JP6995112B2 - 細胞の培養方法及び細胞支持複合体の製造方法 - Google Patents

細胞の培養方法及び細胞支持複合体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6995112B2
JP6995112B2 JP2019511143A JP2019511143A JP6995112B2 JP 6995112 B2 JP6995112 B2 JP 6995112B2 JP 2019511143 A JP2019511143 A JP 2019511143A JP 2019511143 A JP2019511143 A JP 2019511143A JP 6995112 B2 JP6995112 B2 JP 6995112B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
cell
collagen
culturing
culture
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019511143A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2018186185A1 (ja
Inventor
文彦 北川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nikkiso Co Ltd
Original Assignee
Nikkiso Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nikkiso Co Ltd filed Critical Nikkiso Co Ltd
Publication of JPWO2018186185A1 publication Critical patent/JPWO2018186185A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6995112B2 publication Critical patent/JP6995112B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues
    • C12N5/0602Vertebrate cells
    • C12N5/0684Cells of the urinary tract or kidneys
    • C12N5/0686Kidney cells
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12MAPPARATUS FOR ENZYMOLOGY OR MICROBIOLOGY; APPARATUS FOR CULTURING MICROORGANISMS FOR PRODUCING BIOMASS, FOR GROWING CELLS OR FOR OBTAINING FERMENTATION OR METABOLIC PRODUCTS, i.e. BIOREACTORS OR FERMENTERS
    • C12M1/00Apparatus for enzymology or microbiology
    • C12M1/14Apparatus for enzymology or microbiology with means providing thin layers or with multi-level trays
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2500/00Specific components of cell culture medium
    • C12N2500/30Organic components
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2533/00Supports or coatings for cell culture, characterised by material
    • C12N2533/50Proteins
    • C12N2533/52Fibronectin; Laminin
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2533/00Supports or coatings for cell culture, characterised by material
    • C12N2533/50Proteins
    • C12N2533/54Collagen; Gelatin
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2533/00Supports or coatings for cell culture, characterised by material
    • C12N2533/90Substrates of biological origin, e.g. extracellular matrix, decellularised tissue

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Sustainable Development (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)

Description

本発明は、細胞の培養方法、細胞支持複合体の製造方法、培養細胞及び細胞支持複合体に関する。
近年、腎不全患者の腎機能を代替するバイオ人工腎臓として、中空糸膜等のポリマー膜と近位尿細管上皮細胞等の腎臓細胞(腎機能を有する細胞)をハイブリッド化したモジュールの開発が進められている。特に、バイオ人工腎臓の製造や供給、使用を考慮すると、数週間以上にわたって腎機能を維持できるバイオ人工腎臓が必要になる。
また、生体に投与された薬剤は、生体内で作用した後、近位尿細管で血液から尿中に排出される。このため、近位尿細管細胞は、薬剤の影響を受けやすく、薬剤の毒性によって損傷する可能性がある。このため、新薬開発において、近位尿細管細胞に対する候補物質の毒性や、薬物の代謝を予測するモジュールの開発は非常に有用である。上述したポリマー膜と尿細管上皮細胞のハイブリッドモジュールは、この薬物評価モジュールとしても好適に採用し得る。
バイオ人工腎臓や薬物評価モジュールに用いられる近位尿細管上皮細胞に関して、特許文献1には、細胞周期制御因子の遺伝子発現を抑制することで、十分な数の近位尿細管上皮細胞が得られるように当該細胞の分裂寿命を延長する培養技術が開示されている。
特開2011-50358号公報
本発明者は、近位尿細管上皮細胞等の腎臓細胞の培養技術について鋭意研究を重ねた結果、従来の培養技術では、培養により腎臓細胞の生理機能が低下してしまい、このためバイオ人工腎臓や薬物評価モジュールへ利用可能な培養細胞の作製が困難であることを見出した。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、生理機能がより良好な状態にある細胞を培養により獲得するための技術を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様は細胞の培養方法である。当該培養方法は、腎臓細胞を培養容器に非接着の状態で5日以上の期間培養し、培養期間中に腎臓細胞の凝集体を形成して、一部の期間は凝集体の状態で腎臓細胞を培養する工程を含む。この態様によれば、生理機能がより良好な状態にある細胞を獲得することができる。
上記態様において、凝集体は、培養1日目に形成され、腎臓細胞の培養期間は、10日以下であってもよい。また、凝集体を構成する腎臓細胞の数は、500個以上5000個以下であってもよい。また、凝集体の大きさは、100μm以上350μm以下であってもよい。また、培養容器は、細胞非接着処理が施されているか、細胞非接着材料で構成されていてもよい。また、コラーゲンIを含む培地で腎臓細胞を培養することを含んでもよい。培地中のコラーゲンIの濃度は、0.0005mg/ml超0.15mg/ml未満であってもよい。
本発明の別の態様は、細胞支持複合体の製造方法である。当該製造方法は、ラミニン分子、基底膜マトリックス混合物、コラーゲン分子及びこれらのいずれかの断片からなる群から選択される1種以上を含むコーティング剤を、基材の少なくとも一部に塗布する工程と、上記いずれかの態様の細胞の培養方法で形成された凝集体を、個々の培養細胞に分離する工程と、コーティング剤を塗布した基材に培養細胞を播種し、基材上で培養細胞を培養して、培養細胞の単層構造を形成する工程と、を含む。
本発明のさらに別の態様は、培養細胞である。当該培養細胞は、腎臓細胞を培養容器に非接着の状態で5日以上の期間培養し、培養期間中に腎臓細胞の凝集体を形成して、一部の期間は凝集体の状態で腎臓細胞を培養することで作製される。
本発明のさらに別の態様は、細胞支持複合体である。当該細胞支持複合体は、基材と、基材の少なくとも一部を被覆する、ラミニン分子、基底膜マトリックス混合物、コラーゲン分子及びこれらのいずれかの断片からなる群から選択される1種以上を含むコーティング剤層と、コーティング剤層を介して基材に付着する上記態様の培養細胞とを備える。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、生理機能がより良好な状態にある細胞を培養により獲得することができる。
図1(A)及び図1(B)は、参考例に係る細胞支持複合体の構造を模式的に示す図である。 図2(A)~図2(C)は、実施の形態に係る培養細胞と、この培養細胞を含む細胞支持複合体の構成を模式的に示す図である。 図3(A)~図3(E)は、実施の形態に係る細胞の培養方法及び細胞支持複合体の製造方法の工程図である。 図4(A)~図4(F)は、実施の形態に係る細胞支持複合体の採用例を模式的に示す図である。 細胞を接着培養した場合における遺伝子発現量の経時変化を示す図である。 図6(A)は、非接着培養3,7日の細胞の光学顕微鏡画像である。図6(B)は、凝集体の直径の最大値と最小値とを示す図である。図6(C)は、凝集体の構成細胞数の経時変化を示す図である。 凝集体を構成する細胞における遺伝子発現量の経時変化を示す図である。 凝集体を構成する細胞における遺伝子発現量の経時変化を示す図である。 凝集体から分離した細胞の再播種0,3,7日の光学顕微鏡画像である。 ロット及び継代培養数が異なる細胞の播種から24時間後の光学顕微鏡画像である。 凝集状態が異なる細胞におけるOAT1遺伝子の発現量を示す図である。 異なる細胞接着因子を添加した細胞懸濁液の播種から24時間後の光学顕微鏡画像である。 図13(A)は、様々な濃度のコラーゲンIを添加した細胞懸濁液の播種24時間後の光学顕微鏡画像である。図13(B)は、コラーゲンIの濃度と凝集体形成の有無との関係を示す図である。 コラーゲンIを添加した細胞懸濁液及びコラーゲンIを非添加の細胞懸濁液の、播種から24時間後の光学顕微鏡画像である。 図15(A)は、コラーゲンIを添加して培養した細胞におけるOAT1遺伝子の発現量を示す図である。図15(B)は、コラーゲンIを添加せずに培養した細胞におけるOAT1遺伝子の発現量を示す図である。
本発明者は、腎臓細胞の培養技術について考察し、以下のような認識を得た。すなわち、腎臓から酵素処理により単離された近位尿細管上皮細胞等の腎臓細胞(初代培養細胞)は、生体内環境の消失や、シャーレ上での二次元培養といった培養環境により、脱分化して機能が徐々に消失する。このため、腎臓細胞を単に培養するだけでは、生理機能が不十分な細胞が増えるだけである。脱分化した細胞を用いてバイオ人工腎臓を製造した場合、血漿中の有用成分の再吸収機能が十分に高くないものとなる可能性がある。また、脱分化した細胞を用いて薬物評価モジュールを製造した場合、高い精度で薬物動態や毒性反応を示さない可能性がある。これに対し本発明者は、特定の培養を行うことで、脱分化した腎臓細胞の生理機能を回復させられることを見出した。
また、腎臓から単離された近位尿細管上皮細胞は、本来の円柱状の細胞構造を維持できず、扁平形状に変化する。さらに、近位尿細管上皮細胞をシャーレや人工膜上に播種すると、単層上皮構造を消失して細胞間に隙間が生じたり、細胞が重層化したりする。このような現象が生じることで、バイオ人工腎臓において有用成分の再吸収機能が劣化し得る。また、薬物評価モジュールの精度が低下し得る。これに対し本発明者は、生理機能が回復した近位尿細管上皮細胞を用いて、基材上に安定した単層上皮構造を形成する技術を見出した。実施の形態は、このような思索に基づいて案出されたものである。
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、この用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
図1(A)及び図1(B)は、参考例に係る細胞支持複合体の構造を模式的に示す図である。図1(A)には、一般的なコーティング剤を用いた場合の細胞支持複合体が図示されている。図1(B)には、コーティング剤を用いない場合の細胞支持複合体が図示されている。図1(A)に示すように、従来公知の一般的なコーティング剤102をコーティングした人工膜等の基材104に、近位尿細管上皮細胞106を播種して得られる細胞支持複合体100aでは、近位尿細管上皮細胞106が重層化したり、細胞間に隙間が空いてしまうことがあった。図1(B)に示すように、コーティング剤102を塗布していない基材104に近位尿細管上皮細胞106を播種して得られる細胞支持複合体100bにおいても同様に、近位尿細管上皮細胞106の重層化や隙間の発生があった。
近位尿細管上皮細胞106が重層化した領域では、細胞頂端膜側から細胞基底膜側への、トランスポーターを介した有用物質の移動が妨げられ得る(矢印P)。また、隣り合う近位尿細管上皮細胞106の隙間において、基材104を介した濃度依存性の物質移動が生じ得る(矢印Q)。
図2(A)~図2(C)は、実施の形態に係る培養細胞と、この培養細胞を含む細胞支持複合体の構成を模式的に示す図である。図2(A)には、水透過性を有する基材、言い換えれば水透過性が相対的に高い基材を用いた場合の細胞支持複合体が図示されている。図2(B)には、水透過性を有しない基材、言い換えれば水透過性が相対的に低い基材を用いた場合の細胞支持複合体であって、短時間経過した状態が図示されている。図2(C)には、水透過性を有しない基材を用いた場合の細胞支持複合体であって、長時間経過した状態が図示されている。
細胞支持複合体10は、基材12と、コーティング剤層14と、培養細胞16とを備える。
[基材]
基材12は、例えば人工材料で構成される。図2(A)に示すように、基材12は、水や各種イオンに対する透過性を有する。また、基材12は、糖や低分子タンパク質に対する透過性も有することが好ましい。このような基材12を備える細胞支持複合体10は、例えばバイオ人工腎臓として利用することができる。細胞頂端膜側に存在する有用物質50は、培養細胞16が備える細胞頂端膜側のトランスポーター18及び細胞基底膜側のトランスポーター20と、基材12とを介して細胞支持複合体10を通過し、細胞基底膜側に移動する。
各種の物質に対する透過性を持たせるために、基材12には、例えば孔が設けられる。基材12に設けられる孔の平均孔径は、好ましくは5μm以下である。平均孔径を5μm以下とすることで、培養細胞16が基材12を通過するおそれを低減することができる。このような基材12として、例えばTranswell(Corning社:平均孔径0.4μm又は3.0μm)を用いることができる。
また、図2(B)及び図2(C)に示すように、基材12は、水や各種イオンに対する透過性を有しなくてもよい。このような基材12を備える細胞支持複合体10は、例えば、薬物の代謝(培養細胞16による薬物の取込量等)や毒性を評価する薬物評価モジュールとして利用することができる。基材12には、水透過性を有しないシャーレやウェルプレート等を用いることができる。細胞頂端膜側に存在する有用物質50は、培養細胞16のトランスポーター18を介して培養細胞16の内部に取り込まれる。使用開始から短時間のうちは、培養細胞16のトランスポーター20を介した有用物質50の細胞基底膜側への移動が少ないため、図2(B)に示すように培養細胞16の層に変形は生じない。一方、長時間経過すると、トランスポーター20を介した有用物質50の移動量が増えるが、有用物質50は基材12を通過できないため、図2(C)に示すように培養細胞16の層が浮き上がってドーム22が形成される。
基材12を構成する素材としては、特に限定されないが、例えばポリスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル(PET)、ポリエステル系ポリマーアロイ(PEPA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレン、ポリスルホン(PSf)、ポリエーテルスルホン(PES)等が例示される。また、基材12の形態としては、特に限定されないが、例えば培養ウェルプレート、培養シャーレ、中空糸膜、Transwell、平膜等の人工膜や、微細流路チップ、中実粒子、中空粒子等が例示される。
[コーティング剤層]
コーティング剤層14は、コーティング剤で構成される層である。コーティング剤層14は、基材12の少なくとも一部を被覆する。コーティング剤層14は、基材12の表面に接着して基材12に固定される。前記「基材12の少なくとも一部」とは、例えば、平面又は曲面を有する基材12の少なくとも1つの面を意味する。基材12が平板状である場合には、「基材12の少なくとも一部」は、例えば平板の少なくとも一方の主表面を意味する。基材12が円筒状である場合には、「基材12の少なくとも一部」は、例えば円筒の内側面又は外側面の少なくとも一方を意味する。
コーディング剤は、ラミニン分子、基底膜マトリックス混合物、コラーゲン分子及びこれらのいずれかの断片からなる群から選択される1種以上の接着分子を含む。コーティング剤層14がこれらの接着分子を含有することで、培養細胞16の単層構造をより確実に形成することができる。
(ラミニン分子)
ラミニン分子は、α鎖、β鎖、γ鎖をそれぞれ1本ずつ持つヘテロ三量体構造をとる。現時点では5種類のα鎖、3種類のβ鎖、3種類のγ鎖が同定されている。ラミニン分子は、これらの組合せによって少なくとも12種類のアイソフォームを形成することが知られている。本実施の形態では、ラミニン111、ラミニン211、ラミニン221、ラミニン311、ラミニン332、ラミニン421、ラミニン511、ラミニン521及びこれらの断片のうち1つ以上から選択される。
なお、ラミニン分子には、上述したアイソフォームの1か所以上に所定の修飾基が付加された、ラミニンの改変体(改変ラミニン)も含まれる。改変体には、遺伝子組み換え体、すなわち組み換え遺伝子から得られたタンパク質に変異を導入したタンパク質や、遺伝子組み換え体の部分タンパク質、遺伝子組み換え体由来のペプチドを有するタンパク質も含まれる。
ラミニン分子のアイソフォームのうち、ラミニン311、ラミニン511及びラミニン521は、細胞間のバリア機能の指標である電気抵抗値がラミニン111よりも高いため、より好ましい。また、ラミニン511及びラミニン521は、例えばラミニン111と比較してコストが安いため、より好ましい。
コーティング剤におけるラミニン分子の濃度と、基材12に対するラミニン分子の接着量とは、細胞支持複合体10が実用期間の間その性能を維持できるように、適宜調整される。ラミニン分子の接着量は、コーティング剤におけるラミニン分子の濃度を調整することで、制御することができる。細胞支持複合体10の実用期間は、好ましくは基材12上での培養細胞16の培養開始から2週間以上であり、より好ましくは3週間以上でり、さらに好ましくは4週間以上である。
基材12に対するラミニン分子の接着量は、当業者に公知の方法を用いて測定することができる。例えば、ラミニン分子を含むコーティング剤が基材12に塗布された後、4℃にて一晩静置することでコーティング剤層14が形成される。そして、基材12に接着したラミニン分子の量が、例えば2-D Quant Kit(GE Healthcare社)を用いて定量される。
ラミニン111の場合、濃度を3.0μg/ml以上として、約0.15μg/cm以上の接着量とすることが好ましい。これにより、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、培養細胞16の単層構造を約15日以上維持することができる。また、濃度を4.0μg/ml以上として、約0.19μg/cm以上の接着量とすることがより好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を28日以上維持することができる。
ラミニン211の場合、濃度を8.0μg/ml超として、約0.45μg/cm超の接着量とすることが好ましい。これにより、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、培養細胞16の単層構造を約15日以上維持することができる。また、濃度を10μg/ml以上として、約0.52μg/cm以上の接着量とすることがより好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を28日以上維持することができる。
ラミニン221の場合、濃度を8.0μg/ml超として、約0.30μg/cm超の接着量とすることが好ましい。これにより、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、培養細胞16の単層構造を約15日以上維持することができる。また、濃度を10μg/ml以上として、約0.34μg/cm以上の接着量とすることがより好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を18日以上維持することができる。
ラミニン311の場合、濃度を約2.5μg/ml以上として、約0.10μg/cm以上の接着量とすることが好ましい。これにより、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、培養細胞16の単層構造を約15日以上維持することができる。また、濃度を4.0μg/ml以上として、約0.15μg/cm以上の接着量とすることがより好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を28日以上維持することができる。
ラミニン332の場合、濃度を8.0μg/ml以上とすることが好ましい。これにより、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、培養細胞16の単層構造を15日以上維持することができる。また、濃度を10μg/ml以上とすることがより好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を18日以上維持することができる。
ラミニン421の場合、濃度を5.0μg/ml以上として、約0.50μg/cm以上の接着量とすることが好ましい。これにより、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、培養細胞16の単層構造を15日以上維持することができる。また、濃度を6.0μg/ml以上として、約0.54μg/cm以上の接着量とすることがより好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を18日以上維持することができる。また、濃度を10μg/ml以上として、約0.69μg/cm以上の接着量とすることがさらに好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を28日以上維持することができる。
ラミニン511の場合、濃度を約8.0μg/ml超として、約0.30μg/cm超の接着量とすることが好ましい。これにより、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、培養細胞16の単層構造を約15日以上維持することができる。また、濃度を10μg/ml以上として、約0.32μg/cm以上の接着量とすることがより好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を18日以上維持することができる。
ラミニン521の場合、濃度を約4.5μg/ml以上として、約0.40μg/cm以上の接着量とすることが好ましい。これにより、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、培養細胞16の単層構造を約15日以上維持することができる。また、濃度を5.0μg/ml以上として0.44μg/cm以上の接着量とすることがより好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を28日以上維持することができる。
なお、各ラミニン分子の市販品の濃度を考慮すると、100μg/mlを超える濃度では処理が煩雑となり、またコストがかかる。このため各ラミニン分子の濃度は、100μg/ml以下であることが好ましい。
ラミニン分子として改変ラミニンが使用される場合、修飾基は、例えば増殖因子結合分子又は細胞接着分子である。このような改変ラミニンを用いた場合にも、改変されていないラミニン分子と同様の作用効果を奏することができる。
コーティング剤に含有させる接着因子として、ラミニン分子の断片が用いられてもよい。ラミニン分子の断片としては、例えば完全長ラミニンのうちドメインIの細胞接着部位(インテグリン結合部位)を含むE8領域の改変体(ラミニン***-E8と表記する)が例示される。このような改変体として、例えばラミニン111-E8、ラミニン211-E8、ラミニン421-E8及びラミニン521-E8が挙げられる。これらの分子量は、いずれも完全長ラミニンの1/5程度である。
ラミニン分子の断片としてラミニン511のE8領域の改変体(ラミニン511-E8)が使用される場合、市販のラミニン511-E8(iMatrix-511:株式会社ニッピ)の濃度を考慮すると、濃度を約1.4μg/ml以上約500μg/ml以下として、0.15μg/cm以上31.18μg/cm以下の接着量とするが好ましい。ラミニン511-E8の濃度を約1.4μg/ml以上とすることで、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、ラミニン511-E8の濃度を約500μg/ml以下とすることで、コーティング剤の調製が難しくなることを回避することができる。また、これにより、培養細胞16の単層構造を28日以上維持することができる。また、濃度を約2.5μg/ml以上約50μg/ml以下として、0.21μg/cm以上6.21μg/cm以下の接着量とすることがより好ましい。
ラミニン分子の断片としては、E8領域の改変体だけでなく、細胞接着活性を有するラミニンペプチド、あるいは細胞活性部位のみをペプチド合成したものを用いることもできる。このようなラミニンペプチドとしては、例えばβ鎖のドメインIIIに由来するYIGSR含有ペプチド、β鎖のドメインIIIに由来するPDSGR含有ペプチド、β鎖のドメインIIIに由来するRYVVLPR含有ペプチド、α鎖のドメインIIIに由来するRGD含有ペプチド、γ鎖のドメインIに由来するKAFDITYVRLKF含有ペプチド、α鎖のドメインIに由来するIKVAV含有ペプチド及びβ鎖のドメインIに由来するLRE含有ペプチド等が例示される。ラミニンペプチドの濃度は、例えば約0.5~約500μg/mlである。なお、ラミニン分子の断片の大きさは、特に制限されない。
ラミニン分子の断片を用いる場合、完全長のラミニン分子に比べて分子量が小さいため、より安定したコーティングが可能となる。また、微細領域に対してコーティングしやすくなる。また、接着分子の凝集が生じにくくなるため、コーティング斑の形成を抑制することができる。これらにより、培養細胞16の単層構造が不均一になることを抑制することができる。また、ラミニン分子の断片を用いることで、高濃度且つ高密度にて接着分子をコーティングすることができる。さらに、リコンビナントタンパク質は、分子量が小さいほど生産効率及び精製効率が上昇する。このため、ラミニン分子の断片を用いることで、細胞支持複合体10の製造コストをより低下させることができる。
完全長ラミニン分子とラミニン分子の断片とはそれぞれ、複数のアイソフォームが混合されて用いられてもよい。また、完全長ラミニン分子とラミニン分子の断片とが混合されて用いられてもよい。また、異なる種類の完全長ラミニン及び/又はラミニン分子の断片を含む複数のコーティング剤を基材12に塗布して、含有するラミニン種の異なる複数のコーティング剤層14が積層されてもよい。
(基底膜マトリックス混合物)
基底膜マトリックス混合物は、マウス肉腫から抽出された細胞外マトリックスタンパク質の混合物である。基底膜マトリックス混合物は、ラミニンと、コラーゲンIVと、エンタクチンとを主な構成成分として含む。基底膜マトリックス混合物としては、Matrigel(登録商標:Corning社)が例示される。
Matrigelとは、細胞外マトリックスタンパク質を豊富に含むEngelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫から抽出された、可溶性の基底膜マトリックスをいう。本実施の形態において、Matrigelには、成長因子を含む通常のMatrigelに加えて、このMatrigelと比べて成長因子が低減されたMatrigel(Growth Factor Reduced Matrigel Matrix)も含まれる。以下では適宜、通常のMatrigelを第1Matrigelと称し、成長因子が低減されたMatrigelを第2Matrigelと称する。第1Matrigel及び第2Matrigelは、例えばCorning社から入手することができる。第1Matrigelは、ラミニンを約56%、コラーゲンIVを約31%、エンタクチンを約8%含む。一方、第2Matrigelは、ラミニンを約61%、コラーゲンIVを約30%、エンタクチンを約7%含む。
また、基底膜マトリックス混合物としては、ラミニンと、コラーゲンIVと、エンタクチンとが約56~約61:約30~約31:約7~約8の質量比にて混合された混合物を用いることもできる。
コーティング剤における基底膜マトリックス混合物の濃度と、基材12に対する基底膜マトリックス混合物の接着量とは、細胞支持複合体10が実用期間の間その性能を維持できるように、適宜調整される。基底膜マトリックス混合物の接着量は、コーティング剤における基底膜マトリックス混合物の濃度を調整することで、制御することができる。
第1Matrigelの場合、濃度を0μg/ml超3000μg/ml以下として、0μg/cm超約34.85μg/cm以下の接着量とすることが好ましい。第1Matrigelの濃度を3000μg/ml以下とすることで、第1Matrigelがゲル化して培養細胞16が凝集化するおそれを低減することができる。また、濃度を5.0μg/ml以上2000μg/ml以下として、約0.5μg/cm以上約25μg/cm以下の接着量とすることがより好ましい。また、濃度を5.0μg/ml以上1000μg/ml以下として、約0.5μg/cm以上約16.04μg/cm以下の接着量とすることがさらに好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を28日以上維持することができる。
第2Matrigelの場合、濃度を20μg/ml超1000μg/ml以下として、1.36μg/cm超30.6μg/cm以下の接着量とすることが好ましい。第2Matrigelの濃度を20μg/ml超とすることで、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、第2Matrigelの濃度を1000μg/ml以下とすることで、第2Matrigelがゲル化して培養細胞16が凝集化するおそれを低減することができる。また、濃度を40μg/ml以上1000μg/ml以下として、3.15μg/cm以上30.6μg/cm以下の接着量とすることがより好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を28日以上維持することができる。
コーティング剤に含有させる接着因子として、基底膜マトリックス混合物の断片が用いられてもよい。基底膜マトリックス混合物の断片とは、ラミニンの断片、コラーゲンIVの断片及びエンタクチンの断片の少なくとも1つが混合されたものを意味する。また、基底膜マトリックス混合物の完全体と断片とはそれぞれ、複数種が混合されて用いられてもよい。また、完全体と断片とが混合されて用いられてもよい。また、異なる種類の完全体及び/又は断片を含む複数のコーティング剤を基材12に塗布して、含有する混合物種の異なる複数のコーティング剤層14が積層されてもよい。
(コラーゲン分子)
コラーゲン分子としては、コラーゲンI及びコラーゲンIV等が例示される。これらは、例えば新田ゼラチン株式会社から入手することができる。コーティング剤におけるコラーゲン分子の濃度と、基材12に対するコラーゲン分子の接着量とは、細胞支持複合体10が実用期間の間その性能を維持できるように、適宜調整される。コラーゲン分子の接着量は、コーティング剤におけるコラーゲン分子の濃度を調整することで、制御することができる。
コラーゲンIの場合、濃度を750μg/ml超3000μg/ml以下として、約50μg/cm超138μg/cm以下の接着量とすることが好ましい。コラーゲンIの濃度を750μg/ml超とすることで、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、コラーゲンIの濃度を3000μg/ml以下とすることで、コラーゲンIの高い粘性に起因してコーティング剤の均一な塗布が困難になることを、より確実に回避することができる。また、これにより、培養細胞16の単層構造を15日以上維持することができる。また、濃度を1000μg/ml以上3000μg/ml以下として、65.4μg/cm以上138μg/cm以下の接着量とすることがより好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を28日以上維持することができる。
コラーゲンIVの場合、濃度を500μg/ml超3000μg/ml以下として、19.2μg/cm超121μg/cm以下の接着量とすることが好ましい。コラーゲンIVの濃度を500μg/ml超とすることで、接着分子としての機能をより確実に発揮させることができる。また、コラーゲンIVの濃度を3000μg/ml以下とすることで、コラーゲンIVの高い粘性に起因してコーティング剤の均一な塗布が困難になることを、より確実に回避することができる。また、これにより、培養細胞16の単層構造を15日以上維持することができる。また、濃度を750μg/ml以上3000μg/ml以下として、約25μg/cm以上121μg/cm以下の接着量とすることがより好ましい。これにより、培養細胞16の単層構造を28日以上維持することができる。
コーティング剤に含有させる接着因子として、コラーゲン分子の断片が用いられてもよい。また、コラーゲン分子の完全体と断片とはそれぞれ、複数種が混合されて用いられてもよい。また、完全体と断片とが混合されて用いられてもよい。また、異なる種類の完全体及び/又は断片を含む複数のコーティング剤を基材12に塗布して、含有するコラーゲン種の異なる複数のコーティング剤層14が積層されてもよい。
上述したラミニン分子、基底膜マトリックス混合物、コラーゲン分子及びこれらの断片は、それぞれ単独で、又は2種以上を混合して用いられてもよい。また、コーティング剤には、ゼラチン等の他の接着タンパク質がさらに混合されてもよい。
[培養細胞]
培養細胞16は、コーティング剤層14を介して基材12に付着する。すなわち、培養細胞16は、コーティング剤層14によって基材12に固定される。培養細胞16は、細胞頂端膜側に位置するトランスポーター18と、細胞基底膜側に位置するトランスポーター20とを有する。
培養細胞16は、腎臓細胞を培養容器に非接着の状態で5日以上(すなわち120時間以上)の期間培養することで作製される。培養細胞16は、細胞支持複合体10に使用される上で、生理機能を保持している必要がある。一方で、腎臓細胞を生体内環境とは異なる環境で培養すると、脱分化して生理機能が低下していく。これに対し、腎臓細胞を培養容器に非接着の状態で5日以上培養することで、腎臓細胞の低下した生理機能を回復させることができる。なお、培養により低下した生理機能が少しでも改善されていれば、本実施の形態における「回復」に含まれる。
より具体的には、腎臓細胞を培養容器に非接着の状態で培養すると、培養期間中に腎臓細胞が凝集体を形成する。例えば、腎臓細胞の凝集体は培養1日目(すなわち24時間以内)に形成される。そして、一部の期間は凝集体の状態で腎臓細胞を培養することで、腎臓細胞の生理機能を回復させることができる。したがって、培養細胞16は、腎臓細胞の生理機能を有する細胞である。細胞の培養方法については後に詳細に説明する。
培養細胞16の基になる腎臓細胞には、組織由来の腎臓細胞や、iPS細胞又はES細胞由来の腎臓細胞が含まれる。また、腎臓細胞には、例えば近位尿細管系、遠位尿細管系及び集合管系の上皮細胞の少なくとも1つが含まれる。より具体的には、腎臓細胞としては、例えば腎臓から採取、単離したヒト近位尿細管上皮細胞、ヒト遠位尿細管上皮細胞及びヒト集合管上皮細胞や、ヒトiPS細胞又はヒトES細胞から分化誘導した近位尿細管上皮細胞、遠位尿細管上皮細胞及び集合管上皮細胞が例示される。より好ましくは、腎臓細胞は、近位尿細管上皮細胞である。また、腎臓細胞には、上述した腎臓細胞の不死化細胞、株化細胞(HK-2細胞等)、特定のトランスポーター等のタンパク質を発現させるために腎臓細胞に遺伝子導入した形質転換細胞が含まれる。さらに、腎臓細胞としては、ヒト由来の腎臓細胞に代えて、他動物種由来の細胞(MDCK細胞、LLC-PK1細胞、JTC-12細胞等)を用いることもできる。
培養細胞16は、基材12上で、実質的に重層化することなくコンフルエントな単層を形成する。前記「実質的に」とは、重層化による物質の移動効率の低下が問題とならない程度に単層構造が維持されていることを意味し、必ずしも重層化が全く生じていないことを意味するものではない。また、前記「コンフルエント」とは、培養細胞16の培養面全体に対して細胞の占める面積の割合が100%であること、すなわち培養面いっぱいに隙間なく細胞が増殖した状態を意味する。細胞がコンフルエントの状態にあるか否かは、当業者であれば容易に判断することができる。
(細胞の培養方法及び細胞支持複合体の製造方法)
図3(A)~図3(E)は、実施の形態に係る細胞の培養方法及び細胞支持複合体の製造方法の工程図である。本実施の形態に係る細胞の培養方法は、上述した腎臓細胞を培養容器に非接着の状態で5日以上の期間培養し、培養期間中に凝集体を形成して、一部の期間は凝集体の状態で腎臓細胞を培養する工程を含む。当該培養方法により、生理機能を有する状態にある培養細胞16を作製することができる。
また、本実施の形態に係る細胞支持複合体の製造方法は、コーティング剤を基材12の少なくとも一部に塗布する工程と、本実施の形態に係る細胞の培養方法で形成された培養細胞16の凝集体30を個々の培養細胞16に分離する工程と、コーティング剤を塗布した基材12に培養細胞16を播種し、基材12上で培養細胞16を培養して、培養細胞16の単層構造を形成する工程とを含む。
具体的には、図3(A)に示すように、腎臓細胞24を培養容器26に播種する。培養容器26としては、例えばU底の96ウェルプレート、V底の96ウェルプレート、U底の384ウェルプレート、ウェル数のさらに多いマイクロウェルプレート、スピナーフラスコ、シャーレ、中空糸、ボトル、微細流路等が例示される。培養容器26の1ウェルあたりの腎臓細胞24の播種数は、好ましくは500個以上5000個以下である。
培養容器26には、培地28が添加される。培地28としては従来公知の培地、例えばREGM(Lonza社)、EpiCM(ScienCell社)、KeratinocyteSFM(Life Technologies社)等を用いることができる。また、細胞培養に必要な従来公知の材料を適宜使用することができる。
そして、5日以上の期間、腎臓細胞24を培養する。腎臓細胞24は、培養容器26の表面に接着していない状態で培養される。このため、図3(B)に示すように、培養期間中に腎臓細胞24の凝集体30が形成される。凝集体30の状態で腎臓細胞24を培養することで、生理機能がより良好な状態にある培養細胞16を得ることができる。凝集体30の大きさは、例えば約100μm以上約350μm以下である。凝集体30の大きさは、培養容器26に播種する細胞数を調整することで、制御することができる。凝集体30の大きさは、凝集体30の最大幅と定義される。すなわち、凝集体30の大きさは、凝集体30の外縁上の2点をつなぐ直線のうち最大のものの長さである。なお、凝集体30は略球形であるため、以下では適宜、凝集体30の大きさを便宜的に凝集体30の直径という。
例えば、マルチウェルプレートで培養する場合、1つのウェルに1つの凝集体30が形成される。このため、1ウェルあたりの腎臓細胞24の播種数が500個以上5000個以下のとき、凝集体30を構成する腎臓細胞の数は、500個以上5000個以下となる。凝集体30の大きさは、構成細胞数が500個以上5000個以下のとき、100μm以上350μm以下となる。凝集体30の構成細胞数を500個以上、あるいは大きさを100μm以上とすることで、培地交換の際などに細胞凝集体が古い培地とともに吸引されてしまうことをより確実に回避することができる。また、構成細胞数を5000個以下、あるいは大きさを350μm以下とすることで、より良好な生理機能を有する培養細胞16を得ることができる。
より多くの凝集体30を形成したい場合は、シャーレやスピナーフラスコ等の容器を用いて培養することが好ましい。この場合、凝集体30の直径、言い換えれば1つの凝集体30を構成する腎臓細胞24の数は、容器中の細胞密度を調整することで、制御することができる。例えば、60mmシャーレ(住友ベークライト社)上で、直径が約100μm以上約350μm以下、あるいは構成細胞数が500個以上5000個以下の凝集体30を形成する場合、シャーレ中の細胞密度は1500個/cm以上15000個/cm以下に調整される。そして、腎臓細胞24を静置培養、振盪培養又は撹拌培養することで、所望の直径や構成細胞数を有する複数の凝集体30を一度に形成することができる。なお、シャーレやフラスコを用いて腎臓細胞24を培養する場合は、凝集体30を含む培地を全量回収した後、遠心分離によって凝集体30を沈降させることで培地交換が行われる。
培地28には、コラーゲンI(I型コラーゲン)を添加することが好ましい。コラーゲンIは、腎臓細胞24同士を接着させる機能を有する。このため、コラーゲンIを含む培地28で腎臓細胞24を培養することで、凝集体30をより確実に形成させることができる。コラーゲンIは、完全長のコラーゲンIであることが好ましいが、コラーゲンIを構成するα1鎖やα2鎖、さらには各鎖を断片化したコラーゲンペプチド等であってもよい。また、コラーゲンIの動物種は特に限定されず、ヒト由来だけでなく、他の動物由来のものも用いることができる。
培地28中のコラーゲンIの濃度は、好ましくは0.0005mg/ml超0.15mg/ml未満である。つまり、培地(言い換えれば細胞懸濁液)1mlあたり0.0005mg超0.15mg未満のコラーゲンIを、培地に添加することが好ましい。コラーゲンIの濃度を0.0005mg/ml超とすることで、コラーゲンIによる凝集体30の形成促進効果を、より確実に発揮させることができる。また、コラーゲンIの濃度を0.15mg/ml未満とすることで、コラーゲンIが培地28中でゲル化してしまうおそれを、より確実に回避することができる。この結果、コラーゲンIによる凝集体30の形成促進効果を、より確実に発揮させることができる。また、細胞懸濁液に添加するコラーゲンIの量を上記範囲に設定することで、より確実に、細胞播種後24時間以内に凝集体30を形成させることができる。
培地28中のコラーゲンIの濃度は、より好ましくは0.001mg/ml以上であり、さらに好ましくは0.006mg/ml以上であり、またさらに好ましくは0.01mg/ml以上である。これにより、より多くの腎臓細胞24で凝集体30を形成させることができる。また、コラーゲンIの濃度は、より好ましくは0.1mg/ml以下である。これにより、コラーゲンIのゲル化をより確実に回避することができる。なお、培地に添加するコラーゲンIは、極力低濃度であることが好ましい。コラーゲンIの濃度は、pH3.0に調整した滅菌水や培地で調整することが好ましい。また、低温(例えば室温以下)の培地にコラーゲンIを添加し、その後に培地を37℃まで暖めて、細胞を懸濁することが好ましい。これらにより、コラーゲンIのゲル化をより確実に防ぐことができる。
培養容器26は、細胞非接着処理が施されているか、細胞非接着材料で構成されていることが好ましい。これにより、凝集体30をより確実に形成させることができる。細胞非接着処理としては、容器表面への細胞非接着ハイドロゲルコーティング処理、MPC(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)コーティング処理、プロテオセーブ(登録商標)SSコーティング処理、鏡面研磨処理等が例示される。細胞非接着材料としては、ガラス等が例示される。また、細胞非接着材料としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン-ビニルアセテートコポリマー、ポリ(エチレン-エチルアクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン-メタアクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン酢酸ビニル)コポリマー、及びこれらのポリマーの2種以上の混合物といった高分子材料が例示される。例えば、当該高分子材料からなる培養バッグを培養容器26として用いることができる。腎臓細胞24の培養期間は、好ましくは10日以下(すなわち240時間以下)である。これにより、生理機能のより高い発現状態にある培養細胞16を得ることができる。培養条件は、例えば37℃、5%COである。培養期間中、培地28は定期的に交換することが好ましい。例えば、培地28は2日毎に交換される。
続いて、図3(C)に示すように、上述した細胞の培養方法で形成された凝集体30を、個々の培養細胞16に分離する。凝集体30からの培養細胞16の分離は、トリプシン/EDTA、Accutase、EDTA、TrypLE Select等を用いて凝集体30を酵素処理することで行うことができる。処理に用いる酵素の濃度は、培養細胞16の種類に応じて適宜設定することができる。しかしながら、酵素濃度が高い場合、培養細胞16の単離が容易になる一方、培養細胞16の細胞表面タンパク質が損傷するおそれが高まる。このため、酵素濃度はできるだけ低いことが望ましい。
また、図3(D)に示すように、ラミニン分子、基底膜マトリックス混合物、コラーゲン分子及びこれらのいずれかの断片からなる群から選択される1種以上の接着分子を含むコーティング剤を、基材12の少なくとも一部に塗布する。これにより、基材12の表面にコーティング剤層14が形成される。なお、培養細胞16の単離工程と、コーティング剤の塗布工程とは、互いに独立に実施することができる。すなわち、両工程はいずれが先に実施されてもよく、また並行して実施されてもよい。
そして、図3(E)に示すように、コーティング剤を塗布した基材12に培養細胞16を播種し、基材12上で培養細胞16を培養して、培養細胞16の単層構造を形成する。培養細胞16は、例えば約1.0×10~約1.0×10個/cmの細胞密度となるように基材12に播種される。培養期間は、例えば1日以上60日以下である。培養細胞16は、基材12上でコンフルエントになるまで増殖した後、コンフルエントの状態を維持する。また、培養細胞16は、例えば培地としてREGM(Lonza社)を用いて、37℃、5%CO条件下で培養される。
[細胞支持複合体が用いられた装置]
図4(A)~図4(F)は、実施の形態に係る細胞支持複合体の採用例を模式的に示す図である。なお、図4(A)~図4(F)では、細胞支持複合体が組み込まれた構造の一部を図示している。本実施の形態に係る細胞支持複合体10は、様々な装置に適用することができる。
例えば、図4(A)は、Transwell32を備える第1装置34に細胞支持複合体10が組み込まれた様子を図示している。Transwell32の構造は従来公知であるため、詳細な説明は省略する。第1装置34では、培養細胞16が配置された側に、所定物質を含む第1液体36が供給される。第1液体36中の所定物質は、培養細胞16に取り込まれて細胞支持複合体10を通過し、細胞支持複合体10を挟んで第1液体36とは反対側に位置する第2液体38に移動する。第1装置34は例えば、細胞の機能や、薬物の取込・排出を微量液量で調べる薬物評価モジュールとして使用可能である。
図4(B)は、基材12として中空糸膜が用いられた細胞支持複合体10が第2装置40に組み込まれた様子を図示している。第2装置40では、基材12としての中空糸膜の管腔内にコーティング剤層14と培養細胞16の単層構造とが形成されている。第2装置40は、中空糸膜の管腔内に液体を流すことによって、この液体中にある所定物質を培養細胞16で取り込んで、中空糸膜の管腔外へ移動させることができる。第2装置40は例えば、血液濾過器で濾過した血漿成分中から有用物質を回収するバイオ人工腎臓モジュールとして使用可能である。
図4(C)は、微細流路チップ42に細胞支持複合体10が組み込まれた様子を図示している。微細流路チップ42では、基材12が微細流路を構成している。そして、微細流路の内壁にコーティング剤層14と培養細胞16の単層構造とが形成されている。微細流路チップ42では、流路内、すなわち培養細胞16が配置された側に微量の液体が流される。そして、液体中の所定物質が培養細胞16に取り込まれる。微細流路チップ42は例えば、細胞の機能や、薬物の取込・排出を微量液量で調べる薬物評価モジュールとして使用可能である。
図4(D)は、細胞支持複合体10が中空マイクロキャリア44を構成している様子を図示している。また、図4(E)は、細胞支持複合体10が中実マイクロキャリア46を構成している様子を図示している。中空マイクロキャリア44及び中実マイクロキャリア46では、基材12がキャリア本体を構成している。そして、基材12の外表面にコーティング剤層14及び培養細胞16の単層構造が形成されている。中空マイクロキャリア44及び中実マイクロキャリア46では、培養細胞16が配置された側に微量の液体が流される。そして、液体中の所定物質が培養細胞16に取り込まれる。中空マイクロキャリア44及び中実マイクロキャリア46は例えば、細胞の機能や、薬物の取込・排出を微量液量で調べる薬物評価モジュールとして使用可能である。
図4(F)は、ウェルプレート48に細胞支持複合体10が組み込まれた様子を図示している。ウェルプレート48では、細胞支持複合体10がウェル底面に配置される。この状態で、培養細胞16はウェルの上側を向く。ウェルプレート48では、ウェル内に微量の液体49が注入される。そして、液体49中の所定物質が培養細胞16に取り込まれる。ウェルプレート48は例えば、細胞の機能や、薬物の取込・排出を微量液量で調べる薬物評価モジュールとして使用可能である。なお、ウェルプレート48に代えて、培養ディッシュ(シャーレ等)に細胞支持複合体10が組み込まれてもよい。
上述の、細胞支持複合体10を組み込んだモジュールは、第2装置40のように適宜カートリッジに収容されて使用される。
以上説明したように、本実施の形態に係る細胞の培養方法は、腎臓細胞24を培養容器26に非接着の状態で5日以上の期間培養して、培養期間中に腎臓細胞24の凝集体30を形成して、一部の期間は凝集体30の状態で培養することを含む。腎臓細胞24を浮遊状態で培養することで、凝集体30を形成することができる。言い換えれば、本実施の形態に係る細胞の培養方法は、培養容器26に非接着の状態で腎臓細胞24を培養して、腎臓細胞24の凝集体30を形成する工程を含み、培養期間は5日以上である。凝集体30の状態で腎臓細胞24を培養することで、培養により低下した腎臓細胞24の生理機能を回復させることができる。
したがって、本実施の形態の培養方法によれば、生理機能が従来に比べて良好な状態にある細胞を獲得することができる。また、得られた高機能細胞を用いて細胞支持複合体10を製造することで、高性能なバイオ人工臓器やインビトロ評価系を提供することができる。なお、前記「浮遊状態」とは、細胞が培養容器26の壁面に接着していない状態を意味する。したがって、「浮遊状態」には、細胞が培養容器26の壁面に接触しているが、培地28の対流等で容易に壁面から離間できる状態が含まれる。
また、本実施の形態の培養方法では、凝集体30は培養1日目に形成され、腎臓細胞24の培養期間は10日以下である。これにより、生理機能がより強く発現した状態にある培養細胞16を得ることができる。また、細胞は一般に、凝集状態が長く続くとその状態を記憶してしまい、凝集しやすくなる傾向にある。これに対し、培養期間を10日以下とすることで、培養細胞16が凝集体30から単離し難くなることと、単離後に再凝集し易くなることとを、抑制することができる。
また、本実施の形態の培養方法では、凝集体30を構成する腎臓細胞24の数は、500個/ウェル以上5000個/ウェル以下である。また、凝集体30の大きさは、100μm以上350μm以下である。構成細胞数を500個/ウェル以上、あるいは大きさを100μm以上とすることで、培地交換の際などに凝集体30が吸引されてしまうことをより確実に回避できる。これにより、細胞培養の作業性を向上させることができる。また、構成細胞数を5000個/ウェル以下、あるいは大きさを350μm以下とすることで、腎臓細胞24の機能をより確実に回復させることができる。すなわち、良好な生理機能を有する培養細胞16をより確実に作製することができる。
また、本実施の形態の培養方法では、培養容器26に細胞非接着処理が施されているか、培養容器26は細胞非接着材料で構成されている。これにより、細胞の凝集体30をより確実に形成させることができる。よって、生理機能を有する培養細胞16をより確実に作製することができる。
また、本実施の形態の培養方法は、コラーゲンIを培地28に添加すること、言い換えればコラーゲンIを含む細胞懸濁液を培養容器26に添加することを含む。コラーゲンIは、腎臓細胞24同士の接着剤として作用する。このため、腎臓細胞24の自己凝集能力が低い場合であっても、凝集体30をより確実に形成させることができる。また、細胞懸濁液中のコラーゲンIの含有量は、好ましくは0.0005mg/ml超0.15mg/ml未満である。これにより、コラーゲンIが持つ凝集体30の形成促進効果をより確実に発揮させることができる。
自己凝集能力が低い細胞凝集塊を形成する手法としては、膨潤性材料を含む高粘度培地中に細胞懸濁液を添加し、細胞懸濁液中の水分を高粘度培地中に移動させることで、強制的に細胞凝集塊を形成する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、凝集塊の形成作業が複雑となる。また、高粘度培地からの凝集塊の分離が困難であり、細胞の回収ロスが生じ得る。また、凝集塊の外表面にゲルのカプセルが形成され、凝集塊、特に凝集塊内部への酸素や栄養分の供給が妨げられる。これに対し、本実施の形態のようにコラーゲンIを培地28に添加することで、上記課題が生じることなく、自己凝集能力が低い細胞凝集塊を形成させることができる。
また、本実施の形態に係る細胞支持複合体10の製造方法は、ラミニン分子、基底膜マトリックス混合物、コラーゲン分子及びこれらのいずれかの断片からなる群から選択される1種以上を含むコーティング剤を基材12に塗布する工程と、培養細胞16の凝集体30を個々の培養細胞16に分離する工程と、基材12に培養細胞16を播種し、基材12上で培養細胞16を培養して、培養細胞16の単層構造を形成する工程とを含む。このように、所定の接着分子を含むコーティング剤を基材12に塗布してコーティング剤層14を形成することで、基材12上に培養細胞16の単層構造を安定的に形成することができる。よって、培養細胞16の単層構造の安定性が向上した細胞支持複合体10を提供することができる。また、基材12上には、高生理機能を有する培養細胞16からなる単層膜が形成されている。このため、高機能な細胞支持複合体10を得ることができる。
本実施の形態の細胞支持複合体10の製造方法によれば、培養細胞16の単層構造が安定して得られる。このため、培養細胞16が基材12上でコンフルエントに達したことを、顕微鏡観察により確認する必要がない。また、基材12には人工膜を利用できる。このため、所望形状の細胞支持複合体10を容易に製造することができる。また、同一構造の細胞支持複合体10を大量に製造することができる。
なお、基材として、ヒト、ヒツジ、ブタ等の小腸粘膜下組織を脱細胞化した生物学的足場を用いることも考えられる。しかしながら、このような生物学的足場は、生体由来であるため同一構造のものを大量に製造することが困難である。このため、人工腎臓等の臨床用途に不向きである。また、小腸粘膜下組織は、動物種差あるいは個体差により、個々に形状が異なる。このため、細胞の播種面積も個々に変化し得る。よって、播種細胞数の制御が難しい。また、形状が複雑であり、また透明素材でもないため、細胞の観察が困難である。よって、細胞の観察が必要な薬物評価システムへの利用に不向きである。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれるものである。上述の実施の形態と以下の変形例との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
[近位尿細管上皮細胞における遺伝子発現の解析:試験1]
試験1により、近位尿細管上皮細胞における生理機能の低下を確認した。まず、ヒト近位尿細管上皮細胞(Lonza社)を、ゼラチン溶液(シグマ社)でコーティングした60mmシャーレ(Corning社)に100000個播種した。そして、培地としてREGM(Lonza社)を用いて37℃、5%COの条件下で培養した。
RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、播種直後(すなわち0時間)と培養4日(すなわち96時間)の近位尿細管上皮細胞からmRNAを抽出し、精製した。続いて、QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN社)を用いて、精製したmRNAからcDNAを合成した。これらのcDNAを鋳型とし、Thermal Cycler Dice Real Time System I(タカラバイオ株式会社)を用いて、リアルタイムPCR法にてAQP1、CD13、SGLT2、Na/K ATPase、PEPT1、MDR1、OAT1、OCTN2、E-cadherin及びZO-1の各遺伝子の発現量を測定した。
これらの遺伝子は、腎臓細胞の生理機能に関連する遺伝子である。具体的には、AQP1(aquaporin 1)は、水の輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。CD13(alanyl aminopeptidase)は、タンパク質のペプチド化に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。SGLT2(sodium glucose cotransporter 2)は、ナトリウム及びグルコースの輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。Na/K ATPaseは、イオンの輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。PEPT1(peptide transporter 1)は、ペプチドの輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。MDR1(multiple drug resistance 1)、OAT1(organic anion transporter 1)及びOCTN2(organic cation transporter novel 1)は、薬剤の輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。E-cadherin及びZO-1(zonula occludens-1)は、細胞間結合に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。
各遺伝子について、播種直後の発現量に対する培養4日の発現量の比率(day4/day0)を算出した。結果を図5に示す。図5は、細胞を接着培養した場合における遺伝子発現量の経時変化を示す図である。図5に示すように、全ての遺伝子において比率は1を下回っていた。すなわち、培養4日の各遺伝子の発現量は、培養直後に比べて低下していた。この結果から、近位尿細管上皮細胞は、シャーレでの二次元培養によって遺伝子発現量が低下すること、すなわち脱分化することが示された。なお、播種直後であっても、近位尿細管上皮細胞の生理機能はある程度低下していると推察される。
[近位尿細管上皮細胞の非接着培養:試験2]
試験2により、近位尿細管上皮細胞を非接着培養した際の細胞の形態を確認した。まず、試験1と同様にして脱分化させたヒト近位尿細管上皮細胞の懸濁液を、細胞濃度を異ならせて複数調製した。各細胞懸濁液における濃度は、5000、10000、25000、50000、100000、250000個/mlとした。細胞非接着処理が施された96ウェルU底プレート(住友ベークライト社)に、各細胞懸濁液を100μl滴下して、細胞を播種した。これにより、各プレートにおける細胞数は500個/ウェル、1000個/ウェル、2500個/ウェル、5000個/ウェル、10000個/ウェル、25000個/ウェルとなった。そして、培地としてREGM(Lonza社)を用いて37℃、5%COの条件下で培養した。培地は2日毎に交換した。
各プレートにおける、培養3,7日(すなわち72,168時間)の細胞の顕微鏡像を図6(A)に示す。図6(A)は、非接着培養3,7日の細胞の光学顕微鏡画像である。図6(A)に示すように、非接着培養によって近位尿細管上皮細胞が凝集体を形成することが確認された。
また、各プレートについて、播種7日の凝集体の直径を測定した。凝集体の直径は、デジタルマイクロスコープVHX-500(KEYENCE社)の計測ソフトを用いて測定した。各細胞数のプレートにおける凝集体10個の直径、すなわち最大幅を測定し、最大値と最小値とを求めた。結果を図6(B)に示す。図6(B)は、凝集体の直径の最大値と最小値とを示す図である。図6(B)に示すように、凝集体のおおよその直径は、細胞数500個/ウェル(すなわち凝集体の構成細胞数が500個)で100~180μmであった。また、細胞数1000個/ウェル(すなわち凝集体の構成細胞数が1000個)で150~220μmであった。また、細胞数2500個/ウェル(すなわち凝集体の構成細胞数が2500個)で220~300μmであった。また、細胞数5000個/ウェル(すなわち凝集体の構成細胞数が5000個)で260~350μmであった。また、細胞数10000個/ウェル(すなわち凝集体の構成細胞数が10000個)で370~480μmであった。また、細胞数25000個/ウェル(すなわち凝集体の構成細胞数が25000個)で460~610μmであった。
また、各プレートにおける播種3,7,14日(すなわち72,168,336時間)の凝集体について、凝集体を構成する細胞の数を計測した。具体的には、0.1%トリプシン溶液で凝集体の構成細胞を単一化した後、TC20全自動セルカウンター(バイオラッド社)を用いて、凝集体20個について細胞数を計測し、その平均値を凝集体の構成細胞数とした。結果を図6(C)に示す。図6(C)は、凝集体の構成細胞数の経時変化を示す図である。図6(C)に示すように、凝集体の構成細胞数は、14日間ほとんど変化がないことが確認された。なお、凝集体の直径も14日間ほとんど変化がないことが確認された。
[凝集体を構成する近位尿細管上皮細胞における遺伝子発現量の測定:試験3]
試験3により、近位尿細管上皮細胞の非接着培養による生理機能の回復を確認した。まず、試験2と同様にして、脱分化したヒト近位尿細管上皮細胞の懸濁液を調製し、培養した。また、ゼラチン溶液(シグマ社)でコーティングした96ウェル平底プレート(Corning社)に、細胞濃度を10000個/mlに調整した細胞懸濁液を100μl滴下して、細胞を播種した。したがって、細胞数は1000個/ウェルである。そして、培地としてREGM(Lonza社)を用いて37℃、5%COの条件下で培養した。培地は2日毎に交換した。これを比較例とした。比較例では、プレートにゼラチンコーティング、すなわち接着処理が施されている。また、ウェル底面が平底であるため、細胞がほぼ等間隔に播種され、これにより凝集体の形成が阻害される。このため、細胞はプレートに接着した状態で培養され、凝集体は形成されなかった。
RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、播種直後(すなわち0時間)の近位尿細管上皮細胞と、培養3,7日(すなわち72,168時間)の凝集体を構成する近位尿細管上皮細胞からmRNAを抽出し、精製した。続いて、QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN社)を用いて、精製したmRNAからcDNAを合成した。これらのcDNAを鋳型とし、Thermal Cycler Dice Real Time System I(タカラバイオ株式会社)を用いて、リアルタイムPCR法にてAQP1、SGLT2及びOAT1の各遺伝子の発現量を測定した。
各遺伝子について、播種直後の発現量に対する培養3日の発現量の比率(day3/day0)と、播種直後の発現量に対する培養7日の発現量の比率(day7/day0)とを算出した。結果を図7に示す。図7は、凝集体を構成する細胞における遺伝子発現量の経時変化を示す図である。
図7に示すように、AQP1遺伝子及びSGLT2遺伝子については、いずれの細胞数及びいずれの培養日数においても、細胞を接着培養した比較例に比べて細胞を非接着培養した場合の方が発現量が多いことが確認された。特に、培養7日ではその傾向が顕著であった。OAT1遺伝子については、培養3日では比較例の方が発現量が多いが、培養7日では、細胞数25000個/ウェルを除いて、細胞を非接着培養した方が発現量が多かった。したがって、細胞を接着培養する場合に比べて非接着培養する場合の方が、細胞の生理機能が回復する傾向にあることが確認された。
また、各遺伝子の培養7日の結果から、細胞数が500個/ウェル以上5000個/ウェル以下の場合に、AQP1遺伝子とOAT1遺伝子の発現量が顕著に増大することが確認された。このことから、細胞数を上記範囲とすることで生理機能がより良好になることが確認された。
[凝集体を構成する近位尿細管上皮細胞における遺伝子発現量の経時変化の解析:試験4]
試験4により、近位尿細管上皮細胞の非接着培養による生理機能の回復を確認した。まず、試験2と同様にして、脱分化したヒト近位尿細管上皮細胞の懸濁液を調製し、培養した。なお、細胞濃度を10000個/mlに調整した細胞懸濁液のみを用いた(したがって、細胞数は1000個/ウェル)。
RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、播種直後(すなわち0時間)の近位尿細管上皮細胞と、培養3,4,5,6,7,8,10,12,14日(すなわち72,96,120,144,168,192,240,288,336時間)の凝集体を構成する近位尿細管上皮細胞からmRNAを抽出し、精製した。続いて、QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN社)を用いて、精製したmRNAからcDNAを合成した。これらのcDNAを鋳型とし、Thermal Cycler Dice Real Time System I(タカラバイオ株式会社)を用いて、リアルタイムPCR法にてAQP1、SGLT2及びOAT1の各遺伝子の発現量を測定した。
各遺伝子について、播種直後の発現量に対する培養M日(M=3,4,5,6,7,8,10,12,14)の発現量の比率(dayM/day0)を算出した。結果を図8に示す。図8は、凝集体を構成する細胞における遺伝子発現量の経時変化を示す図である。
図8に示すように、AQP1遺伝子とOAT1遺伝子とは、培養5日で急激に発現量が上昇することが確認された。SGLT2遺伝子についても、培養5日で高い発現量であった。このことから、近位尿細管上皮細胞の培養期間を5日以上とすることで、生理機能の改善された細胞が得られることが確認された。また、AQP1遺伝子とOAT1遺伝子とは、培養10日を過ぎると発現量が減少傾向に転じることが確認された。このことから、近位尿細管上皮細胞の培養期間は10日以下がより好ましいことが確認された。なお、AQP1遺伝子及びOAT1遺伝子の発現量は、培養12,14日であっても培養直後に比べれば高い値ではあった。
[凝集体からの細胞の単離と再培養:試験5]
試験1と同様にして脱分化させたヒト近位尿細管上皮細胞の懸濁液を、非接着処理が施された60mmシャーレ(住友ベークライト社:培養面積21cm)に3ml滴下して、細胞を播種した。細胞懸濁液における細胞濃度は100000個/mlとした。したがって、細胞密度は約14300個/cmである。そして、培地としてREGM(Lonza社)を用いて37℃、5%COの条件下で培養した。培地は2日毎に交換した。培養7日(すなわち168時間)の凝集体を50mlチューブに回収し、PBSで洗浄した。続いて、一部の凝集体は、0.1%トリプシン/EDTA(Thermo Fisher社)で処理した。他の一部の凝集体は、Accutase(Innovative cell technologies社)で処理した。処理条件は、37℃で10分間とした。その後、ピペッティング処理により凝集体を構成する細胞を分離した。
単一化した細胞を、ゼラチン溶液(シグマ社)でコーティングした100mmシャーレ(Corning社)に再播種した。細胞の播種密度は、14300個/cmとした。そして、培地としてREGM(Lonza社)を用いて37℃、5%COの条件下で培養した。培地は2日毎に交換した。
再播種0,3,7日(すなわち0,72,168時間)の細胞の顕微鏡像を図9に示す。図9は、凝集体から分離した細胞の再播種0,3,7日の光学顕微鏡画像である。図9に示すように、近位尿細管上皮細胞の凝集体にトリプシンやAccutase等の酵素処理を施すことで、細胞を単一化できることが確認された。また、単一化した細胞を再播種して培養することで、細胞がコンフルエントの状態まで増殖することが確認された。これにより、非接着培養により生理機能を回復させた細胞を用いて、細胞支持複合体を作製できることが確認された。
なお、本発明者は、非接着処理が施された60mmシャーレ(住友ベークライト社)に脱分化した近位尿細管上皮細胞を播種して3日間培養することで、シャーレ上でも培養1日目に細胞が凝集体を形成することを確認している。このときの細胞密度は、1500個/cm及び15000個/cmとした。
[細胞ロット及び継代培養数と凝集体形成との関係の解析:試験6]
試験6により、細胞ロットや継代培養数によって近位尿細管上皮細胞が凝集体を形成しない場合があることを確認した。まず、ヒト近位尿細管上皮細胞(Lonza社)のロットA~Eを用意した。また、各ロットについて、継代培養数が2回のものと3回のものとを用意した。用意した各ロットについて、細胞濃度を20000個/mlに調整した細胞懸濁液を、96ウェル非接着V底プレート(住友ベークライト社)に100μl播種した。そして、培地としてREGM(Lonza社)を用い、37℃、5%COの条件下で浮遊培養した。これにより、各ロットの継代培養数は、2回のものは3回となり、3回のものは4回となった。
各ロットにおける播種から24時間経過後の細胞の顕微鏡像を図10に示す。図10は、ロット及び継代培養数が異なる細胞の播種から24時間後の光学顕微鏡画像である。図10に示すように、近位尿細管上皮細胞の自己凝集能力がロットや継代数によって異なる、あるいは変化することが確認された。より具体的には、ロットDでは、継代3回(P=3)、4回(P=4)ともに細胞の沈殿、集積は見られたが、凝集体を形成しなかった。ロットEでは、継代3回では凝集体を形成したにもかかわらず、継代4回では凝集体を形成しなかった。
[凝集状態が異なる近位尿細管上皮細胞における遺伝子発現量の測定:試験7]
試験7により、近位尿細管上皮細胞の凝集体形成による生理機能の回復を確認した。まず、試験6と同様に、継代2回及び3回のロットA~Eを用意した。各ロットについて、96ウェル非接着V底プレート(住友ベークライト社)に細胞濃度20000個/mlの細胞懸濁液を100μl播種した。そして、試験6と同条件で培養した。この結果、試験6と同様に、継代3回及び4回のロットA~Cと継代3回のロットEでは、凝集体が形成された。一方、継代3回及び4回のロットDと継代4回のロットEでは、凝集体が形成されなかった。
RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、培養8日後の近位尿細管上皮細胞からmRNAを抽出し、精製した。続いて、QuantiTect Reverse Transcription Kit t(QIAGEN社)を用いて、精製したmRNAからcDNAを合成した。これらのcDNAを鋳型とし、Thermal Cycler Dice Real Time System I(タカラバイオ株式会社)を用いて、リアルタイムPCR法にてOAT1遺伝子の発現量を測定した。
継代3回のロットAにおけるOAT1遺伝子の発現量に対する、各継代回数の各ロットにおけるOAT1遺伝子の発現量の比率(Fold Change)を算出した。結果を図11に示す。図11は、凝集状態が異なる細胞におけるOAT1遺伝子の発現量を示す図である。図11に示すように、凝集体を形成した継代3回及び4回のロットA~Cと継代3回のロットEでは、近位尿細管上皮細胞におけるOAT1遺伝子の発現量に大きな差はなかった。一方、凝集体を形成しなかった継代3回及び4回のロットDと継代4回のロットEでは、凝集体を形成する場合と比べてOAT1遺伝子の発現量が低いことが確認された。
[凝集体形成を促進する物質の選定:試験8]
試験8により、近位尿細管上皮細胞の自己凝集を促進する物質を選定した。具体的には、試験6,7で自己凝集化しないことを確認したロットD(継代培養数3回)のヒト近位尿細管上皮細胞(Lonza社)を用い、細胞濃度20000個/mlの細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を、96ウェル非接着V底プレート(住友ベークライト社)に100μl播種した。また、代表的な細胞接着因子であるコラーゲンI、ゼラチン、Matrigel、ラミニン511-E8、コラーゲンIV、ラミニン521及びフィブロネクチンを、各ウェルに添加した。各細胞接着因子の濃度について、コラーゲンI及びコラーゲンIVは、0.01mg/ml及び0.3mg/mlとした。ゼラチンは、0.01mg/ml及び0.5mg/mlとした。Matrigel、ラミニン511-E8及びフィブロネクチンは、0.01mg/ml及び0.1mg/mlとした。ラミニン521は、0.01mg/ml及び0.05mg/mlとした。また、対照実験区(control)として、細胞接着因子を添加しないウェルを用意した。そして、培地としてREGM(Lonza社)を用い、37℃、5%COの条件下で浮遊培養した。
各ウェルにおける播種から24時間経過後の細胞の顕微鏡像を図12に示す。図12は、種々の細胞接着因子を添加した細胞懸濁液の播種から24時間後の光学顕微鏡画像である。図12に示すように、自己凝集化しない近位尿細管上皮細胞の懸濁液に、濃度が0.01mg/mlとなるようにコラーゲンIを添加して培養すると、細胞の自己凝集化が促進されて、凝集体が形成されることが確認された。コラーゲンI以外の細胞接着因子を添加した場合には、細胞接着因子を添加しなかった対象実験区と同様に、細胞凝集体は形成されなかった。
[コラーゲンIの濃度の解析:試験9]
試験9により、コラーゲンIの濃度と細胞の状態との相関を確認した。試験6,7で自己凝集化しないことを確認したロットD(継代培養数3回)のヒト近位尿細管上皮細胞(Lonza社)を用い、細胞濃度の異なる複数の細胞懸濁液を調製した。各細胞懸濁液における細胞濃度は、5000、10000、25000、100000個/mlとした。96ウェル非接着V底プレート(住友ベークライト社)に、各細胞懸濁液を100μl播種した。これにより、各プレートにおける細胞数は500個/ウェル、1000個/ウェル、2500個/ウェル、10000個/ウェルとなった。
また、各細胞懸濁液のウェルにコラーゲンIを添加した。コラーゲンIは、濃度が0.3、0.15、0.1、0.06、0.03、0.01、0.006、0.003、0.001、0.0005mg/mlとなるように添加した。また、対照実験区(control)として、コラーゲンIを添加しない(0mg/ml)ウェルを用意した。そして、培地としてREGM(Lonza社)を用い、37℃、5%COの条件下で浮遊培養した。
コラーゲンI濃度が0、0.15、0.03、0.003mg/mlの培地で24時間培養した近位尿細管上皮細胞の顕微鏡像を図13(A)に示す。図13(A)は、様々な濃度のコラーゲンIを添加した細胞懸濁液の播種24時間後の光学顕微鏡画像である。また、各コラーゲンI濃度で24時間培養した後に細胞の凝集体が形成されたか否かを、顕微鏡像から確認した。結果を図13(B)に示す。図13(B)は、コラーゲンIの濃度と凝集体形成の有無との関係を示す図である。図13(B)において、「○」は凝集体が形成されたことを示し、「×」は凝集体が形成されなかったことを示す。
図13(A)及び図13(B)に示すように、コラーゲンIによる近位尿細管上皮細胞の自己凝集化の促進は、コラーゲンIの濃度や細胞数に影響を受ける傾向があることが確認された。凝集体を構成する細胞数が多くなると、凝集化を促進するために必要なコラーゲンIの量が多くなる傾向が見られた。
より具体的には、細胞数500個/ウェル及び1000個/ウェルのプレートでは、コラーゲンI濃度0.0005mg/mlでは凝集体が形成されず、0.001mg/mlでは凝集体が形成された。このことから、コラーゲンI濃度が0.0005mg/ml超、さらには0.001mg/ml以上で、凝集体の形成がより確実に促進されることが確認された。また、コラーゲンI濃度が0.0005mg/ml以下の場合には、凝集体を形成させるために細胞数の調整などの追加条件が必要であることが確認された。
また、細胞数2500個/ウェルのプレートでは、コラーゲンI濃度0.003mg/mlでは凝集体が形成されず、0.006mg/mlでは凝集体が形成された。このことから、コラーゲンI濃度が0.003mg/ml超、さらには0.006mg/ml以上で、より幅広い細胞数の凝集体を形成させられることが確認された。また、細胞数10000個/ウェルのプレートでは、コラーゲンI濃度0.006mg/mlでは凝集体が形成されず、0.01mg/mlでは凝集体が形成された。このことから、コラーゲンI濃度が0.006mg/ml超、さらには0.01mg/ml以上で、より幅広い細胞数の凝集体を形成させられることが確認された。
また、いずれの細胞数のプレートにおいても、コラーゲンI濃度が0.15mg/mlでは凝集体が形成されず、0.1mg/mlでは凝集体が形成された。コラーゲンI濃度が0.15mg/mlでは、コラーゲンIが培地中でゲル化して分散しなかった。このことから、コラーゲンI濃度が0.15mg/ml未満、さらには0.1mg/ml以下で、凝集体の形成がより確実に促進されることが確認された。また、コラーゲンI濃度が0.15mg/ml以上の場合には、コラーゲンIのゲル化を回避するために追加条件が必要であることが確認された。
[コラーゲンIが有する凝集促進効果の確認:試験10]
試験10により、コラーゲンIの添加による細胞凝集体の形成促進効果を確認した。具体的には、試験6,7と同様に、継代2回及び3回のロットA~Eを用意した。各ロットについて、96ウェル非接着V底プレート(住友ベークライト社)に細胞濃度20000個/mlの細胞懸濁液を100μl播種した。細胞懸濁液の調製には、コラーゲンIを添加した培地REGM(Lonza社)を用いた。コラーゲンIは、濃度が0.005mg/mlとなるように添加した。そして、37℃、5%COの条件下で浮遊培養した。
各プレートにおける播種から24時間経過後の細胞の顕微鏡像を図14に示す。図14は、コラーゲンIを添加した細胞懸濁液及びコラーゲンIを非添加の細胞懸濁液の、播種から24時間後の光学顕微鏡画像である。図14において、上段の「in REGM」は試験6の結果であり、図10と同一である。下段の「0.005mg/ml Collagen I in REGM」は、試験10の結果である。図14に示すように、継代3回及び4回のロットDと継代4回のロットEは、コラーゲンIの非添加では凝集体を形成しなかったが、コラーゲンIの添加によって凝集体を形成することが確認された。また、コラーゲンIの非添加でも凝集体を形成した他のロットでは、コラーゲンIの添加によって、細胞の凝集状態が向上し、より整った球状となることが確認された。
また、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、培養8日後の近位尿細管上皮細胞からmRNAを抽出し、精製した。続いて、QuantiTect Reverse Transcription Kit t(QIAGEN社)を用いて、精製したmRNAからcDNAを合成した。これらのcDNAを鋳型とし、Thermal Cycler Dice Real Time System I(タカラバイオ株式会社)を用いて、リアルタイムPCR法にてOAT1遺伝子の発現量を測定した。
コラーゲンI非添加、継代3回のロットAにおけるOAT1遺伝子の発現量に対する、各継代回数の各ロットにおけるOAT1遺伝子の発現量の比率(Fold Change)を算出した。結果を図15(A)に示す。図15(A)は、コラーゲンIを添加して培養した細胞におけるOAT1遺伝子の発現量を示す図である。また、比較のために試験7の結果を図15(B)に示す。図15(B)は、コラーゲンIを添加せずに培養した細胞におけるOAT1遺伝子の発現量を示す図である。図15(B)は、図11と同一である。
図15(B)に示すように、凝集体を形成しなかった継代3回及び4回のロットDと継代4回のロットEでは、凝集体を形成するロットと比べてOAT1遺伝子の発現量が低かった。これに対し、コラーゲンIの添加により、これらのロットでも凝集体が形成された。このため、図15(A)に示すように、継代3回及び4回のロットDと継代4回のロットEでも、凝集体を形成した他のロットと同程度にOAT1遺伝子が発現することが確認された。
つまり、コラーゲンIの添加によって、細胞のロットや継代数にかかわらず、腎臓細胞の自己凝集化を促進して凝集体を形成させられることが確認された。また、その結果、腎臓細胞の生理機能を向上させられることが確認された。
10 細胞支持複合体、 12 基材、 14 コーティング剤層、 16 培養細胞、 24 腎臓細胞、 26 培養容器、 30 凝集体。
本発明は、細胞の培養方法、細胞支持複合体の製造方法、培養細胞及び細胞支持複合体に利用することができる。

Claims (11)

  1. 位尿細管上皮細胞のみを培養容器の培養面上で且つ前記培養面に非接着の状態で5日以上の期間培養し、培養期間中に前記近位尿細管上皮細胞の凝集体を形成して、一部の期間は凝集体の状態で前記近位尿細管上皮細胞を培養することで前記近位尿細管上皮細胞の生理機能を回復させる工程を含むことを特徴とする細胞の培養方法。
  2. 前記凝集体は、培養1日目に形成され、
    前記近位尿細管上皮細胞の培養期間は、14日以下である請求項1に記載の細胞の培養方法。
  3. 前記凝集体を構成する前記近位尿細管上皮細胞の数は、500個以上5000個以下である請求項1又は2に記載の細胞の培養方法。
  4. 前記凝集体の大きさは、150μm以上350μm以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の細胞の培養方法。
  5. 前記培養容器は、細胞非接着処理が施されているか、細胞非接着材料で構成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の細胞の培養方法。
  6. コラーゲンIを含む培地で前記近位尿細管上皮細胞を培養することを含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の細胞の培養方法。
  7. 前記培地中の前記コラーゲンIの濃度は、0.0005mg/ml超0.15mg/ml未満である請求項6に記載の細胞の培養方法。
  8. 前記培地中の前記コラーゲンIの濃度は、0.006mg/ml以上0.1mg/ml以下である請求項6に記載の細胞の培養方法。
  9. 前記近位尿細管上皮細胞の生理機能を回復させる工程は、OAT1遺伝子の発現量を増大させることを含む請求項1乃至8のいずれか1項に記載の細胞の培養方法。
  10. ラミニン分子、基底膜マトリックス混合物、コラーゲン分子及びこれらのいずれかの断片からなる群から選択される1種以上を含むコーティング剤を、基材の少なくとも一部に塗布する工程と、
    請求項1乃至9のいずれか1項に記載の細胞の培養方法で形成された凝集体を、個々の培養細胞に分離する工程と、
    前記コーティング剤を塗布した前記基材に前記培養細胞を播種し、前記基材上で前記培養細胞を培養して、前記培養細胞の単層構造を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする細胞支持複合体の製造方法。
  11. 位尿細管上皮細胞のみを培養容器の培養面上で且つ前記培養面に非接着の状態で培養し、培養期間中に前記近位尿細管上皮細胞の凝集体を形成して、一部の期間は凝集体の状態で前記近位尿細管上皮細胞を培養することで前記近位尿細管上皮細胞の生理機能を回復させる工程を含むことを特徴とする細胞の培養方法。
JP2019511143A 2017-04-06 2018-03-22 細胞の培養方法及び細胞支持複合体の製造方法 Active JP6995112B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017075828 2017-04-06
JP2017075828 2017-04-06
PCT/JP2018/011392 WO2018186185A1 (ja) 2017-04-06 2018-03-22 細胞の培養方法、細胞支持複合体の製造方法、培養細胞及び細胞支持複合体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2018186185A1 JPWO2018186185A1 (ja) 2019-12-19
JP6995112B2 true JP6995112B2 (ja) 2022-02-04

Family

ID=63712663

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019511143A Active JP6995112B2 (ja) 2017-04-06 2018-03-22 細胞の培養方法及び細胞支持複合体の製造方法

Country Status (4)

Country Link
US (3) US12024720B2 (ja)
EP (1) EP3608398A4 (ja)
JP (1) JP6995112B2 (ja)
WO (1) WO2018186185A1 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018186185A1 (ja) 2017-04-06 2018-10-11 日機装株式会社 細胞の培養方法、細胞支持複合体の製造方法、培養細胞及び細胞支持複合体
JP6978585B2 (ja) * 2018-03-22 2021-12-08 日機装株式会社 細胞の培養方法
CN113661174A (zh) * 2019-04-01 2021-11-16 凸版印刷株式会社 含细胞外基质组合物及其制造方法、以及三维组织体及其制造方法
JP2022131878A (ja) 2021-02-26 2022-09-07 日機装株式会社 凍結された腎臓細胞の製造方法及び凍結された腎臓細胞
WO2023248934A1 (ja) * 2022-06-20 2023-12-28 日機装株式会社 細胞支持複合体の製造方法、薬剤評価装置の製造方法、薬剤評価方法および薬剤評価装置
JP2024067465A (ja) * 2022-11-04 2024-05-17 日機装株式会社 腎細胞凝集体を含むプレート、それを用いた薬物動態検査用キット、毒性検査用キット及び創薬開発用キット
WO2024095922A1 (ja) * 2022-11-04 2024-05-10 日機装株式会社 腎細胞の凝集体および腎細胞の凝集体の製造方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003219865A (ja) 2002-01-29 2003-08-05 Japan Tissue Engineering:Kk スフェロイドの作製方法、スフェロイド及びスフェロイド含有組成物
WO2008047760A1 (fr) 2006-10-17 2008-04-24 Tokai University Educational System Tubule rénal bioartificiel
JP2014515270A (ja) 2011-05-27 2014-06-30 アドバンスト・テクノロジーズ・アンド・リジェネレイティブ・メディスン・エルエルシー バイオ人工近位尿細管システム及びその使用方法
JP2015511487A (ja) 2012-03-13 2015-04-20 インスティテュート オブ ジェネティックス アンド ディベロップメンタル バイオロジー,チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ 3次元培養による細胞の再プログラミング
WO2015167003A1 (ja) 2014-04-30 2015-11-05 学校法人近畿大学 コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用

Family Cites Families (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5202953B2 (ja) 2004-11-08 2013-06-05 ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティー 心臓幹細胞
EP2089511B1 (en) 2006-11-13 2014-09-17 DePuy Synthes Products, LLC In vitro expansion of postpartum-derived cells using microcarriers
EP2772533B1 (en) 2009-03-09 2017-02-01 Toyo Seikan Group Holdings, Ltd. Cell culture method, cell culture device, method for counting subject matters to be counted in container and device for counting
JP2011030453A (ja) 2009-07-30 2011-02-17 Sanyo Chem Ind Ltd 細胞の生産方法
JP5671791B2 (ja) 2009-09-04 2015-02-18 ニプロ株式会社 近位尿細管上皮細胞(rptec)の培養方法
PL2569417T3 (pl) * 2010-05-13 2018-12-31 Tel Hashomer Medical Research Infrastructure And Services Ltd. Izolowane populacje dorosłych komórek nerkowych i sposoby ich izolowania i stosowania
WO2013187359A1 (ja) 2012-06-11 2013-12-19 エイブル株式会社 細胞培養装置及びそれを用いる細胞培養方法
SG11201603414YA (en) 2013-11-11 2016-05-30 C O Agency For Science Technology And Res Method for differentiating induced pluripotent stem cells into renal proximal tubular cell-like cells
WO2016019168A1 (en) 2014-08-01 2016-02-04 Isto Technologies, Inc. Cell expansion methods and systems
EP3210634B8 (en) 2014-10-22 2019-10-16 FUJIFILM Corporation Method for preparing microcarriers, microcarriers and application thereof
JP6755085B2 (ja) 2015-11-10 2020-09-16 日機装株式会社 細胞支持複合体および細胞支持複合体の製造方法
JP6605618B2 (ja) 2015-11-10 2019-11-20 日機装株式会社 細胞支持複合体および細胞支持複合体の製造方法
JP6691371B2 (ja) 2015-11-10 2020-04-28 日機装株式会社 細胞支持複合体および細胞支持複合体の製造方法
US10954487B2 (en) 2016-01-21 2021-03-23 Osaka University Cell culturing method
WO2018186185A1 (ja) 2017-04-06 2018-10-11 日機装株式会社 細胞の培養方法、細胞支持複合体の製造方法、培養細胞及び細胞支持複合体

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003219865A (ja) 2002-01-29 2003-08-05 Japan Tissue Engineering:Kk スフェロイドの作製方法、スフェロイド及びスフェロイド含有組成物
WO2008047760A1 (fr) 2006-10-17 2008-04-24 Tokai University Educational System Tubule rénal bioartificiel
JP2014515270A (ja) 2011-05-27 2014-06-30 アドバンスト・テクノロジーズ・アンド・リジェネレイティブ・メディスン・エルエルシー バイオ人工近位尿細管システム及びその使用方法
JP2015511487A (ja) 2012-03-13 2015-04-20 インスティテュート オブ ジェネティックス アンド ディベロップメンタル バイオロジー,チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ 3次元培養による細胞の再プログラミング
WO2015167003A1 (ja) 2014-04-30 2015-11-05 学校法人近畿大学 コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用

Non-Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
ANALYTICAL SCIENCES,2011年,Vol. 27,pp. 907-912
Drug Delivery System,2013年,Vol. 28, No. 1,pp. 45-53
Kidney International,1996年,Vol. 49,pp. 48-58
Pflugers Arch - Eur J Physiol,Vol. 468,2016年,pp. 739-750
TISSUE ENGINEERING: Part A,2011年,Vol. 17, No. 17 and 18,pp. 2305-2319

Also Published As

Publication number Publication date
US20240263144A1 (en) 2024-08-08
EP3608398A4 (en) 2020-12-09
US12024720B2 (en) 2024-07-02
EP3608398A1 (en) 2020-02-12
US20200032216A1 (en) 2020-01-30
WO2018186185A1 (ja) 2018-10-11
US20240263145A1 (en) 2024-08-08
JPWO2018186185A1 (ja) 2019-12-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6995112B2 (ja) 細胞の培養方法及び細胞支持複合体の製造方法
JP6978585B2 (ja) 細胞の培養方法
US10196596B2 (en) Engineered lumenized vascular networks and support matrix
Sánchez-Romero et al. In vitro systems to study nephropharmacology: 2D versus 3D models
Lee et al. Cellular hydrogel biopaper for patterned 3D cell culture and modular tissue reconstruction
WO2017082024A1 (ja) 細胞支持複合体および細胞支持複合体の製造方法
JP6605618B2 (ja) 細胞支持複合体および細胞支持複合体の製造方法
JP2009082005A (ja) 収縮が抑制された細胞シートの製造方法
JP6932051B2 (ja) 細胞の培養方法及び細胞支持複合体の製造方法
WO2017082025A1 (ja) 細胞支持複合体および細胞支持複合体の製造方法
US7267982B2 (en) Carrier for cell culture
JP7416185B2 (ja) 立体的細胞構造体の製造方法
JPH05168470A (ja) 複数の細胞種からなる細胞塊状体とシートおよびその製造法
JP7062052B2 (ja) 細胞の培養方法および細胞支持複合体の製造方法
WO2023248934A1 (ja) 細胞支持複合体の製造方法、薬剤評価装置の製造方法、薬剤評価方法および薬剤評価装置
TW200306349A (en) The cell culture method using a porous membrane
Tamuly Engineered Basal Lamina Equivalent-Fabrication And Biomedical Applications

Legal Events

Date Code Title Description
A529 Written submission of copy of amendment under article 34 pct

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A5211

Effective date: 20190819

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190830

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200923

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201109

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210427

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20210625

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210728

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211130

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211214

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6995112

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150