以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態に係る成膜装置の主要な構成(つまり、ミスト噴射ヘッド部100)を示す断面図である。なお、図1には、X−Y−Z座標軸も併記している。また、図2は、ミスト噴射ヘッド部100をX方向から見た様子を示す図である。なお、図2においても、X−Y−Z座標軸を併記している。
成膜装置は、ミスト化された原料溶液を大気中に噴射することにより、基板110に対して膜を成膜する。つまり、成膜装置は、大気中での成膜処理であるミスト法により、基板110上に所望の膜を成膜する。
具体的に、原料溶液は、図には図示されていない容器に収容されており、当該容器において、超音波振動を利用して、原料溶液はミストされる。そして、ミスト化された原料溶液は、キャリアガスと共に、図示していない経路を通って、ミスト噴射ヘッド部100へと搬送される。
加熱器でもある載置部90上には、基板110が配置されている。つまり、載置部90は、基板110の加熱が可能である。そして、当該基板110上方に、ミスト噴射ヘッド部100が配置される。ここで、成膜処理時には、ミスト噴射ヘッド部100の下面と基板110の上面との間隔は、0.1mm〜50mm程度である。なお、ミスト噴射ヘッド部100および基板110は、大気圧下に配置されている。ここで、ミスト噴射ヘッド部100の底面と基板110の上面との間に形成される空間を、反応空間と称することとする。
所定の温度で加熱されている基板110の上面に対して、ミスト噴射ヘッド部100は、ミスト化された原料溶液を噴射する。これにより、基板110の上面に所望の膜が、製膜される。なお、成膜処理のときには、載置部90は、水平方向(X−Z平面内)に移動する。または、ミスト噴射ヘッド部100は、当該水平方向に移動する。
以下、ミスト噴射ヘッド部100の構成について、図を用いて具体的に説明する。
図1に示すように、ミスト噴射ヘッド部100は、原料溶液噴射用ノズル部N1と、反応材料噴射用ノズル部N2と、排気用ノズル部Ndとを有する。図1に示すように、原料溶液噴射用ノズル部N1、反応材料噴射用ノズル部N2および排気用ノズル部Ndは、当該順に、X方向に沿って並んで配設されている。なお、図1と異なり、反応材料噴射用ノズル部N2、原料溶液噴射用ノズル部N1および排気用ノズル部Ndは、当該順に、X方向に沿って並んで配設されていても良い。
また、原料溶液噴射用ノズル部N1の側面と反応材料噴射用ノズル部N2の側面とは、接触しているが、反応材料噴射用ノズル部N2の側面と排気用ノズル部Ndの側面との間には、所定の距離だけ離れている。つまり、原料溶液噴射用ノズル部N1と反応材料噴射用ノズル部N2とは、X方向に隣接しているが、排気用ノズル部Ndは、他のノズル部N1,N2とは、X方向に離れて配置されている。
上記のように、原料溶液噴射用ノズル部N1、反応材料噴出用ノズル部N2および排気用ノズル部Ndは、水平方向(X方向)に並んで配置されている。ここで、少なくとも排気用ノズル部Ndは、ミスト噴射ヘッド部100の最外側(図1では右端)に位置している。
まず、原料溶液噴射用ノズル部N1の構成について説明する。
原料溶液噴射用ノズル部N1は、ミスト化された原料溶液を噴射するノズルである。原料溶液噴射用ノズル部N1には、内部に空洞部(第一の空洞部と把握できる)2,3が形成されている。また、原料溶液噴射用ノズル部N1の上面には、原料溶液供給部1が配設されている。上記で述べた通り、ミスト噴射ヘッド部100の外部において、原料溶液はミスト化される。当該ミスト化された原料溶液は、キャリアガスと共に、図示していない経路を通って、原料溶液供給部1へと搬送される。原料溶液供給部1から出力されるミスト化された原料は、原料溶液噴射用ノズル部N1内の空洞部2,3へと充満する(供給される)。
また、原料溶液噴射用ノズル部N1の空洞部2,3内において、一方の側面部には、整流部(第一の整流部と把握できる)4が配設されている。当該整流部4は、整流板であり、原料溶液供給部1から供給されたミスト化された原料溶液の、空洞部2,3内の流れを整えることができる。
整流部4は、一方の側面部から、原料溶液噴射用ノズル部N1の空洞部2,3内の他方の側面部に向けて、延びている。ここで、当該他方の側面部は、上記一方の側面部とX方向に対抗している。また、整流部4の一方の端部は、原料溶液噴射用ノズル部N1の上部付近において、上記一方の側面部に取り付けられているが、整流部4の他方の端部は、上記他方の側面部とは接続されておらず、当該他方の側面部との間に小さい隙間が形成されている。整流部4は、一方の端部から他方の端部に進むにつれて、下方向に斜めに、空洞部2,3内に配設されている。
当該整流部4の配設により、空洞部2,3は、原料溶液噴射用ノズル部N1の上部に位置する小空間2と、原料溶液噴射用ノズル部N1の下部に位置する小空間3とに、区分される。ここで、小空間2と小空間3とは、整流部4の他方の端部と上記他方の側面部との間に形成された隙間を通じて、接続されている。また、小空間2は、原料溶液供給部1と接続されており、小空間3は、後述する原料溶液排出部5に接続されている。
原料溶液排出部5は、空洞部2,3(より具体的に、小空間3)において、上記一方の側面部に配設されている。また、原料溶液排出部5は、原料溶液噴射用ノズル部N1(空洞部2,3)の底面から離れた位置において、配設されている。
一方、ミスト噴射ヘッド部100は、当該ミスト噴射ヘッド部100の底面、つまりミスト噴射ヘッド部100の基板110に面する側において、原料溶液噴出部7が配設されている。ここで、当該原料溶液噴出部7から、ミスト化された原料溶液が基板110に対して噴出される。
ミスト噴射ヘッド部100内には、通路6が配設されている。そして、原料溶液排出部5は、当該通路6を介して、原料溶液噴出部7と接続されている。図3は、ミスト噴射ヘッド部100を、基板110の配設側から見た平面図である。つまり、図3は、ミスト噴射ヘッド部100の底面構造を示す平面図である。図3に示すように、原料溶液噴出部7は、細長い開口穴であるスリット状である。なお、当該開口部の幅(図3のX方向の寸法)は、0.1mm〜10mm程度である。
原料溶液噴射用ノズル部N1では、ミスト化された原料溶液は、原料溶液供給部1から、空洞部2,3内に供給される。そして、当該原料溶液は、整流部4により整流され、小空間2に充満した後、小空間3へと導かれ、当該小空間3において充満する。その後、ミスト化された原料溶液は、原料溶液排出部5から、通路6を介して、原料溶液噴出部7へと導かれる。そして、ミスト化された原料溶液は、原料溶液噴出部7から、基板110の上面に向けて、噴出される。
次に、反応材料噴射用ノズル部N2の構成について説明する。
反応材料噴射用ノズル部N2は、原料溶液との反応に寄与する反応材料(たとえば、酸化剤)を基板110に対して噴出するノズルである。反応材料噴射用ノズル部N2には、内部に空洞部(第二の空洞部と把握できる)12,13が形成されている。また、反応材料噴射用ノズル部N2の上面には、反応材料供給部11が配設されている。反応材料は、反応材料噴射用ノズル部N2外から、反応材料供給部11を介して、空洞部12,13内へと供給される。
ここで、反応材料は、気体であっても液体であっても良い。液体の場合には、超音波振動等を利用してミスト化された液体(反応材料)が、キャリアガスと共に、図示していない経路を通って、反応材料噴射用ノズル部N2内へと搬送される。反応材料供給部11から出力される反応材料は、反応材料噴射用ノズル部N2内の空洞部12,13へと充満する(供給される)。
また、反応材料噴射用ノズル部N2の空洞部12,13内において、一方の側面部には、整流部(第二の整流部と把握できる)14が配設されている。当該整流部14は、整流板であり、反応材料供給部11から供給された反応材料の、空洞部12,13内の流れを整えることができる。
整流部14は、一方の側面部から、反応材料噴射用ノズル部N2の空洞部12,13内の他方の側面部に向けて、延びている。ここで、当該他方の側面部は、上記一方の側面部とX方向に対抗している。また、整流部14の一方の端部は、反応材料噴射用ノズル部N2の上部付近において、上記一方の側面部に取り付けられているが、整流部14の他方の端部は、上記他方の側面部とは接続されておらず、当該他方の側面部との間に小さい隙間が形成されている。整流部14は、一方の端部から他方の端部に進むにつれて、下方向に斜めに、空洞部12,13内に配設されている。
当該整流部14の配設により、空洞部12,13は、反応材料噴射用ノズル部N2の上部に位置する小空間12と、反応材料噴射用ノズル部N2の下部に位置する小空間13とに、区分される。ここで、小空間12と小空間13とは、整流部14の他方の端部と上記他方の側面部との間に形成された隙間を通じて、接続されている。また、小空間12は、反応材料供給部11と接続されており、小空間13は、後述する反応材料排出部15に接続されている。
反応材料排出部15は、空洞部12,13(より具体的に、小空間13)において、上記一方の側面部に配設されている。また、反応材料排出部15は、反応材料噴射用ノズル部N2(空洞部12,13)の底面から離れた位置において、配設されている。
一方、ミスト噴射ヘッド部100は、当該ミスト噴射ヘッド部100の底面、つまりミスト噴射ヘッド部100の基板110に面する側において、反応材料噴出部17が配設されている。ここで、当該反応材料噴出部17から、反応材料が基板110に対して噴出される。
ミスト噴射ヘッド部100内には、通路16が配設されている。そして、反応材料排出部15は、当該通路16を介して、反応材料噴出部17と接続されている。図3に示すように、反応材料噴出部17は、細長い開口穴であるスリット状である。なお、当該開口部の幅(図3のX方向の寸法)は、0.1mm〜10mm程度である。
反応材料噴射用ノズル部N2では、反応材料は、反応材料供給部11から、空洞部12,13内に供給される。そして、当該反応材料は、整流部14により整流され、小空間12に充満した後、小空間13へと導かれ、当該小空間13において充満する。その後、反応材料は、反応材料排出部15から、通路16を介して、反応材料噴出部17へと導かれる。そして、反応材料は、反応材料噴出部17から、基板110の上面に向けて、噴出される。
次に、排気用ノズル部Ndの構成について説明する。
排気用ノズル部Ndは、排気処理を行うノズルである。排気用ノズル部Ndは、原料溶液噴射用ノズル部N1が原料溶液を噴出している流量(Q1)と、反応材料噴出用ノズル部N2が反応材料を噴出している流量(Q2)と、の和以上の流量(Q3)での、排気処理を行う。つまり、排気流量Q3≧原料溶液の噴出流量Q1+反応材料の噴出流量Q2、である。
排気用ノズル部Ndには、内部に空洞部(第三の空洞部と把握できる)d2,d3が形成されている。また、排気用ノズル部Ndの上面には、排気物出口部d1が配設されている。排気物出口部d1は、排気用ノズル部Ndの上面に配設されており、具体的には、後述する排気物導入部d5より上方に配設されており、排気物を空洞部d2,d3から排気用ノズル部Nd外へと排出する。
ここで、排気物とは、反応空間からの反応残渣等である。排気物出口部d1は、図示していない経路を介して、図示していない排気ポンプに接続されている。つまり、排気物は、排気物出口物d1および上記経路を介して、排気用ノズル部Ndから上記排気ポンプへと吸引される。
また、排気用ノズル部Ndの空洞部d2,d3内において、複数の整流部(第三の整流部と把握できる)d4が配設されている。当該整流部d4は、整流板であり、後述する排気物導入部d6から導入された排気物の、空洞部d2,d3内の流れを整えることができる。
一部の整流部d4は、空洞部d2,d3の一方の側面部に取り付けられており、残りの整流部d4は、空洞部d2,d3の他方の側面部に取り付けられている。ここで、当該他方の側面部は、上記一方の側面部とX方向に対抗している。一方の側面部に取り付けられている整流部d4は、他方の側面部に向けて、延びており、他方の側面部に取り付けられている整流部d4は、一方の側面部に向けて、延びている。
なお、一方の側面部に整流部d4の一方端が取り付けられているとき、当該整流部d4の他方端は、空洞部d2,d3内の何れの部材との接続しない自由端である。また、他方の側面部に整流部d4の一方端が取り付けられているとき、当該整流部d4の他方端は、空洞部d2,d3内の何れの部材との接続しない自由端である。各整流部d4は、一方の端部から他方の端部に進むにつれて、下方向に斜めに、空洞部d2,d3内に配設されている。ここで、一方の側面部に取り付けられている整流部d4と、他方の側面部に取り付けられている整流部d4とは、排気用ノズル部Ndの上から下にかけて交互に配置されている。
複数の整流部d4の配設により、空洞部d2,d3は、排気用ノズル部Ndの空洞部d2,d3を、複数の小空間に区画する。ここで、隣接する小空間同士は、整流部d4により形成される小さい隙間を介して接続される。複数の小空間には、排気用ノズル部Ndの最上部に位置する小空間d2と、排気用ノズル部Ndの最下部に位置する小空間d3とが含まれている。ここで、小空間d2は、排気物出口部d1と接続されており、小空間d3は、後述する排気物導入部d5に接続されている。
排気物導入部d5は、空洞部d2,d3(より具体的に、小空間d3)において、上記他方の側面部に配設されている。また、排気物導入部d5は、排気用ノズル部Nd(空洞部d2,d3)の底面から離れた位置において、配設されている。
一方、ミスト噴射ヘッド部100は、当該ミスト噴射ヘッド部100の底面、つまりミスト噴射ヘッド部100の基板110に面する側において、排気部d7が配設されている。ここで、当該排気部d7は、反応空間に対して排気処理を行う。
ミスト噴射ヘッド部100内には、通路d6が配設されている。そして、排気物導入部d5は、当該通路d6を介して、排気部d7と接続されている。図3に示すように、排気部d7は、細長い開口穴であるスリット状である。なお、当該開口部の幅(図3のX方向の寸法)は、0.1mm〜10mm程度である。
図1,3に示すように、原料溶液噴出部7、反応材料噴出部17および排気部d7は、当該順に、X方向に配置されている。なお、図とは異なるが、反応材料噴出部17、原料溶液噴出部7および排気部d7は、当該順に、X方向に配置されていても良い。
排気用ノズル部Ndでは、反応空間内の排気物は、排気部d7から吸引される。そして、排気物は、通路d6を介して、排気物導入部d5へと伝搬される。当該排気物導入部d5から、小空間d3内に出力された排気物は、整流部d4により整流され、小空間d2へと移動する。その後、排気物は、排気物出口物d1を介して、排気用ノズル部Nd外へと排出される。
上述したように、排気用ノズル部Ndは、他のノズル部N1,N2とは、X方向に離れて配置されている。したがって、排気用ノズル部Ndと他のノズル部N1,N2との間には、吹き抜け部35が生じる。そこで、ミスト噴射ヘッド部100は、ベースプレート部36を備えている。ベースプレート部36は、当該吹き抜け部35を、基板110配置側から塞いでいる(図1,3参照)。
また、図3を参照して、ミスト噴射ヘッド部100は、基板110に面している側(底面)において、当該ミスト噴射ヘッド部100の枠部30を有する。当該枠部30は、ミスト噴射ヘッド部100の底面の縁の部分であり、ミスト噴射ヘッド部100の底面内部側を周囲から取り囲むように、縁取られている部分である。そして、図1から分かるように、当該枠部30は、基板110側に突出している。
つまり、当該枠部30により、反応空間は囲繞されている。ただし、枠部30の端部と基板110の上面とは、接触していない。
反応空間に、ミスト化された原料溶液と反応材料とが噴射されると、加熱されている基板110上において、原料溶液と反応材料とが反応し、当該基板110の上面に所望の膜が成膜される。なお、反応空間内の反応残渣等は、排気用ノズル部Ndにより、反応空間から排除される。
以上のように、本実施の形態に係る成膜装置では、ミスト噴射ヘッド部100を有しており、当該ミスト噴射ヘッド部100は、原料溶液噴射用ノズル部N1を有している。そして、原料溶液噴射用ノズル部N1は、空洞部2,3内に、当該空洞部2,3の底面より離れた位置において、一方の側面側に原料溶液排気部5が配設されている。
したがって、原料溶液噴射用ノズル部N1内の空洞部2,3で、原料溶液と残留水分とが反応し、パーティクルが生成されたとしても、当該パーティクルは、小空間3における、底面から原料溶液排気部5までの間の領域に、トラップされる。つまり、小空間3における当該領域は、パーティクルトラップとして機能し、当該領域内には、パーティクルが捕獲され、原料溶液排気部5、通路6および原料溶液噴出部7へと搬送されることを防止できる。よって、各部分5,6,7において、パーティクルが付着し、目詰まりが発生することも防止できる。
また、上記と異なり、整流部4の配設を省略することもができるが、原料溶液噴射用ノズル部N1内の空洞部2,3には、整流部4が配設されている。
したがって、空洞部2,3内におけるミスト化された原料溶液の流れを整えることができ、パーティクルトラップとして機能している上記領域における、パーティクルの捕獲をより確実にする。なお、整流部4が取り付けられている側面部と、原料溶液排気部5が配設されている側面とは同じである(両方4,5共、一方の側面部に配設されている)。よって、液滴等が、一方の側面部を伝って、原料溶液排気部5へと流れることも防止できる。
また、原料溶液噴出部7は、細長い開口穴であるスリット状である。したがって、大面積の基板110に対して、均等に、ミスト化された原料溶液を噴霧することができる。
また、上記と異なり、反応材料噴射用ノズル部N2の配設を省略することもができるが、ミスト噴射ヘッド部100は、反応材料噴射用ノズル部N2を有している。したがって、大気中における成膜処理における、反応促進が可能となる。また、多種多用の膜を成膜することもできる。
また、反応材料噴射用ノズル部N2は、空洞部12,13内に、当該空洞部12,13の底面より離れた位置において、一方の側面側に反応材料排出部15が配設されている。
したがって、反応材料噴射用ノズル部N2内の空洞部12,13で、反応材料と大気とが反応し、パーティクルが生成されたとしても、当該パーティクルは、小空間13における、底面から反応材料排出部15までの間の領域に、トラップされる。つまり、小空間13における当該領域は、パーティクルトラップとして機能し、当該領域内には、パーティクルが捕獲され、反応材料排出部15、通路16および反応材料噴出部17へと搬送されることを防止できる。よって、各部分15,16,17において、パーティクルが付着し、目詰まりが発生することも防止できる。
また、上記と異なり、整流部14の配設を省略することもができるが、反応材料噴射用ノズル部N2内の空洞部12,13には、整流部14が配設されている。
したがって、空洞部12,13内における反応材料の流れを整えることができ、パーティクルトラップとして機能している上記領域における、パーティクルの捕獲をより確実にする。なお、整流部14が取り付けられている側面部と、反応材料排気部15が配設されている側面とは同じである(両方14,15共、一方の側面部に配設されている)。よって、液滴等が、一方の側面部を伝って、反応材料排出部15へと流れることも防止できる。
また、反応材料噴出部17は、細長い開口穴であるスリット状である。したがって、大面積の基板110に対して、均等に、反応材料を噴霧することができる。
また、上記と異なり、排気用ノズル部Ndの配設を省略することもができるが、ミスト噴射ヘッド部100は、排気用ノズル部Ndを有している。したがって、排気用ノズル部Ndへと移動する、原料溶液および反応材料の流れを作り出すことができる。よって、反応空間における原料溶液等の流れが乱れることを防止でき、成膜される膜の膜質を向上させることができる。また、反応空間から外側に原料溶液等が拡散することを抑制することができる。
また、排気処理において、排気流量Q3≧原料溶液の噴出流量Q1+反応材料の噴出流量Q2、である。したがって、反応空間内に噴射された、原料溶液および反応材料が、反応空間内の上記流れをより確実にすることができる。また、原料溶液および反応材料が、反応空間から外側に拡散することを確実に防止できる。
また、原料溶液噴射用ノズル部N1、反応材料噴出用ノズル部N2および排気用ノズル部Ndは、X方向に並んで配置されており、少なくとも排気用ノズル部Ndは、ミスト噴射ヘッド部100の最外側に位置している。
したがって、反応空間において、原料溶液および反応材料は、ミスト噴射ヘッド部100の最外側まで移動する。したがって、原料溶液および反応材料と基板110とが接触する領域が、最大となり、反応空間における原料溶液等の未反応を最小化にすることができる。
また、排気用ノズル部Ndは、空洞部d2,d3内に、当該空洞部d2,d3の底面より離れた位置において、他方の側面側に排気物導入部d5が配設されている。
したがって、排気物導入部d5から空洞部d2,d3内に取り込まれた排気物は、小空間d3における、底面から排気物導入部d5までの間の領域に、トラップされる。つまり、小空間d3における当該領域は、パーティクルトラップとして機能し、当該領域内には、粒径の大きな排気物が捕獲され、排気物出口部d1より先に、粒径が大きな排気物が流れることを防止できる。これにより、排気ポンプに配設されるフィルターの寿命を長くすることができる。
また、上記と異なり、整流部d4の配設を省略することもができるが、排気用ノズル部Nd内の空洞部d2,d3には、複数の整流部d4が配設されている。
したがって、排気物出口部d1より先に、粒径が大きな排気物が流れることをより確実に防止することができる。これにより、排気ポンプに配設されるフィルターの寿命をより長くすることができる。
また、排気部d7は、細長い開口穴であるスリット状である。したがって、より広範囲に渡って、排気処理が可能となる。また、原料溶液等が排気部d7へ向かうX方向の流れを、均等にすることができる。
また、ミスト噴射ヘッド部100は、吹き抜け部35を基板110側から塞ぐベースプレート部36を有している。したがって、排気用ノズル部Ndを他のノズル部N1,N2から離して配置させたとしても、反応空間から吹き抜け部35へと、原料溶液等が流れることを防止できる。また、ミスト噴射ヘッド部100における、排気用ノズル部Ndおよび他のノズル部N1,N2の組み立てが容易となる。
また、ミスト噴射ヘッド部100の枠部30は、基板110側に突出している。したがって、反応空間を囲繞することができ、反応空間から原料溶液等が拡散することを抑制することができる。
また、載置部90またはミスト噴射ヘッド部100は、水平方向に移動可能である。したがって、大面積の基板110の全面に対しても、本実施の形態に係る成膜装置(ミスト噴射ヘッド部100)を用いた成膜処理が可能となる。
<実施の形態2>
本実施の形態では、反応材料噴射用ノズル部は、二つである。
図4は、本実施の形態に係る成膜装置の主要な構成(つまり、ミスト噴射ヘッド部100)を示す断面図である。なお、図4には、X−Y−Z座標軸も併記している。また、図5は、図4に示したミスト噴射ヘッド部100をX方向から見た様子を示す図である。なお、図5においても、X−Y−Z座標軸を併記している。また、図6は、図4に示したミスト噴射ヘッド部100を、基板110の配設側から見た平面図である。つまり、図6は、図4に示したミスト噴射ヘッド部100の底面構造を示す平面図である。
以下、本実施の形態に係るミスト噴射ヘッド部100の構成について、図を用いて具体的に説明する。
図4に示すように、ミスト噴射ヘッド部100は、反応材料噴射用ノズル部N3と、原料溶液噴射用ノズル部N1と、反応材料噴射用ノズル部N2と、排気用ノズル部Ndとを有する。図4に示すように、反応材料噴射用ノズル部N3、原料溶液噴射用ノズル部N1、反応材料噴射用ノズル部N2および排気用ノズル部Ndは、当該順に、X方向に沿って並んで配設されている。つまり、原料溶液噴射用ノズル部N1は、一方の反応材料噴射用ノズル部N2と他方の反応材料噴射用ノズル部N3とにより、側方から(X方向から)挟まれている。
また、原料溶液噴射用ノズル部N1の側面と反応材料噴射用ノズル部N2の側面とは、接触している。原料溶液噴射用ノズル部N1の側面と反応材料噴射用ノズル部N3の側面とは、接触している。しかしながら、反応材料噴射用ノズル部N2の側面と排気用ノズル部Ndの側面との間には、所定の距離だけ離れている。つまり、反応材料噴射用ノズル部N3と原料溶液噴射用ノズル部N1と反応材料噴射用ノズル部N2とは、X方向に隣接しているが、排気用ノズル部Ndは、他のノズル部N1,N2,N3とは、X方向に離れて配置されている。
上記のように、反応材料噴射用ノズル部N3,原料溶液噴射用ノズル部N1、反応材料噴出用ノズル部N2および排気用ノズル部Ndは、水平方向(X方向)に並んで配置されている。ここで、少なくとも排気用ノズル部Ndは、ミスト噴射ヘッド部100の最外側(図4では右端)に位置している。
所定の温度で加熱されている基板110の上面に対して、当該ミスト噴射ヘッド部100は、ミスト化された原料溶液を噴射する。これにより、基板110の上面に所望の膜が、成膜される。なお、成膜処理のときには、載置部90は、水平方向(X−Z平面内)に移動する。または、ミスト噴射ヘッド部100は、当該水平方向に移動する。
ここで、実施の形態1に係るミスト噴射ヘッド部100と、本実施の形態に係るミスト噴射ヘッド部100とにおいて、原料溶液噴射用ノズル部N1、反応材料噴射用ノズル部N2および排気用ノズル部Ndの構成は同じである。したがって、これらの部材N1,N2,Ndの構成の説明は、ここでは省略する。
反応材料噴射用ノズル部N3の構成は、反応材料噴射用ノズル部N2の構成と同様である。
つまり、反応材料噴射用ノズル部N3は、原料溶液との反応に寄与する反応材料(反応材料噴射用ノズル部N2から噴射される反応材料と同じ、または相違していても良い)を基板110に対して噴出するノズルである。反応材料噴射用ノズル部N3には、内部に空洞部(第二の空洞部と把握できる)22,23が形成されている。また、反応材料噴射用ノズル部N3の上面には、反応材料供給部21が配設されている。反応材料は、反応材料噴射用ノズル部N3外から、反応材料供給部21を介して、空洞部22,23内へと供給される。
ここで、反応材料は、気体であっても液体であっても良い。液体の場合には、超音波振動等を利用してミスト化された液体(反応材料)が、キャリアガスと共に、図示していない経路を通って、反応材料噴射用ノズル部N3内へと搬送される。反応材料供給部21から出力される反応材料は、反応材料噴射用ノズル部N3内の空洞部22,23へと充満する(供給される)。
また、反応材料噴射用ノズル部N3の空洞部22,23内において、一方の側面部には、整流部(第二の整流部と把握できる)24が配設されている。当該整流部24は、整流板であり、反応材料供給部21から供給された反応材料の、空洞部22,23内の流れを整えることができる。
整流部24は、一方の側面部から、反応材料噴射用ノズル部N3の空洞部22,23内の他方の側面部に向けて、延びている。ここで、当該他方の側面部は、上記一方の側面部とX方向に対抗している。また、整流部24の一方の端部は、反応材料噴射用ノズル部N3の上部付近において、上記一方の側面部に取り付けられているが、整流部24の他方の端部は、上記他方の側面部とは接続されておらず、当該他方の側面部との間に小さい隙間が形成されている。整流部24は、一方の端部から他方の端部に進むにつれて、下方向に斜めに、空洞部22,23内に配設されている。
当該整流部24の配設により、空洞部22,23は、反応材料噴射用ノズル部N3の上部に位置する小空間22と、反応材料噴射用ノズル部N3の下部に位置する小空間23とに、区分される。ここで、小空間22と小空間23とは、整流部24の他方の端部と上記他方の側面部との間に形成された隙間を通じて、接続されている。また、小空間22は、反応材料供給部21と接続されており、小空間23は、後述する反応材料排出部25に接続されている。
反応材料排出部25は、空洞部22,23(より具体的に、小空間23)において、上記一方の側面部に配設されている。また、反応材料排出部25は、反応材料噴射用ノズル部N3(空洞部22,23)の底面から離れた位置において、配設されている。
一方、ミスト噴射ヘッド部100は、当該ミスト噴射ヘッド部100の底面、つまりミスト噴射ヘッド部100の基板110に面する側において、反応材料噴出部27が配設されている。ここで、当該反応材料噴出部27から、反応材料が基板110に対して噴出される。
ミスト噴射ヘッド部100内には、通路26が配設されている。そして、反応材料排出部25は、当該通路26を介して、反応材料噴出部27と接続されている。図6に示すように、反応材料噴出部27は、細長い開口穴であるスリット状である。なお、当該開口部の幅(図6のX方向の寸法)は、0.1mm〜10mm程度である。
反応材料噴射用ノズル部N3では、反応材料は、反応材料供給部21から、空洞部22,23内に供給される。そして、当該反応材料は、整流部24により整流され、小空間22に充満した後、小空間23へと導かれ、当該小空間23において充満する。その後、反応材料は、反応材料排出部25から、通路26を介して、反応材料噴出部27へと導かれる。そして、反応材料は、反応材料噴出部27から、基板110の上面に向けて、噴出される。
図4,6に示すように、反応材料噴出部27、原料溶液噴出部7、反応材料噴出部17および排気部d7は、当該順に、X方向に配置されている。
排気用ノズル部Ndは、他のノズル部N1,N2,N3とは、X方向に離れて配置されている。したがって、排気用ノズル部Ndと他のノズル部N1,N2,N3との間には、吹き抜け部35が生じる。そこで、ミスト噴射ヘッド部100は、ベースプレート部36を備えている。ベースプレート部36は、当該吹き抜け部35を、基板110配置側から塞いでいる(図4,6参照)。
また、本実施の形態では、ベースプレート部36には、不活性ガス供給部(図示せず)と、通路44と、噴出部38とが設けられている(図4,6参照)。
不活性ガス供給部を介して、ミスト噴射ヘッド部100の外部から送られてきた不活性ガスは、ベースプレート部36へ供給される。通路44は、ベースプレート部36内に配設されており、当該供給された不活性ガスは、通路44内を伝搬する。不活性ガス噴出部38は、ベースプレート部36の基板110に面する側に配設されており、当該不活性ガス噴出部38から、不活性ガスが基板110に向けて噴射される。図6に示すように、不活性ガス噴出部38は、細長い開口穴であるスリット状である。なお、当該開口部の幅(図6のX方向の寸法)は、0.1mm〜10mm程度である。
なお、実施の形態1に係るベースプレート部36には、上記した、不活性ガス供給部、通路44および噴出部38が配設されていなかった。しかしながら、実施の形態1に係るベースプレート部36においても、本実施の形態に係るベースプレート部36と同様、不活性ガス供給部、通路44および噴出部38が配設されていても良い。
さらに、本実施の形態に係るベースプレート部36には、内部において、温度調整部28が配設されている。当該温度調整部28は、ベースプレート部36において、温度の調整を行うことができる。
なお、実施の形態1に係るベースプレート部36には、上記した、温度調整部28が配設されていなかった。しかしながら、実施の形態1に係るベースプレート部36においても、本実施の形態に係るベースプレート部36と同様、温度調整部28が配設されていても良い。
ここで、本実施の形態では、原料溶液噴射用ノズル部N1内および反応材料噴射用ノズル部N2,N3内においても、上述した温度調整部8,18,28が配設されている。なお、実施の形態1に係る、原料溶液噴射用ノズル部N1内および反応材料噴射用ノズル部N2内には、上記した、温度調整部8,18が配設されていなかった。しかしながら、実施の形態1に係る原料溶液噴射用ノズル部N1内および反応材料噴射用ノズル部N2内においても、本実施の形態に係る、原料溶液噴射用ノズル部N1内および反応材料噴射用ノズル部N2内と同様、温度調整部8,18が配設されていても良い。
また、図6を参照して、ミスト噴射ヘッド部100は、基板110に面している側(底面)において、当該ミスト噴射ヘッド部100の枠部30を有する。当該枠部30は、ミスト噴射ヘッド部100の底面の縁の部分であり、ミスト噴射ヘッド部100の底面内部側を周囲から取り囲むように、縁取られている部分である。そして、図4から分かるように、当該枠部30は、基板110側に突出している。
つまり、当該枠部30により、反応空間は囲繞されている。ただし、枠部30の端部と基板110の上面とは、接触していない。
さらに、図4〜6を参照して、本実施の形態では、ミスト噴射ヘッド部100には、不活性ガス供給部39,41と、通路45,46と、噴出部40,42とが設けられている。
不活性ガス供給部39,41を介して、ミスト噴射ヘッド部100の外部から送られてきた不活性ガスは、当該ミスト噴射ヘッド部100内へ供給される。通路45,46は、ミスト噴射ヘッド部100内に配設されており、当該供給された不活性ガスは、通路45,46内を伝搬する。不活性ガス噴出部40,42は、ミスト噴射ヘッド部100の基板110に面する側に配設されており、当該不活性ガス噴出部40,42から、不活性ガスが基板110に向けて噴射される。
図6に示すように、不活性ガス噴出部40,42は、細長い開口穴であるスリット状である。なお、当該開口部の幅(不活性ガス噴出部40においては図6のX方向の寸法、不活性ガス噴出部42においては図6のZ方向の寸法)は、0.1mm〜10mm程度である。
ここで、図4,6に示すように、排気用ノズル部Ndと対抗するミスト噴射ヘッド部100の端部において、不活性ガス噴出部40は、上述した枠部30または枠部30に隣接する領域に配設されている。また、図5,6に示すように、図4の正面側および背面側のミスト噴射ヘッド部100の端部において、不活性ガス噴出部42は、上述した枠部30または枠部30に隣接する領域に配設されている。
なお、実施の形態1に係るミスト噴射ヘッド部100には、上記した、不活性ガス供給部39,41と、通路45,46と、噴出部40,42が配設されていなかった。しかしながら、実施の形態1に係るミスト噴射ヘッド部100においても、本実施の形態に係るミスト噴射ヘッド部100と同様、不活性ガス供給部39,41と、通路45,46と、噴出部40,42が配設されていても良い。
反応空間に、ミスト化された原料溶液と反応材料とが噴射されると、加熱されている基板110上において、原料溶液と反応材料とが反応し、当該基板110の上面に所望の膜が成膜される。なお、反応空間内の反応残渣等は、排気用ノズル部Ndにより、反応空間から排除される。
以上のように、本実施の形態に係るミスト噴射ヘッド部100は、二つの反応材料噴射用ノズル部N2,N3を有する。ここで、原料溶液噴射用ノズル部N1は、一方の反応材料噴射用ノズル部N2と他方の反応材料噴射用ノズル部N3とにより、側方から挟まれている。
したがって、反応空間に、異なる反応材料を噴出することができる。よって、基板110上に多種の膜を成膜することが可能となる。また、反応材料噴射用ノズル部N2,N3から同じ反応材料を噴出させた場合には、基板110上における所望の膜の成膜速度を向上させることができる。
また、反応材料噴射用ノズル部N2,N3は、温度調整部を有している。したがって、たとえば、反応材料噴射用ノズル部N2,N3内に溜まった液滴を蒸発させることができる。よって、当該蒸発した反応材料を、当該反応材料噴射用ノズル部N2,N3から噴射させる反応材料として、利用することができる。
なお、原料溶液噴射用ノズル部N1においても、温度調整部が配設されている。したがって、たとえば、原料溶液のミスト状態を維持することができる。つまり、原料溶液噴射用ノズル部N1から噴射される原料溶液の液滴が大きくなり、大きな液滴となった原料溶液が基板110の上面に滴下されることを防止できる。
また、ベースプレート部36には、基板110に対して不活性ガスを噴射する不活性ガス噴出部38が配設されている。したがって、ベースプレート部36の下方に存する原料溶液等を基板110の面上に押し付けることが可能となる。したがって、原料溶液等の利用効率を向上させることができる。
また、ベースプレート部36は、温度調整部28を有している。したがって、反応空間における、原料溶液等のミスト状態の維持が可能となる。また、ベースプレート部36における液滴の付着を防止できる。さらに、基板110上における成膜反応の促進を図ることもできる。
また、ミスト噴射ヘッド部100の枠部30または当該枠部30の近傍において、基板110に対して不活性ガスを噴射する不活性ガス噴出部40,42が配設されている。したがって、不活性ガスにより、反応空間を囲繞することができ、反応空間から原料溶液等が拡散することを抑制することができる。
<実施の形態3>
図7は、本実施の形態に係るミスト噴射ヘッド部100の構成を示す断面図である。図7には、X−Y−Z座標軸も併記している。また、本実施の形態に係るミスト噴射ヘッド部100をX方向から見た様子は、図5と同様である。
実施の形態2に係るミスト噴射ヘッド部100では、二つの反応材料噴射用ノズル部N2,N3を有していた。本実施の形態に係るミスト噴射ヘッド部100では、反応材料噴射用ノズル部NTは一つであり、当該反応材料噴射用ノズル部NTから、2種類の反応材料を噴射させることができる。
実施の形態2に係るミスト噴射ヘッド部100と本実施の形態に係るミスト噴射ヘッド部100とでは、反応材料噴射用ノズル部の構成が異なるが、他の構成は同じである。したがって、ここでは、両者において異なる構成のみについて説明を行う。
図7に示すように、ミスト噴射ヘッド部100は、反応材料噴射用ノズル部NTと、原料溶液噴射用ノズル部N1と、排気用ノズル部Ndとを有する。図4に示すように、反応材料噴射用ノズル部NT、原料溶液噴射用ノズル部N1および排気用ノズル部Ndは、当該順に、X方向に沿って並んで配設されている。
また、原料溶液噴射用ノズル部N1の側面と反応材料噴射用ノズル部NTの側面とは、接触している。しかしながら、原料溶液噴射用ノズル部N1の側面と排気用ノズル部Ndの側面との間には、所定の距離だけ離れている。つまり、反応材料噴射用ノズル部NTと原料溶液噴射用ノズル部N1とは、X方向に隣接しているが、排気用ノズル部Ndは、他のノズル部N1,NTとは、X方向に離れて配置されている。
上記のように、反応材料噴射用ノズル部NT,原料溶液噴射用ノズル部N1および排気用ノズル部Ndは、水平方向(X方向)に並んで配置されている。ここで、少なくとも排気用ノズル部Ndは、ミスト噴射ヘッド部100の最外側(図7では右端)に位置している。
所定の温度で加熱されている基板110の上面に対して、当該ミスト噴射ヘッド部100は、ミスト化された原料溶液を噴射する。これにより、基板110の上面に所望の膜が、製膜される。なお、成膜処理のときには、載置部90は、水平方向(X−Z平面内)に移動する。または、ミスト噴射ヘッド部100は、当該水平方向に移動する。
次に、反応材料噴射用ノズル部NTの構成について説明する。
反応材料噴射用ノズル部NTは、原料溶液との反応に寄与する反応材料を基板110に対して噴出するノズルである。反応材料噴射用ノズル部NTには、内部に二つの空洞部62,72が形成されている。図7に示すように、二つの空洞部62,72は、反応材料噴射用ノズル部NT内において、上下方向(Y方向)に並んで配設されている。具体的には、反応材料噴射用ノズル部NT内において、上部側には、一方の空洞部62が設けられており、下部側には、他方の空洞部72が設けられている。ここで、一方の空洞部62と他方の空洞部72とは、反応材料噴射用ノズル部NT内では接続されておらず、別個独立の空間である。
図7に示すように、一方の空洞部62において、Z方向の側面には、一方の反応材料供給部61が配設されている。一方の反応材料は、反応材料噴射用ノズル部NT外から、一方の反応材料供給部61を介して、一方の空洞部62内へと供給される。
また、他方の空洞部72において、Z方向の側面には、他方の反応材料供給部71が配設されている。他方の反応材料は、反応材料噴射用ノズル部NT外から、他方の反応材料供給部71を介して、他方の空洞部72内へと供給される。
ここで、各反応材料は、気体であっても液体であっても良い。液体の場合には、超音波振動等を利用してミスト化された液体(反応材料)が、キャリアガスと共に、図示していない経路を通って、反応材料噴射用ノズル部NT内へと搬送される。一方の反応材料供給部61から出力される一方の反応材料は、反応材料噴射用ノズル部NT内の空洞部62へと充満する(供給される)。他方の反応材料供給部71から出力される他方の反応材料は、反応材料噴射用ノズル部NT内の空洞部72へと充満する(供給される)。
なお、図7では図示を省略しているが、各空洞部62,72内において、実施の形態1,2で説明した機能・作用(つまり、空洞部62,72内における反応材料の流れを整え、反応材料と大気とが反応し、パーティクルが生成されたとしても、当該パーティクルが、空洞部62,77の底面から反応材料排気部65,75までの間の領域に、トラップされることを促進する)を有する整流部が配設されていても良い。
また、一方の空洞部62において、X方向の側面には、一方の反応材料排出部65が配設されている。ここで、一方の反応材料排出部65は、一方の空洞部62の底面から離れた位置において、配設されている。
また、他方の空洞部72において、X方向の側面には、他方の反応材料排出部75が配設されている。ここで、他方の反応材料排出部75は、他方の空洞部72の底面から離れた位置において、配設されている。
一方、ミスト噴射ヘッド部100)は、当該ミスト噴射ヘッド部100(図7では、反応材料噴射用ノズル部NTの底面、つまりミスト噴射ヘッド部100の基板110に面する側において、一方の反応材料噴出部67および他方の反応材料噴出部77が配設されている。ここで、一方の反応材料噴出部67から、一方の反応材料が基板110に対して噴出され、他方の反応材料噴出部77から、他方の反応材料が基板110に対して噴出される。
ミスト噴射ヘッド部100(図7の構成例では、反応材料噴射用ノズル部NT)内には、通路66および通路76が配設されている。そして、一方の反応材料排出部65は、通路66を介して、一方の反応材料噴出部67と接続されている。また、他方の反応材料排出部75は、通路76を介して、他方の反応材料噴出部77と接続されている。
なお、図7の構成では、反応材料噴射用ノズル部NTの底面において、原料溶液を基板110に対して噴出する原料溶液噴出部7が配設されている。本実施の形態では、原料溶液排出部5と原料溶液噴出部7と接続する通路6は、反応材料噴射用ノズル部NT内に配設されている。
よって、図7の構成例では、反応材料噴射用ノズル部NTの基板110に面する側において、一方の反応材料噴出部67、原料溶液噴出部7および他方の反応材料噴出部77が、当該順にX方向に配設されている。ここで、各反応材料噴出部67,77および原料溶液噴出部7は、細長い開口穴であるスリット状である。なお、当該開口部の幅(図7のX方向の寸法)は、0.1mm〜10mm程度である。
反応材料噴射用ノズル部NTでは、一方の反応材料は、一方の反応材料供給部61から、空洞部62内に供給される。そして、当該一方の反応材料は、空洞部62に充満した後、一方の反応材料排出部65から、通路66を介して、一方の反応材料噴出部67へと導かれる。そして、一方の反応材料は、一方の反応材料噴出部67から、基板110の上面に向けて、噴出される。また、他方の反応材料は、他方の反応材料供給部71から、空洞部72内に供給される。そして、当該他方の反応材料は、空洞部72に充満した後、他方の反応材料排出部75から、通路76を介して、他方の反応材料噴出部77へと導かれる。そして、他方の反応材料は、他方の反応材料噴出部77から、基板110の上面に向けて、噴出される。
図7に示すように、一方の反応材料噴出部67、原料溶液噴出部7、他方の反応材料噴出部77および排気部d7は、当該順に、X方向に配置されている。
排気用ノズル部Ndは、他のノズル部NT,N1とは、X方向に離れて配置されている。したがって、排気用ノズル部Ndと他のノズル部NT,N1との間には、吹き抜け部35が生じる。そこで、本実施の形態においても、ミスト噴射ヘッド部100は、ベースプレート部36を備えている。ベースプレート部36は、当該吹き抜け部35を、基板110配置側から塞いでいる(図7参照)。
なお、基板110に対して不活性ガスを噴射できるように、本実施の形態に係るベースプレート部36においても、実施の形態2と同様、不活性ガス供給部(図示せず)と、通路44と、噴出部38とが設けられている。さらに、本実施の形態に係るベースプレート部36には、実施の形態2と同様に、温度調整部28が配設されている。
ここで、本実施の形態では、反応材料噴射用ノズル部NT内においても、温度調整部80,81が配設されている。温度調整部80は、一方の空洞部62に対する温度調整を行う。また、温度調整部81は、他方の空洞部72に対する温度調整を行う。なお、図7の構成例では、原料溶液噴射用ノズル部N1に対する温度調整は、ベースプレート部36配設されている温度調整部28の一部が行っている。
なお、本実施の形態においても、ミスト噴射ヘッド部100は、基板110に面している側(底面)において、枠部30を有する。さらに、図7に示すように、実施の形態2と同様に、本実施の形態においても、ミスト噴射ヘッド部100には、不活性ガス供給部39,41と、通路45,46と、噴出部40,42が設けられている。
反応空間に、ミスト化された原料溶液と反応材料とが噴射されると、加熱されている基板110上において、原料溶液と反応材料とが反応し、当該基板110の上面に所望の膜が成膜される。なお、反応空間内の反応残渣等は、排気用ノズル部Ndにより、反応空間から排除される。
以上のように、本実施の形態に係るミスト噴射ヘッド部100は、一つの反応材料噴射用ノズル部NTにおいて、二つの空洞部62,72を設け、当該一つの反応材料噴射用ノズル部NTから、2種類の反応材料を基板110に向けて噴射させている。
したがって、2種類の反応材料を噴射させる場合に、実施の形態2で説明したように、ミスト噴射ヘッド部100に二つの反応材料噴射用ノズル部N2,N3を設ける必要がなくなる。つまり、本実施の形態に係るミスト噴射ヘッド部100では、省スペース化が可能となる。