JP6540103B2 - 準安定オーステナイト系ステンレス鋼板とその製造方法および準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を用いた無端リング - Google Patents

準安定オーステナイト系ステンレス鋼板とその製造方法および準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を用いた無端リング Download PDF

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Description

本発明は、材料を塑性変形させることなく組織を調整されて結晶粒径を微細化された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板とその製造方法に関し、所望の強度で伸びのバランスに優れるとともに疲労強度を向上させた準安定オーステナイト系ステンレス鋼板とその製造方法に関する。
近年、自動車やその部品、さらには家電製品やその部品等(以下、「部品等」と略記する)では、環境、エネルギーという問題、さらにはコスト等の観点から、小型化や軽量化が推進され、厳しい精度で所定の形状に加工後に使用されるものが増加している。
部品等は、小型化や軽量化に伴う剛性等の低下を補うため、高い強度を要求されるものが多く、加工性等の両立がさらに難しくなっている。さらには、部品等の信頼性の問題より、耐久性が必要とされる場合も多い。
このような用途には、例えば特許文献1〜3に開示されるように、SUS301,SUS304を中心とする準安定オーステナイト(A)系ステンレス鋼も数多く使用されてきた。準安定オーステナイト系ステンレス鋼は、硬質なマルテンサイト(M)相への加工誘起変態により比較的容易に高強度が得られるとともに、大きな加工硬化により軟質部に変形が伝播し、材料全体が一様に変形し、優れた延性も両立する優れた材料である。
他方、特許文献4に開示される自動車用燃料タンク、特許文献5に開示される自動車用衝撃吸収部材、特許文献6に開示される鉄道車両に例示されるように、それらの製品や部品では、スボットやラインで溶接が行われることも少なくない。これは、部品点数の削減という面からも極めて有効であり、他の用途でも基本的に同様である。
これらに際して、例えば、特許文献7に開示されるように溶接方法自体の改善も検討されているものの、溶接により、溶接部における化学成分の偏析、粗大な化合物の析出、さらには結晶粒の粗大化等が発生し、製品の特性が劣化する問題があった。
このため、例えば特許文献8〜10に開示されるように、溶接部の均質化を目的として、比較的高温に加熱する固溶化熱処理が行われることも多い。
特許第4360136号明細書 特許第4475352号明細書 特開2010−215953号公報 特開2006−124807号公報 特開2010−236560号公報 特許第2863063号明細書 特許第3627194号明細書 特開昭62−267417号公報 特公昭58−014847号公報 特公昭62−003210号公報
一般的には、固溶化熱処理は、塑性変形後の実施により効率化が可能となる。しかし、製品や部品では、塑性変形することが難しい場合が多い。一方、結晶粒界自体が拡散を促進すると考えられるが、前述のように溶接部では結晶粒が粗大化し、粒界密度が低下する。これらより、高温および長時間の固溶化熱処理を行うことになり、製品や部品の結晶粒が粗大化する状況にあった。
本発明は、小型化や軽量化が進行し、これに伴って、形状も複雑化する準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の組織を効率的に調整し、主に結晶粒径を微細化して、準安定オーステナイト系ステンレス鋼板が本来有する優れた特性をさらに向上させ、信頼性の高い準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を安定して製造することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下に列記の知見A,Bを得て、本発明を完成した。
(A)準安定オーステナイト(A)系ステンレス鋼の組織調整に関して、室温以下の低温への冷却によるマルテンサイト(M)変態と、固溶化熱処理に比べて低温加熱でのオーステナイト相への逆変態を活用することにより、組織の調整を効率的に行って結晶粒を微細化することができる。
(B)さらに、低温への冷却によるマルテンサイト変態に関して、塑性変形を起こさない、弾性変形域内の応力付与により、効率的にマルテンサイト変態を促進することができる。
本発明は以下に列記の通りである。
(1)JIS−G−4313(2011)に規定されるオーステナイト系ステンレス鋼のうち、準安定オーステナイト状態を満足する化学組成を有するとともに、マルテンサイト変態を開始する温度以下の冷却温度へ冷却した後にオーステナイト母相への変態を開始する温度以上の加熱温度へ加熱することによる処理前後の差が、結晶粒度No.(ΔG.S.No.)で1以上の微細な結晶粒からなる金属組織を有することを特徴とする準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
(2)前記準安定オーステナイト系ステンレス鋼は、JIS−G−4305(2012)に規定されるSUS301、SUS301L、SUS304またはSUS304Lである1項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
(3)前記化学組成は、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:6〜13%、Cr:16〜20%、N:0.20%以下を有し、残部Feおよび不純物からなる1項または2項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
(4)前記化学組成は、質量%で、Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびV:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を有する1項から3項までのいずれか1項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
(5)引張強度:175MPa以上、全伸び:3%以上、および疲れ限度:90MPa以上の機械特性を有する1項から4項までのいずれか1項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
(6)プリンター用スチールベルトに用いられる1項から5項までのいずれか1項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
(7)準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を、液体窒素によりマルテンサイト変態を開始する温度以下の冷却温度へ冷却した後にオーステナイト母相への変態を開始する温度以上の加熱温度へ加熱することにより組織調整を行うことを特徴とする1項から6項までのいずれか1項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
(8)前記組織調整は、調整前後でJIS−G−0551(2013)により規定される結晶粒度No.に換算して1以上の結晶粒微細化である7項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
(9)少なくとも、前記マルテンサイト変態開始温度以下への冷却中に前記準安定オーステナイト系ステンレス鋼板に応力を付与することを特徴とする7項または8項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
(10)前記準安定オーステナイト系ステンレス鋼板は無端リング形状を有し、前記応力を二つ以上のプーリの間で付与するとともに、該プーリで曲げ、曲げ戻しを行い、応力の付与部ないし曲げ、曲げ戻し部の1ケ所以上を冷却することを特徴とする9項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
(11)前記冷却温度は液体窒素温度以下であるとともに、前記加熱温度は600℃以上である7項から10項までのいずれか1項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
(12)前記応力は0.2%耐力未満の応力であることを特徴とする9項から11項までのいずれか1項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
本発明により、小型化や軽量化が進行し、これに伴って、形状も複雑化する準安定オーステナイト系ステンレス鋼板からなる製品の組織を効率的に調整し、強度と成形性のバランスに優れとともに、主に結晶粒径を微細化して疲労強度を向上させ、準安定オーステナイト系ステンレス鋼が本来有する優れた特性をさらに向上させ、信頼性が高く安価な準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を安定して提供できる。
本発明によれば、準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を素材とするとともに、溶接や固溶(均質)化のために高温の熱処理を行われて製造される製品を、無用に塑性変形させることなく金属組織を調整することにより準安定オーステナイト系ステンレス鋼を、連続した設備による一連での処理により製造することができ、自動車や家電をはじめとする多種多様な用途へ幅広く適用可能である。
図1は、素材、および、張力を付与しながら冷却した後の試料それぞれの光学顕微鏡による金属組織写真である。
本発明に係る準安定オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法を説明する。
1.本発明に係る準安定オーステナイト系ステンレス鋼板
(1−1)化学組成
本発明に係る準安定オーステナイト系ステンレス鋼板は、JIS−G−4313(2011)、JIS−G−4305(2012)に規定されるSUS301、SUS301L、SUS304またはSUS304Lに相当する化学組成を有する。
化学組成は、具体的には、C:0.15%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:6〜13%、Cr:16〜20%、N:0.20%以下を有し、必要に応じて、Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびV:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上、残部Feおよび不純物からなる。
すなわち、C:0.15%以下、Cr:16〜20%、Ni:6〜13%、N:0.20%以下を基本組成とする準安定オーステナイト系ステンレス鋼である。上記以外の元素は以下の通りとする。
[Si:1.0%以下]
Siは,脱酸剤として利用され、耐酸化性の向上に有効な元素であるため、通常0.2〜1.0%含有される。このため、Si含有量の上限は1.0%とすることが好ましい。
[Mn:2.0%以下]
Mnは,脱酸剤として有効であり、オーステナイト形成元素でもあるため、通常0.5〜2.0%含有される。しかし、Mnは,過剰に含有させると耐食性を低下させる作用もある。このため、Mn含有量の上限は2.0%とすることが好ましい。
[P:0.045%以下]
Pは,強度を向上させる作用を奏する。この効果を得るには、0.030%以上含有させることが好ましい。しかし、Pを過剰に含有させると溶接性が損なわれるため、P含有量は0.045%以下とすることが好ましい。
[S:0.03%以下]
Sは,不純物であり、熱間加工性と靱性を低下させる作用がある。このため、S含有量は0.03%以下とすることが好ましい。
[Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびV:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上]
Ti,Nb,Vは、いずれも、結晶粒の成長の抑制に特に有効であると考えられる化合物の析出のため、微量のTi,Nb,Vの1種または2種以上をそれぞれ0.5%以下含有してよく、それぞれ0.02〜0.46%含有することがさらに好ましい。
上記以外の残部は、Feおよび不純物である。
(1−2)金属組織
本発明に係る準安定オーステナイト系ステンレス鋼板は、母相としてオーステナイト相を有するとともに、粒径調整の前後で結晶粒度No.(ΔG.S.No.)で1以上の微細化された結晶粒径を有する。
(1−3)機械特性
本発明に係る準安定オーステナイト系ステンレス鋼板は、引張強度:175MPa以上、全伸び:3%以上、および疲れ限度:90MPa以上の機械特性を有し、所望の強度で伸びのバランスに優れるとともに、優れた疲労強度を有する。
(1−4)用途
本発明に係る準安定オーステナイト系ステンレス鋼板は、自動車や家電をはじめとする多種多様な用途へ幅広く適用可能であるが、具体的にはプリンター等に使用されるブレード、歯車、スチールベルトとして好適に用いることができる。特に、プリンターに使用されるスチールベルトは、素材である準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を無端リング形状にリング溶接する工程を経て製造されるが、溶接の入熱により結晶粒が粗大化してその強度が低下し易い。本発明に係る準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を、スチールベルトの素材として用いれば、上述のように、結晶粒度No.(ΔG.S.No.)で1以上の微細な結晶粒からなる金属組織を有するため、リング溶接工程を経ても結晶粒の粗大化に起因した強度の低下を抑制できるため、溶接部においても要求される強度を維持した上で伸びのバランスに優れるとともに、優れた疲労強度を維持できる。
2.本発明に係る製造方法
本発明に係る製造方法では、上述した化学成分を有する準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を、液体窒素によりマルテンサイト変態を開始する温度以下の冷却温度へ冷却した後にオーステナイト母相への変態を開始する温度以上の加熱温度へ加熱することにより組織調整を行う工程を経て、上述の本発明に係る準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を製造する。この理由を説明する。
本発明者らは、汎用性も考慮し、JIS規格に規定される準安定オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS301,SUS301L,SUS304,SUS304Lを用いて、比較的容易に扱うことができる液体窒素での冷却によるマルテンサイト変態と、この冷却に引き続いてオーステナイト母相への逆変態温度以上への加熱(固溶化熱処理に比べて低温加熱でのオーステナイト相への変態)を活用することによる特性の変化を調査した。
その結果、このような冷却と加熱を経た準安定オーステナイト系ステンレス鋼の結晶粒を微細化すること、さらに、冷却時に、JIS−Z−2241(2011)に規定される引張試験にて一般的に測定される0.2%耐力以下の応力を付与することによりマルテンサイト変態を促進できることが判明した。なお、0.2%耐力は、ステンレス鋼の引張試験において一般的に測定され、それらの中で弾性限に比較的近い値と考えられる。
主要な経過の一例として、後述する実施例の表2に示すSUS301Lでの結果を説明する。まず、SUS301Lの液体窒素での冷却前後のマルテンサイト変態量を表1に示す。また、一部の試料には、液体窒素での冷却中に98N/mmの張力を付与した。
表1に示すように、液体窒素での冷却によりマルテンサイト変態し、マルテンサイト相量は3面積%になるとともに、冷却時に張力を付与することによりマルテンサイト変態量が増加し、14面積%を示す。なお、マルテンサイト量は、X線回折により板表面にて測定し、オーステナイト母層を含む全回折ピークに対するマルテンサイト相の回折ピークの積分強度の比により算出した。
さらに、それらの試料に800℃の熱処理を施した後、圧延方向平行断面を樹脂に埋込んだ後、研磨および腐食し、光学顕微鏡を用いて金属組織を観察した。素材と張力付与した試料の金属組織写真を図1に示す。
張力を付与しながら液体窒素による冷却を行われた試料の結晶粒は、素材の結晶粒よりも微細化される。JIS−G−0551にて規定される結晶粒度で比較した場合、張力を付与した材料は結晶粒度が8であり、素材の結晶粒度が7であるのに対して、結晶粒度で1の減少を示し、結晶粒の平均面積が約1/2となる。
以上の説明からも理解されるように、本発明に係る製造方法における組織調整は、調整前後でJIS−G−0551により規定される結晶粒度No.に換算して1以上の結晶粒微細化である。
本発明において、準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を液体窒素によりマルテンサイト変態開始温度以下へ冷却した後、オーステナイト変態開始温度以上へ加熱する理由は、それらの変態により金属組織を効率的に調整し、結晶粒を微細化するためである。これらは、両変態を繰り返す回数を増やすことでも、効果が促進される。具体的な温度は、素材の成分に依存するが、冷却温度はより低温であることがマルテンサイト変態の促進のためには有利である。
ただし、工業的には活用が容易な液体窒素温度以下が望ましい。なお、室温との間の冷却を繰り返すことによってもマルテンサイト変態量の促進が期待される。このように、本発明に係る製造方法では、冷却温度は液体窒素温度以下であることが望ましい。
一方、加熱温度は一般的な準安定オーステナイト系ステンレス鋼においてオーステナイト母相への変態が起こる600℃以上とする。加熱温度は、好ましくは、最小限の粒成長により結晶粒が整粒化する(粒径の変動が低減して一様となる)650℃以上である。加熱温度の上限は固溶化処理温度以下となるが、結晶粒成長の抑制のためには加熱温度は低温であることが望ましく、好ましくは900℃以下である。このように、本発明に係る製造方法では、加熱温度は600℃以上であることが望ましい。
液体窒素により冷却中の応力は、マルテンサイト変態を促進させ、効率的に活用するために、行う。ただし、製品や部品、それらに近い製造段階では、素材を塑性変形させることができないことが多い。本発明では、弾性域内での応力の付与であってもマルテンサイト変態を促進させることができる。このため、弾性変形域内とし、それに最も近いと考えられるJIS規格の引張試験により測定される0.2%耐力未満とする。このように、本発明に係る製造方法では、少なくとも、マルテンサイト変態開始温度以下への冷却中に、準安定オーステナイト系ステンレス鋼板に応力を付与することが結晶粒微細化を促進するためには好ましく、具体的には、0.2%耐力未満の応力を付与することが好ましい。
また、上述したように、本発明に係る準安定オーステナイト系ステンレス鋼板をプリンター等に使用されるスチールベルトの素材として用いる場合には、準安定オーステナイト系ステンレス鋼板にリング溶接を行って無端リング形状とするとともに、この無端リング形状の準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を少なくとも二つ以上のプーリの間に掛け渡すことで応力を付与するとともに、プーリへの巻き着き時の曲げ、曲げ戻しを活用することにより、引張応力と圧縮応力が交互かつ効率的に付与できるとともに、少なくとも二つ以上のプーリの間での応力付与部の1ケ所以上を液体窒素で冷却することにより、本発明に係る準安定オーステナイト系ステンレス鋼板とすることが好ましい。
本発明の実施例を説明する。
試料は、JIS−G−4305のSUS301,SUS304,SUS301L,SUS304L,SUS310S,SUS430に適合するように成分調整した小型の鋳塊それぞれを、所定形状に切削加工した後、実研室レベルの設備を用いて、一般的工程にて薄板を製造した。
具体的には、熱間圧延、固溶化処理および脱スケール後、冷間圧延と熱処理(含脱スケール)を1回以上繰返し、最終工程にて固溶化処理相当の1100℃×3分間保持で熱処理した厚さ0.3mmの薄板とした。
なお、大部分は短冊形状の試験片であり、一部を細長いリボン形状とし、両端を電子ビーム溶接後、1100℃×3分の固溶化処理を実施したリング状試験片とした。各試料の化学成分の実績を表2に示す。
次に、上記試験片を液体窒素中に浸漬して冷却した後、数水準の加熱温度への加熱を実施した。なお、冷却は、液体窒素中で5分間保持後と、室温で5分間保持との工程を3回繰り返した。
応力(張力)は、加熱と冷却を繰返す間に98N/mmの引張応力を付与し続けた。繰返し曲げは、リング形状試験片のみに実施し、冷却中のみ98N/mmの引張応力を付与し、プーリに1回/6秒で巻きつけることにて実施した。プーリの直径は40mmである。
他方、加熱は、100体積%Arガスの雰囲気中、所定温度で1分間保持することにより実施した。その後、実施前の試験片とともに組織を観察し、JIS規格にて規定される粒度番号を測定し、その差を算出した。すなわち、結晶粒微細化に対応する粒度番号の増減を調査した。
金属組織は、試験片の圧延方向平行断面を埋込み、研磨および腐食後に、光学顕微鏡を用いて観察し、平均的部位での写真を撮影し、結晶粒度を測定した。
各試験片での処理条件と粒度差の関係を表3に示す。
表3において、本発明で規定する条件を満足するものを発明例と表示し、それ以外を比較例と表示した。
発明例1〜11に示すように、本発明による結晶粒微細化が確認される。なお、結晶粒径は粒度番号の増加により微細となり、粒度番号で2の増加により結晶粒径が1/2となる。
他方、比較例13〜16のように、素材がマルテンサイト変態を起こさない安定オーステナイト系ステンレス鋼のSUS310S、フェライト系ステンレス鋼のSUS430の場合には、本発明による結晶粒微細化効果は認められない。

Claims (10)

  1. JIS−G−4313(2011)に規定されるオーステナイト系ステンレス鋼のうち、
    化学組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:6〜13%、Cr:16〜20%、N:0.20%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなり、
    マルテンサイト変態を開始する温度以下の冷却温度へ冷却する冷却工程と、オーステナイト母相への変態を開始する温度以上の加熱温度へ加熱する加熱工程とを順に行うことで、用いられる準安定オーステナイト系ステンレス鋼板であって、
    前記冷却工程においては、液体窒素中で5分間保持後に、室温で5分間保持する工程を3回繰り返し、
    前記加熱工程においては、100体積%Arガスの雰囲気中で、600〜800℃の温度域で1分間保持し、
    前記冷却工程および前記加熱工程の際に98N/mmの引張応力を付与し続けることで、
    前記冷却工程および前記加熱工程を行う前での結晶粒度No.(ΔG.S.No.)に対する前記冷却工程および前記加熱工程を行った後での結晶粒度No.(ΔG.S.No.)の差が、1以上となる、準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
  2. JIS−G−4313(2011)に規定されるオーステナイト系ステンレス鋼のうち、
    化学組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以上0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:6〜13%、Cr:16〜20%、N:0.20%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる準安定オーステナイト系ステンレス鋼板であって、
    前記準安定オーステナイト系ステンレス鋼板に対して、マルテンサイト変態を開始する温度以下の冷却温度へ冷却する冷却工程と、オーステナイト母相への変態を開始する温度以上の加熱温度へ加熱する加熱工程とを順に行い、
    前記冷却工程においては、液体窒素中で5分間保持後に、室温で5分間保持する工程を3回繰り返し、
    前記加熱工程においては、100体積%Arガスの雰囲気中で、600〜800℃の温度域で1分間保持し、
    前記冷却工程および前記加熱工程の際に98N/mmの引張応力を付与し続けた場合に、
    前記冷却工程および前記加熱工程を行う前での結晶粒度No.(ΔG.S.No.)に対する前記冷却工程および前記加熱工程を行った後での結晶粒度No.(ΔG.S.No.)の差が、1以上となる金属組織を有することを特徴とする準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
  3. 前記準安定オーステナイト系ステンレス鋼は、JIS−G−4305(2012)に規定されるSUS301、SUS301L、SUS304またはSUS304Lである請求項1または請求項2に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
  4. 前記化学組成は、質量%で、Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびV:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
  5. 引張強度:175MPa以上、全伸び:3%以上、および疲れ限度:90MPa以上の機械特性を有する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
  6. プリンター用スチールベルトに用いられる請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
  7. 付与される前記引張応力が前記準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の弾性変形域内の応力である、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
  8. JIS−G−4313(2011)に規定されるオーステナイト系ステンレス鋼のうち、
    化学組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:6〜13%、Cr:16〜20%、N:0.20%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を用いた無端リングであって、
    前記準安定オーステナイト系ステンレス鋼板に対して、マルテンサイト変態を開始する温度以下の冷却温度へ冷却する冷却工程と、オーステナイト母相への変態を開始する温度以上の加熱温度へ加熱する加熱工程とを順に行い、
    前記冷却工程においては、液体窒素中で5分間保持後に、室温で5分間保持する工程を3回繰り返し、
    前記加熱工程においては、100体積%Arガスの雰囲気中で、600〜800℃の温度域で1分間保持し、
    前記冷却工程および前記加熱工程の際に98N/mmの引張応力を付与し続けた場合に、
    前記冷却工程および前記加熱工程を行う前での結晶粒度No.(ΔG.S.No.)に対する前記冷却工程および前記加熱工程を行った後での結晶粒度No.(ΔG.S.No.)の差が、1以上となる金属組織を有することを特徴とする準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を用いた無端リング。
  9. 微細化準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法であって、
    請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を、マルテンサイト変態を開始する温度以下の冷却温度へ冷却する冷却工程と、オーステナイト母相への変態を開始する温度以上の加熱温度へ加熱する加熱工程とを順に行い、
    前記冷却工程においては、液体窒素中で保持し、
    前記加熱工程においては、600〜800℃の温度域で保持し、
    前記冷却工程および前記加熱工程の際に0.2%耐力未満の引張応力を付与し、
    前記冷却工程および前記加熱工程を行う前での結晶粒度No.(ΔG.S.No.)に対する前記冷却工程および前記加熱工程を行った後での結晶粒度No.(ΔG.S.No.)の差が、1以上となるよう組織調整を行うことを特徴とする、微細化準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
  10. 前記準安定オーステナイト系ステンレス鋼板は無端リング形状を有し、二つ以上のプーリの間で曲げ、曲げ戻しを行うことで、引張応力を付与し、
    前記冷却工程では、前記プーリによる応力の付与部の1ケ所以上を冷却することを特徴とする請求項9に記載された微細化準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
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