JP3236664B2 - 導水路トンネル構造および導水路トンネルの補修方法 - Google Patents
導水路トンネル構造および導水路トンネルの補修方法Info
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Description
ネルの他、農業用水路、上下水道、工業用水、河川放水
路等に用いられる導水路トンネル構造、および導水路ト
ンネルの補修方法に関するものである。特に、長期の使
用に耐え得る補強構造を有する圧力導水路トンネル、お
よび長期の使用により、洗掘、亀裂等の劣化が生じた覆
工コンクリート層を補修し、あるいは補強することがで
きる圧力導水路トンネルの補修方法に関するものであ
る。
路、上下水道、工業用水、河川放水路等に用いられる圧
力導水路トンネルは、長期の使用により老朽化し、ある
いはなんらかの原因によって損傷を受け、その覆工コン
クリート層内面に摩耗、洗掘、亀裂、欠損等の劣化が生
じる。このような劣化は、漏水を発生させ破壊にいたる
ことがある。また、内水圧あるいは外圧に対する圧力導
水路トンネルの強度を低下させたり、通水可能量の減少
等を引き起こす。このような劣化が生じた圧力導水路ト
ンネルの覆工コンクリート層内面に対しては、補修、補
強等を施す必要があり、従来から、圧力導水路トンネル
の変状、老朽化等の程度に応じて、改築、改修、補強、
補修等の措置が採られている。そして、圧力導水路トン
ネルの変状、老朽化等の状態、程度、規模により、ま
た、周囲の立地、環境等の社会的条件、施工条件、設計
条件およびその変化などに応じて、種々の工法が採用さ
れている。
全断面あるいは部分区間を撤去し、これを造り直すもの
であり、大規模な工事となってしまう問題がある。ま
た、従来より、既設覆工コンクリートの残っている耐力
を活用して補強あるいは補修を行う方法として、樹脂、
スチールファイバ混入モルタル、スチールファイバ混入
コンクリート等を既設覆工コンクリート層表面に吹き付
ける吹き付け工法、樹脂モルタル、スチールファイバ混
入モルタル等を表面に塗布する塗布(塗り付け)工法、
打設工法、張付工法が採用されている。
来の吹き付け工法、塗布(塗り付け)工法、打設工法、
張付工法には、次のような問題があった。
さくなり、必要通水量を確保できなくなる。 (2) モルタル、コンクリ−ト層が薄いため、そのマトリ
ックスの性状から大きな耐摩耗性は期待できず、土砂流
入部、流れの方向が変わる部分近辺では耐久性がきわめ
て低下してしまう。 (3) 材料の強度特性、薄い構造性等から大きな強度の補
強は期待できず、特に、内水圧による引っ張り応力に対
して強度上の問題がある。 (4) 内水圧に対する引っ張り抵抗力が小さいため、既設
覆工コンクリートのクラック部に対する止水効果も期待
できない。
が、表面粗度の改良効果はさほど期待できない。打設し
たコンクリートの表面より、その粗度係数は大きく、や
はり通水量減少の問題がある。 (2) 材料特性、薄い構造性等から、長期にわたる耐摩耗
性は期待できず、また、大きな耐久性もない。 (3) 材料の強度特性、薄い構造性等から、大きな強度の
補強は期待できず、特に、内水圧による引っ張り応力に
対して強度上の問題がある。 (4) 内水圧に対する引っ張り抵抗力が小さいため、既設
覆工コンクリートのクラック部に対する止水効果も期待
できない。
り、必要通水量を確保できなくなる。 (2) 比較的薄いコンクリート構造、施工上の制限等によ
り、コンクリートの特性により高い耐摩耗性は期待でき
ない。混和剤を加えることによって高強度、高い耐摩耗
性を得ようとすればコスト高となってしまう。 (3) 比較的薄い構造上、内水圧に対する比較的低い引っ
張り抵抗力等から、既設覆工コンクリートのクラック部
に対する止水効果はさほど期待できない。ことに、その
背面の地山の力学特性が小さく、内水圧に対する変位拘
束が小さい地山では、その限界ひずみの大きさから止水
効果はほとんど期待できない。 (4) ニードルビーム型と同規模の大きな型枠を必要と
し、長く深く入った場所で施工する場合には、コンクリ
ートポンプ圧送に伴う問題、あるいはコンクリート等の
軌道による運搬等の問題も生じ、大規模な工事となって
しまう。また、これに伴って工事工程が長くなり、工期
も長期化する可能性も高い。 (5) 弾性係数等の材料諸特性の相違から、設計、施工お
よび養生条件、環境の変化により、既設覆工コンクリー
ト層と補強および補修のために施工されるコンクリート
層との間にクラックが多発するおそれがある。
作業となるため、それぞれのトンネル断面に合わせた専
用の伏設、組み立て機械を必要とし、内空断面が小さく
なるため、通水可能量が小さくなり、必要通水量を確保
できなくなる。 (2) 比較的薄いコンクリート構造、施工上の制限等によ
り、コンクリートの特性により高い耐摩耗性は期待でき
ない。混和剤を加えることによって高強度、高い耐摩耗
性を得ようとすればコスト高となってしまう。また、鋼
板張り付けの場合には、その構造系から、内外水圧に対
する大きな止水効果は得られるが、その反面、外水圧に
対しては、薄い部材厚では大きな耐力が得られず、その
外水位の高さによっては、内水圧上必要とする以上の材
料厚さになったり、補強材の取り付けを要したりして、
既設覆工コンクリートの残された耐力が有効に活用され
ず、工費としても大きくなり不経済である。 (3) コンクリート製プレキャスト版組み立て方式などで
は、比較的薄い構造上、内水圧に対する比較的低い引っ
張り抵抗力等から、既設覆工コンクリートのクラック部
に対する止水効果はさほど期待できない。ことに、その
背面の地山の力学特性が小さく、内水圧に対する変位拘
束が小さい地山では、その限界ひずみの大きさから止水
効果はほとんど期待できない。 (4) 曲線加工された比較的重量の大きな部材を必要箇所
に搬入しなければならず、軌道施設や特殊車両などの専
用の運搬設備が必要となり、困難で危険度の高い作業と
なるとともに、施工延長が短いと、固定的に要する設備
費用から不経済性がさらに大きくなる。 (5) 曲率加工された鋼板の片面溶接による接合から、施
工誤差や変状、変形等に伴うトンネル断面の変化に十分
追随できず、それ等が激しい場合は特殊加工が多くなる
し、余裕幅を大きく取らなければならず、断面の縮少が
大きくなる。また、溶接による部材ひずみを小さくする
ための補助部材の取付けや、溶接方法としなければなら
ず、その作業に複雑さが伴い施工費が高くなる。 (6) 弾性係数等の材料諸特性の相違から、設計、施工お
よび養生条件、環境の変化により、材料によっては、既
設覆工コンクリート層と補強および補修のために施工さ
れるプレキャストパネル材等の層との間に注入されるモ
ルタルおよびセメントペースト等にクラックが多発する
おそれがある。
止水効果および内水圧に対する高い抵抗力を有し、か
つ、通水可能量が小さくならず、低コスト、短期間で施
工することのできる導水路トンネル構造および導水路ト
ンネルの補修方法を提供することを目的とする。
するためになされたものであり、請求項1記載の導水路
トンネル構造は、内壁面に覆工されたコンクリート層内
表面に、高強度樹脂接着剤を用いて、基盤クロスの表面
に強化繊維が固着された強化繊維シートを貼り付けたも
のである。
求項1における強化繊維シートとして、高弾性炭素繊
維、高強度炭素繊維、ガラス繊維等の無機強化繊維材
料、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエチレン
繊維等の有機強化繊維材料からなる群から選択される少
なくとも一つの材料を用いたことを特徴とするものであ
る。
求項1におけるシート材が、ガラス等の繊維からなる基
盤クロスの表面に、強化繊維を一方向に配列して樹脂粘
着剤により固着してなることを特徴とするものである。
は、内壁面に覆工された既設のコンクリート層の内面
に、高強度樹脂接着剤を用いて、基盤クロスの表面に強
化繊維が固着された強化繊維シートを貼り付け、水流面
の補修、防水およびトンネルの構造的補強機能を持たせ
たものである。
は、請求項4において用いられる強化繊維シートとし
て、高弾性炭素繊維、高強度炭素繊維、ガラス繊維等の
無機強化繊維材料、アラミド繊維、ポリアリレート繊
維、ポリエチレン繊維等の有機強化繊維材料からなる群
から選択される少なくとも一つの材料を用いたことを特
徴とするものである。
は、請求項4において用いられるシート材が、ガラス等
の繊維からなる基盤クロスの表面に、強化繊維を一方向
に配列して樹脂粘着剤により固着してなるものであるこ
とを特徴とするものである。
は、基盤クロスの表面に一方向に配列され固着された強
化繊維の方向を亀裂および剥離、目地切れ等の延長方向
に対し直角に、あるいは、水路トンネルの周方向に合致
させた状態で、前記シート材を水路トンネルの内面全体
に貼り付けることを特徴とするものである。
おいては、覆工コンクリート層内表面に、高強度樹脂接
着剤を用いて高い引っ張り耐力を有する強化繊維シート
が貼り付けられているため、既設覆工コンクリート層の
残されている耐力を活用しながら、特に内水圧に対する
強度を充分高めることができ、大きな補強効果が得られ
る。また、覆工コンクリート層の摩耗、欠損、クラッ
ク、洗掘、目地切れ等の欠陥に対する補修効果が得られ
て漏水が確実に防止され、耐摩耗性も向上する。さら
に、強化繊維シートはきわめて薄いため、強化繊維シー
トを設けることによるトンネルの有効断面積の減少はわ
ずかであり、また、内面の粗度係数を小さくすることが
できる。その結果、通水可能量を減少させず改善するこ
とが可能となる。また、この場合、強化繊維シートは、
基盤クロスの表面に強化繊維が固着されたものであるの
で、単に強化繊維のみをシート状にした場合に比較して
ある程度の厚さが確保でき、取り扱い性がよく、覆工コ
ンクリート内表面に容易に貼り付けることができる。
ては、強化繊維シートが、高弾性炭素繊維、高強度炭素
繊維、ガラス繊維等の無機強化繊維材料、アラミド繊
維、ポリアリレート繊維、ポリエチレン繊維等の有機強
化繊維材料という極めて高い引っ張り耐力、高強度、高
靭性を有する材料により形成されているため、高い作用
内水圧あるいは外圧に対して、より高いクラックの止水
性、より大きな補強効果が得られる。
ては、強化繊維シートが、ガラス等の繊維からなる基盤
クロスの表面に、強化繊維を一方向に配列して樹脂粘着
剤により固着した構造を有し、その超高強度の強化繊維
を高強度樹脂接着剤で固結するため、極めて高い強度、
靭性を付与することができる。
においては、内壁面に覆工された既設のコンクリート層
の内面に、高強度樹脂接着剤を用いて極めて薄い強化繊
維シートを貼り付けているため、補修により、既設覆工
コンクリート層の残されている耐力を活用しながら、特
に内水圧に対する強度が高く、クラックの止水性のすぐ
れた導水路トンネル構造を、低コスト、短期間で得るこ
とができる。また、本発明の方法により補修された導水
路トンネルによれば、覆工コンクリート層の摩耗、欠
損、クラック、洗掘、目地切れ等の欠陥に対する補修効
果が得られて漏水が確実に防止されるばかりでなく、耐
摩耗性も向上する。さらに、強化繊維シートを設けるこ
とによるトンネルの有効断面積の減少がわずかであり、
内面の粗度係数は小さくなるため、通水可能量を減少さ
せず改善することができる。また、状況によっては、通
水可能量を大きくでき、再開発の可能性を大きくするこ
とができる。また、この場合、強化繊維シートは、基盤
クロスの表面に強化繊維が固着されたものであるので、
単に強化繊維のみをシート状にした場合に比較してある
程度の厚さが確保でき、取り扱い性がよく、覆工コンク
リート内表面に容易に貼り付けることができる。
においては、強化繊維シートとして、高弾性炭素繊維、
高強度炭素繊維、ガラス繊維等の無機強化繊維材料、ア
ラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエチレン繊維等
の有機強化繊維材料を用いるものであるため、高い作用
内水圧あるいは外圧に対しきわめて高いクラックの止水
性、耐摩耗性、通水可能量の改善が得られるなど、より
大きな補強と補修の効果が得られる。
は、ガラス等の繊維からなる基盤クロスの表面に、強化
繊維を一方向に配列して樹脂粘着剤により固着したシー
ト材を用い、その超高強度の強化繊維を高強度の樹脂接
着剤で固結するものであるため、覆工コンクリート層に
極めて高い強度、靭性を付与することができる。
においては、基盤クロスの表面に一方向に配列され固着
された強化繊維の方向を亀裂および剥離、目地切れ等の
延長方向に対し直角に、そして、水路トンネルの周方向
に合致させた状態で、請求項6におけるシート材を水路
トンネルの内面全体に貼り付けるようにしたため、内水
圧に対し優れた補強効果およびクラックの止水効果が得
られる。
の補修方法を、添付図面を参照しながら詳細に説明す
る。図1は本発明の高圧用円形断面の導水路トンネル構
造の一実施例を示す断面図である。この図において、1
1は馬蹄形断面の掘削坑が形成された地山であり、この
トンネル掘削坑内壁面には、覆工コンクリート層12が
打設され、その内部に円形断面のトンネル坑が形成され
ている。また、この覆工コンクリート層12の円形断面
トンネル坑の内表面には、樹脂接着剤14を介して、強
化繊維シート13が貼り付けられている。
図である。図2に示されているように、覆工コンクリー
ト層12の内表面に樹脂接着剤14を介して貼り付けら
れた強化繊維シート13は、ガラス等の繊維からなる基
盤クロス21aの表面に強化繊維22aを一方向に配列
して樹脂粘着剤23により固着したものであって、さら
にその上に、同じガラス等の繊維からなる基盤クロス2
1bの表面に強化繊維22bを一方向に配列して樹脂粘
着剤23により固着して一体とした強化繊維シートを、
亀裂や目地切れ等に対し直角方向に、あるいはトンネル
の周方向にあわせて樹脂接着剤14により貼り合わせた
ものであり、一層の厚みを0.2〜1.0mm程度とし
たものである。この基盤21a,21bを形成する強化
繊維としては同一種類のものでも異なる種類のものでも
かまわないが、たとえばガラス繊維などが用いられ、そ
の単位面積当たりの重量は5〜100g/m2 程度であ
ることが好ましい。また、基盤クロス21a,21bの
表面に固着される強化繊維22a,22bとしては、高
弾性炭素繊維、高強度炭素繊維、ガラス繊維等の無機強
化繊維材料、もしくは、アラミド繊維、ポリアリレート
繊維、ポリエチレン繊維等の有機強化繊維材料等の各種
高強度繊維が用いられる。
ができる高弾性炭素繊維、高強度炭素繊維、ガラス繊維
等の無機強化繊維材料、アラミド繊維、ポリアリレート
繊維、ポリエチレン繊維等の有機強化繊維材料として
は、それぞれ、東燃株式会社製のFORCAトウシート
FTS−C1−17(弾性率:25,000kg/c
m幅,引張り強度:380kg/cm幅)、FTS−C
0−20(弾性率:28,000kg/cm幅,引張り
強度:280kg/cm幅)、FTS−AT−20(弾
性率:9,500kg/cm幅,引張り強度:350k
g/cm幅)、FTS−VB−20(弾性率:9,50
0kg/cm幅,引張り強度:330kg/cm幅)、
FTS−GE−30(弾性率:10,500kg/cm
幅,引張り強度:220kg/cm幅)等がある。
ているように、強化繊維22が覆工コンクリート層12
側となる状態で、かつ、強化繊維22の方向が亀裂、目
地切れ等に対し直角方向に、あるいは、導水路トンネル
の周方向に合致した状態で、樹脂接着剤14により前記
覆工コンクリート層12に貼り付けられている。これら
強化繊維シート13を、導水路トンネルの周方向、亀
裂、目地切れ等に対し直角方向および必要に応じて長手
方向に所定のラップ長を確保して重ね合わせ、順次張り
合わせることにより、トンネル全体がこれらシート13
により隙間なく覆われている。
構造の一実施例を示す断面図である。 この図におい
て、41は馬蹄形断面の掘削坑が形成された地山であ
り、このトンネル掘削坑内壁面には、覆工コンクリート
層42が打設され、その内部に馬蹄形断面のトンネル坑
が形成されている。この実施例の導水路トンネル構造
は、馬蹄形断面のトンネル坑の下部に充填コンクリート
層45を打設し、円形断面のトンネル坑を形成したもの
である。この円形断面のトンネル坑の内表面には、樹脂
接着剤44を介して、強化繊維シート43が貼り付けら
れている。この強化繊維シート43の覆工コンクリート
層42あるいは充填コンクリート層45への接着は、図
1に示されている実施例の場合と同様の方法により行な
うことができる。
試験時間の関係を示すグラフである。図5において、ト
ーシートは東燃株式会社製の強化繊維シートであり、T
S−1は炭素繊維シート(FTS−CO−20)を、T
S−2はアラミド繊維シート(FTS−AT−20)
を、TS−3はポリアリレート繊維シート(FTS−V
B−20)をスリヘリ試験供試体表面に、各々2層直交
するように積層施工した場合のスリヘリ係数の変化を示
している。この図から明らかなように、本発明において
用いられる強化繊維シートは、非常に小さなスリヘリ係
数を持つ材料、すなわち、きわめて高い耐摩耗性を持つ
材料である。
および高強度炭素繊維の試験時のゲージ長と平均引っ張
り強度との関係を示すグラフである。この図から明らか
なように、これら高弾性炭素繊維あるいは高強度炭素繊
維は、引っ張り応力の作用間隔長が短くなるにしたがっ
て引っ張り強度がきわめて高くなる特性を有している。
また、導水路トンネル構造における覆工コンクリート内
表面に生じるクラックの幅は通常数mm程度である。し
たがって、このような高弾性炭素繊維、高強度炭素繊維
等を用いた強化繊維シートを、数mm程度の幅のクラッ
クを覆うように、強化繊維22の方向がクラックの幅方
向に一致するように固着すれば、このクラック部分にき
わめて大きな引張り耐力を付与することができる。
ス21a,21bに固着する樹脂粘着剤23としては、
樹脂接着剤14と相溶性の高いエポキシ樹脂、不飽和ポ
リエステル樹脂等の硬化剤を含まないもの等が用いられ
る。また、強化繊維シート13を覆工コンクリート層1
2に貼り付けるための樹脂接着剤14としては、東燃株
式会社製のFR−E1,FR−E2等のエポキシ樹脂、
同社製のFR−V1等のビニルエステル系樹脂、あるい
は東邦天然ガス株式会社製のCP300,CF−5等の
エポキシ系樹脂等が用いられる。覆工コンクリート層4
としては、無筋コンクリートを用いることもできるし、
SFRC(スチールファイバー混入コンクリート)、減
量化した鉄筋コンクリート等の鉄筋コンクリートを用い
ることもできる。
ば、覆工コンクリート層内表面に、高い引っ張り耐力、
高い耐摩耗性を有する強化繊維シートが設けられている
ため、既設覆工コンクリート層の残されている耐力を活
用しながら、特に内水圧に対する強度を充分高めること
ができ、大きな補強効果が得られる。また、覆工コンク
リート層の摩耗、欠損、クラック、洗掘、目地切れ等の
欠陥に対する補修効果が得られて漏水が確実に防止さ
れ、耐摩耗性も向上する。さらに、強化繊維シートを設
けることによるトンネルの有効断面積の減少がわずかで
あり、内面の粗度係数は小さくなるため、通水可能量を
減少させず改善することができる。
炭素繊維などの高弾性材を用いることにより、作用内水
圧による覆工コンクリート層の変位を抑制し、覆工コン
クリート層に発生する応力を小さくすることができる。
その結果、覆工コンクリート層へのクラックの発生が抑
えられ、たとえ、覆工コンクリート層にクラックが発生
しても、強化繊維シートの存在により、その特性から高
い止水性を得ることができる。また、高弾性炭素繊維、
高強度炭素繊維あるいはポリアリレート繊維等の、引っ
張り応力の作用間隔長が短くなるにしたがって引っ張り
強度が高くなる特性を生かして、高い内水圧力に対して
のクラックの止水効果および補強効果を効率良く得るこ
とができる。
ガラス等の繊維からなる基盤クロスの表面に、強化繊維
を一方向に配列して樹脂粘着剤により固着した構造であ
って、高強度の樹脂接着剤で固結することから、覆工コ
ンクリート層に極めて高い強度、靭性を付与することが
できる。しかも、強化繊維シートは、基盤クロスの表面
に強化繊維が固着されたものであるので、単に強化繊維
のみをシート状にした場合に比較してある程度の厚さが
確保でき、取り扱い性がよく、覆工コンクリート内表面
に容易に貼り付けることができる。これにより、低コス
ト、短工期での施工が可能となる。
について説明する。本実施例の補修方法は、図1もしく
は図4に示すように、老朽化あるいは損傷した既存覆工
コンクリート層12,42あるいは打設した充填コンク
リート層45の内面に、強化繊維からなるシート材1
3,43を樹脂接着剤14,44により貼り付けるよう
にしたものである。そのシート材13,43は、ガラス
等の繊維からなる基盤クロス21の表面に、さらに同一
または他の強化繊維22を一方向に配列して樹脂粘着剤
により予め固着して一体としたものであり、全体の厚み
が0.15〜1.0mm程度とされたものである。この
基盤クロ ス21を形成する繊維としてはたとえばグラ
ス繊維などを用い、この基盤クロス21の単位面積当た
りの重量は5〜100g/m2 程度とすることが好まし
い。
または図3に示しているように、強化繊維22が既設覆
工コンクリート層12,42側となる状態で、かつ、強
化繊維22の方向を亀裂および剥離、目地切れ等の延長
方向に対し直角、あるいは、水路トンネルの周方向に合
致させた状態で、上記の樹脂接着剤14を用いて貼り付
けていく。そして、それらシート材13,43を水路ト
ンネルの周方向、亀裂や目地切れ等の直角方向、および
必要に応じて長手方向に所定のラップ長を確保して重ね
合わせて、順次貼り付けていくことにより、トンネル内
面全体をそれらシート材13,43により隙間なく覆っ
ていく。
まず、図7に示されているように、補修対象の既存覆工
コンクリート層12,42内壁面に対してレイタンスや
風化層を除去するべく、表面研磨と高圧ウォータージェ
ットもしくはエアブローを用いた洗浄や清掃を行ない、
次いで、クラックや目地切れ等の欠損部分、磨滅部分7
1に普通もしくは早強モルタル、あるいはエラストメリ
ットなどの樹脂系弾性モルタル等のモルタル72により
充填補修した後、樹脂接着剤14、44の付着強度を確
保するべく下地処理として、水性シラン系浸透型吸水防
止剤等の含浸性接着剤樹脂を用いてプライマー塗布を行
なう。
記樹脂接着剤14(たとえばグリース状のエポキシ樹
脂)を既存覆工コンクリート層12内壁面に塗布した
後、速やかにシート材13aを、強化繊維22aが既存
覆工コンクリート層12内壁面の一方向、たとえば、既
存覆工コンクリート層12の内周方向に一致するように
貼り付ける。トンネル内側から強化繊維22aを既存覆
工コンクリート層12の方向に沿ってしごいて樹脂接着
剤14をシート材13a全体に含浸させる。その後、同
様の方法によって、シート材13bを、強化繊維22b
が前記強化繊維22aの方向と直交するように、たとえ
ば、既存覆工コンクリート層12の長手方向に一致する
ように貼り付ける。さらにシート材上に樹脂接着剤14
を補充塗布し、所定の養生時間を確保して樹脂接着剤1
4を硬化させる。そして、流向急変部、落差工等の付近
の表面磨耗が激しい所など、必要に応じて、その特性に
対応する表層処理を施工すれば作業が完了する。また、
クラック等がある場合、まず、この部分を覆うように、
強化繊維22の方向がクラックの幅方向に一致するよう
に少なくとも1層以上のシート材を固着した後、前記シ
ート材13a,13bの接着工程を行なうことが好まし
い。こうすれば、クラック部分にきわめて大きな引張り
耐力を付与することができ、大きな補修、補強効果を得
ることができる。
果、補強効果が得られることもあるが、必要であれば、
図2に示されているように、シート材13を2層あるい
はそれ以上の多層にわたって重ねて貼り付けることによ
って、より大きな補修効果、補強効果が得られることは
もちろんである。そのようにシート材13を多層にわた
って重ねて貼り付ける場合には、少なくともいずれか1
層のシート材13の強化繊維22a,22bの方向をト
ンネルの周方向に合致させる方がよい。また、図2の実
施例においては、1層目の強化繊維シート13aの強化
繊維22aと2層目の強化繊維シート13bの強化繊維
22bとが互に平行になるように、2層の強化繊維シー
ト13a,13bを配置したが、これらが互に直交する
ように配置することも可能であることは言うまでもな
い。
るシート材13,43により亀裂および剥離、目地切れ
等を継ぎ込むようにしながら水路トンネルの内面全体を
覆うようにしたので、摩耗、欠損、クラック、洗掘、目
地切れ等の欠陥に対する十分な補修効果が得られて漏水
が確実に防止されることはもちろんのこと、引張り耐力
を付与し、特に、強化繊維22の方向を水路トンネルの
周方向に合致させることにより内圧に対する強度が十分
に高められ、優れた補強効果を得ることができる。
覆工コンクリート壁面12,42上に極めて薄いシート
材13,43を樹脂接着剤14,44により貼り付ける
のみであるので、仮にそれらシート材13,43を複層
に重ねて貼り付けたとしてもトンネルの有効断面積の減
少は無視できる程度であるし、また、シート材13,4
3の内面は粗度係数が0.009程度であってコンクリ
ート面(粗度係数は0.013程度である)より十分に
滑ら かであるので、補修により通水抵抗を低減させる
ことができる。したがって、上記方法により補修を行な
うことにより、通水量が減少してしまうどころか逆に増
大させ、再開発の可能性をも大きくすることができる。
基盤クロス21に強化繊維22を固着した構成となって
いるので、ある程度の厚さが確保されて取り扱いが容易
であるし、シート材13,43に対する樹脂接着剤1
4,44の含浸性も良好であるので、そのシート材1
3,43を樹脂接着剤14,44により貼り付ける作業
は極めて簡単に、人力あるいは機械化により行なうこと
ができる。したがって、従来の各種の補修方法に比して
施工性が格段に優れ、工事費が安価で済み、工期も大幅
に短縮することができる。
3の耐久性や繰り返し荷重に対する強度は極めて優れて
いるが、樹脂接着剤14,44の耐久性や強度は強化繊
維に比して劣るので、補修部分の耐久性は主として樹脂
接着剤14,44の耐久性により決定されてしまうこと
になる。このため、樹脂接着剤14,44として耐候性
が必ずしも十分ではないエポキシ樹脂を用いる場合、特
に補修部分が大気にさらされるような場合には、アクリ
ル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の耐候性に優れた
樹脂塗料によりコーティングを施すことによってエポキ
シ樹脂の劣化防止を図ることが望ましい。
にシート材を貼り付けるようにしたが、損傷が生じてい
る部分にのみ局所的に補修を施すことでも良い。
よれば、高い補強効果、高い止水効果、内水圧に対する
高い引張り抵抗力を付与し、かつ、通水可能量が小さく
ならず、低コスト、短期間で施工することのできる導水
路トンネル構造および導水路トンネルの補修方法を提供
することができる。
造の一実施例を示す断面図である。
る。
構造の一実施例を示す断面図である。
の関係を示すグラフである。
時のゲージ長と平均引っ張り強度との関係を示すグラフ
である。
補修、補強状態を示す拡大断面図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 圧力導水路トンネル内壁面に覆工された
既設のコンクリート層内表面に、高強度樹脂接着剤を用
いて、基盤クロスの表面に強化繊維が固着された強化繊
維シートを貼り付けたことを特徴とする導水路トンネル
構造。 - 【請求項2】 前記強化繊維シートとして、高弾性炭素
繊維、高強度炭素繊維、ガラス繊維等の無機強化繊維材
料、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエチレン
繊維等の有機強化繊維材料からなる群から選択される少
なくとも一つの材料を用いたことを特徴とする請求項1
記載の導水路トンネル構造。 - 【請求項3】 前記シート材は、ガラス等の繊維からな
る前記基盤クロスの表面に、前記強化繊維を一方向に配
列して樹脂粘着剤により固着してなるものであることを
特徴とする請求項1記載の導水路トンネル構造。 - 【請求項4】 導水路トンネル内壁面に覆工された既設
のコンクリート層の内面に、高強度樹脂接着剤を用い
て、基盤クロスの表面に強化繊維が固着された強化繊維
シートを貼り付け、水流面の補修、防水および構造的補
強機能を持たせたことを特徴とする導水路トンネルの補
修方法。 - 【請求項5】 前記強化繊維シートとして、高弾性炭素
繊維、高強度炭素繊維、ガラス繊維等の無機強化繊維材
料、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエチレン
繊維等の有機強化繊維材料からなる群から選択される少
なくとも一つの材料を用いたことを特徴とする請求項4
記載の導水路トンネルの補修方法。 - 【請求項6】 前記シート材は、ガラス等の繊維からな
る前記基盤クロスの表面に、さらに前記強化繊維を一方
向に配列して樹脂粘着剤により固着してなるものである
ことを特徴とする請求項4記載の導水路トンネルの補修
方法。 - 【請求項7】 基盤クロスの表面に一方向に配列され固
着された強化繊維の方向を亀裂および剥離、目地切れ等
の延長方向に対し直角に、そして水路トンネルの周方向
に合致させた状態で、前記シート材を水路トンネルの内
面全体に貼り付けることを特徴とする請求項6記載の導
水路トンネルの補修方法。
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---|---|---|---|
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JP3-281569 | 1991-10-28 | ||
JP28156991 | 1991-10-28 | ||
JP13930592A JP3236664B2 (ja) | 1991-10-28 | 1992-05-29 | 導水路トンネル構造および導水路トンネルの補修方法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05231095A JPH05231095A (ja) | 1993-09-07 |
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JP13930592A Expired - Fee Related JP3236664B2 (ja) | 1991-10-28 | 1992-05-29 | 導水路トンネル構造および導水路トンネルの補修方法 |
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-
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- 1992-05-29 JP JP13930592A patent/JP3236664B2/ja not_active Expired - Fee Related
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