本願で開示する飲料抽出装置は、貯水タンクと、前記貯水タンクから送られた水を加熱して湯とする加熱手段と、抽出原料を収容する原料容器と、前記原料容器を保持する容器保持部と、前記原料容器の上方を開閉可能に覆うとともに前記湯を吐出する吐出口を備えた蓋体とを有し、前記加熱手段で生成された湯を用いて前記抽出原料から飲料を抽出する飲料抽出部とを備え、前記原料容器は、前記抽出原料をそのまま収容可能な抽出カップと、前記抽出カップに積層配置されて前記抽出カップの上方を覆うカップ蓋とを有し、前記カップ蓋は、中央部分に配置された前記吐出口からの湯を前記抽出カップ内の前記原料に供給可能とする複数個の供給口と、中央部分を除いて形成された前記抽出カップ内に位置させる原料規制面とを備えている。
本開示にかかる飲料抽出装置は上記の構成を備えることで、抽出原料をそのまま配置する抽出カップを用いて、所定濃度での飲料の抽出を行うことができる。また、蓋体の吐出口から原料容器に供給される湯が漏れることを効果的に回避することができる。この結果、抽出原料をそのまま用いた場合でも、おいしい飲料を抽出することができ、不所望な湯漏れの生じない、安全性の高い飲料抽出装置を実現することができる。
本開示にかかる飲料抽出装置において、前記カップ蓋は、前記供給口が前記原料規制面よりも高い位置に形成されていることが好ましい。このようにすることで、抽出カップ内の抽出原料が抽出時に膨張して供給口を塞いでしまう事態を効果的に防止することができる。
また、この場合において、前記カップ蓋の前記供給口は、前記原料規制面との間に、前記抽出カップの高さ方向に形成された円筒状の空間を介して配置されていることがより好ましい。このようにすることで、抽出時に供給される湯や蒸気を散乱させた状態で抽出原料に供給する効果を付加することができる。
また、前記抽出カップは、側面の少なくとも一部が前記湯を透過可能な濾過部材で形成されていて、前記濾過部材の上端部が、積層配置された前記カップ蓋の前記原料規制面よりも高い位置にあることが好ましい。このようにすることで、抽出カップの側面から飲料を効率よく抽出することができる。
この場合において、前記濾過部材の、前記抽出カップの高さ方向における中間部分が、前記湯を通さない遮蔽部材で遮蔽されていることが好ましい。このようにすることで、抽出された飲料の濃度が低下することを、効果的に防止することができる。
さらに、前記原料規制面は、前記抽出カップの側面との間に所定の間隙を介して配置されていることが好ましい。このようにすることで、原料規制面の下側に浸透した湯を抽出原料の上方に迂回させることができ、抽出される飲料の濃度を高く維持することができる。
また、前記原料容器が、前記抽出原料が封入されたポッド部材を選択的に使用可能であることが好ましい。このようにすることで、さまざまな抽出原料を選択して一杯分の飲料を容易に抽出できるポッドタイプの抽出原料を併用可能な飲料抽出装置を実現することができる。
以下、本願で開示する飲料抽出装置について図面を参照して説明する。
(実施の形態)
以下では、本願で開示する飲料抽出装置の実施の形態として、抽出原料としてコーヒー粉末を用いるコーヒーメーカーを例示して説明する。
本実施形態にかかるコーヒーメーカーは、レギュラーコーヒー用のポッドタイプのコーヒー原料を用いて一杯分のコーヒーを抽出可能であるとともに、挽かれたコーヒー粉末を用いても一杯分のコーヒーを抽出可能なコーヒーメーカーである。
図1に、本実施形態にかかるコーヒーメーカーの外観構成を示す。
本実施形態にかかるコーヒーメーカー100は、本体部1と本体部1の側方に配置された貯水タンク2とを備えている。
本体部1は、全体として嵩高の略直方体形状をしており、本体部1の内部には、貯水タンク2からの水を送水する送水ポンプや、送水された水を加熱するボイラー部などを備えた加熱手段が配置されている。本体部1の幅狭の側面である手前側側面(一側面)の上部には、本体部1から手前側に突出するようにして全体の平面視形状が円形の飲料抽出部であるドリップ部11が配置されている。また、本体部1の手前側側面の下部には、ドリップ部11と本体部1の高さ方向を介して対向するように、手前側に突出して平面視形状が円形のトレイ12が配置されている。本体部1の手前側側面は、ドリップ部11とトレイ12との間の部分が、ドリップ部11とトレイ部12の形状に合わせて円筒形状に湾曲した湾曲凹面13となっている。
なお、図1において、トレイ12はその底部が本体部1の底部と同じ高さとなるように、最も下側の位置に配置された状態が示されているが、載置されるコーヒーカップ等の高さに応じてトレイ12の上下方向位置を可変して固定できる構造とすることができる。このようにすることで、ドリップ部11の下端に位置する吐出口とコーヒーカップ等との距離が大きくなりすぎて、ドリップ部11から供給されるコーヒーが撥ねてコーヒーカップからこぼれてしまうことを回避することができる。
本実施形態のコーヒーメーカー100では、本体部1の上面に操作部14が配置されている。操作部14には、ユーザーが好みに応じて抽出されるコーヒーの濃度を選択するなど、各種の抽出メニューを選択して動作を開始させるスイッチボタン15が配置されている。なお、詳細な説明は省略するが、操作部14にはスイッチボタン15の他に、コーヒーメーカー100の動作状態や、ドリップ部11にコーヒー粉末を収容した原料容器が正しく装着されていないこと、貯水タンクに所定量の水が入っていないことなどの各種の異常状態を表示するランプ、さらには、異常状態を含むコーヒーメーカー100の動作状態を表示する表示素子などを配置することができる。
本実施形態のコーヒーメーカー100では、貯水タンク2は、本体部1の幅広側の側面、すなわち、図1において向かって右側の側面に並立した円筒形状として形成されている。貯水タンク2は、着脱可能で内部に水を溜めることができるタンク部2aと、本体部1の底部部分と接続されるとともに上部にタンク部2aが載置されるベース部2bとから構成されていて、タンク部2aをベース部2bに正しく載置すると、ベース部2b内に配置された図示しない給水管を介して、タンク部2aの内部の貯水空間と本体部1内の給湯機構とが接続されるようになっている。
なお、本実施形態のコーヒーメーカー100では、デザイン上の観点から貯水タンク2を本体部1の側方に並立する円筒形状としているが、貯水タンク2の形状には制約はない。また、貯水タンクの配置位置としても、本体部1の上部または側面の一部を切り欠いて貯水タンクを配置する部分を形成した構成や、本体部1の内部に貯水タンクを配置する構成など、各種の構成を採用することができる。さらに、貯水タンク2をベース部2bとベース部2bに対して着脱可能なタンク部2aとの2つの部材で構成するのではなく、1つの部材もしくは3つ以上の部材からなる貯水タンク2を使用することができる。さらに、貯水タンク2を構成する部材にも制限はなく、貯水タンク2の側面に透明な窓部を設けてタンク部2a内の水の量を容易に確認することができる構成とするなど、所定量もしくは所定量以上の水を収容することができるものであれば、貯水タンク2として従来周知の各種形状、各種構成のものを使用することができる。
次に、図2を用いて、本実施形態のコーヒーメーカー100の本体部1内部の構成と、ドリップ部11の構成を説明する。
図2は、本体部とドリップ部との断面構成を示す断面図であり、貯水タンクが配置されている側面側から見た状態を示している。
図2に示すように、本体部1の内部には、電源配置部21、流量センサ22、送水ポンプ23、ボイラー部24、給湯管25、操作基板26が配置されている。
電源配置部21は、本体部1内部の底面側に形成されていて、内部には、商用電源に接続される図示しない電源ケーブルに接続されて、本体部1内部に配置された送水ポンプ23やボイラー部24の加熱ヒータなどを駆動する電源を供給する電気回路部品が配置された電源回路基板21aが配置されている。
流量センサ22は、電源配置部21の上部に配置されていて、図2では現れない配管を介して貯水タンク2と接続されていて、貯水タンク2のタンク部2aに貯水されている水は、流量センサ22で流量を計測された後に図2では一部のみが現れている配管を介して送水ポンプ23に供給される。
送水ポンプ23は、電源配置部21の上部に流量センサ22と並ぶように配置されていて、貯水タンク2のタンク部2a内の水を、流量センサ22と流路を形成する配管を介して吸引して、図2において一部が現れている配管を介してボイラー部24へと送水する。
ボイラー部24は、流量センサ22のさらに上部の本体部1内部のやや上方よりの部分に配置されていて、送水ポンプ23により圧送されてきた水が流れる流路と、流路を取り巻くように配置されて流路内の水を加熱するヒータとを備えている。ボイラー部24で流路内の水がヒータにより加熱されて生成された蒸気や湯は、本体部1内部の上端部分に向かって配置された給湯管25を通って、ドリップ部11へと送られる。
本体部1の上面に形成された操作部14の下側には、操作部14に配置されたスイッチボタン15に接続されたスイッチング素子が搭載された操作基板26が配置されている。
本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、送水ポンプ23やボイラー部24を制御して所定の条件でコーヒーの抽出を行う、図示しない制御回路が電源配置部21の電源回路基板21aに搭載されている。制御回路は、流量センサ22の出力である流量信号や、ボイラー部24内における蒸気や湯の温度を検知する温度センサからの信号などを受信して、送水ポンプ23の総水量や送水タイミング、ボイラー部24における加熱度合いなどを制御する。また、操作基板26に搭載されたスイッチング素子からの信号は、図示しないコネクタ素子などを介して制御回路に伝達される。
このような制御回路を備えることで、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、操作部14の操作ボタン15を介して行われるユーザーからの指示に応じて、例えば、湯を供給するドリップ工程の前に所定時間蒸気のみをコーヒー粉末に供給するむらし工程を行うなど、抽出量や抽出濃さに応じておいしいコーヒーを抽出する抽出工程を自動的に実行することができる。
制御回路は、マイクロコンピュータや各種論理回路により構成でき、制御ICとしてチップ化されて構成することができる。
なお、制御回路は、比較的熱に弱い電子回路で構成されるため、発熱部材であるボイラー部24から隔離されるとともに、水漏れや高温となる畏れがある給水機構に対して隔離された、本体部1内部の上方に配置することが好ましい場合がある。このため、例えばスイッチング素子などが搭載された操作基板26上に、制御回路を配置することができる。また、適切な熱遮蔽処置や防水処置を採ることで、本体部1内部の適切な場所に配置された制御回路基板上に、制御回路を搭載することができる。
本体部1の上端側の図2中左側端部(図1における手前側の端部である一側面)には、ドリップ部11を構成する蓋体30がヒンジ機構33によって、前記左側端部から後退する方向である、図2中矢印Aまたは矢印Bの方向に回動可能に取り付けられている。
蓋体30の内部には、給湯管25に接続されたドリップ配管34が形成され、ドリップ配管34の先端は蓋体30の内側中央に配置された吐出口35に接続されている。なお、本実施形態のコーヒーメーカー100では、蓋体30は平面視円形状に形成されていて、中央の内側面に吐出口35を備えた中心部32と、中心部を取り巻くように同軸状に形成されて、中心部32に対して所定の角度回動可能な外周部31とから形成されている。
蓋体30は、図中矢印B方向に回動した状態、すなわち図2に示すように水平となっている状態で、容器保持部であるホルダ受け部50との間に配置された原料容器40としての、容器ホルダ41、および、容器ホルダ41の内部に配置される原料保持部材(図2ではポッドタイプに対応したポッド用アダプタ42が記載されている)とを挟み込んだ状態となる。このように蓋体30とホルダ受け部50とで原料容器40を挟み込んだ状態で固着させ、吐出口35から所定のタイミングで所定量の蒸気や湯が吐出されることで、原料保持部材に収容されたコーヒー粉末からコーヒーが抽出される。
なお、本実施形態のコーヒーメーカー30に用いられる蓋体30は、例示した平面視円形状のものに限られず、例えば平面視したときに全体として正方形のものなど、コーヒーメーカーのデザイン性と原料容器を開閉可能に覆う機能性との観点から、その平面形状を適宜選択することができる。また、蓋体30の開閉機構についても、ヒンジ機構を用いて回動可能なものに限られず、ロックを解除したときに完全に取り外しが可能な形態の蓋体とすることもできる。さらに、蓋体を回動可能とする場合でも、回動方向は、図示したような本体部の上面に対して手前側と奥側とに回動するものに限られず、本体部の上面の平面方向(水平方向)に回動可能であるものなど、各種の形態を採用することができる。
図3は、本実施形態にかかるコーヒーメーカーにおける、ドリップ部の構成を説明するための分解図である。
図3に示すように、ドリップ部11には、ヒンジ機構33(図2参照)により図中後方側へと回動してドリップ部11の上方を開閉可能に覆うことができる蓋体30と、本体部1の手前側側面の底部に配置されたトレイ12と所定の間隔を有してこれと対向するように配置されたホルダ受け部50との間に、抽出原料を収容する原料容器40(40a、40b)が配置されて構成される。
本実施形態のコーヒーメーカー100では、ホルダ受け部50に搭載される容器ホルダ41と、容器ホルダ41と重ね合わせることで容器ホルダ41の内側の所定位置に保持される原料保持部材とが、蓋体30とホルダ受け部50との間に挟み込まれる原料容器40を構成する。ポッドタイプの収容体に収容されたコーヒー粉末を用いてドリップする場合には、ポッド用アダプタ42が原料保持部材として使用され、原料容器40aを構成する。また、ミルなどによって挽かれたコーヒー粉末を用いてドリップする場合には、散水板43とフィルタケース44とが積層されて原料保持部材となり、容器ホルダ41内に配置されて原料容器40bを構成する。
なお、蓋体30の内側面、すなわち、原料容器40に対向する面には、中央部に形成された吐出口35の周囲に中央パッキン36が、さらに、中央パッキン36の周囲には中央パッキン36と同心円状の環状パッキン37が配置されている。また、蓋体30の回動可能な外周部31の内側面には、係持ピン38が原料容器40に向かって突出形成されていて、この係持ピン38が原料容器40に形成された第1の係持部材とホルダ受け部50に形成された第2の係持部材とに嵌合することで、蓋体30が原料容器40とホルダ受け部50とにしっかりと固着される。蓋体30が原料容器40とホルダ受け部50とに一体的に固着されることで、中央パッキン36と環状パッキン37とが原料容器40の上面部分に密着して、吐出口35と抽出原料が収容されたポッドの上面もしくは原料保持部材の上面との間を、外部の空間に対して密閉することができる。
なお、図3に示すように、本体部1の貯水タンク2が隣接して配置されていない側(図3における向かって左側)の下部から、商用電源に接続される電源プラグ16が延出している。電源プラグ16は、一端が本体部1内部の電源配置部21の電源回路基板21aに接続されていて、コーヒーメーカー100に電源を供給する。なお、コーヒーメーカーを収納する時の便宜を図るために、電源プラグ16とこれに接続されたコードを、本体部1の内部に収容可能な構成とされる場合がある。
次に、ドリップ部11の構成について説明する。
図4は、抽出原料としてポッドを用いる場合に使用される原料保持部材を備えた原料容器の構成を説明する分解斜視図である。
図4に示すように、抽出原料としてポッドタイプの容器に収容されたものを使用する場合は、容器ホルダ41内に、ポッド用アダプタ42を装着して原料容器40aを形成する。
容器ホルダ41は、底面側にいくにつれて少しずつ径小となる側面を有する有底略円筒状の容器であり、内側に形成される空間41aの上部に外側に広がる円環状のつば部41bが形成され、つば部41bの外周には上方へ向かう壁部41cが形成されている。壁部41cの一部には、上端から外側方向に延在する幅広の把持部41dが形成されていて、ユーザーが容器ホルダ41を容易に持つことができるようになっている。また、把持部41dが形成されている側に対向する部分では、壁部41cに切り欠き部41eが形成されていて、切り欠き部41eが形成されている部分では壁部41cは形成されていない。
なお、図4での図示は省略するが、容器ホルダ41の底面41gの中央には貫通孔が形成されていて、抽出されたコーヒーは、この貫通孔を通ってトレイ12上のコーヒーカップに注がれる。
ポッド用アダプタ42は、有底略円筒状の容器である。ポッド用アダプタ42は、内側に形成される空間42aの上部に外側に向かって張り出す円環状のつば部42bが形成され、つば部42bの外周部分は、上方に向かって延出する壁部42cとなっている。つば部42cの一部分から外方に向けて、把持部42dが形成されていて、ユーザーは、把持部42dを用いてポッド用アダプタ42を容易に把持することができる。
ポッド用アダプタ42の底面42gにも貫通孔が形成されているため、ポッド用アダプタ42に載置された状態のポッドから抽出されたコーヒーは、この底面42gの貫通孔を通過して容器ホルダ41の内部に流れ、容器ホルダ41の底面41gの貫通孔を介してコーヒーカップに注がれる。
ポッド用アダプタ42の壁部42cの外径は、容器ホルダ41の壁部41cの内径に対してわずかに小さく形成されている。このため、容器ホルダ41の内側にポッド用アダプタ42を配置すると、ポッド用アダプタ42のつば部42bの裏側が容器ホルダ41のつば部41b上に載置されることとなり、ポッド用アダプタ42を容器ホルダ41の内側に配置することができる。
ポッド用アダプタ42の壁部42cの上端部と容器ホルダ41の壁部41cの上端部とは、両者が重ね合わせられた際にほぼ同一の高さとなるように形成されているため、ポッド用アダプタ42と容器ホルダ41とを重ね交わせた際に、両者をより一体のものに近い状態で取り扱うことができる。また、容器ホルダ41の壁部41cに形成された切り欠き部41eの幅がポッド用アダプタ42の把持部42dの幅とほぼ同じとなっており、さらに、容器ホルダ41のつば部41bに形成された切り欠き41fと、ポッド用アダプタ42の把持部42dの根本部分に形成された下側への突起部42fとが嵌合するようになっている。このため、容器ホルダ41内に載置した際には、ポッド用アダプタ42の把持部42dが容器ホルダ41の把持部41dと互いに対向する方向になるよう、両者の向きが整えられる。このようにして、容器ホルダ41とポッド用アダプタ42とを重ね合わせた際には、両者の位置関係が正確に定まることとなる。
なお、容器ホルダ41の上部側面には、蓋体30の係持ピン38と係合することが可能な第1の係持部材41hが形成されている。また、ポッド用アダプタ42のつば部42bの外側には、壁部42cよりも高く形成された一対の位置規制衝立42hが形成されている。位置規制衝立42hは、蓋体30が原料容器40aを覆った際に、蓋体30の内面側に形成された位置決め溝と嵌合して、蓋体30と原料容器40aと間の位置関係をより正確に規制することができる。また、ポッド用アダプタ42の把持部42dの上面側部分には、所定の広さを有する平坦面42eが形成されている。蓋体30が原料容器40aを覆った際に、蓋体30のヒンジ機構33近傍に配置された押圧部材が、この平坦面42eを押圧することで、蓋体30と原料容器40aの密着性をより向上することができる。
図5は、抽出原料としてコーヒー粉末を直接用いる場合の、原料保持部材を備えた原料容器の構成を説明する分解斜視図である。
本実施形態のコーヒーメーカー100では、挽かれた状態のコーヒー粉末を直接用いてドリップする場合には、ポッド用ホルダ42とこれに載置されるポッド部材に替えて、散水板43とコーヒー粉末を収容するフィルタケース44とが用いられる。この場合には、散水板43と内部に所定量のコーヒー粉末を収容したフィルタケース44とを重ね合わせて容器ホルダ41内に収容することで原料容器40bが構成され、原料容器40bが、蓋体30とホルダ受け部50との間に保持されることでドリップ部11が構成される。
容器ホルダ41は、図4に示したポッドタイプの容器に収容されたコーヒー粉末を用いる場合と同じ部材であるため、説明は省略する。
散水板43は、全体が円板形状として形成されていて、上面43aの外周部分に上方に向かう壁部43bが形成されている。上面43aは所定幅の円環状に形成されていて、上面43aの内側部分には下方側に突出した下方突出部43cが形成されている。下方突出部43cの中央には、小径の上方突出部43dが形成されていて、上方突出部43dの中央には円形の凹面43eが形成され、凹面43eには開口43fが複数個形成されている。
上面43aの一部分からは、外方に伸びる把持部43gが形成され、ユーザーは把持部43gを利用することで容易に散水板43を持つことができる。把持部43gの上面側部分には、所定の広さを有する平坦面43hが形成されている。この平坦面43hは、図4で説明したポッド用アダプタ42の把持部42d上面の平坦面42eと同様に、蓋体30が原料容器40aを覆った際に、蓋体30のヒンジ機構33近傍に配置された押圧部材がこの平坦面43hを押圧することで、蓋体30と原料容器40bの密着性をより向上することができる。また、散水板43の把持部43gとは反対側の壁部43dには壁部43dよりもさらに高く形成されたつまみ部43iが形成されていて、ユーザーが散水板43を持つときに、把持部43gに加えてつまみ部43iを補助的に利用することができる。
フィルタ部材44は、上方に向かって経大となる略カップ形状の部材である。
フィルタ部材44の上部には環状のつば部44aが外方に向かって形成され、つば部44aの外周には上方に向かう壁部44bが形成されている。フィルタ部材44の側面は、所定の間隔で配置された柱状部材44cと柱状部材44cの間に配置されたメッシュ部材44dで構成されていて、フィルタ部材44の内部に所定量のコーヒー粉末を入れて1杯分のコーヒーを抽出することができる。
メッシュ部材44dとしては、一例として、ステンレス製で200番手のメッシュを用いることができる。なお、フィルタ部材44dとしては、ステンレスメッシュの他にもナイロンメッシュなどのメッシュ部材を用いることができる。さらに、メッシュの番手としても、抽出される飲料の好適な抽出速度を考慮して、100番程度から300番程度の所定の粗さのメッシュを用いることができる。
つば部44aの一部分にはつば部44aより外方へ延出する把持部44eが形成され、把持部44eの形成部分では、壁部44bが形成されずに切り欠き部44fとなっている。
壁部44bの内径は、散水板43の壁部43bの外径よりもわずかに大きく形成されているため、フィルタ部材44の上部に散水板43を載置することができる。また、フィルタ部材44の把持部44eの幅は、容器ホルダ41の切り欠き41fの幅よりもわずかに小さく形成され、さらに、散水板43の把持部43gの裏面内部に収容可能な大きさとなっている。また、フィルタ部材44の切り欠き部44fの幅が、散水板43の把持部43gの幅よりもわずかに大きく形成されている。このため、容器ホルダ41とフィルタ部材44と散水板43とを、回転方向における互いの位置合わせを行った状態で、この順に積層することができる。
なお、フィルタ部材44のつば部44aの外側には、壁部44bよりも高く形成された一対の位置規制衝立44gが形成されている。位置規制衝立44gは、ポッド用アダプタ42の位置規制衝立42hと同様に、蓋体30が原料容器40bを覆った際に、蓋体30の内面側に形成された位置決め溝と嵌合して、蓋体30と原料容器40bと間の位置関係をより正確に規制することができる。
本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、抽出原料としてポッドを用いる場合には、図4に示したポッド用アダプタ42を容器ホルダ41に載置して原料容器40aを構成してドリップ部11に配置し、抽出原料としてコーヒー粉末を直接用いる場合には、図5に示した散水板43とフィルタ部材44とを積層して容器ホルダ41に載置して原料容器40bを構成してドリップ部11に配置することで、いずれの抽出原料を用いた場合でも同様に簡易にコーヒーを抽出することができる。このとき、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100においては、抽出原料としてポッドを用いる場合とコーヒー粉末を直接用いる場合とのいずれの場合でも、ユーザーは、内部にコーヒー粉末を収容した状態の原料容器40(40a、40b)を容器ホルダ41の把持部41dを用いて一体的に取り扱うことができる。
図6は、原料容器が取り外された状態のコーヒーメーカーを示す斜視図である。
本実施形態のコーヒーメーカー100では、本体部1の幅狭側面(一側面)側に配置されたドリップ部11の蓋体30がヒンジ機構33により回動可能となっていて、図6に示すように、蓋体30はドリップ部11の原料容器40の上方を覆った閉塞状態から一側面から後退する方向に所定の角度(一例として約50度)開いた開放状態へと移行できるようになっている。
ドリップ部11において、原料容器40が装着されるホルダ受け部50は、円板状の底面51と上方に行くにつれて経大となる傾斜面として形成された側面52と、側面52の上端部に形成された外方へ広がる円環状のつば部53と、つば部53の外周部分から上方へと延出された壁部54とで構成されている。
ホルダ受け部50の底面51には、中央に底面51と同心円状に開口55が形成されている。また、図6に示すように、ホルダ受け部50の側面52、つば部53、壁部54は、いずれも本体部1側のみに形成されていて、ホルダ受け部50の側面52、つば部53、壁部54は、いずれも底面51の中心を通る中心線に沿った切断線で、本体部1の一側面の側に位置する約半分が切断されて開放された形状となっている。
本実施形態のコーヒーメーカーにおける原料容器として、図4および図5を用いて詳細に説明したとおり、ポッドを用いる場合の原料容器40aとコーヒー粉末をそのまま用いる場合の原料容器40bとは、それぞれを構成する部材は異なるものの、いずれも同じ容器ホルダ41に載置され、原料容器40として組み立てられた状態で同じ外観形状となるように構成されている。
また、本実施形態のコーヒーメーカー100における容器ホルダ41は、底面側にいくにつれて少しずつ径小となる側面を有する略円筒状に形成されており、原料容器40として組み立てられた場合において、ユーザーが把持する把持部41dの反対側には側面から平板状に伸延する部材として把持部42dと43gのみが形成された形状となっている。このため、本体部1の一側面である幅狭側の側面(図6における左手前側側面)に対峙した状態のユーザーが、ホルダ保持部50上に原料容器40を差し込むように載置しようとした場合に、ホルダ保持部50と干渉する部分が無くユーザーは、原料容器40を真っ直ぐに押し込むようにして、ホルダ受け部50上に位置させることができる。
一方、容器ホルダ41の底面41gには、底面41gに形成された貫通孔41jを取り巻くように筒状突起部41iが形成されていて(図9参照)、この筒状突起部41iは、ホルダ受け部50の底面51に形成された開口55に嵌合する大きさとなっている。このため、ユーザーは、筒状突起部41iがホルダ受け部50の底面51を超えて開口55に嵌合するように、少しだけ原料容器40を持ち上げるだけで、原料容器40をホルダ受け部50上の正しい位置に載置することができる。したがって、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、ドリップ部11に原料容器を載置するに当たって原料容器40の上方を覆う蓋体30が完全に開く必要はなく、図6に示すように所定角度(一例として約50度)の回動が行われれば、ドリップ部11の所定位置に本体部1の側方から原料容器40を載置することができる。
一方、上述のように、ホルダ受け部50の底面51は円環状に形成されると共に、底面51の開口55には、容器ホルダ41の底面の筒状突起部41iが嵌合するようになっている。また、原料容器40においてドリップ部11に装着された状態での奥側である、本体部1の内部側に向かって伸延する把持部42dと43gの上面には、平坦面42eと43hとがそれぞれ形成されている。この平坦面42eと43hとは、蓋体30が閉塞した際には蓋体30のヒンジ機構33近傍に形成された押圧部材となる抑えリブ39(図6参照)によって押圧されるため、蓋体30が原料容器40を覆った状態でロックされれば、原料容器40をドリップ部11内でしっかりと保持することができ、手前側に外れてしまうことはない。このため、本実施形態のコーヒーメーカー100では、従来のコーヒーメーカーと比べて本体部1内部への原料容器40の装着が格段に容易であり、また、本体部1の側方から原料容器40を着脱できるので、コーヒーメーカー100の載置場所として低い位置を選ばなくてはならないという不都合が生じない。
次に、本実施形態のコーヒーメーカー100において、抽出原料としてコーヒー粉末を直接用いた構成の詳細について説明する。
本実施形態のコーヒーメーカー100では、抽出原料としてコーヒー粉末を直接用いる場合に使用される原料容器40bとして、カップ蓋である散水板43と、原料を収容する抽出カップであるフィルタ部材44との形状が、以下で詳述する構成となっている。このため、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、ポッドタイプのように不織布容器に収容されていないコーヒー粉末を抽出原料として用いる場合でも、抽出されるコーヒーの濃度を一定に保つことができ、吐出口35から供給される湯の漏れなどが生じずに、高い安全性を保ちながらおいしいコーヒーを抽出することができる。
以下、図7〜図9を用いて、本実施形態のコーヒーメーカーにおける抽出原料を保持する構成の具体例を説明する。
図7は、本実施形態のコーヒーメーカーのカップ蓋である散水板の形状を示す図である。図7(a)が散水板を側方斜め上方から見た斜視図、図7(b)が散水板を側方斜め下方から見た斜視図、図7(c)が散水板の側方から見た断面図である。
また、図8は、本実施形態のコーヒーメーカーの抽出カップであるフィルタ部材の形状を示す図である。図8(a)がフィルタ部材を側方斜め上方から見た斜視図、図8(b)がフィルタ部材の側面図、図8(c)がフィルタ部材の側方から見た断面図である。
なお、図7(a)は、コーヒー粉末を用いる原料容器40bの全体構成を説明した図5における散水板43を説明する図と、図8(a)は、同じく抽出原料40bの全体構成を説明する図5におけるフィルタ部材44部分の図と同じである。このため、図7(a)、図8(a)についての詳細な説明は省略する。
図7に示すように、本実施形態のコーヒーメーカー100の散水板43は、円環状の上面43aに対して、その内側に下方側に突出した位置に裏側面43jが原料規制面となる底面を有する下方突出部43cが形成されている。下方突出部43cの底面の中央には、小径の上方突出部43dが形成されていて、上方突出部43dの中央には、円形の凹面43eが形成され、凹面43eには開口43fが複数個、図7の場合には一例として5個、形成されている。すなわち、本実施形態のコーヒーメーカーにおける散水板43は、中央部分に蓋体30の吐出口35から吐出される湯や蒸気を透過して、カップ部材44内のコーヒー粉末に供給可能とする供給口である開口43fが複数個形成されている。また、散水板43の中央部分以外の部分には、下側に突出してその裏側面43jがフィルタ部材44の内部に浸入した状態で配置される原料規制面となる、下方突出部43dが形成されていると表現することができる。
このように構成することで、本実施形態のコーヒーメーカー100では、コーヒー粉末に対して、むらし工程で蒸気が供給された際やコーヒーの抽出のための湯が供給された際に、フィルタ部材44内でコーヒー粉末が膨張しても、散水板43の底面の裏側面43jがコーヒー粉末の上昇を効果的に規制することができる。このため、フィルタ部材44内のコーヒー粉末の上面位置と、蒸気や湯の供給口である開口43fとの間に、フィルタ部材44の高さ方向において所定の距離を確保することができ、膨張したコーヒー粉末によって開口43fが不所望に塞がれて、吐出口35から供給された湯や蒸気がフィルタ部材44内に入らずに周囲に漏れ出してしまうことを防止することができる。
また、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100の散水板43は、上方突出部43dが高さ方向の外形がほぼ同じ大きさの円筒状に形成されている。このため、開口43fの下側に、開口43fと下方突出部43dの裏側面43jとの間隔をその高さとする、円筒状の空間43kを確保することができる。蓋体30の吐出口35から供給された蒸気や湯は、平板である凹面43eに遮られて、複数個形成された開口43fの部分のみからこの空間43kに浸入する。このため、空間43kに供給された湯や蒸気に対して、開口43fの下側部分で拡散するシャワー効果を付与することができる。凹面43eが形成されておらず、上方突出部43dの内側自体が開口を形成している場合や、凹面43eは形成されているものの凹面43eに形成された開口が、単独の比較的その径が大きなものである場合と比較して、本実施形態のコーヒーメーカー100でのように、複数個の小径の開口43fを形成してシャワー効果を生じさせることによって、抽出原料であるコーヒー粉末への湯や蒸気の浸透がよくなる。また、開口43fを複数個形成することにより、むらし工程やコーヒー抽出工程での速度を速めることができる。この結果、本実施形態のコーヒーメーカー100では、抽出されるコーヒーの濃度を濃くすることができる。
なお、本実施形態のコーヒーメーカー100では、上方突出部43dの上面の凹面43eの周辺部分に所定の幅を持つ円環状の平坦部分43lを形成している。このような平坦部分43lを形成することで、散水板43がフィルタ部材44に積層されて原料容器40bを構成しドリップ部11に載置されたときに、蓋体30の内面側の吐出口35の周囲に形成された内側パッキン36と当接させることができる。このため、蓋体30の吐出口35から吐出される蒸気や湯を、一層漏れのない状態で散水板43の供給口である開口43fへと向けることができ、ドリップ部11内での不所望な蒸気漏れや湯漏れを回避することができる。
なお、凹面43eに形成される開口43fの個数は上記例示した5個には限られないが、十分なシャワー効果を得るためには、3個から8個程度の範囲で適宜選択すべきである。また、開口43fは、図7に示したように円周状となるように配置することで、凹面43eに対する開口43fの配置位置を均一に分散させることができる。しかし、開口43fの配置形態は、図示した円周上のものには限られず、凹面43eの中央部分とその周辺部分とに配置するなど、さまざまな他の配置形態を採用することができる。
本実施形態のコーヒーメーカー100のフィルタ部材44は、図8に示すように、上方に行くにつれて経大となる側面が、複数の支柱44cとこの支柱44cの間に配置されたメッシュフィルタ44dにより形成されている。このため、本実施形態のコーヒーメーカー100では、フィルタ部材44内に直接挽いた状態のコーヒー粉末(網掛60として示す)を入れて、コーヒーを抽出することができる。
図8(a)、図8(b)、図8(c)に示すように、本実施形態のコーヒーメーカー100のフィルタ部材では、側面の高さのほぼ全体にわたって濾過部材であるメッシュ部材44dが配置されているが、側面の一部分だけメッシュ部材44dが形成されない指標部分44hが形成されている。この指標部分44hは、フィルタ部材44の底面からの高さh1が、フィルタ部材44の中に一杯分のコーヒー粉末(一例として10g)を収容した際の上面位置44jとなるように構成されているため、ユーザーがコーヒー粉末をフィルタ部材44の内部に収容する際の収容量の目安とすることができる。
なお、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100のフィルタ部材44では、一杯分のコーヒーを抽出するためのコーヒー粉末として約10gを備えることができ、図8(c)に置いて網掛60として示したように、所定量のコーヒー粉末を収容した場合には、コーヒー粉末の上面位置である44jでの内径が約50mm、フィルタ部材44の底面における内径が約35mmで、高さh1が約20mmとなっている。
図9は、本実施形態のコーヒーメーカーにおいて、コーヒー粉末を直接用いてコーヒーを抽出する場合に用いられる、抽出原料保持部の組立体である原料容器を示す図である。すなわち、散水板とフィルタ部材とが積層されてホルダ部材に載置された状態を示している。図9(a)が原料容器の側方斜め上方から見た斜視図であり、図9(b)が原料容器の側方から見た断面図である。
図5を用いて説明したように、本実施形態のコーヒーメーカー100では、ホルダ部材41内とフィルタ部材44と散水板43との形状が、互いに対応する部分同士が嵌合し合うように設計されているため、ホルダ部材41の内側に、フィルタ部材44と散水板43との積層体を簡易にかつ正確に位置決めした状態で配置することができる。図9(a)に示した各部材が積層された状態で、ホルダ部材41の把持部41dを持つことで、ユーザーは、原料容器40bをコーヒーメーカー100の本体部1のホルダ受け部50に載置することができる。また、ホルダ部材41の把持部41dとは反対方向に突出する散水板43の把持部43gが、本体部1の蓋体30の回動軸近傍に設けられた突起部39(図6参照)に押圧されることで、原料容器40bを、蓋体30とホルダ受け部50との間にしっかりと挟み込むように固定することができる。
なお、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、散水板43の把持部43gの先端部分に下方へ突出する突起片45が設けられていて(図9(b)参照)、原料容器40bが本体部1のドリップ部11に正しく装着された際には、本体部1に配置された図示しない検出片を押し下げるようになっている。本体部1で、この検出片の押し下げを検知することで、ドリップ部11に正しく原料容器40bが載置されているか否かを判別でき、正しく載置されたことを検出できない場合にはコーヒーメーカー100のドリップ動作を行えないようにして、ドリップ部11が正しく装着されていないにもかかわらず蒸気や湯がドリップ部11に供給されてしまうという事態を回避することができる。
図9(b)に示すように、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100において、散水板43とフィルタ部材44とを重ねて配置したとき、原料規制面である散水板43の下方突出部43cの裏側面43jは、フィルタ部材44の内部に浸入した状態で位置する。このとき、フィルタ部材44に指標44jとして示される所定の高さまでコーヒー粉末が収容されている場合には、コーヒー粉末の高さ44jと散水板43の裏側面43jが形成する原料規制面の高さ43mとの間には、図9(b)に示した所定の間隔S(一例として1.5mm)が確保されることとなる。
コーヒー粉末の高さ44jと原料規制面の高さ43mとの間に所定の間隔Sを確保することで、コーヒー粉末が収容された状態のフィルタ部材44に散水板43を積層する際に、コーヒー粉末に遮られて散水板43を正しく積層することができないという不所望な事態の発生を効果的に防止することができる。また、原料規制面が、散水板43の開口43fから蒸気や湯が供給された際のコーヒー粉末の散乱や膨張を規制するように作用する上でも、所定の間隔Sを有することで、コーヒー粉末の上面位置がわずかに上昇する余地が生まれ、コーヒー粉末の上面の上昇度合いをより均一的なものとして規制することができる。
本実施形態のコーヒーメーカー100では、このように、散水板43とフィルタ部材44とを互いに組み合わせた組立体となったときに、散水板43の裏側面43jがコーヒー粉末の上方への膨張の規制面(原料規制面)となるように構成されているため、コーヒー抽出時の蒸気漏れや湯漏れの発生や、所定量の湯がコーヒー粉末を経由しないために生じる抽出されたコーヒー濃度の低下を回避できる。
発明者らの測定では、散水板43に下方突出部43cを設けずに、散水板43の下側面がそのままフィルタ部材44内のコーヒー粉末と対向する場合、すなわち、間隔SがS=6.5mmとなっている場合でのコーヒー濃度(BRIX値)が1.0であったのに対し、間隔SをS=1.5mmとした本実施形態のコーヒーメーカー100で抽出したコーヒー濃度は、1.2へと改善することができた。
なお、本実施形態のコーヒーメーカー100では、図9(b)に示すように、散水板43の下方突出部43cの裏側面43jの外周部分と、フィルタ部材44の側面である支柱44cおよびメッシュ部材44dとの内側表面と間には、所定の間隙46(一例として0.5〜1.5mm程度)が形成されている。このようにすることで、供給された蒸気や湯によって膨張したコーヒー粉末の上面位置44jと散水板43の裏側面43jとの間の空間がなくなった状態でも、コーヒー粉末から抽出されたコーヒーが間隙46を通って、散水板43の下方突出部43cの側面に回り込むことができる。本実施形態のコーヒーメーカー100では、フィルタ部材44の側面に形成されたメッシュ部材44dの上端位置が、散水板43の裏側面43jの形成位置よりも高くなるように構成されている(図8b参照)ため、間隙46を介して散水板43の側面に回り込んだコーヒーは、メッシュ部材44dを通って、ホルダ部材41とフィルタ部材44との間の空間47に導かれる。空間47に導かれた抽出されたコーヒーは、ホルダ部材41の底面に形成された開口41jを通って、本体部1のトレイ12上に載置されたコーヒーカップ等に注がれることとなる。
なお、図9(b)に示すように、ホルダ部材41の底面には、吐出口41jの周りに下方側に突出した環状突出部41iが形成されている。この環状突出部41iを本体部1のホルダ受け部50の底面51の中央に形成された開口55に挿入することで、ホルダ受け部50の所定位置にホルダ部材41を正しく載置することができ、原料容器40bが蓋体30とホルダ受け部50との間に正確に配置されたドリップ部11を構成することができる。
次に、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100の変形例を説明する。
本実施形態のコーヒーメーカー100の変形例は、ドリップ部11におけるフィルタ部材44が、上記説明した形状と異なるものである。
図10は、本実施形態にかかるコーヒーメーカーの変形例のフィルタ部材の側面図である。
図10に示す、変形例としてのフィルタ部材44’は、図8(b)として示した本実施形態のフィルタ部材44と比較して、側面に、メッシュ部材44dを覆う遮蔽部材44kが配置されている点が異なる。
図10に示すように、変形例のフィルタ部材44’では、側面の中間部分に遮蔽部材44kが配置されているため、側面においてメッシュ部材44dは、遮蔽部材の上方部分と下方部分とに分かれて配置される。
なお、遮蔽部材44kの幅W1は、側面におけるメッシュ部材44dの上端部分と下端部分との間の幅W2の約半分程度、より具体的には、20%〜70%が好ましく、W2の30%〜60%であるとより好ましい。一例として、W2が28mmの場合に、W1を10mmとすることができる。また、遮蔽部材44kの上端部44k1は、フィルタ部材44におけるコーヒー粉末の配置位置44jよりも下方に位置している。さらに、遮蔽部材44kの下端部44k2はメッシュ部材44dの下端部分の上方に位置するように、すなわち、遮蔽部材44kの下側とフィルタ部材44’の内側底面との間には所定の間隔が確保されるようになっている。
本実施形態のコーヒーメーカー100では、挽いた状態のコーヒー粉末を直接用いてコーヒーを抽出する際に、ペーパーフィルタを用いるのではなくメッシュ部材44dとしてステンレス製のメッシュフィルタが側面に配置されたフィルタ部材44を用いる。このようにすることで、ペーパーフィルタを用いる場合よりも、一杯分のコーヒーを抽出するためのコーヒー粉末の量を少なくすることができる。この結果、必要なフィルタ部材44の大きさを小さくすることができ、抽出原料としてポッドに収容されたコーヒー粉末を用いる場合との原料容器40の形状における互換性を確保したドリップ部11を構成することができる。
しかし、フィルタ部材44として用いられるメッシュフィルタは、ドリップ用のペーパーフィルタとは異なって目詰まりが生じないように配慮してメッシュの網の大きさを大きめに設計する必要があり、ドリップされたコーヒーのフィルタ部材44を通過する際の透過速度が、所望の速度よりも大きくならざるを得ない場合がある。
このような場合に、変形例で示したフィルタ部材44’のように、側面のメッシュ部材44d配置部分に遮蔽部材44kを設けることで、抽出されたコーヒーのフィルタ部材44’からの透過度合いを低減させることができ、コーヒーの濃度を高めることができる。
なお、本実施形態のコーヒーメーカー100では、図9(b)に示したように、フィルタ部材44とその内側に配置される散水板43の下方突出部44cの裏側面44jの外周との間に所定の間隙46が形成されているため、フィルタ部材44’の側面に配置された遮蔽部材44kで遮られたコーヒーは、より確実に、散水板43の下方突出部44cの側方外側に回り込む。このとき、フィルタ部材44’の側面におけるメッシュ部材44dの上端位置が、散水板43の裏側面43jの位置よりも上方にあるため、間隙46から回り込んだコーヒーもメッシュ部材44dを透過してフィルタ部材44’とホルダ部材41との間隙47に流れ出ることになる。この結果、遮蔽部材44kは、抽出されたコーヒーの流路を単に遮断してしまうのではなく流路の長さを長くすることに寄与でき、結果的に、コーヒーの抽出速度を遅くしてペーパーフィルタを用いた場合と同等に、所望の濃度のコーヒーを抽出することができる。
以上説明したように、本実施形態にかかるコーヒーメーカーは、抽出原料としてコーヒー粉体を直接使用する場合の原料容器として、コーヒー粉体を収容する抽出カップと抽出カップの上方を覆って規制するカップ蓋とを用いる。そして、カップ蓋は、中央部分に吐出口から供給される湯を透過する複数個の供給口を備え、また、供給口配置部分である中央部分以外の部分に、コーヒー粉末の高さ位置を規制する原料規制面を備えている。このため、本実施形態のコーヒーメーカーは、抽出原料としてコーヒー粉体を直接用いた場合でも、所定の濃度のおいしいコーヒーを抽出することができる。
なお、上記実施形態では、カップ蓋の供給口が原料規制面よりも高い位置に形成される例を示したが、供給口と原料規制面と高さ関係は、抽出カップ内に収容されるコーヒーの量や、抽出カップとカップ蓋との積層構成によって左右される、原料規制面とコーヒー粉体上面との高さによって左右される。このため、例えば、供給口の周囲に、原料規制面との間を簡易的に遮断するリブを設けた場合などでは、供給口と原料規制面との高さを同じ高さとすること、もしくは、原料規制面の高さをわずかに高くすることも想定できる。
また、本実施形態のコーヒーメーカーでは、供給口を原料規制面よりも上方に位置させると共に供給口の下方に形成される空間は円筒状として、コーヒー粉体の膨張による上面位置の上昇規制効果と、供給口を通過した蒸気や湯の散乱効果とが最もよく両立できる用にしている。しかし、供給口の下方に形成される空間は円筒状のものに限られず、例えば、上方がやや広い逆台形状の断面を有する空間や、側面に段差部が形成されて上方の径が下方の径よりも大きく形成されている異なる径の円筒が重ね合わされたような形状の空間とすることもできる。
また、抽出カップの側面に形成される濾過部材として、ステンレス製やナイロン製のメッシュフィルタを用いる例を示したが、濾過部材としては、他に紙製のペーパーフィルタ、布製のネルドリップなどを用いることができる。
なお、上記詳細に例示した原料容器40a、40bの具体的な形状は例示に過ぎない。蓋体30とホルダ受け部50との間に載置されて内部に抽出原料を保持でき、蓋体30に形成された吐出口35から供給される湯を用いて飲料を抽出することができる各種形態の原料容器40を使用することができる。なお、本実施形態のコーヒーメーカー100のように、抽出原料として異なる形態で供給される原料を用いる場合には、原料容器40を複数部品の組立体として、一部または全部の部材を交換可能に組み立てて、原料容器として求められる外形形状と、内部に配置される原料を保持する原料保持部として求められる形状とが両立できるように設計することが好ましい。
また、図4および図5に示したように、本実施形態のコーヒーメーカー100では、異なる原料を用いた場合の原料容器40(40a、40b)の外形をほぼ同じとすることで、いずれの原料容器40を用いた場合でも、蓋体30とホルダ受け部50との間に同じ状態で配置固着されるようになっている。なお、原料容器40の上部または側部などの外形部分に突起や凹所などの指標部を設け、本体部1に設けた検知手段によってこの指標部の形状を読み取ることで、ドリップ部11に載置されている原料容器40の種類を判別可能とすることができる。この場合には、制御部が判別結果に応じて、それぞれの原料によって異なる抽出工程を自動的に実行可能とすることができる。
また、上記実施形態では、飲料抽出装置であるコーヒーメーカーの一側面に対して側方から原料容器を容器保持部に直接載置可能な構成の例について説明したが、原料容器の容器保持部への載置は、側方からのものに限られず、また、直接的にではなく、例えば容器収容部を覆う扉状の保護部材を開いて原料容器を載置する構成とすることができる。
また、上記実施形態では、抽出原料としてポット部材を用いた場合と、コーヒー粉末を直接用いた場合とのいずれにも対応可能なコーヒーメーカーを例示したが、本開示の飲料抽出装置をコーヒーメーカーとして用いる場合でも、ポッドに収容されたコーヒー粉体には対応しないコーヒーメーカーとすることもできる。
さらに、上記実施形態では、飲料抽出装置としてコーヒー粉末からレギュラーコーヒーを抽出するコーヒーメーカーを例示して説明したが、本願で開示する飲料抽出装置としては、紅茶や日本茶、ウーロン茶などの茶葉を用いていわゆるお茶を抽出する飲料抽出装置としても実現することができる。また、ココアなどの粉体を用いて飲料を抽出するもの、味噌などのペースト状の部材を用いて味噌汁を抽出するもの、その他、各種の汁物やスープを抽出するものなど、各種の飲料を抽出する飲料抽出装置を実現することができる。
さらにまた、抽出できる飲料の容量も、一杯の飲料を抽出するものには限られず、数杯程度までの複数杯分の飲料を抽出可能な飲料抽出装置として実現することができる。
なお、本開示にかかる飲料抽出装置において、貯水タンクから水を加熱部に送水する方法として、例示した送水ポンプを備えた構成には限られず、加熱された水や生成される蒸気の作用によって、湯を飲料抽出部へと供給する方式としても実現することができる。さらに、本開示にかかる飲料抽出装置は、制御回路を備えて自動的に実行される所定の抽出工程によって飲料を抽出するものに限らず、貯水タンクから供給された水を全て加熱して抽出原料に供給する形態の飲料抽出装置としても実現することができる。