以下、モータユニットの一実施形態を説明する。
図1に示すように、モータユニットは、モータ軸11を有するモータ12と、モータ12の回転動作を制御するモータコントローラ13とをユニット化したものである。後述するが、モータコントローラ13の主要構成要素は、配線部50と、モジュール60と、動作制御基板70と、センサ基板80とによって構成される。なお、本実施形態のモータユニットは、例えば、車両における電動パワーステアリング装置に搭載される。電動パワーステアリング装置は、車両の運転者がステアリングホイールを操作するときの操舵トルクに応じたアシストトルクが生じる(運転者のステアリング操作を補助する)ようにモータユニットを制御する。
モータユニットは、モータ12及びモータコントローラ13を収容する円筒状のモータハウジング14を備える。モータハウジング14は、一方に開口する開口部20aを有する円筒状のステータハウジング20と、一方に開口する開口部21aを有する円筒状のカバー21とから構成される。ステータハウジング20及びカバー21は、モータ軸11の軸方向において、各開口部20a,21aの開口方向が対向して設けられる。つまり、各開口部20a,21aは、互いの開口部を塞ぎ合う。なお、ステータハウジング20及びカバー21は、開口部20aの周縁に形成される複数(本実施形態では、4つ)の係合部20bと、開口部21aの周縁に形成される複数(本実施形態では、4つ)の係合爪21bとの係合によって組み付けられる。以下の説明において、「軸方向」はモータ軸11の軸長方向を意味し、「径方向」は「軸方向」に直交する方向(モータ軸11を含む面に垂直な方向)を意味し、「周方向」は「軸方向」を中心に回転する方向を意味する。
ステータハウジング20には、ステータ30やロータ33等から構成されるモータ12が収容される。ステータハウジング20の内周には、複数のティースが形成された円筒状のステータ30が固定される。ステータ30の各ティースには、インシュレータを介してモータコイル31がそれぞれ巻装される。モータコイル31の接続端部となる引き出し線は、対応する各相(U相、V相、W相の3相)のモータ側バスバー32にそれぞれ接続される。
ステータ30の内周側にはモータ軸11が配置され、モータ軸11には円筒状のロータ33が外嵌される。つまり、ロータ33は、モータ軸11と一体回転する。ロータ33の外周には、長方形板状に形成された複数の永久磁石34が固定される。永久磁石34は、ロータ33の周方向に異なる極性(N極、S極)が交互に並んで配置される。
また、ステータハウジング20には、ステータ30及びロータ33に対して開口部20a側からロータハウジング35が嵌め込まれる。ロータハウジング35は、ステータ30及びロータ33をステータハウジング20内に止めておくとともに、モータ軸11を回転自在に支持する軸受36を固定するものである。
なお、上述した、ステータ30、モータコイル31、モータ側バスバー32、ロータ33、永久磁石34、及びロータハウジング35は、モータ12の構成要素となる。
また、モータ軸11の長さは、その一部がステータハウジング20からカバー21の内部まで延出するように設定される。モータ軸11について、カバー21の内部まで延出する側の軸端部11aには、強磁性体等の検出用磁石37が設けられる。検出用磁石37は、取付具37aによってモータ軸11と一体回転するように固定される。なお、検出用磁石37は、ロータ33(モータ12)の回転角を演算するために用いられる物理量である磁力の発生源となる。検出用磁石37が発生させる磁力(磁気的な物理量)は、その変化が該検出用磁石37に対向して設けられる後述する磁気センサ83aで検出される。
モータ12では、上記磁気センサ83aにおける検出結果を用いて演算される回転角に応じた三相の駆動電力が各モータコイル31に供給されることにより回転磁界が発生される。そして、ロータ33は、モータ12において発生される回転磁界と各永久磁石34との関係に基づき回転する。
図1、図4に示すように、カバー21には、配線部50やモジュール60や動作制御基板70やセンサ基板80等から構成されるモータコントローラ13が収容される。なお、カバー21の開口部21aの反対側には、外部電源との接続をなす電源コネクタ21cと、外部制御部との接続をなす複数(本実施形態では、2つ)の制御コネクタ21dとが形成される。
以下、モータコントローラ13の構成について詳しく説明する。
図1〜図3に示すように、モータコントローラ13は、モータユニットを構成する各種部品の放熱を促す機能を有するヒートシンク40を備える。ヒートシンク40は、円板状の土台部41を有する。土台部41の直径は、開口部20aの直径よりも若干大きくなるように設定される。そして、土台部41は、ステータハウジング20の開口部20aに嵌め込まれている(圧入されている)。
土台部41の内径側には、直方体状の設置部42が軸方向に沿って延設される。設置部42は、土台部41を境界としてモータ12に対して反対側に配置される。設置部42の径方向及び軸方向の外面には、モータコントローラ13を構成する各種部品を設置可能な複数(本実施形態では、5つ)の設置ベース43〜47が形成される。なお、土台部41には、ステータハウジング20とカバー21との内部を軸方向に連通させる複数(本実施形態では、3つ)の連通口41aが形成される。連通口41aは、3つの連通口を一単位として設置部42の設置ベース44,45に対向して2箇所配置される。また、設置部42もヒートシンク40を構成する。
ヒートシンク40には、その軸方向に沿って貫通孔48が形成される。貫通孔48は、土台部41のモータ12側から設置ベース43〜47のうちの土台部41に対して平行な平面状に形成される設置ベース47に至る。なお、設置ベース47には、貫通孔48が連通する開口凹部47bが凹設される。そして、貫通孔48には、モータ軸11が挿通される。この場合、モータ軸11は、その軸端部11aが開口凹部47bに至るに止まり、設置ベース47からは突出しない。一方、モータ軸11の軸端部11aに取り付けられる検出用磁石37は、開口凹部47bの径方向内側で回転可能であるとともに、その一部が設置ベース47から突出する。
図2〜図4に示すように、土台部41に対して垂直に交差するとともに設置部42の軸方向に沿って平面状に形成される設置ベース43には、配線部50が設けられる。設置ベース43に対して周方向に隣り合う、該設置ベース43同様の平面状に形成される設置ベース44には、モジュール60が設けられる。設置ベース44に対向するとともに、設置ベース43に対して周方向に隣り合う、該設置ベース43同様の平面状に形成される設置ベース45には、モータコントローラ13を構成する各種部品の何も設置されない空きスペースとなる。なお、設置ベース45は、モータユニットに新たな機能の付加時や、冗長性の確保時等、モータコントローラ13を構成する各種部品の増設時に活用される。設置ベース44及び設置ベース45に対して周方向に隣り合うとともに、設置ベース43に対向する、該設置ベース43同様の平面状に形成される設置ベース46には、動作制御基板70が設けられる。また、土台部41に対して平行な平面状に形成される上述の設置ベース47には、センサ基板80が設けられる。
つまり、配線部50、モジュール60、及び動作制御基板70は、モータユニット(ヒートシンク40)に対してモータ軸11の径方向外側であって、モータ軸11の軸方向に沿って配置される。そして、配線部50はモジュール60に対して隣接するとともに、モジュール60は動作制御基板70に対して隣接する。一方、センサ基板80は、モータユニット(ヒートシンク40)に対してモータ軸11の軸方向の軸端部11a側の延長上に配置される。そして、センサ基板80は、配線部50、モジュール60、及び動作制御基板70に対してそれぞれ隣接する。
以下、モータコントローラ13を構成する各種部品について、詳しく説明する。
図2及び図4に示すように、配線部50は、モータ12等への電源供給の電源供給路を形成するものである。配線部50は、設置ベース43との間に長辺及び短辺を有する長方形状(矩形状)の樹脂プレート52を介した状態で、設置ベース43に形成される2つの固定部43aに挿通されるねじ51によって固定される。各固定部43aは、樹脂プレート52の厚み分だけ設置ベース43から径方向外側に突出する。各固定部43aは、配線部50を固定する際、樹脂プレート52の取り付け部に挿入される。そして、配線部50は、ヒートシンク40に対して樹脂プレート52が面当て状態で固定される。
図5に示すように、配線部50の樹脂プレート52には、コイル部品53、電解コンデンサ54a〜54d、第1のバスバーとしての電源バスバー55、及び第2のバスバーとしての接地バスバー56が実装される。
コイル部品53は、外部電源から供給される駆動電力のうち余分な周波数域の電力をカットしてノイズを低減するものであり、図5では各バスバー55,56と接地間に発生するコモンモードのノイズを低減する。つまり、コイル部品53は、電源バスバー55の途中に設けられる第1コモンモードコイル53aと、接地バスバー56の途中に設けられる第2コモンモードコイル53bとを同一のコアに巻き付けて構成される。なお、ここで言う接地とは、必ずしも電位0Vとは限らず基準電位点を示す。各電解コンデンサ54a〜54dは、外部電源から供給される駆動電力を平滑化するものである。
電源バスバー55は、外部電源と電源供給先であるモジュール60やセンサ基板80を接続するものであり、上流側本体55aと下流側本体55bとに分断された2部品からなる。
上流側本体55aには、外部電源が接続される電源端子部55cと、コイルやコンデンサが接続される端子部55d,55eが形成される。なお、電源端子部55cは、電源コネクタ21cに配置される。下流側本体55bには、コイルやコンデンサが接続される端子部55f〜55kが形成される。
接地バスバー56は、電源供給先であるモジュール60やセンサ基板80と基準電位点とを接続するものであり、上流側本体56aと下流側本体55bとに分断された2部品からなる。ただし、後で詳述するが、接地バスバー56は、上流側本体56aと下流側本体55bとが連結部57(図6中に示す)を介して連結された1部品として製造されるものである。ここで説明するように、コモンモードのノイズを低減する場合、連結部57を除去した状態で用いられる。そのため、図5中において、連結部57は存在していない。
上流側本体56aには、外部電源が接続される電源端子部56cと、コイルやコンデンサが接続される端子部56d,56eが形成される。なお、電源端子部56cは、電源コネクタ21cに配置される。下流側本体56bには、コイルやコンデンサが接続される端子部56f〜56kが形成される。
各バスバー55,56は、配線部50において互いに並行するかたちで続くように樹脂プレート52にモールドされる。そして、各バスバー55,56において、各端子部55c,55d,55g〜55k及び各端子部56c,56d,56g〜56kは対応する端子同士がそれぞれ隣り合って配置される。なお、一対の端子部55e,55f及び一対の端子部56e,56fはこれらが対で隣り合って配置される。
電源バスバー55において、一対の端子部55e,55fには第1コモンモードコイル53aの端子一つずつが接続される。第1コモンモードコイル53aは、分断された上流側本体55a及び下流側本体55bとの間を電気的に繋いで電源供給路を形成する。
また、接地バスバー56において、一対の端子部56e,56fには第2コモンモードコイル53bの端子一つずつが接続される。第2コモンモードコイル53bは、分断された上流側本体56a及び下流側本体56bとの間を電気的に繋いで電源供給路を形成する。
各バスバー55,56において、隣り合って配置される各端子部55d,56dには電解コンデンサ54aの端子一つずつが接続される。隣り合って配置される各端子部55h,56hには電解コンデンサ54bの端子一つずつが接続される。隣り合って配置される各端子部55i,56iには電解コンデンサ54cの端子一つずつが接続される。隣り合って配置される各端子部55j,56jには電解コンデンサ54dの端子一つずつが接続される。つまり、各電解コンデンサ54a〜54dは、各バスバー55,56に跨って接続される。
また、各バスバー55,56において、隣り合って配置される各端子部55g,56gにはモジュール60の各端子部62が接続される。隣り合って配置される各端子部55k,56kは、センサ基板80に形成される端子孔84にそれぞれ挿通される。
こうした各バスバー55,56の各端子部55c〜55k及び各端子部56c〜56kの配置によって、コイル部品53は、モータ12の最も近くに配置されるとともに、設置ベース47から最も離間して配置される。なお、設置ベース47には、センサ基板80が設けられる。つまり、コイル部品53は、配線部50に対して配置可能な領域のなかでセンサ基板80に対して最も離間するように配置される。一方、コイル部品53に対して、各電解コンデンサ54a〜54dは、モータ12から離間して配置される。
また、図2及び図4に示すように、モジュール60は、長辺及び短辺を有する長方形状(矩形状)に形成される。モジュール60は、半導体素子としてFET等の複数のスイッチング素子が集積されたインバータ回路等からなる駆動回路である。モジュール60は、外部電源に基づいてモータ12への電源供給(例えば、3相(U相、V相、W相)の駆動電力の供給)を制御するものである。モジュール60は、設置ベース44に形成される2つのねじ穴44aに挿通されるねじ61により固定される。各ねじ穴44aは、設置ベース44を穿設することによって形成される。そして、モジュール60は、ヒートシンク40に対して面当て状態で固定される。
モジュール60の長手方向の配線部50側には、2つの端子部62が径方向に延出される。各端子部62は、各バスバー55,56の各端子部55g,56gに接続される。つまり、モジュール60には、各端子部55g,56g、各端子部62を通じて電源供給路(駆動電力の供給路)が形成される。
また、モジュール60の長手方向の配線部50側には、各端子部62の他、3つの端子部63が径方向に延出される。各端子部63は、3本のモジュールバスバー65及び3本の中継バスバー66を介して対応する各相(U相、V相、W相の3相)のモータ側バスバー32にそれぞれ接続される。なお、各中継バスバー66は、土台部41の連通口41aを通ってステータハウジング20の内部へと進出することによって、モータ側バスバー32にそれぞれ接続される。つまり、モータ12には、各端子部63、各モジュールバスバー65、各中継バスバー66、モータ側バスバー32を通じて電源供給路(駆動電力の供給路)が形成される。
また、モジュール60の長手方向の動作制御基板70側には、22本の端子部64が径方向に延出される。各端子部64は、動作制御基板70に形成される端子孔74にそれぞれ挿通される。つまり、モジュール60及び動作制御基板70の間には、各端子部64、端子孔74を通じてインバータ回路のスイッチング素子の動作(切り替え)が指示される制御信号やインバータ回路で監視する電流値を示す信号等を授受する信号経路が形成される。
また、図1、図3、及び図4に示すように、動作制御基板70は、長辺及び短辺を有する長方形状(矩形状)に形成される。動作制御基板70は、モジュール60の動作を制御する制御基板である。動作制御基板70は、設置ベース46に形成される3つの固定部46aに挿通されるねじ71により固定される。各固定部46aは、所定の長さだけ設置ベース46から径方向外側に突出する。そして、動作制御基板70は、ヒートシンク40に対して、設置ベース46から各固定部46aが突出する長さ分の隙間をあけた状態で固定される。
特に図1に示すように、動作制御基板70には、その基板の両面にマイクロプロセッサやROM等の電子部品72,73が実装される。動作制御基板70において、電子部品72,73は、モジュール60の動作を制御する制御回路を構築する。なお、電子部品73は、ヒートシンク40(設置ベース46)との間の上記隙間に配置される。
動作制御基板70の長手方向のモジュール60側には、22個の端子孔74が軸方向に沿って形成される。各端子孔74には、モジュール60の各端子部64がそれぞれ挿通される。つまり、上述のごとくモジュール60及び動作制御基板70の間に、各端子部64、端子孔74を通じて信号経路が形成される。
また、動作制御基板70の短手方向のセンサ基板80側には、19個の端子孔75が該センサ基板80に沿って形成される。各端子孔75には、センサ基板80との接続をなす19本の接続端子94がそれぞれ挿通される。つまり、動作制御基板70及びセンサ基板80の間には、各接続端子94、各端子孔75を通じて外部制御部からの制御信号やロータ33の回転角を示す信号等を授受する信号経路が形成される。なお、各接続端子94、各端子孔75を通じては、電源供給路も形成される。
また、図1〜図4に示すように、センサ基板80は、長辺及び短辺を有する長方形状(矩形状)に形成される。センサ基板80は、動作制御基板70によるモジュール60の動作の制御に必要な情報としてロータ33の回転角を演算する演算制御基板である。センサ基板80は、設置ベース47に形成される3つの固定部47aに挿通されるねじ81により固定される。各固定部47aは、所定の長さだけ設置ベース47から軸方向上側(モータ12とは反対側)に突出する。そして、センサ基板80は、ヒートシンク40に対して、設置ベース47から各固定部47aが突出する長さ分の隙間をあけた状態で固定される。
特に図1及び図4に示すように、センサ基板80には、その基板の両面にマイクロプロセッサやROM等の電子部品82,83が実装される。センサ基板80において、電子部品82,83は、ロータ33の回転角を演算する演算回路(制御回路)を構築する。なお、電子部品83は、ヒートシンク40(設置ベース47)との間の上記隙間に配置される。
特に、電子部品83には、磁気抵抗素子等の磁気センサ83aが実装される。また、電子部品83は、モータ軸11の軸端部11aに取り付けられる検出用磁石37に対向して配置される。つまり、磁気センサ83aは、検出用磁石37に対向して配置される。これにより、磁気センサ83aは、検出用磁石37が発生させる磁力の変化を検出する。そして、センサ基板80は、磁気センサ83aの検出結果に基づきロータ33(モータ12)の回転角を演算(算出)する。
センサ基板80の長手方向の配線部50側には、2個の端子孔84が該配線部50に沿って形成される。各端子孔84には、配線部50の各端子部55k,56kが挿通される。つまり、センサ基板80及び配線部50の間には、各端子部55k,56k、各端子孔84を通じて電源供給路が形成される。
また、センサ基板80の長手方向の動作制御基板70側には、19個の端子孔85が該動作制御基板70に沿って形成される。各端子孔85には、上述の各接続端子94がそれぞれ挿通される。つまり、上述のごとくセンサ基板80及び動作制御基板70の間に、各端子孔85、各接続端子94を通じて信号経路及び電源供給路が形成される。
また、センサ基板80の短手方向の両側には、外部接続端子部86がそれぞれ設けられる。なお、各外部接続端子部86は、制御コネクタ21dに配置される。各外部接続端子部86は、外部制御部に接続される。つまり、センサ基板80及び外部制御部の間には、各外部接続端子部86を通じて動作制御基板70に指示を出すための制御信号等を授受する信号経路が形成される。
次に、配線部50の各バスバー55,56の構成について、さらに詳しく説明する。
図6は、ヒートシンク40(モータユニット)に設置前の各バスバー55,56を示している。
具体的に、電源バスバー55は、上述のごとく、上流側本体55aと下流側本体55bとに分断されていること、上流側本体55a及び下流側本体55bに電源端子部55cの他、各端子部55b〜55kが形成される。これらの点は、ヒートシンク40の設置前、設置後のどちらにおいても変わりない。
一方、接地バスバー56は、ヒートシンク40の設置前、設置後で構成(構造)が変わる場合がある。接地バスバー56は、ヒートシンク40の設置前、すなわち製造段階において、上流側本体56aと下流側本体56bとに分断されず、連結部57(図中、網掛けで示す)を介して連結された一部品として成形される。
連結部57は、上流側本体56a及び下流側本体56bのそれぞれのなかで、幅が比較的に大きい部分同士に跨って形成される。これは、接地バスバー56の耐久性を考慮したことも理由の一つである。そして、連結部57は、上流側本体56aの大幅部56lと下流側本体56bの大幅部56mとを連結する。
また、連結部57は、接地バスバー56の端子部56g,56kが端子部56fに向かって続いているなかで電源バスバー55の端子部55hを避け、電源端子部56cへと続いていく経路が最も短くなる位置に形成される。本実施形態の連結部57は、上流側本体56aの電源端子部56cから下流側本体56bに向かって真っすぐ伸ばす線上であって、上流側本体56aの大幅部56lのなかで下流側本体56bの大幅部56mに最も近い角部56nから、該下流側本体56bの大幅部56mに対して垂直に伸ばされる線上に形成される。
また、連結部57の幅Wは、各バスバー55,56を通じて最も細く形成される。これは、連結部57を残す場合に連結部57によって形成される供給路のインダクタンスを確保する目的と、連結部57を除去する場合に除去し易くする目的とからである。
以上に説明した本実施形態のモータユニットによれば、以下の(1)〜(6)に示す作用及び効果を奏する。
(1)接地バスバー56は、上述のごとく、連結部57を除去した状態、すなわち上流側本体56aと下流側本体56bとに分断された状態でヒートシンク40に設置される場合と、連結部57を残した状態、すなわち上流側本体56aと下流側本体56bとの連結構造が維持された状態でヒートシンク40に設置される場合とがある。
具体的に、図7に示すように、モータユニットとして、各バスバー55,56と接地間に発生するコモンモードのノイズを低減する場合、連結部57を除去した状態で接地バスバー56はヒートシンク40に設置されて配線部50を構成する。なお、連結部57の幅Wを各バスバー55,56を通じて最も細く形成したり、上流側本体56aの角部56nに形成したりしていることによって、連結部57の除去によるバリ(突起等)を残り難くしている。また、バリが残ったとしてもユーザー等に気付かせ難くもしている。
この場合、接地バスバー56の各端子部56e,56fの間には、電源供給路の一部を形成するようにコイル部品53の第2コモンモードコイル53bが接続されるバスバーの接続構造となる。つまり、接地バスバー56には、モジュール60やセンサ基板80が接続される各端子部56g,56kから、各端子部56f,56eを経由して基準電位点に接続される電源端子部56cへと電流が流れる電源供給路X1が形成される。
この場合、電源バスバー55の各端子部55e,55fの間には、電源供給路の一部を形成するようにコイル部品53の第1コモンモードコイル53aが接続されるバスバーの接続構造となる。つまり、電源バスバー55には、外部電源に接続される電源端子部56cから、各端子部55e,55fを経由してモジュール60やセンサ基板80が接続される各端子部55g,55kへと電流が流れる電源供給路Yが形成される。
なお、この場合、各バスバー55,56の各端子部55d,56d、各端子部55h,56h、各端子部55i,56i、各端子部55j,56jのそれぞれの間には、対応する各電解コンデンサ54a〜54dが接続される。
コモンモードのノイズは、各バスバー55,56のそれぞれと接地間において、各バスバー55,56の間で同じ向きの電流として発生する。これに対して、各バスバー55,56の途中に接続される各コモンモードコイル53a,53bが生じさせるインダクタンスによって、ノイズ(例えば、高周波数域の成分)のモジュール60やセンサ基板80への伝達を低減(阻止)することができる。
一方、図8に示すように、モータユニットとして、各バスバー55,56間に発生するノーマルモードのノイズを低減する場合、連結部57を残した状態で接地バスバー56はヒートシンク40に設置されて配線部50を構成する。
この場合、接地バスバー56の各端子部56e,56fの間には、何も接続されず短絡されるバスバーの接続構造となる。一方、接地バスバー56には、除去せず残した連結部57が上流側本体56a及び下流側本体56bを連結することによって電源供給路の一部を形成する。つまり、接地バスバー56には、モジュール60やセンサ基板80が接続される各端子部56g,56kから、各端子部56f,56eを経由する替わりに連結部57を経由して基準電位点に接続される電源端子部56cへと電流が流れる電源供給路X2が形成される。
この場合、電源バスバー55の各端子部55e,55fの間には、電源供給路の一部を形成するようにコイル部品53の替わりにノーマルモードコイル58が接続されるバスバーの接続構造となる。ノーマルモードコイル58は、一のコアにコイルを巻き付けて構成される。つまり、上述のコモンモードノイズを低減するとき同様、電源バスバー55には、外部電源に接続される電源端子部56cから、各端子部55e,55fを経由してモジュール60やセンサ基板80が接続される各端子部55g,55kへと電流が流される電源供給路Yが形成される。
なお、この場合、上述のコモンモードのノイズを低減するとき同様、各バスバー55,56の各端子部55d,56d、各端子部55h,56h、各端子部55i,56i、各端子部55j,56jのそれぞれの間には、対応する各電解コンデンサ54a〜54dが接続される。またこの場合も上述のコモンモードのノイズを低減するとき同様、ノーマルモードコイル58は、配線部50に対して配置可能な領域のなかでセンサ基板80に対して最も離間するように配置されるとともに、各電解コンデンサ54a〜54dは、ノーマルモードコイル58に対してモータ12から離間して配置される。
ノーマルモードのノイズは、各バスバー55,56の間において、電源供給によって電流が流れるのと同様、電源バスバー55からモジュール60やセンサ基板80を通って接地バスバー56へと電源供給路を周回する電流として発生する。これに対して、電源バスバー55の途中に接続されるノーマルモードコイル58が生じさせるインダクタンスによって、ノイズ(例えば、高周波数域の成分)のモジュール60やセンサ基板80への伝達を低減(阻止)することができる。
このように、接地バスバー56において、連結部57を除去する場合と残す場合とでそれぞれに異なるノイズ対策(コモンモードのノイズ対策及びノーマルモードのノイズ対策)を施すことができる。つまり、接地バスバー56の製造段階(図6)では連結部57を設けるように製造すればよく、組み付け段階(図7又は図8)では連結部57を除去する場合と残す場合とでユーザーの求めるノイズ対策を施すように組み付けることができる。
これにより、コモンモードのノイズ及びノーマルモードのノイズの種類によらず電源バスバー55及び接地バスバー56を共通化することができる。したがって、電源バスバー55及び接地バスバー56を製造する際、金型を共通化でき、別々に金型を必要とする場合に比べて製造にかかるコストを抑えることができる。
(2)連結部57は、上流側本体56aの電源端子部56cから下流側本体56bに向かって真っすぐ伸ばす線上であって、上流側本体56aの大幅部56lのなかで下流側本体56bの大幅部56mに最も近い角部56nから、該下流側本体56bの大幅部56mに対して垂直に伸ばされる線上に形成されることとした。
そのため、図7及び図8に示すように、コモンモードのノイズの対策のために連結部57を除去した場合と、ノーマルモードのノイズの対策のために連結部57を残した場合とのそれぞれで形成される電源供給路X1,X2を比較すると、ノーマルモードのノイズの対策のために連結部57を残した場合の電源供給路X2の方がその経路長が短くなる。
これにより、接地バスバー56の連結部57を残す場合、接地バスバー56の連結部57を除去する場合に比べて電源供給路における抵抗成分、すなわち供給する電源の損失を低下させることができる。もっとも、接地バスバー56の連結部57を残す場合、接地バスバー56は、ノイズの低減のためというよりは電源供給路としての役割の方が大きい。そのため、接地バスバー56の連結部57を残すことによるノーマルモードのノイズ対策には、電源供給を高効率化させる付加価値を与えることができ、ノーマルモードのノイズ対策を求めるユーザーにおける満足度上昇に繋げることができる。
(3)連結部57は、接地バスバー56の途中に形成されることとした。これにより、電源バスバー55については対策するノイズの種類に関係なく共通化することができる。これにより、各バスバー55,56を共通化することによって従来からの変更点を最小限に抑えることができる。
(4)本実施形態のバスバーの接続構造を採用することによっては、電源供給路に発生するノイズ対策はできるものの、ノイズ対策のためのコイル(各コモンモードコイル53a,53bやノーマルモードコイル58)それ自体がノイズの発生源となる場合もある。特に、上記モータユニットにおいては、モータ12の回転動作に応じて変化する磁力の変化からロータ33(モータ12)の回転角を検出するセンサ基板80を備えている。そのため、上記ノイズ対策のためのコイルそれ自体が発生させる磁界が磁力に影響を与えることが懸念される。
その点、本実施形態のモータユニットによれば、上記ノイズ対策のためのコイルをセンサ基板80に対して離間した配置としているので、ロータ33の回転角を検出するために磁力を用いる場合であっても該磁力に与える影響を低減させることができる。磁力に与える影響を低減させることができる場合、磁気センサ83aには、上記ノイズ対策のためのコイルの影響を受け難くするための磁気遮蔽板等を設ける必要もなくなる。つまり、モータユニットの構成を簡素で、安価で実現することができる。
(5)一方、上記ノイズ対策のためのコイルをセンサ基板80に対して離間した配置としたことに対して、各電解コンデンサ54a〜54dは、モータ12から離間して配置される。つまり、各電解コンデンサ54a〜54dは、ヒートシンク40が吸収する熱の源でもあるモータ12等から離間される。また、各電解コンデンサ54a〜54dは、ヒートシンク40の外面(外側)に配置されることによっても、モータ12等から離間される。これらは、配線部50がモータユニットに対してモータ軸11の径方向外側であって、モータ軸11の軸方向に沿って配置されることで実現されている。これにより、各電解コンデンサ54a〜54dは、ヒートシンク40が吸収する熱の輻射の影響を受け難くするように配置される。
(6)連結部57の幅Wは、各バスバー55,56を通じて最も細く形成することとした。これにより、連結部57を残す場合に連結部57によって形成される供給路のインダクタンスを確保することができる。この場合、連結部57を残すこととなるノーマルモードのノイズの対策において、連結部57をコモンモードコイルと同様に作用させることができる。そのため、接地バスバー56の連結部57を残すことによるノーマルモードのノイズ対策には、コモンモードのノイズについてもいくらかは低減させる付加価値を与えることができ、ノーマルモードのノイズ対策を求めるユーザーにおけるさらなる満足度上昇に繋げることができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・図9に示すように、各モジュールバスバー65が一のユニットとなるように、樹脂モールド体100によって一体成型するようにしてもよい。各モジュールバスバー65は、他の端子部等との接続に供されるそれぞれの両端部の一部が樹脂モールド体100から露出されるように樹脂モールドされる。樹脂モールド体100の短手方向の一方には、爪部101が形成される。また、樹脂モールド体100の径方向外側(外面)には、3本の爪部102が形成される。爪部101は、ヒートシンク40に形成される係合部(図2及び図3において符号を付していないが、設置ベース47の設置ベース43,44が交差する角辺りに形成される長方形状の溝)に係合される。つまり、爪部101は、ヒートシンク40の設置ベース44に対して樹脂モールド体100を位置決めする。また、各爪部102は、各モジュールバスバー65の端部に対して各中継バスバー66を位置決めするとともに、接続後は接続状態の維持に作用する。そして、樹脂モールド体100は、モジュール60に径方向外側から被せるようにして位置決めされ、設置ベース44に形成される2つのねじ穴44aに挿通されるねじ61によりモジュール60ともども設置ベース44に固定される。これにより、各モジュールバスバー65と各中継バスバー66との接続をバスバー毎にいちいち作業する必要がなくなり、樹脂モールド体100の設置をワンタッチの作業で済ますことができる。つまり、モータユニットの組み付け時の作業効率の向上に寄与する。
・連結部57が形成される位置は、適宜変更してもよく、例えば、上流側本体56aの角部56nから端子部56d側にずらすようにしてもよい。つまり、連結部57を残す場合の電源供給路の経路長についても適宜変更してもよい。この場合であっても、上記(1),(3)〜(6)に相当する効果を奏する。
・連結部57の幅Wは、適宜変更してもよく、各バスバー55,56を通じて大きくてもよいし、大幅部56l,56mと同等であってもよい。この場合であっても、上記(1)〜(5)に相当する効果を奏する。
・各バスバー55,56は、互いに並行に続くように構成されていなくてもよく、部品の配置を優先するように各バスバー55,56を構成してもよい。
・上記実施形態の接地バスバー56、接地バスバー56を用いたノイズの対策の接続構造は、モータユニットに限らず、発電機や家庭用の電子機器等に適用することもできる。
・上記実施形態の接地バスバー56、接地バスバー56を用いたノイズの対策の接続構造は、モータユニットに用いる場合、ヒートシンクの構成(形状)、配線部、モジュール、動作制御基板、センサ基板の配置の仕方、さらにはモータ12の回転角の検出の仕方等を適宜変更したものに適用することもできる。
例えば、ヒートシンク40の設置ベース45には、配線部50、モジュール60、動作制御基板70、又はセンサ基板80に実装される各種電子部品の一部を設置することもできる。また、ヒートシンク40の設置部42は、円柱状であってもよいし、モータ軸11の径方向の断面が、例えば、三角形や五角形等の多角形であってもよい。また、ヒートシンク40の設置部42には、球面状の設置ベースが混在していてもよい。また、ヒートシンク40は、その径方向において、配線部50及びモジュール60に挟まれていてもよい。また、ヒートシンク40は、ステータハウジング20(モータハウジング14)に対してねじ等で固定されていてもよい。また、モータ12の回転角の検出には、レゾルバを用いるようにしてもよい。また、磁気センサ83aは、ホールIC等を用いたセンサであってもよい。また、モータユニットでは、ヒートシンク40に替えて、例えば、送風機(ファン)による空冷等の冷却構造を用いてもよい。
・各バスバー55,56は、3部品や4部品に分断される構成であってもよく、接地バスバー56がノイズの対策のために分断されることについては製造段階で連結されるように構成されていればよい。例えば、接地バスバー56は、製造段階から2部品で成形されるものであって、ノイズの対策(特に、コモンモードのノイズの対策)のために分断される場合に3部品に分断される構成であってもよい。
・上記ノイズ対策のためのコイル(各コモンモードコイル53a,53bやノーマルモードコイル58)や各電解コンデンサ54a〜54dの配置は、適宜変更してもよく、これらの配置関係を逆転させてもよい。この場合、磁気センサ83aでは上記ノイズ対策のためのコイルの影響を受ける可能性が高まるため、こうした影響を受け難くするための磁気遮蔽板等を磁気センサ83aに設けるようにしてもよい。
・モータユニットには、モジュール60の冗長用の駆動回路として補助モジュールを増設して2系統の制御系を構築することもできる。この場合、動作制御基板70は、モジュール60が故障したとき等、補助モジュールに制御系統を移管して補助モジュールにおける駆動回路を制御する。なお、補助モジュールは、ヒートシンク40の空きスペースである設置ベース45に設けるようにすればよい。また、補助モジュールは、モジュール60に対応した構成を有していればよい。また、この場合、各バスバー55,56の取り回し等も合わせて変更すればよい。また、この場合、モジュール60に関わって用いられていない側の各連通口41aを通じてモータ側バスバー32との接続を実現すればよい。これにより、モータユニットの体格を維持したままモジュール60を冗長化することができる。
・上記実施形態では、動作制御基板70及びセンサ基板80を別々に構成したが、1枚の制御基板として構成することもできる。なお、こうした制御基板は、上記実施形態と同様の効果を奏しうる手法にてヒートシンク40に設置される。その他、動作制御基板70及びセンサ基板80を1枚の制御基板として構成する手法としては、これらの間をフレキシブル基板で接続するようにしたり、基板全体をフレキシブル基板で構成したりもできる。
・ノイズ対策の実施が可能な場合、連結部57を電源バスバー55に形成するようにしてもよい。この場合、接地バスバー56については対策するノイズの種類に関係なく共通化することができる。
次に、上記実施形態及び別例(変形例)から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)上記バスバーの接続構造において、前記連結部は、前記第2のバスバーを連結する場合、経路長が最も短くなる位置に設けられる。この構成によれば、第2のバスバーの連結部を残すことによるノーマルモードのノイズ対策に与える付加価値をさらに高めることができる。