「第1実施形態」
本発明の第1実施形態を図1〜図7を参照して以下に説明する。
第1実施形態の筒体の製造方法には、図1に示す第1金型11、芯金12および第2金型13を含むプレス成形型を有するプレス装置が用いられる。
第1金型11は、第2金型13に当接可能な合わせ面11aから突出する突出部21と、突出部21の突出先端部から凹む成形溝22とを有している。突出部21は、突出先端側ほど互いの間隔が狭くなる一対の傾斜面21aを有しており、合わせ面11aに沿って直線状に延在している。成形溝22は、その溝面22aが半円筒状をなしており、幅および深さが長さ方向位置によらず一定で、突出部21に沿って直線状に延在している。
芯金12は、円柱状をなしており、その径方向外側の外径部31が、一定外径の主外径部32と、主外径部32よりも径方向内方に凹む逃げ溝33とを有している。逃げ溝33は芯金12の周方向における長さが主外径部32よりも大幅に小さくなっている。主外径部32はその外面32aが円筒の一部の形状をなしている。逃げ溝33の溝面33aは、幅および深さが長さ方向位置によらず一定であり、芯金12の軸線方向に直線状に延在している。芯金12は、主外径部32の外面32aの半径が、第1金型11の成形溝22の溝面22aの半径よりも小径となっている。
第2金型13は、第1金型11に当接可能な合わせ面13aから凹む成形溝42と、成形溝42の溝面42aよりもさらに凹む逃げ溝44とを有している。成形溝42は、合わせ面13a側の一対の傾斜面42bと、合わせ面13aとは反対側の上記溝面42aとを有している。一対の傾斜面42bは、合わせ面13aから離れるほど互いの間隔が狭くなるように傾斜しており、合わせ面13aに沿って直線状に延在している。溝面42aは半円筒状をなしており、幅および深さが長さ方向位置によらず一定であり、一対の傾斜面42bの間で合わせ面13aに沿って直線状に延在している。逃げ溝44は、成形溝42の最も深い位置に成形溝42よりも一層深く形成されている。逃げ溝44の溝面44aは、幅および深さが長さ方向位置によらず一定であり、成形溝42の延在方向に直線状に延在している。第2金型13は、成形溝42の溝面42aの半径が、第1金型11の成形溝22の溝面22aの半径と同径となっている。
プレス装置においては、芯金12を、第1金型11とは反対に逃げ溝33を配置した状態で、水平配置された第1金型11の成形溝22の鉛直上方に成形溝22と平行に配置する。そして、第1実施形態の筒体の製造方法は、図2に示すように、プレス成形型内における第1金型11および芯金12の間位置に平板状の板状体51を配置する板状体配置工程を含んでいる。この板状体配置工程において、板状体51は第1金型11の突出部21に載置される。板状体51は、正方形または長方形状をなしており、平行な一対(図面では一方のみ図示)の辺52を芯金12の径方向に沿わせ、これら一対の辺52を結ぶ両端縁部54を芯金12の軸方向に沿わせて配置される。
第1実施形態の製造方法は、図3に示すように、板状体配置工程後に芯金12を成形溝22内に入り込ませて板状体51をプレスして塑性変形させる第1プレス工程を含んでいる。この第1プレス工程では、板状体51の中間部に、第1金型11の成形溝22の溝面22aと芯金12の主外径部32の外面32aとによって、塑性変形部である半円筒部56を形成する。半円筒部56は、溝面22aと同様の形状に板厚方向一側の面が曲がり、外面32aと同様の形状に板厚方向他側の面が曲がった半円筒状をなす。第1プレス工程後の板状体51は、半円筒部56以外の部分が、曲げられずに半円筒部56の周方向の両端から第1金型11から離れる方向に延出する一対の平板部57となる。つまり、第1金型11および芯金12は、板状体51をU字状に曲げる。
プレス装置においては、図4に示すように、第2金型13を、その成形溝42が芯金12に向き芯金12の鉛直上方で芯金12と平行をなすように配置する。そして、第1実施形態の筒体の製造方法は、プレス成形型である第2金型13を、芯金12を成形溝42内に入り込ませて板状体51をプレスして塑性変形させる第2プレス工程を含んでいる。この第2プレス工程では、まず、板状体51の一対の平板部57を、第2金型13の成形溝42の一対の傾斜面42bで溝面42a側に案内する。
次に、板状体51の一対の平板部57を、図5に示すように、成形溝42の溝面42aと芯金12の主外径部32の外面32aとによって塑性変形させて一対の湾曲板部58とする。一対の湾曲板部58は、溝面42aと同様の形状に板厚方向一側の面が曲がり、外面32aと同様の形状に板厚方向他側の面が曲がった円筒の一部の形状をなす。このように、第1プレス工程と第2プレス工程とによって、板状体51が半円筒部56と一対の湾曲板部58とを有する形状に曲がってO字状つまり円筒状になる。このとき、板状体51は、上記した一対の辺52が円筒の周方向となるように曲げられる。第2プレス工程では、第2金型13の合わせ面13aが第1金型11の合わせ面11aに面接触し、第2金型13の一対の傾斜面42bが第1金型11の一対の傾斜面21aに面接触する状態となる。
いずれもプレス成形型を構成する第1金型11、芯金12および第2金型13の、成形溝22、外径部31および成形溝42が、板状体51をプレスして筒状、具体的には円筒状に曲げる成形部61を構成する。
そして、第1実施形態の製造方法では、板状体51として、これをプレスした状態にある成形部61の周方向長さよりも長い一対の辺52を有するものを、上記した第1プレス工程と第2プレス工程とにおいてプレス成形する。つまり、図2に示す上記した板状体配置工程において、図5に示す成形部61の周方向の長さよりも長い一対の辺52を有する板状体51をプレス成形型内の第1金型11と芯金12との間に配置する。
その結果、上記した第2プレス工程によって、図4に示す板状体51の一対の平板部57を図5に示す一対の湾曲板部58とする際に、両端縁部54には、図6に示すように一方の端縁部54の端面54aと他方の端縁部54の端面54aとが面接触し周方向に突き合わせられた後に、さらに互いに周方向に押し付け合う力が第1金型11、芯金12および第2金型13から加わる。
このとき、板状体51の両端縁部54以外の他の部分である中間部55は、図5に示すように第1金型11の成形溝22と芯金12の主外径部32と第2金型13の成形溝42とでプレスされて板厚の拡大が規制されているため、両端縁部54同士が周方向に強く押し付け合うことになる。
一方で、芯金12および第2金型13には、図6に示すように両端縁部54を囲むように逃げ溝33および逃げ溝44が配置されることになる。よって、両端縁部54は、両方が、逃げ溝33および逃げ溝44に入り込むように塑性変形可能となり、両方が、余分な周方向長さ分を吸収するように塑性変形して径方向外側および内側に凸となるように膨らむ。言い換えれば、板状体51は、円筒状に塑性変形し、その際に、両端縁部54が塑性変形して径方向外側および内側に膨らむ。つまり、第2プレス工程によって、板状体51の両端縁部54は、両方が、塑性変形して板状体51の他の部分である中間部55よりも厚みが大となる。そして、塑性変形時に両端縁部54は互いに部分的に入り込むことになり、その結果、突き合わせ状態が維持される仮接合状態となる。
このように第1,第2プレス工程では、板状体51の両端縁部54を周方向に突き合わせて両端縁部54が他の部分よりも厚みが大となるようプレス成形型を構成する第1金型11、芯金12および第2金型13をプレスして、板状体51を筒状、具体的には円筒状にする。また、第1,第2プレス工程では、プレス成形型を構成する第1金型11、芯金12および第2金型13の成形部61に設けられて両端縁部54が径方向に凸となるための逃げ溝33,44により、筒状に曲げられた板状体51の外周側および内周側の両方が径方向に凸となるように第1金型11、芯金12および第2金型13をプレスする。なお、他の部分に対し大となる厚みとは、溶接によって薄くなる分を補う分以上の厚みで、なるべく削り落とす量が少なくなる程度とする。理想は、溶接によって薄くなる分を予め試験で求め、薄くなる分だけ溶接前の状態で厚みを設けるようにする。このようにすると、削り落とす必要がなくなり、生産性も向上させることができる。
第1実施形態の製造方法では、次に、上記のように仮接合状態にある両端縁部54を溶接して恒久的に接合状態が維持される図7に示す接合部63とする溶接工程を行う。この溶接工程では、両端縁部54を円筒状をなす板状体51の軸方向に連続的に溶接することになる。この溶接工程を行うことによって、板状体51は、図7に一部を示す円筒体51Aとなる。ここで、溶接工程では、エネルギ密度が高い溶接方法で両端縁部54を溶接する。エネルギ密度が高い溶接方法とは、レーザ溶接、プラズマ溶接(溶接棒を使わないタイプ)、電子ビーム溶接等である。
溶接工程を行うことによって、両端縁部54は突き合わせられた部分の近傍が全面的に溶融して溶着する溶着部64となる。この溶着部64は、円筒体51Aの軸線方向に連続して延び、円筒体51Aを内周面51Aaと外周面51Abとを結ぶ方向である径方向に連続して円筒体51Aを横断するように形成される。これにより、円筒体51Aは全周全長にわたり密閉された管体となる。
ここで、溶着部64は、円筒体51Aの径方向における接合部63の内端面63aよりも径方向外方に凹んで形成されることがあり、円筒体51Aの径方向における接合部63の外端面63bよりも径方向内方に凹んで形成されることがある。つまり、接合部63の溶着部64の位置に、内端面63aよりも円筒体51Aの径方向外方に凹むヒケ66を生じたり、外端面63bよりも円筒体51Aの径方向内方に凹むヒケ67を生じる可能性がある。第1実施形態の製造方法で形成された円筒体51Aは、このようなヒケ66,67を生じても、両端縁部54が中間部55よりも厚みが大となるように塑性変形しているため、円筒体51Aの径方向における溶着部64の長さが長くなる。したがって、円筒体51Aは接合部63の接合強度が高くなり、品質が向上する。
また、溶接工程の後、必要により、円筒体51Aの内周側の接合部63および中間部55をホーニングするホーニング工程を行う。これにより、接合部63を削ってヒケ66を消失させることができ、円筒体51Aの内周面51Aaをヒケのない円筒面にすることができる。これにより、円筒体51Aの内周面51Aa側が応力集中を生じ難い構造になる。また、円筒体51Aの内周面51Aaに部品を嵌合させる場合に、嵌合部品の損傷を抑制することができる。したがって、さらに品質が向上する。ここで、ヒケ66を消失させるためには、接合部63のみを削れば良く、必ずしも中間部55をホーニングする必要はない。
また、溶接工程の後、必要により、円筒体51Aの外周側の接合部63および中間部55を研削する外径研削工程を行う。これにより、接合部63を削ってヒケ67を消失させることができる。つまり、円筒体51Aの外周面51Abをヒケのない円筒面にすることができる。これにより、円筒体51Aの外周面51Ab側が応力集中を生じ難い構造になる。また、円筒体51Aの外周面51Abに部品を嵌合させる場合に、嵌合部品の損傷を抑制することができる。また、作業者が円筒体51Aを把持する際に引っかかりを生じることがなくなる。したがって、さらに品質が向上する。ここで、ヒケ67を消失させるためには、接合部63のみを削れば良く、必ずしも中間部55を外径研削する必要はない。
特許文献1には、板状体を丸めて両端部を周方向にラップさせ径方向に重ねる技術が開示されている。両端部を周方向にラップさせ径方向に重ねた状態で溶接すると、接合強度等の品質に影響を及ぼす可能性がある。
これに対して、第1実施形態の製造方法によれば、第1金型11、芯金12および第2金型13の成形部61の周方向の長さよりも長い一対の辺52を有する板状体51をプレス成形型内の第1金型11と芯金12との間に配置する板状体配置工程(図8(a))と、板状体51の両端縁部54を周方向に突き合わせて両端縁部54が他の部分である中間部55よりも厚みが大となるよう第1金型11、芯金12および第2金型13をプレスして板状体51を筒状にする第1,第2プレス工程(図8(b))と、両端縁部54を溶接して接合部63とする溶接工程(図8(c))と、を含んでいる。これにより、接合部63の内端面63aと外端面63bとを結ぶ方向の溶着部64の長さ、つまり円筒体51Aの溶着部64の径方向の長さが長くなる。したがって、円筒体51Aの接合部63の接合強度を高くでき、品質向上を図ることができる。
また、第1,第2プレス工程では、第1金型11、芯金12および第2金型13の成形部61に設けられて両端縁部54が径方向に凸となるための逃げ溝33,44により、筒状に曲げられた板状体51の外周側および内周側の両方が径方向に凸となるようにプレスするため、板状体51の外周側および内周側の両方を径方向に凸とすることができる。よって、外周側および内周側の両方を後工程で削ることができる。したがって、接合部63にヒケ66,67を生じてもこれを削って消失させることができるため、円筒体51Aの一層の品質向上を図ることができる。
また、溶接工程の後、円筒体51Aの内周側の接合部63をホーニングするホーニング工程(図8(d))を行うことにより、円筒体51Aの内周側を滑らかな円筒面にすることができる。したがって、円筒体51Aの一層の品質向上を図ることができる。なお、円筒体51Aの内周に摺動部品が入らない場合や、シール部材が直接接しない場合には、ホーニング工程を省略してもよい。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図9〜図11に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態の製造方法では、図9に示すように、逃げ溝44と成形溝42の中央側の一部となる分割溝81とを有する内側金型82と、成形溝42の両側の一部となる分割溝84を有する外側金型85とに、第2金型13が分割されている。分割溝81は成形溝42の溝面42aの一部である溝面81aを有しており、分割溝84は成形溝42の溝面42aの残りの一部である溝面84aを有している。外側金型85の内側は内側金型82が嵌合可能な配置穴86となっている。
第2実施形態の製造方法は、第1実施形態と同様の第1プレス工程を行って、第1金型11および芯金12により、板状体51をU字状に曲げる(図2,図3参照)。
次に、図9に示す第2金型13の外側金型85を、その分割溝84が芯金12に向き芯金12の鉛直上方で芯金12と平行をなすように配置する。そして、第2実施形態の製造方法は、図10に示すように、外側金型85を、芯金12を分割溝84内に入り込ませて板状体51をプレスして塑性変形させる第2プレス工程の前プレス工程を含んでいる。
この前プレス工程では、板状体51の一対の平板部57(図3参照)の半円筒部56側の一部を、図10に示すように外側金型85の分割溝84の溝面84aと芯金12の主外径部32の外面32aとによって、塑性変形させて一対の湾曲板部91とする。一対の湾曲板部91は、溝面84aと同様の形状に板厚方向一側の面が曲がり、外面32aと同様の形状に板厚方向他側の面が曲がった円筒の一部の形状をなす。
このとき、外側金型85の配置穴86の内側は空間となっているため、一対の平板部57(図3参照)の半円筒部56とは反対側の一部は、図10に示すように直線状に延びる一対の板部92となって、この空間に入り込む。このとき、板状体51の長さの設定により、この空間に入り込んだ両端縁部54は、湾曲する板状体51の径方向外方に指向して板状体51の周方向に突き合わせられる。つまり、前プレス工程では、両端縁部54が両端面54aを板状体51の径方向外方に指向させて周方向に突き合わせられる。言い換えれば、前プレス工程では、両端縁部54が逃げ溝33とは反対方向に指向して周方向に突き合わせられる。さらに言い換えれば、前プレス工程は、板状体51の両端縁部54を径方向外方に指向させて周方向に突き合わせる。
次に、第2実施形態の製造方法では、第2金型13の内側金型82を、その分割溝81が芯金12に向き芯金12の鉛直上方で芯金12と平行をなすように配置する。そして、第2実施形態の製造方法は、図11に示すように、内側金型82を、外側金型85の配置穴86内に入り込ませて板状体51をプレスして塑性変形させる第2プレス工程の後プレス工程を含んでいる。この後プレス工程では、板状体51の図10に示す一対の板部92を、内側金型82の分割溝81の溝面81aと芯金12の主外径部32の外面32aとによって塑性変形させて一対の湾曲板部93とする。一対の湾曲板部93は、溝面81aと同様の形状に板厚方向一側の面が曲がり、外面32aと同様の形状に板厚方向他側の面が曲がった円筒の一部の形状をなす。
このように、第1プレス工程と、第2プレス工程の前プレス工程および後プレス工程とによって、板状体51が半円筒部56と一対の湾曲板部91と一対の湾曲板部93とを有する形状に曲がってO字状つまり円筒状になる。
そして、第2実施形態の製造方法では、板状体51として、これをプレスした状態にある成形部61の周方向長さよりも長い一対の辺52を有するものを、上記した第1プレス工程と第2プレス工程の前プレス工程および後プレス工程とにおいてプレス成形する。つまり、第2実施形態の製造方法でも、上記した板状体配置工程において、成形部61の周方向の長さよりも長い一対の辺52を有する板状体51をプレス成形型である第1金型11および芯金12の間に配置する。
その結果、上記した第2プレス工程の後プレス工程によって、板状体51の一対の板部92を一対の湾曲板部93とする際に、前プレス工程によって径方向外方に指向して周方向に突き合わせられていた両端縁部54が、この突き合わせられた状態のまま、さらに互いに周方向に押し付け合う力が第1金型11、芯金12、外側金型85および内側金型82から加わるとともに、内側金型82から径方向に押し潰される力が加わる。
このとき、芯金12および内側金型82には、両端縁部54を囲むように逃げ溝33および逃げ溝44が配置されることになる。よって、両端縁部54は、両方が逃げ溝33および逃げ溝44に入り込むように塑性変形可能となり、両方が余分な周方向長さ分を吸収するように塑性変形して径方向外側および内側に凸となるように膨らむ。言い換えれば、板状体51は、円筒状に塑性変形し、その際に、両端縁部54が塑性変形して径方向外側および内側に膨らむ。つまり、第2プレス工程の後プレス工程によって、板状体51の両端縁部54は、両方が、塑性変形して板状体51の他の部分である中間部55よりも厚みが大となる。そして、塑性変形時に両端縁部54は互いに部分的に入り込んで突き合わせ状態が維持される仮接合状態となる。
このように前プレス工程および後プレス工程を含む第2プレス工程では、板状体51の両端縁部54を周方向に突き合わせて両端縁部54が他の部分よりも厚みが大となるようプレス成形型である第1金型11と、芯金12と、内側金型82および外側金型85からなる第2金型13とをプレスして板状体51を筒状、具体的には円筒状にする。また、第2プレス工程の後プレス工程では、プレス成形型の第1金型11と、芯金12と、内側金型82および外側金型85からなる第2金型13とで形成される成形部61に設けられて両端縁部54が径方向に凸となるための逃げ溝33,44により、筒状に曲げられた板状体51の外周側および内周側の両方が径方向に凸となるようにプレスする。
第2実施形態の製造方法では、第1実施形態と同様に、仮接合状態にある両端縁部54を溶接して恒久的に接合状態が維持される接合部63とする溶接工程を行って板状体51を円筒体51Aとする。
また、溶接工程の後、必要により、円筒体51Aの内周側の接合部63および中間部55をホーニングするホーニング工程を行う。
さらに、溶接工程の後、必要により、円筒体51Aの外周側の接合部63および中間部55を研削する外径研削工程を行う。
このような第2実施形態の製造方法によれば、第2プレス工程が、第1金型11と芯金12と外側金型85とによって板状体51の両端縁部54を径方向外方に指向させて周方向に突き合わせる前プレス工程を行うため、その際に、板状体51を配置穴86内で周方向に逃がしながら第1金型11の傾斜面21aと外側金型85の傾斜面42bとを当接させることができる。よって、第1金型11の傾斜面21aと外側金型85の傾斜面42bとの隙間から板状体51が径方向外方に逃げることを抑制することができる。そして、第1金型11の傾斜面21aと外側金型85の傾斜面42bとを当接させた状態で、後プレス工程によって、両端縁部54を他の部分である中間部55よりも厚みが大となるようプレスする。その結果、両端縁部54以外の部分が型割り部分から突出してしまうことを抑制できる。したがって、円筒体51Aの一層の品質向上を図ることができる。
ここで、第1実施形態および第2実施形態において、逃げ溝33を設ける一方で逃げ溝44を設けない構成として、逃げ溝33のみにより、筒状に曲げられた板状体51の両端縁部54の内周側が径方向内方に凸となるように第2プレス工程でプレスしても良い。また、逃げ溝44を設ける一方で逃げ溝33を設けない構成として、逃げ溝44のみにより、筒状に曲げられた板状体51の両端縁部54の外周側が径方向外方に凸となるように第2プレス工程でプレスしても良い。つまり、筒状に曲げられた板状体51の両端縁部54の外周側および内周側の少なくともいずれか一方が径方向に凸となるように第2プレス工程でプレスすれば良い。
また、本発明の製造方法は、円筒体以外の多角筒体等の筒体を製造する場合にも適用可能である。
第1,第2実施形態で製造された円筒体51Aは、例えば、図12に示すシリンダ装置110の部品となる。このシリンダ装置110は、例えば自動車や鉄道車両のサスペンション装置に用いられるものである。シリンダ装置110は、作動流体が封入されるシリンダ111を有している。シリンダ111は、内筒112と、内筒112よりも大径の外筒113とを有する二重筒構造をなしている。内筒112は、軸方向の両端側が開放された円筒状をなしており、外筒113は、軸方向の一端側が閉塞され他端側が開口された有底円筒状をなしている。内筒112は、外筒113内に外筒113に対して軸方向の位置を重ね合わせて同軸状に設けられており、これにより、外筒113との間に環状のリザーバ室114を形成している。
シリンダ111の内筒112内には、ピストン117が摺動可能に嵌装されている。このピストン117は、内筒112内つまりシリンダ111内に上室118と下室119とを画成している。シリンダ111内には、具体的に、上室118および下室119内に作動流体としての作動液が封入され、リザーバ室114内に作動流体としての作動液およびガスが封入される。つまり、シリンダ装置110は複筒式の液圧緩衝器となっている。
ピストン117にはロッド122が連結されている。ロッド122は、その軸方向一端側がシリンダ111の内筒112内に挿入されてピストン117に連結されており、その軸方向他端側がシリンダ111から外部へと突出している。ピストン117は、ロッド122の内筒112内の端部に連結されており、ロッド122と一体的に移動してシリンダ111の内筒112内で摺動する。
ピストン117には、図示は略すが、ロッド122がシリンダ111からの突出量を増やす伸び側に移動しピストン117が上室118側に移動して上室118の圧力が上昇すると、上室118から下室119に作動液を流しつつその流れを制限して減衰力を発生させる伸び側減衰力発生機構が設けられている。また、ピストン117には、ロッド122がシリンダ111からの突出量を減らす縮み側に移動しピストン117が下室119側に移動して下室119の圧力が上昇すると、下室119から上室118に作動液を流しつつその流れを制限して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構が設けられている。
シリンダ111には、ロッド122が突出する側の端部に、筒状をなしてロッド122を案内するロッドガイド125と、環状をなして作動流体を密封するオイルシールであるシール部材126とが設けられている。ロッド122は、ロッドガイド125の内周側とシール部材126の内周側とを通っている。ロッドガイド125およびシール部材126は、シール部材126の方が、ロッドガイド125よりもシリンダ111の軸方向におけるロッド122の突出側つまり外側に設けられている。シリンダ111内には、ロッドガイド125およびシール部材126とは反対側にベースバルブ128が設けられている。
ロッドガイド125およびシール部材126は、それぞれの内側にロッド122が摺動可能に挿通されている。ロッド122は、内筒112内に配置されるピストン117と、内筒112および外筒113に嵌合されるロッドガイド125とによってシリンダ111の中心軸上に配置されている。
ロッドガイド125は、ロッド122を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持する。シール部材126は、その外周部がシリンダ111の外筒113の内側に密着嵌合される。シール部材126には、その内周部にロッド122が密着状態となるように挿入される。シール部材126は、ロッド122の移動時にその外周側に摺接することによりロッド122をシールする。これにより、シール部材126は、シリンダ111を閉塞して、内筒112内の作動液およびリザーバ室114内の高圧ガスおよび作動液が外部に漏出するのを規制する。
シリンダ111の外筒113は、上記したように有底円筒状をなしており、上記した円筒体51Aからなる胴部材130と、この胴部材130におけるロッド122の突出側とは反対の端部に接合されて胴部材130のこの端部を閉塞させる底蓋部材131とを有している。胴部材130にはロッド122の突出側の開口部132の位置から径方向内方に突出する加締め部133が設けられており、加締め部133よりも底蓋部材131側に円筒状の胴本体部134が形成されている。
加締め部133は、外筒113内に、ベースバルブ128、内筒112、ピストン117、ロッド122、ロッドガイド125およびシール部材126が配置されるまで、円筒状となっており、この部分が加締め加工により径方向内方に折り曲げられ塑性変形させられて加締め部133となる。
シリンダ111の内筒112は、円筒体からなり、軸方向の一端側が外筒113の底蓋部材131の内側に載置されたベースバルブ128に嵌合状態で支持されている。また、内筒112は、軸方向の他端側が外筒113の胴部材130の開口部132側に嵌合されたロッドガイド125に嵌合状態で支持されている。
ロッドガイド125は、略段付き円環状をなすロッドガイド本体140と、ロッドガイド本体140の内周部に嵌合固定される円筒状のカラー141とからなっている。ロッドガイド本体140の外周側には、底蓋部材131とは反対側に大径外周部144が形成され、底蓋部材131側に、大径外周部144よりも小径の小径外周部145が形成されている。大径外周部144および小径外周部145は、いずれも円筒状をなしており、軸方向の位置をずらして同軸状に形成されている。
ロッドガイド本体140は、大径外周部144が、外筒113の胴本体部134の内周部に嵌合している。また、ロッドガイド本体140は、小径外周部145が、内筒112の内周部に嵌合している。ロッドガイド本体140の内周側には、底蓋部材131とは反対側に大径内周部151が、底蓋部材131側に大径内周部151よりも小径の小径内周部152が形成されている。
ロッドガイド本体140における底蓋部材131とは反対側の端部には、軸方向に突出する円環状の外側環状凸部155が外周側に、軸方向に突出する円環状の内側環状凸部156が内周側に、それぞれ形成されている。外側環状凸部155は、内側環状凸部156よりも大径であり、内側環状凸部156よりも底蓋部材131とは反対側に設けられている。
ロッドガイド本体140には、外側環状凸部155と内側環状凸部156との間に、軸方向に沿って貫通する連通穴157が形成されている。連通穴157は、外筒113と内筒112との間のリザーバ室114に開口している。カラー141は、ロッドガイド本体140の小径内周部152内に嵌合固定されており、このカラー141内に、ロッド122が摺接するように挿入されている。
シール部材126は、その外周部が外筒113の胴本体部134の内周部とロッドガイド125とに接触して外筒113をシールする。また、シール部材126は、その内周部がロッド122の外周部に接触して、ロッド122の外周部をシールする。これにより、シール部材126は、外筒113とロッド122との間を閉塞する。シール部材126は、外筒113の加締め部133とロッドガイド125とに挟持されている。
シール部材126は、弾性部材161に円環部材162が埋設された一体成形品であるロッドシール本体163と、いずれもロッドシール本体163とは別体でロッドシール本体163の弾性部材161に装着される内側スプリング165および外側スプリング166とからなっている。
弾性部材161は、ニトリルゴムやフッ素ゴムなどの摺動性の高いゴム材からなっている。円環部材162は、弾性部材161よりも高剛性の金属製の円環平板状をなしている。円環部材162は、ロッドシール本体163の形状を維持するためのものであり、対象部位に固定するための強度をロッドシール本体163に生じさせるものである。内側スプリング165および外側スプリング166はいずれも金属製であり、密着巻きのコイルスプリングの両端を連結して環状にしたガータスプリングである。
シール部材126は、シリンダ111の外筒113に係止される円環板状の環状部171と、環状部171の内周側を被覆しつつ環状部171から底蓋部材131側に突出してロッド122に密封接触する環状のオイルリップ172と、環状部171の内周側を被覆しつつ環状部171から底蓋部材131とは反対側に延出してロッド122に密封接触する環状のダストリップ173とを備えている。また、シール部材126は、環状部171の外周側から底蓋部材131側に突出する環状のシールリング175と、環状部171の径方向の中間位置から底蓋部材131側に突出する筒状のチェックリップ176とを有している。オイルリップ172、ダストリップ173、シールリング175およびチェックリップ176は、弾性部材161の一部からなっており、よって、円環部材162は、これらよりも高剛性となっている。
オイルリップ172およびダストリップ173は、円環部材162の円筒状をなす径方向内側の内周面を被覆するとともにシール部材126の内周面を構成する。
環状部171は、円環部材162の全部を含んでおり、円環部材162と弾性部材161の一部とからなっている。環状部171の弾性部材161からなる部分は、円環部材162の円筒状をなす径方向外側の外周面を被覆する円筒状の外周被覆部182を有している。
また、環状部171の弾性部材161からなる部分は、外周被覆部182の底蓋部材131側の端縁部から径方向内方に延出する円環平板状の内側部分被覆部183を有している。内側部分被覆部183は、外周被覆部182からオイルリップ172よりも手前まで延出しており、円環部材162の底蓋部材131側の内端面の径方向の中間部から外周側を被覆している。
さらに、環状部171の弾性部材161からなる部分は、外周被覆部182の底蓋部材131とは反対側の端縁部から径方向内方に延出する円環平板状の外側部分被覆部184を有している。外側部分被覆部184は、外周被覆部182からダストリップ173の手前まで延出しており、円環部材162の底蓋部材131とは反対側の外端面の径方向の中間部から外周側を被覆している。
環状部171の外周被覆部182は、円環部材162の外周面の接触部分の全面に接着されている。また、内側部分被覆部183は、円環部材162の内端面の接触部分の全面に接着されている。さらに、外側部分被覆部184は、円環部材162の外端面の接触部分の全面に接着されている。ここで、オイルリップ172およびダストリップ173は、円環部材162の内周面の接触部分の全面に接着されている。
弾性部材161では、外周被覆部182、内側部分被覆部183および外側部分被覆部184のみが環状部171を構成することになる。環状部171を構成する以外の弾性部材161からなる部分として、上記したシールリング175とチェックリップ176とがある。シールリング175は、円環状をなしており、内側部分被覆部183の外周縁部から底蓋部材131側に向け突出している。シールリング175は、ロッドガイド125の外側環状凸部155の外周部と、外筒113の胴部材130の内周部とに密着して、ロッドガイド125と外筒113との隙間をシールする。
チェックリップ176は、円筒状をなしており、内側部分被覆部183の径方向の内側位置から底蓋部材131側に向け突出している。チェックリップ176は、ロッドガイド125の内側環状凸部156の外側環状凸部155側の部分に所定の締め代を持って全周に渡り密封接触可能となっている。ここで、上室118からロッドガイド125とロッド122との隙間を介して漏れ出た作動液は、ロッドガイド125の内側環状凸部156の径方向内側の室189に溜まることになり、チェックリップ176は、この室189の圧力が、連通穴157つまりリザーバ室114の圧力よりも所定量高くなった時に開いて室189に溜まった作動液を連通穴157を介してリザーバ室114に流す。つまり、チェックリップ176は、室189からリザーバ室114への方向にのみ作動液およびガスの流通を許容し逆方向の流通を規制する逆止弁として機能する。
シール部材126は、外筒113の加締め部133とロッドガイド125の外側環状凸部155とに環状部171が挟持されて、シリンダ111に係止される。具体的には、内側部分被覆部183と円環部材162と外側部分被覆部184とが、加締め部133と外側環状凸部155とに挟持される。
そして、胴部材130の加締め部133を形成する前の部品が、上記円筒体51Aである。この円筒体51Aは、ホーニング加工工程が行われており、内周面51Aaが溶着部64を含んで円筒面となっているため、シール部材126が嵌合されても、これを傷めることがなく、シール性能の低下を抑制することができる。また、円筒体51Aは、外径研削加工工程が行われており、外周面51Abが溶着部64を含んで円筒面となっているため、外周面51Abが滑らかになり、作業者が把持する際に引っかかりを生じることがない。このため、車体への組み付け作業や交換作業の作業性を向上できる。ここで、内筒112を上記円筒体51Aとしても良い。この場合も、ホーニング加工工程を行い、内周面51Aaを溶着部64を含んで円筒面とすることで、ピストン117を円滑に摺動させることができる。なお、サスペンション装置に用いられるシリンダ装置の場合には、ホーニング加工工程でホーニングする箇所は、少なくとも加締め部133と、底蓋部材131が挿入される部分のみ行えばよい。加締め部133のホーニング加工を行うことにより、シール性能の低下を抑制でき、また底蓋部材131が挿入される内周部分をホーニングすることにより、底蓋部材131の挿入を容易に行うことができる。
上記の実施形態は、一対の辺を有する板状体を該一対の辺が周方向となるように筒状に曲げ、前記一対の辺を結ぶ両端縁部を溶接して筒体とする筒体の製造方法であって、プレス成形型の板状体を筒状に曲げる成形部の前記周方向の長さよりも長い前記一対の辺を有する板状体を前記プレス成形型に配置する板状体配置工程と、前記板状体の前記両端縁部を周方向に突き合わせて該両端縁部が他の部分よりも厚みが大となるよう前記プレス成形型をプレスして前記板状体を筒状にするプレス工程と、前記両端縁部を溶接して接合部とする溶接工程と、を含む。これにより、筒体の径方向における溶接長さを長くできる。したがって、筒体の接合部の接合強度を高くでき、品質向上を図ることができる。
また、前記プレス工程では、前記プレス成形型の前記成形部に設けられて前記両端縁部が径方向に凸となるための逃げ溝により、筒状に曲げられた前記板状体の外周側および内周側の少なくともいずれか一方が径方向に凸となるようにプレスする。これにより、板状体の外周側および内周側の少なくともいずれか一方を径方向に凸とすることができる。よって、外周側および内周側の少なくともいずれか一方を後工程で滑らかに削ることができる。したがって、筒体の一層の品質向上を図ることができる。
また、前記プレス工程は、前記板状体の前記両端縁部を径方向外方に指向させて周方向に突き合わせる前プレス工程と、前記両端縁部を他の部分よりも厚みが大となるようプレスする後プレス工程と、を含む。よって、両端縁部以外の部分が型割り部分から突出してしまうことを抑制できる。したがって、筒体の一層の品質向上を図ることができる。
また、前記筒体は円筒体であり、前記溶接工程の後、前記円筒体の内周側の前記接合部をホーニングするホーニング工程を行う。よって、円筒体の内周側を滑らかな円筒面にすることができる。したがって、筒体の一層の品質向上を図ることができる。