JP6519404B2 - 電子デバイス、および、液体噴射ヘッド - Google Patents

電子デバイス、および、液体噴射ヘッド Download PDF

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Description

本発明は、第1の基板と第2の基板とが間に駆動領域を介在させた状態で接着剤により接合された電子デバイス、および、液体噴射ヘッドに関するものである。
電子デバイスは、圧電素子等の駆動素子を備えたデバイスであり、各種の液体噴射装置や圧力・振動センサー等に応用されている。例えば、液体噴射装置では、電子デバイスを利用した液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射・吐出する。この液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式プリンターやインクジェット式プロッター等の画像記録装置があるが、最近ではごく少量の液体を所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
上記の液体噴射ヘッドは、ノズルに連通する圧力室が形成された圧力室形成基板、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる駆動素子としての圧電素子、及び、当該圧電素子に対して間隔を開けて配置された封止板(あるいは保護基板とも呼ばれる)等が積層された電子デバイスを備えている。このような基板同士が、間に圧電素子を収容する空間を空けた状態で接着剤によって接合されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
近年では、液体噴射ヘッドおよび電子デバイスの小型化が進み、基板上には圧電素子の駆動に係る構造物、すなわち、例えば駆動素子の駆動により変位する駆動領域や電極等が一層高い密度で精密に形成されている。このため、基板同士を接着する際に接着剤が流れ出して上記の構造物に接着剤が付着して硬化すると、圧電素子の駆動に支障を来す虞がある。このような問題に対し、特許文献1に開示されている液滴吐出ヘッドでは、圧電素子が設けられた基板に接合される基板(保持基板)の接合面に凹部が形成されており、この凹部に余剰な接着剤が毛細管力により導入されることにより、接合面から接着剤が流れ出すことが抑制されている。
特開2013−163341号公報
しかしながら、上記構成における凹部は、重力に逆らう方向に沿って形成されているため、毛細管力が重力に負けてしまい、また、凹部の容積も限られるため、余剰な接着剤を導入可能な量が限られるという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板同士を接合する接着剤の流れ出しによる不具合を抑制することが可能な電子デバイス、および、液体噴射ヘッドを提供することにある。
〔手段1〕
本発明の電子デバイスは、上記目的を達成するために提案されたものであり、駆動領域を有する第1の基板と、
前記駆動領域を覆い、前記第1の基板と接着剤で接合された第2の基板と、を備えた電子デバイスであって、
前記第1の基板の前記第2の基板と前記接着剤を介して重なる接着領域は、第1の方向に沿った第1の接着領域と、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿った第2の接着領域と、前記第1の接着領域と前記第2の接着領域とが交わって形成された角部である第3の接着領域と、を有し、
前記第1の基板には、前記第1の接着領域と交差する第1の溝と、前記第2の接着領域と交差する第2の溝と、前記第1の溝および前記第2の溝に対して傾斜すると共に前記第3の接着領域と交差する第3の溝と、が、前記接着領域から当該接着領域とは反対側の面に向けて窪んだ状態に形成されたことを特徴とする。
手段1の構成によれば、第1の基板と第2の基板との接合の際、接着領域の余剰な接着剤は溝に流れ込む。これにより、余剰な接着剤が、第1の基板と第2の基板との接着領域から流れ出すことが抑制される。また、接着剤が溝に流れ込んで硬化することで所謂アンカー効果を奏し、第1の基板と第2の基板との接合強度をより向上させることができる。さらに、接着領域の角部である第3の接着領域にも溝(第3の溝)が形成されているので、当該角部においても余剰な接着剤の流れ出しを抑制する効果、および、アンカー効果が得られる。
〔手段2〕
また、手段1の構成において、前記第1の溝、前記第2の溝、および前記第3の溝は、それぞれと交差する前記接着領域と平面視で重なる交差範囲を超える範囲に形成された構成を採用することが望ましい。
手段2の構成によれば、各溝が、接着領域との交差範囲を超える範囲に形成されているので、接着剤の流れ出しをより確実に抑制することができ、また、アンカー効果も高まるので接合強度をより向上させることが可能となる。
〔手段3〕
また、上記手段1または手段2の構成に関し、前記第1の溝、前記第2の溝、および前記第3の溝は、それぞれ複数設けられた構成を採用することが望ましい。
手段3の構成によれば、第1の溝、第2の溝、および第3の溝が、それぞれ複数設けられるので、より多くの余剰接着剤を導入することができ、流れ出しが一層抑制され、接合強度も一層向上する。
〔手段4〕
また、上記手段3の構成に関し、前記第3の溝のうち、少なくとも一つは、前記第3の接着領域の前記駆動領域側の角と前記第3の接着領域の前記角の対角の角を通る構成を採用することが望ましい。
手段4の構成によれば、第3の溝のうち、少なくとも一つは、第3の接着領域の駆動領域側の角と当該角の対角の角を通るので、特に流れ出しが生じやすい角からの接着剤の流れ出しを効果的に抑制することができる。
〔手段5〕
また、本発明の液体噴射ヘッドは、手段1乃至手段4の何れか一の電子デバイスを備え、
圧電素子によって前記駆動領域を駆動することにより、前記第1の基板に形成された圧力室内の液体に圧力変動を生じさせ、当該圧力変動により前記圧力室に通じるノズルから液体を噴射させることを特徴とする。
この構成によれば、第1の基板と第2の基板と間における接着剤の流れ出しが抑制され、接合強度が高められた電子デバイスを備えるので、信頼性の高い液体噴射ヘッドを提供することができる。
プリンターの構成を説明する斜視図である。 記録ヘッドの構成を説明する断面図である。 電子デバイスの要部を拡大した断面図である。 アクチュエーター基板の要部上面図である。 他の実施形態におけるアクチュエーター基板の要部上面図である。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明に係る電子デバイスを備えた液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載した液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
プリンター1の構成について、図1を参照して説明する。プリンター1は、記録紙等の記録媒体2の表面に対してインクを吐出して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、インクを吐出する記録ヘッド3、この記録ヘッド3が取り付けられるキャリッジ4、キャリッジ4を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構5、記録媒体2を副走査方向に移送するプラテンローラー6等を備えている。液体の一種であるインクは、液体供給源としてのインクカートリッジ7に貯留されている。このインクカートリッジ7は、記録ヘッド3に対して着脱可能に装着される。なお、インクカートリッジ7がプリンター1の本体側に配置され、当該インクカートリッジ7からインク供給チューブを通じて記録ヘッド3に供給される構成を採用することもできる。
上記のキャリッジ移動機構5はタイミングベルト8を備えている。そして、このタイミングベルト8はDCモーター等のパルスモーター9により駆動される。従ってパルスモーター9が作動すると、キャリッジ4は、プリンター1に架設されたガイドロッド10に案内されて、主走査方向(記録媒体2の幅方向)に往復移動する。
図2は、記録ヘッド3(本発明の液体噴射ヘッドの一種)の内部構成を示す断面図である。また、図3は、アクチュエーター基板12と封止板19との接合部分周辺の拡大断面図である。さらに、図4は、アクチュエーター基板12の上面図である。なお、便宜上、各部材の積層方向を上下方向として説明する。本実施形態における記録ヘッド3は、複数の基板、具体的には、ノズルプレート14、連通基板15、および、アクチュエーター基板12(本発明における第1の基板に相当)が、この順で積層されて互いに接着剤により接合されてユニット化されている。また、アクチュエーター基板12は、圧力室形成基板16、振動板17、および圧電素子18(アクチュエーターの一種)等が積層されて構成されている。このアクチュエーター基板12に、圧電素子18および駆動領域(後述)を覆い、保護する封止板19(本発明における第2の基板に相当)が積層されて、本発明の電子デバイス13が構成されている(図3参照)。そして、この電子デバイス13がケース20に取り付けられて記録ヘッド3が構成されている。
ケース20は、底面側に電子デバイス13が固定される合成樹脂製の箱体状部材である。このケース20の下面側には、当該下面からケース20の高さ方向の途中まで直方体状に窪んだ空部22が形成されており、電子デバイス13が下面に接合されると、電子デバイス13における圧力室形成基板16、振動板17、圧電素子18、および封止板19が、空部22内に収容される。また、ケース20には、インク導入路23が形成されている。上記インクカートリッジ7側からのインクは、インク導入路23を通じて共通液室24に導入される。
本実施形態における圧力室形成基板16は、シリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板とも言う。)から作製されている。この圧力室形成基板16には、圧力室26を区画する圧力室空部が、ノズルプレート14の各ノズル27に対応して異方性エッチングによって複数形成されている。このように、シリコン基板に対して異方性エッチングによって圧力室等の流路となる空間を形成することで、より高い寸法・形状精度を確保することができる。圧力室形成基板16における圧力室空部の一方(上面側)の開口部は、振動板17によって封止される。また、圧力室形成基板16における振動板17とは反対側の面には、連通基板15が接合され、当該連通基板15によって圧力室空部34の他方の開口部が封止される。これにより、圧力室26が区画形成される。ここで、圧力室26の上部開口が振動板17により封止された部分は、圧電素子18(能動部)の駆動により変位する可撓面に相当する。そして、この部分が、本発明における駆動領域に相当する。なお、圧力室形成基板16と可撓面が一体である構成を採用することもできる。すなわち、圧力室形成基板16の下面側からエッチング処理が施されて、上面側に板厚の薄い薄肉部分を残して圧力室空部が形成され、この薄肉部分が可撓面(駆動領域)として機能する構成を採用することもできる。
本実施形態における圧力室26は、ノズル27の並設方向、すなわちノズル列方向(第1の方向)に交差する方向(第2の方向)に長尺な空部である。この圧力室26の第2の方向の一端部は、連通基板15のノズル連通口28を介してノズル27と連通する。また、圧力室26の第2の方向の他端部は、連通基板15の個別連通口29を介して共通液室24と連通する。そして、圧力室26は、ノズル27毎に対応してノズル列方向(第1の方向)に沿って隔壁により隔てられて複数並設されている。
連通基板15は、圧力室形成基板16と同様にシリコン基板から作製された板材である。この連通基板15には、圧力室形成基板16の複数の圧力室26に共通に設けられる共通液室24(リザーバーあるいはマニホールドとも呼ばれる)となる空部が、異方性エッチングによって形成されている。この共通液室24は、各圧力室26の並設方向(即ち第1の方向)に沿って長尺な空部である。本実施形態における共通液室24は、連通基板15の板厚方向を貫通した第1液室24aと、連通基板15の下面側から上面側に向けて当該共通液室形成部材23の板厚方向の途中まで上面側に薄肉部を残した状態で形成された第2液室24bと、から構成される。この第2液室24bの第2の方向における一端部(ノズル27から遠い側の端部)は、第1液室24aと連通する一方、同方向の他端部は、圧力室26の下方に対応する位置に形成されている。この第2液室24bの他端部、すなわち、第1液室24a側とは反対側の縁部には、薄肉部を貫通する個別連通口29が、圧力室形成基板16の各圧力室26に対応して第1の方向に沿って複数形成されている。この個別連通口29の下端は、第2液室24bと連通し、個別連通口29の上端は、圧力室形成基板16の圧力室26と連通する。
上記のノズルプレート14は、複数のノズル27が列状に開設された板材である。本実施形態では、ドット形成密度に対応したピッチでノズル27が複数列設されてノズル列が構成されている。本実施形態におけるノズルプレート14は、シリコン基板から作製され、当該基板に対してドライエッチングにより円筒形状のノズル27が形成されている。そして、本実施形態における電子デバイス13には、上記の共通液室24から個別連通口29、圧力室26、およびノズル連通口28を通ってノズル27に至るまでのインク流路が形成されている。
次に電子デバイス13の詳細について説明する。本実施形態における電子デバイス13は、上述したように、圧力室形成基板16上に、振動板17、圧電素子18等が積層されたアクチュエーター基板12を有する。このアクチュエーター基板12には、圧電素子18の能動部を保護する封止板19が接着剤により接合されて構成されている。振動板17は、連通基板15の上面に形成された二酸化シリコン(SiO)からなる弾性膜31と、この弾性膜31上に形成された酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁膜32と、から成る。
振動板17における圧力室26に対応する部分(駆動領域)には、駆動素子あるいはアクチュエーターの一種である圧電素子18が形成されている。本実施形態における圧電素子18は、振動板17側から順に下電極34、圧電体35、および上電極36が積層されて構成されている。また、圧電素子18は、振動板17上において、圧力室26の上部開口の縁を越えて当該圧力室26の長手方向の外側に外れた位置まで延設されている。そして、下電極34および圧電体35は、上電極36の圧力室長手方向の端部よりも同方向の外側の位置(圧電素子18が駆動した際に変位しない非駆動領域)までさらに延設されている。
本実施形態においては、下電極34および圧電体35が圧力室26毎にパターニングされている。下電極34は、圧力室26毎および圧電素子18毎に個別の電極である。この下電極34は、圧力室26の幅(圧力室並設方向における上部開口の内法)よりも細く、圧力室長手方向(第2の方向)に沿って延在している。また、上電極36は、各圧電素子18に共通な電極となっている。そして、圧電素子18の構成部材の積層方向において、上電極36、圧電体35、および下電極34が互いにオーバーラップする部分が、両電極34,36への電圧の印加により圧電歪みが生じる能動部であり、この部分が実質的な圧電素子18である。この能動部は、上記の駆動領域、すなわち、圧力室26の上部開口に対応する部分に配置されている。なお、駆動回路や配線の都合によってこれらを逆にする構成とすることもできる。
本実施形態における圧電体35は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料からなり、個別電極である各下電極34を覆うように振動板17の上に形成されている。図4に示すように、この圧電体35において隣り合う圧力室26の間の領域(圧力室同士を区画する隔壁)に対応する部分には、開口37が形成されている。この開口37は、圧電体35が部分的に除去されて形成された凹部或いは貫通穴から構成されており、圧力室26の開口の辺(開口縁)に沿って延在している。そして、隣り合う開口37の間の領域における圧力室26の開口部上の位置には、圧電体35が、圧力室長手方向に沿って梁状に設けられる。
上電極36は、圧電素子18の能動部を規定する上電極本体36aと、この上電極本体36aから独立した導電部36bとから構成されている。導電部36bは、圧力室26の上部開口縁よりも圧力室長手方向の外側に外れた非駆動領域における圧電体35上であって、上電極本体36aに対して所定の間隔を隔てた位置に圧電素子18毎に形成されている。そして、図3に示すように、導電部36bおよび圧電体35を貫通する状態で、導電部36bの上面から下電極34に至るスルーホール(コンタクトホール)38が、エッチング処理によって形成されている。
上電極36の上には、図示しない密着層(例えば、NiCr)を介して金(Au)からなる金属層41が形成されている。この金属層41は、錘部42とリード電極部43,44とから構成される。錘部42は、上電極36の上電極本体36a上であって、圧力室26の上部開口縁よりも圧力室長手方向の外側の非駆動領域にノズル列方向に沿って形成されている。図4においては、圧力室26の長手方向の一方の錘部42が図示されているが、圧力室26の長手方向の他方における同様な位置にも鉛部42がノズル列方向に沿って形成されている。この錘部42は、圧電素子18の長手方向端部の変位を規制して、下電極34や振動板17の破損等を抑制する。なお、錘部42が無い構成を採用することもできる。本実施形態における錘部42は、長手方向(ノズル列方向)の両端において、圧力室30の列の両側に形成された共通リード電極部43とそれぞれ導通されている。そして、錘部42は、上電極36と導通しているので、圧電素子18の共通電極の一部としても機能する。
個別リード電極部44は、個別電極である下電極34に対応してパターニングされており、少なくとも一部が導電部36bの上部に重なるように形成されている。この個別リード電極部44の一端部は、上記のスルーホール38を通じて下電極34に導通されており、同じく他端部は、封止板19の収容空部46(後述)内から、当該封止板19の外側まで圧力室長手方向(第2の方向)に延設されている。共通リード電極部43は、錘部42に交差するように圧力室長手方向に延設されており、個別リード電極部44と同様に、その端部は封止板19の外側に位置する。そして、個別リード電極部44および共通リード電極部43を介して各圧電素子18に選択的に駆動電圧(駆動パルス)が印加される。
アクチュエーター基板12の上面には、圧電素子18を収容可能な収容空部46を有する封止板19が接合される。この封止板19は、アクチュエーター基板12側の下面に収容空部46が開口した中空箱体状の部材である。換言すると、封止板19は、ベース基板47と、このベース基板47の縁から圧力室形成基板16側に延出した四方の側壁48とを有している。これらのベース基板47と側壁48とにより収容空部46が画成されている。この封止板19における側壁48の先端面(ベース基板47側とは反対側の端面)は、アクチュエーター基板12の上面における駆動領域から外れた位置で接着剤49(図3参照)により接合されている。図4においてハッチングで示される部分が、封止板19の側壁48の先端面と、アクチュエーター基板12との接着領域B(基板垂直方向に側壁48を投影した部分)である。この接着領域Bは、アクチュエーター基板12の上面(圧電素子18が形成された側の面)において、封止板19の側壁48の先端面と接着剤49を介して重なる部分である。この接着剤49は、例えば、エポキシ系の接着剤からなり、封止板19の側壁48の先端面に転写により予め塗布される。
図4に示すように、アクチュエーター基板12の上面(圧電素子18が形成された面)において、封止板19の側壁48との接着領域Bには、当該接着領域Bに平面視で交差する形で、余剰な接着剤を導入するための溝50が形成されている。本実施形態においては、アクチュエーター基板12の上面において露出した(電極等が形成されていない部分の)圧電体35にエッチングによって溝50が形成されている。すなわち、この溝50は、上記のスルーホール38や開口37と同一の工程で形成される。この溝50は、アクチュエーター基板12の上面側の接着領域Bから下面側(接着領域Bとは反対側の面であり、連通基板15との接合面側)に窪んだ状態に形成されている。また、この溝50は、アクチュエーター基板12の非駆動領域においてノズル列方向(第1の方向)に沿って並設された複数の第1の溝50aからなる第1の溝群と、ノズル列に交差する圧力室長手方向(第2の方向)に沿って並設された複数の第2の溝50bからなる第2の溝群と、第1の溝群と第2の溝群とが交差する位置(第1の溝群と第2の溝群をそれぞれ溝並設方向に仮想的に延長した場合に交差する位置)に形成された複数の第3の溝50cからなる第3の溝群と、からなる。各溝50は、個別リード電極部44同士の間の間隙、あるいは個別リード電極部44と共通リード電極部43との間隙よりも狭い幅で、かつ、それぞれと交差する接着領域Bと平面視で重なる交差範囲の寸法(溝の延在方向における寸法)よりも長い溝であり、接着領域Bとの交差範囲を超える範囲に形成されている。すなわち、各溝50の一端は、各々が交差する接着領域Bよりも一側(収容空部46内)に外れた位置に配置され、同じく他端は、各々が交差する接着領域Bよりも他側(収容空部46の外側)に外れた位置に配置されている。さらに、本実施形態における各溝50の深さは、圧電体35の厚さに揃えられている。
第1の溝50aは、圧力室長手方向に沿って形成された溝であり、第1の接着領域B1に対して交差する。第1の接着領域B1は、リード電極部43,44に交差するようにノズル列方向(第1の方向)に延在している。また、図4において示される第1の接着領域B1とは圧力室長手方向において駆動領域を挟んで反対側(非駆動領域)にも同様に、ノズル列方向に沿った第1の接着領域B1が設けられており、この第1の接着領域B1に交差するように第1の溝50aがノズル列方向に並設されている。本実施形態における第1の溝50aは、隣り合うリード電極部の間で露出している圧電体35に、これらのリード電極部43,44と平行に形成されている。
また、第2の溝50bは、ノズル列方向に沿って形成された溝であり、圧力室長手方向に沿った第2の接着領域B2に対して交差する。図4において示される第2の接着領域B2とは、ノズル列方向において圧電素子18が形成された領域を挟んで反対側の非駆動領域にも同様に、圧力室長手方向に沿った第2の接着領域B2が設けられており、この第2の接着領域B2に交差するように第2の溝50bが圧力室長手方向に並設されている。本実施形態における第2の溝50bは、アクチュエーター基板12の圧電体35であって、共通リード電極部43よりも外側(圧電素子18の能動部群が形成されている側とは反対側)に所定の間隔を空けて圧力室長手方向に沿って複数並設されている。
第3の溝50cは、第1の溝50aおよび第2の溝50bのそれぞれに対して傾斜した溝であり、第1の接着領域B1と第2の接着領域B2とが交わって形成された角部である第3の接着領域B3に形成されている。第3の接着領域B3は、第1の接着領域B1と第2の接着領域B2とが交わる角を含み、第1の接着領域B1側と第2の接着領域B2側にそれぞれある程度の幅を持った略L状の領域である。なお、図4に示される第3の接着領域B3に対して対角に位置する第3の接着領域B3においても同様に複数の第3の溝50cからなる第3の溝群が形成されている。第3の溝群のうち、第3の接着領域B3の角(駆動領域側の角(内側の角)とこれとは対角に位置する角(外側の角))を通る第3の溝50cは、第1の溝50aおよび第2の溝50bのそれぞれに対して略45°に傾斜している。また、第3の溝群において、第3の接着領域B3の角を通る第3の溝50cよりも第1の溝50aに近い第3の溝50cほど、第1の溝50aに対する傾斜角が小さくなっている。同様に、第3の接着領域B3の角を通る第3の溝50cよりも第2の溝50aに近い第3の溝50cほど、第2の溝50bに対する傾斜角が小さい。なお、本実施形態において、第3の接着領域B3に3つの第3の溝50cからなる第3の溝群が形成された構成を例示したが、これには限られず、1つ若しくは2つ、又は4つ以上の第3の溝50cが形成される構成を採用することもできる。
上記構成の電子デバイス13では、封止板19とアクチュエーター基板12との接合の際、側壁48の先端面とアクチュエーター基板12における接着領域Bとの間の余剰な接着剤が各溝50(50a,50b,50c)に流れ込む。これにより、余剰な接着剤が、封止板19とアクチュエーター基板12との接着領域から流れ出すことが抑制される。このため、アクチュエーター基板12の駆動領域の駆動に係る部分(特に、圧電素子18の能動部)に接着剤が付着して、当該接着剤により駆動領域の駆動が妨げられることが抑制される。また、接着剤の流れだしが抑制されるので、その分、基板を小型化することが可能となり、電子デバイス13および記録ヘッド3の小型化に寄与する。さらに、接着剤が溝50に流れ込んで硬化することで所謂アンカー効果を奏し、封止板19とアクチュエーター基板12との接合強度をより向上させることができる。本実施形態においては、第1の溝50a、第2の溝50b、および第3の溝50cが、それぞれ複数設けられるので、より多くの余剰接着剤を導入することができ、流れ出しが一層抑制され、接合強度も一層向上する。
さらに、接着領域の角部にも溝50(50c)が形成されているので、当該角部においても余剰な接着剤の流れ出しを抑制する効果、および、アンカー効果が得られる。本実施形態においては、第3の溝群のうち、少なくとも一つは、第3の第3の接着領域B3の角を通るので、特に流れ出しが生じやすい角からの接着剤の流れ出しを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態においては、溝50がそれぞれ接着領域Bとの交差範囲を超える範囲に形成されているので、すなわち、各溝50の一端は、各々が交差する接着領域Bよりも一側に外れた位置に配置され、同じく他端は、各々が交差する接着領域Bよりも他側に外れた位置に配置されたので、溝50内の空気を接着領域Bから外れた端部から追い出しつつ当該溝50に接着剤が入り込む。これにより、接着剤をより円滑に溝50内に導入させることができる。その結果、接着剤の流れ出しをより確実に抑制することができ、アンカー効果も高まるので接合強度をより向上させることが可能となる。
そして、封止板19とアクチュエーター基板12と間における接着剤の流れ出しが抑制され、接合強度が高められた電子デバイス13を備えるので、信頼性の高い記録ヘッド3を提供することができる。
なお、上記実施形態においては、本発明に係る電子デバイス13として、駆動素子としての圧電素子32の駆動によりノズルから液体の一種であるインクを噴射させる構成を例示したが、これには限られず、第1の基板と第2の基板が感光性樹脂としての接合樹脂により接合された電子デバイスであれば、本発明を適用することが可能である。例えば、駆動素子により振動、あるいは変位等を検出するセンサーに用いられる電子デバイス等にも本発明を適用することができる。
また、上記実施形態においては、第3の接着領域B3が角を有する形状である構成を例示したが、これには限られず、例えば、図5に示す他の実施形態のように、第3の接着領域B3が曲率を有する形状(角が無い形状)である構成を採用することも可能である。この場合、第3の溝50cは、当該領域における曲率半径に沿って形成されていればよい。
さらに、以上では、液体噴射ヘッドとして、インクジェットプリンターに搭載されるインクジェット式記録ヘッドを例示したが、インク以外の液体を噴射するものにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。
1…プリンター,3…記録ヘッド,12…アクチュエーター基板,13…電子デバイス,16…圧力室形成基板,17…振動板,18…圧電素子,19…封止板,26…圧力室,27…ノズル,31…弾性膜,32…絶縁膜,41…金属層,43…共通リード電極部,44…個別リード電極部,46…収容空部,47…ベース基板,48…側壁,49…接着剤,50…溝,50a…第1の溝,50b…第2の溝,50c…第3の溝

Claims (5)

  1. 駆動領域を有する第1の基板と、
    前記駆動領域を覆い、前記第1の基板と接着剤で接合された第2の基板と、を備えた電子デバイスであって、
    前記第1の基板の前記第2の基板と前記接着剤を介して重なる接着領域は、第1の方向に沿った第1の接着領域と、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿った第2の接着領域と、前記第1の接着領域と前記第2の接着領域とが交わって形成された角部である第3の接着領域と、を有し、
    前記第1の基板には、前記第1の接着領域と交差する第1の溝と、前記第2の接着領域と交差する第2の溝と、前記第1の溝および前記第2の溝に対して傾斜すると共に前記第3の接着領域と交差する第3の溝と、が、前記接着領域から当該接着領域とは反対側の面に向けて窪んだ状態に形成されたことを特徴とする電子デバイス。
  2. 前記第1の溝、前記第2の溝、および前記第3の溝は、それぞれと交差する前記接着領域と平面視で重なる交差範囲を超える範囲に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  3. 前記第1の溝、前記第2の溝、および前記第3の溝は、それぞれ複数設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子デバイス。
  4. 前記複数の第3の溝のうち、少なくとも一つは、前記第3の接着領域の前記駆動領域側の角と前記第3の接着領域の前記角の対角の角を通ることを特徴とする請求項3に記載の電子デバイス。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の電子デバイスを備え、
    圧電素子によって前記駆動領域を駆動することにより、前記第1の基板に形成された圧力室内の液体に圧力変動を生じさせ、当該圧力変動により前記圧力室に通じるノズルから液体を噴射させることを特徴とする液体噴射ヘッド。
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