以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るチェーンカバー構造が適用されたエンジン1の概略構成を示す。本実施形態では、エンジン1は、クランクシャフト9が車幅方向(図1の紙面に垂直な方向)に延びるように、車両の前部におけるエンジンルーム内に横置きに搭載される4気筒直列エンジンである。
エンジン1は、4つの気筒2(図1では、1つのみ示す)がクランクシャフト9の軸方向に一列に並ぶように設けられたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配設されたシリンダヘッド4と、このシリンダヘッド4の上側を覆うシリンダヘッドカバー5とを有している。各気筒2内には、ピストン8が往復動可能に嵌挿されている。各気筒2のピストン8は、不図示のコンロッドを介してクランクシャフト9と連結される。
図示は省略するが、シリンダヘッド4には、各気筒2毎に、吸気ポート及び排気ポートが形成されているとともに、これら吸気ポート及び排気ポートの燃焼室10側の開口を開閉する吸気弁及び排気弁がそれぞれ配設されている。
シリンダヘッド4の上部からシリンダヘッドカバー5の下部にかけての部分には、全気筒2の上記吸気弁を開閉するカムが設けられた吸気カムシャフト11と、全気筒2の上記排気弁を開閉するカムが設けられた排気カムシャフト12とが、クランクシャフト9の軸方向に延びるように配設されている。
上記吸気弁及び上記排気弁の開弁時期は、図2、図4及び図6に示す、吸気側及び排気側の可変バルブタイミング機構13,14(VVT)によって、それぞれ変更可能になされている。本実施形態では、吸気側及び排気側の可変バルブタイミング機構13,14は、電動可変バルブタイミング機構であって、それぞれ、上記吸気弁及び上記排気弁の開弁時期を変更する吸気側及び排気側のVVTモータ13a,14a(例えばステッピングモータ)を有している。これらのVVTモータ13a,14aは、後述のチェーンカバー6の外側の面にそれぞれ取付固定されている。VVTモータ13a,14aは、吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12の軸心の延長線上にそれぞれ位置する。
また、シリンダヘッド4には、各気筒2毎に、燃料を噴射するインジェクタ18が設けられている。このインジェクタ18は、該インジェクタ18の燃料噴射口が燃焼室10の天井面から該燃焼室10に臨むように配設されていて、圧縮行程上死点付近で燃焼室10に燃料を直接噴射供給するようになっている。
シリンダヘッド4の車両前側の面には、各気筒2の上記吸気ポートに連通するように吸気通路21が接続されている。この吸気通路21には、上流側から順に、エアクリーナ22、スロットル弁23、及び過給機24が設けられている。吸気通路21の下流側の部分は、吸気マニホールド26によって構成されていて、各気筒2毎に分岐する独立通路とされている。各独立通路の下流端が各気筒2の上記吸気ポートにそれぞれ接続されている。
シリンダヘッド4の車両後側の面には、図示は省略するが、各気筒2の燃焼室10からの排気ガスを排出する排気通路が接続される。この排気通路の上流側の部分は、各気筒毎に分岐して上記排気ポートに接続された独立通路と該各独立通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成される。
シリンダヘッドカバー5は、上側が閉塞されかつ下側が開放された有底筒状に形成されていて、シリンダヘッド4の上端に固定されて吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12の上側を覆う。
シリンダヘッドカバー5の内側には、第1オイルセパレータ31が設けられている。この第1オイルセパレータ31は、ブローバイガス中のオイルミストを分離除去するためのオイルセパレータ室32を有する。このオイルセパレータ室32は、吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12が配設されるカム室41とは区画されて形成されている。オイルセパレータ室32の出口には、該オイルセパレータ室32でオイルミストが分離除去されたブローバイガスを、ブローバイガス通路43を介して、該オイルセパレータ室32からエンジン1の吸気系(吸気通路21におけるスロットル弁23と過給機24との間の部分)に流出させるPCVバルブ44(ブローバイガス流量制御弁)が設けられている。このPCVバルブ44に接続された管部48(図2参照)が、シリンダヘッドカバー5の上面から上側に突出している。この管部48に、管部48と、吸気通路21におけるスロットル弁23と過給機24との間の部分とを接続する、ブローバイガス通路43を構成するホース(図示せず)が接続される。
図1(a)に示す、過給機24による過給を行わない非過給時には、吸気通路21におけるスロットル弁23の下流側が負圧となり、この負圧により、ブローバイガスがブローバイガス通路43を介して吸気通路21におけるスロットル弁23と過給機24との間の部分に還流される。PCVバルブ44の開度は、上記負圧の大きさに応じて変化し、上記負圧の絶対値が大きいほど、PCVバルブ44の開度が小さくなって、ブローバイガスの還流量が少なくなる。
本実施形態では、吸気通路21におけるエアクリーナ22とスロットル弁23との間の部分から、シリンダブロック3の下部に新気を導入するための新気導入路28が分岐している。このシリンダブロック3の下部に導入された新気により、オイルが劣化するのを防止する。新気導入路28は、シリンダヘッドカバー5の外側に設けられた第2オイルセパレータ51のオイルセパレータ室52及びシリンダヘッド4を通って、シリンダブロック3の下部(ピストン8よりも下側)に達する。非過給時には、燃焼室10に新気が導入されるとともに、シリンダブロック3の下部が負圧となるので、図1(a)に示すように、新気導入路28を介してシリンダブロック3の下部に新気が導入される。こうして導入された新気は、ブローバイガスと共に、第1オイルセパレータ31のオイルセパレータ室32及びブローバイガス通路43を介して、吸気通路21におけるスロットル弁23と過給機24との間の部分に還流される。
一方、図1(b)に示す、過給機24による過給時には、スロットル弁23が全開とされて吸気通路21におけるスロットル弁23の下流側が大気圧となるので、ブローバイガス通路43を介してブローバイガスが吸気通路21におけるスロットル弁23と過給機24との間の部分に還流されることはない。しかし、シリンダブロック3の下部が正圧となるので、ブローバイガスが新気導入路28を逆流して、吸気通路21におけるエアクリーナ22とスロットル弁23との間の部分に還流される(シリンダブロック3の下部に新気は導入されない)。このとき、ブローバイガスは、第2オイルセパレータ51のオイルセパレータ室52を通る。このオイルセパレータ室52は、第1オイルセパレータ31のオイルセパレータ室32と同様の構成のものであり(但し、オイルセパレータ室32の出口にPCVバルブ44のようなバルブは設けられていない)、このオイルセパレータ室52でブローバイガス中のオイルミストが分離除去される。したがって、過給時にも、オイルミストが分離除去されたブローバイガスをエンジン1の吸気系に還流することができる。
図2に示すように、シリンダヘッドカバー5(詳細には、後述の樹脂製カバー部材62)における車両前側の部分の上側には、フューエルレール55が、クランクシャフト9の軸方向(車幅方向)に延びるように配設されている。フューエルレール55には、4つの燃料パイプ56の一端部が接続されており、各燃料パイプ56の他端部が、各気筒2のインジェクタ18にそれぞれ接続されている。
シリンダヘッドカバー5(詳細には、後述の樹脂製カバー部材62)における車両後側の部分の上側には、プロテクタ58が、車幅方向に延びるように設けられている。このプロテクタ58は、上記車両の衝突時(前面衝突時)にエンジン1が後退したときに、フューエルレール55及び各燃料パイプ56の上記一端部と、該車両においてエンジン1に対して車両後側に位置するカウル部材(図示せず)との衝突を回避するためのものである。プロテクタ58は、下側に延びる複数の脚部58aを介して、ボルト59によりシリンダヘッドカバー5の上面に固定されている。
ここで、エンジン1については、クランクシャフト9の、後述の変速機への出力側(図2及び図3の右側)が後側と呼ばれ、その反対側(図2及び図3の左側)が前側と呼ばれる。クランクシャフト9の軸方向は、エンジン1の長手方向とも呼ばれる。また、エンジン1の後側から前側を見たときの左側がエンジン1の左側と呼ばれ、右側がエンジンの右側と呼ばれ、エンジン1の左右方向は幅方向とも呼ばれる。
以下、シリンダヘッドカバー5の具体的な構成を、図2〜図5を参照して説明する。
シリンダヘッドカバー5は、図2及び図3に示すように、金属製カバー部材61(本実施形態では、アルミニウム合金からなる)と樹脂製カバー部材62との2部材で構成されている。金属製カバー部材61は、シリンダヘッドカバー5のエンジン長手方向(シリンダヘッドカバー5の長手方向でもある)の一側の端部及びその近傍部分を構成し、樹脂製カバー部材62は、シリンダヘッドカバー5の残りの部分を構成する。本実施形態では、金属製カバー部材61は、シリンダヘッドカバー5のエンジン後側の端部(車両左側の端部)及びその近傍部分を構成する。
本実施形態では、エンジン1の後側の端面(シリンダブロック3及びシリンダヘッド4のエンジン後側の端面)に、クランクシャフト9により吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12を駆動するためのチェーン15(図5及び図6参照)と、該チェーン15をエンジン後側から覆う金属製のチェーンカバー6(図2、図4〜図6参照)とが設けられている。本実施形態では、チェーンカバー6も、アルミニウム合金からなる。チェーンカバー6の上端部は、複数のボルト64Aにより、金属製カバー部材61のエンジン後側の端面に取付固定されている。
本実施形態では、チェーンカバー6は、シリンダヘッド4及びシリンダヘッドカバー5に対応するヘッド側カバー部16(上側部分)と、シリンダブロック3に対応するブロック側カバー部17(下側部分)との上下2分割構造とされたものである。金属製カバー部材61に固定される上記上端部を除くヘッド側カバー部16は、複数のボルト64Bにより、シリンダヘッド4に取付固定され、ブロック側カバー部17は、複数のボルト64Cにより、シリンダブロック3に取付固定されている。これらの取付固定状態で、ヘッド側カバー部16の下端部が、ブロック側カバー部17の上端部にカバー外側(エンジン後側)から重ね合わされている。尚、後に詳細に説明するが、ヘッド側カバー部16は、2つのボルト64Dによりシリンダブロック3にも取付固定されている。また、ブロック側カバー部17の上端部におけるエンジン幅方向の中間部は、ヘッド側カバー部16の下端部を固定するボルト64Bによりヘッド側カバー部16と共締めされて、シリンダブロック3に取付固定されている。
シリンダブロック3のエンジン後側の端面には、チェーンカバー6のブロック側カバー部17を介して、図示を省略する変速機(本実施形態では、自動変速機)が結合されており、クランクシャフト9が該変速機の入力軸と連結されて、エンジン1の動力が上記変速機に伝達される。図4に示すように、ブロック側カバー部17の外側の面(エンジン後側の面)には、上記変速機のエンジン1側の面が当接する変速機当接面17aが形成されている。上記のようにチェーンカバー6が上下2分割構造とされていることで、エンジン1と上記変速機とが互いに結合されかつ上記エンジンルーム内に搭載された状態であっても、チェーンカバー6のヘッド側カバー部16をシリンダヘッド4及び金属製カバー部材61から容易に外すことができ、ヘッド側カバー部16をシリンダヘッド4及び金属製カバー部材61から外すことで、チェーン15を外して(チェーン15と吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12との係合を解除するだけでよい)、シリンダヘッド4や、シリンダヘッド4とシリンダブロック3との間をシールする不図示のシリンダヘッドガスケットを、新しいものに容易に交換できるようになる。尚、図4では、シリンダヘッドカバー5の記載を省略している(図6も同様)。
図2及び図3に示すように、金属製カバー部材61は、複数のボルト65によりシリンダヘッド4に固定されている。また、樹脂製カバー部材62は、複数のボルト66によりシリンダヘッド4に固定されている。これらの固定状態で、樹脂製カバー部材62のエンジン後側の端部が、金属製カバー部材61のエンジン前側の端部に上側から重ね合わされている。金属製カバー部材61及び樹脂製カバー部材62の互いに重ね合わされた端部の間には、該間をシールするラバーガスケット68が設けられている(図5参照)。このラバーガスケット68は、無端状のものであって、樹脂製カバー部材62の下面の外周縁部(エンジン後側の端部を除く)とシリンダヘッド4の上面との間もシールする。尚、金属製カバー部材61の下面とシリンダヘッド4との間には、液状ガスケットが設けられている。
金属製カバー部材61のエンジン左側(車両前側)の部分におけるエンジン長手方向の中間部には、吸気カムシャフト11の回転位置を検出する吸気側カムアングルセンサ71が取り付けられる吸気側カムアングルセンサ取付部61aが設けられ(図2及び図3参照)、金属製カバー部材61のエンジン右側(車両後側)の部分におけるエンジン長手方向の中間部には、排気カムシャフト12の回転位置を検出する排気側カムアングルセンサ72が取り付けられる排気側カムアングルセンサ取付部61bが設けられている(図2及び図3参照)。すなわち、吸気側及び排気側カムアングルセンサ取付部61a,61bは、金属製カバー部材61において、互いにエンジン幅方向に間隔をあけて設けられている。
金属製カバー部材61のエンジン前側の端部におけるエンジン幅方向の中央部には、エンジン後側に切り欠いた凹部61cが形成され、この凹部61cは、吸気側カムアングルセンサ取付部61aと排気側カムアングルセンサ取付部61bとの間に位置している。
樹脂製カバー部材62のエンジン後側の端部におけるエンジン幅方向の中央部には、金属製カバー部材61及び樹脂製カバー部材62のシリンダヘッド4への固定状態で、金属製カバー部材61の凹部61cに対応してエンジン後側に突出する突出部62aが形成されている。この突出部62aは、樹脂製カバー部材62におけるエンジン幅方向の中央部に、エンジン1の長手方向に延びる長孔62bを形成するために設けられたものである。すなわち、図5に示すように、長孔62b内には、各気筒2のインジェクタ18、及び、各気筒2内の圧力を検出する筒内圧センサ19の上端部が位置している。長孔62bのエンジン後側の端は、エンジン1の最も後側の気筒2のインジェクタ18及び筒内圧センサ19を配置することが可能な位置に位置しており、このために突出部62aが形成されている。全気筒2のインジェクタ18及び筒内圧センサ19は、長孔62bを塞ぐように長孔62bの下側に配設されたホルダ74に、上下方向に貫通した状態で保持されている。ホルダ74の上面と樹脂製カバー部材62における長孔62bの周縁部の下面との間には、該間をシールするラバーガスケット69が配設されている(図5参照)。
尚、詳細な図示は省略するが、第1オイルセパレータ31は、樹脂製カバー部材62の内側に設けられ、第2オイルセパレータ51は、樹脂製カバー部材62の外側に設けられる。
上記のように、チェーンカバー6は上下2分割構造とされ、シリンダヘッド4や上記シリンダヘッドガスケットの交換時には、ヘッド側カバー部16がシリンダヘッド4及び金属製カバー部材61から外される。このヘッド側カバー部16の着脱の容易性を考慮して、ヘッド側カバー部16のシリンダヘッド4側の面における外周縁部には、液状ガスケットではなく、無端状のラバーシール部材97が設けられている(図6及び図7参照)。尚、ブロック側カバー部17のシリンダブロック3側の面における外周縁部には、液状ガスケットが設けられる。
ここで、シリンダヘッド4とシリンダブロック3とチェーンカバー6との三面合わせ部のシール性が問題となる。そこで、本実施形態では、そのシール性を確保するために、以下のようなシール構成にしている。尚、シリンダヘッド4とシリンダブロック3との間は、上記シリンダヘッドガスケットによりシールされる。
ブロック側カバー部17の上端部におけるエンジン幅方向両側の端部(エンジン左側及び右側の端部)及びエンジン幅方向の中間部の一部(エンジン右側の部分)は、シリンダブロック3のエンジン後側の端面の上端縁(シリンダヘッド4とシリンダブロック3との合わせ面)よりも下側に位置し、ブロック側カバー部17の上端部におけるエンジン幅方向の中間部の残りの部分(エンジン左側の部分)は、該上端縁を超えてシリンダヘッド4側に突出して、該突出部分が、ヘッド側カバー部16の下端部を固定するボルト64Bによりヘッド側カバー部16と共締めされて、シリンダブロック3に取付固定される。
また、ブロック側カバー部17の上端部のエンジン左側の端部は、シリンダブロック3のエンジン後側の端面の上端部におけるエンジン左側の端縁よりもエンジン幅方向の内側(つまりエンジン右側)に位置し(図6及び図7参照)、同様に、ブロック側カバー部17の上端部のエンジン右側の端部は、シリンダブロック3のエンジン後側の端面の上端部におけるエンジン右側の端縁よりもエンジン幅方向の内側(つまりエンジン左側)に位置する。
すなわち、ブロック側カバー部17における上端部とエンジン幅方向の一側及び他側の端部とのそれぞれの角部17b(図6では、エンジン左側の角部17bしか見えていない)は、シリンダブロック3のエンジン後側の端面の上端縁よりも下側でかつ該端面の上端部におけるエンジン幅方向の上記一側及び上記他側の端縁よりもエンジン幅方向の内側にそれぞれ位置している。
図7に示すように、ブロック側カバー部17の上端部は、エンジン幅方向の両側端部に設けられかつエンジン幅方向の外側に向かってシリンダブロック3側に傾斜する傾斜部17c(図7では、エンジン左側の傾斜部17cのみ記載)と、該両側端部の傾斜部17c同士を繋ぐべく、シリンダブロック3のエンジン後側の端面と略平行に延びる連結部17dとを有する。各傾斜部17cにおける連結部17dとは反対側の端面は、シリンダブロック3のエンジン後側の端面に略接触している。本実施形態では、傾斜部17cは、水平平面で切断した断面(図7の断面)において、カバー外側に突出するように僅かに湾曲しているが、シリンダブロック3のエンジン後側の端面に略接触した上記端面から連結部17dに向かって直線状に延びる形状であってもよい。
シリンダブロック3のエンジン後側の端面の上端部において上記角部17bよりもエンジン幅方向の外側の部分(エンジン左側の角部17bよりもエンジン左側の部分及びエンジン右側の角部17bよりもエンジン右側の部分)が、ヘッド側カバー部16(詳細には、後述の下側固定部16c)で覆われるヘッド側カバー被覆部3aとされている。シリンダブロック3のエンジン後側の端面における各ヘッド側カバー被覆部3aの下側近傍部分には、ヘッド側カバー部16をシリンダブロック3に固定するためのボルト64Dが螺合するねじ孔3cが形成されかつ後述の下側固定部16cが当接する固定部当接部3bが設けられている。本実施形態では、各固定部当接部3bは、各ヘッド側カバー被覆部3aの直ぐ下側に、各ヘッド側カバー被覆部3aと同一面となるように設けられている。
ヘッド側カバー部16の下端部は、ブロック側カバー部17の上端部に重ね合わされるように、エンジン1の後側から見て、ブロック側カバー部17の上端部と同様の形状をなしている。また、図7に示すように、ヘッド側カバー部16の下端部は、ブロック側カバー部17の上端部と同様に、エンジン幅方向の両側端部に設けられかつエンジン幅方向の外側に向かってシリンダブロック3側に傾斜する傾斜部16a(図7では、エンジン左側の傾斜部16aのみ記載)と、該両側端部の傾斜部16a同士を繋ぐべく、シリンダブロック3のエンジン後側の端面と略平行に延びる連結部16bとを有する。本実施形態では、傾斜部17cに対応して、傾斜部16aも、水平平面で切断した断面(図7の断面)において、カバー外側に突出するように僅かに湾曲しているが、上記のように傾斜部17cが直線状に延びる形状である場合には、傾斜部16aも同様に直線状に延びる形状とされる。
各傾斜部16aにおける連結部16bとは反対側の端部には、ねじ孔3cに螺合するボルト64Dによって、固定部当接部3bに当接して固定される下側固定部16cが一体形成されている。各下側固定部16cは、各ヘッド側カバー被覆部3aにも当接して当該ヘッド側カバー被覆部3aを覆っている。
ラバーシール部材97は、互いに重ね合わされたヘッド側カバー部16の下端部とブロック側カバー部17の上端部との間に位置して、該間をシールする。そして、図6及び図7に示すように、ラバーシール部材97は、ヘッド側カバー部16の下端部とブロック側カバー部17の上端部との間を通ってエンジン幅方向に延びた後、シリンダブロック3の各ヘッド側カバー被覆部3aに接触して、該接触した部分から折れ曲がって上側に延びて、接触する相手が、該ヘッド側カバー被覆部3aからシリンダヘッド4のエンジン後側の端面へと変化するように配設されている。
また、本実施形態では、ラバーシール部材97は、ヘッド側カバー部16の下端部の傾斜部16aとブロック側カバー部17の上端部の傾斜部17cとの間に位置する部分97a(以下、傾斜部対応部97aという)の変形前の厚みが、ヘッド側カバー部16の下端部の連結部16bとブロック側カバー部17の上端部の連結部17dとの間に位置する部分97b(以下、連結部対応部97bという)の変形前の厚みよりも大きくなるように形成されている。
すなわち、ラバーシール部材97の連結部対応部97bにおいては、ヘッド側カバー部16(連結部16b)により押圧される方向が連結部対応部97bの厚み方向と一致しているので、連結部対応部97bの変形前の厚みが小さくても、連結部対応部97bが厚み方向に圧縮変形されてシール機能を発揮する。一方、ラバーシール部材97の傾斜部対応部97aにおいては、ヘッド側カバー部16(傾斜部16a)により押圧される方向が傾斜部対応部97aの厚み方向に対して斜めの方向になるので、傾斜部16a,17cの製造誤差(特にエンジン幅方向の位置の誤差)により、傾斜部対応部97aが厚み方向に圧縮変形されずにシール機能を発揮できない場合がある。そこで、本実施形態では、ラバーシール部材97の傾斜部対応部97aの変形前の厚みを連結部対応部97bの変形前の厚みよりも大きくすることで、傾斜部16a,17cに多少の製造誤差があっても、傾斜部対応部97aが厚み方向に圧縮変形されるようにして、シール機能を発揮させるようにしている。尚、ラバーシール部材97の傾斜部対応部97aの変形後の厚みd1も、連結部対応部97bの変形後の厚みd2よりも大きい。
図6に示すように、シリンダヘッド4のエンジン後側の端面における各ヘッド側カバー被覆部3aの上側近傍部分には、ヘッド側カバー部16をシリンダブロック3に固定するためのボルト64Bが螺合するねじ孔4bが形成されかつ後述の上側固定部16dが当接する固定部当接部4aが設けられている。ヘッド側カバー部16には、各固定部当接部4aに当接して固定される上側固定部16dが一体形成されている。上側固定部16d及び下側固定部16cは、シリンダヘッド4とシリンダブロック3との合わせ面を挟んで該合わせ面の近傍に位置することになる。ラバーシール部材97は、各下側固定部16cの近傍で各ヘッド側カバー被覆部3aに接触しながら折れ曲がって上側に延び、シリンダヘッド4とシリンダブロック3との合わせ面を超えた後、各上側固定部16dの近傍を通って更に上側に延びる。
ラバーシール部材97において、シリンダヘッド4のエンジン後側の端面の下端縁(シリンダヘッド4とシリンダブロック3との合わせ面)よりも上側に位置する部分は、該端面に接触して、シリンダヘッド4とヘッド側カバー部16との間をシールする。
したがって、本実施形態では、ラバーシール部材97が、ヘッド側カバー部16の下端部とブロック側カバー部17の上端部との間を通ってエンジン幅方向に延びた後、シリンダブロック3の各ヘッド側カバー被覆部3aに接触して、該接触した部分から折れ曲がって上側に延びて、接触する相手が、該ヘッド側カバー被覆部3aからシリンダヘッド4のエンジン後側の端面へと変化するように配設されているので、シリンダヘッド4とシリンダブロック3とチェーンカバー6との三面合わせ部のシール性を確保することができる。特に、シリンダヘッド4とシリンダブロック3との合わせ面を挟んで該合わせ面の近傍に位置する上側固定部16d及び下側固定部16cにより、シリンダヘッド4とシリンダブロック3とが熱によりエンジン1の長手方向に変形しかつ該変形量が互いに異なっていたとしても、ラバーシール部材97における上記合わせ面を跨ぐ部分(上側固定部16dと下側固定部16cとの間の位置する部分)が、シリンダヘッド4又はシリンダブロック3のエンジン後側の端面から離れるのを抑制することができて、シリンダヘッド4とシリンダブロック3とチェーンカバー6との三面合わせ部のシール性を良好に確保することができる。
また、本実施形態では、チェーンカバー6が、ヘッド側カバー部16とブロック側カバー部17との上下2分割構造とされ、シリンダブロック3のエンジン後側の端面に、チェーンカバー6のブロック側カバー部17を介して変速機が結合されているので、エンジン1と変速機とが互いに結合されかつ上記エンジンルーム内に搭載された状態であっても、チェーンカバー6のヘッド側カバー部16をシリンダヘッド4及び金属製カバー部材61から容易に外すことができ、ヘッド側カバー部16をシリンダヘッド4及び金属製カバー部材61から外すことで、チェーン15を外して、シリンダヘッド4や上記シリンダヘッドガスケットを、新しいものに容易に交換できるようになる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態では、エンジン1の後側の端面に、チェーン15及びチェーンカバー6が設けられているが、エンジン1の前側の端面に、チェーン15及びチェーンカバー6が設けられていてもよい。この場合、エンジン1が車両に搭載された状態であっても、チェーンカバー6においてボルト64A,64B,64Dの締結解除が容易な、上側に位置するヘッド側カバー部16をシリンダヘッド4及びシリンダヘッドカバー5から容易に外すことができ、ヘッド側カバー部16をシリンダヘッド4及びシリンダヘッドカバー5から外すことで、チェーン15を外して、シリンダヘッド4や上記シリンダヘッドガスケットを、新しいものに容易に交換できるようになる。また、この場合も、ラバーシール部材97によるシール構成を上記実施形態と同様に構成することで、シリンダヘッド4とシリンダブロック3とチェーンカバー6との三面合わせ部のシール性を確保することができる。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。