JP6522778B2 - 癌検査システム及び癌検査評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、線虫を用いた癌検査を行う癌検査システム及び癌検査評価方法の技術に関する。
線虫が癌患者の尿に対して誘引行動をし、健常者の尿に対して忌避行動を示すことを利用した癌検査が提案されている。
特許文献1には、線虫の嗅覚を用いた癌検出方法が記載されている。
国際公開第2015/088039号
特許文献1に記載の技術のような線虫を使用した癌検査を行う際において、品質保証が重要になってくることが考えられる。すなわち、線虫という生物を使用するため、線虫個体の特性等が検査結果に関係してくることから、検査に使用された線虫が本当に検査にふさわしい個体(例えば、線虫の活動性等)であったのか否かを確かめることが重要になってくる。
要するに、線虫を用いた癌検査には、線虫の培養条件や、走性条件だけを管理しても、使用している線虫が検査に適していなければ、検査結果の信頼性が低くなってしまう。
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、癌検査に用いられた線虫の品質を、簡易に確認することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、同一の培養単位から複数の解析単位に分注された線虫群が、癌検査のための検査走性解析用の線虫群である検査解析用線虫群と、線虫の品質保証解析のための品質走性解析用の線虫群である品質解析用線虫群と、に分けられており、前記線虫がどのような走性行動を行うかが分かっているイソアミルアルコールに対する前記品質解析用線虫群の走性行動に関する情報を出力する品質解析部と、前記品質解析部から出力される情報を基に、前記線虫の品質に関する情報を出力する品質分析部と、被検者から提供された検体に対する前記検査解析用線虫群の走性行動に関する情報を出力する検査解析部と、前記検査解析部から出力される情報を基に、前記線虫の前記検体に対する誘引行動及び忌避行動に関する走性結果情報を生成し、前記走性結果情報を基に、前記検体を提供した被験者における前記癌検査の結果を出力する検査分析部と、を有することを特徴とする。
その他の解決手段については、実施形態中において適宜記載する。
本発明によれば、癌検査に用いられた線虫の品質を、簡易に確認することができる。
本実施形態に係る癌検査システムの構成例を示す図である。 本実施形態に係る品質解析装置の構成例を示す機能ブロック図である。 本実施形態に係る品質分析装置の構成例を示す機能ブロック図である。 本実施形態に係る検査解析装置の構成例を示す機能ブロック図である。 本実施形態に係る検査分析装置の構成例を示す機能ブロック図である。 本実施形態に係る品質解析装置の具体的な構成の一例を示す図(その1)である。 本実施形態に係る品質解析装置の具体的な構成の一例を示す図(その2)である。 本実施形態に係る検査解析データの例を示す図である。 本実施形態に係る培養条件データの構成例を示す図である。 本実施形態に係る走性条件データの構成例を示す図である。 本実施形態に係る品質解析データの構成例を示す図である。 本実施形態に係る線虫データの構成例を示す図である。 フェレ径を示す図である。 本実施形態に係る走性解析処理の手順を示すフローチャートである。 本実施形態に係る線虫の走性判別について説明する図である。 本実施形態に係る検査結果通知書の例を示す図である。
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、各図面において、共通の要素には共通の符号を付して説明を適宜省略する。
[癌検査システム]
図1は、本実施形態に係る癌検査システムの構成例を示す図である。
本実施形態に係る癌検査システムZでは、被検者の尿(被験者から提供された検体)に対する線虫の走性解析を行い、線虫の誘引・忌避行動(走性行動)を基に癌に対する陽性・陰性を検査する。また、イソアミルアルコールのように尿に代わる標準物質を用いて線虫の走性解析を行い、線虫の誘引・忌避行動を基に癌検査に用いられた線虫が検査に適したものであるか否かを判定する品質保証のための解析を行う。以下、被検者の尿を用い、被検者の癌に対する陽性・陰性を検査するための走性解析を検査走性解析と称し、イソアミルアルコール等の尿の代替物(標準物質)を用いて、癌検査に用いられた線虫が検査に適したものであるか否かを判定するための走性解析を品質走性解析と称する。
標準物質は、線虫が誘引行動を行うか、忌避行動を行うかが分かっている(すなわち、線虫がどのような走性行動を行うかが分かっている)物質であり、本実施形態では、線虫が誘引行動を行うことが分かっているイソアミルアルコールを用いる。なお、本実施形態では、品質走性解析における標準物質としてイソアミルアルコールが用いられているが、これに限らず、線虫が誘引行動を行うか、忌避行動を行うかが分かっている薬品であればよい。
本実施形態における品質走性解析では、イソアミルアルコールに対する線虫の走性特性を分析することで、癌検査に用いられた線虫が適正なものであるか否かを判定する。線虫は、イソアミルアルコールに対して、誘引行動を行うことが知られているので、イソアミルアルコールに対する線虫の誘引行動を解析することで、線虫の品質を確認することができる。
なお、本実施形態では、「線虫」とは特に断りのない限り「線虫群」を指すものとする。
癌検査システムZは、品質解析装置(品質解析部)1、品質分析装置(品質分析部)2、検査解析装置(検査解析部)3、検査分析装置(検査分析部)4を有する。
まず、1つの線虫培養シャーレ5a(培養単位)から、5つのシャーレ5b〜5f(複数の解析単位)に線虫が分注される。5つのシャーレ5b〜5fに分注された線虫のうち、4つのシャーレ5b〜5e(線虫)が検査走性解析用(検査解析用線虫群)として検査解析装置3に導入される。また、1つのシャーレ5f(線虫)が品質走性解析用と(品質解析用線虫群)して品質解析装置1に導入される。なお、1つの線虫培養シャーレ5aから、5つのシャーレ5b〜5fに線虫が分注され、5つのシャーレ5b〜5fのうち、4つのシャーレ5b〜5eが検査走性解析用となっているが、これに限らない。なお、検査走性解析用のシャーレ5b〜5eを、検査用シャーレ51と適宜称する。つまり、同一条件で培養された線虫を、検査走性解析用と、品質走性解析用に分けることで、癌検査に用いられた線虫の品質(生きのよさ等といった活動性)を確認することができる。
品質解析装置1は、品質走性解析を行い、得られた結果を品質分析装置2へ送信する。
品質分析装置2は、品質解析装置1から取得した情報を基に、検査に用いられた線虫の品質に関する情報を分析する。
検査解析装置3は、検査走性解析を行い、得られた結果を検査分析装置4に送信する。
検査分析装置4は、検査解析装置3から取得した情報を基に、誘引行動及び忌避行動に関する情報を分析し、癌に対する陽性・陰性を判定する。
品質分析装置2や、検査分析装置4は、検査の結果が記載され、被検者に通知される検査結果通知書900を出力する。
[品質解析装置]
図2は、本実施形態に係る品質解析装置の構成例を示す機能ブロック図である。
品質解析装置1は、撮像部101、載置部102及び照明部103を有している。
載置部102は、品質走性解析が行われる線虫が分注されているシャーレ5f(図1参照)が検査者によって載置される。
照明部103は、載置部102に載置されたシャーレ5fを下方から照らす。
撮像部101は、載置部102に載置され、照明部103によって下方から照明をあてられたシャーレ5f(線虫)を撮影(撮像)する。なお、本実施形態では、撮像部101はカメラによって静止画を撮影することを想定しているが、ビデオカメラとして動画を撮影するようにしてもよい。なお、撮像部101は、オートフォーカスによって撮影を行うことが望ましい。
なお、品質解析装置1の具体的な構成例については後記する。
[品質分析装置]
図3は、本実施形態に係る品質分析装置の構成例を示す機能ブロック図である。
品質分析装置2は、例えば、PC(Personal Computer)等であり、メモリ201、記憶装置202、CPU(Central Processing Unit)203、通信装置204、入力装置205、出力装置206を有している。
通信装置204は、品質解析装置1等との間でデータの送受信を行う。
入力装置205は、キーボードや、マウス等である。
出力装置206は、本実施形態ではプリンタ等であり、検査結果通知書900(図1)を印刷する。
記憶装置202は、HD(Hard Disk)や、SSD(Solid State Drive)等であり、培養条件データ22、品質解析データ24、線虫データ25等を格納している。培養条件データ22、品質解析データ(線虫の品質に関する情報)24、線虫データ25については後記する。
また、メモリ201には、記憶装置202に格納されているプログラムがロードされ、ロードされたプログラムがCPU203によって実行されることで、計数部211、算出部212、判定部213、出力処理部214が具現化している。
計数部211は、標準物質(イソアミルアルコール)に対して誘引行動を示している線虫の数や、標準物質に対して忌避行動を示している線虫の数や、中性の行動を示している線虫の数を計数する。ここで、中性の行動とは、誘引行動も、忌避行動も示していない線虫の行動である。
算出部212は、計数部211による計数結果を基に、走性指数CIを算出する。走性指数については後記する。
判定部213は、算出部212が算出した走性指数CIを基に、癌検査に用いられている線虫が適切な線虫であるか否かの品質判定を行う。
出力処理部214は、判定部213による判定結果を検査結果通知書900に印刷する。
なお、計数部211、算出部212、判定部213、出力処理部214は、後記する検査分析装置4における計数部411、算出部412、判定部413、出力処理部414と同様の処理を行う。品質分析装置2における計数部211、算出部212、判定部213、出力処理部214と、検査分析装置4における計数部411、算出部412、判定部413、出力処理部414とを、まとめて、計数部11、算出部12、判定部13、出力処理部14とて適宜称する。
[検査解析装置]
図4は、本実施形態に係る検査解析装置の構成例を示す機能ブロック図である。
検査解析装置3は、観察部301、保管部302及び搬送部303を有している。
観察部301は、撮像部311、載置部312及び照明部313を有している。
載置部312は、検査走性解析が行われる線虫が分注されている検査用シャーレ51(図1参照)が検査者によって載置される。
照明部313は、載置部312に載置された検査用シャーレ51を下方から照らす。
撮像部311は、載置部312に載置され、照明部313によって下方から照明をあてられた検査用シャーレ51(線虫)を撮影する。これによって、線虫の走性行動が撮影される。なお、本実施形態では、撮像部311はカメラによって静止画を撮影することを想定しているが、ビデオカメラとして動画を撮影するようにしてもよい。なお、撮像部311は、オートフォーカスによって撮影を行うことが望ましい。
保管部302は、撮影が終わった検査用シャーレ51を、次の撮影のために保管する。
搬送部303は、観察部301から保管部302へ検査用シャーレ51を搬送したり、保管部302から観察部301へ検査用シャーレ51を搬送したりする。
このように、検査用シャーレ51は、1回撮影が終わると保管部302に移動され、撮影後、所定時間が経過すると、保管部302から載置部312に検査用シャーレ51が移動されて、撮像部311によって撮影が行われる。そして、撮影が終わると、再び検査用シャーレ51は、搬送部303によって保管部302へ運ばれる。このようにして、線虫の走性行動が、ある時間毎に撮影される。
また、検査用シャーレ51は、載置部312に載置後、すぐに保管部302に一定時間保管し(30分程度)、化学走性終了後、観察部301に移動して撮像部311が静止画を撮影し、走性指数CIを算出するようにしてもよい。
なお、検査解析装置3は、図4に示す構成の他にも、所定回数の撮影が完了し廃棄される検査用シャーレ51を保管する廃棄部(不図示)を有していてもよい。ちなみに、廃棄部への検査用シャーレ51の搬送は搬送部303が行う。
[検査分析装置]
図5は、本実施形態に係る検査分析装置の構成例を示す機能ブロック図である。
検査分析装置42は、例えば、PC等であり、メモリ401、記憶装置402、CPU403、通信装置404、入力装置405、出力装置406を有している。
通信装置404は、検査解析装置3等との間でデータの送受信を行う。
入力装置405は、キーボードや、マウス等である。
出力装置406は、本実施形態ではプリンタ等であり、検査結果通知書900(図1参照)を印刷する。
なお、品質解析装置2の出力装置206と、検査分析装置4の出力装置406とを、1つの装置としてもよい。
記憶装置402は、HDや、SSD等であり、検査解析データ21、培養条件データ22、走性条件データ23を格納している。検査解析データ21、培養条件データ22、走性条件データ23については後記する。なお、培養条件データ22は、品質分析装置2の記憶装置202に格納されている培養条件データ22と同一の内容のデータを保持している。
また、メモリ401には、記憶装置402に格納されているプログラムがロードされ、ロードされたプログラムがCPU403によって実行されることで、計数部411、算出部412、判定部413、出力処理部414が具現化している。
計数部411は、試料(被験者の尿)に対して誘引行動を示している線虫の数や、試料に対して忌避行動を示している線虫の数や、中性の行動を示している線虫の数を計数する。ここで、中性の行動とは、前記したように、誘引行動も、忌避行動も示していない線虫の行動である。
算出部412は、計数部411による計数結果を基に、走性指数CI及び走性指数CIの平均値(平均走性指数)を算出する。走性指数CIについては後記する。
判定部413は、算出部412が算出した走性指数CIの平均値(平均走性指数)を基に、癌検査の結果としての陰性・陽性の判定を行う。平均走性指数については後記する。
出力処理部414は、判定部412による判定結果を検査結果通知書900に印刷する。
なお、前記したように品質分析装置2における計数部211、算出部212、判定部213、出力処理部214と、検査分析装置4における計数部411、算出部412、判定部413、出力処理部414とを、まとめて、計数部11、算出部12、判定部13、出力処理部14と適宜称する。
なお、品質分析装置1と、検査分析装置43とが、1つの装置にまとめられてもよい。
[品質解析装置の具体的な構成]
図6及び図7は、本実施形態に係る品質解析装置の具体的な構成の一例を示す図である。なお、図6は線虫をセットする前の状態を示しており、図7は線虫をセットした後の状態を示している。なお、図6及び図7に示す品質解析装置1は、一例であり、この構成に限らない。
まず、図6に示すように板状の載置部102の上に品質走性解析用の線虫を分注したシャーレ5fが載置される。そして、載置部102が、検査者によって押し込まれると、載置部102はスライド部111に沿ってスライドし、図7に示すように、載置部102がガラス部112(図6)上にセットされる。なお、載置部102において、シャーレ5fがセットされる部分の下は透明な部材で構成されている。
図6に示すように、ガラス部112は、透明な部材で構成されている。ガラス部112の下には照明部103(図2参照)が設置されている。図7に示すように、載置部102がガラス部112の上にセットされると、照明部103が点灯し、シャーレ5fを下方から照らす。なお、照明部103の点灯は、検査者が品質解析装置1に備えられている点灯スイッチを操作することで行われてもよい。あるいは、例えば、スライド部111の終端にスイッチ又はセンサ等が備えられており、載置部102がガラス部112上にセットされると、これに応答して照明部103が点灯するようにしてもよい。
図6に示すように、載置部102は基部113と接合しているが、基部113には円環状の第1支持部114が接合している。そして、第1支持部114の円環部に挿入される形で棒状の第2支持部115が支持されている。挟持部116は、第2支持部115において、第1支持部114が備えられている端部とは別の端部周辺に備えられる。挟持部116は、ねじ121による締付力によって第2支持部115に設置されている。挟持部116には、L字状の第3支持部117が、例えばねじ(不図示)等によって備えられおり、この第3支持部117における、第2支持部115との接合箇所とは別の端部に撮像部101が備えられている。
撮像部101は、ガラス部112に向けて備えられており、載置部102がガラス部112の上にセットされ、照明部103が点灯すると、シャーレ5f(線虫)を撮影する。撮影は、品質解析装置1に備えられているスイッチを検査者が操作することで行われてもよいし、照明部103が点灯すると自動的に撮影が行われてもよい。
なお、挟持部116におけるねじ121を緩めることで、挟持部116は第2支持部115に沿って移動可能となる。このようにすることで、撮像部101の高さを調節することができる。
なお、検査者は、図6の状態の載置部102にシャーレ5fを載置し、図7に示すようにガラス部112上に載置部102をセットした後、撮像部101でシャーレ5f(線虫)の撮影を行う。その後、検査者は、載置部102を引き出すことで、図6の状態に戻した後、シャーレ5fを取り出す。そして、検査者は、別のシャーレ5fを載置部102に載置し、同様の手順で撮影を行う。また、検査者は、撮影後、所定時間が経過したシャーレ5fを再度載置部102に載置し、同様の手順で撮影を行う。これを繰り返すことで、ある時間毎に撮影された線虫の画像を得ることができる。
[データ構成]
次に、図8〜図11を参照して、記憶装置202,402に格納されている各種データの説明を行う。図8〜図11において、適宜、図1を参照する。
(検査解析データ)
図8は、本実施形態に係る検査解析データの例を示す図である。
検査解析データ21は、ロット番号、分注番号、検査走性結果、培養条件ID(Identification)、走性条件ID、品質保証ID及び検査結果の各欄を有する。
ロット番号は、線虫が培養されている線虫培養シャーレ5aに対して一意に付与される識別番号である。
分注番号は、ロット番号を有する線虫培養シャーレ5aから分注されたシャーレ5b〜5fに対して一意に付与される識別番号である。図8の例では、ロット番号「A1」のシャーレから、分注番号「A1−01」、「A1−02」、「A1−03」、「A1−04」、「A1−05」のシャーレ5b〜5fが分注され、そのうち、分注番号「A1−01」、「A1−02」、「A1−03」、「A1−04」が検査解析データ21の分注番号に格納されている。これは、分注番号「A1−01」、「A1−02」、「A1−03」、「A1−04」で示されるシャーレ5b〜5eが検査走性解析用に使用されていることを示している。分注番号「A1−05」で示されるシャーレ5fは品質走性解析に使用されているため、図8に示す検査解析データ21には格納されていない。
検査走性結果は、検査走性解析の結果を示す情報であり、線虫総数、正の走性、負の走性、中性、走性指数の各欄を有している。
線虫総数は、分注番号で示されるシャーレ5b〜5e(検査用シャーレ51)のそれぞれに分注されている線虫の総数が格納される。
正の走性は、被検者の尿に対して誘引行動を示した線虫の数が格納される。
負の走性は、被検者の尿に対して忌避行動を示した線虫の数が格納される。
中性は、被検者の尿に対して誘引行動も忌避行動も示さなかった線虫の数が格納される。
走性指数は、後記する手法によって算出された線虫の走性に関する指数が格納される。
また、その平均の走性指数も格納される。つまり、平均走性指数は、ロット(線虫培養シャーレ5a;培養単位)毎における走性指数の平均値である。
なお、正の走性、負の走性、中性、走性指数については後記して説明する。
培養条件IDは、後記する培養条件データ22における情報とリンクするためのIDである。すなわち、培養条件IDによって検査解析データ21は、後記する培養条件データ22とリンクしている。
走性条件IDは、後記する走性条件データ23における情報とリンクするためのIDである。すなわち、走性条件IDによって検査解析データ21は、後記する走性条件データ23とリンクしている。
品質保証IDは、後記する品質解析データ24における情報とリンクするためのIDである。すなわち、品質保証IDによって検査解析データ21は、後記する品質解析データ24とリンクしている。
品質解析結果は、品質走性解析による検査結果であり、品質保証IDをキーとして、図11で後記する品質走性解析における走性指数CIと、合格ラインとを基に判定されるものである。検査結果において、「○」は、品質保証条件を満足しているので、平均走性指数が検査結果として使用できることを示し、「×」は、品質保証条件を満足していないので、平均走性指数が検査結果として使用できないことを示している。なお、品質解析結果は、検査分析装置4が品質分析装置2から、図示しないネットワークを介して、図11で後記する品質解析データ24を取得することで格納される情報である。
なお、検査解析データ21において、ロット番号、分注番号、培養条件ID、走性条件ID及び品質保証IDの各情報は、入力装置405(図5参照)を介して、管理者や、検査者によって入力される情報である。また、検査解析データ21において、検査走性結果及び検査結果の情報は、後記する走性解析処理の結果、入力される情報である。
(培養条件データ)
図9は、本実施形態に係る培養条件データの構成例を示す図である。
培養条件データ22は、培養条件ID、培養温度、培地組成、餌、培養日数、遺伝子解析情報及び備考の各欄を有している。
培養条件IDは、培養条件に対する識別情報である。なお、図8で前記したように検査解析データ21と、培養条件データ22とは、培養条件IDによって互いにリンクしている。
培養温度は、線虫が培養されている環境における温度(℃)である。
培養組成は、線虫が培養される培地の組成を示す情報である。ちなみに、培養条件「1−2」、「1−3」における培地組成は、培養条件「1−1」と同じものであるとして、記載を省略してある。
餌は、線虫に与えられる餌に関する情報である。
培養日数は、線虫が培養された日数である。
遺伝子解析情報は、遺伝子解析を行った日付が上段に格納され、遺伝子解析の結果得られた線虫の配列データが下段に格納される。
備考には、管理者等によるコメント等が格納される。
なお、培養条件データ22の各情報は、入力装置205(図3参照)や、入力装置405(図5参照)を介して、管理者や、検査者によって入力される情報である。
(走性条件データ)
図10は、本実施形態に係る走性条件データの構成例を示す図である。
走性条件データ23は、走性条件ID、培地組成、走性温度、走性時間、照明条件及び備考の各欄を有している。
走性条件IDは、走性条件に対する識別情報である。なお、図8で前記したように検査解析データ21と、走性条件データ23とは、走性条件IDによって互いにリンクしている。
培地組成は、検査用シャーレ51おける培地の組成を示す情報である。ちなみに、走性条件「2−2」、「2−3」における培地組成は、走性条件「2−1」と同じものであるとして、記載を省略してある。
走性温度は、検査走性解析において線虫を走性させたときにおける温度(℃)である。
走性時間は、検査走性解析において線虫を走性させた時間(分)である。
照明条件は、照明部103(図2)の明るさであり、線虫を走性させている時の明るさである走性時(図10の例では消灯している)と、撮影を行った時の明るさ(図10の例では点灯している)である撮影時とが格納されている。
備考には、管理者等によるコメント等が格納される。
なお、走性条件データ23の各情報は、入力装置405(図5参照)を介して、管理者や、検査者によって入力される情報である。
(品質解析データ)
図11は、本実施形態に係る品質解析データの構成例を示す図である。
品質解析データ24は、品質保証ID、走性温度、走性時間、照明条件、線虫グループID、線虫総数、正の走性、負の走性、中性、走性指数CI、標準物質及び合格ラインの各欄を有している。
品質保証IDは、品質走性解析結果に対する識別情報である。なお、図8で前記したように検査解析データ21と、品質解析データ24とは、品質保証IDによって互いにリンクしている。
走性温度は、品質走性解析において線虫を走性させたときの温度(℃)である。
走性時間は、品質走性解析において線虫を走性させた時間(分)である。
照明条件は、品質走性解析における照明部103(図2)の明るさである。なお、図11の例では、常に照明部103が点灯されている状態であるが、図10と同様に線虫を走性させている時は照明部103を消灯しており、撮影時に照明部103を点灯させるようにしてもよい。
線虫グループIDは、後記する線虫データ25における情報とリンクするためのIDである。すなわち、線虫グループIDによって品質解析データ24は線虫データ25とリンクしている。
線虫総数は、品質走性解析に用いられた(シャーレ5fに分注されている)線虫の総数である。
正の走性は、イソアミルアルコールに対して誘引行動を示した線虫の数である。
負の走性は、イソアミルアルコールに対して忌避行動を示した線虫の数である。
中性は、イソアミルアルコールに対して誘引行動も忌避行動も示さなかった線虫の数が格納される。
走性指数CIは、後記する所定の手法によって算出された線虫の走性に関する指数が格納される。
なお、正の走性、負の走性、中性、走性指数については後記して説明する。
標準物質は、検査走性解析における尿の代わりに用いられる物質であり、ここではイソアミルアルコールが用いられている。
合格ラインは、品質走性解析の結果に対する合格ラインであり、本実施形態では、標準物質としてイソアミルアルコールを用いた品質走性解析の結果、走性指数CIが「+0.7」より大きければ合格としている。
図11の例では、品質保証ID「3−1」、「3−2」が合格であり、品質保証ID「3−3」は不合格である。
ちなみに、品質保証走性時における走性条件は、品質保証IDを介してリンクされている走性条件データ23の情報となる。例えば、品質保証ID「3−1」における品質保証走性時の走性条件は、以下のようになる。品質保証ID「3−1」のリンク元は、検査解析データ21におけるロット番号「A1」である。そして、ロット番号「A1」における走性条件は、走性条件データ23において走性条件ID「2−1」に格納されている条件である。従って、品質保証ID「3−1」における品質保証走性時の走性条件は、走性条件データ23において走性条件ID「2−1」に格納されている条件である。
なお、品質解析データ24では、品質保証ID、走性温度、走性時間、照明条件、線虫グループID、標準物質、合格ラインの各情報が、入力装置205(図3参照)を介して、管理者や、検査者によって入力される。また、線虫総数、正の走性、負の走性、中性、走性指数CIの情報は、後記する走性解析処理によって格納される情報である。
ここで、図10と、図11とを比較すると明らかなように、品質走性解析と、検査走性解析における走性温度、走性時間は同じである。すなわち、品質走性解析と、検査走性解析では同じ走性条件が用いられている。
なお、品質解析データ24において、培地組成の欄が設けられてもよい。そして、品質走性解析と、検査走性解析における培地組成が同じであってもよい。
(線虫データ)
図12は、本実施形態に係る線虫データの構成例を示す図である。
線虫データ25は、線虫個体における情報を管理するためのデータであり、線虫グループID、個体ID、時間、フェレ径、座標、移動距離、速度、平均フェレ径、平均移動距離及び平均速度の各欄を有している。
線虫グループIDは、品質走性解析に用いられた線虫のグループに対する識別情報である。なお、図11で前記したように品質解析データ24と、線虫データ25とは、線虫グループIDによって互いにリンクしている。
個体IDは、線虫グループIDで識別される線虫のグループにおける線虫の個体毎に付与されるIDである。
時間は、品質走性解析において走性を行った経過時間(分後)である。
フェレ径(mm)は、図13に示す大きさである。フェレ径を用いているのは、随時動いている線虫701の体長(まっすぐに伸ばした長さ)を正確に測定するのが難しいためである。フェレ径は、図13に示すような大きさであるので、線虫の伸び具合によって大きさが変化する。
座標は、該当する経過時間における線虫の位置である。ここでの、x座標、y座標は、図15に示されるようにシャーレ5fの中心を原点とし、イソアミルアルコールが滴下された箇所801(詳細は後記する)の方向が正のx座標と定義され、定義されたx座標に対してシャーレ5fの面内で垂直にy座標が定義される。
移動距離は、該当する経過時間における線虫の移動距離(mm)である。
速度は、該当する経過時間における線虫の速度(mm/s)である。速度は、移動距離/経過時間で算出される。
平均フェレ径は、線虫グループIDで示される線虫グループにおける線虫のフェレ径の平均(mm)である。
平均移動距離とは、線虫グループIDで示される線虫グループにおける線虫の移動距離の平均(mm)である。
平均移動速度とは、線虫グループIDで示される線虫グループにおける線虫の移動速度の平均(mm/s)である。
なお、線虫データ25において、線虫グループID、個体IDは、入力装置205(図3参照)を介して、管理者や、検査者によって入力される情報である。その他の情報は、計数部211(図3参照)等によって、算出され、入力される情報である。
[フローチャート]
図14は、本実施形態に係る走性解析処理の手順を示すフローチャートである。この走性解析処理は、検査走性解析、品質走性解析の両方に共通する処理である。適宜、図2〜図5を参照する。ここでは、品質走性解析の場合について説明する。
まず、計数部11は、泳動後の線虫の位置(最終位置座標)を識別する(S101)。このとき、計数部11は、線虫の総数を計数し、図8に示す検査解析データ21や、図11に示す品質解析データ24の線虫総数の欄に計数した結果を入力する。
そして、計数部11は、最終位置座標x1が+αより大きい(x1>+α)線虫を計数する(S102)。ここで計数された線虫の数を、正の走性(すなわち、標準物質に対する誘引行動)を示す線虫の数N1とする。このとき、計数部11は、線虫の総数を計数し、図8に示す検査解析データ21や、図11に示す品質解析データ24の正の走性の欄に計数した結果を入力する。
次に、計数部11は、最終位置座標x1が−α未満(x1<−α)である線虫を計数する(S103)。ここで計数された線虫の数を、負の走性(すなわち、標準物質に対する忌避行動)を示す線虫の数N1とする。このとき、計数部11は、線虫の総数を計数し、図8に示す検査解析データ21や、図11に示す品質解析データ24の負の走性の欄に計数した結果を入力する。
続いて、計数部11は、最終位置座標x1が−α以上、+α以下(−α≦x1≦+α)である線虫を計数する(S104)。ここで計数された線虫の数を、中性の走性を示す線虫の数N1とする。なお、このとき、計数部11は、線虫の総数を計数し、図8に示す検査解析データ21や、図11に示す品質解析データ24の中性の欄に計数した結果を入力する。
ここで、図15を参照して、ステップS102〜S104について説明する。
図15は、本実施形態に係る線虫の走性判別について説明する図である。
なお、図15において、品質走性解析時について説明するものとし、符号5fはシャーレである。検査走性解析時でも同様の手順で線虫の走性判別が行われる。
また、符号801は、イソアミルアルコール+アジ化ナトリウムを滴下した箇所である。そして、符号802は、アジ化ナトリウムを滴下した箇所である。アジ化ナトリウムは、線虫に対する麻酔として使用される。なお、検査走性解析時であれば符号801は、被検者の尿+アジ化ナトリウムを滴下した箇所となる。
前記したように、シャーレ5fの中心を原点とし、イソアミルアルコールが滴下された箇所801の方向が正のx座標と定義され、定義されたx座標に対してシャーレ5fの面内で垂直にy座標が定義される。
線虫は、シャーレ5fの中心803に滴下される。
線虫はイソアミルアルコールに対して誘引行動を示すため、線虫は図15のx座標に対して正の方向へ移動する。
なお、検査走性解析時では、尿が癌患者のものであれば、線虫は尿に対して誘因行動をする。すなわち、尿が癌患者のものであれば、線虫は図15のx座標に対して正の方向へ移動する。逆に、尿が健常者のものであれば、線虫は尿に対して忌避行動をする。すなわち、尿が健常者のものであれば、線虫は図15のx座標に対して負の方向へ移動する。
線811は、シャーレ5fの中心803からx座標の+方向にαの距離で、かつ、y軸に平行な線である。同様に、線812は、シャーレ5fの中心803からx座標の−方向にαの距離で、かつ、y軸に平行な線である。
すなわち、走性解析終了後における線虫の最終位置座標x1がx1>+αである領域821における線虫の数が、正の走性を示す線虫の数N1である。同様に、最終位置座標x1がx1<−αである領域822における線虫の数が、負の走性を示す線虫の数N2である。また、最終位置座標x1が−α≦x1≦+αである領域823における線虫の数が、中性の走性を示す線虫の数N3である。
線虫の計数は、例えば、以下の手順で行われる。以下、品質走性解析の場合(シャーレ5fが用いられている場合)について説明する。なお、検査走性解析の場合も同様の処理が行われる。
(A1)計数部11は、品質解析装置1における撮像部101が撮影した画像(撮像結果)のコントラストを強調する。
(A2)計数部11は、画像からシャーレ5fの輪郭線や、培地を消去する。この処理は、検査者が、画像のうちのシャーレ5fや、培地に相当する箇所をマウス等で選択した後、計数部11が選択された箇所の画像を消去してもよい。あるいは、シャーレ5fや、培地の場所は、どの画像でも同じであるので、画像中において予め消去する箇所が設定され、計数部11は設定されている箇所を消去してもよい。計数部11は、消去された箇所及び元々の背景を黒くする。なお、培地に色(黒に近い色が望ましい)をつけるようにしてもよい。このようにすると、(A2)の処理を行わなくても線虫を目立たせることができる。
(A3)(A2)の処理の結果、黒い背景に線虫が白い粒状で表示される。
(A4)計数部11は、画像の縦横の中心にx座標、y座標を設定する。さらに、計数部11は、画像において、図15に示す+α、−αの線を設定する。シャーレ5fは、同じ大きさ、同じ方向で撮影されるので、計数部11は、予め入力されている情報を基に、x座標、y座標、+α、−αの線を容易に設定できる。
(A5)計数部11は、白い粒状に表示されている線虫を計数することで、線虫の最終位置座標を確認し(図14のS101)、+αの線を越えている線虫(図14のS102)、−αの線を越えている線虫(図14のS103)、+αの線と、−αの線の間にいる線虫(図14のS104)を計数する。
なお、(A1)〜(A5)に示す線虫の計数方法は一例であり、その他の方法が用いられてもよい。
図14の説明に戻る。
ステップS104の後、計数部11の計数結果を基に算出部12が走性指数CIを算出する(S105)。走性指数CIは、以下の式(1)で算出される。
CI=(N1−N2)/(N1+N2)・・・(1)
次に、判定部13がステップS105で算出した走性指数CIが所定の値β(図11の合格ラインに相当)より大きいか否かを判定する(S106)。
ステップS106の結果、走性指数CIが所定の値βより大きい場合(S106→Yes)、判定部13は問題なしと判定する(S107)。すなわち、判定部13は、解析対象となっている線虫と同じロットから分注された線虫を用いた癌検査の信頼性は高いと判定する。
ステップS106の結果、走性指数CIが所定の値β以下の場合(S106→No)、判定部13は問題ありと判定する(S108)。すなわち、判定部13は、解析対象となっている線虫と同じロットから分注された線虫を用いた癌検査の信頼性は低いと判定する。
ステップS108において、問題ありと判定された場合、検査者は解析対象となっている線虫のロットとは別のロットを用いることで、癌検査をやり直す。このようにすることで、信頼性の高い癌検査を行うことが可能となる。
その後、出力処理部14は、ステップS107及びステップS108の判定結果を、検査結果通知書900に記載する。
なお、検査走性解析であれば、検査分析装置4の算出部412が、ロット(線虫培養シャーレ5a;培養単位)毎における走性指数の平均値を算出し、算出した平均値を図8に示す検査解析データ21における平均走性指数の欄に格納する。そして、検査分析装置4の判定部413は、平均走性指数の値を基に癌検査の結果として陽性・陰性を判定する。
[検査結果通知書]
図16は、本実施形態に係る検査結果通知書の例を示す図である。
検査結果通知書900は、被検者に示されるものであり、検査結果領域901と、品質保証領域902とを有する。
検査結果領域901には、線虫による癌検査結果(検査分析装置4による癌検査の結果)が印刷されている。なお、癌検査結果は、図9の「総合判定」の欄を参考に印刷されるものである。
品質保証領域902には、品質分析装置2による品質走性解析の結果が印刷されている。すなわち、癌検査に用いられている線虫の品質は保証されていることが印刷されている。このように、品質保証領域902を有することで、被検者の信頼を向上させることができる。
また、品質保証領域902には、品質走性解析の結果だけでなく、どのような基準で品質走性解析が行われたかの情報が印刷されてもよい。このようにすることで、被検者の癌検査に対する信頼性をさらに向上させることができる。
本実施形態に係る癌検査システムZは、同一の線虫培養シャーレ5aにおける線虫から、複数のシャーレ5b〜5fに線虫を分注し、そのうち、シャーレ5b〜5eにおける線虫を検査走性解析に用い、シャーレ5fにおける線虫を品質走性解析に用いる。このようにすることで、癌検査に用いられた線虫(線虫群)と同じ培養条件の線虫の品質を解析することができ、癌検査に用いられた線虫が検査に適正な条件であったのかを容易に確認することができる。
また、本実施形態に係る癌検査システムZによれば、検査走性解析と、品質走性解析とにおける走性条件を同じとすることで、さらに品質保証を向上させることができる。
さらに、現在では、主に人手によって作業が行われているため、熟練度によって結果にばらつきが生じている。例えば、線虫を培地に滴下した後におけるバッファのふきとりでも、熟練者と非熟練者とでは結果に差が生じてしまう。あるいは、尿、線虫を麻痺させるためのアジ化ナトリウム、線虫の滴下に手間取ると、線虫の活動性が低下し、検査精度を大きく低下させてしまう。このように、同じ条件の線虫を用いていても、作業の熟練度によって検査精度が変わってしまう。また、実際の癌検査は、複数のシャーレを用いて行われる。すなわち、尿、線虫を麻痺させるためのアジ化ナトリウム、線虫の滴下が複数行われる。
結果として、癌検査の結果には、どのような状態の線虫が用いられたのか、どのような作業が行われたか、言い換えれば、使用された線虫の状態は癌検査に適した状態であったのかに関する情報が必要となってくる。
本実施形態において、品質走性解析と、検査走性解析とで検査者を同じとすることで、この検査者の行った癌検査の結果が妥当であるか否かを容易に判定することができる。
また、本実施形態の品質走性解析では、線虫の誘引行動もしくは忌避行動を基に、品質保証の判定を行っている。より具体的には、式(1)による走性指数CIを基に、品質保証の判定を行っている。このようにすることで、定量的な品質保証の判定を行うことが可能となり、品質保証の信頼性を向上させることができる。
そして、本実施形態では、品質解析装置1が撮像部101を有しており、撮像部101が撮影した画像(撮像結果情報)を基に、シャーレ5fにおける線虫における誘引行動又は忌避行動を解析している。このようにすることで、画像処理を行った上での線虫の走性行動の解析が可能となる。
また、本実施形態では、線虫が誘引行動もしくは忌避行動を行うことが分かっている(どのような走性行動を行うかが分かっている)標準物質を用いることで、線虫がどのような状態(活動性等)であるかを確認することができる。とくに、線虫が強い誘引行動を示すイソアミルアルコールを用いることで、線虫がどのような状態(活動性等)であるかを顕著に示すことができる。
さらに、品質分析装置1及び検査分析装置2が、癌検査の結果とともに、品質保証に関する情報が記載された検査結果通知書900を被検者に示すことで、被検者に対する癌検査の信頼性を向上させることができる。
本実施形態では、品質保証の判定として、「問題あり」、「問題なし」と2値化しているが、これに限らず、複数のランクで多値的に表示してもよい。
また、本実施形態では、検査結果通知書900が紙に印刷されるものとしているが、これに限らず、被検者がログイン処理すれば、所定のPC等の画面に表示されるものとしてもよい。
また、検査走性解析に用いられる検体としての尿は、滅菌フィルタや、雑物を除去するためのフィルタによるフィルタ処理が行われることが望ましい。
本実施形態では、検査走性解析に用いられる検体として尿が用いられているが、汗、被検査者2の細胞、血液、唾液、呼気等といった被検査者2に由来の生体関連物質を用いてもよい。
また、本実施形態では、野生種の線虫を用いることを想定しているが、線虫の嗅覚神経に、神経内カルシウム濃度を測定できるインディケータ遺伝子を発現される等した、遺伝子改変線虫が用いられてもよい(トランスジェニック線虫が用いられてもよいし、特定の遺伝子を破壊して欠失させたノックアウト線虫が用いられてもよい)。
また、本実施形態では、標準物質(又は尿)+アジ化ナトリウムを図15における符号801に滴下し、アジ化ナトリウムを図15における符号802に滴下しているが、これに限らない。例えば、標準物質(又は尿)+アジ化ナトリウムを培地の周辺部に同心円状に滴下してもよい。
また、本実施形態では、線虫を図15におけるシャーレ5fの中心803に滴下しているが、線虫の走性行動を計測できる箇所であれば、これに限らない。例えば、線虫をシャーレ5fにおける培地上に散布して、どれくらい、標準物質(又は尿)+アジ化ナトリウムの周辺に線虫が集まるかを計測してもよい。
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を有するものに限定されるものではない。
また、前記した各構成、機能、各部11〜14,211〜214,411〜414、記憶装置202,402等は、それらの一部又はすべてを、例えば集積回路で設計すること等によりハードウェアで実現してもよい。また、図3及び図5で示すように、前記した各構成、機能等は、CPU203,403等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、図3及び図5に示すようにHDDに格納すること以外に、メモリ201,401や、SSD等の記録装置、又は、IC(Integrated Circuit)カードや、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。
また、各実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてよい。
1 品質解析装置(品質解析部)
2 品質分析装置(品質分析部)
3 検査解析装置(検査解析部)
4 検査分析装置(検査分析部)
5a 線虫培養シャーレ
5b〜5e シャーレ(検査解析用線虫群が含まれる)
5f シャーレ(品質解析用線虫群が含まれる)
51 検査用シャーレ(検査解析用線虫群が含まれる)
11,211,411 計数部
12,212,412 算出部
13,213,413 判定部
14,214,414 出力処理部
21 検査解析データ
22 培養条件データ
23 走性条件データ
24 品質解析データ
25 線虫データ
101,311 撮像部
102,312 載置部
103,313 照明部
301 観察部
302 保管部
303 搬送部
900 検査結果通知書
901 検査結果領域
902 品質保証領域

Claims (10)

  1. 同一の培養単位から複数の解析単位に分注された線虫群が、癌検査のための検査走性解析用の線虫群である検査解析用線虫群と、線虫の品質保証解析のための品質走性解析用の線虫群である品質解析用線虫群と、に分けられており、
    前記線虫がどのような走性行動を行うかが分かっているイソアミルアルコールに対する前記品質解析用線虫群の走性行動に関する情報を出力する品質解析部と、
    前記品質解析部から出力される情報を基に、前記線虫の品質に関する情報を出力する品質分析部と、
    被検者から提供された検体に対する前記検査解析用線虫群の走性行動に関する情報を出力する検査解析部と、
    前記検査解析部から出力される情報を基に、前記線虫の前記検体に対する誘引行動及び忌避行動に関する走性結果情報を生成し、前記走性結果情報を基に、前記検体を提供した被験者における前記癌検査の結果を出力する検査分析部と、
    を有することを特徴とする癌検査システム。
  2. 前記品質分析部は、
    前記イソアミルアルコールに対する前記品質解析用線虫群の誘引行動又は忌避行動を基に、前記品質解析用線虫群の品質に関する情報を出力する
    ことを特徴とする請求項1に記載の癌検査システム。
  3. 前記品質分析部は
    下記の式(1)による走性指数を基に、前記イソアミルアルコールに対する前記品質解析用線虫群の誘引行動又は忌避行動を検出する
    ことを特徴とする請求項2に記載の癌検査システム。
    CI=(N1−N2)/(N1+N2)・・・(1)
    ここで、CIは走性指数であり、N1は前記イソアミルアルコールに対して誘引行動を示した前記品質解析用線虫群における線虫の数であり、N2は前記イソアミルアルコールに対して忌避行動を示した前記品質解析用線虫群における線虫の数である。
  4. 前記品質解析部は、
    撮像部を有しており、
    前記撮像部は、
    前記品質解析用線虫群の撮像を行い、
    前記品質分析部は、
    前記撮像部による撮像結果を基に、前記イソアミルアルコールに対する前記品質解析用線虫群の走性行動を解析する
    ことを特徴とする請求項1に記載の癌検査システム。
  5. 前記検査分析部が、被検者に対して前記癌検査の結果を示すともに、前記品質分析部が、前記被験者に対して、前記品質解析用線虫群の品質に関する情報を示す
    ことを特徴とする請求項1に記載の癌検査システム。
  6. 同一の培養単位から複数の解析単位に分注された線虫群が、癌検査のための検査走性解析用の線虫群である検査解析用線虫群と、線虫の品質保証解析のための品質走性解析用の線虫群である品質解析用線虫群と、に分けられており、
    被検者から提供された検体に対する前記線虫の走性行動を基に癌検査を行う癌検査システムが、
    前記線虫がどのような走性行動を行うかが分かっているイソアミルアルコールに対する前記品質解析用線虫群の走性行動に関する情報を出力し、
    当該出力される情報を基に、前記線虫の品質に関する情報を出力する
    とともに、
    前記検体に対する前記検査解析用線虫群の走性行動に関する情報を出力し、
    当該出力される情報を基に、前記線虫の前記検体に対する誘引行動及び忌避行動に関する走性結果情報を生成し、前記走性結果情報を基に、前記検体を提供した被験者における前記癌検査の結果を出力する
    ことを特徴とする癌検査評価方法。
  7. 前記癌検査システムが、
    前記イソアミルアルコールに対する前記品質解析用線虫群の誘引行動又は忌避行動を基に、前記品質解析用線虫群の品質に関する情報を出力する
    ことを特徴とする請求項に記載の癌検査評価方法。
  8. 前記癌検査システムが
    下記の式(2)による走性指数を基に、前記イソアミルアルコールに対する前記品質解析用線虫群の誘引行動又は忌避行動を検出する
    ことを特徴とする請求項に記載の癌検査評価方法。
    CI=(N1−N2)/(N1+N2)・・・(2)
    ここで、CIは走性指数であり、N1は前記イソアミルアルコールに対して誘引行動を示した前記品質解析用線虫群における線虫の数であり、N2は前記イソアミルアルコールに対して忌避行動を示した前記品質解析用線虫群における線虫の数である。
  9. 前記癌検査システムが、
    撮像部によって前記品質解析用線虫群の撮像を行い、
    前記撮像による撮像結果を基に、前記イソアミルアルコールに対する前記品質解析用線虫群の走性行動を解析する
    ことを特徴とする請求項に記載の癌検査評価方法。
  10. 前記癌検査システムが、被検者に対して前記癌検査の結果を示すともに、前記品質解析用線虫群の品質に関する情報を示す
    ことを特徴とする請求項に記載の癌検査評価方法。
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