JP4299269B2 - 粒子線治療システム - Google Patents

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Description

本発明は、荷電粒子ビームを用いてガンや腫瘍等を治療する粒子線治療システムに関するものである。
荷電粒子として陽子や重イオンを患者の患部に照射してガンや腫瘍等を治療する治療システムは、シンクロトロン等の加速器で加速した荷電粒子ビームを、回転式(又は固定式)の照射装置に設けた輸送手段に入射して照射野形成手段へ導入し、この照射野形成手段で照射範囲を患部形状に合わせて成型した後、照射野形成手段の下方に配置した患者ベッドに横臥した患者の患部に照射するものである。
この種の治療システムの例としては、例えば特開2001−210498号公報に記載のものがある。この従来技術では、シンクロトロンから回転式照射装置までの高エネルギービーム輸送系(HEBT系)や照射装置内に備えられる輸送手段に、ビームの方向を偏向させる偏向電磁石や、ビームサイズを調節する四極電磁石が備えられている。また輸送手段の下流側には、照射野形成手段としての照射機器が設けられている。
ここで、元来、照射野形成手段において照射野形成を行う方法としては、散乱体を用いてビームを広げる方法や、ビームを走査しその重ね合わせにより照射線量の均一化を図るビーム走査法が知られている。
散乱体を用いる方法は、ビームを、例えば一種類の金属から成る第1散乱体と密度の異なる2種類の金属から成る第2散乱体とを用いて拡大するものである。このとき、2個の散乱体によるビーム強度分布の重ね合わせにより均一なビーム強度分布を実現するものであるため、各散乱体によるビーム強度分布が軸対象となるようにビーム中心(ビーム軸)が散乱体の中心軸(=照射野形成手段の設計軌道)と一致するようにビームを通さなければならない。
一方、ビーム走査法は、z方向に進むビームに対し、x方向走査電磁石及びy方向走査電磁石にそれぞれ変化する電流を流し、これによってそれぞれの電磁石に発生する磁場を時間的に変化させ、ビームをx方向およびy方向に走査するものである。このようにして、例えば単位時間あたりのx方向の走査回数を相対的に多くし、y方向の走査回数を相対的に少なくする等を行い、所望の態様の照射野を形成する。このとき、ビーム軸が設計軌道からずれた状態で走査電磁石に入射すると照射範囲が患部からずれたり、ビームの重ね合わせによる照射線量の均一化が図れないため2台の走査電磁石の所定の位置(=照射野形成手段の設計軌道)にビームを通さなければならない。
特開2001−210498号公報
上述したように、輸送手段から照射野形成手段にビームを導入する際には、前述したいずれの照射野形成方法であったとしても、ビーム軸を照射野形成手段の設計軌道に一致させる必要がある。このため、一般に、輸送手段の各構成要素は、照射野形成手段へ輸送する際に最終的にビーム軸が照射野形成手段の設計軌道と一致するように設計され、配置される。
しかしながら、現実には、輸送手段の各構成要素の形状又は寸法公差、あるいは配置又は組立誤差等(以下適宜、設置誤差という)により、ビーム軸方向が若干のずれが生じることは避けられない。そこで、上記従来技術による治療システムでは、低エネルギービーム輸送系(LEBT系)や前記高エネルギービーム輸送系(HEBT系)にステアリング電磁石を設けている。すなわち、上記従来技術では特に明確に示していないが、通常、ある一の方向(例えば偏向電磁石の偏向方向)をx軸方向、前記一の方向と垂直な方向(偏向電磁石の偏向方向と垂直方向)をy軸方向とし、例えばx方向用に2つのステアリング電磁石を用いてx軸を含む平面内におけるビームの変位と勾配とを調整するとともに、y方向用にも2つのステアリング電磁石を用いてy軸を含む平面内におけるビームの変位と勾配とを調整する。これによって、ビームの軌道を照射野形成手段の設計軌道に一致させるようになっている。
具体的には、例えば、高エネルギービーム輸送系(HEBT系)にx方向及びy方向モニタを設置してそれぞれビームの変位及び勾配を検出し、前述のx方向及びy方向各2台のステアリング電磁石を適宜励磁して軌道補正を行う。そしてこの軌道補正作業の際は、上記設置誤差がどのくらいであるかが不明であることから、通常、操作者が、手動操作によってx方向及びy方向それぞれのステアリング電磁石による偏向量(以下適宜、キック量という)を適宜大きくしたり小さくしたりして試行錯誤しつつ、その変位や勾配の変化の傾向を見ながら、ビームの位置が設計軌道に一致するように手動調整していた。
このように、従来の治療システムにおいては、各ステアリング電磁石のキック量を手動操作で変化させつつ試行錯誤にてビーム軌道を補正していたので、軌道補正作業に多大な労力と時間が必要となっていた。
特に、上記従来技術のように、輸送手段及び照射野形成手段を備えた回転照射体を回転軸心まわりに回転可能に設けることで、患部の位置や状態に合わせて適切な角度位置から照射を行えるようにしたいわゆる回転式照射装置の場合、その回転角によって自重による各構成要素の撓み量・変形量等が変化し、上記設置誤差が回転角によって変化することとなる。このため、回転照射装置の回転角を変えるたびに上記試行錯誤によるビーム軌道補正作業を繰り返す必要があり、著しく煩雑な作業となっていた。
本発明の目的は、ビーム軌道の補正を簡単にかつ素早く行うことができる粒子線治療システムを提供することにある。
(1)上記目的を達成するために、本発明は、荷電粒子ビームを設定されたエネルギーまで加速する加速器と、この加速器から出射した荷電粒子ビームを照射する回転式の照射装置とを有し、前記照射装置は、前記加速器から出射した荷電粒子ビームを輸送する第1ビーム輸送手段と、この第1ビーム輸送手段で輸送した荷電粒子ビームの照射野を形成する照射野形成手段とを備える粒子線治療システムにおいて、前記第1ビーム輸送手段に設けられた電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石よりも下流側で前記荷電粒子ビームの軌道に沿って配置され、荷電粒子ビームの通過位置を検出する第1ビーム位置検出手段と、前記第1ビーム位置検出手段より下流側で前記軌道に沿って配置され、荷電粒子ビームの通過位置を検出する第2ビーム位置検出手段と、前記第1ビーム位置検出手段より上流側の前記第1ビーム輸送手段に設けられた第1ステアリング電磁石及び第2ステアリング電磁石とを備え前記第1ステアリング電磁石及び第2ステアリング電磁石は、両方とも、前記電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石より上流側の位置に設けられ、前記粒子線治療システムは、更に、前記第1及び第2ビーム位置検出手段のそれぞれから出力される各検出信号の両方を用いて、前記第1ビーム輸送手段に含まれる電磁石の設置誤差による前記荷電粒子ビームの軌道の変位、勾配エラーを補正するよう、前記第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれによって前記荷電粒子ビームの位置を変位させるそれぞれの第1変位量を求める第1変位量算出手段と、前記それぞれの第1変位量に基づいて、前記第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれの励磁電流を制御する第1制御手段とを有する。
本発明においては、第1ビーム輸送手段に設けられた電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石よりも下流側の部分で荷電粒子ビームの通過位置を第1及び第2ビーム位置検出手段で検出し、この検出信号の両方を用いて、第1ビーム輸送手段に含まれる電磁石の設置誤差による荷電粒子ビームの軌道の変位、勾配エラーを補正するよう、第1変位量算出手段で第1及び第2ステアリング電磁石におけるそれぞれの第1変位量を求め、第1制御手段で、それぞれの第1変位量に基づいて、第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれの励磁電流を制御する。このようにして荷電粒子ビームを必要に応じて変位させて設定範囲内(例えば照射野形成手段の設計軌道)とすることができるので、各ステアリング電磁石のキック量を手動操作で変化させつつ試行錯誤にてビーム軌道を補正していた従来構造に比べ、軌道補正のための労力及び時間を大幅に低減でき、簡単かつ素早く荷電粒子ビームの軌道補正を行うことができる。
(2)上記(1)において、好ましくは、前記照射野形成手段は第1散乱体及び前記第1散乱体の下流側に配置された第2散乱体を有し、前記第1ビーム位置検出手段は前記第2散乱体よりも上流側に配置される。
(3)上記(1)において、また好ましくは、前記照射野形成手段は荷電粒子ビームを走査するビーム走査手段を有し、前記第1ビーム位置検出手段は前記ビーム走査手段よりも上流側に配置される。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1つにおいて、また好ましくは、前記第1変位量算出手段は、前記第1及び第2ビーム位置検出手段の各検出信号に基づき、前記荷電粒子ビームの位置が前記照射野形成手段内での設定軌道内に入るように前記第1変位量を求める。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1つにおいて、また好ましくは、前記第1変位量算出手段は、少なくとも、前記第1及び第2ステアリング電磁石を含む前記第1ビーム輸送手段の各輸送要素の輸送特性をそれぞれ表す複数の輸送行列を用いた近似モデルにより、前記第1変位量を求める。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つにおいて、また好ましくは、前記第1及び第2ステアリング電磁石のうち少なくとも一方が、一の方向へ荷電粒子ビームを変位させる機能と、前記一の方向に垂直な他の方向へその荷電粒子ビームを変位させる機能との両方を備えている。
これによりステアリング電磁石の個数を低減することができ、また設置スペースを縮小できることで照射装置の小型化も図れる。
(7)上記目的を達成するために、本発明は、荷電粒子ビームを設定されたエネルギーまで加速する加速器と、この加速器から出射した荷電粒子ビームを照射する回転式の照射装置と、前記加速器から出射した荷電粒子ビームを前記照射装置へ輸送する第2ビーム輸送手段とを備える粒子線治療システムにおいて、前記第2ビーム輸送手段に設けられた電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石よりも下流側で前記荷電粒子ビームの軌道に沿って配置され、前記第2ビーム輸送手段における荷電粒子ビームの通過位置を検出する第3ビーム位置検出手段と、前記第3ビーム位置検出手段より下流側において前記第2ビーム輸送手段における荷電粒子ビームの通過位置を検出する第4ビーム位置検出手段と、前記第3ビーム位置検出手段より上流側で前記第2ビーム輸送手段に設けられた第3ステアリング電磁石及び第4ステアリング電磁石とを備え前記第1ステアリング電磁石及び第2ステアリング電磁石は、両方とも、前記電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石より上流側の位置に設けられ、前記粒子線治療システムは、更に、前記第3及び第4ビーム位置検出手段のそれぞれから出力される各検出信号の両方を用いて、前記第2ビーム輸送手段に含まれる電磁石の設置誤差による前記荷電粒子ビームの軌道の変位、勾配エラーを補正するよう、前記第3及び第4ステアリング電磁石のそれぞれによって前記荷電粒子ビームの位置を変位させるそれぞれの第2変位量を求める第2変位量算出手段と、前記それぞれの第2変位量に基づいて、前記第3及び第4ステアリング電磁石のそれぞれの励磁電流を制御する第2制御手段とを有する。
本発明においては、第2ビーム輸送手段に設けられた電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石よりも下流側の部分で荷電粒子ビームの通過位置を検出する荷電粒子ビームの通過位置を第3及び第4ビーム位置検出手段で検出し、この検出信号の両方を用いて、第2ビーム輸送手段に含まれる電磁石の設置誤差による荷電粒子ビームの軌道の変位、勾配エラーを補正するよう、第2変位量算出手段で第3及び第4ステアリング電磁石におけるそれぞれの第2変位量を求め、第2制御手段で、それぞれの第2変位量に基づいて、前記第3及び第4ステアリング電磁石のそれぞれの励磁電流を制御する。このようにして荷電粒子ビームを必要に応じて変位させて設定範囲内(例えば照射野形成手段の設計軌道)とすることができるので、各ステアリング電磁石のキック量を手動操作で変化させつつ試行錯誤にてビーム軌道を補正していた従来構造に比べ、軌道補正のための労力及び時間を大幅に低減でき、簡単かつ素早く荷電粒子ビームの軌道補正を行うことができる。
(8)上記(7)において、好ましくは、前記第2変位量算出手段は、前記第3及び第4ビーム位置検出手段の各検出信号に基づき、前記荷電粒子ビームの位置が前記照射装置内での設定軌道内に入るように前記第2変位量を求める。
(9)上記(7)又は(8)において、また好ましくは、前記第2変位量算出手段は、少なくとも、前記第3及び第4ステアリング電磁石を含む前記第2ビーム輸送手段の各輸送要素の輸送特性をそれぞれ表す複数の輸送行列を用いた近似モデルにより、前記第2変位量を求める。
(10)上記(7)〜(9)のいずれか1つにおいて、また好ましくは、前記第3及び第4ステアリング電磁石のうち少なくとも一方が、一の方向へ荷電粒子ビームを変位させる機能と、前記一の方向に垂直な他の方向へその荷電粒子ビームを変位させる機能との両方を備えている。
これによりステアリング電磁石の個数を低減することができ、また設置スペースを縮小できることで照射装置の小型化も図れる。
(11)上記目的を達成するために、本発明は、荷電粒子ビームを設定されたエネルギーまで加速する加速器と、この荷電粒子ビームを照射する固定式の照射装置と、前記加速器から出射した荷電粒子ビームを前記照射装置に輸送するビーム輸送手段とを備える粒子線治療システムにおいて、前記ビーム輸送手段に設けられた電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石よりも下流側で前記荷電粒子ビームが通る軌道に沿って配置され、荷電粒子ビームの通過位置を検出する第1ビーム位置検出手段と、前記第1ビーム位置検出手段より下流側で前記軌道に沿って配置され、荷電粒子ビームの通過位置を検出する第2ビーム位置検出手段と、前記第1ビーム位置検出手段より上流側の前記ビーム輸送手段に設けられた第1ステアリング電磁石及び第2ステアリング電磁石とを備え前記第1ステアリング電磁石及び第2ステアリング電磁石は、両方とも、前記電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石より上流側の位置に設けられ、前記粒子線治療システムは、更に、前記第1及び第2ビーム位置検出手段のそれぞれから出力される各検出信号両方を用いて、前記ビーム輸送手段に含まれる電磁石の設置誤差による前記荷電粒子ビームの軌道の変位、勾配エラーを補正するよう、前記第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれによって前記荷電粒子ビームの位置を変位させるそれぞれの第1変位量を求める第1変位量算出手段と、前記それぞれの第1変位量に基づいて、前記第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれの励磁電流を制御する第1制御手段とを有する。
(12)上記(11)において、好ましくは、前記照射装置は第1散乱体及び前記第1散乱体の下流側に配置された第2散乱体を有し、前記第1ビーム位置検出手段は前記第2散乱体よりも上流側に配置される。
(13)上記(11)において、また好ましくは、前記照射装置は荷電粒子ビームを走査するビーム走査手段を有し、前記第1ビーム位置検出手段は前記ビーム走査手段よりも上流側に配置される。
請求項1記載の発明によれば、第1及び第2ビーム位置検出手段のそれぞれから出力される各検出信号の両方を用いて、第1ビーム輸送手段に含まれる電磁石の設置誤差による荷電粒子ビームの軌道の変位、勾配エラーを補正するよう、第1変位量算出手段で第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれによって荷電粒子ビームの位置を変位させるそれぞれの第1変位量を求め、第1制御手段でそれぞれの第1変位量に基づいて、第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれの励磁電流を制御し、荷電粒子ビームの位置を必要に応じて変位させて設定範囲内にすることができる。したがって、従来構造に比べ、軌道補正のための労力及び時間を大幅に低減でき、簡単かつ素早く荷電粒子ビームの軌道補正を行うことができる。
請求項7記載の発明によれば、第3及び第4ビーム位置検出手段のそれぞれから出力される各検出信号の両方を用いて、第2ビーム輸送手段に含まれる電磁石の設置誤差による荷電粒子ビームの軌道の変位、勾配エラーを補正するよう、第2変位量算出手段で第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれによって荷電粒子ビームの位置を変位させるそれぞれの第2変位量を求め、第2制御手段でそれぞれの第2変位量に基づいて、第3及び第4ステアリング電磁石のそれぞれの励磁電流を制御し、荷電粒子ビームの位置を必要に応じて変位させて設定範囲内にすることができる。したがって、従来構造に比べ、軌道補正のための労力及び時間を大幅に低減でき、簡単かつ素早く荷電粒子ビームの軌道補正を行うことができる
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本発明の第1の実施形態を図1〜図5により説明する。
図1は、本実施形態の粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。なお、全体構成の理解の容易化のために、側面図として表す回転照射装置103(後述)側の構成と、平面図として表すそれ以外の主加速器101(後述)側の構成とを同一図として便宜的に示している。これに対応し、誤解防止のために、ビーム進行方向への座標軸s軸、s軸に直角な座標軸x及びこれらs軸及び軸に直角な方向のy軸を併せて示している。また、図示煩雑を防止するために、一部の信号の流れの図示を省略している。
この図1において、本実施形態の粒子線治療システムは、前段加速器100と、シンクロトロン型の主加速器101と、ビーム輸送系102と、回転照射装置103と、主制御装置200と、加速器制御装置201と、ステアリング電磁石制御装置202とを備えている。
主加速器101は、主加速器101を周回する荷電粒子ビームを偏向する偏向電磁石112と、周回する荷電粒子ビーム(例えば、水素イオンビームまたは炭素イオンビーム)にエネルギーを与えてそのエネルギーをエネルギー設定値まで高める高周波加速空胴115と、周回する荷電粒子ビームに磁界を印加してベータトロン振動を共鳴状態にする四極電磁石113及び多極電磁石114と、周回する荷電粒子ビームに高周波を印加してベータトロン振動を増加する出射用高周波印加装置116とを備えている。
偏向電磁石112、四極電磁石113、及び多極電磁石114は加速器制御装置201の制御に基づき動作する加速器用電源装置301により電流が供給されて励磁制御され、高周波加速空胴115は加速器用電源装置301により電力が供給される。また出射用高周波印加装置116は、加速器制御装置201の制御に基づき動作する出射用高周波電源装置300によって電力が供給されるようになっている。
ビーム輸送系102は、回転照射装置103の入口側部分に位置する第1ビーム輸送系102Aと、主加速器101と回転照射装置103との間に位置する第2ビーム輸送系102Bとから構成されている。
第2ビーム輸送系102Bは、加速器101から出射した荷電粒子ビーム1を回転照射装置103まで輸送するためビームサイズの調整を行う四極電磁石121と、荷電粒子ビームの軌道を曲げる偏向電磁石122と、荷電粒子ビーム1の通過する通過位置(詳細には変位と勾配、後述)を検出する(言い換えればビーム軌道を確認する)一対の第2x方向ビーム位置モニタ63及び第2y方向ビーム位置モニタ64と、それらビーム位置モニタ63,64より上流側に位置する一対の第1x方向ビーム位置モニタ61及び第1y方向ビーム位置モニタ62と、それらビーム位置モニタ61,62より上流側に配置されビーム軌道を補正するためにビーム1を偏向させる(後述のように補正偏向量を付与する)一対のx方向ステアリング電磁石183及びy方向ステアリング電磁石184と、それらステアリング電磁石183,184より上流側に配置された一対のx方向ステアリング電磁石181及びy方向ステアリング電磁石182とを備えている。第2ビーム輸送系102Bのビーム位置モニタ61,62,63,64の検出信号(ビーム位置情報)は、ステアリング電磁石制御装置202へ入力される。
加速器制御装置201は、ビーム輸送系電磁石電源302を制御してビーム輸送系電磁石電源302から 四極電磁石121,111及び偏向電磁石122のそれぞれに供給される励磁電流を調整し、それらの電磁石における励磁量を制御する。
第1ビーム輸送系102Aは、第2ビーム輸送系102B同様、四極電磁石111と、荷電粒子ビームの軌道を曲げる第1偏向電磁石151及び第2偏向電磁石152と、一対のx方向(=偏向電磁石151,152の偏向面方向)ステアリング電磁石183及びy方向(=偏向電磁石151,152の偏向面方向と垂直な方向)ステアリング電磁石184と、それらステアリング電磁石183,184より上流側に配置された一対のx方向ステアリング電磁石181及びy方向ステアリング電磁石182とを備えている。
四極電磁石111及び偏向電磁石151,152は、加速器制御装置201の制御に基づき動作する照射装置電磁石電源304により電流が供給されて励磁制御される。
回転照射装置103は、第2ビーム輸送系102Bに連絡される第1ビーム輸送系102A、及び第1ビーム輸送系102Aからの荷電粒子ビームを入射する照射ノズル70を備える。第1ビーム輸送系102A及び照射ノズル70は、一体となって回転軸11まわりに回転可能な回転体(いわゆるガントリー)を構成している。照射ノズル70の延長線上に患者75を載置する回転しない治療台(患者ベッド)76が回転照射装置103とは別に設けられる。
照射ノズル70に設けられた第1散乱体(最上流に設けられる散乱体)よりも下流側、具体的には、照射ノズル70より下流側(あるいは照射ノズル70内で第1散乱体よりも下流側部分でもよい)には、第2ビーム輸送系102Bと同様にビーム1の通過する通過位置(詳細には変位と勾配、後述)を検出する(言い換えればビーム軌道を確認する)一対のx方向ビーム位置モニタ63及びy方向ビーム位置モニタ64が設けられている。また、それらビーム位置モニタ63,64より上流側で照射ノズル70に設けられた第2散乱体5よりも上流側、具体的には、照射ノズル70より上流側(あるいは照射ノズル70内で第2散乱体5よりも上流側部分でもよい)に一対のx方向ビーム位置モニタ61及びy方向ビーム位置モニタ62が設けられている。これらビーム位置モニタ61,62,63,64は、以上説明したものも含み本実施形態の粒子線治療システムに配置されるすべての磁力要素(電磁石)よりもビーム進行方向下流側に位置しており、かつビーム位置モニタ61,62とビーム位置モニタ63,64との間にも磁力要素は全く設けられていない。なお、第2散乱体5は照射ノズル70内で第1散乱体4よりも下流側に設けられる。回転照射装置103のビーム位置モニタ61,62,63,64の検出信号(ビーム位置情報)は、ステアリング電磁石制御装置202へ入力される。
加速器制御装置201及びステアリング電磁石制御装置202は各種患者データに基づき、主制御装置200によって制御される。なお、患者データは、治療計画に関連して予め収集されたものであり、例えば、治療に必要な荷電粒子ビームのエネルギーや回転照射装置の回転角度等を含む。
加速器制御装置201は、前述したように、出射用高周波電源装置300、加速器用電源装置301、ビーム輸送系電磁石電源302、及び照射装置電磁石電源304を介して、前段加速器100から主加速器101へのビームの出射、主加速器101を周回させることによる治療に必要なエネルギーまでの荷電粒子ビームの加速と第2ビーム輸送系102Bへの出射、第1ビーム輸送系102A並びに回転照射装置103内における荷電粒子ビームの輸送を制御する機能を備えている。
ステアリング電磁石制御装置202は、第2輸送系102B及び回転照射装置103の各ビーム位置モニタ61,62,63,64からの荷電粒子ビームの位置情報(ビーム位置情報)に基づき、ビーム位置(荷電粒子ビームの位置)を所定の軌道(本実施例では照射ノズル70の設計軌道)上に補正するために必要なキック量(蹴り量、詳細は後述)を得るためのステアリング電磁石181,182,183,184のそれぞれの励磁量を求める。そして、ステアリング電磁石制御装置202は、得られた各励磁量を基にビーム輸送系ステアリング電磁石電源303及び照射装置ステアリング電磁石電源305を制御して、ビーム輸送系ステアリング電磁石電源303から第2ビーム輸送系102Bにおけるステアリング電磁石181,182,183,184に供給される励磁電流を制御し、かつ照射装置ステアリング電磁石電源305から第1ビーム輸送系102Aにおけるステアリング電磁石181,182,183,184に供給される励磁電流を制御する。これによって、第1ビーム輸送系102A及び第2ビーム輸送系102Bの各ステアリング電磁石の励磁量が制御される。なおこのとき、各ステアリング電磁石181〜184の電流値とそれによって発生する磁場により荷電粒子ビーム1が受けるキック量の関係は予め求めておく。
上記のような構成により、本実施形態の粒子線治療システムにおいては、低エネルギーの荷電粒子ビーム1が前段加速器100から主加速器101に入射され、主加速器101において治療に必要なエネルギーまで加速された後、第2ビーム輸送系102Bから治療室(図示せず)内に輸送されて導入され、さらに回転照射装置103の第1ビーム輸送系102Aを介し照射ノズル70にて荷電粒子ビーム1が成形されて患部へ照射される。
上記のような基本構成及び動作の粒子線治療システムにおいて、本実施形態の要部は、輸送行列を用いた近似モデルによってステアリング電磁石181〜184の補正偏向量を求め、これによってステアリング電磁石181〜184を励磁制御することにより、荷電粒子ビーム1の軌道が最終的に照射ノズル70の設計軌道に一致するように補正することにある。以下、その詳細を順を追って説明する。
(1)近似モデルの画定
ビーム輸送系におけるビーム軌道の位置及び勾配は、偏向電磁石、四極電磁石、ステアリング電磁石、その間のドリフト空間(磁石等がなくビーム軌道に影響を与えない自由空間)を表す輸送行列を用いて計算することができる。
このとき、本願発明者等の検討によれば、偏向電磁石のチルト角や四極電磁石の設置誤差が微小である場合には、それら偏向電磁石・四極電磁石によるビーム軌道の位置・勾配の変化量は、それぞれの輸送行列と分離し、機器通過後に位置・勾配の変化量を加えるという手法で近似できることがわかった。以下このことを説明する。
(イ)偏向電磁石の輸送行列の近似
まず、偏向電磁石について、設置チルト角(=ビーム進行方向を回転軸とする回転設置誤差の角度、0度が理想値)がある場合の輸送行列は、水平方向及び垂直方向についてそれぞれ下記の式(1−1)及び式(1−2)で近似することができる。ここで、ρは偏向半径、θは偏向角、φはチルト角である。
水平方向:
Figure 0004299269
…(1−1)
垂直方向:
Figure 0004299269
…(1−2)
これら式(1−1)及び式(1−2)のうちの第1項がチルト角のないときの理想的な軌道を与える項であり、第2項がチルト角の影響を表す項である。なお、水平方向については、第2項が微少量であるチルト角φの2次の項となって無視できるほど小さくなることから、第2項は省略する。
(ロ)四極電磁石の輸送行列の近似
次に、四極電磁石について、ビーム進行方向に垂直な面内で設置誤差がある場合の輸送行列(水平方向)は、下記の(1−3)式及び(1−4)式で表すことができる。ここで、Kは磁場勾配を磁気剛性率Bρで除した値の絶対値、Lは磁極長、ξは設置誤差の量である。
収束型:
Figure 0004299269
…(1−3)
発散型:
Figure 0004299269
…(1−4)
これら式(1−3)及び式(1−4)のうち、第1項が設置誤差のないときの理想的な軌道を与える項であり、第2項が設置誤差の影響を表す項である。なお、垂直方向については上記輸送行列の収束・発散作用を入れ替えたものになる。
(ハ)ステアリング電磁石による補正量の評価
ビーム輸送系におけるビーム軌道補正では、ステアリング電磁石でビームに勾配の変化をもたらす補正キックを加え、その下流に設置したプロファイルモニタでその影響を位置の変化として確認することができる。このとき、本願発明者等の行った検討によれば、上記(イ)(ロ)の近似モデルを用いることにより、ステアリング電磁石による勾配の補正量の評価についても、単一キックと考えてステアリング電磁石で勾配(キック量あるいは蹴り量)のみが加わったと見なせることがわかった。このことを図2を用いて以下詳細に説明する。なお、ビームの進行方向についての設置誤差の影響は小さいのでここでは無視する。
図2は、設置誤差を含むときのビーム輸送系の模式図である。図中、Dはi番目のドリフトを表す輸送行列であり、Mはi番目の電磁石を表す輸送行列であり、δ (注:本願明細書の文中において添字として右上に付す「→」は、すべてベクトルを表す矢印または行列を表す太字の代用表記である)はi番目の機器の設置誤差による変位・勾配の変化を表すベクトルであり、x はi番目の機器通過後の変位・勾配を表すベクトルであり、x はステアリング電磁石での変位・勾配を表すベクトルであり、A=Mである。また、kはステアリング電磁石によるキックを表すベクトルであり、すなわち、
Figure 0004299269
…(1−5)
である。
図2において、まず、補正前のプロファイルモニタにおける変位・勾配の値x f は、
x1 =A1x0 1
x2 =A2x1 2
=A2(A1x0 1 )+δ2
=A21x0 +A2δ1 2



xn =Anxn-1 n
=(Ann-1…A321)x0 +(Ann-1…A321
+(Ann-1…A32 + … + Anδn-1 n
xf =Dfxn
=(Dfnn-1…A321)x0 +(Dfnn-1 …A321
+(Dfnn-1…A32 + + Dfnδn-1 +Dfδn … (1−6)
ただし、D f は、n番目の電磁石とプロファイルモニタ間のドリフトを表す輸送行列である。
次に、ここでステアリング電磁石のステアリング機能によって補正キックkを新たに加えると、ステアリング出口の軌道ベクトルは、
x0 →x0 +k
と表される。
したがって、補正後の軌道を添え字cを用いて書き表すと、
x1C =A1(x0 +k)+δ1
x2C =A2x1C 2
=A2{A1(x0 +k)+δ1 )}+δ2
=A21x0 +A21k+A2δ1 2



xn C =Anxn-1C n
=(Ann-1…A321)x0 +(Ann-1…A321)k
+(Ann-1…A321 +(Ann-1…A32 + … +Anδn-1 n
xf C =Dfxn C
=(Dfnn-1…A321)x0 +(Dfnn-1…A321)k
+(Dfnn-1…A321 +(Dfnn-1…A32 + …
+Dfnδn-1 +Dfδn … (1−7)
上記の式(1−6)及び式(1−7)を対比し、xf C を補正前の値xf を用いて表すと、
xf C =(Dfnn-1…A321)k+xf … (1−8)
となる。
すなわち、上記(1−8)で表されるように、上記(イ)(ロ)で説明した近似モデルを用いると、ステアリング電磁石のステアリング機能によるキックの効果は、(Dfnn-1…A321)kの項を補正前の設置誤差の影響を含んだ項xf に付け加えた形になることがわかる。言い換えれば、ステアリングのキックによる軌道の変化分は、設置誤差の影響のない理想的な遷移行列(=上記の例ではDfnn-1…A321)を補正キックベクトル(=上記の例ではk)に掛けあわせることにより評価できることがわかった。
(2)上記近似モデルを用いた本実施形態における軌道補正の原理
次に、上記(1)で説明した近似モデルを、具体的に上述した本実施形態の粒子線治療システムにおける軌道補正へ適用する場合について考察する。
一般に、ビーム輸送系に配置される光学機器について、偏向電磁石(BM)、収束型四極電磁石(QF)、発散型四極電磁石(QD)それぞれの輸送行列MBMX,MBMY,MQF、MQDは、それぞれ以下の式(2−1)、式(2−2)、式(2−3)、式(2−4)で表すことができる。なお、ρ及びθはそれぞれ偏向電磁石の偏向半径[m]と偏向角[rad]を表し、K及びLはそれぞれ四極電磁石のK値[1/m]と磁極長[m]を示す。
Figure 0004299269
…(2−1)
Figure 0004299269
…(2−2)
Figure 0004299269
…(2−3)
Figure 0004299269
…(2−4)
ここで、照射ノズル70に導かれるビーム1に要求される位置精度は、照射野形成法にもよるが、一般にサブmmオーダーであり、軌道勾配の精度もほぼ1mrad以下である。既に述べたように、照射ノズル70は、荷電粒子ビーム1の設計軌道を基準に設計されることから、理想的には荷電粒子ビーム1の軌道の変位・勾配ともゼロにしなくてはいけない。また本実施形態のようないわゆる回転式の照射装置103の場合には、照射装置103の入射の時点で、その入射するビーム軸が回転体の回転軸11と一致するように荷電粒子ビーム1の軌道の変位・勾配ともゼロにしておくことが望ましい。
このように変位・勾配という2つのパラメータを特定の値に設定するため、本実施形態では、第1ビーム輸送系102A及び第2ビーム輸送系102Bそれぞれにおいて、2対のステアリング電磁石181,182及び183,184を用いるようになっている。
図3は、上記した本実施形態の第1ビーム輸送系102A又は第2ビーム輸送系102Bを想定した、ステアリング電磁石2台と照射ノズル内に2台のビーム位置モニタとを備えたビーム輸送系の模式図である。この図3を用いて、以上述べた考察に基づき、照射ノズル70でのビーム変位・勾配ともゼロに補正するためのステアリング電磁石2台のキック量を求める原理を、以下詳細に説明する。なお、ここでは例としてx方向の補正についてのみ示すが、これと垂直なy方向についても同様の機器・方法で補正可能であることは言うまでもない。
図3において、前述の(1)(ハ)で考察したように、2台のステアリングによる軌道補正の効果を求めるには、(イ)(ロ)の近似モデルを用いることにより、各ステアリングのキック量に設置誤差を含まない理想的な遷移行列を掛ければ足りる。
すなわち、第1及び第2ステアリング電磁石18,18でキック量k ,k を与えた場合、それらによって生じる第1ビーム位置モニタ6での軌道の変化x1 ,x2 は輸送行列を用いて、
Figure 0004299269
…(2−5)
Figure 0004299269
…(2−6)
と表すことができる。
第1ビーム位置モニタ6で観測される軌道エラーxerr を補正して変位・勾配ともゼロにするためには、
Figure 0004299269
…(2−7)
を満たせばよい。
すなわち、
Figure 0004299269
…(2−8)
となるキック量k ,k を求めればよい。
したがって、
Figure 0004299269
…(2−9)
とおくと、k1 、k は、上記Mcorの逆行列を用いることで、
Figure 0004299269
…(2−10)
のようにして求めることができる。
なお、このとき、軌道エラーxerr は、2台のビーム位置モニタ6,6で検出した位置情報X ,X と、それらの間の距離Lとを用いることにより、
Figure 0004299269
…(2−11)
によって求めることができる。
また上述のように輸送行列から求めるMcorは理想的な行列から求めることができるが、実際にビーム1を用いて調整する場合にはキック量k ,k とX ,X との関係から求め、実際の体系を反映させることもできる。
以上の方法によれば、第1ビーム位置モニタ6での変位・勾配と、ステアリング電磁石18又は18以降に配置された機器の理想的な輸送行列のみを用いれば足り、機器の位置誤差・チルト量、第1ステアリング電磁石18位置まで輸送されてくるビーム1の変位・勾配の値は計算上必要ない(言い換えれば、設置誤差が実際どの程度であるのか、あるいはその設置誤差で各輸送要素においてどのような変位・勾配が生じているのかが全く不明のままでも、ビーム軌道の補正を行うことが可能である)。このような補正量計算方法で必要とされる条件は、(a)2台のビーム位置モニタが、それらの間にビーム光学機器(偏向電磁石、四極電磁石)がない状態で設置されていること;(b)それらの位置モニタより上流に2台のステアリング電磁石が設置されていること;である。本実施形態においても前述のようにこの条件を満たすように第1ビーム輸送系102A及び第2ビーム輸送系102Bが構成されている。
なお、実際には、線形の輸送行列では表せない、偏向電磁石の多極(主に六極)成分や四極電磁石の多極(八極)成分の寄与が予想されるが、それぞれの電磁石は通常、多極成分を十分に低減することを前提に設計、製作されるため、その寄与は小さいと考えられる。
(3)本実施形態における軌道調整手順
上記(2)の原理に基づく、本実施形態による粒子線治療システムにおける実際の荷電粒子ビームの軌道調整手順を、以下に説明する。その軌道調整は、荷電粒子ビームを照射する患者が照射ノズル70の延長線上に設定される前、すなわち治療前の荷電粒子ビーム調整の一環の作業として行われる。その軌道調整は、主制御装置200と、加速器制御装置201、ガントリー回転制御装置(図示せず)及びステアリング電磁石制御装置202との連携制御によって行われる。以下、ステアリング電磁石制御装置202が行う軌道補正制御手順を、図4を用いて説明する。
図4に示すフローは、大きく、第2ビーム輸送系102Bにおけるビーム軌道の補正(ビーム軸が回転軸11に一致するように補正)を行うステップ10〜ステップ80と、その後、第1ビーム輸送系102A(言い換えればガントリー側)におけるビーム軌道の補正(最終的にビーム軸が照射ノズル70の設計軌道に一致するように補正)を行うステップ90〜ステップ170との2つによって構成されている。また、図4は、便宜上、x方向のビーム軌道の補正のみを示しているが、以下の説明では、x、y方向の両方向について説明する。
まず予め、主制御装置200は加速器制御装置201及びステアリング電磁石制御装置202に対して起動信号を出力する。この信号を入力した加速器制御装置201は荷電粒子ビーム出射用高周波電源装置300、加速器用電源装置301及びビーム輸送系電磁石電源302を制御し、その信号を入力したステアリング電磁石制御装置202はビーム輸送系ステアリング電磁石電源303制御し、第2ビーム輸送系102Bにビームを通す。その後、ステアリング電磁石制御装置202は、ステップ10〜ステップ80の第2ビーム輸送系102Bにおけるビーム軌道補正を行う。
すなわち、ステアリング電磁石制御装置202は、ステップ10で、第2ビーム輸送系102Bに設けた第1及び第2ビーム位置モニタ61,62及び63,64によるビーム位置の検出信号を入力する。
その後、ステアリング電磁石制御装置202は、ステップ20で、上記ステップ10における検出信号に基づき、前述の式(2−11)によって第1ビーム位置モニタ61,62における荷電粒子ビームの変位及び勾配を算出する。
そして、ステップ30で、第1ステアリング電磁石181,182と第1ビーム位置モニタ61,62との間に位置する四極電磁石121,121の励磁量から、第1ステアリング電磁石181,182と第1ビーム位置モニタ61,62との間の理想的な輸送行列(遷移行列)を算出する。また第2ステアリング電磁石183,184と第1ビーム位置モニタ61,62との間の理想的な輸送行列(遷移行列)も算出する。
その後、ステップ40において、上記ステップ20で算出したビーム変位及び勾配と、上記ステップ30で算出した遷移行列とを用いて、上述の式(2−9)及び式(2−10)により、第1及び第2ステアリング電磁石181〜184の第1キック量を算出した後、ステップ50でこの算出した第1キック量となるように、ビーム輸送系ステアリング電磁石電源303を制御して第1及び第2ステアリング電磁石181〜184に供給する励磁電流を制御する。
そして、ステップ60で、このステアリング励磁状態で第1及び第2ビーム位置モニタ61,62,63,64においてビーム位置の検出を行い、ステップ70で変位=0、勾配=0が確認されたら、ステップ80でそのときの第1キック量(第1補正キック量)をステアリング電磁石制御装置202のメモリ等の記憶手段(図示せず)に記憶する。
ステップ80が終了したら、ステアリング電磁石制御装置202は、ステップ90〜ステップ170の第1ビーム輸送系102Aにおけるビーム軌道補正を行う。すなわち、まず準備手順として、ビーム輸送系ステアリング電磁石電源303及び照射装置ステアリング電磁石電源305を介し、すべてのステアリング電磁石181,182,183,184の励磁を停止する。
ここで、上記励磁停止制御が終了したとき、ステアリング電磁石制御装置202は主制御装置200に一時待機信号を出力する。その信号を入力した主制御装置200は図示しないガントリー回転制御装置へ治療計画(照射計画)に対応したガントリー回転角を入力する。ガントリー回転制御装置は、その回転角に基づいて、回転体(ガントリー)を回転させる回転駆動装置(図示せず)を所定の角度位置となるまで回転駆動させ、回転終了後に回転終了信号を主制御装置200に出力する。そして、主制御装置200からステアリング電磁石ON信号を入力したステアリング電磁石制御装置202は、第1ビーム輸送系102A及び第2ビーム輸送系102Bの全ステアリング電磁石を励磁し、主加速器101から出射された荷電粒子ビームが第1ビーム輸送系102A及び第2ビーム輸送系102B内を通される。
その後、ステアリング電磁石制御装置202は、ステップ100で、照射ノズル70に設けた第1及び第2ビーム位置モニタ61,62及び63,64によるビーム位置の検出信号を入力する。
そして、ステップ110で、上記ステップ100における検出信号に基づき、ステアリング電磁石制御装置202は、前述の式(2−11)によって第1ビーム位置モニタ61,62におけるビーム変位及び勾配を算出する。
その後、ステップ120で、第1ステアリング電磁石181,182と第1ビーム位置モニタ61,62との間に位置する四極電磁石111,111,111及び偏向電磁石152の励磁量から、第1ステアリング電磁石181,182と第1ビーム位置モニタ61,62との間の理想的な輸送行列(遷移行列)を算出する。また第2ステアリング電磁石183,184と第1ビーム位置モニタ61,62との間に位置する四極電磁石111及び偏向電磁石152の励磁量からそれらの間の理想的な輸送行列(遷移行列)も算出する。
その後、ステップ130において、上記ステップ110で算出したビーム変位及び勾配と、上記ステップ120で算出した遷移行列とを用いて、上述の式(2−9)及び式(2−10)により、第1及び第2ステアリング電磁石181〜184の第2キック量を算出した後、ステップ140でこの算出した第2キック量となるように、ビーム輸送系ステアリング電磁石電源303を制御して第1及び第2ステアリング電磁石181〜184に供給する励磁電流を制御する。
そして、ステップ150で、このステアリング励磁状態で第1及び第2ビーム位置モニタ61,62,63,64においてビーム位置の検出を行い、ステップ160で変位=0、勾配=0が確認されたら、ステップ170でそのときの第2キック量(第2補正キック量)を上記した記憶手段に記憶する。ステップ170の処理が実行された後、主制御装置200からの指令を受けた加速器制御装置201は主加速器101からの荷電粒子ビームの出射を停止する。
なお、以上でわかるように、ステアリング電磁石制御装置202は、実質的に、照射装置103内のステアリング電磁石によって変位させる荷電粒子ビームの第1変位量(第2キック量)を算出する第1変位量算出手段、第1変位量に基づいて照射装置103内のステアリング電磁石の励磁電流を制御する第1制御手段、第2ビーム輸送系102B内のステアリング電磁石によって変位させる荷電粒子ビームの第2変位量(第1キック量)を算出する第2変位量算出手段、及び第2変位量に基づいて第2ビーム輸送系102B内のステアリング電磁石の励磁電流を制御する第2制御手段を含んでいる。第1変位量算出手段は前述のステップ100〜ステップ130及びステップ150〜ステップ170の処理を実行し、第1制御手段はステップ140の制御を実行する。第2変位量算出手段は前述のステッ1プ20〜ステップ40及びステップ60〜ステップ80の処理を実行し、第2制御手段はステップ50の制御を実行する。
以上のようにして荷電粒子ビームの軌道調整を行った後、治療台76を移動させて治療台76に乗せられた患者の患部を照射ノズル70に対して位置合せを行う。その後、オペレータからの入力に基づいて主制御装置200が治療開始信号を各制御装置に出力する。そして、加速器制御装置201等の制御装置の作用により、主加速器101から荷電粒子ビームが出射され、照射ノズル70から患部に荷電粒子ビームを照射する。このとき、ステアリング電磁石制御装置202は、各ビーム位置モニタの出力信号ではなく記憶装置に記憶された第1キック量に基づいて、第2ビーム輸送系102Bに設けられた各ステアリング電磁石に供給する励磁電流を制御し、記憶装置に記憶された第2キック量に基づいて、第1ビーム輸送系102Aに設けられた各ステアリング電磁石に供給する励磁電流を制御する。この制御によって、照射ノズル70から患部に照射される荷電粒子ビームの変位及び勾配をそれぞれ0にすることができる。
(4)本実施形態の作用・効果
以上説明した本実施形態の粒子線治療システムにおけるビーム軌道補正方法の作用を、比較例を参照しつつ説明する。
図5は、前述した従来技術にほぼ相当する比較例におけるビーム軌道補正方法の要部手順を表すフローチャートである。対比の明確化のために、上記本実施形態の粒子線治療システムに対応する部分には、同一の符号を用いて以下説明する。
図5において、まずステップ300で、第2ビーム輸送系102Bにおける相対的に上流側及び下流側にそれぞれ配置した第1及び第2ビーム位置モニタ61,62及び63,64によるビーム位置の検出信号を入力するとともに、その検出信号に基づいて勾配を算出する。
そして、ステップ310で、適宜の表示装置に第1ビーム位置モニタ61,62におけるビーム位置及び勾配を表示させ、それらビーム位置の変位及び勾配が0となったかどうかを操作者が判定する。0になっていない場合は、ステップ320にて第2ビーム輸送系102Bに設置した第1及び第2ステアリング電磁石181,182及び183,184の励磁量を手動で調整し、ステップ300に戻り同様の手順を繰り返す。このようにして、ステップ310にてビーム位置及び勾配が0となるまで、操作者が試行錯誤して手動操作にて調整を繰り返す。
第1ビーム位置モニタ61,62におけるビーム位置の変位及び勾配が0となったら、ステップ310の判定が満たされ、ステップ330へと移る。
ステップ330では、上記ステップ300と同様、照射ノズル70における相対的に上流側及び下流側にそれぞれ配置した第1及び第2ビーム位置モニタ61,62及び63,64によるビーム位置の検出信号を入力するとともに、その検出信号に基づいて勾配を算出する。
そして、ステップ340で、上記ステップ310と同様、適宜の表示装置に第1ビーム位置モニタ61,62におけるビーム位置及び勾配を表示させ、それらビーム位置の変位及び勾配が0となったかどうかを操作者が判定する。0になっていない場合は、ステップ350にて第1ビーム輸送系102Aに設置した第1及び第2ステアリング電磁石181,182及び183,184の励磁量を手動で調整し、ステップ330に戻り同様の手順を繰り返す。このようにして、ステップ340にてビーム位置及び勾配が0となるまで、操作者が試行錯誤して手動操作にて調整を繰り返す。
第1ビーム位置モニタ61,62におけるビーム位置の変位及び勾配が0となったら、ステップ340の判定が満たされ、すべてのビーム軌道補正が完了し、このフローを終了する。
以上のように、この比較例では、操作者が、手動操作によってステアリング電磁石による励磁量(キック量)を適宜大きくしたり小さくしたりして試行錯誤しつつ、その変位や勾配の変化の傾向を見ながら、ビーム1の位置が設計軌道に一致するように手動調整していたので、軌道補正作業に多大な労力と時間が必要となっていた。
特に、前述した図1に示した本実施形態の粒子線治療システムのように、回転照射体(ガントリー)を回転軸11まわりに回転可能に設けることで患部の位置や状態に合わせて適切な角度位置から照射を行えるようにした回転式の照射装置103の場合、その回転角によって自重による各構成要素の撓み量・変形量等が変化し、設置誤差が回転角によって変化することとなる。このため、回転照射装置103の回転角を変えるたびに上記試行錯誤によるビーム軌道補正作業を繰り返す必要があり、著しく煩雑な作業となっていた。
これに対し、上記本実施形態の粒子線治療システムの軌道補正方法によれば、上記(1)〜(3)で説明したように、第1及び第2ビーム位置モニタ61,62及び63,64の検出信号に基づき、各輸送要素の輸送行列を用いた近似モデルによって第1及び第2ステアリング電磁石181,182及び183,184の補正キック量を求め、ステアリング電磁石制御装置202で、ビーム輸送系ステアリング電磁石電源303及び照射装置ステアリング電磁石電源305を介しその求めた補正キック量をビーム1に与えるように第1及び第2ステアリング電磁石181,182及び183,184に供給する励磁電流を制御する。このようにしてビーム1を補正後において所定の設計軌道とすることができるので、各ステアリング電磁石のキック量を手動操作で変化させつつ試行錯誤にてビーム軌道を補正する上記比較例に比べ、軌道補正のための労力及び時間を大幅に低減でき、簡単かつ素早く補正を行うことができる。なお、本願発明者等は上記実施形態の粒子線治療装置と同等の構造及びサイズの実験装置を用いて補正精度の確認実験を行ったところ、照射ノズル70から照射されるビーム1の誤差は、補正前に最大数ミリ程度生じていたのが、補正後には最大でも十分の数ミリ程度と約1/10にまで低減し、高い精度で補正できることを確認した。
特に、前述したように本実施形態の照射装置103のような回転式のものでは広い範囲で(例えばプラスマイナス180度)回転させ回転角度を細かく(例えば5度刻みで)設定するが、各要素の自重によるたわみ量はその角度によって異なるため、第1及び第2補正キック量もその角度ごとに求めなければならない。本実施形態では上記のように1つの角度ごとの調整時間を大幅に短縮できるとともに、前述の図4のステップ90やステップ210において第1及び第2補正キック量を記憶できることから、過去に一度使用したことのある角度については第1及び第2補正キック量をその都度算出しなくても、治療時に患者データをもとに必要なエネルギー、回転角度に対応するステアリング電磁石の補正データを呼び出して軌道補正を行うようにすれば、調整作業自体を不要とすることもできる。したがって、操作者(医師あるいは技術者)の負担を大幅に低減するとともに、利便性を大きく向上できる。
また、ステアリング電磁石制御装置202が第2ビーム輸送系102Bに設けたビーム位置モニタ61〜64の検出信号に基づいて第2ビーム輸送系102Bに設けたステアリング電磁石181〜184にそれぞれ供給する励磁電流を制御しているため、照射装置103の入口、すなわち回転の中心に位置している第1ビーム輸送系102Aの入口で荷電粒子ビームの位置を設定位置(例えば中心の位置)に合せることができる。このため、第1ビーム輸送系102Aに設けたステアリング電磁石181〜184による制御により、照射装置103の各構成要素の撓み量、変形量が変化しても照射ノズル70の出口において荷電粒子ビームを設定位置により精度良く合せることができる。
また、照射装置103においてビーム位置モニタ61〜64を第1ビーム輸送系102Bで最下流に位置する電磁石よりも下流側に配置しているので、荷電粒子ビームの位置をビーム位置モニタで精度良く検出できる。このため、その検出信号を用いるステアリング電磁石の励磁電流制御による荷電粒子ビームの位置合せの精度が向上する。第2ビーム輸送系102部においてもビーム位置モニタ61〜64を第1ビーム輸送系102Bで最下流に位置する電磁石よりも下流側に配置しているので、荷電粒子ビームの位置を第2ビーム輸送系102Bのビーム位置モニタで精度良く検出できる。したがって、第1ビーム輸送系102Aの入口における荷電粒子ビームの位置合せ制御を精度良く行うことができる。
また、照射装置103におけるビーム位置モニタ61、62を第2散乱体5よりも上流側に配置して荷電粒子ビームの位置を検出しているため、荷電粒子ビームの位置合せ制御により荷電粒子ビームを第2散乱体5の所定の位置を通過させることができ、第2散乱体5の通過後における荷電粒子ビームの、その進行方向に直角な方向での強度分布が平坦化される。
なお、上記第1の実施形態において、照射ノズル70内の第2散乱体5の替りにx方向ビーム走査用電磁石及びy方向ビーム走査用電磁石を設け、これらの走査用電磁石の下流側に第1散乱体4を配置してもよい。この場合では、照射装置103におけるビーム位置モニタ61、62はx方向ビーム走査用電磁石及びy方向ビーム走査用電磁石よりも上流側に配置する。これは、ビーム走査用電磁石に入射される荷電粒子ビームの位置を精度良く制御できるため、ビーム走査用電磁石による走査後の荷電粒子ビームの位置も所定の位置にすることができる。なお、荷電粒子のスキャニングを行う場合には、x方向ビーム走査用電磁石及びy方向ビーム走査用電磁石の下流側に散乱体を配置しない。この場合でも、ビーム位置モニタ61、62はビーム走査用電磁石よりも上流側に配置される。
本発明の第2の実施形態を図6により説明する。本実施形態は、ベータトロン振動の位相差を利用してビーム軌道の補正をさらに簡単にする実施形態である。
図6は、本実施形態の粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。なお、図1と同様、図示煩雑を防止するために、一部の信号の流れの図示を省略している。
上記第1実施形態と異なる本実施形態の原理を以下に説明する。
一般に、粒子の設計軌道中の点A、点B の2点間の輸送行列は例えばOHO'94「電子貯蔵リングにおけるビームダイナミックスの基礎」I-44頁に示されているように、各点でのTwiss Parameterを用いて以下のように表すことができる。
Figure 0004299269
…(3−1)
ここでβはベータトロン関数、αはsをビームの設計軌道に沿う座標としてα=−(1/2)×dβ/dsで定義される量であり、添え字aは点Aの値を、添え字bは点Bの値を示す。ΔΨは点Aから点Bへ進む際のベータトロン振動の位相差を示す。
この基本原理を応用し、第1ステアリング電磁石から第1ビーム位置モニタまでのベータトロン振動の位相差をΔΨ、第2ステアリング電磁石から第1ビーム位置モニタまでのベータトロン振動の位相差をΔΨ2とする。また、各機器でのTwiss Parameterα、βを第1ステアリング電磁石位置での値をα、β、第2ステアリング電磁石の値をα、β、第1ビーム位置モニタでの値をαm、βmとおく。すると第1ステアリング電磁石から第1ビーム位置モニタまでの遷移行列M1と第2ステアリング電磁石から第1ビーム位置モニタまでの遷移行列M2は上記式(3−1)より以下のように表されることとなる。
Figure 0004299269
…(3−2)
Figure 0004299269
…(3−3)
ここで、第1ステアリング電磁石から第1ビーム位置モニタまでの位相差を180°+180°×m(m=0,1,2,…)、第2ステアリング電磁石から第1ビーム位置モニタまでの位相差を90°+180°×n(n=0,1,2,…)、第1ビーム位置モニタ位置のビームの広がりが平行(α=0)とするならば、式(3−2)、(3−3)はそれぞれ、
Figure 0004299269
…(3−4)
Figure 0004299269
…(3−5)
となる。
ここで、上記第1の実施形態で前述した式(2−8)、すなわち
Figure 0004299269

を解けば補正キック量が求まるから、この式(2−8)に上記式(3−4)、式(3−5)を代入すると、
Figure 0004299269
…(3−6)
Figure 0004299269
…(3−7)
となる。
すなわち、第1ステアリング電磁石のキック量は式(3−6)に示すように照射ノズル部の軌道勾配のエラーのみを、第2ステアリング電磁石のキック量は式(3−7)に示すように照射ノズル部の軌道変位のエラーのみを独立に補正できるので補正が簡単になる。
本実施形態においては、以上の原理に基づき、図6に示すように、回転照射装置103の偏向面内(x方向)においてx方向第1ステアリング電磁石181をx方向第1位置モニタ61から位相差180度の位置に、x方向第2ステアリング電磁石183をx方向第1位置モニタ61から位相差90度の位置に配置している(なおこれに対応して第2偏向電磁石152を第1ステアリング電磁石181と第2ステアリング電磁石182との間に配置するとともに、第3偏向電磁石153を追加している)。上記位相差の条件とx方向第1位置モニタ61でαm=0を満たす4極電磁石111の磁場勾配を回転照射装置103の光学系設計の段階で予め求めておく。この光学設計に基づく磁場勾配となるように4極電磁石111を励磁することにより、x方向の軌道補正を上記第1実施形態よりもさらに簡単に行うことができる。
本発明の第3の実施形態を図7により説明する。本実施形態は、異なる機能のステアリング電磁石を用いる実施形態である。
図7は、本実施形態の粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。なお、図1及び図6と同様、図示煩雑を防止するために、一部の信号の流れの図示を省略している。
図7において、本実施形態の粒子線治療システムにおいては、図1に示した第1実施形態における第1x方向ステアリング電磁石181及び第1y方向ステアリング電磁石182に代えて1つの第1x−y方向両用ステアリング電磁石190を設けるとともに、第2x方向ステアリング電磁石183及び第2y方向ステアリング電磁石184に代えて1つの第2x−y方向両用ステアリング電磁石191を設けたものである。
このように、ステアリング電磁石191,192をx-y方向両用とすることで機器の設置スペースを減らすことができ、特に回転照射装置103の小型化に寄与することができるという効果を得る。
本発明の第4の実施形態を図8により説明する。本実施形態は、本発明をガントリー側にのみ適用した実施形態である。
図8は、本実施形態の粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。なお、図示煩雑を防止するために、図1〜図7同様、一部の信号の流れの図示を省略している。
図8において、本実施形態による粒子線治療システムは、第1の実施形態の構成から、第2ビーム輸送系102Bに設置していた第2ステアリング電磁石183,184を省略したものとなっている。
すなわち、本実施形態においては、ビーム1の軌道補正において、第2ビーム輸送系102Bに関しては従来どおり、手動操作による試行錯誤によって補正を行い、ガントリー側に関してのみ本発明を適用し、近似モデルを用いた補正を行うようにするものである。
具体的には、第1の実施形態の図4に示した制御フローのうち、ステップ10〜ステップ90に相当する部分については、これらのステップを行うのではなく、第2ビーム輸送系102Bに設置した第1ステアリング電磁石181,182を用いて前述の図5に示したステップ300〜ステップ320のような手順で操作者の試行錯誤によって補正を行う。
このようにして第2ビーム輸送系102B側のビーム軌道の補正を行った後、ガントリー側に設けた第1及び第2ステアリング電磁石181,182及び183,184を用いて、図4のステップ100〜ステップ210を行い、ガントリー側のビーム軌道補正を行う。
本実施形態によれば、第2ビーム輸送系102B側については、上記した軌道補正のための労力及び時間の低減という本発明の効果を得ることができないが、ガントリー側についてはこの効果を得ることができる。したがって、第2ビーム輸送系102B側もガントリー側もどちらも手動操作で試行錯誤により調整していた従来手法に比べれば、少なくとも全体としてみればビーム軌道の補正を簡単かつ素早く補正を行うことができる。
特に、前述したように回転式照射装置を備えた粒子線治療システムでは、第2ビーム輸送系102B側については例えば治療開始時に一度補正をしてしまえばその後の再補正は不要であるのに対し、ガントリー側は回転角度が変化するたびにステアリング電磁石における補正キック量も変わるため、実際はガントリー側のビーム軌道補正の労力・負担のほうが大きい。本実施形態では、この労力・負担の大きいガントリー側に本発明をビーム軌道補正の手法を適用することにより、補正作業における調整時間を大幅に短縮できる。
本発明の第5の実施形態を図9により説明する。本実施形態は、上記第4の実施形態の構成を垂直固定式のガントリーに適用した実施形態である。
図9は、本実施形態の粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。なお、図示煩雑を防止するために、図1〜図8同様、一部の信号の流れの図示を省略しており、上記図8及び図7と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図9において、本実施形態による粒子線治療システムは、垂直固定型の照射装置103Aを備えている。但し、この照射装置103Aは、上記第1の実施形態の照射装置103と同様の第1輸送系102A、照射ノズル70、治療台(患者ベッド)76を備えており、これらが回転せず、患者75に対し常時上方から照射を行うようになっていることが第4の実施形態と異なる点である。また、ステアリング電磁石として、図7に示した第3の実施形態と同様、第1x−y方向両用ステアリング電磁石190及び第2x−y方向両用ステアリング電磁石191を設けている。
本実施形態においても、上記第4の実施形態と同様、固定式照射装置103A側について、軌道補正のための労力及び時間の低減という効果を得ることができる。
特に、固定式照射装置103Aに輸送されてくるビーム1の軌道が何らかの原因で変化しうる場合や、地震などにより照射装置設置箇所に新たな設置誤差が加わった場合の軌道補正に有効である。
本発明の第6の実施形態を図10により説明する。本実施形態は、上記第4の実施形態の構成を水平固定式のガントリーに適用した実施形態である。
図10は、本実施形態の粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。なお、図示煩雑を防止するために、図1〜図9同様、一部の信号の流れの図示を省略しており、以上説明した各図と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図10において、本実施形態による粒子線治療システムは、水平固定型の照射装置103Bを備えている。但し、この照射装置103Bは、上述した各実施形態と機能的に同等の第1輸送系102A、照射ノズル70、治療台(患者ベッド)76を備えており、これらが回転せず、患者75に対し常時水平方向から照射を行うようになっていることが異なる。
本実施形態においても、上記第5の実施形態と同様、固定式照射装置103B側について、軌道補正のための労力及び時間の低減という効果を得ることができる。
本発明の第7の実施形態を図11により説明する。本実施形態は、上記第4の実施形態とは逆に、本発明を第2ビーム輸送系102Bにのみ適用した実施形態である。
図11は、本実施形態の粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。なお、図示煩雑を防止するために、図1〜図10同様、一部の信号の流れの図示を省略しており、以上説明した各図と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図11において、本実施形態による粒子線治療システムは、回転式の照射装置103、垂直固定型の照射装置103A、及び水平固定型の照射装置103Bのいずれかを備えている。
そして、本実施形態においては、ビーム1の軌道補正において、照射装置103,103A,103B側に関しては従来どおり、手動操作による試行錯誤によって補正を行い、第2ビーム輸送系102Bに関してのみ本発明を適用し、近似モデルを用いた補正を行うようにするものである。
具体的には、まず、第2ビーム輸送系102B側に設けた第1及び第2ステアリング電磁石181,182及び183,184を用いて、第1の実施形態の図4に示したステップ10〜ステップ90を行い、ビーム軌道補正を行う。
その後、第1の実施形態の図4に示した制御フローのうちステップ100〜ステップ210に相当する部分については、これらのステップを行うのではなく、照射装置103,103A,103B側に設置したステアリング電磁石を用いて前述の図5に示したステップ300〜ステップ320のような手順で操作者の試行錯誤によって補正を行う。
本実施形態によれば、照射装置103,103A,103B側については、既に説明した軌道補正のための労力及び時間の低減という本発明の効果を得ることができないが、第2ビーム輸送系102B側についてはこの効果を得ることができる。したがって、第2ビーム輸送系102B側も照射装置側もどちらも手動操作で試行錯誤により調整していた従来手法に比べれば、少なくとも全体としてみればビーム軌道の補正を簡単かつ素早く補正を行うことができる。
本発明の第8の実施形態を図12により説明する。本実施形態は照射野形成法としてビーム走査法を実施する構成に適用した実施形態である。
すなわち、ビーム走査法を実施するために、照射野形成ノズル70のx方向第1ビーム位置モニタ61、y方向第1ビーム位置モニタ62の下流にx方向ビーム走査電磁石71とy方向走査電磁石72を設置する。
ビーム走査法におけるビーム軌道補正は照射ノズル70でビームを走査しない時の基準となるビーム軌道が設計軌道と一致するよう第1実施形態と同様の方法で行う。軌道補正後、治療のための照射は、患部位置に応じて加速器制御装置201の指示により走査電磁石電源306からx方向走査電磁石71、y方向走査電磁石72へ供給する電流値を制御してビームをx方向、y方向にビーム1を走査して行う。
なお、以上述べた全ての実施形態において、主加速器101をシンクロトロンではなくサイクロトロンにすることが可能である。サイクロトロンを用いる場合には前段加速器100は不要となる。このようなサイクロトロンを用いた粒子線治療システムも、前述の該当する実施形態で述べた効果を得ることができる。
本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。 設置誤差を含むときのビーム輸送系の模式図である。 ステアリング電磁石2台と照射ノズル内に2台のビーム位置モニタとを備えたビーム輸送系の模式図である。 本発明の第1の実施の形態による粒子線治療システムに備えられた加速器制御装置及びステアリング電磁石制御装置によるビーム補正制御手順を表すフローチャートである。 従来技術にほぼ相当する比較例におけるビーム軌道補正方法の要部手順を表すフローチャートである。 本発明の第2の実施形態による粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。 本発明の第3の実施形態による粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。 本発明の第4の実施形態による粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。 本発明の第5の実施形態による粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。 本発明の第6の実施形態による粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。 本発明の第7の実施形態による粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。 本発明の第8の実施形態による粒子線治療システムの全体構成を表すシステム構成図である。
符号の説明
1 ビーム
11 回転照射装置の回転軸
61 x方向第1ビーム位置モニタ
62 y方向第1ビーム位置モニタ
63 x方向第2ビーム位置モニタ
64 y方向第2ビーム位置モニタ
70 照射ノズル
71 x方向走査電磁石
72 y方向走査電磁石
75 患者
76 治療台
100 前段加速器
101 主加速器
102 ビーム輸送系
102A 第1ビーム輸送系
102B 第2ビーム輸送系
103 回転照射装置
103A 垂直固定型照射装置
103B 水平固定型照射装置
181 x方向第1ステアリング電磁石
182 y方向第1ステアリング電磁石
183 x方向第2ステアリング電磁石
184 y方向第2ステアリング電磁石
190 x-y方向第1ステアリング電磁石
191 x-y方向第2ステアリング電磁石
200 主制御装置
201 加速器制御装置
202 ステアリング電磁石制御装置
300 出射用高周波電源装置
301 加速器用電源装置
302 ビーム輸送系電磁石電源
303 ビーム輸送系ステアリング電磁石電源
304 照射装置電磁石電源
305 照射装置ステアリング電磁石電源
306 走査電磁石電源

Claims (13)

  1. 荷電粒子ビームを設定されたエネルギーまで加速する加速器と、この加速器から出射した荷電粒子ビームを照射する回転式の照射装置とを有し、前記照射装置は、前記加速器から出射した荷電粒子ビームを輸送する第1ビーム輸送手段と、この第1ビーム輸送手段で輸送した荷電粒子ビームの照射野を形成する照射野形成手段とを備える粒子線治療システムにおいて、
    前記第1ビーム輸送手段に設けられた電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石よりも下流側で前記荷電粒子ビームの軌道に沿って配置され、荷電粒子ビームの通過位置を検出する第1ビーム位置検出手段と、
    前記第1ビーム位置検出手段より下流側で前記軌道に沿って配置され、荷電粒子ビームの通過位置を検出する第2ビーム位置検出手段と、
    前記第1ビーム位置検出手段より上流側の前記第1ビーム輸送手段に設けられた第1ステアリング電磁石及び第2ステアリング電磁石とを備え
    前記第1ステアリング電磁石及び第2ステアリング電磁石は、両方とも、前記電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石より上流側の位置に設けられ、
    前記粒子線治療システムは、更に、
    前記第1及び第2ビーム位置検出手段のそれぞれから出力される各検出信号の両方を用いて、前記第1ビーム輸送手段に含まれる電磁石の設置誤差による前記荷電粒子ビームの軌道の変位、勾配エラーを補正するよう、前記第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれによって前記荷電粒子ビームの位置を変位させるそれぞれの第1変位量を求める第1変位量算出手段と、
    前記それぞれの第1変位量に基づいて、前記第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれの励磁電流を制御する第1制御手段とを有することを特徴とする粒子線治療システム。
  2. 請求項1記載の粒子線治療システムにおいて、前記照射野形成手段は第1散乱体及び前記第1散乱体の下流側に配置された第2散乱体を有し、前記第1ビーム位置検出手段は前記第2散乱体よりも上流側に配置されることを特徴とする粒子線治療システム。
  3. 請求項1記載の粒子線治療システムにおいて、前記照射野形成手段は荷電粒子ビームを走査するビーム走査手段を有し、前記第1ビーム位置検出手段は前記ビーム走査手段よりも上流側に配置されることを特徴とする粒子線治療システム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の粒子線治療システムにおいて、前記第1変位量算出手段は、前記第1及び第2ビーム位置検出手段の各検出信号に基づき、前記荷電粒子ビームの位置が前記照射野形成手段内での設定軌道内に入るように前記第1変位量を求めることを特徴とする粒子線治療システム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の粒子線治療システムにおいて、前記第1変位量算出手段は、少なくとも、前記第1及び第2ステアリング電磁石を含む前記第1ビーム輸送手段の各輸送要素の輸送特性をそれぞれ表す複数の輸送行列を用いた近似モデルにより、前記第1変位量を求めることを特徴とする粒子線治療システム。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の粒子線治療システムにおいて、前記第1及び第2ステアリング電磁石のうち少なくとも一方が、一の方向へ荷電粒子ビームを変位させる機能と、前記一の方向に垂直な他の方向へその荷電粒子ビームを変位させる機能との両方を備えていることを特徴とする粒子線治療システム。
  7. 荷電粒子ビームを設定されたエネルギーまで加速する加速器と、この加速器から出射した荷電粒子ビームを照射する回転式の照射装置と、前記加速器から出射した荷電粒子ビームを前記照射装置へ輸送する第2ビーム輸送手段とを備える粒子線治療システムにおいて、
    前記第2ビーム輸送手段に設けられた電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石よりも下流側で前記荷電粒子ビームの軌道に沿って配置され、前記第2ビーム輸送手段における荷電粒子ビームの通過位置を検出する第3ビーム位置検出手段と、
    前記第3ビーム位置検出手段より下流側において前記第2ビーム輸送手段における荷電粒子ビームの通過位置を検出する第4ビーム位置検出手段と、
    前記第3ビーム位置検出手段より上流側で前記第2ビーム輸送手段に設けられた第3ステアリング電磁石及び第4ステアリング電磁石とを備え
    前記第1ステアリング電磁石及び第2ステアリング電磁石は、両方とも、前記電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石より上流側の位置に設けられ
    前記粒子線治療システムは、更に、
    前記第3及び第4ビーム位置検出手段のそれぞれから出力される各検出信号の両方を用いて、前記第2ビーム輸送手段に含まれる電磁石の設置誤差による前記荷電粒子ビームの軌道の変位、勾配エラーを補正するよう、前記第3及び第4ステアリング電磁石のそれぞれによって前記荷電粒子ビームの位置を変位させるそれぞれの第2変位量を求める第2変位量算出手段と、
    前記それぞれの第2変位量に基づいて、前記第3及び第4ステアリング電磁石のそれぞれの励磁電流を制御する第2制御手段とを有することを特徴とする粒子線治療システム。
  8. 請求項7記載の粒子線治療システムにおいて、前記第2変位量算出手段は、前記第3及び第4ビーム位置検出手段の各検出信号に基づき、前記荷電粒子ビームの位置が前記照射装置内での設定軌道内に入るように前記第2変位量を求めることを特徴とする粒子線治療システム。
  9. 請求項7又は8記載の粒子線治療システムにおいて 前記第2変位量算出手段は、少なくとも、前記第3及び第4ステアリング電磁石を含む前記第2ビーム輸送手段の各輸送要素の輸送特性をそれぞれ表す複数の輸送行列を用いた近似モデルにより、前記第2変位量を求めることを特徴とする粒子線治療システム。
  10. 請求項7〜9のいずれか1項記載の粒子線治療システムにおいて、前記第3及び第4ステアリング電磁石のうち少なくとも一方が、一の方向へ荷電粒子ビームを変位させる機能と、前記一の方向に垂直な他の方向へその荷電粒子ビームを変位させる機能との両方を備えていることを特徴とする粒子線治療システム。
  11. 荷電粒子ビームを設定されたエネルギーまで加速する加速器と、この荷電粒子ビームを照射する固定式の照射装置と、前記加速器から出射した荷電粒子ビームを前記照射装置に輸送するビーム輸送手段とを備える粒子線治療システムにおいて、
    前記ビーム輸送手段に設けられた電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石よりも下流側で前記荷電粒子ビームが通る軌道に沿って配置され、荷電粒子ビームの通過位置を検出する第1ビーム位置検出手段と、
    前記第1ビーム位置検出手段より下流側で前記軌道に沿って配置され、荷電粒子ビームの通過位置を検出する第2ビーム位置検出手段と、
    前記第1ビーム位置検出手段より上流側の前記ビーム輸送手段に設けられた第1ステアリング電磁石及び第2ステアリング電磁石とを備え
    前記第1ステアリング電磁石及び第2ステアリング電磁石は、両方とも、前記電磁石のうちで最も下流側に設けられた前記電磁石より上流側の位置に設けられ、
    前記粒子線治療システムは、更に、
    前記第1及び第2ビーム位置検出手段のそれぞれから出力される各検出信号の両方を用いて、前記ビーム輸送手段に含まれる電磁石の設置誤差による前記荷電粒子ビームの軌道の変位、勾配エラーを補正するよう、前記第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれによって前記荷電粒子ビームの位置を変位させるそれぞれの第1変位量を求める第1変位量算出手段と、
    前記それぞれの第1変位量に基づいて、前記第1及び第2ステアリング電磁石のそれぞれの励磁電流を制御する第1制御手段とを有することを特徴とする粒子線治療システム。
  12. 請求項11記載の粒子線治療システムにおいて、前記照射装置は第1散乱体及び前記第1散乱体の下流側に配置された第2散乱体を有し、前記第1ビーム検出手段は前記第2散乱体よりも上流側に配置されることを特徴とする粒子線治療システム。
  13. 請求項11記載の粒子線治療システムにおいて、前記照射装置は荷電粒子ビームを走査するビーム走査手段を有し、前記第1ビーム検出手段は前記ビーム走査手段よりも上流側に配置されることを特徴とする粒子線治療システム。
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