JP6521461B2 - コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用 - Google Patents

コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用 Download PDF

Info

Publication number
JP6521461B2
JP6521461B2 JP2016516418A JP2016516418A JP6521461B2 JP 6521461 B2 JP6521461 B2 JP 6521461B2 JP 2016516418 A JP2016516418 A JP 2016516418A JP 2016516418 A JP2016516418 A JP 2016516418A JP 6521461 B2 JP6521461 B2 JP 6521461B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
collagen
atelocollagen
degradation product
chemical bond
amino acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016516418A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2015167003A1 (ja
Inventor
康一 森本
康一 森本
沙織 國井
沙織 國井
衛 山本
衛 山本
久保木 芳徳
芳徳 久保木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kinki University
Original Assignee
Kinki University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kinki University filed Critical Kinki University
Publication of JPWO2015167003A1 publication Critical patent/JPWO2015167003A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6521461B2 publication Critical patent/JP6521461B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23JPROTEIN COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS; WORKING-UP PROTEINS FOR FOODSTUFFS; PHOSPHATIDE COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS
    • A23J3/00Working-up of proteins for foodstuffs
    • A23J3/04Animal proteins
    • A23J3/06Gelatine
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23JPROTEIN COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS; WORKING-UP PROTEINS FOR FOODSTUFFS; PHOSPHATIDE COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS
    • A23J3/00Working-up of proteins for foodstuffs
    • A23J3/30Working-up of proteins for foodstuffs by hydrolysis
    • A23J3/32Working-up of proteins for foodstuffs by hydrolysis using chemical agents
    • A23J3/34Working-up of proteins for foodstuffs by hydrolysis using chemical agents using enzymes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/78Connective tissue peptides, e.g. collagen, elastin, laminin, fibronectin, vitronectin or cold insoluble globulin [CIG]
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P21/00Preparation of peptides or proteins
    • C12P21/06Preparation of peptides or proteins produced by the hydrolysis of a peptide bond, e.g. hydrolysate products
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/17Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Nutrition Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Description

本発明は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用に関する。
コラーゲンは、真皮、靭帯、腱、骨および軟骨などを構成するタンパク質の1つであって、多細胞生物の細胞外マトリクスの主成分である。研究が進むにつれて、コラーゲンが様々な生理機能を有していることが明らかになり、現在も、コラーゲン分子の新たな生理機能を見出すための研究や、コラーゲン分子の新たな用途を見出すための研究が進められている。
現在までの研究によって、1つのコラーゲン分子は3つのポリペプチド鎖によって構成されており、これら3つのポリペプチド鎖が螺旋構造を形成することによって、1つのコラーゲン分子が形成されていることが明らかになっている。
螺旋構造を形成するための各ポリペプチド鎖内の領域は、トリプルヘリカルドメインと呼ばれ、当該トリプルヘリカルドメインは、特徴的なアミノ酸配列を有している。具体的に、トリプルヘリカルドメインは、「Gly−X−Y」にて示されるアミノ酸配列が繰り返し連続して出現するという特徴的なアミノ酸配列を有している。なお、上述した3つのアミノ酸からなるアミノ酸配列において、グリシン以外のアミノ酸、つまりXおよびYは、様々なアミノ酸であり得る。
コラーゲン分子のアミノ末端および/またはカルボキシル末端(換言すれば、コラーゲン分子を構成している各ポリペプチド鎖のアミノ末端およびカルボキシル末端)には、コラーゲンの主たる抗原部位であるテロペプチドが存在する。当該テロペプチドは、コラーゲン分子を構成する各ポリペプチド鎖内において、上述したトリプルヘリカルドメインよりもアミノ末端側および/またはカルボキシル末端側に存在している。
プロテアーゼなどの酵素を用いて処理することによりコラーゲン分子からテロペプチドを部分的に切除すると、コラーゲン分子の抗原性を低く抑えられることが知られている。このようなテロペプチドが部分的に切除されたコラーゲン分子をアテロコラーゲンと呼ぶ。
現在までの研究によって、コラーゲン、アテロコラーゲン、および、プロテアーゼによるこれらの分解物、が様々な生理機能を有していることが明らかになり、当該生理機能に基づいたコラーゲン、アテロコラーゲン、および、プロテアーゼによるこれらの分解物の様々な用途が開発されている(例えば、特許文献1および2参照)。
特許文献1では、コラーゲンまたはアテロコラーゲンをプロテアーゼ(例えば、ペプシンおよびアクチニダインなど)で処理した分解物を、止血用の医療用材料として用いる技術が開示されている。更に具体的に、特許文献1では、まず、キハダマグロの皮部に対してペプシン処理を施して、アテロコラーゲンを含有している水溶液を取得し、更に、当該水溶液に塩化ナトリウムを加えることによって、アテロコラーゲンを沈殿および回収している。なお、アテロコラーゲンを沈殿物として回収する際に、塩化ナトリウムは、上清と共に除去されることになる。そして、特許文献1では、沈殿物として回収されたアテロコラーゲンに対してアクチニダインによる分解処理を施して分解物を得、当該分解物を、止血用の医療用材料として用いている。
一方、特許文献2では、コラーゲンまたはアテロコラーゲンをプロテアーゼで処理した分解物を、動脈硬化症および動脈硬化症に起因する疾患の予防または治療のための組成物として用いる技術が開示されている。更に具体的に、特許文献2では、ミネラルを除去した後のコラーゲンをプロテアーゼによって分解して得られるコラーゲンの分解物を、動脈硬化症および動脈硬化症に起因する疾患の予防または治療のための組成物として用いる技術が開示されている。
上述したように、コラーゲンおよびアテロコラーゲンをプロテアーゼによって分解する場合には、塩濃度が低い条件下にて分解することが一般的である。そして、このような塩濃度が低い条件下におけるコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物のアミノ酸配列は既に決定されており、そのアミノ酸配列は、非特許文献1などに開示されている。
WO2004/020470(2004年3月11日公開) 日本国公開特許公報「特開2001−31586号公報(2001年2月6日公開)」
S. Kunii et al., Journal of Biological Chemistry, Vol.285, No.23, pp.17465-17470, June4, 2010 K. Morimoto et al., Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, Vol.68, pp.861-867, 2004
上述したように、コラーゲン、アテロコラーゲン、および、これらの分解物の生理機能に関する研究が進んでいるが、これらの生理機能の全てが解明されているわけではない。
これらが有する新たな生理機能を見出すことは、医療分野、食品分野、化粧品分野および基礎研究分野などの様々な分野の発展に大きく寄与できるものと考えられる。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、新規な生理機能を有するコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、以下のA)〜C)を見出し、本発明を完成させるに至った。つまり、
A)塩濃度が高い条件下では、システインプロテアーゼによって、コラーゲンまたはアテロコラーゲンが従来知られていなかった箇所(具体的には、トリプルヘリカルドメイン内の特定の箇所)にて切断されること;
B)従来知られていなかった箇所にて切断されたコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、スフェロイド誘導能を有していること;
C)従来知られていなかった箇所にて切断されたコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、従来知られていた箇所にて切断されたコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物と比較して、スフェロイド誘導能が高いこと。
本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、上記課題を解決するために、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、または、X14とGとの間の化学結合が切断されている、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物であることを特徴としている:
(1)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−
(2)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X10−G−X11−X12−G−X13−X14−G−
(但し、Gは、グリシンであり、X〜X14は、任意のアミノ酸である)。
本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、上記課題を解決するために、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、または、X14とGとの間の化学結合を切断する、切断工程を含むことを特徴としている:
(1)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−
(2)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X10−G−X11−X12−G−X13−X14−G−
(但し、Gは、グリシンであり、X〜X14は、任意のアミノ酸である)。
本発明は、様々な細胞にスフェロイドを形成させることができるという効果を奏する。
本発明は、従来のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物と比較して、より大きなスフェロイドを形成することができるという効果を奏する。
本発明は、従来のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物と比較して、より短時間でスフェロイドを形成することができるという効果を奏する。
従来のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、低温の条件下では液体状であるが、高温の条件下(具体的には、ヒトの体温(略35℃〜38℃)付近)では、ゲル化する。それ故に、従来のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、ヒトの皮膚などに対して馴染み難かった。一方、本発明は、ヒトの体温に近い温度でも液体状であり得るコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、換言すれば、ヒトの皮膚などに馴染み易いコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を実現することができるという効果を奏する。
(a)は、本発明の実施例の分解物によって誘導された、正常ヒト皮膚線維芽細胞NHDFのスフェロイドの顕微鏡写真であり、(b)は、アテロコラーゲンによって誘導された、正常ヒト皮膚線維芽細胞NHDFの顕微鏡写真である。 (a)は、本発明の実施例の分解物によって誘導された、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECのスフェロイドの顕微鏡写真であり、(b)は、アテロコラーゲンによって誘導された、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECの顕微鏡写真である。 (a)は、本発明の実施例の分解物によって誘導された、マウス骨芽細胞前駆細胞株MC3T3−E1サブクローン4のスフェロイドの顕微鏡写真であり、(b)は、アテロコラーゲンによって誘導された、マウス骨芽細胞前駆細胞株MC3T3−E1サブクローン4の顕微鏡写真である。 (a)は、本発明の実施例の分解物によって誘導された、マウス脂肪細胞前駆細胞株MC3T3−G2/PA6のスフェロイドの顕微鏡写真であり、(b)は、アテロコラーゲンによって誘導された、マウス脂肪細胞前駆細胞株MC3T3−G2/PA6の顕微鏡写真である。 (a)は、本発明の実施例の分解物によって誘導された、ヒト骨髄間葉系幹細胞MSCのスフェロイドの顕微鏡写真であり、(b)は、アテロコラーゲンによって誘導された、ヒト骨髄間葉系幹細胞MSCの顕微鏡写真である。 (a)は、本発明の実施例の分解物によって誘導された、ラット骨髄間葉系幹細胞MSCのスフェロイドの顕微鏡写真であり、(b)は、アテロコラーゲンによって誘導された、ラット骨髄間葉系幹細胞MSCの顕微鏡写真である。 (a)は、本発明の実施例の分解物によって誘導された、マウス初代胎児線維芽細胞MEFのスフェロイドの顕微鏡写真であり、(b)は、アテロコラーゲンによって誘導された、マウス初代胎児線維芽細胞MEFの顕微鏡写真である。 本発明の実施例の分解物によって誘導された、マウス線維芽細胞NIH/3T3のスフェロイドの顕微鏡写真を示す。 (a)〜(j)は、本発明の実施例の分解物によって誘導された、様々な細胞のスフェロイドの顕微鏡写真である。 (a)および(b)は、本発明の実施例において、骨断片と各酵素とを接触させた後、11日間静置した写真である。 本発明の実施例の骨断片分解物によって誘導された、ヒト骨髄間葉系幹細胞MSCのスフェロイドの顕微鏡写真を示す。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本明細書にて「A〜B」と記載した場合、当該記載は「A以上B以下」を意図する。
〔1.コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物〕
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、または、XとGとの間の化学結合が切断されている、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物である:
また、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、および、XとGとの間の化学結合から選択される何れか1つの化学結合が切断されている、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物であってもよい:
(1)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−(配列番号1):
(但し、Gは、グリシンであり、X〜Xは、任意のアミノ酸である)。
更に具体的に、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、または、X14とGとの間の化学結合が切断されている、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物である:
また、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、および、X14とGとの間の化学結合から選択される何れか1つの化学結合が切断されている、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物であってもよい:
(2)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X10−G−X11−X12−G−X13−X14−G−(配列番号13):
(但し、Gは、グリシンであり、X〜X14は、任意のアミノ酸である)。
以下に、各構成について詳細に説明する。
本実施の形態の分解物は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物である。
分解物の材料になるコラーゲンおよびアテロコラーゲンは特に限定されず、周知のコラーゲンおよびアテロコラーゲンであればよい。
分解物の材料になるコラーゲンとしては、哺乳類(例えば、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒト、ラットまたはマウスなど)、鳥類(例えば、ニワトリなど)、または、魚類(例えば、サメ、コイ、ウナギ、マグロ(例えば、キハダマグロ)、ティラピア、タイ、サケなど)のコラーゲンを用いることができる。
更に具体的に、分解物の材料になるコラーゲンとしては、上記哺乳類または鳥類の真皮、腱、骨または筋膜などに由来するコラーゲン、あるいは、上記魚類の皮膚または鱗などに由来するコラーゲンを用いることができる。
分解物の材料になるアテロコラーゲンとしては、上記哺乳類、鳥類または魚類のコラーゲンをプロテアーゼ(例えば、ペプシンなど)によって処理して得られる、コラーゲン分子のアミノ末端および/またはカルボキシル末端からテロペプチドが部分的に除去されているアテロコラーゲンを用いることができる。
これらのなかでは、ニワトリ、ブタ、ヒトまたはラットのコラーゲンまたはアテロコラーゲンを分解物の材料として好ましく用いることができ、ブタまたはヒトのコラーゲンまたはアテロコラーゲンを分解物の材料として更に好ましく用いることができる。
また、分解物の材料として魚類のコラーゲンまたはアテロコラーゲンを用いることにより、材料を簡便に、安全に、かつ大量に入手可能であり、ヒトに対してより安全なコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を実現することができる。
なお、分解物の材料として魚類のコラーゲンまたはアテロコラーゲンを用いる場合には、サメ、コイ、ウナギ、マグロ(例えば、キハダマグロ)、ティラピア、タイまたはサケのコラーゲンまたはアテロコラーゲンを用いることが好ましく、マグロ、ティラピア、タイまたはサケのコラーゲンまたはアテロコラーゲンを用いることが更に好ましい。
分解物の材料としてアテロコラーゲンを用いる場合、熱による変性温度が、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であるアテロコラーゲンを用いることが好ましい。例えば、分解物の材料として魚類のアテロコラーゲンを用いる場合、マグロ(例えば、キハダマグロ)またはコイなどのアテロコラーゲンは熱変性温度が25℃以上であるので、これらのアテロコラーゲンを用いることが好ましい。
上記構成であれば、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の変性温度を、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上に調節することができる。その結果、上記構成であれば、貯蔵時の安定性、利用時の安定性に優れた、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を実現することができる。
分解物の材料になるコラーゲンおよびアテロコラーゲンは、周知の方法によって入手することができる。例えば、哺乳類、鳥類または魚類のコラーゲンに富んだ組織をpH2〜4程度の酸性溶液に投入することによって、コラーゲンを溶出することができる。更に、当該溶出液にペプシンなどのプロテアーゼを添加して、コラーゲン分子のアミノ末端および/またはカルボキシル末端のテロペプチドを部分的に除去する。更に、当該溶出液に塩化ナトリウムなどの塩を加えることによって、アテロコラーゲンを沈殿させることができる。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、上述したコラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、または、XとGとの間の化学結合が切断されている、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物である:
(1)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−
(但し、Gは、グリシンであり、X〜Xは、任意のアミノ酸である)。
更に具体的に、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、上述したコラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、または、X14とGとの間の化学結合が切断されている、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物である:
(2)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X10−G−X11−X12−G−X13−X14−G−
(但し、Gは、グリシンであり、X〜X14は、任意のアミノ酸である)。
本明細書において「トリプルヘリカルドメイン」とは、「Gly−X−Y」(XおよびYは任意のアミノ酸)にて示されるアミノ酸配列が、少なくとも3個以上、より好ましくは少なくとも80個以上、より好ましくは少なくとも300個以上、連続するアミノ酸配列を含むドメインであって、螺旋構造の形成に寄与するドメインを意図する。
トリプルヘリカルドメイン内で化学結合の切断が生じているポリペプチド鎖は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを構成する複数種類のポリペプチド鎖のうちの何れのポリペプチド鎖であってもよい。
例えば、トリプルヘリカルドメイン内で化学結合の切断が生じているポリペプチド鎖は、α1鎖、α2鎖、α3鎖のうちの何れであってもよい。
トリプルヘリカルドメイン内で化学結合の切断が生じているポリペプチド鎖は、上述したポリペプチド鎖のなかではα1鎖またはα2鎖の少なくとも一方であることが好ましい。
トリプルヘリカルドメイン内で化学結合の切断が生じているポリペプチド鎖は、上述したポリペプチド鎖のなかではα1鎖であることが更に好ましい。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を酵素処理によって作製すれば、容易に特定のポリペプチド鎖のみで切断を生じさせることができる。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、3つのポリペプチド鎖が螺旋構造を形成しているものであってもよい。あるいは、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、3つのポリペプチド鎖が螺旋構造を形成していないもの、または、3つのポリペプチド鎖が部分的に螺旋構造を形成していないものであってもよい。なお、3つのポリペプチド鎖が螺旋構造を形成しているか否かは、公知の方法(例えば、円偏光二色スペクトル)によって確認することができる。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、基本的に3つのポリペプチド鎖を含んでいるが、3つのポリペプチド鎖のうちの1つのポリペプチド鎖のトリプルヘリカルドメインのみにて化学結合の切断が生じていてもよいし、3つのポリペプチド鎖のうちの2つのポリペプチド鎖のトリプルヘリカルドメインのみにて化学結合の切断が生じていてもよいし、3つのポリペプチド鎖のトリプルヘリカルドメインの全てにて化学結合の切断が生じていてもよい。
3つのポリペプチド鎖が螺旋構造を形成している場合には、複数の螺旋構造体によって、網目状の会合体が形成されていてもよいし、線維状の会合体が形成されていてもよい。
本明細書において、網目状とは、水素結合または静電的相互作用、ファンデルワールス結合などによって分子が連なって立体的な網目をつくり、当該網目の間に隙間ができている構造を意図する。本明細書において、線維状とは、水素結合または静電的相互作用、ファンデルワールス結合などによって分子が連なって形成された略直線状の構造を意図する。また、本明細書において、会合体とは、同種の分子が共有結合によらないで2分子以上が相互作用して結合し、1つの構造単位となっているものを意図する。網目状または線維状の会合体が形成されているか否かは、電子顕微鏡にて観察することによって確認することができる。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、架橋構造を有するものであってもよい。例えば、ポリペプチド鎖とポリペプチド鎖とが、螺旋構造と螺旋構造とが、または、ポリペプチド鎖と螺旋構造とが、架橋剤によって架橋されていてもよい。
上記架橋構造は、周知の架橋方法によって形成することができる。例えば、化学架橋する方法、熱処理により架橋する方法、紫外線等放射線照射により架橋する方法などが挙げられる。
化学架橋に用いる架橋剤としては、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などの水溶性カルボジイミド化合物、エピクロロヒドリン、ビスエポキシジエチレングリコールなどのジエポキシ化合物、NaBHなどが挙げられる。
架橋剤の濃度は、本実施の形態の分解物に対して、好ましくは10−3〜10質量%である。好ましくは、5〜40℃にて、3〜48時間、本実施の形態の分解物と架橋剤とを接触させることにより、架橋構造を形成することができる。
紫外線により架橋する場合、本実施の形態の分解物に、例えば、室温にて、紫外線ランプなどにより紫外線を3〜48時間程度照射することによって、架橋構造を形成することができる。
熱架橋する場合は、本実施の形態の分解物を、減圧下にて、好ましくは110〜160℃程度の温度で、3〜48時間程度加熱することによって、架橋構造を形成することができる。
架橋構造を有する本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、耐コラゲナーゼ性、および、強度が向上しているという利点を有している。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、必要に応じて、所望の化学修飾を施されていてもよい。化学修飾の種類としては、例えば、アシル化、ミリスチル化、ポリエチレングリコール修飾などを挙げることができる。
例えば、アシル化の一種であるサクシニル化を施した分解物は、本実施の形態の分解物と無水コハク酸とを、リン酸緩衝液などの中性pHの溶媒中で反応させて得ることができる。サクシニル化することにより、中性pHの溶媒に対する分解物の溶解度を向上させることができる。
また、ポリエチレングリコール修飾を施した分解物は、塩化シアヌルで活性化したポリエチレングリコールと本実施の形態の分解物とを反応させることにより、得ることができる。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物では、上述したトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、または、XとGとの間の化学結合が切断されている;
(1)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−
(但し、Gは、グリシンであり、X〜Xは、任意のアミノ酸である)。
更に具体的に、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物では、上述したトリプルヘリカルドメイン内の下記(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、または、X14とGとの間の化学結合が切断されている;
(2)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X10−G−X11−X12−G−X13−X14−G−
(但し、Gは、グリシンであり、X〜X14は、任意のアミノ酸である)。
上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列のトリプルヘリカルドメイン内における位置は、特に限定されない。例えば、上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列は、トリプルヘリカルドメインの内部に存在していてもよいが、トリプルヘリカルドメインのアミノ末端に存在していることが好ましい(換言すれば、上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の中の最もアミノ末端側に配置されている「G」が、トリプルヘリカルドメインの中の最もアミノ末端側に配置されている「G」と一致することが好ましい)。
上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列がトリプルヘリカルドメインの内部に存在している場合、当該(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の具体的な位置は特に限定されない。当該(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列のアミノ末端側に、1個以上、5個以上、10個以上、50個以上、100個以上、150個以上、200個以上、250個以上または300個以上の「Gly−X−Y」(XおよびYは任意のアミノ酸)が連続するアミノ酸配列が存在していてもよい。また、当該(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列のカルボキシル末端側に、1個以上、5個以上、10個以上、50個以上、100個以上、150個以上、200個以上、250個以上または300個以上の「Gly−X−Y」(XおよびYは任意のアミノ酸)が連続するアミノ酸配列が存在していてもよい。
上記X〜Xの各々は、任意のアミノ酸であり得、アミノ酸の種類は特に限定されない。また、X〜Xの各々は、少なくとも一部が同じ種類のアミノ酸であってもよいし、全てが異なる種類のアミノ酸であってもよい。
例えば、X〜Xの各々は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンのうちの何れであってもよい。
更に具体的には、X〜Xのうち、X、XおよびXが同じアミノ酸であり、その他が別のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X〜Xのうち、X、XおよびXからなる群から選択される少なくとも1つがプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、Xがプロリンであり、X〜Xが任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、XおよびXがプロリンであり、X、X〜Xが任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X、XおよびXがプロリンであり、X、XおよびXが任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X、XおよびXがプロリンであり、Xが側鎖に硫黄原子を含むアミノ酸(例えば、システインまたはメチオニン)または側鎖に水酸基を含むアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンまたはセリン)であり、XおよびXが任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X、XおよびXがプロリンであり、Xが側鎖に硫黄原子を含むアミノ酸(例えば、システインまたはメチオニン)であり、Xが脂肪族の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)または側鎖に水酸基を含むアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンまたはセリン)であり、Xが任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X、XおよびXがプロリンであり、Xが側鎖に硫黄原子を含むアミノ酸(例えば、システインまたはメチオニン)であり、Xが脂肪族の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)または側鎖に水酸基を含むアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンまたはセリン)であり、Xが側鎖に塩基を含むアミノ酸(例えば、アルギニン、リシンまたはヒスチジン)であってもよい。
更に具体的には、X、XおよびXがプロリンであり、Xがメチオニンであり、Xがアラニンまたはセリンであり、Xがアルギニンであってもよい。
上記X〜X14の各々は、任意のアミノ酸であり得、アミノ酸の種類は特に限定されない。また、X〜X14の各々は、少なくとも一部が同じ種類のアミノ酸であってもよいし、全てが異なる種類のアミノ酸であってもよい。
例えば、X〜X14の各々は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンのうちの何れであってもよい。
更に具体的には、X〜X14のうち、X、X、X10、X12およびX13が同じアミノ酸であり、その他が別のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X〜X14のうち、X、X、X10、X12およびX13からなる群から選択される少なくとも1つがプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X〜X14のうち、Xがプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X〜X14のうち、XおよびXがプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X〜X14のうち、X、XおよびX10がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X〜X14のうち、X、X、X10およびX12がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X〜X14のうち、X、X、X10、X12およびX13がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X〜X14のうち、X、X、X10、X12およびX13がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、Xが脂肪族の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)であり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X〜X14のうち、X、X、X10、X12およびX13がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、XおよびX11が脂肪族の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)であり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
更に具体的には、X〜X14のうち、X、X、X10、X12およびX13がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、XおよびX11が脂肪族の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)であり、X14が親水性でありかつ非解離性の側鎖を有するアミノ酸(セリン、スレオニン、アスパラギンまたはグルタミン)であってもよい。
更に具体的には、X〜X14のうち、X、X、X10、X12およびX13がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、Xがロイシンであり、X11がアラニンであり、X14がグルタミンであってもよい。
従来のコラーゲン、および、アテロコラーゲンは、ヒトの体温に近い温度では溶け難い。それ故に、これらをヒトの皮膚などに塗ったとしても、これらと皮膚とが馴染み難い。
一方、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、ヒトの体温に近い温度でも液体状であり得る。それ故に、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物をヒトの皮膚などに塗れば、当該分解物と皮膚とが馴染み易い。
また、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、従来のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物と比較して、ゲル化し始める濃度が高い。それ故に、従来のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物がゲル化する濃度と同じ濃度の本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を、常温にて安定して保存できる。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物では、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、X14とGとの間の化学結合が切断されている。
上記切断は、適宜所望の方法によって行うことができる。
例えば、既に切断されている状態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンを、化学合成法によって作製することが可能である。なお、化学合成法としては、一般的な周知の化学合成法を用いることが可能である。
また、既に切断されている状態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンをコードするDNAを周知のタンパク質発現ベクターに挿入する。そして、当該タンパク質発現ベクターを所望の宿主(例えば、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞など)に導入した後、当該宿主内で、既に切断されている状態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの発現を誘導する。これによって、既に切断されている状態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンを作製することも可能である。
また、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを酵素(例えば、プロテアーゼ(例えば、システインプロテアーゼ))によって分解することによって上記切断を行うことも可能である。
上記切断を行う方法の詳細については、後述する。
〔2.コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法〕
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、または、XとGとの間の化学結合を切断する、切断工程を含む製造方法である:
また、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、および、XとGとの間の化学結合から選択される何れか1つの化学結合を切断する、切断工程を含む製造方法であってもよい:
(1)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−
(但し、Gは、グリシンであり、X〜Xは、任意のアミノ酸である)。
更に具体的に、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、または、X14とGとの間の化学結合を切断する、切断工程を含む製造方法である:
また、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、および、X14とGとの間の化学結合から選択される何れか1つの化学結合を切断する、切断工程を含む製造方法であってもよい:
(2)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X10−G−X11−X12−G−X13−X14−G−
(但し、Gは、グリシンであり、X〜X14は、任意のアミノ酸である)。
以下に、各構成について詳細に説明する。なお、本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物自体については既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
上記切断工程は、(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の特定の箇所の化学結合を切断する工程であればよく、具体的な構成は特に限定されない。
上記切断工程は、実際にトリプルヘリカルドメイン内の化学結合を切断して、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を作製する工程であってもよい(例えば、酵素法)。
また、既にトリプルヘリカルドメイン内の化学結合が切断されているコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を作製する工程(例えば、化学合成法、組み換えタンパク質の発現)を本願における「切断工程」の概念に含めることもできる。
以下に、上述した切断工程の詳細を説明する。
〔2−1.酵素法に基づく切断工程〕
酵素法に基づく切断工程を採用する場合には、例えば、以下のように切断工程を構成することができる。
上記切断工程は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを酵素(例えば、プロテアーゼ(例えば、システインプロテアーゼ))によって分解することによって行うことが可能である。
上記酵素としては特に限定されないが、例えば、システインプロテアーゼを用いることが好ましい。
システインプロテアーゼとしては、塩基性アミノ酸量よりも酸性アミノ酸量の方が多いシステインプロテアーゼ、酸性領域の水素イオン濃度において活性であるシステインプロテアーゼを用いることが好ましい。
このようなシステインプロテアーゼとしては、カテプシンB[EC 3.4.22.1]、パパイン[EC 3.4.22.2]、フィシン[EC 3.4.22.3]、アクチニダイン[EC 3.4.22.14]、カテプシンL[EC 3.4.22.15]、カテプシンH[EC 3.4.22.16]、カテプシンS[EC 3.4.22.27]、ブロメライン[EC 3.4.22.32]、カテプシンK[EC 3.4.22.38]、アロライン、カルシウム依存性プロテアーゼなどを挙げることが可能である。
これらの中では、パパイン、フィシン、アクチニダイン、ブロメライン、カテプシンK、または、アロラインを用いることが好ましく、パパイン、フィシン、アクチニダイン、カテプシンKを用いることが更に好ましい。
上述した酵素は、公知の方法によって入手することができる。例えば、化学合成による酵素の作製;細菌、真菌、各種動植物の細胞または組織からの酵素の抽出;遺伝子工学的手段による酵素の作製;などによって入手することができる。勿論、市販の酵素を用いることも可能である。
コラーゲンまたはアテロコラーゲンを酵素(例えば、プロテアーゼ)によって分解することによって切断工程を行う場合には、例えば、以下の(i)または(ii)の方法にしたがって切断工程を行うことができる。なお、以下の(i)および(ii)の方法は、あくまでも切断工程の一例であって、本発明は、これら(i)および(ii)の方法に限定されない。
(i)高濃度の塩の存在下にて、コラーゲンまたはアテロコラーゲンと、酵素とを接触させる方法。
(ii)高濃度の塩と接触させた後の酵素と、コラーゲンまたはアテロコラーゲンとを接触させる方法。
上述した(i)の方法の具体例としては、例えば、高濃度の塩を含む水溶液中で、コラーゲンまたはアテロコラーゲンと、酵素とを接触させる方法を挙げることができる。
上述した(ii)の方法の具体例としては、例えば、高濃度の塩を含む水溶液と酵素とを予め接触させ、その後、当該酵素と、コラーゲンまたはアテロコラーゲンとを接触させる方法を挙げることができる。
上記水溶液の具体的な構成としては特に限定されないが、例えば、水を用いることが可能である。
上記塩の具体的な構成としては特に限定されないが、塩化物を用いることが好ましい。塩化物としては、特に限定されないが、例えば、NaCl、KCl、LiClまたはMgClを用いることが可能である。
上記水溶液における塩の濃度は特に限定されないが、高いほど好ましいといえる。例えば、当該濃度は、200mM以上であることが好ましく、500mM以上であることがより好ましく、1000mM以上であることがより好ましく、1500mM以上であることがより好ましく、2000mM以上であることが最も好ましい。
上記水溶液における塩の濃度の上限値は、特に限定されないが、例えば2500mMであり得る。塩の濃度が2500mMよりも高くなると、タンパク質の多くが塩析してしまい、その結果、酵素によるコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解効率が低下する傾向を示す。一方、塩の濃度が2500mM以下であれば、酵素によるコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解効率を高くすることができる。
したがって、上記水溶液における塩の濃度は、200mM以上2500mM以下であることが好ましく、500mM以上2500mM以下であることがより好ましく、1000mM以上2500mM以下であることがより好ましく、1500mM以上2500mM以下であることがより好ましく、2000mM以上2500mM以下であることが最も好ましい。
コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を大量調製するという観点からは、水溶液における塩の濃度の上限値は、500mM、または、800mMが好ましい。
水溶液における塩の濃度が高いほど、酵素によるコラーゲンまたはアテロコラーゲンの切断箇所の特異性を上げることができる。その結果、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を、より均一で、かつ、生理活性が高いものにすることができる。
上記水溶液(例えば、水)に溶解させるコラーゲンまたはアテロコラーゲンの量は特に限定されないが、例えば、1000重量部〜10000重量部の水溶液に対して、1重量部のコラーゲンまたはアテロコラーゲンを溶解させることが好ましい。
上記構成であれば、水溶液に対して酵素が加えられた場合、当該酵素とコラーゲンまたはアテロコラーゲンとを効率よく接触させることができる。そして、その結果、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを酵素(例えば、プロテアーゼ)によって効率よく分解することができる。
上記水溶液に加える酵素の量は特に限定されないが、例えば、100重量部のコラーゲンまたはアテロコラーゲンに対して、10重量部〜20重量部の酵素を加えることが好ましい。
上記構成であれば、水溶液中の酵素の濃度が高いので、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを酵素(例えば、プロテアーゼ)によって効率よく分解することができる。
水溶液中でコラーゲンまたはアテロコラーゲンと酵素とを接触させるときの他の条件(例えば、水溶液のpH、温度、接触時間など)も特に限定されず、適宜、設定することができるが以下の範囲であることが好ましい。
1)水溶液のpHは、pH2.0〜7.0が好ましく、pH2.5〜6.5が更に好ましい。水溶液のpHを上述した範囲に保つために、水溶液に対して周知のバッファーを加えることが可能である。上記pHであれば、水溶液中にコラーゲンまたはアテロコラーゲンを均一に溶解することができ、その結果、酵素反応を効率よく進めることができる。
2)温度は特に限定されず、用いる酵素に応じて温度を選択すればよい。例えば、当該温度は、15℃〜40℃であることが好ましく、20℃〜35℃であることがより好ましい。
3)接触時間は特に限定されず、酵素の量、および/または、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの量に応じて接触時間を選択すればよい。例えば、当該時間は、1時間〜60日間であることが好ましく、1日間〜7日間であることがより好ましく、3日間〜7日間であることがさらに好ましい。
なお、水溶液中でコラーゲンまたはアテロコラーゲンと酵素とを接触させた後、必要に応じて、pHを再調整する工程、酵素を失活させる工程、および、不純物を除去する工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程を経てもよい。
また、上記不純物を除去する工程は、物質を分離するための一般的な方法によって行うことができる。上記不純物を除去する工程は、例えば、透析、塩析、ゲル濾過クロマトグラフィー、等電点沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、または、疎水性相互作用クロマトグラフィーなどによって行うことができる。
上述したように、切断工程は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを酵素によって分解することによって行うことが可能である。このとき、分解されるコラーゲンまたはアテロコラーゲンは、生体組織中に含有された状態のものであってもよい。つまり、切断工程は、生体組織と酵素とを接触させることによって行うことも可能である。
生体組織としては、特に限定されず、その例として哺乳類または鳥類の真皮、腱、骨または筋膜、あるいは、魚類の皮膚または鱗を用いることができる。
高い生理活性を維持し、かつ、多量にコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を得るという観点からは、生体組織として骨を用いることが好ましい。
生体組織として骨を用いる場合、酸性条件下で骨と酵素とを接触させることが好ましい。例えば、上記酸性条件としては、好ましくはpH2.5〜6.5、更に好ましくはpH2.5〜5.0、更に好ましくはpH2.5〜4.0、最も好ましくはpH2.5〜3.5である。
より具体的に、本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、上記切断工程では、上記システインプロテアーゼと骨とを接触させることによって、該骨に含まれるコラーゲンと、上記システインプロテアーゼとを接触させることが好ましい。
また、本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、上記切断工程では、200mM以上の濃度の塩の存在下にて、骨と、システインプロテアーゼとを接触させることが好ましい。
また、本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、上記切断工程では、200mM以上の濃度の塩と接触させた後のシステインプロテアーゼと、骨とを接触させることが好ましい。
〔2−2.化学合成法〕
化学合成法を採用する場合には、例えば、以下のように切断工程を構成することができる。
まず、周知のデータベースから、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを構成する各ポリペプチド鎖のアミノ酸配列の情報を入手する。なお、当該ポリペプチド鎖は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのタイプに応じて適宜選択すればよく、1種類のポリペプチド鎖であってもよく、複数の種類のポリペプチド鎖であってもよい。
次いで、上記ポリペプチドの中から、切断されるべき化学結合を含むポリペプチド鎖および切断されるべき化学結合の位置を決定するとともに、当該化学結合が切断されたと想定したときの、所望のポリペプチド鎖のアミノ酸配列を決定する。
最後に、決定されたアミノ酸配列にしたがって、所望のポリペプチド鎖を周知の化学合成法によって合成する。
以上のようにして、切断工程を実施することができる。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、上述した切断工程以外の工程を含むことも可能である。
例えば、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、所望のポリペプチド鎖を周知の化学合成法によって合成した後で、合成されたポリペプチド鎖を精製する工程を含んでいてもよい。なお、当該精製は、適宜、周知のカラムを用いて行えばよい。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、所望のポリペプチド鎖と、他のポリペプチド鎖とを混合する工程を含んでいてもよい。なお、他のポリペプチド鎖としては特に限定されず、同様に化学結合が切断されているポリペプチド鎖であってもよいし、化学結合が切断されていないポリペプチド鎖であってもよい。
〔2−3.組み換えタンパク質の発現に基づく切断工程〕
組み換えタンパク質の発現に基づく切断工程を採用する場合には、例えば、以下のように切断工程を構成することができる。
まず、周知のデータベースから、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを構成する各ポリペプチド鎖のアミノ酸配列の情報を入手する。なお、当該ポリペプチド鎖は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのタイプに応じて適宜選択すればよく、1種類のポリペプチド鎖であってもよく、複数の種類のポリペプチド鎖であってもよい。
次いで、上記ポリペプチドの中から、切断されるべき化学結合を含むポリペプチド鎖および切断されるべき化学結合の位置を決定するとともに、当該化学結合が切断されたと想定したときの、所望のポリペプチド鎖のアミノ酸配列およびDNA配列を決定する。
次いで、所望のポリペプチド鎖をコードするDNAを周知のタンパク質発現ベクターに挿入する。そして、当該タンパク質発現ベクターを所望の宿主(例えば、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞など)に導入した後、当該宿主内で、化学結合が切断された後のポリペプチド鎖を発現させる。
以上のようにして、切断工程を実施することができる。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、上述した切断工程以外の工程を含むことも可能である。
例えば、本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、宿主内で、所望のポリペプチド鎖を発現させた後で、発現したポリペプチド鎖を精製する工程を含んでいてもよい。なお、当該精製は、適宜、周知のカラムを用いて行えばよい。
本実施の形態のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、所望のポリペプチド鎖と、他のポリペプチド鎖とを混合する工程を含んでいてもよい。なお、他のポリペプチド鎖としては特に限定されず、同様に化学結合が切断されているポリペプチド鎖であってもよいし、化学結合が切断されていないポリペプチド鎖であってもよい。
〔3.コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の用途〕
本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の用途としては、スフェロイド形成用組成物を挙げることができる。
つまり、本実施の形態のスフェロイド形成用組成物は、本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を含むものである。
本実施の形態のスフェロイド形成用組成物中に含まれる、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の量は特に限定されない。
例えば、本実施の形態のスフェロイド形成用組成物中に、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物が、0.1重量%〜100重量%含まれていても良いし、50重量%〜100重量%含まれていてもよいし、90重量%〜100重量%含まれていてもよい。勿論、本発明は、上述した構成に限定されない。
また、本実施の形態のスフェロイド形成用組成物には、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物以外の構成が添加されていてもよい。これらの構成としては特に限定されず、適宜、所望の構成を添加することができる。
本発明は、以下のように構成することも可能である。
<1>本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物は、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、または、X14とGとの間の化学結合が切断されている、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物であることを特徴としている:
(1)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−
(2)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X10−G−X11−X12−G−X13−X14−G−
(但し、Gは、グリシンであり、X〜X14は、任意のアミノ酸である)。
<2>本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物では、上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列は、上記トリプルヘリカルドメインのアミノ末端のアミノ酸配列であることが好ましい。
<3>本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物では、上記切断が、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンのα1鎖内およびα2鎖内の少なくとも一方で行われていることが好ましい。
<4>本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物では、上記切断が、200mM以上の濃度の塩の存在下にて、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンと、システインプロテアーゼとを接触させることによって行われていることが好ましい。
<5>本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物では、上記切断が、200mM以上の濃度の塩と接触させた後のシステインプロテアーゼと、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンとを接触させることによって行われていることが好ましい。
<6>本発明のスフェロイド形成用組成物は、本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を含むことを特徴としている。
<7>本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、または、X14とGとの間の化学結合を切断する、切断工程を含むことを特徴としている:
(1)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−
(2)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X10−G−X11−X12−G−X13−X14−G−
(但し、Gは、グリシンであり、X〜X14は、任意のアミノ酸である)。
<8>本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法では、上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列は、上記トリプルヘリカルドメインのアミノ末端のアミノ酸配列であることが好ましい。
<9>本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法では、上記切断が、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンのα1鎖内およびα2鎖内の少なくとも一方で行われることが好ましい。
<10>本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、上記切断工程では、200mM以上の濃度の塩の存在下にて、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンと、システインプロテアーゼとを接触させることが好ましい。
<11>本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、上記切断工程では、200mM以上の濃度の塩と接触させた後のシステインプロテアーゼと、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンとを接触させることが好ましい。
<12>本発明のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法は、上記切断工程では、上記システインプロテアーゼと骨とを接触させることによって、該骨に含まれるコラーゲンと、上記システインプロテアーゼとを接触させることが好ましい。
<1.ブタ由来のα1鎖の切断における、塩濃度の影響>
塩化ナトリウムの濃度が0mM、200mM、1000mM、1500mMまたは2000mMである50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)を準備した。なお、当該水溶液の溶媒としては、水を用いた。
アクチニダインを活性化するため、10mM ジチオスレイトールを含む50mM リン酸緩衝液(pH6.5)に対し、アクチニダインを溶解し、90分間、25℃にて静置した。なお、アクチニダインとしては、周知の方法にて精製したものを利用した(例えば、非特許文献2参照)。
次いで、塩を含む50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)に対し、ブタ由来のI型コラーゲンを溶解した。アクチニダインを含む水溶液と、ブタ由来のI型コラーゲンを含む当該溶液と、を10日間以上、20℃にて接触させて、I型コラーゲンの分解物を作製した。なお、ブタ由来のI型コラーゲンは、周知の方法に基づいて精製した(例えば、非特許文献2参照)。
上述した分解物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、I型コラーゲンの分解物を分離した。
次いで、I型コラーゲンの分解物を、常法によりPVDF(Polyvinylidene Difluoride)膜へ転写した。そして、PVDF膜へ転写されたα1鎖の分解物のアミノ末端のアミノ酸配列を、エドマン分解法によって決定した。
なお、実際のエドマン分析は、アプロサイエンス株式会社、または、近畿大学医学部分析機器共同研究室に依頼して、周知の方法にしたがって行った。
表1に、塩濃度が0mM、200mM、1000mM、1500mMまたは2000mMの場合のα1鎖の分解物のアミノ末端およびその近傍のアミノ酸配列を示す。
表1に示すように、塩濃度が異なると、α1鎖内の切断箇所が異なることが明らかになった。より具体的には、塩濃度が低いと(例えば、0mM)、トリプルヘリカルドメインの外で切断が生じ、塩濃度が高いと(例えば、200mM以上)、トリプルヘリカルドメインの内側で切断が生じることが明らかになった。
塩濃度が高いときの切断箇所は、本発明者が見出した新規な切断箇所であった。
なお、塩濃度を変化させると、分解物中に含まれる、配列番号2にて示すアミノ酸配列のアミノ末端を有する分解物の量と、配列番号3にて示すアミノ酸配列のアミノ末端を有する分解物の量と、の比率が異なった。分解物を大量に調製しようとすると、塩濃度が2000mMを超えるとNaClが不溶化した。分解物を大量に調製する場合、塩濃度の上限値を500mMまたは800mMに設定することが好ましいと考えられる。
<2.ラットおよびニワトリ由来のα1鎖の切断における、塩濃度の影響>
塩化ナトリウムの濃度が2000mMである50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)を準備した。なお、当該水溶液の溶媒としては、水を用いた。
アクチニダインを活性化するため、10mM ジチオスレイトールを含む50mM リン酸緩衝液(pH6.5)に対し、アクチニダインを溶解し、90分間、25℃にて静置した。
次いで、塩を含む50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)に対し、ラット尾部由来のI型コラーゲン、または、ニワトリ皮部由来のI型コラーゲンを溶解した。アクチニダインを含む水溶液と、ラット尾部由来のI型コラーゲン、または、ニワトリ皮部由来のI型コラーゲンと、を10日間以上、20℃にて接触させて、I型コラーゲンの分解物を作製した。なお、アクチニダインとしては、上述した<1>の実施例にて用いたものと同じものを用いた。また、ラット尾部由来のI型コラーゲン、および、ニワトリ皮部由来のI型コラーゲンは、周知の方法に基づいて精製した(例えば、非特許文献2参照)。
上述した分解物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、I型コラーゲンの分解物を分離した。
次いで、I型コラーゲンの分解物を、常法によりPVDF(Polyvinylidene Difluoride)膜へ転写した。そして、PVDF膜へ転写されたα1鎖の分解物のアミノ末端のアミノ酸配列を、エドマン分解法によって決定した。
なお、実際のエドマン分析は、アプロサイエンス株式会社、または、近畿大学医学部分析機器共同研究室に依頼して、周知の方法にしたがって行った。
表2に、塩濃度が2000mMの場合のラット由来のα1鎖の分解物のアミノ末端およびその近傍のアミノ酸配列、および、未分解であるラット由来のα1鎖の部分構造(塩濃度の欄が「−」であるデータを参照)を示す。
表3に、塩濃度が2000mMの場合のニワトリ由来のα1鎖の分解物のアミノ末端およびその近傍のアミノ酸配列、および、未分解であるニワトリ由来のα1鎖の部分構造(塩濃度の欄が「−」であるデータを参照)を示す。
表2および3に示すように、異なる種に由来するα1鎖であっても、塩濃度が高いと、トリプルヘリカルドメインの内側で切断が生じることが明らかになった。
塩濃度が高いときの切断箇所は、本発明者が見出した新規な切断箇所であった。
<3.塩の種類に関する検討>
MgClの濃度が500mMである水溶液、および、KClの濃度が200mMである水溶液を準備した。なお、当該水溶液の溶媒としては、水を用いた。
上記水溶液の各々に対し、アクチニダインと、ブタ由来のI型コラーゲンとを混合した後、10日以上、20℃にて反応させて、I型コラーゲンの分解物を作製した。なお、アクチニダインとしては、上述した<1>の実施例にて用いたものと同じものを用いた。また、ブタ由来のI型コラーゲンは、周知の方法に基づいて精製した(例えば、非特許文献2参照)。
上述した分解物の各々をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、α1鎖の分解物を分離した。
次いで、I型コラーゲンの分解物を、常法によりPVDF(Polyvinylidene Difluoride)膜へ転写した。そして、PVDF膜へ転写されたα1鎖の分解物のアミノ末端のアミノ酸配列を、エドマン分解法によって決定した。
なお、実際のエドマン分析は、アプロサイエンス株式会社、または、近畿大学医学部分析機器共同研究室に依頼して、周知の方法にしたがって行った。
表4に、MgClの濃度が500mMである水溶液を用いた場合、および、KClの濃度が200mMである水溶液を用いた場合のブタ由来のα1鎖の分解物のアミノ末端およびその近傍のアミノ酸配列、および、未分解であるブタ由来のα1鎖の部分構造(塩濃度の欄が「−」であるデータを参照)を示す。
表4に示すように、異なる種類の塩であっても、トリプルヘリカルドメインの中で切断が生じることが明らかになった。
異なる種類の塩を用いた場合の切断箇所は、本発明者が見出した新規な切断箇所であった。
<4.システインプロテアーゼの種類に関する検討>
本実施例では、システインプロテアーゼの一種であるカテプシンKを用いて、高塩濃度条件下におけるα1鎖の切断箇所を検討した。以下に、試験方法および試験結果を説明する。
塩化ナトリウムの濃度が2000mMである50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)を準備した。なお、当該水溶液の溶媒としては、水を用いた。
カテプシンKを活性化するため、10mM ジチオスレイトールを含む50mM リン酸緩衝液(pH6.5)に対し、カテプシンKを溶解し、45分間、25℃にて静置した。なお、カテプシンKとしては、市販のものを利用した。
次いで、塩を含む50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)に対し、ニワトリ由来のI型コラーゲン、または、ブタ由来のI型コラーゲンを溶解した。カテプシンKを含む水溶液と、ニワトリ由来のI型コラーゲン、または、ブタ由来のI型コラーゲンを含む当該溶液と、を10日間以上、20℃にて接触させて、I型コラーゲンの分解物を作製した。なお、ニワトリ由来のI型コラーゲン、および、ブタ由来のI型コラーゲンは、周知の方法に基づいて精製した(例えば、非特許文献2参照)。
上述した分解物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、I型コラーゲンの分解物を分離した。
次いで、I型コラーゲンの分解物を、常法によりPVDF(Polyvinylidene Difluoride)膜へ転写した。そして、PVDF膜へ転写されたα1鎖の分解物のアミノ末端のアミノ酸配列を、エドマン分解法によって決定した。
なお、実際のエドマン分析は、アプロサイエンス株式会社、または、近畿大学医学部分析機器共同研究室に依頼して、周知の方法にしたがって行った。
表5に、ブタ由来のα1鎖の分解物のアミノ末端およびその近傍のアミノ酸配列、および、未分解であるブタ由来のα1鎖の部分構造(塩濃度の欄が「−」であるデータを参照)を示す。
表5に示すように、システインプロテアーゼの一種であるカテプシンKであっても、塩濃度が高いと、トリプルヘリカルドメインの内側で切断が生じることが明らかになった。
また、表5に示すように、システインプロテアーゼの一種であるカテプシンKの場合には、複数種類の切断箇所が確認された。
なお、ニワトリ由来のI型コラーゲンの分解物の場合、ニワトリ由来のα1鎖の分解物は、下記配列番号11および12に対応するニワトリ由来のα1鎖の分解物と、下記配列番号10におけるアミノ末端から数えて10番目の「S」と11番目の「G」との間の化学結合が切断されたものに対応するニワトリ由来のα1鎖の分解物と、が確認された。
<5.ブタ由来のα1鎖の切断における、透析塩濃度の影響>
透析チューブにアクチニダインを入れ、当該アクチニダインを、塩化ナトリウムの濃度が2000mMである透析外液に対して透析した。その後、透析外液を蒸留水に変えて透析を続けてアクチニダインを得た。なお、アクチニダインとしては、周知の方法にて精製したものを利用した(例えば、非特許文献2参照)。アクチニダインを活性化するため、10mM ジチオスレイトールを含む50mM リン酸緩衝液(pH6.5)に対し、アクチニダインを溶解し、90分間、25℃にて静置した。
次いで、塩を含む50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)に対し、ブタ由来のI型コラーゲンを溶解した。アクチニダインを含む水溶液と、ブタ由来のI型コラーゲンと、を3日間以上、20℃にて接触させて、I型コラーゲンの分解物を作製した。また、ブタ由来のI型コラーゲンは、周知の方法に基づいて精製した(例えば、非特許文献2参照)。
上述した分解物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、I型コラーゲンの分解物を分離した。
次いで、I型コラーゲンの分解物を、常法によりPVDF(Polyvinylidene Difluoride)膜へ転写した。そして、PVDF膜へ転写されたα1鎖の分解物のアミノ末端のアミノ酸配列を、エドマン分解法によって決定した。
なお、実際のエドマン分析は、アプロサイエンス株式会社、または、近畿大学医学部分析機器共同研究室に依頼して、周知の方法にしたがって行った。
表6に、透析塩濃度が2000mMの場合のブタ由来のα1鎖の分解物のアミノ末端およびその近傍のアミノ酸配列、および、未分解であるブタ由来のα1鎖の部分構造(塩濃度の欄が「−」であるデータを参照)を示す。
表6に示すように、透析塩濃度が高いと、トリプルヘリカルドメインの内側で切断が生じることが明らかになった。
塩濃度が高いときの切断箇所は、本発明者が見出した新規な切断箇所であった。
<6.ヒト由来のα1鎖の切断における、透析塩濃度の影響>
透析チューブにアクチニダインを入れ、当該アクチニダインを、塩化ナトリウムの濃度が2000mMである透析外液に対して透析した。その後、透析外液を蒸留水に変えて透析を続けてアクチニダインを得た。なお、アクチニダインとしては、周知の方法にて精製したものを利用した(例えば、非特許文献2参照)。アクチニダインを活性化するため、10mM ジチオスレイトールを含む50mM リン酸緩衝液(pH6.5)に対し、アクチニダインを溶解し、90分間、25℃にて静置した。
次いで、塩を含む50mM クエン酸緩衝液(pH3.5)に対し、ヒト由来のI型コラーゲンを溶解した。アクチニダインを含む水溶液と、ヒト由来のI型コラーゲンと、を10日間以上、20℃にて接触させて、I型コラーゲンの分解物を作製した。また、ヒト由来のI型コラーゲンは、周知の方法に基づいて精製した(例えば、非特許文献2参照)。
上述した分解物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、I型コラーゲンの分解物を分離した。
次いで、I型コラーゲンの分解物を、常法によりPVDF(Polyvinylidene Difluoride)膜へ転写した。そして、PVDF膜へ転写されたα1鎖の分解物のアミノ末端のアミノ酸配列を、エドマン分解法によって決定した。
なお、実際のエドマン分析は、アプロサイエンス株式会社、または、近畿大学医学部分析機器共同研究室に依頼して、周知の方法にしたがって行った。
表7に示すように、透析塩濃度が高いと、トリプルヘリカルドメインの内側で切断が生じることが明らかになった。
塩濃度が高いときの切断箇所は、本発明者が見出した新規な切断箇所であった。
<7.コラーゲンの分解物のスフェロイド誘導能に関する試験−1>
上述したコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、ブタ由来のα1鎖の分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。
各培養用プレートに細胞(正常ヒト皮膚線維芽細胞NHDF、マウス初代胎児線維芽細胞MEF、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVEC、マウス骨芽細胞前駆細胞株MC3T3−E1サブクローン4、マウス脂肪細胞前駆細胞株MC3T3−G2/PA6、ヒト骨髄間葉系幹細胞MSC、ラット骨髄間葉系幹細胞MSC)を播種し、37℃、5%COの条件下にて培養を行った。
培養を開始してから所定の時間が経過した後の細胞を、顕微鏡にて観察した。
各細胞の顕微鏡写真を、図1〜7に示す。
具体的に、図1(a)および(b)は、正常ヒト皮膚線維芽細胞NHDF(C−12302,PromoCell社)、図2(a)および(b)は、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVEC(C−12203,PromoCell社)、図3(a)および(b)は、マウス骨芽細胞前駆細胞株MC3T3−E1サブクローン4(ATCC(登録商標)CRL−2593,住商ファーマインターナショナル株式会社)、図4(a)および(b)は、マウス脂肪細胞前駆細胞株MC3T3−G2/PA6(RBRC−RCB1127,独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター)、図5(a)および(b)は、ヒト骨髄間葉系幹細胞MSC(PT−034,ロンザジャパン社)、図6(a)および(b)は、ラット骨髄間葉系幹細胞MSC(BMC01,株式会社プライマリーセル)、図7(a)および(b)は、マウス初代胎児線維芽細胞MEF(R−PMEF−CFL,DSファーマバイオメディカル株式会社)の顕微鏡写真を示す。
図1〜7において、「PHCol」は、市販のペプシン処理されたI型コラーゲンと接触させた培養用プレートの結果を示し、「LASCol」は、本実施例のコラーゲンの分解物と接触させた培養用プレートの結果を示している。
また、図1〜7において、各図面に記載した時間は、培養時間を示している。
図1〜7から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、様々な種類の細胞に対してスフェロイド誘導能を有していることが明らかになった。
<6.コラーゲンの分解物のスフェロイド誘導能に関する試験−2>
上述したコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、ブタ由来のα1鎖の分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。
各培養用プレートに細胞(マウス線維芽細胞NIH/3T3(RBRC−RCB2767,独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター))を播種し、37℃、5%COの条件下にて培養を行った。
培養を開始してから所定の時間が経過した後の細胞を、顕微鏡にて観察した。顕微鏡写真を図8に示す。なお、図8において、「LASCol」は、本実施例のコラーゲンの分解物と接触させた培養用プレートの結果を示し、「CPCol」は、従来のコラーゲン分解物(WO2004/020470参照)と接触させた培養用プレートの結果を示している。
図8から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、従来のコラーゲンの分解物と比較して、早くスフェロイドを形成できるばかりでなく、大きなスフェロイドを形成できることが明らかになった。
<8.コラーゲンの分解物のスフェロイド誘導能に関する試験−3>
上述したコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、ブタ由来のコラーゲンの分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。初代ヒト間葉系幹細胞(LONZA社)を当該細胞専用の増殖培地(MSCBM+MSCGM、LONZA社)中に懸濁した後、上述した培養用プレート上に播種し、37℃、5%COの条件下で1日培養して、初代ヒト間葉系幹細胞を培養用プレート上に接着させた。その後、周知の方法にしたがって15日間の分化誘導を行い、初代ヒト間葉系幹細胞をヒト軟骨細胞へ分化させた。分化誘導後の軟骨細胞の様子を図9(a)に示す。図9(a)から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、軟骨細胞のスフェロイド形成を著しく促進した。
上述したコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、ブタ由来のコラーゲンの分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。初代ヒト間葉系幹細胞(LONZA社)を当該細胞専用の増殖培地(MSCBM+MSCGM、LONZA社)中に懸濁した後、上述した培養用プレート上に播種し、37℃、5%COの条件下で1日培養して、初代ヒト間葉系幹細胞を培養用プレート上に接着させた。その後、周知の方法にしたがって5日間の分化誘導を行い、初代ヒト間葉系幹細胞をヒト骨芽細胞へ分化させた。分化誘導後の骨芽細胞の様子を図9(b)に示す。図9(b)から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、骨芽細胞のスフェロイド形成を著しく促進した。
上述したコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、ブタ由来のコラーゲンの分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。マウスMC3T3−G2/PA6細胞(理研BRC、脂肪前記細胞)を増殖培地(10%FBS DMEM)中に懸濁した後、上述した培養用プレート上に播種し、37℃、5%COの条件下で1日培養して、マウスMC3T3−G2/PA6細胞を培養用プレート上に接着させた。接着後のマウスMC3T3−G2/PA6細胞(換言すれば、脂肪前記細胞)の様子を図9(c)に示す。図9(c)から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、脂肪前駆細胞のスフェロイド形成を著しく促進した。
上述したコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、ブタ由来のコラーゲンの分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。ヒト乳腺がん細胞MCF−7(理研BRC、RCB1904)を増殖培地(MEM+10% FBS+0.1mM NEAA+1mM Sodium Pyruvate)中に懸濁した後、上述した培養用プレート上に播種し、37℃、5%COの条件下で7日培養して、ヒト乳腺がん細胞MCF−7を培養用プレート上に接着させた。接着後のヒト乳腺がん細胞MCF−7(換言すれば、乳腺がん細胞)の様子を図9(d)に示す。図9(d)から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、乳腺がん細胞のスフェロイド形成を著しく促進した。
上述したコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、ブタ由来のコラーゲンの分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。ヒト肺がん細胞A549(理研BRC、RCB0098)を増殖培地(10%FBS DMEM)中に懸濁した後、上述した培養用プレート上に播種し、37℃、5%COの条件下で7日培養して、ヒト肺がん細胞A549を培養用プレート上に接着させた。接着後のヒト肺がん細胞A549(換言すれば、肺がん細胞)の様子を図9(e)に示す。図9(e)から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、肺がん細胞のスフェロイド形成を著しく促進した。
上述したコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、ブタ由来のコラーゲンの分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。ラット卵巣から採取した初代細胞を増殖培地(10%FBS DMEM)中に懸濁した後、上述した培養用プレート上に播種し、37℃、5%COの条件下で1日培養して、当該卵巣由来の初代細胞を培養用プレート上に接着させた。接着後の卵巣由来の初代細胞の様子を図9(f)に示す。図9(f)から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、卵巣由来の初代細胞のスフェロイド形成を著しく促進した。
上述したコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、ブタ由来のコラーゲンの分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。マウス胎児由来の線維芽細胞(MEF)を増殖培地(10%FBS DMEM)中に懸濁した後、上述した培養用プレート上に播種し、37℃、5%COの条件下で1日培養して、当該胎児由来の線維芽細胞を培養用プレート上に接着させた。接着後の線維芽細胞の様子を図9(g)に示す。図9(g)から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、線維芽細胞のスフェロイド形成を著しく促進した。
上述したコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、ブタ由来のコラーゲンの分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。マウスES細胞を増殖培地(10%FBS DMEM)中に懸濁した後、上述した培養用プレート上に播種し、37℃、5%COの条件下で1日培養して、当該マウスES細胞を培養用プレート上に接着させた。接着後のES細胞の様子を図9(h)に示す。図9(h)から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、ES細胞のスフェロイド形成を著しく促進した。
上述したコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、ブタ由来のコラーゲンの分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。マウスembryonal carcinoma由来の細胞株(P19.CL6)を増殖培地(10%FBS MEMα)中に懸濁した後、上述した培養用プレート上に播種し、37℃、5%COの条件下で1日培養して、当該embryonal carcinoma由来の細胞株を培養用プレート上に接着させた。接着後のembryonal carcinoma由来の細胞株の様子を図9(i)に示す。図9(i)から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、embryonal carcinoma由来の細胞株のスフェロイド形成を著しく促進した。
キハダマグロのコラーゲンの分解物(塩濃度200mMにおける、キハダマグロ由来のコラーゲンの分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。マウスNIH/3T3線維芽細胞を増殖培地(10%CS DMEM)中に懸濁した後、上述した培養用プレート上に播種し、37℃、5%COの条件下で1日培養して、当該線維芽細胞を培養用プレート上に接着させた。接着後の線維芽細胞の様子を図9(j)に示す。図9(j)から明らかなように、本実施例のコラーゲンの分解物は、線維芽細胞のスフェロイド形成を著しく促進した。
<9.魚類由来のα1鎖の切断>
透析チューブにアクチニダインを入れ、当該アクチニダインを、塩化ナトリウムの濃度が2000mMである透析外液に対して透析した。その後、透析外液を蒸留水に変えて透析を続けてアクチニダインを得た。アクチニダインを活性化するため、10mM ジチオスレイトールを含む50mM リン酸緩衝液(pH6.5)に対し、アクチニダインを溶解し、90分間、25℃にて静置した。
次いで、塩を含む50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)に対し、魚類(具体的には、キハダマグロ)由来のI型コラーゲンを溶解した。アクチニダインを含む水溶液と、魚類由来のI型コラーゲンと、を3日間以上、20℃にて接触させて、I型コラーゲンの分解物を作製した。なお、アクチニダインとしては、上述した<1>の実施例にて用いたものと同じものを用いた。また、魚類由来のI型コラーゲンは、周知の方法に基づいて精製した(例えば、非特許文献2参照)。
上述した分解物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、I型コラーゲンの分解物を分離した。
次いで、I型コラーゲンの分解物を、常法によりPVDF(Polyvinylidene Difluoride)膜へ転写した。そして、PVDF膜へ転写されたα1鎖(魚類由来のI型コラーゲン)の分解物のアミノ末端のアミノ酸配列を、エドマン分解法によって決定した。
なお、実際のエドマン分析は、アプロサイエンス株式会社、または、近畿大学医学部分析機器共同研究室に依頼して、周知の方法にしたがって行った。
表8に、透析外液の塩濃度が2000mMの場合の、魚類由来のα1鎖の分解物のアミノ末端およびその近傍のアミノ酸配列を示す。なお、表8に示すように、α1鎖(魚類由来のI型コラーゲン)の分解物としては2種類検出され、これらの分解物の各々のアミノ末端のアミノ酸配列として、配列番号17および18に示すアミノ酸配列を同定することに成功した。
<10.ヒト由来のα2鎖の切断>
<4>と同様にカテプシンKを活性化するため、10mM ジチオスレイトールを含む50mM リン酸緩衝液(pH6.5)に対し、カテプシンKを溶解し、45分間、25℃にて静置した。
次いで、塩を含む50mM リン酸緩衝液(pH6.0)に対し、ヒト由来のI型コラーゲンを溶解した。カテプシンKを含む水溶液と、ヒト由来のI型コラーゲンと、を10日間以上、20℃にて接触させて、I型コラーゲンの分解物を作製した。なお、カテプシンKとしては、上述した<1>の実施例にて用いたものと同じものを用いた。また、ヒト由来のI型コラーゲンは、周知の方法に基づいて精製した(例えば、非特許文献2参照)。
上述した分解物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、I型コラーゲンの分解物を分離した。
次いで、I型コラーゲンの分解物を、常法によりPVDF(Polyvinylidene Difluoride)膜へ転写した。そして、PVDF膜へ転写されたα2鎖(ヒト由来のI型コラーゲン)の分解物のアミノ末端のアミノ酸配列を、エドマン分解法によって決定した。
なお、実際のエドマン分析は、アプロサイエンス株式会社、または、近畿大学医学部分析機器共同研究室に依頼して、周知の方法にしたがって行った。
表9に、反応液の塩濃度が200mMの場合の、ヒト由来のα2鎖の分解物のアミノ末端およびその近傍のアミノ酸配列を示す。
<11.ニワトリ由来のα2鎖の切断>
透析チューブにアクチニダインを入れ、当該アクチニダインを、塩化ナトリウムの濃度が2000mMである透析外液に対して透析した。その後、透析外液を蒸留水に変えて透析を続けてアクチニダインを得た。アクチニダインを活性化するため、10mM ジチオスレイトールを含む50mM リン酸緩衝液(pH6.5)に対し、アクチニダインを溶解し、90分間、25℃にて静置した。
次いで、塩を含む50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)に対し、ニワトリ由来のI型コラーゲンを溶解した。アクチニダインを含む水溶液と、ニワトリ由来のI型コラーゲンと、を7日間以上、20℃にて接触させて、I型コラーゲンの分解物を作製した。なお、アクチニダインとしては、上述した<1>の実施例にて用いたものと同じものを用いた。また、ニワトリ由来のI型コラーゲンは、周知の方法に基づいて精製した(例えば、非特許文献2参照)。
上述した分解物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、I型コラーゲンの分解物を分離した。
次いで、I型コラーゲンの分解物を、常法によりPVDF(Polyvinylidene Difluoride)膜へ転写した。そして、PVDF膜へ転写されたα2鎖(ニワトリ由来のI型コラーゲン)の分解物のアミノ末端のアミノ酸配列を、エドマン分解法によって決定した。
なお、実際のエドマン分析は、アプロサイエンス株式会社、または、近畿大学医学部分析機器共同研究室に依頼して、周知の方法にしたがって行った。
表10に、透析外液の塩濃度が2000mMの場合の、ニワトリ由来のα2鎖の分解物のアミノ末端およびその近傍のアミノ酸配列を示す。
表に示すように、異なる種に由来するα1鎖またはα2鎖であっても、塩濃度が高いと、トリプルヘリカルドメインの内側で切断が生じることが明らかになった。塩濃度が高いときの切断箇所は、本発明者が見出した新規な切断箇所であった。
<12.骨からのコラーゲンの精製>
透析チューブにアクチニダインを入れ、当該アクチニダインを、塩化ナトリウムの濃度が2000mMの透析外液に対して透析した。その後、透析外液を蒸留水に変えて透析を続けてアクチニダインを得た。なお、アクチニダインとしては、周知の方法にて精製したものを利用した(例えば、非特許文献2参照)。アクチニダインを活性化するため、10mM ジチオスレイトールを含む50mM リン酸緩衝液(pH6.5)に対し、アクチニダインを溶解し、90分間、25℃にて静置した。
次いで、以下の(i)〜(iii)の組み合わせにて、緩衝液と骨とを混合した。つまり、(i)塩を含む50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)とニワトリ尺骨(45mg(湿重量))とを混合、(ii)塩を含む50mM クエン酸緩衝液(pH2.5、3.0)とブタ脛骨(20mg(乾重量))とを混合、または、(iii)塩を含む50mM醋酸緩衝液(pH4.5、5.0、5.5)とブタ脛骨(20mg(乾重量))とを混合、した。
アクチニダインを含む水溶液と、骨を含む上記(i)〜(iii)の溶液と、を10日間以上、20℃にて接触させて、コラーゲンの分解物を作製した。
対照として、以下の(iv)〜(v)の組み合わせにて、緩衝液と骨とを混合した。つまり、(iv)ブタ・ペプシンを溶解した、塩を含む50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)とニワトリ尺骨(45mg(湿重量))とを混合、(v)ブタ・ペプシンを溶解した、塩を含む50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)とブタ脛骨(20mg(乾重量))と、を混合、した。
ブタ・ペプシンを含む水溶液と、骨を含む上記(iv)〜(v)の溶液と、を7日間以上、20℃にて接触させて、コラーゲンの分解物を作製した。
典型的な実験例として、pH3.0の条件下でアクチニダインを用いた場合のコラーゲンの分解物の重量を測定したところ、45mg(湿重量)のニワトリ尺骨から、18.5mgのコラーゲンの分解物を回収することに成功し(回収率41%)、20mg(乾重量)のブタの脛骨から、15.4mgのコラーゲンの分解物を回収することに成功した(回収率77%)。
一方、ブタ・ペプシンを用いた場合のコラーゲンの分解物の重量を測定したところ、45mg(湿重量)のニワトリ尺骨から、1.7mgのコラーゲンの分解物を回収することに成功し(回収率3.8%)、20mg(乾重量)のブタの脛骨から、0.2mgのコラーゲンの分解物を回収した(回収率1.0%)。
回収率の差は歴然であり、更に、本実施例の方法で得られた骨由来の可溶化コラーゲンは、真皮由来のコラーゲンと同等の用途に用いることが考えられる。
骨や象牙質は、硬組織に分類され、真皮や腱のような軟組織とは異なり、コラーゲン、または、コラーゲンの分解物を回収するための原料としては、好ましくない原料であると考えられてきた。骨から3本鎖らせん構造を有するコラーゲンを抽出する方法は従来報告されておらず、骨を加熱変性処理して、骨からゼラチンを抽出するに止まっていた。
しかし驚くべきことに、本実施例の方法であれば、骨の固形分は完全に溶解し、大量のコラーゲンの分解物、および、骨マトリックスタンパク質を回収することに成功した。
図10(a)および図10(b)に、骨断片と各酵素を接触後、11日間静置した写真を示す。アクチニダインを用いた場合、消化されずに残っている骨断片が確認されなかった。一方、ペプシンを用いた場合、消化されずに残っている大きな骨断片が確認された。
分解物中に含まれる骨マトリックスタンパク質を、質量分析計を用いたペプチドマスフィンガープリント法により同定した。このようなコラーゲン以外の骨特有の有用な骨マトリックスタンパク質(例えば、オステオカルシンなど)も、骨組織を可溶化することで効率良く回収できることが確認でき、本実施例の方法であれば、有用な骨マトリックスタンパク質を含む分解物を作製できる。酵素が添加されていない緩衝液に沈めた骨は、全く可溶化せず、骨断片の形状も経時的に変化しなかった。
次いで、コラーゲンの分解物を、常法によりPVDF(Polyvinylidene Difluoride)膜へ転写した。そして、PVDF膜へ転写された分解物のアミノ末端のアミノ酸配列を、エドマン分解法によって決定した。
なお、実際のエドマン分析は、アプロサイエンス株式会社、または、近畿大学医学部分析機器共同研究室に依頼して、周知の方法にしたがって行った。
エドマン分析の結果、得られた分解物には、アミノ末端およびその近傍のアミノ酸配列が、配列番号14にて示すアミノ酸配列に対応する分解物、が含まれていることが明らかになった。
骨組織から調製したコラーゲンの分解物(ブタ脛骨由来のコラーゲンの分解物)と接触させた、市販の培養用プレートを試験に用いた。ヒト骨髄間葉系幹細胞MSCを増殖培地(MSCGM)中に懸濁した後、上述した培養用プレート上に播種し、37℃、5%COの条件下で1日培養して、当該細胞を培養用プレート上に接着させた。接着後の線維芽細胞の様子を図11に示す。図11から明らかなように、本実施例の骨由来コラーゲンの分解物は、線維芽細胞のスフェロイド形成を著しく促進した。
本発明は、スフェロイド形成用組成物、食品添加剤、医療材料、化粧品材料、細胞または胚などを培養するための培養材料(例えば、培養装置(例えば、培養皿など)のコーティング材料、培地成分)などに利用することができる。

Claims (9)

  1. コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物であって、
    上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、または、GとXとの間の化学結合が切断されており、
    上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列は、上記トリプルヘリカルドメインのアミノ末端のアミノ酸配列であり、
    上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列のカルボキシル末端側に、100個以上の「Gly−X−Y」(XおよびYは任意のアミノ酸)が連続するアミノ酸配列が存在することを特徴とする、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物:
    (1)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−
    (2)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X10−G−X11−X12−G−X13−X14−G−
    (但し、Gは、グリシンであり、X、XおよびXは、プロリンまたはヒドロキシプロリンであり、X、XおよびX〜X14は、任意のアミノ酸である)。
  2. 上記切断が、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンのα1鎖内およびα2鎖内の少なくとも一方で行われていることを特徴とする、請求項1に記載のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物。
  3. 上記切断が、200mM以上の濃度の塩の存在下にて、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンと、システインプロテアーゼとを接触させることによって行われていることを特徴とする、請求項1またはに記載のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物。
  4. 上記切断が、200mM以上の濃度の塩と接触させた後のシステインプロテアーゼと、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンとを接触させることによって行われていることを特徴とする、請求項1またはに記載のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を含むことを特徴とする、スフェロイド形成用組成物。
  6. コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、または、GとXとの間の化学結合を切断する、切断工程を含み、
    上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列は、上記トリプルヘリカルドメインのアミノ末端のアミノ酸配列であり、
    上記切断工程では、(i)200mM以上の濃度の塩の存在下にて、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンと、システインプロテアーゼとを接触させる、または、(ii)200mM以上の濃度の塩と接触させた後のシステインプロテアーゼと、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンとを接触させることを特徴とする、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法:
    (1)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−
    (2)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X10−G−X11−X12−G−X13−X14−G−
    (但し、Gは、グリシンであり、X、XおよびXは、プロリンまたはヒドロキシプロリンであり、X、XおよびX〜X14は、任意のアミノ酸である)。
  7. 上記切断が、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンのα1鎖内およびα2鎖内の少なくとも一方で行われることを特徴とする、請求項に記載のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法。
  8. 上記切断工程では、上記システインプロテアーゼと骨とを接触させることによって、該骨に含まれるコラーゲンと、上記システインプロテアーゼとを接触させることを特徴とする、請求項に記載のコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法。
  9. コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、または、X14とGとの間の化学結合を切断する、切断工程を含み、
    上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列は、上記トリプルヘリカルドメインのアミノ末端のアミノ酸配列であり、
    上記切断工程では、(i)200mM以上の濃度の塩の存在下にて、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンと、システインプロテアーゼとを接触させる、または、(ii)200mM以上の濃度の塩と接触させた後のシステインプロテアーゼと、上記コラーゲンまたはアテロコラーゲンとを接触させる、ことを特徴とする、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物の製造方法:
    (1)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−
    (2)−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X−G−X−X10−G−X11−X12−G−X13−X14−G−
    (但し、Gは、グリシンであり、X〜X14は、任意のアミノ酸である)。
JP2016516418A 2014-04-30 2015-04-30 コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用 Active JP6521461B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014094285 2014-04-30
JP2014094285 2014-04-30
PCT/JP2015/063044 WO2015167003A1 (ja) 2014-04-30 2015-04-30 コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2015167003A1 JPWO2015167003A1 (ja) 2017-04-20
JP6521461B2 true JP6521461B2 (ja) 2019-05-29

Family

ID=54358724

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016516418A Active JP6521461B2 (ja) 2014-04-30 2015-04-30 コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6521461B2 (ja)
WO (1) WO2015167003A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20220023499A1 (en) * 2018-12-12 2022-01-27 Kinki University Collagen solid, method for producing collagen solid, biomaterial, and ex vivo material

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017073785A1 (ja) * 2015-10-30 2017-05-04 学校法人近畿大学 分化誘導剤、分化誘導方法、および、これらに用いられる骨組織分解物の製造方法
JP6995112B2 (ja) 2017-04-06 2022-02-04 日機装株式会社 細胞の培養方法及び細胞支持複合体の製造方法
US11951231B2 (en) 2018-01-31 2024-04-09 Kinki University Therapeutic agent for intervertebral disc degeneration and material for culturing inter vertebral disc cells
JP7012970B2 (ja) * 2018-01-31 2022-01-31 学校法人近畿大学 神経損傷治療剤

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4023648B2 (ja) * 1999-01-13 2007-12-19 日本ハム株式会社 皮膚代謝促進物及び機能性食品
JP2001103992A (ja) * 1999-10-05 2001-04-17 Nippi:Kk パパイン処理コラーゲン改質物
JP2003219865A (ja) * 2002-01-29 2003-08-05 Japan Tissue Engineering:Kk スフェロイドの作製方法、スフェロイド及びスフェロイド含有組成物
JP2004244369A (ja) * 2003-02-13 2004-09-02 Jellice Co Ltd ペプチド組成物、その製造方法およびペプチド添加物質
JP4439221B2 (ja) * 2003-08-14 2010-03-24 メビオール株式会社 熱可逆ハイドロゲル形成性組成物
JP2006151847A (ja) * 2004-11-26 2006-06-15 Nitta Gelatin Inc コラーゲンペプチド組成物とその製造方法、化粧料組成物
US7485323B2 (en) * 2005-05-31 2009-02-03 Gelita Ag Process for making a low molecular weight gelatine hydrolysate and gelatine hydrolysate compositions
WO2007108554A1 (ja) * 2006-03-17 2007-09-27 Nippon Meat Packers, Inc. 血圧上昇抑制作用を有するペプチド

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20220023499A1 (en) * 2018-12-12 2022-01-27 Kinki University Collagen solid, method for producing collagen solid, biomaterial, and ex vivo material

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2015167003A1 (ja) 2017-04-20
WO2015167003A1 (ja) 2015-11-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6521461B2 (ja) コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用
Zhang et al. Biochemical characterisation and assessment of fibril-forming ability of collagens extracted from Bester sturgeon Huso huso× Acipenser ruthenus
KR100977744B1 (ko) 콜라겐과 그 생산방법
Miller et al. [1] Collagen: An overview
CN107188948B (zh) 用于诱导组织再生的肽及其应用
JP6120428B2 (ja) 分化誘導用組成物
JP6699821B2 (ja) 神経再生用移植材料、神経再生用移植材料の製造方法、及び神経再生用移植材料製造用キット
JP2006257013A (ja) 魚鱗由来コラーゲンゲルとその作成方法
Yang et al. Mechanically durable and biologically favorable protein hydrogel based on elastic silklike protein derived from sea anemone
JP5888670B2 (ja) 骨芽細胞分化誘導用培養基材、骨芽細胞分化誘導方法、及び骨芽細胞製造方法
Kulkarni et al. Utilization of fish collagen in pharmaceutical and biomedical industries: waste to wealth creation
JP5847418B2 (ja) 細胞接着性タンパク質
JP6822668B2 (ja) 多能性幹細胞の胚様体形成方法および多能性幹細胞の胚様体形成用組成物
WO2017073785A1 (ja) 分化誘導剤、分化誘導方法、および、これらに用いられる骨組織分解物の製造方法
WO2015199041A1 (ja) 新規合成ペプチドおよびその利用
KR101085940B1 (ko) 콜라겐 파티클을 함유한 콜라겐 현탁액 제조방법
JPWO2019239751A1 (ja) 細胞移植用組成物及び細胞移植方法
CN112789063B (zh) 半月板再生用材料
JP7414284B2 (ja) コラーゲン固形物、コラーゲン固形物の製造方法、生体材料、および、生体外材料
Cipriani Engineering responsive and biomimetic material based on elastin-like recombinamers for biomedical application
Kim et al. Extraction and Characterization of Human Adipose Tissue-Derived Collagen: Toward Xeno-Free Tissue Engineering
Naderi Gharahgheshlagh et al. Biochemical and Biological Characterization of Type-I Collagen from Scomberomorus commerson Skin as a Biomaterial for Medical Applications
EP2554658A1 (en) Method for culturing cells in system containing laminin-5
AU2005201970B2 (en) Collagen and method for producing same
JP2020188833A (ja) 関節疾患治療用の医薬組成物及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A529 Written submission of copy of amendment under article 34 pct

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A5211

Effective date: 20161028

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161219

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170907

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180918

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181119

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190409

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190419

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6521461

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250