JP6484025B2 - 鉄道車両用構体の外板及び鉄道車両用構体 - Google Patents

鉄道車両用構体の外板及び鉄道車両用構体 Download PDF

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Description

本発明は、鉄道車両用構体の外板、鉄道車両用構体、及び鉄道車両用構体の製造方法に関する。
図6に示すように、通常の鉄道車両の車体構体5は、主に鋼、ステンレス鋼、或いはアルミニウム合金等の金属材料で予め個別に製作された複数の車両用構体、具体的には1つの屋根構体4、2つの側構体2、2つの妻構体3、及び台枠構体1が互いに接合されて構成される。なお、図6においては、作図上の都合により、奥側の側構体2と妻構体3が表されていない。
上記の金属材料のうちステンレス鋼やアルミニウム合金には錆を防ぐための塗装が必要でないという利点があり、車両用構体の材料として広く用いられている。一般に、ステンレス鋼製の車体構体は、外板の内側に縦横に配した骨がスポット溶接或いはレーザー溶接により接合されて成る骨皮構造を有する。アルミニウム合金製の車体構体は、外板と補強部材とが一体成形されたアルミ押出し形材同士が結合されてなるダブルスキン構造が一般的である。
車両用構体の製作に際しては、先ず、素材の切断、プレス加工、或いは製缶により、外板や柱や梁などの各種部品が製作され、製作された部品が互いに接合されて、台枠、屋根、妻、及び側の各車両用構体が組み立てられる。部品の接合には主に溶接が用いられている。例えば、ステンレス車両ではレーザー溶接及びスポット溶接が、アルミ車両ではレーザーミグハイブリッド溶接、タンデムミグ溶接及びミグ溶接が用途に応じて使い分けられている。
車両用構体を構成する部品のうち、外板は人目にふれるため見栄えに対する要求が厳しい。ステンレス鋼製やアルミニウム合金製の外板は塗装が不要であるものの、表面が平坦(滑らか)なままでは製造もしくは使用に伴って生じる汚れや傷や変形が目立ってしまう。汚れの例として、雨などの水滴の跡やゴミが挙げられる。変形の例として、レーザー溶接によって接合された部品に生じる角折れ(熱収縮に起因する変形)に伴ってレーザービームが照射される面の反対側の面に生じる凸状の溶接痕(以降、「角折れ部」)が挙げられる。後程参照する図7に、溶接痕の一例として角折れ部Lを示す。
塗装を行うことなく外板の汚れや浅い傷や軽微な変形を目立たなくすることを図って、外板の表面を平坦(滑らか)でなくする加工(以降、「表面処理」)が予め行われることが多い。外板の表面が平坦でないと、その表面に入射した光線が乱反射するため表面の汚れや傷や変形が目立ちにくいからである。
表面処理は、外板の材料となるステンレス鋼材やアルミニウム合金材(以降、「金属素材」)に対して、外板の製作に先立って行われる。具体的には、金属素材の表面に直線状の細かい傷を一方向に連続的に(ヘアライン加工)または不連続に(ベルトグラインド仕上げ)多数つける加工が行われる。傷をつける加工は、例えば、砥粒を接着したベルトを用いて金属素材の表面を研磨することにより行われる。処理効率の観点から、金属素材の長手方向に略平行な方向に沿って傷(以降、「研磨目」)が形成されるのが一般的である。
車両用構体の製作に際しては、上述の表面処理が既に施された金属素材を加工して部品を製作するのが一般的である。部品の寸法の最大値は製作される車両の長手方向の寸法(例えば20m〜25m)と同程度であるため、金属素材の長手方向が部品の長手方向と合致するように金属素材を切断、加工して部品を製作することが多い。以下、一例として、側構体及び側構体を構成する外板の製作について説明する。外板は、金属素材を加工して製作された1つあるいは複数の板状の部材(以降、「板状部材」)から構成される。外板が1つの板状部材から構成される場合はもちろん、複数の板状部材を互いに接合して構成される場合も板状部材の個数及び接合箇所数をいたずらに増大させないために、研磨目が外板つまり車両の長手方向に略平行に延在するように外板を製作するのが一般的である。
図7に、特許文献1に提案されているレーザー溶接方法によって製作された、鉄道車両構体に用いられる外板パネルを示す。特許文献1に記載のレーザー溶接方法は、被溶接物に生じる上述の角折れ部(凸状の溶接痕)を視覚的に目立たなくすることを目的としている。図7に示されているのは、外板パネルを構成する、レーザー溶接によって互いに接合された2つの板状部材101及び102の一部である。板状部材101の表面S101が外板パネルの外表面を構成する。
板状部材101及び102はステンレス鋼製であり、少なくとも板状部材101の表面S101には上述の表面処理によって複数の研磨目Scが一方向に不連続に予め形成されている。研磨目Scの延在方向(以降、「研磨目方向」)DScは、外板パネルを用いて製作される鉄道車両の長手方向Dl(以降、「車両長手方向Dl」)に略平行である。表面S101には、レーザー溶接に起因する角折れ部Lが車両長手方向Dlと略平行な方向に生じているのが見て取れる。
特許文献1に記載のレーザー溶接方法は、レーザービームを車両長手方向Dl、つまり研磨目方向DScと略平行に移動させながら板状部材102に照射することにより、角折れ部Lを研磨目Scと略平行に延在するように生じさせる。研磨目Scが形成された表面S101に入射した光線は乱反射するため、研磨目方向DScと略平行な方向に延在する角折れ部Lは目立ちにくい。
なお、特許文献1に示唆されているように、角折れ部Lが延在する方向が研磨目方向DScと平行でない場合は、光線の乱反射による角折れ部Lを目立たせない効果は実用上不十分であることが多い。特許文献1のレーザー溶接方法は、研磨目方向DScと平行でない方向に延在する部材は外板パネルの外表面を構成する部材(図示例では板状部材101)には直接接合せず、外板パネルの外表面を構成する部材に接合された他の部材に接合する。これにより、研磨目方向DScと平行でない方向に延在する角折れ部Lが外板パネルの外表面(図示例では表面S101)に生じることを防止する。
つまり特許文献1のレーザー溶接方法は、角折れ部Lを目立たせないために、被溶接物の表面に既に形成されている一方向(研磨目方向DSc)に延在する研磨目Scを利用する溶接方法である。研磨目Scは予め外板パネルに形成されているので、特許文献1のレーザー溶接方法においては、外板パネルの外表面を構成する部材に他の部材を接合するためのレーザー溶接を研磨目方向DScと略平行な方向に行った時だけ角折れ部Lを目立たせなくすることができる。
さらに特許文献2に、アルミニウム合金製車両の車両用構体を製作する際に外板に生じる溶接歪みを低減するために、表面に微小凹凸を設けた薄板材を外板の材料として使用することによって剛性を増大させることが提案されている。図8に、特許文献2に提案されている車両用構体を用いて製作された鉄道車両の外観を示す。
図8に見て取れるように、微小凹凸は車両用構体の外板の全面にわたって連続的に設けられている。図8(a)に示す例においては、微小凹凸207は側板201、屋根板202、及び妻板203のそれぞれにおいて一方向(車両の高さ方向Dvと直交する方向)に延在するように設けられている。図8(b)に示す例においては、微小凹凸207及び208は側板204、屋根板205、及び妻板206のそれぞれにおいて互いに直角方向に交わるように延在している。
微小凹凸207または208のピッチ及び高さはそれぞれ、薄板材の板厚の1/50〜1/5の値が好ましいとされている。薄板材の表面に微小凹凸207または208を設ける方法に関する記載はないが、溶接が行われる前に微小凹凸が設けられることは言うまでも無い。また、微小凹凸を設けることのさらなる効果として、車両用構体の製作運搬の際に傷が付いても傷は微小凹凸の凸部に集中するため、凸部のみを研磨して除去すればよく平板に比して研磨量が減少することが挙げられている。
特開2005−329412号公報 特開昭56−2255号公報
特許文献1に記載のレーザー溶接方法は、一般的な外板用の板状部材の表面に既に形成されている研磨目Scを利用して角折れ部Lを目立たなくする溶接方法である。角折れ部Lは、鉄道車両の外板の見栄えを悪化させ得る要因として上述した製造もしくは使用に伴って生じる汚れや傷や変形のうち、車両用構体の製造時に生じる外板の変形の一例である。
特許文献1に記載されてはいないが、一般に、製造時の変形以外の要因に対してもその一部については対策が取られている。具体的には、使用に伴って生じる傷は、外板パネルの表面に形成された研磨目Scにより目立たなくすることが図られている。製造に伴って生じ得る傷に対しては、傷の発生を防止するために、製造・運搬の際の取り扱いを注意深く行ったり(例えば特許文献2を参照)、保護用のテープやシートを用いて金属素材を養生したりする。傷が発生した場合は、研磨等の作業により手直しを行う(例えば特許文献2を参照)。
しかしながら、特許文献1に記載のレーザー溶接方法により製作された外板パネルでは、使用に伴って生じる汚れに起因する外板の見栄えの悪化を防止または低減させることはできない。外板パネルの研磨目Scは、車両長手方向Dlに略平行に、つまり車両が傾斜している場合を除いて水平方向に延在している。このような外板パネルに汚れの原因となる雨などの水滴やゴミが付くと、水滴やゴミが研磨目Scの内部に入り込んだり、研磨目Scの形成によって表面粗さが増大した外板パネルの表面に引っ掛かったりして外板パネルに付着する恐れがある。一旦付着した水滴やゴミは自然には外板パネルから離れにくく、外板パネルの汚れとなって見栄えを悪化させる。
一方、特許文献2には、一般的な外板の研磨目(例えば研磨目Sc)とは異なり互いに直角方向に交わるように延在する微小凹凸207及び208が設けられた外板が開示されている(図8(b))。但し、微小凹凸207及び208は薄板材の剛性を増大させるためのものであり、外板の全面にわたって連続的に設けられる必要があり、そのピッチや高さは薄板材の板厚との関係で決定される。つまり、微小凹凸207及び208は、傷や変形を目立たせないことを図った特許文献1の研磨目Scに例示される一般的な外板の研磨目とは目的が異なり、寸法や形状に対する要件が異なると考えられる。さらに、微小凹凸が互いに直交するように延在している外板においては、水滴やゴミが付くと図7に示す外板パネルの場合以上に外板に付着しやすく離れにくいと考えられる。
上述の問題に鑑みて、本発明は、外板の汚れや傷や変形を目立たせない研磨目が形成された鉄道車両用構体の外板、鉄道車両用構体、及び鉄道車両用構体の製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る鉄道車両用構体の外板は、互いに対向する
第1の主面と第2の主面とで規定される、鉄道車両用構体の外板であって、
前記第1の主面に、前記鉄道車両の長手方向に対して0°より大きく90°より小さい
第1の研磨目方向に延在する複数の研磨目が形成されており、
前記第1の主面にさらに、前記第1の研磨目方向と異なる第2の研磨目方向に延在する複数の研磨目が形成され、
前記第1の研磨目方向に延在する複数の研磨目のピッチと、前記第2の研磨目方向に延在する複数の研磨目のピッチとが異なることを特徴とする。
本発明は、鉄道車両の外板の汚れや傷や変形を目立たせないという効果を奏する。
本発明の実施の形態に係る外板を用いて製作された鉄道車両用構体を車両幅方向に見た図である。 図1に示す鉄道車両用構体の一部を、車内側から車両幅方向に見た状態を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態の変形例1に係る外板を用いて製作された鉄道車両用構体を車両幅方向に見た図である。 本発明の実施の形態の変形例2に係る外板を用いて製作された鉄道車両用構体を車両幅方向に見た図である。 本発明の実施の形態の変形例3に係る外板の表面の拡大図である。 一般的な鉄道車両の車体構体を構成する車両用構体を示す斜視図である。 特許文献1に提案されているレーザー溶接方法によって製作された、鉄道車両構体に用いられる外板パネルを示す斜視図である。 特許文献2に提案されている車両用構体を用いて製作された鉄道車両を示す斜視図である。
以下に図1、図2、図3、図4、及び図5を参照して、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用構体の外板、鉄道車両用構体、及び鉄道車両用構体の製造方法について説明する。以下、鉄道車両用構体の一例として側構体について説明する。まず図1及び図2を参照して、本実施の形態に係る側構体の外板、側構体、及び側構体の製造方法について説明する。次に図3〜図5をそれぞれ参照して、本実施の形態の変形例1、変形例2、及び変形例3に係る側構体の外板について説明する。
図1に、本実施の形態に係る側構体を車両の外部から、車両長手方向Dl及び車両の高さ方向(以降、「車両高さ方向」)Dvに垂直な、車両の幅方向(以降、「車両幅方向」)Dwに見た状態を示す。本実施の形態に係る側構体BSはステンレス鋼製であり、互いに対向する第1の主面と第2の主面とで規定される外板Peと、外板Peの内側(第2の主面)に縦横に配されて接合される補強部材である縦骨Fv(図2)と横骨Fh(図2)とを含む。図2に、側構体BSを車両の内部に相当する側から、車両幅方向Dwに見た状態を模式的に示す。同図においては、1本の縦骨Fvと1本の横骨Fhとが例示され、他の縦骨Fv及び横骨Fhの図示は省略されている。縦骨Fvは車両高さ方向Dvに略平行に延在し、横骨Fhは車両長手方向Dlに略平行に延在している。縦骨Fv及び横骨Fhは、スポット溶接或いはレーザー溶接により外板Peに接合されている。
図1に模式的に示されるように、外板Peの表面Spe(第1の主面)には、複数の研磨目Svが車両長手方向Dlに対して所定の角度θをなす方向に形成されている。角度θは0以外の値を取る、つまり研磨目Svは垂直成分を有する方向に形成されている。図示例において研磨目Svの延在方向である研磨目方向Dsは、車両高さ方向Dvに略平行である(θ=90°)。なお研磨目Svは不連続に形成されているが、表面Speの全面にわたって連続的に形成されていてもよい。研磨目Svの深さやピッチ(隣接する研磨目Svの間隔)は、図7を参照して説明した従来の研磨目Scと同程度である。
研磨目方向Dsは、車両が水平に配置されている場合は略垂直方向であり、傾斜している場合も垂直成分を含む方向であると言える。外板Peの表面Speに付いた雨などの水滴は、研磨目Svの内部に入った場合でも、垂直成分を含む方向に延在する研磨目Svからは流れ出しやすい。水滴が表面Speから速やかに流れ落ちるので水滴の跡が残りにくく、外板Peの汚れが低減される。表面Speに付いたゴミも、研磨目Svの内部には留まりにくく、また研磨目Svが垂直成分を含む方向に延在している表面Speには引っ掛かりにくいので、外板Peの汚れが低減される。
垂直成分を含む方向に延在する研磨目Svが形成された外板Peの製作を、一般的な車両用構体の製作方法(表面処理が既に施されて長手方向に沿って研磨目が形成された金属素材を加工して製作する)により行うことは、外板Peの部品の寸法と金属素材の寸法との関係上困難である。外板Peを複数の板状部材を接合して構成する場合でも、板状部材の個数及び接合箇所数をいたずらに増大させずに研磨目Svが形成された外板Peを製作することは困難であると言わざるを得ない。
よって本発明においては、研磨目Svの形成を側構体BSが組み立てられた後で行うことにより、垂直成分を含む方向に延在する研磨目Svの形成を可能にする。外板Peを含む側構体BSの製造は、具体的には以下の手順で行われる。まず、表面処理が行われていない金属素材を切断・加工して、側構体BSの部品、つまり外板Peを構成する1つあるいは複数の板状部材や縦骨Fvや横骨Fhを製作する。必要に応じて板状部材同士を接合して外板Peを製作した後、縦骨Fv及び横骨Fhが図2に例示されるように外板Peに接合されて側構体BSが組み立てられる。その後、外板Peの表面Speが研磨されて研磨目Svが形成される。研磨目Svの形成は、例えば砥粒を含む研磨パッドが取り付けられた手持ち式の工具を用いて行うことができる。
研磨目Svの形成が側構体BSの組み立て後に行われることにより、研磨目Svのパターンや形状の設定の自由度が向上する。例えば、外板Peの部位によって研磨目方向Dsを違えて、複数の方向に延在する研磨目が形成された外板Peを製作することが可能になる。さらに研磨目の形状を曲線形状で形成することも可能になり、例えば波状、うろこ状、渦巻き状といった模様を形成することが可能になる。つまり、外板の汚れや傷や変形を目立たせないだけでなく、研磨目の形成によって外板に装飾を施すことができる。
さらに、部品の製造・運搬、及び側構体BSの組み立ての際に傷が生じても、組み立て後に行われる研磨目Svの形成によって手直しすることが可能になる。つまり、本発明における研磨目Svの形成は、従来は別々に行われていた、汚れや傷や変形を目立たせないために行う金属素材の表面処理と、車両用構体の製造に伴って生じた傷を手直しするために行う研磨作業との両方に相当する。これにより、従来行われていた保護用のテープやシートを用いた金属素材の養生が不要となる。
本実施の形態に係る側構体BSの製造方法の特徴と、従来の一般的な側構体の製造方法との相違点とを以下に述べる。まず、本実施の形態に係る製造方法においては、従来行われていた金属素材の養生作業が不要である。さらに、従来行われていた側構体組み立て後の手直しのための研磨作業が、研磨目Svを形成する研磨作業に置き換えられる。製造時の工程数が減少すると共に、部品の製造・運搬の際に従来に比して注意を払う必要性が低下するので、側構体BSの製造作業の効率向上が期待できる。さらに、表面処理が行われていない金属素材を購入すればよいため、素材調達に係るコストの低下も期待できる。
さらに、研磨目Svの形成が側構体BSの組み立て後に行われることにより、複数の板状部材を接合して外板Peを構成する場合に従来は必要とされた、隣接する板状部材の研磨目を揃えるための位置合わせが不要となる。
さらに、研磨目Svの形成が側構体BSの組み立て後に行われることにより、外板Peの研磨は、レーザー溶接或いはスポット溶接により縦骨Fv及び横骨Fhが既に接合された状態で行われる。つまりレーザー溶接に起因する角折れ部L(図7)やスポット溶接に起因する圧痕が発生した後の外板Peに対して研磨が行われる。既に形成された研磨目Sc(図7)を利用して角折れ部Lを目立たなくすることを図るのではなく、実際に発生した角折れ部やスポット溶接痕に対して、研磨による見栄え向上の効果を確認しながら研磨目Svを形成することが可能である。これにより、角折れ部を一層目立たなくすることができると共に、従来は対応ができていなかったスポット溶接痕をも目立たなくすることができる。さらに、特許文献1のレーザー溶接方法における溶接方向の制約が無くなり、溶接を行う方向等の溶接作業の自由度が向上する。
(変形例1)
次に図3を参照して、本実施の形態の変形例1に係る側構体の外板について説明する。同図に、本変形例に係る側構体を、車両の外部から車両幅方向Dwに見た状態を示す。本変形例に係る側構体BSaは、側構体BS(図1)において、外板Peが外板Peaに交換されている。
図3に模式的に示されるように、外板Peaの表面Speaに形成された複数の研磨目Svaは、車両長手方向Dlに対して所定の角度θをなす、謂わば斜め方向に形成されている(0°<θ<90°)。研磨目Svaの延在方向である研磨目方向Dsaは、研磨目方向Ds(図1)と同様、垂直成分を有する方向である。
研磨目方向Dsaは垂直成分を含む方向であるため、外板Peaの表面Speaに付いた水滴やゴミは、研磨目Sv(図1)の場合と同様、研磨目Svaの内部に入った場合でも研磨目Svaから落ち(流れ出し)やすい。水滴やゴミが表面Speaから速やかに(流れ)落ちるので、外板Peaの汚れが低減される。なお、鉄道車両の走行時には、外板Peaの表面Speaの近傍に発生する空気の流れにより、表面Speaに付いた水滴やゴミが一層落ちやすくなる。
(変形例2)
次に図4を参照して、本実施の形態の変形例2に係る側構体の外板について説明する。同図に、本変形例に係る側構体を、車両の外部から車両幅方向Dwに見た状態を示す。本変形例に係る側構体BSbは、側構体BS(図1)において、外板Peが外板Pebに交換されている。
図4に模式的に示されるように、外板Pebの表面Spebには、異なる方向に延在する研磨目Svと研磨目Slとが形成されている。研磨目Svの延在方向である研磨目方向Dsは、車両高さ方向Dvに略平行である。研磨目Slの延在方向である研磨目方向Dsbは、車両長手方向Dlに略平行である。つまり、外板Pebの少なくとも一部において、垂直成分を有する方向に延在する複数の研磨目(研磨目Sv)が形成されている。
図4に見て取れるように、外板Pebの表面Spebにおいて、出入口Dの開口の上方に位置する部分と、窓Wの開口の上方及び下方に位置する部分には研磨目Slが形成されている。表面Spebにおける上記以外の部分、つまり出入口Dの開口と窓Wの開口との間の部分には研磨目Svが形成されている。上述したように、研磨目Sv及びSlの形成が側構体BSbの組み立て後に行われることにより、部位によって研磨目方向が異なる外板Pebを製作することができる。
外板Pebは、少なくともその一部において垂直成分を有する方向に延在する複数の研磨目(研磨目Sv)が形成されているので、表面Spebに付いた水滴やゴミが(流れ)落ちやすく、汚れがつきにくい。さらに、表面Spebにおいて研磨目Svが形成されている領域は、外板Pebの内面において縦骨Fv(図2)が接合される領域に対向している。表面Spebにおいて研磨目Slが形成されている領域は、外板Pebの内面において横骨Fh(図2)が接合される領域に対向している。つまり、縦骨Fvが外板Pebに溶接される方向(角折れ部が形成される方向)と研磨目Svの研磨目方向Dsとが略平行となる。同様に、横骨Fhが外板Pebに溶接される方向(角折れ部が形成される方向)と研磨目Slの研磨目方向Dsbとが略平行となる。このように研磨目Sv及びSlを形成することにより、より少ない研磨量で外板Pebの表面Spebに生じる角折れ部を目立たなくすることができる。
(変形例3)
次に図5を参照して、本実施の形態の変形例3に係る側構体の外板について説明する。同図に、本変形例に係る外板Pecの表面を、車両の外部から車両幅方向Dwに見た状態を示す。
図5に模式的に示されるように、外板Pecの表面Specには、異なる方向に延在する研磨目Svと研磨目Svcとが互いに交わるように形成されている。研磨目Svの延在方向である研磨目方向Dsは、車両高さ方向Dvに略平行である。研磨目Svcの延在方向である研磨目方向Dscは、車両長手方向Dlに対して所定の角度θをなす、謂わば斜め方向に形成されている(0°<θ<90°)。つまり、研磨目方向Ds及びDscは共に、垂直成分を有する方向である。
研磨目Svと研磨目Svcとは、形成の際に用いるグラインダーの番手を違えることにより、少なくともそれぞれのピッチ(隣接する研磨目の間隔)が異なるように形成されている。図示例においては、研磨目Svcのピッチ(隣接する研磨目Svcの間隔)は研磨目Svのピッチ(隣接する研磨目Svの間隔)より小さい。研磨目Svcの形成に用いるグラインダーの番手を、研磨目Svの形成に用いるグラインダーの番手より大きい(砥粒がより細かい)ように選択すればよい。
外板Pecの表面Specには垂直成分を有する2つの方向にそれぞれ延在する複数の研磨目(研磨目Sv及びSvc)が形成されているので、表面Specに付いた水滴やゴミが(流れ)落ちやすく、汚れがつきにくい。なお、3つ以上の方向にそれぞれ延在する複数の研磨目が互いに交わるように形成されていてもよい。
本発明は、例として挙げた側構体に限らず、妻構体や屋根構体等の車両用構体の外板に適用できる。本発明が例示したステンレス鋼製の車両用構体に限らず、アルミニウム合金製等の塗装を行わない材料で構成された車両用構体に適用できることは言うまでもない。さらに上述したように、研磨目の形状は、例示された直線形状のみならず、曲線形状で形成することも可能であり、例えば波状、うろこ状、渦巻き状といった模様を形成することもできる。
本発明は、鉄道車両用構体の外板に利用できる。
BS、BSa、BSb 側構体(車両用構体)
Pe、Pea、Peb、Pec 外板
Spe、Spea、Speb、Spec 外板の表面(第1の主面)
Sv、Sva、Sl、Svc 研磨目
Fv 縦骨
Fh 横骨
D 出入口
W 窓
Ds、Dsa、Dsb、Dsc 研磨目方向
101、102 板状部材
S101 板状部材の表面
Sc 研磨目
DSc 研磨目方向
L 角折れ部
207、208 微小凹凸
Dl 車両長手方向
Dv 車両高さ方向
Dw 車両幅方向

Claims (2)

  1. 互いに対向する第1の主面と第2の主面とで規定される、鉄道車両用構体の外板であって、
    前記第1の主面に、前記鉄道車両の長手方向に対して0°より大きく90°より小さい第1の研磨目方向に延在する複数の研磨目が形成されており、
    前記第1の主面にさらに、前記第1の研磨目方向と異なる第2の研磨目方向に延在する複数の研磨目が形成され、
    前記第1の研磨目方向に延在する複数の研磨目のピッチと、前記第2の研磨目方向に延在する複数の研磨目のピッチとが異なる
    ことを特徴とする、鉄道車両用構体の外板。
  2. 請求項1に記載の外板と、
    前記外板の第2の主面に溶接により接合された補強部材とを備える鉄道車両用構体。
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