JP6117675B2 - 粒子線治療装置 - Google Patents

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本発明は、陽子線または炭素イオン線等の重イオン線の照射によってがんなどの腫瘍を治療する粒子線治療装置に関する。
がん治療法の一つとして、患部に陽子あるいは炭素イオン等の重イオンのイオンビームを照射する粒子線治療が知られている。
陽子や炭素イオン等のイオンを高エネルギーで物質に入射すると、飛程の終端で多くのエネルギーを失う。粒子線治療では、この性質を利用し、がん細胞で多くのエネルギーを失うように、イオンビームを患者に照射する。すると、周囲の健康な組織への損傷を抑えつつ、がん細胞を破壊できる。粒子線治療ではイオンビームの空間的な広がりとエネルギーを調整し、患部の形状に合わせた線量分布を形成する。
イオンビームはイオン源で生成したイオンを加速器で加速することで得る。ビームは加速器から輸送装置を経て、照射装置に輸送される。照射装置は患部の形状に合わせた線量分布を形成する。
線量分布の形成方法には、ビームを散乱体に当ててビーム形状を患部形状に一致させる散乱体照射法と、細く絞ったビームを電磁石で患部に沿って走査して患部に線量を付与するスキャニング照射法がある。
いずれの照射法においても、任意の方向からビームを患部へ照射可能とするために、回転ガントリーに照射装置とビームの輸送装置とを搭載することがある。
回転ガントリーに搭載可能な輸送装置の電磁石配置には、例えば、特許文献1に記載の一平面内にビーム軌道を収めるグースネック型と、特許文献2に記載の二つの平面でビーム軌道を形成するコークスクリュー型とがある。
特開2006−166947号公報 米国特許4,812,658号
このような粒子線治療装置をさらに普及させるために、装置の小型化、低コスト化等が求められている。
しかし、特許文献1に記載したようなグースネック型輸送装置では、任意の方向からビームを照射可能とするための回転駆動機構が非常に大きくなり、設置面積が非常に大きく、装置の小型化が困難であるとの課題があった。
また、特許文献2に記載したようなコークスクリュー型輸送装置では、設置面積は特許文献1に記載したようなグースネック型に比べて小さくできるものの、ビームの総偏向角が大きく、偏向電磁石の員数の増大や偏向電磁石の大型化を招くとの課題がある。
更には、治療室の設置スペースが非常に狭くなるため、患者に圧迫感を与えてしまうとの課題があった。
本発明は、このような課題に対してなされたものであって、従来のコークスクリュー型輸送装置よりもビームの総偏向角度を抑制することができる回転輸送系を備えた粒子線治療装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、患者の患部に荷電粒子ビームを照射する粒子線治療システムであって、電粒子を加速し、前記荷電粒子ビームとして取り出す加速器と、前記荷電粒子ビームを照射点まで輸送するビーム輸送系とを備え、このビーム輸送系は、前記照射点がその内部に存在する建屋に対して固定された固定輸送系と、この固定輸送系の下流に接続された回転輸送系であって、前記建屋に対して回転自在に設置され、前記建屋に対して固定された前記照射点に対してその回転によって前記荷電粒子ビームを照射する角度を回転自在に定める回転輸送系とを有し、この回転輸送系は、前記荷電粒子ビームを偏向させる複数の偏向部と、この複数の偏向部間を接続し、前記荷電粒子ビームを直進させる複数の直線部とが、前記荷電粒子ビームの軌道上に設置されており、前記回転輸送系内部において、前記複数の偏向部のうち、一つの偏向部とその直前の直線部と直後の直線部とから構成される平面を、少なくとも3つ以上有し、前記少なくとも3つ以上の平面のうち、前記固定輸送系に最も近い平面に属する偏向部での前記荷電粒子ビームの総偏向角度が90度未満であることを特徴とする。
本発明によれば、従来のグースネック型輸送装置に比べて装置を小型化できるとともに、従来のコークスクリュー型輸送装置よりもビームの総偏向角度を抑制することができる。このため、従来よりも偏向電磁石の員数の低減や小型化が可能であるとともに、更には治療室の設置スペースを広くとることができ、患者に対する心理的負担を従来に比べて軽減することができる。
本発明の粒子線治療システムの実施形態の全体構成を示す図である。 本発明の粒子線治療システムの実施形態における回転輸送系の平面の概要を説明する概念図である。 図2のA方向からの矢視図である。 図2のB方向からの矢視図である。 図2のC方向からの矢視図である。 本発明の粒子線治療システムの実施形態におけるビームサイズのふるまいを示す図である。 本発明の粒子線治療システムの実施形態における分散関数のふるまいを示す図である。 本発明の粒子線治療システムの実施形態において、回転輸送系を構成する最上流の平面が水平となる場合の平面内の機器配置と回転輸送系のビーム軌道の射影位置関係を示す図である。 従来の粒子線治療システムに供えられた回転輸送系の構成を示す図である。 従来の粒子線治療システムに供えられた回転輸送系におけるビームサイズのふるまいを示す図である。 従来の粒子線治療システムに供えられた回転輸送系における分散関数のふるまいを示す図である。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
本実施形態は、加速器としてシンクロトロンを用いた粒子線治療システムであり、粒子線として炭素イオンのビームを用いる場合について説明するが、もちろんこれに限定されない。図1には本実施形態の全体構成図を示す。
本実施形態の粒子線治療システム100は、イオン源200、入射器300、シンクロトロン400、送装置(ビーム輸送系)500、回転ガントリー600、照射装置700とを備える。
イオン源200にて治療用のビームとする炭素イオンを発生させ、入射器300において核子当たり運動エネルギー7MeV/uまで予備加速される。その後にシンクロトロン400に予備加速したビームを入射し、その後治療に用いるエネルギーまで加速する。本実施形態の粒子線治療システム100では、シンクロトロン400で加速したビームの運動エネルギーは最大440MeV/uである。また、440MeV/u以下の任意の指定された運動エネルギーのビームを取り出すことができる。
実際の治療時には、患者ごとに作成された治療計画に従って、シンクロトロン400から取り出されるビームの運動エネルギーは決定される。
シンクロトロン400から取り出されるビームは、取り出し用偏向電磁石410を通過して輸送装置500に導入される。
輸送装置500は、建屋に対して固定された固定輸送装置510と、回転軸610を軸として固定輸送装置510に対して回転可能に設けられた回転ガントリー600とを備えている。この輸送装置500では、固定輸送装置510と回転ガントリー600に固定された回転輸送系520とが直列に接続されている。
回転輸送系520の終点は照射点540であり、治療時においては照射点540に患部が位置するように患者をベッドに固定している。この状態でビームを照射することで、治療計画によって定められた線量が患部に付与される。
輸送装置500内のビーム経路530は、真空ポンプによって真空引きされている。経路530中には、ビームを偏向させる偏向部551、ビームを直進させる直線部で収束あるいは発散させる四極電磁石(不図示)、ビームの形状を測定するプロファイルモニタ628等が設置されている。
本システムはスキャニング照射法が可能な照射装置であるため、照射装置700は、回転ガントリー600内に設けられている。
この照射装置700は、ビームの軌道に対して垂直な平面内の直交する二方向(以下、まとめて横方向と定義する)に独立にビームが走査させる二台の走査電磁石、ビームモニタ等を備えている。
本実施形態の回転輸送系520について、さらに詳細に説明する。
回転輸送系520は、回転ガントリー600の内部に設置されており、回転軸610を軸とした回転ガントリー600の回転とともに、照射点540へのビームの照射方向を変えられるよう回転可能に構成されている。回転輸送系520は三平面でビーム軌道を形成するビーム輸送装置である。
回転輸送系520内での様々な電磁石の配置を図2に示す。
本実施形態の回転ガントリー600は、6つの偏向部(ビームの上流側より611〜616)と7つの直線部(ビームの上流側より621〜627)よりなる。
6つの偏向部内には、それぞれ均一磁場を励起し、ビームを偏向させる偏向電磁石がそれぞれ1台ずつ設けられている。
偏向部611、偏向部614および偏向部615でのビーム軌道の偏向条件は、偏向角60度・偏向半径2.2mである。
偏向部612および偏向部613での偏向条件は、偏向角45度・偏向半径2.2mである。
偏向部616での偏向条件は、偏向角75度・偏向半径2.7mである。
直線部621〜627では、ビームは直線の軌道に沿って移動する。この直線部621〜627には、ビーム軌道上にはビームの収束発散を行う四極電磁石(不図示)、ビームの横方向形状を測定するプロファイルモニタ(直線部624のみに示したプロファイルモニタ628等)等が設置されている。
直線部621〜627の長さは、それぞれ、1.5m・3.5m・2m・1.5m・2m・2.306m・3.694mである。
直線部621〜626それぞれには、上流側(直線部621側)から1台・4台・2台・1台・2台・2台の四極電磁石が設置されており、通過するビームサイズを真空ダクト内に抑えるとともに、照射点540におけるビームサイズと分散関数を後述の方法で調整している。
直線部527は、照射装置700内を介して照射点540に接続されており、この直線部527には、スキャニング照射のためにビームを軌道に対して垂直な面内で走査するための走査電磁石が2台設置されている。
また、本実施形態の回転輸送系520は、その内部において、偏向部611〜616のうち、ある偏向部とその直前の直線部と直後の直線部とから構成される平面を、回転輸送系520内の軌道に三個描く。図2において、A方向から見た図を図3に、B方向から見た図を図4に、C方向から見た図を図5にそれぞれ示す。
まず、図2乃至図5に示すように、一つ目の平面631は、固定輸送装置510との接続点550から直線部621と偏向部611を経て直線部622までの軌道で構成される。
次いで、偏向部611の下流にある直線部622から、偏向部612,直線部623,偏向部613,直線部624までのビーム軌道は、2つ目の平面632内にある。
具体的には、偏向部612とその直前の直線部622とその直後の直線部623とで構成される平面と、偏向部613とその直前の直線部623とその直後の直線部624とで構成される平面とは同一平面に存在するため、これらは一つの平面(平面632)となる。
更に、直線部624から、偏向部614,直線部625,偏向部615,直線部626,偏向部616,照射点540を含む直線部627までのビーム軌道は、平面631,632とは別の、3つ目の平面633内にある。
具体的には、偏向部614とその直前の直線部624とその直後の直線部625とで構成される平面、偏向部615とその直前の直線部625とその直後の直線部626とで構成される平面、偏向部616とその直前の直線部626とその直後の直線部627とで構成される平面の3つの平面は同一平面に存在するため、これらは一つの平面(平面633)となる。
第一番目の偏向部611がある平面631と、第二・第三番目の偏向部612・613がある平面632との成す角は0度より大きく、90度である。
また、平面632と、第四〜第六偏向部614〜616がある平面633との成す角は30度である。
回転ガントリー600の回転軸610は直線部621内のビーム軌道を含み、平面631内にある。さらに照射点540は回転軸610上にあるため、照射点540は平面631と平面633との交線上に存在する。
平面631と平面633との交線と直線部627上のビーム軌道とは直交しており、結果、回転軸610と平面633が直交する。
よって回転ガントリー600の回転角度によって照射点540への照射方向を制御できる。この配置によって、本実施形態においては第一の平面631が水平であるとき、最下流の直線部627は鉛直から15度傾いた方向となる。
次に、本実施形態におけるビーム輸送の方法について述べる。
本実施形態で用いるスキャニング照射法を用いた粒子線治療装置においては、腫瘍外への線量を抑制するにはビームの進行方向に対して垂直な平面内でのビームサイズを小さく抑制することが有効である。
以下ではビームの進行方向に対して垂直な平面内の直交する二方向を選び、X,Yと座標軸を定義する。偏向電磁石中ではX方向を偏向面と平行とし、Y方向を偏向面に垂直な方向とする。以上の定義に基づき、ビームサイズの調整に必要なビーム光学について述べる。
ビームを構成する個々の重粒子が偏向電磁石や四極電磁石や磁場のない真空ダクト内(以上をまとめて輸送機器と以下では述べる)を通過した際、通過後のビーム位置は輸送行列なる行列を用いて次式1のように表せる。
Figure 0006117675
但し、数式1中のxは設計軌道からのX方向の位置ずれ、x’は軌道の傾きずれである。また、yおよびy’は設計軌道からのY方向の位置ずれと軌道の傾きである。さらに、δは基準運動量からのずれである。
この数式1で表される(x,x’,y,y’,δ)で定義される空間を位相空間と呼び、位相空間上の点を指定するベクトルとして位相空間ベクトルxが定義できる。下付き添え字のiは機器入射時のビームの状態を表し、下付き添え字のfは機器出射時のビーム状態を表すこととする。
上述した数式1より、輸送機器に固有の輸送行列Rを入射時の位相空間ベクトルに掛けることによってビームがその機器を通過した後の位相空間ベクトルが求めることができる。すなわち輸送行列Rが収束・発散の効果をあらわす。
輸送行列Rの例として磁場のない直線部と偏向電磁石と四極電磁石の輸送行列をそれぞれR,RBM,RQMと定義すると、その成分はそれぞれ次式2−4のように表すことができる。
Figure 0006117675
Figure 0006117675
Figure 0006117675
ただし数式2―4中のLは各輸送機器中のビームの設計軌道の長さであり、αは偏向電磁石の偏向角である。kは四極電磁石における収束力の強さを表す量であり、次式5のように定義される。
Figure 0006117675
kが虚数になる場合も数式5は有効であり、計算の際は適宜三角関数を双曲線関数に置き換えればよい。
ここで、数式4中の四極電磁石の輸送行列の(2,1)成分と(3,4)成分に注目すると、kが実数の場合はX方向の輸送行列で負となり、Y方向の輸送行列において正となる。逆にkが純虚数の場合は正負が逆となる。
この成分が正の場合はビームを構成する各粒子は変位に比例して変位と同じ方向に力を受ける。そのため、ビーム全体としては発散の作用を受ける。一方負の場合はビームを構成する各粒子が変位とは逆向きに力を受けるので、ビーム全体としては収束の作用を受ける。
同様に、偏向電磁石においてはX方向に収束し、Y方向は自由空間と同じく収束も発散もしない。
ところで、一般的に、イオンビームのビームサイズ等のパラメータを数学的に表すためには、ビーム位置と傾きの分散共分散行列Σ(Σ行列と以下では呼ぶ。)を用いる。このΣ行列の定義は次式6に示すとおりである。
Figure 0006117675
Σ行列は実対称行列であり、各成分はビームを構成する粒子に関する位相空間上の位置の積の平均である。
例えば、Σ行列の(1,1)成分はX方向での軌道からのずれの分散であり、(2,2)成分はビームの発散角の分散である。また、(1,2)成分は(1,1)成分の軌道に沿った微分に比例する量であり、ビームサイズの位置変化を表す。ビームサイズは(1,1)成分の二乗根をとればビームの空間的な広がりを表すビームサイズとなる。Y方向についても同様の議論が成立する。
輸送機器がΣ行列に与える効果も輸送行列Rによって表現でき、輸送機器に入射する点でのΣ行列をΣi、輸送機器から出射する点でのΣ行列をΣfと書くと、両者は次式7によって結びつけられる。
Figure 0006117675
但し、右上添え字のTは転置行列を表す。輸送行列の行列式は1であるため、Σ行列の行列式は不変である。
通常の輸送系では、数式6において、空間的に直交する位相空間成分同士の共分散(1,3)(1,4)(2,3)(2,4)(3,1)(3,2)(4,1)(4,2)成分は0である。
しかし本実施形態では、偏向部611,612,614が、直前の直線部におけるX方向とY方向が互いに異なるように配置されている。従って、偏向部611,612,614の入射点において、ビーム進行方向を軸とする回転に伴う座標変換(以下、捻り作用と定義する)が必要となる。この座標変換は、次式8に示す輸送行列RROTとして表現することができる。
Figure 0006117675
但し、数式8中のθは変換前後のX軸の成す角であり、捻り角と定義する。この捻り角は、変換前のX軸からY軸に向かう回転を正とする。
このような輸送行列があると、Σ行列の共分散項(1,3)(1,4)(2,3)(2,4)(3,1)(3,2)(4,1)(4,2)成分も0でない値をとりうる。このことをXY結合がある状態と定義する。XY結合が生じているビームにおいては、XY面内におけるビームの空間的形状に傾きがあることになる。
また、数式8の(1,5)(2,5)(3,5)(4,5)成分が、数式6の運動量ずれδとの相関を表すパラメータに対応する。これらの成分は照射点において0にすることで、ビームサイズを小さくすることができる。特にこれらの成分と運動量分散である(5,5)成分の比を分散関数といい、それぞれηx,η’x,ηy,η’yと表す。
分散関数の輸送による変換は数式7から導くことができ、次式9に表すような変換となる。
Figure 0006117675
ここで、分散関数とその勾配が0の時は、数式9に記載するように、輸送行列の第5列の成分が0であるとき分散関数とその勾配が不変である。輸送行列の第5列の成分は偏向電磁石のみで値を持つので、イオンビームが直進している際に、直線部上のある点ですべての分散関数が0であるならば、その直線部上のあらゆる点で0となる特徴を有することが数式9からわかる。
また、数式3に示すように、イオンビームが、偏向電磁石を通過する際は、X方向の分散関数にある量が加算されるため、分散関数が0のビームが偏向電磁石に入射すると、出射点ではX方向の分散関数が0でない値となる。
逆に、直進するイオンビームの分散関数を0とするには、直前の偏向電磁石の入射点ではX方向に特定の値の分散関数を持たせることが必要となる。
イオンビームが直進する直線部において0でない分散関数がある場合は、四極電磁石の励磁量を調整することで直線部の出射点における分散関数を調整することができる。
以上をまとめると、回転輸送系520内では、四極電磁石の調整により、回転輸送系520での輸送行列を調整し、照射点におけるΣ行列を設計値に調整することになる。その際、Σ行列の対角成分以外の値を0とすることで、ビームサイズを極小に抑えることができることがわかる。
以上の条件を満たす、回転輸送520における本実施形態における分散関数とビームサイズの振る舞いを図6および図7に示す。
回転輸送520は、前述の通り全長30.672mの軌道長があり、途中の偏向部611,612,614の入射点においてそれぞれ捻り作用が施される。
捻り角はそれぞれ、15度,―90度,−30度である。
図6のグラフにおいて、横軸はビーム軌道の進行方向距離、縦軸はビームサイズである。X方向のサイズをひし形でプロットし、Y方向を正立した四角形でプロットしている。図6中のBMは各偏向部中を通過する区間を示しており、点線矢印で示した位置が前述の捻り作用の発生する位置である。
同様に、図7に分散関数ηxとηyの振る舞いを示した。
図7に示すように、分散関数とその勾配が固定輸送装置510との接続点550において0である場合、最初に偏向部611でX方向に分散関数が生じる。
偏向部611を通過したイオンビームは偏向部612に向かうが、ここで、偏向部612におけるXY座標系は、偏向部611に対して、捻り作用によって90度回転した座標系となる。この偏向部612直前の捻り作用によって、ηxとηyが交換される。すなわち、偏向部612の入射直前でηxが0となり、代わりにηyが発生する。しかし、直後の偏向部612は、捻り作用が施された後の座標系においてイオンビームをX方向に関して偏向するため、偏向部612の入射直前では0であったηxが、偏向部612を通過することによって0でない値を持つこととなる。したがって、この偏向部612の入射点から偏向部614の入射点に至る、平面632内ではηxとηyの両方が0でない値を持つ。すなわち、このa部で示す範囲でXYカプリングが生じていることが分かる。
ここで、照射点540における分散関数を消すために、前述の分散関数の性質から最下流の平面633に入る偏向部614の入射点においてY方向の分散関数とその勾配(それぞれηyとη’y)を0としなくてはならない。偏向部614は、その下流直線部とその入射点との間である偏向部614内において捩り作用による座標変換があるため、座標変換の前後で式に示すような捻り角−30度に対応する座標変換が分散関数に施される。その際の変換は次式10に示す変換となる。
Figure 0006117675
このため、この変換によってηyとη’yが0となるためには、次式11に示す関係が必要である。
Figure 0006117675
なお、輸送系の四極電磁石の調整によってこの数式11に示す条件を満足させるために、偏向部614の直前にビームサイズの測定が可能なプロファイルモニタ628を設置し、間接的に分散関数を測定できるようにすることで、調整者にとって調整のしやすい体系としている。
プロファイルモニタにおいて、分散関数を測定するには、シンクロトロン400から出射されるビームの運動量を微小量変化させ、運動量変化によって生じるプロファイルモニタ上の位置変化を観測し、それら量の間の比例係数として分散関数を得る。この際に本実施例の回転輸送520では式11で示される分散関数の関係を偏向部614の入射点において満たす必要がある。この調整を容易化するために、プロファイルモニタを偏向部614の上流の直線部624に設置し、さらにそのプロファイルモニタは平面633におけるX方向とY方向のプロファイルを測定できるように設置する。すなわち、直線部624のX方向とY方向に対して30度傾けてプロファイルモニタを設置する。これにより、偏向部614の入射点において受ける捻りに伴う座標変換を施したあとの分散関数を直接測定できる。すると、このプロファイルモニタで測定されるηyとその勾配を0となるように、上流の四極電磁石の励磁量を調整すればよい。
これに対し、従来のコークスクリュー型の回転輸送装置でのビーム輸送は以下のようになる。従来型のコークスクリュー型の回転輸送装置は、図9に示すように、本発明で定義されるような、偏向部のうち、ある偏向部とその直前の直線部と直後の直線部とから構成される平面を2つ有している。
具体的には、偏向部711とその直前の直線部721とその直後の直線部722とで構成される平面と、偏向部712とその直前の直線部722とその直後の直線部723とで構成される平面とは同一平目であり、これらの平面で1つ目の平面641を構成する。
また、偏向部713とその直前の直線部723とその直後の直線部724とで構成される平面と、偏向部714とその直前の直線部724とその直後の直線部725とで構成される平面と、偏向部715とその直前の直線部725とその直後の直線部726とで構成される平面と、偏向部716とその直前の直線部726とその直後の直線部727とで構成される平面とは同一平目であり、これらの平面で2つ目の平面642を構成し、計2つの平面を有するのみである。
更に、従来型のコークスクリュー型の回転輸送系では、2つある平面のうち、最も固定輸送装置510に近い平面である最初の平面641内で90度ビームを偏向している。このため、XYカプリングが生じない輸送系となる。そのために、設計や調整が簡単であるものの、照射点541が最上流の偏向部に近接することになる。
このような構成の従来型回転輸送装置720でビーム輸送する場合、横方向のビームサイズを図10に、分散関数の振る舞いを図11に示す。
従来型の回転輸送系720においても、平面641と平面642を切り替える偏向部713の入射点で捻り作用が働く。ここでの捻り角は90度であるため、分散関数とその勾配は捻りの点において0とすることで、照射点541における分散関数を消去することができる。すると、従来型の回転輸送装置ではY方向の分散関数ηyの生じる区間が存在せず、XYカプリングが生じない。
本実施形態の回転輸送520を用いることで、照射点540の周囲の空間を広くとることができる。その原理について図8および図9を参照しつつ述べる。
図8は回転輸送系520を構成する最上流の平面631が水平となる場合の平面631内の機器配置と回転輸送系520のビーム軌道の射影位置542を示す図である。比較のために、従来のコークスクリュー型の回転輸送系のビーム軌道の射影位置543も図8に示す。
図8に示すように、本実施形態の固定輸送装置510では、最上流の偏向部の偏向角度を90度未満とし、その下流において傾斜した平面内で偏向し、さらに下流において鉛直面内でビームを偏向することによって、照射点540を平面631上に配置し、かつ照射点540の周囲に約2m四方の治療スペース800を確保できていることがわかる。
一方、従来型のコークスクリュー型の回転輸送系は、図9に示すように、本発明で定義されるような、偏向部のうち、ある偏向部とその直前の直線部と直後の直線部とから構成される平面を2つ有している。
本実施形態で用いる偏向電磁石と同一構成の偏向半径の90度偏向電磁石を用いて従来型のコークスクリュー型の回転輸送系を構成した場合は、図8に示すように、ビーム軌道が、射影位置543のようになり、白抜きの丸で示す位置541に照射点が配置される。
このように照射点が配置される場合、輸送系上の機器との干渉から、治療室の大きさが制限されるため、照射点541の周囲に約1m四方程度の治療スペース810しか用意することができない。
このように、従来のコークスクリュー型回転輸送装置において治療スペースが広くとれないという課題に対して、本実施形態の回転輸送装置を用いればコークスクリュー型の利点である設置面積の小ささを保ちつつ治療スペースを広く確保することが可能である。
なお、本発明は上記の実施形態に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
例えば、上述の実施形態では、偏向部のうち、ある偏向部とその直前の直線部と直後の直線部とから構成される平面が3つの場合について説明したが、3つより多い平面を有するものであってもよい。この場合、少なくとも3つ以上の平面の各々の交差箇所において、荷電粒子ビームの進行方向を軸とする回転作用である捻りを生じさせる、最も固定輸送装置に近い平面と最も照射点に近い平面よりひとつ前の平面以外のその他の平面内で、荷電粒子ビームの進行方向を軸とする回転作用である捻りを生じさせる、XYカップリングを生じさせる、荷電粒子ビームにおける分散関数ηx,ηyの何れもが0でない値をとる箇所を有するように構成することで、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
また、3つより多い平面を有する場合において、ビームプロファイルモニタは、照射点に最も近い平面に属する直線部のうち、最も固定輸送系に近い直線部に設置すれば、同様の効果が得られる。
100 子線治療システム
200 イオン源
300 入射器
400 シンクロトロン
410 取り出し用偏向電磁石
500 ビーム輸送装置
510 固定輸送装置
520 回転輸送装置
540〜541 照射点
600 回転ガントリー
610 回転軸
611〜616 偏向部
621〜627 直線部
628 ビームプロファイルモニタ
631〜633 平面
700 照射装置
800 治療スペース

Claims (5)

  1. 患者の患部に荷電粒子ビームを照射する粒子線治療システムであって、
    電粒子を加速し、前記荷電粒子ビームとして取り出す加速器と、
    前記荷電粒子ビームを照射点まで輸送するビーム輸送系とを備え、
    このビーム輸送系は、
    前記照射点がその内部に存在する建屋に対して固定された固定輸送系と、
    この固定輸送系の下流に接続された回転輸送系であって、前記建屋に対して回転自在に設置され、前記建屋に対して固定された前記照射点に対してその回転によって前記荷電粒子ビームを照射する角度を回転自在に定める回転輸送系とを有し、
    この回転輸送系は、前記荷電粒子ビームを偏向させる複数の偏向部と、この複数の偏向部間を接続し、前記荷電粒子ビームを直進させる複数の直線部とが、前記荷電粒子ビームの軌道上に設置されており、
    前記回転輸送系内部において、前記複数の偏向部のうち、一つの偏向部とその直前の直線部と直後の直線部とから構成される平面を、少なくとも3つ以上有し、
    前記少なくとも3つ以上の平面のうち、前記固定輸送系に最も近い平面に属する偏向部での前記荷電粒子ビームの総偏向角度が90度未満である
    ことを特徴とする粒子線治療システム。
  2. 請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
    前記少なくとも3つ以上の平面のうち、前記照射点に最も近い平面に属する直線部のうち、最も前記固定輸送系に近い直線部にビームプロファイル測定部を備えた
    ことを特徴とする粒子線治療システム。
  3. 請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
    前記少なくとも3つ以上の平面の各々の交差箇所において、前記荷電粒子ビームの進行方向を軸とする回転作用である捻りを生じさせる
    ことを特徴とする粒子線治療システム。
  4. 請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
    前記少なくとも3つ以上の平面のうち、前記照射点に最も近い平面と前記固定輸送系に最も近い平面を除く平面内において、XYカップリングを生じさせる
    ことを特徴とする粒子線治療システム。
  5. 請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
    前記少なくとも3つ以上の平面のうち、前記照射点に最も近い平面と前記固定輸送系に最も近い平面を除く平面内において、前記荷電粒子ビームにおける分散関数ηx,ηyの何れもが0でない値をとる箇所を有する
    ことを特徴とする粒子線治療システム。
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