以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、インク滴を吐出する記録ヘッドが搭載されたキャリッジを主走査方向に往復移動させながら用紙の紙面上にインク滴を吐出(出力)して画像形成出力を行うインクジェット方式のプリンタを画像形成装置の例として説明する。また、本実施形態におけるインクジェット方式のプリンタは、キャリッジの往路と復路との両方でインク吐出を行うマルチパス方式である。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成を例示するブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、コントローラ100、操作パネル110、センサ群120、キャリッジ130、主走査モータ140及び副走査モータ150、搬送ベルト160及び帯電ローラ170を含む。
操作パネル110は、画像形成装置1に必要な情報の入力及び表示を行うための操作部及び表示部として機能するユーザインタフェースである。センサ群120は、画像形成装置1における様々な情報を検知する各種センサである。具体的には、例えば、センサ群120は、主走査モータ140及び副走査モータ150の回転を検知するための回転検知センサ、用紙の位置を検知するための光学センサ、装置内の温度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ等である。
キャリッジ130には、用紙表面に顕色剤であるインクを吐出する記録ヘッド131が搭載されている。また、キャリッジ130は、画像形成出力動作時に搬送ベルト160によって搬送される用紙の搬送方向である副走査方向と直角な方向である主走査方向に動かされる。
主走査モータ140は、キャリッジ130を主走査方向に動かすための動力を供給するモータである。副走査モータ150は、画像を形成する対象である用紙を副走査方向に搬送する搬送ベルト160に動力を供給するモータである。帯電ローラ170は、搬送ベルト160を帯電させることにより、画像の出力対象である用紙を搬送ベルト160に吸着させるための静電力を発生させる。
コントローラ100は、画像形成装置1の動作を制御する制御部であり、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、NVRAM(Non Volatile RAM)14、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)15、ホストI/F16、印刷制御部17、ヘッドドライバ18、主走査モータ駆動部19、副走査モータ駆動部20、ACバイアス供給部21及びI/O22を含む。
CPU11は演算手段であり、コントローラ100各部の動作を制御する。ROM12は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。RAM13は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU11が情報を処理する際の作業領域として用いられる。NVRAM14は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、制御プログラムや制御用のパラメータが格納される。
ASIC15は、画像形成出力に際して必要な画像処理を実行するハードウェア回路である。ホストI/F16は、PC(Personal Computer)等のホスト装置から印刷データを受信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェースが用いられる。
印刷制御部17は、キャリッジ130に含まれる記録ヘッド131を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む。ヘッドドライバ18は、画像形成出力するべき画像情報に基づいて記録ヘッド131を制御する。主走査モータ駆動部19及び副走査モータ駆動部20は、CPU11の制御に従い、それぞれ主走査モータ140、副走査モータ150を駆動する。
ACバイアス供給部21は、帯電ローラ170にACバイアスを供給する。I/O22は、センサ群120からの検出信号をコントローラ100に入力するためのポートである。
PC等の情報処理装置、イメージスキャナ等の画像読取装置、デジタルカメラ等の撮像装置といったホスト側からの印刷データは、ホストI/F16によって受信される。CPU11は、ホストI/F16に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC15を制御して、画像形成出力の為に必要な画像処理やデータの並び替え処理等を実行させる。ASIC15によって処理された画像データは、CPU11によって印刷制御部17を制御することにより、ヘッドドライバ18に転送される。
なお、画像形成出力のためのドットパターンデータの生成は、例えばROM12にフォントデータを格納して行っても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開して画像形成装置1に入力するようにしてもよい。
ヘッドドライバ18は、記録ヘッド131の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を受け取ると、この1行分のドットパターンデータを、クロック信号に同期して、キャリッジ130にシリアルデータとして送出する。また、ヘッドドライバ18は、所定のタイミングでラッチ信号をキャリッジ130に送出する。
印刷制御部17は、ROM12に格納された駆動波形(ヘッド駆動信号)のパターンデータを読み取り、D/A変換してアナログ信号の駆動波形を生成してヘッドドライバ18に入力する。ヘッドドライバ18は、印刷制御部17から入力された駆動波形をキャリッジ130に入力する。
キャリッジ130は、シフトレジスタ、ラッチ回路、レベル変換回路(レベルシフタ)及びアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含む。シフトレジスタは、ヘッドドライバ18から入力されるクロック信号及び画像データであるシリアルデータを保持する。ラッチ回路は、シフトレジスタのレジスト値をヘッドドライバ18からのラッチ信号でラッチする。
レベルシフタは、ラッチ回路の出力値をレベル変化する。アナログスイッチアレイは、このレベルシフタでオン/オフを制御する。そして、キャリッジ130は、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで、ヘッドドライバ18から入力される駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的に記録ヘッド131のアクチュエータ手段に印加して記録ヘッド131を駆動する。このとき、ヘッドドライバ18は、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
次に、本実施形態に係る画像形成装置1における画像形成出力機構の機械的な構成について説明する。図2は、本実施形態に係る画像形成出力機構の機械的な構成を上面から見た状態を示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係る画像形成出力機構において、用紙Sは副走査モータ150によって駆動される搬送ローラ201と搬送ローラ201に従動して動作するテンションローラ202にかけ渡された搬送ベルト160によって搬送される。この搬送方向が副走査方向である。また、副走査モータ150、搬送ローラ201、副走査モータ150及び搬送ローラ201を連結するタイミングベルト204及び搬送ベルト160が、用紙を搬送するための搬送機構である。
インクジェット方式の画像形成装置1に用いられる記録ヘッド131はキャリッジ130に取り付けられている。このキャリッジ130は、主走査モータ140を駆動することで駆動プーリ203、従動プーリ206、タイミングベルト204によって用紙搬送方向とは直角な方向にガイドロッド205上を往復移動する。
また、キャリッジ130にはインクカートリッジ208から記録ヘッド131にインクを供給するためのインクチューブ207が接続されている。シリアル方式のインクジェットプリンタは、このキャリッジ130の走査と用紙の搬送とを繰り返すことで、用紙全面への印刷を行う。
ここで、キャリッジ130に搭載されている従来の記録ヘッドの構成を説明する。図3は、従来の記録ヘッドの構成を模式的に示す図である。図3に示すように、記録ヘッドは、CMYK(Cyan,Magenta,Yellow,KeyPlate)の各色のインクを吐出するノズル列K1〜K4、C1、C2、M1、M2、Y1、Y2から構成される。
また、図3に示すように、無彩色顕色剤であるKのインクを吐出するノズル列を備えた記録ヘッドは、モノクロ画像の印字速度を向上させるために、副走査方向に2つ並べて搭載されている。Kのインクを吐出するノズル列を備えた一方の記録ヘッドは、有彩色顕色剤であるCMYのインクを吐出するノズル列を備えた記録ヘッドと並列している。
また、図3に示すように、CMYの各色インクを吐出するノズル列は、往路と復路とで吐出されるインクの色順を同じにするために、色毎に主走査方向に対して対象に配置されている。このような構成により、往路と復路とで吐出されるインクの色順が異なることにより発生する色差(以降、「双方向色差」とする)が低減される。
また、図3に示すように、各記録ヘッドにおいてノズル列が2列に配置されており、互いのノズル列は、ノズルピッチの2分の1分ずれて配置されている。このような構成により、副走査方向の解像度が2倍になる。このような記録ヘッドにおいてモノクロ画像を印字する場合、ノズル列K1〜K4からKのインクが吐出される。一方、カラー画像を印字する場合、無彩色顕色剤としてノズル列K1〜K4からKのインクが吐出され、有彩色顕色剤としてノズル列C1、C2、M1、M2、Y1、Y2からCMYの各色インクが吐出される。
しかしながら、CMYの各色インクを吐出するノズル列が色毎に主走査方向に対して対象に配置されているのに対して、Kのインクを吐出するノズル列とCMYの各色インクを吐出するノズル列とは主走査方向に対して対象に配置されていない。そのため、例えば、Kのインクの使用量が多いシャドー部分の画像を印字する場合、双方向色差が発生する。
このような双方向色差を軽減するために、1バンド画像の印字が1走査で完了する印字モードおいて、キャリッジ130の往復移動の一方向においてCMYの各色インクが吐出された後、反対方向においてKのインクが吐出されるよう記録ヘッド131が制御される。すなわち、このような制御においては、ノズル列K3及びK4からKのインクが吐出される。
次に、上述した制御において従来の記録ヘッドからインクが吐出される場合の課題を、図4〜図7を参照して説明する。図4は、上述した制御による用紙上へのインクの吐出態様を例示する図である。図4に示すように、例えば1走査目の往路(用紙Sの右側に示した最下部の矢印)において、用紙Sの最下部の1バンドの領域にCMYの各色インク(以降、「有彩色インク」とする)が吐出される。そして、2走査目の復路において用紙Sの最下部の1バンドの領域にKのインク(以降、「無彩色インク」とする)が吐出され、次の1バンドの領域に有彩色インクが吐出される。以降、同様に有彩色インク及び無彩色インクの吐出が繰り返される。
そのため、1走査の開始位置において、有彩色インクが用紙上に着弾してから無彩色インクが用紙上に着弾するまでの時間差(以降、「着弾時間差(出力時間差)」とする)が最も小さく、1走査の終了位置における着弾時間差が最も大きくなる。
図5は、上述した制御によりCMYの各色インクが吐出された後にKのインクが吐出される場合において、用紙へのインクの着弾時間差により異なるインクの定着態様を例示する図である。図5(a)は、着弾時間差が比較的小さい場合のインクの定着態様を例示し、図5(b)は、着弾時間差が比較的大きい場合のインクの定着態様を例示する。また、図6は、着弾時間差(秒)とインク濃度との関係を例示するグラフである。
着弾時間差が小さい場合、往路において吐出されて用紙上に着弾した有彩色インクが乾燥する前に、復路において吐出された無彩色インクが用紙上に着弾する。そのため、着弾時間差が小さいほど、図5(a)に示すように、無彩色インクが用紙内部に浸透しやすくなるため、図6に示すようにインク濃度が低くなる傾向がある。
一方、着弾時間差が大きい場合、往路において吐出されて用紙上に着弾した有彩色インクが乾燥した状態で、復路において吐出された無彩色インクが用紙上に着弾する。そのため、着弾時間が長いほど、図5(b)に示すように、無彩色インクが用紙内部に浸透しにくいため、図6に示すようにインク濃度が高くなる傾向がある。
図7は、上述した制御によりCMYの各色インクが吐出された後にKのインクが吐出される場合において発生する用紙上の濃度のばらつきを例示する図である。図7に示すように、無彩色インク(Kのインク)を吐出する1走査の開始位置ほどインク濃度が低く(印字された画像が薄く)、1走査の終了位置ほどインク濃度が高く(印字された画像が濃く)なる。さらに、無彩色インクの走査方向が1走査ごとに入れ替わるので、用紙の左右端部の濃度の高低も入れ替わる。その結果、用紙上に定着したインクの濃度にばらつきが生じる。本実施形態の要旨は、このような濃度のばらつきを低減することにある。
図8は、図4〜図7を示して上述した課題を解決するための本実施形態に係る記録ヘッド131により同じドットを形成する領域に吐出される無彩色インク及び有彩色インクの着弾位置(用紙上への出力位置)の関係を例示する図である。図8に示した正方形が、インク滴301〜304によりドットが形成される領域(以降、「ドット領域」とする)であり、ドット領域が点線で4分の1の領域に区切られ、各領域の中央に「×」印が付されている。
各色のインクは、各「×」印を中心とした位置に着弾する。図8に示した場合においては、インク滴301が無彩色インクであり、インク滴302〜304が3色の有彩色インクである。図8に示すように、CMYの3色の有彩色インクのうちの2色の有彩色インク滴303、304の着弾位置は、無彩色インク滴301の着弾位置に対して副走査方向に2分の1ドット分ずれている。
さらに、そのうち1色の有彩色インク滴304の着弾位置は、無彩色インク滴301の着弾位置に対して主走査方向に2分の1ドット分ずれている。また、上述した2色の有彩色インク滴303、304以外の有彩色インク滴302の着弾位置は、無彩色インク滴301の着弾位置に対して主走査方向に2分の1ドット分ずれている。
以下、図8に示した各色インクの着弾態様を実現するための構成を説明する。図9は、本実施形態に係る記録ヘッド131を構成する無彩色インクを吐出するノズル列と有彩色インクを吐出するノズル列との位置関係を例示する図である。なお、本実施形態に係る記録ヘッド131の構成は、図9を示して以下に説明する構成以外は図3を示して説明した記録ヘッドの構成と同様である。
また、以降の説明においては、図8に示したインク滴301をKのインク滴、インク滴302をCのインク滴、インク滴303をYのインク滴、インク滴304をMのインク滴である場合を例として説明する。
本実施形態に係る記録ヘッド131において、無彩色インクの着弾位置に対して副走査方向に2分の1ドット分ずらす有彩色インクを吐出するノズル列は、無彩色インクを吐出するノズル列に対して副走査方向にノズル列の半径分ずらした位置に構成される。例えば、図8に示したように従来の記録ヘッドにおいて同じ位置にインク滴が着弾する無彩色インクK3のインク及び有彩色インクM2のインクをそれぞれ吐出するノズル列が、図9に示すように、副走査方向にノズル列の半径p/2分ずれている。
同様に、無彩色インクK4のインク及び有彩色インクM1のインクをそれぞれ吐出するノズル列が、副走査方向にノズル列の半径p/2分ずれる。また、無彩色インクK3のインク及び有彩色インクY1のインクをそれぞれ吐出するノズル列、無彩色インクK4のインク及び有彩色インクY2のインクをそれぞれ吐出するノズル列も同様である。このような構成により、2色の有彩色インクの着弾位置を、無彩色インクの着弾位置に対して副走査方向に2分の1ドット分ずらすことが可能になる。
次に、本実施形態に係る記録ヘッド131からのインク吐出制御動作を説明する。図10は、本実施形態に係る記録ヘッド131からのインク吐出制御動作を例示するフローチャートである。図10に示す動作は、画像形成装置1各部を制御するためのプログラムに従って演算を行うCPU11の動作であり、1ページ分の画像形成出力におけるインク吐出の制御動作を示すフローチャートである。すなわち、CPU11は、顕色剤の出力タイミングを制御する出力制御部として機能する。
図10に示すように、CPU11は、ホストI/F16を介して画像形成装置1に対して入力されたCMYK形式の画像データを取得する(S1001)。これにより、CPU11は、取得した画像データを構成する各ドットを走査順に形成するよう記録ヘッド131を制御してインク吐出を開始する。画像データを取得したCPU11は、取得した画像データの形成対象のドットを構成するKの値が0であるか否かを判定する(S1002)。
Kの値が0である場合(S1002/YES)、有彩色インクと無彩色インクとの着弾時間差が生じることがないので、CPU11は、吐出タイミングの補正を行うことなく、S1005の処理に進む。一方、Kの値が0ではない場合(S1002/NO)、CPU11は、形成対象のドットを構成するC、M、Yの値がすべて0であるか否かを判定する(S1003)。
C、M、Yの値がすべて0である場合(S1003/YES)、有彩色インクと無彩色インクとの着弾時間差が生じることがないので、CPU11は、吐出タイミングの補正を行うことなく、S1005の処理に進む。一方、C、M、Yの値のいずれか1つ以上が0ではない場合(S1002/YES)、CPU11は、記録ヘッド131からのインク吐出タイミングを補正する(S1004)。
具体的には、CPU11は、無彩色インクの着弾位置に対して主走査方向に2分の1ドット分ずらす有彩色インクの吐出タイミングを補正する。例えば、CPU11は、図8に示した記録ヘッドにおいて同じ位置にインク滴が着弾する無彩色インクK3と、有彩色インクM2及びC1との着弾位置が主走査方向に2分の1ドット分ずれるようM2及びC1それぞれのノズル列からの吐出タイミングを補正する。
同様に、CPU11は、無彩色インクK4と、有彩色インクM1及びC2との着弾位置が主走査方向に2分の1ドット分ずれるようC1のノズル列からの吐出タイミングを補正する。
吐出タイミングを補正したCPU11は、取得した画像データの形成対象の全ドットに対する処理が完了したか否かを判定する(S1005)。CPU11は、全ドットに対する処理が完了していない場合(S1005/NO)、他の形成対象のドットに対するS1002からの処理を繰り返し、全ドットに対する処理が完了した場合(S1005/YES)、処理を終了する。
なお、CPU11は、インクの吐出制御を行う際に、用紙へのインクの付着量の総量を規制する処理を行ってもよいし、画像形成装置の特性やユーザの嗜好を反映して画像の明るさ等を補正してもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置1の記録ヘッド131は、所定の2色の有彩色インクを吐出するノズル列が無彩色インクを吐出するノズル列に対して副走査方向にノズル列の半径分ずれるよう構成される。また、本実施形態に係る画像形成装置1において、所定の2色の有彩色インクの着弾位置と無彩色インクの着弾位置とが主走査方向に2分の1ドット分ずれるよう、所定の2色の有彩色インクの吐出タイミングを調整する。
これにより、1色以上の有彩色インクと無彩色インクとが順に吐出されて同じドットを形成する場合に、各インク滴がドットを形成する領域において互いに2分の1ドットずつずれた位置に着弾するので、各インク滴の重複部分が小さくなる。したがって、本実施形態によれば、マルチパス方式で有彩色インクと無彩色インクとを異なる走査タイミングで吐出する画像形成装置1において、インクの定着態様の差異による濃度のばらつきを低減することが可能になる。
なお、上記実施形態においては、図8に示した有彩色インク滴302、303、304の色を限定していないが、無彩色インク滴301に対して対角線上にある有彩色インク滴304を無彩色インクとの色差が最も大きいMのインク滴に限定してもよい。図11は、無彩色インク滴と対角線上にある有彩色インク滴をMのインクに限定した場合における各色インクの着弾位置の関係を例示する図である。
図11に示すように、無彩色インク滴301と対角線上にある有彩色インク滴304との重複部分(縦線でハッチングされた部分)は、無彩色インク滴301と他の有彩色インク滴302、303との重複部分よりも小さい。そのため、有彩色インク滴304を無彩色インク滴301との色差が最も大きいMのインク滴とすることにより、着弾時間差によるインクの定着態様の差異の影響をより低減して、濃度のばらつきをより低減することが可能になる。
また、上記実施形態における吐出タイミングの制御を、画像形成対象の画像の解像度に応じて行うようにしてもよい。比較的低解像度の画像において複数色のインクによりドットを形成する場合、各色のインクの着弾位置のずれがグレーバランスの崩れとして現れてしまう。このようなグレーバランスの崩れを防止するため、CPU11は、画像の解像度に応じて吐出タイミングの補正を行うか否かを判定する。
図12は、画像の解像度に応じたインク吐出制御動作を例示するフローチャートである。図12に示すように、CPU11は、S1201からS1203において、図10に示したS1001からS1003の処理と同様な処理を行う。C、M、Yの値のいずれか1つ以上が0ではない場合(S1203/NO)、CPU11は、S1201において取得した画像データの解像度を取得する(S1204)。
解像度を取得したCPU11は、取得した解像度が予め定められた閾値以上であるか否かを判定する(S1205)。解像度が閾値未満である場合(S1205/NO)、CPU11は、各色のインクの着弾位置のずれによるグレーバランスの崩れを防止するために、吐出タイミングの補正を行うことなく、S1207の処理に進む。
一方、解像度が閾値以上である場合(S1205/YES)、CPU11は、図10に示したS1004と同様な処理を行う(S1206)。吐出タイミングを補正したCPU11は、取得した画像データの形成対象の全ドットに対する処理が完了したか否かを判定する(S1207)。CPU11は、全ドットに対する処理が完了していない場合(S1207/NO)、他の形成対象のドットに対するS1202からの処理を繰り返し、全ドットに対する処理が完了した場合(S1207/YES)、処理を終了する。
このような構成により、各色のインクの着弾位置のずれによるグレーバランスの崩れの防止を優先しながら、インクの定着態様の差異による濃度のばらつきを低減することが可能になる。
また、上記実施形態において、各色インクの着弾位置をずらす他、さらに着弾時間差に応じて階調値を補正してもよい。図13は、着弾時間差と階調値の補正値との関係を定める階調値補正テーブルを例示する図である。階調値補正テーブルは、例えば、画像形成装置1のROM12に格納されている。図13に示すように、階調値補正テーブルは、着弾時間差の範囲ごとに各階調値の補正値が関連付けられた情報である。
図5及び図6を示して上述したように、着弾時間差が大きいほど、インク濃度が高くなる傾向がある。そこで、図13に示すように、階調値補正テーブルは、着弾時間差が予め定められた値(例えば、0.5秒)以上である場合、着弾時間差が大きいほど階調値が小さくなる(インク濃度が低くなる)ように定められている。
また、図6に示すように、着弾時間差が一定の大きさ以上になると、インク濃度が変動しなくなる。そこで、階調値補正テーブルは、着弾時間差が予め定められた値(例えば、1.5秒)以上である場合、同じ階調値で補正するように定められている。
図14は、図13に示した階調値補正テーブルに基づいて階調値を補正する場合におけるインク吐出制御動作を例示するフローチャートである。図14に示すように、CPU11は、S1401からS1403において、図10に示したS1001からS1003の処理と同様な処理を行う。
C、M、Yの値のいずれか1つ以上が0ではない場合(S1403/NO)、CPU11は、形成対象のドット位置における着弾時間差を取得する(S1404)。すなわち、CPU11は、有彩色顕色剤が用紙上へ出力されてから無彩色顕色剤が用紙上へ出力されるまでの時間差である出力時間差を取得する出力時間差取得部として機能する。なお、着弾時間差は、例えば、形成対象ドット位置及び記録ヘッド131の移動速度に基づいて求められる。
着弾時間差を取得したCPU11は、図13に示した階調値補正テーブルを参照して、形成対象のドット位置の画像の階調値を、取得した着弾時間差が含まれる着弾時間差の範囲に関連付けられた階調値に補正する(S1405)。すなわち、CPU11は階調値補正部として機能する。階調値を補正したCPU11は、図10に示したS1004と同様な処理を行う(S1406)。
S1405及びS1406の処理により、補正された階調値でドットが形成されるよう各色インクが記録ヘッド131から吐出されるとともに、各有彩色インクの着弾位置が無彩色インクの着弾位置と所定量分ずれるよう各色インクが吐出される。
このような構成により、各色インクの着弾位置をずらすだけでなく、着弾時間差に応じて階調値を補正してインク濃度を均一化するので、濃度のばらつきをより低減することが可能になる。なお、図13に示した階調値補正テーブルにおける着弾時間差の範囲は例示であり、異なる範囲で定められてもよく、範囲が細かく分類されるほど階調値の補正精度が向上する。
また、上記実施形態において、各色インクの着弾位置をずらす他、さらに着弾時間差に応じて記録ヘッド131を駆動させる駆動波形のパターンを選択してもよい。図15及び図16は、上述した駆動波形生成手段により生成される駆動波形のパターンを例示する図である。図15に示すように、駆動波形は、例えば、1印刷周期(1駆動周期)内に、基準電位Veから立ち下がる波形要素と、立下り後の状態から立ち上がる波形要素等とで構成される、8個の駆動パルスP1ないしP8からなる。1印刷周期は、最大の駆動周波数により決まる。
また、図16に示すように、駆動波形は、パターンによって、電圧の立ち上げ及び立ち下げ量が異なり、立ち上げ及び立ち下げ量が多いほど、吐出されるインク量は多くなる。すなわち、図16において一点鎖線で示したパターン1の駆動波形により記録ヘッド131が駆動する場合、吐出されるインク量が最も多くなり、点線で示したパターン3の駆動波形により記録ヘッド131が駆動する場合、吐出されるインク量が最も少なくなる。
図17は、着弾時間差と駆動波形パターンとの関係を定める駆動波形パターンテーブルを例示する図である。駆動波形パターンテーブルは、例えば、画像形成装置1のROM12に格納されている。図17に示すように、駆動波形パターンテーブルは、着弾時間差の範囲ごとに駆動波形パターンが関連付けられた情報である。
図5及び図6を示して上述したように、着弾時間差が大きいほど、インク濃度が高くなる傾向がある。そこで、図13に示すように、駆動波形パターンテーブルは、着弾時間差が予め定められた値(例えば、0.5秒)以上である場合、着弾時間差が大きいほどインクの吐出量が少なくなる(インク濃度が低くなる)駆動波形パターンが選択されるように定められている。
また、図6に示すように、着弾時間差が一定の大きさ以上になると、インク濃度が変動しなくなる。そこで、駆動波形パターンテーブルは、着弾時間差が予め定められた値(例えば、1.5秒)以上である場合、同じ駆動波形パターンが選択されるように定められている。すなわち、図17に示した駆動波形パターンテーブルの駆動波形パターンは、パターン1からパターンnの順に電圧の立ち上げ及び立ち下げ量が少なくなる。
図18は、図17に示した駆動波形パターンテーブルに基づいて駆動波形を選択する場合におけるインク吐出制御動作を例示するフローチャートである。図18に示すように、CPU11は、S1801からS1804において、図14に示したS1401からS1404の処理と同様な処理を行う。
着弾時間差を取得したCPU11は、図17に示した駆動波形パターンテーブルを参照して、取得した着弾時間差が含まれる着弾時間差の範囲に関連付けられたパターンの駆動波形を選択して記録ヘッド131を駆動するよう印刷制御部17を制御する(S1805)。すなわち、CPU11は、駆動波形を取得する駆動波形取得部として機能する。駆動波形パターンを選択したCPU11は、図10に示したS1004と同様な処理を行う(S1806)。
S1805及びS1806の処理により、選択された駆動波形パターンにより記録ヘッド131から着弾時間差に応じた出力量で各色インクが吐出されるとともに、各有彩色インクの着弾位置が無彩色インクの着弾位置と所定量分ずれるよう各色インクが吐出される。
このような構成により、各色インクの着弾位置をずらすだけでなく、着弾時間差に応じてインクの吐出量を調整してインク濃度を均一化するので、濃度のばらつきをより低減することが可能になる。なお、図17に示した駆動波形パターンテーブルにおける着弾時間差の範囲は例示であり、異なる範囲で定められてもよく、範囲が細かく分類されるほど階調値の補正精度が向上する。
また、上記実施形態における吐出タイミングの制御を、形成対象のドット領域の明るさ、すなわち画像形成対象の画像の明るさに応じて行うようにしてもよい。形成対象のドットの領域には、シャドー領域やハイライト領域がある。形成対象のドット領域がハイライト領域から中間色領域(ハイライト領域とシャドー領域の間の領域)である場合、各色のインクの着弾位置のずれがグレーバランスの崩れとして現れてしまう。このようなグレーバランスの崩れを防止するため、CPU11は、形成対象のドット領域の明るさに応じて吐出タイミングの補正を行うか否かを判定する。
図19は、形成対象のドット領域の明るさに応じたインク吐出制御動作を例示するフローチャートである。図19に示すように、CPU11は、S1901からS1903において、図10に示したS1001からS1003の処理と同様な処理を行う。C、M、Yの値のいずれか1つ以上が0ではない場合(S1903/NO)、CPU11は、形成対象のドットを構成するC、M、Y、Kの階調値の和が予め定められた閾値以下であるか否かを判定する(S1904)。
C、M、Y、Kの階調値の和が閾値よりも大きい場合(S1904/NO)、CPU11は、形成対象のドット領域がハイライト領域から中間色領域であり、グレーバランスの崩れを防止するために、吐出タイミングの補正を行うことなく、S1906の処理に進む。一方、C、M、Y、Kの階調値の和が閾値以下である場合(S1904/YES)、CPU11は、図10に示したS1004と同様な処理を行う(S1905)。
吐出タイミングを補正したCPU11は、取得した画像データの形成対象の全ドットに対する処理が完了したか否かを判定する(S1906)。CPU11は、全ドットに対する処理が完了していない場合(S1906/NO)、他の形成対象のドットに対するS1902からの処理を繰り返し、全ドットに対する処理が完了した場合(S1906/YES)、処理を終了する。
このような構成により、各色インクの着弾位置のずれによるグレーバランスの崩れの防止を優先しながら、インクの定着態様の差異による濃度のばらつきを低減することが可能になる。
また、図19に示した実施形態においては、CPU11は、形成対象のドット領域の明るさを、C、M、Y、Kの階調値の和に基づいて判定する場合を例として説明した。しかしながら、これは一例であり、形成対象のドット領域の明るさを判定できればどのような態様であってもよい。例えば、CPU11は、C、M、Y、Kの階調値から各色のインク付着量の和に基づいてドット領域の明るさを判定してもよい。その他、例えば、CPU11は、各色のインク付着量におけるKのインクの付着量とCMY各色のインクの付着量との比率に基づいてドット領域の明るさを判定してもよい。
また、これらの実施形態においては、図8を示して説明した各色インク滴の着弾位置のずれ量が2分の1ドット分である場合を例として説明した。しかしながら、これは一例であり、3分の1ドット分及び4分の3ドット分等、1ドットの大きさ未満の所定量であってもよい。
また、これらの実施形態に係る記録ヘッド131の構成は、図3に示した構成に限らない。例えば、K3及びK4のインクを吐出するノズル列を構成する記録ヘッドが、副走査方向に対してK1及びK2のインクを吐出するノズル列を構成する記録ヘッドの逆側に搭載されてもよい。また、例えば、CMYの各色インクを吐出するノズル列が色毎に主走査方向に対して対象に配置されていれば、各色インクを吐出するノズル列の並び順は、図3以外の並び順であってもよい。
また、上述した各実施形態を組み合わせてもよい。例えば、図12に示した実施形態において解像度が閾値未満である場合に、CPU11は、図14に示した実施形態における階調値補正を行い、吐出タイミング補正を行わないようにしてもよい。同様に、例えば、CPU11は、図12に示した実施形態において解像度が閾値未満である場合に、CPU11は、図18に示した実施形態における駆動波形パターンを選択し、吐出タイミング補正を行わないようにしてもよい。
同様に、図19に示した実施形態と、図14に示した実施形態又は図18に示した実施形態とを組み合わせてもよい。また、図12に示した実施形態及び図19に示した実施形態を組み合わせて、吐出タイミング補正を行うか否かを判定するようにしてもよい。