本発明に係るソファーベッドは、マットレスと、マットレスが載置される基台部とを備え、マットレスを分割構造にするとともに、引出部によって基台部を全体的に伸縮可能な構造とし、基台部を短縮させるとともにマットレスの所定の分割要素を背もたれ部として支持することでソファーとなり、基台部を伸長させるとともにその伸長部分にマットレスの所定の分割要素を載せることでベッドとなるものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
まず、本実施形態に係るソファーベッドの適用例について、図1および図2を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るソファーベッドを備えた車両の一例である旅客車両の外観を示す図であり、図1(a)は側面図を示し、図1(b)は図1(a)に示す旅客車両1の左側端面を示している。図2は、本実施形態に係るソファーベッドを備えた車両の一例である旅客車両の平面一部断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る旅客車両1は、列車を構成する車両の一つであり、図示しない機関車両によって牽引され線路上を走行する中間車両である。旅客車両1は、レール上を転動する複数の車輪2を備えた台車3上に、車両内空間を形成する車両本体4が設けられて構成されている。旅客車両1の車両側面部5には、複数の窓部6が設けられており、乗客が外の景色を楽しめるようになっている。
旅客車両1の前後両側の車体端面部7には、他の車両と連結するための連結部8と、互いに連結された状態の車両間を乗客が往来するための車両間連通部9とが設けられている。車両間連通部9には、車体端面部7を開口させて車両間連通口10が設けられており、車両間連通口10の周縁には、風雨を避けるための幌11が設けられている。また、車両側面部5には、開閉可能な乗降扉12により開閉される乗降口13が設けられている。乗客は、乗降口13を介して車両内外を行き来する。
旅客車両1の車内、即ち車両本体4の内部は、いわゆる寝台客車仕様となっている。図2に示すように、本実施形態では、一車両である旅客車両1内に3つの客室14が設けられている。各客室14は、乗客が各自くつろいだり寝泊まりできるよう構成されている。
具体的には、車両本体4内において、3つの客室14は、一方の車体側壁部15に沿って、車両の進行方向に沿う方向(長手方向)に連続するように設けられている。また、車両本体4内における幅方向(図2における上下方向)の客室14側と反対側、つまり客室14と他方の車体側壁部15との間には、通路16が設けられている。
互いに隣り合う客室14は、通路16に対して客室壁14aで区画されており、この客室壁14aに設けられた客室扉14bを介して通路16から客室14内に入室可能としている。客室14は、室内壁14eにより大きく2つの領域に区分けされており、乗客がくつろいだり就寝する居室部14cと、洗面等を行うサニタリーブース14dとが設けられている。
居室部14c内には、テーブル17や図示せぬイス等が配置されるとともに、本実施形態に係るソファーベッド20が設けられており、乗客は読書したり就寝したりすることができる。また、サニタリーブース14d内には、トイレ18a、洗面台18b、およびシャワー室19が備えられており、乗客は各客室14に居ながらにして衛生に係る身支度を整えることができるよう配慮されている。
図2に示すように、本実施形態では、1つの客室14の居室部14c内に、2つのソファーベッド20が配置されている。具体的には、各居室部14c内において、2つのソファーベッド20は、その長手方向を車両の長手方向に沿わせて、旅客車両1の幅方向に隣り合って並ぶように配置されている。2つのソファーベッド20は、通常は2個のソファーとして使用され、就寝時にはソファーの背もたれ部をソファー座面に継ぎ足して水平長手状のベッドに変更して使用できるように構成されている。このソファーベッド20は、2段階の組立てソファーベッドとして最小限の車両空間で可及的に機能的な広さで使用できるように構成されている。
2つのソファーベッド20は、その長手方向の一側を、旅客車両1の長手方向に客室14を区画する壁部14gに近接させて居室部14cの角部分に沿うように配置されている。すなわち、2つのソファーベッド20のうち、一方のソファーベッド20は、客室14と通路16とを区画する客室壁14aと、壁部14gとの角部分に沿うように配置され、他方のソファーベッド20は、通路16側と反対側の車体側壁部15と、壁部14gとの角部分に沿うように配置されている。以下、本実施形態に係るソファーベッド20について説明する。
図3から図5に示すように、ソファーベッド20は、ソファーおよびベッドとして兼用されるものであり、マットレス30と、マットレス30が載置される基台部40とを備える。ソファーベッド20は、ベッドの状態(図3参照)と、ソファーの状態(図4参照)との相互間で形態が変化させられることで、状況に応じてベッドあるいはソファーとして使用される。
マットレス30は、全体として矩形厚板状の外形をなし、互いに分割された第1マットレス部としての据置マットレス部31と、第2マットレス部としての移動マットレス部32とを有する。据置マットレス部31と、移動マットレス部32とは、基台部40上において所定の方向に互いに隣接した状態で載置されることで、マットレス30としての一体的な形状をなす。
据置マットレス部31は、マットレス30のうち、ソファーベッド20のベッド状態とソファー状態との間の形態の変化にかかわらず据え置かれたままとなる部分である。つまり、据置マットレス部31は、基本的には、ベッド状態のソファーベッド20Bにおいても、ソファー状態のソファーベッド20Sにおいても、基台部40上において所定の位置に載置された状態となる。
これに対し、移動マットレス部32は、マットレス30のうち、ソファーベッド20のベッド状態とソファー状態の切替え(以下「状態の切替え」という。)に際して移動させられる部分である。ソファーベッド20の状態の切替えについては後述する。
このようにマットレス30を構成する据置マットレス部31および移動マットレス部32は、互いに共通の一または複数のマットレス要素33からなる。つまり、据置マットレス部31および移動マットレス部32のそれぞれを構成する一または複数のマットレス要素33は、同一の部材である。本実施形態では、据置マットレス部31は、2つのマットレス要素33からなり、移動マットレス部32は、1つのマットレス要素33からなる。
マットレス30を構成する3つのマットレス要素33は、所定の方向に連なった状態で、一体的にマットレス30としての略矩形厚板状の外形をなす。3つのマットレス要素33が連なる方向(図8において左右方向)が、本実施形態のソファーベッド20の長手方向となる。本実施形態では、マットレス要素33は、水平状態での平面視形状として、ソファーベッド20の幅方向に沿う方向の寸法よりもソファーベッド20の長手方向に沿う方向の寸法の方が若干短い長方形状を有する。マットレス要素33は、マットやクッション等の、ソファーあるいはベッドのマットレスを構成し得るマットレスの各種構成要素である。
基台部40は、据置マットレス部31の載置面である本体側載置面51を有する本体部41と、本体部41に対して所定の方向に引き出されるように設けられた引出部42と、据置マットレス部31上において移動マットレス部32を所定の姿勢で支持する支持部43とを有する。なお、以下の説明では、基台部40において本体部41に対して引出部42が引き出される側(図8において左側)を前側とし、その反対側(図8において右側)を後側とし、平面視で前後方向に直交する方向(幅方向)を左右方向とする。
本体部41は、全体として前側が開放されたボックス状の構造を有し、前後方向(長手方向)および左右方向(幅方向)の各方向の寸法を据置マットレス部31の対応する寸法と略同じとする。すなわち、本体部41は、全体として直方体状の外形をなすとともに、前側が開放された空間を形成する中空状の構造体であり、平面視での外形寸法を据置マットレス部31の平面視での外形寸法と略同じとする。
具体的には、本体部41は、左右方向に互いに対向する左右両側の板状の側面部41aと、左右の側面部41aの上端部間を繋ぐ平板状の上面部41bと、左右の側面部41aの下端部間を繋ぐとともに上面部41bに対向する平板状の底面部41cと、本体部41の後側を塞ぐ後面部41dとを有する。本体部41は、左右の側面部41a、上面部41b、および底面部41cによって、前面視で左右方向を長手方向とする矩形状に前側に開口する直方体状ないし矩形厚板状の形状の内部空間41sを形成する(図5参照)。この本体部41の内部空間41sに、引出部42が収容される。なお、本実施形態では、本体部41を構成する底面部41cは、前後・左右方向に配された複数の角材により格子状に構成されている。
本体部41においては、上面部41bの上面により、本体側載置面51が形成される。したがって、本体側載置面51は、平面視での外形寸法を据置マットレス部31の平面視での外形寸法と略同じとする水平面であり、本体側載置面51上に据置マットレス部31が載置されることで、本体側載置面51の全体が覆われた状態となる。そして、据置マットレス部31は、基本的にはソファーベッド20がソファー状態であるかベッド状態であるかにかかわらず本体側載置面51上に載置された状態となる。据置マットレス部31は、必要に応じて、本体側載置面51上に載置された状態で所定の手段によって位置決め固定される。
引出部42は、本体部41に対して前方に引き出されるように設けられており、本体部41から引き出されることで移動マットレス部32の載置面である引出側載置面52を形成する。引出部42は、上述したように本体部41において形成される直方体状ないし矩形厚板状の形状の内部空間41sの寸法に対応した外形形状および外形寸法を有し、本体部41の内部空間41sに対して引出し可能に収容される。本体部41から引き出された状態の引出部42において、その上面側に引出側載置面52が形成される(図9参照)。
引出部42は、本体部41の内部空間41sに収容された状態で内部空間41sの前側の開口を塞ぐ前面部42eを有する。前面部42eは、内部空間41sの前側の開口の対応した形状・寸法を有する矩形板状の部分である。前面部42eは、本体部41の前側の端部形状との関係において、内部空間41s内に引出部42が収容されることで、内部空間41sの前側の開口を塞ぐとともに本体部41の前端面とともに略面一となるように構成されている。これにより、引出部42が本体部41内に収容された状態で、一体的な直方体状の外形が形成される。
また、前面部42eの前面側には、引出部42を本体部41に対して引き出したり押し戻したりするための取手部42fが設けられている。本実施形態では、取手部42fは、前面部42eの左右の2箇所に設けられている。また、引出部42の下側の面には、ソファーベッド20が設置される床面等の設置面に接触して回転し、引出部42の本体部41に対する引出し押戻しに際しての前後方向の移動を補助する一または複数の車輪42rが所定の位置に設けられている(図8参照)。
引出部42は、収納空間42sを形成する収納部として構成されている。収納空間42sは、上側が開放されたボックス状の空間である。つまり、引出部42は、基台部40において箪笥の引出しのごとく構成されている。収納空間42sには、例えば、枕や毛布といった寝具等の各種備品が収納される。
具体的には、引出部42は、前面部42eの後側を構成する部分として、左右方向に互いに対向する左右両側の板状の側面部42aと、左右の側面部42aの下端部間を繋ぐ平板状の底面部42cと、左右の側面部42aの後端部間を繋ぐとともに前面部42eに対向して引出部42の後側を塞ぐ後面部42dとを有する。引出部42は、前面部42e、左右の側面部42a、底面部42c、および後面部42dによって、上面視で前後方向を長手方向とする矩形状に上側に開口する直方体状ないし矩形厚板状の形状の収納空間42sを形成する。
また、基台部40には、引出部42の収納空間42sの上側の開口を部分的に覆う蓋体44が設けられている。蓋体44は、収納空間42sの上側の開口寸法に対して、左右方向については収納空間42sの開口と略同じ寸法を有し、前後方向については収納空間42sの開口よりも短い(例えば1/3〜1/2程度)の寸法を有する矩形平板状の部材である。
蓋体44は、引出部42の収納空間42sを部分的に覆った状態で、前後方向にスライド可能に設けられている。蓋体44は、前後方向のスライド移動によって位置を変化させることで、収納空間42sの覆う部分を変化させる。蓋体44が前後方向に変位することで、収納空間42sが上側に開口する部分が変化する。
蓋体44は、引出部42の左右両側の側面部42aの内側面の上部に設けられた突条部42h上に載置された状態でスライド移動可能に支持される。突条部42hは、側面部42aの内側面から左右方向の内側に突出するとともに前後方向に沿うように、引出部42の前後方向の全体にわたって設けられている。突条部42hの上面42jが、蓋体44の摺動面となる。つまり、突条部42hによって引出部42の左右両側において側面部42aの上端面に対する段差部が形成され、この左右の段差部に対して、蓋体44がその左右両端側の縁端部を載せた状態で前後方向にスライド可能に支持される。
このように前後方向に移動可能に設けられた蓋体44を有する引出部42により、移動マットレス部32が載置される引出側載置面52が形成される。すなわち、本体部41から引き出された引出部42において、その引き出された部分における収納空間42sの上側の開口が蓋体44により覆われた状態で、引出側載置面52が形成される。具体的には、前面部42eの後側に接触して前側端に位置する蓋体44の上面44aと、引出部42の左右の側面部42aの上端面42kとにより、引出側載置面52が形成される。引出側載置面52は、本体側載置面51と略同じ高さ位置にて本体側載置面51に略連続する平面をなす。
収容部としての引出部42においては、蓋体44は、前後方向に移動することで、収納空間42sを開閉させる。すなわち、引出部42が本体部41から引き出された状態において、蓋体44を後側(奥側)にスライド移動させることで、収納空間42sの前側の部分が開き、収納空間42sに対して収納物の出し入れを行うことができる状態となる。一方、引出部42が引き出された状態において、蓋体44を前側(手前側)にスライド移動させることで、収納空間42sの前側の部分が閉じるとともに、上述したように移動マットレス部32が載せられる引出側載置面52が形成された状態となる。
蓋体44の前端部の左右方向の中央部には、左右方向を長手方向とする長孔状の操作用孔部44bが形成されている。操作用孔部44bは、蓋体44をスライド移動させる際に指等が入れられて用いられる。なお、蓋体44を前後方向に移動させるための構造は、本実施形態に限定されるものではなく、例えばガイドローラ等を含む構造等であってもよい。
また、本実施形態では、引出部42の収納空間42s内に、内箱45が収納されている。内箱45は、底面部と前後左右の側面部とを有する上側開放の矩形状の内装ケースである。内箱45の前面部には、蓋体44の操作用孔部44bと同様に左右方向を長手方向とする長孔状の操作用孔部45bが形成されている。内箱45は、必要に応じて収納空間42sの区分け等に用いられる。
支持部43は、移動マットレス部32を、本体部41に載置された据置マットレス部31上に背もたれ部として支持する。支持部43は、ソファー状態のソファーベッド20Sにおいて、本体側載置面51上に載せられた据置マットレス部31の上方に、移動マットレス部32を所定の姿勢で支持する支持面43aを形成する部分である。
支持面43aは、据置マットレス部31上において、前側から寄り掛かるように後側に傾斜した状態の移動マットレス部32を後側から支える態様で、移動マットレス部32を支持する。本実施形態では、移動マットレス部32は、ベッド状態のソファーベッド20Bにおいて引出側載置面52上に載った状態と幅方向を同じとする向きで、その短手方向の一側端部となる下端部を、据置マットレス部31の2つのマットレス要素33間の境界近傍に位置させ、後側にもたれ掛った傾斜姿勢で、支持面43aにより支持される(図4参照)。
このように据置マットレス部31上にて移動マットレス部32が支持されたソファー状態のソファーベッド20Sにおいては、据置マットレス部31を構成する2つのマットレス要素33のうちの前側のマットレス要素33によって座面部が構成され、傾斜状に立った状態の移動マットレス部32によって背もたれ部が構成される。
支持部43について具体的に説明する。支持部43は、本体部41に設けられた軸支部46により、平面視でマットレス30の分割方向に直交する方向を回動軸方向として所定の角度範囲で軸支された門状の形状を有するフレーム部材60により構成されている。本実施形態では、マットレス30の分割方向は、前後方向であり、平面視で前後方向に直交する方向、つまり軸支部46の回動軸方向は、左右方向となる。
フレーム部材60は、本体部41の左右両外側に互いに平行に配された一対のアーム部61と、左右のアーム部61間に架設された態様で設けられた横架支持部62とを有する。アーム部61は、略直線状の細長い略板状の部分であり、その一側の板面を本体部41の左右の側面部41aの外側の面に沿わせる向きで、本体部41の左右の側面部41aの外側の面である側面41mに軸支部46によって支持される。
アーム部61は、その一側の端部が、軸支部46により支持される。軸支部46は、本体部41の左右の側面41mにおいて、前後方向の中央に対して前側寄りの位置、かつ下端部の位置に設けられている。ただし、軸支部46を設ける位置は、特に限定されず、アーム部61の長さ等によって適宜設定される。軸支部46は、左右方向を軸方向とする回動軸46aを有し、この回動軸46a回りにアーム部61を支持する(図8、図11参照)。
アーム部61は、本体部41における軸支部46から本体部41の前端までの前後方向の寸法よりも長い寸法を有する。このため、アーム部61は、軸支部46による回動によって前後方向に沿うように水平な状態となることで、軸支部46により支持される側と反対側の部分を、軸支部46から本体部41の前端までの前後方向の寸法よりも長い分、本体部41の前端位置よりも前側にはみ出させる。
横架支持部62は、直線状の細長い板状の部分であり、長手方向を左右方向として、左右のアーム部61の軸支部46側と反対側の端部間を繋ぐように設けられる。横架支持部62は、その板面をアーム部61の長手方向に沿わせる。つまり、ソファーベッド20の側面視においては、アーム部61の長手方向と、横架支持部62の板面とが略平行となる。
このように、フレーム部材60は、左右のアーム部61と、アーム部61間の横架支持部62とにより、左右のアーム部61の軸支部46側を開放側とするU字状あるいはコ字状に構成されており、その形状を維持した状態で軸支部46を起点部として回動する。フレーム部材60は、本体部41を左右両側から挟み込む態様で、開放側の端部、つまりアーム部61の横架支持部62側と反対側の端部を支持する軸支部46により本体部41に対して回動可能に支持されている。そして、横架支持部62の板面のうち、アーム部61が水平に沿う状態では下側を向き、アーム部61が立った状態では前側を向く側の面が、上述したように据置マットレス部31上において移動マットレス部32を支持する支持面43aとなる。
したがって、横架支持部62により形成される支持面43aは、軸支部46を起点として回動するアーム部61の長手方向が沿う方向と略一致するような角度状態となる。つまり、アーム部61がその長手方向を水平方向に沿わせた角度状態にあるときには、支持面43aは略水平方向に沿い、アーム部61がその長手方向を鉛直方向に沿わせた角度状態にあるときには、支持面43aは略鉛直方向に沿うこととなる。
フレーム部材60は、前側に倒れて支持面43aをソファーベッド20の設置面に接触させる回動位置から、アーム部61の長手方向を鉛直方向(直線X1参照)に対して所定の支持傾斜角度αだけ後側に傾斜させた回動位置までの範囲で、回動するように設けられる(図8参照)。以下では、フレーム部材60の角度状態について、支持面43aをソファーベッド20の設置面に接触させる回動位置にある状態を伏臥状態とし、鉛直方向に対して所定の支持傾斜角度α後側に傾斜した回動位置にある状態を起立状態とする。フレーム部材60の起立状態は、据置マットレス部31上において移動マットレス部32を支持する状態となる。なお、支持傾斜角度αは、特に限定されるものではないが、例えば、20°から40°の範囲内の角度である。
フレーム部材60を構成する横架支持部62は、フレーム部材60の伏臥状態において、本体部41よりも前方、かつ本体部41から引き出された引出部42の下側に位置し、フレーム部材60の起立状態において、据置マットレス部31の2つのマットレス要素33の境界の位置よりも後方寄り、かつ据置マットレス部31の上方に位置する。言い換えると、フレーム部材60の伏臥状態および起立状態の各状態における横架支持部62の位置が上記のような位置となるように、フレーム部材60を支持する軸支部46の位置やアーム部61の長さ等が設定される。横架支持部62については、フレーム部材60の起立状態における位置が、上述したように後側にもたれ掛った傾斜姿勢で支持面43aにより支持される移動マットレス部32を、支持面43aによって後側から支持する支持位置となる。移動マットレス部32は、起立状態のフレーム部材60の傾斜に沿った傾斜姿勢で、支持面43aにより後側から支持される。
なお、フレーム部材60の構成に関し、フレーム部材60は、伏臥状態において、支持面43aをソファーベッド20の設置面に接触させる手前の位置で所定の支持部材等によって支持される構造であってもよい。また、フレーム部材60を構成するアーム部61および横架支持部62は、細長い板状の部分に限らず、例えば横断面形状が円形の棒状の部分であってもよい。
上述したように回動可能に設けられたフレーム部材60は、その起立状態において、基台部40に設けられた支持固定部70によって支持固定される。すなわち、本体部41には、フレーム部材60を、移動マットレス部32を支持する所定の支持傾斜角度αで支持固定する支持固定部70が設けられている。
支持固定部70は、上述した支持傾斜角度αに沿う支持傾斜面70aを形成する支持部材71と、起立状態にあるフレーム部材60を係止してフレーム部材60の伏臥状態側への回動を規制する係止部材72とを含む。つまり、支持固定部70は、支持部材71によって起立状態のフレーム部材60を後側から支持するとともに、係止部材72によって起立状態のフレーム部材60を支持部材71に対して固定させる。
図11(a)、(b)に示すように、支持部材71は、支持傾斜角度αに沿う支持傾斜面70aを有し、この支持傾斜面70aにフレーム部材60を接触させることでフレーム部材60を支持傾斜角度αに支持する。具体的には、支持部材71は、半円形状の板状の部材であり、本体部41の左右の側面41mに対してネジ等の所定の固定部材71bによって固定された状態で設けられる。支持部材71は、その半円形状の外形における平面状の端面71aにより、支持傾斜面70aを形成する。すなわち、支持部材71は、その端面71aが前側の斜め上を向き、鉛直方向に対して支持傾斜角度αをなすように設けられている。
支持部材71は、起立状態となるフレーム部材60のアーム部61に支持傾斜面70aを接触させるように設けられる。つまり、支持部材71は、前面視で、支持傾斜面70aがアーム部61と重なるように設けられている。支持部材71は、起立状態のフレーム部材60の傾斜に対応して、支持傾斜面70aがアーム部61の後側面61aの傾斜に沿って後側面61aに接触するように、端面71aの角度が調整されて設けられる。なお、支持傾斜面70aには、アーム部61の後側面61aに接触するようにゴムやスポンジ等の弾性部材による緩衝部が設けられてもよい。
係止部材72は、フレーム部材60に係合して支持部材71により支持傾斜角度αで支持された状態のフレーム部材60の支持傾斜面70aから離れる方向の回動、つまり起立状態から伏臥状態となる側への回動を規制する。具体的には、図11(a)、(b)に示すように、係止部材72は、長円形状の板状の部材であり、板面を左右方向に向け、一端側が左右方向を回動軸方向とする軸支部72aにより支持されることで、本体部41の側面41mに対して回動可能に設けられている。係止部材72は、支持固定部70において、回動することで起立状態のフレーム部材60に係合する回動係止アームを構成する。軸支部72aは、半円形状をなす支持部材71との関係において、側面視で支持部材71の外形が沿う円形状における中心に対応する位置を回動軸の位置とするように設けられている。
このような支持固定部70に対して、フレーム部材60側には、係止部材72が係合する係止突部63が設けられている。係止突部63は、フレーム部材60のアーム部61の外側面61bから突出するように設けられている。係止突部63は、アーム部61の外側面61bに対して所定の間隔を隔てる円板状の端面部63aと、外側面61bと端面部63aとの間において、側面視で端面部63aの円形状の範囲内に設けられた嵌合部63bとを有する。
係止部材72は、軸支部72aによる回動動作によって、アーム部61が支持傾斜面70aに支持され起立状態となっているフレーム部材60における係止突部63に対して、アーム部61の外側面61bと係止突部63の端面部63aとの間に上側から挟み込まれる態様で嵌合部63bに係合する。係止部材72の係止突部63に対して係合する側の辺部には、嵌合凹部72bが形成されている。これに対し、係止突部63の嵌合部63bは、嵌合凹部72bの形状に対応した所定の嵌合形状を有する。
このような構成の支持固定部70によれば、図11(a)に示すように、フレーム部材60が起立状態となる際には、係止部材72は、係止突部63に干渉しない回動位置にある。そして、フレーム部材60が、アーム部61の後側面61aを支持固定部70の支持傾斜面70aに近付けるように回動し(矢印A1参照)、後側面61aを支持傾斜面70aに接触させて起立状態となった後、係止部材72が下側に向けて回動させられ(矢印A2参照)、係止突部63に係合した状態となる。これにより、図11(b)に示すように、支持部材71によって支持された状態のフレーム部材60が係止部材72によって係止された状態、つまり支持固定部70によるフレーム部材60の支持固定状態(ロック状態)が得られる。かかる支持固定状態から、係止部材72を上側に回動させることで(矢印A3参照)、係止部材72の係止突部63に対する係合が解除され、支持固定部70による支持固定状態が解除される。
なお、本実施形態では、アーム部61の回動軸46aを構成する軸支部46と、支持固定部70の係止部材72の回動軸を構成する軸支部72aとは、互いに異なる位置に設けられているが、これらの軸支部は回動軸を同軸とするように互いに共通の位置に設けられてもよい。また、本実施形態では、フレーム部材60は、鉛直方向に対して支持傾斜角度α後側に傾いた姿勢で支持されるが、フレーム部材60は例えば鉛直方向に沿うような姿勢で支持されてもよい。つまり、支持固定部70としては、支持傾斜角度αが90°となるような支持角度に応じて、鉛直状の支持面をなすものであってもよい。
上記したフレーム部材60と支持部材71の関連構造および相互の係合ロック機能に関して要約すると次の通りである。すなわち、略コ字状のフレーム部材60の基端は、本体部41の両側面41mに前後回動自在に軸支部46を介して枢支されており、アーム部61の基端近傍の外側面61bには、係止突部63が突設されている。本体部41の側面41mには、支持部材71が設けられており、支持部材71は、前端面(端面71a)を前下り傾斜面とした当接面を形成しており、この当接面は、アーム部61を軸支部46を中心に後方に傾動させた場合に、アーム部61の一側端面(後側面61a)に当接し、アーム部61の後方傾動を規制する。
さらには、支持部材71の略中心には、アーム形状の係止部材72の基端が枢支されており、しかも、係止部材72の一側端縁には切欠した嵌合凹部72bが形成され、嵌合凹部72bの形状は、アーム部61の外側面61bに突設した係止突部63の略円弧外周面と係合可能な略円弧凹部とされている。そして、アーム部61が後方に傾動する場合、即ち移動マットレス部32を前後の据置マットレス部31の突き合わせ上に立て掛けて傾いた状態でフレーム部材60により支持して背もたれ形状とする場合には、フレーム部材60のアーム部61の傾動角度を支持部材71の端面71aの当接により規制し、さらにこの傾動角度を固定するために係止部材72を前方に回動して嵌合凹部72bをアーム部61の外側面61bの係止突部63と係合させることにより、アーム部61のロック機能を果たし、各マットレス部によるソファー形態をつくる。
以上のような構成を備える本実施形態のソファーベッド20における状態の切替えについて説明する。まず、ベッド状態のソファーベッド20Bからソファー状態のソファーベッド20Sに切り替える場合について説明する。図3に示すように、ベッド状態のソファーベッド20Bにおいては、移動マットレス部32は、本体部41から引き出された状態の引出部42によって形成された引出側載置面52(図9参照)上に載置されており、本体側載置面51上の2つのマットレス要素33からなる据置マットレス部31とともに、平坦状のマットレス30を構成する。また、フレーム部材60は、伏臥状態であり、横架支持部62を、本体部41から引き出された状態の引出部42の下側に位置させる。
このようなベッド状態のソファーベッド20Bにおいて、まず、図9に示すように、移動マットレス部32が、引出側載置面52上から退けられる(矢印B1参照)。次に、引出部42が、取手部42fが用いられる等して本体部41内に押し込まれ(図9、矢印B2参照)、本体部41内に収容された状態となる(図7参照)。次に、伏臥状態のフレーム部材60が、持ち上げられて起立状態まで回動させられる(図8、矢印B3参照)。起立状態のフレーム部材60は、支持固定部70によって固定され、伏臥状態となる側への回動が規制される。これにより、据置マットレス部31上において移動マットレス部32を支持する支持面43aが所定の支持位置にセットされた状態となる。かかる状態において、引出側載置面52から退けられた移動マットレス部32が、フレーム部材60によって構成される支持面43aによって後側から支持されることで上述したような傾斜姿勢となるようにセットされる(図6、矢印B4参照)。以上のようにして、ソファーベッド20はベッド状態からソファー状態となる(図4参照)。
次に、ソファー状態のソファーベッド20Sからベッド状態のソファーベッド20Bに切り替える場合について説明する。図4に示すように、ソファー状態のソファーベッド20Sにおいては、移動マットレス部32は、起立状態のフレーム部材60によって据置マットレス部31上において背もたれ部として支持されている。
このようなソファー状態のソファーベッド20Sからベッド状態のソファーベッド20Bへの切替えは、ベッド状態からソファー状態への切替えの場合と逆の手順で行われる。すなわち、まず、図6に示すように、フレーム部材60により支持された状態の移動マットレス部32が、据置マットレス部31上から退けられる(矢印C1参照)。次に、支持固定部70によるロックが解除され、起立状態のフレーム部材60が、前側に押し倒されて伏臥状態となるように回動させられる(図8、矢印C2参照)。次に、引出部42が、取手部42fが用いられる等して本体部41から引き出され(図9、矢印C3参照)、本体部41外に露出した状態となる。これにより、引出部42によって引出側載置面52が形成された状態となる。かかる状態において、据置マットレス部31から退けられた移動マットレス部32が、引出側載置面52上にセットされる(図9、矢印C4参照)。以上のようにして、ソファーベッド20はソファー状態からベッド状態となる(図3参照)。
以上のような構成を備える本実施形態のソファーベッド20によれば、室内空間を有効に利用することができ、簡単な構造で、しかもソファーの状態とベッドの状態の切替えを容易に行うことができる。具体的には、ベッド状態では移動マットレス部32の載置部分を構成する引出部42が、ソファー状態では本体部41内に収容された状態となる。このため、引き出された状態の引出部42の分だけ、ソファーベッド20の前側においてソファーベッド20が占めるスペースを減少させることができる。したがって、ソファーとしての機能得るためには不要なスペースである引き出された状態の引出部42のスペースを有効に利用することができる。このため、例えば旅客車内における室内空間等のように、比較的限られた狭い室内空間において空間を有効に利用することができる。本実施形態の場合、ソファーベッド20をベッド状態からソファー状態に切り替えることで、設置スペースを約2/3に減少させることができる。
本実施形態の場合、上述したように、旅客車両1の長手方向に客室14を区画する壁部14gに近接させて居室部14cの角部分に沿うようにソファーベッド20が配置されている(図2参照)。かかる配置構成において、ソファーベッド20をベッド状態からソファー状態にすることにより、ソファーベッド20の壁部14gと反対側において、ベッド状態のソファーベッド20Bの全体の約1/3のスペースを確保することができる。本実施形態の場合、例えば、壁部14gとテーブル17との間に位置するソファーベッド20については、ベッド状態からソファー状態にすることにより、テーブル17とソファーベッド20との間のスペース(図2、符合S1参照)を大幅に広げることが可能となり、快適な室内環境を得ることができる。
また、本実施形態のソファーベッド20においては、マットレス30の一部をなす移動マットレス部32により、ソファー状態における背もたれ部が構成されることから、ソファー状態においても移動マットレス部32が使用されるので、移動マットレス部32を別途収納する場所を確保する必要がない。このため、例えば、あらかじめ隠されたマットレスや同様のベッド部をあらわす装置を有する構成との比較において、基台部40の本体部41に対する引出部42の収容によって、ソファーベッド20の前側におけるスペースを広げることができるとともに、移動マットレス部32の収容部が必要ないので、基台部40の内外の空間を効果的に有効に利用することができる。
また、本実施形態のソファーベッド20によれば、ベッド状態から移動マットレス部32を移動させることでソファー状態での背もたれ部が構成されることから、マットレスの一部が可動部である構成において、例えば、可動部を本体部に対して傾斜または回動させるためのヒンジ機構や、可動部を自動的に動作させるための駆動装置等の、可動部を可動にするための構造が不要となるので、構造の簡略化を図ることができ、軽量化・低コストを容易に実現することができる。また、ソファーベッド20の状態の切替えも、移動マットレス部32の移動、引出部42の押し引き操作、および支持部43の操作によって容易に行うことができる。
また、本実施形態のソファーベッド20によれば、引出部42が収納空間42sを形成する収納部として構成されていることから、本体部41の内部空間41sを収納スペースとして有効利用することができる。この点、上述したように、移動マットレス部32はソファー状態およびベッド状態のいずれにおいても使用されるものであることから、本体部41内に移動マットレス部32を収容したりする必要がなく、ソファーベッド20の状態にかかわらず、本体部41の内部空間41sを常時収納スペースとして有効利用することができる。
また、本実施形態のソファーベッド20によれば、据置マットレス部31および移動マットレス部32が共通のマットレス要素33からなる構成を備えることから、例えば、3つのマットレス要素33を、据置マットレス部31の前部および後部の各位置、ならびに移動マットレス部32の位置の3つの配置位置で定期的に交換すること等により、各マットレス要素33の経時的な劣化度合の均一化を図ることができ、結果として、マットレス30全体としての耐久性の向上を図ることができる。
ただし、マットレス30を構成する各マットレス部は、互いに異なるマットレス部分であってもよい。また、据置マットレス部31は、複数のマットレス部分からなるものではなく、一体的なマットレス部分であってもよく、逆に、移動マットレス部32は、一つのマットレス部分からなるものではなく、複数のマットレス部分からなるものであってもよい。また、マットレス30の分割の態様としては、本実施形態では、据置マットレス部31と移動マットレス部32との分割方向(前後方向)が、ソファーベッド20の長手方向であるが、これに限らず、例えば、ベッド状態において据置マットレス部31と移動マットレス部32とが互いに隣り合う方向が、ソファーベッド20の幅方向(左右方向)であってもよい。
また、本実施形態のソファーベッド20によれば、移動マットレス部32を支持する支持部43が、本体部41に設けられた軸支部46により回動可能に支持された門状のフレーム部材60により構成されていることから、支持部43を簡単な構造により構成することができる。そして、ソファーベッド20の状態の切替えを、移動マットレス部32の移動、引出部42の押し引き操作、およびフレーム部材60の回動操作により行うことができるので、かかる切替え作業をお年寄りや子供等でも比較的容易に行うことができる。
また、本実施形態のソファーベッド20において、フレーム部材60を起立状態で支持固定するための構成として、支持部材71と係止部材72とを含む支持固定部70が本体部41に設けられている。かかる構成によれば、簡単な構造により、簡単な操作で、フレーム部材60の起立状態におけるロックおよびその解除を行うことができる。
また、本実施形態のソファーベッド20を備えた旅客車両1によれば、利用状況に応じて室内空間を有効に利用することができ、簡単な構造で、しかもソファーの状態とベッドの状態の切替えを容易に行うことができるため、限られたスペースを有効利用することができ、快適な室内環境を得ることができる。
本実施形態では、ソファーベッド20が備えられる車両の一例として旅客車両1を挙げたが、これに限らず、ソファーベッド20は、例えば、バスやキャンピングカー等の各種車両に適用することができ、さらに車両以外にも、船舶等の他の乗り物、あるいはホテルや一般家庭等の様々な場所で用いることができる。