次に、上述の給湯器について、例示的な実施形態を挙げて説明する。
(1)第一実施形態
[給湯器の構造]
図1に示すように、給湯器1は、給湯栓2などの出湯箇所へ湯を供給可能に構成されている。給湯器1は、燃焼室11を有し、燃焼室11内には、バーナ12A,12B,12C、一次熱交換器13、二次熱交換器14、電極15、イグナイター16、及びフレームロッド17などが配設されている。
一次熱交換器13は、バーナ12A,12B,12Cでの燃焼に伴って発生する高温の排気中から主に顕熱を回収する熱交換器であり、二次熱交換器14は、一次熱交換器13での熱交換に伴って温度が低下した排気中から主に潜熱を回収する熱交換器である。
二次熱交換器14では、相応に相対湿度が高い排気から更に熱を奪うため、排気中の水蒸気が凝縮してドレン(凝縮水)が発生する。そのため、このドレンを排出するためにドレン排水管18が設けられ、ドレン排水管18の下流端には中和器19が設けられている。中和器19は、窒素酸化物や硫黄酸化物を含有する酸性のドレンを中和するために設けられたもので、中和器19の内部には、ドレンを中和させる中和剤(例えば、炭酸カルシウム)が充填されている。
また、給湯器1は、ファンモータ20及びファン21を有し、ファンモータ20によってファン21を回転駆動することにより、燃焼室11内への給気ができるように構成されている。燃焼室11の上部には、排気トップ22が設けられ、排気トップ22を介して燃焼室11外への排気ができる構造とされている。また、燃焼室11には、周囲が異常な高温状態となったときに溶断することで給湯器1の作動を強制停止させる過熱防止装置23が付設されている。
また、給湯器1は、バーナ12A,12B,12Cへのガス供給路となるガス供給管31を備えている。このガス供給管31は、上流端側がガス供給源(例えば、都市ガス内管やプロパンガス用配管等)に接続された本管32と、本管32から複数に分岐した支管33A,33B,33Cとで構成されている。支管33A,33B,33Cの下流端にはノズル34A,34B,34Cが設けられ、各ノズル34A,34B,34Cを介してバーナ12A,12B,12Cへガスを供給可能に構成されている。
このガス供給管31において、本管32には元電磁弁35、及びガス比例制御弁36が設けられている。また、支管33A,33B,33Cには切替電磁弁37A,37B,37Cが設けられている。
さらに、給湯器1は、通水用配管として、二次熱交換器14への入水路をなす給水管41と、一次熱交換器13からの出湯路をなす出湯管43と、給水管41の流路途中から分岐して出湯管43へと連通するバイパス管45とを備えている。
これらの通水用配管のうち、給水管41は、その上流端側が水供給源(例えば、水道管)に接続され、給水管41の上流端側から下流端側に至る流路の途中には、上流端側から順に、上流側から下流側へと流れる水を濾過するストレーナー51、給水管41内を流れる水量を検出する水量センサー52、給水管41内を流れる水量を増減制御する水量制御モータ53、及び一次熱交換器13へ流れる水の温度を検出する入水温検出用サーミスター54などが設けられている。また、入水路の途中には、凍結予防ヒーター55が設けられている。
出湯管43は、その下流端側が出湯箇所(本実施形態においては給湯栓2のある箇所)に接続され、出湯管43の上流端側から下流端側に至る流路の途中には、上流端側から順に、一次熱交換器13から流出する湯の温度を検出する内胴出口湯温検出用サーミスター56、出湯管43とバイパス管45の合流点よりも下流側において湯の温度を検出する出湯温検出用サーミスター57、及び圧力逃がし弁付水抜栓58などが設けられている。バイパス管45には、バイパス管45内を流れる水量を増減制御するバイパス制御モータ59が設けられている。
加えて、給湯器1は、コントローラー61と、リモコン62とを備えている。コントローラー61は、CPU,ROM,RAMなどを備えたマイクロコンピュータを内蔵しており、上述した各種センサー(フレームロッド17、入水温検出用サーミスター54、内胴出口湯温検出用サーミスター56、及び出湯温検出用サーミスター57など)から情報を入力するとともに、上述した各種電磁弁(元電磁弁35、ガス比例制御弁36、切替電磁弁37A,37B,37Cなど)、各種モータ(ファンモータ20、水量制御モータ53、バイパス制御モータ59)、イグナイター16などを制御する。
リモコン62は、利用者からの入力操作を受け付ける入力部と利用者に対する情報表示や音声出力を行う出力部などのユーザーインターフェースを備え、その入力部から入力された情報がコントローラー61へ伝達されるとともに、コントローラー61から伝達される情報に基づいて出力部から情報表示や音声出力を行う仕組みになっている。
[給湯時の作動態様]
以上のように構成された給湯器1においては、利用者が給湯栓2を開くと、水入口より流入した水は、水量センサー52、二次熱交換器14を経て一次熱交換器13へと向かう。このとき、水量センサー52からは、流速に応じた周波数の信号が出力され、この信号が規定周波数に達したことをコントローラー61が感知すると、コントローラー61はファンモータ20を制御してファン21を回転させる。
ファン21が回転してプリパージ動作が行われた後、イグナイター16が作動し、電極15から放電する。続いて、元電磁弁35と切替電磁弁37A〜37Cが開かれ、ガス比例制御弁36が緩点火動作となり、バーナ12A〜12Cに点火する。点火後、フレームロッド17にて炎を検知し、燃焼していることを確認したら緩点火動作を終了する。
緩点火動作を終了すると、続いて比例制御が開始される。出湯温検出用サーミスター57で検出した湯温と利用者が任意に設定する設定温度との間に差があると、そのことをコントローラー61が判断し、ガス比例制御弁36及び切替電磁弁37A〜37Cの開閉によって、ガス量を連続的に変化させて出湯温度を一定に保つ。また、水量制御モータ53により適切な水量に調節を行うため、常に最大能力の出湯量を確保する。このとき、コントローラー61からは、ガス比例制御弁36によるガス量の変化に応じて、ファンモータ20へ信号が送られ、これにより、常にガス量と空気量の関係が所定の関係に保たれる。
以上のような給湯が行われている状況において、利用者が給湯栓2を閉じると、水量センサー52からの周波数の信号がなくなるので、コントローラー61は、元電磁弁35、切替電磁弁37A〜37Cを閉じて消火し、ポストパージ動作に入る。その後、ポストパージ動作がタイムアップすると、ファン21は停止する。
給湯時には、入水温検出用サーミスター54によって検出される入水温度、利用者がリモコン62を操作して任意に設定可能な設定温度、及び水量センサー52によって検出される流量に基づいて、設定温度での出湯に必要な燃焼出力(以下、アウトプットとも称する。)が算出される。そして、必要なアウトプットに応じてフィードフォワード制御(以下、FF制御と称する。)が行われ、必要なアウトプットに対応する燃焼段が設定されるとともに、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度が設定される。
上述の燃焼段は、切替電磁弁37A〜37Cのいずれを開いていずれを閉じるか、その組み合わせによって切り替えられ、本実施形態の場合は、燃焼段を四段階に切り替え可能となっている。四段階ある燃焼段は、各段で対応可能なアウトプットの数値範囲が、図2(A)に示すように異なる数値範囲となっている。各燃焼段におけるアウトプットは、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度に応じて決まる。図2(A)では、各燃焼段におけるアウトプットとファン21の回転数との対応関係がグラフ化されている。
給湯器1の設計上、i番目(但し、iは1≦i<nを満たす整数。本実施形態の場合はn=4。)の燃焼段におけるアウトプットの上限値は、i+1番目の燃焼段における燃焼出力の下限値よりも大きくなるように構成されている。そのため、i番目の燃焼段で対応可能なアウトプットの数値範囲と、i+1番目の燃焼段で対応可能なアウトプットの数値範囲は、互いの一部が重複する数値範囲(図2(A)中に両端矢印で示す範囲参照。)になっている。
FF制御により、必要なアウトプットに対応する燃焼段が設定され、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度が設定された後には、更に設定温度と出湯温度との温度差に基づいてフィードバック制御(以下、FB制御と称する。)が行われる。すなわち、設定温度と出湯温度との温度差に基づいて、この温度差が小さくなるようにファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度の調整が行われる。
[調整不能範囲の発生要因と問題点]
ところで、給湯器1の経年劣化等が原因で、ノズル34A,34B,34Cにおいてノズル詰まりなどが発生した場合には、ファン21の回転数を適切に調節し、かつガス比例制御弁36の開度を適切に調節しても、所期のインプットが得られなくなる場合がある。また、給湯器1へガスを供給する供給源側の要因で、ガス供給圧が著しく低下した場合にも、上記同様に、ファン21の回転数を適切に調節し、かつガス比例制御弁36の開度を適切に調節しても、所期のインプットが得られなくなる場合がある。その結果、熱効率とインプットとの積で定まるアウトプット(燃焼出力)についても、所期のアウトプットが得られない状態に陥る。このときの状況によっては、各燃焼段の出力特性が、図2(A)に示した標準的な出力特性から、例えば図2(B)に示すような出力特性に変動することがある。
図2(B)に示すような出力特性となった場合でも、ファン21の回転数が低く、かつガス比例制御弁36の開度が小さい領域(図2(A)に示す各燃焼段のグラフ中で左端付近の領域。)においては、ノズル詰まり等の影響は比較的小さい。そのため、各燃焼段の出力特性は、図2(A)に示した標準的な出力特性とほとんど変わらない。一方、ファン21の回転数が高く、かつガス比例制御弁36の開度が大きい領域(図2(A)に示す各燃焼段のグラフ中で右端付近の領域。)においては、ノズル詰まり等の影響が比較的大きく現れる。そのため、各燃焼段の出力特性(図2(B)中に実線で示すグラフ参照。)は、標準的な出力特性(図2(B)中に破線で示すグラフ参照。)とは相違し、ファン21の回転数を増大させ、かつガス比例制御弁36の開度を増大させても、期待するほどアウトプットが増大しない状況に陥る。
このような状況下では、図2(B)に示すように、i番目の燃焼段で対応可能なアウトプットの数値範囲と、i+1番目の燃焼段で対応可能なアウトプットの数値範囲との間には重複範囲がなくなり、両数値範囲間に隙間(図2(B)中において斜線を付した範囲参照。)が生じることがある。この隙間は、燃焼段をi番目に切り替えてもi+1番目の燃焼段に切り替えても、その隙間内にあるアウトプットを得られるようにファン21の回転数及びガス比例制御弁36の開度を調整することができない範囲(以下、調整不能範囲と称する。)である。
上述のようなFF制御において算出されたアウトプットが上述の調整不能範囲内に含まれる値となった場合、その後、上述のようなFB制御を行うと、以下に述べるような問題が生じる。
図3に例示するように、FF制御において必要なアウトプットが算出された場合には、それに対応するファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度が決まり、給湯器1としてはA点での作動を行おうとする。しかし、実際には、A点が調整不能範囲内に含まれるため、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を設計通りに調節しても、給湯器1はB点で作動する。この場合、給湯器1は、A点よりも小さいアウトプットしか得られない状態となる。
よって、このときの出湯温度は設定温度よりも低くなるので、設定温度と出湯温度との温度差に基づいてFB制御を行うと、給湯器1としては、作動状態をA点からC点側へ変動させようとする。つまり、給湯器1は、上記FB制御によって、出湯温度を上昇させようとする。しかし、実際には、給湯器1はB点で作動する状態にあるため、上記FB制御を行うと、給湯器1の作動状態はB点からD点側へ変動することになる。
したがって、上記FB制御により、給湯器1の作動状態が徐々にB点からD点へと変動したとしても、その間は最大でもA点より小さいアウトプットしか得られない状態が続くことになる。給湯器1の作動状態がD点に達した場合、給湯器1としては、作動状態がC点に達したものと認識しているので、上記FB制御では、更にアウトプットを増大させるため、燃焼段の切り替えを行う。これにより、給湯器1はE点で作動する状態に移行する。なお、給湯器1としては、作動状態をC点からE点へと移行させたつもりであるが、実際には、作動状態がD点からE点へ移行することになる。
給湯器1の作動状態がE点へ移行すると、給湯器1は、A点よりも大きいアウトプットが得られる状態となる。そのため、この状態においては出湯温度が設定温度よりも高くなるので、上記FB制御により、給湯器1は作動状態をE点からF点側へ変動させる。つまり、給湯器1は、上記FB制御によって、出湯温度を低下させようとする。そして、給湯器1の作動状態がF点にまで変動したとしても、給湯器1は、依然としてA点よりも大きいアウトプットが得られる状態にある。そのため、上記FB制御では、更にアウトプットを減少させるため、燃焼段の切り替えを行う。
この切り替えの際、給湯器1としてはG点で作動する状態に移行しようとする。しかし、G点で作動する状態となるように、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を設計通りに調節しても、給湯器1はH点で作動する状態になる。この場合、給湯器1は、A点よりも小さいアウトプットしか得られない状態となる。
よって、このときの出湯温度は設定温度よりも低くなるので、上記FB制御を行うと、給湯器1としては、作動状態をG点からC点側へ変動させようとし、実際には、給湯器1の作動状態がH点からD点側へ変動することになる。つまり、給湯器1は、上記FB制御によって、再び出湯温度を上昇させようとする。
以上のようなFB制御が行われた場合、出湯温度を上昇させるために燃焼段を切り替えると出湯温度が高くなりすぎる一方、出湯温度を下降させるために燃焼段を切り替えると出湯温度が低くなりすぎる、という状況に陥る。そのため、いつまでも所期の出湯温度が得られないまま、燃焼段の切り替えを繰り返すハンチング状態に陥ることになる。そこで、本実施形態の給湯器1においては、上述のような調整不能範囲が生じた場合であっても、ハンチングが発生するのを抑制するために、以下に説明するような給湯処理を実行する。
[給湯処理]
以下、本実施形態の給湯器1において実行される給湯処理について、図4〜図7に基づいて説明する。この給湯処理は、給湯器1が作動状態にある場合に、コントローラー61において常時実行されている処理である。
給湯処理を開始すると、コントローラー61は、まず、水量センサー52によって検出される流量が所定のしきい値以上か否かを判断し(S10)、流量が所定のしきい値未満であった場合には(S10:NO)、S10へと戻ることにより、S10を繰り返す。
一方、S10において流量が所定のしきい値以上であった場合(S10:YES)、コントローラー61は、入水温検出用サーミスター54によって検出される入水温度、リモコン62において設定された設定温度、及び水量センサー52によって検出される流量に基づいて、必要アウトプットを算出する(S15)。そして、コントローラー61は、S15で算出された必要アウトプットに応じて、燃焼段の設定を行うとともに、その燃焼段で必要アウトプットを得られるように、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を設定する(S20)。
続いて、コントローラー61は、バーナ12A〜12Cでの燃焼を開始する(S25)。なお、S25の点火シーケンスでは、まずファンモータ20を駆動して、S20で設定された回転数でファン21を回転させることによって送風を開始し、ガス比例制御弁36の開度をS20で設定された開度に調節する。続いて、イグナイター16を作動させて電極15による放電を開始し、切替電磁弁37A〜37Cのうち、S20で設定された燃焼段に対応するものを開く。これにより、ノズル34A〜34Cのうち、S20で設定された燃焼段に対応するものへガスが供給され、バーナ12A〜12Cのうち、S20で設定された燃焼段に対応するものにおいて燃焼が開始される。
続いて、コントローラー61は、水量センサー52によって検出される流量が所定のしきい値以下か否かを判断し(S30)、流量が所定のしきい値を超過している場合には(S30:NO)、入水温度、設定温度、又は流量に変更があったか否かを判断する(S35)。S35において、入水温度、設定温度、又は流量に変更がないと判断された場合(S35:NO)、コントローラー61は、出湯温度が安定するまで所定時間待機して(S40)、フィードバック温度制御を実行する(S45)。S45のフィードバック温度制御の詳細については後述する。S45を終えた場合は、S30へと戻る。これにより、流量が所定のしきい値を超過しており、かつ入水温度、設定温度、又は流量に変更がない場合は(S30:NO,S35:NO)、S30〜S45が繰り返し実行されることになる。
一方、S30〜S45が繰り返し実行される中で、入水温度、設定温度、又は流量に変更があった場合には、S35において肯定判断がなされる(S35:YES)。この場合、コントローラー61は、フラグF1をオフにする(S50)。フラグF1は、S45のフィードバック温度制御を実行する中でオン及びオフの切り替えが行われ得るフラグであるが、その詳細については後述する。
続いて、コントローラー61は、入水温度、設定温度、及び流量に基づいて、必要アウトプットを算出する(S55)。そして、必要アウトプットに応じて、燃焼段の設定を行うとともに、その燃焼段で必要アウトプットを得られるように、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を設定する(S60)。すなわち、入水温度、設定温度、又は流量に変更があったことに対応して、S55〜S60では、あらためてS15〜S20と同等な設定が行われることになる。S60を終えた場合は、S30へと戻る。これにより、流量が所定のしきい値を超過しており、かつ入水温度、設定温度、又は流量に変更がない場合は(S30:NO,S35:NO)、再びS30〜S45が繰り返し実行されることになる。
また、S30〜S45が繰り返し実行される中で、流量が所定のしきい値以下となった場合には(S30:NO)、S30において肯定判断がなされる(S30:YES)。この場合、コントローラー61は、バーナ12A〜12Cでの燃焼を停止させて(S65)、S10へと戻る。S65では、切替電磁弁37A〜37Cを全て閉じる。また、排気及び放熱のために所定時間の間はファンモータ20の駆動を継続してから、ファンモータ20を停止させる。
次に、上記S45のフィードバック温度制御について説明する。フィードバック温度制御を開始すると、コントローラー61は、図5に示すように、まず、出湯温度が設定温度よりも低いか否かを判断する(S110)。S110において出湯温度が設定温度よりも低いと判断された場合は(S110:YES)、出湯温度を上昇させるため、コントローラー61は、アウトプット増大制御を実行する(S120)。S120のアウトプット増大制御は、図6に示すような処理となる。
アウトプット増大制御を開始すると、コントローラー61は、図6に示すように、現燃焼段の最大アウトプットに到達済みか否かを判断する(S210)。S210においては、現燃焼段のまま、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を調節するだけで、更にアウトプットを増大させる余地がある場合には否定判断がなされる(S210:NO)。この場合、コントローラー61は、アウトプットが増大するように、ファン21の回転数を調整し、ガス比例制御弁36の開度を調整して(S220)、アウトプット増大制御を終了する。
一方、S210において、現燃焼段のまま、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を調節しても、それだけでは更にアウトプットを増大させることができない場合には肯定判断がなされる(S210:YES)。この場合、コントローラー61は、フラグF1をオンにして(S260)、燃焼段を1段上げることを記憶する。そして、コントローラー61は、燃焼段をN段からN+1段へ変更する(S270)。S270においては、現燃焼段が1段であれば2段に変更され、現燃焼段が2段であれば3段に変更され、現燃焼段が3段であれば4段に変更される。
なお、図示は省略するが、S210で肯定判断がなされた場合であっても、現燃焼段が4段の場合は、それ以上燃焼段を上げることはできない。よって、その場合はS260,S270,及びS220を実行することなく、アウトプット増大制御を終了することで、現状のアウトプットを維持すればよい。
S270を終えた場合は、上述のS220へと進む。これにより、S270によって1段上げられた燃焼段において、アウトプットが増大するように、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度が調整される(S220)。S220を終えたら、アウトプット増大制御を終了する。
以上のようにしてアウトプット増大制御を終了したら、図5におけるS120を終えたことになるので、その場合は、図5に示すフィードバック温度制御を終了する。
さて、図5に示すS110において出湯温度が設定温度以上であると判断された場合(S110:NO)、コントローラー61は、出湯温度が設定温度よりも高いか否かを判断する(S130)。S130において出湯温度が設定温度よりも高いと判断された場合は(S130:YES)、出湯温度を下降させるため、アウトプット減少制御を実行する(S140)。S140のアウトプット減少制御は、図7に示すような処理となる。
アウトプット減少制御を開始すると、コントローラー61は、図7に示すように、現燃焼段の最小アウトプットに到達済みか否かを判断する(S310)。S310においては、現燃焼段のまま、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を調節するだけで、更にアウトプットを減少させる余地がある場合には否定判断がなされる(S310:NO)。この場合、コントローラー61は、アウトプットが減少するように、ファン21の回転数を調整し、ガス比例制御弁36の開度を調整して(S320)、アウトプット減少制御を終了する。
一方、S310において、現燃焼段のまま、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を調節しても、それだけでは更にアウトプットを減少させることができない場合には肯定判断がなされる(S310:YES)。この場合、コントローラー61は、フラグF1がオンか否かを判断する(S340)。
S340において、フラグF1がオフである場合は(S340:NO)、アウトプット増大制御の中でS260〜S270が実行されていないことがわかる。そこで、この場合、コントローラー61は、燃焼段をN段からN−1段に変更する(S370)。S370においては、現燃焼段が4段であれば3段に変更され、現燃焼段が3段であれば2段に変更され、現燃焼段が2段であれば1段に変更される。
なお、図示は省略するが、S310で肯定判断がなされた場合であっても、現燃焼段が1段の場合は、それ以上燃焼段を下げることはできない。よって、その場合はS340,S370,及びS320を実行することなく、アウトプット減少制御を終了することで、現状のアウトプットを維持すればよい。
S370を終えた場合は、上述のS320へと進む。これにより、S370によって1段下げられた燃焼段において、アウトプットが減少するように、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度が調整される(S320)。S320を終えたら、アウトプット減少制御を終了する。
S340において、フラグF1がオンである場合は(S340:YES)、アウトプット増大制御の中でS260〜S270が実行されていることがわかる。この場合、S270が実行されて燃焼段が1段上げられたにもかかわらず、現段階では、燃焼段を1段下げる必要が生じていることになる。よって、この事実から、コントローラー61は、上述のような調整不能範囲が生じていることを認識し、その場合はS370,及びS320を実行することなく、アウトプット減少制御を終了することで、現状のアウトプットを維持する。
以上のようにしてアウトプット減少制御を終了したら、図5におけるS140を終えたことになるので、その場合は、図5に示すフィードバック温度制御を終了する。
図5に示すS130において、出湯温度が設定温度以下と判断された場合は(S130:NO)、出湯温度と設定温度が一致していることを意味するので、その場合は、フラグF1をオフにして(S150)、図5に示すフィードバック温度制御を終了する。なお、ここでいう「出湯温度と設定温度が一致している」とは、両者の温度差が所定の誤差範囲内(例えば±1℃以内。)に収まっているという意味であり、両者の温度差が完全に0であるという意味ではない。
以上説明したような給湯処理が実行された場合、給湯器1が図3に示すA点で作動しようとしたにもかかわらず、上述のような調整不能範囲が生じていることに起因して、給湯器1がB点で作動する状況になると、アウトプットが過小となるので、図5のS120(詳しくは図6に示すアウトプット増大制御。)が実行される。これにより、給湯器1としては、作動状態をA点からC点側へ変動させようとするが、実際には、給湯器1の作動状態はB点からD点側へ変動することになる。
その後、給湯器1は作動状態がD点に達すると、給湯器1としては作動状態がC点に達したと認識しているので、図6のS210で肯定判断がなされ、S260でフラグF1がオンにされて、S270で燃焼段が1段上げられる。これにより、給湯器1はE点で作動する状態に移行する。
給湯器1の作動状態がE点へ移行すると、給湯器1は、A点よりも大きいアウトプットが得られる状態となる。そのため、アウトプットが過大になり、この状態においては出湯温度が設定温度よりも高くなるので、図5のS140(詳しくは図7に示すアウトプット減少制御。)が実行される。これにより、給湯器1の作動状態はE点からF点側へ変動することになる。
その後、給湯器1の作動状態がF点に達しても、給湯器1は依然としてA点よりも大きいアウトプットが得られる状態にある。そのため、図7のS310で肯定判断がなされる。但し、この時点では、先に実行したS260においてフラグF1がオンにされているので、給湯器1は、上述のような調整不能範囲が生じていることを認識し、S340で肯定判断がなされ、これにより、燃焼段の切り替え(S370)を実施しない。その結果、給湯器1はF点で作動する状態を継続する。つまり、給湯器1は、調整不能範囲が生じていることを認識した場合にF点で作動する状態を継続し、これにより、燃焼段の切り替えにおいてハンチングが発生するのを抑制する。
なお、給湯器1の作動状態がD点からE点へ移行する際には、過渡的に出湯温度と設定温度とが一致する状態になる可能性があるので、S150では、上述のような過渡的と想定される期間よりも十分に長い期間にわたって、出湯温度と設定温度とが一致する状態になっていた場合に、フラグF1をオフにするように構成するとよい。
なお、以上説明した第一実施形態においては、コントローラー61が図5に示すフィードバック温度制御を実行することにより、本明細書でいうフィードバック制御部として機能する。また、コントローラー61が図6のS210,及びS260、図7のS310,及びS340を実行することにより、本明細書でいう判定部として機能する。さらに、コントローラー61が図7のS310で肯定判断を行って、S370,S320をスキップすることにより、本明細書でいうフィードバック制御禁止部として機能する。
(2)第二実施形態
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態は、第一実施形態で例示した給湯処理の一部を変更しただけなので、第一実施形態との相違点を中心に詳述し、第一実施形態と同様な部分に関しては、その詳細な説明を省略する。
[給湯処理]
以下、本実施形態の給湯器1において実行される給湯処理について、図8〜図11に基づいて説明する。なお、図8〜図11に示す各処理は、図4〜図7に示す各処理に対応しており、対応する処理において同等な処理ステップに対しては、同一の符号を付してある。
図8に示す給湯処理と図4に示す給湯処理との相違点は、図4に示す給湯処理ではS50においてフラグF1をオフにしていたのに対し、図8に示す給湯処理ではS50に代わるS51においてフラグF1,F2をオフにしている点にある。なお、詳しくは後述するが、フラグF1は、図10に示すアウトプット増大制御において燃焼段の切り替えが行われる場合にオンとされるフラグであり、この点は第一実施形態と同様である。一方、フラグF2は、図11に示すアウトプット減少制御において燃焼段の切り替えが行われる場合にオンとされるフラグであり、これは第一実施形態にはない構成である。
図9に示すフィードバック温度制御と図5に示すフィードバック温度制御との相違点は、図5に示すフィードバック温度制御ではS150においてフラグF1をオフにしていたのに対し、図9に示すフィードバック温度制御ではS150に代わるS151においてフラグF1,F2をオフにしている点にある。
図10に示すアウトプット増大制御と図6に示すアウトプット増大制御との相違点は、図6に示すアウトプット増大制御にはない処理ステップS230,S240,及びS250が追加されている点にある。
以下、本実施形態におけるアウトプット増大制御について、上記相違点を中心に説明する。アウトプット増大制御を開始すると、コントローラー61は、図10に示すように、現燃焼段の最大アウトプットに到達済みか否かを判断する(S210)。S210においては、第一実施形態同様に、現燃焼段のまま、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を調節しても、それだけでは更にアウトプットを増大させることができない場合に肯定判断がなされる(S210:YES)。この場合、コントローラー61は、現燃焼段Nの最大出湯温度TNmaxを記憶する(S230)。
続いて、コントローラー61は、フラグF2がオンか否かを判断する(S240)。詳しくは後述するが、S240においてフラグF2がオフの場合は(S240:NO)、図11に示すアウトプット減少制御において燃焼段を1段下げる切り替えが行われていない、と判断することができる。そこで、この場合、コントローラー61は、第一実施形態と同様に、S260,S270,及びS220を実行し、その中で燃焼段を1段上げる切り替えを行った上で、アウトプット増大制御を終了する。
一方、S240においてフラグF2がオンの場合(S240:YES)、コントローラー61は、現燃焼段Nの最大出湯温度TNmaxと一つ上の燃焼段N+1の最小出湯温度T(N+1)minとに基づき、設定温度が(TNmax+T(N+1)min)/2よりも小か否かを判定する(S250)。
現燃焼段Nの最大出湯温度TNmaxは、上述のS230において記憶される値である。一つ上の燃焼段N+1の最小出湯温度T(N+1)minは、後述する図11のS330において記憶される値である。よって、(TNmax+T(N+1)min)/2は、現燃焼段Nの最大出湯温度TNmaxと一つ上の燃焼段N+1の最小出湯温度T(N+1)minとの中間値(相加平均値)である。
S250において、設定温度が(TNmax+T(N+1)min)/2以上である場合(S250:NO)、設定温度は、最大出湯温度TNmaxと最小出湯温度T(N+1)minとの中間値に一致する値か、最大出湯温度TNmaxよりも最小出湯温度T(N+1)minに近い値とされている、と判断することができる。そこで、この場合、コントローラー61は、第一実施形態と同様に、S260,S270,及びS220を実行し、その中で燃焼段を1段上げる切り替えを行った上で、アウトプット増大制御を終了する。
一方、設定温度が(TNmax+T(N+1)min)/2より小である場合(S250:YES)、設定温度は、最小出湯温度T(N+1)minよりも最大出湯温度TNmaxに近い値とされている、と判断することができる。そこで、この場合、コントローラー61は、S260,S270,及びS220を実行せず、燃焼段を1段上げる切り替えを行わないまま、アウトプット増大制御を終了する。
図11に示すアウトプット減少制御と図7に示すアウトプット減少制御との相違点は、図7に示すアウトプット増大制御にはない処理ステップS330,S350,及びS360が追加されている点にある。
以下、本実施形態におけるアウトプット減少制御について、上記相違点を中心に説明する。アウトプット減少制御を開始すると、コントローラー61は、図11に示すように、現燃焼段の最小アウトプットに到達済みか否かを判断する(S310)。S310においては、第一実施形態同様に、現燃焼段のまま、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を調節しても、それだけでは更にアウトプットを減少させることができない場合に肯定判断がなされる(S310:YES)。この場合、コントローラー61は、現燃焼段Nの最小出湯温度TNminを記憶する(S330)。
続いて、コントローラー61は、フラグF1がオンか否かを判断する(S340)。S340においてフラグF1がオフの場合は(S340:NO)、図10に示すアウトプット増大制御において燃焼段を1段上げる切り替えが行われていない、と判断することができる。そこで、この場合、コントローラー61は、フラグF2をオンにして(S360)、燃焼段を1段下げることを記憶する。そして、コントローラー61は、燃焼段をN段からN−1段へ変更する(S370)。
S370を終えた場合はS320へと進む。これにより、S370によって1段下げられた燃焼段において、アウトプットが減少するように、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度が調整される(S320)。S320を終えたら、アウトプット増大制御を終了する。
一方、S340においてフラグF1がオンの場合(S340:YES)、コントローラー61は、現燃焼段Nの最小出湯温度TNminと一つ下の燃焼段N−1の最大出湯温度T(N-1)maxとに基づき、設定温度が(T(N-1)max+TNmin)/2よりも小か否かを判定する(S350)。
現燃焼段Nの最小出湯温度TNminは、上述のS330において記憶される値である。一つ下の燃焼段N−1の最大出湯温度T(N-1)maxは、上述した図10のS230において記憶される値である。よって、(T(N-1)max+TNmin)/2は、現燃焼段Nの最小出湯温度TNminと一つ下の燃焼段N−1の最大出湯温度T(N-1)maxとの中間値(相加平均値)である。
S350において、設定温度が(T(N-1)max+TNmin)/2未満である場合(S350:NO)、設定温度は、最小出湯温度TNminよりも最大出湯温度T(N-1)maxに近い値とされている、と判断することができる。そこで、この場合、コントローラー61は、上述のS360,S370,及びS320を実行し、その中で燃焼段を1段下げる切り替えを行った上で、アウトプット減少制御を終了する。
一方、設定温度が(T(N-1)max+TNmin)/2以上である場合(S350:YES)、設定温度は、最大出湯温度T(N-1)maxよりも最小出湯温度TNminに近い値とされている、と判断することができる。そこで、この場合、コントローラー61は、S360,S370,及びS320を実行せず、燃焼段を1段下げる切り替えを行わないまま、アウトプット減少制御を終了する。
以上説明したような給湯処理が実行された場合、給湯器1が図3に示すA点で作動しようとしたにもかかわらず、上述のような調整不能範囲が生じていることに起因して、給湯器1がB点で作動する状況になると、アウトプットが過小となるので、図9のS120(詳しくは図10に示すアウトプット増大制御。)が実行される。これにより、給湯器1としては、作動状態をA点からC点側へ変動させようとするが、実際には、給湯器1の作動状態はB点からD点側へ変動することになる。
その後、給湯器1は作動状態がD点に達すると、給湯器1としては作動状態がC点に達したと認識しているので、図10のS210で肯定判断がなされる。この場合、S230で現燃焼段Nの最大出湯温度TNmaxが記憶され、最初はフラグF2がオフなので(S240:NO)、S260でフラグF1がオンにされて、S270で燃焼段が1段上げられる。これにより、給湯器1はE点で作動する状態に移行する。
給湯器1の作動状態がE点へ移行すると、給湯器1は、A点よりも大きいアウトプットが得られる状態となる。そのため、アウトプットが過大になり、この状態においては出湯温度が設定温度よりも高くなるので、図9のS140(詳しくは図11に示すアウトプット減少制御。)が実行される。これにより、給湯器1の作動状態はE点からF点側へ変動することになる。
その後、給湯器1の作動状態がF点に達しても、給湯器1は依然としてA点よりも大きいアウトプットが得られる状態にある。そのため、図11のS310で肯定判断がなされる。この場合、S330で現燃焼段Nの最小出湯温度TNminが記憶される。続いて、この時点では、先に実行したS260においてフラグF1がオンにされているので、給湯器1は、上述のような調整不能範囲が生じていることを認識する。この場合、給湯器1は、S350において、現燃焼段Nの最小出湯温度TNminと、一つ下の燃焼段N−1の最大出湯温度T(N-1)maxとでは、どちらの温度が設定温度に近いのかを判断する。
S350において、現燃焼段Nの最小出湯温度TNminと一つ下の燃焼段N−1の最大出湯温度T(N-1)maxとで、どちらも設定温度との温度差は同じか、現燃焼段Nの最小出湯温度TNminの方が設定温度に近いと判断された場合は(S350:YES)、燃焼段の切り替え(S370)を実施しない。その結果、給湯器1はF点で作動する状態を継続する。つまり、給湯器1は、調整不能範囲が生じていることを認識した場合に、S350において、現燃焼段Nの最小出湯温度TNminと一つ下の燃焼段N−1の最大出湯温度T(N-1)maxとで、一つ下の燃焼段N−1の最大出湯温度T(N-1)maxの方が設定温度に近いとの判断がなされない限り、F点で作動する状態を継続し、これにより、燃焼段の切り替えにおいてハンチングが発生するのを抑制する。
一方、S350において、一つ下の燃焼段N−1の最大出湯温度T(N-1)maxの方が設定温度に近いとの判断がなされた場合に限り、S360でフラグF2がオンにされて、S370で燃焼段が1段下げられる。これにより、給湯器1はG点で作動する状態に移行する。
給湯器1がG点で作動する状況になると、アウトプットが過小となるので、図9のS120(詳しくは図10に示すアウトプット増大制御。)が実行される。これにより、給湯器1の作動状態はG点からD点側へ変動することになる。
その後、給湯器1は作動状態がD点に達すると、給湯器1としては作動状態がC点に達したと認識しているので、図10のS210で肯定判断がなされる。この場合、S230で現燃焼段Nの最大出湯温度TNmaxが記憶され、今回はフラグF2がオンとなっているので(S240:YES)、ここでも。給湯器1は、上述のような調整不能範囲が生じていることを認識する。この場合、給湯器1は、S250において、現燃焼段Nの最大出湯温度TNmaxと、一つ上の燃焼段N+1の最小出湯温度T(N+1)minとでは、どちらの温度が設定温度に近いのかを判断する。
S250においては、先に実行したS350と同等な判断を行っているだけなので、今回は、現燃焼段Nの最大出湯温度TNmaxの方が設定温度に近いと判断されることになる(S250:YES)。そのため、燃焼段の切り替え(S370)を実施しない。その結果、給湯器1はD点で作動する状態を継続し、これにより、燃焼段の切り替えにおいてハンチングが発生するのを抑制する。
以上のように、第二実施形態においては、上述のような調整不能範囲が生じていることを認識した場合に、調整不能範囲を挟んで両側にある燃焼段のうち、より設定温度に近くすることが可能な燃焼段への切り替えを行ってから、その燃焼段で作動状態を継続する。この点で、調整不能範囲を挟んで両側にある燃焼段のうち、どちらの燃焼段が設定温度に近いのかを判断することなく、一つ上の燃焼段の最小アウトプットで作動状態を継続するように構成してあった第一実施形態とは相違する。
したがって、第二実施形態の場合は、より設定温度に近い出湯温度にできる、という点で第一実施形態よりも有益である。その一方、第一実施形態の場合は、一つ上の燃焼段で作動状態を継続するので、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を低めに抑えることができる。一般に、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を低めに抑える方が、給湯器1の作動状態はより安定度が高いので、その観点では第一実施形態の構成も有益である。よって、第一実施形態と第二実施形態の構成のいずれを採用するかは、いずれの利点を重視するかを勘案して任意に選択すればよい。
なお、以上説明した第二実施形態においては、コントローラー61が図9に示すフィードバック温度制御を実行することにより、本明細書でいうフィードバック制御部として機能する。また、コントローラー61が図10のS210,S230,S240,S250,及びS260、図11のS310,S330,S340,S350,及びS360を実行することにより、本明細書でいう判定部として機能する。さらに、コントローラー61が図10のS210で肯定判断を行って、S260,S270,及びS220をスキップすること、及び図11のS310で肯定判断を行って、S360,S370,S320をスキップすることにより、本明細書でいうフィードバック制御禁止部として機能する。
(3)その他の実施形態
以上、給湯器について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本発明の一態様として例示されるものに過ぎない。すなわち、本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態では、調整不能範囲を挟んで両側にある燃焼段のうち、上の燃焼段の最小アウトプットで作動状態を継続する例(第一実施形態)と、より設定温度に近くすることが可能な燃焼段で作動状態を継続する例(第二実施形態)を示したが、これら以外の態様も考え得る。例えば、調整不能範囲を挟んで両側にある燃焼段のうち、下の燃焼段の最大アウトプットで作動状態を継続するように構成してもよい。
(4)補足
なお、以上説明した例示的な実施形態から、本明細書で説明した給湯器は、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよいことが把握できる。
まず、本明細書で説明した給湯器において、判定部は、フィードバック制御部による制御の際に、i番目の燃焼段及びi+1番目の燃焼段のうち、いずれか一方の燃焼段から他方の燃焼段へ切り替えた後に、他方の燃焼段から一方の燃焼段への切り替えが必要となった場合に、調整不能範囲が生じていると判定してもよい。
このように構成された給湯器によれば、調整不能範囲が生じている場合には、上記のような手法により、調整不能範囲が生じていることを適切に判定することができる。
また、本明細書で説明した給湯器において、判定部によって調整不能範囲が生じていると判定された場合に、フィードバック制御禁止部は、他方の燃焼段から一方の燃焼段への切り替えを行わないことにより、実際の燃焼出力が、i番目の燃焼段における燃焼出力の上限値、又はi+1番目の燃焼段における燃焼出力の下限値のいずれかで固定されるように、切替弁、比例制御弁及び送風機を制御してもよい。
このように構成された給湯器によれば、燃焼出力がi番目の燃焼段における燃焼出力の上限値よりも小さい出力で固定される場合や、燃焼出力がi+1番目の燃焼段における燃焼出力の下限値よりも大きい出力で固定される場合に比べ、より設定温度に近い出湯温度を得ることができる。
また、本明細書で説明した給湯器において、判定部によって調整不能範囲が生じていると判定された場合に、フィードバック制御禁止部は、実際の燃焼出力が、i+1番目の燃焼段における燃焼出力の下限値で固定されるように、切替弁、比例制御弁及び送風機を制御してもよい。
このように構成された給湯器によれば、燃焼出力がi+1番目の燃焼段における燃焼出力の下限値で固定される。そのため、燃焼出力がi番目の燃焼段における燃焼出力の上限値で固定される場合に比べ、送風機の回転数、及び比例制御弁の開度を低めに抑えることができる。これにより、給湯器の作動状態をより安定度の高い作動状態にすることができる。
また、本明細書で説明した給湯器において、判定部によって調整不能範囲が生じていると判定された場合に、フィードバック制御禁止部は、i番目の燃焼段における燃焼出力の上限値、及びi+1番目の燃焼段における燃焼出力の下限値のうちで、いずれが必要燃焼出力に近い値かを判定し、実際の燃焼出力が、必要燃焼出力に近い値で固定されるように、切替弁、比例制御弁及び送風機を制御してもよい。
このように構成された給湯器によれば、必要な燃焼出力がi番目の燃焼段の上限値に近い場合、及び必要な燃焼出力がi+1番目の燃焼段の下限値に近い場合、いずれの場合においても、より設定温度に近い出湯温度を得ることができる。