JP6496646B2 - トンネル覆工コンクリート片剥落防止構造及びこの剥落防止工法 - Google Patents
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Description
本発明に使用されるエポキシ樹脂ポリマーセメントモルタルは、エポキシ樹脂と水系硬化剤と骨材及びセメントとから成り、該エポキシ樹脂ポリマーセメントモルタルをコンクリート表面に0.5〜1.5kg/m2塗布して硬化させて下地調整層を形成する。該エポキシ樹脂ポリマーセメントモルタルの有機材料成分量は1〜30重量%であり、有機材料成分が1重量%未満では、下地調整層の上に塗付して硬化させて形成する補強層との接着が不十分と成り、有機材料成分量が30重量%超では、下地調整層と以下に説明する補強層及び上塗り層とで構成される塗膜全体の延焼性、自己消火性及び発生ガスの安全性が不十分となる。また、塗布量が0.5kg/m2未満ではコンクリート表面の孔を埋めることが困難となり、1.5kg/m2超では有機材料成分が増加し、自己消火性及び発生ガスの安全性が不十分と成る。
本発明に使用される補強層用接着剤は、エポキシ樹脂と硬化剤と水酸化アルミニウムを含み有機材料成分量が40〜60重量%であって、上記下地調整層の上に0.8〜1.5kg/m2塗付して以下に示す質量が100g/m2以下の補強用メッシュシートを貼り付けて硬化させることにより補強層を形成する。塗付量が0.8kg/m2未満では補強用メッシュシートを被覆することが困難となって剥落防止性能が不十分となり、1.5kg/m2超では有機材料成分が増加し、自己消火性及び発生ガスの安全性が不十分と成る。また有機材料成分量が40重量%未満では剥落防止性能が不十分となり、60重量%超では有機材料成分が増加し、自己消火性及び発生ガスの安全性が不十分と成る。
補強層用接着剤に使用する水酸化アルミニウムは、化学式Al(OH)3又はAl2O3・3H2Oで示される粉体であり、補強層に自己消火性を付与する。水酸化アルミニウムの付着水分としては0.01重量%以上のものが好ましく、0.01重量%未満では十分な自己消火性を得ることが難しい。市販品としてはハイジライトH−100−ME(商品名、昭和電工株式会社製、平均粒径D50:73μm、比表面積:0.2m2/g、付着水分:0.02重量%、かさ密度:1.3g/cm3)がある。水酸化アルミニウムの補強層用接着剤100重量部中の含有量は10〜40重量%が好ましく、10重量%未満では自己消火性及び発生ガスの安全性が不十分と成り、40重量部超では剥落防止性能が不十分となる。
本発明の補強層の形成に使用する補強用メッシュシートは、質量が100g/m2以下、厚さが0.3mm以上であることが好ましい。質量が100g/m2超では貼り付け時の作業性及び仕上がり性が不十分と成り、厚さが0.3mm未満では十分な剥落防止性能が得られない。市販の補強用メッシュシートとしては、KTV7226Y 100R(厚さ:0.37mm、質量:84g/m2、ビニロン製、日東紡績株式会社製)がある。
本発明に使用する水性シリコーン樹脂塗料は、オルガノポリシロキサン系樹脂エマルジョンを主剤とし、グリシジル基含有シリコーンオリゴマーを硬化剤とするものを使用することが出来る。該主剤と硬化剤は所定の配合比で混合した際の有機材料成分が40〜60重量%であり、上記補強層の上に0.08〜0.15kg/m2で塗付して硬化させて上塗り層を形成する。市販の水性シリコーン樹脂塗料としては、ジョリシールJDB−85M(商品名、アイカ工業株式会社製、主剤と硬化剤の重量配合比:15:1、有機材料成分量:50重量%)がある。
エポキシ樹脂ポリマーセメントモルタルのエポキシ樹脂としてダイナミックレジンJDE−962Aを、水系硬化剤としてダイナミックレジンJDE−962Bを、骨材としてJISG5901 100号のけい砂を、セメントとして普通ポルトランドセメントを使用し、エポキシ樹脂:水系硬化剤:骨材:セメント=1:3:3.84:4.16(重量比)で均一に混合して表1に示す塗布量にて評価項目に記載の下地に塗付して硬化させ下地調整層を形成する。該エポキシ樹脂ポリマーセメントが硬化後、補強層用接着剤のエポキシ樹脂としてJDB−895E SAを、同硬化剤としてJDB−895E SBを使用してエポキシ樹脂:硬化剤=5:4(重量比)で均一に混合して補強層用接着剤とした上で、表1に示す塗布量にてエポキシ樹脂ポリマーセメントの硬化により形成された下地調整層の上にまず塗付し、次に補強用メッシュシートとしてKTV7226Y 100Rを貼り付け、さらに同補強層用接着剤を表1に示す塗布量にて該補強用メッシュシート上に塗付する。次に該補強層用接着剤が硬化後、その上に水性シリコーン樹脂塗料として、ジョリシールJDB−85Mを表1に示す塗布量にて塗付して硬化させて上塗り層を形成して実施例1乃至実施例3のトンネル覆工コンクリート片剥落防止構造とした。
比較例1としては上記水性シリコーン樹脂塗料に代えて溶剤型ポリウレタン樹脂塗料JDB−95U(主剤A:アクリルポリオール樹脂含有、有機材料成分:75重量%、硬化剤B:ポリイソシアネート、有機材料成分:25重量%、主剤A:主剤B=4:1(重量比))を使用し、表1に示す塗布量にて塗付して硬化させて上塗り層を形成し、他は実施例1と同じにして比較例1のトンネル覆工コンクリート片剥落防止構造とした。
比較例2としてはエポキシ樹脂ポリマーセメントモルタルに代えて、無溶剤エポキシ樹脂プライマー JDB−EXE(商品名、アイカ工業株式会社製、主剤:エポキシ樹脂(エポキシ当量:202、有機材料成分:97重量%、粘度:16.5Pa・s/25℃)、硬化剤:変性ポリアミン(活性水素当量;61、有機材料成分:85重量%、粘度:25mPa・s/25℃)、主剤:硬化剤=3:1(重量比))を使用し、表1に示す塗布量にて評価項目に記載の下地に塗付して硬化させ下地調整層を形成する。該下地調整層の上に、実施例1の補強層用接着剤に代えて、水酸化アルミニウムを含まないエポキシ樹脂接着剤JDB−790S(商品名、アイカ工業株式会社製、主剤:エポキシ樹脂(エポキシ当量:196、有機材料成分:97重量%、粘度:50Pa・s/20℃)、硬化剤:変性ポリアミン(活性水素当量;194、有機材料成分:29重量%、ちょう度:250/20℃)、主剤:硬化剤=1:1(重量比))を使用し、表1に示す塗布量にてまず塗布し、次ぎに補強用メッシュシートとしてKTV7226Y 100Rを貼り付け、さらに同エポキシ樹脂接着剤を表1に示す塗布量にて該補強用メッシュシート上に塗付する。次に該エポキシ樹脂接着剤が硬化後、その上に水性シリコーン樹脂塗料として、ジョリシールJDB−85Mを表1に示す塗布量にて塗付して硬化させて上塗り層を形成して比較例2のトンネル覆工コンクリート片剥落防止構造とした。
比較例3としては、表記比較例2の水性シリコーン樹脂塗料に代えて溶剤型アクリルウレタン樹脂塗料JDB−95U(主剤A:アクリルポリオール樹脂含有、有機材料成分:75重量%、硬化剤B:ポリイソシアネート、有機材料成分:25重量%、主剤A:主剤B=4:1(重量比))を使用し、表1に示す塗布量にて塗付して硬化させて上塗り層を形成し、他は比較例2と同じにして比較例3のトンネル覆工コンクリート片剥落防止構造とした。
JIS A 5372(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)付属書5に規定する上ぶた式U形側溝(ふた)の1種呼び名300(400×600×60mm)(以下、「U形ふた」という。)のコンクリート中央部裏面を、φ100mmの形状かつ55mm±3mmの深さで、コンクリート用コアカッターにより切り込みを入れる。表面を、サンディング処理し、この処理面に実施例1乃び比較例1乃至比較例3のトンネル覆工コンクリート片剥落防止構造を形成し、NEXCO試験方法734−2011(トンネル関係試験方法)に準じて試験を行ない、最大荷重を押し抜き最大荷重(kN)とした。
23℃下でJISA5371の300mm×300mm×厚さ60mmの乾燥したコンクリート平板(ケット水分計HI−520コンクリートレンジにて5%以下)の表面をサンディング処理し、該処理面に、実施例1及び比較例1乃至比較例3のトンネル覆工コンクリート片剥落防止構造を形成する。その後23℃、RH50%条件下にて、7日間養生し、建研式接着力試験器により、40×40mm部分の積層状態のコンクリート片剥落防止構造とコンクリート平板との付着強度(N/mm2)を測定した。
600mm×900mm×12mmの不燃材料(繊維混入ケイ酸カルシウム板)の上に、実施例2、実施例3及び比較例1乃至比較例3のトンネル覆工コンクリート片剥落防止構造を形成する。試験体を45度角度に固定し、メッケルバーナーの位置を試験体の下部から300mmの中心部、バーナー火口から試験体までの距離を65mmに成るように調整する。火炎温度は試験開始から30秒以内に1200℃以上を有するものとし、試験時間は10分とした。バーナーの炎を取り去ってから炎が消えるまでの時間及び燃え広がった範囲を計測した。判定基準としては、消炎時間が30秒以下が自己消火性有りとし、延焼範囲の上端方向は600mm以下が延焼性無しとする。
600mm×900mm×12mmの不燃材料(繊維混入ケイ酸カルシウム板)の上に、実施例2、実施例3及び比較例1乃至比較例3のトンネル覆工コンクリート片剥落防止構造を形成する。該試験体を建築基準法にある「避難上有害な煙又はガスを発生しないこと」が確認できる試験方法(一般財団法人建築試験センターが定めた「防耐火性能試験・評価業務方法書」に基づくガス害性試験)に従い試験した。判定基準はマウスの平均行動停止時間が6.8分以上であるときに発生ガスの安全性有りとする。
評価結果を表2に示す。
Claims (2)
- トンネル覆工コンクリート片の剥落防止構造であって、コンクリート表面に有機材料成分量が1〜30重量%のエポキシ樹脂ポリマーセメントモルタルを0.5〜1.5kg/m2塗布して硬化させて成る下地調整層と、該下地調整層の上にエポキシ樹脂と硬化剤と水酸化アルミニウムを含むエポキシ樹脂組成物から成り有機材料成分量が40〜60重量%の補強層用接着剤を0.5〜1.5kg/m2塗付して質量が100g/m2以下の補強用メッシュシートを貼り付け、補強層用接着剤が硬化して成る補強層と、該補強層の上に有機材料成分量が50重量%以下の水性シリコーン樹脂塗料を0.08〜0.15kg/m2で塗付して硬化させて成る上塗り層とから成り、全体として有機材料成分量が25〜50重量%であることを特徴とするトンネル覆工コンクリート片剥落防止構造。
- トンネル覆工コンクリート片の剥落防止工法であって、コンクリート表面に有機材料成分量が1〜30重量%のエポキシ樹脂ポリマーセメントモルタルを0.5〜1.5kg/m2塗布し硬化後、エポキシ樹脂と硬化剤と水酸化アルミニウムを含むエポキシ樹脂組成物から成り有機材料成分量が40〜60重量%の補強層用接着剤を0.5〜1.5kg/m2塗付して質量が100g/m2以下の補強用メッシュシートを貼り付け、補強層用接着剤が硬化後、有機材料成分量が50重量%以下の水性シリコーン樹脂塗料を0.08〜0.15kg/m2塗付して硬化させ、全体として有機材料成分量が25〜50重量%であることを特徴とするトンネル覆工コンクリート片剥落防止工法。
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