以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について詳述する。
(第1実施形態)
図1〜3を参照しつつ、第1実施形態に係る吸音パネル1について説明する。
図1,2に示されるように、吸音パネル1は、音を吸音するためのパネルであって、前壁2と、後壁3と、複数の区画壁5とを備える。区画壁5は、後壁3に固定される固定壁51と、前壁2および後壁3に着脱可能に取り付けられる非固定壁52とからなる。前壁2、後壁3、および最も外側に位置する2つの固定壁51(以下、「外側の固定壁51」と称する)により四角筒状の外郭部15が形成される。前壁2と後壁3の間には、外郭部15によって囲まれる直方体状の吸音空間SPが形成される。外郭部15の両端部には、長方形状の開口部OPが形成される。
図1に示される例では、5つの固定壁51と、8つの非固定壁52が設けられている。これら固定壁51および非固定壁52が、吸音空間SPを複数の区画領域SP1に区画するとともに、開口部OPを複数の開口部OP1に区画する。
前壁2は、固定壁51および非固定壁52に着脱可能に取り付けられる。
後壁3は、固定壁51と一体成形される。
以下、各構成要素について詳細に説明する。なお、以下の説明では、固定壁51の長手方向と平行な方向(開口部OPと直交する方向)を「第1方向」と称し、第1方向と直交しかつ前壁2の第1方向の端部に沿った方向を「第2方向」と称する(図1参照)。
前壁2は、例えば、図1に示されるように長方形状に形成される。前壁2には、複数の貫通孔8が形成される。この貫通孔8は、外部の音を吸音パネル1内に導くとともに、音が貫通孔8を通過する際のエネルギー損失によって吸音するためのものである。図1に示される例においては、正面視で円形の貫通孔8が形成されている。なお、前壁2の形状は長方形状に限定されるものではなく、正方形状等、他の形状であってもよい。
前壁2を構成する素材としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂や、金属等の無機質材を挙げることができるが、特に限定はされない。後壁3、および区画壁5も、同様の素材で構成することができる。
前壁2は、後壁3と対向するように後壁3と互いに平行に配置される。前壁2における後壁3側の面(以下、「前壁2の内面」と称する)には、外側の固定壁51に形成された係合部11と着脱可能に係合する係止片10が突設される。係止片10は、前壁2の第2方向両端部に設けられる。各係止片10は、前壁2の第1方向に延びる。各係止片10は、先端に鉤状部を有している。各係止片10において、鉤状部は、前壁2の中央側に向けて突出するように形成される。鉤状部の先端は丸みを帯びていてもよいし、尖っていてもよい。鉤状部の先端が丸みを帯びていると、鉤状部と係合部11の間の摩擦力が小さくなり、係止片10を係合部11に着脱し易くなる。
前壁2の内面には、外側の固定壁51より内側に位置する固定壁51(以下、「内側の固定壁51」と称する)の一端部が当接する。内側の固定壁51は、第1方向(外郭部15の軸方向)に沿って延びている。各内側の固定壁51は、第2方向に並んでいる。
また、前壁2の内面には、非固定壁52の一端部を着脱可能にスライド嵌合させる複数の嵌合溝7が形成されている。嵌合溝7は、第1方向に沿って延びている。嵌合溝7は、前壁2の内面に形成される互いに平行な2本の凸条9,9の間の溝である(図2参照)。凸条9,9は、第1方向に沿って延びている。嵌合溝7の数は特に限定されないが、図1に示される例では、隣り合う固定壁51,51の間に、3本の嵌合溝7が形成されている。これにより、隣り合う固定壁51,51の間に、3つの非固定壁52を取り付け可能となっている。
複数箇所において、嵌合溝7同士が隣り合っている。嵌合溝7が隣り合ういずれの箇所においても、嵌合溝7同士の間隔Sは同じである(図1参照)。また、複数箇所において、嵌合溝7の隣に固定壁51が位置している。嵌合溝7の隣に固定壁51が位置するいずれの箇所においても、嵌合溝7と固定壁51の間隔は、嵌合溝7同士の間隔Sと同じである(図1参照)。
後壁3は、前壁2と同じ形状および大きさに形成される。後壁3には、図1に示されるように貫通孔が形成されなくてもよいし、形成されてもよい。後壁3における前壁2側の面には、前壁2に形成された嵌合溝7と対向する位置に嵌合溝7が形成されている。前壁2に形成された嵌合溝7と後壁3に形成された嵌合溝7は相対向しており、この相対向する嵌合溝7によって嵌合溝7の対(以下、「嵌合溝対7,7」と称する)が構成されている。複数の嵌合溝対7,7が、第2方向に並んで配置されている。
固定壁51は、例えば図1に示されるように長方形状に形成される。固定壁51は、その後壁3側の端部が後壁3と一体成形される。各固定壁51は、第1方向に沿って延びるとともに、第2方向に並ぶ。各固定壁51は、互いに平行に配置される。外側の固定壁51は、前壁2と後壁3の短辺同士を連結する。前壁2の長辺と後壁3の長辺の間には固定壁51は設けられない。
外側の固定壁51は、前壁2側の端部(以下、「前壁側端部」と称する)に係合部11を有している。係合部11は、外側の固定壁51の内面から断面L字状に突出している(図2参照)。係合部11は、外側の固定壁51の内面との間に、外側の固定壁51の前壁側端部に沿って延びる溝部(以下、「係合溝部16」と称する)を形成している(図3参照)。係合部11は、弾性変形によって係合溝部16の開口幅を拡大できるようになっている。係合溝部16は、その奥側部分の幅が開口幅よりも大きく形成されている。その奥側部分が係止片10の鉤状部を包み込むように受け入れる。係止片10の鉤状部の厚さは、自然状態(係合部11が弾性変形する前の状態)における係合溝部16の開口幅よりも若干大きい。しかしながら、係止片10が係合部11に係合した状態において、係止片10を係合部11から引き離す方向(図2における上方向)に引っ張ると、係合部11が弾性変形して係合溝部16の開口幅が一時的に大きくなる。これにより、鉤状部が係合溝部16の開口部を通過し、係止片10を係合部11から取り外すことができる(図3参照)。また、係止片10が係合部11から取り外された状態において、係止片10の鉤状部を係合溝部16の開口部に位置合わせし、係止片10を係合溝部16に向かって押すと、係合部11が弾性変形して係合溝部16の開口幅が一時的に大きくなる。これにより、鉤状部を係合溝部16の奥側部分に嵌合(係合)させて、係止片10を係合部11に取り付けることができる。
なお、係止片10が係合部11に係合した状態において、係止片10を長さ方向に引っ張ることにより、係止片10を係合部11に対してスライドさせ、係止片10を係合部11から取り外すことも可能である。また、係止片10が係合部11から取り外された状態において、係止片10の長さ方向一端部を係合部11の長さ方向一端部に位置合わせし、係止片10を係合部11に対してスライドさせつつ押し込むことにより、係止片10を係合部11に係合させることも可能である。このように、前壁2に設けられた係止片10は、外側の固定壁51に設けられた係合部11に着脱可能に係合する。
係止片10の鉤状部が係合部11にしっかりと係合するので、前壁2を外側の固定壁51に取り付けた状態において前壁2を外側の固定壁51の下側に配置しても、係止片10が係合部11から外れない。
非固定壁52は、前壁2および後壁3に形成された嵌合溝対7,7にその両端部が着脱可能にスライド嵌合する。非固定壁52における前壁2側の端部と後壁3側の端部の距離は、嵌合溝対7,7における嵌合溝7同士の距離にほぼ等しい。各非固定壁52は、嵌合溝対7,7に取り付けられた状態において、第1方向に沿って延びるとともに、第2方向に並ぶ。
非固定壁52の両端部を嵌合溝対7,7に位置合わせし、非固定壁52の端部を嵌合溝7に対してスライドさせつつ嵌合溝対7,7に押し込むことにより、非固定壁52を嵌合溝対7,7に取り付けることができる。また、非固定壁52を嵌合溝対7,7に対してスライドさせつつ嵌合溝対7,7から引き抜くことにより、非固定壁52を嵌合溝対7,7から取り外すことができる。
図1に示される例では、固定壁51および非固定壁52は、吸音空間SPを、第2方向に沿って12個の区画領域SP1に区画する。図1の左から3〜10番目の嵌合溝対7,7には、非固定壁52が嵌合している。左から1,2,11,および12番目の嵌合溝対7,7には、非固定壁52が嵌合していない。従って、隣り合う嵌合溝7同士の間隔をSとした場合に、左から順に、幅3Sの区画領域SP1(1個)、幅Sの区画領域SP1(10個)、幅3Sの区画領域SP1(1個)が形成される。
各区画領域SP1および貫通孔8により、所謂ヘルムホルツの共鳴器が構成される。
吸音パネル1の外部で発生した音は、複数の貫通孔8を介して複数の区画領域SP1のそれぞれに伝達される。各区画領域SP1は、その容積や貫通孔8の径および深さ等に応じた固有の共振周波数を有しており、主としてその共振周波数の音を共振させ、音のエネルギーを熱エネルギーに変換する。これにより、各区画領域SP1において、主として共振周波数付近の音が吸音される。
図1に示される複数の区画領域SP1は、容積が統一されていないため、複数の周波数帯の音に対して吸音効果を発揮することができる。その結果、広い周波数帯で吸音効果を発揮することができる。
非固定壁52を嵌合溝対7,7に対してスライドさせて着脱することにより、吸音空間SPの区画位置を変更して、様々な大きさの区画領域SP1を形成することができる。これにより、施工現場に応じて吸音パネル1の吸音周波数を容易に変更することができる。
例えば、吸音空間SPの区画位置を変更して、複数の区画領域SP1の容積を統一すれば、特定の周波数帯の音に対して集中的に吸音効果を発揮することができる。
次に、前壁2を外側の固定壁51に着脱可能に係合したことによる作用効果について、図3〜6を参照しつつ説明する。
貫通孔8Aを有する前壁2Aが予め準備されているものとする(図4〜6参照)。前壁2Aは、図4〜6に示されるように、前壁2よりも大きな厚さを有するとともに、前壁2の貫通孔8よりも大きな深さを有する貫通孔8Aを有している。
図3に示されるように、2つの外側の固定壁51から前壁2を取り外した後、図5,6に示されるように、前壁2Aの係止部10を外側の固定壁51の係合部11に係合させるとともに、前壁2Aの各嵌合溝対7,7に非固定壁52の一端部を嵌合させる。これにより、前壁2を前壁2Aに交換することができる。貫通孔8Aの深さが大きい前壁2Aに交換することにより、交換前と比べて、共振周波数を小さくして低い音を吸音することができる。
なお、前壁2を、貫通孔8よりも貫通孔の深さが小さい前壁に交換してもよい。この場合には、交換前と比べて、共振周波数を大きくして高い音を吸音することができる。
以上説明したように、本実施形態においては、前壁2を外側の固定壁51に形成された係合部11に着脱可能とすることにより、前壁2を貫通孔の形態が異なる前壁2Aに交換することができる。貫通孔の形態(例えば、貫通孔の深さ)を変更すれば、吸音空間SP1の共振周波数を変更することができる。従って、前壁2を取り外して貫通孔の形態が異なる前壁2Aに交換することにより、施工現場に応じて吸音周波数を容易に変更することができる。
また、前壁2を外側の固定壁51に形成された係合部11に着脱可能とすることにより、前壁2を材質の異なる別の前壁、装飾の異なる別の前壁などに交換することもできる。これにより、前壁の耐久性や強度の変更、美観の変更などを容易に行うことができる。
なお、内側の固定壁51にも、外側の固定壁51の係合部11と同様の係合部(図示せず)を設けるとともに、前壁2の当該係合部に対応する位置に上記係止片10と同様の係止片(図示せず)を設け、係合部に係止片を着脱可能としてもよい。
また、前壁2を、図7に示される前壁2Bに交換してもよい。図7に示される前壁2Bは、貫通孔8Bの内周縁から吸音空間SP1側に円筒状に延びる筒状部12を有する。貫通孔8Bの直径と貫通孔8Aの直径を同じに設定するとともに、貫通孔8Bの深さと筒状部12の長さの和を貫通孔8Aの深さと同じに設定すれば、図7に示される吸音パネル1Bと図5,6に示される吸音パネル1の吸音周波数を同じに設定することができる。
また、前壁2を、図8に示される前壁2Cに交換してもよい。図8に示される前壁2Cには、図1に示した貫通孔8よりも径が小さくかつ高い密度で貫通孔8Cが形成されている。このように貫通孔の直径を変更することによっても、施工現場に応じて吸音パネルの吸音周波数を容易に変更することができる。なお、図8に示される前壁2Cは、貫通孔8Cの直径とともに深さを変更してもよい。
また、前壁2を、貫通孔の形状が円形以外の形状(例えば、四角等)とされた前壁に交換してもよい。
また、外郭部15の開口部OPを閉塞する非固定壁(図示せず)を、前壁および後壁に着脱可能に取り付けてもよい。開口部OPを閉塞することにより、吸音効果を高めることができる。
また、非固定壁52に複数の貫通孔(図示せず)を形成してもよい。非固定壁52に複数の貫通孔を形成することにより、貫通孔を介して各区画領域内に伝達された音は、貫通孔を介して隣の区画領域内に伝達される。これにより、複数の区画領域を通じて複数段階で吸音がなされ、吸音効率を高めることができる。
また、貫通孔を有する非固定壁の厚みを変更してもよい。貫通孔を有する非固定壁の厚みを変更することにより、貫通孔の深さが変わり、吸音周波数をさらに多様化することができる。
また、非固定壁は、両端部が嵌合溝対7,7に着脱可能な第1壁と、第1壁と直交するとともに複数の貫通孔を有する第2壁(図示せず)とを有する構成としてもよい(つまり、第2壁を有する点が図1に示す非固定壁52とは異なる)。第1壁は、両端部が嵌合溝対7,7に嵌合した状態で、前壁2と後壁3を連結し、吸音空間SPを前壁2に沿って複数の区画領域に区画する。第2壁は、第1壁の両端部が嵌合溝対7,7に嵌合した状態で前壁2に沿って延びる。そして、第2壁は、吸音パネル1の厚み方向において、吸音空間SPを複数の区画領域に区画する。この構成によれば、第2壁によって区画された前壁2側の区画領域と、後壁3側の区画領域とで2段階で音が吸音される。これにより、吸音効率を高めることができる。また、この非固定壁を、貫通孔の孔径が異なる別の非固定壁と交換することにより、吸音周波数をさらに多様化することができる。
また、図1に示される例では、吸音パネル1は、第1方向の長さよりも第2方向の長さの方が大きいが、これに限定されず、第2方向の長さよりも第1方向の長さの方が大きくてもよい。
また、固定壁51は、少なくとも吸音パネルを組み立てる時点において前壁2に着脱可能であればよく、組み立て完了後に接着剤等の固定手段により前壁2に固定されてもよい。非固定壁52についても、少なくとも吸音パネルを組み立てる時点において前壁2および後壁3に着脱可能であればよく、組み立て完了後に接着剤等の固定手段により前壁2および後壁3に固定されてもよい。
(第1実施形態の変形例1)
第1実施形態と同様の構成については、図1と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図9,10に示されるように、係止片10および係合部11に代えて、係止片10Dおよび係合部11Dのような形状を採用してもよい。
図9,10に示される係止片10Dは、外側の固定壁51Dの壁厚方向両側に突出する鉤状部を有している。係合部11Dは、外側の固定壁51Dの前壁側端部に形成されている。係合部11Dは、外側の固定壁51Dの前壁側端部に沿って延びる係合溝部16Dを有している。係合部11Dは、弾性変形によって係合溝部16Dの開口幅を拡大できるようになっている。係合溝部16Dは、その奥側部分の幅が開口幅よりも大きく形成されている。その奥側部分が係止片10Dの鉤状部を受け入れる。係止片10Dにおける鉤状部の形成部分全体の厚さは、自然状態における係合溝部16Dの開口幅よりも若干大きい。しかしながら、係止片10Dが係合部11Dに係合した状態において、係止片10Dを係合部11Dから引き離す方向(図9における上方向)に引っ張ると、係合部11Dが弾性変形して係合溝部16Dの開口幅が一時的に大きくなる。これにより、鉤状部が係合溝部16Dの開口部を通過し、係止片10Dを係合部11Dから取り外すことができる(図10参照)。また、係止片10Dが係合部11Dから取り外された状態において、係止片10Dの鉤状部を係合溝部16Dの開口部に位置合わせし、係止片10Dを係合溝部16Dに向かって押すと、係合部11Dが弾性変形して係合溝部16Dの開口幅が一時的に大きくなる。これにより、鉤状部が係合溝部16Dの開口部を通過し、鉤状部を係合溝部16Dの奥側部分に嵌合(係合)させて、係止片10Dを係合部11Dに取り付けることができる。
なお、係止片10Dが係合部11Dに係合した状態において、係止片10Dをその長さ方向に引っ張ることにより、係止片10Dを係合部11Dに対してスライドさせ、係止片10を係合部11Dから取り外すことも可能である。また、係止片10Dが係合部11Dから取り外された状態において、係止片10Dの長さ方向一端部を係合部11Dの長さ方向一端部に位置合わせし、係止片10Dを係合部11Dに対してスライドさせつつ押し込むことにより、係止片10Dを係合部11Dに係合させることも可能である。このように、前壁2Dに設けられた係止片10Dは、外側の固定壁51Dに設けられた係合部11Dに着脱可能に係合する。
本変形例に係る吸音パネル1Dにおいても、前壁2Dを取り外して貫通孔の形態が異なる前壁に交換することにより、施工現場に応じて吸音周波数を容易に変更することができる。
(第1実施形態の変形例2)
第1実施形態の変形例1と同様の構成については、図9,10と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図11,12に示されるように、全ての区画壁を非固定壁としてもよい。最も外側に位置する2つの非固定壁52E(以下、「外側の非固定壁52E」と称する)の両端部には、係合部11Dが形成される。外側の非固定壁52E以外の非固定壁52の両端部は、前壁2Eおよび後壁3Eに形成された嵌合溝対7,7に着脱可能に嵌合する。前壁2Eおよび後壁3Eの第2方向両端部には、係止片10Dが形成される。
本変形例に係る吸音パネル1Eによれば、後壁3Eを全ての非固定壁52,52Eに対して着脱することができる。そして、全ての非固定壁52,52Eを、高さ(前壁2Eおよび後壁3Eに直角な方向の長さ)が異なる非固定壁に交換することができる。非固定壁の高さを変更すれば、吸音空間の容積が変わり、共振周波数を変更することができる。従って、非固定壁を高さが異なる非固定壁に交換することにより、施工現場に応じて吸音周波数を容易に変更することができる。
(第1実施形態の変形例3)
第1実施形態の変形例1と同様の構成については、図1と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図13,14に示されるように、前壁2Fおよび後壁3Fの双方に係止部10を形成するとともに、全ての区画壁を非固定壁としてもよい。さらに、複数の前壁2F同士を連結するとともに、複数の後壁3F同士を連結してもよい。
非固定壁には、非固定壁52F1、非固定壁52F、および非固定壁52がある。
外側の非固定壁52F1の両端部には、係合部11が形成される。一方の端部に形成された係合部11は、前壁2Fの係止片10と着脱可能に係合する。他方の端部に形成された係合部11は、後壁3Fの係止片10と着脱可能に係合する。
隣り合う前壁2Fの境界部に位置する非固定壁52Fは、両端部に、それぞれ2つの係合部11を有している。一方の端部における2つの係合部11は、それぞれ、隣り合う前壁2Fの係止片10と着脱可能に係合する。これらの係合により、前壁2F同士を着脱可能に連結することができる。また、他方の端部における2つの係合部11は、それぞれ、隣り合う後壁3Fの係止片10と着脱可能に係合する。これらの係合により、後壁3F同士を着脱可能に連結することができる。
前壁2Fの中央部に位置する非固定壁52は、その両端部が、前壁2Fおよび後壁3に形成された嵌合溝7,7と着脱可能に係合する。
本変形例に係る吸音パネル1Fによれば、吸音パネル1Fを小さいパーツに分割することができる。
なお、第1実施形態および各変形例において、吸音パネル同士を着脱可能に連結する連結部(図示せず)を、外側の固定壁または外側の非固定壁に形成してもよい。例えば、外側の固定壁(2つの固定壁)のうちの一方に凸条を形成するとともに、他方に溝部を形成する。そして、隣接する吸音パネルの凸条と溝部を着脱可能に嵌合させてもよい。
(第2実施形態)
図15〜20を参照しつつ、第2実施形態に係る吸音パネル1Gについて説明する。
図15に示されるように、吸音パネル1Gは、前壁2Gと、後壁3Gと、複数の区画壁5Gとを備える。前壁2G、後壁3G、および最も外側に位置する2つの区画壁5Gにより四角筒状の外郭部15Gが形成される。
前壁2Gと後壁3Gの間には、外郭部15Gによって囲まれる直方体状の吸音空間SPが形成される。外郭部15Gの軸方向両端部には、長方形状の開口部が形成される。
区画壁5Gは、第1固定壁51G1と、第2固定壁51G2と、第3固定壁51G3とからなる。
第1固定壁51G1は、後壁3Gの両端部に設けられるとともに、後壁3Gと一体成形され、前壁2Gと着脱可能に構成される。
第2固定壁51G2は、後壁3Gの中央部に設けられるとともに、後壁3Gと一体成形され、前壁2Gと着脱可能に構成される。
第3固定壁51G3は、第1固定壁51G1と第2固定壁51G2の間に設けられるとともに、後壁3Gと一体成形される。
図15に示される例では、2つの第1固定壁51G1と、1つの第2固定壁51G2と、2つの第3固定壁G3とが設けられている。これら第1固定壁51G1、第2固定壁51G2、および第3固定壁51G3が、吸音空間SPを複数の区画領域SP2に区画するとともに、開口部を複数の開口部に区画する。
以下、各構成要素について詳細に説明する。なお、以下の説明では、図15に示されるように、第1固定壁51G1の長手方向と平行な方向(外郭部15Gの開口部と直交する方向)を「第1方向」と称し、第1方向と直交しかつ前壁2Gの第1方向の端部に沿った方向を「第2方向」と称する。
前壁2Gは、例えば、図15,16に示されるように長方形状に形成される。前壁2Gの素材としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂や、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属を挙げることができるが、特に限定はされない。
前壁2Gには、複数の貫通孔8Gが形成される。この貫通孔8Gは、外部の音を吸音パネル1内に導くとともに、音が貫通孔8Gを通過する際のエネルギー損失によって吸音するためのものである。なお、前壁2Gの形状は長方形状に限定されるものではなく、正方形状等、他の形状であってもよい。
前壁2Gは、後壁3Gと対向するように後壁3Gと互いに平行に配置される。前壁2Gにおける後壁3G側の面(以下、「前壁2Gの内面」と称する)には、第1固定壁51G1に形成された係合部11Gと着脱可能に係合する係止片10Gが突設される。係止片10Gは、前壁2Gの第2方向両端部に設けられる。各係止片10Gは、第1方向に延びる。各係止片10Gは、先端に鉤状部を有している。各係止片10Gにおいて、鉤状部は、前壁2の中央部側に向けて突出するように形成される。鉤状部の先端は丸みを帯びていてもよいし、尖っていてもよい。鉤状部の先端が丸みを帯びていると、鉤状部と係合部11の間の摩擦力が小さくなり、係止片10Gを係合部11Gに着脱し易くなる。
また、前壁2Gの内面には、第2固定壁51G2に形成された係合部11Gと着脱可能に係合する係止片10Gが突設される。係止片10Gは、前壁2Gの第2方向中央部に2つ設けられる。各係止片10Gは、第1方向に延びる。各係止片10Gは、先端に鉤状部を有している。各係止片10Gの鉤状部は、相対向する位置に形成される。
後壁3Gは、図17に示されるように、正面視で前壁2とほぼ同じ大きさに形成される。後壁3Gには、図17に示されるようにネジ等の締結用部材N(図19参照)を挿通する貫通孔13が形成されている。
2つの第1固定壁51G1は、各々、第1方向に沿って延びている。2つの第1固定壁51G1は、互いに平行に配置される。各第1固定壁51G1は、前壁2G側の端部(以下、「前壁側端部」と称する)に係合部11Gを有している。各係合部11Gは、第1固定壁51G1の側面から鉤状に突出している。係合部11Gは、係止片10Gの鉤状部と着脱可能に係合する。
第2固定壁51G2は、第1方向に沿って延びている。第2固定壁51G2は、前壁側端部に2つの係合部11Gを有している。各係合部11Gは、第2固定壁51G2の両側面から鉤状に突出している。2つの係合部11Gは、それぞれ、前壁2Gの中央部に設けられた2つの係止片10Gの鉤状部と着脱可能に係合する。
第3固定壁51G3は、第1方向に沿って延びている。各第3固定壁51G3は、第2方向に並んでいる。前壁2Gの内面に、第3固定壁51G3の一端部が当接する。
後壁3G、第1固定壁51G1、第2固定壁51G2、および第3固定壁51G3は、不燃材料または難燃材料によって一体成形される。不燃材料、難燃材料の種類は特に限定されないが、例えば、無機質を主成分とする材料からなる。具体的には、後壁3G等は、セメント、けい石、およびパーライトを含む無機成分を全体の重量に対して85重量%以上含んでいる。より具体的には、後壁3G等は、普通ポルトランドセメントが30〜45重量%、けい石が20〜35重量%、およびパーライトが15〜30重量%含んでおり、これらの無機成分が後壁3G等の組成のうち85重量%以上を占めている。これにより、後壁3G等は、建築基準法施行令第一条第五号に定められた不燃性または準不燃性の条件を満たしている。また、本実施形態では、後壁3G等には、パルプが3〜10重量%、および粘度調整剤が0.5〜5.0重量%含まれている。後壁3Gの厚みは、例えば4.5〜15mmに設定される。
吸音パネル1Gは、図19に示されるように、例えば住宅等の壁面Wに設置することができる。壁面Wへ設置する際には、まず、前壁2Gを取り外した状態で、後壁3Gを壁面Wの設置位置に位置決めする。次に、後壁3Gに形成した貫通孔13にネジ等の締結用部材Nを挿通し、締結用部材Nを壁面Wにねじ込むことにより、後壁3Gを壁面Wに固定する。次に、第1固定壁51G1および第2固定壁51G2の各係合部11Gに、前壁2Gの係合部10Gを係合する。これにより、吸音パネル1Gを壁面Wに設置することができる。図19に示されるように複数の吸音パネル1Gを隣り合わせた状態で設置してもよい。
次に、前壁2Gを第1固定壁51G1および第2固定壁51G2に対して着脱可能としたことによる作用効果について、図20〜22を参照しつつ説明する。
貫通孔8Hを有する前壁2Hが予め準備されているものとする(図21参照)。前壁2Hは、図21に示されるように、前壁2Gよりも大きな厚さを有するとともに、前壁2Gの貫通孔8Gよりも大きな深さを有する貫通孔8Hを有している。
図20に示されるように、2つの第1固定壁51G1および第2固定壁51G2から前壁2Gを取り外した後、図22に示されるように、前壁2Hの係止片10Gを、第1固定壁51G1および第2固定壁51G2の係合部11Gに係合させる。これにより、前壁2Gを前壁2Hに交換することができる。これにより、交換前と比べて、共振周波数を小さくして低い音を吸音することができる。
なお、前壁2Gを、貫通孔8Gよりも貫通孔の深さが小さい前壁に交換してもよい。この場合には、交換前と比べて、共振周波数を大きくして高い音を吸音することができる。
以上説明したように、本実施形態においても、前壁2Gの係止片10Gを、第1固定壁51G1および第2固定壁51G2に形成された係合部11Gに着脱可能とすることにより、前壁2Gを貫通孔の深さが異なる前壁2Hに交換することができる。従って、施工現場に応じて吸音周波数を容易に変更することができる。
なお、前壁2Gを、図23,24に示される前壁2Jに交換してもよい。図23,24に示される前壁2Jは、貫通孔8Jの内周縁から吸音空間側に円筒状に延びる筒状部14を有する。貫通孔8Gの直径と貫通孔8Jの直径を同じに設定するとともに、貫通孔8Jの深さと筒状部14の長さの和を貫通孔8Gの深さと同じに設定すれば、図22に示される吸音パネル1Gと図23,24に示される吸音パネル1Jの吸音周波数を同じに設定することができる。
なお、上記各実施形態では、係止片に鉤状部を形成しているが、これに限られず、係止片を係合部に着脱可能に係合できるのであれば、係止片として他の構成を採用してもよい。
また、図15に示される例では、吸音パネル1Gは、第1方向の長さよりも第2方向の長さの方が大きいが、これに限定されず、第2方向の長さよりも第1方向の長さの方が大きくてもよい。
また、各固定壁は、少なくとも吸音パネルを組み立てる時点において前壁2Gに着脱可能であればよく、組み立て完了後に接着剤等の固定手段により前壁2Gに固定されてもよい。