JP6531455B2 - ベタキサンチンの製造方法 - Google Patents

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本発明は、ベタレイン色素の一群であるベタキサンチンの製造方法に関する。
ベタレイン色素とは、天然では、ナデシコ目の植物およびある種の高等菌類にのみ含まれ、その化学構造中に窒素を含有することを特徴とする水溶性の色素である。ベタレイン色素は、構造上の特徴からベタキサンチンとベタシアニン類に分類されている。ベタキサンチンは黄色に発色し、ベタシアニン類は赤紫に発色するため従来から天然着色料として利用されている。
近年、ベタレイン色素が強力な抗酸化作用を有することが見出され、抗酸化剤としての活用も検討されている。さらに、ベタレイン色素が太陽エネルギーを効率よく吸収する性質を有することも見出され、色素増感型太陽電池の増感色素等への利用も期待されている。このベタレイン色素の製造方法としては、植物から抽出し、精製する方法が一般的であるが、ベタレイン色素を含む植物は、マツバギク、ビート、サボテンなどのナデシコ目(ツルナ科、ヒユ科、スベリヒユ科、ツルムラサキ科、サボテン科、アカザ科、オシロイバナ科など)に限られている。そのため、高価であり、また、安定して供給することも難しい。
近年、新たなベタレイン色素の製造方法として、各種キノコが含まれる担子菌類等の菌類由来のチロシナーゼ遺伝子およびオシロイバナ由来のL−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA) 4,5−ジオキシゲナーゼ遺伝子を、植物プロモーターの制御
下で導入した形質転換植物細胞を用いたベタキサンチンの製造方法が報告されている(特許文献1)。
また、チロシナーゼをコードする遺伝子としては、植物や微生物由来のものが数多く知られており(非特許文献1)、DOPA 4,5−ジオキシゲナーゼをコードする遺伝子
としては、オシロイバナやテンサイ由来のものが知られている(非特許文献2、3)。
特開2012−55208号公報
Michael Fairhead et al, New Biotechnology, Volume 29, Issue 2, 15 January 2012, p.183-191 Sasaki N. et al, Plant Cell Physiol. 50(5):1012-1026 (2009) Fernando Gandia-Herrero et al, Planta(2012) 236:91-100
現在、一般的に用いられている植物からベタレイン色素を抽出する製造方法では、上述のとおり、ごく限られた植物から抽出する必要があること、それらの植物においても含有量が極めて少ないこと等により、安定して持続的に供給することが難しく、かつ製造コストが高いものとなっている。また、特許文献1に記載の植物細胞を用いた方法では、植物細胞の細胞増殖速度が極めて遅いため、生産効率が低く、工業化は難しいものと考えられる。
また、チロシナーゼをコードする遺伝子(非特許文献1)や、DOPA 4,5−ジオ
キシゲナーゼをコードする遺伝子(非特許文献2、3)をそれぞれ単独で大腸菌や酵母などの微生物へ導入し、それぞれの酵素活性を個別に確認した例が知られている。しかし、これら2種類の遺伝子を同時に微生物へ導入した例は知られておらず、これら2種類の遺伝子を導入した微生物を用いてグルコースなどの基質からベタレイン色素の一群であるベタキサンチンが一貫生産されることを確認した例もこれまで知られていない。
本発明は、安定して供給することができ、かつ、工業化可能なベタキサンチンの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ベタキサンチンの生合成に必須である、チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性、およびDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有する微生物の作製に成功し、当該微生物を用い、効率よくベタキサンチンを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、以下の(1)〜(8)に存する。
(1)チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性、およびDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有する微生物またはその処理物の存在下、水性媒体中で原料をベタキサンチンへと変換する工程(変換工程)を有することを特徴とする、ベタキサンチンを製造する方法。
(2)前記変換工程の前に、チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性、およびDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有する微生物を水性媒体中で培養する工程
(培養工程)を有することを特徴とする(1)に記載のベタキサンチンを製造する方法。(3)前記変換工程の後に、前記水性媒体からベタキサンチンを回収する工程を有することを特徴とする(1)または(2)に記載のベタキサンチンを製造する方法。
(4)前記チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素がチロシナーゼであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載のベタキサンチンを製造する方法。
(5)前記変換工程において、前記微生物として休止菌体を用いることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のベタキサンチンを製造する方法。
(6)前記原料がチロシン、および/または糖質原料であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載のベタキサンチンを製造する方法。
(7)前記原料に加えて、チロシン以外のアミノ酸またはアミンを添加することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のベタキサンチンを製造する方法。
(8)前記変換工程において、前記水性媒体が、アスコルビン酸、銅および鉄からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載のベタキサンチン類を製造する方法。
本発明によれば、グルコースやアミノ酸などの安価な原料から効率良くベタレイン色素の一群であるベタキサンチンを製造することができ、さらに、安定して供給することも可能となる。
また、本発明により得られたベタキサンチンは、色素増感型太陽電池の色素増感剤、抗酸化剤等の広範な各種用途に好適に用いることができる。
実施例1においてE.coli(BL21)/BMTYR/MjDODを用いた場合に得られたLC/MS分析結果を示す。 実施例1においてE.coli(BL21)/BTTYR/MjDODを用いた場合に得られたLC/MS分析結果を示す。 実施例1においてE.coli(BL21)/RSTYR/MjDODを用いた場合に得られたLC/MS分析結果を示す。 実施例2(L−バリン)において得られたLC/MS分析結果を示す。 実施例2(L−バリン)において反応開始後24時間までの生成量の変化を示す。 実施例9((S)−α−プロパルギルアラニン)において得られたLC/MS分析結果を示す。 実施例9((S)−α−プロパルギルアラニン)において反応開始後24時間までの生成量の変化を示す。 実施例19においてE.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/BMTYR+MjDODを用いた場合に得られたLC/MS分析結果を示す。 実施例19においてE.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/RSTYR+MjDODを用いた場合に得られたLC/MS分析結果を示す。 実施例20においてYPH500/BMTYR/MjDODを用いた場合に得られたLC/MS分析結果を示す。 実施例20においてYPH500/RSTYR/MjDODを用いた場合に得られたLC/MS分析結果を示す。 本発明の微生物が有する代謝経路の一例を示す。
本発明は、ベタレイン色素の一群であるベタキサンチンを製造する方法に関するものであり、チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性、およびDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有する微生物またはその処理物の存在下、水性媒体中で原料をベタキサンチンへと変換する工程(変換工程)を有することを特徴とする。
ここで、DOPA4,5−ジオキシゲナーゼとは、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン:オキシゲン 4,5−オキシドレダクターゼのことである。
ここでベタキサンチンは、ベタラミン酸に、アミノ酸またはアミンがイミン結合した化合物群の総称であり、その構造は、以下の式(1)または式(2)として表される。
Figure 0006531455
Figure 0006531455
式(1)、(2)においてR、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜40の直鎖または分岐鎖または環状の飽和もしくは不飽和炭化水素基からなる群から選択される1種である。ただし該炭化水素基の水素原子の一部または全部は、ハロゲン原子、アシル基、アミド基、アミノ基、アルコキシ基、アルデヒド基、イミダゾール基、インドール基、オキソ基、カルボキシル基、グアニジノ基、シアノ基、スルホ基、チオール基、ニトロ基、ヒドロキシル基およびフェニル基からなる群から選択される少なくとも一種で置換されていてもよく、該炭化水素基は、イミニウムの窒素を含有する形で環を形成していてもよい。さらに該イミダゾール基、該インドール基および該フェニル基の芳香環の一部または全部は、上記と同様の置換基群から選択される少なくとも一種にて置換されていてもよい。また、該炭化水素基の炭素原子の一部は、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、リン原子から選択される少なくとも一種で置換されていてもよい。
例えば、Rが水素原子、Rが炭素数3の直鎖炭化水素基であり、イミニウムの窒素を含有する形で環を形成する化合物は、プロリン−ベタキサンチンである。また、Rが水素原子、Rが炭素数3の直鎖炭化水素基であり、該炭化水素基の末端の水素原子の一つがグアニジノ基で置換された化合物は、アルギニン−ベタキサンチンである。Rが水素原子、Rが炭素数1の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一つがイミダゾール基で置換された化合物は、ヒスチジン−ベタキサンチンである。Rが水素原子、Rが炭素数4の直鎖炭化水素基であり、該炭化水素基の末端から2番目の炭素原子が硫黄原子に置換された化合物は、メチオニン−ベタキサンチンである。Rが水素原子、Rが炭素数1の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一つがインドール基で置換された化合物は、トリプトファン−ベタキサンチンである。Rが水素原子、Rが炭素数1の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一つがフェニル基で置換され、さらに該フェニル基のパラ位の水素原子がヒドロキシル基で置換された化合物は、チロシン−ベタキサンチンである。
[本発明で用いる微生物またはその処理物]
本発明で用いる微生物(以下、「本発明の微生物」と称することがある。)は、チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性、およびDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有する。
本発明の微生物は、チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性、およびDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有するものあれば特に制限はなく、本来的にこれらの酵素活性を有する微生物であってもよいし、育種によりこれらの酵素活性を付与したものであってもよい。育種によりこれらの酵素活性を付与する手段としては、変異処理や遺伝子組換え処理などが挙げられ、有機化合物の生合成経路における酵素遺伝子の発現強化や副生物生合成経路における酵素遺伝子の発現低減など、公知の方法を採用することができる。
本発明の製造方法は、例えば、図12に示す代謝経路を有する微生物を用いることでベタキサンチンを製造することができる。図12においてSpと表記されている化学反応は酵素が不要な自発反応である。よって、少なくともチロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性、およびDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有する微生物を用いれば、図12に示す経路でベタキサンチンを製造することができる。ここで、Spと表記されている反応は酵素反応ではないことから、必ずしも微生物の代謝において行われる必要はない。例えば、微生物により生産させたベタラミン酸を菌体外へと取り出し、適切な溶媒中で試薬のアミノ酸やアミンと混合させることでベタキサンチンを製造することが可能である。
本発明における微生物は、生きている微生物に限らず、生体としては死んでいるが酵素活性を有するものも含む。
また、本発明における微生物の処理物としては、アセトン、トルエン等で処理した菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体を破砕した無細胞抽出物、精製酵素(部分的に精製した酵素を含む。)等が挙げられる。また、これらの微生物の処理物を、常法により担体に固定化した固定化物も処理物に含まれる。
以下、本発明で用いる微生物について説明する。
(チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性)
チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性とは、チロシンが有するフェノール環の3位に水酸基を付加することができる酵素活性である。この酵素活性を有するか否かは、発現されたタンパク質が、チロシンの3位を水酸化する活性を通常のアッセイ方法で測定することにより判定が可能である。例えば、チロシンに、測定の対象とする酵素を作用させ、チロシンから変換されたL−DOPA量を直接的に測定することで、その酵素活性を確認することができる。
チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素としては、例えば、チロシナーゼ、シトクロムP450、カテコールオキシダーゼ、チロシン 3‐モノオキシゲナーゼ、芳香環水酸化ジオキシゲナーゼ等が挙げられる。
チロシナーゼとしては、エアロモナス・メディア菌(Aeromonas media)、マッシュル
ーム(Agaricus bisporus)、アゾスピリラム菌(Azospirillum sp.)、バチルス・メガ
テリウム菌(Bacillus megaterium)、バチルス・スリンジェンシス菌(Bacillus thuringiensis)、テンサイ(Beta vulgaris)、キャベツ(Brassica oleracea)、チャノキ(Camellia sinensis)、アラビカコーヒーノキ(Coffea arabica)、アサイー(Euterpe oleracea)、ヒト(Homo sapiens)、レタス(Lactuca sativa)、マリノモラス・メディテラニア菌(Marinomonas mediterranea)、ハツカネズミ(Mus musculus)、ニューロスポラ・クラッサ菌(Neurospora crassa)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ナメコ(Pholiota nameko)、シュードモナス・プチダ F6菌(Pseudomonas putida F6)、ラルストニア・ソラナセアラム菌(Ralstonia solanacearum)、リゾビウム・エトリ菌(Rhizobium etli)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ストレプトマイセス・アンチバイオティカス(Streptomyces antibioticus)、ストレプトマイセス・カスタネオグロビスポラス菌(Streptomyces castaneoglobisporus)、ストレプトマイセス・グロセッセンス菌(Streptomyces glauescens)、ストレプトマイセス・リンコルネンシス菌(Streptomyces lincolnensis)、ストレプト
マイセス・リビダンス菌(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス属 REN−
21菌(Streptomyces sp.REN-21)、サーモミクロビウム・ロゼウム菌(Thermomicrobium roseum)、バニラ(Vanilla planifolia)、ベルコミクロビウム・スピノサム菌(Verrucomicrobium spinosum)、ソラマメ(Vicia faba)、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)等に由来する酵素が挙げられる。中でも、バチルス・メガテリウム菌、バチルス・ス
リンジェンシス菌、ラルストニア・ソラナセアラム菌に由来するものが好ましい。
シトクロムP450としては、アースロバクター属菌(Arthrobacter spp.)、アスコ
キタ属菌(Ascochyta spp.)、アスペルギルス・フラバス菌(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・ニドランス菌(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー菌(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ菌(Aspergillus oryze)、バチルス・メガテリウム菌(Bacillus megaterium)、カルダリオミセス・フマゴ菌(Caldariomyces fumago)、カンジダ・アルビカンス菌(Candida albicans)、カンジダ・マルトーサ菌(Candida maltosa)、カンジダ・トロピカリス菌(Candida tropicalis)、フザリウム属菌(Fusarium spp.)、フザリウム・オキシスポラム菌(Fusarium oxysporum)、フザリウム
・スポロトリキオイデス菌(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・バーティシリ
オイデス菌(Fusarium verticillioides)、マイクロコッカス属菌(Micrococcus spp.)、モルティエレラ・イサベリナ菌(Mortierella isabellina)、マイコバクテリウム・チューバキュロシス菌(Mycobacterium tuberculosis)、ネクトリア・ハエマトコッカ菌(Nectria haematoccoca)、ネウロスポラ・クラッサ菌(Neurospora crassa)、ノカルデ
ィア属菌(Nocardia spp.)、ファネロケーテ・クリソスポリウム菌(Phanerochaete chrisosporium)、シュードモナス・プチダ菌(Pseudomonas putida)、ストレプトマイセス属菌(Streptomyces spp.)、リゾビウム属菌(Rhizobium spp.)、サッカロミセス・セ
レビシエ菌(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ポンベ菌(Saccharomyces pombe)、ストレプトミセス・エバーミチリス菌(Streptomyces avermitilis)、スト
レプトミセス・セリカラー菌(Streptomyces coelicolor)、スルホロブス・ソルファタ
リカス菌(Sulfolobus solfataricus)、ヤロウィア・リポリティカ菌(Yarrowia lipolutica)等に由来する酵素が挙げられる。中でも、アースロバクター属菌(Arthrobacter spp.)、アスコキタ属菌(Ascochyta spp.)、フザリウム属菌(Fusarium spp.)、マイクロコッカス属菌(Micrococcus spp.)、モルティエレラ・イサベリナ(Mortierella isabellina)、ノカルディア属菌(Nocardia spp.)、ストレプトマイセス属菌(Streptomyces spp.)、リゾビウム属菌(Rhizobium spp.)、ストレプトミセス・エバーミチリス(Streptomyces avermitilis)菌に由来するものが好ましい。
カテコールオキシダーゼとしては、マッシュルーム(Agaricus bisporus)、アスペル
ギルス・オリゼ菌(Aspergillus oryze)、アスペルギルス・ニガー菌(Aspergillus niger)、ポーポー(Asimina triloba)、テンサイ(Beta vulgaris)、ウシ(Bos taurus)、チャノキ(Camellia sinensis)、ヘンリーグリ(Castanea henryi)、アラビカコーヒーノキ(Caffea arabica)、メロン(Cucumis melo)、ビワ(Eriobotrya japonica)、
ヒト(Homo sapiens)、サツマイモ(Ipomoea batatas)、フジマメ(Lablab purpureus
)、マグワ(Morus alba)、バナナ(Musa acuminata)、ニューロスポラ・クラッサ菌(Neurospora crassa)、タバコ(Nicotiana tabacum)、バジリコ(Ocimum basilicum)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、マツバボタン(Portulaca grandiflora)、アンズ(Prunus armeniaca)、ラルストニア・ソラナセアラム菌(Ralstonia solanacearum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ストレプトミセス・グラウセッセンス菌(Streptomyces glaucescens)、ストレプトマイセス・グリセウス菌(Streptomyces griseus)、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)等に由来する酵素が挙げられる。中でもアスペルギルス・オリゼ菌(Aspergillus oryze)、チャノキ(Camellia sinensis)、ラルストニア・ソラナセアラム菌(Ralstonia solanacearum)、ストレプトマイセス・グリセウス菌(Streptomyces griseus)、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)等に由来するものが好ましい。
チロシン 3‐モノオキシゲナーゼとしては、ウシ(Bos taurus)、モルモット(Cavia porcellus)、アズマニシキ(Chlamys farreri nipponensis)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ゴリラ(Gorilla gorilla)、ヒト(Homo sapiens)、
アカゲザル(Macaca mulatta)、ハツカネズミ(Mus musculus)、ウサギ(Oryctolagus cuniculus)、チンパンジー(Pan troqlodytes)、マツバボタン(Portulaca grandiflora)、ヨーロッパトノサマガエル(Rana esculenta)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)等に由来する酵素が挙げられる。中でもキ
イロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ヒト(Homo sapiens)、ドブネズ
ミ(Rattus norvegicus)に由来するものが好ましい。
芳香環水酸化ジオキシゲナーゼとしては、アルスロバクター属菌(Arthrobacter sp.)、アシネトバクター・カルコアセチカス菌(Acinetobacter calcoaceticus)、バークホ
ルデリア・セパシア菌(Barkholderia cepacia)、バークホルデリア・テラ菌(Burkholderia terrae)、コマモナス・テストステローニ菌(Comamonas testosteroni)、クロモ
ハロバクター属菌(Chromohalobacter sp.)、メソリゾビウム・ロティ菌(Mesorhizobium loti)、シュードモナス・アエルギノサ菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・フルオレッセンス菌(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・プチダ菌(Pseudomonas putida)、シュードモナス・レシノボランス菌(Pseudomonas resinovorans)
、ロドコッカス・オパカス菌(Rhodococcus opacus)、トリコスポロン・クタネウム菌(Trichosporon cutaneum)等に由来する酵素が挙げられる。中でも、シュードモナス・プ
チダ菌(Pseudomonas putida)、アシネトバクター・カルコアセチカス菌(Acinetobacter calcoaceticus)、メソリゾビウム・ロティ菌(Mesorhizobium loti)、バークホルデ
リア・セパシア菌(Barkholderia cepacia)に由来するものが好ましい。
上述した中でも、チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素としては、チロシナーゼが好ましい。
チロシナーゼの具体例としては、上述した通りであるが、中でも、以下の(A)、(B)、または(C)の塩基配列でコードされる酵素であることが特に好ましい。配列番号13はバチルス・メガテリウム菌に、配列番号14はラルストニア・ソラナセアラム菌に、配列番号15はバチルス・スリンジェンシス菌に由来する塩基配列である。
(A) 配列番号13、14、または15で表される塩基配列を有するDNA
(B)配列番号13、14、または15で表される塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失、および/または付加された塩基配列を含み、かつチロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(C)配列番号 13、14、または15で表される塩基配列の相補鎖とストリンジェ
ントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含み、かつチロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA
ここで「1または(もしくは)数個の塩基」とは、例えば、1個〜300個、好ましくは1個〜150個、より好ましくは1個〜60個、さらに好ましくは1個〜30個、特に好ましくは1個〜15個、の塩基である。以下、本明細書において同様である。
また、1もしくは数個の塩基が欠失、追加、挿入、および/または置換された塩基配列の作製は、突然変異剤を用いる方法や部位特異的変異法等の通常の変異操作によって得ることができる。これらは、例えばDiversify PCR Random Mutagenesis Kit(Clontech)やQuickChange Lightning Site−Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies)等の市販キットで容易に行うことができる。
また、上述のチロシナーゼをアミノ酸配列で規定すると、以下の(D)、(E)、または(F)のアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましく、以下の(D)、(E)、または(F)のアミノ酸配列からなるポリペプチドがより好ましい。
配列番号16はバチルス・メガテリウム菌に、配列番号17はラルストニア・ソラナセアラム菌に、配列番号18はバチルス・スリンジェンシス菌に由来するアミノ酸配列である。
(D) 配列番号16、17または18で表されるアミノ酸配列
(E) 配列番号16、17、または18で表されるアミノ酸配列において1または数
個のアミノ酸が置換、欠失、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、かつチロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列
(F)配列番号 16、17、または18で表されるアミノ酸配列の60%以上の同一
性を有するアミノ酸配列を有し、かつチロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列
ここで「1または数個のアミノ酸」とは、例えば、1個〜100個、好ましくは1個〜50個、より好ましくは1個〜20個、さらに好ましくは1個〜10個、特に好ましくは1個〜5個、のアミノ酸である。以下、本明細書において同様である。
また、前記(F)に記載の通り、チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性を保持する限り、配列番号16、17、または18に示されるアミノ酸配列全長と少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するタンパク質であってもよい。
上記に例示したように、自然界に存在する生物のゲノム情報に基づく塩基配列、またはそのホモログを用いることもできるが、各々の遺伝子は、必要に応じて宿主微生物のコドン使用頻度にあわせて塩基配列を最適化することができる。コドン最適化は、例えば、J.
Microbiol. Biotechnol. (2012), 22(3), 316-325に記載の方法や、GenScript社のOptimumGeneTMサービスを利用する方法がある。コドン最適化を行なうと、ベタキサンチンの生産性が向上するので好ましい。
即ち、大腸菌を宿主微生物とする場合は、配列番号13、14または15の塩基配列に対してコドン最適化を実施して得られた以下の(G)、(H)、または(I)の塩基配列でコードされる酵素であることがより好ましい。
(G) 配列番号1、2、または3で表される塩基配列を有するDNA
(H)配列番号1、2、または3で表される塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失、および/または付加された塩基配列を含み、かつチロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(I)配列番号1、2、または3で表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含み、かつチロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA
また、酵母を宿主微生物とする場合は、配列番号13、14の塩基配列に対してコドン最適化を実施して得られた以下の(J)、(K)、または(L)の塩基配列でコードされる酵素であることがより好ましい。
(J)配列番号21、配列番号22で表される塩基配列を有するDNA
(K)配列番号21、配列番号22で表される塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失、および/または付加された塩基配列を含み、かつチロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(L)配列番号21、配列番号22で表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含み、かつチロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
また、上述のチロシナーゼをアミノ酸配列で規定すると、前述の(D)、(E)、(F)と同様のアミノ酸配列を含むことが好ましく、(D)、(E)、または(F)のアミノ酸配列からなることがより好ましい。前記(F)のアミノ酸配列の配列同一性の好ましい範囲についても、同様に考えることができる。
なお、配列番号13、14、15に対して大腸菌発現用にコドン最適化を行なったものが、それぞれ、配列番号1、2、3であり、配列番号13、14に対して酵母発現用にコドン最適化を行ったものが、それぞれ、配列番号21、22であるが、これらは、翻訳後のアミノ酸配列としては最適化前後で同一である。つまり、配列番号1、13、21の塩基配列により規定されるアミノ酸配列は配列番号16であり、配列番号2、14、22の塩基配列により規定されるアミノ酸配列は配列番号17であり、配列番号3、15の塩基配列により規定されるアミノ酸配列は配列番号18となる。
(DOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性)
DOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性とは、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)のエクストラジオール開裂を触媒する活性を有し、該L−DOPAを4,5−seco−DOPAに変換する反応、さらに、それに続く自発的反応を経て、該L−DOPAをベタラミン酸へと変換する酵素のことである。この酵素活性を有するか否かは、測定の対象とするタンパク質が、L−DOPAのフェノール環の4位、5位の炭素間でのエクストラジオール開裂を引き起こし、その結果としてベタラミン酸を生成することができるかどうかを通常のアッセイ方法で測定することにより判定が可能である。例えば、L−DOPAに、測定の対象とする酵素を作用させ、L−DOPAから変換されたベタラミン酸の生成量を直接的に測定することで、その酵素活性を確認することができる。
DOPA4,5−ジオキシゲナーゼとしては、ベニテングダケ(Amanita muscaria)、スギモリケイトウ(Amaranthus cruentus)、ハゲイトウ(Amaranthus tricolor)、テンサイ(Beta vulgaris)、ケイトウ(Celosia argentea)、キヌア(Chenopodium quinoa
)、リビングストンデージー(Dorotheanthus bellidiformis)、オシロイバナ(Mirabilis jalapa)、ウチワサボテン(Opuntia ficus)、センニンサボテン(Opuntia stricta
)、マツバボタン(Portulaca grandiflora)、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)、レッドビート(Red beet)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)等に由来するものが好ましい。
上述した中でも、DOPA4,5−ジオキシゲナーゼとしては、以下の(M)、(N)、または(O)の塩基配列でコードされる酵素であることが好ましい。配列番号19はオシロイバナに由来する塩基配列である。
(M)配列番号19で表される塩基配列を有するDNA
(N)配列番号19で表される塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失、および/または付加された塩基配列を含み、かつDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(O)配列番号19で表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含み、かつDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA
ここで「1または数個の塩基」とは、例えば、1個〜300個、好ましくは1個〜150個、より好ましくは1個〜60個、さらに好ましくは1個〜30個、特に好ましくは1個〜15個、の塩基である。以下、本明細書において同様である。
また、1もしくは数個の塩基が欠失、追加、挿入、および/または置換された塩基配列の作製は、突然変異剤を用いる方法や部位特異的変異法等の通常の変異操作によって得ることができる。これらは、例えばDiversify PCR Random Muta
genesis Kit(Clontech)やQuickChange Lightning Site−Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies)等の市販キットで容易に行うことができる。
また、上述のDOPA4,5−ジオキシゲナーゼをアミノ酸配列で規定すると、以下の(P)、(Q)、または(R)のアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましく、以下の(P)、(Q)、または(R)のアミノ酸配列からなるポリペプチドがより好ましい。配列番号20はオシロイバナに由来するアミノ酸配列である。
(P)配列番号20で表されるアミノ酸配列
(Q)配列番号20で表されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、かつDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列
(R)配列番号 20で表されるアミノ酸配列の60%以上の同一性を有するアミノ酸
配列を有し、かつDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列
ここで「1または数個のアミノ酸」とは、例えば、1個〜100個、好ましくは1個〜50個、より好ましくは1個〜20個、さらに好ましくは1個〜10個、特に好ましくは1個〜5個のアミノ酸である。以下、本明細書において同様である。
また、前記(R)に記載の通り、DOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を保持する限り、配列番号20に示されるアミノ酸配列全長と少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するタンパク質であってもよい。
上記に例示したように、自然界に存在する生物のゲノム情報に基づく塩基配列、またはそのホモログを用いることもできるが、各々の遺伝子は、必要に応じて宿主微生物のコドン使用頻度にあわせて塩基配列を最適化することができる。
即ち、大腸菌を宿主微生物とする場合は配列番号19の塩基配列に対してコドン最適化を実施して得られた以下の(S)、(T)、または(U)の塩基配列でコードされる酵素であることがより好ましい。
(S) 配列番号10で表される塩基配列を有するDNA
(T)配列番号10で表される塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失、および/または付加された塩基配列を含み、かつDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(U)配列番号10で表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含み、かつDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA
また、酵母を宿主微生物とする場合は配列番号19の塩基配列に対してコドン最適化を実施して得られた以下の(V)、(W)、または(X)の塩基配列でコードされる酵素であることがより好ましい。
(V)配列番号27で表される塩基配列を有するDNA
(W)配列番号27で表される塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失、および/または付加された塩基配列を含み、かつDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(X)配列番号27で表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含み、かつDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA
また、上述のDOPA4,5−ジオキシゲナーゼをアミノ酸配列で規定すると、前述の(P)、(Q)、(R)と同様のアミノ酸配列を有することが好ましく、(P)、(Q)、または(R)のアミノ酸配列からなることがより好ましい。前記(R)のアミノ酸配列の配列同一性の好ましい範囲についても、同様に考えることができる。
なお、配列番号19に対して大腸菌発現用にコドン最適化を行なったものが配列番号10、酵母発現用にコドン最適化を行ったものが配列番号27であるが、両者は、翻訳後のアミノ酸配列としては最適化前後で同一であり、いずれの塩基配列でも規定されるアミノ酸配列は配列番号20となる。
(本発明で用いる微生物の作製方法)
以下、本発明で用いる微生物(本発明の微生物)の作製方法について説明する。宿主微生物とする微生物の種類は特に限定されないが、大腸菌、コリネ型細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、ラクトバチルス属細菌、サクシノバチルス属細菌、アナエロビオスピリラム属細菌、アクチノバチルス属細菌、糸状菌、酵母等が例示され、これらの中でも、大腸菌、酵母、コリネ型細菌が好ましく、大腸菌、酵母がより好ましく、大腸菌が特に好ましい。
本発明の微生物は、チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素をコードするDNA(例えば、前記の(A)、(B)、(C)、(G)、(H)、(I)、(J)、(K)、(L)等)、およびDOPA4,5−ジオキシゲナーゼをコードするDNA(例えば、前記の(M)、(N)、(O)、(S)、(T)、(U)、(V)、(W)、(X)等)を上記微生物に、プラスミドベクターや相同組換えなどを利用した形質転換法等により導入することで得ることができる。
上述のDNAを宿主となる微生物に導入する際、プラスミドベクター上に該DNAを導入しても、染色体(ゲノム)上に該DNAを導入してもよい。宿主微生物が染色体上に該酵素をコードする遺伝子を有する場合は、該遺伝子のプロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても本発明で用いる微生物を得ることもできる。宿主微生物の染色体上に該酵素遺伝子がない場合は、該酵素遺伝子を染色体上へ相同組換え法により導入したり、プラスミドベクターにより該酵素遺伝子を導入したりすることもできる。
微生物に該DNAを導入する際には、適当なプロモーターを該遺伝子の5'-側上流に組み込むことが好ましく、加えてターミネーターを3'-側下流にそれぞれ組み込むことがより好ましい。このプロモーター及びターミネーターとしては、宿主として利用する微生物において機能することが知られているプロモーター及びターミネーターであれば特に限定されず、該酵素遺伝子自身のプロモーター及びターミネーターであってもよいし、他のプロモーター及びターミネーターに置換してもよい。これら各微生物において利用可能なベクター、プロモーター及びターミネーターなどに関しては、例えば「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」などに詳細に記述されている。
なお、DNAの切断、連結、その他、染色体DNAの調製、PCR、プラスミドDNAの調製、形質転換、プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの設定等の方法は、当業者によく知られている通常の方法を採用することができる。これらの方法は、Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., ”Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)等に記載されている。
以下、微生物の種類ごとに、該酵素および/または該酵素反応系の活性が付与された微生物を得る方法について説明する。
(大腸菌)
宿主微生物として大腸菌を用いる場合、大腸菌の親株としては、例えば、K12株またはB株、加えてこれらの誘導体を用いることが好ましい。本発明で用いることのできる親株としては、HB101、DH5α、JM109、JM110、BL21(DE3)、TH2、TOP10、及びこれらの改良株が挙げられ、これらの菌株は市販されている。加えて、例えば一遺伝子破壊株であるKEIOコレクションで使用されているBW25113株なども利用可能であり、これらはナショナルバイオリソースプロジェクトより分与が可能である。
大腸菌の組換え方法としては、目的とする遺伝子または配列を含むDNA断片をプラスミドベクターに導入することにより、大腸菌内で前記酵素遺伝子の発現増強が可能な組換えプラスミドベクターを得て、このプラスミドベクターを菌体内へ導入する方法等が挙げられる。
大腸菌に目的とする遺伝子または配列を導入することができるプラスミドベクターとしては、大腸菌内での複製増殖機能を司る遺伝子を少なくとも含むものであれば特に制限されない。プラスミドベクターとしては、例えば、P15A、ColE1(pBR322、pUC)、RSF1030、pSC101、CloDF13などの複製開始点をもつものを好適に用いることができる。
また、プロモーターとしては、大腸菌において機能するものであればいかなるプロモーターであってもよく、導入される遺伝子自身のプロモーターであってもよい。例えば、trpプロモーター、trcプロモーター、PLプロモーター、T5プロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター及びλPLプロモーター等を用いることができる。
本発明で用いることができるプラスミドベクターは、例えば、pETシリーズ(ノバジェン)、Duet Vectorシリーズ(Novagen)、pDUALシリーズ(ストラタジェン)、pMALシリーズ(NEB)、pGEXシリーズ(GEヘルスケア)、pKK223(GEヘルスケア)pTrcシリーズ(ライフテクノロジーズ)、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119(タカラバイオ)等が挙がられる。
また、上記の組換え方法に代えて、あるいは、上記の組換え方法に加えて、公知の相同組換え法によって、前述した外来および内在の遺伝子の一部または全部を導入したり、置換したり、増幅したり、加えて、染色体上へ導入された当該遺伝子のプロモーターへの変異導入、より強力なプロモーターへの置換などによっても高発現株を得ることができる。
(コリネ型細菌)
宿主微生物として、コリネ型細菌(coryneform bacterium)を用いる場合、コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム属に属する細菌、ブレビバクテリウム属に属する細菌又はアースロバクター属に属する細菌等が挙げられ、これらのうち、コリネバクテリウム属又はブレビバクテリウム属に属するものが好ましく、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)又はブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)に属する
細菌がより好ましい。
本発明において用いることのできる親株としては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233(FERM BP−1497)、同MJ−233 AB−41(FERM BP−
1498)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6872、コリネバクテ
リウム・グルタミカム ATCC13032、ココリネバクテリウム・グルタミカムAT
CC31831、及びブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869等が挙げられる。
なお、ブレビバクテリウム・フラバムは、現在、コリネバクテリウム・グルタミカムに分類される場合もあることから(Lielbl, W. et al. International Journal of Systematic Bacteriology, 1991, vol. 41, p255-260)、本発明においては、ブレビバクテリウ
ム・フラバムMJ−233株、及びその変異株MJ−233 AB−41株はそれぞれ、コリネバクテリウム・グルタミカムMJ−233株及びMJ−233 AB−41株と同一の株であるものとする。また、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233は、1975年4月28日に通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERMP−3068として寄託され、1981年5月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP−1497の受託番号で寄託されている。
本発明の方法において親株として用いられる上記の微生物としては、野生株だけでなく、UV照射やNTG処理等の通常の変異処理により得られる変異株、細胞融合もしくは遺伝子組換え法などの遺伝学的手法により誘導される組換え株などのいずれの株であってもよい。
目的とする遺伝子または配列は、以下に示す方法によりコリネ型細菌に導入することができる。
コリネ型細菌に前記遺伝子をプラスミドベクターにより導入する際、利用できるプラスミドベクターの具体例は、例えば、特開平3−210184号公報に記載のプラスミドpCRY30;特開平2−72876号公報及び米国特許5,185,262号明細書公報に記載のプラスミドpCRY21、pCRY2KE、pCRY2KX、pCRY31、pCRY3KE及びpCRY3KX;特開平1−191686号公報に記載のプラスミドpCRY2およびpCRY3;特開昭58−67679号公報に記載のpAM330;特開昭58−77895号公報に記載のpHM1519;特開昭58−192900号公報に記載のpAJ655、pAJ611及びpAJ1844;特開昭57−134500号公報に記載のpCG1;特開昭58−35197号公報に記載のpCG2;特開昭57−183799号公報に記載のpCG4およびpCG11;Plasmid vol.36(1)p62-66(1996)
に記載のpC2又はその改変プラスミド等を挙げることができる。
また、上記の組換え方法に代えて、あるいは、上記の組換え方法に加えて、公知の相同組換え法によって、前述した外来遺伝子の一部または全部を導入したり、置換したり、増幅したり、加えて、染色体上へ導入された当該遺伝子のプロモーターへの変異導入、より強力なプロモーターへの置換などによっても高発現株を得ることができる。
(酵母)
宿主微生物として、酵母を用いる場合、親株として用いる酵母の種類は特に限定されないが、サッカロミセス属、デバリオマイセス属、シゾサッカロマイセス属、キャンディダ属、ヤロウィア属、ロドトルラ属、リポマイセス属、クルイベロマイセス属、ロドスポリジウム属、トリコデルマ属または、トルロプシス属、ピキア属等に属する酵母を親株として用いることが好ましい。例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、デバリオマイセス・ニ
ルソニ(Debaryomyces nilssonii)、デバリオマイセス・ハンセニ(Debaryomyces hansenii)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、キャンディダ・グラブラータ(Candida glabrata)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)、キャンディダ・ボイディニィ(Cand
ida boidinii)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ロドトルラ・グ
ルティニス(Rhodotorula glutinis)、リポマイセス・リポフェラス(Lipomyces lipoferus)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ロドスポリジウム
・トルロイディス(Rhodosporidium toruloides)、トリコデルマ・リセイ(Trichoderma
reesei)、トルロプシス・コリキュロサ(Torulopsis colliculosa)、ピキア・ファリ
ノサ(Pichia farinosa)等が挙げられる。これらの中で、代謝工学的手法が用いやすい
ことからサッカロミセス属が最も好ましい。
さらに、サッカロミセス属は、his3、leu2、trp1、ura3などの栄養要求性の遺伝型であることが望ましく、例えば、サッカロミセス・セレビジエYPH499株(MATa ura3 lys2 ade2 trp1 his3 leu2)(ATCC204679:American Type Culture Collection又はSTRATAGENE社より入手できる)、サッカロミセス・セレビジエFY1679−06c株(MATα ura3 leu2 trp1 his3)(Euroscarf社から入手できる)、サッカロミセス・セレビジエBY4741株(MATa,his3Δ1,leu2Δ0,met15Δ0,ura3Δ0)(Yeast 14:115−132(1998)、ATCC201388)なども用いることができる。
目的とする遺伝子または配列は、以下に示す方法により酵母に導入することができる。酵母において外来遺伝子を導入する方法としては、公知の手法を用いることができ、形質転換体において形質転換の目的とした酵素が発現していればよく、遺伝子の導入の方法は限定されない。用いるプラスミドベクターとしては、例えば、後述する3つのプラスミドベクターが挙げられる。(i)酵母に常在する2μmプラスミドの複製配列を利用した多コピーのYEp型ベクターを用いることができる。本発明において酵母に遺伝子を導入するために使用できるプラスミドの具体例としては、2μmプラスミド由来のpAUR112ベクター(タカラバイオ社製)やpESCベクター(STRATAGENE社製)、pYESベクター(ライフテクノロジーズ)などが挙げられる。これらのベクターは市販されている。(ii)自立複製配列(ARS)とセントロメア配列(CEN)を利用した低コピー安定型のYCp型ベクターを用いることができる。本発明において用いることのできるプラスミドベクターとしては、例えば、pAUR123(タカラバイオ)等が挙げられる。(iii)染色体組込みを目的とした酵母内では自律複製をしないYIp型のプラスミドを用いることができる。これは、酵母の高い相同組換え能を利用するものであり、染色体ゲノムと相同な配列を両端に置き、選択可能なマーカー遺伝子、プロモーター及びターミネーターに挟まれた形で希望の遺伝子をYIp型のプラスミドに組み込み、これを酵母内に導入することで、外来遺伝子は染色体内に組み込まれ、安定的に外来遺伝子を発現することが期待できる。これは一般的な大腸菌や酵母用のプラスミドを用いて構築することが可能であるほか、PCRや合成DNAを用いて作製することが可能である。
本発明において用いることのできるプロモーターとしては、宿主酵母で機能しうるものであれば特に制限されないが、例えば、PGK遺伝子のプロモーター(3−ホスホグリセラートキナーゼ 1983、Science、219、620-625)、GAPDH(グリセルアルデヒドホ
スフェートデヒドロゲナーゼ 1979、J.Biol.Chem.、254、9839-9845)をコードするTDH遺伝子のプロモーター、TEF1遺伝子(伸長因子1 1985、J.Biol.Chem.、260、3090-3096)のプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼをコードするADH遺伝子のプロモーター、グルコースの存在下に抑制される調節可能なCYC1遺伝子のプロモーター(1981、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、78、2199-2203)、チアミンにより調節され得るPH
O5遺伝子のプロモーター(1982、EMBO J.、1、675-680)、グルコース非存在下でガラ
クトースにより誘導されるGAL1またはGAL10遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。
また、上記の組換え方法に代えて、あるいは、上記の組換え方法に加えて、公知の相同組換え法によって、外来および内在遺伝子の一部または全部を導入したり、置換したり、増幅したり、加えて、染色体上へ導入された当該遺伝子のプロモーターへの変異導入、より強力なプロモーターへの置換などによっても高発現株を得ることができる。
なお、酵母の形質転換は、例えば、エレクトロポレーション法(Fromm ME,et al. Nature 1986, 319(6056):791-793)、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法(Ito,H.et al, (1983) J. Bacteriol. 153(1), 163-168)等によって行うことができ、二種以上のプラス
ミドを導入することもできる。また、酵母における遺伝子の発現増強は、公知の相同組換え法によって宿主のゲノム上で該遺伝子を多コピー化させることによって行うこともできる。例えば、ゲノム組込型プラスミドのうち多コピーがゲノムに組み込まれるベクターを用いる方法(Bio/Technol. 1991, 9, 1382-1385)が挙げられる。ゲノム上の各遺伝子を
含む発現単位の挿入箇所は、クロチルアルコールもしくはその異性体の合成関連遺伝子や生育関連遺伝子の発現が阻害されない箇所であれば何れのものでもよい。
[本発明の製造方法]
本発明の製造方法は、チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性、およびDOPA4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有する微生物(本発明の微生物)またはその処理物の存在下、水性媒体中で原料をベタキサンチンへと変換する工程(変換工程)を有することを特徴とする。
前記変換工程の前に、本発明の微生物を水性媒体中で培養する工程(培養工程)を有することが好ましく、また、前記変換工程の後に、前記水性媒体からベタキサンチンを回収する工程を有することが好ましい。
以下、本発明の製造方法について、工程ごとに説明する。
(原料)
原料としては、チロシン、および/または糖質原料を用いることができる。ここでチロシンとしては、純度90%以上の市販品を好適に用いることができる。
糖質原料としては、グルコース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、スクロース、マルトース、ラクトース、ラフィノース、サッカロース、デンプン、セルロースなどの炭水化物やグリセリン、マンニトール、リビトール、キシリトールなどのポリアルコール類等の発酵性糖質類等を用いることができ、中でもグルコースが好ましい。
本発明の製造方法に用いる微生物が糖質原料からチロシンを合成する代謝フラックスが充分に強くない場合は、原料として糖質原料およびチロシンを用いることが好ましく、特にグルコースおよびチロシンを用いることが好ましい。
一方で、本発明の製造方法に用いる微生物が糖質原料からチロシンを合成する代謝フラックスが強い場合は、原料として糖質原料のみを用いることができる。目的とするベタキサンチンの生産プロセスの低コスト化のためには、より安価原料である糖質原料のみを用いることが好ましい。
また、製造したいベタキサンチンの構造に応じて、上述した原料に加えて、チロシン以外のアミノ酸やアミンを添加することもできる。
上述した式(1)のベタキサンチンを製造したい場合には、所望のRおよびRを有するアミノ酸を添加することが好ましく、式(2)のベタキサンチンを製造したい場合には所望のRを有するアミンを添加することが好ましい。
チロシン以外のアミノ酸としては、天然型アミノ酸であっても、非天然型アミノ酸であってもよい。
天然型アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンが挙げられ、これらをチロシン以外のアミノ酸として添加すると、ベタキサンチンとして、それぞれ、アラニン‐ベタキサンチン、アルギニン‐ベタキサンチン、アスパラギン‐ベタキサンチン、アスパラギン酸‐ベタキサンチン、システイン‐ベタキサンチン、グルタミン‐ベタキサンチン、グルタミン酸‐ベタキサンチン、グリシン‐ベタキサンチン、ヒスチジン‐ベタキサンチン、イソロイシン‐ベタキサンチン、ロイシン‐ベタキサンチン、リシン‐ベタキサンチン、メチオニン‐ベタキサンチン、フェニルアラニン‐ベタキサンチン、プロリン‐ベタキサンチン、セリン‐ベタキサンチン、トレオニン‐ベタキサンチン、トリプトファン‐ベタキサンチン、チロシン‐ベタキサンチン、バリン‐ベタキサンチンが製造される。
非天然型アミノ酸としては、例えば、m−チロシン、メトキシフェニルアラニン、メチルシステイン、アリルアラニン、プロパルギルアラニン、アリルグリシン、プロパルギルグリシン、エチルアラニン、メチルアスパラギン酸、メチルシステイン、メチルロイシン、メチルフェニルアラニン、メチルトリプトファン、メチルチロシン、メチルバリン、α−メチル−2−ブロモフェニルアラニン、α−メチル−3−ブロモフェニルアラニン、α−メチル−4−ブロモフェニルアラニン、α−メチル−2−ヨードフェニルアラニン、α−メチル−3−ヨードフェニルアラニン、α−メチル−4−ヨードフェニルアラニン、α−メチル−2−ニトロフェニルアラニン、α−メチル−3−ニトロフェニルアラニン、α−メチル−4−ニトロフェニルアラニン、α−メチル−β−(4−ビスフェニル)アラニン等が挙げられる。これらをチロシン以外のアミノ酸として添加すると、ベタキサンチンとして、それぞれ、m−チロシン−ベタキサンチン、メトキシフェニルアラニン−ベタキサンチン、メチルシステイン−ベタキサンチン、アリルアラニン−ベタキサンチン、プロパルギルアラニン−ベタキサンチン、アリルグリシン−ベタキサンチン、プロパルギルグリシン−ベタキサンチン、エチルアラニン−ベタキサンチン、メチルアスパラギン酸−ベタキサンチン、メチルシステイン−ベタキサンチン、メチルロイシン−ベタキサンチン、メチルフェニルアラニン−ベタキサンチン、メチルトリプトファン−ベタキサンチン、メチルチロシン−ベタキサンチン、メチルバリン−ベタキサンチン、α−メチル−2−ブロモフェニルアラニン−ベタキサンチン、α−メチル−3−ブロモフェニルアラニン−ベタキサンチン、α−メチル−4−ブロモフェニルアラニン−ベタキサンチン、α−メチル−2−ヨードフェニルアラニン−ベタキサンチン、α−メチル−3−ヨードフェニルアラニン−ベタキサンチン、α−メチル−4−ヨードフェニルアラニン−ベタキサンチン、α−メチル−2−ニトロフェニルアラニン−ベタキサンチン、α−メチル−3−ニトロフェニルアラニン−ベタキサンチン、α−メチル−4−ニトロフェニルアラニン−ベタキサンチン、α−メチル−β−(4−ビスフェニル)アラニン−ベタキサンチンが製造される。
アミンとしては、天然型アミンであっても、非天然型アミンであってもよい。
天然型アミンとしては、例えばメチルアミン、エタノールアミン、ピペリジン、ヒスタミン、ドーパミン、フェネチルアミン、チラミン、3−メトキシチラミン、γ−アミノ酪酸、ノルアドレナリン、セロトニン、ムッシモール、スペルミジン、スペルミン等が挙げられる。これらをアミンとして添加すると、ベタキサンチンとして、それぞれ、メチルアミン−ベタキサンチン、エタノールアミン−ベタキサンチン、ピペリジン−ベタキサンチン、ヒスタミン−ベタキサンチン、ドーパミン−ベタキサンチン、フェネチルアミン−ベタキサンチン、チラミン−ベタキサンチン、3−メトキシチラミン−ベタキサンチン、γ−アミノ酪酸−ベタキサンチン、ノルアドレナリン−ベタキサンチン、セロトニン−ベタキサンチン、ムッシモール−ベタキサンチン、スペルミジン−ベタキサンチン、スペルミン−ベタキサンチンが製造される。
非天然型アミンとしては、例えばエチルアミン、ピペラジン、モルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンエキサミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ブタジエン−1−アミン、1,3,5−ヘキサトリエン−1−アミン、アニリン、4−ビフェニルアミン、アマンタジン等が挙げられる。これらをアミンとして添加すると、ベタキサンチンとして、それぞれ、エチルアミン−ベタキサンチン、ピペラジン−ベタキサンチン、モルホリン−ベタキサンチン、エチレンジアミン−ベタキサンチン、ジエチレントリアミン−ベタキサンチン、トリエチレンテトラミン−ベタキサンチン、テトラエチレンペンタミン−ベタキサンチン、ペンタエチレンエキサミン−ベタキサンチン、ヘキサメチレンジアミン−ベタキサンチン、1,3−ブタジエン−1−アミン−ベタキサンチン、1,3,5−ヘキサトリエン−1−アミン−ベタキサンチン、アニリン−ベタキサンチン、4−ビフェニルアミン−ベタキサンチン、アマンタジン−ベタキサンチンが製造される。
(培養工程)
本発明の培養工程は、上述のようにして得られた本発明の微生物を水性媒体中で培養する工程である。本工程は、本発明の微生物を培養して増殖させたり、本発明の微生物の状態を調えたりするために行なうものであるので、通常、本工程では、上述した原料のうち、本発明の微生物の生育に必要な原料のみを、具体的には、糖質原料(好ましくはグルコース)のみを用いる。
ただし、ベタキサンチン生産に必要な酵素を何らかの誘導性プロモーター下に配置している場合は、上記プロモーターの種類により適切に選択される誘導剤を培養工程途中に添加する必要がある。
なお、本発明の微生物が充分な量、存在する場合等は、本工程は省略して、次の変換工程を行なうことができる。
本発明で用いる水性媒体(培地)に特に制限はなく、使用する微生物の種類に応じて適宜設定することができるが、例えば、以下のような条件で行なうことができる。
水性媒体としては、炭素源、窒素源、無機塩及び必要に応じその他の有機微量栄養素を含有する通常の培地を用いることができるが、後述の炭素源等を含む培地や、水、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ほう酸塩、クエン酸塩、トリスなどの緩衝液、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、アセトアミドなどのアミド類等が挙げられる。
炭素源は、上記微生物が資化しうる炭素源であれば特に限定されないが、例えば、ガラクトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、グリセロール、シュークロース、サッカロース、デンプン、セルロース等の炭水化物;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられる。
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。
無機塩としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が用いられる。
また、ビオチン、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等のビタミン類、ヌクレオチド、アミノ酸などの生育を促進する因子を必要に応じて添加してもよい。
また、培養条件は、用いる微生物の生育が可能であれば特に制限はなく、通常、培養温度10℃〜45℃で12時間〜96時間実施することができるが、後述の変換工程において、酵素活性が高くなり、かつ、副生成物であるメラニンの生成が低減されるような条件で培養することが好ましい。本発明の微生物が、大腸菌である場合、水性媒体の温度を、
好ましくは16℃以上、より好ましくは20℃以上、また、好ましくは29℃以下、より好ましくは25℃以下とするとベタキサンチンの生産効率が向上する傾向にあり、好ましい。
(変換工程)
本発明の変換工程は、本発明の微生物またはその処理物の存在下、水性媒体中で原料をベタキサンチンへと変換する工程である。本工程は、原料をベタキサンチンへと変換することを目的とするものであり、原料としては、上述の糖質原料、および/またはチロシンと、さらに、必要に応じてチロシン以外のアミノ酸が用いられる。
また、上述の培養工程で培養された本発明の微生物の菌体を、休止菌体として、当該休止菌体を、本工程において、本発明の微生物として用いることも好ましい。本発明の微生物の菌体を休止菌体とする方法としては、培養工程で得られた培養液から遠心操作等による菌体を回収する方法や、水、または、微生物の生育に必要な炭素源、および窒素源を含有しないバッファー等により洗浄することにより、菌体を回収する方法等が挙げられる。
なお、本発明の微生物が糖質原料からベタキサンチンを合成する代謝経路をすべて有するものである場合は、上述の培養工程と特に区別することなく連続して本工程を実施してもよい。
用いる水性媒体(培地)に特に制限はなく、用いる微生物の種類に応じて適宜設定することができ、前記培養工程に記載したものと同様のものを用いることができる。本工程においては、水性媒体が、アスコルビン酸、銅および鉄からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものであることが好ましく、アスコルビン酸、銅および鉄を含むことがより好ましい。
また、反応は、用いる微生物の生育が可能な条件、またはベタレイン色素生産のために導入した酵素が完全に酵素活性を失わない条件であれば特に制限はなく、通常、反応温度10℃〜45℃で12時間〜96時間実施するが、酵素活性が高くなり、かつ、副生成物であるメラニンの生成が低減されるような条件で反応させることが好ましい。本発明の微生物が、大腸菌である場合、水性媒体の温度を、好ましくは16℃以上、より好ましくは20℃以上、また、好ましくは29℃以下、より好ましくは25℃以下とするとベタキサンチンの生産効率が向上する傾向にあり、好ましい。
(回収工程)
上述の変換工程の後に、必要に応じて、水性媒体からベタキサンチンを回収する工程を有することが好ましい。
周知の方法、例えば、有機溶媒を用いる抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどにより、水性媒体または菌体内から回収することができ、必要に応じてさらに精製することができる。
[ベタキサンチン]
本発明の製造方法では、公知のベタキサンチンはもちろん、原料として、任意の非天然型アミノ酸を用いれば、非天然型のアミノ酸が付加されたベタキサンチンを製造することができる。このような非天然型のアミノ酸が付加されたベタキサンチンとしては、例えば、以下の式(3)で表されるものが挙げられる。
Figure 0006531455
式(3)において、Rは、炭素数1〜40の直鎖または分岐鎖または環状の飽和もしくは不飽和炭化水素基からなる群から選択される1種である。ただし該炭化水素基の水素原子の一部または全部は、ハロゲン原子、アシル基、アミド基、アミノ基、アルコキシ基、アルデヒド基、イミダゾール基、インドール基、オキソ基、カルボキシル基、グアニジノ基、シアノ基、スルホ基、チオール基、ニトロ基、ヒドロキシル基およびフェニル基からなる群から選択される少なくとも一種で置換されていてもよく、該炭化水素基は、イミニウムの窒素を含有する形で環を形成していてもよい。さらに、該イミダゾール基、該インドール基および該フェニル基の芳香環の一部または全部は、上記と同様の置換基群から選択される少なくとも一種にて置換されていてもよい。さらに該炭化水素基の炭素原子の一部は、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、リン原子から選択される少なくとも一種で置換されていてもよい。
式(3)において、Rが、直鎖または分岐鎖のアルキル基である場合、その炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。この場合、Rが、エチル基、プロピル基、およびイソブチル基からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが特に好ましい。
式(3)において、Rが、直鎖または分岐鎖のアルケニル基である場合、その炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。この場合、Rが、アリル基、1−ブテニル基、および2−ブテニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが特に好ましい。
式(3)において、Rが、直鎖または分岐鎖のアルキニル基である場合、その炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。この場合、Rが、エチニル基、1−ブチニル基、および2−ブチニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが特に好ましい。
式(3)において、Rが、直鎖または分岐鎖のアリール基である場合、その炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。この場合、Rが、ベンジル基、トリル基、およびフェネシル基からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが特に好ましい。
前記式(3)で表される化合物は、強力な抗酸化活性を有するという性質を生かし、抗酸化剤等に好適に用いることができる。
また、前記式(3)で表される化合物の中でも、例えば、下記式(4)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006531455
同様に、原料として非天然型アミンを用いることで、非天然型のアミンが付加されたベタキサンチンを製造することができる。このような非天然型のアミンが付加されたベタキサンチンとしては、アミン骨格中に複数の共役構造を有するものが好ましく、例えば、以下の式(5)や式(6)で表されるものが挙げられる。
Figure 0006531455
Figure 0006531455
式(5)においてnは1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
式(6)においてnは1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
前記式(5)、(6)で表される化合物は、強力な抗酸化活性を有するという性質を生かし、抗酸化剤等に好適に用いることができる。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[作製例1]チロシナーゼ活性、およびDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有
する大腸菌の作製
(1)大腸菌用チロシナーゼ発現プラスミドの構築
Bacillus megaterium DSM 319, Ralstonia solanacearum GMI1000, Bacillus thuringiensis BMB171由来の3種類のチロシナーゼ(以下、この3種類のチロシナーゼを、それぞ
れ、BMTYR,RSTYR,BTTYRと称する。)の遺伝子配列情報をNational Center for Biotechnology Information(NCBI)から得て、遺伝子合成により大腸菌のコドン頻度に最適化した。得られた最適化された遺伝子断片の全遺伝子配列を、それぞれ、配列番号1〜3に示す。配列番号1〜3の遺伝子断片を、pUC57ベクター(GenScript社)のEcoRVサイトに挿入したプラスミドを作製した。得られたプラスミドを鋳型として、5’末端に制限酵素NdeIサイトを、3’末端に制限酵素KpnIサイトを付加した、以下のプライマーを用いたPCRにより各遺伝子断片を得た。
BMTYR遺伝子増幅用プライマー: 配列番号4、5
RSTYR遺伝子増幅用プライマー: 配列番号6、7
BTTYR遺伝子増幅用プライマー: 配列番号8、9
PCR反応液組成: 鋳型DNA 2μl、PrimeSTAR(R) HS DNA
Polymerase(タカラバイオ株式会社製) 0.5μl、5×PrimeSTAR Buffer 10μl、2.5mM dNTP Mixture 4μl、2μM各々プライマー 5μl、滅菌水24μl(これらを混合して全量50μlとした。)
反応温度条件: TaKaRa PCR Thermal Cylcer Dice Touch (型式TP350)を用い、98℃で10秒、55℃で5秒、72℃で1分(BMTYRおよびBTTYR)、1分30秒(RSTYR)からなるサイクルを30回繰り返した。ただし、1サイクル目の98℃での保温は1分10秒とした。
PCRの増幅産物の確認は、1%アガロース(アガロース−RE:ナカライテスク株式会社)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、BMTYRは約0.9kb、RSTYRは約1.5kb、BTTYRは0.8kbの断片を検出した。ゲルからの目的断片の回収はWizard(R) SV Gel and
PCR Clean−UP System (Promega製)を用いて行った。得られたチロシナーゼのPCR断片を、それぞれ、Zero Blunt(R) TOPO(R) PCR Cloning Kit (invitorge製)を用いてpCRTM−Blunt II−TOPO(R)ベクター (invitorgen製)に連結した後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。このようにして得られた組み換え大腸菌を50μg/ml カナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、50μg/ml カナマイシンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit (SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAを、それぞれ、BMTYR/pCR−bluntII、RSTYR/pCR−bluntII、BTTYR/pCR−bluntIIと命名した。
次に、上記BMTYR/pCR−bluntII、RSTYR/pCR−bluntII、BTTYR/pCR−bluntIIを、それぞれ、NdeIおよびKpnIにて制限酵素処理した後、1%アガロース(アガロース−RE:ナカライテスク株式会社)ゲル電気泳動により分離した。分離されたBMTYR由来の約0.9kb遺伝子断片、RSTYR由来の約1.5kb遺伝子断片、BTTYR由来の約0.8kb遺伝子断片を、Wi
zard(R) SV Gel and PCR Clean−UP System(Promega製)を用いて回収した。
大腸菌用発現ベクターpETDuet−1(Novagen製)についても、同様の方法で制限酵素処理、および分離を行ない、約5.4kbの遺伝子断片を回収した。
次いで、上記で得られた、それぞれのチロシナーゼ遺伝子断片と、大腸菌発現ベクターpETDuet−1とをLigation high Ver.2(TOYOBO製)を用いて連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。
このようにして得られた組み換え大腸菌を100μg/ml アンピシリンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、100μg/ml アンピシリンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit (SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAを、それぞれ、BMTYR/pETDuet−1、RSTYR/pETDuet−1、BTTYR/pETDuet−1と命名した。
(2)大腸菌用DOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ(DOD)発現プラスミドの構築
オシロイバナ(Mirabilis jalapa)由来のDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ (以下、「MjDOD」と称する。) 遺伝子配列情報1種類をNCBIから得て、遺伝子合成により大腸菌のコドン頻度に最適化した。最適化したMjDODの全遺伝子配列を配列番号10に示す。配列番号10に記載の配列を、pUC57ベクター (GenScript社)のEcoRVサイトに挿入した。得られたプラスミドを鋳型として、5’末端に制限酵素NdeIサイトを、3’末端に制限酵素KpnIサイトを付加したプライマー(配列番号11、および12) を用いたPCRにより遺伝子断片を得た。
PCR反応液組成: 鋳型DNA 2μl、PrimeSTAR(R) HS DNA
Polymerase (タカラバイオ株式会社製) 0.5μl、5×PrimeSTAR Buffer 10μl、2.5mM dNTP Mixture 4μl、2μM各々プライマー 5μl、滅菌水24μl(これらを混合して全量50μlとした。)
反応温度条件: TaKaRa PCR Thermal Cylcer Dice Touch (型式TP350)を用い、98℃で10秒、55℃で5秒、72℃で1分からなるサイクルを30回繰り返した。ただし、1サイクル目の98℃での保温は1分10秒とした。
増幅産物の確認、およびゲルからの目的断片の回収は、前記「(1)大腸菌用チロシナーゼ発現プラスミドの構築」に記載の方法と同様にして行い、約0.8kbのMjDOD由来遺伝子断片を検出し、回収した。
得られたMjDODのPCR断片をZero Blunt(R) TOPO(R) PCR Cloning Kit (invitrogen製)を用いてpCRTM−Blunt II−TOPO(R)ベクター (invitorgen製)に連結した後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。
このようにして得られた組み換え大腸菌を50μg/ml カナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、50μg/ml カナマイシンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit (SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。ここで得られたプラスミドDNAをMjDOD/pCR−bluntIIと命名した。
次に、上記MjDOD/pCR−bluntIIを、NdeIおよびKpnIにて制限
酵素処理した後、1%アガロースゲル電気泳動により分離し、約0.8kb遺伝子断片をWizard(R) SV Gel and PCR Clean−UP System
(Promega製)を用いて回収した。
pETDuet−1ベクターと共存可能な大腸菌発現ベクターであるpRSFDuet−1(Novagen製)についてもNdeIおよびKpnIにて制限酵素処理した後、同様の方法で分離し、約3.8kbの遺伝子断片を回収した。
Ligation high Ver.2(TOYOBO製)を用いて、上記のMjDOD遺伝子断片と大腸菌発現ベクターpRSFDuet−1とを連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。
このようにして得られた組み換え大腸菌を50μg/ml カナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、50μg/ml カナマイシンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit (SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAをMjDOD/pRSFDuet−1と命名した。
(3)チロシナーゼおよびDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ共発現大腸菌株の作製
上記(1)および(2)で作製した、BMTYR/pETDuet−1およびMjDOD/pRSFDuet−1、RSTYR/pETDuet−1およびMjDOD/pRSFDuet−1、BTTYR/pETDuet−1およびMjDOD/pRSFDuet−1の混合プラスミドで、それぞれ、大腸菌(BL21 StarTM(DE3)株)を形質転換した。得られた組換え大腸菌を100μg/ml アンピシリンおよび50μg/ml カナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、それぞれ、E.coli(BL21)/BMTYR/MjDOD、E.coli(BL21)/RSTYR/MjDOD、E.coli(BL21)/BTTYR/MjDODと命名し、ベタキサンチン生産株として以下のベタキサンチン生産試験に用いた。
[実施例1]
まず、上記で作製した微生物を、以下の方法で培養した。
(前培養工程)
上記で作製した3種類の共発現株E.coli(BL21)/BMTYR/MjDOD、E.coli(BL21)/RSTYR/MjDOD、E.coli(BL21)/BTTYR/MjDODを、それぞれ前培養培地[5×M9 Minimal Salts
400μl、1M CaCl0.2μl、1M MgSO 4μl、100g/L Casamino acid 200μl、1M Glucose 44μl、1%
Thiamine 4μl、50mM FeSO 2μl、40mg/ml CuSO 2μl、50mg/ml Kanamycin 2μl、および100mg/ml
Carbenicillin 2μlを、全量2mlとなるように滅菌水に溶解したもの]2mlに植菌し、培養温度32℃、180rpmで18時間培養した。
(本培養工程)
上記で得られた前培養液500μlを、本培養培地[5×M9 Minimal Salts 10ml、1M CaCl 5μl、1M MgSO 100μl、40g/L NHCl 3.75ml、100g/L Casamino acid 5ml、1% Thiamine 100μl、50mM FeSO 50μl、40mg/ml CuSO 50μl、50mg/ml Kanamycin 50μl、100mg/ml Carbenicillin 50μl、Overnight ExpressTMAutoinduction Systems1 OnEx Solution
1 1ml、OnEx Solution2 2.5ml、およびOnEx Solution3 50μlを、全量50mlになるように滅菌水に溶解したもの]50mlに植菌し、培養温度20℃、200rpmで24時間培養することで、タンパク質の発現を誘導した。
(変換工程)
上記で得られた本培養液に、L−チロシン(終濃度1mM)および1Mアスコルビン酸500μlを添加することでベタキサンチンの生産反応を開始し、反応温度20℃、200rpmで24時間培養してベタキサンチンを生産させた。得られた培養液1mlから遠心分離(12000rpm、1分間)して得られた上清を0.45μmコスモスピンフィルター(日本ミリポア株式会社製)に通し、ろ液を分析サンプルとした。
(解析)
解析は、Agilent Technologies 6460 Triple Quad LC/MSを用いて行なった。カラムはSunFireTM C18 3.5μm
2.1×150mm Column(Waters)を使用した。溶出は1%ギ酸(SolventA)と80%アセトニトリル(SolventB)を用い、SolventBの混合比を0%(0分)→0%(2分)→20%(20分)→100%(24分)→100%(26分)と経時的に増加させることにより行った(流速0.3ml/min、温度40℃)。ベタキサンチンはm/zおよび470nmのUV吸収をモニタリングすることで検出した。
(解析結果)
得られたLC/MS分析結果(全イオンクロマトグラム(TIC))を共発現株ごとに図1(E.coli(BL21)/BMTYR/MjDOD)、図2(E.coli(BL21)/BTTYR/MjDOD)、図3(E.coli(BL21)/RSTYR/MjDOD)に示す。また、生成したベタキサンチンの分子イオンピークのシグナルArea値の経時変化を共発現株ごとに表1(E.coli(BL21)/BMTYR/MjDOD)、表2(E.coli(BL21)/BTTYR/MjDOD)、表3(E.coli(BL21)/RSTYR/MjDOD)に示す。
Figure 0006531455
Figure 0006531455
Figure 0006531455
分析の結果、E.coli(BL21)/BMTYR/MjDOD、E.coli(BL21)/RSTYR/MjDOD、E.coli(BL21)/BTTYR/MjDODのいずれの共発現株においても数種類のベタキサンチン類および生合成前駆体であるベタラミン酸の生産が検出された。いずれの共発現株においてもバリン−ベタキサンチンの生産量が最も高く、続いてイソロイシン−ベタキサンチン、ロイシン−ベタキサンチン、フェニルアラニン−ベタキサンチンの順で生産量が高いことが示された。
また、上記3種の共発現株の中では、L−DOPAからドーパキノンへの酸化活性が低いことが公知であるRalstonia solanacearum GMI1000由来チロシナーゼ発現株であるE.coli(BL21)/RSTYR/MjDODにおいて最もベタキサンチン類の生産量が高く、本色素由来の黄色い呈色が強く確認された。
以上より、微生物にチロシナーゼおよびDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼを導入することでベタキサンチンが効率よく生産可能であることが示された。
[実施例2〜8]
休止菌体を用いて、天然型アミノ酸が付加したベタキサンチンの生産を行なった実施例を以下に示す。
(前培養工程)
作製例1で作製したE.coli(BL21)/RSTYR/MjDODを、前培養培地(組成は、実施例1と同様とした。)2mlに植菌し、培養温度32℃、180rpmで18時間培養した。
(本培養工程)
得られた前培養液500μlを、本培養培地(組成は、実施例1と同様とした。)50mlに植菌し、培養温度20℃、200rpmで24時間培養することでタンパク質の発現を誘導した。
(変換工程)
上記の方法で得られた本培養液10mlを遠心分離(6000rpm、5分間)して得た菌体を一度50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)2mlにて洗浄後、再度、遠心分離して菌体を回収した。回収された菌体を反応バッファー[0.1mM IPTG、50μM FeSO、4μg/ml CuSO、10mM アスコルビン酸、50μg/ml Kanamycin、100μg/ml Carbenicillinを含むリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)]2mlにて懸濁した。
得られた懸濁液に、ベタラミン酸の基質となるL−チロシンに加え、L−バリン(実施例2)、L−フェニルアラニン(実施例3)、L−トリプトファン(実施例4)、L−ロイシン(実施例5)、L−イソロイシン(実施例6)、L−ヒスチジン(実施例7)、L−メチオニン(実施例8)を添加した。なお、これらの天然アミノ酸の前記懸濁液中の終濃度は1mMとした。その後、反応温度20℃、200rpmの条件で24時間反応させた。得られた反応液1mlから遠心分離(12000rpm、1分間)して得られた上清を0.45μmコスモスピンフィルター(日本ミリポア株式会社製)に通し、ろ液を分析サンプルとした。解析は、実施例1と同様の方法で行なった。
(解析結果)
図4に、実施例2(L−バリン)で得られた反応溶液のLC/MS分析結果を示す。図4では、ベタラミン酸の合成基質であるチロシンに加えてバリンを添加した時にベタキサンチン由来の470nmのUV吸収を有するバリン−ベタキサンチンの分子イオンピーク([M+H]=311)が検出された。
また、反応開始後24時間までの生成量の経時変化のグラフ(図5)からは、バリン-ベタ
キサンチン生産量が経時的に増加していることがわかる。実施例2では、添加したバリン以外のアミノ酸由来ベタキサンチンの生成量は極めて少量であった。そのため、休止菌体を利用すると、目的とするアミノ酸が付加されたベタキサンチンの単一生産が可能と考えられる。
また、実施例3〜8で得られた反応溶液についても、実施例2と同様の方法で解析を行ない、その結果を下表に示す。
Figure 0006531455
表4から、L−バリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−ヒスチジン、L−メチオニンを添加すると、添加したアミノ酸が付加したベタキサンチンが生産可能なことがわかる。
実施例2〜8で添加したアミノ酸は、疎水性が比較的高いものである。疎水性アミノ酸は、ベタラミン酸とイミン結合により縮合しやすく、ベタキサンチンが生成しやすい傾向にあることが示唆された。
なお、表4に掲載していないが、L−リシン、L−プロリンについても、ベタキサンチンの生成が確認されており、本発明によれば、これらのベタキサンチンの生産も可能であ
る。これらの実施例2〜8より、休止菌体反応時にL−チロシンに加えて単一のアミノ酸を添加することで、添加したアミノ酸が付加したベタキサンチンをほぼ単一に生産可能であることがわかる。
[実施例9〜18]
休止菌体を用いて、非天然型アミノ酸が付加したベタキサンチンの生産を行なった実施例を以下に示す。
(前培養工程、本培養工程、ベタキサンチン生産工程)
実施例2〜8の(変換工程)において、得られた懸濁液に、天然型のアミノ酸に代えて、それぞれ、(S)−α−プロパルギルアラニン(実施例9)、(S)−α−メチルバリン(実施例10)、(S)−α−アリルアラニン(実施例11)、(S)−α−メチルトリプトファン(実施例12)、(S)−α−メチル−3−ヨードフェニルアラニン(実施例13)、(S)−α−メチル−2−ブロモフェニルアラニン(実施例14)、(S)−α−エチルアラニン(実施例15)、 (S)−α−メチルロイシン(実施例16)、 (S)−α−メチル−2−ニトロフェニルアラニン(実施例17)、(S)−α−メチルフェニルアラニン(実施例18)を添加したこと以外は、実施例2と同様の条件で、前培養工程、本培養工程、および変換工程を行なった。ここで用いた非天然型アミノ酸は、長瀬産業株式会社製のものであり、純度≧98%、≧98%eeのものを用いた。
(解析結果)
図6に、実施例9((S)−α−プロパルギルアラニン)で得られた反応溶液のLC/MS分析結果を示す。図6では、ベタラミン酸の合成基質であるチロシンに加えて非天然型アミノ酸を添加した時に、ベタキサンチン由来の470nmのUV吸収を有するプロパルギルアラニン−ベタキサンチン由来の分子イオンピーク([M+H]=321)が検出された。これにより、目的としていた非天然型ベタキサンチン色素の生産が確認された。また、反応24時間までの生成量の経時変化のグラフ(図7)からは、プロパルギルアラニン−ベタキサンチン生産量が経時的に増加していることが確認された。
また、実施例10〜18についても、同様の方法で解析を行ない、その結果を下表に示す。
Figure 0006531455
実施例10においては、(S)−α−メチルバリン−ベタキサンチン、実施例11においては、(S)−α−アリルアラニン−ベタキサンチン、実施例12においては、(S)−α−メチルトリプトファン−ベタキサンチン、実施例13においては、(S)−α−メチル−3−ヨードフェニルアラニン−ベタキサンチン、実施例14においては、(S)−α−メチル−2−ブロモフェニルアラニン−ベタキサンチン、実施例15においては、(S)−α−エチルアラニン−ベタキサンチン、実施例16においては、(S)−α−メチ
ルロイシン−ベタキサンチン、実施例17においては、(S)−α−メチル−2−ニトロフェニルアラニン−ベタキサンチン、実施例18においては、(S)−α−メチルフェニルアラニン−ベタキサンチンが生産されたことがわかる。実施例9〜18により、休止菌体反応時にL−チロシンに加えて単一の非天然型アミノ酸を添加することで、新規物質である非天然型ベタキサンチンを生産可能であることがわかる。
[作製例2]チロシナーゼ活性、およびDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有
するチロシン生産大腸菌の作製
(1)チロシン生産大腸菌の作製チロシン生産大腸菌は、芳香族アミノ酸生合成に関与する遺伝子の転写制御因子であるtyrRの遺伝子破壊およびチロシンによるフィードバック阻害に耐性を有するコリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸デヒドロゲナーゼ(TyrAfbr)、フェニルアラニンによるフィードバック阻害に耐性を有するDAHP合成酵素(AroGfbr)の増強により育種した。
Zhangらの文献「Improved RecT or RecET cloning and subcloning method(2001)」の
プロトコールに従い大腸菌(BL21 StarTM(DE3)株)のtyrR遺伝子欠損株を取得した。以下この株をE.coli BL21 StarTM(DE3) ΔtyrR::Kanと称する。
フィードバック耐性コリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸デヒドロゲナーゼ(TyrAfbr)は、大腸菌由来の野生型酵素TyrAの遺伝子配列情報をNational Center for Biotechnology Information(NCBI)から得て、アミノ酸配列53番目のメチオニンをイソロイシン、354番目のアラニンをバリンに変換した形で遺伝子合成により取得した(配列番号30)。配列番号30に記載の遺伝子断片をpUC57ベクター(GenScript社)のEcoRVサイトに挿入したプラスミドを作製した。得られたプラスミドを鋳型として、5’末端に制限酵素NdeIサイトを、3’末端に制限酵素KpnIサイトを付加した、以下のプライマーを用いたPCRにより遺伝子断片を得た。
TyrAfbr遺伝子増幅用プライマー:配列番号31、32
フィードバック耐性DAHP合成酵素(AroGfbr)は、大腸菌由来の野生型酵素AroGの遺伝子配列情報をNational Center for Biotechnology Information(NCBI)から得て、アミノ酸配列146番目のアスパラギン酸をアスパラギンに変換した形で遺伝子合成により取得した(配列番号33)。pUC57ベクター(GenScript社)のEcoRVサイトに挿入したプラスミドを作製した。得られたプラスミドを鋳型として、5’末端に制限酵素EcoRIサイトを、3’末端に制限酵素HindIIIを付加した、以下のプライマーを用いたPCRにより遺伝子断片を得た。
AroGfbr遺伝子増幅用プライマー:配列番号34、35
PCR反応液組成: 鋳型DNA 2μl、PrimeSTAR(R) HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製) 0.5μl、5×PrimeSTAR Buffer 10μl、2.5mM dNTP Mixture 4μl、2μM各々プライマー 5μl、滅菌水24μl(これらを混合して全量50μlとした。)
反応温度条件: TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice Touch (型式TP350)を用い、98℃で10秒、55℃で5秒、72℃で1分からなるサイクルを30回繰り返した。ただし、1サイクル目の98℃での保温は1分10秒とした。
PCRの増幅産物の確認は、1%アガロース(アガロース−RE:ナカライテスク株式会社)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い
、TyrAfb、AroGfbr共に約1.0kbの断片を検出した。ゲルからの目的断片の回収はWizard(R) SV Gel and PCR Clean−UP System(Promega製)を用いて行った。
得られたTyrAfbr およびAroGfbrのPCR断片を、それぞれ、Zero
Blunt(R) TOPO(R) PCR Cloning Kit(invitorgen製)を用いてpCRTM−Blunt II−TOPO(R)ベクター (invitorgen製)に連結した後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。このようにして得られた組み換え大腸菌を50μg/ml カナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、50μg/ml カナマイシンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit(SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAを、それぞれ、TyrAfbr/pCR−bluntII、AroGfbr/pCR−bluntIIと命名した。
次に、上記TyrAfbr /pCR−bluntIIを、それぞれ、NdeIおよびKpnIにて制限酵素処理した後、1%アガロース(アガロース−RE:ナカライテスク株式会社)ゲル電気泳動により分離した。分離されたTyrAfbr由来の約1.0kb遺伝子断片をWizard(R) SV Gel and PCR Clean−UP System(Promega製)を用いて回収した。
大腸菌発現ベクターpCDFDuet−1(Novagen製)についても、同様の方法で制限酵素処理、および分離を行ない、約3.8kbの遺伝子断片を回収した。
次いで、上記で得られた、TyrAfbr遺伝子断片と、大腸菌発現ベクターpCDFDuet−1とをLigation high Ver.2(TOYOBO製)を用いて連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。
このようにして得られた組み換え大腸菌を50μg/ml ストレプトマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、50μg/ml
ストレプトマイシンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit(SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAを、TyrAfbr/pCDFDuet−1と命名した。
さらに上記AroGfbr/pCR−bluntIIを、それぞれ、EcoRIおよびHindIIIにて制限酵素処理した後、1%アガロース(アガロース−RE:ナカライテスク株式会社)ゲル電気泳動により分離した。分離されたAroGfbr由来の約1.0kb遺伝子断片をWizard(R) SV Gel and PCR Clean−UP System(Promega製)を用いて回収した。
TyrAfbr/pCDFDuet−1についても、同様の方法で制限酵素処理、および分離を行ない、約4.8kbの遺伝子断片を回収した。
得られた、AroGfbr遺伝子断片と、TyrAfbr/ pCDFDuet−1とをLigation high Ver.2(TOYOBO製)を用いて連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。
このようにして得られた組み換え大腸菌を50μg/ml ストレプトマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、50μg/ml
ストレプトマイシンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit(SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAを、TyrAfbr+AroGfbr/pCDFDuet−1と命名した。
得られたTyrAfbr+AroGfbr/ pCDFDuet−1を用いて、先に構築したtyrR遺伝子欠損株E.coli BL21 StarTM(DE3) ΔtyrR::Kanを形質転換した。得られた組換え大腸菌を50μg/ml ストレプトマイシンおよび50μg/ml カナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンをE.coli BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbrと命名し、チロシン生産大腸菌とした。
(2)大腸菌用チロシナーゼ、DOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ(DOD)共発現プラスミドの構築
上記したpUC57に挿入された大腸菌用コドン最適化済みMjDOD遺伝子断片を鋳型として、5’末端に制限酵素EcoRIサイトを、3’末端に制限酵素HindIIIサイトを付加した、以下のプライマーを用いたPCRにより遺伝子断片を得た。
MjDOD遺伝子増幅用プライマー:配列番号36、37
PCR反応液組成、反応温度条件は先の記載と同様である。得られた遺伝子断片をpCRTM−Blunt II−TOPO(R)ベクター (invitorgen製)に連結した後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。このようにして得られた組み換え大腸菌を50μg/ml カナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、50μg/ml カナマイシンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit(SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAをMjDOD/pCR−bluntII−2と命名した。
次に、上記MjDOD/pCR−bluntII−2および先に作製例1の(1)で構築したBMTYR/pETDuet−1、RSTYR/pETDuet−1をEcoRIおよびHindIIIにて制限酵素処理した後、1%アガロース(アガロース−RE:ナカライテスク株式会社)ゲル電気泳動により分離した。MjDOD由来約0.8kb遺伝子断片とBMTYR/pETDuet−1由来約6.3kb遺伝子断片、RSTYR/pETDuet−1約6.9kb遺伝子断片をLigation high Ver.2(TOYOBO製)を用いて連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。このようにして得られた組み換え大腸菌を100μg/ml アンピシリンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、100μg/ml アンピシリンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit(SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAを、それぞれ、BMTYR+MjDOD/pETDuet−1、RSTYR+MjDOD/pETDuet−1と命名した。
(3)チロシナーゼおよびDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ共発現チロシン生産大腸菌株の作製
上記(2)で得られたBMTYR+MjDOD/pETDuet−1、RSTYR+MjDOD/pETDuet−1を用いて上記(1)で得られたチロシン生産大腸菌E.coli (BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbrを形質転換した。得られた組換え大腸菌を100μg/ml アンピシリンおよび50μg/ml
カナマイシン、50μg/mlストレプトマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、それぞれ、E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/BMTYR+MjDOD、E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/RSTYR+MjDODと命名し、ベタキサンチン生産株として以下の糖質を原料としたベタキサン
チン生産試験に用いた。
[実施例19]
まず、上記で作製した微生物を、以下の方法で培養した。
(前培養工程)
作製例2で作製した2種類のベタキサンチン生産株E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/BMTYR+MjDOD、E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/RSTYR+MjDODを、それぞれ前培養培地[5×M9 Minimal Salts 400μl、1M CaCl0.2μl、1M MgSO 4μl、100g/L Casamino acid 200μl、1M Glucose 44μl、1% Thiamine 4μl、50mM FeSO 2μl、40mg/ml CuSO 2μl、50mg/ml Kanamycin 2μl、100mg/ml Carbenicillin 2μl、50mg/ml Streptomycin 2μl を、全量2mlとなるように滅菌水に溶解したもの]2mlに植菌し、培養温度32℃、180rpmで20時間培養した。
(本培養、変換工程)
上記で得られた前培養液を、本培養培地[5×M9 Minimal Salts 4ml、1M CaCl 2μl、1M MgSO 40μl、40g/L NHCl 1.5ml、100g/L Casamino acid 2ml、1% Thiamine 40μl、50mM FeSO 20μl、40mg/ml CuSO 20μl、50mg/ml Kanamycin 20μl、100mg/ml Carbenicillin 20μl、50mg/ml Streptomycin 20μl 、Overnight ExpressTM Autoinduction Systems1 OnEx Solution1 400μl、OnEx Solution2 1ml、およびOnEx Solution3 20μlを、全量20mlになるように滅菌水に溶解したもの]20mlにOD600=0.3となるように植菌し、培養温度20℃、180rpm、27時間培養し、タンパク発現誘導を行った。その後、1Mアスコルビン酸のみ200μl添加し、さらに21時間培養することで糖質を原料としたベタキサンチン生産を行った。得られた培養液1mlから遠心分離(12000rpm、1分間)して得られた上清を0.45μmコスモスピンフィルター(日本ミリポア株式会社製)に通し、ろ液を分析サンプルとした。
解析は、実施例1と同様の方法で行なった。
(解析結果)
得られたLC/MS分析結果(全イオンクロマトグラム(TIC)およびUV470nm)を図8(E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/BMTYR+MjDOD)、図9(E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/RSTYR+MjDOD)に示す。また、培養48時間目の生成したベタキサンチンの分子イオンピークのシグナルArea値の値を表6(E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/BMTYR+MjDOD)、表7(E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/RSTYR+MjDOD)に示す。
分析の結果、E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/BMTYR+MjDOD、E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/RSTYR+MjDOD両株ともに、培地中の糖質を原料として自ら生産したチロシンを利用することで、数種のベタキサンチン類およびベタキサンチンの前駆体であるベタラミン酸を生産することが確認された。両株共、バリン
‐ベタキサンチンの生成量が最も多く、E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/BMTYR+MjDODにおいては、次いでロイシン‐ベタキサンチン、イソロイシン‐ベタキサンチン、プロリン‐ベタキサンチン、リシン‐ベタキサンチン、フェニルアラニン‐ベタキサンチンの順で多く、E.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/RSTYR+MjDODにおいては、L−DOPA−ベタキサンチン、ロイシン‐ベタキサンチン、イソロイシン‐ベタキサンチン、プロリン‐ベタキサンチン、フェニルアラニン‐ベタキサンチン、リシン‐ベタキサンチンの順で多く生産していた。この蓄積傾向は実施例1とほぼ同様の傾向を示していた。
また実施例1同様、Ralstonia solanacearum GMI1000由来チロシナーゼを用いたE.coli(BL21)ΔtyrR::Kan/TyrAfbr+AroGfbr/RSTYR+MjDODにおいてベタキサンチン類の生産量が高く、本色素由来の黄色い呈色が強く確認された。
以上より、チロシン生産大腸菌にチロシナーゼおよびDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼを導入することでチロシンを添加することなく、糖質を原料としてベタキサンチンが効率よく生産可能であることが示された。
Figure 0006531455
Figure 0006531455
[作製例3]チロシナーゼ活性、およびDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有
する酵母の作製
(1)酵母用チロシナーゼ発現プラスミドの構築
Bacillus megaterium DSM 319, Ralstonia solanacearum GMI1000由来の2種類のチロ
シナーゼ(以下、この2種類のチロシナーゼを、それぞれ、BMTYR,RSTYRと称する)の遺伝子配列情報をNational Center for Biotechnology Information(NCBI)から得て、遺伝子合成により酵母のコドン頻度に最適化した。得られた最適化された遺伝子断片の全遺伝子配列(yBMTYRおよびyRSTYR)を、それぞれ、配列番号21、22に示す。配列番号21、22の遺伝子断片を、pUC57ベクター(GenScript社)のEcoRVサイトに挿入したプラスミドを作製した。得られたプラスミドを鋳型として、5’末端に制限酵素BamHIサイトを、3’末端に制限酵素HindIIIサイトを付加した、以下のプライマーを用いたPCRにより各遺伝子断片を得た。
yBMTYR遺伝子増幅用プライマー: 配列番号23、24
yRSTYR遺伝子増幅用プライマー: 配列番号25、26
PCR反応液組成: 鋳型DNA 2μl、PrimeSTAR(R) HS DNA
Polymerase(タカラバイオ株式会社製) 0.5μl、5×PrimeSTAR Buffer 10μl、2.5mM dNTP Mixture 4μl、2μM各々プライマー 5μl、滅菌水24μl(これらを混合して全量50μlとした。)反応温度条件: TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice Touch (型式TP350)を用い、98℃で10秒、55℃で5秒、72℃で1分(BMTYR)、1分30秒(RSTYR)からなるサイクルを30回繰り返した。ただし、1サイクル目の98℃での保温は1分10秒とした。
PCRの増幅産物の確認は、1%アガロース(アガロース−RE:ナカライテスク株式会社)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、yBMTYRは約0.9kb、yRSTYRは約1.5kbの断片を検出した。ゲルからの目的断片の回収はWizard(R) SV Gel and PCR Clean−UP System(Promega製)を用いて行った。
得られたチロシナーゼのPCR断片を、それぞれ、Zero Blunt(R) TOPO(R) PCR Cloning Kit(invitorgen製)を用いてpC
TM−Blunt II−TOPO(R)ベクター(invitorgen製)に連結した後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。このようにして得られた組み換え大腸菌を50μg/ml カナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、50μg/ml カナマイシンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP
Plasmid Miniprep Kit(SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAを、それぞれ、yBMTYR/pCR−bluntII、yRSTYR/pCR−bluntIIと命名した。
次に、上記yBMTYR/pCR−bluntII、yRSTYR/pCR−bluntIIを、それぞれ、BamHIおよびHindIIIにて制限酵素処理した後、1%アガロース(アガロース−RE:ナカライテスク株式会社)ゲル電気泳動により分離した。分離されたyBMTYR由来の約0.9kb遺伝子断片、yRSTYR由来の約1.5kb遺伝子断片をWizard(R) SV Gel and PCR Clean−UP
System(Promega製)を用いて回収した。
酵母用発現ベクターpESC−LEU(Stratagene製)についても、同様の方法で制限酵素処理、および分離を行ない、約7.8kbの遺伝子断片を回収した。
次いで、上記で得られた、それぞれのチロシナーゼ遺伝子断片と、酵母発現ベクターpESC−LEUとをLigation high Ver.2(TOYOBO製)を用いて連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。
このようにして得られた組み換え大腸菌を100μg/ml アンピシリンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、100μg/ml アンピシリンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit(SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAを、それぞれ、yBMTYR/pESC−LEU、yRSTYR/pESC−LEUと命名した。
(2)酵母用DOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ(DOD)発現プラスミドの構築
オシロイバナ(Mirabilis jalapa)由来のDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ (以下、「MjDOD」と称する。) 遺伝子配列情報1種類をNCBIから得て、遺伝子合成により酵母のコドン頻度に最適化した。最適化したMjDODの全遺伝子配列(yMjDOD)を配列番号27に示す。配列番号27に記載の配列を、pUC57ベクター(GenScript社)のEcoRVサイトに挿入した。得られたプラスミドを鋳型として、5’末端に制限酵素BamHIサイトを、3’末端に制限酵素HindIIIサイトを付加したプライマー(配列番号28、および29) を用いたPCRにより遺伝子断片を得た。
反応液組成: 鋳型DNA 2μl、PrimeSTAR(R) HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製) 0.5μl、5×PrimeSTAR Buffer 10μl、2.5mM dNTP Mixture 4μl、2μM各々プライマー 5μl、滅菌水24μl(これらを混合して全量50μlとした。)
反応温度条件: TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice Touch (型式TP350)を用い、98℃で10秒、55℃で5秒、72℃で1分からなるサイクルを30回繰り返した。ただし、1サイクル目の98℃での保温は1分10秒とした。
増幅産物の確認、およびゲルからの目的断片の回収は、前記「(1)酵母用チロシナーゼ発現プラスミドの構築」に記載の方法と同様にして行い、約0.8kbのyMjDOD由来遺伝子断片を検出し、回収した。
得られたyMjDODのPCR断片をZero Blunt(R) TOPO(R) PCR Cloning Kit(invitrogen製)を用いてpCRTM−Blunt II−TOPO(R)ベクター (invitorgen製)に連結した後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。
このようにして得られた組み換え大腸菌を50μg/ml カナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、50μg/ml カナマイシンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit(SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。ここで得られたプラスミドDNAをyMjDOD/pCR−bluntIIと命名した。
次に、上記yMjDOD/pCR−bluntIIを、BamHIおよびHindIIIにて制限酵素処理した後、1%アガロースゲル電気泳動により分離し、約0.8kb遺伝子断片をWizard(R) SV Gel and PCR Clean−UP System(Promega製)を用いて回収した。
pESC−LEUベクターと共存可能な酵母発現ベクターであるpESC−URA(Stratagene製)についてもBamHIおよびHindIIIにて制限酵素処理した後、同様の方法で分離し、約6.6kbの遺伝子断片を回収した。
Ligation high Ver.2(TOYOBO製)を用いて、上記のyMjDOD遺伝子断片と酵母発現ベクターpESC−URAとを連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。
このようにして得られた組み換え大腸菌を100μg/ml アンピシリンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、100μg/ml アンピシリンを含むLB液体培地を用いて液体培養した後、得られた菌体からGenEluteTM HP Plasmid Miniprep Kit(SIGMA−ALDRICH製)を用いてプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAをyMjDOD/pESC−URAと命名した。
(3)チロシナーゼおよびDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼ共発現酵母株の作製
上記(1)および(2)で作製した、yBMTYR/pESC−LEUおよびyMjDOD/pESC−URA、yRSTYR/pESC−LEUおよびyMjDOD/pESC−URAの混合プラスミドで、それぞれ、サッカロミセス・セレビジエYPH500株(MATα ura3 lys2 ade2 trp1 his3 leu2)(Stratagene社)を酢酸リチウム法(Ito,H.et al, (1983) J. Bacteriol. 153(1), 163-168)、もしくはエレクトロポレーション法(Fromm ME,et al.,(1986) Nature 319(6056):791-793)で形質転換した。得られた組換え酵母をYeast Synthetic Drop−out Medium Supplements without histidine,leucine,tryptophan and uracil(SIGMA−ALDRICH社)および20mg/Lトリプトファン、20mg/Lのヒスチジンを含有するSD寒天培地(0.67% Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids(Difco社)、2% グルコース、2% 寒天)に塗抹した。この培地上でコロニーを形成したクローンを、それぞれ、YPH500/BMTYR/MjDOD、YPH500/RSTYR/MjDODと命名し、ベタキサンチン生産酵母株として以下のベタキサンチン生産試験に用いた。
[実施例20]
休止菌体を用いて、ベタキサンチン生産を行った実施例を以下に示す。
(前培養工程)
作製例3で作製したYPH500/BMTYR/MjDOD、YPH500/RSTYR/MjDODをYeast Synthetic Drop−out Medium Supplements without histidine,leucine,tryptophan and uracil(SIGMA−ALDRICH社)および20mg/Lトリプトファン、20mg/Lのヒスチジンを含有するSD培地2mlに植菌し、培養温度30℃、180rpmで18時間培養した。
(本培養工程)
得られた前培養液をOD600=0.2となるようにYeast Synthetic
Drop−out Medium Supplements without histidine,leucine,tryptophan and uracil(SIGMA−ALDRICH社)および20mg/Lトリプトファン、20mg/Lのヒスチジンを含有するSR培地(0.67% Yeast Nitrogen Base w/o
Amino Acids(Difco社)、2% ラフィノース)20mlに添加し、培養温度30℃、180rpmで培養した。OD600=0.7となった時点でガラクトース(終濃度2%)及びCuSO(終濃度40μg/ml)、FeSO(終濃度50μM)を添加し、タンパク発現誘導を行った。引き続き、培養を継続し、培養後9時間においてガラクトース(終濃度1%)及びラフィノース(終濃度1%)を、培養後24時間目においてリシン(終濃度30mg/L)及びトリプトファン(終濃度20mg/L)、ヒスチジン(終濃度20mg/L)、アデニン(終濃度20mg/L)を添加し、50時間目まで培養を実施した。
(変換工程)
上記の方法で得られた培養液全量を遠心分離(6000rpm、5分間)して得た菌体を一度50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)2mlにて洗浄後、再度、遠心分離して菌体を回収した。回収された菌体を反応バッファー[50μM FeSO、4μg/ml CuSO、10mM アスコルビン酸を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)]4mlにて懸濁した。得られた懸濁液に基質となるL−チロシンを添加することで反応を開始し、30 ℃、180rpmにて24時間反応させた。得られた反応液から遠心分離(12000rpm、1分間)した上清を0.45μmコスモスピンフィルター(日本ミリポア株式会社製)に通し、ろ液を分析サンプルとした。
解析は、実施例1と同様の方法で行なった。
(解析結果)
得られたLC/MS分析結果(抽出イオンクロマトグラム(EIC)およびUV470nm)を図10(YPH500/BMTYR/MjDOD)、図11(YPH500/RSTYR/MjDOD)に示す。また、生成したベタキサンチンの分子イオンピークのシグナルArea値の経時変化を表8(YPH500/BMTYR/MjDOD)、表9(YPH500/RSTYR/MjDOD)に示す。
分析の結果、YPH500/BMTYR/MjDOD、YPH500/RSTYR/MjDOD両株ともに、数種のベタキサンチン類およびベタキサンチンの前駆体であるベタラミン酸を生産することが確認された。両株共、グリシン‐ベタキサンチンの生成量が最も多く、YPH500/BMTYR/MjDODにおいては、次いでプロリン‐ベタキサンチン、DOPA−ベタキサンチン、イソロイシン−ベタキサンチン、バリン−ベタキサンチン、ロイシン−ベタキサンチンの順で多く生産しており、YPH500/RSTYR/MjDODにおいては、DOPA−ベタキサンチン、プロリン‐ベタキサンチン、イソロイシン−ベタキサンチン、バリン−ベタキサンチンの順で多く生産していた。以上より、酵母にチロシナーゼおよびDOPA 4,5−ジオキシゲナーゼを導入することでベタキサンチンが生産可能であることが示された。
Figure 0006531455
Figure 0006531455

Claims (10)

  1. ベタキサンチンの製造方法であって、
    該ベタキサンチンが、チロシン以外のアミノ酸またはアミンが付加されたものであり、
    チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性、およびDOPA4,5−ジオキ
    シゲナーゼ活性を有する大腸菌または酵母の存在下、水性媒体中で原料をベタキサンチン
    へと変換する工程(変換工程)を有し、
    該原料に加えて、該チロシン以外のアミノ酸またはアミンを添加することを特徴とする
    、ベタキサンチンを製造する方法。
  2. 前記変換工程の前に、チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素活性、およびD
    OPA 4,5−ジオキシゲナーゼ活性を有する微生物を水性媒体中で培養する工程(培
    養工程)を有することを特徴とする、請求項1に記載のベタキサンチンを製造する方法。
  3. 前記変換工程の後に、前記水性媒体からベタキサンチンを回収する工程(回収工程)を
    有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のベタキサンチンを製造する方
    法。
  4. 前記チロシンのフェノール環の3位を水酸化する酵素がチロシナーゼであることを特徴
    とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のベタキサンチンを製造する方法。
  5. 前記変換工程において、前記微生物として休止菌体を用いることを特徴とする、請求項
    1〜4のいずれか一項に記載のベタキサンチンを製造する方法。
  6. 前記原料がチロシン、および/または糖質原料であることを特徴とする、請求項1〜5
    のいずれか一項に記載のベタキサンチンを製造する方法。
  7. 前記変換工程において、前記水性媒体が、アスコルビン酸、銅および鉄からなる群から
    選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の
    ベタキサンチンを製造する方法。
  8. 前記ベタキサンチンが、チロシン以外のアミノ酸が付加されたベタキサンチンであり、
    前記原料に加えて、該チロシン以外のアミノ酸を添加することを特徴とする、請求項1
    〜7のいずれか一項に記載のベタキサンチンを製造する方法。
  9. 前記ベタキサンチンが、アミンが付加されたベタキサンチンであり、
    前記原料に加えて、該アミンを添加することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一
    項に記載のベタキサンチンを製造する方法。
  10. 前記ベタキサンチンが、非天然型のアミノ酸が付加されたベタキサンチンであり、
    前記原料に加えて、該非天然型アミノ酸を添加することを特徴とする、請求項1〜7の
    いずれか一項に記載のベタキサンチンを製造する方法。
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