JP6501297B2 - 比色検出型キラルセンサー - Google Patents

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Description

本発明は、キラルアミン化合物のキラリティーを色調及び蛍光の変化により識別可能ならせん状のポリ(ジフェニルアセチレン)化合物からなる比色検出型キラルセンサーに関する。
有機化合物には物理的、化学的性質、例えば沸点、融点、溶解度といった物性が全く同一であるが、生理活性に差がみられる光学異性体が多く存在する。医薬の技術分野では、生体内の特定の受容体との結合のし易さによる薬理活性の違いがよく研究されており、光学異性体の間で薬効、毒性の点で顕著な差が見られる場合が多いことが広く知られている。このような事情から、光学異性体の選択的な合成技術やラセミ体からの光学異性体の分離技術等と並び、光学異性体のセンシング技術(光学異性体のキラリティーを判定する技術)も注目されている。すなわち、光学異性体が存在する化合物が合成され又は提供された場合において、その化合物がいずれのキラリティーを有するのか、又はラセミ体であるのか、等を微量で判定できる、簡便かつ正確なキラリティーの識別方法の開発は極めて重要な課題となっている。
分子の不斉を直接反映したスペクトルを与える円二色性(CD)スペクトルを利用したキラリティー識別、NMRシフト試薬、キラルHPLC等を利用したキラリティー識別等に関する多くの研究がこれまでに報告されているが、キラリティーの検出装置としては非常に高価であるため、簡便なセンシング手法であるとは言い切れない。最も簡便にキラリティーを識別する手法の一つとして、目に見える色の変化を利用したキラリティーセンシングの手法が挙げられる。
かかる手法として、光学活性クラウンエーテル構造を有する蛍光性ホスト化合物(又はポリマー)によるホスト−ゲスト錯形成平衡反応の特徴を利用した、蛍光性キラルセンサーが報告されている(特許文献1、2)。これらは、ホスト化合物である光学活性クラウンエーテル構造とゲスト化合物(識別対象)であるキラル第一級アミンとの錯形成による分子認識に基づくキラリティーセンシングの手法であるが、その識別感度は、蛍光測定の際の濃度等の条件による影響を受けやすく、また、ホスト化合物のゲスト認識部位に高価な光学活性官能基を導入しておく必要があるなどの課題が残されていた。
特許第3950117号公報 特許第4545370号公報
このような背景のもと、安価に感度良く様々な種類のキラル化合物のキラリティーを、特殊な装置を用いることなく簡便に識別することができる実用的なキラリティーセンシングの手法の開発がますます求められている。
本発明の目的は、それ自体に高価な光学活性官能基を有さない、らせん状ポリ(ジフェニルアセチレン)化合物を利用して、様々な種類のキラルアミン化合物のキラリティーを目に見える色の変化を利用して識別することができる、簡便且つ実用的なキラリティーセンシングの手法を提供することである。
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、広範なキラルアミン化合物を、一方向巻きのらせん構造を有する下記式(I):
[式中、
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、トリ置換シリル基、トリ置換シロキシ基又は置換されていてもよいアシルオキシ基を示し;並びに
nは、10以上の整数を示す。]
で表されるポリ(ジフェニルアセチレン)化合物(以下、「化合物(I)」と称することもある。)又はその塩、或いはその溶媒和物からなる、比色検出型キラルセンサーと反応させて誘導体化(アミド化)し、該誘導体の溶液の色調と蛍光の変化を観測することにより、キラルアミン化合物のキラリティーを感度良く識別することができる実用的なキラリティーセンシング手法として有用であることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]一方向巻きのらせん構造を有する式(I):
[式中、
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、トリ置換シリル基、トリ置換シロキシ基又は置換されていてもよいアシルオキシ基を示し;並びに
nは、10以上の整数を示す。]
で表されるポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物からなる、比色検出型キラルセンサー、
[2]RとR’、RとR’、RとR’及びRとR’が、それぞれ同一の基である、上記[1]記載のキラルセンサー、
[3]上記[1]又は[2]に記載のキラルセンサーのカルボキシ基と、キラルアミン化合物のアミノ基を縮合させてアミド化する工程、及び
前記アミド化された化合物の溶液の色調の変化、及び蛍光測定により、当該キラルアミン化合物のキラリティーを決定する工程を含むことを特徴とする、キラルアミン化合物のキラリティーの識別方法、
[4]更に、紫外・可視吸収スペクトルの測定データからキラルアミン化合物の光学純度を決定する工程を含む、上記[3]記載の方法、並びに
[5]キラルアミン化合物が、第一級アミノ基を含む化合物である、上記[3]又は[4]に記載の方法。
本発明の化合物(I)からなる比色検出型キラルセンサーは、広範なキラルアミン化合物に対して高感度なキラリティー識別能を示す。具体的には、本発明のキラルセンサーのカルボキシ基と、識別対象であるキラルアミン化合物のアミノ基を縮合させてアミド化し、当該アミド化された化合物の溶液の色調及び蛍光特性は、光学異性体間で顕著に相違するので、目に見える色の変化を利用して容易にそのキラリティーを識別することができる。また、本発明によれば、キラルセンサーとキラルアミン化合物とは共有結合により強固に結合しているので、従来公知の分子認識(非共有結合的相互作用)を利用したキラルセンサーと比較して、測定条件(濃度や温度等)に依存せず、微量の試料を用いても再現性良く、そのキラリティーを識別することができる。さらに、本発明のキラリティーの識別方法によれば、紫外・可視吸収スペクトルの吸収極大波長の変化が特に、低鏡像異性体過剰率(低ee)領域において顕著であるため、キラルHPLC等において正確な測定が困難な低eeの光学純度を示す試料をも精度良く識別することができるという利点も有する。
テトラヒドロフラン中又はクロロホルム中で測定した化合物(II−1S)及び化合物(II−1R)のCD及び吸収スペクトルである。aは、化合物(II−1S)をクロロホルム中で測定したCDおよび吸収スペクトルであり、bは、化合物(II−1R)をクロロホルム中で測定したCDおよび吸収スペクトルであり、cは、化合物(II−1S)をテトラヒドロフラン中で測定したCDおよび吸収スペクトルであり、dは、化合物(II−1R)をテトラヒドロフラン中で測定したCDおよび吸収スペクトルである。 化合物(II−1R)及び化合物(II−1S)のクロロホルム中(左図)とテトラヒドロフラン中(右図)における溶液の色を示す(濃度:1.0×10−3M)。 化合物(II−1S)(a)及び化合物(II−1R)(b)のジメチルホルムアミド/クロロホルム(2:8,v/v)混合溶液中での蛍光スペクトル(励起波長:282nm)(左図)、並びに化合物(II−1S)と化合物(II−1R)のジメチルホルムアミド/クロロホルム(2:8,v/v)混合溶液中(濃度:1.0×10−5M)のそれぞれの溶液の色(右図の上段)、及び波長365nmの紫外光照射下におけるそれぞれの溶液の色(右図の下段)を示す。 左図は、1−(1−ナフチル)エチルアミンの鏡像体過剰率(%ee)に対するクロロホルム中で測定した化合物(II−1)の吸収スペクトルの極大波長の変化(Δλ=化合物(II−1)の吸収極大波長−化合物(II−1S)の吸収極大波長)をプロットした図である。右図は、左図の点線で囲んだ範囲の拡大図である。 試料濃度が2.5mM、0.25mM及び0.025mMである化合物(II−6S)のクロロホルム溶液の25℃におけるCDおよび吸収スペクトルである。 試料濃度が2.5mM、0.25mM及び0.025mMである化合物(II−6R)のクロロホルム溶液の25℃におけるCDおよび吸収スペクトルである。
以下に本発明の詳細を説明する。
(定義)
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
本明細書中、「アルキル(基)」としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1以上のアルキル基を意味し、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、C1−20アルキル基であり、中でも、C1−12アルキル基がより好ましく、C1−6アルキル基が特に好ましい。
本明細書中、「C1−20アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、エイコシル等が挙げられる。
本明細書中、「C1−12アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜12のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル等が挙げられる。
本明細書中、「シクロアルキル(基)」とは、環状アルキル基を意味し、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、C3−8シクロアルキル基である。
本明細書中、「C3−8シクロアルキル(基)」とは、炭素原子数3〜8の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。中でも、C3−6シクロアルキル基が好ましい。
本明細書中、「アルコキシ(基)」とは、直鎖または分岐鎖のアルキル基が酸素原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1−6アルコキシ基である。
本明細書中、「C1−6アルコキシ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。中でも、C1−4アルコキシ基が好ましい。
本明細書中、「アルキルチオ(基)」とは、直鎖または分岐鎖のアルキル基が硫黄原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1−6アルキルチオ基である。
本明細書中、「C1−6アルキルチオ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキルチオ基を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、ヘキシルチオ等が挙げられる。中でも、C1−4アルキルチオ基が好ましい。
本明細書中、「アルキルスルホニル(基)」とは、直鎖または分岐鎖のアルキル基がスルホニル基に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1−6アルキルスルホニル基である。
本明細書中、「C1−6アルキルスルホニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、1−エチルプロピルスルホニル、ヘキシルスルホニル、イソヘキシルスルホニル、1,1−ジメチルブチルスルホニル、2,2−ジメチルブチルスルホニル、3,3−ジメチルブチルスルホニル、2−エチルブチルスルホニル等が挙げられる。
本明細書中、「アリールスルホニル(基)」とは、アリール基がスルホニル基に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C6−10アリールスルホニル基である。
本明細書中、「C6−10アリールスルホニル基」とは、「C6−10アリール基」がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル、2−ナフチルスルホニル等が挙げられる。
本明細書中、「アルキルスルホニルオキシ(基)」とは、アルキルスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1−6アルキルスルホニルオキシ基である。
本明細書中、「C1−6アルキルスルホニルオキシ(基)」とは、C1−6アルキルスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、プロピルスルホニルオキシ、イソプロピルスルホニルオキシ、ブチルスルホニルオキシ等が挙げられる。
本明細書中、「アリールスルホニルオキシ(基)」とは、アリールスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C6−10アリールスルホニルオキシ基である。
本明細書中、「C6−10アリールスルホニルオキシ(基)」とは、C6−10アリールスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニルオキシ、1−ナフチルスルホニルオキシ、2−ナフチルスルホニルオキシ等が挙げられる。
本明細書中、「アシル(基)」とは、アルカノイル又はアロイルを意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1−7アルカノイル基又はC7−11アロイルである。
本明細書中、「C1−7アルカノイル(基)」とは、炭素原子数1〜7の直鎖又は分枝鎖状のホルミル又はアルキルカルボニルであり、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル等が挙げられる。
本明細書中、「C7−11アロイル(基)」とは、炭素原子数7〜11のアリールカルボニルであり、ベンゾイル等が挙げられる。
本明細書中、「アシルオキシ(基)」とは、アルカノイル基又はアロイル基が酸素原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1−7アルカノイルオキシ基又はC7−11アロイルオキシ基である。
本明細書中、「C1−7アルカノイルオキシ(基)」としては、例えば、ホルミルオキシ、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、ペンチルカルボニルオキシ、イソペンチルカルボニルオキシ、ネオペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ等が挙げられる。
本明細書中、「C7−11アロイルオキシ(基)」としては、例えば、ベンゾイルオキシ、1−ナフトイルオキシ、2−ナフトイルオキシ等が挙げられる。
本明細書中、「アリール(基)」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭化水素基を意味し、具体的には、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、2−アンスリル等のC6−14アリール基を示す。中でもC6−10アリール基が好ましい。
本明細書中、「C6−10アリール(基)」とは、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルを示し、フェニルが特に好ましい。
本明細書中、「アラルキル(基)」とは、アルキル基にアリール基が置換した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C7−14アラルキルである。
本明細書中、「C7−14アラルキル(基)」とは、「C1−4アルキル基」に「C6−10アリール基」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、(ナフチル−1−イル)メチル、(ナフチル−2−イル)メチル、1−(ナフチル−1−イル)エチル、1−(ナフチル−2−イル)エチル、2−(ナフチル−1−イル)エチル、2−(ナフチル−2−イル)エチル、ビフェニリルメチル等が挙げられる。
本明細書中、「トリ置換シリル(基)」とは、同一又は異なる3個の置換基(例、C1−6アルキル基、C6−10アリール基等)により置換されたシリル基を意味し、当該基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基(好ましくは、トリC1−6アルキルシリル基)、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等が好ましい。
本明細書中、「トリ置換シロキシ(基)」とは、トリ置換シリル基が酸素原子と結合した基を意味する。当該基としては、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基、tert−ブチルジメチルシロキシ基等のトリアルキルシロキシ基(好ましくは、トリC1−6アルキルシロキシ基)が好ましい。
本明細書中、「保護されたアミノ基」とは、「保護基」で保護されたアミノ基を意味する。当該「保護基」としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons刊(1980)に記載のアミノ基の保護基を使用し得、例えば、C1−6アルキル基、C7−14アラルキル基、C6−10アリール基、C1−7アルカノイル基、C7−14アラルキル−カルボニル基、トリC1−6アルキルシリル基等の保護基が挙げられる。上記の保護基は、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基又はニトロ基により更に置換されていてもよい。当該アミノ基の保護基の具体例としては、メチル、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等が挙げられる。
本明細書中、「置換されていてもよい」とは、1個以上の置換基を有していてもよいことを意味し、該「置換基」としては、(1)ハロゲン原子、(2)ニトロ、(3)シアノ、(4)C1−6アルキル、(5)C3−8シクロアルキル、(6)C1−6アルコキシ、(7)C6−10アリール、(8)C7−14アラルキル、(9)C1−7アルカノイルオキシ、(10)C7−11アロイルオキシ、(11)C1−7アルカノイル、(12)C7−11アロイル、(13)アジド、(14)C1−6アルキルチオ、(15)C6−10アリールチオ、(16)C1−6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル、(17)C1−6アルキルスルホニルオキシ基、(18)C6−10アリールスルホニルオキシ基、(19)トリC1−6アルキルシリル基、(20)保護されたアミノ基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、アセチル、ホルミル、カルバモイル、アジド、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、tert−ブトキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ等が好ましく、ハロゲン原子が特に好ましい。また、複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
上記置換基は、さらに上記置換基で置換されていてもよい。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1乃至5個、より好ましくは1乃至3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。当該置換基はまたさらにC1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基、C6−10アリール基、C7−14アラルキル基、ハロゲン原子、カルボキシ基、保護されたアミノ基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、オキソ基等で置換されていてもよい。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1乃至5個、より好ましくは1乃至3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
本明細書中、「一方向巻きのらせん構造」とは、右巻き又は左巻きのいずれかに片寄ったらせん構造であればよく、好ましくは完全に右巻き又は左巻きのらせん構造である。「一方向巻きのらせん構造」を有する化合物は、分子中に光学活性な官能基を有さなくても、片寄ったらせん構造のみに起因して光学活性を示す。
本明細書中、「光学活性」とは、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有する状態を意味する。好ましくは、光学的に純粋な状態である。
本明細書中、「キラル化合物」とは、中心性キラリティー、軸性キラリティー又は面性キラリティーを持つ化合物を意味し、例えば、中心性キラリティー(不斉中心、すなわち、不斉炭素原子)を持つ化合物が挙げられる。
本明細書中、「光学活性キラル化合物」としては、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有する低分子化合物であり、中心性キラリティー、軸性キラリティー又は面性キラリティーを持つ分子量が500以下の有機化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。好ましくは、光学的に純粋な不斉炭素原子を1つ有する化合物であり、例えば、光学的に純粋な両エナンチオマーが市販品として入手可能な1−フェニルエチルアミン、1−シクロヘキシルエチルアミン、1−(1−ナフチル)エチルアミン、1−(2−ナフチル)エチルアミン、sec−ブチルアミン、1−フェニル−2−(p−トリル)エチルアミン、1−(p−トリル)エチルアミン、1−(4−メトキシフェニル)エチルアミン、β−メチルフェネチルアミン、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、1−アミノ−2−インダノール、2−アミノ−1−フェニル−1、3−プロパンジオール、2−アミノ−1−プロパノール、ロイシノール、フェニルアラニノール、2−フェニルグリシノール、バリノール、ノルエフェドリン、メチオニノール、1−ベンジル−3−アミノピロリジン、2−(メトキシメチル)ピロリジン、1−メチル−2−(1−ピペリジノメチル)ピロリジン、1−(2−ピロリジノメチル)ピロリジン、1−フェニルエチルアルコール、1−フェニル−2−プロパノール、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトール、1−アセチル−3−ピロリジノール、1−ベンジル−3−ピロリジノール、1−アセチル−3−ピロリジノール、2−ブタノール、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン、1−メチル−3−ピロリジノール、2−オクタノール、2−ペンタノール、1−(2−ナフチル)エタノール、メントール、ボルネオール、キニジン、キニン、キンコリン、キンコリジン、シンコニジン、シンコニン、カルボキシル基を保護したアミノ酸等のキラル化合物の光学活性体が挙げられる。中でも、(R)−(−)−2−フェニルグリシノール又は(S)−(+)−2−フェニルグリシノールが特に好ましい。該光学活性キラル化合物としては、光学的に純粋な化合物を使用するのが好ましいが、低い光学純度の化合物を用いても、ポリ(ジフェニルアセチレン)主鎖に一方向巻きに片寄ったらせん構造を誘起させた化合物(I)を調製することは可能である。従って、「光学活性キラル化合物」には、光学的に純粋な化合物だけでなく、光学純度の低い化合物も包含される。該低分子化合物は、液体でも固体でもよく、好ましくは、液体である。
本明細書中、「ee」とは、鏡像体過剰率(enantiomeric excess)の略称であり、キラル化合物の光学純度を表す。「ee」は、多い方の鏡像体の物質量から少ない方の鏡像体の物質量を引き、全体の物質量で割った値に100を掛けて算出され、「%ee」で表される。
本明細書中、「光学的に純粋な」とは、99%ee以上の光学純度を示す状態を表す。
本明細書中、「鏡像異性体」とは、光学活性な低分子化合物中の全ての不斉炭素原子の立体配置が異なっている光学的対掌体を意味し、光学活性な低分子化合物と互いに右手と左手との関係にある1対の光学異性体を構成している。具体的には、例えば、光学活性な低分子化合物が(R)−(−)−2−フェニルグリシノールである場合の鏡像異性体は(S)−(+)−2−フェニルグリシノールである。
本明細書中、「ラセミ体」とは、キラル化合物の2種類の鏡像異性体(エナンチオマー)が等量存在することにより旋光性を示さなくなった状態の化合物を意味する。
本明細書中、「キラルセンサー」とは、光学活性キラル化合物についてキラリティーを高感度に計測、判別することができる物質(化合物等)を意味する。本明細書中、「キラルセンサー」を利用した計測、判別を行うことを「キラルセンシング」という。
本明細書中、「比色検出」とは、測定物質、または反応生成物を発色物質に変化させ、その発色の度合を適当な波長の可視光線を用いて吸光度により比色定量する方法である。本発明における「比色検出」には、目に見える色の変化を利用した検出方法、蛍光強度の変化を利用した蛍光検出方法、及び紫外・可視吸収スペクトルを利用した検出方法も包含される。
(本発明の比色検出型キラルセンサー)
本発明の比色検出型キラルセンサーは、化合物(I)、すなわち、そのポリマー主鎖に一方向巻きのらせん構造を有する下記式(I):
[式中、
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、トリ置換シリル基、トリ置換シロキシ基又は置換されていてもよいアシルオキシ基を示し;並びに
nは、10以上の整数を示す。]
で表されるポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物からなる、比色検出型キラルセンサーである。
化合物(I)の塩とは、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、アミノ酸との塩等が挙げられる。
無機塩基との塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
有機塩基との塩として、例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、グアニジン、ピリジン、ピコリン、コリン、シンコニン、メグルミン等との塩が挙げられる。
アミノ酸との塩として、例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
化合物(I)又はその塩の溶媒和物とは、化合物(I)又はその塩に、溶媒の分子が配位したものであり、水和物も包含される。例えば、化合物(I)またはその塩の水和物、エタノール和物、ジメチルスルホキシド和物等が挙げられる。
以下、化合物(I)の各基について説明する。
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、トリ置換シリル基、トリ置換シロキシ基又は置換されていてもよいアシルオキシ基を表す。
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、好ましくは、独立してそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、トリアルキルシリル基又はトリアルキルシロキシ基であり、より好ましくは、独立してそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルコキシ基、トリC1−6アルキルシリル基又はトリC1−6アルキルシロキシ基であり、中でも、水素原子又はハロゲン原子が特に好ましい。
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、好ましくは、RとR’、RとR’、RとR’及びRとR’が、それぞれ同一の基である。R、R’、R、R’、R、R’R及びR’の全てが同一の基であってもよい。
nは、10以上の整数であり、好ましくは、30以上10000以下の整数である。
化合物(I)としては、以下の化合物が好適である。
[化合物(IA)]
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、トリアルキルシリル基又はトリアルキルシロキシ基であり、且つRとR’、RとR’、RとR’及びRとR’が、それぞれ同一の基であり;並びに
nが、10以上の整数である、化合物(I)。
より好適な化合物(I)は、以下の化合物である。
[化合物(IB)]
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルコキシ基、トリC1−6アルキルシリル基又はトリC1−6アルキルシロキシ基であり、且つRとR’、RとR’、RとR’及びRとR’が、それぞれ同一の基であり;並びに
nが、30以上10000以下の整数である、化合物(I)。
更に好適な化合物(I)は、以下の化合物である。
[化合物(IC)]
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ水素原子又はハロゲン原子であり、且つRとR’、RとR’、RとR’及びRとR’が、それぞれ同一の基であり;並びに
nが、30以上10000以下の整数である、化合物(I)。
化合物(I)の数平均重合度(1分子中に含まれるジフェニルエチレン単位の平均数)は、10以上、好ましくは30以上であり、特に上限はないが、10000以下であることが取り扱いの容易さの点で望ましい。
また、化合物(I)は、同位元素(例えば、H、H(D)、14C、35S等)で標識されていてもよい。
(化合物(I)の合成)
化合物(I)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下のような反応を経て合成することができる。
原料化合物は、特に述べない限り、市販品として容易に入手できるか、あるいは、自体公知の方法(例、国際公開第2014/125667号、国際公開第2014/126028号等)またはこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
なお、以下の反応式中の各工程で得られた化合物は、反応液のままか粗生成物として次の反応に用いることもできる。あるいは、該化合物は常法に従って反応混合物から単離することもでき、再結晶、蒸留、クロマトグラフィーなどの通常の分離手段により容易に精製することができる。
化合物(I)は、例えば、以下の工程により製造することができる。
[式中、R及びR’は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基を示し、他の記号は、前記と同義である。]
工程1
当該工程は、化合物1を重合させることにより、化合物2へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、窒素雰囲気下、金属触媒を用いて行われる。
金属触媒としては、例えば、塩化タングステン(VI)及びテトラフェニルすず(IV)の混合触媒が好ましい。
該金属触媒の使用量は、化合物1(1モル)に対して、通常0.001〜1モル、好ましくは、0.05〜0.5モルである。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でも、トルエン等が好ましい。
当該工程で使用される溶媒の量は、例えば、化合物1が0.01〜4M程度の濃度となる量が好ましい。特に0.1〜1M程度の濃度となる量が好ましい。
反応温度は、通常−10℃〜200℃、好ましくは10℃〜120℃である。
反応時間は、通常0.5〜30時間である。
工程2
当該工程は、化合物2のエステルを加水分解して、化合物(I’)、すなわち、光学不活性な化合物(I)、に変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基を用いて行われる。
塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が挙げられ、中でも、水酸化カリウムが好ましい。
該塩基の使用量は、化合物2(1モル)に対して、通常1〜100モルである。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム(diglyme))等のエーテル系溶媒と水の混合溶媒等が挙げられ、中でもテトラヒドロフランと水の混合溶媒が好ましい。
反応温度は、通常0℃〜100℃、好ましくは50℃〜90℃である。
反応時間は、通常0.5〜30時間である。
工程3
当該工程は、化合物(I’)に対し、光学活性な低分子化合物の添加により一方向巻きのらせんキラリティーを誘起する工程(工程3−1)、続く光学活性な低分子化合物の除去により一方向巻きのらせんキラリティーを記憶させる工程(工程3−2)により光学活性な化合物(I)に変換する工程である。
工程3−1は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、化合物(I’)と光学活性な低分子化合物とを混合することにより行われる。
光学活性な低分子化合物としては、前記例示した化合物が挙げられ、中でも、(R)−(−)−2−フェニルグリシノール、(S)−(+)−2−フェニルグリシノール、(R)−(−)−1−フェニルエチルアミン、(S)−(+)−1−フェニルエチルアミン等が好適に使用される。当該光学活性な低分子化合物としては、光学的に純粋な化合物(99%ee以上)を使用するのが好ましい。当該低分子化合物は、液体でも固体でもよく、好ましくは、液体である。
光学活性な低分子化合物の使用量は、化合物(I’)(1モル)に対して、通常1〜50モルである。
溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等が挙げられ、中でも水が好ましい。
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜100℃、より好ましくは80℃〜100℃である。
反応時間は、通常0.5〜30時間である。
工程3−2は、一方向巻きのらせんキラリティーが誘起された化合物(I)を含む混合液から光学活性な低分子化合物を除去することにより、一方向巻きのらせん構造が記憶された化合物(I)を得る工程である。具体的には、工程3−1の反応液に酸を添加し、生じた沈殿物を水洗することにより化合物(I)を得る工程である。
酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸等が挙げられ、中でも、塩酸が好ましい。
化合物(I)に一方向巻きのらせんキラリティーが誘起されたか否かは、CD及び紫外・可視吸収スペクトルを測定することにより確認することができる。
化合物(I)にどの程度の光学純度で一方向巻きのらせんキラリティーが誘起されたかどうかは、CDスペクトルのピーク強度(Δε)を測定することにより確認することができる。すなわち、ピーク強度が大きいほど、らせんの巻き方向が一方向に片寄っていることを示す。
上記水洗により除去された光学活性な低分子化合物は、回収して何度でも再利用することが可能である。
(化合物(I)からなる本発明の比色検出型キラルセンサーによる光学活性キラル化合物のキラリティーの識別方法)
化合物(I)は、被験(識別)対象である光学活性キラル化合物との縮合により誘導体化(特に、アミド化)されると、被験対象が持つ絶対立体配置や光学純度に応じて、該誘導体の溶液の色調、及び/又は蛍光強度の変化が観測される。そして、その色調、及び/又は蛍光強度の変化、並びに紫外・可視吸収スペクトルの変化を観測することにより、識別対象の絶対立体配置や光学純度を感度良く識別することが可能である。
識別対象の光学活性キラル化合物としては、光学活性キラルアミンが好ましい。
キラリティーの識別が可能な光学活性キラルアミンとしては、特に限定されないが、好ましくは、第1級アミン類(例、1−(1−ナフチル)エチルアミン、1−フェニルエチルアミン、2−ブチルアミン、1−シクロヘキシルエチルアミン等)、アミノアルコール類(例、2−フェニルグリシノール、フェニルアラニノール、2−アミノプロパノール等)、アミノ酸誘導体(例、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン等のアミノ酸のt−ブチルエステル等)等の光学活性体が挙げられ、中でも、第1級アミノ基を有する化合物が特に好適である。
化合物(I)と識別対象である光学活性キラル化合物(光学活性キラルアミン)との縮合による誘導体化(アミド化)による化合物(II)の合成は、自体公知の方法に従い、縮合剤存在下で化合物(I)と光学活性キラルアミン(好ましくは、前記例示した化合物である)とを反応させる方法等により行われる。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、必要に応じて縮合添加剤存在下、縮合剤を用いて行われる。
縮合添加剤としては、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−1H−1,2,3−トリアゾール−5−カルボン酸エチルエステル(HOCt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)等が挙げられる。
縮合添加剤の使用量は、化合物(I)1モルに対して、好ましくは0.05〜1.5モルである。
縮合剤としては、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBop)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−クロロ−1H−ベンゾトリアゾリウム3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロボレート(HBTU)等が挙げられるが、水系溶媒中でも使用可能なDMT−MMが特に好適である。
縮合剤の使用量は、化合物(I)1モルに対して、1〜10モル使用することができ、好ましくは1〜5モルである。
溶媒としては、例えば、水;ジメチルスルホキシド(DMSO);トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類等あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でも、水とDMSOの混合溶媒等が好ましい。
反応温度は、通常0〜40℃、好ましくは0℃〜室温であり、反応時間は、通常0.1〜30時間である。
化合物(I)と識別対象である光学活性キラルアミンとの縮合により生成するアミド化合物(化合物(II))を低極性溶媒(例、テトラヒドロフラン、クロロホルム等)、又は少量の極性溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)を含む低極性溶媒に溶解させると、光学活性キラルアミンの絶対立体配置や光学純度の違いにより、溶液の色調、及び/又は蛍光強度に変化が観測される。そして、その色調、及び/又は蛍光強度の変化を観測することにより、簡便且つ感度良く識別対象の絶対立体配置を識別することが可能である。また、後述する実施例に記載するように、検量線を作成することにより、識別対象の光学純度も精度良く測定することが可能である。
本発明のキラリティー識別方法は、化合物(I)(キラルセンサー)とキラルアミン(識別対象)とは共有結合により強固に結合しているので、従来公知の分子認識(非共有結合的相互作用)を利用したキラルセンサーと比較して、化学平衡等の影響を考慮する必要がないので、測定条件(濃度や温度等)に依存せず、再現性良く、識別対象のキラリティーを識別することができる。また、化合物(I)を蛍光性センサーとして使用する場合には、他の分析機器では十分な分析が不可能な10−7〜10−5M程度の極微量の試料を用いても精度良く識別することができるという利点を有する。
また、本発明のキラリティーの識別方法によれば、化合物(II)の紫外・可視吸収スペクトルの吸収極大波長の変化が特に、低鏡像異性体過剰率(低ee)領域(約20%ee以下)において顕著であるため、キラルHPLC等において正確な測定が困難な低eeの光学純度を示す試料をも精度良く識別することができるという利点も有する。
このように、本発明のキラルセンサーは、化合物(I)中に高価な光学活性な官能基を一切導入する必要がなく、簡便且つ安価に主鎖に一方向巻きのらせんのキラリティーを導入することができるという利点を有する。また、本発明のキラルセンサーを使用する光学活性キラル化合物のキラリティーの識別方法は、識別対象である光学活性キラル化合物と化合物(I)との縮合により生成する誘導体(化合物(II))の溶液の色調、及び/又は蛍光強度の変化、並びに紫外・可視吸収スペクトルの変化を観測するだけで、識別対象の絶対立体配置や光学純度を精度良く決定することができるという点で、高価且つ特殊な測定装置を必要としない、実用的なキラリティーセンシング手法である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらより何ら限定されるものではない。
H NMRスペクトルは、JEOL ECA500を用い、重クロロホルム、重ジメチルスルホキシド及び重水を溶媒として測定した。H−NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、quint=クインテット、m=マルチプレット、dd=ダブルダブレット、dt=ダブルトリプレット、brs=ブロードシングレット)、カップリング定数(Hz)、積分及び割当てとして報告する。
平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(日本分光製高速液体クロマトグラフィーポンプ PU−2080、日本分光製紫外可視検出器 UV−970、日本分光製カラムオーブン CO−1560、Shodex製カラム KF−805L)によりポリスチレン換算で算出した。
円二色性(CD)測定は日本分光製円二色性分散計 J−725、紫外可視吸収測定は日本分光製紫外可視分光光度計 V−570、蛍光測定は、日本分光製分光蛍光光度計 FP−6300を用いて行った。
以下の実施例中の「室温」は通常約10℃ないし約25℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
また、原料化合物であるビス[(4−へプチロキシカルボニル)フェニル)]アセチレン(化合物(1a))は、国際公開第2014/125667号及び国際公開第2014/126028号に記載の方法により合成したものを使用した。
実施例1
化合物(I−1)の合成
(1)化合物(1a)の重合による化合物(2a)の合成
窒素雰囲気下、シュレンク管にビス[(4−へプチロキシカルボニル)フェニル]]アセチレン(1a)(1.85g,4.00mmol)、塩化タングステン(VI)(161mg,0.41mmol)、テトラフェニルすず(IV)(185mg,0.43mmol)を入れ、真空蒸留した脱水トルエン(8.0mL)を加えた。その後、110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により黄土色固体を得た。続いて、少量のトルエンに溶解させ、大量のテトラヒドロフラン/メタノール(1:3,v/v)混合溶媒に再沈殿させ、遠心分離によりポリ(ジフェニルアセチレン)へプチルエステル(化合物(2a))(1.19g、収率64%)を黄土色固体として回収した。ゲル浸透クロマトグラフィー測定により求めた化合物(2a)のポリスチレン換算の数平均分子量Mは1.25×10であり分散度M/Mは1.85であった。
IR(KBr,cm−1):1721(C=O);
H NMR(500MHz,CDCl,50℃):δ7.16−7.28(br,4H,Ar−H),6.41−6.71(br,2H,Ar−H),5.92−6.15(br,2H,Ar−H),4.03−4.48(br,4H,2OCHCH),1.60−1.93(br,4H,2OCHCH),1.25−1.47(br,16H,8CH),0.79−1.04(br,6H,2CH);
元素分析:Calcd for C3038:C,77.89;H,8.28.Found:C,77.40;H,8.42.
(2)化合物(2a)の加水分解による化合物(I’−1)の合成
化合物(2a)(1.10g)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解し、4N水酸化カリウム水溶液(120mL)を加え、85℃で2時間撹拌した。その後、テトラヒドロフランを留去し、85℃で24時間撹拌した。反応溶液に蒸留水を加えた後、ジエチルエーテル、クロロホルムで洗浄した。水層に1N塩酸を加えて酸性にし、析出した固体を遠心分離により回収し、その後、蒸留水で洗浄することによりポリ(ジフェニルアセチレン)カルボン酸(化合物(I’−1))(600mg、収率94%)を褐色固体として得た。
IR(KBr,cm−1):1701(C=O);
H NMR(500MHz,d−DMSO/DO(1:1,v/v),80℃):δ7.19−6.88(br,4H,Ar−H),6.53−6.31(br,2H,Ar−H),6.12−5.82(br,2H,Ar−H)
元素分析:Calcd for (C1610・2.1HO):C,63.20;H,4.71.Found:C,63.04;H,4.55.
(3)化合物(I’−1)へのキラリティー誘起と記憶による化合物(I−1)の合成
化合物(I’−1)(297mg,1.12mmol)を水(113mL)に溶解し、(S)−(+)−フェニルグリシノール(1.24g,9.05mmol)を加え、95℃で2時間撹拌後、25℃で24時間静置した。1N塩酸を加えて酸性にして析出した固体を遠心分離により回収し、蒸留水で洗浄することにより一方向巻きのらせん構造を有する化合物(I−1)(290mg、収率98%)を褐色固体として得た。
実験例1
本発明の比色検出型キラルセンサー(化合物(I))による光学活性キラルアミンのキラリティーの識別
(1)化合物(I)と光学活性キラルアミンとの縮合による化合物(II)の合成
(i)化合物(I−1)と(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミンとの縮合による化合物(II−1S)の合成
化合物(I−1)(49.9mg,0.19mmoL)をジメチルスルホキシド/水(5:1,v/v)(10mL)に溶解し、(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミン(121μL,0.75mmol)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム クロリド(DMT−MM)(209mg,0.76mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。析出した固体を遠心分離により回収した後、水/メタノール(1:1,v/v)混合溶媒および水で洗浄後、乾燥することにより化合物(II−1S)(89.5mg、収率84%)を黄色固体として得た。
(ii)化合物(I−1)と(R)−(+)−1−(1−ナフチル)エチルアミンとの縮合による化合物(II−1R)の合成
化合物(I−1)(49.9mg,0.19mmoL)をジメチルスルホキシド/水(5:1,v/v)(10mL)に溶解し、(R)−(+)−1−(1−ナフチル)エチルアミン(121μL,0.75mmol)、DMT−MM(209mg,0.76mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。析出した固体を遠心分離により回収した後、水/メタノール(1:1,v/v)混合溶媒および水で洗浄後、乾燥することにより化合物(II−1R)(90.1mg、収率84%)を橙赤色固体として得た。
(iii)化合物(I−1)と(R)又は(S)配置の2−フェニルグリシノール、1−シクロヘキシルエチルアミン、フェニルアラニノール、アラニン t−ブチルエステル、1−フェニルエチルアミン、フェニルアラニン t−ブチルエステル、又はロイシン t−ブチルエステルとの縮合による化合物(II−2R)、(II−2S)、(II−3R)、(II−3S)、(II−4R)、(II−4S)、(II−5R)、(II−5S)、(II−6R)、(II−6S)、(II−7R)、(II−7S)、(II−8R)及び化合物(II−8S)の合成
上記(1)(i)又は(ii)の方法に従い、(R)又は(S)配置の2−フェニルグリシン、1−シクロヘキシルエチルアミン、フェニルアラニノール、又は1−フェニルエチルアミンとの縮合により対応する化合物(II−2R)、(II−2S)、(II−3R)、(II−3S)、(II−4R)、(II−4S)、(II−6R)及び化合物(II−6S)をそれぞれ合成した。一方、光学活性キラルアミンとして、(R)又は(S)配置のアラニン t−ブチルエステルの塩酸塩、フェニルアラニン t−ブチルエステルの塩酸塩、又はロイシン t−ブチルエステルの塩酸塩を使用する場合は、上記(1)(i)又は(ii)の反応をトリエチルアミン存在下で行うことにより、化合物(II−5R)、(II−5S)、(II−7R)、(II−7S)、(II−8R)及び化合物(II−8S)を同様に合成することができた。
化合物(II−2R)、(II−2S)、(II−3R)、(II−3S)、(II−4R)、(II−4S)、(II−5R)、(II−5S)、(II−6R)、(II−6S)、(II−7R)、(II−7S)、(II−8R)及び化合物(II−8S)の化学式を以下に示す。
(2)化合物(II)の溶液の色調の変化によるキラリティーの識別
上記(1)(i)及び(ii)で得られた化合物(II−1S)及び化合物(II−1R)について、テトラヒドロフラン中又はクロロホルム中で測定したCD及び吸収スペクトルを図1に示した。図1によれば、いずれの溶媒中でも化合物(II−1R)の方が、化合物(II−1S)に比して顕著な長波長シフトが観測された。
図2には、化合物(II−1R)と化合物(II−1S)のそれぞれのテトラヒドロフラン溶液及びクロロホルム溶液の写真を示した。その結果、識別対象である1−(1−ナフチル)エチルアミンのキラリティーは、溶液の色の違いとして目視により識別可能であることが分かった。
下表1に本発明の化合物(I−1)と他の光学活性キラルアミンとの縮合により得られた化合物(II−1S/1R)〜(II−8S/8R)の溶液の色調の差異をまとめて示した。
表1によれば、いずれの化合物(II)を用いても、テトラヒドロフラン中、クロロホルム中、又はそれらの混合溶媒中において、光学活性キラルアミンの絶対立体配置を目視により容易に識別できることが分かった。
(3)化合物(II)の溶液の蛍光強度の変化によるキラリティーの識別
上記(1)(i)及び(ii)で得られた化合物(II−1S)及び化合物(II−1R)について、ジメチルホルムアミド/クロロホルム(2:8,v/v)混合溶液中で蛍光スペクトルの測定(励起波長:282nm)を行った。その結果を図3に示した。図3によれば、化合物(II−1R)の方が、化合物(II−1S)に比して蛍光強度の顕著な低下が観測された。図3の右側に化合物(II−1S)と化合物(II−1R)のジメチルホルムアミド/クロロホルム(2:8,v/v)混合溶液中(濃度:1.0×10−5M)の溶液の色(上段)および365nmの紫外光照射下における溶液の色(下段)を示した。測定試料濃度が極めて希薄な条件下(1.0×10−5M)では溶液の色(右図上段)の違い(いずれも無色又は淡黄色)では識別が困難であったが、365nmの紫外光照射下では、極めて希薄な濃度条件(1.0×10−5M)下でも1−(1−ナフチル)エチルアミンのキラリティーを溶液の蛍光強度の違いとして目視により十分に識別可能であることが確認された。
(4)識別対象(光学活性キラルアミン)の鏡像異性体過剰率(ee)の決定
S体100%ee〜R体100%eeの1−(1−ナフチル)エチルアミンを、本発明の化合物(I−1)と縮合させ、クロロホルム中で紫外・可視吸収スペクトル測定を行い、450〜550nmにおける吸収極大波長の変化を、1−(1−ナフチル)エチルアミンの鏡像体過剰率(ee%)に対してプロットした結果を、図4に示した。図4は、S体100%eeのときの吸収極大波長を基準として、縦軸にその差Δλ(nm)をとり、横軸にHPLCにより求めた1−(1−ナフチル)エチルアミンの%eeをプロットしたものである。
図4によれば、1−(1−ナフチル)エチルアミンのS体20%ee〜R体20%ee付近で急激に吸収極大波長がレッドシフトしていることが分かった。右側の図はS体20%ee〜R体20%ee付近の拡大図である。
この結果は、他の機器分析方法では正確な識別が非常に難しい、20%ee以下の低ee領域における光学純度を紫外・可視吸収スペクトルの変化により決定可能であることを示すものである。
(5)本発明のキラリティー識別方法の試料濃度依存性
化合物(II−6S)及び化合物(II−6R)のクロロホルム溶液について、試料濃度2.5mM、0.25mM及び0.025mMで、それぞれCD及び紫外・可視吸収スペクトルを測定することにより、本発明の比色検出型キラルセンサーの濃度依存性を調べた。結果を図5−1と図5−2に示した。化合物(II−6S)及び化合物(II−6R)のいずれにおいても濃度依存性は全く観測されなかった。
この結果から、化合物(II)の溶媒中での色の差異は、会合により生じるものではなく化合物(II)の主鎖のコンフォメーション変化によるものであることが推察された。
本発明の化合物(I)からなる比色検出型キラルセンサーは、広範なキラルアミン化合物に対して高感度なキラリティー識別能を示す。本発明のキラルセンサーは、化合物(I)中に高価な光学活性な官能基を一切導入する必要がなく、簡便且つ安価に主鎖に一方向巻きのらせんのキラリティーを導入することができるという利点を有する。また、本発明のキラルセンサーを使用する光学活性キラル化合物のキラリティーの識別方法は、識別対象である光学活性キラル化合物と化合物(I)との縮合により生成する誘導体(化合物(II))の溶液の色調、及び/又は蛍光強度の変化を観測するだけで、識別対象の絶対立体配置や光学純度を精度良く決定することができるという点で、高価且つ特殊な測定装置を必要としない、実用的なキラリティーセンシング手法を提供するものである。さらに、本発明のキラリティーの識別方法によれば、紫外・可視吸収スペクトルの吸収極大波長の変化が特に、低鏡像異性体過剰率(低ee)領域において顕著であるため、他の機器分析手法によっては正確な測定が困難な低eeの光学純度を示す試料をも精度良く識別することができるという利点も有する。

Claims (3)

  1. 一方向巻きのらせん構造を有する式(I):
    [式中、
    、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、トリ置換シリル基、トリ置換シロキシ基又は置換されていてもよいアシルオキシ基を示し;並びに
    nは、10以上の整数を示す。]
    で表されるポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物からなる、比色検出型キラルセンサー。
  2. 請求項1記載のキラルセンサーのカルボキシ基と、キラルアミン化合物のアミノ基を縮合させてアミド化する工程、及び
    前記アミド化された化合物の溶液の色調の変化、及び蛍光測定により、当該キラルアミン化合物のキラリティーを決定する工程を含むことを特徴とする、キラルアミン化合物のキラリティーの識別方法。
  3. 更に、紫外・可視吸収スペクトルのデータからキラルアミン化合物の光学純度を決定する工程を含む、請求項2記載の方法。
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