JP6488086B2 - ビーム輸送装置の調整方法および粒子線治療システム - Google Patents

ビーム輸送装置の調整方法および粒子線治療システム Download PDF

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Description

本発明は陽子線や炭素イオン線等の重イオン線の照射によって、がんなどの腫瘍を治療する粒子線治療システムやその粒子線治療システムのビーム輸送装置の調整方法に関する。
がん治療法の一つとして、患部に陽子や炭素イオン等のイオンビームを照射する粒子線治療が知られている。陽子や炭素イオン等のイオンを高エネルギーで物質に入射すると、飛程の終端で多くのエネルギーを失う。粒子線治療ではこの性質を利用し、がん細胞で多くのエネルギーを失うようにイオンビームを患者に照射する。これにより、周囲の健康な組織への損傷を抑えつつ、がん細胞を破壊することができる。粒子線治療ではイオンビームの空間的な広がりとエネルギーを調整し、患部の形状に合わせた線量分布を形成する。
粒子線治療に用いるイオンビームはイオン源で生成したイオンを加速器で加速することで得る。ビームは加速器から輸送装置を経て、照射装置に輸送される。照射装置は患部の形状に合わせた線量分布を形成する。線量分布の形成方法にはビームを散乱体に当て、ビーム形状を患部形状に一致させる散乱体照射法と、細く絞ったビームを電磁石で患部に沿って走査して患部に線量を付与するスキャニング照射法がある。
いずれの照射法に対しても患部に対し任意方向からのビーム照射を適用するために回転ガントリー上に搭載された回転輸送装置を用いることがある。回転輸送装置の調整には特許文献1に記載のように、回転輸送装置の入射点でのビームパラメータを調整し、照射ビームサイズの回転ガントリー角度に対する依存性を低減する方法がある。このような輸送装置の調整ではあらかじめ非特許文献1に記載のQuadrupole tuning methodを用いて加速器から取り出されるビームのエミッタンスとTwissパラメータを測定する。
国際公開WO2013/175600号
A.W. Chao, M. Tigner「Handbook of Accelerator Physics and Engineering」, World Scientific, p559−561, 1998
しかしながら、上述の特許文献1に記載のような方法による輸送装置の調整は、回転輸送装置の入射点におけるビームのTwissパラメータを調整することで照射点におけるビームサイズのガントリー角度依存性を低減していたが、完全にガントリー角度に依存しないで一定のビームサイズとすることは原理的に不可能であった。
本発明は、ガントリー角度に依存しないで一定のビームサイズとすることができる粒子線治療システムやその粒子線治療システムのビーム輸送装置の調整方法を提供する。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、荷電粒子を加速し、荷電粒子ビームとして取り出す加速器と、前記荷電粒子ビームを照射点まで輸送するビーム輸送装置と、前記加速器、前記ビーム輸送装置を制御する制御部とを備え、前記ビーム輸送装置は、屋に対して固定された固定輸送装置と、この固定輸送装置の下流に接続された回転輸送装置であって、前記建屋に対して回転自在に設置され、前記建屋に対して固定された前記照射点に対してその回転によって前記荷電粒子ビームを照射する角度を回転自在に定める回転輸送装置とを有し、前記回転輸送装置の先の前記照射点にある照射対象に対して前記荷電粒子ビームを照射するための粒子線治療システムにおけるビーム輸送装置の調整方法であって、前記回転輸送装置内のビームの進行方向に垂直な面内の直する二方向のベータトロン振動の位相進みの差がπの整数倍となるよう、前記制御部における前記回転輸送装置の制御パラメータを調整することを特徴とする。
本発明によれば、照射点におけるビームサイズおよびビームの形状とガントリー角度の関係を明らかにでき、従来方法では実現不可能であったガントリー角度に依存しないでビームサイズを一定とすることができ、照射精度の向上を実現することができる。
本発明の一実施例の粒子線治療システムの全体構成図である。 本発明の一実施例の粒子線治療システムの輸送装置調整のフローチャートである。
以下、図面を参照しつつ本発明の粒子線治療システムやその粒子線治療システムのビーム輸送装置の調整方法の実施例を説明する。本実施例は加速器としてシンクロトロンを用いた粒子線治療システム100であり、粒子線として陽子ビームを用いる場合を例に説明する。
図1に本実施例の粒子線治療システムの全体構成図を示す。
図1において、粒子線治療システム100は、イオン源200、入射器300、シンクロトロン400、ビーム輸送装置500、回転ガントリー600、照射装置700からなる。
イオン源200にて治療用のビームとする陽子を発生させ、入射器300において核子当たり運動エネルギー7MeV/uまで予備加速される。その後にシンクロトロン400に入射され、その後治療に用いるエネルギーまで加速される。本実施例の粒子線治療システム100では、シンクロトロン400で加速したビームの運動エネルギーは最大230MeV/uである。また、シンクロトロン400からは230MeV/u以下の任意の指定された運動エネルギーのビームを取り出すことができる。実際の治療時には患者ごとに作成された治療計画に従って、シンクロトロン400から取り出されるビームの運動エネルギーは決定される。
シンクロトロン400から取り出されるビームは取り出し用偏向電磁石410を通過し、出射点420に接続された輸送装置500に導入される。
輸送装置500は建屋に対して固定された固定輸送装置510と回転軸610を軸として回転可能な回転ガントリー600に固定された回転輸送装置520とが直列に接続されている。回転輸送装置520の終点は照射点630であり、治療時においては照射点630に患部が位置するように患者をベッドに固定している。この状態でビームを照射することで、治療計画によって定められた線量が患部に付与される。
本システムはスキャニング照射法が実施可能な照射装置であり、照射装置700にはビームの軌道に対して垂直な平面内の直交する二方向(以下、まとめて横方向と定義する)に独立にビームが走査できるように二台の走査電磁石を備えている。
輸送装置500内のビーム経路530は、真空ポンプによって真空引きされており、経路530中にはビームを偏向させる偏向部551〜554とビームを直進させる直線部とがある。
直線部にはビームを横方向に収束あるいは発散させるための固定輸送装置510内の四極電磁石561〜567および回転輸送装置520内の四極電磁石571〜577と、ビームの形状を測定するプロファイルモニタ581〜583等が設置されている。
プロファイルモニタ581〜583はMWPC(マルチワイヤプロポーショナルチェンバー)を用いており、横方向に等間隔に張られたワイヤ状電極によってビームが通過したときに発生するイオン対を電極へ収集し、収集された電荷量を信号として取り出す。これによりビームの横方向のビームサイズを測定する。図1には図示していないが、照射装置700にもプロファイルモニタが内蔵されており、ビームサイズを測定できるように構成されている。また、適宜必要に応じて照射点630にビームサイズ測定用のモニタや放射線感受性フィルムを設置することができる。
固定輸送装置510のプロファイルモニタ581〜582は、各プロファイルモニタで直交する水平方向と鉛直方向の二つの方向におけるビームプロファイルを測定できるよう配置されている。回転輸送装置520と照射装置700に設置されているプロファイルモニタ583は、回転輸送装置520の偏向面に平行な方向と垂直な方向との直交する二方向のビームプロファイルを測定できるよう構成されている。
以上、プロファイルを測定するビームの進行方向に対して垂直な平面内の直交する二方向を選び、X方向,Y方向と定義する。固定輸送装置510中においても、回転輸送装置520中においても、それぞれの偏向電磁石における偏向面に平行な方向をX方向とし、偏向面に垂直な方向をY方向とする。
固定輸送装置510内の四極電磁石561〜567は、電源850から電流の供給を受け、磁場を励起する。電源850の出力電流は制御装置800が指示する。
回転輸送装置520内の四極電磁石571〜577は、電源850から電流の供給を受け、磁場を励起する。電源850の出力電流は制御装置800が指示する。本システムの調整時には、調整者は、HMI810を通じて制御装置800を介して電源850の出力電流を指定し、その指定したパラメータを用いて四極電磁石571〜577を制御する。このシステムの調整時における電源850の出力電流の値は、回転輸送装置520内のビームの進行方向に垂直なXY面内の直する二方向(X方向およびY方向)におけるベータトロン振動の位相進みと呼ばれるパラメータ(ψx,ψy)を定義(定義については詳しくは後述する)したときに、この位相進みψxとψyとの差がπの整数倍となるよう調整された値を指定する。そして、ビームを照射点630に対して輸送する際は、この位相進みψxとψyとの差がπの整数倍となるよう調整されたパラメータに基づいて電源850の出力電流値が制御装置800より各四極電磁石571〜577に対して出力される。この位相進みψxとψyとの差がπの整数倍となるよう調整された値の求め方、理由については詳しくは後述する。
また、輸送装置500の調整中には、必要に応じてプロファイルモニタ581〜583で測定したビームサイズは測定のたびに記憶装置820に送信され、データとして蓄積される。測定データの蓄積の際は制御装置800から各電磁石電源850への電流指示値も合わせて記録される。この蓄積されたデータはデータ処理装置830により、後述する手順でビームのエミッタンス・Twissパラメータおよび回転輸送装置520におけるベータトロン振動の位相進み差Δψが計算され、これらの値が計測結果としてHMI(Human Machine Interface)810に表示される。このHMI810により、調整者は、回転輸送装置520の制御パラメータや、位相進みの差をπの整数倍とするための調整過程の各種パラメータを確認することができる。
次に、本実施例におけるビーム輸送装置の調整に手法について述べる。
本実施例で用いるスキャニング照射法を用いた粒子線治療システムにおいては、腫瘍外への線量を抑制するには横方向のビーム広がり(ビームサイズ)を小さく抑制することが有効である。そのため、固定輸送装置510に設置された四極電磁石561〜567および回転輸送装置520に設置された四極電磁石571〜577の励磁量を調整し、照射点630において所望のビームサイズとする必要がある。
ここで、ビームサイズの調整に必要なビーム光学について述べる。
ビームを構成する個々の陽子が偏向電磁石や四極電磁石や磁場のない真空ダクト内(以上をまとめて輸送機器と以下では述べる)を通過した際、通過後のビーム位置は輸送行列なる行列を用いて式1のように表せる。
Figure 0006488086
但し、式1中のxは設計軌道からのX方向の位置ずれ、x’は軌道の傾きずれである。また、yおよびy’は設計軌道からのY方向の位置ずれおよび軌道の傾きである。さらに、δは基準運動量からのずれである。この(x,x’,y,y’,δ)で張られる空間を位相空間と呼び、位相空間上の点を指定するベクトルとして位相空間ベクトルxが定義できる。また、下付き添え字のiは機器入射時のビームの状態を表し、下付き添え字のfは機器出射時のビーム状態を表すこととする。
上述の式1より、輸送機器によって決まる輸送行列Rを入射時の位相空間ベクトルに掛けることによって、ビームがその機器を通過した後の位相空間ベクトルを求めることができる。すなわち輸送行列Rは収束・発散の効果を表す。
輸送行列Rの例として、磁場のない直線部と偏向電磁石と四極電磁石の輸送行列をそれぞれR,RBM,RQMと定義すると、その成分はそれぞれ次式2−4のように表すことができる。
Figure 0006488086
Figure 0006488086
Figure 0006488086
ただし、式2−4中のLは核輸送機器中のビームの設計軌道の長さであり、αは偏向電磁石の偏向角である。kは四極電磁石における収束力の強さを表す量であり、次式5のように定義される。
Figure 0006488086
上述の式5はkが虚数になる場合も有効であり、計算の際は適宜三角関数を双曲線関数に置き換えればよい。
ここで、四極電磁石の輸送行列の(2,1)成分と(3,4)成分に注目すると、kが実数の場合はX方向の輸送行列で負となり、Y方向の輸送行列において正となる。逆にkが純虚数の場合は正負が逆となる。この成分が正の場合はビームを構成する各粒子は変位に比例して変位と同じ方向に力を受ける。すなわち、発散の作用を受ける。一方負の場合はビームを構成する各粒子が変位とは逆向きに力を受けるので、収束の作用を受ける。
同様に、偏向電磁石においてはX方向に収束し、Y方向は自由空間と同じく収束も発散もしない。
さらに、固定輸送装置510と回転輸送装置520との接続点640において、ビーム軌道を軸とする座標変換(以下、捻り作用と定義する)が生じる。この捻り作用も、次式6に示す輸送行列RROTとして表現できる。
Figure 0006488086
但し、式6中のθは以下ガントリー角度と呼び、変換前後のX軸の成す角とする。このガントリー角度θは変換前のX軸からY軸に向かう回転を正とする。
ところで、一般的に、ビームサイズ等のビーム軌道に垂直な面(XY面)内でのビーム形状を表すにはビーム位置と傾きの分散共分散行列Σ(シグマ行列と以下では呼ぶ。)を用いる。このシグマ行列は次式7のように定義される。
Figure 0006488086
式7においてシグマ行列は実対称行列であり、各成分はビームを構成する粒子に関する位相空間上の位置の積の平均である。
例えば、シグマ行列の(1,1)成分はX方向での軌道からのずれの分散であり、(2,2)成分はビームの発散角の分散である。また、(1,2)成分は(1,1)成分の軌道に沿った微分に比例する量であり、ビームサイズの位置変化を表す。ビームサイズは(1,1)成分の二乗根をとればビームの空間的な広がりを表すビームサイズとなる。Y方向についても同様の議論が成立する。
さらに、XY面内におけるビーム形状の傾きもシグマ行列によって表現できる。ビームの形状が楕円であると仮定すると、楕円の長軸lと短軸lおよび軸の傾き角φとシグマ行列の成分の間には、それぞれ次式8−10で示す関係が成り立つ。
Figure 0006488086
Figure 0006488086
Figure 0006488086
但し、式10中の傾き角φは、−45度から45度の範囲で長軸あるいは短軸とX軸のなす角である。
また、輸送機器のシグマ行列に与える効果も輸送行列Rによって表現でき、入射点でのシグマ行列をΣ、出射点でのシグマ行列をΣとすると、両者は次式11によって結びつけられる。
Figure 0006488086
但し、式11中の右上添え字のTは転置行列を表す。輸送行列の行列式は1であるため、シグマ行列の行列式は不変である。
回転輸送装置520のように、単一の平面内に設置された輸送装置では、その輸送行列は式2−4に示したR,RBM,RQMの積である。よって輸送行列の(1,3),(1,4),(2,3),(2,4)成分は0である。すると、シンクロトロン400の出射点420におけるビームのシグマ行列のうち、X方向とY方向の共分散成分、すなわち(1,3),(1,4),(2,3),(2,4)成分が0であれば、輸送装置全域にわたってこれらの値は0である。
これに対し、回転輸送装置520のガントリー角度によっては接続点640での輸送行列RROTの(1,3),(2,4)成分が0でない値を持つ。その場合、回転輸送装置520内と照射点630では、(1,3),(1,4),(2,3),(2,4)成分は0でなくなる。このことをXY結合がある状態と定義する。XY結合が生じているビームにおいては、XY面内におけるビームの空間的形状に傾きがある。また、運動量ずれδとの相関を表すパラメータに(1,5),(2,5),(3,5),(4,5)成分が対応する。これらの成分は照射点において0にすることでビームサイズを小さくすることができる。
輸送装置500の調整には以上の理論を用いる。すなわち、接続点640あるいは照射点630のようにビームのシグマ行列に対して調整目標がある場合、式11においてΣをシンクロトロンの出射点420におけるシグマ行列とし、接続点640や照射点630におけるビームのシグマ行列に課される条件を満たすシグマ行列をΣとすれば、式11は四極電磁石励磁量を変数とする方程式となる。この方程式を解くことにより、接続点640や照射点630でのシグマ行列に課された条件を満足する四極電磁石励磁量が得られる。この解を求める手法は適宜、準ニュートン法など多変数方程式を数値的に解く手法を用いて数値解を得ればよい。これらの計算処理はデータ処理装置830が記憶装置820に蓄積されたデータを基づいて計算する。以上の方法に基づいて輸送装置500の各部を制御するパラメータの調整を行う。
次に、固定輸送装置510および回転輸送装置520を含む輸送装置500の調整のフローチャートについて、図2を参照して以下説明する。調整は4ステップとそれに付随する確認作業からなる。
固定輸送系510内の四極電磁石561〜567を調整し、接続点640におけるシグマ行列の調整を行うために、まず、出射点でのシグマ行列を非特許文献1に記載されたようなQuadrupole tuning methodを用いて測定する(ステップS12)。
具体的には、固定輸送装置510中のプロファイルモニタ581またはプロファイルモニタ582でのビームサイズを四極電磁石561〜567の励磁量を変更しながら多数の条件で測定することで励磁量とビームサイズの関係から出射点420でのシグマ行列を求める。
出射点420でのシグマ行列が得られたら、次いで、接続点640までの四極電磁石561〜567の励磁量を計算する(ステップS14)。ここでは、接続点640において実現すべきシグマ行列はガントリー回転に伴う照射点630でのビーム形状の変化を抑えるために、次式12−14の条件を課す。
Figure 0006488086
Figure 0006488086
Figure 0006488086
すなわちシグマ行列の(1,1)成分と(3,3)成分,(1,2)成分と(3,4)成分,(2,2)成分と(4,4)成分の比を、X方向とY方向のエミッタンスの比に一致させる。さらに、分散関数に比例する項である、(1,5),(2,5),(3,5),(4,5)の各成分は0とする。式12−14の各式はTwissパラメータのβ・α・γに対応しており、それぞれのパラメータをX方向とY方向で一致させることと同値である。
次いで、式12−14の条件を満たすか否かを確認し、接続点540までの四極電磁石561〜567の調整が問題ない状態であるか否かを判定する(ステップS16)。式12−14の条件を満たすか否か確認には照射点630におけるビーム形状に関連する長軸長l,短軸長l,軸傾きφを測定する。
ステップS16において、計測した照射点630におけるビーム形状が式12−14の条件を満たすときはステップS18に処理を進める。これに対し、満たさないときはステップS14に処理を戻して、再度接続点640までの四極電磁石561〜567の励磁量を計算する。
ステップS12−S16における接続点640でのシグマ行列の調整が完了したら、次に、接続点640から照射点630までの調整、すなわち回転輸送装置520の四極電磁石571〜577の調整を行う。
まず、ガントリー角度を0度とする。すなわち固定輸送装置510と回転輸送装置520のX方向とY方向が一致している状態とする(ステップS18)。
ここで、本ステップにおける輸送装置500の調整では、輸送装置の開始点である接続点640でのシグマ行列は前ステップの調整において式12−14によって課せられる条件を満たしており、すでにシグマ行列の値が既知である。そこで、照射点630におけるシグマ行列に課される条件を満たすような式11を解く。これにより、回転輸送装置520における四極電磁石571〜577の励磁量を計算でき、照射点630におけるビームサイズを所望の値とする四極電磁石571〜577の励磁量が定まる。
ここで、このステップS18において照射点630におけるシグマ行列に課す条件は、接続点640におけるシグマ行列に課した条件に類似する。すなわち、シグマ行列の(1,1)成分と(3,3)成分,(1,2)成分と(3,4)成分,(2,2)成分と(4,4)成分の比をX方向とY方向のエミッタンスの比に一致させる。特に、ビームサイズの二乗に比例する(1,1)成分と(3,3)成分は小さいことがスポットスキャニング照射の実現に必要である。また、照射点においては分散関数に比例する項である(1,5),(2,5),(3,5),(4,5)の各成分は0とする。このような条件では回転輸送装置520の接続点640から照射点630までの輸送行列Rに対する条件が定まり、式15に示される形である必要がある。
Figure 0006488086
ただし、式15中におけるα,β,γはTwissパラメータであり、添え字fのついたパラメータは照射点630での値を、添え字iのついたパラメータは接続点640での値を示している。ψxとψyはそれぞれX方向とY方向のベータトロン振動の位相進みと呼ばれるパラメータである。
本実施例では、このステップS18において、更に、この式15に示す回転輸送装置520の輸送行列Rに従来にはない条件を加える。従来は式15のベータトロン位相進みはX方向とY方向でそれぞれ独立な値を選んでいたが、本実施例では式16に示すようなψxとψyとの差をπの整数倍とする条件を加える。
Figure 0006488086
この条件によると、照射点でのビームは楕円形の長軸・短軸の長さを保つことができる。
次いで、ステップS18における調整の確認を行う(ステップS20)。このステップS20における確認は、照射点630におけるビーム形状に関連する長軸長l,短軸長l,軸傾きφを測定することで行う。
具体的には、回転ガントリー600の回転角度が0度の際にビーム形状を測定するために、放射線感受性のあるフィルムなどを用いる、またはビーム軌道を軸としてプロファイルモニタを回転させる等の方法を用いることで測定する。その後、回転ガントリー600を任意の角度だけ回転させ、同様にビーム形状を測定する。この回転ガントリー600の角度に対するビーム形状の測定を所定角度で実施し、この測定によってビームの長軸長l、短軸長lのガントリー回転への依存性を測定する。
その上で、ガントリー回転に伴う軸長および短軸長の変化量を基にして、測定された長軸長lおよび短軸長lの変化量が、あらかじめ定めた許容変化量以下であるか否かを判定する(ステップS20)。測定された長軸長lと短軸長lの変化量があらかじめ定めた許容変化量以下と判定されれば、調整完了となる。
このステップS20は、長軸長lに対する短軸長lの比率の値の変化量が所定範囲以内に収まっているか否かを判定し、所定範囲以内に収まっていれば調整完了とし、収まっていなければ再度調整するよう制御するものとすることができる。
これに対し、測定された長軸長lと短軸長lの変化量が許容値を超えていれば、再度回転輸送装置520の四極電磁石571〜577の励磁量調整を実施する。その際、確認時の測定結果から位相進みの差の値を算出し(ステップS22)、その後処理をステップS20に戻して、先のステップS22で算出した位相進みの差の値をπの整数倍に近づける方向に四極電磁石571〜577の励磁量を調整する(ステップS20)。このステップS20〜S22の処理を繰り返し、測定された長軸長lと短軸長lの変化量があらかじめ定めた許容変化量以下となれば調整完了となる。
本発明のポイントである、ステップS18〜S22における、ベータトロン振動の位相進みの差と照射点630でのビーム形状の関係について以下説明する。
まず、式11に基づき、接続点640における回転作用と、その下流の回転輸送装置520の効果を評価する。回転作用の回転行列はガントリー角度θを用いて式6で表せる。回転輸送装置520の輸送行列Rを表す式(式15)を用いて式11を展開すると、任意のガントリー角度θに対するシグマ行列の値として次式17が得られる。
Figure 0006488086
この式17を式によって与えられているビームの長軸長lと短軸長lおよび傾き角φとの関係に代入すると、これらのビーム形状を表すパラメータとガントリー角度φとの関係が次式18−20の各式のように求められる。
Figure 0006488086
Figure 0006488086
Figure 0006488086
式18−20から長軸長lと短軸長lがガントリー角度φに対して不変となる条件は、式21に示されるように位相進みの差Δψのsinが次式21に示すように0となることである。
Figure 0006488086
この式21で示されるのは、位相進みの差がπの整数倍であることと同値であり、位相進みの差をπの整数倍とすることで照射点630におけるビーム形状の不変性を実現できることを示している。
更に、位相進みの差とビームの傾き角φの間には式18−20に表す関係がある。これによると、ガントリー角度0度の時は位相進みの差に依らずビームの傾き角も0度であり、同様にガントリー角度45度の時は位相進みの差に依らずビームの傾き角も45度である。
その他の一般的な角度では、ビームの傾き角とガントリー角度の正接との比が位相進みの差Δψのcosとなる。これによると、あるガントリー角度でのビームの傾き角を測定することで位相進みの差を測定することができることになる。この原理に基づいて本実施例における輸送装置調整方法の位相進みの差を算出している。
そのほか、位相進みの差の測定には、ビーム形状と位相進みの差の関係を用いることもできる。用いる式の選択は測定体系や測定精度から適宜最適なものを選べばよい。
上述した本実施例の粒子線治療システムやその粒子線治療システムのビーム輸送装置の調整方法では、回転輸送装置520内の四極電磁石571〜577の電源850の出力電流の値として、回転輸送装置520内のビームの進行方向に垂直なX方向とY方向のベータトロン振動の位相進みの差がπの整数倍となるよう調整された値とする。その上で、ビームを照射点630に対して輸送する際は、この位相進みの差がπの整数倍となるよう調整されたパラメータに基づいて電源850の出力電流値を制御装置800より各四極電磁石571〜577に対して出力するよう制御する。
よって、照射点630におけるビームサイズおよびビームの形状(ビームの長軸と短軸の長さ)をガントリー600の回転角度の関係に依存せずに一定とすることができ、ビームの照射精度の向上を実現することができる。また、回転輸送装置520の回転角度毎の四極電磁石571〜577の制御パラメータを演算する必要がなくなり、制御装置の制御系統の構造を簡易にすることができ、調整および制御が従来に比べて容易となる。
また、回転輸送装置520内の各機器の制御パラメータや、位相進みの差をπの整数倍とするための調整過程の各種パラメータを調整者が確認するためのHMI810を備えていることにより、位相進みの差がπの整数倍となるよう調整する作業が実施しやすくなり、効率的な調整を実施することができる。よって、より効率的に照射点630におけるビームサイズおよびビームの形状をガントリー600の回転角度の関係に依存せずに一定とする調整を実施することができる。
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
例えば、本実施例の構成は一例としてシンクロトロンを用いた粒子線治療システムを挙げたが、加速器の種類はシンクロトロンに限らずサイクロトロンやシンクロサイクロトロンとすることができる。
また、ビームの利用目的は、粒子線治療に限らず物理実験や放射光源としての利用とすることができる。
更に、粒子線として陽子ビームを用いる場合について説明したが、粒子線は陽子ビームに限られず、炭素イオン等の重イオン線を用いることができる。
100…粒子線治療システム、
200…イオン源、
300…入射器、
400…シンクロトロン、
410…取り出し用偏向電磁石、
420…シンクロトロン出射点、
500…ビーム輸送装置、
510…固定輸送装置、
520…回転輸送装置、
530…輸送経路、
551〜554…偏向部、
561〜567…四極電磁石、
571〜577…四極電磁石、
600…回転ガントリー、
610…回転軸、
630…照射点、
700…照射装置、
800…制御装置、
810…HMI、
820…記憶装置、
830…データ処理装置、
850…電源。

Claims (7)

  1. 荷電粒子を加速し、荷電粒子ビームとして取り出す加速器と、
    前記荷電粒子ビームを照射点まで輸送するビーム輸送装置と、
    前記加速器、前記ビーム輸送装置を制御する制御部とを備え、
    前記ビーム輸送装置は、
    屋に対して固定された固定輸送装置と、
    この固定輸送装置の下流に接続された回転輸送装置であって、前記建屋に対して回転自在に設置され、前記建屋に対して固定された前記照射点に対してその回転によって前記荷電粒子ビームを照射する角度を回転自在に定める回転輸送装置とを有し、
    前記回転輸送装置の先の前記照射点にある照射対象に対して前記荷電粒子ビームを照射するための粒子線治療システムにおけるビーム輸送装置の調整方法であって、
    前記回転輸送装置内のビームの進行方向に垂直な面内の直する二方向のベータトロン振動の位相進みの差がπの整数倍となるよう、前記制御部における前記回転輸送装置の制御パラメータを調整する
    ことを特徴とするビーム輸送装置の調整方法。
  2. 請求項1に記載のビーム輸送装置の調整方法において、
    前記位相進みの差を、前記回転輸送装置中の荷電粒子ビームの形状の前記回転輸送装置の回転角に対する依存性を測定することで算出する
    ことを特徴とするビーム輸送装置の調整方法。
  3. 請求項1に記載のビーム輸送装置の調整方法において、
    前記位相進みの差を、この位相進みの差の余弦を前記荷電粒子ビームの傾き角の正接と前記回転輸送装置の回転角の正接の比として算出し、この位相進みの差の余弦から前記位相進みの差を算出する
    ことを特徴とするビーム輸送装置の調整方法。
  4. 請求項1に記載のビーム輸送装置の調整方法において、
    調整者は、前記制御部における前記回転輸送装置の制御パラメータ、前記位相進みの差をπの整数倍とするための調整過程の各種パラメータをインターフェイスによって確認する
    ことを特徴とするビーム輸送装置の調整方法。
  5. 患者の患部に荷電粒子ビームを照射する粒子線治療システムであって、
    荷電粒子を加速し、前記荷電粒子ビームとして取り出す加速器と、
    前記荷電粒子ビームを照射点まで輸送するビーム輸送装置と、
    前記加速器、前記ビーム輸送装置を制御する制御部とを備え、
    前記ビーム輸送装置は、
    屋に対して固定された固定輸送装置と、
    この固定輸送装置の下流に接続された回転輸送装置であって、前記建屋に対して回転自在に設置され、前記建屋に対して固定された前記照射点に対してその回転によって前記荷電粒子ビームを照射する角度を回転自在に定める回転輸送装置とを有し、
    前記制御部は、前記回転輸送装置内のビームの進行方向に垂直な面内の直する二方向のベータトロン振動の位相進みの差がπの整数倍となるよう調整された制御パラメータに基づいて前記回転輸送装置の制御を行う
    ことを特徴とする粒子線治療システム。
  6. 請求項5に記載の粒子線治療システムにおいて、
    前記回転輸送装置の制御パラメータ、前記位相進みの差をπの整数倍とするための調整過程の各種パラメータを調整者が確認するためのインターフェイスを更に備えた
    ことを特徴とする粒子線治療システム
  7. 請求項5に記載の粒子線治療システムにおいて、
    前記制御パラメータは、前記回転輸送装置の回転角に依存しない
    ことを特徴とする粒子線治療システム
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