以下に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1から図3を参照しながら、移動栽培装置の概略構造について説明する。以下の説明において、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」等)を用いる場合は、図1において紙面に直交する方向を平面視とし、紙面上下方向を縦方向(又は前後方向)とし、紙面左右方向を横方向(又は左右方向)とする。これらの方向を表す用語は説明の便宜のために用いられるが、発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、実施形態では、縦方向及び横方向が水平面に対して平行であることを想定しているが、本願発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えばイチゴのような果菜類や葉菜類、若しくは花卉の栽培に支障を来さない範囲内で、縦方向及び横方向の一方又は両方が水平面に対して多少傾斜していても構わない。
図1及び図3は、本願発明の実施形態における移動栽培装置の概略構成を示す平面図及び側面図であり、複数の栽培ベンチ10が縦案内装置20A,20Bの上にある状態を示している。なお、縦案内装置20A,20B上に並ぶ栽培ベンチ10の数は例えば50個以上にもなることがあるが、図面では縦案内装置20A,20Bの中央部を省略し、短縮して描いている。また、図2は、移動栽培装置1の概略構成を示す正面図であり、横搬送装置40Aの横搬送下流側領域40dに栽培ベンチ10が存在する状態を模式的に描いている。
本実施形態の移動栽培装置1は、果菜類や葉菜類、若しくは花卉等の植物を栽培するための複数の栽培ベンチ10を、平面視矩形の閉ループに沿って循環移動するものである。移動栽培装置1は、搬送方向を互いに逆向きにして平行状に並ぶ一対の横搬送装置40A,40Bと、一方の横搬送装置40A(40B)の横搬送下流側領域40dから他方の横搬送装置40B(40A)の横搬送上流側領域40uに複数の栽培ベンチ10を案内する一対の縦案内装置20A(20B)を備え、これらが平面視矩形の閉ループを形成している。
また、横搬送装置40A,40Bの横搬送下流側領域40dに横搬送された栽培ベンチ10を縦案内装置20A,20Bの最上流位置20uに向けて移動するプッシュユニット21A,21Bが設けられている。また、縦案内装置20A,20Bの最下流位置20dにある栽培ベンチ10を横搬送装置40A,40Bの横搬送上流側領域40uへ移動する一対のプルユニット22A,22Bが設けられている。
プッシュユニット21A,21Bが作動して横搬送装置40A,40Bの横搬送下流側領域40dにある栽培ベンチ10が縦案内装置20A,20Bの最上流位置20uに向けて移動されると、縦案内装置20A,20Bの上に並んでいる複数の栽培ベンチ10が一斉に、玉突き状に移動する。他方、プルユニット22A,22Bは、縦案内装置20A,20Bの最下流位置20dにある栽培ベンチ10のみを横搬送装置40A,40Bの横搬送上流側領域40uへ移動する。この後、プルユニット22A,22Bは待機位置へ戻り、横搬送装置40A,40Bによって栽培ベンチ10が横搬送上流側領域40uから横搬送下流側領域40dへ移動されて停止される。この状態はベンチ搬送待機状態である。詳細は後述するが、コントローラ600(図18参照)に搬送開始信号が入力されると、ベンチ搬送待機状態が解除されて、プッシュユニット21A,21Bによる複数の栽培ベンチ10の玉突き状の搬送及びプルユニット22A,22Bによる横搬送装置40A,40Bへの栽培ベンチ10の移動が行われる。
横搬送装置40A,40B、プッシュユニット21A,21B、及びプルユニット22A,22Bによる上記のような一連の動作が繰り返されることにより、横搬送装置40A,40B及び縦案内装置20A,20Bで形成された平面視矩形の閉ループに沿って、図1における反時計回り方向(矢印方向)に複数の栽培ベンチ10が循環する。果実摘みや花がら摘みといった作業を行う作業者は、例えば、横搬送装置40Aの横搬送下流側領域40dの手前側(図1では下側)に立って、横搬送装置40Aによって横搬送上流側領域40uから横搬送下流側領域40dへ移動中の栽培ベンチ10や横搬送下流側領域40dに停止された栽培ベンチ10上の栽培植物に対して作業を行う。なお、作業者の作業場所は横搬送下流側領域40dに限定されず、例えば横搬送装置40Aの横搬送上流側領域40u及び横搬送下流側領域40dの両方であってもよい。
次に、図4から図6を参照しながら、栽培ベンチ10の構造について説明する。図4から図6は、栽培ベンチ10の概略構造を示す平面図、正面図、及び側面図である。栽培ベンチ10は、平面視略長方形の矩形枠体11を備え、その長手方向が横搬送装置の搬送方向になるように移動栽培装置1にセットされる。矩形枠体11は、その長手方向に平行に延びる一対の横枠部材111と、一対の横枠部材111の両端部と中央部、及びそれらの中間位置で一対の横枠部材111を連結する計5本の縦枠部材112からなる。横枠部材111及び縦枠部材112は板金加工品で形成され、コの字状又はロの字状に近い断面形状を有する長尺部材である。横枠部材111と縦枠部材112は溶接又はボルト・ナットを用いて互いに強固に接続されている。
栽培ベンチ10の矩形枠体11の上面側には、複数のプランタ2が長手方向に一列に並べて載置されるプランタ載置部12が設けられている。プランタ2は、栽培用の土等を収容するものであり、一般的な樹脂製の横長プランタ等が使用される。図5及び図6に破線でプランタ2が描かれており、5個のプランタ2が長手方向に一列になるように並べて置かれている。
プランタ載置部12は、プランタ2の幅方向を両側から挟むように保持し、プランタ2の長手方向(横方向)に延びる一対の横長部材と、一対の横長部材の両端部とその内側4箇所で一対の横長部材を連結する計6本の縦部材からなり、6本の縦部材は、5個のプランタ2の横方向移動を規制する部材として機能する。一対の横長部材と6本の縦部材とは溶接又はボルト・ナットを用いて互いに接続され、プランタ載置部12(一対の横長部材)と矩形枠体11(5本の縦枠部材112)は溶接又はボルト・ナットを用いて互いに接続されている。
図4及び図6から分かるように、プランタ載置部12は、矩形枠体11の上面側において、対向する長辺の一方側(図4では上側、図6では右側)に寄せて設けられている。他方側(図4では下側、図6では左側)の空間には、図6から分かるように、下向きU字状の網支持部材13が設けられている。網支持部材13は、例えばスチールパイプの曲げ加工によって形成され、計5本の網支持部材13が矩形枠体11の5本の縦枠部材112に沿ってそれぞれ設けられている。例えば、縦枠部材112の上面に突設したボス(図示省略)に、網支持部材13の両端部(筒状部)を上から嵌め込むようにして、網支持部材13が矩形枠体11に対して取り外し可能に装着できることが好ましい。
また、網支持部材13の両端部を矩形枠体11の5本の縦枠部材112に装着する代わりに、プランタ載置部12(の手前側の横長部材)と矩形枠体11の手前側の横枠部材111との間に架け渡すように装着しても良い。その場合は、任意の数の網支持部材13を任意の間隔で設けることができる。あるいは、U字状の網支持部材13の代わりに、従来の片持ち式のアーム状の網支持部材(特許文献1参照)を縦枠部材112又はプランタ載置部12(の手前側の横長部材)に固定する構造でもよい。
上記のような複数の網支持部材13に対して、複数本のワイヤーを横方向に架け渡すように固定し、その上に網131を被せる(敷設する)ことができる。剛性の高い網を使用する場合は、網支持部材13の上に網131を直接被せることも可能である。網131の材質は金属製や樹脂製等、種々の材質を採用できる。網131は網支持部材13に止め具(図示省略)等によって着脱可能に取り付けられる。プランタ2の上面から手前側に伸長した栽培中の果菜(例えばイチゴ)の伸長部を網131の上に置いて、矩形枠体11の上面から浮かせた状態で支持することができる。
図6に示す例では、網支持部材13の上面が矩形枠体11の上面に対して略平行になっている。したがって、網支持部材13の上に被せる網131が矩形枠体11の上面に対して略平行になる。変形例として、図7に示すように、網支持部材13の上面が矩形枠体11の上面に対して傾斜するように構成してもよい。つまり、網支持部材13の上に被せる網131が矩形枠体11の上面に対してプランタ2の上面から手前側(図7では左側)へ下り勾配になる。図6の網131を水平にする構成では、イチゴのような果菜の伸長部を網によって安定して支持することができる利点がある。例えば、玉突き状の縦搬送で生じる衝撃によって栽培ベンチ10が水平方向に揺れたとしても、網131に支持された果菜の伸長部(特にイチゴの実)が傷つきにくい。但し、従来の片持ち式のアーム状の網支持部材を採用する場合は、網131を水平方向に延ばすメリットはない。図7の網131を傾斜させる構成ではイチゴのような果菜の伸長部(網に載せられた部分)に対して行う果実摘みのような作業の作業性が良くなる利点がある。なお、栽培ベンチ10の上のプランタ2でイチゴを栽培する際に、その伸長部が網131の側(対向する長辺の他方側、図6では左側)のみに伸長し、反対側(対向する長辺の一方側、図6では右側)には伸長しないように栽培される。例えば、イチゴの場合、親株からランナー(つる)が出て、このランナーの先端に子株が出る。この子株を苗として使用する際に、親株との間のランナーを切断し、矩形枠体11上面側のうち対向する長辺の一方側にランナー切断側を向けた状態の子株をプランタ2に植え付けることによって、植え付けられた苗からは、他方側(網131側)にのみ花芽が出て伸長し、網131側でのみ果実を付けさせることができる。
栽培ベンチ10の矩形枠体11の底面側には、横方向及び縦方向にそれぞれ離間する4箇所に遊転輪14,15が設けられている。これらの遊転輪14,15は縦案内装置20A,20Bの一対の縦案内レール201(後述)の上を転動し、これによって栽培ベンチ10が縦案内装置20A,20Bの上を少ない抵抗で円滑に移動することができる。なお、図5では縦案内レール201の円形の断面輪郭が破線で描かれ、図6では縦案内レール201の直線の上下輪郭が破線で描かれている。
左側の一対の遊転輪14は、横方向中央の縦枠部材112の左隣の縦枠部材112の下面に前後方向に離間して固定されたホルダ141によって、横方向の軸心周りに遊転するように支持されている。右側の一対の遊転輪15は、それぞれ2個(計4個)の遊転輪152からなる。横方向中央の縦枠部材112の右隣の縦枠部材112の下面に前後方向に離間して固定されたホルダ151にそれぞれ2個の遊転輪152が支持されている。
各遊転輪15を構成する2個の遊転輪152は、横方向の軸心から互いに逆方向に45度傾いた軸心周りに遊転するように支持され、パイプ状の縦案内レール201を斜め上から挟むようにして転動する。つまり、2個の遊転輪152は、縦案内レール201の上を転動すると同時に栽培ベンチ10の縦搬送方向に直角な方向(横方向)への移動を規制するように構成されている。
上記のような遊転輪14,15の構成により、プッシュユニット21A,21Bの作動によって、縦案内装置20A,20Bにある複数の栽培ベンチ10が玉突き状に搬送される際に、プッシュユニット21A,21Bに掛かる負荷が低減されると共に、縦搬送方向に直角な方向での栽培ベンチ10のずれが防止され、複数の栽培ベンチ10が円滑に縦案内装置20A,20Bを移動することができる。なお、滑り摩擦を十分に小さくすることができる場合は、縦案内レール201の上を摺動する摺動部材を遊転輪14,15の代わりに使用することも考えられる。
また、複数の栽培ベンチ10が玉突き状に搬送される際に、前後の栽培ベンチ10の衝突による衝撃や振動を緩和するために、ゴムのような弾性素材で形成された防振部材113が栽培ベンチ10の前後方向手前側の横枠部材111の前面に取り付けられている。図4から図6に示す栽培ベンチ10の例では、小さな矩形の防振部材113を所定の間隔で4箇所に接着剤で固定している。
防振部材113の材質は特に限定されない。弾性によって衝撃や振動を緩和できる材質であればよい。その形状、取り付け位置、及び個数についても特に限定されない。例えば、横枠部材111の前面の略全面を覆うように細長いシート状の防振部材を貼り付けてもよい。
また、栽培ベンチ10の矩形枠体11にICタグ(図示省略)が設けられ、栽培ベンチ10で栽培される植物の各種情報をICタグに記憶している。これにより、栽培される植物の情報を栽培ベンチ10ごとに管理し、トレーサビリティの向上に寄与している。
次に、横搬送装置40A,40Bの構造について説明を加える。一対の横搬送装置40A,40Bの基本的な構造は同じであるので、以下、横搬送装置40と記載する。縦案内装置20A,20B等についても同様に記載する。図8及び図9に、横搬送装置40(40A)の概略構造を平面図及び正面図で示す。図9では、横搬送下流側領域40dに栽培ベンチ10が存在する状態を描いている。横搬送装置40は、複数本の脚41や梁42にて支持されて横方向に延びる一対の平行な横レール47を備えている。
図8及び図9に示すように、各横レール47は、上流側、中央部、下流側の3本に分断されているが、これは、縦案内装置20(20A,20B)と横搬送装置40(40A,40B)との間で栽培ベンチ10の受け渡しを行うプルユニット22(22A,22B)とプッシュユニット21(21A,21B)が横レール47と直角に交わるように配置されるためである。横レール47と干渉しないようなプルユニット及びプッシュユニットの構造を採用する場合は、各横レール47は一本の連続した横レールでよい。以下の説明において、横レール47という場合は、上流側、中央部、下流側の3本の横レール47をまとめて1本の横レール47として意味するものとする。
複数対(図示の例では17対)の案内輪48が、一対の横レール47の長手方向に沿って所定の間隔で取り付けられている。案内輪48は、栽培ベンチ10の横枠部材111の底面側を支えて、栽培ベンチ10を横方向に案内する横案内部材に相当する。後述の横駆動部を示す側面図である図10から分かるように、案内輪48は、横レール47の上面に、L金具49とボルト・ナットを用いて内側を向くように取り付けられている。案内輪48は、栽培ベンチ10の横枠部材111の底面側に当接する内側の小径部と、外側の大径部(フランジ)からなる。大径部は栽培ベンチ10の横枠部材111の幅方向(縦方向)外側に位置して、栽培ベンチ10の横搬送方向に対する直角方向(縦方向)への動き(ずれ)を規制する働きを有する。なお、滑り摩擦を十分に小さくすることができる場合は、栽培ベンチ10の底面側を支える摺動案内部材を案内輪48の代わりに使用し、栽培ベンチ10が横レール47に沿って摺動するように構成することも考えられる。
図10に、栽培ベンチ10を横レール47に沿って横搬送する横搬送装置40の横駆動部50の概略構造を側面図として示す。横駆動部50は、横搬送電動モータ501、ギアボックス502、及び駆動ローラ503を含んでいる。横搬送電動モータ501の出力軸(回転軸)504はギアボックス502に接続され、ギアボックス502の出力軸(回転軸)505に駆動ローラ503が固定されている。横搬送電動モータ501が作動すると、その回転速度がギアボックス502によって減速されると共に駆動力が高められ、駆動ローラ503が軸心AX1周りに回転する。
駆動ローラ503の外周面は栽培ベンチ10の底面側、正確には前後方向(縦方向)奥側の横枠部材111の底面側に接触している。駆動ローラ503の外周部は表面摩擦(グリップ力)の大きいゴム素材で形成されており、駆動ローラ503が軸心AX1周りに回転すると、駆動ローラ503の外周面と栽培ベンチ10の横枠部材111との間の摩擦力によって、栽培ベンチ10が横方向に(複数の案内輪48に沿って)搬送される。したがって、駆動ローラ503の外周面の上端面は、図10に示すように、案内輪48の内側小径部の上端面よりも少しだけ上に出るように配置されている。
図8及び図9に示すように、横駆動部50(駆動ローラ503)は、横搬送装置40の長手方向(横方向)に離間する2箇所に設けられている。その間隔は、栽培ベンチ10の横枠部材111の横方向長さよりも短い。したがって、栽培ベンチ10が横搬送装置40によって横搬送上流側領域40u(左側)から横搬送下流側領域40d(右側)に搬送されるとき、左右2個の駆動ローラ503のうちの少なくとも1個は必ず栽培ベンチ10の横枠部材111の底面側に接触している。つまり、横搬送装置40の横搬送上流側領域40uに位置する栽培ベンチ10は、横駆動部50(駆動ローラ503)が作動すると、初めは左側の駆動ローラ503によって搬送され、右方向への移動に伴って横枠部材111の底面側が右側の駆動ローラ503に接触し、左右両方の駆動ローラ503によって搬送される短い期間を経て、後半は右側の駆動ローラ503によって横搬送下流側領域40dまで搬送される。
図8及び図9に示すように、横搬送装置40の右端部に、栽培ベンチ10が横搬送下流側領域40dへ搬送されたことを検出するための横搬送完了センサ701が備えられている。横搬送完了センサ701として、例えば栽培ベンチ10の横搬送先端部(右端部)に接触して信号を出力するリミットスイッチ、又は栽培ベンチ10の横搬送先端部を検出する光センサや磁気センサのような非接触センサを使用することができる。
次に、基本的に同じ構造を有する一対の縦案内装置20(20A,20B)の概略構造を図11に側面図として示す。縦案内装置20は、一対の横方向に離間した平行な縦案内レール201が複数の支柱202や梁によって支持された構造を有する。一対の平行な縦案内レール201は、前述のように、栽培ベンチ10の矩形枠体11の底面側に備えられた二対の遊転輪14,15を案内する。つまり、二対の遊転輪14,15が一対の平行な縦案内レール201の上を転動することによって栽培ベンチ10が縦案内装置20の上を縦方向に搬送される。なお、図11では縦案内装置20の中央部を省略し、短縮して描いている。
一対の縦案内レール201は、本実施形態では、円筒状のスチールパイプで構成されている。これによって、重量を抑えながら強度と剛性を確保している。円筒パイプの代わりに、例えば断面正方形の角パイプを使用してもよい。その場合は、左側の縦案内レール201は、角パイプの上面が水平になるように固定して、遊転輪14がその上面を転動する。他方、右側の縦案内レール201は、角パイプの稜線が上になり、その両側の平面が45度の傾きとなるように固定して、遊転輪15を構成する2個の遊転輪152が稜線の両側の平面を斜め上から挟むようにして転動することになる。
図11に示すように、縦案内装置20の前後(図11では左右)に位置する横搬送装置40には、縦案内装置20の縦案内レール201に接続して一本の直線案内レールとなるように構成された受継ぎ部材402と、この受継ぎ部材402を昇降駆動する昇降装置43が備えられている。受継ぎ部材402と昇降装置43は、横搬送装置40の横搬送上流側領域40uと横搬送下流側領域40dに一対ずつ備えられている。昇降装置43は、受継ぎ部材402が縦案内レール201に接続して一本の直線案内レールとなる上昇位置と、下方に退避する退避位置との間で受継ぎ部材402を昇降駆動する。
図12及び図13に、受継ぎ部材402が上昇位置にあるとき及び退避位置にあるときの昇降装置43を含む横搬送装置40の概略を側面図としてそれぞれ示す。昇降装置43は、梁部材431の上に設置されたエアシリンダ432と、その上方に延びるピストンロッド433と、その先端に固定された昇降板434と、昇降板434を上下方向スライド自在に支持する一対の案内枠435を備えている。昇降板434の上端に受継ぎ部材402が固定されている。
エアシリンダ432のピストンロッド433が伸長すると、昇降板434と共に受継ぎ部材402が上昇し、図12に示すように、受継ぎ部材402は上昇位置になる。この上昇位置において、受継ぎ部材402は縦案内装置20の縦案内レール201と同じ高さになり、両者は一本の直線案内レールとなる。この状態で、栽培ベンチ10の矩形枠体11の底面側に備えられた二対の遊転輪14,15は、縦案内レール201から受継ぎ部材402へ、あるいはその逆方向に円滑に転動しながら移動することができる。したがって、縦案内装置20と横搬送装置40との間で、プルユニット22又はプッシュユニット21による栽培ベンチ10の移動(受け渡し)を円滑に行うことができる。
横搬送装置40の横搬送上流側領域40uにおいて、一対の受継ぎ部材402によって栽培ベンチ10が支持されている状態(図12の状態)でエアシリンダ432のピストンロッド433(の突出長)が短くなると、昇降板434と共に受継ぎ部材402が下降する。そして、図13に示す退避位置まで受継ぎ部材402が下降する途中で、共に下降する栽培ベンチ10の底面側、正確には一対の横枠部材111の底面側が案内輪48に接触して支持される。また、図10を参照しながら前述したように、前後方向(縦方向)奥側の横枠部材111の底面側が駆動ローラ503に接触して支持される。
図13に示すように、受継ぎ部材402が退避位置まで下降した状態では、栽培ベンチ10の底面側の二対の遊転輪14,15は、受継ぎ部材402の上面から離れてフリーの状態になる。したがって、駆動ローラ503が回転して栽培ベンチ10が横搬送されるときに、受継ぎ部材402がその妨げとなることはなく、横搬送の負荷となることもない。
また、横搬送装置40の横搬送下流側領域40dへ横搬送された栽培ベンチ10の下方で、図13の状態からエアシリンダ432のピストンロッド433が伸長すると、退避位置にある受継ぎ部材402が図12に示す上昇位置まで上昇する。その途中で一対の受継ぎ部材402が栽培ベンチ10の二対の遊転輪14,15に接触して支持し、栽培ベンチ10を持ち上げる。そして、受継ぎ部材402は縦案内装置20の縦案内レール201と同じ高さになり、両者は一本の直線案内レールとなる。この状態でプッシュユニット21が作動することにより、栽培ベンチ10は縦案内装置20の最上流位置20uへ円滑に搬送される。
次に、プッシュユニット21の構造について説明する。図14及び図15は、プッシュユニット21の概略構造を示す平面図及び側面図である。プッシュユニット21(21A,21B)は、図1及び図2に示すように、横搬送装置40(40A,40B)の横搬送下流側領域40dに設けられ、横搬送装置40の横搬送下流側領域40dに位置する栽培ベンチ10を縦案内装置20の最上流位置20uへ移動することにより、縦案内装置20の上に並んでいる複数の栽培ベンチ10を玉突き状に縦搬送するためのものである。プッシュユニット21Aとプッシュユニット21Bは同じ構造であるが、それによって搬送される栽培ベンチ10の前後方向(縦方向)が異なる。図15では、縦方向手前側の横搬送装置40の横搬送下流側領域40dに設けられたプッシュユニット21Aを例にとって描いている。
プッシュユニット21は、図14及び図15に示すように、プッシュユニット電動モータ211と、その出力軸(回転軸)212に固定された駆動スプロケット213と、その前後方向(縦方向)に所定の間隔を隔てて配置された従動スプロケット214と、駆動スプロケット213と従動スプロケット214との間に架け渡されたチェーン215と、ボルト・ナット216及び金具を用いてチェーン215の上面に固定されたプッシュ板部材217を備えている。プッシュユニット電動モータ211の駆動回路(図示省略)にはインバータが設けられている。
図15において、プッシュユニット電動モータ211の回転軸212が時計回りに回転すると、駆動スプロケット213と従動スプロケット214との間に架け渡されたチェーン215が時計回りに回転し、その上面に固定されたプッシュ板部材217が実線の位置から破線の位置まで右方向(縦方向)に移動する。このとき、プッシュ板部材217の作用面218が、上昇位置(図12参照)にある横搬送下流側領域40dの受継ぎ部材402上に位置する栽培ベンチ10の横枠部材111の横方向中央部に接触し、栽培ベンチ10を横搬送装置40の横搬送下流側領域40dから縦案内装置20の最上流位置20uへ搬送する。前述のように、栽培ベンチ10の底面側に備えられた二対の遊転輪14,15(図4から図7参照)が受継ぎ部材402及び縦案内レール201の上を転動しながら移動するので、栽培ベンチ10は円滑に横搬送装置40から縦案内装置20へ移動する。そして、縦案内装置20の上に並んでいる複数の栽培ベンチ10が玉突き状に縦搬送される。
なお、プッシュ板部材217が図14及び図15における実線で示す待機位置から破線で示すプッシュ完了位置まで移動したことを検出するプッシュ完了センサ702(図18参照)が、駆動スプロケット213及び従動スプロケット214を支持するフレームに配設されている。プッシュ完了センサ702の出力によってプッシュ板部材217がプッシュ完了位置まで移動したことが検出されると、プッシュユニット電動モータ211が停止し、その後逆転してプッシュ板部材217が待機位置まで戻るように制御される。ここで、プッシュユニット電動モータ211の正転時と逆転時で回転速度を異ならせてもよい。例えば、プッシュユニット電動モータ211は、プッシュ板部材217を戻すときに、栽培ベンチ10を搬送するときの正転時の回転速度に比べて速い回転速度で逆転される。
また、プッシュ板部材217が待機位置まで戻ったことを検出するプッシュ戻りセンサ703(図18参照)がフレームに配設されている。プッシュ完了センサ702の出力によってプッシュ板部材217が待機位置まで戻ったことが検出されると、プッシュユニット電動モータ211を停止して、コントローラ600(図18参照)に搬送開始信号が入力されるまで待機する。プッシュ完了センサ702とプッシュ戻りセンサ703は例えばリミットスイッチや光センサ、磁気近接センサ等でそれぞれ構成される。制御の詳細については後述する。
上述のように、本実施形態では、プッシュユニット電動モータ211の回転力を直線駆動力に変換する機構としてスプロケット及びチェーンを用いているが、これに限らず、ラック・ピニオンやネジ送り機構等、他のメカニズムを用いてもよい。また、プッシュユニット21の駆動源としてプッシュユニット電動モータ211を用いているが、これに限らず、エアシリンダや油圧シリンダー等、他の駆動源を用いてもよい。
次に、プルユニット22の構造について説明する。図16及び図17は、プルユニット22の概略構造を示す側面図及び平面図である。プルユニット22(22A,22B)は、図1及び図2に示すように、横搬送装置40(40A,40B)の横搬送上流側領域40uに設けられ、縦案内装置20の最下流位置20dにある栽培ベンチ10を横搬送装置40の横搬送上流側領域40uへ移動するためのものである。プルユニット22Aとプルユニット22Bは同じ構造であるが、それによって搬送される栽培ベンチ10の前後方向(縦方向)が異なる。図16では、縦方向手前側の横搬送装置40の横搬送上流側領域40uに設けられたプルユニット22Aを例にとって描いている。
プルユニット22は、縦方向に延びる細長いガイド部材221とその上を前後方向(縦方向)に摺動するスライドブラケット222と、スライドブラケット222に対して横方向の軸心AX2周りに揺動自在に枢支された揺動係合部材223を備えている。ガイド部材221は、プルユニット駆動部224の上に固定され、プルユニット駆動部224は複数本の脚で支持されている。
プルユニット駆動部224は、ガイド部材221の長手方向(縦方向)に沿ってスライドブラケット222をスライドさせる駆動力を与えるためのものである。プルユニット駆動部224は、具体的にはロッドレスシリンダで構成される。ただし、プルユニット駆動部224はこれに限定せず、エアシリンダ、油圧シリンダー、電動モータとネジ送り機構、その他種々の公知の駆動手段の中から適切なものを選択することもできる。前述のプッシュユニット21は横搬送装置40の横搬送下流側領域40dに位置する栽培ベンチ10及び縦案内装置20の上に並んでいる複数の栽培ベンチ10を玉突き状に縦搬送するので、比較的大きな駆動力を必要とする。これに対し、プルユニット22は縦案内装置20の最下流位置20dにある栽培ベンチ10(1台)のみを横搬送装置40へ移動すればよいので、比較的小さな駆動力で済む。
スライドブラケット222に対して軸心AX2周りに揺動自在に枢支された揺動係合部材223は、アルミニウムや樹脂で作製された略直方体形状のブロックである。スライドブラケット222の長手方向(前後方向)の前側寄りに枢支の軸心AX2が位置し、定常状態の揺動係合部材223は、図16に実線で示すように、その自重によって後端側が下がり、先端係合部225が上がった状態となっている。なお、揺動係合部材223は、実線の位置から反時計回りに(破線の位置へ)揺動可能であるが、実線の位置から時計回りに揺動することはできないように構成されている。また、スライドブラケット222は、図16に実線で示すように、ガイド部材221の長手方向(縦方向)の後端位置(図16では右端位置)で待機している。ガイド部材221の長手方向の後端位置は縦案内装置20の最上流位置20uに配置されている。
プルユニット22の作動時には、プルユニット22のプルユニット駆動部224が正作動してスライドブラケット222がガイド部材221の長手方向(縦方向)に沿って実線で示す待機位置から破線で示すプル完了位置まで移動する。このとき、揺動係合部材223の先端係合部225(実線の位置)が縦案内装置20の最下流位置20dにある栽培ベンチ10の移動方向先端側(前側)の横枠部材111の内側(後側)に接触(係合)し、図16に示すように、栽培ベンチ10を破線の位置(上昇位置にある受継ぎ部材402上)に搬送する。
スライドブラケット222がガイド部材221の長手方向(縦方向)に沿ってプル完了位置(破線の位置)まで移動したことを検出するプル完了センサ705(図18参照)がガイド部材221に配設されている。プル完了センサ705は例えばプルユニット駆動部224に設けられた磁気近接センサやリミットスイッチ、光センサ等で構成される。プル完了センサ705の出力によってスライドブラケット222がプル完了位置まで移動したことが検出されると、プルユニット駆動部224は作動を停止する。プルユニット駆動部224は、例えばプッシュユニット21によって縦案内装置20の上に並んでいる複数の栽培ベンチ10が玉突き状に縦搬送され、その縦搬送が完了して先頭の栽培ベンチ10が最下流位置20dに配置されるまで作動停止する。
プルユニット22による栽培ベンチ10の移動及びプッシュユニット21による栽培ベンチ10の縦搬送が完了すると、プルユニット22のプルユニット駆動部224が逆作動してスライドブラケット222が最下流位置20dの栽培ベンチ10下方の待機位置(実線の位置)まで戻る。このとき、スライドブラケット222が待機位置へ戻る途中で、揺動係合部材223の先端係合部225は、受継ぎ部材402(図12参照)上の栽培ベンチ10の移動方向末端側(後側)の横枠部材111と、最下流位置20dの栽培ベンチの移動方向先端側(前側)の横枠部材111に順に接触する。揺動係合部材223は、横枠部材111との接触により、図16に破線で示すように、先端係合部225が少し下がった状態に揺動し、スライドブラケット222の待機位置側への移動にともなって横枠部材111下方を通過した後、先端係合部225が上昇し、待機位置では実線の位置に戻る。図示は省略するが、上記のように揺動係合部材223が揺動したことを検出する縦搬送センサ704(図18参照)がスライドブラケット222に配設されている。
また、スライドブラケット222が待機位置まで戻ったことを検出するプル戻りセンサ706(図18参照)がガイド部材221に配設されている。プル戻りセンサ706は例えばプルユニット駆動部224に設けられた磁気近接センサやリミットスイッチ、光センサ等で構成される。プル戻りセンサ706の出力によってスライドブラケット222が待機位置まで戻ったことが検出されると、プルユニット駆動部224は作動を停止して、コントローラ600(図18参照)に搬送開始信号が入力されるまで待機する。このようにして、プルユニット22は、縦案内装置20の最下流位置20dにある栽培ベンチ10を横搬送装置40の横搬送上流側領域40uの受継ぎ部材402上へ搬送する。
本実施形態では、図1において手前側の横搬送装置40Aの横搬送下流側領域40d手前の空間が栽培ベンチ10上の栽培植物等に対する作業場所として設定される。作業者は、作業場所において種々の作業(例えば果実摘み、花がら摘み、草取り、剪定、プランタ2の交換等)を行う。また、奥側の横搬送装置40Bの搬送方向(横方向)の略中央部には、横搬送中の栽培ベンチ10上の栽培植物に対して潅水を行う潅水装置31と害虫防除用の薬剤散布を行う薬剤散布装置32が配置されている。
薬剤散布装置32は、作業場所から最も離れた位置で薬剤散布を行うので、作業場所で作業中の作業者に対する薬剤の悪影響を少なくすることができる。潅水装置31による植物への潅水は、特に作業者に対して悪影響を及ぼすことはないので、奥側の横搬送装置40Bと手前側の横搬送装置40Aの両方の略中央部に潅水装置31を設けてもよい。
次に、本実施形態の移動栽培装置に備えられた制御装置(以下、コントローラという)による栽培ベンチ搬送制御の例を図18から図20を参照しながら説明する。図18は、制御系の例を示すブロック図であり、図19は栽培ベンチ搬送制御の例を示すフローチャートである。図20は、収穫作業時のタイムチャート例を示し、(A)は実施形態のタイムチャート、(B)は参考構成例のタイムチャートを示す。
図18に示すように、移動栽培装置1に備えられたコントローラ600に、横搬送完了センサ701、プッシュ完了センサ702、プッシュ戻りセンサ703、縦搬送センサ704、プル完了センサ705、及びプル戻りセンサ706の各出力信号(検出信号)が入力される。これらのセンサについては、既に説明したとおりである。また、栽培ベンチ10の搬送開始信号を出力する起動スイッチ707の信号と、栽培ベンチ10の搬送停止信号を出力する停止スイッチ708の信号もコントローラ600に入力される。
一方、コントローラ600から出力される制御信号が、既に説明した横搬送装置40の横駆動部50の横搬送電動モータ501、昇降装置43(エアシリンダ432)、プッシュユニット21のプッシュユニット電動モータ211、プルユニット22のプルユニット駆動部224、潅水装置31及び薬剤散布装置32に与えられる。実際には、それぞれの駆動回路にコントローラ600からの制御信号が与えられるが、コントローラ600に各駆動回路が含まれていると考えることもできる。
また、コントローラ600は、例えば、各種演算処理や制御を実行するCPU(Central Processing Unit)や、制御プログラムや各種データを記憶したROM(Read Only Memory)、制御プログラムや各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory
)、入力インターフェース等を有している。コントローラ600は、所定の制御プログラムに従って、各センサからの出力信号(検出信号)に基づいて、各電動モータやエアシリンダ等(の駆動回路)を制御する。栽培ベンチ搬送制御の一例を図19のフローチャート及び図20(A)のタイムチャートに基づいて説明する。
本実施形態の移動栽培装置1は、図1及び図9に示すように、横搬送装置40の横搬送下流側領域40dで栽培ベンチ10が停止している状態をベンチ搬送待機状態としている。より詳細には、移動栽培装置1は、受継ぎ部材402が上昇位置(図9及び図12参照)に位置しており、栽培ベンチ10が横搬送装置40の横搬送下流側領域40dの受継ぎ部材402上で停止している状態をベンチ搬送待機状態としている。また、縦案内装置20の最下流位置20dに栽培ベンチ10が配置されている。
図19に示すように、移動栽培装置1がベンチ搬送待機状態にあるときに作業者によって起動スイッチ707が押されると、起動スイッチ707の搬送開始信号がコントローラ600に入力される(ステップS1)。コントローラ600は、搬送開始信号の入力により、ベンチ搬送待機状態を解除して栽培ベンチ10の搬送を開始すべく、プッシュユニット電動モータ211とプルユニット駆動部224を作動させる(ステップS2)。
プッシュユニット電動モータ211の作動によりプッシュユニット21が作動し、横搬送下流側領域40dの受継ぎ部材402から縦案内装置20の最上流位置20uへの栽培ベンチ10の移動が開始される。また、プルユニット駆動部224の作動によりプルユニット22が作動し、横搬送上流側領域40uで縦案内装置20の最下流位置20dから受継ぎ部材402への栽培ベンチ10の移動が開始される。
図1及び図9に示すように、ベンチ搬送待機状態にあるときは、プルユニット22の作動により縦案内装置20の最下流位置20dの栽培ベンチ10が横搬送上流側領域40uの受継ぎ部材402上へ移動可能な状態になっている。また、プッシュユニット21の作動により横搬送下流側領域40dの受継ぎ部材402上の栽培ベンチ10が縦案内装置20の最上流位置20uに移動可能な状態になっている。したがって、この実施形態の移動栽培装置1は、コントローラ600に搬送開始信号が入力された後、直ちに、プッシュユニット21による栽培ベンチ10の玉突き状の搬送、及びプルユニット22による栽培ベンチ10の移動を開始できる(図20(A)及び(B)参照)。
ここで、作業者によって例えば果実摘みや花がら摘みといった作業が行われる作業場所が例えば横搬送装置40A(図1参照)の横搬送上流側領域40u及び横搬送下流側領域40dに面する領域(例えば手前側)であるとする。この場合、作業者は、縦案内装置20の最下流位置20dから横搬送装置40の横搬送上流側領域40uの受継ぎ部材402へ移動中の又は移動完了した栽培ベンチ10上の栽培植物等に対して作業を行える。したがって、作業者の待ち時間を短縮できる(図20(A)の「作業場所、横搬送上流側及び下流側」参照)。なお、横搬送上流側領域40uに面する領域に関して、すべての領域が作業場所とされる必要はなく、横搬送上流側領域40uに面する領域のうち横搬送下流側領域40dの一部分の領域が作業場所とされてもよい。この場合、作業者は、縦案内装置20から横搬送装置40へ移動してくる栽培ベンチ10上の栽培植物等のうち横搬送下流側領域40d側に位置する栽培植物等に対して作業が可能である。
この実施形態の移動栽培装置1では、プッシュユニット21による複数の栽培ベンチ10の玉突き状の搬送は、プルユニット22による1台のみの栽培ベンチ10のみの搬送に比べて、低速度で行われる。換言すれば、プルユニット22による栽培ベンチ10の搬送は、同時に作動開始されたプッシュユニット21による栽培ベンチ10の搬送よりも早く完了する。ただし、栽培ベンチ10のプッシュユニット21による搬送とプルユニット22による搬送に関して、プルユニット22による搬送の方が早く完了してもよいし、同時に完了してもよい。
プッシュユニット21及びプルユニット22の作動開始後、プル完了センサ705の出力によってスライドブラケット222(図16参照)がプル完了位置まで移動したこと、つまりプルユニット22による栽培ベンチ10の受継ぎ部材402への移動が完了したことが検出されると(ステップS3:Yes)、コントローラ600はプルユニット駆動部224の作動を停止させる(ステップS4)。
その後、プッシュ完了センサ702の出力によってプッシュ板部材217(図15参照)がプッシュ完了位置まで移動したこと、つまりプッシュユニット21による縦案内装置20での複数の栽培ベンチ10の縦搬送が完了したことが検出されると(ステップS5:Yes)、コントローラ600はプッシュユニット電動モータ211の作動を停止させる(ステップS6)。プッシュユニット21による複数の栽培ベンチ10の玉突き状の搬送の完了により、縦案内装置20上の栽培ベンチ配列の先頭にある栽培ベンチ10は最下流位置20dに配置される。
コントローラ600は、プッシュ板部材217(図15参照)及びスライドブラケット222(図16参照)を待機位置へ戻すべく、プッシュユニット電動モータ211を逆転させ、プルユニット駆動部224を逆作動させる(ステップS7)。プッシュユニット21及びプルユニット22による次回の栽培ベンチ10の搬送に備えるためである。ここで、プッシュユニット電動モータ211の逆転時の回転速度は正転時(栽培ベンチ10搬送時)よりも速いことが好ましい。また、プルユニット駆動部224の逆作動によるスライドブラケット222の移動速さは正作動時(栽培ベンチ10搬送時)よりも速いことが好ましい。
また、上述のように、プルユニット22は比較的小さな駆動力で済むので、プルユニット駆動部224は、プッシュユニット21におけるプッシュ板部材217の移動速度よりもスライドブラケット222を速い速度で移動できる構成を有する。つまり、プッシュユニット21のプッシュ板部材217が待機位置に到達するよりも先に、プルユニット22のスライドブラケット222が待機位置に到達する。プル戻りセンサ706の出力によってスライドブラケット222が待機位置まで移動したこと、つまりプルユニット22が待機状態に戻ったことが検出されると(ステップS8:Yes)、コントローラ600はプルユニット駆動部224の逆作動を停止させる(ステップS9)。
なお、プルユニット22において、プルユニット駆動部224の逆作動によりスライドブラケット222が最下流位置20dの栽培ベンチ10下方の待機位置(図16の実線の位置)へ移動する途中で、揺動係合部材223の先端係合部225は、受継ぎ部材402(図12参照)上の栽培ベンチ10の移動方向末端側(後側)の横枠部材111と、最下流位置20dの栽培ベンチの移動方向先端側(前側)の横枠部材111に順に接触し、先端係合部225が揺動する。この先端係合部225の2回の揺動を縦搬送センサ704が検出することにより、受継ぎ部材402上と縦案内装置20の最下流位置20dに栽培ベンチ10がそれぞれ配置されたことを確認できる。
また、ステップS2からS4で栽培ベンチ10とともに横搬送上流側領域40uへ移動されたスライドブラケット222は栽培ベンチ10の下方に位置しており、栽培ベンチ10を下降させる際の妨げになるが、ステップS7からS9でスライドブラケット222が待機位置に移動されたことにより、栽培ベンチ10が下降可能な状態になる。コントローラ600は昇降装置43を作動させて、受継ぎ部材402を退避位置(図13参照)まで下降させる(ステップS10)。これにより、図10に示すように、栽培ベンチ10の横枠部材111の底面側が横搬送装置40の横搬送上流側領域40uで案内輪48及び駆動ローラ503に支持され、栽培ベンチ10を駆動ローラ503によって横搬送可能な状態となる。なお、作業者の作業場所が横搬送上流側領域40uに面する領域を含む場合、作業者は下降移動中の栽培ベンチ10上の栽培植物等に対して作業を行なえる。
コントローラ600は、栽培ベンチ10を横搬送装置40の横搬送上流側領域40uから横搬送下流側領域40dへ搬送させるべく、横搬送装置40の横搬送電動モータ501を作動させる(ステップS11)。この時点で、プッシュユニット21のプッシュユニット電動モータ211は上記ステップS7で開始した逆転動作を継続中であり、プッシュ板部材217は待機位置(図15の実線の位置)に戻っておらず、プッシュユニット21は待機状態(栽培ベンチ搬送前の状態)になっていない。コントローラ600は、栽培ベンチ10がプッシュユニット21上を通過するときにはプッシュ板部材217が待機位置に戻ってプッシュユニット21が待機状態になっていることを見越して栽培ベンチ10の横搬送を開始する(図20(A)参照)。
横搬送電動モータ501が作動されて栽培ベンチ10の横搬送が開始された後、しばらくすると(例えばおよそ2秒後)、栽培ベンチ10の横移動方向先端部(横搬送下流側領域40d側)が横搬送下流側領域40dに進入する。例えば横搬送下流側領域40dに面する領域のみが作業者の作業場所である場合、作業者は栽培ベンチ10上で移動方向先端側に載置された栽培植物等に対して作業を開始できるようになる。なお、作業者の作業場所が横搬送上流側領域40uに面する領域を含む場合、横搬送上流側領域40uを移動中の栽培ベンチ10部分に載置された栽培植物等に対して作業者が作業を行うことはもちろん可能である。
栽培ベンチ10の横搬送が開始された後、プッシュユニット21のプッシュ板部材217が待機位置(図15の実線の位置)まで戻ったことをプッシュ戻りセンサ703が検出すると(ステップS12)、コントローラ600はプッシュユニット電動モータ211の逆転動作を停止させる(ステップS13)。プッシュ板部材217は栽培ベンチ10の横移動方向先端部がプッシュユニット21上に到達する前に待機位置に戻される。これにより、プッシュユニット21が待機状態(栽培ベンチ10搬送前の状態)になり、プッシュユニット21上を栽培ベンチ10が通過可能な状態になる。また、栽培ベンチ10の横搬送期間中、受継ぎ部材402は退避位置(図13参照)に配置されている。
横搬送装置40による栽培ベンチ10の横搬送が続けられ、栽培ベンチ10の横移動方向先端部が待機状態のプッシュユニット21上を通過して横搬送完了センサ701の配置位置に到達する。横搬送完了センサ701が栽培ベンチ10の到達を検出すると(ステップS14)、コントローラ600は横搬送電動モータ501の作動を停止させる(ステップS15)。なお、コントローラ600は、栽培ベンチ10の横搬送期間中(ステップS11からS15の間)に、奥側の横搬送装置40B(図1参照)の略中央部に配置された潅水装置31及び薬剤散布装置32を適宜作動させて、横移動中の栽培ベンチ10上の栽培植物に対して潅水や薬剤散布を行うことが可能である。
横搬送下流側領域40dへの栽培ベンチ10の横搬送が完了すると、横搬送下流側領域40dの一方の受継ぎ部材402の上方に一対の遊転輪14が配置され、他方の受継ぎ部材402の上方に一対の遊転輪15が配置された状態になる(図2参照)。コントローラ600は昇降装置43を作動させ、受継ぎ部材402を上昇位置まで移動する(ステップS16)。この状態でコントローラ600による一連の栽培ベンチ搬送制御は終了し、移動栽培装置1はベンチ搬送待機状態になる(図1及び図9参照)。なお、栽培ベンチ10の上昇移動中に栽培ベンチ10上の栽培植物等に対して作業者が作業を行うことは可能である。また、ベンチ搬送待機状態中に、横搬送下流側領域49dで上昇位置に位置された受継ぎ部材402上にある栽培ベンチ10上の栽培植物等に対して作業者が作業を行うことはもちろん可能である。
この後、作業者が横搬送装置40の横搬送下流側領域40dの手前の作業場所での作業を終えて、又は横搬送装置40A(図1参照)上を栽培ベンチ10が移動中に作業を終えて、起動スイッチ707を押すと、再びステップS1からの制御が繰り返されることになる。
また、コントローラ600は、起動スイッチ707からの搬送開始信号の入力の代わりに、コントローラ600の内部又は外部で計測される所定時間が経過すれば、自動的にステップS1からS16の制御を実行するようにしてもよい。この所定時間は、栽培ベンチ10に対する作業に必要な時間を考慮して設定されるが、変更可能であることが好ましい。この場合は、作業者が栽培ベンチ10に対する作業を完了した後に起動スイッチ707を押さなくても、自動的にステップS1からの制御が始まり、次の作業対象の栽培ベンチ10が縦案内装置20の最下流位置20dから横搬送装置40の横搬送上流側領域40uを介して横搬送下流側領域20dに運ばれてくる。なお、栽培ベンチ10の搬送中に不具合が生じたときには、作業者により停止スイッチ708が押され、コントローラ600に搬送停止信号が入力されて、栽培ベンチ10の搬送が停止される。
このように、この実施形態の移動栽培装置1では、ベンチ搬送待機状態において、横搬送装置40の横搬送下流側領域40dに栽培ベンチ10が停止されているので、栽培ベンチ10の搬送開始直後に、横搬送装置40の横搬送下流側領域40dにある栽培ベンチ10が縦案内装置20の最上流位置20uへ搬送されるとともに、縦案内装置20の最下流位置20dにある栽培ベンチ10が横搬送装置40の横搬送上流側領域40uへ搬送される。より具体的には、ベンチ搬送待機状態において、受継ぎ部材402は上昇位置に配置され、横搬送下流側領域40dの受継ぎ部材402上に栽培ベンチ10が停止されている。そして、栽培ベンチ10の搬送開始直後に、横搬送下流側領域40dの受継ぎ部材402上にある栽培ベンチ10が縦案内装置20の最上流位置20uへ搬送されるとともに、縦案内装置20の最下流位置20dにある栽培ベンチ10が横搬送装置40の横搬送上流側領域40uの受継ぎ部材402上へ搬送される。上述のように、作業者は、栽培ベンチ10が縦案内装置20から横搬送装置40へ移動中に、例えば果実摘みや花がら摘みといった作業を開始できる。したがって、この実施形態の移動栽培装置1は、作業者の作業開始時期を早くでき、作業者の待ち時間を短縮できる。
また、この実施形態の移動栽培装置1は、横搬送下流側領域40dにある栽培ベンチ10を縦案内装置20へ移動させて縦案内装置20上で複数の栽培ベンチを玉突き状に搬送する一対のプッシュユニット21(21A,21B)と、縦案内装置20の最下流位置20dにある栽培ベンチ10を横搬送装置40の横搬送上流側領域40uへ移動させる一対のプルユニット22(22A,22B)を備え、プッシュユニット21とプルユニット22の作動を同時に実行する(図19のステップS2)。これにより、この実施形態の移動栽培装置1は、例えばプッシュユニット21の作動により縦案内装置20上の栽培ベンチ配列の先頭にある栽培ベンチ10が縦案内装置20の最下流位置20dに配置された後にその栽培ベンチ10がプルユニット22により横搬送装置40へ移動される参考構成例(図20(B)参照)に比べて、縦案内装置20にある栽培ベンチ10が横搬送装置40へ移動開始される時期を早くできる。また、作業者は栽培ベンチ10が縦案内装置20から横搬送装置40へ移動中に作業を開始できる。したがって、この実施形態の移動栽培装置1は、作業者の作業開始時期を早くでき、ひいては作業者の待ち時間を短縮できる。また、この実施形態の移動栽培装置1は、プッシュユニット21とプルユニット22の作動を同時に実行するので、上記参考構成例に比べて、プッシュユニット21が作動してから横搬送装置40への栽培ベンチ10の移動が完了するまでの時間を短縮でき、ひいては栽培ベンチ10の循環に要する時間を短縮できる。
なお、図20(B)の参考構成例では、プッシュユニット21の作動により縦案内装置20の最下流位置20dに栽培ベンチ10が配置された後にプルユニット22が作動される構成なので、プッシュユニット21の作動時には縦案内装置20の最下流位置20dに栽培ベンチ10が配置されていない。つまり、この参考構成例において、横搬送装置40A,40B上に栽培ベンチ10がそれぞれ載置されている状態では、縦案内装置20A,20Bの各最下流位置20dは、それぞれ栽培ベンチ10が無い空き状態になっている。
これに対して、この実施形態の移動栽培装置1では、上記参考構成例で空き状態になっていた縦案内装置20A,20Bの各最下流位置20dに栽培ベンチ10がそれぞれ追加配置されている。つまり、この実施形態の移動栽培装置1では、横搬送装置40A,40B上に栽培ベンチ10がそれぞれ載置されている状態で、縦案内装置20A,20Bの各最上流位置20uから最下流位置20dまでのすべての領域に栽培ベンチ10が配列されている。これにより、この実施形態の移動栽培装置1はプッシュユニット21とプルユニット22の作動を同時に実行できる。より具体的には、プッシュユニット21の作動による横搬送装置40の横搬送下流側領域40dから縦案内装置20の最上流位置40uへの1つの栽培ベンチ10の移動及び縦案内装置20上での複数の栽培ベンチ10の玉突き状の搬送と、プルユニット22の作動による縦案内装置20の最下流位置20dから横搬送装置40の横搬送上流側領域40uへの1つの栽培ベンチ10の移動を同時に開始できる。なお、プッシュユニット21による縦案内装置20上での複数の栽培ベンチ10の玉突き状搬送の完了により、縦案内装置20上での栽培ベンチ配列の先頭の栽培ベンチ10が最下流位置20dに配置される。
さらに、例えば作業者により栽培ベンチ10への作業が行われる作業場所が横搬送装置40の横搬送上流側領域40uを含む場合、この実施形態の移動栽培装置1では、横搬送装置40上に栽培ベンチ10が載置されている状態で、次の作業対象となる栽培ベンチ10が縦案内装置20の最下流位置20dに配置されているので、最下流位置20dが空き状態になっている上記参考構成例と比較して、次の作業対象となる栽培ベンチ10と作業場所との間の距離が短くなっている。したがって、この実施形態の移動栽培装置1では、上記参考構成例と比較して、作業者は次の栽培ベンチ10に対する作業を早く開始でき、ひいては作業者の待ち時間が短縮される。
また、この実施形態の移動栽培装置1は、プッシュユニット21の作動により横搬送下流側領域40dにある栽培ベンチ10を縦案内装置20へ移動させた後、プッシュユニット21が栽培ベンチ搬送前の状態に戻る動作中に、横搬送装置40による栽培ベンチ10の横搬送を開始する(図19のステップS11)。したがって、この実施形態の移動栽培装置1は、プッシュユニット21が栽培ベンチ搬送前の状態に戻った後に横搬送装置40による横搬送が開始される参考構成例に比べて、栽培ベンチ10の横搬送開始時期を早めることができる。つまり、この実施形態の移動栽培装置1は、栽培ベンチ10が横搬送装置40の横搬送上流側領域40uに配置されてから横搬送下流側領域40dへ到達するまでの時間を短縮でき、ひいては栽培ベンチ10の循環に要する時間を短縮できる。
また、この実施形態の移動栽培装置1は、上記参考構成例に比べて、栽培ベンチ10の横搬送開始時期を早めることにより、栽培ベンチ10が横搬送装置40の横搬送上流側領域40uに配置されてから横搬送されて横搬送下流側領域40dに進入を開始するまでの時間を短縮できる。例えば作業者の作業場所を横搬送装置40の横搬送下流側領域40dに面する領域のみとする場合、作業者は横搬送上流側領域40uから横搬送下流側領域40dに進入してきた栽培ベンチ10上の栽培植物等に対して作業を開始できる。したがって、この実施形態の移動栽培装置1は、栽培ベンチ10の横搬送開始時期を早めることにより作業者の作業可能期間の開始時期を早めることができ、ひいては作業者の待機時間を短縮できる。
このように、この実施形態の移動栽培装置1は、作業者の待ち時間を短縮できるので、栽培ベンチ10上の栽培植物等に対する作業者の作業開始時期を早め、ひいては作業終了時期を早め、さらには栽培ベンチ10の搬送待機時間を短縮できる。つまり、この実施形態の移動栽培装置1は、作業者の待ち時間を短縮することにより、当該待ち時間を含む作業者の総作業時間、換言すれば作業者の労働時間や拘束時間を短縮できる。
次に、図1、図18、図21から図23を参照して移動栽培装置1の変形例及び栽培ベンチ搬送制御の他の例を説明する。図23は、収穫作業時のタイムチャート例を示し、(C)は変形例のタイムチャート、(B)は参考構成例のタイムチャートを示す。図23において、(B)のタイムチャートは図20(B)のものと同じである。なお、この変形例を説明するにあたり、便宜上、各装置や部材を示す符号について上記実施形態と同じ符号を使用する。この実施形態の移動栽培装置1は、図1及び図21に示すように、横搬送装置40の横搬送下流側領域40dで栽培ベンチ10が停止している状態をベンチ搬送待機状態とする。ここで、受継ぎ部材402は下降位置(図2及び図13参照)に位置している。また、縦案内装置20の最下流位置20dに栽培ベンチ10が配置されている。
図22に示すように、移動栽培装置1がベンチ搬送待機状態にあるときに作業者によって起動スイッチ707が押されると、起動スイッチ707の搬送開始信号がコントローラ600に入力される(ステップS1)。コントローラ600は昇降装置43を作動させ、受継ぎ部材402を上昇位置まで移動する(ステップS1−1)。これにより、移動栽培装置1は、上記実施形態のベンチ搬送待機状態と同じ状態になる。なお、上記実施形態と同様に、起動スイッチ707からの搬送開始信号の入力の代わりに、コントローラ600の内部又は外部で計測される所定時間が経過すれば、自動的にステップS1が実行されてもよい。
続いて、コントローラ600は、図19を参照しながら説明した上記栽培ベンチ搬送制御のステップS2からS10と同様の制御を行う。図23(C)も参照しながら説明すると、プッシュユニット21及びプルユニット22が同時に作動され、横搬送下流側領域40dの受継ぎ部材402上の栽培ベンチ10が縦案内装置20の最上流位置20uへ移動され、最下流位置20dの栽培ベンチが横搬送上流側領域40uの受継ぎ部材402上へ移動される(ステップS2からS6)。プッシュユニット電動モータ211が逆転されると同時にプルユニット駆動部224が逆作動され(ステップS7)、プルユニット22が待機状態に戻った後(ステップS8,S9)、昇降装置43が作動されて、受継ぎ部材402が退避位置(図13参照)まで下降される(ステップS10)。
その後、プッシュユニット21のプッシュ板部材217が待機位置まで戻ったことをプッシュ戻りセンサ703が検出すると(ステップS10−1)、コントローラ600はプッシュユニット電動モータ211の逆転動作を停止させる(ステップS10−2)。続いて、コントローラ600は横搬送装置40による栽培ベンチ10の横搬送を開始し(ステップS11)、その後、横搬送完了センサ701が栽培ベンチ10の到達を検出すると(ステップS14)、横搬送電動モータ501の作動を停止させる(ステップS15)。この状態で、この実施形態におけるコントローラ600による一連の栽培ベンチ搬送制御は終了し、移動栽培装置1はベンチ搬送待機状態になる(図1及び図21参照)。
この実施形態は、プッシュユニット21とプルユニット22の作動を同時に実行するので(図23(C)参照)、図1から図19を参照して説明した上記実施形態と同様に、プッシュユニット21の作動により縦案内装置20上の栽培ベンチ配列の先頭に位置する栽培ベンチ10が最下流位置20dに配置された後にプルユニット22の作動により最下流位置20dにある栽培ベンチ10が横搬送装置40へ移動される参考構成例(図20(B)参照)に比べて、縦案内装置20の最下流位置20dから横搬送装置40への栽培ベンチ10の搬送開始時期を早くして作業者の作業開始時期を早くでき、ひいては作業者の待ち時間を短縮できる。
なお、この実施形態において、図1から図20を参照して説明した上記実施形態と同様に、昇降装置43の下降動作により受継ぎ部材402を退避位置へ下降させた後(ステップS10)、プッシュユニット21が栽培ベンチ10搬送前の状態に戻る前に横搬送装置40による栽培ベンチ10の横搬送を開始してもよい(図19のステップS11からS13参照)。これにより、図1から図19を参照して説明した上記実施形態と同様に、プッシュユニット21が栽培ベンチ10搬送前の状態に戻った後に横搬送装置40による横搬送が開始される構成に比べて、栽培ベンチ10の横搬送開始時期を早めて、栽培ベンチ10が横搬送装置40の横搬送上流側領域40uに配置されてから横搬送下流側領域40dへ到達するまでの時間を短縮でき、ひいては栽培ベンチ10の循環に要する時間を短縮できる。
また、この実施形態において、作業場所が例えば横搬送装置40A(図1参照)の横搬送上流側領域40u及び横搬送下流側領域40dに面する領域(例えば手前側)である場合、図1から図20を参照して説明した上記実施形態と同様に、作業者の待ち時間を短縮できる(図23(C)の「作業場所、横搬送上流側及び下流側」参照)。
以上に説明した本願発明の実施形態はあくまで一例であって、各部の構成は図面を参照しながら説明した実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では図1に示したように複数の栽培ベンチ10が平面視で反時計回りに循環するように構成されているが、横搬送装置40A,40Bによる横搬送の方向を逆にして、プッシュユニット21A,21Bとプルユニット22A,22Bの配置を逆にすれば、複数の栽培ベンチ10の循環方向を時計回りに変更することができる。
また、上記実施形態では、横搬送装置40は、縦案内装置20に接続される受継ぎ部材402と、受継ぎ部材402が縦案内装置20に接続される上昇位置と下方に退避する退避位置との間で受継ぎ部材402を昇降駆動する昇降装置43を備えているが、本願発明の移動栽培装置の構成はこれに限定されない。本願発明の移動栽培装置は、例えば特許文献1に開示されているように、横搬送装置と縦案内装置の間の栽培ベンチの移動に関して、栽培ベンチを昇降させない構成であってもよい。
また、上記実施形態では、移動栽培装置1はプルユニット22を備えているが、本発明の移動栽培装置は上記プルユニットを備えていなくてもよい。この場合、縦案内装置20の最下流位置20dから横搬送装置40の横搬送上流側領域40uへの栽培ベンチ10の移動は、例えばプッシュユニット21による縦案内装置20上での複数の栽培ベンチ10の玉突き状の搬送によって行われるようにすればよい。
また、上記実施形態の説明では、作業者によって例えば果実摘みや花がら摘みといった作業が行われる作業場所は横搬送装置40A(図1参照)に面する領域とされているが、当該作業場所は横搬送装置40Bに面する領域であってもよい。また、当該作業場所は横搬送装置40Aに面する領域と横搬送装置40Bに面する領域の両領域であってもよい。この場合、栽培ベンチ10の長手側面の両側から作業ができるように栽培ベンチ10上の栽培植物等が配置及び育成されていることが好ましい。例えば栽培ベンチ10上の栽培植物がイチゴである場合、株ごとに花芽が伸長する向きを調節して、栽培ベンチ10の一方の長辺側に果実を付ける株と、他方の長辺側に果実を付ける株を育成する。これにより、横搬送装置40A側での作業対象となる株と横搬送装置40B側での作業対象となる株を同一栽培ベンチ10上で分けて配置及び育成でき、同一株に対して横搬送装置40A側と横搬送装置40B側の両方で作業されることによる作業効率低下を防止できる。
また、上記実施形態では、プッシュユニット21の作動により縦案内装置20上で複数の栽培ベンチ10を玉突き状に搬送しているが、本発明の移動栽培装置の構成はこれに限定されない。本発明の移動栽培装置は、例えば、特許文献2に開示されているように、縦案内装置上に配列された複数の栽培ベンチのそれぞれに力を加えて移動させる構成であってもよい。
また、本発明の移動栽培装置において、プッシュユニットは栽培ベンチを玉突き状に搬送する構成に限定されない。例えば、縦案内装置上の複数の栽培ベンチを横搬送装置の横搬送上流側領域へ向けて移動させる縦搬送機構を別途設け、プッシュユニットは、横搬送装置の横搬送下流側領域にある栽培ベンチを縦案内装置における栽培ベンチ配列の最上流位置へ移動させる構成であってもよい。この場合、上記縦搬送機構は、最上流位置から最下流位置まで栽培ベンチを搬送させる構成であってもよいし、さらに栽培ベンチ配列の最下流位置にある栽培ベンチを横搬送機構の横搬送上流側へ移動させる構成であってもよい。前者の場合、最下流位置から横搬送上流側領域への栽培ベンチの移動は、例えば上記実施形態で説明したプルユニットにより実現される。なお、上記縦搬送機構の駆動機構の構成は特に限定されるものではなく、例えば特許文献2に開示された縦移送機構と同様の構成により実現されてもよいし、コンベヤ等の運搬装置により実現されてもよい。
また、本発明の移動栽培装置における栽培ベンチの構成は、上記実施形態の栽培ベンチ10の構成に限定されない。例えば、栽培ベンチは、平面視でおおよそベンチ全領域を占める横長矩形の金属板を有し、その金属板上に栽培植物等が配置される構成であってもよい。このような金属板は例えば板金加工により形成されたものである。