JP6513523B2 - 油圧式オートテンショナ - Google Patents

油圧式オートテンショナ

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Description

この発明は、オルタネータやウォータポンプ、エアコンディショナのコンプレッサ等の補機を駆動するベルトの張力調整用に用いられる油圧式オートテンショナに関する。
二酸化炭素の排出量を削減するため、車両の停止時にエンジンを停止し、アクセルペダルの踏み込みによる車両の発進時にエンジンを瞬時に始動させるISG(Integrated Starter Generator)のアイドルストップ機構が搭載されたエンジンが提案されている。
図10は、エンジン補機駆動とエンジン始動を両立するISGのアイドルストップ機構が搭載されたエンジンのベルト伝動装置を示し、クランクシャフト51に取り付けられたクランクシャフトプーリPと、ISGのスタータ・ジェネレータ52の回転軸に取り付けられたスタータ・ジェネレータプーリPと、ウォータポンプ等の補機53の回転軸に取り付けられた補機プーリP間にベルト54を掛け渡し、エンジンの通常運転時、図10(a)に示すように、クランクシャフトプーリPの矢印で示す方向の回転によりスタータ・ジェネレータ52および補機53を駆動し、スタータ・ジェネレータ52をジェネレータとして機能させるようにしている。
一方、スタータ・ジェネレータ52の駆動によるエンジンの始動時、図10(b)に示すように、スタータ・ジェネレータプーリPの矢印で示す方向の回転によりクランクシャフトプーリPを回転させて、スタータ・ジェネレータ52をスタータとして機能させるようにしている。
上記のようなベルト伝動装置においては、クランクシャフトプーリPとスタータ・ジェネレータプーリPにわたるベルト部54aにテンションプーリ55を設け、そのテンションプーリ55を回転自在に支持する揺動可能なプーリアーム56に油圧式オートテンショナAの調整力を付与してテンションプーリ55がベルト54を押圧する方向にプーリアーム56を付勢し、ベルト54の張力変化を油圧式オートテンショナAにより吸収するようにしている。
油圧式オートテンショナAとして、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。この油圧式オートテンショナにおいては、シリンダの底面上に立設されたバルブスリーブ内にロッドの下端部を摺動自在に挿入して、バルブスリーブ内に圧力室を形成し、上記ロッドの上端部に設けられたばね座とシリンダの底面間にリターンスプリングを組み込んで、ロッドとバルブスリーブを伸長する方向に付勢している。
また、シリンダの内周とバルブスリーブの外周間に密閉されたリザーバ室を設け、そのリザーバ室の下部と上記圧力室の下部をシリンダの底面部に形成された油通路で連通し、バルブスリーブの下端部内にはチェックバルブを組込み、ロッドに押込み力が負荷され、圧力室の圧力がリザーバ室の圧力より高くなった際、チェックバルブを閉鎖して油通路と圧力室の連通を遮断するようにしている。
上記の構成からなる油圧式オートテンショナは、ばね座の上面に設けられた連結片を図10(a)に示すエンジンブロックEに回動自在に連結し、シリンダの下面に設けられた連結片をプーリアーム56に連結して、ベルト54からテンションプーリ55およびプーリアーム56を介してロッドに押込み力が負荷された際に、チェックバルブを閉じ、圧力室内に封入されたオイルをバルブスリーブとロッドの摺動面間に形成されたリーク隙間に流動させ、その流動時のオイルの粘性抵抗により圧力室内に油圧ダンパ力を発生させて上記押込み力を緩衝するようにしている。
特開2009−275757号公報
ところで、上記従来の油圧式オートテンショナにおいては、ロッドに押込み力が負荷された際、圧力室内のオイルをバルブスリーブとロッドの摺動面間に形成された単一のリーク隙間からリークさせる構成であるため、エンジンの通常運転時およびスタータ・ジェネレータ52でのエンジン始動時のそれぞれにおいてベルト54に適正な張力を付与することができない。
すなわち、リーク隙間をエンジンの通常運転時におけるベルトの張力変動を吸収可能な大きさに設定すると、リーク隙間が大きいため、スタータ・ジェネレータ52の駆動によるエンジンの始動時にロッドが大きく押し込まれてベルト54に弛みが生じ、ベルト54とプーリP乃至Pの接触部で滑りが生じ、ベルト寿命の低下やスタータ・ジェネレータ52によるエンジン始動不良が生じる可能性がある。
一方、リーク隙間をスタータ・ジェネレータ52の駆動によるエンジンの始動時におけるベルト54の張力変動を吸収可能な大きさに設定すると、リーク隙間が小さいために、エンジンの通常運転時におけるベルト54の張力が高くなり過ぎてベルト54が過張力となり、ベルト54やプーリP乃至Pを回転自在に支持する軸受が損傷し易くなり、燃料の消費が多くなるという問題が生じる。
この発明の課題は、エンジンの通常運転時およびスタータ・ジェネレータでのエンジン始動時のそれぞれにおいて適正な張力をベルトに付与することができるようにした組立ての容易な油圧式オートテンショナを提供することである。
上記の課題を解決するために、この発明においては、オイルが入れられた底付きシリンダの底面上にバルブスリーブを立設し、そのバルブスリーブの内部にロッドの下端部を摺動自在に挿入してバルブスリーブ内に圧力室を設け、前記ロッドの上部に設けられたばね座とシリンダの底面間に、ばね座とシリンダを伸張する方向に付勢するリターンスプリングを組込み、前記シリンダの内周とバルブスリーブの外周間に形成されたリザーバ室の下部と前記圧力室の下部を連通する油通路を形成し、前記バルブスリーブの下端部内に前記圧力室の圧力がリザーバ室内の圧力より高くなると閉鎖して圧力室と油通路の連通を遮断する第1チェックバルブを設け、前記ばね座を介してロッドに押込み力が負荷された際に第1チェックバルブを閉じ、圧力室内のオイルを、その圧力室からリザーバ室にリークさせて圧力室内のオイルによる油圧ダンパ作用によってロッドに負荷される押込み力を緩衝するようにした油圧式オートテンショナにおいて、前記ロッドの外側に、そのロッドの外径面および前記バルブスリーブの内径面に沿って摺動可能な筒状のプランジャを嵌合して、そのプランジャとロッドの摺動面間に第1リーク隙間を設け、かつ、プランジャとバルブスリーブの摺動面間に、前記第1リーク隙間より流路抵抗の大きな第2リーク隙間を設け、前記ロッドと前記プランジャの相互間に、前記圧力室内の圧力上昇に伴うプランジャの上昇時に前記第1リーク隙間を閉鎖する第2チェックバルブを設け、前記ロッドの下端部に設けられたリング溝に内周に歯を有する歯付き座金を取り付けて前記プランジャを抜止めし、前記プランジャをバルブスプリングにより前記歯付き座金に向けて付勢した構成を採用したのである。
上記の構成からなる油圧式オートテンショナにおいて、ISGのアイドルストップ機構が搭載されたエンジンの補機駆動用ベルト伝動装置におけるベルトの張力調整に際しては、エンジンブロック等のテンショナ取付け対象にロッド先端のばね座を連結し、シリンダの下端部をプーリアームに連結して、そのプーリアームに支持されたテンションプーリがクランクシャフトプーリとスタータ・ジェネレータプーリ間のベルト部を押圧する方向にプーリアームを付勢し、ベルトを緊張させる。
上記のようなベルト伝動装置への油圧式オートテンショナの組込み状態において、エンジンの通常運転状態でベルトの張力が強くなり、そのベルトからロッドに押込み力が負荷されると、圧力室内の圧力が高くなり、第1チェックバルブが閉鎖して、圧力室内のオイルは流路抵抗の小さな第1リーク隙間からリザーバ室にリークし、第1リーク隙間を流れるオイルの粘性抵抗により圧力室内に油圧ダンパ力が発生し、その油圧ダンパ力によって上記押込み力が緩衝され、ベルトは適正張力に保持される。
一方、スタータ・ジェネレータの駆動によるエンジン始動時、ベルトの張力は急激に大きくなって圧力室の圧力が急激に上昇する。この時、第1チェックバルブが閉鎖し、その第1チェックバルブの閉鎖後、プランジャが上昇して第2チェックバルブが閉鎖し、第1リーク隙間が閉塞される。
このため、圧力室のオイルは第2リーク隙間からリザーバ室にリークする。その第2リーク隙間の流路抵抗は第1リーク隙間より大きいため、圧力室での圧力低下が少なく、圧力室での油圧ダンパ作用によりロッドの押し込みが抑制されてベルトはクランクシャフトを駆動するのに必要なベルト張力に保持され、ベルトとプーリ間のスリップが防止される。
ここで、第2チェックバルブとして、ロッドの前記プランジャの上端から外部に位置する大径軸部の下端に球面状のバルブシートを設け、プランジャの上部内径面に上記バルブシートに対して着座可能なシート面を設けた構成からなるものを採用することができる。
アイドルストップ機構が搭載されたエンジンにおいては、燃費向上の要求からアイドリングストップの頻度が増加する傾向にある。この場合、スタータ・ジェネレータの始動の都度、プランジャが上昇してシート面がバルブシートに衝撃的に衝突するため、バルブシートおよびプランジャのシート面のそれぞれを表面硬化処理して、強度を高め、耐久性の向上を図るのがよい。
上記表面硬化処理として、ダイヤモンドライクカーボン処理(DLC処理)、硬質皮膜のコーティング処理、ショットピーニング、WPC処理を採用することができる。
この発明に係る油圧式オートテンショナにおいて、プランジャをロッドの下端部に設けられた抜止め用の歯付き座金に向けて付勢するバルブスプリングとして、コイルばね、皿ばね、波形座金、ウェーブスプリングを採用することができる。
この発明においては、上記のように、エンジンの通常運転時、圧力室内のオイルは流路抵抗の小さな第1リーク隙間からリザーバ室にリークし、一方、スタータ・ジェネレータでのエンジン始動時、圧力室内のオイルは流路抵抗の大きな第2リーク隙間からリザーバ室にリークするため、エンジンの通常運転時およびスタータ・ジェネレータでのエンジン始動時のそれぞれにおいてベルトに適正な張力を付与することができる。
また、ロッドの下端部に設けられたリング溝に止め輪を取り付けてプランジャを抜止めすることができるが、その止め輪の取り付けに際し、プランジャを押し込んでバルブスプリングを収縮保持し、ロッドの外周囲より取り付けてプランジャを抜止めする操作を必要とするため取付けに手間がかかるが、この発明では、内周に歯を有する内歯形の歯付き座金を取り付けてプランジャを抜止めしているため、ロッドの端面側から歯付き座金を軽圧入することによって取り付けとすることができ、油圧式オートテンショナの組立ての容易化を図ることができる。
この発明に係る油圧式オートテンショナの実施の形態を示す縦断面図 図1の第1リーク隙間および第2リーク隙間の形成部位を拡大して示す断面図 図2のIII−III線に沿った断面図 第2リーク隙間からのオイルのリーク状態を示す断面図 プランジャ抜止め用歯付き座金の取付け前の状態を示す断面図 バルブスプリングの他の例を示す断面図 バルブスプリングのさらに他の例を示す断面図 バルブスプリングのさらに他の例を示す断面図 実施形態と従来の油圧式オートテンショナの反力特性の測定例を示すグラフ アイドルストップ機構が搭載されたエンジンのベルト伝動装置を示し、(a)はエンジンの通常運転状態を示す正面図、(b)はスタータ・ジェネレータによるエンジンの始動状態を示す正面図
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、シリンダ10は底部を有し、その底部の下面に図10のプーリアーム56に連結される連結片11が設けられている。
連結片11には、一側面から他側面に貫通する軸挿入孔11aが設けられ、その軸挿入孔11a内に筒状の支点軸11bとその支点軸11bを回転自在に支持する滑り軸受11cとが組み込まれ、上記支点軸11b内に挿通されてプーリアーム56にねじ係合されるボルトの締め付けにより支点軸11bが固定され、連結片11がプーリアーム56に回動自在に取付けられている。
シリンダ10の底面には、バルブスリーブ嵌合孔12が設けられ、そのバルブスリーブ嵌合孔12内に鋼製のバルブスリーブ13の下端部が圧入されている。バルブスリーブ13内にはロッド14の下部が摺動自在に挿入され、そのロッド14の挿入によって、バルブスリーブ13内には上記ロッド14の下側に圧力室15が設けられている。
ロッド14のシリンダ10の外部に位置する上端部にはばね座16が設けられ、そのばね座16とシリンダ10の底面間に組込まれたリターンスプリング17は、シリンダ10とロッド14が相対的に伸張する方向に付勢している。
ばね座16の上端にはエンジンブロックに連結される連結片18が設けられている。連結片18には一側面から他側面に貫通するスリーブ挿入孔18aが形成され、そのスリーブ挿入孔18a内にスリーブ18bと、そのスリーブ18bを回転自在に支持する滑り軸受18cとが組み込まれ、上記スリーブ18b内に挿通されるボルトによって連結片18がエンジンブロックに回転自在に連結される。
ばね座16は成形品からなり、その成形時にシリンダ10の上部外周を覆う筒状のダストカバー20と、リターンスプリング17の上部を覆う筒状のスプリングカバー21とが同時に成形される。
ここで、ばね座16は、アルミのダイキャスト成形品であってもよく、あるいは、熱硬化性樹脂等の樹脂の成形品であってもよい。
スプリングカバー21は、ばね座16の成形時にインサート成形される筒体22によって外周の全体が覆われている。筒体22は、鋼板のプレス成形品からなる。
シリンダ10の上側開口部内にはシール部材としてのオイルシール23が組込まれ、そのオイルシール23の内周が筒体22の外周面に弾性接触して、シリンダ10の上側開口を閉塞し、シリンダ10の内部に充填されたオイルの外部への漏洩を防止し、かつ、ダストの内部への侵入を防止している。
上記オイルシール23の組み込みにより、シリンダ10とバルブスリーブ13との間に密閉されたリザーバ室24が形成される。リザーバ室24と圧力室15は、バルブスリーブ嵌合孔12とバルブスリーブ13の嵌合面間に形成された油通路25およびバルブスリーブ嵌合孔12の底面中央部に形成された円形凹部からなる油溜り26を介して連通している。
バルブスリーブ13の下端部内には第1チェックバルブ27が組み込まれている。第1チェックバルブ27は、バルブスリーブ13の下端部内に圧入されたバルブシート27aの弁孔27bを圧力室15側から開閉する鋼製のチェックボール27cと、そのチェックボール27cを弁孔27bに向けて付勢するスプリング27dと、上記チェックボール27cの開閉量を規制するリテーナ27eとからなっている。
第1チェックバルブ27は、圧力室15内の圧力がリザーバ室24内の圧力より高くなると、チェックボール27cが弁孔27bを閉じ、圧力室15と油通路25の連通が遮断して、圧力室15内のオイルが油通路25を通ってリザーバ室24に流れるのを防止する。
図1および図2に示すように、ロッド14には筒状のプランジャ28が嵌合されている。プランジャ28は、ロッド14の外径面およびバルブスリーブ13の内周上部に形成された小径内径面13aに沿って摺動自在とされ、上記ロッド14とプランジャ28の摺動面間に円筒状の第1リーク隙間31が形成されている。また、プランジャ28とバルブスリーブ13の摺動面間に円筒状の第2リーク隙間32が設けられている。
第2リーク隙間32のすき間量は第1リーク隙間31のすき間量より小さく、そのすき間量の相違から、第2リーク隙間32の流路抵抗が第1リーク隙間31の流路抵抗より大きくなっている。
第1リーク隙間31および第2リーク隙間32のそれぞれは、圧力室15内のオイルがそれぞれのリーク隙間31、32に沿ってリークする際の粘性抵抗により圧力室15内に油圧ダンパ作用を生じさせるようになっている。
第1リーク隙間31は、オイルのリークによって生じる油圧ダンパ作用によって図10(a)に示すエンジンの通常運転時におけるベルト54の張力変動を吸収可能とする大きさに設定されている。一方、第2リーク隙間32は、図10(b)に示すスタータ・ジェネレータ52の駆動によるエンジン始動時にロッド14が急激に押し込まれることのない大きさに設定されている。
図2に示すように、ロッド14の下端部にはリング溝33が設けられ、そのリング溝33に取り付けられた歯付き座金34によってプランジャ28が抜止めされている。図2および図3に示すように、歯付き座金34は、内歯形であって内周に複数の歯34aを有し、隣接する歯34a間に形成された盗み部34bを介して圧力室15と第1リーク隙間31は常に連通する状態にある。
上記歯付き座金34は、図5に示すように、ロッド14にプランジャ28が嵌合された状態において、ロッド14の端面に対向配置した状態から押し込むことにより、複数の歯34aがロッド端面に対する当接により押し込み方向と逆の方向に弾性変形し、その歯34aがリング溝33と対向する位置まで歯付き座金34が押し込まれることにより歯34aが形状復元してリング溝33に係合するため、軽圧入する簡単な操作によって歯付き座金34を装着することができる。
図2に示すように、ロッド14とプランジャ28の相互間には、スタータ・ジェネレータ52の駆動によるエンジン始動時の圧力上昇時に第1リーク隙間31を閉塞する第2チェックバルブ35が設けられている。
第2チェックバルブ35は、ロッド14のプランジャ28の上端から外部に位置する上部に大径軸部14aを設け、その大径軸部14aの下端部に球面状のバルブシート35aを設け、一方、プランジャ28の上部内径面にシート面35bを形成し、圧力室15内の圧力によるプランジャ28の上昇時にバルブシート35aにシート面35bを着座させて第1リーク隙間31の上端開口を閉塞するようにしている。
ここで、シート面35bとしてテーパ面を示したが、シート面35bはテーパ面に限定されない。例えば、凸形の球面であってもよい。
また、実施の形態では、プランジャ28の上端側に第2チェックバルブ35を設けるようにしたが、プランジャ28の内部、あるいは、プランジャ28の下端側に第2チェックバルブ35を設けるようにしてもよい。
ロッド14のバルブシート35aおよびプランジャ28のシート面35bは表面硬化処理されて強度が高められている。表面硬化処理として、ここでは、DLC処理を施すようにしているが、そのDLC処理に代えて、硬質皮膜のコーティング処理を施し、あるいは、ショットピーニングを施すようにしてもよい。
プランジャ28の上部には外向きのフランジ29が設けられ、そのフランジ29とばね座16の対向面間にバルブスプリング37が組み込まれている。バルブスプリング37はプランジャ28をロッド14の下端部に取り付けられた前述の歯付き座金34に向けて付勢している。
バルブスプリング37として、図2ではコイルばねを採用しているが、図6に示すように、皿ばねであってもよく、あるいは、図7に示すように、波形座金であってもよい。さらに、図8に示すように、ウェーブスプリングであってもよい。波形座金を採用する場合は、図7に示すように、複数の波形座金37のそれぞれの重なり部間に平座金38を介在させるようにする。
図2に示すように、プランジャ28の外周下部には、下部が大径のリング状のテーパ溝39が設けられ、そのテーパ溝39内に抜止めリング40が取り付けられている。抜止めリング40は、自然状態での外径がプランジャ28の外径より大径とされて外周部がプランジャ28の外径面より外側に位置し、プランジャ28の内周上部に形成された上述の小径内径面13aの下端の段差部13bに対する当接によってプランジャ28およびロッド14がバルブスリーブ13の上端から上方に抜け出るのを防止する。
実施の形態で示す油圧式オートテンショナは上記の構成からなり、図10に示すアイドルストップ機構が搭載されたエンジンの補機駆動用ベルト伝動装置への組込みに際しては、シリンダ10の閉塞端に設けられた連結片11をプーリアーム56に連結し、かつ、ばね座16の連結片18をエンジンブロックに連結して、そのプーリアーム56に調整力を付与する。
上記のようなベルト54の張力調整状態において、エンジンの通常運転状態において、補機53の負荷変動等によってベルト54の張力が変化し、上記ベルト54の張力が弱くなると、リターンスプリング17の押圧によりシリンダ10とばね座16が伸張する方向に相対移動してベルト54の弛みが吸収される。
ここで、シリンダ10とばね座16が伸張する方向に相対移動するとき、圧力室15内の圧力はリザーバ室24内の圧力より低くなるため、第1チェックバルブ27が開放する。このため、リザーバ室24内のオイルは油通路25から油溜り26を通って圧力室15内にスムーズに流れ、シリンダ10とばね座16は伸張する方向にスムーズに相対移動してベルト54の弛みを直ちに吸収する。
一方、ベルト54の張力が強くなると、ベルト54から油圧式オートテンショナのシリンダ10とばね座16を収縮させる方向の押込み力が負荷される。このとき、圧力室15内の圧力はリザーバ室24内の圧力より高くなるため、第1チェックバルブ27のチェックボール27cが弁孔27bを閉鎖する。
また、圧力室15内のオイルは図2の矢印で示すように第1リーク隙間31を流通し、その第1リーク隙間31の上端開口から図1に示されるリザーバ室24にリークし、上記第1リーク隙間31を流動するオイルによって圧力室15内に油圧ダンパ力が発生する。その油圧ダンパ力により、油圧式オートテンショナに負荷される上記押込み力が緩衝される。
このとき、第1リーク隙間31は、エンジンの通常運転時におけるベルト54の張力変動を吸収可能な大きさに設定されているため、エンジンの通常運転時におけるベルト54の張力が高くなり過ぎることはなく、適正張力に保持される。
一方、スタータ・ジェネレータ52の駆動によるエンジン始動時、ベルト54の張力は急激に大きくなってばね座16を介して作用するロッド14に対する押込み力が強くなり、圧力室15の圧力が急激に上昇する。このとき、第1チェックバルブ27は閉鎖して圧力室15内の圧力が上昇し、その圧力がバルブスプリング37の弾性力より高くなると、プランジャ28がバルブスプリング37の弾性に抗して上昇し、図4に示すように、シート面35bがバルブシート35aに着座して、第2チェックバルブ35が閉鎖する。
第2チェックバルブ35の閉鎖により第1リーク隙間31の上端開口が閉塞し、圧力室15内のオイルは、図4の矢印で示すように、第2リーク隙間32内に流通して上端開口からリザーバ室24にリークする。
このとき、第2リーク隙間32の流路抵抗は第1リーク隙間31の流路抵抗より大きいため、圧力室15内のオイルは第2リーク隙間32内をゆっくりと流動する。このため、圧力室15での急激な圧力低下がなく、その圧力室15内の油圧ダンパ作用によってロッド14の押し込みが抑制され、ベルト54はクランクシャフト51を駆動するのに必要なベルト張力に保持され、ベルト54とプーリP乃至P間のスリップが防止される。
上記のように、エンジンの通常運転時、圧力室15内のオイルは流路抵抗の小さな第1リーク隙間31からリザーバ室24にリークし、一方、スタータ・ジェネレータ52でのエンジン始動時、圧力室15内のオイルは流路抵抗の大きな第2リーク隙間32からリザーバ室24にリークするため、エンジンの通常運転時およびスタータ・ジェネレータでのエンジン始動時のそれぞれにおいてベルト54に適正な張力を付与することができる。
実施の形態における油圧式オートテンショナにおいては、図2に示すように、ロッド14の下端部に設けられたリング溝33に歯付き座金34を取り付けてプランジャ28を抜止めしているため、止め輪を用いてプランジャ28を抜止めする場合に比較して、油圧式オートテンショナの組立ての容易化を図ることができる。
すなわち、止め輪を用いるプランジャ28の抜止めに際しては、バルブスプリング37の弾性に抗してプランジャ28を押し込み、バルブスプリング37を収縮保持する状態でリング溝33の側方からそのリング溝33に止め輪を取り付ける必要があり、取付けに非常に手間がかかる。
これに対して、歯付き座金34の取り付けに際しては、図5に示すように、ロッド14の端面側から歯付き座金34を軽圧入することによって、その歯付き座金34の取り付けとすることができるため、油圧式オートテンショナを簡単に組立てることができる。
図9に、上記実施形態の油圧式オートテンショナ(以下「実施品」という)の反力特性と、従来の油圧式オートテンショナ(以下「従来品」という)の反力特性とを比較した測定例を示す。以下説明する。
実施品としては、上記実施形態で説明したテンショナを使用した。すなわち、図1および図2に示すように、有底筒状のシリンダ10と、そのシリンダ10の底面から上方に延びるバルブスリーブ13と、そのバルブスリーブ13に上下に摺動可能に挿入されたプランジャ28と、そのプランジャ28に上下に摺動可能に挿入されたロッド14と、バルブスリーブ13とロッド14とプランジャ28とで囲まれる圧力室15と、ロッド14とプランジャ28の摺動面間に形成された円筒状の第1リーク隙間31と、プランジャ28とバルブスリーブ13の摺動面間に形成された円筒状の第2リーク隙間32と、ロッド14の上端に固定されたばね座16と、そのばね座16をシリンダ10に対して上方に付勢するリターンスプリング17と、プランジャ28を下方に付勢するバルブスプリング37と、ロッド14に対するプランジャ28の上方への移動範囲を規制する上側のストッパとしてのバルブシート35aと、ロッド14に対するプランジャ28の下方への移動範囲を規制する下側のストッパとしての歯付き座金34とを有する構成のテンショナを使用した。そして、シリンダ10を固定した状態でばね座16を上下に加振し、ばね座16に作用する上向きの力(テンショナ反力)の変化を測定した。
また、従来品としては、特開2009−275757号公報の図1に示すテンショナ(実施品のプランジャ28に相当する部材が無いテンショナ。ロッド14がバルブスリーブ13に直接摺動する)を使用した。
加振条件は以下のとおりである。
・制御方法:変位制御
・加振波形:サイン波
・加振周波数:10Hz
変位制御は、ばね座16に作用する力(テンショナ反力)がどのように増減するかによらず、ばね座16の位置の時間変化がサイン波となるようにばね座16の変位を制御する制御方式である。加振の振幅は、エンジンの通常運転時にテンショナに加わる一般的な加振の振幅(例えば±0.1mm〜±0.2mm程度)よりも大きい±0.5mmとした。実施品および従来品は、いずれもばね係数が約35N/mmのリターンスプリング17を使用している。
上記の加振試験により得たテンショナ変位(ばね座16の下向きの変位)とテンショナ反力(ばね座16に作用する上向きの力)の関係を図9に示す。
図9に示すように、実施品は、テンショナが収縮する過程で、テンショナ反力が急・緩・急の3段階の行程で変化している。すなわち、テンショナが収縮する過程で、実施品のテンショナ反力は、テンショナ反力の最小値(点P1)を起点として比較的急に増加する第1行程(点P1〜点P2)と、ほとんど増加せずにほぼ一定の大きさを維持する第2行程(点P2〜点P3)と、比較的急に増加する第3行程(点P3〜点P4)とを順に経てテンショナ反力の最大値(点P4)まで変化する。
その後、実施品は、テンショナが伸長する過程で、テンショナ反力が急・緩・急・緩の4段階の行程で変化する。すなわち、テンショナが伸長する過程で、実施品のテンショナ反力は、テンショナ反力の最大値(点P4)を起点として比較的急に減少する第1行程(点P4〜点P5)と、ほとんど減少せずにほぼ一定の大きさを維持する第2行程(点P5〜点P6)と、比較的急に減少する第3行程(点P6〜点P7)と、ほとんど減少せずにほぼ一定の大きさを維持する第4行程(点P7〜点P1)とを順に経てテンショナ反力の最小値(点P1)まで変化する。
これに対し、従来品は、テンショナが収縮する過程で、テンショナ反力が最小値(点Q1)から最大値(点Q2)までおおむね単調に増加する。また、従来品は、テンショナが伸長する過程で、テンショナ反力が急・緩の2段階の行程で変化する。すなわち、テンショナが伸長する過程で、従来品のテンショナ反力は、テンショナ反力の最大値(点Q2)を起点として比較的急に減少する第1行程(点Q2〜点Q3)と、ほとんど減少せずにほぼ一定の大きさを維持する第2行程(点Q3〜点Q1)とを順に経てテンショナ反力の最小値(点Q1)まで変化する。
つまり、実施品のテンショナは、テンショナが収縮する過程で、テンショナ反力の増加率が急から緩に変わる変化点P2と、テンショナ反力の増加率が緩から急に変わる変化点P3とを順に有する反力特性を示す。また、実施品のテンショナは、テンショナが伸長する過程で、テンショナ反力の減少率が急から緩に変わる変化点P5と、テンショナ反力の減少率が緩から急に変わる変化点P6と、テンショナ反力の減少率が急から緩に変わる変化点P7とを順に有する反力特性を示す。
実施品のテンショナが上記反力特性を示す理由を、図1、図2、図9を参照して説明する。
<点P1〜点P2>
図2に示すロッド14が下降を開始する。このとき、プランジャ28はバルブスプリング37で下方に付勢して歯付き座金34に押圧されているので、プランジャ28もロッド14と一体に下降する。プランジャ28とロッド14が一体に下降すると、圧力室15内のオイルの一部が第1リーク隙間31を通って圧力室15から流出するとともに、圧力室15内のオイルが圧縮される。圧力室15内のオイルが圧縮すると、圧力室15内のオイルの圧力が増加し、テンショナ反力が比較的急に増加する(図9の点P1〜点P2)。そして、図9の点P2において、圧力室15内のオイルからプランジャ28に作用する上向きの圧力と、バルブスプリング37からプランジャ28に作用する下向きの付勢力とが釣り合う。
<点P2〜点P3>
図2に示すロッド14がさらに下降する。このとき、圧力室15内のオイルからプランジャ28に作用する上向きの圧力が、バルブスプリング37からプランジャ28に作用する下向きの付勢力を上回ることにより、プランジャ28が上昇する。この間は、プランジャ28が上昇することによって圧力室15の圧力上昇が抑えられ、テンショナ反力がほぼ一定となる(図9の点P2〜点P3)。すなわち、ロッド14の下降に伴いプランジャ28が上昇するので、圧力室15の体積がほとんど変化せず、圧力室15の圧力がほぼ一定となる。このとき、圧力室15の体積がほとんど変化しないため、第1リーク隙間31および第2リーク隙間32にはオイルがほとんど流れない。そして、図9の点P3において、図4に示すように、シート面35bがバルブシート35aに着座し、プランジャ28の上昇が停止する。
<点P3〜点P4>
図4に示すロッド14がさらに下降する。このとき、図4に示すように、シート面35bがバルブシート35aに着座しているので、プランジャ28もロッド14と一体に下降する。プランジャ28とロッド14が一体に下降すると、圧力室15内のオイルがさらに圧縮されるので、圧力室15内のオイルの圧力が再び増加し、テンショナ反力が再び急に増加する(図9の点P3〜点P4)。このとき、図4に示すように、シート面35bがバルブシート35aに着座しているので、第1リーク隙間31にはオイルが流れず、圧力室15内のオイルの一部が第2リーク隙間32を通って圧力室15から流出する。
<点P4〜点P5>
図4に示すロッド14が上昇を開始する。このとき、圧力室15内のオイルからプランジャ28に作用する上向きの圧力が、バルブスプリング37からプランジャ28に作用する下向きの付勢力を上回っているので、プランジャ28もロッド14と一体に上昇する。プランジャ28とロッド14が一体に上昇すると、圧力室15内のオイルの圧縮が次第に解放されるので、圧力室15内のオイルの圧力が減少し、テンショナ反力が比較的急に減少する(図9の点P4〜点P5)。このとき、圧力室15内のオイルの圧縮が解放される(すなわち圧力室15内のオイルが膨張する)ことにより圧力室15内のオイルの体積が増加するので、第2リーク隙間32にはオイルがほとんど流れない。また、図4に示すように、シート面35bがバルブシート35aに着座しているので、第1リーク隙間31にもオイルは流れない。そして、図9の点P5において、圧力室15内のオイルからプランジャ28に作用する上向きの圧力と、バルブスプリング37からプランジャ28に作用する下向きの付勢力とが釣り合う。
<点P5〜点P6>
図4に示すロッド14がさらに上昇する。このとき、圧力室15内のオイルからプランジャ28に作用する上向きの圧力が、バルブスプリング37からプランジャ28に作用する下向きの付勢力を下回ることにより、プランジャ28が下降する。この間は、プランジャ28が下降することによって、圧力室15の圧力下降が抑えられ、テンショナ反力がほぼ一定となる(図9の点P5〜点P6)。すなわち、ロッド14の上昇に伴いプランジャ28が下降するので、圧力室15の体積がほとんど変化せず、圧力室15の圧力がほぼ一定となる。このとき、点P4〜点P5のときと同じく、圧力室15内のオイルの圧縮が解放される(すなわち圧力室15内のオイルが膨張する)ことにより圧力室15内のオイルの体積が増加するので、第1リーク隙間31および第2リーク隙間32にはオイルがほとんど流れない。そして、図9の点P6において、図2に示すように、プランジャ28の下方の移動が歯付き座金34で阻止され、プランジャ28の下降が停止する。
<点P6〜点P7>
図2に示すロッド14がさらに上昇する。このとき、図2に示すように、プランジャ28のロッド14に対する下方への相対移動が歯付き座金34で阻止されているので、プランジャ28もロッド14と一体に上昇する。プランジャ28とロッド14が一体に上昇すると、圧力室15内のオイルの圧縮がさらに解放されるので、圧力室15内のオイルの圧力が再び減少し始め、テンショナ反力が再び急に減少する(図9の点P6〜点P7)。このとき、点P4〜点P5のときと同じく、圧力室15内のオイルの圧縮が解放される(すなわち圧力室15内のオイルが膨張する)ことにより圧力室15内のオイルの体積が増加するので、第1リーク隙間31および第2リーク隙間32にはオイルがほとんど流れない。そして、図9の点P7において、図1に示す圧力室15内のオイルの圧力がリザーバ室24内のオイルと同等の圧力まで低下し、圧力室15内のオイルの圧縮が完全に解放された状態となる。
<点P7〜点P1>
図1に示すロッド14がさらに上昇する。このとき、プランジャ28のロッド14に対する下方への相対移動が歯付き座金34で阻止されているので、プランジャ28もロッド14と一体に上昇する。プランジャ28とロッド14が一体に上昇すると、圧力室15内のオイルの圧力がリザーバ室24内の圧力を下回ることによりチェックバルブ27が開き、オイルが油通路25を通ってリザーバ室24から圧力室15に流れる。そのため、圧力室15内のオイルの圧力はほとんど変化せず、テンショナ反力もほぼ一定となる(図9の点P7〜点P1)。
以上のとおり、実施品は、テンショナが収縮する過程で、テンショナ反力が所定値(図9の点P2のときの値)に達すると、プランジャ28が上昇して圧力室15の体積の変化を吸収し、その間、テンショナ反力がほぼ一定となる(図9の点P2〜点P3)。そのため、実施品は、テンショナが収縮する過程で、テンショナ反力の増加率が急から緩に変わる変化点P2と、テンショナ反力の増加率が緩から急に変わる変化点P3とを順に有する反力特性を示す。
また、実施品は、テンショナが伸長する過程で、テンショナ反力が所定値(図9の点P5のときの値)に達すると、プランジャ28が下降して圧力室15の体積の変化を吸収し、その間、テンショナ反力がほぼ一定となる(図9の点P5〜点P6)。そのため、実施品は、テンショナが伸長する過程で、テンショナ反力の減少率が急から緩に変わる変化点P5と、テンショナ反力の減少率が緩から急に変わる変化点P6とを順に有する反力特性を示す。
実施品のテンショナは、上述の反力特性を有することにより、エンジンの通常運転時には、テンショナ反力の大きさを小さく抑えて、図10(a)に示すテンションプーリ55がベルト54に付与する張力を小さく抑えることができ、一方、スタータ・ジェネレータ52の駆動によるエンジン始動時には、大きいテンショナ反力を発生させて、図10(b)に示すベルト54とプーリPの間のスリップを効果的に防止することができる。
すなわち、エンジンの通常運転時には、図9に符号S1で示すように、テンショナが±0.5mmよりも小さい振幅(例えば±0.1mm〜±0.2mm程度の振幅)で変位する。このとき、テンショナ反力は、テンショナが収縮する過程では、点P1を起点として、点P2を経て、点P2と点P3の間の値まで増加し、その後、テンショナが伸長する過程では、点P2と点P3の間の値を起点として、点P5と点P6の間の値まで減少し、さらに点P6と点P7とを順に経て、点P1まで減少する。このように、実施品のテンショナを使用すると、エンジンの通常運転時には、テンショナ反力の最大値を点P2と点P3の間の値に抑えることができ、図10(a)に示すテンションプーリ55がベルト54に付与する張力を小さく抑えて、エンジンの低燃費化を図ることができる。
一方、スタータ・ジェネレータ52の駆動によるエンジン始動時には、テンショナは、図9に符号S2で示すように、±0.5mmの振幅の最大値かその近傍まで収縮する。このとき、テンショナ反力は、点P4かその近傍まで増加する。そのため、スタータ・ジェネレータ52の駆動によるエンジン始動時には、大きいテンショナ反力を発生させることができ、図10(b)に示すベルト54とプーリPの間のスリップを効果的に防止することができる。
これに対し、従来品のテンショナでは、エンジンの通常運転時には、ベルト54の張力が過大となりやすい傾向がある。すなわち、図9に符号S1で示す振幅でテンショナが変位するとき、テンショナが収縮する過程では、テンショナ反力が、点Q1を起点として、点Q1と点Q2の間の値まで増加し、その後、テンショナが伸長する過程では、点Q1と点Q2の間の値を起点として、点Q3と点Q1の間の値まで減少し、さらに点Q1まで減少する。このように、従来品のテンショナを使用すると、エンジンの通常運転時には、テンショナ反力の最大値が点Q1と点Q2の間の値まで増加するので、図10(a)に示すテンションプーリ55がベルト54に付与する張力が過大となりやすく、エンジンの低燃費化を図ることが難しい。
また、従来品のテンショナは、スタータ・ジェネレータ52の駆動によるエンジン始動時には、大きいテンショナ反力を発生させることが難しい。すなわち、
テンショナが、図9に符号S2で示す±0.5mmの振幅の最大値かその近傍まで収縮したとき、テンショナ反力は、点Q2かその近傍までしか増加しない。そのため、スタータ・ジェネレータ52の駆動によるエンジン始動時に、大きいテンショナ反力を発生させることが難しく、図10(b)に示すベルト54とプーリPの間にスリップが生じやすい。
10 シリンダ
13 バルブスリーブ
14 ロッド
15 圧力室
16 ばね座
17 リターンスプリング
24 リザーバ室
25 油通路
27 第1チェックバルブ
28 プランジャ
31 第1リーク隙間
32 第2リーク隙間
34 歯付き座金
34a 歯
35 第2チェックバルブ
35a バルブシート
35b シート面
37 バルブスプリング

Claims (5)

  1. オイルが入れられた底付きシリンダ(10)の底面上にバルブスリーブ(13)を立設し、そのバルブスリーブ(13)の内部にロッド(14)の下端部を摺動自在に挿入してバルブスリーブ(13)内に圧力室(15)を設け、前記ロッド(14)の上部に設けられたばね座(16)とシリンダ(10)の底面間に、ばね座(16)とシリンダ(10)を伸張する方向に付勢するリターンスプリング(17)を組込み、前記シリンダ(10)の内周とバルブスリーブ(13)の外周間に形成されたリザーバ室(24)の下部と前記圧力室(15)の下部を連通する油通路(25)を形成し、前記バルブスリーブ(13)の下端部内に前記圧力室(15)の圧力がリザーバ室(24)内の圧力より高くなると閉鎖して圧力室(15)と油通路(25)の連通を遮断する第1チェックバルブ(27)を設け、前記ばね座(16)を介してロッド(14)に押込み力が負荷された際に第1チェックバルブ(27)を閉じ、圧力室(15)内のオイルを、その圧力室(15)からリザーバ室(24)にリークさせて圧力室(15)内のオイルによる油圧ダンパ作用によってロッド(14)に負荷される押込み力を緩衝するようにした油圧式オートテンショナにおいて、
    前記ロッド(14)の外側に、そのロッド(14)の外径面および前記バルブスリーブ(13)の内径面に沿って摺動可能な筒状のプランジャ(28)を嵌合して、そのプランジャ(28)とロッド(14)の摺動面間に第1リーク隙間(31)を設け、かつ、プランジャ(28)とバルブスリーブ(13)の摺動面間に、前記第1リーク隙間(31)より流路抵抗の大きな第2リーク隙間(32)を設け、前記ロッド(14)と前記プランジャ(28)の相互間に、前記圧力室(15)内の圧力上昇に伴うプランジャ(28)の上昇時に前記第1リーク隙間(31)を閉鎖する第2チェックバルブ(35)を設け、前記ロッド(14)の下端部に設けられたリング溝(33)に歯付き座金(34)を取り付けて前記プランジャ(28)を抜止めし、前記プランジャ(28)をバルブスプリング(37)により前記歯付き座金(34)に向けて付勢したことを特徴とする油圧式オートテンショナ。
  2. 前記第2チェックバルブ(35)が、前記ロッド(14)の前記プランジャ(28)の上端から外部に位置する大径軸部(14a)の下端に球面状のバルブシート(35a)を設け、前記プランジャ(28)の上部内径面に前記バルブシート(35a)に対して着座可能なシート面(35b)を設けた構成からなる請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。
  3. 前記バルブシート(35a)および前記プランジャ(28)における前記シート面(35b)のそれぞれを表面硬化処理した請求項2に記載の油圧式オートテンショナ。
  4. 前記表面硬化処理が、ダイヤモンドライクカーボン処理、硬質皮膜のコーティング処理、ショットピーニング、WPC処理の一種からなる請求項3に記載の油圧式オートテンショナ。
  5. 前記バルブスプリング(37)が、コイルばね、皿ばね、波形座金、ウェーブスプリングの一種からなる請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。
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