JP6534012B2 - 熱電併給システム - Google Patents

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Description

本開示は、熱電併給システムに関する。
熱電併給システム(CHPシステム:Combined Heat and Power System)とは、単一又は複数の資源から、熱及び電力のような複数の形態のエネルギーが同時に得られるように構成されたシステムのことである。近年では、大規模なCHPシステムだけでなく、病院、学校、図書館などの比較的小規模な施設に併設できるCHPシステム、さらには、一般家庭用のCHPシステム(いわゆるマイクロCHP)が注目を浴びている。
CHPシステムでは、発電サイクルにランキンサイクルが使用されうる。比較的小さい熱需要と電気需要とに対応できるように、容積型の膨張機をランキンサイクルに使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。小規模施設用又は一般家庭用のCHPシステムでは、熱の使用量、必要温度などの熱需要の変動がCHPシステムの性能及び効率に大きな影響を及ぼす。
CHPシステムの効率は、CHPシステムへの投入燃料に対する、有効に利用された電気及び熱の割合で表される。CHPシステムによって得られた電気及び熱を残さず有効利用することで、CHPシステムの総合効率が最大となり、CHPシステムを導入するメリットが生まれる。ランキンサイクルを用いたCHPシステムでは、ガスエンジンを用いたCHPシステムに比べ、熱の生成量が多い。熱を有効利用することでCHPシステムの総合効率を向上させることができる。
小規模施設又は一般家庭では、施設又は家庭ごとに必要熱量及び必要温度が異なる。また、同一施設又は同一家庭においても、例えば、熱を暖房に利用した場合には、夜間と昼間との間で暖房負荷及び/又は暖房必要温度が大きく変動する。暖房負荷及び/又は暖房必要温度の変動は、冬期と夏期との間でも大きい。また、熱を給湯に利用した場合には、一時的に給湯負荷が発生するので、必要熱量及び必要温度が大きく変動する。従って、小規模施設又は一般家庭には、大きく変動する熱の需要と熱の温度とに対応できるCHPシステムが必要となる。
欧州特許出願公開第2014880号明細書 特開平10−266980号公報
しかしながら、上記の従来技術では、CHPシステムの効率を向上させる余地を有している。本開示は、CHPシステムの効率を向上させるための技術を提供する。
本開示は、
作動流体と熱源媒体とを熱交換させることによって前記作動流体を加熱する蒸発器、前記作動流体の膨張動力を回転動力に変換する膨張機、及び、前記作動流体と熱媒体とを熱交換させることによって前記作動流体を冷却する凝縮器を有するランキンサイクル装置と、
前記凝縮器で加熱された前記熱媒体を利用するための熱回路と、
を備え、
前記凝縮器の出口における前記熱媒体の温度Tlと前記温度Tlでの前記作動流体の飽和蒸気圧Pdとから決定される、前記膨張機の吐出口における前記作動流体の温度及び圧力の状態を吐出状態と定義し、前記蒸発器の入口における前記熱源媒体の温度Thから決定される、前記膨張機の吸入口における前記作動流体の温度及び圧力の状態を吸入状態と定義したとき、
前記膨張機の膨張体積比は、前記吸入状態及び前記吐出状態から決定される理論的なランキンサイクルにおける膨張比に等しいか、それよりも小さい、熱電併給システムを提供する。
本開示によれば、CHPシステムの効率を向上させることができる。
本開示の一実施形態に係るCHPシステムの構成図 膨張機の模式的な断面図 図1のCHPシステムが冬期条件で運転されるときの理論的なランキンサイクルを示すp−h線図 最適膨張時の作動室の圧力と容積との関係を示すP−V線図 不足膨張時の作動室の圧力と容積との関係を示すP−V線図 過膨張時の作動室の圧力と容積との関係を示すP−V線図 シミュレーションの結果を示すグラフ
(本発明の基礎となった知見)
本発明者らは、「背景技術」の欄において記載した、CHPシステムに関し、以下の問題が生じることを見出した。
特許文献1のCHPシステムは、ランキンサイクルの凝縮器(放熱器)において作動流体を冷却し、水を加熱するように構成されている。すなわち、暖房用又は給湯用の温水が凝縮器で生成される。そのため、温水の熱量及び温水の温度が変動すると、ランキンサイクルの凝縮温度が変動する。つまり、ランキンサイクルの低圧側圧力が変動する。
一般的に、ランキンサイクルに用いられる膨張機は、固定容積比を持っている。膨張機の吸入条件(吸入口における作動流体の温度及び圧力)が決まれば、膨張機の吐出条件(吐出口における作動流体の温度及び圧力)も決まる。ランキンサイクルの低圧側圧力が膨張機の設計容積比に依存する最低圧力よりも高い場合には、作動流体は膨張機で過膨張となり、最低圧力よりも低い場合には、作動流体は膨張機で不足膨張となる。
作動流体が膨張機で過膨張を起こすと、過膨張による損失が発生し、膨張機の発電量が低下する。また、膨張機の作動室の圧力とランキンサイクルの低圧側圧力との間の大小関係が膨張行程の途中に逆転することによって、作動室における力の作用方向が逆転する。その結果、膨張機の構成部材の破損、軸受の摩耗などが生じやすくなり、膨張機の信頼性が低下する。
特許文献2は、過膨張を防ぐための手段として、作動室と密閉ケースの内部空間とを連通させる制御通路と、制御通路に設けられたバルブ機構とを備えたスクロール膨張機を開示している。バルブ機構は、作動室の圧力が所定圧力に達したら開くように構成されている。しかし、制御通路及びバルブ機構を追加することは、膨張機の構造を複雑にし、膨張機の製造コストを上昇させる。また、バルブ機構が経年劣化で破損する可能性もあり、このことは、膨張機の信頼性及び耐久性を低下させる。
このような問題を解決するために、本開示の第1態様は、
作動流体と熱源媒体とを熱交換させることによって前記作動流体を加熱する蒸発器、前記作動流体の膨張動力を回転動力に変換する膨張機、及び、前記作動流体と熱媒体とを熱交換させることによって前記作動流体を冷却する凝縮器を有するランキンサイクル装置と、
前記凝縮器で加熱された前記熱媒体を利用するための熱回路と、
を備え、
前記凝縮器の出口における前記熱媒体の温度Tlと前記温度Tlでの前記作動流体の飽和蒸気圧Pdとから決定される、前記膨張機の吐出口における前記作動流体の温度及び圧力の状態を吐出状態と定義し、前記蒸発器の入口における前記熱源媒体の温度Thから決定される、前記膨張機の吸入口における前記作動流体の温度及び圧力の状態を吸入状態と定義したとき、
前記膨張機の膨張体積比は、前記吸入状態及び前記吐出状態から決定される理論的なランキンサイクルにおける膨張比に等しいか、それよりも小さい、熱電併給システムを提供する。
第1態様において、膨張機の膨張比(膨張体積比)は、熱源媒体の温度及び熱媒体の温度を考慮に入れて決められている。そのため、第1態様の構成によれば、熱源媒体の温度及び熱媒体の温度が変動したとしても、膨張機における作動流体の過膨張を防止し、過膨張損失の発生及び膨張機の信頼性の低下を防止できる。なお、前記膨張機の吐出口における前記作動流体の温度及び圧力、前記膨張機の吸入口における前記作動流体の温度及び圧力は、他の計測値から間接的に決定されてもよいし、直接計測されてもよい。
本開示の第2態様は、第1態様に加え、前記熱媒体の温度Tlは、前記熱媒体を所定の変動範囲における上限まで前記凝縮器で加熱するときの前記凝縮器の出口における前記熱媒体の温度である、熱電併給システムを提供する。言い換えれば、凝縮器の出口における熱媒体の温度が変動するとき、理論的なランキンサイクルにおける膨張比(膨張密度比)は、温度の変動範囲における最も高い温度を温度Tlと定義することによって求められる値である。これにより、凝縮器の出口における熱媒体の温度が変動したとしても、作動流体の過膨張を確実に防止できる。
本開示の第3態様は、第1又は第2態様に加え、前記熱媒体は水である、熱電併給システムを提供する。取扱いの容易な水を熱媒体として使用すれば、熱利用の適用範囲が広がり、熱利用効率が向上する。その結果、優れた総合効率の熱電併給システムを提供できる。
本開示の第4態様は、第1又は第2態様に加え、前記熱媒体は空気である、熱電併給システムを提供する。取扱いの容易な空気を熱媒体として使用すれば、熱利用の適用範囲が広がり、熱利用効率が向上する。その結果、優れた総合効率の熱電併給システムを提供できる。
本開示の第5態様は、第1〜第4態様のいずれか1つに加え、前記膨張機は容積型の膨張機である、熱電併給システムを提供する。容積型の膨張機は、高効率で運転できる回転数の範囲が広い。つまり、容積型の膨張機を使用すれば、ランキンサイクルの作動流体の循環量が増減したとしても、高効率の発電を維持することが可能である。ゆえに、容積型の膨張機は、熱の需要の変動が大きく、熱媒体の供給熱量の変動が大きい場合に最適である。また、容積型の膨張機は、ターボ型の膨張機に比べて、小出力のシステムに向いている。例えば、300W〜5kW程度の出力範囲では、容積型の膨張機は高効率であり、筐体も小型化できる。そのため、容積型の膨張機を用いたシステムは、家庭、学校、店舗などの熱需要及び電気需要の小さい場所に向いている。
本開示の第6態様は、第1〜第5態様のいずれか1つに加え、前記熱回路は、暖房回路及び給湯回路から選ばれる少なくとも1つを含む、熱電併給システムを提供する。熱媒体の熱を有効利用することによって、熱利用効率が向上し、優れた総合効率の熱電併給システムを提供できる。
本開示の第7態様は、第1〜第6態様のいずれか1つに加え、前記熱媒体の前記温度T1は、冬期に、前記熱媒体が前記凝縮器の出口でとりうる温度のうち最高の温度である、熱電併給システムを提供する。熱媒体を暖房及び/又は給湯に使用する場合、冬期において最も高い温度の熱媒体が必要とされる。当業者に知られているように、ランキンサイクルの低圧側圧力は、作動流体の冷却に使用される熱媒体の温度に依存する。つまり、熱媒体の温度が高温のとき、ランキンサイクルの低圧側圧力も高い。従って、冬期を基準にして膨張機の膨張体積比を設定することにより、その他の季節に熱媒体の温度が低下したとしても、膨張機で作動流体は過膨張を起こさない。年間を通じて、熱媒体の温度の変動範囲の全てにおいて、過膨張を防止できる。
本開示の第8態様は、第1〜第7態様のいずれか1つに加え、前記作動流体は有機作動流体である、熱電併給システムを提供する。通常、有機作動流体の沸点は低い。そのため、有機作動流体を使用すれば、熱源の温度が約300℃未満の場合においても高効率で発電することができる。
本開示の第9態様は、第1〜第8態様のいずれか1つに加え、前記熱電併給システムの運転時において、前記膨張機の吐出口で前記作動流体は気相状態にある、熱電併給システムを提供する。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
図1に示すように、本実施形態の熱電併給システム100(以下、CHPシステムと称する)は、熱源2、ランキンサイクル装置10、熱回路30及び制御装置40を備えている。CHPシステム100は、熱源2の熱エネルギーを使用して、温水及び電力を同時に得ることができるように構成されている。「同時に」とは、温水を供給しながら電力も供給できるという意味である。
熱源2は、ランキンサイクル装置10の作動流体を加熱するために使用される。熱源2の種類は特に限定されない。例えば、排熱、地熱などの熱を水、オイルなどの流体で回収し、高温蒸気又は高温オイルを得る。得られた高温蒸気又は高温オイルを熱源媒体として使用できる。熱源2として、ボイラーを使用してもよい。この場合は、燃焼ガスが熱源媒体となる。
ランキンサイクル装置10は、膨張機11、凝縮器13、ポンプ14及び蒸発器15を備えている。これらのコンポーネントは、閉回路を形成するように複数の配管によって上記の順番で環状に接続されている。なお、本実施形態では、高温の温水を得るために、膨張機11の吐出口と凝縮器13の入口との間に再熱器が設けられていない。膨張機11から吐出された作動流体は、吐出温度を維持したまま凝縮器13に入る。
膨張機11は、作動流体を膨張させることによって作動流体の膨張エネルギーを回転動力に変換する。膨張機11の回転軸には、発電機12が接続されている。膨張機11によって発電機12が駆動される。膨張機11は、例えば、容積型又はターボ型の膨張機である。容積型の膨張機として、スクロール膨張機、ロータリ膨張機、スクリュー膨張機、往復膨張機などが挙げられる。ターボ型の膨張機は、いわゆる膨張タービンである。
一般に、容積型の膨張機は、ターボ型の膨張機よりも広範囲の回転数で高い膨張機効率を発揮する。例えば、高効率を維持したまま、定格回転数の半分以下の回転数で容積型の膨張機を運転することも可能である。つまり、高効率を維持したまま、発電量を定格発電量の半分以下に低下させることができる。容積型の膨張機はこのような特性を持っているので、容積型の膨張機を使用すれば熱需要の変動に伴う発電量の変動に柔軟に対応することができる。また、電力の需要の変動に対しても高効率を維持したまま発電量を増減できる。
凝縮器13は、熱回路30の中の水と膨張機11から吐出された作動流体とを熱交換させることによって、作動流体を冷却し、水を加熱する。凝縮器13として、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器などの公知の熱交換器を使用できる。凝縮器13の種類は、熱回路30の中の熱媒体の種類に応じて適切に選択される。熱回路30の中の熱媒体が水などの液体のとき、プレート式熱交換器又は二重管式熱交換器を凝縮器13に好適に使用できる。熱回路30の中の熱媒体が空気などの気体のとき、フィンチューブ熱交換器を凝縮器13に好適に使用できる。
ポンプ14は、凝縮器13から流出した作動流体を吸い込んで加圧し、加圧された作動流体を蒸発器15に供給する。ポンプ14として、一般的な容積型又はターボ型のポンプを使用できる。容積型のポンプとして、ピストンポンプ、ギヤポンプ、ベーンポンプ、ロータリポンプなどが挙げられる。ターボ型のポンプとして、遠心ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプなどが挙げられる。
蒸発器15は、熱源2で生成された熱エネルギーを吸収する熱交換器である。蒸発器15として、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器、フィンチューブ熱交換器などの公知の熱交換器を使用できる。熱源2から供給された熱源媒体(例えば高温蒸気)とランキンサイクル装置10の作動流体とが蒸発器15において熱交換する。これにより、ランキンサイクル装置10の作動流体が加熱され、蒸発する。
ランキンサイクル装置10の作動流体として、有機作動流体を好適に使用できる。通常、有機作動流体の沸点は低い。そのため、有機作動流体を使用すれば、熱源2から供給された高温流体の温度が約300℃未満の場合においても高効率で発電することができる。
有機作動流体として、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などの有機化合物を使用できる。ハロゲン化炭化水素として、R−134a、R−245fa、R−1234ze、R−356mfcなどが挙げられる。炭化水素として、プロパン、ブタン、ペンタン、イソペンタンなどのアルカンが挙げられる。これらの有機作動流体は、単独で使用してもよいし、2種類以上の混合物を使用してもよい。その他、作動流体として、水、二酸化炭素、アンモニアなどの無機作動流体を使用できる可能性もある。
熱回路30は、凝縮器13においてランキンサイクル装置10の作動流体を冷却する低温熱源としての水(熱媒体)が流れる回路である。熱回路30の中の水は、膨張機11から吐出された作動流体によって加熱される。熱回路30には、ポンプ36及びタンク31が設けられている。タンク31の内部には、凝縮器13において作動流体と熱交換することによって加熱された水が貯留されている。また、タンク31の内部には、給湯用熱交換器34及び暖房用熱交換器35が配置されている。給湯用熱交換器34は給湯回路32に接続されており、暖房用熱交換器35は室内放熱器36を有する暖房回路33に接続されている。給湯用熱交換器34で生成された温水は、給湯回路32を通じて、シャワー、蛇口などの他の設備に供給される。暖房用熱交換器35で生成された温水は、暖房回路32を通じて、室内放熱器36に供給される。室内放熱器36で冷却された温水は、暖房回路32を通じて、暖房用熱交換器35に戻される。
本実施形態において、熱回路30を流れる熱媒体は水である。ただし、熱回路30で加熱されるべき熱媒体は水に限定されない。熱回路30は、ブライン、空気などの他の熱媒体を加熱して利用するように構成されていてもよい。また、タンク31を省略し、凝縮器13に給湯回路32が熱回路として直接接続されていてもよい。この場合、給湯回路32で生成された温水は、シャワー、蛇口、貯湯タンクなどの他の設備に供給されうる。また、タンク31を省略し、凝縮器13に暖房回路33が熱回路として直接接続されていてもよい。この場合、暖房回路33で生成された温水は、室内放熱器36などの他の設備に供給されうる。このように、熱回路30は、低温の温水を再加熱する目的で使用されてもよいし、市水を加熱する目的で使用されてもよい。
本実施形態のように、熱回路30を通じて加熱されるべき熱媒体が水などの液体のとき、熱回路30は複数の配管にて形成されうる。これに対し、熱回路30を通じて加熱されるべき熱媒体が空気などの気体のとき、熱回路30は気体を流すための風路又はダクトにて形成されうる。凝縮器13で作られた温風が直接室内に供給され、室内の暖房に使用されてもよい。
熱回路30は、さらに、温度センサ37及び38を備えている。温度センサ37は、凝縮器13の出口における温水(熱媒体)の温度を検出する。つまり、温度センサ37は、凝縮器13において作動流体によって加熱された温水の温度を検出する。温度センサ38は、タンク31の内部における温水の温度を検出する。
また、熱源2の熱を蒸発器15に供給するための流路(熱源流路)には、温度センサ4が設けられている。温度センサ4は、蒸発器15の入口における熱源媒体の温度を検出する。つまり、温度センサ4は、蒸発器15において作動流体によって冷却される直前の熱源媒体の温度を検出する。
ランキンサイクル装置10は、膨張機11の吸入口における作動流体の温度を検出するための温度センサ16を備えている。つまり、温度センサ16は、蒸発器15において加熱された後であって、膨張機11において膨張する前の作動流体の温度を検出する。なお、ランキンサイクル装置10は、作動流体の状態(温度又は圧力)を検出するための少なくとも1つの他のセンサを有していてもよい。例えば、膨張機11において膨張した後であって、凝縮器13において冷却される前の作動流体の温度を検出する温度センサが膨張機11の吐出口に設けられていてもよい。
制御装置40は、熱源2、ポンプ14、発電機12、ポンプ36などの制御対象を制御する。制御装置40には、温度センサ4、温度センサ16、温度センサ37及び温度センサ38から検出信号が入力される。制御装置40として、A/D変換回路、入出力回路、演算回路、記憶装置などを含むDSP(Digital Signal Processor)を使用できる。制御装置40には、CHPシステム100を適切に運転するためのプログラムが格納されている。本実施形態において、制御装置40はCHPシステム100の全体を制御するために使用される。しかし、ランキンサイクル装置10を制御するための制御装置と、それ以外の制御対象を制御するための制御装置とが分かれていてもよい。
CHPシステム100は、例えば、以下の手順で運転される。
まず、熱回路30のポンプ36を動かして熱回路30で水を循環させる。適切なタイミングでポンプ14を動かしてランキンサイクル装置10の運転を開始させる。作動流体の循環量が所定の循環量に達したら熱源2から蒸発器15に高温流体(熱源媒体)を供給する。ランキンサイクル装置10の作動流体は、蒸発器15において高温流体から熱を受け取り、過熱状態の気相の作動流体へと変化する。高温かつ気相の作動流体は膨張機11へと送られる。膨張機11において、作動流体の圧力エネルギーが機械エネルギーに変換され、発電機12が駆動される。これにより、発電機12において電力が生成される。膨張機11から吐出された作動流体は、凝縮器13に流入する。凝縮器13において、作動流体は、熱回路30を循環する水によって冷却され、凝縮する。熱回路30の中の水は作動流体によって加熱される。熱回路30で温水が生成され、生成された温水はタンク31へと供給され、貯留される。凝縮した作動流体はポンプ14によって加圧され、再び蒸発器15に送られる。
熱回路30のタンク31に貯留された温水は、給湯用熱交換器34の働きによって、給湯回路32を流れる市水と熱交換する。加熱された市水は、シャワーなどの給湯に用いられる。また、タンク31に貯留された温水は、暖房用熱交換器35の働きによって、暖房回路33を流れるブラインと熱交換する。加熱されたブラインは、放熱器36に供給されて室内の暖房に用いられる。
次に、膨張機11について詳細に説明する。
図2に示すように、本実施形態において、膨張機11は、固定スクロール51、旋回スクロール52、軸受ブロック53及び主軸受50を備えたスクロール膨張機である。主軸受50は、嵌め合いなどの締結方法によって軸受ブロック53に固定され、シャフト54の主軸部54aを軸支している。固定スクロール51は、ボルト(図示せず)などの締結具によって軸受ブロック53に固定されている。旋回スクロール52は、軸受ブロック53と固定スクロール51との間に挟み込まれ、偏心軸受55を介してシャフト54の偏心軸部54bに嵌め合されている。旋回スクロール52と軸受ブロック53との間には、オルダムリングなどの自転規制機構56が設けられている。自転規制機構56は、旋回スクロール52の自転を防止し、円軌道運動をするように旋回スクロール52を案内するためのものである。固定スクロール51及び旋回スクロール52は、それぞれ、渦巻状のラップ51a及び52aを備えている。ラップ51a及び52aは、互いに噛み合わされている。これにより、旋回スクロール52と固定スクロール51との間に作動室57(膨張室)が形成される。
作動流体は、固定スクロール51の中心部に設けられた吸入管58から作動室57へ吸入される。シャフト54の偏心軸部54bの回転によって旋回スクロール52が偏心運動する。これにより、作動室57は、その容積を拡大させながら中心側から外周側に移動する。作動室57に吸入された作動流体は、作動室57の容積変化に伴って膨張する。膨張後の作動流体は、作動室57に向かって開口するように固定スクロール51の外周部に設けられた吐出管59を通じて作動室57の外部へと吐出される。
膨張機11が容積型の膨張機であるとき、膨張機11の膨張容積比は、吐出行程の開始時点での作動室57の容積に対する吸入行程の終了時点での作動室57の容積の比率である。吐出行程は、膨張した作動流体を作動室57から吐出させるための行程である。吸入行程は、膨張させるべき作動流体を作動室57に吸入させるための行程である。吐出行程の開始時点の作動室57の容積をVo、吸入行程の終了時点の作動室57の容積をVs、膨張機11の膨張容積比をReとすると、膨張容積比Reは、以下の式(1)で表される。
Re=Vo/Vs ・・・(1)
膨張機11の膨張容積比Reは、例えば、CHPシステム100が冬期条件で運転されているときに作動流体が最適膨張となり、CHPシステム100が冬期条件以外の条件(例えば、中間期条件)で運転されているときに作動流体が不足膨張となるように調整されている。言い換えると、膨張機11の膨張容積比Reは、CHPシステム100の通常の運転条件で作動流体が過膨張を起こさないように調整されている。このような構成によれば、CHPシステム100の効率を向上させることができる。詳細には、CHPシステム100は、年間平均で最も高い発電効率を達成できる。
なお、「CHPシステム100の通常の運転条件」とは、CHPシステム100が安定して電力及び熱(温水)を供給できる条件を意味する。起動運転が実行されている期間、停止運転が実行されている期間などの過渡期における運転は、「通常の運転条件」から除外されうる。
本明細書において、「不足膨張」とは、理論的なランキンサイクルの高低圧差と膨張機11の入口における作動流体の温度とから算出される膨張比よりも、膨張機11の膨張容積比Reが小さいことを意味する。「最適膨張」とは、理論的なランキンサイクルの高低圧差と膨張機11の入口における作動流体の温度とから算出される膨張比に、膨張機11の膨張容積比Reが概ね一致することを意味する。「過膨張」とは、理論的なランキンサイクルの高低圧差と膨張機11の入口における作動流体の温度とから算出される膨張比よりも、膨張機11の膨張容積比Reが大きいことを意味する。「膨張容積比」の語句は、容積型の膨張機の膨張比を表す語句として使用し、「膨張体積比」の語句は、形式を限定しない膨張機の膨張比を表す語句として使用する。
本実施形態では、膨張機11の膨張容積比Reは、特定の膨張比Retに等しい値又はそれよりも小さい値に設定されている。「特定の膨張比Ret」は、凝縮器13の出口における熱媒体の温度と、蒸発器15の入口における熱源媒体の温度とから決定される理論的なランキンサイクルにおける膨張比である。以下、特定の膨張比Retの導出方法を詳細に説明する。
まず、凝縮器13において熱媒体を所定の変動範囲における上限まで加熱するときの凝縮器13の出口における熱媒体の温度を温度Tl(上限温度)と定義する。そして、温度Tlでの作動流体の飽和蒸気圧Pdから決定される膨張機11の吐出口における作動流体の温度及び圧力の状態を吐出状態と定義する。本実施形態において、温度Tlは、冬期において発生し、熱媒体が凝縮器13の出口でとりうる温度のうち最高の温度であり、温度センサ37によって検出される温度である。
本実施形態において、熱回路30は、給湯回路32及び暖房回路33から選ばれる少なくとも1つを含む。熱媒体は、水又はブラインである。中間期には大きい熱出力は必要とされないので、例えば、30℃の温水をタンク31から凝縮器13に供給し、凝縮器13で温水を50℃まで加熱する。冬期には大きい熱出力が必要とされるので、例えば、60℃の温水をタンク31から凝縮器13に供給し、凝縮器13で温水を80℃まで加熱する。この場合、凝縮器13の出口における温水の温度の変動範囲は、50〜80℃であり、上限の温度Tlは、80℃である。ただし、上限の温度Tlは、80〜90℃の範囲にあってもよい。凝縮器13の出口における温水の温度の上限は、CHPシステム100の安全上、予め定められている。凝縮器13の出口における温水の温度は制御装置40によって監視されている。制御装置40は、凝縮器13の出口における温水の温度が目標の温度に近づくように、また、上限を超えないように、CHPシステム100の制御を行う。
図3に示すp−h線図において、先に説明した吐出状態は、点Aの状態である。本実施形態では、気相状態の作動流体が膨張機11に供給され、気相状態の作動流体が膨張機11から吐出される。つまり、作動流体は、膨張行程の始めから終わりまで気相状態に維持される。従って、点Aにおいて、作動流体は、気相状態にあり過熱状態にある。点Aにおける作動流体の温度は、凝縮器13の出口における温水の温度Tlに依存し、例えば、凝縮器13の出口における温水の温度Tl(=80℃)よりも約5℃高い。点Aにおける作動流体の圧力Pdは、凝縮器13の出口における温水の温度Tlでの作動流体の飽和蒸気圧にほぼ等しい。つまり、ランキンサイクルの低圧側圧力は、熱回路30を流れる温水の温度に支配される。
圧力Pdは、凝縮器の作動流体温度を直接計測し、飽和蒸気圧を換算しても良い。また、膨張機出口圧力を直接計測することでより正確になる。
なお、図1に示すCHPシステム100において、膨張機11の吐出口と凝縮器13の入口との間に再熱器が設けられていてもよい。再熱器が設けられている場合、膨張機11から吐出された低圧の作動流体は、再熱器において、ポンプ14から吐出された高圧の作動流体と熱交換し、冷却される。従って、膨張機11から吐出された作動流体と再熱器から流出した作動流体との間には、温度差がある。この温度差は、再熱器の能力に依存する。従って、再熱器が設けられていたとしても、再熱器の能力を考慮に入れて、凝縮器13の出口における熱媒体の温度から膨張機11の吐出口における作動流体の温度を推定することは可能である。また、膨張機11の吐出口における作動流体の温度を温度センサで検出し、検出された温度と、凝縮器13での作動流体の飽和蒸気圧とから、点Aを決定することも可能である。
次に、蒸発器15の入口における熱源媒体の温度Thから決定される、膨張機11の吸入口における作動流体の温度及び圧力の状態を吸入状態と定義する。吸入状態は図3の点Bの状態である。つまり、図3の点A〜Dは、吸入状態及び吐出状態から決定される理論的なランキンサイクルを示している。蒸発器15の入口における熱源媒体の温度Thは、CHPシステム100の熱源2として、どのような熱源を使用するかに依存する。蒸発器15の入口における熱源媒体の温度Thは、ランキンサイクル装置10の運転条件に依存せず、季節条件などの影響も受けにくい。蒸発器15の入口における熱源媒体の温度Thが決まると、膨張機11の吸入口における作動流体の温度Tkもほぼ一義的に決まる。つまり、膨張機11の吸入口における作動流体の温度Tkは、蒸発器15の入口における熱源媒体の温度Thよりもやや低い温度(例えば約5℃低い温度)でありうる。温度Thと温度Tkとの間の差は比較的小さいので、蒸発器15の入口における熱源媒体の温度Thを膨張機11の吸入口における作動流体の温度Tkとして使用してもよい。
作動流体として有機作動流体を使用する場合には、有機作動流体の分解を防ぐために、有機作動流体の上限温度は、有機作動流体の分解温度よりも十分に低い温度に設定される。例えば、有機作動流体の上限温度は、有機作動流体の分解温度よりも50℃程度低い温度に設定される。一方、発電効率を高めるためには、なるべく高い温度及び圧力の作動流体を膨張機11に供給することが重要である。これらを考慮に入れると、蒸発器15の入口における熱源媒体の温度、作動流体の種類(分解温度)から、膨張機11の吸入口における作動流体の温度Tkを決定することが可能である。
有機作動流体の分解温度は、例えば、150〜350℃の範囲にある。一例において、作動流体がHFC−365mfcであるとき、作動流体の分解温度(耐熱温度)は250℃であり、膨張機11の入口における作動流体の温度は180℃、膨張機11の出口における作動流体の温度は140℃、再熱器(図示省略)の出口における作動流体の温度は90℃、凝縮器13の入口における作動流体の温度は85℃であり、凝縮器13の出口における熱媒体(温水)の温度は80℃である。
なお、熱源2がボイラーであってもよく、蒸発器15に供給される熱源媒体が燃焼ガスであってもよい。この場合、燃焼ガスの温度から膨張機11の吸入口における作動流体の温度Tkを推定することは容易でない。従って、膨張機11の吸入口における作動流体の温度Tkを温度センサで検出してもよい。また、ランキンサイクル装置10に使用された有機作動流体の分解温度を点Bにおける温度Tkとして使用することも考えられる。点Bにおける温度Tkとして、蒸発器15の入口における熱源媒体の温度Thから推定される温度、及び、有機作動流体の分解を防止できる温度から選ばれる低い方の温度を使用することができる。なお、「有機作動流体の分解を防止できる温度」は、分解温度から所定温度を引いた温度でありうる。「所定温度」は、例えば、20〜100℃である。
図3のp−h線図において、理論的なランキンサイクルの膨張行程は、点Bから点Aへの変化で表される。点Bから点Aへの変化は、理論上、等エントロピー線に沿って行われる。従って、点Aの温度(Tl+過熱度α)、点Aの圧力Pd、及び点Bの温度Tkが決まると、点Bの圧力Psも決まる。このようにして、吐出状態(点Aの状態)及び吸入状態(点Bの状態)を求めることができる。点Bの圧力Psは、ランキンサイクル装置10において作動流体がとりうる圧力のうち、最も高い圧力であってもよい。
なお、高圧側の圧力Ps(飽和蒸気圧)は、蒸発器15の入口における熱源媒体の温度Thから決定することもできる。具体的に、蒸発器15を流れる作動流体は、蒸発器15の内部で気液2相状態となる。そのため、高圧側の圧力Psは、蒸発器15の入口における熱源媒体の温度Thから決定される温度に対応した飽和蒸気圧に一致する。熱源媒体の温度Thから決定される蒸発器15の内部における作動流体の温度は、蒸発器15の熱交換効率、蒸発器15における作動流体の流路の構成、及び蒸発器15における熱源媒体の流路の構成に依存し、例えば、蒸発器15の入口における熱源媒体の温度Thよりも所定温度(例えば、5〜10℃)低い値となる。つまり、ランキンサイクルの高圧側の圧力Psは、蒸発器15の入口における熱源媒体の温度Thに支配される。
そして、吸入状態(点B)における作動流体の比容積をVss、吐出状態(点A)における作動流体の比容積をVosとすると、理論的なランキンサイクルにおける膨張比Retは、(Vos/Vss)で表される。この理論上の膨張比Retは、膨張機11で作動流体が過膨張を起こさない膨張比を表している。つまり、膨張機11の実際の膨張容積比Re(=Vo/Vs)が、理論上の膨張比Retに等しいか、それよりも小さいとき、膨張機11で過膨張を生じさせることなく、CHPシステム100を運転することができる。膨張機11の実際の膨張容積比Reは、2以上であることが望ましい。これにより、年間を通じて、高い発電効率を達成できる。
次に、図4A〜図4Cを参照して膨張機における作動流体の最適膨張、不足膨張及び過膨張について説明する。図4Aは、膨張機において作動流体が最適膨張となる場合の圧力−容積線図である。図4Bは、膨張機において作動流体が不足膨張となる場合の圧力−容積線図である。図4Cは、膨張機において作動流体が過膨張となる場合の圧力−容積線図である。
図4Aに示すように、作動流体は、膨張機の作動室に圧力Psで吸入される。吸入完了後、作動室の容積の増加とともに、なだらかに作動流体の圧力が降下する。作動室の容積が最大容積Viとなると圧力降下は終了する。吐出開始とともに、作動室の容積が減少する。最適膨張の場合、作動室の容積が最大容積Viとなる点での作動流体の圧力Pdは、吐出圧力Pd(サイクルの低圧側圧力)に等しい。
図4Bに示すように、作動流体は、膨張機の作動室に圧力Psで吸入される。吸入完了後、作動室の容積の増加とともに、なだらかに作動流体の圧力が降下する。吐出開始とともに、作動流体の圧力は、吐出圧力Pdまで急激に低下する。不足膨張の場合、作動室の容積が最大容積Vfとなる点での作動流体の圧力Pfは、吐出圧力Pdよりも高い。
図4Cに示すように、作動流体は、膨張機の作動室に圧力Psで吸入される。吸入完了後、作動室の容積の増加とともに、なだらかに作動流体の圧力が降下する。作動室の容積が最大容積Vkとなると圧力降下は終了する。吐出開始とともに、作動室の容積が減少する。過膨張の場合、作動室の容積が最大容積Vkとなる点での作動流体の圧力Pkは、吐出圧力Pdよりも低い。
膨張機において得られる膨張仕事は、発電機に伝達される。膨張仕事の量は、発電機において発電される電力量に相当する。図4A〜図4Cに示すように、膨張機において得られる膨張仕事の量は、最適膨張では領域Wiの面積に相当し、不足膨張では領域Wfの面積に相当し、過膨張では領域Wkの面積から過膨張損失の領域Wkiの面積を引いた面積に相当する。各領域の面積は、(領域Wiの面積)>(領域Wfの面積)>(領域Wkの面積−領域Wkiの面積)の関係を満足する。つまり、過膨張での発電効率が最も小さい。膨張機が同一回転数ならば、過膨張のときの発電量が最も少ない。
本実施形態において、膨張機11の膨張容積比Reは、比容積Vssに対する比容積Vosの比(Vos/Vss)に等しいか、それよりも小さい。そのため、膨張機11の作動室57の圧力(作動室57における作動流体の圧力)は、吐出圧力(サイクルの低圧側圧力)を下回ることはなく、膨張機11で過膨張は発生しない。故に、本実施形態によれば、過膨張損失の発生を防ぎ、膨張機11の信頼性を向上させることができる。
次に、本実施形態のシステムと同じ構成を有するCHPシステムにおいて、熱回路で得られた温水を主に暖房に利用する場合に、特定の膨張容積比を持つ膨張機によって得られる発電量をシミュレーションした。結果を図5に示す。
図5において、「高温最適膨張比」のデータは、凝縮器の出口における温水の温度が相対的に高い温度のときに膨張機において作動流体が最適膨張となるように、膨張機の膨張容積比を設定したときのデータである。つまり、「高温最適膨張比」のデータは、冬期に最適膨張となるように膨張機の膨張容積比を設定したときのデータである。一方、「低温最適膨張比」は、凝縮器の出口における温水の温度が相対的に低い温度のときに膨張機において作動流体が最適膨張となるように、膨張機の膨張容積比を設定したときのデータである。つまり、「低温最適膨張比」のデータは、中間期に最適膨張となるように膨張機の膨張容積比を設定したときのデータである。中間期に最適膨張となるように膨張機の膨張容積比を設定したとき、冬期には過膨張となる。最適膨張のときの発電量を100%とし、冬期、中間期及び年間平均の発電量の割合を算出した。
図5に示すように、膨張機の膨張容積比を低温最適膨張比に設定した場合、膨張機の膨張容積比を高温最適膨張比に設定した場合と比較して、供給温水が高温になる条件(図5では冬期)において、発電量は大幅に低下した。膨張機の膨張容積比を高温最適膨張比に設定した場合、膨張機の膨張容積比を低温最適膨張比に設定した場合と比較して、春期又は秋期のように供給温水が低温になる条件(図5において中間期)において、発電量は低下した。ただし、その低下の幅は、冬期における低温最適膨張比よりも小さかった。年間の平均値を比較すると、高温最適膨張比のときの発電量は、低温最適膨張比のときの発電量を大幅に上回った。
図5のシミュレーション結果から理解できるように、本実施形態のCHPシステム100によれば、膨張機11の膨張容積比が適切に調整されているため、年間平均で高い発電効率を達成することができる。本実施形態の技術によれば、膨張機の複雑化、コストの上昇及び信頼性の低下を防ぎつつ、熱の需要及び要求温度の変動に適応するようにCHPシステム100を構築できるとともに、発電量を最大化させることができる。つまり、本実施形態の技術によれば、CHPシステム100の効率を向上させることができる。
なお、過膨張を確実に防止するために、常に不足膨張となるように膨張機11の膨張容積比を調整することができる。この場合、冬期にも作動流体が不足膨張となるので、効率は下がる。ただし、膨張機11の吐出口における作動流体の温度は、不足膨張のときに最適膨張のときよりも高い。そのため、凝縮器13の入口における作動流体の温度も高温になる。その結果、より高い温度の熱媒体を容易に得ることができる。
本明細書に開示された技術は、熱の需要及び必要とされる熱の温度の変動が大きく、小型化が要求されるCHPシステムに好適に採用できる。そのようなCHPシステムは、小規模施設、一般家庭などに適している。
2 熱源
4,16,37,38 温度センサ
10 ランキンサイクル装置
11 膨張機
13 凝縮器
14 ポンプ
15 蒸発器
30 熱回路
40 制御装置
100 CHPシステム

Claims (5)

  1. 作動流体と熱源媒体とを熱交換させることによって前記作動流体を加熱する蒸発器、前記作動流体の膨張動力を回転動力に変換する膨張機、及び、前記作動流体と熱媒体とを熱交換させることによって前記作動流体を冷却する凝縮器を有するランキンサイクル装置と、
    前記凝縮器で加熱された前記熱媒体を利用するための熱回路と、
    を備え、
    前記凝縮器の出口における前記熱媒体の温度Tlと前記温度Tlでの前記作動流体の飽和蒸気圧Pdとから決定される、前記膨張機の吐出口における前記作動流体の温度及び圧力の状態を吐出状態と定義し、前記蒸発器の入口における前記熱源媒体の温度Thから決定される、前記膨張機の吸入口における前記作動流体の温度及び圧力の状態を吸入状態と定義したとき、
    前記膨張機の膨張体積比は、前記吸入状態及び前記吐出状態から決定される理論的なランキンサイクルにおける膨張比に等しいか、それよりも小さく、
    前記熱媒体は水又はブラインであり、
    前記熱回路は、暖房回路及び給湯回路から選ばれる少なくとも1つを含み、
    前記熱媒体の前記温度Tlは、冬期に、前記熱媒体が前記凝縮器の出口でとりうる温度のうち最高の温度である、熱電併給システム。
  2. 前記熱媒体の温度Tlは、前記熱媒体を所定の変動範囲における上限まで前記凝縮器で加熱するときの前記凝縮器の出口における前記熱媒体の温度である、請求項1に記載の熱電併給システム。
  3. 前記膨張機は容積型の膨張機である、請求項1又は2に記載の熱電併給システム。
  4. 前記作動流体は有機作動流体である、請求項1〜のいずれか1項に記載の熱電併給システム。
  5. 前記熱電併給システムの運転時において、前記膨張機の吐出口で前記作動流体は気相状態にある、請求項1〜のいずれか1項に記載の熱電併給システム。


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