JP6504888B2 - バラスト水処理システム及びバラスト水処理方法 - Google Patents

バラスト水処理システム及びバラスト水処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、バラスト水処理システム及びバラスト水処理方法に関する。
従来、貨物船などの船舶を積荷が搭載されていない状態で安定化させるために、船舶内に配置されたバラストタンクに海水をバラスト水として充填する対策が知られている。ここで、バラスト水として利用される海水には、微生物や菌類などが多数存在している。このような微生物や菌類は、海洋生態系に悪影響を及ぼすことが国際的に懸念されていたため、2004年に国際海事機構(IMO)は、バラスト水管理条約を採択した。この条約では、船舶から排水するバラスト水に含まれる生物数上限を規定しており、この規定を満たすためには、バラスト水を殺菌処理する必要がある。
海水の殺菌方法としては、化学薬品を投入する方法や紫外線を照射する方法などがある。下記特許文献1には、バラストタンクに繋がる配管と薬剤タンクからの配管とが接続されており、当該薬剤タンクからの配管を通じて殺菌剤を海水に導入することにより殺菌処理を行う方法が開示されている。
国際公開第2010/093025号
上記バラスト水処理方法では、漲水時に海水に塩素等の殺菌剤を注入しているが、バラストタンクにバラスト水を保管している間に、バラスト水中の塩素濃度が低下し、微生物や細菌が再び増殖し始める。この傾向は、バラスト水の水温が高い場合や溶存有機物等が多い場合に特に顕著である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度を高めることができるバラスト水処理システム及びバラスト水処理方法を提供することである。
本発明の一局面に係るバラスト水処理システムは、トリクロロイソシアヌル酸からなる固体状殺菌剤と、前記殺菌剤が充填される薬品容器と、前記薬品容器がバラストタンク内のバラスト水の上方に位置する第2位置から前記バラスト水に浸漬された第1位置に前記薬品容器を移動させる移動手段と、を備え、前記第1位置では、前記バラスト水に浸漬された前記薬品容器内の前記殺菌剤が前記バラスト水中に溶け出す
上記バラスト水処理システムでは、殺菌剤が充填される薬品容器をバラストタンク内のバラスト水に浸漬させる移動手段を備えるため、バラストタンクに繋がる配管と薬剤タンクに繋がる配管とを接続し、当該薬剤タンクに繋がる配管からバラスト水に殺菌剤を導入する従来の装置と比べて、より簡易な構成で効率的にバラスト水の塩素濃度を高めることができる。
また殺菌剤としてトリクロロイソシアヌル酸を用いることにより、トリクロロイソシアヌル酸はバラスト水への溶解速度が遅いことから、殺菌剤をバラスト水に浸漬させてもすぐに溶出せずに徐々にバラスト水の塩素濃度を高めることができ、殺菌効果を長期間持続しやすい。
しかも、従来のバラスト水処理装置の構成に対し、バラストタンク内に殺菌剤を浸漬させるだけの簡素な設備の追加のみでよいため、設置スペースを確保しにくい船舶においても上記バラスト水処理システムを適用しやすい。
本発明の一局面に係るバラスト水処理システムは、トリクロロイソシアヌル酸からなる固体状の殺菌剤と、バラストタンク内のバラスト水に前記殺菌剤を浸漬させた第1位置及び前記バラストタンク内のバラスト水から前記殺菌剤を取り出した第2位置に移動可能な状態で前記殺菌剤を保持する薬剤位置調整手段と、を備える。
上記構成によれば、殺菌剤を第1位置で保持することにより、殺菌剤からバラスト水に次亜塩素酸が溶け出すことで、バラスト水の塩素濃度を高めることができ、微生物の再増殖を抑制することができる。また殺菌剤を第2位置で保持することにより、殺菌剤のバラスト水への過剰な溶出を抑制することも可能である。
また、バラストタンク内の殺菌剤の位置を移動させることでバラスト水に塩素を導入することができるため、殺菌剤の投入量を予め調整しなくてもよいという利点もある。
上記バラスト水処理システムは、前記バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度を測定する濃度測定部をさらに備え、前記薬剤位置調整手段は、前記濃度測定部によって測定された塩素濃度が基準値未満のときに前記殺菌剤を前記第1位置に移動させることが好ましい。
上記構成によれば、濃度測定部によってバラスト水の塩素濃度をモニタリングし、バラスト水の塩素濃度が低下したタイミングで、殺菌剤をバラスト水に浸漬させる(第1位置に移動させる)ことができ、これによりバラスト水の塩素濃度を高めることができる。
ただし、上記バラスト水の塩素濃度を高めすぎると、バラストタンクに腐食が生じたり、殺菌剤の使用量が増えて材料コストが高くなったり、バラスト水の排水時に塩素の中和処理に多大な時間及び中和剤が必要となったり、等の問題が生じることがある。
そこで、上記薬剤位置調整手段は、前記濃度測定部によって測定された塩素濃度が基準値以上のときに前記殺菌剤を前記第2位置に移動させてもよい。
上記構成によれば、バラスト水の塩素濃度が基準値以上となるタイミングで、殺菌剤をバラスト水から取り出す(第2位置に移動させる)ことができ、これによりバラスト水の塩素濃度が過剰に高められるのを抑制することができる。
前記薬剤位置調整手段は、前記殺菌剤を移動させるための駆動機構と、前記濃度測定部による測定結果に基づいて前記駆動機構を制御する位置制御部と、を備えることが好ましい。
上記構成によれば、バラスト水の塩素濃度を測定し、その測定結果を位置制御部にフィードバックして駆動機構を制御することにより、バラスト水の塩素濃度の多寡に応じて殺菌剤を第1位置又は第2位置に移動させることができ、バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度を適度に高めることができる。
上記バラスト水処理システムは、前記殺菌剤が充填された薬品容器をさらに備える。そして前記薬剤位置調整手段は、前記薬品容器を上下動させることにより前記殺菌剤を前記第1位置に移動させる操作及び前記第2位置に移動させる操作を行ってもよい。
上記構成によれば、殺菌剤を上下動可能な状態でバラスト水の上部に配置しやすく、またバラスト水に殺菌剤を浸漬させたときに殺菌剤がバラスト水に溶出する速度を薬品容器
により抑制することができる。
本発明の一局面に係るバラスト水処理方法は、トリクロロイソシアヌル酸からなる固体状の殺菌剤が充填された薬品容器、バラストタンク内のバラスト水よりも上方の位置から下方に移動させて、前記薬品容器内の殺菌剤が前記バラスト水に溶け出すように前記薬品容器を前記バラスト水に浸漬させる工程を含む。
上記構成によれば、バラストタンク内のバラスト水にトリクロロイソシアヌル酸からなる殺菌剤を浸漬させることにより、殺菌剤からバラスト水に次亜塩素酸が溶け出すことで、バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度を高めることができる。これによりバラストタンク内のバラスト水中の微生物の再増殖を抑制することができる。
本発明の一局面に係るバラスト水処理方法は、前記バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度を測定する第1工程、前記第1工程によって得られた塩素濃度が基準値未満のときに前記バラストタンク内のバラスト水に対して、トリクロロイソシアヌル酸からなる固体状の殺菌剤を浸漬させる工程と、を行
上記第1工程により、バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度の測定結果をフィードバックした上で、バラスト水に殺菌剤を浸漬させることができるため、バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度が基準値未満となったときにバラストタンク内のバラスト水の塩素濃度を高めることができる。
上記バラスト水処理方法は、前記殺菌剤を浸漬させる工程を行った後に、前記バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度を測定する第2工程と、当該第2工程によって得られた塩素濃度が基準値以上のときに、浸漬させた前記殺菌剤を前記バラストタンク内のバラスト水から取り出す工程と、をさらに含んでいてもよい。
上記第2工程により、バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度が基準値以上となるタイミングで、殺菌剤をバラスト水から取り出すことによりバラストタンク内のバラスト水の塩素濃度が過剰に高められるのを抑制することができる。
本発明のバラスト水処理システムは、濾過したバラスト水(濾過した海水)に適用することで、バラスト水の塩素濃度をより効率的に高めることができる。また本発明のバラスト水処理方法は、バラスト水(海水)を濾過する工程と組み合わせることにより、バラスト水の塩素濃度をより効率的に高めることができる。
本発明によれば、バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度を高めることができるバラスト水処理システム及びバラスト水処理方法を提供することができる。
参考態に係るバラスト水処理システムの構成を示す概略図である。 上記バラスト水処理システムにおける薬品容器の構成を示す概略図である。 本発明の実施形態に係るバラスト水処理システムにおいて、殺菌剤をバラスト水に浸漬させた(第1位置に移動させた)後の状態を示す概略図である。 本発明の実施形態に係るバラスト水処理システムにおいて、殺菌剤をバラスト水から取り出した(第2位置に移動させた)後の状態を示す概略図である。 上記バラスト水処理システムの構成を示すブロック図である。 上記バラスト水処理システムにおける殺菌成分の濃度の調整方法を説明するためのフローチャートである。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
参考態)
<バラスト水処理システムの構成>
参考形態のバラスト水処理システム10の構成について図1を参照して説明する。
参考態のバラスト水処理システム10は、船内に配置されたバラストタンク1内のバラスト水2の塩素濃度を高めるための装置であり、図1に示されるように、バラストタンク1内のバラスト水2に浸漬した殺菌剤5と、当該殺菌剤5を充填した薬品容器6とを備える。
上記構成を有するバラスト水処理システム10は、殺菌剤5がバラスト水2に浸漬していることによりバラスト水2に次亜塩素酸が溶け出して、バラスト水2の塩素濃度が高められ、微生物の増殖を抑制することができる。なお、参考態では、殺菌剤5を充填した薬品容器6はバラスト水2から取り出さずに浸漬させたままにする。
殺菌剤5は、常温固体のトリクロロイソシアヌル酸である。トリクロロイソシアヌル酸は、水溶液のpHが酸性であるために、バラスト水に溶け出す次亜塩素酸の殺菌力が強いという利点もある。この殺菌剤5をバラスト水2に浸漬させることにより、バラスト水2に次亜塩素酸が溶け出してバラスト水2の塩素濃度が高められることを以って、バラスト水2に存在する微生物や細菌類等を殺滅させることができる。
トリクロロイソシアヌル酸は、イソシアヌル酸の窒素原子に結合した水素原子が塩素原子に置換された構造を有する化合物であって、3つの塩素原子により水素原子が置換された下記構造式(1)の化合物である。トリクロロイソシアヌル酸は、海水中に溶け出すことにより殺菌性を有する次亜塩素酸(HOCl)を発生し、これがバラストタンク1内のバラスト水2を殺菌処理する。
トリクロロイソシアヌル酸は、短時間で高濃度の溶液を調製することは困難であるため、従来のように薬液タンクに予め高濃度溶液を調製し、バラスト水を殺菌処理するタイミングで適量フィードする方法には適していないが、水への溶解速度が小さく、40℃程度の高温下でも安定していることから、長期間に亘って有効成分を少量ずつ供給することができるという利点がある。
殺菌剤5の分量は、バラスト水2の水量及び塩素濃度に応じて決定され、例えば塩素濃度9mg/Lのバラスト水を1000トン調製する場合、必要とされる殺菌剤5(有効塩素濃度が90%の場合)の分量は以下の式により10kgと算出される。
9(mg/L)×1000(m3)/0.90=10(kg)
バラスト水の塩素濃度が時間とともに減少し、それに応じて殺菌剤5を導入すべきことを踏まえると航海日数の長短も考慮して殺菌剤5の分量を決定することが好ましい。なお、バラスト水2の塩素濃度が経時的に減少する原因としては、バラスト水2の水温が高い場合にバラスト水2中の塩素が蒸散するか又は分解すること、バラスト水2に含まれる塩素が溶存有機物などと反応して消費されること等が考えられる。
殺菌剤5の形態は、特に限定されず、顆粒状、粉末状又は錠剤状等のいずれの形態を用いてもよいが、取扱いの簡便性を考慮すると、直径が1〜100mmである顆粒状又は錠剤状が好ましい。上記殺菌剤5の形態は、海水の取り込み速度、バラストタンクの容量やバラスト水の水量、航海日数等に応じて適宜決定することが好ましく、例えば、短時間で残留オキシダント(TRO:Total Residual Oxidant)濃度を上昇させたい場合又はバラスト水の管理温度が高い場合は顆粒状を使用することが好ましく、比較的長時間効果を持続させたい場合又はバラスト水の管理濃度が低めの場合は錠剤状を使用することが好ましい。
殺菌剤5は、耐塩素性及び耐酸化性に優れた材質からなる薬品容器6内に充填されている。薬品容器6に用いる材質としては、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等が挙げられる。
薬品容器6は、図2に示すように、容器本体6Aと、容器本体6A内に収容されるメッシュ状部材6Bと、を備えている。メッシュ状部材6Bには、複数の殺菌剤5が充填されている。メッシュ状部材6Bは、殺菌剤5を内部に保持するとともにバラスト水2が十分に流入可能な程度の目開きを有している。容器本体6Aの側面には小穴又はスリット(図示せず)が設けられており、当該小穴又はスリットを介してバラスト水2が容器本体6A内部に流入する。容器本体6A内に流入したバラスト水2は、殺菌剤5が充填されたメッシュ状部材6B内を通過し、その後バラストタンク1に流出する。この過程において、殺菌剤5がバラスト水2に溶け出すことにより次亜塩素酸が発生し、これがバラスト水を殺菌処理する。なお、図2に示すように殺菌剤5はメッシュ状部材6Bに充填した上で容器本体6Aに保持される場合に限られず、容器本体6A又はメッシュ状部材6Bのいずれか一方を省略してもよい。
<バラスト水処理システムによる作用効果>
次に、上記バラスト水処理システム10による作用効果について説明する。
参考態のバラスト水処理システム10は、バラストタンク1内のバラスト水2に殺菌剤5を浸漬させることにより、殺菌剤5からバラスト水2に次亜塩素酸が溶け出してバラスト水2の塩素濃度を高めることができ、微生物の再増殖を抑制することができる。
上記バラスト水処理システム10では、バラストタンク1内に殺菌剤5が配置されるため、バラストタンクに繋がる配管と薬剤タンクに繋がる配管とを接続し、当該薬剤タンクに繋がる配管からバラスト水に殺菌剤を導入する従来の装置と比べて、より簡易な構成で効率的にバラスト水2の塩素濃度を高めることができる。
また殺菌剤5としてトリクロロイソシアヌル酸を用いることにより、トリクロロイソシアヌル酸はバラスト水2への溶解速度が遅いことから、殺菌剤5をバラスト水2に浸漬させてもすぐに溶出せずに徐々にバラスト水2の塩素濃度を高めることができ、殺菌効果を長期間持続しやすい。
その上、従来のバラスト水処理装置の構成に対し、バラストタンク1内に殺菌剤5を新
たに設けるだけでよいため、設置スペースを確保しにくい船舶においても上記バラスト水処理システム10を適用しやすい。
トリクロロイソシアヌル酸を含む殺菌剤5を用いることにより、トリクロロイソシアヌル酸は水への溶解性が比較的小さいため、長期間に亘って殺菌効果を維持し、かつ高温下において安定に保持することができる。したがって、トリクロロイソシアヌル酸は、バラストタンク1内に配置される殺菌剤5として好適に用いることができる。
上記バラスト水処理システム10を用いたバラスト水処理方法は、バラストタンク1に貯留されたバラスト水2に対し、トリクロロイソシアヌル酸からなる固体状の殺菌剤5を浸漬させる工程を行うことにより、殺菌剤5からバラスト水2に次亜塩素酸が溶け出すことで、バラスト水の塩素濃度を高められる。これによりバラスト水2中の微生物の再増殖を抑制することができる。
(実施形態
<バラスト水処理システムの構成>
実施形態に係るバラスト水処理システム20は、参考態に対して、バラストタンク1内のバラスト水2の塩素濃度を測定する濃度測定部4と、殺菌剤5の位置を移動させる薬剤位置調整手段3と、を設けたことが異なる他は参考態と同一のものである。以下に実施形態に係るバラスト水処理システム10の構成について図3及び図4を参照して説明する。
濃度測定部4は、バラストタンク1内のバラスト水2の塩素濃度を測定するためのセンサであり、図3及び図4に示すようにバラストタンク1に取り付けられている。ここで、「塩素濃度(mg/L)」は、海水のTRO濃度として測定される。TRO濃度は、DPD試薬を用いた計測器等によって測定することができる。バラスト水2のTRO濃度は、殺菌能力を十分に発現させる観点から、例えば5mg/L以上10mg/L以下の範囲等に設定することが好ましい。
薬剤位置調整手段3は、殺菌剤5を移動させるための駆動機構31と、濃度測定部4による測定結果に基づいて駆動機構31を制御する位置制御部32と、を備えている。
駆動機構31は、図3及び図4に示すように、薬品容器6に一端が固定されたケーブル33と、ケーブル33の他端が固定された巻取軸34と、巻取軸34を回転させるモーター35と、を備えている。モーター35の駆動により巻取軸34が回転し、巻取軸34の回転とともに、ケーブル33が繰り出されるか巻き取られることで薬品容器6が上下動する。
薬品容器6は、バラストタンク1の上部にある定滑車8から垂れ下がったケーブル33によって吊り下げた状態で保持されている。2つの薬品容器6のそれぞれに1本のケーブル33の一端が接続されている。これらの2本のケーブル33の他端はいずれも、巻取軸34における図3の紙面の手前と奥にそれぞれ取り付けられている。モーター35の回転とともに巻取軸34が回転することで2本のケーブル33が同時に繰り出されるか又は巻き取られる。これによりそれぞれの薬品容器6が上下動し、バラスト水2に薬品容器6を浸漬させるか又はバラスト水2から薬品容器6が取り出される。薬品容器6の固定手法は図3に示す形態に限られない。
図3においては、1つの巻取軸34に対して2本のケーブル33の一端を取り付けている形態を示しているが、薬品容器6の個数(つまりケーブル33の本数)及び巻取軸34の個数は特に限定されず、1つの巻取軸34に対して3本以上のケーブル33を取り付けてもよい。またケーブル33の本数に応じた巻取軸34を設け、各巻取軸34に対して1本のケーブル33の一端を取り付けた上で、各巻取軸34を別々に動作させることで、複数の薬品容器6を別個独立に上下動させてもよい。
ただし、駆動機構31の設置の簡便性及び運転コスト低減の観点から、巻取軸34の個数は少ないほど好ましく、理想的には図3及び図4に示すように1つの巻取軸34に対し複数のケーブル33を接続し、当該1つの巻取軸34の動作を以ってそれに接続される全薬品容器6を同時に動作させ得る形態である。
実施形態のバラスト水処理システム20は、バラストタンク1内のバラスト水2の水位を検出するための水位検出部7をさらに設けてもよい。水位検出部7によってバラスト水2の水位を検出することにより、バラスト水2に薬品容器6を浸漬させる位置(第1位置)及びバラスト水2から薬品容器6を取り出す位置(第2位置)を的確に把握することができる。バラストタンク1内のバラスト水2は、船舶の積み荷の重量に応じて取り込み量を増減させるものであるため、バラストタンク1内のバラスト水2の水位は上下変動しやすいことから、上記水位検出部7で測定されたバラスト水2の水位の位置結果に基づいて、ケーブル33の巻き取り量及び繰り出し量を調整することにより、薬品容器6を的確な位置に動作させることができる。水位検出部7としては、例えばレーザー距離計が挙げられる。
図5を参照して、位置制御部32は、判定部32A、制御部32B及び記憶部32Cから主に構成されている。判定部32Aには、濃度測定部4によるバラスト水2の塩素濃度の測定結果及び水位検出部7によるバラスト水2の水位の測定結果が入力される。また記憶部32Cには、バラスト水2の塩素濃度の基準値のデータが格納されている。判定部32Aは、濃度測定部4から入力された測定結果と記憶部32Cに格納された基準値との比較を行い、その比較結果に基づいて殺菌剤5をバラスト水2に浸漬する必要があるか否かを判定する。具体的には、塩素濃度の測定値が基準値未満の場合には殺菌剤5をバラスト水2に浸漬させる必要があると判定し、逆に測定値が基準値以上の場合には殺菌剤5をバラスト水2から取り出す必要があると判定する。
制御部32Bは、判定部32Aによる上記判定結果が入力され、これに基づいて駆動機構31を動作させる。具体的には、制御部32Bは、判定部32Aにより殺菌剤5をバラスト水2に浸漬させる必要があると判定された場合には、モーター35を時計回り(図3)に回転させることで巻取軸34も時計回りに回転し、これにより巻取軸34からケーブル33が繰り出されて薬品容器6を下方に移動させる。そして、水位検出部7によって得られた水位の測定結果に基づいて、薬品容器6がバラスト水2に浸漬する位置(第1位置、図3)までケーブル33を繰り出し、その状態で薬品容器6を保持する。これにより薬品容器6内にバラスト水2が流入して殺菌剤5から次亜塩素酸が溶出し、バラスト水2の塩素濃度が高められる。
逆に、判定部32Aにより殺菌剤5をバラスト水2に浸漬させる必要がないと判定された場合には、モーター35を反時計回り(図4)に回転させることで巻取軸34も反時計回りに回転し、これにより巻取軸34にケーブル33が巻き取られて薬品容器6を上方に移動させる。そして、水位検出部7によって得られた水位の測定結果に基づいて、薬品容器6をバラスト水2から取り出す位置(第2位置、図4)までケーブル33を巻き取り、その状態で薬品容器6を保持する。このようにしてバラストタンク1内のバラスト水2の塩素濃度の測定結果をフィードバックしながら殺菌剤2を上下動させる(浸漬させるか又は取り出す)ように制御することにより、バラスト水2の塩素濃度を基準値以上に調整することができ、かつバラスト水の塩素濃度が基準値を大きく上回りにくい。
なお、薬品容器6の位置制御方法は、上記水位検出部7による水位測定結果に基づくものに限定されず、例えばバラスト水2に薬品容器6を浸漬させる場合には、薬品容器6の底面がバラストタンク1の底面に接するまでケーブル33を繰り出す操作を行う一方で、バラスト水2から薬品容器6を取り出す場合には、薬品容器6の上面がバラストタンク1の上面に接するまでケーブル33を巻き取る操作を行うように薬品容器6の位置を制御してもよい。
<バラスト水処理システムにおける塩素濃度の調整>
次に、上記バラスト水処理システム10における塩素濃度の調整方法について、図5に示すフローチャートに沿って説明する。
まず、判定部32Aは、バラストタンク1内のバラスト水2の水位を水位測定部7に測定させる(S0)。そして、判定部32Aは、予め設定された測定周期(例えば12時間ごと)でバラストタンク1内のバラスト水2の塩素濃度を濃度測定部4に測定させる(S1)。これらの測定データは、判定部32Aに入力される。
次に、判定部32Aは、入力された測定データと記憶部32Cに格納された基準値データとの比較を行い、当該測定データが基準値を下回るか否か(例えば、5mg/L未満であるか否か)を判定する(S2)。そして、基準値未満であると判定されると(S2:NO)、その判定結果が制御部32Bに入力される。そして、制御部32Bは、水位測定部7による測定データに基づいて薬品容器6を下方に移動させて殺菌剤5をバラスト水2に浸漬させた位置(第1位置)で保持する(S3)。これによりバラスト水2に殺菌剤5が溶出し、溶出した殺菌剤5が次亜塩素酸(塩素)を発生することでバラスト水の塩素濃度が高められる。
その後も継続して測定周期ごとにバラスト水2の塩素濃度が濃度測定部4に測定され、塩素濃度の測定データが基準値未満であると判定され続ける限り(S2:NO)、殺菌剤5はバラスト水2に浸漬させた第1位置で保持される。
このようにバラスト水2に殺菌剤5が浸漬され続けることで、殺菌剤5がバラスト水2に溶出し、塩素濃度の測定データが基準値以上になると(S2:YES)、水位測定部7による測定データに基づいて薬品容器6を上方に移動させてバラスト水2から殺菌剤5を取り出した位置(第2位置)で保持する。その後も測定周期ごとに濃度測定部4がバラスト水2の塩素濃度を測定し、塩素濃度の測定データが基準値以上と判定される限り、バラスト水2から殺菌剤5を取り出したままの第2位置で保持する。この状態でバラスト水2内の塩素が消費され、バラスト水2内の塩素濃度が基準値を下回るまで殺菌剤5は第2位置で保持される。
以上のように濃度測定部4によってバラスト水2の塩素濃度を定期的に測定し、当該測定結果を基準値と対比しながら殺菌剤5をバラスト水2に浸漬させるか又はバラスト水2から取り出す動作をすることにより、バラスト水2の塩素濃度を基準値から大きく外れないように調整することができる。
<バラスト水処理システムによる作用効果>
次に、実施形態のバラスト水処理システム20による作用効果について説明する。なお、参考態のバラスト水処理システムによる作用効果と重複する部分は割愛する。
実施形態のバラスト水処理システム20は、トリクロロイソシアヌル酸からなる固体状の殺菌剤5と、バラストタンク1内のバラスト水2に殺菌剤5を浸漬させた第1位置(図3)及び殺菌剤5をバラスト水2から取り出した第2位置(図4)に移動可能な状態で殺菌剤5を保持する薬剤位置調整手段3と、を備える。殺菌剤5を第1位置で保持することにより、殺菌剤5からバラスト水2に次亜塩素酸が溶け出してバラスト水2の塩素濃度を高めることができ、微生物の再増殖を抑制することができる。また殺菌剤5を第2位置で保持することにより、殺菌剤5のバラスト水2への過剰な溶出を抑制することも可能である。
また従来のバラスト水処理装置の構成に対し、バラストタンク1内に殺菌剤5及び薬剤位置調整手段3を新たに設けるだけの簡素な設備の追加のみでよいため、設置スペースを確保しにくい船舶においても上記バラスト水処理システム20を適用しやすい。
実施形態のバラスト水処理システム20は、バラストタンク1に貯留されたバラスト水2の塩素濃度を測定する濃度測定部4を備えている。この濃度測定部4によってバラスト水2の塩素濃度をモニタリングし、バラスト水2の塩素濃度が低下したタイミングで、殺菌剤5をバラスト水2に浸漬させることにより、バラスト水2の塩素濃度を高めることができる。
また濃度測定部4によってバラスト水2の塩素濃度をモニタリングし、バラスト水2の塩素濃度が基準値以上となるタイミングで、殺菌剤5をバラスト水2から取り出すことにより、バラスト水2の塩素濃度が過剰に高められるのを抑制することができる。これによりバラストタンク1に腐食が生じることを防止することができるし、過剰量の殺菌剤5を使用する必要がないため、材料コストが高くなりにくい。しかも、バラスト水2の排水時に殺菌成分の中和処理に多大な時間及び中和剤が必要となることも少ない。
上記薬剤位置調整手段3は、殺菌剤5を移動させるための駆動機構31と、濃度測定部4による測定結果に基づいて駆動機構31を制御する位置制御部32と、を備えているため、バラスト水2の塩素濃度の測定結果を濃度測定部4から位置制御部32にフィードバックして駆動機構31を制御することができる。これによりバラスト水2の塩素濃度の多寡に応じて殺菌剤5を第1位置又は第2位置に移動させることができ、バラストタンク1内のバラスト水2の塩素濃度を適度に高めることができる。
上記殺菌剤5は薬品容器6に充填されており、薬品容器6を上下動させることにより殺菌剤5を前記第1位置に移動させる操作及び前記第2位置に移動させる操作を行うため、殺菌剤5を上下動可能な状態でバラスト水2の上部に配置しやすく、またバラスト水2に殺菌剤5を浸漬させたときに殺菌剤5がバラスト水2に溶出する速度を薬品容器6により抑制することができる。
上記殺菌剤5は、トリクロロイソシアヌル酸である。トリクロロイソシアヌル酸は水への溶解性が比較的小さいため、長期間に亘って殺菌効果を維持し、かつ高温下において安定に保持することができる。したがって、トリクロロイソシアヌル酸は、バラストタンク1内に配置される殺菌剤5として好適に用いることができる。
実施形態のバラスト水処理システム20を用いたバラスト水処理方法は、バラストタンク1に貯留されたバラスト水2に対し、トリクロロイソシアヌル酸からなる固体状の殺菌剤5を浸漬させる工程を行うことにより、殺菌剤5からバラスト水2に次亜塩素酸が溶け出すことで、バラスト水の塩素濃度を高められる。これによりバラスト水中の微生物の再増殖を抑制することができる。
上記バラスト水処理方法は、バラストタンク1内のバラスト水2の塩素濃度を測定する第1工程をさらに含み、第1工程によって得られた塩素濃度が基準値未満のときにバラスト水2に対して殺菌剤5を浸漬させる工程を行ってもよい。
上記第1工程により、バラストタンク1内のバラスト水2の塩素濃度の測定結果をフィードバックした上で、バラスト水2に殺菌剤5を浸漬させることができるため、バラスト水2の塩素濃度が基準値未満となったときにバラスト水2の塩素濃度を高めることができる。
上記バラスト水処理方法は、殺菌剤5を浸漬させる工程を行った後に、バラストタンク1内のバラスト水2の塩素濃度を測定する第2工程と、当該第2工程によって得られた塩素濃度が基準値以上のときに、浸漬させた殺菌剤5をバラスト水2から取り出す工程と、をさらに含んでいてもよい。
上記第2工程により、バラスト水2の塩素濃度が基準値以上となるタイミングで、殺菌剤5をバラスト水2から取り出すことによりバラスト水2の塩素濃度が過剰に高められるのを抑制することができる。
(実施形態の変形例)
実施形態のバラスト水処理システム20においては、バラストタンク内のバラスト水2に対して薬品容器6の位置を上下動させることにより、薬品容器6内の殺菌剤5をバラスト水2に浸漬させる形態を説明したが、このように殺菌剤5を浸漬させる形態のみに限られず、バラスト水2に殺菌剤5を一定期間浸漬させる形態である限り本発明の範囲に含まれる。ここで「一定期間浸漬させる」とは、バラスト水2に殺菌剤5を浸漬させたときに、バラスト水2の塩素濃度を予め設定した塩素濃度まで高め得る浸漬方法である限り、その浸漬方法は限定されず、例えば、バラスト水2に殺菌剤5を投入したまま殺菌剤5をバラスト水2から取り出さなくてもよいし、殺菌剤5をバラスト水2に浸漬させる操作とバラスト水2から殺菌剤5を取り出す操作とを1回ずつ行うことで予め設定した塩素濃度に至るまで殺菌剤5をバラスト水2に浸漬させてもよいし、これらの各操作を2回以上交互に繰り返すことで予め設定した塩素濃度までバラスト水2の塩素濃度を徐々に高めてもよい。勿論、バラストタンク内に殺菌剤5を配置したまま殺菌剤5をバラスト水2から取り出さなくてもよい。
実施形態のバラスト水処理システム20においては、薬剤位置調整手段3を用いて薬品容器6(殺菌剤5)の位置を自動調整する場合を説明したが、このように自動制御する形態のみに限られず、薬剤位置調整手段3に代えてスイッチ部を設け、作業者がスイッチ部を操作することにより薬品容器6を上下動させてもよい。
この場合、濃度測定部4による測定結果を作業者が定期的に確認し、作業者がスイッチ部にUP又はDOWNの指示を入力することにより、モーター35を駆動して巻取軸34を時計回り又は反時計回りに回転させることで、ケーブル33を巻き取るか又は繰り出す。これにより薬品容器6を上下動させてバラスト水2に殺菌剤5を浸漬させる操作及びバラスト水2から殺菌剤5を取り出す操作を行う。つまり、作業者は一定のタイミングで(例えば5時間ごとに)濃度測定部4に表示された塩素濃度を確認し、当該塩素濃度が基準値を下回る場合は、作業者がスイッチ部にDOWNの指示を入力し、薬品容器6をバラスト水2に浸漬させる。逆に濃度測定部4に表示された塩素濃度が基準値以上である場合は作業者がスイッチ部にUPの指示を入力し、薬品容器6をバラスト水2から取り出す。このように作業者がスイッチ部を用いて薬品容器6の位置を制御することで、実施形態と同一の作用効果を得ることができる。
実施形態において、作業者が濃度測定部4の測定結果を一定のタイミングで確認することが煩わしい場合には、濃度測定部4の測定結果を作業者に伝えるための報知装置(図示せず)を濃度測定部4に接続してもよい。
上記報知装置に関して、バラスト水2はバラストタンク1への保管時間に応じて徐々に塩素が消費されるが、この消費により塩素濃度が基準値を下回ると、その情報が濃度測定部4から報知装置に入力され、その情報を報知装置に表示して作業者に伝達するようにしている。これにより作業者はバラスト水2の塩素濃度が基準値を下回ったことを把握することができる。このような報知装置を設けることにより、作業者が定期的に濃度測定部4の測定結果を確認しなくてもよいという利点がある。
報知装置からの情報を得た作業者は、スイッチ部にDOWNの動作を入力することにより薬品容器6を下方に移動させてバラストタンク1内のバラスト水2に薬品容器6を浸漬させる。これにより殺菌剤5がバラスト水2に溶出し、バラスト水2の塩素濃度を高めることができる。
上記においては図4に示されるような、殺菌剤5を第2位置で保持する場合(バラスト水2の塩素濃度が徐々に低下する場合)を説明したが、逆に図3で示すような殺菌剤5を第1位置で保持する場合(バラスト水2の塩素濃度が徐々に上昇する場合)に報知装置を用いてもよい。この場合、バラスト水2に殺菌剤5を浸漬させた状態では、バラスト水2の塩素濃度は徐々に高められるが、これにより塩素濃度が基準値以上になると、その情報が濃度測定部4から報知装置に入力され、その情報を報知装置が作業者に伝達するようにする。これにより作業者はバラスト水2の塩素濃度が基準値以上になったことを把握することができる。当該情報を得た作業者は、スイッチ部にUPの動作を入力することにより、殺菌剤5を充填した薬品容器6を上方に移動させてバラスト水2から薬品容器6を取り出す。これによりバラスト水2の塩素濃度の過剰な上昇を抑制することができる。
なお、濃度測定部4は、バラストタンク1に貯留された塩素濃度を検知可能なものであればよく、他の種類のセンサも同様に用いることができる。なおまた、報知装置による伝達は、バラスト水2の塩素濃度を表示する形態のみに限られず、音声等のアラーム、又は赤、青等の光信号によるものであってもよい。
実施形態のバラスト水処理システムにおいては、濃度測定部4による測定値を作業者が確認して作業者がスイッチ部を操作して薬品容器6の位置決めをしていたが、さらに濃度測定部4を省略し、バラストタンク1内のバラスト水2の水温や濁度、海水の塩分濃度等のデータを参考に、作業者の感覚でスイッチ部を操作することにより、薬品容器6の位置決め、すなわち薬品容器6のバラスト水2への浸漬及びバラスト水2からの取出しを行ってもよい。
<実施例1>
容積1m3のプラスティックタンク(バラストタンクを模擬)内に、1tの濾過された
海水を導入した。当該濾過された海水(バラスト水)の水温は18℃であった。次に、側面にスリットが入った各辺25mmの立方体形のプラスティックケース(薬品容器)に直径20mm、高さ10mmのトリクロロイソシアヌル酸(殺菌剤)の20g錠剤を1錠入れた。この殺菌剤入りのプラスティックケースをプラスティックタンクに投入することにより、殺菌剤を濾過された海水に浸漬させた。このプラスティックタンクから10分ごと(10分後、20分後、30分後)に濾過された海水をサンプリングし、プラスティックケース投入から30分後に、殺菌剤入りのプラスティックケースを濾過された海水から取り出した。
<評価>
次に、濾過された海水にプラスティックケースを投入した直後から10分ごとに採取し
た各サンプルのTRO濃度をDPD方式のHACH製クロリメーターIIによって測定した。また海水及びプラスティックケース投入から30分経過後のサンプルの従属栄養細菌数(海水培地)を測定した。これらの結果を表1に示す。
表1に示す結果から、バラスト水にプラスティックケースを投入後、時間の経過とともにバラスト水のTRO濃度が上昇することが明らかとなった。そして、プラスティックケース投入から30分経過後には、バラスト水中の細菌数が全滅していることが確認された。これは、プラスティックケース内のトリクロロイソシアヌル酸がバラスト水に溶け出して塩素を発生したことによりTRO濃度が上昇し、バラスト内の殺菌作用が高められたことによるものと考えられる。
<実施例2>
実施例1に対して、殺菌剤を平均直径1.2mmの顆粒状のトリクロロイソシアヌル酸10gに代えたことが異なる他は実施例1と同一のバラスト水処理システムを用いて実験を行った。なお、海水の水温は19°Cであった。海水にプラスティックケースを投入した直後から5分ごと(5分後、10分後、15分後)に海水をサンプリングし、採取した各サンプルのTRO濃度を実施例1と同様の方法で測定した。そして、プラスティックケース投入から15分後に、殺菌剤入りのプラスティックケースを濾過された海水から取り出した。
<評価>
プラスティックケース投入から15分経過後のサンプルの従属栄養細菌数(海水培地)を実施例1と同様の方法によって測定した。この結果を表2に示す。
表2に示す結果から、バラスト水にプラスティックケースを投入後、時間の経過とともにバラスト水のTRO濃度が上昇することが確認された。本実施例では、殺菌剤として顆粒状のトリクロロイソシアヌル酸を用いたため、TRO濃度の上昇速度が実施例1のそれよりも高かった。そして、プラスティックケース投入から15分経過後には、バラスト水中の細菌数が全滅していることが確認された。これは実施例1の結果と同様に、トリクロロイソシアヌル酸がバラスト水に溶け出して塩素を発生したことによりTRO濃度が上昇し、バラスト水の殺菌作用が高められたことによるものと考えられる。
上記の実施例1及び2により本発明の効果は示された。
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特
許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 バラストタンク、2 バラスト水、3 薬剤位置調整手段、4 濃度測定部、5 殺菌剤、6 薬品容器、7 水位検出部、10,20 バラスト水処理システム、31 駆動機構、32 位置制御部。

Claims (9)

  1. トリクロロイソシアヌル酸からなる固体状殺菌剤と、
    前記殺菌剤が充填される薬品容器と、
    前記薬品容器がバラストタンク内のバラスト水の上方に位置する第2位置から前記バラスト水に浸漬された第1位置に前記薬品容器を移動させる移動手段と、を備え
    前記第1位置では、前記バラスト水に浸漬された前記薬品容器内の前記殺菌剤が前記バラスト水中に溶け出す、バラスト水処理システム。
  2. トリクロロイソシアヌル酸からなる固体状の殺菌剤と、
    ラストタンク内のバラスト水に前記殺菌剤を浸漬させた第1位置及び前記バラストタンク内のバラスト水から前記殺菌剤を取り出した第2位置に移動可能な状態で前記殺菌剤を保持する薬剤位置調整手段と、を備えた、バラスト水処理システム。
  3. 前記バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度を測定する濃度測定部をさらに備え、
    前記薬剤位置調整手段は、前記濃度測定部によって測定された塩素濃度が基準値未満のときに前記殺菌剤を前記第1位置に移動させる、請求項2に記載のバラスト水処理システム。
  4. 前記薬剤位置調整手段は、前記濃度測定部によって測定された塩素濃度が基準値以上のときに前記殺菌剤を前記第2位置に移動させる、請求項2又は3に記載のバラスト水処理システム。
  5. 前記薬剤位置調整手段は、前記殺菌剤を移動させるための駆動機構と、前記濃度測定部による測定結果に基づいて前記駆動機構を制御する位置制御部と、を備える、請求項3又は4に記載のバラスト水処理システム。
  6. 前記殺菌剤が充填された薬品容器をさらに備え、
    前記薬剤位置調整手段は、前記薬品容器を上下動させることにより前記殺菌剤を前記第1位置に移動させる操作及び前記第2位置に移動させる操作を行う、請求項2〜4のいずれか一項に記載のバラスト水処理システム。
  7. リクロロイソシアヌル酸からなる固体状の殺菌剤が充填された薬品容器、バラストタンク内のバラスト水よりも上方の位置から下方に移動させて、前記薬品容器内の殺菌剤が前記バラスト水に溶け出すように前記薬品容器を前記バラスト水に浸漬させる工程を含むバラスト水処理方法。
  8. 前記バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度を測定する第1工程と、
    前記第1工程によって得られた塩素濃度が基準値未満のときに前記バラストタンク内のバラスト水に対して、トリクロロイソシアヌル酸からなる固体状の殺菌剤を浸漬させる工程と、を行う、バラスト水処理方法。
  9. 前記殺菌剤を浸漬させる工程を行った後に、前記バラストタンク内のバラスト水の塩素濃度を測定する第2工程と、
    前記第2工程によって得られた塩素濃度が基準値以上のときに、浸漬させた前記殺菌剤を前記バラストタンク内のバラスト水から取り出す工程と、をさらに含む、請求項8に記載のバラスト水処理方法。
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