本発明の実施の形態となる打込機(空気圧工具)の構成について説明する。図1は、この打込機(空気圧工具)100の構成を示す断面図である。この打込機100によって、釘(止具部材)が下側に載置された被打込材W(板材等)に打ち込まれ、図1においては、釘が打ち込まれる軸方向に沿った断面図(一部透視図)が示されている。この打込機100においても、連続打ちモードと単発打ちモードの2つの動作モードが設定される。
この打込機100においては、圧縮空気を用いて図1における下側に向かって打込力を印加するための機構が設けられている。図1において、上下方向に延伸する略円筒形状のメインハウジング10の右側には、メインハウジング10と交差する方向に延伸し、作業者が把持するハンドル50が固定されている。ハンドル50の先端(図1における右端)には、圧縮空気を供給するためのエアホース(図示せず)が装着されるエアバルブ(図示せず)が設けられる。圧縮空気は、このエアバルブからハンドル50内に設けられた蓄圧室51に溜められ、メインハウジング10側に供給される。なお、エアバルブと蓄圧室51との間の空気経路にバネ圧と空気圧の差圧を用いる構成等の公知の減圧弁を設けることによって、蓄圧室51内に供給される圧縮空気の圧力を調整できる構成とすることもできる。
釘を下側に向かって打ち込む動作は、メインハウジング10の中心軸上に設けられたドライバブレード11によって行われる。ドライバブレード11は、図1において下側に移動することによって、その先端(下端)によって、釘を打ち込む。図1においては、この動作が行われる直前の状態(初期状態)が示されている。メインハウジング10の下側には、上下方向に延伸し釘及びドライバブレード11が通過するする射出路12が内部に設けられたノーズ13が設けられている。ドライバブレード11の下端は、射出路12の内部を上下方向に移動する。ノーズ13の最下端には、ノーズ13に沿って上下方向に摺動可能であり下側に付勢されたプッシュレバー14が装着されている。プッシュレバー14は、作業者がノーズ13の下端側を被打込材Wに当接させることによって、ノーズ13に沿って上側に移動する。また、複数の釘を収容するマガジン60がノーズ13の右側(ハンドル50と同じ側)に装着され、1回の動作毎に、マガジン60から1本の釘が自動的に射出路12に装填される。装填された釘は、下方向に、ドライバブレード11によって、打ち込まれる。
また、ハンドル50とメインハウジング10の連結部分の下側には、機械的に操作されるトリガ(トリガレバー)15が装着されており、その上側にはパイロットバルブ20が設けられている。上記の打ち込み動作は、パイロットバルブ20によって直接制御され、トリガレバー15が上側に引かれ(オンされ)、かつプッシュレバー14が上側に移動した場合に1回の打ち込み動作が開始される。
次に、メインハウジング10内におけるドライバブレード11の打ち込みの際の動作に関わる機構、及びその動作について説明する。
メインハウジング10内においては、円筒形状のシリンダ30の中に、上下方向に移動可能なピストン31が設けられている。ドライバブレード11は、ピストン31に固定され、打ち込み動作は、ピストン31が上死点から下死点に向かって急激に移動することによって行われる。この動作は、シリンダ30(メインハウジング10)内におけるピストン31の上側の空間である第1圧力室30Aに圧縮空気が蓄圧室51から導入されることによって行われる。図1においては、ピストン31が上死点側にある場合(打ち込み動作が行われる直前の状態)が示されている。
打ち込み動作は、シリンダ30の上部においてシリンダ30を囲むように設けられたメインバルブ16が開状態となることによって開始される。メインバルブ16は、図1において上下方向に移動可能なようにメインハウジング10内に設けられ、メインバルブ16が下側にある場合(閉状態)には第1圧力室30A中に圧縮空気は導入されず、メインバルブ16が下側から上側に移動した場合(開状態)には、蓄圧室51から第1圧力室30A中に圧縮空気が導入される構成とされる。メインバルブ16の上下方向における動き(開閉動作)も、圧縮空気を用いて行われ、この動作は、メインバルブ16と接続されたメインバルブ室10A内の気圧で定まり、この気圧はパイロットバルブ20によって制御される。
メインバルブ室10Aは、メインハウジング10内において、メインバルブ16の上側に形成されている。メインバルブ室10Aにおいては、スプリング17が、メインバルブ16を下側に付勢するように設けられている。また、メインバルブ16の下面側は蓄圧室51内に設けられ、メインバルブ16の上面側は、メインバルブ室10A中に設けられる。メインバルブ室10Aは、給排気通路18を介してパイロットバルブ20と接続され、パイロットバルブ20によって、蓄圧室51と連通する状態、大気と連通する状態のいずれかに制御される。メインバルブ16が下側にある場合(閉状態)では、メインバルブ16における上向きの面の面積は、メインバルブ16における下向きの面の面積よりも大きいため、メインバルブ室10Aが蓄圧室51と連通した場合には、メインバルブ16においては、上側から圧縮空気によって受ける圧力とスプリング17の弾性力の和は、下側から圧縮空気によって受ける圧力よりも大きくなるため、メインバルブ16は下側に移動し、閉状態となる。一方、メインバルブ室10Aが大気と連通した(減圧された)場合には、メインバルブ16が下側から圧縮空気によって受ける圧力によって、メインバルブ16は上側に移動し、開状態となる。すなわち、メインバルブ16は、メインバルブ室10Aが蓄圧室51と連通した場合に閉状態となり、メインバルブ室10Aが大気と連通した場合に開状態となる。
メインバルブ16が開状態とされた場合には、第1圧力室30Aに圧縮空気が導入され、ピストン31が下降する。この際、シリンダ30内におけるピストン31の下側の空間である第2圧力室30B内の空気は、シリンダ30の下側に設けられた空気孔32、これよりも上側に設けられた空気孔33を介してシリンダ30の周囲に形成された空気室10Bに流れる。空気孔33と空気室10Bとの間には、第2圧力室30Bから空気室10B側への流れを許容し、空気室10Bから第2圧力室30Bへの流れを抑止する逆止弁が設けられている。このため、メインバルブ16が開とされた場合には、第1圧力室30A中に圧縮空気を導入すると同時に、第2圧力室30B内の空気を空気室10B中に導入することができる。このため、ピストン31及びドライバブレード11は下降する。これにより、打ち込み動作が行われる。さらに、ピストン31が空気孔33を通過すると、ピストン31の上部に供給された圧縮空気の一部が、空気孔33を介して、空気室10Bにも供給される。
ピストン31が下死点側に達する際に、ピストン31の下面は、メインハウジング10内に設けられ弾性体で構成されたバンパ19で係止される。また、この状態で、空気室10B中に溜められた圧縮空気が空気孔32を介して第2圧力室30B(ピストン31の下面側)に流れる。また、この状態でメインバルブ16が閉とされた場合には、第1圧力室30A内の空気は、外部に排出される。このため、前記の打ち込み動作とは逆に、ピストン31及びドライバブレード11は上昇し、図1に示された初期状態に戻る。
上記の動作において、メインバルブ16の開閉は、パイロットバルブ20によって制御され、パイロットバルブ20は、トリガ15及びプッシュレバー14によって制御される。以下に、このための構造について説明する。図2は、このパイロットバルブ20に関わる構造の断面図であり、図1において、単発打ちモードでプッシュレバー14が下側かつトリガ15がオフとされた状態(打ち込み動作が開始される前の状態)を示している。また、図3は、このうち特にパイロットバルブ20の構造を拡大して示す図である。
図2において、上下方向に長いプッシュレバープランジャ141は、図示の範囲外下側でプッシュレバー14に連結されている。このため、プッシュレバープランジャ141は、プッシュレバー14の上下動に伴って上下動し、図2においては、プッシュレバープランジャ141はその最下部に位置している。すなわち、図2では、プッシュレバー14が最下部に位置した場合(ノーズ13の下端側が被打込材Wから離間した状態)が示されている、
一方、トリガ15は、トリガ回動軸151を軸として図2における面内で回動し、図2において、トリガ15が反時計回りに回動した場合に、トリガ15がオン状態となる。トリガ15には、支持ピン152によってトリガアーム153が装着されており、トリガアーム153は支持ピン152の周りで回動可能とされる。トリガアーム153の左端は、トリガ回動軸151近傍に設けられたモード切替用ストッパ154に上側から当接している。トリガアーム153の図2における水平方向からの角度、上下方向における位置は、トリガ15のトリガ回動軸151周りの角度、及びトリガアーム153に下側から当接するプッシュレバープランジャ141によって変動する
パイロットバルブ20においては、パイロットバルブ本体21中に、略円筒形であり下側に突出したパイロットバルブプランジャ22と、これを囲むようにバルブピストン23とが設けられている。パイロットバルブプランジャ22は、パイロットバルブ本体21に対して、上下方向に移動可能とされる。バルブピストン23は、パイロットバルブ本体21及びパイロットバルブプランジャ22に対して上下方向に移動可能とされる。パイロットバルブ20における空気の流れは、バルブピストン23の上下方向における位置で制御される。この位置は、パイロットバルブプランジャ22に下側から当接するトリガアーム153と、バルブピストン23と接する領域における圧縮空気からバルブピストン23が受ける圧力によって定まる。
図3は、図2における特にパイロットバルブ20の構造を拡大して示す図である。パイロットバルブ本体21は、下部においてパイロットバルブプランジャ22が貫通する部分であるパイロットバルブ本体下部211と、その上部において内部をバルブピストン23が上下に移動可能とされて設けられたパイロットバルブ本体上部212とで構成される。図3において、パイロットバルブ20(パイロットバルブプランジャ22、バルブピストン23、パイロットバルブ本体上部212)の上側(一方の側)の空間は、蓄圧室51と連通され、常時圧縮空気で満たされている。一方、パイロットバルブ20の下側(他方の側)は、トリガ15等が設けられた大気中となっている。また、パイロットバルブ20の上下方向の中央付近(パイロットバルブ本体上部212の周囲)には、バルブピストン23を囲むようにパイロットバルブ中央室21Aが設けられている。パイロットバルブ中央室21Aは、給排気通路18を介してメインバルブ室10Aと連通している。また、パイロットバルブ本体下部211の周囲は大気中とされ、図3におけるパイロットバルブ本体下部211の右側は下側に向かって開口した空間となっており、図3におけるパイロットバルブ本体下部211の左側とその上側のパイロットバルブ本体上部212の間の空間と連通している。バルブピストン23の上下方向における位置によって、パイロットバルブ中央室21Aと上側の蓄圧室51とが連通した状態、パイロットバルブ中央室21Aと下側の大気とが連通した状態の2種類の状態が切り替えられる。
パイロットバルブプランジャ22には、局所的に径が太くされたパイロットバルブプランジャストッパ221が設けられている。パイロットバルブプランジャストッパ221には、パイロットバルブプランジャ22を巻回するバルブスプリング24の下端が係止される。バルブスプリング24の上端は、バルブピストン23に設けられたバルブスプリング係止部231に下側から当接し、係止される。このため、バルブピストン23は、バルブスプリング24によって上側に付勢され、逆に、パイロットバルブプランジャ22は、下側に付勢される。図3(図2)の状態においては、パイロットバルブプランジャストッパ221が下側のパイロットバルブ下面21Bと当接するため、この状態よりもパイロットバルブプランジャ22が下降することはない。
また、パイロットバルブプランジャ22の外面におけるパイロットパルブプランジャストッパ221の下側、上側には、それぞれOリング(シール部材)22A、22Bが装着されている。下側のOリング(シール部材)22Aは、パイロットバルブ本体下部211においてパイロットバルブプランジャ22が貫通する貫通孔であるパイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面とパイロットバルブプランジャ22との間を封止しうるように設けられる。上側のOリング(シール部材)22Bは、上側においてパイロットバルブプランジャ22が貫通するバルブピストン23の内面(バルブピストン貫通孔23D)とパイロットバルブプランジャ22との間を封止しうるように設けられる。Oリング(シール部材)22A、Oリング(シール部材)22Bによる封止の状態は、パイロットバルブプランジャ22の上下方向における位置で定まる。Oリング(シール部材)22Aがパイロットバルブ下面21Bよりも上側にあるときは、パイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面とパイロットバルブプランジャ22との間は封止されない。また、Oリング(シール部材)22Bがバルブスプリング係止部231よりも下側にあるときは、バルブピストン貫通孔23Dの内面とパイロットバルブプランジャ22との間は封止されない。
バルブピストン23の外面にも、図3における下側、上側、これらの中間の3箇所において、Oリング(シール部材)23A、23B、23Cがそれぞれ設けられる。Oリング(シール部材)23Aは、その外側のパイロットバルブ本体下部211の内面とバルブピストン23との間、Oリング(シール部材)23B、23Cは、その外側のパイロットバルブ本体上部212の内面とバルブピストン23との間を、それぞれ封止しうるように設けられる。OリングOリング(シール部材)23A、23B、23Cによる封止の状態は、バルブピストン23の上下方向における位置で定まる。Oリング(シール部材)23Bが存在しうる高さにおけるパイロットバルブ本体上部212の内面は下側に向かって内径が小さくなる形状とされている。このため、図2(図3)の状態ではOリング(シール部材)23Bはパイロットバルブ本体上部212の内面から離間し、バルブピストン23とパイロットバルブ本体上部212との間は封止されない。バルブピストン23がこれよりも下降した場合にはOリング(シール部材)23Bがパイロットバルブ本体上部212の内面と接し、バルブピストン23とパイロットバルブ本体上部212との間が封止される。逆に、Oリング(シール部材)23Cが存在しうる高さにおけるパイロットバルブ本体上部212の内面は下側に向かって内径が大きくなる形状とされている。このため、図2(図3)の状態ではOリング(シール部材)23Cはパイロットバルブ本体上部212の内面と接し、バルブピストン23とパイロットバルブ本体上部212との間が封止される。バルブピストン23がこれよりも下降した場合にはOリング(シール部材)23Cはパイロットバルブ本体上部212の内面から離間し、バルブピストン23とパイロットバルブ本体上部212との間は封止されない。また、Oリング(シール部材)23C周囲におけるパイロットバルブ本体上部212の内面のこうした形状により、バルブピストン23が図2(図3)に示された位置よりも上側に移動することはない。
一方、図2(図3)に示されるように、Oリング(シール部材)23Aは、パイロットバルブ本体下部211の内面と接する。ただし、図2(図3)においてOリング(シール部材)23Aよりも下側となるパイロットバルブ本体下部211の内面には、大気側(パイロットバルブ20の下側の空間)と連通する連通口21Eが設けられている。連通口21Eは、具体的には、図2(図3)におけるパイロットバルブ本体下部211の左側の内面に設けられた凹部であり、連通口Eがある箇所にOリング(シール部材)23Aが来た場合には、Oリング(シール部材)23Aによってパイロットバルブ本体下部211の内面とバルブピストン23との間は封止されない。この状態では、パイロットバルブ本体下部211内のOリング(シール部材)23Aよりも下側の空間と上側の空間とが連通する。この作用については後述する。
図3(図2)の状態においては、パイロットバルブプランジャ22とトリガアーム153とが当接しないため、パイロットバルブプランジャ22は最下部に位置する。この状態においては、Oリング(シール部材)22A、23A、23Cによる封止がなされ、Oリング(シール部材)22B、23Bによる封止はなされない。
この状態では、バルブピストン23の外側においては、パイロットバルブ中央室21Aは、Oリング(シール部材)23Cによって、パイロットバルブ20内におけるOリング(シール部材)23Cよりも下側の空間(大気)とは分離される。また、バルブピストン23の内側においては、Oリング(シール部材)22Bによる封止はなされないものの、Oリング(シール部材)22Aとパイロットバルブ本体下部貫通孔21Cによる封止がなされるため、蓄圧室51からパイロットバルブ20を介して圧縮空気が給排気通路18に供給される。この際、Oリング(シール部材)22Aとバルブピストン23の下面の間の空間(バルブピストン下室(バルブピストン室)21D)も、蓄圧室51と連通するため、高圧となる。
バルブピストン23は、その周囲の圧縮空気から圧力を受けるが、この圧力を及ぼすのは、上側の蓄圧室51、下側におけるバルブピストン下室21D、これらの間におけるパイロットバルブ中央室21A内の圧縮空気である。これらの各々は、同じ圧力の圧縮空気で満たされるため、これらからバルブピストン23が上下方向に沿って受ける圧力は、これらに面する上方側の面積、下方側の面積の差で定まる。ただし、図3(図2)の状態では、下方側の面積が大きいため、バルブピストン23は、圧縮空気によって上向きの圧力とスプリング24の押圧力を受ける。一方、前記の通り、バルブピストン23が図2(図3)に示された位置よりも上側に移動することはないため、これにより、バルブピストン23は図2(図3)に示された状態に安定して維持される。
一方、Oリング(シール部材)23Bとパイロットバルブ本体上部212の内面とが離間するため、パイロットバルブ中央室21Aは、パイロットバルブ20の上側の蓄圧室51と連通する。このため、パイロットバルブ中央室21Aと給排気通路18を介して連通したメインバルブ室10Aは、蓄圧室51と連通し、高圧となる。これによって、メインバルブ16は閉状態となり、この状態が安定して維持される。
以降は、単発打ちモードにおける、打ち込み時の動作について説明する。図4は、図2(図3)の状態から、トリガ15をオフとしたままでプッシュレバープランジャ141(プッシュレバー14)が上昇したことによって、トリガアーム153とパイロットバルブプランジャ22とが接近した瞬間を示す。この状態では、パイロットバルブ20の状況は図2(図3)の状況とまだ変化がない。
図5は、図4の状態からトリガ15が操作され、トリガ15がオフ状態からオン状態に変化する途中の状態を示し、トリガアーム153がパイロットバルブプランジャ22を押し上げ途中の状態を示す。この状態においては、バルブピストン23は図2(図3)の状態と同じ位置にあるため、Oリング(シール部材)23A、23Cによる封止がなされ、Oリング(シール部材)23Bによる封止はなされない点については、図2(図3)の状態と同様である。ただし、図2(図3)の状態ではOリング(シール部材)22Bによる封止がなされていなかったのに対して、図5の状態では、Oリング(シール部材)22Bによってバルブピストン貫通孔23Dの内面とパイロットバルブプランジャ22との間の封止がなされる。一方、Oリング(シール部材)22Aはパイロットバルブ下面21Bよりもまだ下側にあるため、パイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面とパイロットバルブプランジャ22との間の封止はなされる。
このため、Oリング(シール部材)23Cの上下の空間が分離され、蓄圧室51とパイロットバルブ中央室21Aとが連通した状態とされる。一方、バルブピストン23の内側においては、Oリング(シール部材)22Bによる封止がなされるため、バルブピストン下室21D及びバルブピストン23の内側のバルブスプリング24が設けられた空間は、Oリング(シール部材)22A、22B、23Aによって封止され、閉空間となる。
図5の状態、すなわち、プッシュレバー14を上側に移動させ、かつトリガ15がオフの状態からオン状態に変わる途中経過の状態では、メインバルブ室10Aは高圧に維持され、メインバルブ16の閉状態は維持される。
図6は、図5の状態から、更にトリガ15を上側に回動させた際の状態を示す。この状態においては、トリガアーム153が、図5の状態よりも更にパイロットバルブプランジャ22を押し上げる。このため、Oリング(シール部材)22Aとパイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面との封止が解かれ、バルブピストン下室21Dの圧縮空気は、パイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面とパイロットバルブプランジャ22との間の隙間を介して、下側に漏れる。このため、バルブピストン下室21D及びバルブピストン23の内側のバルブスプリング24が設けられた空間は減圧される。
この際、バルブピストン下室21D及びバルブピストン23の内側のバルブスプリング24が設けられた空間の圧縮空気は、パイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面とパイロットバルブプランジャ22との間の隙間だけでなく、連通口21Eを介して上側にも流れる。このため、バルブピストン下室21D内の圧縮空気を特に効率的に抜くことができる。
この場合、バルブピストン下室21D内の圧縮空気がバルブピストン23を押し上げる圧力が低下する。このため、バルブピストン23は、図5の状態よりも下降し、Oリング(シール部材)23Bが下降することによって、Oリング(シール部材)23Bとパイロットバルブ本体上部212の内面とが密着する。また、図5の場合と同様に、Oリング(シール部材)22Bとバルブピストン23の内面との間も密着する。このため、上側の蓄圧室51は。Oリング(シール部材)23B、Oリング(シール部材)22Bによって、これらよりも下側の空間と分断される。このため、蓄圧室51と、パイロットバルブ中央室21A、バルブピストン下室21Dとは分断される。
また、図6の状態においては、Oリング(シール部材)23Cが下側に移動したことにより、Oリング(シール部材)23Cとパイロットバルブ本体上部212の内面とが離間し、パイロットバルブ中央室21Aと、大気圧であるパイロットバルブ本体下部211の周囲の空間とが連通する。このため、パイロットバルブ中央室21A内の圧縮空気も下側の大気中に放出される。このため、パイロットバルブ中央室21Aと給排気通路18を介して連通したメインバルブ室10Aは、減圧される。これによって、メインバルブ16は開状態に移行する。これによって、打ち込み動作が開始される。
この際、放出された圧縮空気は、図6中の矢印で示されるように、パイロットバルブプランジャ22の両側面に沿って下側に流れる経路と、パイロットバルブ本体下部211の右側に沿って下側に流れる経路の2つの経路で、パイロットバルブ20から圧縮空気が放出される。どちらの経路によっても、放出された圧縮空気は、トリガ15周辺に噴射される。このため、上記の動作によって、自動的にトリガ15周辺の埃が吹き飛ばされる。
図7は、図6の状態から更にトリガ15を上側に回動させた際の状態を示す。この状態においては、パイロットバルブプランジャ22が更に上昇する。この状態では、バルブピストン23は更に下降し、パイロットバルブ下面21Bで係止され最下部に位置する。
図8は、図7の状態から、プッシュレバープランジャ141(プッシュレバー14)が下降した場合の状態を示す。この状態は、作業者がトリガ15をオンとしたままでノーズ13の先端を被打込材Wから離間させ始めた場合に対応する。この場合には、Oリング(シール部材)22Aが下降することによって、パイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面とパイロットバルブプランジャ22との間がOリング(シール部材)22Aによって再び封止される。パイロットバルブプランジャ22は上側の蓄圧室51内の圧縮空気によって下側に向かう圧力を受けるため、プッシュレバープランジャ141(トリガアーム153)の下降に伴ってパイロットバルブプランジャ22も下降する。バルブピストン23も同様に下側に向かう圧力を受けるが、バルブピストン23は最下部に位置するため、移動しない。
図9は、図8の状態からプッシュレバープランジャ141が更に下降した状態を示す。これにより、トリガアーム153は図8の状態よりも更に下降するが、トリガアーム153の左端は、モード切替用ストッパ153で係止されるため、トリガアーム15の左端が図9に示された位置よりも下降することはない。
この場合には、Oリング(シール部材)22Aが下降することによって、パイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面とパイロットバルブプランジャ22との間がOリング(シール部材)22Aによって再び封止される。また、バルブピストン貫通孔23Dの内側とパイロットバルブプランジャ22との間も、Oリング(シール部材)22Bで封止されている。この状態では、蓄圧室51とパイロットバルブ中央室21Aとは分断され、かつパイロットバルブ中央室21Aと、大気中であるパイロットバルブ本体下部211の周囲の空間とが連通する。
この状態で、1回の打ち込み動作が終了し、前記の通り、ピストン31はシリンダ30の下側に維持された状態となる。この際、メインバルブ16の開状態は保たれている。このため、再度の打ち込み動作を行うためには、メインバルブ16を一旦閉状態とすることが必要になり、このためには、メインバルブ室10Aを再び蓄圧室51と連通させる必要がある。
図9の状態から、再びプッシュレバープランジャ141を上昇させても、パイロットバルブ20の状態は変化しない。このため、1回の打ち込み動作が終わりプッシュレバー14が下降してから再びプッシュレバー14を上昇させても、打ち込み動作は行われない。一方、図9の状態から作業者がトリガ15をオフにした場合には、パイロットバルブプランジャ22が下降し、Oリング(シール部材)22Bが下降してバルブピストン貫通孔23Dの内面とパイロットバルブプランジャ22との間との間の封止が解かれる。一方、Oリング(シール部材)22Aが下降してパイロットバルブプランジャ22とパイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面との間が封止される。このため、バルブピストン23の内側とバルブピストン下室21Dには、蓄圧室51からバルブピストン貫通孔23Dとパイロットバルブプランジャ22の間の隙間を介して圧縮空気が流入する。この場合、バルブピストン23は、圧縮空気によって上側に向かう圧力を受ける。また、バルブピストン23は、バルブスプリング24によっても上側に付勢される。このため、バルブピストン23は上側に移動し、蓄圧室51とパイロットバルブ中央室21Aとが連通し、かつパイロットバルブ中央室21Aと大気とが分断された図2(図3)の状態に戻る。すなわち、打ち込み動作の終了時にノーズ13を被打込材Wから離間させ、かつトリガ15をオフすることによって、ピストン31が上死点、かつメインバルブ16が閉状態とされた初期状態に戻り、打ち込み動作を再度行うことが可能となる。この際、上記のように、一旦トリガ15をオフすることが必須となる。このため、単発打ちモードにおいては、打ち込み動作の間にトリガ15をオフする作業が必要となる。
上記の動作においては、図6、図7の状態においてパイロットバルブ20内から放出される圧縮空気がトリガ15に噴射されることによって、トリガ15に付着した埃等が容易に除去される。この際、連通口21Eを設けることによって、特に効率的にパイロットバルブ20内から圧縮空気を抜き、これをトリガ15に強く噴射することができる。
次に連続打ちモードにおける同様の動作について説明する。図10は、連続打ちモードにおいて、プッシュレバー14が下側かつトリガ15がオフとされた場合を示しており、単発打ちモードにおける図2に対応する。この場合には、モード切替用ストッパ154は、図10に示されたように図2の場合と比べて下側に位置する。このため、図2の状態と比べて、トリガアーム153の左端はより下側に位置する。この場合におけるパイロットバルブ20の状態は、図2(図3)と同様である。この場合には、トリガアーム153とパイロットバルブプランジャ22とは上下方向で大きく離間している。
連続打ちモードの場合には、作業者は、トリガ15をオンした状態を保ったままでノーズ13を被打込材Wに当接させて作業を行う。図11は、図10の状態からトリガ15をオンした状態を示している。図10の状態では、トリガアーム153とパイロットバルブプランジャ22とが上下方向で大きく離間していたのに対し、この状態では、トリガアーム153が上昇し、パイロットバルブプランジャ22と当接する。ただし、この状態では、パイロットバルブプランジャ22は、まだトリガアーム153によって押し上げられないため、パイロットバルブ20の状態は図10(あるいは図2(図3))と同様である。
図12は、図11の状態から、プッシュレバープランジャ141が上昇途中の状態を示す。この場合、トリガアーム153は更に押し上げられ、パイロットバルブプランジャ22は、図10、図11の状態よりも押し上げられる。この場合におけるパイロットバルブ20の状態は、単発打ちモードにおける図5の状態と同様である。このため、メインバルブ室10Aは高圧に維持され、メインバルブ16の閉状態は維持される。
図13は、図12の状態から、プッシュレバープランジャ141が更に上昇した状態を示す。この場合におけるパイロットバルブ20の状態は、単発打ちモードにおける図6の状態と同様である。このため、バルブピストン23は下降を開始し、蓄圧室51と、パイロットバルブ中央室21A、バルブピストン下室21Dとは分断される。一方、パイロットバルブ中央室21Aと、大気中であるパイロットバルブ本体下部211の周囲の空間とが連通する。これによって、打ち込み動作が開始される。
この際、図6の場合と同様に、矢印で示されるように、パイロットバルブ20から圧縮空気が放出される。このため、上記の動作によって、自動的にトリガ15周辺の埃が吹き飛ばされる。
図14は、図13の状態からプッシュレバープランジャ141が更に上昇した際の状態を示す。この場合におけるパイロットバルブ20の状態は、単発打ちモードにおける図7の状態と同様である。このため、メインバルブ16は完全に開状態となる。この場合においても、前記と同様に、矢印で示された経路で圧縮空気が放出され、トリガ15に噴射される。
図15は、図14の状態からプッシュレバープランジャ14が下降した際の状態を示す。トリガ15がオンとされた状態はそのまま維持されている。この状態は、作業者がトリガ15をオンとしたままでノーズ13の先端を被打込材Wから離間させ始めた場合に対応し、単発打ちモードにおける図8の状態と同様である。この状態では、パイロットバルブ20内の状態は図14の状態と同様である。
図16は、図15の状態からプッシュレバープランジャ14が更に下降途中の状態を示す。この状態は、単発打ちモードにおける図9の状態に対応するが、モード切替用ストッパ154が図9の場合よりも下側にあるため、図9の場合よりもトリガアーム153の左端がより下方に位置し、このために、パイロットバルブプランジャ22も、より下側に位置する。一方、バルブピストン23は図9の場合と同様に最下部に位置する。このため、パイロットバルブプランジャ22とバルブピストン23との間の位置関係が、図9の場合とは異なる。
この状態においては、図9の場合よりも、Oリング(シール部材)22Bが低い位置になり、バルブピストン貫通孔23Dの内面とパイロットバルブプランジャ22との間との間の封止が解かれる。また、Oリング(シール部材)22Aによって、パイロットバルブプランジャ22とパイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面との間が封止される。このため、バルブピストン23の内側とバルブピストン下室21Dには、蓄圧室51からバルブピストン貫通孔23Dとパイロットバルブプランジャ22の間の隙間を介して圧縮空気が流入する。
プッシュレバープランジャ141の下降に伴って、トリガアーム153の左端は更に下方に移動し、最終的には、図17に示されるように、図9の場合よりも下方に位置するモード切替用ストッパ154とトリガアーム153の左端が当接する状態となる。この状態は、単発打ちモードにおいて、図9の状態からトリガ15をオフした場合と同様であるため、図17の状態から、バルブピストン23は上昇し、メインバルブ16が閉状態となる。このため、図17の状態から再び図11の状態とすることができ、トリガ15をオンしたままで、プッシュレバー14を再び上方に移動させることによって、打ち込み動作を開始させることができる。このように、連続打ちモードにおいては、トリガ15を連続的にオンとした場合でも、プッシュレバー14の動きのみによって打ち込み動作が可能となる。
このように、連続打ちモードの場合においても、図13、図14の状態においては、パイロットバルブ20から放出される圧縮空気によってトリガ15が噴射される。このため、トリガ15に付着した埃が吹き飛ばされ、除去される。
参考として、連通口21Eを具備しない場合における図7に対応した構成を図18に示す。この場合においても、バルブピストン23が下側に位置する場合に、圧縮空気がパイロットバルブ20から下側のトリガ15周辺に照射される。図7と同様に、圧縮空気は、パイロットバルブプランジャ22の周囲である経路X、図18におけるパイロットバルブ本体下部211の右側を通過する経路Yで放出される。このうち、経路Xは、バルブピストン下室21D及びバルブピストン23の内側のバルブスプリング24が設けられた空間の圧縮空気が、パイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面とパイロットバルブプランジャ22との間の隙間を流れる経路である。一方、経路Yは、給排気通路18からの圧縮空気が、パイロットバルブ中央室21A、パイロットバルブ本体下部211の上側を介して流れる経路である。
ここで、パイロットバルブプランジャ22の上下動に際してのガタを抑制するためには、パイロットバルブ本体下部貫通孔21Cの内面とパイロットバルブプランジャ22との間の隙間は小さくする必要があり、この隙間を大きくすることは困難である。このため、経路Xを介してバルブピストン下室21D及びバルブピストン23の内側のバルブスプリング24が設けられた空間の圧縮空気を大流量で流すことは困難である。
バルブピストン下室21D及びバルブピストン23の内側のバルブスプリング24が設けられた空間の圧縮空気を大流量で流すためには、この圧縮空気を経路Yを介して流すことが有効である。しかしながら、連通口21Eを具備しない図18の構成では、この圧縮空気を経路Yで流すことが困難である。これに対して、上記の打込機100においては、連通口21Eによって、バルブピストン下室21D及びバルブピストン23の内側のバルブスプリング24が設けられた空間の圧縮空気をパイロットバルブ本体下部211の上側に流し、経路Yで流すことができる。これにより、バルブピストン23のレスポンスが良くなることで、操作性も向上する。
一方、図2(図3)のように、バルブピストン23が上側に位置する場合には、Oリング(シール部材)23Aは連通口21Eの上側に位置するため、バルブピストン下室21D及びバルブピストン23の内側のバルブスプリング24が設けられた空間から圧縮空気がパイロットバルブ本体下部211の上側に流れることはない。このため、前記のように、この状態では、バルブピストン23は上側の状態に安定して維持され、メインバルブ16は安定して閉状態に維持される。このため、連通口21Eを設けた場合でも、打ち込み動作を安定して行わせることができる。ただし、圧縮空気の供給量が充分である場合には、バルブピストン23が上側に位置する場合においても連通口21Eを介して圧縮空気が上側に流れる構成とすることもできる。この場合には、トリガ15は、常時圧縮空気で照射される。
また、図6、図7等の場合には、給排気通路18からメインバルブ室10A内の圧縮空気が図18における経路Yで放出されるが、この間の主たる経路は、給排気通路18、バルブ中央室21A、及び図6、図7の状態におけるパイロットバルブ本体上部212とバルブピストン23との間の隙間である。このうち最も狭い経路は、パイロットバルブ本体上部212とバルブピストン23との間の隙間であるが、図示されるように、この隙間は充分大きくすることができる。このため、図18における経路Yで、高いコンダクタンスでメインバルブ室10A内の圧縮空気を流すことができる。
また、経路Xの向かう方向はパイロットバルブプランジャ22の近傍に限定されるのに対し、経路Yの向かう方向は、パイロットバルブ本体21の構成によって、任意に設定することができる。このため、例えば、経路Yの向かう方向を、例えばトリガ15の支持ピン152とすることにより、支持ピン152周辺の埃を特に効率的に除去し、トリガ15の動作が円滑に行われる状態を維持することができる。
なお、上記の通り、連通口21Eは、バルブピストン下室21D及びバルブピストン23の内側のバルブスプリング24が設けられた空間から圧縮空気を抜くために用いられる。一方で、前記の通り、図9の状態から図2(図3)の状態に移行する(バルブピストン23を上昇させる)ためには、バルブピストン下室21D及びバルブピストン23の内側のバルブスプリング24が設けられた空間に、上側から圧縮空気を導入することが必要である。すなわち、バルブピストン23を上昇させてメインバルブ16を確実に閉状態とするためには、バルブピストン下室21D及びバルブピストン23の内側のバルブスプリング24が設けられた空間に、蓄圧室51側から圧縮空気を導入することが必要である。
上記の連続打ちモードでの構成においては、図17の状態でバルブピストン23は、バルブスプリング24及びプランジャ22とバルブピストン貫通孔23Dとの間の隙間から蓄圧室51の圧縮空気を導入することで、バルブピストン23を上昇させ、連続打ちを可能としている。こうした動作をより円滑に行わせるためには、蓄圧室51から圧縮空気がバルブピストン下室21Dに流れる経路のコンダクタンスを、バルブピストン下室21Dから連通口21Eを介して圧縮空気が流れる際のコンダクタンスよりも大きくすることが好ましい。前者のコンダクタンス(気体の流れやすさを表わす量であって、流路抵抗の逆数ある)は、主に上側におけるパイロットバルブプランジャ22とバルブピストン貫通孔23Dの内面との間の隙間で定まり、後者のコンダクタンスは、主に連通口21Eの上下方向の断面積(凹部の深さ)で定まる。
なお、上記の構成においては、上記の構成のメインバルブ16、及び上記の構成のパイロットバルブ20が用いられたが、同様にメインバルブの動作がパイロットバルブを介した圧縮空気の流れで制御される限りにおいて、これらの構成は任意である。
また、上記においては、打込機について記載されたが、同様に圧縮空気によって制御されるメインバルブを用いて動作が行われる空気圧工具であれば、同様の構成が有効であることは明らかである。例えば、回転動作を行うドライバ、打ち込み動作と共に回転動作も行うねじ打機についても、同様の構成を用いることができる。