JP6528813B2 - 車両のトランスファ構造 - Google Patents

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Description

本発明は、四輪駆動車に搭載されるトランスファ構造に関する。
四輪駆動車として、車体前部にエンジンなどの駆動源と変速機とを軸心が車体前後方向に延びるように配置し、該変速機から出力される駆動力を車体後方に延びる後輪用出力軸および後輪用差動装置を介して主駆動輪としての後輪に伝達するとともに、補助駆動輪としての前輪に出力する駆動力を取り出すトランスファ装置を設け、該トランスファ装置によって取り出した駆動力を車体前方に延びる前輪用出力軸および前輪用差動装置を介して前輪に伝達し、後輪に加えて前輪も駆動可能に構成したものが知られている。
従来、このようなトランスファ装置は、前記後輪用出力軸上に前輪用の駆動力を取り出すカップリングを配設し、該カップリングによって取り出した駆動力を、前記後輪用出力軸上に設けられたドライブスプロケットと、前記後輪用出力軸に平行に設けられた前輪用出力軸に設けられたドリブンスプロケットと、両スプロケットに巻きかけられたチェーンとでなるチェーン式動力伝達機構を介して前記前輪用出力軸に伝達し、後輪に加えて前輪も駆動可能に構成されている。
また、前記動力伝達機構には、前記後輪用出力軸上に設けられた一方側のギヤとしての駆動ギヤと、前記前輪用出力軸上に設けられた他方側のギヤとしての被駆動ギヤとで構成されるものもある。この場合、前記駆動ギヤと被駆動ギヤとを直結させて動力伝達を行うため、通常、チェーン式動力伝達機構に比べて、前記後輪用出力軸と前記前輪用出力軸との軸間距離を小さくしやすくなる。その結果、前記トランスファ装置が配置されている車両のトンネルを小さくできるので、乗員の車室内スペースを確保することができる。
そして、前記トランスファ装置の動力伝達機構の潤滑は、該動力伝達機構を収容する収容空間の下部に貯留された潤滑油を、前記動力伝達機構を構成するギヤやスプロケット等の駆動側動力伝達部材または被駆動側動力伝達部材のうち、低い方に位置する動力伝達部材から高い方に位置する動力伝達部材へ掻き上げることによって、掻き上げ給油が行われる。
しかし、この掻き上げ給油では、特に、車両が高速で走行する場合において、前記収容空間に貯留されている潤滑油のオイルレベルによっては、前述の掻き上げる方の動力伝達部材の掻き上げによる攪拌抵抗が大きくなり、燃費の悪化につながる場合がある。
これに対して、特許文献1に開示された、前記トランスファ装置の動力伝達機構は、前記動力伝達機構を構成するドリブンスプロケットおよびチェーンの下部に沿って設けられた仕切壁によって、前記スプロケットおよびチェーンを収容する収容空間が形成され、該収容空間のさらに下方に、前記動力伝達機構を潤滑する潤滑油を収容するオイル貯留部が設けられた構造である。そして、前記仕切壁の底部には、前記収容空間と前記オイル貯留部を連通する連通孔が設けられて、前記オイル貯留部に貯留された潤滑油が、前記連通孔から前記収容空間へ供給されるようになっている。
これにより、前記収容空間への潤滑油の供給は、前記連通孔から行われるので、車両が高速で走行する場合には、前記収容空間の潤滑油が掻き上げられる量が多いため、オイルレベルを下げることが可能となる。その結果、前記潤滑油の掻き上げによる攪拌抵抗を抑制できる。
実開昭61−20959号公報
ところで、前記駆動ギヤおよび被駆動ギヤは、強度および静粛性に優れたヘリカルギヤで形成されている。この場合、前述の掻き上げ給油時には、前記駆動ギヤおよび被駆動ギヤのうち、低い方に位置する下側ギヤによってオイル貯留部等から掻き上げられる潤滑油は、該下側ギヤの歯面の傾きによって、前記下側ギヤの軸方向における一方側に飛散しやすく、これにより他方側が潤滑不足となる問題がある。
例えば、図10に示すように、前記ギヤ式動力伝達機構を備えたトランスファ装置には、ヘリカルギヤで形成された駆動ギヤG1と、該駆動ギヤG1よりも低い位置で該駆動ギヤG1に噛み合うように設けられた下側ギヤとしての被駆動ギヤG2と、前記駆動ギヤG1および被駆動ギヤG2とを収容するとともにその底部に前記駆動ギヤG1および被駆動ギヤG2を潤滑する潤滑油Oを貯留するオイル貯留部C1を備えたトランスファケースCとが設けられている。そして、前記潤滑油Oは、前記被駆動ギヤG2の歯面gに掻き上げられるとともに飛散させて、前記駆動ギヤG1側に供給されることになる。
このとき、前記被駆動ギヤG2の歯面gの潤滑油Oは、静的な状態において前記被駆動ギヤG2の歯面gの傾斜に沿って矢印a方向に流れようとするが、前記被駆動ギヤG2は、矢印b方向に回転しているので、前記潤滑油Oは、前記被駆動ギヤG2の歯面gによって回転方向bに押されて移動する。その結果、前記潤滑油Oは、前記被駆動ギヤG2の回転方向aおよび歯面gの傾斜によって、前記被駆動ギヤG2の歯面gの回転方向bの後方側に位置する側部g1側には飛散しやすく、前記被駆動ギヤG2の歯面gの回転方向bの前方側に位置する側部g2側には、飛散が少なくなっている。
そのため、前記駆動ギヤG1の両側に設けられた軸受のうち、片側の軸受への潤滑が不足することになる。
このような問題に対して、前記動力伝達機構の潤滑における、潤滑油の供給の偏りによる片側の軸受等の潤滑不足を解消するために、前記オイル貯留部のオイルレベルを高くすることで、全体的に掻き上げ量を増やす方法が考えられるが、これは前述したように、前記被駆動ギヤの攪拌抵抗が増加することとなる。
そこで、本発明は、トランスファ装置のオイル貯留部のオイルレベルの低減をはかりつつ、ヘリカルギヤによるオイル供給量のアンバランスによる潤滑不足の改善を両立することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明にかかる車両のトランスファ構造は、次のように構成したことを特徴とする。
まず、請求項1に記載の発明は、
第1ギヤと、
該第1ギヤに平行、かつ、該第1ギヤよりも低い位置に配設されるとともに、前記第1ギヤに噛合する第2ギヤとで構成された動力伝達機構と、
前記第1ギヤおよび前記第2ギヤを軸受を介して支持するケースと、
前記ケースに前記動力伝達機構を収容する収容空間とが備えられ、
前記収容空間の下部には、前記第2ギヤの下部が浸かるように潤滑油が貯留され、
前記第2ギヤの回転により前記潤滑油が掻き上げられて、前記第1ギヤ側に供給されるように構成された車両のトランスファ装置であって、
前記第1ギヤおよび前記第2ギヤは、ヘリカルギヤであり、
前記第2ギヤの前記第1ギヤとの噛み合い部よりも回転方向の後方側には、前記第2ギヤの外周面に近接して配置され、前記第2ギヤの歯面の傾斜方向と同方向に傾斜して、該第2ギヤで掻き上げられた潤滑油の一部を前記第2ギヤの歯面が回転方向の前方側となる方の側部に設けられた前記第1ギヤの軸受に供給するオイル案内部材が設けられたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記オイル案内部材は、前記第2ギヤの歯面の傾斜方向と同方向に傾斜した縦壁部から前記第2ギヤの外周に沿って回転方向の後方側に延びる天井部を有していることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記ケースにおける前記第1ギヤの軸受のアウタレースが圧入される圧入部には、前記オイル案内部材によって、前記側部側に案内される潤滑油を、第1ギヤの軸心側に供給するように、反動力伝達機構側から前記第1ギヤの軸心方向に案内するための案内通路が設けられていることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の発明において、
前記第1ギヤの軸受の反動力伝達機構側には、該第1ギヤの軸受と前記案内通路とを仕切るプレート部材が設けられていることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項3から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、
前記案内通路の入口に対応して前記潤滑油を前記案内通路に案内する孔が設けられた第2の案内部材が備えられていることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の発明において、
前記第2の案内部材は、前記潤滑油を受け止めた潤滑油を前記孔に案内する案内部を有することを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項3から請求項6のうち1項に記載の発明において、
前記案内通路は、前記第1ギヤと該第1ギヤを貫通する部材との間の嵌合部に設けられたニードルベアリングと、前記第1ギヤと該第1ギヤとスプライン嵌合される他の部材とのスプライン嵌合部とに潤滑油を供給可能に設けられていることを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、前記請求項1から請求項7のうち1項に記載の発明において、
前記第1ギヤおよび前記第2ギヤは、それぞれ車両のトランスファ装置における駆動ギヤおよび被駆動ギヤを構成し、
前記被駆動ギヤには、車体前方側に延びる前輪用出力軸が連結されているとともに、動力伝達時に前記被駆動ギヤには車体後方側にスラスト力を受けるようにヘリカルギヤの歯面が形成されており、
前記第1ギヤの軸受は、前記駆動ギヤの車体前方側に配置された軸受であることを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、前記請求項8に記載の発明において、
前記被駆動ギヤの車体後方側にオイル貯留部が設けられたことを特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、前記請求項8または請求項9に記載の発明において、
前記ケースの上部で、かつ、前記駆動ギヤの車体前方側にブリーザ通路の開口部が開口されたことを特徴とする。
本願の請求項1に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明によれば、前記第2ギヤによって前記収容空間の底部から掻き上げられた潤滑油は、前記第2ギヤの前記第1ギヤとの噛み合い部よりも回転方向の後方側、かつ、前記第2ギヤの外周面に近接させて配置されたオイル案内部材によって、前記オイル案内部材の傾斜に沿って、前記第2ギヤの歯面の回転方向前方側となる側部に配置された前記第1ギヤの軸受に供給されることになる。その結果、高速走行時等のオイルレベルが低くなる状態でも、前記第2ギヤのヘリカルギヤの傾きによって掻き上げ量が少なくなる側の前記第1ギヤの軸受に潤滑油を供給することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、前記オイル案内部材の天井部によって、前記第2ギヤの歯面から外方へ飛散しようとする潤滑油を収集するとともに、収集した潤滑油を効率よく前記縦壁部へ案内することができるので、前記第1ギヤの軸受側により多くの潤滑油を供給することができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、前記第2ギヤによって掻き上げられた潤滑油は、前記縦壁部の傾斜に沿って前記第1ギヤの軸受側に案内された潤滑油は、前記ケースの圧入部に設けられた案内通路によって、前記第1ギヤの軸受の反動力伝達機構側から前記第1ギヤの軸心側に案内される。これにより、前記第2ギヤの掻き上げによる潤滑油の供給が少ない前記第1ギヤの軸心側へより確実に潤滑油を供給することができる。
また、請求項4の記載の発明によれば、前記第1ギヤによって掻き上げられた潤滑油は、前記請求項3同様に、前記圧入部の案内通路を通って、前記第1ギヤの軸受の反動力伝達機構側に案内される潤滑油は、前記第1ギヤの軸受と前記案内通路とを仕切るプレート部材によって仕切られているため、前記案内通路に導入され、前記第1ギヤの軸心側までガイドされる。これにより、前記第2ギヤの掻き上げによる潤滑油の供給が少ない前記第1ギヤの軸心側から潤滑油を供給することができる。
また、請求項5に記載の発明によれば、前記第2ギヤによって掻き上げられるとともに、前記縦壁部の斜面に沿って前記第1ギヤの軸受側に案内された潤滑油は、前記ケースの案内通路の入口に前記潤滑油をガイドする第2の案内部材が設けられているので、前記第2の案内部材によって、確実に前記ケースの案内通路の入口へ導入される。これにより、前記第2ギヤの掻き上げによる潤滑油の供給が少ない前記第1ギヤの軸心側へより多くの潤滑油を供給することができる。
また、請求項6に記載の発明によれば、前記請求項5に記載の第2案内部材の具体的な形状を示したものであり、前記第2案内部材には、前記潤滑油を受け止めて前記案内通路の入口にガイドする案内部とが設けられている。
また、請求項7に記載の発明によれば、前記第2ギヤによって掻き上げられるとともに、前記ケースの案内通路を通って前記第1ギヤの軸心側へ供給される潤滑油は、前記第1ギヤの軸心側に供給された潤滑油は、前記第1ギヤを貫通する部材と前記第1ギヤとの間に設けられたニードルベアリング、および、前記第1ギヤと他の部材とのスプライン嵌合部へ供給される。
また、請求項8に記載の発明によれば、例えば、前記被駆動ギヤの車体前方側には、前輪用プロペラシャフトを支持するための構造が必要であるため、構造が複雑となる傾向にある。したがって、前記被駆動ギヤを支持するための軸受のスペースが取りづらく、大きな軸受を配置しにくい。そのため、前記被駆動ギヤのヘリカルギヤの歯面は、動力伝達時に前記被駆動ギヤには車体後方側にスラスト力を受けるように傾斜されている。
具体的には、前記被駆動ギヤの歯面の回転方向前方側となる側が車体前方側となる。そして、前記被駆動ギヤによって掻き上げられる潤滑油は、前記被駆動ギヤの歯面の傾斜に沿って、車体後方側へ飛散することとなるが、前記案内部材によって車体前方側にガイドされるので、潤滑油の飛散しづらい車体前方側に配置された前記被駆動ギヤのスラスト力を受ける方の軸受にも確実に潤滑油を供給することが可能である。
また、請求項9に記載の発明によれば、前記被駆動ギヤの歯面の回転方向前方側となる側面が車体前方側となるように形成されるので、前記被駆動ギヤによって掻き上げられた潤滑油は、車体後方側に飛散しやすい構成となっている。そして、前記オイル貯留部は、車体後方側に設けられているので、前記潤滑油を効果的に前記オイル貯留部に供給することができる。
また、請求項10に記載の発明によれば、前記被駆動ギヤの歯面は、前記プロペラシャフト側に上がり勾配となるように形成されるとともに、駆動時の回転方向が前記被駆動ギヤの径方向に見て上方向であるので、前記被駆動ギヤによって掻き上げられた潤滑油は、車体後方側に飛散しやすい構成となっている。そして、前記ブリーザ通路は、前記ケースの上部かつ車体前方側に開口しているので、潤滑油の飛散が少なく、オイル漏れを抑制することができる。
本発明の実施形態に係るトランスファ装置が搭載された四輪駆動車の動力伝達機構を示す概略図である。 前記トランスファ装置を示す断面拡大図である。 本発明の実施形態に係るトランスファ装置のケースを取り除いたときの斜視図である。 図2におけるA−A矢視で示す前記トランスファ装置のトランスファケースのカバーを取り除いたときの正面図である。 図2におけるB−B矢視で示す前記トランスファ装置のトランスファケースの本体を取り除いたときのケースカバーの背面図である。 図2のB−B矢視で示す前記トランスファケースのカバーの単体の背面図である。 図5のC−C矢視で示す位置の前記トランスファ装置の断面拡大図である。 図4のD−D矢視で示す位置の前記トランスファ装置の断面図である。 他の実施形態に係るトランスファ装置の図7に相当する断面拡大図である。 トランスファ装置のヘリカルギヤによる潤滑油の掻き上げの説明図である。
以下、本発明に係る車両のトランスファ装置の詳細を説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るトランスファ装置が搭載された四輪駆動車1は、フロントエンジン・リアドライブ車ベースの四輪駆動車であり、車体前部に駆動源としてのエンジン2と変速機3とが軸心が車体前後方向に延びるように配置されている。
前記変速機3の車体後方には、トランスファ装置10が設けられており、該トランスファ装置10には、前記変速機から出力される駆動力を車体後方側に延びる後輪用出力軸11と、該後輪用出力軸11と平行に配置されて駆動力を前輪に出力する前輪用出力軸12と、が設けられている。
前記後輪用出力軸11上には、カップリング13と、該カップリング13の車体前方側に配置されるとともに前記カップリング13から取り出された駆動力を前輪用出力軸12に伝達する第1ギヤとしての駆動ギヤ21と、前記カップリング13と前記駆動ギヤ21との間に配置されるダンパ14とが設けられている。
また、前記前輪用出力軸12上には、前記駆動ギヤ21に噛み合う第2ギヤとしての被駆動ギヤ22が設けられ、前記カップリング13によって取り出された前輪用の駆動力は、前記駆動ギヤ21と前記被駆動ギヤ22を介して前記前輪用出力軸12に伝達される。
なお、前記駆動ギヤ21と、前記被駆動ギヤ22とは、ヘリカルギヤで形成されるとともに、動力伝達機構20を構成している。
前記前輪用出力軸12は、自在継手30を介して車体前方に延びる前輪用プロペラシャフト40に連結されている。該前輪用プロペラシャフト40は、自在継手50を介して前輪用差動装置60の入力軸61に連結され、該入力軸61は、左右の前輪にそれぞれ連結された車軸62、62に連結されている。
これにより、前記カップリング13によって取り出された駆動力は、前記駆動ギヤ21および前記被駆動ギヤ22を介して前記前輪用出力軸12に伝達され、該前輪用出力軸12から前記前輪用プロペラシャフト40および前記前輪用差動装置60を介して前輪に伝達される。四輪駆動車1では、カップリング13は、前輪と後輪とのトルク配分を前輪:後輪=0:100〜50:50の範囲で可変できるようになっている。なお、カップリング13の作動は、図示しない制御ユニットによって制御される。
次に、図2を参照しながら、本発明の実施形態に係るトランスファ装置10についてさらに詳細に説明する。
トランスファ装置10のケース70は、図2に示すように、本体71と、該本体71の変速機3側を覆うカバー72とが図示しないボルトで締結されて形成されている。
前記トランスファケース70内には、変速機3からの入力軸3aに連結された後輪用出力軸11と、該後輪用出力軸11と平行に設けられた前輪用出力軸12とが回転可能に支持されている。前記トランスファケース70の本体71とカバー72との間には、前記動力伝達機構20を形成する駆動ギヤ21および被駆動ギヤ22が収容される収容空間Z1が形成されている。
なお、前記動力伝達機構20の駆動ギヤ21は、中空軸状で前記後輪用出力軸11上に設けられ、前記被駆動ギヤ22は、中空軸状で前記前輪用出力軸12上に設けられ、前記駆動ギヤ21と前記被駆動ギヤ22とは互いに噛み合った状態で配置されている。
前記駆動ギヤ21は、外周面に斜歯が形成された歯部21aと、該歯部21aの内周側から一体的に車体前方側および車体後方側にそれぞれ延びる円筒状の前方側円筒部21bおよび後方側円筒部21cとが備えられている。前記駆動ギヤ21は、前記前方側円筒部21bおよび前記後方側円筒部21cの外周側に設けられた軸受81、82を介してトランスファケース70に回転可能に支持されている。
前記軸受81、82のうち、車体前方側の軸受81のアウタレース81aは、前記トランスファケース70のカバー72に設けられた円形の凹部でなる圧入部73に圧入されている。一方、車体後方側の軸受82のアウタレース82aは、トランスファケース70の本体71に設けられた円形の凹部でなる圧入部74に圧入されている。
また、前記軸受81の車体前方側の端部には、該軸受81のアウタレース81aに接するとともに、前記カバー72の圧入部73の内周面から、前記トランスファ装置10の後輪用出力軸11の外周面に向かって延びるプレート部材85が設けられて、前記軸受81の軸方向の位置決めがされている。
前記被駆動ギヤ22は、外周面に斜歯が形成された歯部22aと、該歯部22aの内周側、かつ、車体後方側の端部から内周側に延びる縦面部22bと、該縦面部22bの内周側の端部から車体前方側および車体後方側にそれぞれ延びる円筒状の前方側円筒部22cおよび後方側円筒部22dとが備えられている。前記被駆動ギヤ22は、前記歯部22aの内周側および前記後方側円筒部22dの外周側に設けられた軸受83、84を介してトランスファケース70に回転可能に支持されている。
前記被駆動ギヤ22の軸受83、84のうち、車体前方側の軸受83は、前記被駆動ギヤ22の径方向にみて前記駆動ギヤ21と被駆動ギヤ22の噛み合い部Xの下方に配置されているとともに、前記車体前方側の軸受83のインナレース83aは、前記トランスファケース70のカバー72に設けられた円形の凹部でなる圧入部75に圧入されている。一方、車体後方側の軸受84のアウタレース84aは、前記トランスファケース70の本体71に設けられた円形の凹部でなる圧入部76に圧入されている。
なお、前記該収容空間Z1の下部は、前記動力伝達機構20を潤滑するための潤滑油が、前記被駆動ギヤ22の下部が浸かるように貯留されて、オイル貯留部としての機能を有している。
そして、前記被駆動ギヤ22の前方側および後方側円筒部22c、22dの内周面には、前輪用出力軸12がスプライン嵌合されて連結されている。前輪用出力軸12は、自在継手30を介して前輪用プロペラシャフト40に連結され、前輪用出力軸12の車体前方側に、自在継手30の外側継手部材31が一体的に形成されている。
自在継手30は、前輪用出力軸12に一体的に形成された外側継手部材31と、前輪用プロペラシャフト40に結合された内側継手部材32と、外側継手部材31と内側継手部材32との間に介装されて外側継手部材31と内側継手部材32との間で動力を伝達するボール33と、外側継手部材31の内周面と内側継手部材32の外周面との間に配置されてボール33を保持するケージ34とを備え、前輪用出力軸12と前輪用プロペラシャフト40との間で動力を伝達することができるようになっている。
トランスファ装置10にはまた、前記トランスファケース70に、複数のシール部材71a、72a、72bが配設され、該トランスファケース70内の潤滑油が外部に漏洩することが防止されている。具体的には、前記トランスファケース70のカバー72と後輪用出力軸11との間にシール部材72aが配設され、前記トランスファケース70のカバー72と前記被駆動ギヤ22の前方側円筒部22cとの間にシール部材72bが配設され、前記トランスファケース70の本体71と後輪用出力軸11上に設けられた前記ダンパ装置14から延びる動力伝達部材14aとの間にシール部材71aが配設されている。
ところで、図3に示すように、前記トランスファ装置10の潤滑は、前記収容空間Z1に貯留された潤滑油が、前記被駆動ギヤ22の歯面によって掻き上げられるとともに飛散させて、前記駆動ギヤ21側に供給されることになる。なお、本実施形態においては、前記被駆動ギヤ22のヘリカルギヤの歯面22a’が回転方向R1の前方側となる方の側部22eが、車体前方側となるように形成されている。
前記被駆動ギヤ22の歯面22a’の潤滑油は、静的な状態において前記被駆動ギヤ22の歯面22a’の傾斜に沿って矢印R2方向に流れようとするが、前記被駆動ギヤ22は、矢印R1方向に回転しているので、前記潤滑油は、車体後方側には飛散しやすく、車体前方側には、飛散が少なくなっている。
上述のような潤滑油の供給の偏りを解消するために、前記動力伝達機構20には、車体前方側に潤滑油を供給するための潤滑油案内構造が設けられている。
ここで、図3〜図7を用いて、前記潤滑油案内構造について詳しく説明する。
まず、図3および図4を参照しながら、前記潤滑案内構造の一部を構成するオイル案内部材としてのオイルパス91について説明する。図3は、前記動力伝達機構20と前記オイルパス91との関係を示したもので、図4は、図2におけるA−A矢視で示す前記トランスファ装置10のトランスファケース70のカバー72を取り除いたときの正面図である。
図3および図4に示すように、前記オイルパス91は、ドーナツ状の円盤に切り欠き部が設けられた基本面部92と、該基本面部92の内周側から円筒状に、車体後方側に延びる円筒部93と、前記基本面部92の上端部から車体前方側に延びるガイド部94とを有している。また、前記基本面部92の上部には、扇形の切欠部95が設けられており、前記基本面部92の下部には、連通孔96が設けられている。
図2および図4に示すように、前記オイルパス91は、該オイルパス91の基本面部92は、前記トランスファケース70の本体71の内周部に設けられた取り付け部に、複数のボルト92a…92aによって固定されている。
また、前記オイルパス91の基本面部92および円筒部93は、図2および図4に示すように、前記被駆動ギヤ22の縦面部22bの車体後方側の面と、後方側円筒部22dとを覆うように配置されている。
前記オイルパス91の基本面部92の外周部にはシール部材92bが配置されており、該シール部材92bによって、前記オイルパス91と、前記トランスファケース70の本体71の内周面とがシールされている。そして、前記オイルパス91の基本面部92は、該基本面部92を挟んで車体前方側に設けられた収容空間Z1と、前記基本面部92と車体後方側のトランスファケース70の本体71の内周部とで囲まれた後述するオイル貯留部Z3とを、仕切るように機能している。
なお、前記オイルパス91の切欠部95は、前記駆動ギヤ21と前記被駆動ギヤ22との噛み合い部Xに対応する位置に配置されている。
また、前記オイルパス91のガイド部94には、前記オイルパス91の基本面部92の上端部から前記被駆動ギヤ22の外周面に沿ってその一部を覆うように延びる天井部94aと、該天井部94aの前記噛み合い部X側の端部から前記被駆動ギヤ22の歯部22a側に延びる縦壁部94bとが設けられている。なお、前記縦壁部94bは、前記被駆動ギヤ22の斜歯の歯面の傾斜と同方向に傾斜させて形成されている。
次に、図3に示すように、前記オイルパス91のガイド部94の車体前方側の端部に対応する位置には、第2の案内部材97が設けられている。この第2の案内部材97は、前記潤滑油案内構造の一部を構成しており、図3および図5を参照しながら前記第2の案内部材97について説明する。
図5に示すように、前記被駆動ギヤ22と平行となるように配置された基本面部97aと、該基本面部97aの駆動ギヤ21側の下部に設けられた孔97bと、前記基本面部97aの下端部で前記孔97bから反駆動ギヤ21側に延びる案内部としての傾斜部97cと、該傾斜部97cの前記駆動ギヤ21側の端部から前記孔97bを取り囲むように立ち上がる立ち上がり部97dとが設けられている。
また、前記第2の案内部材97は、前記基本面部97aの前記駆動ギヤ21側の端部の上下両側に設けられた固定部97e、97eが、前記トランスファケース70のカバー72の圧入部73に設けられた取り付け部73a、73aにタッピングスクリュー77f、77fによって取り付けられている。
さらに、図6を参照しながら、前記潤滑案内構造の一部を構成する前記トランスファケース70のカバー72について説明する。図6は、図2におけるB−B矢視で示す前記トランスファケースのカバー単体を示す背面図である。
図6に示すように、前記トランスファケース70のカバー72の圧入部73の外周側には、該圧入部73に連続させて前記被駆動ギヤ22側に膨出する膨出部77が設けられており、該膨出部77は、前記圧入部73の前記駆動ギヤ21側の面において内周側から溝加工されて形成される溝部78が設けられている。該溝部78には、車体前方側の底面部78aと、3つの側面部78b、78c、78dと、前記駆動ギヤ21の径方向内側の開放部78eと、車体後方側に開放する開放部78fとが設けられている。
なお、前記第2の案内部材97の孔97bは、前記カバー72の溝部78の車体後方側の開放部76fに対応する位置に配置されている。
図7は、図5におけるC−C矢視の断面を示しており、前記カバー72の溝部78での、前記トランスファ装置10の潤滑油案内構造を示している。
図に示すように、前記カバー72の圧入部73の前記駆動ギヤ21の径方向内側の開放部78e(図6参照)は、前記軸受81が前記溝部78の底面部78aから離間した位置まで圧入されることによって、前記駆動ギヤ21の径方向内側の開放部78eの一部が閉じられるようになっている。
これにより、前記溝部78の側面部78bと前記軸受81のアウタレース81aおよび前記プレート部材85との間には隙間S1が設けられ、前記溝部78の底面部78aと、前記プレート部材85との間には隙間S2が設けられている。さらに、前記カバー72のシール部材72aと前記プレート部材85との間には隙間S3が設けられている。
そして、前記プレート部材85の内周側の端部と、前記後輪用出力軸11との間には、隙間S4が設けられている。また、前記プレート部材85の車体後方側の面と、前記軸受81のインナレース81bおよび前記駆動ギヤ21の前方側円筒部21bとの間にも隙間S5が設けられている。
また、前記駆動ギヤ21の前方側円筒部21bの内周側と前記後輪用出力軸11との間には隙間S6が設けられ、該駆動ギヤ21の内周側と前記後輪用出力軸11との間にはニードルベアリング86が配置されて、前記駆動ギヤ21が前記後輪用出力軸11上に回転可能に設けられている。
前記駆動ギヤ21の後方側円筒部21cの内周側には、スプライン部21dが設けられており、前記ダンパ装置14から該駆動ギヤ21に駆動力を伝達する他の部材としての円筒状の動力伝達部材14aが、前記後輪用出力軸11上で前記ダンパ装置14から車体前方側に延びるとともに、前記動力伝達部材14aの外周側には、スプライン部14bが設けられている。そして、前記駆動ギヤ21のスプライン部21dと前記動力伝達部材14aのスプライン部14bとが互いにスプライン嵌合されている。
したがって、前記収容空間Z1と、前記第2の案内部材97の孔97bと、前記隙間S1、S2、S3で形成された案内通路Sとが連通されているとともに、前記案内通路Sと、前記隙間S4、S5、S6と、該隙間S6に設けられたニードルベアリング86と、前記スプライン嵌合部21d(13a)とが連通状態とされて、潤滑油案内通路が形成されている。
また、トランスファ装置10には、前述のように潤滑を必要とする動力伝達機構20、軸受81、82、83、84、ニードルベアリング86、スプライン部13b、21dが備えられており、これらを潤滑するための潤滑油が貯留されている。
図8は、図4におけるD−D断面を示しており、図に示すように前記潤滑油は、前記トランスファケース70の収容空間Z1に加え、該収容空間Z1に対して前記後輪用出力軸11に直交する方向E(図4参照)にみて、前記被駆動ギヤ22とオーバラップする位置に設けられる第1の空間Z2と、前記後輪用出力軸11の軸方向F(図8参照)にみて前記被駆動ギヤ22とオーバラップする位置に設けられるオイル貯留部としての第2の空間Z3とに貯留されている。
図8に加え、図4および図5に示すように、前記トランスファケース70の本体71の下部には、前記被駆動ギヤ22の歯部22aに近接するとともに、該被駆動ギヤ22の歯幅方向を覆う仕切壁71cが設けられており、前記トランスファケース70のカバー72の下部には、前記本体71の仕切壁71cに対応する位置に、仕切壁72cが設けられている。
そして、前記本体71およびカバー72が連結される際に、前記仕切壁71cの車体前方側の端面71dと、前記仕切壁72cの車体後方側の端面72dとを対接させることで、前記収容空間Z1と第1の空間Z2とを仕切る仕切り壁W1(71c、72c)が形成されている。
また、前記本体71の仕切壁71cの端面71dの下部には、切欠部71eが設けられており、該切欠部71eと前記カバー72の仕切壁72cの端面72dとを対接競ることで、前記収容空間Z1と第1のオイル貯留部Z2とを仕切る仕切壁71c、72cの連通孔71eが形成されて、該連通孔71eによって前記収容空間Z1と第1の空間Z2が流通が制限された連通状態となる。
前記第2の空間Z3は、前記オイルパス91と前記トランスファケース70の本体71の内面部との間に設けられている。また、前記オイルパス91の連通孔96によって、前記第2の空間Z3と、前記収容空間Z1とが流通を制限された状態で仕切られるようになっている。
なお、図2に示すように、前記トランスファ装置10には、前記動力伝達機構20が収容されている収容空間Z1の内圧の上昇を抑制するためのブリーザ機構が設けられており、該ブリーザ機構の外部との開口部79は、前記駆動ギヤ21よりも車体前方側に設けられている。
図3および図7を用いて、前記トランスファ装置10の潤滑油案内構造の作用について説明する。
まず、前記トランスファ装置10では、駆動時に駆動ギヤ21に嵌合された被駆動ギヤ22が回転するとともに、該被駆動ギヤ22によって収容空間Z1に貯留された潤滑油が掻き上げられて、前記駆動ギヤ21側が潤滑される。
また、本実施形態においては、前述のように、前記被駆動ギヤ22のヘリカルギヤの歯面22a’が回転方向R1の前方側となる方の側部22eが、車体前方側となるように形成されている。
これにより、前記被駆動ギヤ22の歯面22a’の潤滑油は、静的な状態において前記被駆動ギヤ22の歯面22a’の傾斜に沿って矢印R2方向に流れようとするが、前記被駆動ギヤ22は、矢印R1方向に回転しているので、前記潤滑油は、車体後方側には飛散しやすくなる。そして、前記被駆動ギヤ22の車体後方側には、前記第2の空間Z3が設けられているので、前記潤滑油を効果的に前記第2の空間Z3に回収することができる。
一方、前記被駆動ギヤ22の歯面22a’の回転方向R1前方側となる方の側部22e(車体前方側)には飛散しにくくなるが、前記被駆動ギヤ22の前記駆動ギヤ21との噛み合い部Xよりも回転方向R1の後方側、かつ、前記被駆動ギヤ22の外周面に近接させて配置されたオイルパス91によって、前記被駆動ギヤ22が前記収容空間Z1から掻き上げた潤滑油が、前記オイルパス91の傾斜に沿って、前記被駆動ギヤ22の歯面22a’が回転方向R1前方側となる方の側部22e(車体前方側)に配置された前記駆動ギヤ21の軸受81に供給されることになる。
これにより、前記収容空間Z1のオイルレベルが低い場合や、前記被駆動ギヤ22がヘリカルギヤで形成されることにより掻き上げ量が少なくなる側の前記駆動ギヤ21の軸受81にも潤滑油を供給することができる。
具体的には、図7に示すように、前記被駆動ギヤ22によって掻き上げられた潤滑油は、前記オイルパス91の天井部94aおよび縦壁部94bの傾斜に沿って、車体前方側へ案内される。そして、前記潤滑油は、前記第2の案内部材97の基本面部97aと、傾斜部97cと、立ち上がり部97dとによって、該第2の案内部材97の孔97bへ案内される。
さらに、前記潤滑油は、前記カバー72の圧入部73の前記溝部78の側面部78bと前記軸受81のアウタレース81aおよび前記プレート部材85との間に設けられた隙間S1と、前記溝部78の底面部78aと前記プレート部材85との間に設けられた隙間S2と、前記カバー72のシール部材72aと前記プレート部材85との間に設けられた隙間S3とで形成される案内通路Sを通り抜ける。
そして、前記潤滑油は、前記プレート部材85の内周側の端部と前記後輪用出力軸11との間に設けられた隙間S4と、前記プレート部材65の車体後方側の面と前記軸受81のインナレース81bおよび前記駆動ギヤ21の前方側円筒部21bとの間に設けられた隙間S5によって、前記駆動ギヤ21の車体前方側の軸受81に供給される。
また、前記後輪用出力軸11側にガイドされた潤滑油の一部は、前記駆動ギヤ21の前方側円筒部21bの内周側と前記後輪用出力軸11との間に設けられた隙間S6を通り抜けて、該駆動ギヤ21の内周側と前記後輪用出力軸11との間に配置されたニードルベアリング86を潤滑することができるようになっている。
さらに、前記潤滑油の一部は、前記駆動ギヤ21の後方側円筒部21cの内周側のスプライン部21dと、前記ダンパ装置14から該駆動ギヤ21に駆動力を伝達する他の部材としての円筒状の動力伝達部材14aのスプライン部14bとのスプライン嵌合にも供給され、その後、前記駆動ギヤ21の車体後方側の軸受82を通り抜けて、前記第2のオイル貯留部Z3へ回収される。
なお、前記案内通路Sと、前記軸受81とは、前記プレート部材85によって仕切られているため、前記案内通路Sに導入された潤滑油は、前記駆動ギヤ21の軸心側までガイドされ、前記被駆動ギヤ22の掻き上げによる潤滑油の供給が少ない前記駆動ギヤ21の軸心側から潤滑油を供給することができる。
ところで、本実施形態においては、前記被駆動ギヤ22の車体前方側には、前輪用プロペラシャフト40を支持するための構造が必要であるため、構造が複雑となる傾向にある。したがって、前記被駆動ギヤ22の車体前方側には、該被駆動ギヤ22を支持するための軸受83のスペースが取りづらく、大きな軸受を配置しにくい。そのため、前記被駆動ギヤ22のヘリカルギヤの歯面は、動力伝達時に前記被駆動ギヤ22に車体後方側のスラスト力が作用するように傾斜されている。
具体的には、前記被駆動ギヤ22の歯面22a’の回転方向前方側R1となる側が車体前方側となる。そして、前記被駆動ギヤ22によって掻き上げられる潤滑油は、前記被駆動ギヤ22の歯面22a’の傾斜に沿って、車体後方側へ飛散することとなるが、前記オイルパス91によって車体前方側にガイドされるので、潤滑油の飛散しづらい車体前方側に配置された前記駆動ギヤ21のスラスト力を受ける方の軸受81にも確実に潤滑油を供給することが可能となっている。
また、前記被駆動ギヤの歯面は、回転方向前方側の側面が車体前方側となるように形成されるので、前記被駆動ギヤ22によって掻き上げられた潤滑油は、車体後方側に飛散しやすい構成となっている。そして、前記ブリーザ装置の開口部79は、前記ケース70の上部かつ前記駆動ギヤ21よりも車体前方側に開口しているので、潤滑油の飛散が少なく、オイル漏れを抑制することができる。
次に、図9を参照しながら第2実施形態における車両のトランスファ構造について説明する。なお、図7に示す第1実施形態と同様の構成については図9において同一の符号を用いるとともにその説明を省略する。
この実施形態では、オイルパス91のガイド部194の構造が、第1実施形態と異なる。なお、その他の部分は第1実施形態と同様の構造であり、第1実施形態同様の効果が得られる。
第2実施形態におけるトランスファ装置は、前記第1実施形態同様に、ギヤ式動力伝達機構20を備えたトランスファ装置10であって、該動力伝達機構20は、ヘリカルギヤで形成された駆動ギヤ21と、該駆動ギヤ21よりも低い位置で該駆動ギヤ21に噛み合うように設けられた被駆動ギヤ22と、前記駆動ギヤ21および被駆動ギヤ22とを収容する収容空間Z1とが設けられている。また、前記収容空間Z1の底部に前記被駆動ギヤ22が浸かるように潤滑油が貯留されている。そして、前記潤滑油は、前記被駆動ギヤ22の歯面22a’に掻き上げられるとともに飛散させて、前記駆動ギヤ21側に供給される。
また、前記被駆動ギヤ22の前記駆動ギヤ21との噛み合い部Xよりも回転方向後方側には、前記第1実施形態同様に、前記被駆動ギヤ22の外周面に近接して配置され、前記被駆動ギヤ22の歯面の傾斜方向と同方向に傾斜して、該被駆動ギヤ22で掻き上げられた潤滑油の一部を前記駆動ギヤ21の車体前方側の軸受81に供給するオイル案内部材としてのオイルパス91が設けられている。
図9に示すように、前記オイルパス91のガイド部194は、該オイルパス91の基本面部92から上方に延びるとともに、前記被駆動ギヤ22の歯面に近接しながら、該歯面に沿って延びる縦壁部194bを有しており、該縦壁部194bは、前記被駆動ギヤ22の歯幅の車体前方側の端部よりも短く形成されている。
これにより、前記被駆動ギヤ22によって掻き上げられた潤滑油は、前記被駆動ギヤ22の回転方向と、前記オイルパス91の縦壁部194bによって、前記駆動ギヤ21の車体前方側の軸受81へ供給されることになる。その結果、高速走行時等のオイルレベルが低くなる状態でも、前記被駆動ギヤ22のヘリカルギヤの傾きによって掻き上げ量が少なくなる側の前記駆動ギヤ21の軸受81に潤滑油を供給することができる。
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
以上のように、本発明によれば、四輪駆動車に搭載されるトランスファ装置において、四輪駆動車に搭載される車両のトランスファ構造において、潤滑油案内部材の追加によりオイル貯留部のオイルレベルの低減をはかりつつ、ヘリカルギヤによるオイル供給量のアンバランスによる潤滑不足の改善が図れるので、この種の車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
10 トランスファ装置
11 後輪用出力軸
12 前輪用出力軸
14a 動力伝達部材(他の部材)
20 動力伝達機構
21 駆動ギヤ(第1ギヤ)
22 被駆動ギヤ(第2ギヤ)
70 トランスファケース(ケース)
73 圧入部
79 ブリーザ通路の開口部
81 軸受
81a アウタレース
85 プレート部材
86 ニードルベアリング
91 オイルパス(オイル案内部材)
94b 縦壁部
94a 天井部
97 第2の案内部材
97b 孔
97c 案内部
S 案内通路
X 噛み合い部
Z1 収容空間
Z3 第2の空間(オイル貯留部)

Claims (10)

  1. 第1ギヤと、
    該第1ギヤに平行、かつ、該第1ギヤよりも低い位置に配設されるとともに、前記第1ギヤに噛合する第2ギヤとで構成された動力伝達機構と、
    前記第1ギヤおよび前記第2ギヤを軸受を介して支持するケースと、
    前記ケースに前記動力伝達機構を収容する収容空間とが備えられ、
    前記収容空間の下部には、前記第2ギヤの下部が浸かるように潤滑油が貯留され、
    前記第2ギヤの回転により前記潤滑油が掻き上げられて、前記第1ギヤ側に供給されるように構成された車両のトランスファ装置であって、
    前記第1ギヤおよび前記第2ギヤは、ヘリカルギヤであり、
    前記第2ギヤの前記第1ギヤとの噛み合い部よりも回転方向の後方側には、前記第2ギヤの外周面に近接して配置され、前記第2ギヤの歯面の傾斜方向と同方向に傾斜して、該第2ギヤで掻き上げられた潤滑油の一部を前記第2ギヤの歯面が回転方向の前方側となる方の側部に設けられた前記第1ギヤの軸受に供給するオイル案内部材が設けられたことを特徴とする車両のトランスファ構造。
  2. 前記オイル案内部材は、前記第2ギヤの歯面の傾斜方向と同方向に傾斜した縦壁部から前記第2ギヤの外周に沿って回転方向の後方側に延びる天井部を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両のトランスファ構造。
  3. 前記ケースにおける前記第1ギヤの軸受のアウタレースが圧入される圧入部には、前記オイル案内部材によって、前記側部側に案内される潤滑油を、第1ギヤの軸心側に供給するように、反動力伝達機構側から前記第1ギヤの軸心方向に案内するための案内通路が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両のトランスファ構造。
  4. 前記第1ギヤの軸受の反動力伝達機構側には、該第1ギヤの軸受と前記案内通路とを仕切るプレート部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両のトランスファ構造。
  5. 前記案内通路の入口に対応して前記潤滑油を前記案内通路に案内する孔が設けられた第2の案内部材が備えられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両のトランスファ構造。
  6. 前記第2の案内部材は、前記潤滑油を受け止めた潤滑油を前記孔に案内する案内部を有することを特徴とする請求項5に記載の車両のトランスファ構造。
  7. 前記案内通路は、前記第1ギヤと該第1ギヤを貫通する部材との間の嵌合部に設けられたニードルベアリングと、前記第1ギヤと該第1ギヤとスプライン嵌合される他の部材とのスプライン嵌合部とに潤滑油を供給可能に設けられていることを特徴とする請求項3から請求項6のうち1項に記載の車両のトランスファ構造。
  8. 前記第1ギヤおよび前記第2ギヤは、それぞれ車両のトランスファ装置における駆動ギヤおよび被駆動ギヤを構成し、
    前記被駆動ギヤには、車体前方側に延びる前輪用出力軸が連結されているとともに、動力伝達時に前記被駆動ギヤには車体後方側にスラスト力を受けるようにヘリカルギヤの歯面が形成されており、
    前記第1ギヤの軸受は、前記駆動ギヤの車体前方側に配置された軸受であることを特徴とする請求項1から請求項7のうち1項に記載の車両のトランスファ構造。
  9. 前記被駆動ギヤの車体後方側にオイル貯留部が設けられたことを特徴とする前記請求項8に記載の車両のトランスファ構造。
  10. 前記ケースの上部で、かつ、前記駆動ギヤの車体前方側にブリーザ通路の開口部が開口されたことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の車両のトランスファ構造。
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