本発明の第1局面に係る洗濯機は、前面側に開口部を備えている筐体と、筐体内に設けられ、洗濯水を貯留する水槽と、水槽を弾性支持するスライド装置と、水槽内に回転可能に設けられているドラムと、ドラムを回転駆動するモータとを備えている。さらに、当該洗濯機は、水槽の周側面に開閉可能に設けられている水槽開口部と、ドラムの周側面に開
閉可能に設けられ、洗濯物を出し入れするドラム開口部とを備えている。スライド装置は、水槽開口部が筐体から露出するように水槽が引き出されている引き出し位置と、筐体内に水槽が格納されている格納位置との間を水槽が前後方向に摺動可能とするスライド体と、水槽を下方から弾性支持するダンパ装置と、水槽を上方から弾性支持するばね装置を有している。スライド装置がスライド移動するときに、水槽の揺れを低減する水槽揺れ低減手段が設けられている。水槽揺れ低減手段は、揺れ低減装置により構成され、揺れ低減装置は水槽の前後方向の揺れを低減する。洗濯動作を制御する制御装置と、スライド装置のスライド動作を規制するスライドロック装置とをさらに備えている。制御装置は、スライドロック装置によるスライド装置のロックを解除するのと同時に揺れ低減装置を作動させる。ここで、「同時」とは、「略同時」の場合も含む。
これにより、使用者は水槽を筐体から引き出すことによって洗濯物を上方から出し入れすることができ、楽な姿勢で洗濯物を容易に取り出すことができる。さらに、スライド移動時の水槽の揺れを低減することができ、水槽の引き出し時と格納時におけるスライド装置のスライド動作をスムーズに行うことができる。
また、スライド移動によって生じる水槽の前後方向の揺れを抑えて、スライド移動時の速度変化を少なくすることができる。その結果、スライド動作がスムーズに行われる。
また、スライド装置がスライド可能な状態にあるときは、揺れ低減装置が作動しているため、スライド移動のどのタイミングでも水槽の揺れを低減することができる。これにより、水槽のスムーズなスライド移動を実現して、使い勝手を向上することができる。
第2の局面に係る洗濯機は、特に、第1の局面に係る洗濯機において、スライド装置は、水槽の前面との間に間隙を有して水槽を外方から覆う前扉を有し、間隙には、水槽と前扉との衝突を緩和するクッション体が設けられている。
これにより、スライド移動時および洗濯運転時における水槽の揺れを低減するとともに、水槽と前扉との接触による騒音の発生を防止し、水槽を保護することができる。
第3の局面に係る洗濯機は、前面側に開口部を備えている筐体と、筐体内に設けられ、洗濯水を貯留する水槽と、水槽を弾性支持するスライド装置と、水槽内に回転可能に設けられているドラムと、ドラムを回転駆動するモータとを備えている。さらに、当該洗濯機は、水槽の周側面に開閉可能に設けられている水槽開口部と、ドラムの周側面に開閉可能に設けられ、洗濯物を出し入れするドラム開口部とを備えている。スライド装置は、水槽開口部が筐体から露出するように水槽が引き出されている引き出し位置と、筐体内に水槽が格納されている格納位置との間を水槽が前後方向に摺動可能とするスライド体と、水槽を下方から弾性支持するダンパ装置と、水槽を上方から弾性支持するばね装置を有している。スライド装置がスライド移動するときに、水槽の揺れを低減する水槽揺れ低減手段が設けられている。水槽揺れ低減手段は、第1の水槽固定装置で構成され、第1の水槽固定装置は、スライド装置がスライド移動するときに、水槽とスライド装置を結合する。
これにより、使用者は水槽を筐体から引き出すことによって洗濯物を上方から出し入れすることができ、楽な姿勢で洗濯物を容易に取り出すことができる。さらに、スライド移動時の水槽の揺れを低減することができ、水槽の引き出し時と格納時におけるスライド装置のスライド動作をスムーズに行うことができる。また、スライド移動時の水槽の揺れをさらに低減することができ、スムーズなスライド移動を実現して、使い勝手を向上することができる。
第4の局面に係る洗濯機は、前面側に開口部を備えている筐体と、筐体内に設けられ、洗濯水を貯留する水槽と、水槽を弾性支持するスライド装置と、水槽内に回転可能に設けられているドラムと、ドラムを回転駆動するモータとを備えている。さらに、当該洗濯機は、水槽の周側面に開閉可能に設けられている水槽開口部と、ドラムの周側面に開閉可能に設けられ、洗濯物を出し入れするドラム開口部とを備えている。スライド装置は、水槽開口部が筐体から露出するように水槽が引き出されている引き出し位置と、筐体内に水槽が格納されている格納位置との間を水槽が前後方向に摺動可能とするスライド体と、水槽を下方から弾性支持するダンパ装置と、水槽を上方から弾性支持するばね装置を有している。スライド装置がスライド移動するときに、水槽の揺れを低減する水槽揺れ低減手段が設けられている。水槽揺れ低減手段は、第2の水槽固定装置で構成され、第2の水槽固定装置は、スライド装置のスライド動作に応じて水槽とスライド装置を脱着可能に結合し、水槽が格納位置にあるとき、水槽とスライド装置の結合が解除される。
これにより、使用者は水槽を筐体から引き出すことによって洗濯物を上方から出し入れすることができ、楽な姿勢で洗濯物を容易に取り出すことができる。さらに、スライド移動時の水槽の揺れを低減することができ、水槽の引き出し時と格納時におけるスライド装置のスライド動作をスムーズに行うことができる。また、スライド装置の移動とともに自動的に水槽を固定することができる。したがって、洗濯機本体の電源が切られている状態でも、水槽がスライド移動すれば必ず水槽が固定されるので、スムーズなスライド移動を実現して、使い勝手を向上することができる。
第5の局面に係る洗濯機は、前面側に開口部を備えている筐体と、筐体内に設けられ、洗濯水を貯留する水槽と、水槽を弾性支持するスライド装置と、水槽内に回転可能に設けられているドラムと、ドラムを回転駆動するモータとを備えている。さらに、当該洗濯機は、水槽の周側面に開閉可能に設けられている水槽開口部と、ドラムの周側面に開閉可能に設けられ、洗濯物を出し入れするドラム開口部とを備えている。スライド装置は、水槽開口部が筐体から露出するように水槽が引き出されている引き出し位置と、筐体内に水槽が格納されている格納位置との間を水槽が前後方向に摺動可能とするスライド体と、水槽を下方から弾性支持するダンパ装置と、水槽を上方から弾性支持するばね装置を有している。スライド装置がスライド移動するときに、水槽の揺れを低減する水槽揺れ低減手段が設けられている。ダンパ装置は、減衰力が可変可能に構成され、水槽がスライド移動されるときは、ダンパ装置を不作動としている。
これにより、使用者は水槽を筐体から引き出すことによって洗濯物を上方から出し入れすることができ、楽な姿勢で洗濯物を容易に取り出すことができる。さらに、スライド移動時の水槽の揺れを低減することができ、水槽の引き出し時と格納時におけるスライド装置のスライド動作をスムーズに行うことができる。また、新たな固定手段を加えることなく、簡略な構成で水槽の揺れを低減することができ、スムーズなスライド移動を実現して、使用者の使い勝手を向上することができる。
第6の局面に係る洗濯機は、前面側に開口部を備えている筐体と、筐体内に設けられ、洗濯水を貯留する水槽と、水槽を弾性支持するスライド装置と、水槽内に回転可能に設けられているドラムと、ドラムを回転駆動するモータとを備えている。さらに、当該洗濯機は、水槽の周側面に開閉可能に設けられている水槽開口部と、ドラムの周側面に開閉可能に設けられ、洗濯物を出し入れするドラム開口部とを備えている。スライド装置は、水槽
開口部が筐体から露出するように水槽が引き出されている引き出し位置と、筐体内に水槽が格納されている格納位置との間を水槽が前後方向に摺動可能とするスライド体と、水槽を下方から弾性支持するダンパ装置と、水槽を上方から弾性支持するばね装置を有している。スライド装置がスライド移動するときに、水槽の揺れを低減する水槽揺れ低減手段が設けられている。スライド体に設けられている第1の係止部と、筐体が設置される設置部に取り付けられ、第1の係止部と脱着可能に係合する第2の係止部とをさらに有している。水槽の引き出し位置への移動により第1の係止部は第2の係止部に係合され、水槽の格納位置への移動により第1の係止部は第2の係止部から離脱する。
これにより、使用者は水槽を筐体から引き出すことによって洗濯物を上方から出し入れすることができ、楽な姿勢で洗濯物を容易に取り出すことができる。さらに、スライド移動時の水槽の揺れを低減することができ、水槽の引き出し時と格納時におけるスライド装置のスライド動作をスムーズに行うことができる。また、水槽が筐体から引き出された際に、第1の係止部を第2の係止部に連結することができ、水槽が引き出された状態でも安定した設置状態を確保することができる。また、水槽が格納位置にある洗濯時には第1の係止部は第2の係止部から離脱され、スライド装置と設置部を切り離すことができるため、洗濯時の振動が設置部等の外部に伝播するのを抑制することが可能となる。これにより、洗濯機周囲の振動および騒音環境を向上させることができる。
第7の局面に係る洗濯機は、特に、第6の局面に係る洗濯機において、水槽が引き出し位置にあり、スライド装置に下向きの荷重を含む格納方向への押圧力が作用したとき、第1の係止部が第2の係止部から離脱するのを防止する離脱防止装置をさらに備えている。
これにより、引き出されたスライド装置に使用者が寄りかかるなどして、不用意に力が加えられた場合には、下向きに作用する分力によって第1の係止部と第2の係止部の離脱を防止することができる。したがって、筐体の開口部が閉じられるのを防止して安全性を向上させることができる。
第8の局面に係る洗濯機は、特に、第6の局面に係る洗濯機において、第1の係止部は、水槽が、格納位置から引き出し位置へ所定距離を移動した状態から、水槽が引き出し位置まで移動された状態までの間で、第2の係止部と係合する。
これにより、スライド装置が途中まで引き出された状態で使用する際に、使用者が引き出されたスライド装置に寄りかかるなどして、不用意に力が加えられた場合でも、係止体との係合により安定した設置状態を確保することができる。
第9の局面に係る洗濯機は、特に、第6の局面に係る洗濯機において、第1の係止部は、運転の一時停止操作によって水槽が引き出される位置で第2の係止部と係合する。
運転開始後に、例えば、洗濯物を入れ忘れた場合の追加投入等で、水槽が途中まで引き出された状態で洗濯物が入れられる際に、引き出したスライド装置に不用意に力が加えられる場合が考えられる。このような場合でも、係止部の係合により安定した設置状態を確保することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における洗濯機の要部断面図である。図2は、同洗濯機の水槽を引き出した状態の要部を断面図である。図3は、同洗濯機の水槽を引き出した状態の一部切欠上面図である。図4Aは、同洗濯機のドラム固定時の要部断面図である。図4Bは、同洗濯機のドラム固定解除時の要部断面図である。図5は、同洗濯機の要部断面図である。図6は、同洗濯機の運転一時停止時において、水槽を引き出した状態の要部断面図である。
洗濯機本体1の外郭は筐体2で形成されており、筐体2の前面側には、開口部2aが設けられている。筐体2底部の前側の2箇所と後側の2箇所とには、各々弾性を有するゴム製の前側支持脚3aおよび後側支持脚3bが設けられている。筐体2は、支持脚3aおよび3bを介して床面に設置されている。筐体2は、洗濯用の水を溜める水槽4と、水槽4内に衣類等の洗濯物(以下、洗濯物という)を収容する回転可能なドラム5を備えている。
円筒状のドラム5は、前後方向へ水平に配設したドラム回転軸5aを中心として回転可能に構成され、水槽4の後部に設けたモータ6によって回転駆動される。モータ6は、ブラシレス直流モータで構成され、インバータ制御によって回転速度が自在に変化する。
ドラム5が固定されているドラム回転軸5aは、水槽4の後部に固定された軸受からなる回転支持部7により回転自在に支持されている。樹脂製の水槽4の後部には、金属補強としてメカケース8が取り付けられてあり、メカケース8で回転支持部7を固定している。
ドラム5の周側面の内側には、ドラム回転軸5a方向であるドラム5の回転中心に向かって複数箇所(例えば、3箇所)に内方へ突出させたバッフル9が設けられている。ドラム5の周側面には、水槽4内と連通する多数の小孔10が設けられている。
ドラム5の周側面には、洗濯物を出し入れするドラム開口部11が設けられている。ドラム5は、ドラム蓋12によって開閉可能に構成されている。ドラム開口部11は、ドラム5の周側面の一部に設けられており、例えば、ドラム5円周の略1/3程度の大きさで設けられている。また、ドラム開口部11は、隣り合うバッフル9の間に配設されている。ドラム5の周側面に沿って円弧状に形成されたドラム蓋12は、ドラム5の外周面に沿って円周方向へ摺動自在に設けられている。
ドラム蓋12は、その両端部が周方向に延びる一対のレール(図示せず)によってガイドされている。使用者は、操作部12aを持ってドラム蓋12をスライドさせることで、ドラム開口部11を手動で開閉することができる。ドラム蓋12には金属のバネ性を利用した固定爪(図示せず)が設けられており、洗濯運転中は、ドラム5の回転によってドラム開口部11が開かないように固定されている。
洗濯物を出し入れする際は、固定爪のバネ力に抗してドラム蓋12がスライド移動することでドラム開口部11は開放される。洗濯する際は、ドラム蓋12がスライド移動してドラム開口部11を閉塞する。
水槽4の周側面の上部には、水槽開口部13が設けられている。水槽4は、水槽蓋14によって水槽4は開閉可能に構成されている。水槽開口部13は、水槽4の周側面の一部に設けてあり、例えば水槽4円周の略1/3程度の大きさに形成されている。水槽4の周側面に沿って円弧状に形成された水槽蓋14は、水槽4の外周面に沿って円周方向へ摺動自在に設けられている。
水槽蓋14は、その両端部が周方向に延びる一対のレール(図示せず)によって、水槽内から洗濯水が漏れ出ないように水密的にガイドされている。使用者は、操作部14aを持って水槽蓋14をスライドすることで、水槽開口部13を手動で開閉することができる。水槽蓋14には、ドラム蓋12と同様に、金属のバネ性を利用した固定爪(図示せず)が設けられており、洗濯運転中は、水槽開口部13を閉じた状態に保持されている。
洗濯物を出し入れする際は、固定爪のバネ力に抗して水槽蓋14がスライド移動されることで水槽開口部13が開かれて、ドラム蓋12が露出する。洗濯する際は、水槽蓋14がスライド移動されて水槽開口部13が閉塞される。
水槽4を筐体2内に弾性支持するスライド装置15は、スライド体16、ダンパ装置17、およびばね装置18を備えている。スライド体16は、水槽開口部13が筐体2から前方へ露出するように水槽4が引き出されている状態である引き出し位置(以下、引き出し位置と称す)と、筐体2内に水槽4が格納されている状態である格納位置(以下、格納位置と称す)との間を水槽4が前後方向に摺動可能とする。ダンパ装置17は、水槽4を下方から弾性支持する。ばね装置18は、水槽4を上方から弾性支持する。スライド装置15は、水槽4が引き出し位置にあるとき、水槽4を筐体2内で支持するように構成されている。
スライド体16は、上板16aと底板16bとを四隅の柱16cで支える矩形の構造体である。底板16bの下側には複数の車輪19が設けられており、底板16bの前部と後部の左右にそれぞれ車輪19が設けられている。筐体2の底面内側には、左右に離れた2本の平行なレール20が設けられている。レール20は、洗濯機本体1の前後方向に形成されている。
車輪19はレール20上を転がり、スライド体16をスライド移動可能に構成している。これにより、水槽4は、引き出し位置と格納位置との間をスライド移動する。スライド体16の可動範囲は、レール20の前端部に設けた前ストッパー21と、レール20の後端部に設けた後ストッパー22によって決められている。前ストッパー21は、水槽4が引き出し位置となるようにスライド体16を停止させ、後ストッパー22は、水槽4が格納位置となるようにスライド体16を停止させる。
水槽4は、スライド体16の底板16bに一端が支持され下広がりに傾斜している左右一対のダンパ装置17で下方から弾性支持されている。さらに、水槽4は、スライド体16の上板16aに一端が支持されている左右一対のばね装置18で上方から弾性支持されている。
スライド装置15には、水槽4を外方から覆う前扉24が設けられている。水槽4の前面と前扉24との間には、間隙23が設けられている。前扉24は、2本の平行なシャフト25により水槽4の下方でスライド体16と連結されており、スライド体16とともにスライド移動する。
水槽4が格納位置にあるときは、前扉24で筐体2の開口部2aが閉塞され、取っ手26に設けたロックレバー(図示せず)によって開口部2aは閉塞した状態に保持される。水槽4の引き出し時は、ロックレバーが解除操作され、取っ手26を介して前扉24が手前に引かれると、スライド体16が水槽4の引き出し位置へスライド移動され、水槽4は筐体2から前方へ引き出される。
水槽4は、ダンパ装置17とばね装置18によってスライド体16に弾性支持されているため、洗濯時の水槽4の振動を減衰することができる。また、前扉24と水槽4の前面との間に設けられた間隙23により、スライド体16に連結されている前扉24の振動を防止することができる。
水槽4と洗濯機本体1外の水栓27とを連通接続する給水経路28は、伸縮自在な可撓性の蛇腹ホースで構成されている。給水経路28は、スライド体16のスライド移動に応じて伸縮することで、水槽4と水栓27との接続状態を維持する。
水栓27は略室温と同等の温度の水を供給する。給水経路28の途中には、洗剤や柔軟剤等を供給する水に混入させるための洗剤ケース(図示せず)と、給水弁29とが設けられている。給水弁29は、給水経路28と水槽4とを連通するか、もしくは給水を停止するかの2つの状態を実現する。
水槽4には、水槽4内の水を機外へ排出するための排水経路30および排水ポンプ31が設けられている。排水経路30は伸縮自在な可撓性の蛇腹ホースで構成されており、スライド体16のスライド移動に応じて伸縮する。
水槽4の後部に設けられているモータ6は、スライド体16の内部またはスライド体16の後端部から、一部が後方へ突出するように配設されている。ここで、ドラム5やモータ6等を含む水槽4の重心は、図中Aで示した位置となるように構成されている。この場合は、水槽4内に最大容量(例えば、9kg)分の脱水後の洗濯物が入った状態である。
一方、水槽4内に上記最大容量の洗濯物を洗う際に設定された所定量の水(例えば、ドラム5の略下半分が水中に沈むような水位になる水量)が入った場合は、水槽4の重心は図中Aから前方向に移動して図中Bで示した位置となる。
筐体2内の上方前部には、制御装置32が設けられている。制御装置32は、モータ6、給水弁29、排水ポンプ31等の駆動を制御し、洗い、すすぎ、脱水等の各工程を逐次制御する。使用者は、操作表示部(図示せず)の電源スイッチ(図示せず)を入れ、操作ボタン(図示せず)を操作することにより、所望の運転が可能となる。
筐体2の前面には、開口部2aの上方に前上壁2bが設けられ、開口部2aの下方に前下壁2cが設けられている。水槽4が引き出し位置にあるときは、前上壁2bでばね装置18を前方から覆蓋し、前下壁2cでダンパ装置17を前方から覆蓋するように構成されている。
図4Aに示すように、水槽4の外周側面には、ソレノイドで構成されているドラム固定装置33が設けられている。ドラム固定装置33は、細長い棒状の固定ピン34をドラム5に向かって進退自在に構成し、ドラム5に設けた凹状の固定用穴35に固定ピン34の先端部が抜き差し可能に構成されている。
洗濯物を出し入れする際は、制御装置32によってドラム固定装置33を作動させ、図4Aに示すように、ドラム5に設けた凹状の固定用穴35に固定ピン34の先端部が挿入されるように固定ピン34を突き出す。これにより、ドラム5の回転が固定される。
一方、洗濯を行う際は、図4Bに示すように、ドラム固定装置33の固定ピン34がドラム5の固定用穴35から引き抜かれ、固定ピン34が回転中のドラム5に接触しないように、ドラム5から離れた位置に保持される。これにより、ドラム5は回転可能となる。
ドラム5の外周部の一部にマグネット36が設けられている。ドラム5の周側面に設けられているドラム開口部11が上向きになった状態でマグネット36と対向する位置に磁力検知センサ37が設けられている。磁力検知センサ37は、水槽4の外側に配置されており、ドラム5の回転によるマグネット36の回転軌道上に設けられている。
磁力検知センサ37がマグネット36の最接近を検知してドラム5の回転を停止したとき、ドラム5の固定用穴35が固定ピン34と対向した位置にある(図4A参照)。このとき、固定ピン34が固定用穴35に挿入されることで、ドラム開口部11が水槽開口部13に対向した位置でドラム5が固定される。
そして、水槽4が格納位置から引き出し位置へスライド移動すると、水槽開口部13が筐体2から露出し、ドラム開口部11が水槽開口部13と対向した位置で上向きに固定された状態で水槽4が引き出される。そして、水槽蓋14とドラム蓋12とをスライドさせることにより、水槽開口部13とドラム開口部11とが開かれ、洗濯物を出し入れすることができる。
本発明に係る洗濯機は、スライド装置15がスライド移動するときの水槽4の揺れを低減する水槽揺れ低減手段100を備えている。本実施形態に係る洗濯機は、水槽揺れ低減手段100は、揺れ低減装置38で構成されている。そして、本実施の形態に係る洗濯機は、弾性体で構成されているクッション体39を有している。揺れ低減装置38は、磁性鉄芯38aとソレノイド本体38bで構成されている。ソレノイド本体38bは、水槽4の背面側のスライド装置15のスライド体16に取り付けられている。
スライド装置15が水槽4の格納位置にあるときは、図1に示すように、磁性鉄芯38aは、水槽4の背面から大きく距離を保って離れた状態で、水槽4と接触しない。一方、水槽4が引き出し位置にあるときは、図2に示すように、磁性鉄芯38aは、ソレノイド本体38bによって洗濯機本体1前方に付勢された状態で、水槽4の背面に接触するように構成されている。
クッション体39は、前扉24と水槽4の前面との間に設けられている間隙23に配設されており、前扉24の上方の内側に備えられている。洗濯運転時における洗い工程時の叩き洗い動作や、脱水工程時の高速回転によって水槽4が振動し、クッション体39に水槽4が接触しても、クッション体39が柔らかく変形するので衝突による衝撃を緩衝する。これにより、水槽4の破損を防止するとともに、騒音の発生を防止することができる。
本実施形態に係る洗濯機は、スライド装置15を筐体2内に固定するスライドロック装置40を備えている。スライドロック装置40は、筐体2の後部下方の内側に設けられているソレノイド本体40aと、磁性鉄芯40b、およびスライド体16に設けられている磁性鉄芯穴40cで構成されている。
洗濯運転中は、磁性鉄芯40bが磁性鉄芯穴40cに入り込むことで、スライド装置15の移動を阻止する。スライド装置15が水槽4の引き出し位置にあるときは、磁性鉄芯40bは、ソレノイド本体40aに引き込まれ、磁性鉄芯穴40cから離脱した状態に保持されて、スライド装置15を自由に移動することができる。
本実施形態に係る洗濯機は、スライド体16を所定の位置(後述する洗濯物の追加投入位置)で停止させ、それ以上の前方への移動を阻止するスライド規制装置86を有する(図5参照)。スライド規制装置86は、筐体2の底部に取り付けてあり、モータ(図示せず)によってストッパー87をスライド体16のスライド移動の軌跡内外に駆動することができる。
ストッパー87をスライド体16のスライド軌跡内に配置すると、スライド体16の柱16cがストッパー87と接触し、スライド体16はそれ以上スライド移動できなくなる。図6は、柱16cがストッパー87に当接してスライド体16のスライド移動が停止した状態を示している。
以上のように構成されている洗濯機について、以下その動作、作用について説明する。洗濯動作の詳細を以下に説明する。洗濯は、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程の順に実行する。
使用者は、最初に取っ手26を引いて水槽4を手前方向にスライド移動させる。このとき、揺れ低減装置38は、水槽4の揺れを低減すべく磁性鉄芯38aを突出させて、磁性鉄芯38aが水槽4に接触させた状態となっている。
水槽蓋14が筐体2から露出する引き出し位置までスライド移動させた後、水槽蓋14の操作部14aを水槽4の円周方向にスライドさせて水槽開口部13を開口させる。さらに、使用者は、ドラム蓋12をドラム5の円周方向にスライドさせてドラム開口部11を開き、ドラム5内に洗濯物を収容する。
洗濯物が収容された後は、使用者はドラム蓋12および水槽蓋14を元の状態にスライドさせて、ドラム開口部11および水槽開口部13を閉じる。その後、使用者は取っ手26を押して、水槽4を筐体2内の格納位置へスライド移動させて、前扉24により筐体2の開口部2aを閉じる。
筐体2の前上壁2bに設けられている操作表示部(図示せず)の電源スイッチが入れられ、操作ボタンが押されて所望の運転プログラムが選択されると運転が開始される。
運転の開始操作によりスライドロック装置40が作動する。ソレノイド本体40aに出没自在に設けられている磁性鉄芯40bがソレノイド本体40aから下方へ突出し、磁性鉄芯穴40cに差し込まれて、磁性鉄芯40bと磁性鉄芯穴40cが連結される。これにより、筐体2とスライド体16が水槽4の格納位置でロックされて、スライド装置15の移動が阻止される。さらに、揺れ低減装置38が動作して、磁性鉄芯38aが水槽4から離れるように後退させて、磁性鉄芯38aが水槽4に接触しないように分離する。
最初に洗い工程が実行される。洗い工程は、布量検知、給水、叩き洗いの順に実行される。ドラム5内に投入された洗濯物の量は、ドラム5を回転駆動した状態でのモータ6にかかるトルク量やモータ6の電流値等から検知される。
制御装置32は、検知した布量に応じて洗い、すすぎ、脱水の各工程の時間を設定するとともに、洗濯物の量に応じて設定されている洗剤量を決定し、操作表示部に表示する。使用者は、表示された量の洗剤を洗剤ケースに投入する。なお、洗剤は、使用者による手動投入のほか、一般的な洗剤自動投入装置を設けて自動で投入するようにしてもよい。
その後、制御装置32は、給水弁29を開いて水栓27と水槽4を連通させ、水槽4内に水を溜め始める。このとき、排水ポンプ31は停止した状態である。給水弁29を通った水は、洗剤ケースを通過し、洗剤とともに水槽4に供給される。
水槽4に供給される水量は、洗濯物の量に応じて予め設定されている。水槽4内に溜まった水は小孔10からドラム5内に流入する。このようにして水槽4内に水を溜めながら、制御装置32はモータ6を駆動してドラム5を低速で回転させることで、洗濯物を満遍なく濡らしておく。
水槽4内に溜まった水量は水量検知手段(図示せず)により検知され、所定の水量が溜まると給水弁29は閉じられる。ドラム5は、モータ6によって洗濯物が叩き洗いされる回転数(例えば、45rpm)で所定時間毎に正転と逆転を繰り返す。
叩き洗いでは、洗濯物がバッフル9によって回転方向へ持ち上げられた後、ドラム5内の上部から落下し、ドラム5の底部に溜まっている洗濯物に叩きつけられる。これにより、洗剤による化学力と併せて、その機械力によって洗浄が行われる。制御装置32は、所定のプログラムにしたがってドラム5を回転させ、洗濯物の汚れを落とし、所定の時間が経過すると洗い工程を終了する。
洗い工程に続いてすすぎ工程が実行される。すすぎ工程は、排水、給水、撹拌という、すすぎ動作を2回行う。1回目のすすぎは、制御装置32によって排水ポンプ31が駆動され、洗い工程で使用された洗濯水は水槽4から排出される。次に、給水弁29が開かれて水栓27と水槽4とが連通し、再び水槽4に設定されている所定量の水が供給される。
所定量の水が水槽4内に供給されると、制御装置32は給水弁29を閉じる。この間、排水ポンプ31は停止している。水槽4に水が溜められている状態でドラム5を回転し、洗濯物を撹拌することにより、洗濯物に付着している洗剤成分や汚れ成分を、汚れていない水の中へと移動させて汚れを落とすすすぎを実行する。所定の時間が経過すると、制御装置32は、1回目のすすぎ動作を終了し、これを2回繰り返した後、水槽4内の水を排出してすすぎ工程を終了する。
すすぎ工程に続いて、制御装置32は脱水工程を実行する。制御装置32はモータ6を駆動し、ドラム5を高速(例えば、1400rpm)で回転させる。このとき、回転数が増加していくにつれて、洗濯物に付加される遠心力が強まっていくため、洗濯物はドラム5の内側に張り付いていく。
洗濯物に含まれる水分は、遠心力によりドラム5の小孔10を通して外側に移動し、遠心力によって水槽4の内側に飛ばされる。これにより、洗濯物に含まれる水分のある程度は除去される。洗濯物から分離された水分は、制御装置32が排水ポンプ31を駆動させることで、水槽4内から排水経路30を経て機外へ排出される。
脱水工程の最後には、制御装置32はモータ6を低速で回転駆動し、磁力検知センサ37がマグネット36の最接近を検知すると、モータ6の回転を停止する。次に、制御装置32はドラム固定装置33を作動させて、固定ピン34をドラム5の固定用穴35に挿入し、ドラム5の回転をロックする。
これにより、ドラム蓋12で閉じられた状態で回転していたドラム開口部11は、水槽蓋14で閉じられている水槽開口部13と対向した位置となるようにドラム5が停止する。
次に、スライド装置15のスライド動作について説明する。制御装置32は、スライドロック装置40により、スライド体16を筐体2に固定してスライド不能にすることができる。制御装置32は、洗濯運転中、つまり、モータ6が駆動してドラム5が回転していたり、給水弁29および排水ポンプ31が動作している場合には、スライドロック装置40を駆動させる。そして、スライド装置15をスライドしないように固定する。
基本的に、運転を行っていない場合には、水槽4が格納位置にあっても制御装置32はスライドロック装置40を解除してスライド可能にしている。この場合、使用者は取っ手26に設けられているロックレバーを解除して引っ張ることで、容易に水槽4をスライド移動させることが可能である。スライド装置15の前側の車輪19が前ストッパー21に接触して水槽4は引き出し位置で停止する。使用者が取っ手26を押すことで、スライド装置15は後方へスライド移動して後ストッパー22に接触して、水槽4は格納位置で停止する。
次に、スライド動作時の水槽4の揺れについて説明する。水槽4は、ダンパ装置17およびばね装置18によってスライド装置15のスライド体16に弾性支持されている。これは、洗濯動作中にドラム5内で洗濯物や水が偏るために生じる振動を筐体2にまで伝達させないためである。つまり、水槽4は振動しやすいような構成となっている。
一方、水槽4には、モータ6や回転支持部7、メカケース8等が取り付けられており、数十キログラムの重さとなっている。水槽4がスライド体16に弾性支持された状態で使用者が取っ手26を引っ張り、スライド装置15を格納位置から手前にスライド移動させると、水槽4は一瞬取り残された後、ばね装置18により手前に引っ張られる。その後、水槽4は揺れた状態となる。
水槽4が洗濯機本体1の前方に揺れている場合には、当該揺れはスライド装置15の前方へのスライドを加速させるように働く。これに対し、洗濯機本体1の奥方向に揺れている場合には、当該揺れはスライド装置15の前方へのスライドを減速させるように働く。その結果、スライド移動速度が速くなったり遅くなったりしてスムーズにスライドできなくなる。
しかし、本実施の形態に係る洗濯機は、揺れ低減装置38を有しているため、水槽4の揺れが低減される。使用者が取っ手26を引いてスライド装置15をスライドさせると、水槽4は取り残されることなく、揺れ低減装置38に押されてスライド装置15と同じように動く。したがって、スライド時に水槽4の揺れを抑えることができるため、スライド装置15のスライド速度が増減することがなく、スムーズにスライド装置15をスライドさせることができる。
なお、揺れ低減装置38は、磁性鉄芯38aが水槽4の背面に接触したときに、水槽4に対して電磁的に吸着可能に構成してもよい。これにより、前後方向のいずれにスライド装置15がスライドしたときでも、水槽4とスライド装置15の動きを同じにして、一体的に移動することができ、水槽4の揺れを効果的に低減することができる。
また、水槽4の揺れ度合は、水槽4内の洗濯物の量や水の量等によっても異なるが、多量の水と洗濯物が入っていると揺れが大きくなる。スライド装置15が前ストッパー21に接触して停止すると、水槽4の勢いが止められず、水槽4が大きく洗濯機本体1前方へと移動して水槽4が前扉24に衝突してしまう場合もあり得る。
しかし、本実施の形態に係る洗濯機では、クッション体39を設けているため、スライド装置15の前側の車輪19が前ストッパー21に接触して停止するときでも、水槽4がクッション体39に接触して水槽4が前方に移動しようとする力を低減する。これにより、水槽4は前扉24に衝突することなく勢いが低減されてスムーズに停止することができる。
次に、水槽4の重心について説明する。最大容量分の洗濯物がドラム5内に入れられている場合の、脱水処理後の水槽4の重心Aは、図1に示すように、スライド装置15の前側の車輪19と後側の車輪19との間に位置している。したがって、スライド体16は、水槽4をバランスよく安定支持することができ、スムーズにスライド体16をスライド移動することが可能である。
そして、水槽4が筐体2から前方へ引き出された引き出し位置においても、図2に示すように、前側の車輪19が前ストッパー21に当接するため、上述した状態における水槽4の重心Aは、前側支持脚3aより前方へ移動することがない。したがって、水槽4を筐体2内のスライド体16によって安定的に支持することができる。
一方、最大容量分の洗濯物がドラム5内に入れられ、水槽4内に所定量の水が入った状態の水槽4の重心Bは、スライド体16の前側の車輪19より前側に位置している。この場合、スライド体16に前方への傾きが生じる。前側の車輪19を基点としてスライド体16が前方へ傾くと、後側の車輪19が浮き上がり、スライド体16の上板16aの後部が筐体2天面の内部に接触する。この接触による抵抗がスライド移動時の抵抗となる。
水槽4の重心がBとなる場合は、水槽4内に多量の水が入った状態を想定しているため、スライド体16の上板16aの後部が筐体2天面の内部に接触し、スライド移動時の抵抗となることで、水槽4をゆっくりと引き出すことが可能となる。したがって、水槽4を引き出した直後にドラム蓋12を開けた場合でも、水槽4内の水が飛び出すことがないように、上板16aの後部と筐体2天面の内部との接触抵抗を最適に設定している。
次に、洗濯途中で運転を一時停止する場合について説明する。運転開始後に、例えば、洗濯物を入れ忘れた場合の追加投入等で一時停止ボタンが押されると、制御装置32は、モータ6などの駆動を一旦停止させる。その後、再度、モータ6を低速で回転させ、運転終了時と同様にドラム5の位置を検知してドラム5の回転をロックする。
このとき、スライドロック装置40によるスライド体16の固定を解除し、引き出し可能な状態にするとともに、揺れ低減装置38を作動して磁性鉄芯38aを水槽4の背面に接触させる。そして、一時停止状態になったことを操作表示部に表示する。
洗い工程の途中で一時停止操作が行われたとき、制御装置32は、運転の履歴、特に給水弁29と排水ポンプ31の動作の条件によって異なる制御を行い、水槽4内に水が溜められていない場合は、スライド規制装置86は作動しない。
そして、水槽4内に所定量の水が溜められている場合は、スライド規制装置86を駆動し、ストッパー87をスライド装置15の軌跡内に突出させてスライド体16の柱16cの前方に配置する。取っ手26を介して前扉24を手前に引くと、スライド装置15を図6に示す所定の位置(洗濯物の追加投入位置)で停止させ、それ以上の前方への移動を阻止する。
運転の一時停止操作により、スライド規制装置86によって停止したスライド体16の停止位置は、水槽4内に所定量の水と洗濯物が入っている場合の水槽4の重心Bが、筐体2底部の前側に設けた前側支持脚3aよりも前方へ移動することがないように設定されている。
一時停止時の水槽4の引き出し位置は、図6に示すように、水槽開口部13およびドラム開口部11が筐体2の前面から半分程度は露出する。このため、水槽蓋14およびドラム蓋12の開閉操作が可能であり、洗濯物を追加投入することができる。
洗濯物の追加投入が終わると、ドラム蓋12および水槽蓋14が閉じられ、取っ手26を介して前扉24が押されて水槽4が格納位置へスライド移動される。その後、使用者は運転再開ボタンを操作する。制御装置32は、スライドロック装置40を駆動してスライド装置15のスライド移動をロックする。さらに、制御装置32は、ドラム固定装置33を駆動し、固定ピン34をドラム5の固定用穴35から引き抜いてドラム5が回転可能な状態にする。その後、運転を一時停止した時の状況に応じて、予め定められた手順で洗濯工程を再開する。
以上説明したように、本実施の形態においては、前面側に開口部2aを備えている筐体2と、筐体2内に設けられ、洗濯水を貯留する水槽4と、水槽4を弾性支持するスライド装置15と、水槽4内に回転可能に設けられているドラム5と、ドラム5を回転駆動するモータ6とを備えている。さらに、水槽4の周側面に開閉可能に設けられている水槽開口部13と、ドラム5の周側面に開閉可能に設けられ、洗濯物を出し入れするドラム開口部11と、を備えている。さらに、スライド装置15がスライド移動するときに、水槽4の揺れを低減する水槽揺れ低減手段100を備えている。スライド装置15は、水槽開口部13が筐体2から露出するように水槽4が引き出されている引き出し位置と、筐体2内に水槽4が格納されている格納位置との間を水槽が前後方向に摺動可能とするスライド体16と、水槽4を下方から弾性支持するダンパ装置17と、水槽4を上方から弾性支持するばね装置18を有している。
これにより、水槽4が筐体2から引き出されることによって、使用者は洗濯物を上方から出し入れすることができ、楽な姿勢で洗濯物を容易に取り出すことができる。さらに、スライド移動時に水槽4の揺れを低減することができ、水槽4の引き出し時と格納時におけるスライド装置15のスライド動作をスムーズに行うことができる。
また、水槽揺れ低減手段100は、揺れ低減装置38により構成され、揺れ低減装置38は、水槽4の前後方向の揺れを低減する。
これにより、スライド移動によって生じる水槽4の前後方向の揺れを抑えて、スライド移動時の速度変化を少なくすることができる。その結果、スライド動作をスムーズに行うことができる。
また、スライド装置15は、水槽4の前面との間に間隙23を有して水槽4を外方から覆う前扉24を有し、間隙23に水槽4と前扉24との衝突を緩和するクッション体39を設けたものである。
これにより、スライド装置15の前側の車輪19が前ストッパー21に接触して停止するときに、水槽4がクッション体39に接触して水槽4が前方に移動しようとする力を低減する。その結果、水槽4は前扉24に衝突することなく勢いが低減してスムーズに停止するとともに、スライド移動時および洗濯運転時における水槽4の揺れを低減し、接触による騒音の発生を防止することができる。
また、洗濯動作を制御する制御装置32とスライド装置15のスライド動作を規制するスライドロック装置40とをさらに設け、制御装置32は、スライドロック装置40によるスライド装置15のロックを解除するのと同時に揺れ低減装置38を作動させる。ここで、「同時」とは「略同時」の場合も含む。
これにより、スライド装置15が引き出される状態にあるときは水槽4が固定されているので、スライド移動のどのタイミングでも水槽4の揺れを低減することができる。これにより、水槽4のスムーズなスライド移動を実現して、使い勝手を向上することができる。
また、水槽4が引き出し位置にあるときも、水槽4は筐体2内で支持される。これにより、レール20と車輪19が筐体2内に収容されており、レール20に異物等が入り込むことがなく、円滑なスライド動作を確保することができる。さらに、引き出し位置にある水槽4を、接地可能な車輪付きの支持脚等によって筐体2外で支持する必要がない。したがって、洗濯機設置用の防水パンに洗濯機が設置されている場合でも、水槽4の引き出しと格納操作を容易に行うことができ、使用者の使い勝手をよくすることができる。
(実施の形態2)
図7は、本実施の形態における洗濯機の水槽を引き出した状態の要部の断面図である。本実施の形態では、水槽揺れ低減手段100を、水槽4をスライド装置15に固定する第1の水槽固定装置43で構成している。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
図7において、水槽4をスライド装置15に脱着自在に結合する第1の水槽固定装置43が水槽4の背面側に設けられている。第1の水槽固定装置43は、スライド装置15のスライド体16に取り付けられているソレノイド43aと、ソレノイド43aに対向して水槽4の背面に設けられている水槽固定穴43bで構成されている。
ソレノイド43aは、磁性鉄芯43cを出没自在に駆動させることができる。磁性鉄芯43cが突き出した状態では、磁性鉄芯43cは水槽固定穴43bに差し込まれて、水槽4とスライド装置15が結合されるように構成されている。磁性鉄芯43cが引き込まれた状態では、磁性鉄芯43cは水槽固定穴43bから離脱して、水槽4とスライド装置15の結合が解除されるように構成されている。
水槽固定穴43bは、磁性鉄芯43cが差し込まれる穴形状が縦長に形成されている。これは、水槽4内の水や洗濯物の重さによって水槽4自体の位置が上下方向に変化することに対応するためである。水槽4が上下方向に変位しても磁性鉄芯43cが水槽固定穴43bに合うように、水槽固定穴43bの穴形状およびソレノイド43aの取り付け位置が調整されている。
使用者が取っ手26を引っ張り、スライド装置15を格納位置から手前にスライド移動させたときでも水槽4は取り残されることなく第1の水槽固定装置43に押されてスライド装置15とともに移動する。第1の水槽固定装置43によって水槽4とスライド装置15が結合されているからである。したがって、水槽4が揺れることがないため、スライド装置15のスライド速度が増減することがなく、スムーズにスライド装置15はスライドする。
以上のように、本実施の形態によれば、水槽4とスライド装置15を脱着可能に結合する第1の水槽固定装置43で水槽揺れ低減手段を構成したものである。これにより、水槽4とスライド装置15が一体的に移動し、スライド移動時の水槽4の揺れを低減することができ、スムーズなスライド移動を実現する。したがって、使用者の使い勝手を向上することができる。
なお、本実施の形態において、第1の水槽固定装置43はスライド体16の後方片側に設けられているが、前方など他の部分に設けられてもよい。特に、後方や前方の中央部に設けられていると、揺れが収まりやすい。
また、本実施の形態のように、第1の水槽固定装置43が中央部から側方に偏った位置に設けられている場合には、対称的な位置にもう1つ第1の水槽固定装置43が設けられていると、さらに揺れが収まりやすい。
また、本実施の形態のように、水槽4がばね装置18によって上方から吊り下げられて弾性支持されている場合は、水槽4の上側が大きく揺れやすい。したがって、第1の水槽固定装置43が水槽4の上方に設けられていると効果的に揺れを抑えることができる。なお、水槽4を下方から弾性支持するダンパ装置17は、左右方向には可動であるが、前後方向には動きにくいため、水槽4の下部は前後方向に大きく動きにくい。
なお、本実施の形態において、水槽4内に所定以上の水量の水が入っている場合は、スライド装置15のスライド移動を遅くさせるために、スライドブレーキ装置を設けてもよい。これにより、水が水槽4内に多量に入った場合のスライド装置15の動きを遅くすることができ、水槽蓋14を開けたときに水槽4内の水が外へ飛び出すのを防止することができる。
(実施の形態3)
図8は、本発明の第3の実施の形態における洗濯機の要部断面図である。図9は、同洗濯機の水槽を引き出した状態の要部を断面図である。本実施の形態の特徴は、水槽揺れ低減手段100は、第2の水槽固定装置44で構成されている。第2の水槽固定装置44は、スライド装置15のスライド動作に応じて水槽4とスライド装置15を結合し、水槽4が格納位置にあるとき、水槽4とスライド装置15の結合が解除されるように構成されている。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
本実施の形態においては、スライド装置15のスライド移動時に水槽4の揺れを低減する水槽揺れ低減手段100は、第2の水槽固定装置44で構成されている。第2の水槽固定装置44は、スライド装置15のスライド動作に応じて水槽4とスライド装置15を結合し、水槽4が格納位置にあるときに水槽4とスライド装置15の結合が解除されるように構成されている。
水槽4の背面下側には、第2の水槽固定装置44が設けられている。第2の水槽固定装置44は、スライド装置15のスライド体16に設けられている支持部44a、固定杭44b、および固定杭44bに対向して水槽4の背面に設けられている水槽固定穴44cを有している。
固定杭44bは、上下方向に伸びる棒状体で形成され、支持部44aによって上下動自在に支持されている。固定杭44bの下端には、回転自在な車輪44dが設けられている。水槽固定穴44cは水槽4の一部であり、下側に向かって穴の直径が拡大する形状となっている。
筐体2の底部には、固定杭44bの車輪44dを案内するガイド45が設けられている。ガイド45は、洗濯機本体1の前後方向に形成され、車輪44dがガイド45上を移動可能となるように構成されている。
ガイド45は、引き出し側である前側が高く、格納側である後側が低くなるように段差が設けてある。前側の高位部45aと、後側の低位部45bとの間は、車輪44dがスムーズに移動できるように前上がりの傾斜面45cでつながれている。
ガイド45は、高位部45aの長さが長く形成され、固定杭44bが水槽固定穴44cに挿入された状態、すなわち、水槽4がスライド装置15に結合された状態で移動する距離が長く設定されている。
水槽4を下方から弾性支持するダンパ装置46は、制御装置32からの信号により、振動減衰力を一定の範囲で変えられるように構成されている。ダンパ装置46の振動減衰力が0、すなわち、ダンパ装置46が動かないように止めることができる(不作動の状態)。
使用者が取っ手26を引っ張り、スライド装置15を格納位置から手前にスライドさせると、ガイド45上にある固定杭44bの車輪44dが回転する。車輪44dは、ガイド45の低位部45bから傾斜面45cを前方へ移動し、支持部44aで支持された固定杭44bが上方へ移動する。
車輪44dが傾斜面45cを通過し、ガイド45の高位部45aに到達すると、固定杭44bの上端が水槽固定穴44cに入り、水槽4とスライド装置15が結合される。水槽4と結合された状態でさらにスライド装置15が手前にスライドされると、水槽4とスライド装置15は第2の水槽固定装置44によって移動の初期段階で結合される。そして、水槽4はスライド装置15と一体的に移動する。
その結果、水槽4は移動時に揺れることがないため、スライド時の速度が増減することがなく、スムーズにスライドさせることができる。
また、スライド装置15の車輪19が前ストッパー21に接触して停止するときにも、水槽4は固定されているため、水槽4が前方へ移動しようとする力が低減する。これにより、水槽4は前扉24に衝突することなく勢いが低減してスムーズに停止する。
また、制御装置32は洗濯の運転が停止すると、ダンパ装置46の振動減衰力を0に変更する。このため、使用者が取っ手26を引っ張り、スライド装置15が格納位置から手前にスライドされる際には、ダンパ装置46が上下に伸縮しないため、水槽4も上下動しない。したがって、水槽4内に多量の水や洗濯物が入っている場合でも、水槽4が上下に大きく動くことがない。その結果、水槽4は筐体2に衝突することなく、スムーズな引き出しと格納動作を行うことができる。
以上のように、本実施の形態によれば、スライド装置15のスライド動作に応じて水槽4とスライド装置15を脱着可能に結合する第2の水槽固定装置44で水槽揺れ低減手段を構成している。水槽4が格納位置にあるとき、水槽4とスライド装置15の結合が解除され、スライド装置15の移動とともに自動的に水槽4を固定することができる。これにより、電源が切られている状態でも、水槽4がスライド移動すればスライド装置15と結合されるので、移動時に水槽4の揺れを防止することができる。これにより、スムーズなスライド移動を実現して使い勝手を向上することができる。
また、ダンパ装置46は、減衰力が可変可能に構成され、水槽4がスライド移動されるときは、ダンパ装置46を不作動としたものである。これにより、筐体2に接触するなどの不具合を抑え、新たな固定手段を加えることなく、簡略な構成で水槽4の揺れを低減することができ、スムーズなスライド移動を実現する。その結果、使用者の使い勝手を向上することができる。
(実施の形態4)
図11は、本発明の第4の実施の形態における洗濯機の要部断面図である。図12は、同洗濯機の水槽を引き出した状態の要部断面図である。図13は、同洗濯機の係止体を説明するための要部断面図である。図14は、同洗濯機の水槽を引き出した状態の一部切欠平面図である。図15Aは、同洗濯機のドラム固定時の要部断面図である。図15Bは、同洗濯機のドラム固定解除時の要部断面図である。
洗濯機本体101の外郭は筐体102で形成されており、筐体102の前面側には、開口部102aが設けられている。筐体102底部の前側の2箇所と後側の2箇所とには、各々弾性を有するゴム製の前側支持脚103aおよび後側支持脚103bが設けられている。筐体102は、支持脚103aおよび103bを介して床面に設置されている。筐体102は、洗濯用の水を溜める水槽104と、水槽104内に衣類等の洗濯物(以下、洗濯物という)を収容する回転可能なドラム105を備えている。
円筒状のドラム105は、前後方向へ水平に配設したドラム回転軸105aを中心として回転可能に構成され、水槽104の後部に設けたモータ106によって回転駆動される。モータ106は、ブラシレス直流モータで構成され、インバータ制御によって回転速度が自在に変化する。
ドラム105が固定されているドラム回転軸105aは、水槽104の後部に固定された軸受からなる回転支持部107により回転自在に支持されている。樹脂製の水槽104の後部には、金属補強としてメカケース108が取り付けられてあり、メカケース108で回転支持部107を固定している。
ドラム105の周側面の内側には、ドラム回転軸105a方向であるドラム105の回転中心に向かって複数箇所(例えば、3箇所)に内方へ突出させたバッフル109が設けられている。ドラム105の周側面には、水槽104内と連通する多数の小孔110が設けられている。
ドラム105の周側面には、洗濯物を出し入れするドラム開口部111が設けられている。ドラム105は、ドラム蓋112によって開閉可能に構成されている。ドラム開口部111は、ドラム105の周側面の一部に設けられており、例えば、ドラム105円周の略1/3程度の大きさで設けられている。また、ドラム開口部111は、隣り合うバッフル109の間に配設されている。ドラム105の周側面に沿って円弧状に形成されたドラム蓋112は、ドラム105の外周面に沿って円周方向へ摺動自在に設けられている。
ドラム蓋112は、その両端部が周方向に延びる一対のレール(図示せず)によってガイドされている。使用者は、操作部112aを持ってドラム蓋112をスライドさせることで、ドラム開口部111を手動で開閉することができる。ドラム蓋112には金属のバネ性を利用した固定爪(図示せず)が設けられており、洗濯運転中は、ドラム105の回転によってドラム開口部111が開かないように固定されている。
洗濯物を出し入れする際は、固定爪のバネ力に抗してドラム蓋112がスライド移動することでドラム開口部111は開放される。洗濯する際は、ドラム蓋112がスライド移動してドラム開口部111を閉塞する。
水槽104の周側面の上部には、水槽開口部113が設けられている。水槽104は、水槽蓋114によって水槽104は開閉可能に構成されている。水槽開口部113は、水槽104の周側面の一部に設けてあり、例えば水槽104円周の略1/3程度の大きさに形成されている。水槽104の周側面に沿って円弧状に形成された水槽蓋114は、水槽104の外周面に沿って円周方向へ摺動自在に設けられている。
水槽蓋114は、その両端部が周方向に延びる一対のレール(図示せず)によって、水槽内から洗濯水が漏れ出ないように水密的にガイドされている。使用者は、操作部114aを持って水槽蓋114をスライドすることで、水槽開口部113を手動で開閉することができる。水槽蓋114には、ドラム蓋112と同様に、金属のバネ性を利用した固定爪(図示せず)が設けられており、洗濯運転中は、水槽開口部113を閉じた状態に保持されている。
洗濯物を出し入れする際は、固定爪のバネ力に抗して水槽蓋114がスライド移動されることで水槽開口部113が開かれて、ドラム蓋112が露出する。洗濯する際は、水槽蓋114がスライド移動されて水槽開口部113が閉塞する。
水槽104を筐体102内に弾性支持するスライド装置115は、スライド体116、ダンパ装置117、およびばね装置118を備えている。スライド体116は、水槽開口部113が筐体102から前方へ露出するように水槽104が引き出されている状態である引き出し位置(以下、引き出し位置と称す)と、筐体102内に水槽104が格納されている状態である格納位置(以下、格納位置と称す)との間を水槽104が前後方向に摺動可能とする。ダンパ装置117は、水槽104を下方から弾性支持する。ばね装置118は、水槽104を上方から弾性支持する。スライド装置115は、水槽104が引き出し位置にあるとき、水槽104を筐体102内で支持するように構成されている。
スライド体116は、上板116aと底板116bを四隅の柱116cで支える矩形の構造体である。底板116bの下側に複数の車輪119が設けられており、底板116bの前部と後部の左右にそれぞれ車輪119が設けられている。スライド体116には、筐体102の底部から下方へ突出するように第1の係止部116dが設けられている。
筐体102の底面内側には、左右に離れた2本の平行なレール120が設けられている。レール120は、洗濯機本体101の前後方向に形成されている。車輪119はレール120上を転がり、スライド体116をスライド移動可能に構成している。これにより、水槽104は、引き出し位置と、格納位置との間をスライド移動する。
スライド体116の可動範囲は、レール120の前端部に設けられている前ストッパー121と、レール120の後端部に設けられている後ストッパー122により決められている。前ストッパー121は、水槽104が引き出し位置となるようにスライド体116を停止させ、後ストッパー122は、水槽104が格納位置となるようにスライド体116を停止させる。
水槽104は、スライド体116の底板116bに一端が支持され下広がりに傾斜している左右一対のダンパ装置117で下方から弾性支持されている。さらに、水槽104は、スライド体116の上板116aに一端が支持されている左右一対のばね装置118で上方から弾性支持されている。
スライド装置115には、水槽104を外方から覆う前扉124が設けられている。水槽104の前面と前扉124との間には、間隙123が設けられている。前扉124は、2本の平行なシャフト125により水槽104の下方でスライド体116と連結されており、スライド体116とともにスライド移動する。
水槽104が格納位置にあるときは、前扉124で筐体102の開口部102aが閉塞され、取っ手126に設けたロックレバー(図示せず)によって開口部102aは閉塞した状態に保持される。水槽104の引き出し時は、ロックレバーが解除操作され、取っ手126を介して前扉124が手前に引かれると、スライド体116が水槽104の引き出し位置へスライド移動され、水槽104は筐体102から前方へ引き出される。
水槽104は、ダンパ装置117とばね装置118によってスライド体116に弾性支持されているため、洗濯時の水槽104の振動を減衰することができる。また、前扉124と水槽104の前面との間に設けられた間隙123により、スライド体116に連結されている前扉124の振動を防止することができる。
水槽104と洗濯機本体101外の水栓127とを連通接続する給水経路128は、伸縮自在な可撓性の蛇腹ホースで構成されている。給水経路128は、スライド体116のスライド移動に応じて伸縮することで、水槽104と水栓127との接続状態を維持する。
水栓127は略室温と同等の温度の水を供給する。給水経路128の途中には、洗剤や柔軟剤等を供給する水に混入させるための洗剤ケース(図示せず)と、給水弁129とが設けられている。給水弁129は、給水経路128と水槽104とを連通するか、もしくは給水を停止するかの2つの状態を実現する。
水槽104には、水槽104内の水を機外へ排出するための排水経路130および排水ポンプ131が設けられている。排水経路130は伸縮自在な可撓性の蛇腹ホースで構成されており、スライド体116のスライド移動に応じて伸縮する。
水槽104の後部に設けられているモータ106は、スライド体116の内部またはスライド体116の後端部から、一部が後方へ突出するように配設されている。ここで、ドラム105やモータ106等を含む水槽104の重心は、図中Aで示した位置となるように構成されている。この場合は、水槽104内に最大容量(例えば、9kg)分の脱水後の洗濯物が入った状態である。
一方、水槽104内に上記最大容量の洗濯物を洗う際に設定された所定量の水(例えば、ドラム105の略下半分が水中に沈むような水位になる水量)が入った場合は、水槽104の重心は図中Aから前方向に移動して図中Bで示した位置となる。
筐体102内の上方前部には、制御装置132が設けられている。制御装置132は、モータ106、給水弁129、排水ポンプ131等の駆動を制御し、洗い、すすぎ、脱水等の各工程を逐次制御する。使用者は、操作表示部(図示せず)の電源スイッチ(図示せず)を入れ、操作ボタン(図示せず)を操作することにより、所望の運転が可能となる。
筐体102の前面には、開口部102aの上方に前上壁102bが設けられ、開口部102aの下方に前下壁102cが設けられている。水槽104が引き出し位置にあるときは、前上壁102bでばね装置118を前方から覆蓋し、前下壁102cでダンパ装置117を前方から覆蓋するように構成されている。
図15Aに示すように、水槽104の外周側面には、ソレノイドで構成されているドラム固定装置133が設けられている。ドラム固定装置133は、細長い棒状の固定ピン134をドラム105に向かって進退自在に構成し、ドラム105に設けた凹状の固定用穴135に固定ピン134の先端部が抜き差し可能に構成されている。
洗濯物を出し入れする際は、制御装置132によってドラム固定装置133を作動させ、図15Aに示すように、ドラム105に設けた凹状の固定用穴135に固定ピン134の先端部が挿入されるように固定ピン134を突き出す。これにより、ドラム105の回転が固定される。
一方、洗濯を行う際は、図15Bに示すように、ドラム固定装置133の固定ピン134がドラム105の固定用穴135から引き抜かれ、固定ピン134が回転中のドラム105に接触しないように、ドラム105から離れた位置に保持される。これにより、ドラム105は回転可能となる。
ドラム105の外周部の一部にマグネット136が設けられている。ドラム105の周側面に設けられているドラム開口部111が上向きになった状態でマグネット136と対向する位置に磁力検知センサ137が設けられている。磁力検知センサ137は、水槽104の外側に配置されており、ドラム105の回転によるマグネット136の回転軌道上に設けられている。
磁力検知センサ137がマグネット136の最接近を検知してドラム105の回転を停止したとき、ドラム105の固定用穴135が固定ピン134と対向した位置にある(図15A参照)。このとき、固定ピン134が固定用穴135に挿入されることで、ドラム開口部111が水槽開口部113に対向した位置でドラム105が固定される。
そして、水槽104が格納位置から引き出し位置へスライド移動すると、水槽開口部113が筐体102から露出し、ドラム開口部111が水槽開口部113と対向した位置で上向きに固定された状態で水槽104が引き出される。そして、水槽蓋114とドラム蓋112とをスライドさせることにより、水槽開口部113とドラム開口部111とが開かれ、洗濯物を出し入れすることができる。
スライド装置115のスライド体116に設けられている第1の係止部116dは、筐体2の底部に設けられている開口102dから下方へ筐体102外に突出する。そして、第1の係止部116dの一端は、筐体102と設置部1138との間に形成されている空間部1139に位置している。筐体102は、筐体102の底部に設けられている前側支持脚103aおよび後側支持脚103bによって設置部1138(床面など)に設置されている。
洗濯機本体101が設置されている設置部1138には、第1の係止部116dと係合する第2の係止部184が取り付けられている。第2の係止部184は、洗濯機本体101の前方側はネジ141等の固定具で設置部1138に強固に固着されている。第2の係止部184は、洗濯機本体101の後方側は設置部1138から所定の間隔を有し、当該間隔に第1の係止部116dが入り込む。当該間隔を形成する第2の係止部184の略水平部分を水平部184aと称す。
スライド装置115が水槽104の格納位置から引き出し位置の方向である矢印イ方向へ移動されると、スライド体116に設けられている第1の係止部116dが第2の係止部184に係合する。スライド装置115が、格納位置の方向である矢印ロ方向へ移動されると、第1の係止部116dは第2の係止部184から離脱されるように構成されている。
第1の係止部116dと第2の係止部184には、相互に係合した状態から離脱するのを防止する離脱防止装置142が設けられている。離脱防止装置142は、第2の係止部184の水平部184aの先端部に下向きに設けられている第2の係止部突起142aと、第2の係止部突起142aと対向するように第1の係止部116dの先端部に上向きに設けられている第1の係止部突起142bとで構成されている。
スライド装置115に下向きの負荷が加わらない通常の状態では、第2の係止部突起142aと第1の係止部突起142bは接触しないよう構成している。一方、スライド装置115に下向きの負荷が加わり、スライド装置115が前に倒れ込むようになると、第1の係止部116dは矢印ハ方向に上方へ変位し、第1の係止部突起142bが第2の係止部突起142aの前方側に当接して係合が解除されないように構成されている。
以上のように構成されている洗濯機について、以下その動作、作用について説明する。洗濯の動作の詳細を以下に説明する。洗濯は、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程の順に実行する。
使用者は、最初に取っ手126を引いて水槽104を手前方向にスライド移動させる。水槽蓋114が筐体102から露出する引き出し位置までスライド移動させた後、水槽蓋114の操作部114aを水槽104の円周方向にスライドさせて水槽開口部113を開口させる。さらに、使用者は、ドラム蓋112をドラム105の円周方向にスライドさせてドラム開口部111を開き、ドラム105内に洗濯物を収容する。
洗濯物が収容された後は、使用者はドラム蓋112および水槽蓋114を元の状態にスライドさせて、ドラム開口部111および水槽開口部113を閉じる。その後、使用者は取っ手126を押して、水槽104を筐体102内の格納位置へスライド移動させて、前扉124により筐体102の開口部102aを閉じる。
筐体102の前上壁102bに設けられている操作表示部(図示せず)の電源スイッチが入れられ、操作ボタンが押されて所望の運転プログラムが選択されると運転が開始される。
最初に洗い工程が実行される。洗い工程は、布量検知、給水、叩き洗いの順に実行される。ドラム105内に投入された洗濯物の量は、ドラム105を回転駆動した状態でのモータ106にかかるトルク量やモータ106の電流値等から検知される。
制御装置132は、検知した布量に応じて洗い、すすぎ、脱水の各工程の時間を設定するとともに、洗濯物の量に応じて設定されている洗剤量を決定し、操作表示部に表示する。使用者は、表示された量の洗剤を洗剤ケースに投入する。なお、洗剤は、使用者による手動投入のほか、一般的な洗剤自動投入装置を設けて自動で投入するようにしてもよい。
その後、制御装置132は、給水弁129を開いて水栓127と水槽104を連通させて、水槽104内に水を溜め始める。このとき、排水ポンプ131は停止した状態である。給水弁129を通った水は、洗剤ケースを通過し、洗剤とともに水槽104に供給される。
水槽104に供給される水量は、洗濯物の量に応じて予め設定されている。水槽104内に溜まった水は小孔110からドラム105内に流入する。このようにして水槽104内に水を溜めながら、制御装置132はモータ106を駆動してドラム105を低速で回転させることで、洗濯物を満遍なく濡らしておく。
水槽104内に溜まった水量は水量検知手段(図示せず)により検知され、所定の水量が溜まると給水弁129は閉じられる。ドラム105は、モータ106によって洗濯物が叩き洗いされる回転数(例えば、45rpm)で所定時間毎に正転と逆転を繰り返す。
叩き洗いでは、洗濯物がバッフル109によって回転方向へ持ち上げられた後、ドラム105内の上部から落下し、ドラム105の底部に溜まっている洗濯物に叩きつけられる。これにより、洗剤による化学力と併せて、その機械力によって洗浄が行われる。制御装置132は、所定のプログラムにしたがってドラム105を回転させ、洗濯物の汚れを落とし、所定の時間が経過すると洗い工程を終了する。
洗い工程に続いてすすぎ工程が実行される。すすぎ工程は、排水、給水、撹拌という、すすぎ動作を2回行う。1回目のすすぎは、制御装置132によって排水ポンプ131が駆動され、洗い工程で使用された洗濯水は水槽104から排出される。次に、給水弁129が開かれて水栓127と水槽104とが連通し、再び水槽104に設定されている所定量の水が供給される。
所定量の水が水槽104内に供給されると、制御装置132は給水弁129を閉じる。この間、排水ポンプ131は停止している。水槽104に水が溜められている状態でドラム105を回転し、洗濯物を撹拌することにより、洗濯物に付着している洗剤成分や汚れ成分を、汚れていない水の中へと移動させて汚れを落とすすすぎを実行する。所定の時間が経過すると、制御装置132は、1回目のすすぎ動作を終了し、これを2回繰り返した後、水槽104内の水を排出してすすぎ工程を終了する。
すすぎ工程に続いて、制御装置132は脱水工程を実行する。制御装置132はモータ106を駆動し、ドラム105を高速(例えば、1400rpm)で回転させる。このとき、回転数が増加していくにつれて、洗濯物に付加される遠心力が強まっていくため、洗濯物はドラム105の内側に張り付いていく。
洗濯物に含まれる水分は、遠心力によりドラム105の小孔110を通して外側に移動し、遠心力によって水槽104の内側に飛ばされる。これにより、洗濯物に含まれる水分のある程度は除去される。洗濯物から分離された水分は、制御装置132が排水ポンプ131を駆動させることで、水槽104内から排水経路130を経て機外へ排出される。
脱水工程の最後には、制御装置132はモータ106を低速で回転駆動し、磁力検知センサ137がマグネット136の最接近を検知すると、モータ106の回転を停止する。次に、制御装置132はドラム固定装置133を作動させて、固定ピン134をドラム105の固定用穴135に挿入し、ドラム105の回転をロックする。
これにより、ドラム蓋112で閉じられた状態で回転していたドラム開口部111は、水槽蓋114で閉じられている水槽開口部113と対向した位置となるようにドラム105が停止する。
次に、スライド装置115のスライド動作について説明する。制御装置132は、スライドロック装置(図示せず)により、スライド体116を筐体102に固定してスライド不能にすることができる。制御装置132は、洗濯運転中、つまり、モータ106が駆動してドラム105が回転していたり、給水弁129および排水ポンプ131が動作している場合には、スライドロック装置を駆動させて、スライド装置115がスライドしないように固定している。
基本的に、運転を行っていない場合には、水槽104が格納位置にあっても制御装置132はスライドロック装置を解除してスライド可能にしている。この場合、使用者は取っ手126に設けたロックレバーを解除して引っ張ることで、容易に水槽104をスライド移動させることが可能である。スライド装置115の前側の車輪119が前ストッパー121に接触して水槽104は引き出し位置で停止する。使用者は、取っ手126を押すことで、スライド装置115は後方へスライド移動し、後ストッパー122に接触する。そして、水槽104は格納位置で停止する。
水槽104が筐体102から引き出された引き出し位置にある状態では、スライド装置115の前扉124に重い下向きの負荷が加えられることが考えられる。このような場合には、前側の車輪119を基点としてスライド装置115の前扉124が下方向に倒れこむ。しかし、本実施の形態では、水槽104が筐体102から引き出されると、第1の係止部116dが第2の係止部184に係合するため、安定した設置状態を確保することができる。
また、水槽104が筐体102内に格納されている状態では、第1の係止部116dが第2の係止部184から離脱するように構成されているため、洗濯運転を行った場合でも、振動が第1の係止部116dを通して床面等に伝わることもない。
また、水槽104が筐体102から引き出されているときに、スライド装置115に下向きの負荷が加えられて、格納方向にも力が作用すると、スライド装置115は格納方向に付勢されてスライド移動することが促される。しかし、本実施の形態では、離脱防止装置142が設けられており、第1の係止部116dは矢印ハ方向に上方へ変位し、第1の係止部突起142bが第2の係止部突起142aの前方側に当接して係合が解除されないように構成されている。したがって水槽104の不用意な格納位置への移動を防止することができる。
一方、スライド装置115に下向きの負荷が加わらない通常の状態では、第2の係止部突起142aと第1の係止部突起142bは接触することがないので、スライド装置115は、引き出し位置と格納位置との間をスムーズにスライド移動することができる。
次に、水槽104の重心について説明する。最大容量分の洗濯物がドラム105内に入れられている場合の、脱水処理後の水槽104の重心Aは、図11に示すように、スライド体116の前側の車輪119と後側の車輪119との間に位置している。したがって、スライド体116は、水槽104をバランスよく安定支持することができ、スムーズにスライド体116をスライド移動することが可能である。
そして、水槽104が筐体102から前方へ引き出された引き出し位置においても、図12に示すように、前側の車輪119が前ストッパー121に当接するため、上述した状態における水槽104の重心Aは、前側支持脚103aより前方へ移動することがない。したがって、水槽104を筐体102内のスライド体116によって安定的に支持することができる。
一方、最大容量分の洗濯物がドラム105内に入れられ、水槽104内に所定量の水が入った状態の水槽104の重心Bは、スライド体116の前側の車輪19より前側に位置している。この場合、スライド体116に前方への傾きが生じる。前側の車輪119を基点としてスライド体116が前方へ傾くと、後側の車輪119が浮き上がり、スライド体116の上板116aの後部が筐体102天面の内部に接触する。この接触による抵抗がスライド移動時の抵抗となる。
水槽104の重心がBとなる場合は、水槽104内に多量の水が入った状態を想定しているため、スライド体116の上板116aの後部が筐体102天面の内部に接触し、スライド移動時の抵抗となることで、水槽104をゆっくりと引き出すことが可能となる。したがって、水槽104を引き出した直後にドラム蓋112を開けた場合でも、水槽104内の水が飛び出すことがないように、上板116aの後部と筐体102天面の内部との接触抵抗を最適に設定している。
以上のように、本実施の形態に係る洗濯機は、前面側に開口部102aを備えている筐体102と、筐体102内に設けられ、洗濯水を貯留する水槽104と、水槽104を弾性支持するスライド装置115と、水槽104内に回転可能に設けたドラム105を備えている。さらに、ドラム105を回転駆動するモータ106と、水槽104の周側面の上部に開閉可能に設けられている水槽開口部113と、ドラム105の周側面に開閉可能に設けられ、洗濯物を出し入れするドラム開口部111とを備えている。スライド装置115は、水槽開口部113が筐体102から露出するように水槽104が引き出されている引き出し位置と、水槽104が筐体102内に格納されている格納位置との間を摺動可能とするスライド体116を備えている。さらに、スライド装置115は、水槽104を下方から弾性支持するダンパ装置117と、水槽104を上方から弾性支持するばね装置118を有している。スライド装置115がスライド移動するときに、水槽104の揺れを低減する水槽揺れ低減手段100が設けられている。当該洗濯機は、スライド体116に設けられている第1の係止部116dと、筐体102が設置される設置部1138に取り付けられ、第1の係止部116dと脱着可能に係合する第2の係止部184とをさらに有する。水槽104の引き出し位置への移動により第1の係止部116dは第2の係止部184に係合され、水槽104の格納位置への移動により第1の係止部116dは第2の係止部184から離脱する。
水槽104が筐体102から引き出されることによって使用者は洗濯物を上方から出し入れすることができ、使用者は楽な姿勢で洗濯物を容易に取り出すことができる。さらに、水槽104が筐体102から引き出された際に、スライド装置115に設けられている第1の係止部116dを洗濯機本体101の設置部1138に設けられている第2の係止部184に連結することができる。これにより、水槽104が引き出された状態でも安定した設置状態を確保することができる。また、洗濯時には第1の係止部116dが第2の係止部184から離脱され、スライド装置115を設置部1138から切り離すことができる。これにより、洗濯時の振動が支持脚103a、103b以外の部分から設置部1138等の外部に伝播するのを防止することができ、洗濯機周囲の振動および騒音環境を向上させることができる。
なお、水槽104が引き出し位置にあり、スライド装置115に下向きの荷重を含む格納方向への押圧力が作用したとき、第1の係止部116dが第2の係止部184から離脱するのを防止する離脱防止装置142をさらに備えていてもよい。
これにより、引き出されたスライド装置115に使用者が寄りかかるなどして、不用意に力が加えられた場合には、下向きに作用する分力によって第1の係止部116dと第2の係止部184の離脱を防止することができる。したがって、筐体102の開口部102aが閉じられるのを防止して安全性を向上させることができる。
なお、スライド装置115の移動による第1の係止部116dと第2の係止部184の係合および離脱は、少なくとも引き出し位置で係合し、格納位置で係合が解除されればよく、係合と離脱のタイミングは適宜設定可能である。
(実施の形態5)
図16は、本実施の形態における洗濯機の要部断面図である。図17は、同洗濯機の運転一時停止時に水槽を引き出した状態の要部断面図である。図18は、同洗濯機の運転一時停止時に水槽を引き出した状態の要部断面図である。
本実施の形態では、スライド装置115が格納位置から引き出し方向へ所定距離移動した状態から、水槽4が引き出し位置まで移動した状態までの間で、第1の係止部116dを第2の係止部184と係合可能に構成したものである。他の構成は実施の形態4と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態4のものを援用する。
図16から図18において、洗濯機本体101を設置する床面等の設置部1138に第2の係止部184が取り付けられている。第2の係止部184は、洗濯機本体101の前方側は設置部1138に強固に固着されている。第2の係止部184は、洗濯機本体101の後方側は、設置部1138から所定の間隔を有し、当該所定の間隔に第1の係止部116dが入り込む。当該間隔を形成する第2の係止部184の略水平部分を水平部184aと称す。本実施形態においては、水平部184aは、洗濯機本体101の前後方向の長さの略1/3程度の長さに設定している。
スライド装置115が格納位置から前方へスライド移動し、図18の状態になると、スライド装置115と一体に設けられている第1の係止部116dが第2の係止部184と係合し始める。図18の状態から引き出し位置へ移動するまでの間、すなわち、前側の車輪119が前ストッパー121に当接するまでの間、第1の係止部116dと第2の係止部184は係合した状態となる。
スライド装置115が格納位置にある場合は、第2の係止部184は、洗濯機本体101やスライド装置115等、洗濯機本体101のどの部分にも接触しないように構成されている。
スライド装置115のスライド体116を筐体102内の所定の位置(洗濯物の追加投入位置)で停止させ、それ以上の前方への移動を阻止するスライド規制装置186が設けられている(図17参照)。スライド規制装置186は、筐体102の底部に取り付けてあり、モータ(図示せず)によってストッパー187をスライド体116のスライド移動の軌跡内外に駆動することができる。
ストッパー187がスライド体116のスライド軌跡内に配置されると、スライド体116の底板116bがストッパー187と接触し、スライド体116はそれ以上前方へスライド移動できなくなるように構成されている。図18は、水槽104が筐体102から引き出され、底板116bがストッパー187に当接して停止した状態を示している。
洗濯途中で運転を一時停止する場合について説明する。運転開始後に、例えば、洗濯物を入れ忘れた場合の追加投入等で一時停止ボタンが押されると、制御装置132は、モータ106などの駆動を一旦停止させる。その後、制御装置132は、再度、モータ106を低速で回転させ、運転終了時と同様にドラム105の位置を検知してドラム105の回転をロックする。その後、制御装置132は、スライドロック装置によるスライド体116のロックを解除して、一時停止状態になったことを操作表示部に表示させる。
洗い工程の途中で一時停止操作が行われたとき、制御装置132は、運転の履歴、特に給水弁129と排水ポンプ131の動作の条件によって異なる制御を行う。水槽104内に水が溜められていない場合は、制御装置132は、スライド規制装置186を作動させない。
そして、水槽104内に所定量の水が溜められている場合は、制御装置132は、スライド規制装置186を駆動し、ストッパー187をスライド装置115の軌跡内に突出させてスライド体116の底板116bの前方に配置する。取っ手126を介して前扉124が手前に引かれると、ストッパー187はスライド装置115を図18に示す所定の位置(洗濯物の追加投入位置)で停止させ、それ以上の前方への移動を阻止する。
運転の一時停止操作により、スライド規制装置186によって停止したスライド体116の停止位置は、水槽104内に所定量の水と洗濯物が入っている場合の水槽104の重心Bが、筐体102底部の前側に設けた前側支持脚103aよりも前方へ移動することがないように設定されている(図18参照)。
一時停止時の水槽104の引き出し位置は、図18に示すように、水槽開口部113およびドラム開口部111が筐体102の前面から半分程度は露出する。このため、水槽蓋114およびドラム蓋112の開閉操作が可能であり、使用者は洗濯物を追加投入することができる。
洗濯物の追加投入が終わると、ドラム蓋112および水槽蓋114が閉じられ、取っ手126を介して前扉124が押されて水槽104が格納位置へスライド移動される。その後、運転再開ボタンを操作する。制御装置132は、スライドロック装置を駆動してスライド装置115のスライド移動をロックする。そして、制御装置132は、ドラム固定装置133を駆動して、固定ピン134をドラム105の固定用穴135から引き抜いてドラム105が回転可能な状態にする。その後、運転を一時停止した時の状況に応じて、予め定められた手順で洗濯工程を再開する。
以上のように、本実施の形態においては、第1の係止部116dは、水槽104が、格納位置から引き出し位置へ所定距離を移動した状態から、水槽104が引き出し位置まで移動された状態までの間で、第2の係止部184と係合する。
これにより、スライド装置115が途中まで引き出された状態で使用する際に、引き出されたスライド装置115に使用者が寄りかかるなどして、不用意に力が加えられた場合でも、係止部の係合により安定した設置状態を確保することができる。
また、第1の係止部116dは、運転の一時停止操作によって水槽104が引き出される位置で第2の係止部184と係合する。
これにより、運転開始後に、例えば、洗濯物を入れ忘れた場合の追加投入等で、水槽104が途中まで引き出された状態で洗濯物が入れられる際に、引き出されたスライド装置115に不用意に力が加えられた場合でも、係止部の係合により安定した設置状態を確保することができる。
なお、本実施の形態において、水槽104内に所定以上の水量の水が入っている場合は、スライド装置115のスライド移動を遅くさせるために、スライドブレーキ装置をさらに設けてもよい。そうすることで、水が水槽104内に多量に入った場合のスライド装置115の動きを遅くすることができ、水槽蓋114を開けたときに水槽104内の水が外へ飛び出すのを防止することができる。
以上のそれぞれの実施形態だけでなく、以上のあらゆる実施形態の組み合わせも本発明の範囲内である。
なお、上記すべての実施の形態において、水栓27,127は建物に設置された水道栓に限定するものではなく、風呂水などの供給部であってもよい。
なお、上記すべての実施の形態において、水槽蓋14,114は洗濯機本体1,101の前後方向にスライドされてもよい。水槽蓋14,114が前後方向にスライドすると、スライド装置15,115のスライド動作と同期して水槽蓋14,114の開閉をおこなうことができる。これにより、スライド装置15,115を手前に引き出した際には自動的に水槽蓋14,114が開き、また、スライド装置15,115を格納方向へ押し込んだ際には、自動的に水槽蓋14,114が閉じるような構成が可能となる。
なお、上記すべての実施の形態において、ドラム蓋12,112および水槽蓋14,114は、スライド式による開閉のほか、観音開きで開閉するようにしてもよい。この場合は、開口面積をより大きく確保することができる。
なお、上記すべての実施の形態において、スライド装置15,115のスライド移動は、使用者の引っ張る力などで手動にてスライドさせているが、モータなどを使って自動的にスライドさせてもよい。洗濯機本体1,101に設けた開閉ボタン等が押されることで、制御装置32,132がスライドモータを駆動してスライド装置15,115をスライド移動させることができる。
スライド装置15,115をスムーズにスライド移動を行おうとすると、レール20,120と車輪19,119は重力に対して垂直な方向に設置されていることが好ましい。レール20,120と車輪19,119が傾いていると、傾いた方向に向かってスライド装置15,115がその自重でスライド移動する。例えば、洗濯機本体1、101が前下がりに傾斜した場所に置かれている場合、スライドロック装置40,140が解除されると、スライド装置15,115が移動して水槽4,104が筐体2,102から出てくることになる。しかし、モータを使用すると、洗濯機本体1,101が多少傾いていた場合でも、同じ速度でスライド移動させることが可能となり、また、自重による不用意な移動を防止することができる。また、開閉ボタンが押されると開閉するので、取っ手26,126が不要になる。
なお、上記すべての実施の形態において、レール20,120が水平な状態に保たれていることがスライド移動時のスムーズな動作、および、移動する速度にとって重要である。そのため、前側支持脚3a,103aまたは後側支持脚3b,103bの少なくともいずれか一方の高さを調整できる調整可能脚であることが好ましい。また、洗濯機本体1,101の水平度がわかるように水準器を搭載していることが望ましい。
なお、上記すべての実施の形態において、ドラム5,105はドラム開口部11,111の中心と、中心軸を介した反対側が若干重くなるように偏心させてもよい。そうすることで、ドラム5,105の回転を止めると自動的にドラム5,105はドラム開口部11,111が真上に来るように停止させることできるので、マグネット36,136と磁力検知センサ37,137が不要になる。
なお、上記すべての実施の形態において、ドラム5,105のドラム開口部11,111が上に位置していることが検知できれば、マグネット36,136と磁力検知センサ37,137以外の方式でもよい。例えば、ドラム5,105の外周部に設けられた突起が、水槽4,104の内面側に設けられた伸縮可能な突起と接触したことを検知するようにしてもよい。
なお、上記すべての実施の形態において、前扉24,124の一部や水槽4,104の前側壁面の一部、またはドラム5,105の前側壁面の一部を透明にすることで、外側から洗濯される様子を確認することができる。
なお、上記すべての実施の形態において、使用者が所定のボタンによってドラム固定装置33,133および固定ピン34,134によるドラム5,105の回転ロックを外すことができると、手動でドラム5,105を回動させることができる。その結果、使用者はドラム5,105外周壁面の汚れを除去することができる。
なお、上記すべての実施の形態において、スライド装置15,115が押し込まれて筐体2,102内に格納される最後の部分において、ばねで引き込みながらダンパを設けてゆっくり閉まるようにしてもよい。これにより、勢いよく前扉24,124を押して閉じた場合でも、完全に閉じる直前は自動的にゆっくり閉じることができ、安全性を向上させることができる。
なお、上記すべての実施の形態において、ダンパ装置17,117およびばね装置18,118は、重心Aの上下に配置されるようになっているが、ドラム5,105内の洗濯物や水の状態によっては、ドラム5,105の前側が大きく揺れることもありうる。そのような場合には、前扉24,124と水槽4,104の前側壁面との間をバネで接続すると、この揺れを低減することが可能となる。
なお、上記すべての実施の形態において、スライド装置15,115をスライド移動可能な状態にする、つまり、スライドロック装置40,140を解除した状態では、必ず水槽4,104を固定させる水槽固定ロック装置を設けてもよい。これにより、スライド移動の際に水槽4,104が揺れてスムーズにスライド移動できないという事態を防止することができる。
なお、上記すべての実施の形態において、スライド装置15,115は他の構造でもよい。例えば、前扉24,124の支持構造は、前扉24,124の下部を支持する2本のシャフト25,125に、前扉24,124の上部を支持する2本のシャフトを加えて、4本で前扉24,124を支持すると強固な構成になる。また、スライド体16,116は、上板16a,116aと底板16b,116bを4本の柱16c,116cで支えるほか、板金を略「コ」の字状に曲げたもので支えるようにしてもよい。
なお上述した実施形態においては、スライド装置15,115の一例として、車輪19,119がレール上を転がることで、スライド体16,116のスライド移動が可能となる構成を説明したが、これに限られない。例えば、車輪19,119に代えて、スライド体16,116の底面に摺動部材が備えられ(スライド体の底面自体が摺動部材である形態も含む)、当該摺動部材がレール上を摺動する構成であってもよい。