以下、本発明に係る虚像表示装置について、車両に搭載されたヘッドアップディスプレイ装置に具体化した一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUDという)1の構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るHUD1の車両2への設置態様を示した図である。
図1に示すようにHUD1は、車両2のダッシュボード3内部に設置されており、内部にプロジェクタ4やプロジェクタ4からの映像が投射されるスクリーン5を有する。そして、スクリーン5に投射された映像を、後述のようにHUD1が備えるミラーや凹面鏡6を介し、更に運転席の前方のフロントウィンドウ7に反射させて車両2の乗員8に視認させるように構成されている。尚、スクリーン5に投射される映像としては、車両2に関する情報や乗員8の運転の支援の為に用いられる各種情報がある。例えば障害物(他車両や歩行者)に対する警告、ナビゲーション装置で設定された案内経路や案内経路に基づく案内情報(右左折方向を示す矢印等)、路面に表示する警告(追突注意、制限速度等)、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ番組等がある。
また、本実施形態のHUD1では、フロントウィンドウ7を反射して乗員8がスクリーン5に投射された映像を視認した場合に、乗員8にはフロントウィンドウ7の位置ではなく、フロントウィンドウ7の先の遠方の位置にスクリーン5に投射された映像が虚像9として視認されるように構成される。尚、乗員8が視認できる虚像9はスクリーン5に投射された映像であるが、凹面鏡6やミラーを介することによって上下方向や左右方向が反転する場合がある。尚、本実施形態では後述のように凹面鏡6と複数のミラーを介するが、ミラーの数を適正化することによりスクリーン5に投射された映像は、上下方向や左右方向が反転されることなく虚像9として視認されることとなる。また、フレネルレンズや凹面鏡6を介することによってサイズも変更する。
ここで、虚像9を生成する位置、より具体的には乗員8から虚像9までの距離(以下、生成距離という)Lについては、HUD1が備える凹面鏡6やフレネルレンズの曲率、スクリーン5と凹面鏡6との相対位置等によって適宜設定することが可能である。例えば、凹面鏡6やフレネルレンズの曲率が固定であれば、スクリーン5において映像の表示された位置から凹面鏡6までの光路に沿った距離によって生成距離Lが決定される。そして、本実施形態のHUD1では、後述のようにスクリーン5と凹面鏡6との間で光路の方向を変更するミラーの位置を移動させたり、傾斜したスクリーン5に対して映像を投影する位置を変えることによってその距離を変更可能に構成する。その結果、生成距離Lを適宜変更可能となる。例えば生成距離Lを2.5m〜40mの間で変更することが可能である。
また、車両のフロントバンパの上方やルームミラーの裏側等にはフロントカメラ10が設置される。フロントカメラ10は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたカメラにより構成された撮像装置であり、光軸方向を車両の進行方向前方に向けて設置される。そして、フロントカメラ10により撮像された撮像画像に対して画像処理が行われることによって、フロントウィンドウ7越しに乗員8に視認される前方環境(即ち虚像9が重畳される環境)の状況等が検出される。尚、フロントカメラ10の代わりにミリ波レーダ等のセンサを用いても良い。
次に、図2を用いてHUD1のより具体的な構成について説明する。図2は、本実施形態に係るHUD1の内部構成を示した図である。
図2に示すようにHUD1は、プロジェクタ4と、スクリーン5と、凹面鏡6と、第1ミラー11と、第2ミラー12と、反射ミラー13と、カバーガラス15と、制御回路部16と、CANインターフェース17とから基本的に構成されている。
ここで、プロジェクタ4は光源としてLED光源やランプ光源やレーザ光源を用いた映像投射装置であり、例えばレーザ走査式プロジェクタとする。尚、プロジェクタ4としてはDLPプロジェクタや液晶プロジェクタやLCOSプロジェクタを用いても良い。尚、レーザ走査式プロジェクタ以外を用いた場合にはプロジェクタ4に対して別途投射レンズを配置する必要がある。
図3はプロジェクタ4の構成を示した図である。図3に示すようにプロジェクタ4は、内部にレーザ光の光源18を備えており、例えばレーザ走査式プロジェクタでは光源18から出力されるレーザ光をMEMSミラー19で反射させ、スクリーン5上に走査させることによってスクリーン5に所望の映像を投射する。
一方、スクリーン5は、プロジェクタ4から投射された映像が投射される被投射媒体であり、例えばすりガラス等の拡散板やマイクロレンズアレイ等からなる透過型スクリーンが用いられる。ここで、図4はスクリーン5を示した図である。
図4に示すようにスクリーン5は、映像が投射される映像投射面として被投射エリア21を有しており、光源18からの光を用いてプロジェクタ4から投射された映像が表示される。即ち、スクリーン5が映像の表示される映像表示面に相当する。尚、乗員8はプロジェクタ4によって投射された映像を投射側とは逆側から視認することとなる。
また、プロジェクタ4とスクリーン5の代わりに乗員8に視認させる映像を表示する手段として液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を用いても良い。その場合には、液晶ディスプレイのバックライトや有機ELディスプレイの発光素子が光源に相当し、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイにおいて映像の表示される面が液晶表示面に相当する。
また、スクリーン5は、スクリーン5と凹面鏡6とを結ぶ光源18の光路22に対して傾斜するように配置されている。より具体的には、生成される虚像9の下端が上端よりもユーザ側に位置する方向、即ち、図5に示すようにスクリーン5の上端が光源18(プロジェクタ4)側となる方向に傾斜して配置されている。尚、スクリーン5の傾斜角θ(光路22に対して垂直な面からの傾斜で定義する)は、生成距離Lを変更可能とする範囲(例えば2.5m〜40m)や生成される虚像9を傾斜させる角度に基づいて適宜設定される。例えば3度とする。
また、凹面鏡6は、スクリーン5に表示された映像を拡大して反射させて乗員8に視認させることによって、乗員8の前方に映像の虚像9(図1参照)を生成する投影鏡である。そして、フロントウィンドウ7とともに虚像生成手段を構成する。尚、凹面鏡6としては、球面凹面鏡や、非球面凹面鏡、若しくは投影映像の歪みを補正するための自由曲面鏡が用いられる。
また、第1ミラー11は、スクリーン5と凹面鏡6とを結ぶ光路22に沿ってスクリーン5と凹面鏡6との間に配置され、スクリーン5から第1方向で入射する光路22を、第1方向と異なる第2方向に変更する光の反射手段である。同じく第2ミラー12は、スクリーン5と凹面鏡6とを結ぶ光路22に沿ってスクリーン5と凹面鏡6との間に配置され、スクリーン5から第2方向で入射する光路22を、第2方向と異なる第3方向に変更する光の反射手段である。特に本実施形態では、図6に示すように第1ミラー11の反射面が第2ミラーの反射面となす角度が90度で、更に、第1ミラー11の反射面が第1方向となす角度が45度、第2ミラー12の反射面が第3方向となす角度が45度となるように第1ミラー11及び第2ミラー12を配置する。即ち、本実施形態では特に第1方向と第3方向は互いに平行とされるとともに逆方向となるように構成する。
また、第1ミラー11及び第2ミラー12は、第1方向に沿って一体に移動可能に構成されている。具体的には、第1ミラー11及び第2ミラー12の背面側にあるミラー駆動モータ23を駆動させることによって、図6に示すように第1ミラー11及び第2ミラー12を第1方向と平行な方向に対して前後方向に移動させることが可能となる。
そして、第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させることによって、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xが変更されることとなる。具体的には図7に示すように第1ミラー11及び第2ミラー12を、スクリーン5に近づく方向へと移動させると光路長Xが短くなる。一方で、第1ミラー11及び第2ミラー12を、スクリーン5から遠ざかる方向へと移動させると光路長Xが長くなる。具体的には光路長Xは、第1ミラー11及び第2ミラー12の移動量の倍の距離を変位することとなる。即ち、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5に近づく方向へと5mm移動させれば光路長Xは1cm短くなり、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5から遠ざかる方向へと3mm移動させれば光路長Xは6mm長くなる。そして、光路長Xを変更させた結果、後述のように乗員8から虚像9までの距離である生成距離Lの長短を変更することが可能となる。
尚、本実施形態では図6に示すように第1方向と第3方向が互いに平行で逆方向となるように構成しているが、必ずしも第1方向と第3方向が互いに平行で逆方向となるように構成する必要はない。具体的には、第1方向と第3方向が90度以上異なる方向となるように第1ミラー11及び第2ミラー12を配置すれば、第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させることによって、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xを変更することが可能である。
また、本実施形態では第1ミラー11及び第2ミラー12を第1方向に平行な方向へ移動させる構成としているが、必ずしも第1方向と平行な方向に移動させる必要はなく、第1方向と所定角度(例えば5度や10度)異なる方向に移動させる構成としても良い。その場合であっても、第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させることによって、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xを変更することが可能である。
また、ミラー駆動モータ23はステッピングモータからなる。そして、HUD1は、制御回路部16から送信されるパルス信号に基づいてミラー駆動モータ23を制御し、第1ミラー11及び第2ミラー12の光路22に沿った位置を適切に位置決めすることが可能となる。
そして、上述のように光路22に対して傾斜するようにスクリーン5を配置し、且つ第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を移動可能に構成した本実施形態のHUD1では、スクリーン5に対して投射される映像26の位置を変更することや、第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させることによって、図8に示すようにスクリーン5に投射された映像26の虚像9が生成される位置(具体的には乗員8から虚像9までの距離である生成距離L)や虚像9の傾斜角を変更することが可能である。
ここで、生成距離Lや虚像9の傾斜角は、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xとスクリーン5において映像26が表示される位置、より具体的にはスクリーン5において映像26の表示された位置から凹面鏡までの光路22に沿った距離に依存する。従って、本実施形態では、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を移動させたり、傾斜したスクリーン5に対して映像26を投影する位置を変えることによって生成距離Lや虚像9の傾斜角を変更することが可能である。具体的には、スクリーン5に投射する映像26の位置を上方に移動させたり、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5から遠ざかる方向へと移動させると、スクリーン5において映像26の表示された位置から凹面鏡までの光路22に沿った距離が長くなり、その結果、生成距離Lが長くなる(即ち、乗員8からはより遠くに虚像9が視認されるようになる)。また、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5から遠ざかる方向へと移動させると、地表面に対する虚像9の傾斜の角度φは小さくなる(即ち、より地表面に平行に近い虚像9となる)。一方で、スクリーン5に投射する映像26の位置を下方に移動させたり、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5に近づく方向へと移動させると、スクリーン5において映像26の表示された位置から凹面鏡6までの光路22に沿った距離が短くなり、その結果、生成距離Lが短くなる(即ち、乗員8からはより近くに虚像9が視認されるようになる)。また、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5に近づく方向へと移動させると、地表面に対する虚像9の傾斜の角度φは大きくなる(即ち、より地表面に垂直に近い虚像9となる)。
従って、HUD1は、虚像9を生成する位置(具体的には乗員8から虚像9までの距離である生成距離L)を決定すると、決定された生成距離Lに対応する位置に虚像9を生成する為の光路長X(即ち、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置)やスクリーン5に対して映像26を投射する位置を決定し、その後に決定された光路長Xとなるように第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させ、更にスクリーン5に対して映像26を投射する位置も制御するように構成する。より具体的には、先ず第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を決定することによって生成距離Lを変更可能な下限値と上限値が設定され、その後にスクリーン5に対して映像26を投射する位置を適宜変更することによって、設定された下限値から上限値までの範囲内で生成距離Lを変更可能に構成する。
尚、生成距離Lは、上述したようにスクリーン5において映像26の表示された位置から凹面鏡までの光路22に沿った距離に依存するので、特にスクリーン5に対して表示する映像26の位置が、凹面鏡6からの距離が変わる方向(即ちスクリーン5の短辺方向)に変位した場合に変位する。また、映像26の表示位置の変位量に対する生成距離Lの変位量は、映像26が表示される位置から凹面鏡6までの距離で異なる。即ち、映像26が表示される位置が凹面鏡6から遠い(即ち光路長Xが長い場合やスクリーン5の上方に投射する場合)ほど、映像26の表示位置の変位量に対する生成距離Lの変位量は大きくなる。即ち、光路長Xが短い場合やスクリーン5の下方では、映像26の表示位置を変位させても生成距離Lは大きく変わらないが、光路長Xが長い場合やスクリーン5の上方では、映像26の表示位置をわずかに変位させた場合でも、生成距離Lが大きく変位することとなる。
また、生成距離Lを変更することが可能な範囲や虚像9の傾斜角度φを変更することが可能な範囲は、スクリーン5の傾斜角度θや第1ミラー11及び第2ミラー12を移動可能な範囲によって決定される。特に本実施形態では、第1ミラー11及び第2ミラー12を最もスクリーン5側に移動させた状態では、傾斜角度φは90度に極めて近い角度であって、映像26の投射する位置に関わらず生成距離Lがほぼ2.5mとなるように設計する。一方、第1ミラー11及び第2ミラー12を最もスクリーン5から離れた位置に移動させた状態では、傾斜角度φは0度に近い角度であって、被投射エリア21の最も下方に投射された映像26の虚像9の下端の生成距離Lが15mであり、被投射エリア21の最も上方に投射された映像26の虚像9の上端の生成距離Lが40mとなるように設計する。即ち、被投射エリア21の下端から上端までに跨る映像26を表示すると、乗員8からの距離が15mから40mの区間に跨る虚像9が生成されることとなる。
ここで、スクリーン5に対して投射された映像26は、凹面鏡6によって反射されるが、第1ミラー11、第2ミラー12、反射ミラー13においても反射されるので、生成される虚像9はスクリーン5に対して投射された映像と上下左右は反転しない像となる。即ち、スクリーン5の上方に投射された映像26ほど、その映像26に基づいて生成される虚像9も乗員8から鉛直方向上側に視認され、スクリーン5の下方に投射された映像26ほど、その映像26に基づいて生成される虚像9も乗員8から鉛直方向下側に視認される。従って、乗員8から遠くの位置に生成される虚像9ほど乗員8からは上方に視認できる。ここで、車両の乗員8がフロントウィンドウ7越しに前方環境を視認する場合には、基本的に遠くに位置するものほど上方に見える。従って、スクリーン5を傾斜させることによって視認できる前方環境と虚像9とを対応させ、虚像9と前方環境との重畳表示を見やすくすることが可能となる。
また、生成距離Lが長い虚像9ほど傾斜角φは小さくなるので、後述のように乗員8が案内対象となる案内対象地点を視認できており、周辺環境に重畳させて乗員8に視認させることにより案内を行う虚像9を生成する場合には、生成距離Lを長く設定する(例えば20mとする)ことによって、虚像9をできる限り路面(地表面)に沿って生成する。その結果、生成された虚像9を周辺環境に適切に重畳させることが可能となる。一方で、乗員8が案内対象となる案内対象地点を視認できず、周辺環境に重畳させずに乗員8に視認させることにより案内を行う虚像9を生成する場合には、生成距離Lを短く設定する(例えば2.5mとする)ことによって、虚像9を路面(地表面)に対してできる限り垂直に生成する。その結果、虚像9が障害物等に埋め込まれることなく、ユーザに見易い虚像9を生成することが可能となる。
一方、反射ミラー13は、図2に示すように第1ミラー11及び第2ミラー12によって反射された光源18からの光を、凹面鏡6の方向に更に反射することによってHUD1内で光路22を変更する光の反射手段である。
また、カバーガラス15は、HUD1の上面に配置された透過性の板状部材である。そして、スクリーン5に表示された映像は凹面鏡6によって反射され、カバーガラス15を介して乗員8に視認させる。尚、カバーガラス15としてはフレネルレンズを用いても良い。また、カバーガラス15としてフレネルレンズを用いる場合には、凹面鏡6の代わりに平面の鏡を用いることも可能である。
また、制御回路部16は、HUD1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。ここで、図10は本実施形態に係るHUD1の構成を示したブロック図である。
図10に示すように制御回路部16は、演算装置及び制御装置としてのCPU31、並びにCPU31が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるRAM32、制御用のプログラムのほか、後述の虚像生成処理プログラム(図11参照)等が記録されたROM33、ROM33から読み出したプログラムや後述の位置設定テーブルを記憶するフラッシュメモリ34等の内部記憶装置を備えている。また、制御回路部16は、プロジェクタ4、ミラー駆動モータ23とそれぞれ接続され、プロジェクタ4や各種モータの駆動制御を行う。
また、CAN(コントローラエリアネットワーク)インターフェース17は、車両内に設置された各種車載器や車両機器の制御装置間で多重通信を行う車載ネットワーク規格であるCANに対して、データの入出力を行うインターフェースである。そして、HUD1は、CANを介して、各種車載器や車両機器の制御装置(例えば、ナビゲーション装置48、AV装置49等)と相互通信可能に接続される。それによって、HUD1は、ナビゲーション装置48やAV装置49等から取得した情報を投影可能に構成する。また、建物や高架などの構造物、樹木、道路構造、勾配等の地形に関する地形情報(地図情報)についてもナビゲーション装置48から取得可能となる。
続いて、前記構成を有するHUD1においてCPU31が実行する虚像生成処理プログラムについて図11に基づき説明する。図11は本実施形態に係る虚像生成処理プログラムのフローチャートである。ここで、虚像生成処理プログラムは車両のACC電源がONされた後に実行され、車両の乗員8に視認させる虚像9を生成するプログラムである。尚、以下の図11にフローチャートで示されるプログラムは、HUD1が備えているRAM32やROM33に記憶されており、CPU31により実行される。
先ず、虚像生成処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU31は、CANを介してナビゲーション装置48から車両の現在位置の検出結果に基づいて取得する。尚、車両の現在位置は、高精度ロケーション技術を用いて詳細に特定することが望ましい。ここで、高精度ロケーション技術とは、車両後方のカメラから取り込んだ白線や路面ペイント情報を画像認識により検出し、更に、白線や路面ペイント情報を予め記憶した地図情報DBと照合することにより、走行車線や高精度な車両位置を検出可能にする技術である。尚、高精度ロケーション技術の詳細については既に公知であるので省略する。
続いて、S2においてCPU31は、車両の進行方向前方の所定距離以内(例えば1km以内)に案内対象地点があるか否か判定する。ここで、“案内対象地点”は、ナビゲーション装置48により走行案内を行う場合に乗員に案内対象となる地点である。具体的には、右左折対象となる分岐点、車両が進入する必要のある経路、前方車両や歩行者等の障害物、目的地の施設、道路標識等がある。以下の説明では、車両が走行予定経路に沿って走行する場合に、車両が道なり方向以外に通過する必要のある分岐点(以下、案内交差点という)がある場合に、該案内交差点において車両が進入する経路(以下、交差点進入経路という)を“案内対象地点”とする。従って、前記S2においてCPU31は、先ずCANを介してナビゲーション装置48から車両の走行予定経路、即ちナビゲーション装置48で現在設定されている案内経路を取得する。そして、取得した走行予定経路に含まれる案内交差点及び交差点進入経路を特定した後に、前記S1で取得した車両の現在位置と比較し、車両の進行方向前方の所定距離以内(例えば1km以内)に交差点進入経路があるか否か判定する。
そして、車両の進行方向前方の所定距離以内に案内対象地点があると判定された場合(S2:YES)には、S3へと移行する。それに対して、車両の進行方向前方の所定距離以内に案内対象地点が無いと判定された場合(S2:NO)には、虚像の生成を行うことなく当該虚像生成処理プログラムを終了する。
S3においてCPU31は、後述の視認判定処理(図18)を実行する。尚、視認判定処理は、車両周辺の地形情報(地図情報)と車両の現在位置とに基づいて前記S2で進行方向前方にあると判定された案内対象地点を車両の乗員が視認できるか否かを判定する処理である。
次に、S4においてCPU31は、前記S3の処理結果が、前記S2で進行方向前方にあると判定された案内対象地点を車両の乗員が視認できると判定された結果であったか否かを判定する。
そして、前記S3の処理結果が、前記S2で進行方向前方にあると判定された案内対象地点を車両の乗員が視認できると判定された結果であった場合(S4:YES)には、S5へと移行する。それに対して、前記S3の処理結果が、前記S2で進行方向前方にあると判定された案内対象地点を車両の乗員が視認できないと判定された結果であった場合(S4:NO)には、S8へと移行する。尚、車両の進行方向前方に複数の案内対象地点がある場合には、最も車両側にある案内対象地点を対象として前記S4の判定処理を行う。
続いて、S5においてCPU31は、車両の現在位置から案対象地点までの間に、案内対象地点を車両の乗員8が視認できなくなると判定される区間があるか否か判定する。
CPU31は、前記S5の判定処理を行うに際し、先ずCANを介してナビゲーション装置48から車両周辺の地形情報(地図情報)と車両の現在位置から案内対象地点までの走行予測経路を取得する。その後、走行予測経路上の各地点に車両がいる場合に、前記S2で進行方向前方にあると判定された案内対象地点を車両の乗員8が視認できるか否かを前記S3の視認判定処理と同様の方法で地点毎に判定する。そして、車両の乗員が案内対象地点を視認できないと判定された区間を特定する。
そして、車両の現在位置から案対象地点までの間に、案内対象地点を車両の乗員8が視認できなくなると判定される区間がある場合(S5:YES)には、S8へと移行する。それに対して、車両の現在位置から案対象地点までの間に、案内対象地点を車両の乗員8が視認できなくなると判定される区間がない場合(S5:NO)には、S6へと移行する。
S6においてCPU31は、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を“基準位置”に設定する。ここで、“基準位置”は、被投射エリア21の最も下方に投射された映像26に基づいて生成される虚像9の下端の生成距離L(即ち被投射エリア21内の映像26の表示位置に基づく生成距離Lの変更可能範囲の下限)が15mとなる光路長Xを実現する位置とする。例えば最もスクリーン5から離れた位置が“基準位置”となる。尚、前述したようにスクリーン5は光路22に対して傾斜して配置されているので、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を“基準位置”に設定した場合には、被投射エリア21の最も上方に投射された映像26に基づいて生成される虚像9の上端の生成距離L(即ち被投射エリア21内の映像26の表示位置に基づく生成距離Lの変更可能範囲の上限)は、15mより長い40mとなる。即ち、被投射エリア21の下端から上端までに跨る映像26を表示すると、図12に示すように乗員8からの距離が15mから40mの区間に跨る傾斜した虚像9が生成されることとなる。
尚、第1ミラー11及び第2ミラー12の現在位置が、“基準位置(例えば最もスクリーン5から離れた位置)”に配置されていない場合には、ミラー駆動モータ23を駆動させて、“基準位置”へと第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させる。また、本実施形態では“基準位置”を生成距離Lの変更可能範囲の下限が15mとなる位置としているが、15m以外(例えば10mや20m)としても良い。
次に、S7においてCPU31は、プロジェクタ4へと信号を送信し、プロジェクタ4によるスクリーン5への映像の投射を開始する。尚、プロジェクタ4により投射される映像としては、車両2に関する情報や乗員8の運転の支援の為に用いられる各種情報がある。例えば障害物(他車両や歩行者)に対する警告、ナビゲーション装置48で設定された案内経路(走行予定経路)や案内経路に基づく案内情報(車両の進行方向を示す矢印等)、路面に表示する警告(追突注意、制限速度等)、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ画面等がある。特に本実施形態では、案内対象地点の位置を案内する矢印を出力する構成とする。また、案内対象地点は前述したように車両が走行予定経路に沿って走行する場合に、車両が道なり方向以外に通過する必要のある案内交差点がある場合に、該案内交差点において車両が進入する経路(交差点進入経路)とする。
その結果、例えばナビゲーション装置48において案内経路が設定されており、車両の進行方向前方に右折対象となる案内交差点51がある場合には、図13に示すように車両の進行方向前方に交差点進入経路52の位置を示す右向きの矢印の虚像9(第1の虚像)を生成する。尚、交差点進入経路52は、案内交差点51において右折後に進入する経路となる。また、矢印の虚像9は、周辺環境(図13に示す例では案内交差点51付近の路面)に重畳するように生成する。それによって、案内交差点51において車両が進入すべき経路を乗員8は明確に特定することが可能となる。また、本実施形態では特に矢印の虚像9を地面上、より具体的には虚像9の下端が地面上に位置するように虚像9を生成する。尚、15m〜40mの範囲内のどの位置に虚像9を生成するかについては、被投射エリア21に対して映像26を投射する位置に基づいて詳細に設定することが可能である。基本的には、乗員8から虚像9の下端までの距離が20mとなる位置に映像26を投射する。尚、車両が移動することによって車両の乗員8から視認できる案内対象地点の位置が変わると、それに伴って矢印の形状や位置も変更するように制御する。具体的には、矢印の先端が案内対象地点を指し示すように矢印の形状や位置を変更する。その後、S10へと移行する。
一方、案内対象地点を車両の乗員8が視認できない、或いは現在は視認できても車両の現在位置から案対象地点までの間に視認できなくなる区間があると判定された場合(S4:NO、S5:YES)には、S8へと移行する。そして、S8においてCPU31は、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を“パネル表示位置”に設定する。ここで、“パネル表示位置”は、被投射エリア21の最も下方に投射された映像26に基づいて生成される虚像9の下端の生成距離L(即ち被投射エリア21内の映像26の位置に基づく生成距離Lの変更可能範囲の下限)が2.5mとなる光路長Xを実現する位置とする。例えば最もスクリーン5に近づく位置が“パネル表示位置”となる。
尚、前述したように乗員8から接近した位置に生成される虚像9は路面に対してほぼ垂直となる。従って、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を“パネル表示位置”に設定した場合には、被投射エリア21の最も上方に投射された映像26に基づいて生成される虚像9の上端の生成距離L(即ち被投射エリア21内の映像26の位置に基づく生成距離Lの変更可能範囲の上限)についても2.5m(より正確には2.5mわずかに長い距離)となる。即ち、被投射エリア21の下端から上端までに跨る映像26を表示すると、図17に示すように乗員8からの距離が2.5mの位置に路面に対してほぼ垂直な虚像9が生成されることとなる。
尚、第1ミラー11及び第2ミラー12の現在位置が、“パネル表示位置(例えば最もスクリーン5に近い位置)”に配置されていない場合には、ミラー駆動モータ23を駆動させて、“パネル表示位置”へと第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させる。また、本実施形態では“パネル表示位置”を生成距離Lの変更可能範囲の下限が2.5mとなる位置としているが、“基準位置”よりも短い距離であれば2.5m以外(例えば3mや4m)としても良い。
また、前記S6や前記S8におけるミラー駆動モータ23の駆動は、フラッシュメモリ34から読み出した位置設定テーブルを用いて行う。ここで、位置設定テーブルは、設定可能な生成距離Lの変更可能範囲の下限毎(本実施形態では2.5m(パネル表示位置)と15m(基準位置)の2種類)に対応付けて、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置(即ち光路長X)が規定されている。そして、CPU31は、位置設定テーブルに基づいて第1ミラー11及び第2ミラー12を“基準位置”や“パネル表示位置”へ移動させるのに必要なミラー駆動モータ23の駆動量(パルス数)を決定する。その後、CPU31は、決定された駆動量だけミラー駆動モータ23を駆動させる為のパルス信号をミラー駆動モータ23へと送信する。そして、パルス信号を受信したミラー駆動モータ23は、受信したパルス信号に基づいて駆動を行う。その結果、第1ミラー11及び第2ミラー12が“基準位置”や“パネル表示位置”へと移動することとなる。
次に、S9においてCPU31は、プロジェクタ4へと信号を送信し、プロジェクタ4によるスクリーン5への映像の投射を開始する。尚、本実施形態では、S7と同様に案内対象地点の位置を案内する矢印を出力する構成とする。また、案内対象地点は前述したように車両が走行予定経路に沿って走行する場合に、車両が道なり方向以外に通過する必要のある案内交差点がある場合に、該案内交差点において車両が進入する経路(交差点進入経路)とする。但し、前記S9では、前記S7と異なり、周辺環境に重畳させずに乗員8に視認させることにより案内を行う虚像9を生成する。
例えばナビゲーション装置48において案内経路が設定されており、車両の進行方向前方に右折対象となる案内交差点51がある場合には、図15に示すように車両の進行方向前方に交差点進入経路52の位置を示す右向きの矢印の虚像9(第2の虚像)を生成する。尚、交差点進入経路52は、案内交差点51において右折後に進入する経路となる。また、矢印の虚像9は、乗員8から2.5m先に周辺環境(図15に示す例では案内交差点51付近の路面)と重畳させずに生成する。
その結果、図15に示すように障害物53によって交差点進入経路52が乗員から視認できない場合であっても、虚像9を生成する位置は自車両の先端に近い2.5m先の位置となるので、障害物53に虚像9が重畳されたり埋め込まれて視認されることがない。また、虚像9をできる限り路面に対して垂直方向に生成するので、乗員8に視認し易い虚像9となる。即ち、前方環境と重畳した案内を行うことが難しい状況となった場合であっても、虚像9の表示態様を切り替えることによって交差点進入経路52のおよその位置を車両の乗員に把握させることが可能となる。尚、第2の虚像を生成する場合には、車両が移動することによって車両の乗員8から視認できる案内対象地点の位置が変わったとしても、矢印の形状や位置は基本的に変化させずに固定とする。
その後、S10においてCPU31は、車両が案内対象地点を通過したか否かを判定する。そして、車両が案内対象地点を通過したと判定された場合(S10:YES)には、S11へと移行する。そして、S11においてCPU31は、プロジェクタ4による映像の投射を終了する。即ち、虚像9の生成を終了する。
一方、車両が案内対象地点を通過していないと判定された場合(S10:NO)には、S3へと戻る。そして、車両が案内対象地点を通過するまで虚像9の生成を継続して行う。
その結果、案内対象地点を車両の乗員8が視認できない、或いは現在は視認できても車両の現在位置から案対象地点までの間に視認できなくなる区間があると判定される間は、周辺環境に重畳させずに乗員8に視認させることにより案内を行う2の虚像を生成することとなる(S9)。一方で、案内対象地点を車両の乗員8が視認でき、且つ車両の現在位置から案対象地点までの間に視認できなくなる区間がない状況となった後は、周辺環境に重畳させて乗員8に視認させることにより案内を行う第1の虚像を生成することとなる(S7)。例えば、図16に示す例では、地点Aまでの区間は案内対象地点を車両の乗員8が視認できないので、第2の虚像が生成される。また、地点Aから地点Bまでの区間は案内対象地点を車両の乗員8が視認できるが、その後に視認できなくなる区間があるので、第2の虚像が継続して生成される。また、地点Bから地点Cまでの区間は案内対象地点を車両の乗員8が視認できないので、第2の虚像が生成される。そして、地点Cから案内対象地点までの区間は案内対象地点を車両の乗員8が視認でき、その後に視認できなくなる区間もないので、第1の虚像が生成される。
即ち、車両の乗員8が案内対象地点を視認可能な状態と視認できない状態とが所定間隔以下で繰り返される間において、第2の虚像を継続して生成することとなる。その結果、虚像9の表示態様が頻繁に変化することを防止できる。尚、現在位置から案対象地点までの間に視認できなくなる区間があると判定された場合(S5:YES)であっても、その区間が遠い場合には、第2の虚像ではなく第1の虚像を生成する構成としても良い。例えば図16に示す例では、地点Aから地点Bまでの距離が長い(例えば300m以上の)場合には、地点Aから地点Bまでの区間を車両が走行する間において第1の虚像を生成するようにしても良い。
また、本実施形態では第1の虚像と第2の虚像との間で生成する虚像9を切り替える際に、図17に示すように第1の虚像の矢印の先端Xと第2の虚像の矢印の先端Yとが車両の乗員8から同位置に視認されるように切り替えるように構成する。それによって、虚像9の表示態様が切り替わったとしても矢印の動きが最小限となり、乗員8の虚像9を視認する負担を軽減できる。
次に、前記S3において実行される視認判定処理のサブ処理について図18に基づき説明する。図18は視認判定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
先ず、S21においてCPU31は、車両の前方環境の内、乗員8が視認できる範囲(以下、視界範囲という)を特定する。具体的には、CANを介してナビゲーション装置48から車両の現在位置と車両の方位と車両周辺の地図情報を取得し、図19に示すように視界範囲61を特定する。尚、フロントカメラ10により撮像した画像から視界範囲を特定する構成としても良い。
次に、S22においてCPU31は、前記S21で特定された視界範囲内に、前記S2で進行方向前方にあると判定された案内対象地点が含まれているか否かを判定する。
そして、視界範囲内に案内対象地点が含まれていると判定された場合(S22:YES)には、S23へと移行する。一方、視界範囲内に案内対象地点が含まれていないと判定された場合(S22:NO)には、S26へと移行する。
S23においてCPU31は、CANを介してナビゲーション装置48から車両周辺の地形情報(地図情報)を取得し、車両の乗員8と前記S2で進行方向前方にあると判定された案内対象地点との間に、視界を遮るものがあるか否か判定する。尚、「視界を遮るもの」は、建物や高架などの構造物、樹木、道路の側壁等の位置が不変のものを対象とする。一方で、道路上を移動する移動体である他車両、自転車、歩行者等の時間とともに位置が変位するものについては「視界を遮るもの」の対象から除外する。
そして、車両の乗員8と前記S2で進行方向前方にあると判定された案内対象地点との間に、視界を遮るものがあると判定された場合(S23:YES)には、S26へと移行する。一方、車両の乗員8と前記S2で進行方向前方にあると判定された案内対象地点との間に、視界を遮るものが無いと判定された場合(S23:NO)には、S24へと移行する。
S24においてCPU31は、CANを介してナビゲーション装置48から車両周辺の地形情報(地図情報)を取得し、勾配によって車両の乗員8の視界が遮られるか否か判定する。具体的には、図20に示すように上り坂を車両が走行している場合であって、上り坂が終了した先に案内対象地点があるような場合には、勾配によって車両の乗員8の視界が遮られると判定される。
そして、勾配によって車両の乗員8の視界が遮られると判定された場合(S24:YES)には、S25へと移行する。一方、勾配によって車両の乗員8の視界が遮られないと判定された場合(S24:NO)には、S26へと移行する。
S25においてCPU31は、前記S2で進行方向前方にあると判定された案内対象地点を車両の乗員が視認できると判定する。その後、S4へと移行する。
一方、S26においてCPU31は、前記S2で進行方向前方にあると判定された案内対象地点を車両の乗員が視認できないと判定する。その後、S4へと移行する。
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るHUD1によれば、プロジェクタ4から、映像をスクリーン5に投射し、スクリーン5に投射された映像を車両2のフロントウィンドウ7に反射させて車両の乗員8に視認させることによって、車両の乗員8が視認する映像の虚像9を生成する。また、HUD1は、車両の乗員8の周辺に案内対象地点があって、乗員8が該案内対象地点を視認可能と判定された場合には、案内対象地点の位置を示す矢印の虚像9を周辺環境に重畳させて乗員8に視認させることにより案内対象地点の案内を行う(S7)。一方で、車両の乗員8の周辺に案内対象地点があって、乗員8が該案内対象地点を視認できないと判定された場合には、案内対象地点の位置を示す矢印の虚像9を周辺環境に重畳させずに乗員8に視認させることにより案内対象地点の案内を行う(S9)ように構成する。その結果、車両の乗員8が案内対象地点を視認できているか否かに関わらず、矢印の虚像によって案内対象地点をユーザに適切に案内することが可能となる。特に、障害物等によって視界が遮られることにより、車両の乗員8から案内対象地点が視認できず前方環境と重畳した案内を行うことが難しい状況となった場合であっても、虚像9の表示態様を切り替えることによって案内対象地点を誤認させずに、案内対象地点のおよその位置をユーザに把握させることが可能となる。
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではHUD1によって車両2のフロントウィンドウ7の前方に虚像を生成する構成としているが、フロントウィンドウ7以外のウィンドウの前方に虚像を生成する構成としても良い。また、HUD1により映像を反射させる対象はフロントウィンドウ7自身ではなくフロントウィンドウ7の周辺に設置されたバイザー(コンバイナー)であっても良い。
また、本実施形態では車両2に対してHUD1を設置する構成としているが、車両2以外の移動体に設置する構成としても良い。例えば、船舶や航空機等に対して設置することも可能である。また、アミューズメント施設に設置されるライド型アトラクションに設置しても良い。その場合には、ライドの周囲に虚像を生成し、ライドの乗員に対して虚像を視認させることが可能となる。
また、本実施形態では車両が走行予定経路に沿って走行する場合に、車両が道なり方向以外に通過する必要のある分岐点がある場合に、該分岐点において車両が進入する経路を“案内対象地点”としているが、案内対象となる地点であれば他の地点を案内対象地点としても良い。例えば、右左折対象となる分岐点、前方車両や歩行者等の障害物、目的地の施設、道路標識等を案内対象地点としても良い。
また、本実施形態では建物や高架などの構造物、樹木、道路の側壁、勾配等の位置が不変のもののみを考慮として車両の乗員8から案内対象地点が視認できるか否かを判定する構成としているが、他車両、自転車、歩行者等の時間とともに位置が変位するものについても考慮して判定しても良い。
また、本実施形態では第1ミラー11及び第2ミラー12を光路に沿って一体に移動させることによって、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xを変更する構成としているが、第1ミラー11や第2ミラー12は固定とし、スクリーン5や凹面鏡6を光路に沿って移動させることによって、光路長Xを変更する構成としても良い。また、第1ミラー11と第2ミラー12は一体で移動可能な構成であれば、別々の駆動源で駆動させる構成としても良い。
また、本実施形態では第1ミラー11及び第2ミラー12を第1方向に平行な方向へ移動させる構成としているが、必ずしも第1方向と平行な方向に移動させる必要はなく、第1方向と所定角度(例えば5度や10度)異なる方向に移動させる構成としても良い。その場合であっても、第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させることによって、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xを変更することが可能である。
また、本実施形態では、スクリーン5は、スクリーン5と凹面鏡6とを結ぶ光源18の光路22に対して傾斜するように配置されているが、光路22に対して垂直となるように配置しても良い。その場合には、生成距離Lの変更は第1ミラー11及び第2ミラー12の移動のみによって行う。
また、本実施形態では投射レンズが不要となるレーザ走査式プロジェクタを用いているが、レーザ走査式プロジェクタ以外のプロジェクタ(例えば、DLPプロジェクタ、液晶プロジェクタ、LCOSプロジェクタ)を用いても良い。また、プロジェクタ4とスクリーン5の代わりに乗員8に視認させる映像を表示する手段として液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を用いても良い。
また、本実施形態ではHUD1のCPU31が虚像生成処理プログラム(図11、図18)の各ステップを実行する構成としているが、HUD1以外の車載器(例えばナビゲーション装置48)や車両の制御を行うECU等が一部または全部の処理を実行する構成としても良い。
また、本発明に係る虚像表示装置を具体化した実施例について上記に説明したが、虚像表示装置は以下の構成を有することも可能であり、その場合には以下の効果を奏する。
例えば、第1の構成は以下のとおりである。
映像を表示する映像表示面と、前記映像表示面に表示された前記映像をユーザに視認させることによって前記映像の虚像を生成する虚像生成手段と、前記ユーザに対して案内対象となる案内対象地点を取得する案内対象地点取得手段と、前記ユーザが前記案内対象地点を視認可能か否かを判定する視認判定手段と、を有し、前記虚像生成手段は、前記ユーザの周辺に前記案内対象地点があって、前記ユーザが該案内対象地点を視認可能と判定された場合には、前記案内対象地点の位置を示す矢印の虚像を周辺環境に重畳させて前記ユーザに視認させることにより前記案内対象地点の案内を行う第1の虚像を生成し、前記ユーザの周辺に前記案内対象地点があって、前記ユーザが該案内対象地点を視認できないと判定された場合には、前記案内対象地点の位置を示す矢印の虚像を周辺環境に重畳させずに前記ユーザに視認させることにより前記案内対象地点の案内を行う第2の虚像を生成することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、ユーザが案内対象地点を視認可能である場合には、案内対象地点の位置を示す矢印の虚像を周辺環境に重畳させてユーザに視認させるとともに、ユーザが案内対象地点を視認できない場合には、案内対象地点の位置を示す矢印の虚像を周辺環境に重畳させずにユーザに視認させるので、ユーザが案内対象地点を視認できているか否かに関わらず、矢印の虚像によって案内対象地点をユーザに適切に案内することが可能となる。特に、障害物等によって視界が遮られることにより、ユーザから案内対象地点が視認できず前方環境と重畳した案内を行うことが難しい状況となった場合であっても、虚像の表示態様を切り替えることによって案内対象地点を誤認させずに、案内対象地点のおよその位置をユーザに把握させることが可能となる。
また、第2の構成は以下のとおりである。
前記ユーザから前記虚像生成手段により生成される虚像までの距離である生成距離を変更する距離変更手段を有し、前記第1の虚像を生成する際の生成距離よりも前記第2の虚像を生成する際の生成距離を短い距離とすることを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、ユーザと案内対象地点との間に障害物等がある場合であっても、障害物に虚像が重畳されたり埋め込まれて視認されることがない。
また、第3の構成は以下のとおりである。
前記ユーザの周辺の地形情報を取得する地形情報取得手段を有し、前記視認判定手段は、前記ユーザの周辺の地形情報に基づいて前記ユーザが前記案内対象地点を視認可能か否かを判定することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、他車両や歩行者などを除き、構造物や勾配等の位置が不変のものを対象としてユーザが案内対象地点を視認可能か否かを判定するので、ユーザが案内対象地点を視認可能か否かの判定結果が頻繁に変わることが無い。従って、虚像の表示態様が頻繁に切り替わることを防止することが可能となる。
また、第4の構成は以下のとおりである。
前記虚像生成手段は、前記ユーザが該案内対象地点を視認可能な状態と前記ユーザが該案内対象地点を視認できない状態とが所定間隔以下で繰り返される間において、前記第2の虚像を継続して生成することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、複雑な地形の区間をユーザが移動する場合において、虚像の表示態様が頻繁に切り替わることを防止することが可能となる。
また、第5の構成は以下のとおりである。
前記虚像生成手段は、前記第1の虚像と前記第2の虚像との間で生成する虚像を切り替える際に、前記第1の虚像の矢印の先端と前記第2の虚像の矢印の先端とが前記ユーザから同位置に視認されるように切り替えることを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、虚像の表示態様が切り替わったとしても矢印の動きが最小限となり、ユーザの虚像を視認する負担を軽減できる。
また、第6の構成は以下のとおりである。
前記虚像生成手段は、前記第1の虚像を生成する場合には、前記ユーザから視認される前記案内対象地点の位置が変位した際に、前記ユーザから視認される前記案内対象地点の位置に対応させて矢印の形状又は虚像を生成する位置を変更し、前記第2の虚像を生成する場合には、前記第2の虚像を生成する間において矢印の形状及び虚像を生成する位置を固定することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、第1の虚像を生成する場合には、矢印の虚像によって案内対象地点の位置を正確にユーザに把握させることが可能となる。一方、第2の虚像を生成する場合には、矢印の形状や位置を固定することによってユーザに視認し易い虚像を生成することが可能となる。
また、第7の構成は以下のとおりである。
前記ユーザが乗車する車両に設置され、前記車両の走行予定経路を取得する経路取得手段を有し、前記案内対象地点は、前記走行予定経路に沿って前記車両が走行する為に道なり方向以外に通過する必要のある分岐点がある場合に、該分岐点において前記車両が進入する経路であることを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、車両が分岐点で進入すべき経路を車両の乗員であるユーザが視認できているか否かに関わらず、矢印の虚像によって車両が分岐点で進入すべき経路をユーザに適切に案内することが可能となる。