A.実施形態:
A−1.点火プラグの構成:
以下、本発明の実施の態様を実施形態に基づいて説明する。図1は、実施形態の点火プラグ100を軸線が含まれる面で切断した断面図である。図1の一点破線は、点火プラグ100の軸線CL1を示している。軸線CL1と平行な方向(図1の上下方向)を軸線方向とも呼ぶ。軸線CL1を中心とし、軸線CL1と垂直な面上の円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、当該円の周方向を、単に「周方向」とも呼ぶ。図1における下方向を先端方向FDと呼び、上方向を後端方向BDとも呼ぶ。図1における下側を、点火プラグ100の先端側と呼び、図1における上側を点火プラグ100の後端側と呼ぶ。
点火プラグ100は、内燃機関に取り付けられ、内燃機関の燃焼室内の燃焼ガスに着火するために用いられる。点火プラグ100は、絶縁体10と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50と、抵抗体70と、シール部材60、80と、を備える。
絶縁体10は、例えば、Al2O3(アルミナ)を主成分とするセラミックスを用いて形成されている。絶縁体10は、軸線方向に沿って延びる略円筒形状の部材である。絶縁体10は、軸線方向に沿って延び、絶縁体10を貫通する貫通孔である軸孔12を有する。絶縁体10は、鍔部19と、後端側胴部18と、先端側胴部17と、第1縮外径部15と、脚長部13と、を備えている。後端側胴部18は、鍔部19より後端側に位置し、鍔部19の外径より小さな外径を有している。先端側胴部17は、鍔部19より先端側に位置し、鍔部19の外径より小さな外径を有している。脚長部13は、先端側胴部17より先端側に位置し、先端側胴部17の外径よりも小さな外径を有している。脚長部13は、点火プラグ100が内燃機関(図示せず)に取り付けられた際には、その燃焼室に曝される。第1縮外径部15は、脚長部13と先端側胴部17との間に形成されている。第1縮外径部15は、軸線方向の先端側に向かって外径が小さくなる。
主体金具50は、導電性の金属材料(例えば、低炭素鋼材)で形成され、内燃機関のエンジンヘッド(図示省略)に点火プラグ100を固定するための円筒状の金具である(図1)。主体金具50は、軸線CL1に沿って貫通する貫通孔59が形成されている。主体金具50は、絶縁体10の外周に配置される。すなわち、主体金具50の貫通孔59内に、絶縁体10が挿入・保持されている。絶縁体10の先端は、主体金具50の先端より先端側に露出している。絶縁体10の後端は、主体金具50の後端より後端側に露出している。
主体金具50は、点火プラグレンチが係合する六角柱形状の工具係合部51と、内燃機関に取り付けるための取付ネジ部52と、工具係合部51と取付ネジ部52との間に形成された鍔状の座部54と、を備えている。取付ネジ部52の呼び径は、例えば、M8(8mm(ミリメートル))、M10、M12、M14、M18のいずれかとされている。
主体金具50の取付ネジ部52と座部54との間には、金属板を折り曲げて形成された環状のガスケット5が嵌挿されている。ガスケット5は、点火プラグ100が内燃機関に取り付けられた際に、点火プラグ100と内燃機関(エンジンヘッド)との隙間を封止する。
主体金具50は、さらに、工具係合部51の後端側に設けられた薄肉の加締部53と、座部54と工具係合部51との間に設けられた薄肉の圧縮変形部58と、を備えている。主体金具50における工具係合部51から加締部53に至る部位の内周面と、絶縁体10の後端側胴部18の外周面との間に形成される環状の領域には、環状のリング部材6、7が配置されている。当該領域における2つのリング部材6、7の間には、タルク(滑石)9の粉末が充填されている。加締部53の後端は、径方向内側に折り曲げられて、絶縁体10の外周面に固定されている。主体金具50の圧縮変形部58は、製造時において、絶縁体10の外周面に固定された加締部53が先端側に押圧されることにより、圧縮変形する。圧縮変形部58の圧縮変形によって、リング部材6、7およびタルク9を介し、絶縁体10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。金属製の環状の板パッキン8を介して、主体金具50の取付ネジ部52の内周に形成された棚部56によって、絶縁体10の第1縮外径部15が押圧される。この結果、内燃機関の燃焼室内のガスが、主体金具50と絶縁体10との隙間から外部に漏れることが、板パッキン8によって防止される。
端子金具40は、軸線方向に延びる棒状の部材であり、絶縁体10の軸孔12の後端側に配置されている。端子金具40は、導電性の金属材料(例えば、低炭素鋼)で形成され、端子金具40の表面には、防食のための金属層(例えば、Ni層)がめっきなどによって形成されている。端子金具40は、軸線方向の所定位置に形成された鍔部42(端子顎部)と、鍔部42より後端側に位置するキャップ装着部41と、鍔部42より先端側の脚部43(端子脚部)と、を備えている。端子金具40のキャップ装着部41は、絶縁体10より後端側に露出している。端子金具40の脚部43は、絶縁体10の軸孔12に挿入されている。すなわち、端子金具40は、先端が軸孔12内における中心電極20の後端より後端側に位置し、後端が絶縁体10より後端側に露出している。キャップ装着部41には、高圧ケーブル(図示外)が接続されたプラグキャップが装着され、火花放電を発生するための高電圧が印加される。
中心電極20は、軸線方向に延びる略棒状の部材である。中心電極20は、絶縁体10の軸孔12の先端側に配置されている。中心電極20の後端は、軸孔12内に位置し、中心電極20の先端は、絶縁体10より先端側に露出している。中心電極20は、略棒状の中心電極本体25と、中心電極本体25の先端に接合された円柱状の中心電極チップ29と、を備えている(図1)。
接地電極30は、断面が四角形の湾曲した棒状体である。接地電極30の後端部は、主体金具50の先端面に溶接によって接合されている。これによって、主体金具50と接地電極30とは、電気的に接続される。接地電極30の先端は、自由端である。中心電極チップ29と、接地電極30の自由端の近傍と、の間の間隙は、火花放電が発生するいわゆる火花ギャップである。なお、接地電極30は、火花ギャップを形成する部分に、中心電極チップ29と同様の接地電極チップを備えても良い。
接地電極30、および、中心電極本体25は、例えば、ニッケルまたはニッケルを主成分とする合金(例えば、NCF600、NCF601)を用いて形成される。接地電極30、中心電極本体25は、耐腐食性の高い金属(例えば、ニッケル合金)で形成された母材と、熱伝導性が高い金属(例えば、銅)を用いて形成され、母材に埋設された芯部と、を含む2層構造を有しても良い。中心電極チップ29は、例えば、Pt(白金)やIr(イリジウム)などの貴金属、または、貴金属を主成分とする合金などを用いて形成される。
抵抗体70は、絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40の先端(脚部43の先端)と中心電極20の後端(中心電極本体25の後端)との間に配置される。すなわち、抵抗体70は、軸孔12内において中心電極20よりも軸線方向の後端側に配置されている。抵抗体70は、例えば、1KΩ以上の抵抗値(例えば、5KΩ)を有し、火花発生時の電波ノイズを低減する機能を有する。抵抗体70は、例えば、主成分であるガラス粒子と、ガラス以外のセラミック粒子と、導電性材料と、を含む組成物で形成されている。
シール部材60は、軸孔12内において、抵抗体70と中心電極20(中心電極本体25)との間に配置され、抵抗体70と中心電極20との隙間を埋めている。シール部材80は、軸孔12内において、抵抗体70と端子金具40(脚部43)との間に配置され、抵抗体70と端子金具40との隙間を埋めている。シール部材60、80は、導電性を有する材料、例えば、例えば、B2O3−SiO2系等のガラス粒子と金属粒子(Cu、Feなど)とを含む組成物で形成されている。シール部材60、80の抵抗値は、1KΩ未満、例えば、数百mmΩである。
A−2. 点火プラグ100の製造方法
次に、上述した点火プラグ100の製造方法について説明する。点火プラグ100の製造方法は、点火プラグ100の絶縁体10の耐電圧性の検査を含んでいる。以下では、当該絶縁体10の耐電圧性の検査を中心に説明する。
A−2−1.点火プラグ100の検査装置の全体構成
図2は、本実施形態の点火プラグ100の検査装置500の全体構成を示す図である。図2に示すように、検査装置500には、耐電圧性の検査時に、点火プラグ100の製造過程における中間製造物である組立体100Aが取り付けられる。組立体100Aと、点火プラグ100と、が異なる点は、組立体100Aでは、接地電極30が曲げられていない点と、ガスケット5が、組み付けられていない点だけである。このため、組立体100Aの軸線は、点火プラグ100の軸線CL1と同一である。ここで、検査装置500に組立体100Aが取り付けられたときに、組立体100Aの軸線CL1と一致する直線を、検査装置500の軸線CL2とする。そして、図1と同様に、図2において、軸線CL2を中心とし、軸線CL2と垂直な面上の円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、当該円の周方向を、単に「周方向」とも呼ぶ。図2における下方向(すなわち、検査装置500の鉛直下方)を先端方向FDとも呼び、図2における上方向(すなわち、検査装置500の鉛直上方)を後端方向BDとも呼ぶ。図2における下側(すなわち、検査装置500の鉛直下方側)を、検査装置500の先端側と呼び、図2における上側(すなわち、検査装置500の鉛直上方側)を検査装置500の後端側と呼ぶ。
検査装置500は、押圧通電部200と、圧力容器300と、電圧印加部400と、下方固定板410と、上方固定板420と、一対の支柱430と、一対のスライド支持部440と、移動棚450と、を備えている。
押圧通電部200は、圧力容器300に取り付けられた組立体100Aを先端方向FDに押圧することにより、圧力容器300の封止部314(後述)の開口を組立体100Aによって封止する。また、押圧通電部200は、絶縁体10の耐電圧性の検査を行なう際に、組立体100Aに通電する。押圧通電部200は、移動棚450の先端側の面に固定されている。押圧通電部200には、軸線CL1と交差する位置に、軸線方向に延びる挿入孔290が形成されている。絶縁体10の耐電圧性の検査を行なう際に、挿入孔290には、組立体100Aの後端側の一部が挿入される。押圧通電部200は、後端側に導電ピン210を備えている。この導電ピン210は、挿入孔290内を軸線方向に沿って移動自在に配置されている。押圧通電部200の詳細構成については、後述する。
圧力容器300は、中心軸が軸線方向に沿った略円筒形状を有し、下方固定板410の後端側の面に固定されている。圧力容器300の内部には、有底の略円筒形状の空間(以下、「チャンバー370」と呼ぶ)が形成されている。チャンバー370の後端側の端部(図2の上方の端部)には、中央に開口が形成された封止部314が配置されており、封止部314の開口が組立体100Aにより塞がれることによりチャンバー370の内部が気密となる。チャンバー370は図示しないエアタンクと圧力調整弁とに接続されており、かかる圧力調整弁によりチャンバー370の内部の圧力が調整される。チャンバー370の内部は、所定の圧力(本実施形態では、5MPa)まで昇圧される。なお、5MPaに代えて、0MPaから5MPaまでの範囲の任意の圧力が、所定の圧力として採用され得る。チャンバー370の底部380は、チャンバー370の内部を視認可能なように、透明な材料、例えば、アクリル樹脂や、ガラスにより形成されている。このため、後述するように、圧力容器300の後端側からチャンバー370内に位置する組立体100Aの先端を撮影することができる。このため、撮像画像によって絶縁体10における欠陥の有無を容易に確認できる。圧力容器300の詳細構成については、後述する。
電圧印加部400は、耐電圧性の試験を行う際に、組立体100Aに所定の電圧(本実施形態では、例えば、30〜45kV)を印加する。電圧印加部400は、導電ピン駆動部405を備えている。導電ピン駆動部405は、詳細構造の図示は省略するが、導電ピン210を軸線方向に沿って押圧する又は牽引することにより、導電ピン210を軸線方向に沿って移動させる。また、導電ピン駆動部405は、導電ピン210の電位が所定電位となるように電圧を印加する。
下方固定板410は、軸線CL2と垂直に配置された板状の部材である。下方固定板410には、軸線CL2と交差する位置に、厚さ方向(軸線方向)に貫通する貫通孔412が形成されている。貫通孔412は、圧力容器300の底部380と対応する位置に形成されている。このため、下方固定板410の先端側から先端方向FDに向かって視認することで、貫通孔412および底部380を介してチャンバー370の内部が視認できる。なお、この貫通孔412には、図示しない撮像装置が配置されており、チャンバー370内に配置された組立体100Aの先端部が撮像される。
上方固定板420は、軸線CL2と垂直に配置された板状の部材であり、下方固定板410に対して後端側に所定の距離だけ離れて配置されている。一対の支柱430は、軸線方向に沿って延設された円柱状部材であり、一端が下方固定板410に接続され、他端が上方固定板420に接続されている。一対のスライド支持部440は、いずれも略円筒形状を有している。一対のスライド支持部440は、それぞれ異なる支柱430に対して軸線方向に移動可能に取り付けられており、図示しない駆動部によって、軸線方向に沿って移動する。
移動棚450は、軸線CL2に垂直に配置された板状の部材であり、移動棚450の両端は、一対のスライド支持部440にそれぞれ接続されている。スライド支持部440が軸線方向に移動することにより、移動棚450は、軸線CL2と垂直な状態を保ったまま、軸線方向に移動(昇降)する。移動棚450の先端側の面には、押圧通電部200が設置され、後端側の面には、電圧印加部400が設置されている。なお、移動棚450には、軸線CL2と交差する位置に、厚さ方向(軸線方向)に貫通する貫通孔が形成されており、当該貫通孔には、押圧通電部200の一部が配置されている。本実施形態において、下方固定板410と、上方固定板420と、一対の支柱430と、一対のスライド支持部440と、移動棚450とは、いずれも鋼材により形成されている。
A−2−2. 押圧通電部200の詳細構成
図3は、図2に示す押圧通電部200を、軸線CL2を含む平面で切断した断面図である。押圧通電部200は、上述の導電ピン210に加えて、ガイド部220と、第1支持部230と、第1固定ネジ232と、第2支持部240と、第2固定ネジ242と、キャップホルダ250と、キャップ260と、電極部材270と、を備えている。
導電ピン210は、棒形状を有し、導電性を有する材料、例えば、鋼材(例えば、ステンレス鋼材やS45C−H等)により形成されている。導電ピン210は、後端側の端部に位置し、他の部分より大径の鍔部211と、先端部212と、を有する。鍔部211は、上述の導電ピン駆動部405と接続されており、導電ピン駆動部405からの駆動力を受ける。先端部212は、後述する耐電圧性の検査において、組立体100Aの端子金具40に接して組立体100Aに電圧を印加する。
ガイド部220は、軸線CL2と交差する位置に形成された軸孔を有する略円筒形状を有している。ガイド部220の軸孔には、導電ピン210が収容されている。ガイド部220は、例えば、絶縁性を有するゴム、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブチルゴムで形成されている。
第1支持部230は、円盤形状を有し、ガイド部220を支持する。第1支持部230には、軸線CL2と交差する位置に、厚さ方向(軸線方向)に貫通する貫通孔が形成されている。第1支持部230の貫通孔は、ガイド部220の軸孔と連通する。第1支持部230は、樹脂製の第1固定ネジ232により第2支持部240に固定されている。
第2支持部240は、後端側にフランジ部を有する略円筒形状を有する。第2支持部240には、軸線CL2と交差する位置に、軸線方向に貫通する軸孔が形成されている。第2支持部240は、第1支持部230に対して先端側において隣接して第1支持部230を支持している。第2支持部240は、移動棚450の先端側の面に金属製の第2固定ネジ242によって固定されている。第1支持部230および第2支持部240は、絶縁性を有する材料、本実施形態では、ポリアセタール樹脂、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂などの樹脂材料で形成されている。
電極部材270は、第2支持部240の先端面に、金属製の電極固定ネジ274によって固定されている。電極部材270は、導電性を有する材料により形成され、耐電圧性の検査において、組立体100Aの主体金具50と接して主体金具50をアースする。電極部材270は、軸線CL2と交差する部位に、厚さ方向(軸線方向)の貫通孔が形成された円盤形状を有し、例えば、低炭素鋼材で形成されている。電極部材270の貫通孔を形成する内周面のエッジ272は、面取りされている。
キャップホルダ250は、第2支持部240の軸孔内に、収容・保持されている。キャップホルダ250は、略円筒形状を有し、絶縁性を有する材料、本実施形態では、ポリアセタールで形成されている。キャップホルダ250は、キャップ260が組立体100Aの後端側に取り付けられた際に、キャップ260が径方向の外側に変形することを抑制する。これによって、キャップ260が組立体100Aの後端側に取り付けられた際に、キャップ260と、組立体100Aの絶縁体10や端子金具40の表面と、の密着性が向上する。
キャップ260は、キャップホルダ250の軸線CL2と交差する位置に形成された軸孔内に、収容・保持されている。キャップ260は、略円筒形状を有する絶縁部材である。キャップ260は、弾性を有し、かつ、絶縁性を有するゴムやエラストマー、具体的には、シリコーンゴム、アクリルゴム、あるいは、ブチルゴムで形成されている。キャップ260の軸孔の径は、耐電圧性の検査時に、該軸孔に挿入される絶縁体10の外径(後端側胴部18の外径)より僅かに小さい。このために、キャップ260が絶縁体10に取り付けられたときに、キャップ260の内周面は、絶縁体10の表面に対して所定の圧力で密着する。
押圧通電部200は、上述したように、導電ピン210、第2固定ネジ242、電極部材270、電極固定ネジ274を除く部分は、絶縁性を有するゴム又は樹脂により形成されている。これは、絶縁体10の耐電圧性の検査において、押圧通電部200を介して端子金具40と主体金具50との間に電流が流れるフラッシュオーバー現象が発生することを抑制するためである。
図3に示すように、導電ピン210、ガイド部220、第1支持部230、第2支持部240、キャップホルダ250、キャップ260、電極部材270は、互いに共通の軸線CL2を有する。ガイド部220の軸孔と、第1支持部230の貫通孔と、キャップ260の軸孔と、電極部材270の貫通孔とは、互いに連通し、挿入孔290を形成している。
A−2−3.圧力容器300の詳細構成
図4は、図2に示す圧力容器300の斜視図である。圧力容器300は、上部支持部310と、封止部314と、封止部押え311と、先端収容部320と、複数の支柱321と、中央支持部330と、下方支持部340と、を備えている。上部支持部310と、封止部314と、封止部押え311と、先端収容部320と、中央支持部330と、下方支持部340と、は、いずれも共通の軸線CL2を有する円筒状または円柱状の部材である。
上部支持部310は、圧力容器300において最も後端側に位置し、略円柱形状を有する。上部支持部310の軸線CL2と交差する位置には、収容孔312が形成されている。収容孔312は、上部支持部310を厚さ方向(軸線方向)に貫通する貫通孔であり、耐電圧性の検査において、組立体100Aの先端側の一部、より詳細には、取付ネジ部52の後端側の一部に相当する部分を収容する。収容孔312の径は、取付ネジ部52のネジ山の径よりも大きい。
上部支持部310において収容孔312の後端には、収容孔312の径よりも大きな径の孔が形成されており、当該孔に封止部314が収容されている。封止部314は、軸孔が形成されたリング形状を有し、自身の中心軸が収容孔312の軸と一致するように、上部支持部310に設けられている上記穴に収容されている。封止部314の軸孔は、収容孔312の径とほぼ同じ径を有し、収容孔312と連通している。封止部314の軸孔は、収容孔312と同様に、耐電圧性の検査において組立体100Aの先端側の一部を収容する。以降では、封止部314の軸孔と収容孔312とを合わせた孔を、収容孔312と呼ぶこともある。封止部314は、耐電圧性の検査において組立体100Aの座部54の先端面55(図1)と接することにより、チャンバー370の開口を封止する。上述の「チャンバー370の開口」とは、組立体100Aにより封止される開口であり、本実施形態では、封止部314の軸孔の上端の開口317を意味する。封止部314は、例えば、ウレタン等の樹脂やゴムで形成されている。
封止部押え311は、上部支持部310よりも薄い略円柱形状を有する。封止部押え311の外径は、上部支持部310の外径とほぼ等しい。封止部押え311は、自身の中心軸が上部支持部310の中心軸と一致するように、上部支持部310の後端側の面に接して配置され、固定ネジ316によって上部支持部310に固定されている。封止部押え311の軸線CL2と交差する位置には、厚さ方向に貫通孔313が形成されている。この貫通孔313の径は、収容孔312および封止部314の軸孔の径よりも大きく、かつ、封止部314の外径よりも小さい。貫通孔313は、収容孔312と連通している。貫通孔313は、耐電圧性の検査において、組立体100Aの一部、より詳細には、座部54の一部が収容される。封止部押え311は、封止部314を後端側から押さえて、封止部314の軸線方向の移動を制限する。
先端収容部320は、円筒形状を有し、上部支持部310に対して先端側に隣接している。先端収容部320は、例えば、アクリル樹脂などの透明な樹脂材料で形成されている。先端収容部320の内側の空間は、収容孔312と連通している。先端収容部320は、後述する耐電圧性の検査において、組立体100Aの先端部、より詳しくは、取付ネジ部52のうちの先端側の一部に対応する部分、および、当該部分よりも先端側に位置する部分(中心電極20、脚長部13の一部、および、接地電極30)を収容する。先端収容部320の外径は、上部支持部310の外径よりも小さい。
複数の支柱321は、先端収容部320の径方向の外側に、周方向に所定の間隔で並んでいる。支柱321は、細い円柱状の部材であり、一端が上部支持部310の先端側の面に接続され、他端が中央支持部330の後端側の面に接続されている。
中央支持部330は、略円柱形状を有し、先端収容部320に対して先端側に隣接して配置されている。中央支持部330の外径は、上部支持部310の外径とほぼ等しい。中央支持部330は、先端収容部320と接して配置され、配管360と接続されている。中央支持部330は、主支持部331と、可視部332とを備えている。
主支持部331には、軸線CL2と交差する位置に、軸線方向に貫通する中央孔335が形成されている。主支持部331には、配管360の接続部と、中央孔335と、を連通する連通孔333が形成されている。可視部332は、主支持部331の先端側の面に接して配置されている円盤状の部材である。可視部332の先端側の面と主支持部331の後端側の面とは接合されている。可視部332は、アクリル樹脂やガラスなどの透明な材料で形成されている。
収容孔312と、先端収容部320の内部空間と、中央孔335とは、互いに軸線方向に連通しており、圧力容器300の内部において、上述のチャンバー370を形成している。可視部332は、上述した中央孔335の先端側を覆っており、チャンバー370の底部380を形成している。配管360には、図示しない圧力調整弁が接続されており、配管360を介して圧縮空気がチャンバー370内に供給されることにより、チャンバー370内部の圧力が昇圧される。耐電圧性の検査において、チャンバー370には、組立体100Aのうちの先端側の一部のみが収容される。このため、圧力容器300の大きさは、組立体100A全体を収容するチャンバーを有する容器に比べて小さい。
下方支持部340は、略円柱形状を有し、中央支持部330に対して先端側に隣接して配置されている。下方支持部340には、軸線CL2と交差する位置に、軸線方向に貫通する観察孔345が形成されている。下方支持部340の先端側からは、観察孔345と、可視部332(底部380)と、を介して、チャンバー370内を観察することができる。下方支持部340の後端側の面は、中央支持部330の先端側の面(可視部332の先端側の面)と接合されている。下方支持部340の外径は、中央支持部330の外径よりも大きい。下方支持部340は、複数の固定ネジ342により下方固定板410に固定されている。
A−2−4.点火プラグ100の製造方法の工程
図5は、点火プラグ100の製造方法の工程を示すフローチャートである。S10〜S25において、上述した組立体100Aが準備される。先ず、S10では、点火プラグ100を構成する各部材が準備される。S15では、絶縁体10の軸孔12に、中心電極20および端子金具40が挿入され、絶縁体10に中心電極20および端子金具40が組み付けられる。この際、軸孔12内において、軸孔12と端子金具40との間には、図1のシール部材60、80、および、抵抗体70が封入される。S20では、主体金具50の先端面に接地電極30が、例えば、抵抗溶接によって接合される。S25では、S15にて中心電極20、端子金具40などが組み付けられた絶縁体10と、主体金具50と、が組み付けられて、組立体100Aが得られる。
図6は、点火プラグ100の製造方法の説明図である。図6(A)には、組立体100Aが示されている。上述したように、組立体100Aと、点火プラグ100と、が異なる点は、組立体100Aでは、接地電極30が曲げられていない点と、ガスケット5が、組み付けられていない点だけである。
S30では、絶縁体10の表面に、具体的には、絶縁体10のうち、主体金具50より後端側に露出している後端側胴部18の表面に、滑材を付着させる。本実施形態では、滑材として、滑石(タルク)の粉末が用いられる。滑石の粉末TKの粒径が過度に大きいと、後述するS60にて、絶縁体10にキャップ260が取り付けられたときに、絶縁体10とキャップ260との間の密着性が低下し得るので、滑石の粉末TKの粒径は、例えば、850μm以下であることが好ましい。本実施形態では、滑石の粉末TKの粒径は、5μm〜850μmに調整されている。滑材を付着させる軸方向の範囲CAは、後述するS40にて取り付けられるキャップ260によって覆われる部分であり、図1に示すように、後端側胴部18のうち、主体金具50から露出している部分の全体である。
図6(B)には、滑材を付着させる滑材付着工程の説明が図示されている。本実施形態の滑材付着工程では、滑材が付着した物体を絶縁体10の表面に接触させることによって、絶縁体10の表面に滑材を付着させる。具体的には、図6(B)に示すように、滑石の粉末TKが収容された布製の袋600が準備される。袋600の繊維間の隙間(目開き)は、滑石の粉末TKの粒径より大きくされている。このため、例えば、袋600に衝撃を付与すると、繊維間の隙間から、一部の滑石の粉末TKが外部に放出されて、袋600の表面およびその近傍に、付着および滞留する。この状態の袋600を絶縁体10の表面に接触させることで、絶縁体10の表面に滑石の粉末を付着させることができる。例えば、組立体100Aは、図示しない把持具に取り付けられて、矢印AR2で示すように、モータの動力によって軸線を中心に回転させられる。図示しない別の把持具に保持された袋600は、矢印AR1で示すように、複数回に亘って、組立体100Aの径方向に往復動させられる。これによって、回転する組立体100Aの後端側胴部18に対して、袋600が、複数回に亘って衝突・接触する。この結果、組立体100Aの後端側胴部18のうち、上述した軸方向の範囲CAの全周に亘って、滑石の粉末TKが付着する。
S35では、組立体100Aの先端側を、封止部押え311の貫通孔313の上端から圧力容器300内に挿入する。これによって、組立体100Aの先端側の一部(具体的には、主体金具50の座部54より先端側の部分)が圧力容器の内部(すなわち、チャンバー370内)に位置するように、組立体100Aが圧力容器300に取り付けられる。なお、S35が実行された直後の検査装置500および組立体100Aの状態は、図2に示す状態となっている。すなわち、圧力容器300に組立体100Aが取り付けられ、組立体100Aの後端側に押圧通電部200が配置されている。S35が実行されると、チャンバー370の開口、すなわち、封止部314の開口317は組立体100Aの座部54により塞がれるが、この時点では、チャンバー370の内部の気密性は確保されていない。
S40では、押圧通電部200を、先端方向FDに移動(下降)させる。これによって、キャップ260が組立体100Aに取り付けられる。また、導電ピン210および電極部材270によって、組立体100Aに対して先端方向FDの力が加えられるので、組立体100Aの座部54の先端面55が封止部314の上端面に押し付けられて、圧力容器300の開口317が組立体100Aにより封止される。
図7は、S40が実行された状態の検査装置500および組立体100Aを示す説明図である。図7では、説明の便宜上、検査装置500のうち、押圧通電部200および圧力容器300のみを表している。図7に示すように、検査装置500の軸線CL2と、組立体100Aの軸線CL1と、が一致した状態でS40が実行される。
図1に示す状態から、押圧通電部200が先端方向FDに移動すると、押圧通電部200の挿入孔290に組立体100Aの後端側が挿入される。さらに移動が進むと、キャップ260の軸孔に絶縁体10の後端側胴部18が挿入される。これによって、キャップ260は、組立体100Aのうち、主体金具50より後端側に露出する部分の表面を覆うように、組立体100Aに取り付けられる。キャップ260の軸孔の内径は後端側胴部18の外径よりも小さいが、キャップ260が弾性材料(例えば、ゴム)で形成されているため、キャップ260の軸孔が拡径されて後端側胴部18が挿入される。そして、キャップ260の外径の拡径は、キャップホルダ250によって制限される。このため、図6に示す状態では、キャップ260の軸孔を形成する内周面は、後端側胴部18の外周面に対して、比較的強い圧力で接触する。この結果、キャップ260と後端側胴部18との間の密着性が向上する。同様にして、キャップ260は、端子金具40のキャップ装着部41に対しても密着する。図7に示すように、キャップ260の軸線方向の長さは、絶縁体10のうち、後端に露出している部分の全体の軸線方向の長さと、端子金具40のキャップ装着部41の軸線方向の長さと、の合計より長い。そして、キャップ260は、絶縁体10のうち、後端に露出している部分の外周面のほぼ全体と、キャップ装着部41の外周面のほぼ全体と、密着している。
図7に示すように、押圧通電部200は、電極部材270のエッジ272が、組立体100Aの工具係合部51の後端側に接する位置まで移動する。そして、押圧通電部200は、電極部材270が工具係合部51に接した後も、後述するS60にて押圧通電部200を後端方向BDに移動させるまでは、電極部材270を介して組立体100Aを先端方向FDに継続して押圧する。このときの押圧力は、チャンバー370内が所定の圧力(例えば、5MPa)までの昇圧に耐えられ得る程度の力であり、例えば、300kg重の力である。
このように、組立体100Aで圧力容器300(封止部314)を押圧することによってチャンバー370の開口317を封止するため、圧力容器300の気密性を容易に確保できる。
また、チャンバー370の開口317の軸線CL2と、組立体100Aの軸線CL1と、が一致した状態で、押圧通電部200による組立体100Aの押圧と、絶縁体10へのキャップ260の取り付けと、が行われる。このために、組立体100Aにより開口317がずれて塞がれることが抑制できるので、圧力容器300の気密性を向上できる。また、絶縁体10に対してキャップ260がずれて装着されることを抑制できるので、絶縁体10の後端側に露出する部分の表面に沿って電流が流れるフラッシュオーバー現象の発生を抑制できる。
また、組立体100Aを押圧する際の加圧軸(軸線CL1)と、シールすべき開口317の中心軸(軸線CL2)と、が一致しているため、加圧軸と開口317の中心軸とがずれている構成に比べて、同じ気密性を得る場合において押圧通電部200の剛性を低くできる。このため、押圧通電部200の多くの構成要素を絶縁性のゴムや樹脂材料で形成できる。この結果、上述のフラッシュオーバー現象の発生をより効果的に抑制できると共に、押圧通電部200の小型化、軽量化を実現できる。
S45では、図示しない圧力調整弁を制御してチャンバー370内にエアを供給して、チャンバー370内を加圧し、所定の圧力(例えば、5MPa)まで昇圧する。チャンバー370の内部には、組立体100Aのうち、座部54よりも先端側の部分のみが収容されるので、チャンバー370の容積は、組立体100Aの全体を収容する構成に比べて小さい。このため、チャンバー370内の昇圧は短時間で完了する。
S50では、チャンバー370内の圧力が所定の圧力まで昇圧された状態で、組立体100Aに所定電圧を印加し、組立体100Aの先端部を図示しない撮像装置を用いて撮像する。具体的には、導電ピン210と電極部材270を介して、端子金具40(および端子金具40と電気的に接続されている中心電極20)と、主体金具50と、の間に30〜45kV(キロボルト)の比較的高い電圧が複数回(例えば、数100回)印加される。そして、電圧が印加される度に組立体100Aの先端部の撮像が行なわれる。絶縁体10にピンホール等の欠陥が生じていない場合、中心電極20と接地電極30とは、火花放電ギャップよりも大きく離れているので、火花放電は発生しない。これに対して、絶縁体10に欠陥が生じている場合、かかる欠陥を通って火花放電が起きるため、組立体100Aの先端部の撮像画像に火花が写る。このとき、絶縁体10の後端側には、絶縁材料で形成されたキャップ260が密着しているため、絶縁体10の後端側に露出する部分の表面に沿って端子金具40と主体金具50との間に電流が流れる、いわゆるフラッシュオーバー現象の発生は抑制されている。なお、仮に、このようなフラッシュオーバー現象が発生した場合も、組立体100Aの先端側において火花放電は発生しない。フラッシュオーバー現象が発生した場合には、端子金具40と主体金具50との間が短絡するので、端子金具40と主体金具50との間に、所定の電圧を印加することができない。このために、フラッシュオーバー現象が発生した場合には、絶縁体10の耐電圧性を適切に検査できない。
S55では、図示しない圧力調整弁を制御して、チャンバー370内の圧力が大気圧まで減圧される。
S60では、スライド支持部440が駆動されて、押圧通電部200が後端方向BDに所定の距離だけ移動する。このとき、導電ピン駆動部405は、導電ピン210の軸線方向の絶対位置が変わらないように、導電ピン210を制御する。具体的には、スライド支持部440が後端方向BDに移動することによって、押圧通電部200の軸線方向の絶対位置が後端方向BDに移動した分だけ、導電ピン駆動部405は、導電ピン210を、押圧通電部200の他の部分に対して先端方向FDに移動させる。
図8は、S60を実行中の状態の検査装置500および組立体100Aを示す説明図である。図8に示すように、S60が実行されると、導電ピン210によって端子金具40を先端方向FDに押圧された状態で、押圧通電部200が後端方向BDに移動する。このような動作により、組立体100A(絶縁体10)の軸線方向の位置は変わらないまま、キャップ260は、押圧通電部200と共に絶縁体10に対して相対的に先端方向FDに移動する。このため、キャップ260は、絶縁体10から取り外される。絶縁体10のうち、キャップ260に覆われていた部分(後端側胴部18の表面)には、滑材として滑石の粉末TKが付着している(S30参照)。このために、キャップ260を組立体100Aに対して相対的に移動させる際にキャップ260と組立体100Aとの間に生じる摩擦力が、滑材が付着していない場合と比較して低下している。このために、キャップ260は、組立体100Aから容易に取り外される。
なお、S60において、キャップ260が取り外された後に、押圧通電部200は、先端方向FDに、さらに移動し、図2の位置までに戻る。S65では、導電ピン駆動部405は、導電ピン210を押圧通電部200に対して後端方向BDに移動させる。この結果、検査装置500は、図2の状態に戻る。
S70では、S50にて得られた撮像画像に基づいて、組立体100Aの耐電圧性を評価する。例えば、S50で得られた複数枚の撮像画像中、火花放電が写らなかった画像の数が閾値以上の場合には、耐電圧性は合格であると評価され、閾値よりも少ない場合には耐電圧性は不合格であると評価される。かかる閾値は、例えば、予め欠陥を有する絶縁体10が組み付けられた組立体100Aを用いて評価を行なうことによって実験的に決定される。
S75では、耐電圧性が合格である組立体100Aの接地電極30に対して曲げ加工を行なう。例えば、図1に示すように、中心電極20(中心電極チップ29)の先端面が接地電極30の先端部の一の側面と対向するように接地電極30が曲げられる。このとき、中心電極20の先端面と接地電極30との間の空隙は、火花放電が発生する火花ギャップであり、予め規定された寸法に設定される。
このように、耐電圧性の検査の後に、接地電極30の曲げ加工が行われるので、耐電圧性の検査の際に接地電極30と中心電極20との間の距離を比較的大きくできる。このため、耐電圧性の検査において、比較的高い電圧を印加することができる。
S80では、ガスケット5が、図1に示すように、座部54の先端側に取り付けられる。このように、耐電圧性の検査の後に、ガスケット5が取り付けられるので、耐電圧性の検査において組立体100Aが圧力容器300に密着した際に、ガスケット5が損傷することを抑制できる。以上の工程を経て、点火プラグ100が完成される。
以上説明した実施形態によれば、絶縁体10のうち、後端側に露出する部分の表面を覆うように筒状のキャップ260を取り付ける前に(すなわち、S40より前に)、S30の滑材付着工程にて、キャップ260によって覆われる絶縁体10の表面に、滑材を付着させる。この結果、検査時にキャップ260を絶縁体10に強く密着させたとしても、S50にて所定電圧の印加後に、S60にて組立体100Aからキャップ260を取り外すことが容易になる。したがって、点火プラグ100の絶縁体10の検査時に、フラッシュオーバー現象を抑制しつつ、検査を円滑に進行できる。
例えば、検査時にキャップ260を絶縁体10に強く密着させない場合には、組立体100Aからキャップ260を取り外すことが容易であるが、S50にて所定電圧が印加される際に、フラッシュオーバー現象が発生しやすくなり、検査が適切に実行できない可能性がある。あるいは、S50にて印加される所定電圧を下げること必要となり、より厳しい耐電圧性の検査ができない可能性がある。一方、S30にて、滑材を付着させることなく、検査時にキャップ260を絶縁体10に強く密着させる場合には、S50にて印加される所定電圧を高くすることができるものの、組立体100Aからキャップ260を取り外すことが困難となる。例えば、S60にて、導電ピン駆動部405によって導電ピン210を押圧通電部200の他の部分に対して先端方向FDに移動させることができず、キャップ260を組立体100Aから取り外すことができなくなる。この場合には、押圧通電部200を後端方向BDに移動させた際に、組立体100Aがキャップ260および押圧通電部200から分離されず、押圧通電部200に取り付けられたままになる。そうすると、S60の後に、作業者が押圧通電部200およびキャップ260から組立体100Aを取り外す作業が必要となり、検査および点火プラグ100の製造の円滑な進行が妨げられる。また、無理にキャップ260を取り外そうとすると、キャップ260の内面が劣化し表面が荒れることでフラッシュオーバー現象が発生しやすくなる。本実施形態によれば、このような不具合の発生を抑制することができる。
さらに、S30の滑材付着工程にて用いられる滑材は、滑石の粉末TKである。少量の滑石の粉末が絶縁体に付着していても点火プラグ100の性能や外観にほとんど影響を与えない。このために、滑材として滑石の粉末を用いるので、滑石の粉末の除去工程を省略あるいは簡略化できる。また、滑石は、絶縁性であるので、検査時にフラッシュオーバー現象を引き起こすこともない。
さらに、S30の滑材付着工程は、滑材が付着した物体を絶縁体10の表面の接触させる工程であるので、容易に滑材を絶縁体10の表面に付着させることができる。
より具体的には、図6(B)に示すように、滑材が付着した物体として、滑材の粉末(本実施形態では、滑石の粉末TK)を収容する布製の袋600である。したがって、粉末状の滑材を容易に絶縁体10の表面に付着させることができる。
さらに、本実施形態では、S40にてキャップ260が絶縁体10に取り付けられた状態で、キャップ260の内周面は、絶縁体10のうち、後端に露出している部分の外周面のほぼ全体と、キャップ装着部41の外周面のほぼ全体と、密着している。このように、後端側胴部18および端子金具40の広い範囲にキャップ260を密着させるので、例えば、絶縁体10の表面のうち、より狭い部分だけを覆うキャップを用いる場合と比較して、S50にて印加可能な電圧を高くすることができる。このように広い範囲にキャップ260を密着させる分、キャップ260の取り外しが困難になり得るが、本実施形態では、上述したように、S30にてキャップ260によって覆われる部分の表面に、滑材を付着させるので、キャップ260の取り外しを容易にすることができる。
さらに、本実施形態では、組立体100Aのうちの先端側の一部のみをチャンバー370に収容するので、組立体100Aの圧力容器300への取り付けおよび取り外しを短時間で行なうことができる。また、チャンバー370の体積を小さくできるため、チャンバー370内の昇圧および減圧を短時間で行なうことができる。したがって、耐電圧性の検査に要する時間、ひいては、点火プラグ100の製造に要する時間を短縮化できる。また、チャンバー370の体積を小さくできるため、圧力容器300を小型化できる。
さらに、組立体100Aを用いてチャンバー370の開口317を封止するので、圧力容器300への組立体100Aの取り付けと、チャンバー370の開口317の封止とを別工程として実行する構成に比べて工数を減らすことができる。
さらには、押圧通電部200の挿入孔290に導電ピン210を移動可能に配置しているため、押圧通電部200を先端方向FDに移動させて押圧通電部200により組立体100Aを押圧すると共に、組立体100Aの端子金具40に導電ピン210を接触させることができる。このため、押圧通電部200による組立体100Aの押圧と、導電ピン210の端子金具40への接触とを別工程として実行する構成に比べて工数を減らすことができる。同様に、押圧通電部200の先端部に電極部材270を配置しているため、押圧通電部200を先端方向FDに移動させて押圧通電部200により組立体100Aを押圧すると共に、主体金具50に電極部材270を接触させることができる。このため、押圧通電部200による組立体100Aの押圧する工程と、電極部材270を主体金具50に接触させて主体金具50をアースする工程と、を別工程として実行する構成に比べて工数を減らすことができる。
B.変形例
(1)上記実施形態では、S30の滑材付着工程にて、絶縁体10の表面に滑材を付着させる。これに代えて、図5に破線で示すS30Bの滑材付着工程が実行されても良い。図5のS30Bでは、図3の押圧通電部200のキャップ260の内面IS、すなわち、S40にてキャップ260が組立体100Aに取り付けられた際に、絶縁体10の表面を覆う内面ISに、滑材を付着させる。この場合には、例えば、滑材としての滑石の粉末TKが付着した綿棒を、キャップ260の内面ISに接触させることによって、内面ISに滑材を付着させる。この滑材の付着は、作業者によって手作業で実行されても良いし、ロボットによって、自動的に実行されても良い。また、滑材の付着は、例えば、液状あるいは粉末状の滑材を、噴霧器あるいは散粉器を用いて、キャップ260の内面ISに吹き付けることで、自動的に実行されても良い。
なお、上記実施形態のS30の滑材付着工程と、本変形例のS30Bの滑材付着工程と、の両方が実行されても良い。すなわち、図5のS40の前に、絶縁体10の表面と、キャップ260の内面ISと、の両方に、滑材を付着させても良い。
(2)上記実施形態では、S40にて、キャップ260は、絶縁体10のうち、主体金具50より後端側に露出する部分の全体を覆うように、組立体100Aに取り付けられる。これに代えて、絶縁体10のうち、主体金具50より後端側に露出する部分の一部(例えば、先端側の一部、後端側の一部)だけを覆うように、例えば、本実施形態のキャップ260より軸線方向の長さが短いキャップが用いられても良い。
また、キャップ260の形状や寸法は、様々に変更が可能であり、例えば、キャップホルダ250が省略される代わりに、本実施形態のキャップホルダ250とキャップ260とが一体化した形状のキャップが採用されても良い。一般的には、キャップは、絶縁体10が挿入される筒状部を含む絶縁部材であることが好ましい。
(3)上記実施形態では、S30の滑材付着工程では、絶縁体10のうち、主体金具50より後端側に露出する部分の全体に滑材を付着させる。これに代えて、後端側に露出する部分の一部だけに、滑材を付着させても良い。一般的には、キャップ260によって覆われる絶縁体10の表面の全部または一部に滑材を付着させることが好ましい。また、絶縁体10の表面に加えて、端子金具40に滑材を付着させても良い。
(4)上記実施形態では、滑材として滑石の粉末TKが採用されているが、他の物質が滑材として採用されても良い。例えば、滑材として、シリコンを含む化合物の粉末や、樹脂の粉末が用いられても良い。また、滑材として、粉末とは異なる物質、例えば、液状またはジェル状の絶縁性の物質、例えば、絶縁性のオイルなどが用いられても良い。
(5)用いられる滑材の種類や量によっては、例えば、S60の後に任意のタイミングにおいて、絶縁体10や端子金具40の表面から滑材を除去する工程、例えば、絶縁体10や端子金具40の表面から滑材を拭き取る工程が行われても良い。
(6)S30の滑材付着工程では、袋600を絶縁体10の表面に接触させることによって、滑材を付着させている。これに代えて、他の物体(例えば、スポンジなどの多孔体)に滑材を付着させ、当該物体を絶縁体10の表面に接触させることによって、滑材を付着させても良い。
(7)S30の滑材付着工程は、滑材の種類等によって、様々な変形がなされ得る。例えば、本実施形態のように、滑石の粉末が用いられる場合には、例えば、滑石の粉末を固めた物体を、絶縁体10の表面に擦りつける工程が採用されても良い。この場合には、滑石の粉末を固めた物体は、環状に形成され、環状の物体の孔に絶縁体10が挿入された状態で、環状の物体を絶縁体10の表面に擦りつける工程が採用されても良い。また、液状またはジェル状の滑材が用いられる場合には、例えば、容器に貯留された滑材に、組立体100Aの後端側の一部(絶縁体10の後端側の一部)を浸す工程が採用されても良い。
(8)上記実施形態において、組立体100Aのうち、チャンバー370内に収容される部分は、座部54よりも先端側であったが、これに限られない。少なくとも組立体100Aの先端側の一部、特に、主体金具50の軸孔の内周面と、絶縁体10の脚長部13の外周面との間に形成された空隙31(図1)を含む部分が、チャンバー370内に収容されることが好ましい。
(9)上記実施形態では、S60では、キャップ260を絶縁体10から取り外すために、押圧通電部200を後端方向BDに所定の距離だけ移動させつつ、導電ピン210を押圧通電部200に対して相対的に先端方向FDに移動させている。これに代えて、圧力容器300および下方固定板410を軸線方向に移動可能な構成として、また、組立体100Aと圧力容器300とが係合可能な構成として、組立体100Aおよび圧力容器300を先端方向FDに移動させることにより、キャップ260を絶縁体10から取り外してもよい。
(10)上記実施形態では、接地電極30の曲げ工程(S75)およびガスケット5の組み付け工程(S80)は、いずれも耐電圧性の検査(S35〜S70)の後に実行されていたが、耐電圧性の検査の前に実行されてもよい。
(11)上記実施形態では、S30の滑材付着工程は、S10〜S25にて組立体100Aが準備された後に、組立体100Aの絶縁体10に対して行われている。これに代えて、滑材付着工程は、S10〜S25にて組立体100Aが準備される途中で行われても良い。例えば、主体金具50と組付けられる前の絶縁体10や、中心電極20や端子金具40が組付けられる前の絶縁体10に対して、滑材付着工程が行われても良い。また、S35にて圧力容器300に取り付けられた状態の絶縁体10に対して滑材付着工程が行われても良い。一般的には、S40にてキャップ260が絶縁体10に取り付けられる前に、滑材付着工程が行われれば良い。
(12)上記実施形態では、ステップS50にて印加される電圧は、組立体100Aの先端側において火花放電が発生しない程度の電圧である。これに代えて、火花放電が発生するほどの高い電圧を印加してもよい。この場合には、正常状態では、脚長部13の表面を沿うフラッシュオーバー現象が発生して絶縁体10(脚長部13)の先端面に火花が生じる。したがって、撮影画像においてかかる部分に生じた火花が確認された場合、正常であると判断できる。これに対して、ピンホール等の欠陥に起因して絶縁体10に貫通孔が生じていると、かかる貫通孔を介して放電が生じるため、絶縁体10(脚長部13)の先端面に火花が生じない。したがって、撮影画像においてかかる部分に火花が確認されない場合に、耐電圧性は不合格である、すなわち、絶縁体10に欠陥が生じていると判断される。
(13)上記実施形態における検査装置500の構成は、あくまでも一例であり、種々変更可能である。例えば、圧力容器300の先端収容部320は、透明であり、内部が視認可能であったが、視認可能でなくともよい。同様に、可視部332を視認可能でなく構成してもよい。また、上部支持部310、中央支持部330、および下方支持部340も透明な材料により形成し、チャンバー370全体が外部から視認可能となるように形成してもよい。また、検査装置500を上下逆転させた構成としてもよい。この構成では、例えば、先ず、押圧通電部200の挿入孔290に組立体100Aの後端側を挿入して、キャップ260を組立体100Aに取り付ける。その後に、組立体100Aが取り付けられた押圧通電部200を上昇させて、組立体100Aが圧力容器300のチャンバー370内に挿入される。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。