《実施例1》
以下、図面を参照して本発明の画像形成装置の第一の実施形態を説明する。
《実施例1》
[画像形成部]
図1は本発明に従う画像形成装置100の一例の構成略図である。この画像形成装置100は中間転写方式、タンデム型の4色フルカラーの電子写真レーザプリンタであり、記録材Pにフルカラートナー像を形成してプリントアウトすることができる。記録材Pはトナー像が形成され得るシート状の記録媒体であり、普通紙、光沢紙、樹脂製シート、厚紙、葉書、封筒、OHPシート、印刷用紙・フォーマット紙などが挙げられる。以下、用紙と記す。
221は用紙Pに未定着トナー像を形成する画像形成部であり、並設された4つの画像形成ユニットとしてのプロセスカートリッジU(UY、UM、UC、UK)と、露光手段としてのレーザスキャナユニット2と、中間転写ベルトユニット3と、を有する。各カートリッジUは、それぞれ、回転ドラム型の感光体4と、感光体4に作用する電子写真画像形成プロセス手段としての帯電ローラ、現像器、クリ−ニング部材等(何れも不図示)を有する。
上記の各カートリッジUの感光体4に対して、それぞれ、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、ブラック(K)色のトナー像(現像剤像)が形成される。電子写真によるトナー像の形成原理・プロセスは公知であるからその説明は省略する。
そして、各カートリッジUの感光体4からユニット3の中間転写ベルト7に対して一次転写位置T1において一次転写ローラ6により上記4色のトナー像が順次に所定に重畳されて一次転写される。これによりベルト7上にフルカラートナー像が形成される。そのフルカラートナー像がベルト7と二次転写ローラ11との圧接部である二次転写位置T2において用紙Pに対して二次転写される。
用紙Pは給紙部(記録材の給送部)の用紙カセット8から給紙ローラ9の駆動で一枚分離給紙(給送)され、レジストローラ対10を含む搬送路にて二次転写ニップ部T2に対して所定の制御タイミングにて給送される。そして、トナー像の二次転写を受けた用紙Pが定着装置5に導入されて定着ニップ部で挟持搬送されることでトナー像の加熱定着を受ける。定着装置5を出た用紙Pは排出ローラ12によりフルカラー画像形成物として装置上面のトレイ13上に排出される。
モノクロなどモノカラー画像形成モードの場合にはその画像形成に必要なカートリッジUだけが画像形成動作し、他のカートリッジUは感光体4の空回転がなされるだけで画像形成動作はしない。
本実施例の画像形成装置100において用紙Pの装置内搬送はいわゆる中央基準搬送でなされる。この用紙搬送は、装置に使用可能(通紙可能)な用紙のうちいずれの用紙(大小どのような幅の用紙)も、用紙の幅方向の中心線を用紙搬送路の幅方向中央に合わせて通紙する形態のことである。
[制御ユニット]
図2に上記画像形成装置100の制御ユニット(制御部)200のブロック図を示す。装置100の各機構部は全てこの制御ユニット200によって統括的にコントロールされている。
制御ユニット200は、装置100内の各負荷の駆動、センサ類の情報収集解析、画像制御、そして操作部202即ちユーザインターフェースとのデータの交換の役割を担っている。制御ユニット200の内部構成は、上述した役割を担うために、CPU201aを搭載している。
CPU201aは、同様に制御ユニット200に搭載したROM201cに格納されたプログラムによって、予め決められた画像形成シーケンスに纏わる様々なシーケンスを実行する。また、その際、一次的または恒久的に保存することが必要な書き換え可能なデータを格納するために、RAM201bも搭載している。RAM201bには、例えば高圧制御部205への高圧設定値、後述する各種データ、装置100の操作部202からの画像形成指令情報などを保存する。RAM201bは図示しないバッテリー等により、装置100の電源が切られてもデータを保持する構成となっている。
操作部202は、ユーザにより設定された複写倍率、濃度設定値などの情報を得ることに加えて、装置100の状態、例えば画像形成枚数や画像形成中か否かの情報、ジャムの発生やその箇所等をユーザに示すためのデータを送出している。
装置100は、装置内部の各所にモータ、クラッチ/ソレノイド等のDC負荷及び、フォトセンサやマイクロスイッチ等のセンサを配置している。つまり、モータの駆動や各DC負荷を適宜駆動させることで、用紙Pの搬送や各ユニットの駆動を行っており、その動作を監視しているものが各種センサである。
そこで、制御ユニット200は、各種センサ類214からの信号をもとに、モータ制御部207により各モータ212をコントロールする。また同時に、DC負荷制御部208により、クラッチ(CL)/ソレノイド(SL)213を動作させて画像形成動作を円滑に進めている。各種センサ類214には後述する定着装置5の冷却機構300におけるシャッターHPセンサ305が含まれる。各モータ212には画像形成装置100のメインモータ(不図示)や、後述する定着駆動モータM1、冷却機構300におけるシャッター駆動モータM2等が含まれる。
また、高圧制御部205から各種高圧制御信号を高圧ユニット206に創出し、高圧ユニット206は各種帯電器である一次帯電器、転写帯電器、及び現像器内の現像ローラに適切な高圧を印加させている。
更に、後述するように、定着装置5の定着ローラ51にはローラを加熱するための熱源である定着ヒータ(加熱部材)211が内蔵されており、そのヒータ211はACドライバ210によってオン/オフ制御されている。ACドライバ210内にはヒータ211に電力供給(給電)を行うヒータ給電手段(給電部)としてのヒータSW280が備えられている。
また、定着ローラ51にはその温度を測定するための温度検知部材としてのサーミスタ204(204a・204b・204c)が設けられている。そして、A/D203によって、定着ローラ51の温度変化に応じたサーミスタ204の抵抗値変化を電圧値に変換した後、デジタル値として制御ユニット200に入力される。制御ユニット200はこの温度データをもとに前述のACドライバ210を制御する。
即ち、制御ユニット200のCPU201aはサーミスタ204の検知温度に基づいてヒータSW280からヒータ211への供給電力を制御して定着ローラ51の温度制御を行う温度制御部としても機能している。
また、後述する定着装置5の冷却機構300におけるファン301(L・R)はファン制御部215によってオン/オフ制御されている。また、画像制御部220は、パソコン等の外部ホスト装置250から入力される画像データに対して処理を行い、画像形成部221へと送られる。
[定着装置]
本実施例の定着装置5は加熱ローラ方式の装置であり、図3は同装置5の横断左側面模式図、図4は縦断正面模式図である。
ここで、本実施例において、定着装置5若しくはその構成部材に関して、正面側とは用紙入口側から見た面、背面側とはその反対側(用紙出口側)の面、左右とは装置を正面側から見て左(一端側)又は右(他端側)である。上下とは重力方向において上又は下である。上流側と下流側は用紙搬送方向aに関して上流側と下流側である。長手方向(または幅方向)や用紙幅方向とは、用紙搬送路面において、用紙搬送方向aに直交する方向に実質平行な方向である。短手方向とは用紙搬送路面において、用紙搬送方向aに実質平行な方向である。
この定着装置5は、用紙上(記録材上)の未定着のトナー像をニップ部Nで挟持搬送して加熱定着する加熱回転体(第1の回転体)としての定着ローラ51を有する。また、定着ローラ51との間にニップ部Nを形成して用紙Pを挟持搬送する加圧回転体(第2の回転体)としての加圧ローラ52を有する。また、定着ローラ51と加圧ローラ52を収容した定着フレーム(筐体)53を有する。また、端部昇温対策(非通紙部昇温対策)のために、定着ローラ51の幅方向(長手方向)の一端側と他端側の非通紙部(記録材の非通過部)をそれぞれ冷却する冷却手段としての冷却機構300を有する。
(1)定着ローラ51
定着ローラ51は円筒状(丸パイプ状)の剛性金属ローラであり、外周面にトナー離形層、或いは弾性層とトナー離形層が順に積層されて形成されている。ローラ中空部の中央部にはローラを加熱するためのヒータ(熱源)としてハロゲンヒータ211が配設されている。定着ローラ51は一端側と他端側の軸部51aがそれぞれフレーム53の幅方向の一端側と他端側の対向側板53L・53Rに対して軸受部材54を介して回転可能に軸受支持されて配設されている。
定着ローラ51の他端側の軸部51aには駆動ギアGが固着されている。このギアGに定着駆動モータM1の駆動力が駆動伝達機構(不図示)を介して伝達されることで定着ローラ51が図3において矢印R51の反時計方向に回転駆動される。
(2)加圧ローラ52
加圧ローラ52は芯金とその芯金周りに肉厚に形成された弾性層とを有する弾性ローラである。加圧ローラ52は定着ローラ51に対して実質平行に配列されており、一端側と他端側の軸部52aがそれぞれフレーム53の一端側と他端側の対向側板53L・53Rに対して軸受部材55を介して回転可能に軸受支持されて配設されている。
加圧ローラ52の一端側と他端側の軸受部材55はそれぞれの側の対向側板53L・53Rに対して定着ローラ51に近づく方向と遠のく方向とにスライド移動可能に配設されている。その一端側と他端側の軸受部材55がそれぞれ付勢機構(不図示)により定着ローラ51に近づく方向に移動付勢されている。これにより、加圧ローラ52が弾性層の弾性に抗して定着ローラ51に対して所定の加圧力をもって押し付けられて、定着ローラ51と加圧ローラ52との間に用紙Pの搬送方向aに関して所定幅のニップ部Nが形成されている。
加圧ローラ52は定着ローラ51が前記のように駆動されることで定着ローラ51の回転に従動して図3において矢印R52の時計方向に回転する。
(3)冷却機構300
冷却機構300は、装置に使用可能な最大幅サイズの用紙よりも幅狭の小サイズ用紙が導入された際の定着ローラ51の一端側と他端側の非通紙部(記録材の非通過部)の昇温(端部昇温)を冷却により緩和する機構部である。即ち、定着装置5に小サイズ用紙を連続通紙して多量に定着処理をした場合、ニップ部Nの通紙部領域(記録材の通過部)は用紙Pに熱が奪われるのに対して、非通紙部領域は熱が奪われない。そのため、非通紙部で非通紙部昇温が生じる。冷却機構300はこの定着ローラ51の両端部の非通紙部昇温領域を冷却する手段機構である。
本実施例の冷却機構300は定着ローラ51の非通紙部昇温領域を送風により冷却する送風冷却機構であり、定着ローラ51の加圧ローラ52側とは反対側に配設されている。
冷却機構300はフレーム53の一端側と他端側の対向側板53L・53R間に取り付けられた基板302を有する。この基板302の一端側と他端側に、それぞれ、開口部(送風口)303(L・R)が形成されている。また、基板302の外側には上記の開口部303(L・R)に対応した位置に吹き出し口を対応させて送風手段としての二つのファン301(L・R)とファン31(L・R)の送風をそれぞれ開口部303(L・R)へ導くダクト301aが配設されている。
また、基板302には、上記の一端側と他端側の開口部303(L・R)の開口幅を調整するための可動の調整部材としての一端側と他端側のシャッター304(L・R)が配設されている。一端側と他端側のシャッター304(L・R)はそれぞれラック部(不図示)を有しており、それらのラック部はピニオン306に噛合している。このピニオン306がステッピングモータ等で構成されるシャッター駆動モータM2によって正回転または逆回転される。
これにより、一端側と他端側のシャッター304(L・R)が定着ローラ51の幅方向において端部に向かう矢印S1方向または中央部に向かう矢印S2方向へと同期(連動)して用紙搬送の中央基準線(仮想線)Oを実質中心に対称移動する。即ち、対称移動制御されるシャッター304(L・R)により開口部303(L・R)の開口幅がそれぞれ用紙搬送の中央基準線を中心に狭広制御される。
一端側と他端側のシャッター304(L・R)の移動方向S1がそれぞれ開口部303(L・R)の開口幅をそれぞれ対称的に狭めていき、最終的に開口部303(L・R)を全閉する移動方向である。移動方向S2がそれぞれ開口部303(L・R)の開口幅をそれぞれ対称的に広げていき、最終的に開口部303(L・R)を全開する移動方向である。
L1は装置に使用可能な最大幅サイズの用紙の幅(最大通紙幅)を示しており、例えば310mm(A3たて送り相当)である。なお、最大通紙幅L1は定格値であり、実際的には所定の許容範囲内においてL1よりも大きい幅の用紙も通紙可能である場合もある。
L2はL1よりも幅狭の所定の小サイズ用紙の幅を示しており、例えば210mm(A4Rたて送り相当)を示している。本実施例の定着装置5は幅L2よりも更に小さい幅の用紙も通紙使用可能であるが、非通紙部昇温の緩和を上記の冷却機構300により対応できる用紙幅サイズは上記のL1未満でL2以上である。
制御ユニット200は装置に通紙する用紙の幅にあわせて、冷却機構300のシャッター304(L・R)およびファン301(F・R)を駆動制御する。この制御については後述する。
204a・204b・204cは定着ローラ51の表面温度を測定するためのサーミスタである。サーミスタ204aは、定着ローラ51の幅方向中央部の表面温度を検知する第一の温度検知部材である。以下、このサーミスタ204aを第一サーミスタと記す。
サーミスタ204bは、幅L2の用紙の通紙領域境界線(仮想線)よりも少し内側部における定着ローラ表面温度を検知する第二の温度検知部材である。以下、このサーミスタ204bを第二サーミスタと記す。
サーミスタ204cは、幅L1の用紙の通紙領域境界線(仮想線)よりも少し内側部における定着ローラ表面温度を検知する第三の温度検知部材である。以下、このサーミスタ204cを第三サーミスタと記す。
(4)定着動作
前述したように、定着ローラ51はモータ制御部207で制御されるモータM1の駆動力が駆動伝達機構を介して駆動ギアGに伝達されることで矢印R51の反時計方向に回転駆動される。この定着ローラ51の回転駆動に従動して加圧ローラ52が矢印R52の時計方向に回転する。
また、定着ローラ51のヒータ211にACドライバ210内のヒータSW280から給電がなされる。これにより、定着ローラ51がヒータ211の熱により内側から加熱される。定着ローラ51はこのヒータ211により最大通紙幅L1に対応する幅領域が加熱される。制御ユニット200は定着ローラ51の幅方向中央部の表面温度を検知する第一サーミスタ204aから入力する検知温度情報に基づいて定着ローラ51の表面温度を所定の定着温度に立ち上げる。そして、この定着温度が維持されるようにヒータ211に対する供給電力を制御して定着ローラ51の表面温度を温調する。
この定着装置状態において、画像形成部221の二次転写位置T2から未定着のトナー像tを担持している用紙Pが導入され、ニップ部Nで挟持搬送される。これにより、トナー像tおよび用紙Pが加熱加圧されることで、トナー像tが熱融解して用紙Pに固着画像として定着される。ニップ部Nを挟持搬送された用紙Pはニップ部Nの用紙出口において定着ローラ51の面から曲率分離して定着装置5から排出搬送されていく。
また、制御ユニット200は装置に通紙される用紙の幅サイズにあわせて冷却機構300のシャッター304(L・R)とファン301(F・R)の駆動を制御して用紙が小サイズ用紙である場合における非通紙部昇温を緩和する。
[非通紙部昇温対策]
(1)冷却機構の制御
シャッター304(L・R)は通紙される用紙の幅サイズに応じて開口部303(L・R)の開口幅を広狭するように移動してファン301(F・R)による冷却が不要な定着ローラ部分を覆い隠す移動部材である。
シャッター304(L・R)は図4のように開口部303(L・R)を十分にふさいだ移動位置をホームポジション(HP)としている。冷却機構300はシャッター304(L・R)がそのホームポジションに位置していることを検知するセンサ(シャッターHPセンサ)305を有する。
制御ユニット200は装置に通紙される用紙PがL1以上の幅の用紙であるときはシャッター304(L・R)がシャッターHPセンサ305で検知される図4のホームポジションの位置に位置制御する。即ち、開口部303(L・R)がシャッター304(L・R)で全閉状態にされる。
また、制御ユニット200は装置に通紙される用紙Pが幅L1未満で幅L2以上の用紙である場合には、図5や図6のように、その用紙幅に対応する所定の位置までシャッター304(L・R)をホームポジションからS2方向に移動させる。このシャッター304(L・R)の移動はモータM2の駆動量Dを制御することでなされる。これにより、通紙される用紙の幅サイズに応じて開口部303(L・R)の開口幅を広狭されてファン301(F・R)による冷却が不要な定着ローラ部分が覆い隠される。
また、装置に通紙される用紙Pが幅L2よりも小さい幅の用紙である場合には、シャッター304(L・R)がホームポジションから開口部303(L・R)を全開した位置までS2方向に移動するようにモータM2の駆動量Dを制御する。
図7は上記シャッター304(L・R)のより詳細な移動制御フロー図である。制御ユニット200は、画像形成装置100のプリント動作が始まると、シャッターHPセンサ305がシャッター304(L・R)を検知しているか判断する(S401)。センサ305がシャッター304(L・R)を検知し、通紙される用紙Pの幅がL1以上である判断されると(S402)、冷却機構300は正常と判断される(S410)。
装置に通紙される用紙Pの幅がL1未満と判断されると(S402)、定着ローラ51が非通紙部になる領域に相当する移動量D分、モータM2の駆動量を制御して、シャッター304(L・R)をS2方向に移動させる(S403)。S403の制御に伴ってシャッター304(L・R)がセンサ305に検知されなくなった場合(S404)は冷却機構300は正常と判断される(S410)。また、S403の制御後もシャッター304(L・R)がセンサ305で検知されている場合には(S404)、冷却機構300は異常(冷却手段が故障)と判断される(S411)。
S401にて、シャッター304(L・R)がセンサ305により検知されなかった場合には、シャッター304(L・R)をセンサ305で検知されるホームポジションの位置まで戻すシーケンスがなされる。即ち、制御ユニット200はシャッター304(L・R)をホームポジションに戻すS1方向に移動させるようにモータM2を駆動制御する(S405)。この制御に伴ってセンサ305がシャッター304(L・R)を検知した場合(S406)、モータM2の駆動を停止して、前述したS402を実行する。
S405の制御の実行から所定時間(Tmax)を経過した後もセンサ305がシャッター304を検知しなかった場合は(S408)、モータM2を停止し(S409)、冷却機構300は異常と判断される(S411)。
ここで、上記の所定時間Tmaxは、冷却機構300が正常である場合において、シャッター(L・R)が開口部303(L・R)を全開した位置(図5)から開口部303(L・R)を全閉した位置(図4)に戻るに要する時間よりも長い時間である。
制御ユニット200は、S410において、冷却機構300が正常と判断した場合には、画像形成部221のプリント動作を続行する。また、S410において、冷却機構300が異常と判断した場合には、画像形成部221のプリント動作を停止すると共に、定着装置5の異常を報知して点検を促すアラームや表示を操作部202や外部ホスト装置250の表示部にアナウンスする。
続いて、定着装置5の温度制御構成、非通紙部昇温が生じた際の温度推移、定着の温調制御フローを図8・図9を参照して説明する。
第一サーミスタ204aは、定着ローラ51の温調を行う為のサーミスタであり、定着ローラ51の幅方向において、装置に使用可能な用紙のうちいずれの用紙も通過する通紙部(通過部)の温度を検知する。そしてその検知温度情報を制御ユニット200にフィードバックしている。
第二サーミスタ204bは、通紙される用紙の幅がL2よりも小さい場合において冷却機構300では冷却出来ない定着ローラ51の非通紙部の温度を測定する為のサーミスタである。即ち、第二サーミスタ204bは、定着ローラ51の幅方向において、装置に使用可能な記録材のうち最大幅サイズの用紙よりも幅狭の所定の用紙が通過しない非通過部の温度を検知する。
第三サーミスタ204cは通紙される用紙の幅がL1よりも小さくL2以上である場合において冷却機構300で定着ローラ51の非通紙部を冷却する際に用いるサーミスタである。即ち、第三サーミスタ204cは、定着ローラ51の幅方向において、装置に使用可能な最大幅サイズの用紙よりも幅狭の用紙が給送されたときの非通紙部(非通過部)の温度を検知する。この第三サーミスタ204cの温度に応じてファン301(F・R)の動作が制御される。
制御ユニット200は、第一サーミスタ204aが所定の温度T3(定着可能温度:例えば180℃)未満で、且つ、第二サーミスタ204bが温度T3よりも高い所定の温度T2(例えば240℃)未満の時は、ヒータSW280をONする。
ここで、制御ユニット200は、通紙する用紙の種類、環境、定着ローラ51の温度などによりヒータSW280のON Duty(すなわちヒータ211に対する通電比率)を決定するが、本実施例では便宜的に約70%の通電としている。
通紙される用紙Pの幅がL2よりも小さい時は、その用紙Pにより第二サーミスタ204b付近の定着ローラ51の熱が奪われない。その為、第二サーミスタ204b付近の定着ローラ51の表面温度は上昇し、図8のα時点で、第二サーミスタ204bは所定の温度T2を超える。
そこで、制御ユニット200はヒータSW280を制御し、ヒータ211の通電を一時休止若しくは通電のDutyを低下させる。本実施例では、便宜的にヒータ211の通電を休止として記載する。それにより定着ローラ51の温度が全体的に下がる。
第一サーミスタ204aでの定着可能温度T3を下回る場合、制御ユニット200は画像制御部220を制御し、画像形成部221の動作を中断する。そして、用紙の給紙タイミング(給送タイミング)と温度制御部201aでの制御を変更するダウンシーケンスモードを実行する。
ダウンシーケンスモードは、連続プリント中において、定着ローラ51の通紙部の温度が定着性能を維持できる温度よりも下まわってしまうのを防ぐために用紙の搬送間隔を広げてプリントするシーケンスを行うモードである。あるいは定着ローラ51の非通紙部の温度が規定温度より上回ってしまうのを防ぐために、用紙の搬送間隔を広げてプリントするシーケンスを行うモードである。つまり、連続プリント中において、用紙カセット(給送部)8からの用紙Pの給送タイミングと温度制御部での制御を変更してプリントするシーケンスを行うモードである。
図9に上記で説明した内容のフローチャートを示す。プリントスタートすると、図7で説明した冷却機構300の動作及び異常確認が行われる(S701)。ファン301(F・R)の動作は図9のフローチャートから割愛しているが、第三サーミスタ204cの検知温度が温度T3以上で温度T2以下の所定の温度T2(例えば220℃)を上回らないように、ON/OFF制御がされている。ファン301(F・R)がON制御されることで図4や図5のように定着ローラ51の非通紙部に冷却風Aが作用して送風冷却がなされる。用紙幅がL2未満の場合この動作は必ずしも実施する必要はない。
続いて、動作モード選択(S711)、温調動作が開始される(S702)。動作モード選択(S711)は後述する。温調が開始されると、第一サーミスタ204aの温度がT1以下及び第二と第三サーミスタ204b・204cの温度がT2以下か判断され(S703、S704)、その判断によりヒータSW280がON若しくはOFFされる(S705、S709)。
更に、第一サーミスタ204aの温度がT3以上と判断されると(S706)、画像形成部221の動作が開始される(S707)。また、T3未満と判断されると画像形成部221の動作が中断される、若しくは開始されない(S710)。
上記の制御動作をプリント終了(S708)まで継続して行う。
続いて、画像形成装置100における画像形成速度(プロセス速度)が異なる場合の非通紙部昇温の遷移と、生産性について図10を用いて説明をする。
プロセス速度が通常速度(第一の画像形成速度での印刷)と通常速度よりもプロセス速度が遅い速度(第二の画像形成速度での印刷)の場合の2つのプロセススピードにおける定着の温調と、非通紙部昇温の遷移を図10の(a)に示す。ここで、通常速度は、例えば、A4横送りで50ppm相当である。以降、Normalと記す。遅い速度は、例えば、A4横送りで25ppm相当である。以降、Halfと記す。
プロセス速度がNormal時は、先に説明したとおり、第二サーミスタ204bの温度がT2に達するとダウンシーケンスに入り(α時点)、生産性(ppm)が低下する。
一方で、プロセス速度がHalf時は、Normal時と同じ用紙を用いる場合、定着の温調温度を下げる事が出来る。例えばHalf時の温度T1は180℃、Half時の温度T3は160℃程度に設定できる為に、ヒータSW280のON DutyはNormalの時の70%よりも小さく出来る(例えば45%)。そのため、第二サーミスタ204bの温度がT2に達する時間も長くなり、時間βまでダウンシーケンスに入らず動作する事が可能となる。
本実施例では、プロセス速度がNormal時は約15枚程度で、Half時は約30枚程度出力されるとダウンシーケンスに入る。
また、図10の(b)に示すように、ダウンシーケンスに入り最終的にたどり着く最低の生産性にも差があり、Normal時よりもHalf時の方が生産性が高い。本実施例では、Normal時4ppm、Half時8ppm程度である。これは、フィルム加熱方式等のオンデマンド定着では、熱容量が低い為に特に顕著となる。
その結果、図10の(c)に示すように約20枚以上連続して出力するジョブ(JOB)に於いては、半速モードでの出力のほうが結果的に早く出力される。
図11に図9にて説明を割愛したS711の動作モード選択に関して説明を行う。通紙される用紙Pの設定が普通紙など、プロセス速度がNormal時は以下の制御を行う(S900)。通紙される用紙Pの幅がL1(またはそれ以上)の場合は、非通紙部冷却をする必要がないので、プロセス速度をNormalとする。用紙幅がL1未満でL2以上の場合(S901、S902)、非通紙部を冷却する冷却機構300が正常に動作すれば(S903)、プロセス速度をNormalとする(S904)。
S902にて用紙幅がL2未満と判断された場合若しくは、S903にて冷却機構300に異常があると判断された場合、その用紙サイズでのプリントレングスが所定枚数N以上か判断される(S905)。プリントレングスは1回にプリントされる枚数(連続で実行されるプリント枚数)である。所定枚数N以上の場合はプロセス速度をHalfとし、それ以外はNormalとする。本実施例では、所定枚数Nは約20枚である。
上記の装置構成と制御をまとめると次のとおりである。第一の画像形成速度での印刷モードを有する。第一の画像形成速度よりも低い第二の画像形成速度での印刷モードを有する。連続した画像形成時に第二サーミスタ204bの検知温度が第一サーミスタ204aの温度検知部材よりも大きくなった場合に給送部8・9からの用紙の給送タイミングと温度制御部201aでの制御を変更するダウンシーケンスモードを有する。制御ユニット200は上記の3つのモードを切り替えて実行可能である。
そして、制御ユニット200は装置に使用される記録材の種類とプリントレングスから第一の画像形成速度で印刷するか第二の画像形成速度で印刷するか判断する。
用紙の種類は、第二サーミスタ204bの配設位置が非通過部となるような幅の用紙である。プリントレングスは、第一の画像形成速度による印刷よりも第二の画像形成速度での印刷の方が生産性が高くなるプリントレングスである。
定着ローラ51の幅方向において、装置に使用可能な最大幅サイズの用紙よりも小さい幅の記録材が給送されたときの非通過部の温度を検知する第三サーミスタ204cと、定着ローラ51の非通紙部を冷却する冷却機構300を有する。第二サーミスタ204bは定着ローラ51の幅方向において冷却機構300で冷却できない箇所に配置されている。制御ユニット200は、冷却機構300が故障したと判断した時、第二サーミスタ204bと共に第三サーミスタ204cでも定着ローラ51の非通紙部の昇温を検知する。
同じ坪量の用紙の場合、プロセス速度に応じて、定着に必要な温度が異なる。単位面積当たりに与える熱量が重要なためである。Half時の場合は、Normal時よりも低い温度で温調しているため、定着端部ローラ51の非通史部の温度も上がりにくくダウンシーケンスに入るタイミングが遅くなり、更に最低の生産性(ppm)も高い。ジョブのプリントレングスによっては、Halfで動作させたほうが生産性が高くなる。
上記の装置構成と制御により、定着装置の記録材の非通過部を有効に冷却出来ない場合でも、生産性の低下を最小限に抑える事が出来る。
《実施例2》
本発明の画像形成装置の第二の実施形態を説明する。図1〜図7で説明した画像形成装置構成、定着装置構成、冷却機構構成、及び非通紙部昇温によるダウンシーケンスに至るプロセスは、第二の実施形態においても同等の為説明を割愛する。
実施例1では、プリント動作を開始する時にプロセス速度をNormalにするか、Halfにするかの判断を行っているが、本実施例2ではダウンシーケンスに至ってからプロセス速度をHalfに切り替えるか否かを判断する。以下詳細を述べる。
プロセス速度をNormalからHalfに切り替える場合、システムにより異なるが10秒程度プリント動作が停止する。理由としては、Normal速度での作像された用紙が二次転写位置T2を通過するまで、画像形成ユニットU(UY、UM、UC、UK)、中間転写ベルトユニット3、露光手段としてのレーザスキャナユニット2の速度を変えることが出来ないためである。
図12は、プロセス速度がNormalのまま印刷を続けた場合と、ダウンシーケンスモードに入るタイミングでプロセス速度をHalfに切り替えた場合のプリント枚数を示す。ダウンシーケンスに入るタイミング(α時点)でプロセス速度がNromalからHalf速度に切り替わる場合、切り替え中は用紙Pの出力は停止する為、15枚付近で枚数の増加はない。その後、Halfの速度で動作させる事により、ダウンタイムに入るまでの時間が長くなり、最終的な生産性は向上する。
本実施例のケースでは、Normalで15枚程度プリントするとダウンシーケンスモードに入るため、その後5枚以上プリントがある場合はHalfに移行するとメリットが大きくなる。
図13に、普通紙(プロセス速度がNormal)且つ、非通紙部の冷却機構300では有効に冷却出来ない幅L2未満の用紙を通紙する場合のフローチャートを記載する。実施例1にて説明した非通紙部の冷却機構300の動作を行い(S1001)、温調を開始する(S1002)。温調が開始されると、第一サーミスタ204aの温度がT1以下、及び第二と第三サーミスタ204b、204cの温度がT2以下か判断される(S1003、S1004)。その判断によりヒータ制御SW280がON若しくはOFFされる(S1005,S1009)。
更に、第一サーミスタ204aの温度がT3以上と判断されると(S1006)、画像形成部221の動作が開始され(S1007)、プリント終了と判断されるまで画像形成部221の動作を継続する(S1008)。
S1006にて温度T3未満と判断され、画像形成が開始されていない場合は(S1010)、画像形成開始可能温度まで定着温度を上げるためにS1003に戻る。
S1010にて画像形成部221の動作が開始されていると判断された場合、残りのプリント枚数がN2枚以上(例えば5枚以上)ある場合は(S1011)、画像形成部221の動作を中断し、プロセス速度をHalfに切替える(S1012)。
その後、プリントが終了するまでプロセス速度がHalfでの画像形成部221の動作を継続する(S1013、S1014)。
S1011にて残りのプリント枚数がN2未満(例えば5枚未満)の場合は、プロセス速度がNormalのまま、プリント動作終了までダウンシーケンス動作を行う。
ここで、S1013、S1015はダウンシーケンスも含めた制御であるが、制御概要は図9で説明したものと本質は変わらない為、説明は割愛する。
上記の制御をまとめると次のとおりである。第一の画像形成速度での印刷モードを有する。第一の画像形成速度よりも低い第二の画像形成速度での印刷モードを有する。連続した画像形成時に第二サーミスタ204bの検知温度が第一サーミスタ204aの温度検知部材よりも大きくなった場合に給送部8・9からの用紙の給送タイミングと温度制御部201aでの制御を変更するダウンシーケンスモードを有する。制御ユニット200は上記の3つのモードを切り替えて実行可能である。
そして、制御ユニット200は、ダウンシーケンスモードの実行時、残りのプリントレングスから、第一の画像形成速度で印刷するか第二の画像形成速度で印刷するか判断する。
上記の装置構成と制御により、定着装置の記録材の非通過部を有効に冷却出来ない場合でも、生産性の低下を最小限に抑える事が出来る。
《他の実施例》
(1)定着装置5において、加熱回転体としての定着ローラ51の加熱方式は実施例の加熱部材としてハロゲンヒータ211を用いた形態のものに限られない。ローラ内部又は外部に励磁コイルを配設してローラ51を誘導加熱する方式、ローラ内周面や外周面に面状発熱体を配設してローラ51を加熱する方式、接触式または非接触式の加熱部材によりローラ51の外周面を外部加熱する方式などであってもよい。加圧回転体としての加圧ローラ52も加熱部材で加熱する装置構成であってもよい。
(2)加熱回転体と加圧回転体はローラ体に限られない。少なくとも一方を無端状のベルト(フィルム)の形態にした定着装置構成であってもよい。例えば、加熱回転体を無端状の定着ベルトとし、その定着ベルトの内周面に摺接する加熱体としての例えばセラミックヒータを配設する。そして、ヒータに定着ベルトを介して加圧回転体としての加圧ローラや加圧ベルトを当接させてニップ部を形成させた定着装置構成であってもよい。
(3)定着装置の非通紙部冷却はファンで行う系(送風冷却)で説明したが、ヒートパイプや、その他の冷却手段でも同様の効果が得られる。
(4)画像形成装置の画像形成部221は電子写真方式に限られない。静電記録方式や磁気記録方式の画像形成部であってもよい。また、転写方式に限られず、記録材に対して直接方式でトナー像を形成する構成のものであってもよい。
(5)記録材の搬送は中央基準搬送に限られず、所謂片側基準搬送であってもよい。