JP6498412B2 - 新規チオフラビンt誘導体及びその利用 - Google Patents

新規チオフラビンt誘導体及びその利用 Download PDF

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Description

本発明は、新規チオフラビンT(ThT)誘導体及びその利用に関し、より具体的には、新規ThT誘導体のグアニン四重鎖構造の検出及び制御のための利用に関する。
近年、グアニン四重鎖やi-モチーフなど核酸の非二重鎖らせん構造(ノンカノニカル構造)の形成が、遺伝子発現などに大きな影響を及ぼすことが分かってきた(非特許文献1)。故に、それら核酸分子の構造形成を検出したり、構造変化を誘起したりするための小分子化合物の開発が進められている。その中で、従来、アミロイドβの重合検出プローブとして使用されてきた蛍光性のThTが、ある種のグアニン四重鎖構造の検出と誘起が可能であることが示された(非特許文献2)。しかし、蛍光の発光強度やグアニン四重鎖に対する選択性の向上、バックグラウンド発光(二重鎖らせん構造核酸や一本鎖核酸の存在下における発光)の低減などが、問題点としてあげられる。また、ThTが構造変化を誘起できるグアニン四重鎖構造の種類は限られている。以上の点から、ThTの誘導体化による新たな低分子化合物の創製が検討されている。特許文献1はThT誘導体を開示しているが、改変部位はN3位ではなく、グアニン四重鎖に対する効果も示唆されていない。
特開2012-102106号公報
Nucleic Acids Res.,2013,41,7453. J. Am. Chem. Soc., 2013, 135(1), 367-376.
本発明は、グアニン四重鎖構造に特異的に結合し、その構造を変化させうる新規化合物を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、ThTのベンゾチアゾール環上のN3位にあるメチル基を改変した新規ThT誘導体の合成に成功し、それらの誘導体がグアニン四重鎖(G4)DNAに選択的に結合して強い蛍光を発すること、およびG4−DNAの立体構造を変えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]下記一般式(I)で表される化合物又はその塩。
[2]下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を含む、グアニン四重鎖構造検出剤。
[3]下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を、DNA有試料と混合する工程を含む、グアニン四重鎖構造の検出方法。
[4]下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を含む、グアニン四重鎖構造を含む標的遺伝子の発現調節剤。
[5]下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を含む、アミロイドβ検出剤。
本発明では、ThTのN3位に置換基を導入することでグアニン四重鎖構造に対して発光の選択性を増強させ、且つ、バックグラウンド発光を抑えることを明らかにした。さらに、G4−DNAの構造誘起・変換において、従来のThTにはできなかったタイプのG4−DNAの構造誘起・変換についても可能にした。これら構造選択的蛍光発光や構造誘起・変換は、N3位の置換基を変えることによって、さまざまなノンカノニカル構造標的に対応した機能性分子アナログが創製されうることを示唆した。
本発明のThT誘導体は、分子プローブとして生体内外における核酸分子のノンカノニカル構造の検出とそれに基づく診断用途に使用でき、さらには、ノンカノニカル構造を改変することで遺伝子発現制御分子として医薬品などの分野に幅広く応用されることが期待される。
27Myc(A、C及びE)とdsDNA(B、D及びF)の濃度を上昇させたとき(0、1、3、6、9、12及び15μM)のPBS153NM中のThT(A及びB)、ThT−DB(C及びD)、ThT−HE(E及びF)(3μM)の蛍光スペクトルを示す図。オリゴヌクレオチドの濃度:0μM(紫)、1μM(黒)、3μM(青)、6μM(水色)、9μM(緑)、12μM(黄色)、および15μM(赤)。 TRS50K(A)、PBS150K(B)、PBS140KM(C)及びPBS153NM(D)中で各種オリゴヌクレオチドと混合したときのThTの蛍光スペクトルを示す図。 TRS50K(A)、PBS150K(B)、PBS140KM(C)及びPBS153NM(D)中で各種オリゴヌクレオチドと混合したときのThT−DBの蛍光スペクトルを示す図。 TRS50K(A)、PBS150K(B)、PBS140KM(C)及びPBS153NM(D)中で各種オリゴヌクレオチドと混合したときのThT−HEの蛍光スペクトルを示す図。 PBS150K(A)及びPBS153NM(B)中で各種オリゴヌクレオチドと混合したときのdsDNAに対するThTの相対蛍光強度を示す図。 PBS150K(A)及びPBS153NM(B)中で各種オリゴヌクレオチドと混合したときのdsDNAに対するThT−DBの相対蛍光強度を示す図。 PBS150K(A)及びPBS153NM(B)中で各種オリゴヌクレオチドと混合したときのdsDNAに対するThT−HEの相対蛍光強度を示す図。 PBS140KM(緑)及びPBS153NM(青)中での、各種オリゴヌクレオチドとのThT(A)、ThT−DB(B)及びThT−HE(C)の相対蛍光強度(I/I0)を示す図。ここで、I/I0比は同じ色素を含む緩衝液中でオリゴヌクレオチド(15μM)およびdsDNA(15μM;二本鎖の濃度)にそれぞれ結合したときに放出される蛍光の強度比を表す。 緩衝液中にThT(A)、ThT−DB(B)またはThT−HE(C)(3μM)と、オリゴヌクレオチド(15μM)を含有するアリコットの写真。a、b、c及びdでは、それぞれTRS50K、PBS150K、PBS140KM、PBS153NMの緩衝液を使用した。1、2、3、4、5、6、7、8はそれぞれ22AG、26Tel、27Myc、22Kit、20Src、18Ras、ssDNA、dsDNAを含有する。 典型的なG4構造を示す図。 ThT類似体が存在する(赤)、または存在しない(青)状態でのG4−DNA溶液(12μM)のCDスペクトルを示す図。(A)PBS150K中にThT−DB(24μM)が存在する、または存在しない状態での22AGのCDスペクトル、(B)PBS150K中にThT−DB(24μM)が存在する、または存在しない状態での26TelのCDスペクトル、(C)PBS153NM中にThT−DB(24μM)が存在する、または存在しない状態での22KitのCDスペクトル、および(D)PBS153NM中にThT−HE(96μM)が存在する、または存在しない状態での26TelのCDスペクトル。 ThTおよびThT−DBのAβ(1-42)に対する結合特性を示す蛍光測定の結果を示す図。
本発明のThT誘導体は、以下の構造を有する。
ここで、R1は水素、またはO、SおよびNから選ばれる1種類以上を含んでもよい、通常には炭素数1〜10(好ましくは1〜5)の炭化水素基を示す。炭化水素基は直鎖でも分岐鎖でもよいし、飽和でも不飽和でもよく、アルキル基などの脂肪族炭化水素基でもよいし、アリール基やアリールアルキル基などの芳香族炭化水素基でもよい。「O、SおよびNから選ばれる1種類以上を含んでいてもよい」とは、炭化水素基が、アミノ基(−NR2)(Rは独立して水素または炭素数1〜5のアルキル基)、ニトロ基(−NO2)、シアノ基(−CN)、イソシアネート基(−NCO)、ヒドロキシル基(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)、スルホン酸基(−SO3H)等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)、イミノ基(−NH−)、チオエーテル基(−S−)、カルボニル基(−C(=O)−)、アミド基(−C(=O)−NH−)、エステル基(−C(=O)−O−)、チオエステル基(−C(=O)−S−)等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む連結基が炭化水素基の炭素骨格の内部又は末端に含まれていてもよいことを意味する。
2、R3、R4はそれぞれ独立して炭素数1〜5の(脂肪族)炭化水素基を示し、より好ましくは炭素数1〜3の炭化水素基を示し、メチル基が特に好ましい。炭素数1〜5の炭化水素基は直鎖でも分岐鎖でもよいし、飽和でも不飽和でもよい。
nは0〜5の整数を示し、より好ましくは0〜3の整数を示し、特に好ましくは1である。
XはO、SまたはNHを示し、より好ましくはOである。
具体的には以下のような化合物が例示される。
一般式(I)で示される化合物の塩としては、その酸付加塩が例示される。適切な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。例は、酢酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベシル酸、重炭酸/炭酸、重硫酸/硫酸、ホウ酸、カンシル酸、クエン酸、エジシル酸、エシル酸、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルクロン酸、ヘキサフルオロリン酸、ヒベンズ酸、塩酸/塩化物、臭化水素酸/臭化物、ヨウ化水素酸/ヨウ化物、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、メシル酸、メチル硫酸、ナフチル酸、2−ナプシル酸、ニコチン酸、硝酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸/リン酸水素/リン酸二水素、サッカラート、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、トシル酸及びトリフルオロ酢酸塩を包含する。
一般式(I)で示される化合物は、後述の実施例に記載された方法に準じて合成することができる。
一般式(I)で示される化合物はDNAのグアニン四重鎖構造に特異的に結合するので、グアニン四重鎖構造検出剤として使用できる。具体的には、例えば、一般式(I)で示される化合物又はその塩と、被検DNAを含む試料を接触させ、グアニン四重鎖構造に結合した化合物を、化合物が発する蛍光に基づいて検出することにより、被検DNA中のグアニン四重鎖構造を検出することができる。
被検DNAとしては、ゲノムDNA又はその断片が好ましく、特に多数のゲノムDNAの断片をチップ上に固相化してDNAチップとしたものが好ましい。グアニン四重鎖構造はプロモーター領域やCpG(シトシン(C)(5'側)とグアニン(G)が1個のリン酸エステル(p)を介して結合している部分)部位を複数含む領域(CpG islandと呼ばれる)に多く含まれることが予測されていることから、ゲノムDNAのうち、プロモーターやCpG islandを含む断片だけを選択して、その中から検出操作を行うことも効率的で望ましい。
検出操作自体は、一般式(I)で示される化合物又はその塩を用いる点を除けば、公知の方法と同様であり、化合物を緩衝液中に溶解した溶液を、被検DNAを含む試料と接触させ、インキュベーション後、洗浄し、洗浄後に被検DNAと結合している蛍光色素の蛍光を検出することにより行うことができる。また、in vivo およびin situでの検出にも適用できる。
また、一般式(I)で示される化合物又はその塩は、グアニン四重鎖構造に特異的に結合してその構造を変化させることができる。上記の通り、グアニン四重鎖構造は遺伝子のプロモーター領域に多く存在することから、一般式(I)で示される化合物又はその塩を用いて標的遺伝子のプロモーター領域に存在するグアニン四重鎖構造を改変できれば、当該遺伝子の発現量を調節することができる。そのような遺伝子としては、c−MycP1プロモーターのヌクレアーゼ高感受性エレメント領域(27Myc)、チロシンキナーゼをコードするプロトオンコジーンの転写開始部位の87ヌクレオチド上流域(22Kit)、非受容体型チロシンキナーゼをコードするプロトオンコジーン(20Src)、およびヒトNRASプロトオンコジーン転写物の5’非翻訳領域(18Ras)などが挙げられる。
特に、標的遺伝子が癌遺伝子などの疾患関連遺伝子である場合、有効量の一般式(I)で示される化合物又はその塩を、薬学的に許容しうる担体と組合せて、癌などの疾患の治療や予防のための医薬組成物とすることができる。
医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉剤、徐放製剤、液剤、懸濁剤として経口投与に;液剤、懸濁剤又は乳剤として非経口投与に;軟膏剤又はクリーム剤として局所投与に;あるいは坐剤として直腸内投与に適切な剤形にしてもよい。非経口投与は、特に限定されないが、組成物の注射による、外科的切開を介した組成物の適用による、組織浸透性の非外科的創傷を介した組成物の適用によるなどの医薬組成物の投与を包含する。非経口投与はまた、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、筋肉内、胸骨内注射、及び腎臓透析点滴法を包含するものである。
適切な製剤担体は、不活性希釈剤又は増量剤、水及び種々の有機溶媒を包含する。医薬組成物は、必要に応じて、香味料、結合剤、賦形剤などのような追加の成分を含有してもよい。よって経口投与には、クエン酸のような種々の賦形剤を含有する錠剤を、デンプン、アルギン酸及びある種のケイ酸複合体のような種々の崩壊剤と、並びにショ糖、ゼラチン及びアカシアゴムのような結合剤と一緒にして利用してもよい。更には、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクのような滑沢剤は、錠剤化目的にしばしば有用である。同様のタイプの固体組成物はまた、軟及び硬充填ゼラチンカプセル剤にして利用することができる。このために好ましい材料は、ラクトース、即ち乳糖及び高分子量ポリエチレングリコール類を包含する。経口投与に水性懸濁剤又はエリキシル剤が必要
であれば、上記化合物は、種々の甘味剤又は着香剤、着色料又は色素、及び必要に応じて乳化剤又は懸濁剤と、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、又はこれらの組合せと一緒にして合せることができる。
治療用途には、組成物中の活性成分の有効な1日量は、一般に、0.01mg/kg〜50mg/kg体重、更に好ましくは0.1mg/kg〜10mg/kg体重であろう。当然ながら、これは使用する誘導体、投与様式、必要な処置、適応疾患、更には患者の生理学的データ(例えば、年齢、サイズ、及び体重)により変化する。この1日総用量は、単回又は分割用量として投与することができる。治療剤の投与に適切な用量及び用法の決定は、当該分野において周知であり、当業者であれば含まれることを理解するであろう。
また、ThTおよびその誘導体は、アミロイドβ(Aβ1-42など)に結合し、その存在量に比例して蛍光強度が増加するので、本発明のThT誘導体(一般式(I)で示される化合物又はその塩)はアミロイドβ検出(結合)剤として、アルツハイマー病の診断等の用途にも使用される。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
1.機器等
NMRスペクトルはJNM−ECS400およびJNM−ECA600(日本電子株式会社、東京、日本)を使用して測定された。ESIマススペクトルはAPI2000質量分析計(アプライドバイオシステムズ株式会社、東京、日本)を使用して測定された。UVスペクトルはUV−1800分光光度計(株式会社島津製作所、京都、日本)を使用して測定された。蛍光スペクトルはLS−55蛍光分光光度計(株式会社パーキンエルマージャパン、神奈川、日本)を使用して測定された。CDスペクトルはJASCOJ−820分光計(日本分光株式会社、東京、日本)を使用して取得された。オリゴヌクレオチドはWK−0518サーマルサイクラー(和光純薬工業株式会社、大阪、日本)を使用してリフォールディングされた。蛍光量子収率は絶対光ルミネセンス量子収率測定システムC9920−01(浜松ホトニクス株式会社、静岡、日本)とF−7000蛍光分光光度計(株式会社日立製作所、東京、日本)を使用して測定された。蛍光寿命はC11367G蛍光寿命分光計(浜松ホトニクス株式会社、静岡、日本)を使用して測定された。
逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)はHPLCシステム(日本分光株式会社、東京、日本)を使用して実施された。
2.材料
2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)、ブロモ酢酸メチル、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)、および水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)は東京化成工業株式会社(東京、日本)から購入したものである。シリカゲル60、トリフルオロ酢酸(TFA)は関東化学株式会社(東京、日本)から購入したものである。アセトニトリル(MeCN)、塩化アンモニウム、ジクロロメタン(CH2Cl2)、ジエチルエーテル、リン酸水素二カリウム(K2HPO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、エタノール(EtOH)、エチレングリコール、塩酸(HCl水溶液)、塩化マグネシウム六水和物(MgCl2・6H2O)、硫酸マグネシウム七水和物、メタノール(MeOH)、塩化カリウム(KCl)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、水酸化カリウム(KOH)、塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸二水素ナトリウム二水和物(NaH2PO4・2H2O)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)およびチオフラビンT(ThT)は和光純薬工業株式会社(大阪、日本)から購入したものである。ウシ胸腺DNA(ウシの胸腺由来のデオキシリボ核酸、XV型)、4−(ジ
メチルアミノ)ベンゾイルクロリドおよびTrizma(登録商標)塩基はSigma−Aldrich,Inc.(ミズーリ州、米国)から購入したものである。オリゴヌクレオチドは株式会社日本バイオサービス(埼玉、日本)および株式会社ジーンデザイン(大阪、日本)から購入したものである。
3.チオフラビンT誘導体の合成
我々はThT中の候補置換部位として4つのメチル基に焦点を当てた。分子動態(MD)シミュレーションに基づいて、ベンゾチアゾール環上のN3位のメチル基のみがGカルテット平面と有意に重なり合うことが示唆された。したがって、我々はこの位置に置換基を導入することが異なるG4タイプを区別するための特異性を改善させることになるかもしれないと考えた。
そこで、最初に7ステップ反応により2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾールからThT−DBとThT−HEを合成した。
化合物T1の合成:乾燥MeCN中の2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール(530mg、3.3mmol)の溶液にブロモ酢酸メチル(350μL、3.7mmol)を添加し、4時間還流した。反応混合物を乾燥するまで蒸発させた。残留物をMeCNと懸濁し、そして、濾過した。得られた沈殿物を真空下で乾燥させてT1(837mg、定量的収量)を得た; 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) 6 7.63 (1H, s) 7.40-7.33 (2H, q) 5.12 (2H, s) 3.80 (3H, s) 2.41 (3H, s); ESI-MS (陽イオンモード) m/z, 実測値 = 237.1, [M+]の計算値 = 237.07。
化合物T2の合成:乾燥MeOH(6.8mL)中の化合物T1(502mg、2.1mmol)の溶液にNaBH4(960mg、25mmol)を0℃で添加し、混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、残留物を酢酸エチルと懸濁
した。懸濁液を冷水に注ぎ、有機層を水で洗浄し、次に硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過とその後の溶媒の蒸発により黄色の粉末として化合物T2を得た(727mg、75%); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) 6 7.09 (1H, s) 7.04-7.02 (1H, d) 6.79-6.77 (1H, d) 4.15-4.13 (2H, t) 3.99-3.96 (2H, t) 2.33 (3H, s); ESI-MS (陽イオンモード) m/z,
実測値 = 209.2, [M+]の計算値 = 209.07。
化合物T3の合成:50%KOH(重量/体積)水溶液(47mL)とエチレングリコール(50mL)の混合液に化合物T2(711mg、3.4mmol)を添加し、反応混合物をアルゴン雰囲気下で24時間還流し、そして、通気しながら24時間さらに撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液で希釈し、そして、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして、濾過した。濾過物を乾燥するまで蒸発させ、結果生じた残留物をジクロロメタン中のメタノールの0%〜5%の濃度勾配によるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して黄色の油として化合物T3を得た(250mg、40%); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) 6 7.11-7.10 (2H, d) 7.07-7.04 (2H, q) 6.60-6.57 (2H, d) 3.72-3.61 (4H, m) 3.28-3.22 (4H, d) 2.17 (6H, s); ESI-MS (陽イオンモード) m/z, 実測値 = 365.2, [(M+H)+] の計算値 = 365.53。
化合物T4の合成:乾燥ジクロロメタン(3.6mL)中の化合物T3(190mg,0.52mmol)の溶液にp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(78mg,0.31mmol)と3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(400μL、4.7mmol)を添加し、混合物を室温で5時間撹拌した。反応混合物をジエチルエーテルで希釈した。有機層を半飽和食塩水で洗浄して触媒を取り除き、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして、乾燥するまで蒸発させて黄色の油として化合物T4を得た(276mg、粗生成物);ESI-MS (陽イオンモード) m/z, 実測値 = 533.3, [(M+H)+] の計算値 = 533.24。
化合物T5の合成:乾燥エタノール(4.7mL)中の粗化合物T4(158mg)の溶液にNaBH4(224mg、5.9mmol)を0℃で添加し、混合物を室温で8時間撹拌した。反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、残留物を酢酸エチルと懸濁し、そして、冷水に注いだ。有機層を水で洗浄し、次に硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過とその後の溶媒の蒸発により黄色の油として化合物T5を得た(149mg、粗生成物); ESI-MS (陽イオンモード) m/z, 実測値 = 268.0, [(M+H)+]の計算値 = 268.12。
ThT−DBおよびThT−HEの合成:乾燥MeCN(2.6mL)中の粗化合物T5(86mg)の溶液に4−(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリド(89mg、0.48mmol)を添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、生成物をジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして、濾過した。濾過物を乾燥するまで蒸発させ、残留物をジクロロメタン中のメタノールの0%〜20%の濃度勾配によるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して中間体T6と黄色の油としてThT−DB(57mg、粗精製品)を得た; T6: ESI-MS (陽イオンモード) m/z, 実測値 = 397.2, [M+]の計算値 =397.19; ThT-DB: ESI-MS (陽イオンモード)
m/z, found=460.1, [M+]の計算値 =460.21。次に、T6とThT−DB(54mg)の混合物を250μLのTFA/水/MeOH(2/1/2、体積/体積/体積)中に溶解し、混合物を室温で8時間撹拌した。反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、結果生じた残留物を、オクタデシルシリカ(ODS)ゲルカラムを装着したHPLCシステムにより精製してそれぞれ黄色の粉末としてThT−HE(2mg、T4より1.7%)およびThT−DB(6.8mg、T4より5.7%)を得た;
ThT-HE: 1H NMR (600 MHz, CDCl3) 6 8.13-8.12 (1H, d) 7.90-7.89 (2H, d) 7.73 (1H, s) 7.62-7.61 (1H, d) 6.86-6.85 (2H, d) 4.94 (2H, s) 4.37 (2H, s) 3.16 (6H, s) 2.57 (3H, s); ESI-MS (陽イオンモード) m/z, 実測値 = 313.1, [M+]の計算値= 313.14;
ThT-DB: 1H NMR (600 MHz, CDCl3) 6 8.20-8.19 (1H, d) 7.79 (1H, s) 7.70-7.69 (2H, d) 7.61-7.60 (1H, d) 7.55-7.54 (2H, d) 6.75-6.74 (2H, d) 6.53-6.52 (2H, d) 5.49 (2H, s) 4.74 (2H, s) 3.12 (6H, s) 3.04 (6H, s) 2.55 (3H, s); ESI-MS (陽イオンモード) m/z, 実測値=460.1, [M+]の計算値=460.21。
4.THT誘導体の評価
次に、様々なG4形成オリゴヌクレオチドが存在する状態でのThTとThT誘導体の蛍光特性とG4における化合物誘導性のトポロジー変化を調べた。
G4を形成する次の6種類のヒト由来オリゴヌクレオチドを使用した:
22mer DNA(22AG:5'-AGGGTTAGGGTTAGGGTTAGGG-3' (配列番号1)および
22Kit:5'-AGGGAGGGCGCTGGGAGGAGGG-3'(配列番号2))、
26mer DNA(26Tel:5'-TTAGGGTTAGGGTTAGGGTTAGGGTT-3'(配列番号3))、
27mer DNA(27Myc:5'-TGGGGAGGGTGGGGAGGGTGGGGA AGG-3'(配列番号4))、
20mer DNA(20Src:5'-GGGCGGCGGGCTGGGCGGGG-3'(配列番号5))、および
18mer RNA(18Ras:5'-GGGAGGGGCGGGUCUGGG-3'(配列番号6))。
これらはヒト遺伝子から得られた:
テロメア領域(22AGおよび26Tel)、
c−MycP1プロモーターのヌクレアーゼ高感受性エレメント領域(27Myc)、
チロシンキナーゼをコードするプロトオンコジーンの転写開始部位の87ヌクレオチド上流域(22Kit)、
非受容体型チロシンキナーゼをコードするプロトオンコジーン(20Src)、および
ヒトNRASプロトオンコジーン転写物の5’非翻訳領域(18Ras)。
これらの配列の他に、次の2種類のオリゴヌクレオチドを基準として使用した:
17mer DNA(ssDNA:5’-GGGTTACTACGAACTGG-3’(配列番号7))、及び
ssDNA の相補配列(cDNA:5’-CCAGTTCGTAGTAACCC-3’(配列番号8))。
ssDNAは一本鎖DNAとして使用し、cDNAはssDNAと1:1の比率で混合し、二本鎖DNA(dsDNA)として使用した。
緩衝条件のG4の立体構造への効果とそれによる蛍光放射への効果を分析するために4種類の緩衝液溶液を使用した:
TRS50K(50mMトリス塩酸、50mM KCl;pH7.2);
PBS150K(92mM HPO4 2-、150mM K+、15mM Na+;pH7.0);
PBS140KM(80mM HPO4 2-、2.5mM SO 2-、140mM K+、10mM Na+、2.5mM Mg2+;pH7.4)、および
PBS153NM(10mM HPO4 2-、146mM Cl-、153mM Na+、2.7mM K+、2.5mM Mg2+;pH7.4)。
PBS150KとPBS140KMは細胞内イオン成分と似ており、PBS153NMは典型的なリン酸生理食塩水である。
4−1.蛍光スペクトル分析
8種類のオリゴヌクレオチド(22AG、26Tel、27Myc、22Kit、20Src、18Ras、ssDNA、およびdsDNA)を21μMの濃度でそれぞれ緩衝液TRS50K、PBS150K、PBS140KM、およびPBS153NMに溶解し、サーマルサイクラーを使用して95℃で0.5分間加熱して変性し(18Rasについては40℃で)、0.5℃/分の割合で25℃まで冷却することによってリフォールディングさせた。これらの溶液を適切なオリゴヌクレオチド濃度まで希釈し、アリコット(50
μLずつ)を25℃で30分間保温し、次にそれぞれ緩衝液TRS50K、PBS150K、PBS140KM、およびPBS153NMの中の色素(ThT、ThT−DB、およびThT−HE;10.5μM)の20μLの溶液と混合した。さらに、これらの混合物を25℃で30分間保温した。色素の放射スペクトルは、415nmで励起し、450nmと600nmの間で蛍光をモニターすることにより得た。
図1にThT、ThT−DB、およびThT−HEを27MycまたはdsDNAと混合したときの結果を示し、図2−1〜2−3にThT、ThT−DB、およびThT−HEを各種緩衝液中で、各種オリゴヌクレオチドと混合したときの結果を示す。
図1より、ThTはdsDNA存在下でもかなりの蛍光を発しバックグラウンドが高いのに対し、ThT−DB、およびThT−HEはdsDNA存在下ではほとんど蛍光を発しないのでグアニン四重鎖特異性が高いことがわかった。
図2−4〜2−6では、dsDNAと相互作用した色素の強度を1と設定し、485nm(ThTおよびThT−HE)または500nm(ThT−DB)での放射光のピークとしての相対蛍光強度を表した。X軸はオリゴヌクレオチド濃度を表す。
Kd値を図2−4〜2−6中の滴定曲線から決定し、表1に記載した。
表1の結果から、ThT−HEの標的G4への親和性は概してThTの標的G4への親和性と比べて低かったが、ThT−DBの標的G4への親和性はほぼ同等であった。
表1.ThTおよび誘導体の標的オリゴヌクレオチドへの結合
n.d.:正確な値は測定不能であったが、Kd>40nMと推定される。
各緩衝液溶液におけるdsDNA(15μM)と混合した色素(ThT、ThT−DB、またはThT−HE;3μM)の蛍光強度(I0と定義する)を1に設定し、各緩衝溶液における各種オリゴヌクレオチドと混合した色素の相対蛍光強度(I/I0)を決定した(表2)。図3はPBS140KMおよびPBS153NM中の各オリゴヌクレオチドとのThT(A)、ThT−DB(B)、およびThT−HE(C)の相対蛍光強度(I/I0)をプロットした。その結果、ThT−DBおよびThT−HEの相対蛍光強度はThTよりも高い値を示したが、特に、ThT−HEは27Mycに対する特異性があることがわかった。
表1のとおり、結合親和性は低いにもかかわらず、27Mycと相互作用したThT−HEは26Telと相互作用したThT−HEおよび27Mycと相互作用した他の色素よりも強い相対蛍光強度を示すことができる。したがって、Kd値は必ずしも蛍光放射光と相関しなかった。
表2.各バッファー中、オリゴヌクレオチド(15 μM)存在下におけるThT, ThT-DB, および ThT-HE (3 μM) の蛍光強度
括弧内の数値は、dsDNAと色素を混合したときの蛍光強度をそれぞれ1として計算した相対蛍光強度である。
4−2.蛍光観察
色素(3μM)とオリゴヌクレオチド(15μM)を含有する混合物(20μLずつ)を日本ジェネティクス株式会社(東京、日本)から購入した96ウェルPCRプレート・ウルトライージーカット(0.2mL/ノンスカート)に入れた。
図4中の写真は、8 mm Super Violet LED OSSV8131Aを使用する410nmの可視光の照射下でカットオフフィルター(460nm未満)を通して撮影された。0.4秒の露光時間と3.8のF値を用いた。
その結果、THTは特異性がなかったが、THT−HEは27Mycと18rasに対して強い発光を示した。ThT−DBは弱い光を放射するのみであったのでG4間の差異はThTおよびThT−HEと共に撮った写真上では目視により決定することがほとんどできなかった。しかしながら、より長い露光時間を用いると、G4とのThT−DBの放射光を観察することができた(図は示さず)。
4−3.蛍光量子収率および蛍光寿命
オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド(27Myc、dsDNA、およびウシ胸腺DNA)をそれぞれ25μMの濃度で緩衝液PBS153NMに溶解し、サーマルサイクラーを使用して95℃で0.5分間加熱して変性し、0.5℃/分の割合で25℃まで冷却することによってリフォールディングさせた。これらの溶液(2,700μLずつ)を25℃で30分間保温し、次に緩衝液PBS153NM中の色素(ThT、ThT−HE、およびThT−DB;45μM)の300μLの溶液と混合して27Myc(22.5μM)、dsDNA(22.5μM;二本鎖濃度)、またはウシ胸腺DNA(765μM;塩基濃度)に加えて色素(4.5μM)を含有する混合物(3,000μLずつ)を供給した。さらに、これらの混合物を25℃で30分間保温し、1.0cmの光路長での430nmの吸光度が0.1であるように緩衝液PBS153NMで希釈した。
緩衝液PBS153NM中で27Mycと相互作用した色素(ThT、ThT−HE、またはThT−DB)の蛍光量子収率(Φf)は、絶対光ルミネセンス量子収率測定システムC9920−01を使用して430nmで励起し、440nmと740nmの間で蛍光をモニターすることにより得られた(表3)。
なお、量子収率(Φf、すなわち、Φunk)は次の式に従って計算された:
この式で、Φstdは、標準試料としてPBS153NM中でThT−DBと相互作用した27Mycの蛍光量子収率であり、IstdとIunkはそれぞれ標準試料と分析試料の放射スペクトル下の面積であり、AstdとAunkはそれぞれ励起光の波長で測定された前者と後者の光学密度であり(本実験ではAstd=Aunk=0.1)、nstdとnunkはそれぞれ前者と後者に使用された緩衝液の屈折率である(本実験ではnstd=nunk)。
表3より、ThT−HE/27Mycは最も強い蛍光強度を示し、0.53というΦf値をもたらしたが、ThT/27MycとThT−DB/27Mycはより低いΦf値、すなわち、それぞれ0.44と0.10という値をもたらした。ThT誘導体は非常に低いバックグランド蛍光しか示さなかったので、ThT−DB/dsDNAとThT−HE/dsDNAのΦf値はそれぞれわずかに0.0017と0.0038であったが、一方、ThT/dsDNAのΦf値はずっと高く、すなわち、0.022であった。色素/ウシ胸腺DNAについて同様の結果が得られた。
表3.DNAと色素を混合させたときの蛍光量子収率 (λex = 430 nm)
さらに、上述の試料溶液(PBS153NM)を使用して、27Mycと相互作用した色素(ThT、ThT−DB、またはThT−HE)の蛍光寿命が、C11367G蛍光寿命分光計を使用して440nmで励起し、490nmでモニターすることにより測定された(表4)。表4における括弧の中のパーセント値として提供されるτ1とτ2の構成比率(Component Ratio)はそれぞれ次の式にしたがって計算された:
さらに、平均寿命、すなわち、<τ>は次の式に従って得られた:
ThT−HEのτ1とτ2の両方はThTのそれらとほぼ同等であったが、ThT−HEのτ2成分の比率はThTのそれよりも大きかった。ThT−DBはThTおよびThT−HEと比べて短いτ1とτ2、および大きいτ1成分の比率を示した。
4−4.円偏光二色性(CD)分析
CD測定の前に8種類のオリゴヌクレオチド(22AG、26Tel、27Myc、22Kit、20Src、18Ras、ssDNA、およびdsDNA)を21μMの濃度でそれぞれ緩衝液TRS50K、PBS150K、PBS140KMおよびPBS153NMに溶解し、サーマルサイクラーを使用して95℃で0.5分間加熱して変性し(18Rasについては40℃で)、0.5℃/分の割合で25℃まで冷却することによってリフォールディングさせた。これらの溶液(40μLずつ)を25℃で30分間保温し、次にそれぞれ緩衝液TRS50K、PBS150K、PBS140KM、およびPBS153NMの中の色素(ThTおよびThT−HEについては0、56、112、224μM、およびThT−DBについては0、56μM)の30μLの溶液と混合した。ThTおよびThT−HEの終濃度は96μMであったが、ThT−DBの終濃度はその低い水溶性のために24μMに設定した。さらに、これらの混合物を25℃で30分間保温し、分析した(図6)。
各緩衝溶液中におけるオリゴヌクレオチドのG4位相構造、すなわち、平行型(P)、逆平行バスケット型(A)、ハイブリッド‐1型(H1)、およびハイブリッド‐2型(H2)を、J−820CD分光計(日本分光株式会社日本)を使用して決定した(図5および表5)。1.0mmの光路長を有する水晶キュベットを使用して200〜600nmの波長域でCDスペクトルを測定した。スキャン速度を100nm/分に設定し、反応時間は1秒であった。各スペクトルは25℃で行われた11回の測定の平均であった。
表5.色素の非存在下および存在下(ThTとThT-HE の場合は96 μM、ThT-DBの場合は24 μM)におけるグアニン四重鎖のCD測定 (左: 色素非存在下) → (右: 色素存在下)
n.d. = 未測定
H1:Hybrid-1、H2:Hybrid-2、P:Parallel、A:Antiparallel
化合物誘導性位相構造
CD分析により、ThT類似体ならびにThTはG4においてトポロジーの変化を引き起こすことができることが示された(図6)。22AG、26Tel、および22KitについてThT−DBの添加前と添加後の間でCDスペクトル(範囲:220〜320nm)の重大な変化が存在した。例えば、22AGのトポロジーはPBS150K中でH1型からA型に変化した(図6A)。さらに、26TelのトポロジーはH2型からH1様型に変化した(図6B)。PBS153NM中では22KitのトポロジーはP型からH2様型に変化した(図6C)。同様に、PBS153NMの中にあるとき、ThT−HEは26TelのトポロジーをA様型からH1型に変えた(図6D)。これらの結果は、異なるG4の立体構造はThT、ThT−HE、およびThT−DBのN3置換基のためにそれらによって安定化され得ることを示した。生理学的塩濃度を有する緩衝液中でG4のトポロジーを変えることができる化合物は遺伝子発現制御のための魅力的な薬品候補である。
Amyloid Aβ(1-42)蛍光滴定
以下の手順で、ThTおよびThT−HEのAmyloid Aβ(1-42)に対する結合能を調べた。
用いたサンプル
Amyloid Aβ(1-42) H-DAE FRH DSG YEV HHQ KLV FFA EDV GSN KGA IIG LMV GGV VIA-OH(配列番号9)
Thioflavin T(ThT)
ThT-HE
用いたbuffer
リン酸緩衝液―PBS buffer(pH7.4) K+ 4.2mM、Na+ 154mM、PO4 2- 9.6mM、Cl- 140mM
実験手順
1. Amyloid Aβ(1-42)溶液の調製
Amyloid Aβ(1-42) を溶解させたリン酸緩衝液(2.8, 5.6, 14, 28 μM)をそれぞれ調製した。
2.色素溶液の調製
色素(ThT, ThT-HE)をそれぞれ溶解させたリン酸緩衝液(350μM)を調製した。
3.測定溶液の調製
30分程度静置しておいた各濃度のAmyloid Aβ(1-42)溶液(50 μL)に色素溶液(20 μL)を添加し、30分間静置後蛍光スペクトルを測定した。
測定溶液中の各成分最終濃度: Amyloid Aβ(1-42): 2, 4, 10, 20 μM、ThT, ThT-HE:
100 μM
4.蛍光スペクトル測定
蛍光スペクトル測定にはLS-55 (Perkin Elmer Japan Co., Ltd.)を用いた。435 nm で励起し、460〜660nmの間で発光を観測した。
結果を図7に示す。Amyloid Aβ(1-42)存在下で、ThT-HEはThTと同様に発光増大が観測された。

Claims (7)

  1. 下記一般式(I)で表される化合物又はその塩。
    1は水素、またはO、SおよびNから選ばれる1種類以上を含んでもよい炭化水素基を示し、
    2、R3、R4はそれぞれ独立して炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
    nは0〜5の整数を示し、
    XはO、SまたはNHを示す。
  2. 1は水素、またはOおよびNから選ばれる1種類以上を含んでもよい炭化水素基を示し、
    2、R3、R4はそれぞれ独立して炭素数1〜5の炭化水素基を示し、
    nは0〜5の整数を示し、
    XはOを示す、請求項1に記載の化合物又はその塩。
  3. 一般式(I)で表される化合物が下記式(II)または(III)で表される、請求項1に記載の化合物又はその塩。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその塩を含む、グアニン四重鎖構造検出剤。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその塩を、DNA含有試料と混合する工程を含む、グアニン四重鎖構造の検出方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその塩を含む、グアニン四重鎖構造を含む標的遺伝子の発現調節剤。
  7. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその塩を含む、アミロイドβ検出剤。
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