JP2018103417A - 液体噴射ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】気泡の滞留を抑制した体噴射ヘッドを提供する。【解決手段】基板(24)の第1の面(51)から反対側の第2の面(52)側に向けて板厚方向の途中まで窪んだ流路空間(39)と、流路空間(39)から第2の面(52)側に基板(24)を貫通する個別連通路(26)と、を備えた液体噴射ヘッド(3)であって、個別連通路(26)は、第1の方向に沿って複数形成され、第1の面(51)に平行且つ第1の方向に直交する第2の方向における個別連通路(26)の最小寸法をAとし、隣り合う個別連通路(26)を区画する隔壁の第1の面(51)側の端のうち最も第2の面(52)側に位置する部分における個別連通路(26)の第2の方向の寸法をBとしたとき、B/A≦1.395を満たすことを特徴とする液体噴射ヘッド(3)。【選択図】図3
Description
本発明は、圧力室内の液体をノズルから噴射する液体噴射ヘッドに関するものである。
液体噴射ヘッドが搭載される液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式プリンターやインクジェット式プロッター等の画像記録装置があるが、最近ではごく少量の液体を所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも液体噴射ヘッドが応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置、バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
上記した液体噴射ヘッドは、例えば、ノズルが複数開設されたノズルプレート、各ノズルに連通する圧力室となる空間が複数形成された圧力室形成基板、各圧力室に共通な液体が貯留される共通液室(リザーバー、又は、マニホールドとも言う)となる空間が形成された連通基板、各圧力室にそれぞれ対応して設けられた複数の圧電素子(アクチュエーターの一種)、等を備えている。また、上記の連通基板としては、一部を基板の厚さ方向の途中まで窪ませて、共通液室となる空間を形成したものがある(例えば、特許文献1)。この窪ませた部分(肉薄部)に、共通液室と圧力室とを繋ぐ個別連通路が形成されている。
上記のような連通基板は、まず基板の厚さ方向に貫通した個別連通路を形成した後、一方の面側から異方性エッチング(ウェットエッチング)によって基板を厚さ方向の途中まで除去することで形成される。このような製造方法においては、個別連通路の空間(共通液室)側の開口の縁がエッチング液に曝されるため、当該開口の縁にダレが生じる。具体的には、例えば、図40に示すように、連通基板90の肉薄部91において、個別連通路92の共通液室93側(圧力室94とは反対側)の開口の縁に、当該開口が外側(すなわち、共通液室93側)に向けて広がるように傾斜したダレ面95が形成される。すなわち、個別連通路92の共通液室93側の開口が同側に広がった形状となる。このダレ面95が大きくなりすぎると、換言すると、個別連通路92の共通液室93側の開口が広がり過ぎると、個別連通路92の共通液室93側の開口に気泡が滞留した場合に液体が気泡を避けるようにして個別連通路92側に流れるため、この気泡を排出できない虞がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、気泡の滞留を抑制した体噴射ヘッドを提供することにある。
本発明の液体噴射ヘッドは、上記目的を達成するために提案されたものであり、基板の第1の面から反対側の第2の面側に向けて板厚方向の途中まで窪んだ流路空間と、
前記流路空間から前記第2の面側に前記基板を貫通する個別連通路と、を備えた液体噴射ヘッドであって、
前記個別連通路は、第1の方向に沿って複数形成され、
前記第1の面に平行且つ前記第1の方向に直交する第2の方向における前記個別連通路の最小寸法をAとし、
隣り合う前記個別連通路を区画する隔壁の前記第1の面側の端のうち最も前記第2の面側に位置する部分における前記個別連通路の前記第2の方向の寸法をBとしたとき、
B/A≦1.395
を満たすことを特徴とする。
前記流路空間から前記第2の面側に前記基板を貫通する個別連通路と、を備えた液体噴射ヘッドであって、
前記個別連通路は、第1の方向に沿って複数形成され、
前記第1の面に平行且つ前記第1の方向に直交する第2の方向における前記個別連通路の最小寸法をAとし、
隣り合う前記個別連通路を区画する隔壁の前記第1の面側の端のうち最も前記第2の面側に位置する部分における前記個別連通路の前記第2の方向の寸法をBとしたとき、
B/A≦1.395
を満たすことを特徴とする。
本発明によれば、個別連通路の流路空間側の開口近傍に気泡が滞留することを抑制できる。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)3を例に挙げて説明する。図1は、記録ヘッド3を搭載した液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、プリンター)1の斜視図である。
プリンター1は、記録紙等の記録媒体2(着弾対象の一種)の表面に対してインク(液体の一種)を噴射して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、記録ヘッド3、この記録ヘッド3が取り付けられるキャリッジ4、キャリッジ4を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構5、記録媒体2を副走査方向に移送する搬送機構6等を備えている。ここで、上記のインクは、液体供給源としてのインクカートリッジ7に貯留されている。このインクカートリッジ7は、記録ヘッド3に対して着脱可能に装着される。なお、インクカートリッジがプリンターの本体側に配置され、当該インクカートリッジからインク供給チューブを通じて記録ヘッドに供給される構成を採用することもできる。
上記のキャリッジ移動機構5はタイミングベルト8を備えている。そして、このタイミングベルト8はDCモーター等のパルスモーター9により駆動される。したがってパルスモーター9が作動すると、キャリッジ4は、プリンター1に架設されたガイドロッド10に案内されて、主走査方向(記録媒体2の幅方向)に往復移動する。キャリッジ4の主走査方向の位置は、位置情報検出手段の一種であるリニアエンコーダー(図示せず)によって検出される。リニアエンコーダーは、その検出信号、即ち、エンコーダーパルス(位置情報の一種)をプリンター1の制御部に送信する。
次に記録ヘッド3について説明する。図2は、記録ヘッド3の構成を説明する断面図である。図3は、図2における領域Aの拡大図、すなわち、個別連通路26を拡大した断面図である。図4は、連通基板24を第1の面51側から見た平面図である。なお、以下の説明においては、適宜、各部材の積層方向を上下方向(図2及び図3におけるy方向)として説明する。また、図3においては、説明の都合上、図2と上下が反転して表されている。すなわち、図3においては、圧力室30側が下方、共通液室25側が上方となっている。本実施形態における記録ヘッド3は、図2に示すように、アクチュエーターユニット14及び流路ユニット15が積層された状態でヘッドケース16に取り付けられている。
ヘッドケース16は、合成樹脂製の箱体状部材であり、その内部には各圧力室30にインクを供給する液体導入路18が形成されている。この液体導入路18は、後述する共通液室25と共に、複数形成された圧力室30に共通なインクが貯留される空間である。本実施形態においては、2列に並設された圧力室30の列に対応して液体導入路18が2つ形成されている。また、ヘッドケース16の下側(ノズルプレート21側)の部分には、当該ヘッドケース16の下面(ノズルプレート21側の面)からヘッドケース16の高さ方向の途中まで直方体状に窪んだ収容空間17が形成されている。後述する流路ユニット15がヘッドケース16の下面に位置決めされた状態で接合されると、連通基板24に積層されたアクチュエーターユニット14(圧力室形成基板29、封止板33、駆動IC34等)が収容空間17内に収容されるように構成されている。
本実施形態におけるアクチュエーターユニット14は、図2に示すように、圧力室形成基板29、振動板31、アクチュエーターの一種である圧電素子32、封止板33及び駆動IC34が積層されてユニット化されている。なお、アクチュエーターユニット14は、収容空間17内に収容可能なように、収容空間17よりも小さく形成されている。
圧力室形成基板29は、アクチュエーターユニット14の下部(流路ユニット15側の部分)を構成するシリコン製の基板(例えば、表面の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板)である。この圧力室形成基板29には、異方性エッチングにより一部が板厚方向に完全に除去されて、圧力室30となるべき空間がノズル列方向(図4におけるz方向、本発明における第1の方向に相当)に沿って複数並設されている。この空間は、下方が連通基板24により区画され、上方が振動板31により区画されて、圧力室30を構成する。また、この空間、すなわち圧力室30は、2列に形成されたノズル列に対応して2列に形成されている。各圧力室30は、ノズル列方向に直交する方向(図2におけるx方向、本発明における第2の方向に相当)に長尺な空部であり、長手方向の一側の端部に後述する個別連通路26が連通すると共に、他側の端部に後述するノズル連通路27が連通する。
振動板31は、弾性を有する薄膜状の部材であり、圧力室形成基板29の上面(流路ユニット15側とは反対側の面)に積層されている。この振動板31によって、圧力室30となるべき空間の上部開口が封止されている。換言すると、振動板31によって、圧力室30が区画されている。この振動板31における圧力室30(詳しくは、圧力室30の上部開口)に対応する部分は、圧電素子32の撓み変形に伴ってノズル22から遠ざかる方向あるいは近接する方向に変位する変位部として機能する。すなわち、振動板31における圧力室30の上部開口に対応する領域が、撓み変形が許容される駆動領域35となる。一方、振動板31における圧力室30の上部開口から外れた領域が、撓み変形が阻害される非駆動領域36となる。
なお、振動板31は、例えば、圧力室形成基板29の上面に形成された二酸化シリコン(SiO2)からなる弾性膜と、この弾性膜上に形成された酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜と、からなる。そして、この絶縁膜上(振動板31の圧力室形成基板29側とは反対側の面)における各圧力室30に対応する領域、すなわち駆動領域35に圧電素子32がそれぞれ積層されている。本実施形態における圧電素子32は、所謂撓みモードの圧電素子である。この圧電素子32は、例えば、振動板31上に、下電極層、圧電体層及び上電極層が順次積層されてなる。この上電極膜または下電極膜のうち何れか一方が各圧電素子32に共通に形成された共通電極となり、他方が各圧電素子32に個別に形成された個別電極となっている。そして、下電極層と上電極層との間に両電極の電位差に応じた電界が付与されると、圧電素子32はノズル22から遠ざかる方向あるいは近接する方向に撓み変形する。なお、本実施形態における圧電素子32は、ノズル列方向に沿って2列に並設された圧力室30に対応して、当該ノズル列方向に沿って2列に形成されている。
また、本実施形態における振動板31の非駆動領域36には、個別端子41及び共通端子42が積層されている。具体的には、ノズル列方向に直交する方向(図2におけるx方向)において、一方の圧電素子32の列の外側及び他方の圧電素子32の列の外側に個別端子41が形成され、両圧電素子32の列間に共通端子42が形成されている。個別端子41は、図示しないリード配線等を介して圧電素子32の個別電極に接続される端子であり、圧電素子32毎に形成されている。一方、共通端子42は、図示しないリード配線等を介して各圧電素子32の共通電極に接続される端子であり、少なくとも1つ以上形成されている。
封止板33は、図2に示すように、振動板31との間に絶縁性を有する感光性接着剤43を介在させた状態で、圧電素子32に対して間隔を開けて配置されたシリコン製の基板(例えば、表面の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板)である。本実施形態における封止板33の下面(圧力室形成基板29側の面)には、駆動IC34からの駆動信号を圧電素子32側に出力するバンプ電極40が複数形成されている。このバンプ電極40は、図2に示すように、一方の圧電素子32の外側に形成された一方の個別端子41に対応する位置、他方の圧電素子32の外側に形成された他方の個別端子41に対応する位置、及び両方の圧電素子32の列間に形成された共通端子42に対応する位置に形成されている。そして、各バンプ電極40は、それぞれ対応する個別端子41又は共通端子42に接続されている。なお、感光性接着剤43のうち圧力室形成基板29の外側に形成された感光性接着剤43は、2つの圧電素子32の列を囲うように形成されている。すなわち、各圧電素子32は、圧力室形成基板29、封止板33及び感光性接着剤43により囲われた空間内に封止されている。
また、本実施形態におけるバンプ電極40は、弾性を有しており、封止板33の下面から振動板31側に向けて突設されている。具体的には、このバンプ電極40は、弾性を有する樹脂と、樹脂の少なくとも一部の表面を覆う導電膜と(何れも図示を省略)、を備えている。この樹脂は、封止板33の表面においてノズル列方向に沿って突条に形成されている。また、個別端子41に導通する導電膜は、ノズル列方向に沿って並設された圧電素子32に対応して、当該ノズル列方向に沿って複数形成されている。さらに、共通端子42に導通する導電膜は、共通端子42に対応して、少なくとも1つ以上形成されている。なお、バンプ電極としては、樹脂を有するものに限られない。内部に樹脂を有さない金属のみからなるバンプ電極やハンダからなるバンプ電極を採用することもできる。また、バンプ電極40の導電膜は、樹脂から外れた位置まで延在され、封止板33を板厚方向に貫通する貫通配線45を介して、封止板33の上面(圧力室形成基板29とは反対側の面)に積層された上面側配線46に接続されている。
駆動IC34は、圧電素子32を駆動するためのICチップであり、異方性導電フィルム(ACF)等の接着剤48を介して封止板33の上面に積層されている。図2に示すように、この駆動IC34の下面(封止板33側の面)には、上面側配線46の端子部に接続されるIC端子47が、複数形成されている。IC端子47のうち個別端子41に対応するIC端子47は、ノズル列方向に沿って複数並設されている。本実施形態では、2列に並設された圧電素子32の列に対応して、IC端子47の列が2列形成されている。
本実施形態における流路ユニット15は、連通基板24(本発明における基板の一種)及びノズルプレート21を有している。ノズルプレート21は、連通基板24の下面(圧力室形成基板29とは反対側の面)に接合されたシリコン製の基板である。本実施形態では、このノズルプレート21により、後述する共通液室25となる空間の下面側の開口が封止されている。また、ノズルプレート21には、複数のノズル22が直線状(列状)に開設されている。この複数のノズル22からなるノズル22の列(すなわち、ノズル列)は、ノズルプレート21に2列形成されている。各ノズル列を構成するノズル22は、一端側のノズル22から他端側のノズル22までドット形成密度に対応したピッチで、例えば副走査方向に沿って等間隔に設けられている。なお、ノズルプレートを連通基板における共通液室から内側に外れた領域に接合し、共通液室となる空間の下面側の開口を、例えば可撓性を有するコンプライアンスシート等の部材で封止することもできる。このようにすれば、ノズルプレートを可及的に小さくできる。
連通基板24は、流路ユニット15の上部(ヘッドケース16側の部分)を構成するシリコン製の基板(例えば、表面の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板)である。この連通基板24には、図2に示すように、液体導入路18と連通し、各圧力室30に共通なインクが貯留される共通液室25と、この共通液室25を介して液体導入路18からのインクを各圧力室30に個別に供給する個別連通路26と、圧力室30とノズル22とを連通するノズル連通路27とが、異方性エッチング等により形成されている。図4に示すように、個別連通路26及びノズル連通路27は、ノズル列方向(図4におけるz方向)に沿って複数形成されている。共通液室25は、ノズル列方向(z方向)に沿った長尺な空部であり、図2に示すように、2列に並設された圧力室30の列に対応して2列に形成されている。
また、図2に示すように、共通液室25は、連通基板24の板厚方向を貫通した第1液室38と、ノズルプレート21側の面(以下、第1の面51という)から圧力室形成基板29側の面(以下、第2の面52という)に向けて板厚方向の途中まで窪ませて、薄肉部37を残した状態に形成された第2液室39(本発明における流路空間の一種)と、を備えている。第1液室38の第2の面52側の開口は、ヘッドケース16に形成された液体導入路18と連通する。第2液室39のノズル列方向に直交する方向(x方向)における一側の端(ノズル22から遠い側の端部)は、第1液室38と連通する一方、同方向の他側の端は、圧力室30の一部と重なる位置に形成されている。そして、個別連通路26は、この第2液室39の他側の端部に形成され、第2液室39と圧力室30とを連通する。すなわち、個別連通路26は、第2液室39の他側の端部において、第2液室39から第2の面52側に連通基板24(詳しくは、薄肉部37)を貫通する。
図3及び図4に示すように、第2液室39を区画する薄肉部37の第2液室39側の面のうち、ノズル列方向に直交する方向(x方向)における他側の端部には、第1液室38側から個別連通路26側に向けて薄肉部37の板厚が厚くなるように傾斜した傾斜面53が形成されている。換言すると、傾斜面53は、個別連通路26の開口の縁から第1液室38側に向けて図3中においては下り傾斜している。これにより、個別連通路26が開口している部分の薄肉部37の厚さを厚くできるため、第2液室39の容積を確保しつつ、個別連通路26の長さを長くすることができる。その結果、薄肉部37に傾斜面を設けない場合と比べて、個別連通路26における流路抵抗やイナータンスを大きくでき、インクの噴射特性を向上させることができる。
次に、個別連通路26の形状について、図3を用いて詳しく説明する。図3に示すように、第2液室39及び個別連通路26は、異方性エッチング(ウェットエッチング)を用いて形成されるため、個別連通路26の開口にダレが生じる。具体的には、個別連通路26を区画する壁面のうち、ノズル列方向に直交する方向(x方向)における一側の壁面の第2液室39側の部分に、第2の面52に対して傾斜したダレ面59が形成される。また、隣り合う個別連通路26を隔離(換言すると、区画)する隔離壁55(本発明における隔壁に相当)のうち、第2液室39側の端にダレ部60(本実施形態では、断面V字状のダレ部60)が形成される。このため、個別連通路26は、板厚方向(y方向)の途中から第2液室39側に向けて流路断面積が広がった形状となる。すなわち、個別連通路26は、第2の面52側の開口から第1の面51側の途中まで、第2の面52(又は第1の面51)に対して略垂直に延在した第1の流路部56と、この第1の流路部56から第2液室39側に向けて拡径(拡幅)した第2の流路部57と、から構成される。そして、本発明における個別連通路26は、図3に示すように、図40に示すような従来の個別連通路と比べて、開口縁のダレが抑制され、第1の流路部56が長くなった形状となっている。特に、個別連通路26の寸法に関し、以下の式(1)を満たすように構成されている。
(数1)
B/A≦1.395 ・・・(1)
B/A≦1.395 ・・・(1)
ここで、Aは第1の面51に平行且つノズル列方向に直交する方向(x方向)における第1の流路部56の寸法である。なお、第1の流路部56の当該方向における寸法が、製造誤差等により一定の値ではない場合、Aは第1の流路部56の最小寸法、すなわち個別連通路26の最小寸法である。また、Bは隔離壁55の第2液室39側(第1の面51側)の端のうち最も第2の面52側に位置する部分(すなわち、ダレ部60の底部)における個別連通路26のノズル列方向に直交する方向(x方向)の寸法である。換言すると、Bは、第1の面51(又は第2の面52)に平行な面で見て、個別連通路26の外周の全てが隔壁で囲われている部分と、個別連通路26の外周の全てが隔壁で囲われていない部分との境界におけるノズル列方向に直交する方向(x方向)の寸法である。ダレ部60の底部よりも第2の面52側の部分は、隣接する個別連通路26と完全に隔離されており、ダレ部60の底部よりも第1の面51側の部分は、隣接する個別連通路26と一部が連通されている。そして、この式(1)を満たすように、個別連通路26を形成することで、個別連通路26の第2液室39側の開口近傍に気泡が滞留することを抑制できる。この点について、図5に示すグラフを用いて詳しく説明する。
図5は、B/Aの値と気泡にかかる力(圧力)との関係を示すグラフである。ここでは、B/Aの値が異なるそれぞれの記録ヘッドにおいて、気泡を排出するべくノズル面に一定の負圧をかけてインク吸引(クリーニング処理)を行う条件(すなわち、共通流路から圧力室側にインクを流す条件)で個別連通路26の第2液室39側の開口近傍に滞留する気泡にかかる力をシミュレーションにより算出している。また、図5においては、気泡径50μmの気泡にかかる力(図5における○)と気泡径100μmの気泡にかかる力(図5における△)とをそれぞれ算出している。図5における横軸は、B/Aの値であり、縦軸は、気泡にかかる力の相対値である。従来の記録ヘッドは、B/Aの値が約1.8であり、この時の気泡にかかる力を基準(すなわち、1)として、その他のB/Aの値を有する記録ヘッドにおいて気泡にかかる力を求めている。図5のグラフから分かるように、B/Aの値が1.4よりも小さくなると、気泡にかかる力が急激に大きくなる(具体的には、破線で示す近似曲線の傾きが急峻になる)ことが分かる。すなわち、B/Aの値が1.4よりも小さくなると、滞留する気泡に効率よく力がかかるようになり、この気泡を排出し易くなる。このため、上記した式(1)を満たすようにすることが望ましい。なお、従来の記録ヘッドにおいて、実際に気泡の滞留による不具合(気排NG)を調べたところ、約45%の記録ヘッドが気排NGとなった。換言すると、約55%のものしか気排がOKにならなかった。このことから計算により、気泡径50μmの気泡を100%排出できる気泡にかかる力を求めたところ1.82となり、この1.82に対応するB/Aの値が1.395となった。すなわち、計算上、B/Aの値が1.395以下の場合に気泡径50μmの気泡による不具合を0%にすることができる。
なお、図3に示すように、第2液室39の最も浅い部分の深さ(すなわち、第1の面51に垂直な方向(y方向)における第1の面51から薄肉部37の最も板厚が厚い部分(本実施形態では、個別連通路26の開口の縁)までの寸法)Cに対する、ダレ部60の深さ(すなわち、個別連通路26の開口の縁における薄肉部37の第1の面51側の面からダレ部60の底までの寸法)Dの割合は、0%〜40%の範囲に設定することが望ましい。このようにすれば、気排性(気泡を排出する性能)の向上を図ることができる。また、個別連通路26におけるイナータンスのばらつきを抑制することができ、インクの噴射特性のばらつきを抑制することができる。すなわち、気排性の向上とインクの噴射特性の向上との両立を図ることができる。
そして、上記のような構成の記録ヘッド3は、インクカートリッジ7からのインクを、液体導入路18、共通液室25及び個別連通路26等を介して圧力室30に導入する。この状態で、駆動IC34からの駆動信号を、バンプ電極40等を介して圧電素子32に供給すれば、圧電素子32が駆動されて圧力室30内のインクに圧力変動が生じる。この圧力変動を利用することで、記録ヘッド3はノズル22からインク滴を噴射する。
次に、記録ヘッド3の製造方法、特に連通基板24に個別連通路26を形成する形成工程について詳しく説明する。図6、図8〜図13は、連通基板24となる表面の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板(以下、単に連通基板24と称する。)の断面における状態遷移図である。図7は、図6における連通基板24の第1の面側から見た平面図である。なお、図6、図8〜図13においては、上面を第1の面51、下面を第2の面52として表している。また、ノズル連通路27及び第1液室38の形成は、公知の種々の方法を採用できるため、説明を省略する。さらに、以下においては、個別連通路26が形成される領域の周辺の連通基板24に着目して説明する。
まず、図6に示すように、連通基板24の第1の面51及び第2の面52に、例えば、シリコン酸化膜や窒化膜等のエッチング溶液に対してマスクとなる層を形成する。具体的には、連通基板24の第1の面51に第1のマスク層63を形成し、連通基板24の第2の面52に第2のマスク層68を形成する。図6に示すように、第1のマスク層63のうち第2液室39(薄肉部37)となる領域の第1のマスク層63はハーフエッチングすることにより薄くなっている。換言すると、薄肉部37に対応する領域には、第1のマスク層63が凹んだ第1のマスク凹部64が形成されている。この第1のマスク凹部64から外れた第1のマスク層63の厚肉部(以下、第1のマスク厚肉部65という)は、図7に示すように、傾斜面53となる領域において櫛歯状に形成されている。すなわち、傾斜面53となる領域は、第1のマスク厚肉部65が櫛歯状に形成された櫛歯領域66となっている。櫛歯領域66おける第1のマスク厚肉部65は、個別連通路26が形成される領域の間の領域において、ノズル列方向に直交する方向に沿って長尺に形成されている。具体的には、櫛歯領域66における第1のマスク厚肉部65は、第2液室39となる領域のノズル列方向に直交する方向における他側(第1液室38となる領域とは反対側)の端から、傾斜面53となる領域に亘って、同方向に沿って延在されている。
また、図6に示すように、第2のマスク層68には、当該第2のマスク層68がエッチングにより厚さ方向に完全に除去された第2のマスク開口69と、当該第2のマスク層68がハーフエッチングにより厚さ方向の途中まで除去された第2のマスク凹部70とが、個別連通路26が形成される領域に対応して複数形成されている。第2のマスク開口69は、個別連通路26が形成される領域の他側(ノズル22に対応する位置から近い側)に形成された開口である。第2のマスク凹部70は、個別連通路26が形成される領域の一側(ノズル22に対応する位置から遠い側)に形成された凹部である。図7に示すように、第2のマスク開口69の一側の端と、第2のマスク凹部70の他側の端とは、接続されている。また、本実施形態においては、第2のマスク開口69のノズル列方向における寸法が、第2のマスク凹部70の同方向の寸法よりも大きく形成されている。
連通基板24に上記のようなマスク層を形成したならば、貫通孔形成工程において、連通基板24に貫通孔72を形成する。具体的には、図8に示すように、まず第2のマスク開口69に対応する部分において、第1の面51側からレーザーにより連通基板24に小径な基礎孔71を形成する。なお、基礎孔71は、連通基板24を貫通しても良いし、貫通しなくても良い。また、ドライエッチングやボッシュ法等により基礎孔71を形成することもできる。次に、図9に示すように、例えば、水酸化カリウム(KOH)水溶液からなるエッチング溶液に連通基板24を曝して、基礎孔71の径(流路断面積)を広げる。これにより、流路断面の形状が、第2のマスク開口69の形状に揃えられた貫通孔72が形成される。
連通基板24に貫通孔72を形成したならば、例えば、フッ化水素酸(HF)等でエッチングすることにより、第1のマスク層63及び第2のマスク層68を薄くする。これにより、図10に示すように、第1の面51において、第1のマスク凹部64に対応する部分の第1のマスク層63が完全に除去されて、当該部分に第1のマスク開口64′が形成される。同様に、第2の面52において、第2のマスク凹部70に対応する部分の第2のマスク層68が完全に除去されて、当該部分に第2のマスク凹部70及び第2のマスク開口69が一体となった第2のマスク開口69′が形成される。この第2のマスク開口69′は、貫通孔72の第2の面52側の開口面積よりも広く、且つ貫通孔72の開口を含んだ状態となる。なお、第1のマスク開口64′及び第2のマスク開口69′は、第1のマスク層63及び第2のマスク層68を薄くする際に僅かに広がる。これにより、図10に示すように、第1のマスク開口64′から連通基板24の第1の面51が露出し、第2のマスク開口69′から連通基板24の第2の面52が露出する。
このように、第1のマスク層63に第1のマスク開口64′を形成し、第2のマスク層68に第2のマスク開口69′を形成した状態で、連通基板24をエッチング溶液に曝す流路空間形成工程に移行する。連通基板24をエッチング溶液に曝すと、図11に示すように、連通基板24の第1のマスク開口64′に対応する領域がエッチングされ、当該領域の連通基板24が板厚方向に削れていく。すなわち、第1のマスク開口64′における連通基板24が、第1の面51から板厚方向に窪んでいく。この際、櫛歯領域66において、第1のマスク層63に覆われた部分は、一側(図11における右側)の端から他側に向けてサイドエッチングが進行する(図11における破線矢印参照)。また、貫通孔72の第1の面51側の開口の縁には、結晶面に起因した第1のダレ面75が現れる。一方、連通基板24の第2のマスク開口69′に対応する領域もエッチングされ、貫通孔72の第2の面52側の開口の縁に、結晶面に起因した第2のダレ面76が現れる。
この状態からエッチングが進むと、図12に示すように、第1のマスク開口64′に対応する領域の連通基板24がさらに板厚方向に削れていく。また、櫛歯領域66における第1のマスク層63に覆われた部分のサイドエッチングが進行する。さらに、貫通孔72の第1の面51側の開口の縁の第1のダレ面75が成長し、すなわち貫通孔72の第1の面51側の開口の縁のダレ量が大きくなり、貫通孔72の第1の面51側の開口面積が広がっていく。ここで、櫛歯領域66における第1のマスク層63に覆われた部分のサイドエッチングが第1のダレ面75に到達すると、当該部分からエッチングが下方にも進行する。すなわち、貫通孔72同士を隔離する隔離壁55′が、第1の面51側の端から下方に向けてダレ始める。また、連通基板24の貫通孔72の第2の面52側の開口から第1の面51側に向けてエッチングが進み、第2の面52側の開口から第1の面51側の途中まで、径(流路断面積)が第2のマスク開口69′の開口面積と揃えられた中間流路部77が形成される。これに伴って、第2のダレ面76が第1の面51側に移動する。そして、第1のダレ面75と第2のダレ面76との間には、流路断面積が狭くなった貫通孔72の一部が取り残された状態となる。なお、この状態において、櫛歯領域66における連通基板24の第1の面51側の面は、貫通孔72の第1の面51側の開口縁から一側に向けて僅かに下り傾斜した状態となる。
そして、さらにエッチングが進むと、第1のマスク開口64′に対応する領域の連通基板24がさらに板厚方向に削れ、第2液室39となる空間が形成される。このとき、櫛歯領域66に傾斜面53が形成される。また、貫通孔72の第1の面51側の開口の縁のダレがさらに進行し、貫通孔72の第1の面51側の開口面積が広がる。さらに、連通基板24の貫通孔72の第1の面51側の開口及び第2の面52側の開口からエッチングが進み、第2のダレ面76に対応する部分が板厚方向に貫通する。これにより、第2のダレ面76が消失すると共に、第1のダレ面75の他側の端部が消失し、個別連通路26が形成される。すなわち、流路断面積が第2のマスク開口69′の開口面積と揃えられた第1の流路部56と、一側の面がダレ面59(第1のダレ面75)により区画され、第1の流路部56から第1のマスク層63側に向けて拡径した第2の流路部57と、が形成される。また、個別連通路26同士を隔離する隔離壁55に、V字状にダレたダレ部60が形成される。
最後に、第1のマスク層63及び第2のマスク層68を除去することで、図3に示すような式(1)を満たす個別連通路26が形成された連通基板24が作成される。このようにして連通基板24が作成されたならば、連通基板24の第1の面51にノズルプレート21を接合し、流路ユニット15を作製する。また、連通基板24の第2の面52にアクチュエーターユニット14を接合する。そして、アクチュエーターユニット14が接合された流路ユニット15をヘッドケース16の下面に接合することで、収容空間17内にアクチュエーターユニット14が収容され、記録ヘッド3が作成される。
このように、上記した記録ヘッド3の製造方法においては、連通基板24の第1の面51から板厚方向の途中まで窪ませて第2液室39を形成する流路空間形成工程において、連通基板24をエッチング液に曝すことで、貫通孔72の流路断面積を広げて個別連通路26を形成したので、個別連通路26の開口のダレを抑制できる。要するに、個別連通路26を形成する際に、第2の面52側の貫通孔72の周辺からもエッチング液を導入して貫通孔72の流路断面積を広げたので、第1のダレ面75の貫通孔72側の一部を除去でき、ひいては個別連通路26の第2液室39側(第1の面51側)の開口のダレ量を小さくできる。その結果、個別連通路26の第2液室39側の開口面積を小さくできると共に第1の流路部56の長さを長くできるため、リザーバーから個別連通路26を通じて圧力室30に向かうインクの流速を速めることができる。これにより、個別連通路26のリザーバー側の開口に気泡が滞留することを抑制できる。また、個別連通路26における流路抵抗やイナータンスを大きくでき、インクの噴射特性を向上させることができる。また、貫通孔72の第1の面51側の開口縁がダレ始める位置(すなわち、第1のダレ面75が形成され始める位置)を、従来と比べて、より他側(第1液室38から遠い側)に寄せることができるため、貫通孔72同士を隔離する隔離壁55′のダレの開始を遅らせることができる。これにより、個別連通路26同士を隔離する隔離壁55に形成されたダレ部60のダレ量を抑制できる。
ところで、連通基板24に形成するマスク層の形状は上記した第1の実施形態に限られない。例えば、図14〜図19に示す、第2の実施形態においては、第2のマスク層68の形状が、上記した第1の実施形態と異なる形状になっている。なお、図14、図16〜図19は、連通基板24の断面における状態遷移図である。図15は、図14における連通基板24の平面図である。
本実施形態では、図14に示すように、連通基板24の第2の面52に形成される第2のマスク層68のうち個別連通路26が形成される領域に、当該第2のマスク層68がエッチングにより厚さ方向に完全に除去された第2のマスク開口69が2つノズル列方向に直交する方向に離れて形成されている。具体的には、個別連通路26が形成される領域の他側(ノズル22に対応する位置から近い側)に第2のマスク第1開口69aが形成され、一側(ノズル22に対応する位置から遠い側)に第2のマスク第2開口69bが形成されている。また、これら第2のマスク第1開口69aと第2のマスク第2開口69bとの間には、第2のマスク層68がハーフエッチングにより厚さ方向の途中まで除去された第2のマスク凹部70が形成されている。すなわち、図15に示すように、第2のマスク凹部70の他側の端に第2のマスク第1開口69aが接続され、第2のマスク凹部70の一側の端に第2のマスク第2開口69bが接続されている。また、本実施形態においては、第2のマスク第1開口69a及び第2のマスク第2開口69bのノズル列方向における寸法が、第2のマスク凹部70の同方向の寸法よりも大きく形成されている。なお、第1のマスク層63の形状、すなわち第1のマスク凹部64の形状等は、上記した第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
連通基板24に上記のようなマスク層を形成したならば、第1の実施形態と同様に、貫通孔形成工程において、連通基板24に貫通孔72を形成する。具体的には、図16に示すように、まず第2のマスク第1開口69aに対応する部分において、第1の面51側からレーザーにより連通基板24に小径な基礎孔71を形成する。次に、図17に示すように、エッチング溶液に連通基板24を曝して、基礎孔71の径(流路断面積)を広げる。これにより、流路断面の形状が、第2のマスク第1開口69aの形状に揃えられた貫通孔72が形成される。この際、第2のマスク第2開口69bに露出する連通基板24がエッチング溶液に曝されるため、この部分に第2の面52から僅かに窪んだディンプル78が形成される。
次に、第1の実施形態と同様に、エッチングにより第1のマスク層63及び第2のマスク層68を薄くする。これにより、図18に示すように、第1の面51において、第1のマスク凹部64に対応する部分の第1のマスク層63が完全に除去されて、当該部分に第1のマスク開口64′が形成される。また、第2の面52において、第2のマスク凹部70に対応する部分の第2のマスク層68が完全に除去されて、当該部分に第2のマスク凹部70、第2のマスク第1開口69a及び第2のマスク第2開口69bが一体となった第2のマスク開口69′が形成される。本実施形態における第2のマスク開口69′も、第1の実施形態と同様に、貫通孔72の第2の面52側の開口面積よりも広く、且つ貫通孔72の開口を含んだ状態となる。
そして、第1のマスク層63に第1のマスク開口64′を形成し、第2のマスク層68に第2のマスク開口69′を形成した状態で、流路空間形成工程に移行する。すなわち、第1の実施形態と同様に、連通基板24をエッチング溶液に曝し、連通基板24の第1のマスク開口64′に対応する領域及び第2のマスク開口69′に対応する領域をエッチングする。これにより、図19に示すように、連通基板24の第2のマスク開口69′に対応する領域がエッチングされ、貫通孔72の第2の面52側の開口の縁に、結晶面に起因した第2のダレ面76が現れる。すなわち、ディンプル78がエッチングにより消失し、この部分に第2のダレ面76が形成される。なお、第1の面51側については、上記した第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。また、その後の工程も、上記した第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。これにより、本実施形態でも、第1のマスク開口64′に対応する領域の連通基板24がさらに板厚方向に削れ、且つ、櫛歯領域66に傾斜面53が形成される。また、流路断面積が第2のマスク開口69′の開口面積と揃えられた第1の流路部56と、一側の面がダレ面59(第1のダレ面75)により区画され、第1の流路部56から第1のマスク層63側に向けて拡径した第2の流路部57と、が形成される。このようにして、図3に示すような式(1)を満たす個別連通路26が形成された連通基板24が作成される。
このように、本実施形態においては、第2のマスク開口69′の開口パターン(開口形状)が、他側の第2のマスク第1開口69aの開口パターンと一側の第2のマスク第2開口69bの開口パターンとで規定されるため、第2のマスク開口69′の開口パターンにより規定される個別連通路26の形状のバラつきを抑制できる。すなわち、レジストを塗布し、露光および現像してレジストパターンを設け、その後、エッチングして他側の第2のマスク第1開口69aと一側の第2のマスク第2開口69bとを形成する際に、他側の第2のマスク第1開口69aと一側の第2のマスク第2開口69bとを同一の露光マスクを適用して同時に形成することができるため、両者の相対位置がずれることを抑制できる。その結果、第2のマスク開口69′の開口パターン(開口形状)がバラつくことを抑制でき、ひいては個別連通路26の形状がバラつくことを抑制できる。
また、図20及び図21に示す、第3の実施形態においては、第2のマスク開口69′の開口パターン(開口形状)が、第2のマスク凹部70のパターン(形状)で規定されるように第2のマスク層68がパターニングされている。なお、図20は、マスク層を形成した状態の連通基板24の断面図である。図21は、図20における連通基板24の平面図である。
本実施形態では、図20に示すように、連通基板24の第2の面52に形成される第2のマスク層68のうち個別連通路26が形成される領域に、第2のマスク層68がハーフエッチングにより厚さ方向の途中まで除去された第2のマスク凹部70が形成されている。また、図20及び図21に示すように、第2のマスク凹部70が形成された領域のうち他側(ノズル22に対応する位置から近い側)の端部に、第2のマスク層68がエッチングにより厚さ方向に完全に除去された第2のマスク開口69が形成されている。図21に示すように、この第2のマスク開口69の開口面積は、第2のマスク凹部70の開口の開口面積よりも小さく形成されている。なお、第1のマスク層63の形状、すなわち第1のマスク凹部64の形状等は、上記した第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。また、その後の個別連通路26の形成工程も、上記した第1の実施形態と略同じであるため説明を省略する。
本実施形態においては、エッチングにより第1のマスク層63及び第2のマスク層68を薄くする際に、第2のマスク凹部70に対応する部分の第2のマスク層68が完全に除去されて、当該部分に第2のマスク開口が形成される。このため、第2のマスク開口の形状は、第2のマスク凹部70の形状により規定される。その結果、個別連通路26の形状がバラつくことを抑制できる。すなわち、個別連通路26の形状が1つの露光マスクのパターンで規定できるため、個別連通路26の形状のバラつきを抑制できる。
ところで、連通基板24及び個別連通路26の形状は、上記した各実施形態に限られない。図22に示す第4の実施形態においては、連通基板24の薄肉部37のうち個別連通路26の周辺における第2液室39側の面がノズルプレート21側に盛りあがった状態に形成されている。
具体的には、図22に示すように、第2液室39を区画する連通基板24の薄肉部37のノズル列方向に直交する方向における他側(個別連通路26側)の端部に、第2液室39側の面(すなわち、第1の面51側の面)が同側に盛りあがった台地80が形成されている。換言すると、薄肉部37の第2液室39側の面うちノズル列方向に直交する方向における他側の端部が、一側(個別連通路26とは反対側、すなわち第1液室38側)の端部よりもノズルプレート21側に配置されている。このため、薄肉部37のうちノズル列方向に直交する方向における他側の端部が、一側の端部よりも、厚くなっている。そして、この台地80の天井面81に、個別連通路26が開口されている。すなわち、個別連通路26は、薄肉部37の台地80に形成されている。このため、個別連通路26の長さを上記した第1の実施形態よりも長くすることができる。これにより、個別連通路26における流路抵抗やイナータンスをより大きくでき、インクの噴射特性を一層向上させることができる。なお、薄肉部37の第2液室39側の面には、ノズル列方向に直交する方向における台地80の天井面81の端から下り傾斜した傾斜面53が形成されている。
また、本実施形態における個別連通路26は、第2液室39側の開口縁にほとんどダレが生じず、第1の面51(又は第2の面52)に対して略垂直に延在した流路となっている。すなわち、個別連通路26の開口のダレが一層抑制された形状となっている。このため、リザーバーから個別連通路26を通じて圧力室30に向かうインクの流速をより速めることができ、個別連通路26のリザーバー側の開口に気泡が滞留することを一層抑制できる。なお、隣り合う個別連通路26を隔離する隔離壁55のうち、第2液室39側の端には、当該隔離壁55が第2の面52側に向けてダレたダレ部60(本実施形態では、U字状のダレ部60)が形成されている。
そして、本実施形態でも、個別連通路26が上記した式(1)を満たすように、構成されている。すなわち、個別連通路26のノズル列方向に直交する方向の最小寸法Aに対するダレ部60の底部における個別連通路26のノズル列方向に直交する方向の寸法Bの割合が1.395以下に設定されている。特に、本実施形態では、この寸法Aと寸法Bとの値が略同じに、換言するとB/Aの値がほぼ1になるように設定されている。これにより、個別連通路26の第2液室39側の開口近傍に気泡が滞留することを一層抑制できる。なお、その他の構成は上記した第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
次に、本実施形態における個別連通路26の形成工程について詳しく説明する。図23〜図30は、本実施形態における連通基板24の断面における状態遷移図である。
本実施形態においても、上記した各実施形態と同様に、連通基板24の第1の面51に第1のマスク層63を形成し、連通基板24の第2の面52に第2のマスク層68を形成する。ここで、図23に示すように、本実施形態における第1のマスク層63は、ハーフエッチングを行うことで、第2液室39(薄肉部37)となる領域の第1のマスク層63が段階的に薄くなるように形成されている。具体的には、第1のマスク層63の第2液室39(薄肉部37)となる領域において凹んだ状態に形成された第1のマスク第1凹部82と、第2液室39(薄肉部37)となる領域のうち台地80の天井面81から外れた領域において更に凹んだ状態に形成された第1のマスク第2凹部83とが、形成されている。すなわち、第1のマスク第2凹部83は、第1のマスク第1凹部82の内側に形成されている。また、傾斜面53となる領域には、第1のマスク第1凹部82内において、第1のマスク第2凹部83における第1のマスク層63よりも厚さが厚い厚肉部分が櫛歯状に形成されている。すなわち、傾斜面53となる領域は、第1のマスク層63の厚肉部分が櫛歯状に形成された櫛歯領域66となっている。また、第2のマスク層68には、図14に示す第2の実施形態と同様に、個別連通路26が形成される領域の他側に第2のマスク第1開口69aが形成され、一側に第2のマスク第2開口69bが形成され、且つ、これらの間に第2のマスク凹部70が形成されている。
連通基板24に上記のようなマスク層を形成したならば、第1の実施形態と同様に、貫通孔形成工程において、連通基板24に貫通孔72を形成する。具体的には、図24に示すように、まず第2のマスク第1開口69aに対応する部分において、第1の面51側からレーザーにより連通基板24に小径な基礎孔71を形成する。次に、図25に示すように、エッチング溶液に連通基板24を曝して、基礎孔71の径(流路断面積)を広げる。これにより、流路断面の形状が、第2のマスク開口69の形状に揃えられた貫通孔72が形成される。この際、第2の実施形態と同様に、第2のマスク第2開口69bに露出する連通基板24がエッチング溶液に曝されるため、この部分に第2の面52から僅かに窪んだディンプル78が形成される。
次に、エッチングにより第1のマスク層63及び第2のマスク層68を薄くする。これにより、図26に示すように、第1の面51において、第1のマスク第2凹部83に対応する部分の第1のマスク層63が完全に除去されて、当該部分に第1のマスク開口83′が形成される。このとき、台地80の天井面81に対応する領域は、開口されずに第1のマスク層63で覆われた状態となる。また、第2の面52において、第2の実施形態と同様に、第2のマスク凹部70に対応する部分の第2のマスク層68が完全に除去されて、当該部分に第2のマスク凹部70、第2のマスク第1開口69a及び第2のマスク第2開口69bが一体となった第2のマスク開口69′が形成される。本実施形態における第2のマスク開口69′も、貫通孔72の第2の面52側の開口面積よりも広く、且つ貫通孔72の開口を含んだ状態となる。
そして、第1のマスク層63に第1のマスク開口83′を形成し、第2のマスク層68に第2のマスク開口69′を形成した状態で、流路空間形成工程に移行する。本実施形態における流路空間形成工程は、第1の面51における貫通孔72から外れた領域(台地80の天井面81となる領域から外れた領域)を窪ませる第1の流路空間形成工程と、第1の流路空間形成工程の後、流路空間に対応する領域を窪ませる第2の流路空間形成工程と、を含んでいる。第1の流路空間形成工程では、連通基板24をエッチング溶液に曝し、連通基板24の第1のマスク開口83′に対応する領域及び第2のマスク開口69′に対応する領域をエッチングする。これにより、図27に示すように、台地80の天井面81となる領域から外れた領域がエッチングされ、当該領域の連通基板24が板厚方向に削れると共に、櫛歯領域66に傾斜面53′が形成される。また、連通基板24の第2のマスク開口69′に対応する領域がエッチングされ、貫通孔72の径(流路断面積)が第2の面52側から広げられていく。すなわち、第2の面52側の開口から第1の面51側の途中まで、流路断面積が第2のマスク開口69′の開口面積と揃えられた中間流路部77が形成される。この際、この中間流路部77の第1の面51側の端部に第2のダレ面76が形成される。
第2の面52側の開口から第1の面51側の途中まで中間流路部77が形成されたならば、エッチングにより第1のマスク層63及び第2のマスク層68を更に薄くする。これにより、図28に示すように、第1の面51において、第1のマスク第1凹部82に対応する部分の第1のマスク層63が完全に除去されて、当該部分に第1のマスク開口82′が形成される。一方、第2の面52においては、第2のマスク開口69′の形状をほぼ維持したまま、第2のマスク層68が薄くなる。この状態で、第2の流路空間形成工程に移行する。第2の流路空間形成工程では、連通基板24を再びエッチング溶液に曝し、連通基板24の第1のマスク開口82′に対応する領域及び第2のマスク開口69′に対応する領域をエッチングする。これにより、図29に示すように、第1のマスク開口82′における連通基板24が、第1の面51から板厚方向に全体的に窪んでいく。すなわち、第1の流路空間形成工程でエッチングされた台地80の天井面81となる領域から外れた領域は、さらに板厚方向に窪んでいく。また、第1の流路空間形成工程でエッチングされていない台地80の天井面81となる領域も、板厚方向に窪んでいく。さらに、貫通孔72の第1の面51側の開口の縁がダレ始めると共に、貫通孔72同士を隔離する隔離壁55′が下方に向けてダレ始める。一方、連通基板24の第2のマスク開口69′に対応する領域は、エッチングが進み、中間流路部77が長くなる。これに伴って、第2のダレ面76が第1の面51側に移動する。
この状態からさらにエッチングが進むと、図30に示すように、第1のマスク開口82′に対応する領域の連通基板24がさらに板厚方向に削れ、台地80が形成される。また、貫通孔72の第1の面51側の開口の縁のダレがさらに進行するものの、このダレは、連通基板24の貫通孔72の径が広がることに伴ってほぼ消失する。すなわち、貫通孔72の第1の面51側の開口及び第2の面52側の開口からのエッチングが進み、貫通孔72内のダレ面が消失する。そして、貫通孔72の径(流路断面積)が広がって、個別連通路26が形成される。また、個別連通路26同士を隔離する隔離壁55に、第2の面52側に向けてダレたダレ部60が形成される。最後に、第1のマスク層63及び第2のマスク層68を除去することで、図22に示すような式(1)を満たす個別連通路26が形成された連通基板24が作成される。
そして、本実施形態における記録ヘッド3の製造方法においても、連通基板24の第1の面51から板厚方向の途中まで窪ませて第2液室39を形成する流路空間形成工程において、貫通孔72の流路断面積を広げて個別連通路26を形成したので、個別連通路26の開口のダレを抑制できる。これにより、個別連通路26の第2液室39側の開口面積を小さくできると共に第1の流路部56の長さを長くできる。特に、本実施形態では、第2の流路空間形成工程において、貫通孔72の流路断面積を広げて個別連通路26を形成したので、薄肉部37の台地80に個別連通路26を形成することができる。これにより、個別連通路26の長さを更に長くすることができる。その結果、第2液室39から圧力室30側に向かうインクの流速を更に速めることができ、個別連通路26のリザーバー側の開口に気泡が滞留することをより確実に抑制できる。また、個別連通路26における流路抵抗やイナータンスを更に大きくでき、インクの噴射特性を更に向上させることができる。
また、図31に示す第5の実施形態においては、連通基板24の薄肉部37のうち個別連通路26の途中に、流路断面積が狭くなった狭窄部58が形成されている。
具体的には、図31に示すように、第4の実施形態と同様に、薄肉部37のノズル列方向に直交する方向における他側の端部に台地80が形成され、この台地80に個別連通路26が開口されている。また、本実施形態における個別連通路26は、第2の面52側の開口から第1の面51側の途中まで、第2の面52(又は第1の面51)に対して略垂直に延在した第1の流路部56と、この第1の流路部56よりも流路断面積が狭まった狭窄部58と、この狭窄部58の第2液室39側の端部から同側に向けて拡径した第2の流路部57と、から構成されている。より詳しく説明すると、個別連通路26を区画する壁面うちノズル列方向に直交する方向における一側の壁面には、第1の面51側の開口縁から狭窄部58まで傾斜した第1のダレ面75が形成されている。この第1のダレ面75により第2の流路部57におけるノズル列方向に直交する方向の一側の面が区画される。また、狭窄部58の第1流路部側の端部を区画する壁面のうちノズル列方向に直交する方向における一側の壁面には、第1の流路部56の同側の壁面に向けて傾斜した第2のダレ面76が形成されている。すなわち、第2のダレ面76により狭窄部58の下部(第1の流路部56側の部分)におけるノズル列方向に直交する方向の一側の面が区画される。このように、個別連通路26に狭窄部58を設けることで、個別連通路26における流路抵抗やイナータンスを一層大きくでき、インクの噴射特性をより一層向上させることができる。
なお、本実施形態においては、ノズル列方向に直交する方向(x方向)における個別連通路26の最小寸法となる狭窄部58の寸法が上記した式(1)のAに相当する。そして、本実施形態でも、個別連通路26が上記した式(1)を満たすように構成されている。すなわち、個別連通路26のノズル列方向に直交する方向の最小寸法Aに対するダレ部60の底部における個別連通路26のノズル列方向に直交する方向の寸法Bの割合が1.395以下に設定されている。これにより、個別連通路26の第2液室39側の開口近傍に気泡が滞留することを抑制できる。なお、その他の構成は上記した第4の実施形態と同じであるため説明を省略する。
次に、本実施形態における個別連通路26の形成工程について詳しく説明する。図32〜図38は、本実施形態における連通基板24の断面における状態遷移図である。
本実施形態においても、上記した第4の実施形態と同様に、連通基板24の第1の面51に第1のマスク層63を形成し、連通基板24の第2の面52に第2のマスク層68を形成する。ここで、図32に示すように、本実施形態における第2のマスク層68には、図23に示す第4の実施形態と同様に、個別連通路26が形成される領域の他側に第2のマスク第1開口69aが形成され、一側に第2のマスク第2開口69bが形成されている。一方、これらの間に形成される第2のマスク凹部70は、第4の実施形態と比べて、浅く形成されている。なお、第1のマスク層63の形状、すなわち第1のマスク第1凹部82の形状、第1のマスク第2凹部83の形状等は、上記した第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
連通基板24に上記のようなマスク層を形成したならば、第4の実施形態と同様に、貫通孔形成工程において、連通基板24に貫通孔72を形成する。すなわち、まず第2のマスク第1開口69aに対応する部分において、第1の面51側からレーザーにより連通基板24に小径な基礎孔71を形成し、エッチング溶液に連通基板24を曝して、基礎孔71の径(流路断面積)を広げる。これにより、図33に示すように、流路断面の形状が、第2のマスク開口69の形状に揃えられた貫通孔72が形成される。また、第2のマスク第2開口69bに対応する部分に第2の面52から僅かに窪んだディンプル78が形成される。
次に、エッチングにより第1のマスク層63及び第2のマスク層68を薄くする。これにより、図34に示すように、第1の面51において、第4の実施形態と同様に、第1のマスク第2凹部83に対応する部分の第1のマスク層63が完全に除去されて、当該部分に第1のマスク開口83′が形成される。一方、第2の面52において、第2のマスク凹部70に対応する部分の第2のマスク層68は除去されずに残った状態となる。すなわち、第2のマスク第1開口69a、第2のマスク第2開口69b及び第2のマスク凹部70の形状は維持されたままになる。
この状態で、流路空間形成工程に移行する。本実施形態における流路空間形成工程も、第4の実施形態と同様に、第1の面51における貫通孔72から外れた領域(台地80の天井面81となる領域から外れた領域)を窪ませる第1の流路空間形成工程と、第1の流路空間形成工程の後、流路空間に対応する領域を窪ませる第2の流路空間形成工程と、を含んでいる。第1の流路空間形成工程では、連通基板24をエッチング溶液に曝し、連通基板24の第1のマスク開口83′に対応する領域及び第2のマスク開口69′に対応する領域をエッチングする。これにより、図35に示すように、台地80の天井面81となる領域から外れた領域がエッチングされ、当該領域の連通基板24が板厚方向に削れると共に、櫛歯領域66に傾斜面53′が形成される。ここで、第2のマスク層68の形状は維持された状態となっているため、貫通孔72の径(流路断面積)が僅かに広げられ、またディンプル78の深さが僅かに深くなるものの、これらの形状は大きく変化しない。
その後、エッチングにより第1のマスク層63及び第2のマスク層68を更に薄くする。これにより、図36に示すように、第1の面51において、第1のマスク第1凹部82に対応する部分の第1のマスク層63が完全に除去されて、当該部分に第1のマスク開口82′が形成される。また、第2の面52において、第2のマスク凹部70に対応する部分の第2のマスク層68が完全に除去されて、当該部分に第2のマスク凹部70、第2のマスク第1開口69a及び第2のマスク第2開口69bが一体となった第2のマスク開口69′が形成される。本実施形態における第2のマスク開口69′も、貫通孔72の第2の面52側の開口面積よりも広く、且つ貫通孔72の開口を含んだ状態となる。この状態で、第2の流路空間形成工程に移行する。第2の流路空間形成工程では、図37に示すように、連通基板24を再びエッチング溶液に曝し、連通基板24の第1のマスク開口82′に対応する領域及び第2のマスク開口69′に対応する領域をエッチングする。これにより、第4の実施形態と同様に、第1のマスク開口82′における連通基板24が、第1の面51から板厚方向に全体的に窪んでいく。また、貫通孔72の第1の面51側の開口の縁がダレ始めると共に、貫通孔72同士を隔離する隔離壁55′が下方に向けてダレ始める。一方、連通基板24の第2のマスク開口69′に対応する領域は、エッチングにより貫通孔72の径(流路断面積)が第2の面52側から広げられていく。すなわち、第2の面52側の開口から第1の面51側の途中まで、流路断面積が第2のマスク開口69′の開口面積と揃えられた中間流路部77が形成される。この際、この中間流路部77と貫通孔72の残りの部分との境界に第2のダレ面76が形成される。
この状態からさらにエッチングが進むと、図38に示すように、第1のマスク開口82′に対応する領域の連通基板24がさらに板厚方向に削れ、台地80が形成される。また、貫通孔72の第1の面51側の開口の縁のダレがさらに進行し、第1のダレ面75となる。これにより、個別連通路26の第2の流路部57が形成される。また、貫通孔72の第2の面52側の開口から第1の面51側に向けてエッチングが進み、第2のダレ面76が第1の面51側に移動する。これにより、貫通孔72の径(流路断面積)が広がって、第1の流路部56が形成されるとともに、第1の流路部56と第2の流路部57との間に狭窄部58が形成される。すなわち、個別連通路26が形成される。また、個別連通路26同士を隔離する隔離壁55に、第2の面52側に向けてダレたダレ部60が形成される。最後に、第1のマスク層及び第2のマスク層68を除去することで、図31に示すような式(1)を満たす個別連通路26が形成された連通基板24が作成される。
そして、本実施形態における記録ヘッド3の製造方法においても、連通基板24の第1の面51から板厚方向の途中まで窪ませて第2液室39を形成する流路空間形成工程において、貫通孔72の流路断面積を広げて個別連通路26を形成したので、個別連通路26の開口のダレを抑制できる。これにより、個別連通路26の第2液室39側の開口面積を小さくできると共に第1の流路部56の長さを長くできる。特に、本実施形態では、第2の流路空間形成工程において、貫通孔72の流路断面積を広げて個別連通路26を形成したので、薄肉部37の台地80に個別連通路26を形成することができる。これにより、個別連通路26の長さを一層長くすることができる。また、個別連通路26に狭窄部58を形成したので、第2液室39から圧力室30側に向かうインクの流速を一層速めることができる。その結果、個別連通路26のリザーバー側の開口に気泡が滞留することを一層抑制できる。また、個別連通路26における流路抵抗やイナータンスを一層大きくでき、インクの噴射特性を一層向上させることができる。
ところで、上記した各実施形態においては、薄肉部37に個別連通路26側に向けて傾斜した傾斜面53が設けられていたが、これには限られない。例えば、図39に示す第6の実施形態においては、薄肉部37のノズルプレート21側の面に傾斜面が設けられていない。すなわち、本実施形態における薄肉部37のノズルプレート21側の面は、個別連通路26の開口の縁から第1液室38に至るまで略平坦に形成されている。なお、本実施形態においても、個別連通路26は、図40に示すような従来の個別連通路と比べて、開口縁のダレが抑制され、第1の流路部56が長くなった形状となっている。また、本実施形態でも、個別連通路26が上記した式(1)を満たすように構成されている。すなわち、個別連通路26のノズル列方向に直交する方向の最小寸法Aに対するダレ部60の底部における個別連通路26のノズル列方向に直交する方向の寸法Bの割合が1.395以下に設定されている。これにより、個別連通路26の第2液室39側の開口近傍に気泡が滞留することを抑制できる。さらに、その他の形状は、上記した第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。そして、このような形状を連通基板24に形成する方法は、上記した第1の実施形態〜第3の実施形態において、例えば、櫛歯領域66における櫛歯状の第1のマスク厚肉部65の幅や間隔を調整することで形成できる。なお、その他の記録ヘッド3の製造方法は、上記した第1の実施形態〜第3の実施形態の何れかと同じであるため、説明を省略する。なお、第1のマスク層63の形状等を変更することにより、傾斜面の有無や傾斜面の傾斜角等を変更し得る。
なお、上記した各実施形態においては、封止板33上に駆動IC34を設けた記録ヘッド3を例示したが、これには限られない。例えば、封止板上に駆動ICを設けず、封止板自体に駆動ICとなる回路を形成した構成を採用することもできる。また、封止板に配線や回路を形成せず、駆動ICを備えたFPC(フレキシブルプリント基板)等の配線基板を、圧力室形成基板に接続する構成を採用することもできる。この構成において、封止板の下面(圧電素子側の面)に凹状の収容空間を形成し、当該収容空間に圧電素子を収容した構成を採用することもできる。
さらに、上記した各実施形態においては、駆動領域35を駆動するためのアクチュエーターとして、所謂撓み振動型の圧電素子32を例示したが、これには限られない。例えば、所謂縦振動型の圧電素子や、発熱素子、静電気力を利用して圧力室の容積を変動させる静電アクチュエーター等の各種アクチュエーターを採用することができる。
そして、以上においては、液体噴射ヘッドとしてインクジェット式記録ヘッド3を例に挙げて説明したが、本発明は、その他の液体噴射ヘッドにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドでは液体の一種としてR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液体の一種として液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは液体の一種として生体有機物の溶液を噴射する。
1…プリンター,2…記録媒体,3…記録ヘッド,4…キャリッジ,5…キャリッジ移動機構,6…搬送機構,7…インクカートリッジ,8…タイミングベルト,9…パルスモーター,10…ガイドロッド,14…アクチュエーターユニット,15…流路ユニット,16…ヘッドケース,17…収容空間,18…液体導入路,21…ノズルプレート,22…ノズル,24…連通基板,25…共通液室,26…個別連通路,27…ノズル連通路,29…圧力室形成基板,30…圧力室,31…振動板,32…圧電素子,33…封止板,34…駆動IC,35…駆動領域,36…非駆動領域,37…薄肉部,38…第1液室,39…第2液室,40…バンプ電極,41…個別端子,42…共通端子,43…感光性接着剤,45…貫通配線,46…上面側配線,47…IC端子,48…接着剤,51…第1の面,52…第2の面,53…傾斜面,55…隔離壁,56…第1の流路部,57…第2の流路部,58…狭窄部,59…ダレ面,60…ダレ部,63…第1のマスク層,64…第1のマスク凹部,64′…第1のマスク開口,65…第1のマスク厚肉部,66…櫛歯領域,68…第2のマスク層,69…第2のマスク開口,69a…第2のマスク第1開口,69b…第2のマスク第2開口,70…第2のマスク凹部,71…基礎孔,72…貫通孔,75…第1のダレ面,76…第2のダレ面,77…中間流路部,78…ディンプル,80…台地,81…天井面,82…第1のマスク第1凹部,82′…第1のマスク開口,83…第1のマスク第2凹部,83′…第1のマスク開口,90…連通基板,91…薄肉部,92…個別連通路,93…共通液室,94…圧力室,95…ダレ面
Claims (1)
- 基板の第1の面から反対側の第2の面側に向けて板厚方向の途中まで窪んだ流路空間と、
前記流路空間から前記第2の面側に前記基板を貫通する個別連通路と、を備えた液体噴射ヘッドであって、
前記個別連通路は、第1の方向に沿って複数形成され、
前記第1の面に平行且つ前記第1の方向に直交する第2の方向における前記個別連通路の最小寸法をAとし、
隣り合う前記個別連通路を区画する隔壁の前記第1の面側の端のうち最も前記第2の面側に位置する部分における前記個別連通路の前記第2の方向の寸法をBとしたとき、
B/A≦1.395
を満たすことを特徴とする液体噴射ヘッド。
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