JP6497331B2 - 制御装置および同期制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、同期制御装置に関する。
主軸と従軸を同期させるモーション制御では、主軸で測定された情報が処理されて従軸へ伝送されるまでの遅れによって主軸および従軸間に同期ずれが生じうる。この同期ずれに関して、特許文献1には、測定された主軸位置をフィルタによりシフトさせる手法が開示されている。
日本国公開特許公報2014−119904(2014年6月30日公開)
この手法のように、従軸への伝送による遅れを考慮するだけでは精度の高いモーション制御を実現するためには、十分でない。
本発明の制御装置は、主軸に従軸を同期させる制御装置であって、前記主軸の位置情報を用いて従軸の指令位置を算出し、前記従軸に対して前記指令位置を出力する工程において、前記制御装置から前記従軸への前記指令位置の伝送による遅れと従軸の遅れとを前記指令位置の補正によって補償するプロセッサを備える。
なお、前記主軸は実在のものだけではなく、前記プロセッサの処理で実現される仮想的な軸であってもよい。
前記構成によれば、主軸と従軸を同期させるモーション制御において、前記指令位置の伝送による遅れと従軸の遅れとに起因する同期ずれを抑制することができる。
(a)は実施の形態1のモーション制御システムの概略構成を示すブロック図であり、(b)は同期ずれの原因を説明するタイミングチャートである。 実施の形態1のモーション制御システムの構成を示すブロック図である。 (a)は主軸機構および従軸機構の構成を示すブロック図であり、(b)は、(a)に関するガントリー機構を示す模式図である。 図3のプロセッサの処理工程を示すフローチャートである。 (a)は、実施の形態1における主軸機構および従軸機構の別構成を示すブロック図であり、(b)は、(a)に関するガントリー機構を示す模式図である。 実施の形態1における主軸機構および従軸機構のさらなる別構成を示すブロック図である。 実施の形態2のモーション制御システムの構成を示すブロック図である。 図7のプロセッサの処理工程を示すフローチャートである。 (a)(b)は、実施の形態3のモーション制御システムを示す模式図である。 プロセッサの処理手順を示す説明図である。 本実施形態に用いるプログラム例である。
図1(a)に示す本モーション制御システム1は、同期制御装置3と、通信ネットワーク21と、主軸機構31および従軸機構32とを備える。同期制御装置3は、例えばプログラマブルロジックコントローラ(PLC)である。
同期制御装置3は、主軸機構31の位置情報を用いて従軸機構32の指令位置を周期ごとに算出し、従軸機構32に対して指令位置に応じた出力(例えば、従軸位置信号の送信)を行うプロセッサを備えることで、従軸機構32を主軸機構31に同期させる。
モーション制御システム1では、図1(b)に示すように、主軸位置が特定され、主軸位置が通信ネットワーク21を介して同期制御装置3に入力されるのに要する時間T1、同期制御装置3のプロセッサが主軸位置を受けてから指令位置に応じた出力(例えば、従軸位置信号の送信)を行うまでに要する時間T2、前記出力が通信ネットワーク21を介して従軸機構32に入力されるのに要する時間T3、および従軸機構32の遅れ時間T4それぞれによって同期ずれが生じる。
従軸の遅れ時間T4は、従軸のサーボドライバの処理時間、サーボモータや従軸機構の摩擦等に起因した応答遅れによって生じるもので、例えば、通信ネットワーク21経由で従軸位置信号が従軸機構32に受信されてから、これが電気的信号に変換されて従軸機構32のサーボモータ(後述)に取り付けられたエンコーダの値が変化するまでの時間で表すことができる。
同期制御装置3では、時間T1〜時間T4による同期ずれを、例えば以下のように補償している。なお、時間T1+時間T2を主軸側の遅れ、時間T3+時間T4を従軸側の遅れとする。
〔実施の形態1〕
実施の形態1では、主軸側の遅れ(T1+T2)による同期ずれと、従軸側の遅れ(T3+T4)による同期ずれを別々に補償する。
図2に示すように、実施の形態1のモーション制御システムは、プロセッサ5およびインターフェース19を含む同期制御装置3と、通信ネットワーク21(例えば、EtherCAT(登録商標))と、主軸機構31および従軸機構32とを備え、同期制御装置3は、ユーザ端末40(情報処理装置)に接続される。
ここで、図3(a)に示すように、主軸機構31は、サーボドライバ31d、主軸であるサーボモータ31mおよびエンコーダ(信号生成器)31eを含み、サーボドライバ31dがサーボモータ31mを駆動し、エンコーダ31eがサーボモータ31mの位置を示す信号を通信ネットワーク21に送信する。また、従軸機構32は、サーボドライバ32d、従軸であるサーボモータ32mおよびエンコーダ(信号生成器)32eを含み、サーボドライバ32dがサーボモータ32mを駆動し、エンコーダ32eがサーボモータ32mの位置を示す信号を通信ネットワーク21に送信する。
なお、図3(b)に示すように、主軸機構31のサーボモータ31mと、従軸機構32のサーボモータ32mとは同一筐体によって機構的に固定されており、主軸および従軸である2つのサーボモータ31m・32mはガイド上を協調して平行移動する(ガントリー機構)。
図2に戻って、プロセッサ5はメモリ17を含み、機能ブロックとしての、従軸指令位置算出部10、従軸補正量算出部11、補正後指令位置算出部13、従軸位置信号生成部14、動作開始処理部15、および主軸シフト部16を有する。換言すれば、プロセッサ5は、モーション制御プログラムを実行することで、これら各部の機能を実現する。
主軸機構31および従軸機構32それぞれは、通信ネットワーク21およびインターフェース19を介してプロセッサ5に接続されている。ユーザ端末40は、インターフェース19を介してプロセッサ5に接続されている。
主軸機構31は、主軸位置情報(エンコーダ31eのパルス信号に応じた角度や距離)を、通信ネットワーク21およびインターフェース19を介して、主軸シフト部16に送信する。従軸機構32は、従軸位置情報(エンコーダ32eのパルス信号に応じた角度や距離)を、通信ネットワーク21およびインターフェース19を介して、従軸補正量算出部11に送信する。
主軸シフト部16は、主軸位置情報と、制御周期Nにおける時間T1[N]よび時間T2[N]とを用いて、例えば式1に示すように制御周期Nにおける主軸速度Vm[N]を用いて、制御周期Nにおける主軸シフト量(T1+T2間の主軸の移動量)を算出することができる。
主軸シフト量[N]=Vm[N]×(T1[N]+T2[N])・・・式1
あるいは、例えば式2に示すように主軸の平均加速度Am[N]を用いて主軸シフト量を算出することができる。
主軸シフト量[N]=Am[N]×(T1[N]+T2[N])/2・・・式2
ここでは、主軸位置を主軸シフト量だけ進める方向にシフトさせてシフト後主軸位置とする。
なお、主軸シフト量[N]とは制御周期Nにおける主軸シフト量のことを意味しており、Vm[N]、T1[N]およびT2[N]はすべて制御周期Nにおける値である。
従軸指令位置算出部10は、シフト後主軸位置と、主軸位置情報とを用いて従軸指令位置を算出する。例えば、ギア動作による同期演算方式の場合、ギア比Gにより制御周期Nにおける従軸指令位置は式3により求めることができる。
従軸指令位置[N]=従軸指令位置[N−1]+G×(シフト後主軸位置[N]−シフト後主軸位置[N−1])・・・式3
このように、シフト後主軸位置を用いることで、制御周期Nにおける主軸側の遅れ(T1+T2)による同期ずれが補償される。
従軸補正量算出部11は、従軸指令位置から算出される制御周期Nにおける従軸指令位速度Vs[N]と、時間T3[N]および時間T4[N]と、例えば式4の方法により制御周期Nにおける補正量(T3[N]+T4[N]の間の従軸移動量)を算出する。
従軸補正量[N]=Vs[N]×(T3[N]+T4[N])・・・式4
あるいは、制御周期Nにおける従軸指令加速度As[N]より算出することができる。
従軸補正量[N]=As[N]×(T3[N]+T4[N])/2・・・式5
補正後指令位置算出部13は、従軸指令位置を補正量だけ戻して補正後指令位置とし、補正後指令位置を、従軸位置信号生成部14に入力するとともに、補正量と補正後指令位置とを、メモリ17およびユーザ端末40のユーザプログラムに通知する。
従軸位置信号生成部14は、補正後指令位置と、従軸位置情報とを用いて従軸位置信号を生成する。
ここで、従軸位置信号に基づく速度が従軸の最高速度を超えない場合には、この従軸位置信号を、インターフェース19および通信ネットワーク21を介して従軸機構32に入力(伝達)する。従軸位置信号は、入力からT4後に従軸機構32に反映される。
従軸位置信号に基づく速度が従軸の最高速度を超える場合には、最高速度でも余る余剰移動量が規定量未満か否かをさらに判定し、規定量未満であれば、従軸位置信号を最高速度に基づく値に設定し直した上で従軸機構32に入力する。この場合、余剰移動量は次周期以降に繰り越すものとする。なお、余剰移動量が規定量以上であれば、異常と判断して従軸機構32の動作を停止させる。
このように、従軸指令位置を補正量だけ戻して補正後指令位置を算出し、これに基づく従軸位置信号を従軸機構32に入力することで、従軸側の遅れ(T3+T4)による同期ずれを補償することができる。
なお、図10に示すように、時間T2は、プロセッサにおける処理の周期である。プロセッサ5は、まず、期間IOで主軸や従軸の位置情報等を取り込み、期間UPGでユーザプログラムを実行してモーション制御命令FBを起動し(モーション制御命令FBの出力変数はこの時点で更新される)、期間MCでモーション制御命令FBに従ってモーション制御プログラムによるモーション演算を行って従軸位置信号等の指令を生成し、次周期のIO期間に従軸位置信号を出力(送信)する。
また、従軸補正量を、例えば図10に示されるMC演算の中で実行してもよい。ユーザは図10に示されたファンクションブロック(FB)を使って従軸の遅れを補正することになるが、この場合のファンクションブロックの実現形態を図11(a)に示す。
図11(a)は、本実施の形態の制御装置で実行されるユーザプログラムの一例を示す図である。図11(a)に示すように、ユーザプログラムは、ラダープログラムの形式で定義されており、ファンクションブロックFBを含む。ファンクションブロックFBは、実行順序が到来すると、対応するライブラリプログラム(または、ライブラリプログラムの対応するコード)を呼び出して実行することを指定するための命令である。言い換えれば、各ファンクションブロックに対応するプログラム実体であるライブラリプログラムが予め用意されており、プロセッサは、プログラムに従って、ライブラリプログラムを適宜呼び出して実行することになる。ファンクションブロックの入力には例えば従軸の指令位置を構造体のメンバ変数として有する従軸の軸変数のみを指定する。従軸補正量はファンクションブロックの内部処理、もしくはファンクションブロックによって実行内容が指示されるMC演算にて演算する。
また、従軸補正量を図10のユーザプログラム(UPG)で演算してもよい。この場合の図11(b)に示すファンクションブロックの入力値として従軸の指令位置と従軸補正量を指定する。ファンクションブロックの実行前に従軸指令位置の補正演算を行った後、ファンクションブロックの入力に従軸の軸変数と従軸補正量を指定する。
時間T1〜4の計測方法については、例えば、日本国特許第4894961号に記載の手段を用いれば一定の制御サイクルで通信回路の送受信が行えるため、この通信回路の制御サイクルからT1〜T3の遅れを算出することができる。さらに、従軸にステップ上の指令を出力した場合の従軸エンコーダの変化からT4を同定することができる。
なお、メモリ17には前回の補正量と前回の補正後指令位置が保存されているため、従軸位置信号の出力が何らかの原因で強制停止したときでも、従軸機構32は直近の補正後指令位置に留まることが可能である。また、ユーザは、ユーザプログラムに通知された各周期の補正量および補正後指令位置を監視することができる。
なお、動作開始処理部15は、同期動作の開始時に、従軸機構32を、直近の補正後指令位置を基準として動作させるか、あるいは、直近の補正前の従軸指令位置を基準として動作させるかを、デフォルトの設定、あるいはユーザの入力に応じて決定する。
さらに、動作開始処理部15は、従軸機構32の動作開始時にその状態を判定し、異常であればその旨を外部に報知し、従軸機構32を動作させない。さらに、動作開始処理部15は、従軸機構32が主軸機構31に同期する動作以外の動作を始めるときに、メモリ17に記憶された補正量をゼロに戻す。
図4のフローチャートに、前記したプロセッサ5の処理手順を示す。プロセッサ5は、モーション制御プログラムを実行することで以下の各処理を行う。
まず、ステップS1で主軸動作を開始し、ステップS2で、従軸機構32を、前回の補正後指令位置を基準として動作させるか否かを判定する。ステップS2でYESの場合には、前回の補正後指令位置を基準として従軸の動作を開始させる(ステップS3)。ステップS2でNOの場合には、前回の補正前の指令位置を基準として従軸の動作を開始させる(ステップS4)。
次いでステップS5に進み、従軸の状態が正常か否かを判定する。ステップS5でNOの場合は、ステップS16に進んで従軸を異常停止させる(エンド)。ステップS5でYESの場合は、主軸位置情報を取得する(ステップS6)。
次いで、シフト後主軸位置を算出する(ステップS7)。次いで、従軸指令位置を算出する(ステップS8)。次いで、補正量の算出および補正量の保存を行う(ステップS9)。次いで、補正後指令位置の算出および保存を行う(ステップS10)。
次いで、従軸位置信号の生成を行う(ステップS11)。次いで、ステップS12で最高速度を超えないか否かを判定し、ステップS12でYESの場合は、従軸位置信号を従軸のサーボドライバに送信する(S15)。ステップS12でNOの場合は、さらに、超えた分の移動量が規定量未満か否かを判定する(ステップS13)。ステップS13でNOの場合は、ステップS16に進んで従軸を異常停止させる(エンド)。ステップS13でYESの場合は、ステップ14に進んで、従軸位置信号を最高速度に基づく値に設定し直し(超えた分の移動量は次周期以降に繰り越し)、これを従軸機構32のサーボドライバへ送信する(ステップS15)。
前記の説明は主軸機構が実在の物であるがこれに限定されない。図5のように、主軸を仮想のもの(プロセッサ5が作成する仮想主軸)としてもよい。すなわち、従軸機構32は、サーボドライバ32d、サーボモータ32m(従軸)およびエンコーダ(信号生成器)32eを含み、従軸機構42は、サーボドライバ42d、サーボモータ42m(従軸)およびエンコーダ(信号生成器)42eを含み、従軸機構32のサーボモータ32mと、従軸機構42のサーボモータ42mとは同一筐体によって機構的に固定されており、2つのサーボモータ32m・42mはガイド上を協調して平行移動する(ガントリー機構)。
この場合は主軸位置のシフトを必ずしも行う必要がなくなるため、主軸シフト部16における主軸シフト量をゼロとして、図4のステップS7を実行することもできる。
実施の形態1のモーション制御システム1では、主従軸機構を図6のように構成することもできる。すなわち、平行移動するワークWとこれらを搬送する搬送モータ112・114と、ワークWの位置情報を計測するメジャリングロール140(主軸)とを主軸機構とし、回転動作するロータリカッター102・104と、ベルト106によってこれらと同期回転するサーボモータ110(従軸)と、サーボモータ110を駆動するサーボドライバ144とを従軸機構とする。ここでは、ロータリカッター102・104が同期回転して、その周の一部に形成されている刃でワークWを切断する。
メジャリングロール140による主軸位置(回転角)情報およびサーボモータ110による従軸位置(回転角)情報は、通信ネットワーク21を介して同期制御装置3(図2参照)のプロセッサ5に入力される。プロセッサ5の処理内容については、上述のとおりである。
〔実施の形態2〕
実施の形態2では、主軸側の遅れ(T1+T2)による同期ずれと、従軸側の遅れ(T3+T4)による同期ずれをまとめて補償する。
図7に示すように、実施の形態2の同期制御装置3のプロセッサ5は、メモリ17と、機能ブロックとしての、従軸指令位置算出部10、従軸補正量算出部11、補正後指令位置算出部13、従軸位置信号生成部14、および動作開始処理部15とを含む。主軸機構31および従軸機構32それぞれは、通信ネットワーク21およびインターフェース19を介してプロセッサ5に接続され、ユーザ端末40は、インターフェース19を介してプロセッサ5に接続されている。
主軸機構31は、主軸位置情報を、通信ネットワーク21およびインターフェース19を介して、従軸指令位置算出部10に送信する。従軸機構32は、従軸位置情報を、通信ネットワーク21およびインターフェース19を介して、従軸補正量算出部11に送信する。
従軸指令位置算出部10は、時間T1および時間T2と、主軸位置情報とを用いて従軸指令位置を算出する。ここでは、主軸位置を、T1+T2間の主軸の移動量だけ進めた上で従軸指令位置を算出する。主軸シフト量の算出には、例えば、前記式1あるいは式2を用いることができる。こうすることで、主軸側の遅れ(T1+T2)による同期ずれが補償される。
従軸補正量算出部11は、従軸指令位置と、時間T3および時間T4と、主軸位置情報および従軸位置情報とを用いて補正量(T3+T4間の従軸移動量)を算出する。従軸指令位置の算出には、例えば、前記式3を用いることができ、従軸補正量の算出には、例えば、前記式4または式5を用いることができる。
補正後指令位置算出部13は、従軸指令位置を補正量だけ戻して補正後指令位置とし、補正後指令位置を、従軸位置信号生成部14に入力するとともに、補正量と補正後指令位置とを、メモリ17およびユーザ端末40のユーザープログラムに通知する。
従軸位置信号生成部14は、補正後指令位置と、従軸位置情報とを用いて従軸位置信号を生成する。
ここで、従軸位置信号が従軸の最高速度を超えない場合には、これを、インターフェース19および通信ネットワーク21を介して従軸機構32に入力(伝達)する。従軸位置信号は、入力からT4(従軸の遅れ時間)後に従軸機構32に反映される。
従軸位置信号に基づく速度が従軸の最高速度を超える場合には、最高速度でも余る余剰移動量が規定量未満か否かをさらに判定し、規定量未満であれば、従軸位置信号を最高速度に基づく値に設定し直した上で従軸機構32に入力する。この場合、余剰移動量は次周期以降に繰り越すものとする。なお、余剰移動量が規定量以上であれば、異常と判断して従軸機構32の動作を停止させる。
このように、従軸指令位置を補正量だけ戻して補正後指令位置を算出し、これに基づく従軸位置信号を従軸機構32に入力することで、従軸側の遅れ(T3+T4)による同期ずれを補償することができる。
なお、動作開始処理部15は、同期動作の開始時に、従軸機構32を、直近の補正後指令位置を基準として動作させるか、あるいは、直近の補正前の従軸指令位置を基準として動作させるかを、デフォルトの設定、あるいはユーザの入力に応じて決定する。
さらに、動作開始処理部15は、従軸機構32の動作開始時にその状態を判定し、異常であればその旨を外部に報知し、従軸機構32を動作させない。さらに、動作開始処理部15は、従軸機構32が主軸機構31に同期する動作以外の動作を始めるときに、メモリ17に記憶された補正量をゼロに戻す。
図8のフローチャートに、前記したプロセッサ5の処理手順を示す。
まず、ステップS1で主軸動作を開始し、ステップS2で、従軸機構32を、直近の補正後指令位置を基準として動作させるか否かを判定する。ステップS2でYESの場合には、直近の補正後指令位置を基準として従軸の動作を開始させる(ステップS3)。ステップS2でNOの場合には、直近の補正前の指令位置を基準として従軸の動作を開始させる(ステップS4)。
次いでステップS5に進み、従軸の状態が正常か否かを判定する。ステップS5でNOの場合は、ステップS15に進んで従軸を異常停止させる(エンド)。ステップS5でYESの場合は、主軸位置情報を取得する(ステップS6)。
次いで、従軸指令位置を算出する(ステップS7)。次いで、補正量の算出および補正量の保存を行う(ステップS8)。次いで、補正後指令位置の算出および保存を行う(ステップS9)。
次いで、従軸位置信号の生成を行う(ステップS10)。次いで、ステップS11で最高速度を超えないか否かを判定し、ステップS11でYESの場合は、従軸位置信号を従軸のサーボドライバに送信する(S14)。ステップS11でNOの場合は、さらに、超えた分の移動量が規定量未満か否かを判定する(ステップS12)。ステップS12でNOの場合は、ステップS15に進んで従軸を異常停止させる(エンド)。ステップS12でYESの場合は、ステップ13に進んで、従軸位置信号を最高速度に基づく値に設定し直し(超えた分の移動量は次周期以降に繰り越し)、これを従軸機構のサーボドライバへ送信する(ステップS14)。
なお、実施の形態2においても、主軸機構および従軸機構を、図5や図6のように構成することができる。
〔実施の形態の3〕
図9(a)に示すように、実施の形態3のモーション制御システム1は、図示しないプロセッサを含むPLC(プログラマブルロジックコントローラ)3と、ターミナル8を含む通信ネットワーク21(例えば、EtherCAT(登録商標))と、主軸であるサーボモータ31mと、これを駆動するサーボドライバ31dと、従軸である3つのサーボモータ32mと、これらを駆動する3つのサーボドライバ32dと、エンコーダ44eとを備える。
ここで、PLC3の通信ポート19aが通信ネットワーク21のターミナル8に接続され、PLC3のUSBポート19aまたはLANポート19bがユーザ端末40(情報処理装置)に接続され、エンコーダ44eは、主従軸であるサーボモータ31m・32mの位置情報等を通信ネットワーク21を介してPLC3に送信する。
なお、PLC3のプロセッサの処理は実施の形態1または2で示したプロセッサ5のそれと同様である。また、PLC3のプロセッサが仮想的に主軸を作成する場合は、図9(b)のように、4つのサーボモータ32mを従軸とする構成も可能である。
以上のように、本制御装置は、主軸に従軸を同期させる制御装置であって、前記主軸の位置情報を用いて従軸の指令位置を算出し、前記従軸に対して前記指令位置を出力する工程において、前記制御装置から前記従軸への前記指令位置の伝送による遅れと従軸の遅れとを前記指令位置の補正によって補償するプロセッサを備える。
本制御装置の次なる構成では、前記プロセッサは、前記指令位置と、従軸の位置情報と、前記出力の伝送に要する伝送時間と、前記従軸の遅れ時間とを用いて前記補正を行う。
本制御装置の次なる構成では、前記補正にかかる補正量と補正後の指令位置を記憶するメモリを備え、プロセッサの出力が強制終了されたときに、従軸は直近の補正後の指令位置に留まることが可能である。
本制御装置の次なる構成では、前記強制終了の後に出力を再開する場合に、直近の補正後の指令位置を基準として前記補正を行うか、直近の補正前の指令位置を基準として前記補正を行うかの選択が可能である。
本制御装置の次なる構成では、前記プロセッサは、前記従軸が主軸に同期する動作以外の動作を行うときにメモリに記憶された補正量をゼロに戻す。
本制御装置の次なる構成では、前記プロセッサは、前記指令位置と、従軸の位置情報とをパラメータとして含む演算式を用いて前記補正を行う。
本制御装置の次なる構成では、従軸位置によって前記従軸の遅れ時間が異なる場合に、前記プロセッサは、従軸の位置情報と補正量との関係を規定するテーブルを参照する。
本制御装置の次なる構成では、前記プロセッサは、従軸の位置情報が前記テーブルに記載されていない場合に直線補間あるいは曲線補間によって前記補正にかかる補正量を算出する。
本制御装置の次なる構成では、前記プロセッサは、前記補正にかかる補正量をユーザプログラムに通知する。
本制御装置の次なる構成では、前記出力は従軸の指令位置を示す信号であり、前記プロセッサは、前記指令位置に基づく従軸速度が従軸の最高速度を超える場合に当該最高速度に基づく指令位置とし、前記最高速度では余る移動量を、以降の補正に繰り越す請求項1記載の制御装置。
本制御装置の次なる構成では、前記最高速度では余る移動量が一定量を超える場合に、前記プロセッサは、従軸を異常としてその動作を停止させる。
本制御装置の次なる構成では、前記主軸および従軸それぞれとプロセッサとがネットワークを介して接続され、前記プロセッサは、前記主軸の位置情報がネットワークを介してプロセッサに入力されるのに要する時間と、プロセッサが主軸の位置情報を受けてから前記指令位置の出力までに要する時間とによって生じる同期ずれを、主軸の位置の仮想的なシフトによって補償する。
本制御装置の次なる構成では、前記主軸および従軸それぞれとプロセッサとがネットワークを介して接続され、前記プロセッサは、前記主軸の位置情報がネットワークを介してプロセッサに入力されるのに要する時間と、プロセッサが主軸の位置情報を受けてから前記指令位置の出力までに要する時間と、前記出力がネットワークを介して従軸に入力されるのに要する時間と、前記従軸の遅れ時間とによって生じる同期ずれを、前記指令位置の補正によって補償する。
本同期制御方法は、主軸の位置情報を用いて従軸の指令位置を算出し、従軸に対して前記指令位置に応じた出力を行うことで、前記主軸に従軸を同期させる同期制御方法であって、前記従軸への指令位置の出力の伝送および従軸の遅れに起因する同期ずれを、前記指令位置の補正によって補償するファンクションブロックを使用する。
本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、前記実施の形態を技術常識に基づいて適宜変更したものやそれらを組み合わせて得られるものも本発明の実施の形態に含まれる。
本発明に係る制御装置は、例えば、FA(ファクトリーオートメーション)機器に好適である。
1 モーション制御システム
3 同期制御装置(PLC)
5 プロセッサ
10 従軸指令位置算出部
11 従軸補正量算出部
13 補正後指令位置算出部
14 従軸位置信号生成部
15 動作開始処理部
16 主軸シフト部
17 メモリ
19 インターフェース
21 通信ネットワーク
31 主軸機構
31m サーボモータ(主軸)
32 従軸機構
32m サーボモータ(従軸)
40 ユーザ端末
110 サーボモータ(従軸)
140 メジャリングロール(主軸)

Claims (12)

  1. 主軸に従軸を同期させる制御装置であって、
    前記主軸の位置情報を用いて従軸の指令位置を算出し、前記従軸に対して前記指令位置を出力する工程において、前記制御装置から前記従軸への前記指令位置の伝送による遅れと従軸の遅れとを前記指令位置の補正によって補償するプロセッサと、
    前記補正にかかる補正量と補正後の指令位置を記憶するメモリを備え
    プロセッサの出力が強制終了されたときに、従軸は直近の補正後の指令位置に留まることが可能であり、
    前記強制終了の後に出力を再開する場合に、直近の補正後の指令位置を基準として前記補正を行うか、直近の補正前の指令位置を基準として前記補正を行うかの選択が可能である制御装置。
  2. 前記プロセッサは、前記指令位置と、前記出力の伝送に要する伝送時間と、前記従軸の遅れ時間とを用いて前記補正を行う請求項1記載の制御装置。
  3. 前記プロセッサは、前記従軸が主軸に同期する動作以外の動作を行うときにメモリに記憶された補正量をゼロに戻す請求項記載の制御装置。
  4. 前記プロセッサは、前記指令位置をパラメータとして含む演算式を用いて前記補正を行う請求項2記載の制御装置。
  5. 従軸位置によって前記従軸の遅れ時間が異なる場合に、前記プロセッサは、従軸の位置情報と補正量との関係を規定するテーブルを参照する請求項1記載の制御装置。
  6. 前記プロセッサは、従軸の位置情報が前記テーブルに記載されていない場合に直線補間あるいは曲線補間によって前記補正にかかる補正量を算出する請求項記載の制御装置。
  7. 前記プロセッサは、前記補正にかかる補正量をユーザプログラムに通知する請求項1記載の制御装置。
  8. 前記出力は従軸の補正後の指令位置を示す信号であり、
    前記プロセッサは、前記指令位置に基づく従軸速度が従軸の最高速度を超える場合に当該最高速度に基づく指令位置とし、前記最高速度では余る移動量を、以降の補正に繰り越す請求項1記載の制御装置。
  9. 前記最高速度では余る移動量が一定量を超える場合に、前記プロセッサは、従軸を異常としてその動作を停止させる請求項記載の制御装置。
  10. 前記主軸および従軸それぞれとプロセッサとがネットワークを介して接続され、
    前記プロセッサは、前記主軸の位置情報がネットワークを介してプロセッサに入力されるのに要する時間と、プロセッサが主軸の位置情報を受けてから前記指令位置の出力までに要する時間とによって生じる同期ずれを、主軸の位置の仮想的なシフトによって補償する請求項1記載の制御装置。
  11. 前記主軸および従軸それぞれとプロセッサとがネットワークを介して接続され、
    前記プロセッサは、前記主軸の位置情報がネットワークを介してプロセッサに入力されるのに要する時間と、プロセッサが主軸の位置情報を受けてから前記指令位置の出力までに要する時間と、前記出力がネットワークを介して従軸に入力されるのに要する時間と、前記従軸の遅れ時間とによって生じる同期ずれを、前記指令位置の補正によって補償する請求項2記載の制御装置。
  12. 主軸の位置情報を用いて従軸の指令位置を算出し、従軸に対して前記指令位置に応じた出力を行うことで、前記主軸に従軸を同期させる同期制御方法であって、
    前記従軸への指令位置の出力の伝送および従軸の遅れに起因する同期ずれを、前記指令位置の補正によって補償するファンクションブロックを使用し、
    メモリに前記補正にかかる補正量と補正後の指令位置を保存し、
    出力が強制終了されたときに、従軸は直近の補正後の指令位置に留まることが可能であり、
    前記強制終了の後に出力を再開する場合に、直近の補正後の指令位置を基準として前記補正を行うか、直近の補正前の指令位置を基準として前記補正を行うかを選択する同期制御方法。
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