極(電極間距離5mm)の間に配置し、交流電流を印加して電圧測定を行うことにより、測定できる。電解質膜の導電率は、得られた膜抵抗値Rm(Ω)と電解質膜の膜厚dとに基づき、式(2)により求めることができる。式(2)において、dは電極間距離、Sは電解質膜の膜面積である。
[親水性フィルムの製造方法]
本発明の親水性フィルムの製造方法は、炭化水素系高分子樹脂を成膜して炭化水素系高分子樹脂フィルムを作製するフィルム作製工程と、炭化水素系高分子樹脂フィルムに親水性の金属酸化物を含有する塗工液を塗布、乾燥させて、炭化水素系高分子樹脂フィルムを金属酸化物で被覆する被覆工程とを含む。
本発明のフィルム作製工程においては、炭化水素系高分子樹脂を混練可能な粘度になるまで溶融させた状態で混練する。炭化水素系高分子樹脂を溶融させて混練した後、フィルム状に成型する。用いられる炭化水素系高分子樹脂は親水性でも疎水性でもよいが、本発明の製造方法は、特に疎水性の炭化水素系高分子樹脂を用いる場合に適する。混練温度は、用いられる炭化水素系高分子樹脂の融点以上であればよく、350〜400℃が好ましい。
溶融させた炭化水素系高分子樹脂に、適宜増粘剤、架橋剤、安定剤等を添加して混練する。またラジカル耐性やイオン伝導性を向上させるため、タルク、シリカ、二酸化マンガン、カーボン等の所定のフィラーを添加する場合、該混練時に添加することが好ましい。これにより、所定のフィラーを炭化水素系高分子樹脂に均質に分散させることができる。フィラーは、1種を添加してもよく2種以上を添加してもよい。
溶融させた炭化水素系高分子樹脂に添加される上記の所定のフィラーの添加量は、炭化水素系高分子樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上50質量部以下が好ましく、0.5質量部以上40質量部以下がより好ましく、1質量部以上35質量部以下がさらに好ましい。上記のフィラーの添加量は、得られる親水性フィルムに含有されるフィラーの含有量に相当する。したがって親水性フィルムに含有させるフィラーの所望の含有量に対応する添加量のフィラーを、溶融させた炭化水素系高分子樹脂に添加すればよい。
混練は、炭化水素系高分子樹脂が上記の粘度を保持できる温度として好ましくは、330〜380℃で行われ、より好ましくは340〜370℃で行われる。混練装置としては、2軸混練押出機等、従来公知のものを用いることができる。取扱性の観点から、混練終了後の炭化水素系高分子樹脂はペレット化することが好ましい。
またペレット化させた炭化水素系高分子樹脂を再び溶融し、上記の混練工程を2〜10回繰り返してもよい。フィラーを混練しない場合においても、混練回数を増やす事は、樹脂の均質化のためにも有効である。
混練終了後、炭化水素系高分子樹脂をシート加工機を用いて成膜する。シート成型時の処理温度は、350〜450℃が好ましく、370〜420℃がより好ましい。成膜させた炭化水素系高分子樹脂を急冷し、硬化させることで炭化水素系高分子樹脂フィルムを作製できる。急冷時の処理温度は、用いる炭化水素系高分子樹脂の硬化温度より低く、好ましくは80〜140℃である。シート加工機としては、ダイコーター、Tコーターが用いられる。
(被覆工程)
上記の炭化水素系高分子樹脂フィルムに、親水性の金属酸化物を含有する親水性層を形成させる。親水性層の形成方法は、本発明の作用効果を得られる限り、特に限定されない。例えば、塗布、吐出、筆塗り、スパッタリング、ディッピング等の方法から選択できる。
親水性フィルムの膜面に均質な親水性を付与する観点から、本発明においては平坦な親水性層を形成し、親水性の金属酸化物を炭化水素系高分子樹脂フィルムの膜面に均質に付着させることが好ましい。また親水性フィルムの膜厚を抑制するためには、親水性層の膜厚は小さい方が好ましい。膜厚の小さい親水性層を形成する観点からは、塗布、吐出、スパッタリング等の方法が適する。平坦で膜厚が小さい親水性層を形成する場合、塗布による形成方法が好ましい。
その他、スプレー等を用いた吐出による形成方法は、親水性フィルムの量産性を向上できるため、好ましい。また基材の所定の領域に局所的に親水性層を形成させたい場合には、筆塗りによる形成方法も有効である。
親水性層の形成に用いる塗工液の溶媒としては、エーテル類、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類等の高揮発性の溶媒が好ましく、より具体例としては1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、ヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。塗布塗工液に含有される金属酸化物の濃度は、親水性層の形成方法に対応して適宜調整される。塗布による形成方法を選択する場合、金属酸化物の濃度は、2〜50%が好ましく、5〜30%がより好ましい。金属酸化物の濃度が2%未満の場合、金属酸化物の基材への付着量が少なくなり、親水性を付与できない場合がある。50%を超える場合、塗工液の取扱性が低下し、均質な膜厚の親水性層を形成することが困難である。
他の塗工液として、基材として用いる炭化水素系高分子樹脂を強酸に溶解させた溶液に、金属酸化物を分散させた塗工液が挙げられる。そのような塗工液を用いる場合、基材に塗布された塗工液が乾燥することで、基材を構成する炭化水素系高分子樹脂と、塗工液中の炭化水素系高分子樹脂とが一体化する。これにより金属酸化物を基材表面に強固に付着させることができる。
調製された塗工液は、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード等を用いて基材表面に塗布される。塗布時の塗布圧は、塗布方法、塗布面積、必要表面粗さにより最適値が選択される。従来、塗工液を用いて撥水性の炭化水素系高分子樹脂フィルム表面に親水性層を形成する場合、炭化水素系高分子樹脂フィルムが塗工液をはじき、均質な親水性層を形成することが困難であった。本発明は、上記の塗工液を所定の方法で塗布することにより、撥水性の炭化水素系高分子樹脂フィルムの表面に、親水性の金属酸化物を含有する親水性層を形成できる。
塗工液の塗布前に、基材を、公知のプラズマ処理やコロナ放電処理等により表面改質しておくことも好ましい。これにより、さらに得られる親水性フィルムの親水性を向上させることができる。
上記の塗工液を塗布後、基材を乾燥させる。これにより揮発性の溶媒が除去され、基材表面に親水性の金属酸化物を付着させた、所定の親水性を備える本発明の親水性フィルムになる。乾燥方法は、大気中で自然乾燥させてもよく、他法として、真空乾燥してもよい。
本発明は、接着剤を用いずに親水性層を形成できる。これにより使用時に親水性フィルムを水溶液等に浸漬させても、水溶液中に接着剤が溶出することを回避できる。本発明の製造方法により製造される親水性フィルムは、用途が広範である。該親水性フィルムにイオン交換基を結合した電解質膜は、食塩電解装置、水処理装置、燃料電池等に適用できる。例えば上記の電解質膜を備える食塩電解装置は、電力が不純物としての接着剤に消費されない。そのため効率的に食塩電解を行うことができる。
[電解質膜の製造方法]
親水性フィルムを電解質膜として使用する場合は、上記の被覆工程前に、基材となる炭化水素系高分子樹脂にイオン交換基を結合し、該イオン交換基を有効化させる。その後、上記の被覆工程を行うことが好ましい。
イオン交換基の結合方法は特に限定されないが、放射線グラフト重合法を用いることが好ましい。放射線グラフト重合法においては、炭化水素系高分子樹脂フィルムに放射線を照射して生成させたラジカルを用いて炭化水素系高分子樹脂とイオン交換基含有モノマーとをグラフト重合させることで、イオン交換基を炭化水素系高分子樹脂に結合できる。これによりイオン交換基を炭化水素系高分子樹脂のグラフト鎖に結合でき、基材の機械的強度を損なうことなく、イオン交換容量が大きい電解質膜を製造できる。
なお放射線照射前の炭化水素系高分子樹脂フィルムに、熱グラフト重合法等を用いてビニルモノマーとをグラフト重合させ、予め炭化水素系高分子樹脂にグラフト鎖を形成させることも好ましい。これにより放射線グラフト重合法によるイオン交換基の導入を円滑化し、イオン交換基の結合量を向上させることができる。
[ビニルモノマーグラフト重合工程]
ビニルモノマーのグラフト重合に熱グラフト重合法を適用する場合、まずビニルモノマーを分散させたビニルモノマー反応液を調製する。上記のビニルモノマー反応液のビニルモノマーの濃度は、10〜80容積%が好ましく、20〜40容積%がより好ましい。溶媒としては、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、ヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、イソプロピルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物等を例示できる。
本発明で用いられるビニルモノマーは、所定の炭化水素系高分子樹脂の主鎖にグラフト鎖を形成できるものであればよく、下記式(3)で表されるモノマーが例示される。
(上記式(3)において、Xは、H、OH、F、Cl、または炭化水素である。Rは炭化水素及びその誘導体である。)
式(3)で表されるモノマーとして、式(3)に含まれるRが、芳香環を含む炭化水素やカルボニル基やアミド基を有する炭化水素であるモノマーを例示できる。より具体的な例示としては、スチレンおよびその誘導体、アクリル酸およびその誘導体、アクリルアミド類、ビニルケトン類、アクリルニトリル類、ビニルフッ素系モノマー、またはこれらの多官能性モノマーが挙げられる。該多官能性モノマーは、熱グラフト重合性が高いため好ましい。また炭化水素系高分子樹脂の主鎖に架橋構造を形成できるため、電解質膜の機械的強度を向上できる。
上記のビニルモノマー反応液に、炭化水素系高分子樹脂フィルムを浸漬し、大気中で重合反応を行う。温度条件は、40〜100℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。反応時間は、10分〜24時間が好ましい。反応終了後、グラフト鎖を形成させた炭化水素系高分子樹脂フィルムを不活性ガス雰囲気下で乾燥させる。ビニルモノマーのグラフト率は、1〜20%である。なおビニルモノマーのグラフト率は、炭化水素系高分子樹脂フィルムの上記反応前の乾燥時重量(W2)と同反応後の乾燥時重量(W3)とを測定して下記式(4)により求めることができる。
[イオン交換基含有モノマーグラフト重合工程]
上記の炭化水素系高分子樹脂フィルムに、放射線グラフト重合法を用いて、イオン交換基含有モノマーをグラフト重合させる。炭化水素系高分子樹脂フィルムは、乾燥後、放射線を照射し、ラジカルを生成させる。炭化水素系高分子樹脂フィルムに、上記に例示する方法により予めにグラフト鎖を形成させておくことで、ラジカル生成量を向上させることができる。生成させたラジカルと、イオン交換基含有モノマーとを反応させて、炭化水素系高分子樹脂にイオン交換基を結合させる。
本発明で用いる放射線グラフト重合法の例として、前照射法と同時照射法とが挙げられる。前照射法とは、基材となる炭化水素系高分子樹脂に放射線を照射後、イオン交換基を含有するモノマーを反応させる方法である。同時照射法とは、基材となる炭化水素系高分子樹脂と、イオン交換基含有モノマーとに同時に放射線を照射して上記モノマーを反応させる方法である。本発明においては、上記のいずれの方法を適用してもよい。ホモポリマーの生成量を抑制する観点からは前照射法を適用することが好ましい。
さらに前照射法としてはポリマーラジカル法と、パーオキサイド法とが挙げられる。ポリマーラジカル法とは、炭化水素系高分子樹脂フィルムに不活性ガス雰囲気下で放射線を照射する方法である。パーオキサイド法とは、炭化水素系高分子樹脂フィルムを酸素存在下で照射する方法である。本発明においては上記のいずれの方法を適用してもよく、ポリマーラジカル法が好ましい。
炭化水素系高分子樹脂フィルムに照射する放射線の種類としては、γ線、X線、電子線、イオンビーム、紫外線等を例示できる。γ線、電子線は、ラジカル生成が容易なため好ましく用いられる。放射線照射量は、1kGy以上500kGy以下が好ましく、5kGy以上100kGy以下がより好ましく、10kGy以上60kGy以下がさらに好ましい。1kGy未満の場合、グラフト鎖の形成が不十分になる。500kGyを超える場合、炭化水素系高分子樹脂フィルムが破損するため、機械的強度が不十分になる場合がある。
炭化水素系高分子樹脂とイオン交換基含有モノマーとの反応は、溶媒にイオン交換基含有モノマーを分散させたイオン交換基含有モノマー反応液に、炭化水素系高分子樹脂フィルムを浸漬させて行うことが好ましい。これによりイオン交換基含有モノマーのホモポリマー化を抑制できる。
所定のイオン交換基含有モノマーを溶媒に分散させたイオン交換基含有モノマー反応液を調製する。上記溶媒に分散させるイオン交換基含有モノマーは1種でもよく2種以上でもよい。所定の溶媒で上記のモノマーを希釈させることにより、ホモポリマーの生成を抑制できる。イオン交換基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸エチルエステル(ETSS)が好ましい。
上記のイオン交換基含有モノマー反応液中のイオン交換基含有モノマーの濃度は、20〜80容積%が好ましく、25〜80容積%がより好ましい。溶媒としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、ヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、イソプロピルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の窒素含有化合物等を例示できる。
上記のイオン交換基含有モノマー反応液に、炭化水素系高分子樹脂フィルムを浸漬し、空気中または不活性ガス雰囲気下で重合反応を行う。反応雰囲気中の酸素濃度は、ラジカルの失活を抑制する観点から低いほど好ましく、0.01容積%以下がより好ましい。0.01容積%を超えると、ラジカルが失活しグラフト率が低くなる。不活性ガスとしては窒素、アルゴン等が用いられる。
重合時の温度条件は、40〜100℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。これによりホモポリマーの生成やラジカルの失活を抑制できる。反応時間は、1〜100時間が好ましく、5〜50時間がより好ましい。上記の放射線グラフト重合工程によるイオン交換基含有モノマーのグラフト率は、好ましくは50〜200%であり、より好ましくは70〜160%である。
[イオン交換基有効化工程]
上記の放射線グラフト重合法によりイオン交換基を結合させた炭化水素系高分子樹脂フィルムは、洗浄、乾燥後、従来公知の方法でイオン交換基を有効化させる。具体例としては、炭化水素系高分子樹脂フィルムを純水に90〜95℃で15〜24時間浸漬させて加水分解処理する方法等が挙げられる。これにより本発明の電解質膜を製造することができる。
本発明の製造方法により得られる電解質膜のイオン交換容量は、0.05〜3.0mmol/gであり、より好ましくは1〜2.5mmol/gである。本発明の電解質膜は、基材表面に、所定の金属酸化物を含む親水性層を被覆させる。これにより、水溶液中での長時間使用に好適な電解質膜である。また所定の炭化水素系高分子樹脂フィルムを基材とするため、機械的強度、耐強アルカリ性、耐薬品性に優れる。上記の作用効果を備える本発明の電解質膜は、食塩電解装置、水処理装置、燃料電池、電解濃縮装置等に好適である。
本発明を、実施例を用いてさらに説明する。ただし本発明は以下に記載する実施例に限定されない。
[実施例1、比較例1]
(成膜工程)
混練装置内に、炭化水素系高分子樹脂としてのPEEK粉末を投入し、温度条件360℃でPEEK粉末を溶融させて、500rpmで混練した。混練時間終了後、タルクを含有させたPEEKをペレット化した。該ペレットを再び混練装置内に投入して溶融させ、さらに混練した。得られたペレットを乾燥させた。
乾燥させたPEEKのペレットをシート加工機に投入し、温度条件400℃で加熱しながら、シート成型し、PEEKフィルムを成膜した。得られたPEEKフィルムを、急冷し硬化させた。硬化後のPEEKフィルムの膜厚は、100μmであった。
(塗布工程)
親水性の金属酸化物として平均粒子径0.6μmの酸化ジルコニウム粒子をエタノールに分散させた塗工液を調製した。該塗工液における酸化ジルコニウムの濃度は、20%であった。上記のPEEKフィルムを寸法10cm×10cmで切り出した。切り出したPEEKフィルムの一方の膜面に、バーコーターを用いて、塗工液を塗布した。塗工液を塗布した試験片を室温で24時間自然乾燥させて、PEEKフィルムの一方の膜面に親水性層としての酸化ジルコニウム層を形成させた。酸化ジルコニウム層とPEEKフィルムとの積層体を実施例1とした。また、酸化ジルコニウム層を形成する前のPEEKフィルムを比較例1とした。
[実施例2]
親水性の金属酸化物として平均粒子径10μmの酸化ジルコニウム粒子をエタノールに分散させた塗工液を調製した。該塗工液における酸化ジルコニウムの濃度は、10%であった。実施例1に用いたPEEKフィルムと同じPEEKフィルムを寸法10cm×10cmで切り出した。切り出したPEEKフィルムの一方の膜面に、バーコーターを用いて、塗工液を塗布した。塗工液を塗布した試験片を室温で24時間自然乾燥させて、PEEKフィルムの一方の膜面に酸化ジルコニウム層を形成させた。酸化ジルコニウム層とPEEKフィルムとの積層体を実施例2とした。
[実施例3]
親水性の金属酸化物として一次粒子径12nmのシリカ粒子をエタノールに分散させた塗工液を調製した。該塗工液におけるシリカの濃度は、20%であった。実施例1に用いたPEEKフィルムと同じPEEKフィルムを寸法10cm×10cmで切り出した。切り出したPEEKフィルムの一方の膜面に、バーコーターを用いて塗工液を塗布した。塗工液を塗布した試験片を室温で24時間自然乾燥させて、PEEKフィルムの一方の膜面にシリカ層を形成させた。シリカ層とPEEKフィルムとの積層体を実施例3とした。
[実施例4]
親水性の金属酸化物として一次粒子径12nmのシリカ粒子をエタノールに分散させた塗工液を調製した。該塗工液におけるシリカの濃度は、20%であった。実施例1に用いたPEEKフィルムと同じPEEKフィルムを寸法10cm×10cmで切り出した。切り出したPEEKフィルムの一方の膜面に、バーコーターを用いて、塗工液を塗布した。塗工液を塗布した試験片を室温で24時間自然乾燥させて、PEEKフィルムの一方の膜面にシリカ層を形成させた。シリカ層とPEEKフィルムとの積層体を実施例4とした。
[比較例2、比較例3]
実施例1で用いたPEEKフィルムと同じPEEKフィルムを準備し、その膜面に90W・分・m2で放電してコロナ放電処理による親水化処理を行い、比較例2とした。比較例2と同様の親水化処理を行ったPEEKフィルムを準備し、その膜面に、再度90W・分・m2で放電してコロナ放電処理による親水化処理を行い、比較例3とした。
[比較例4]
実施例1で用いたPEEKフィルムと同じPEEKフィルムを寸法10cm×10cmで切り出した。切り出したPEEKフィルムの乾燥状態の重量を測定し、DVBモノマーとの反応前のPEEKフィルムの乾燥時重量(W2)とした。またジビニルベンゼン(DVB)を1,4-ジオキサンに添加したDVB反応液を調製した。ガラス容器内でPEEKフィルムとDVB反応液とを大気中、80℃で反応させ、DVBモノマーをPEEKに重合させて、PEEKにグラフト鎖を形成させた。反応終了後、PEEKフィルムをアルゴン雰囲気下、1時間乾燥させた。PEEKフィルムの乾燥状態の重量を測定し、DVBモノマーとの反応後のPEEKフィルムの放射線照射前の乾燥時重量(W3)とした。式(4)に基づきDVBモノマーのグラフト率を求めた。DVBモノマーのグラフト率は、7.7%であった。
乾燥後のPEEKフィルムをガラス容器に入れ、アルゴン雰囲気下で30kGyのγ線を照射した。また、成分重量比1:3でスチレンスルホン酸エチルエステル(ETSS)を1,4-ジオキサンに添加したETSS反応液を調製した。上記ガラス容器内で該ETSS反応液にPEEKフィルムを浸漬させた。その後、アルゴン雰囲気下、反応温度85℃でPEEKフィルムとETSS反応液とを24時間反応させ、ETSSモノマーをPEEKに重合させスルホン酸基をPEEKに結合させた。反応終了後、試験片を洗浄し乾燥させた。グラフト重合工程終了後のPEEKフィルムの乾燥状態の重量を測定し、グラフト重合工程終了後の重量(W4)とした。式(5)によりETSSモノマーのグラフト率を求めた。ETSSモノマーのグラフト率は、44.8%であった。
(イオン交換基有効化工程)
ガラス容器内で、グラフト重合工程終了後の試験片を、純水に95℃で16時間浸漬させて加水分解を行った。イオン交換基を有効化させて得られた電解質膜を比較例4とした。
実施例1-4と比較例1-4との親水性を、上記の方法により評価した。評価結果を表1に記載した。実施例1-4の酸化ジルコニウム層形成面の接触角の平均値は、いずれも40°未満であった。すなわち、実施例1-4は親水性があると評価できた。図3は、実施例1の走査型電子顕微鏡写真である。図3において白色部分は金属酸化物による被覆領域4である。図3に示されるように、金属酸化物は不均一に塗布されており、非被覆領域が点在することが確認できる。
[実施例5]
比較例4の電解質膜の両面に、実施例1で用いた酸化ジルコニウムを含有する塗工液を塗布した。乾燥させて、電解質膜の両面に親水性層を形成させた。得られた電解質膜を実施例5とした。実施例5と比較例4とのイオン交換容量を上記の方法により測定したところ、実施例5のイオン交換容量は、0.92mmol/gであり、比較例4のイオン交換容量は、0.92mmol/gであった。上記の結果から、親水性層を備える本発明の電解質膜は、親水性層を備えない電解質膜と同等のイオン交換容量を有することが確認できた。
実施例5と比較例4について、下記の方法で電解試験を行った。試験結果を図2に示す。
[電解試験]
実施例5と比較例4とを用いて食塩水の電解試験を行った。用いた食塩水濃度は、30%である。電流値を段階的に上昇させて電圧変化を記録した。測定結果を図2に示す。図2に示されるように、実施例5と比較例4との線形を比較すると、実施例5の線形の傾きの方が小さく、膜抵抗値が比較例4と比較して小さいことが読み取れる。すなわち、親水性層を備える本発明の電解質膜の方が、親水性層を備えない電解質膜より導電率が良好であることがわかる。
実施例5と比較例4との導電率を、得られた膜抵抗値Rm(Ω)と電解質膜の膜厚dとに基づき、式(2)により各電解質膜の導電率を求めた。実施例5と比較例4との膜抵抗値と導電率とを表2に示す。
1 親水性フィルム
2 親水性層
3 基材
4 金属酸化物による被覆領域

Claims (4)

  1. 炭化水素系高分子樹脂を含む基材と、当該基材の表面に、塗工後乾燥させることにより形成された、親水性の金属酸化物からなる親水性被覆層と、を備え、
    前記炭化水素系高分子樹脂がポリエーテルエーテルケトである、
    親水性フィルム。
  2. 金属酸化物が、酸化ジルコニウムと、シリカと、アルミナと、酸化チタンとからなる群から一種以上選択される請求項1記載の親水性フィルム。
  3. 請求項1又は2記載の親水性フィルムの基材に含まれる炭化水素系高分子樹脂に、イオン交換基を結合させてなる電解質膜。
  4. 表面が撥水性の炭化水素系高分子樹脂を成膜して炭化水素系高分子樹脂フィルムを作製するフィルム作製工程と、炭化水素系高分子樹脂フィルムに親水性の金属酸化物を含有する塗工液を塗布、乾燥させて、炭化水素系高分子樹脂フィルムを金属酸化物で被覆する被覆工程とを含み、
    前記炭化水素系高分子樹脂がポリエーテルエーテルケトである、
    親水性フィルムの製造方法。
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