以下、添付の図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は本実施形態による位置管理顕微鏡システム(以下、顕微鏡システム10)の基本構成を示す図である。顕微鏡システム10は、顕微鏡本体100、ステージ200、カメラ装着用のアダプタ部300、デジタルカメラ400、制御ユニット500を備える。顕微鏡本体100は、光学顕微鏡である。制御ユニット500は、コントローラ501とディスプレイ502を有する。コントローラ501はCPU(不図示)、メモリ(不図示)を含み、CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することにより、デジタルカメラ400への撮影指示や、撮影された顕微鏡画像の表示、保存、ステージ200の位置管理等、各種処理を実行する。
顕微鏡本体100を構成する鏡基121は、顕微鏡の各種構造物を取り付ける為の堅牢な本体フレームである。接眼鏡基122は鏡基121に固定され、接眼鏡筒123(本例では双眼)を接続する。光源ボックス124は、透過観察用の光源(たとえば、ハロゲンランプまたはLEDなど)を収納し、鏡基121に取り付けられる。Z摘み125は、Zベース130をZ軸方向(上下方向)へ移動させるための摘みである。Zベース130には、位置管理機能を提供するステージ200が載置される。Zベース130は,Z摘み125の回転に応じてZベース130をZ方向に移動するZベース移動機構131により鏡基121に装着されている。126は対物レンズユニットであり、光学倍率に応じた複数種類のユニットが存在する。リボルバ127は、複数種類の対物レンズユニット126を取り付けられる構造を有し、リボルバ127を回転させる事により、所望の対物レンズユニットを顕微鏡による観察のために選択する事が出来る。
ステージ装置としてのステージ200は、スライド700を搭載し、たがいに直交するX方向とY方向を含むXY面上で移動するXYステージを含む。ステージ200は、XYステージ上にXY方向の高精度スケールを具備したXYスケール板210を有している。X摘み201、Y摘み202はそれぞれステージ200をX方向、Y方向へ手動で移動するための摘みである。ステージ200は、XYスケール板210上のX,Yスケール(後述)をX,Yセンサ(後述)により読み取ることでXYステージの位置を検出し、これをたとえばUSBケーブル13を介してコントローラ501に通知する。
アダプタ部300は、接眼鏡基122に鏡基マウント128を介してデジタルカメラ400を装着するための装着部として機能する、カメラ装着用のアダプタである。デジタルカメラ400は、アダプタ部300及び鏡基マウント128により、接眼鏡基122と所定の位置関係を保って、着脱可能に顕微鏡本体100に取り付けられる。デジタルカメラ400は、顕微鏡本体100により得られる顕微鏡画像を撮像する。デジタルカメラ400は、エビデンス記録を目的とするもので、例えば、USBインタフェースケーブル11を介してコントローラ501に接続され、コントローラ501からの指示により顕微鏡下の観察像を撮影する。撮影された観察像は、コントローラ501の制御下でディスプレイ502に表示される。デジタルカメラ400の撮像機能は、イメージセンサの出力をリアルタイムでモニタに表示する所謂ライブビューを行うためのライブ画像撮像機能と、静止画撮像機能を含む。ライブ画像撮像機能は静止画撮像機能よりも低解像度である。また、ライブ画像撮像機能および静止画撮像機能は、撮影された画像(動画、静止画)を所定のインタフェース(本実施形態ではUSBインタフェース)を介して外部装置へ送信することが可能となっている。
図2(a)は、位置管理に対応したステージ200の構成を示す斜視図である。図2(a)において、Xステージとしての位置管理面ステージ220はステージ200の最上面に位置し、Yステージ240上をX方向に移動する。Yステージ240は、ステージベース260上をY方向に移動する。ステージベース260は、顕微鏡本体100のZベース130上に固定される。ステージベース260、Yステージ240、位置管理面ステージ220によりXYステージが構成されている。位置管理面ステージ220には、XYスケール板210およびスライド載置部600が配置、固定されている。
図2(b)は位置管理面ステージ220の上面を示す図である。上述したように、位置管理面ステージ220の上面には、スライド載置部600、XYスケール板210が配設されている。XYスケール板210の上面には、X方向移動時の位置管理に使われるX方向の軸情報を有するXエリアスケール211、及び、Y方向移動時の位置管理に使われるY方向の軸情報を有するYエリアスケール212、及び、XYの軸合せ基準としてのXYクロスハッチ213が極めて高精度に形成されている。なお、高精度位置管理を実現する基準とすべく、XYスケール板210の材質には、熱膨張係数が極めて小さい材質、たとえば合成石英が使用され、一体的に構成されている。
また、XYスケール板210のXエリアスケール211、Yエリアスケール212、XYクロスハッチ213における各パターンの作製には、半導体露光装置などのナノ技術が用いられる。たとえば、石英ウエハー上に、X軸及びY軸のラインの集合よりなるXエリアスケール211、Yエリアスケール212、XYクロスハッチ213を5nm〜10nmの精度でナノ技術により一体的に作製する。なお、Xエリアスケール211、Yエリアスケール212、XYクロスハッチ213を露光装置で描画することにより作製することも可能であるが、低コスト化を実現するにはナノインプリントを用いることが好適である。その後、機械加工により所定形状に切り出してXYスケール板210とする。この為、X軸とY軸の直角度はナノレベル台で形成され得る。なお、Xエリアスケール211、Yエリアスケール212、XYクロスハッチ213の夫々を個別に切り離したり、又は、個別に作製したりして、夫々を位置管理面ステージ上に所定の位置関係になるように配設する事も可能である。しかしながら、その実現には、機械的な誤差を補正する高度な位置合わせ技術が必要になりコスト増の要因になってしまう。
205で示される破線の領域は顕微鏡による観察対象領域である。観察対象領域205は、対物レンズの中心位置(あるいはデジタルカメラ400のイメージセンサの中心位置(観察位置))がXYステージに対して相対的に移動する範囲である。観察対象領域205は、スライド700とXYクロスハッチ213とをゆとりを持って包含するサイズとなっている。これにより、どの様な条件下でも、スライド700およびXYクロスハッチ213が観察対象領域205に入るようにしている。すなわち、スライド700のみならずXYクロスハッチ213も、撮像部であるデジタルカメラ400により撮影可能に配置されている。
また、本実施形態では、観察対象領域205の右上端をXYクロスハッチ上のクロスハッチ原点としており、これをステージ原点206と一致させている。また、対物レンズの中心(あるいはイメージセンサの中心(観察位置))とステージ原点206が一致した状態をステージ200のXY初期化位置(原点位置)とする。ただし、ステージ原点として他の場所を定義しても良い事は言うまでもない。なお、ステージ座標のX軸およびY軸、即ち、ステージX軸203及びステージY軸204は、夫々、XYクロスハッチ213のX及びY軸に平行である。
図2(c)にXエリアスケール211のスケールパターンの例を示す。Xエリアスケール211は、位置を検出するX方向への、透過部と遮光部による透過型回折格子として形成され、例えば、透過部及び遮光部は夫々2μm巾のラインであってこのペアが4μmピッチで配列されている。なお、スケールパターンは、周期的に光路長が異なるように段差が設けられた位相格子であってもよい。また、Yエリアスケール212は、Xエリアスケール211をY軸方向に90度回転した形のスケールパターンである。
図3(a)は、スライド700と、XYスケール板210上のXエリアスケール211、Yエリアスケール212、及び、XYクロスハッチ213とのZ方向の位置関係を示す図である。図3(a)に示す如く、スライド700の上面とXYスケール板210の上面とが、所定精度で同一平面内になるように、位置管理面ステージ220及びスライド載置部600が設計される。したがって、スライド載置部600の上面は、XYスケール板210の上面よりもスライド700の厚みの分だけ低くなっている。このように、本実施形態では、XYスケール板210の上面(Xエリアスケール211、Yエリアスケール212、及び、XYクロスハッチ213の配置された面)とスライド700の上面を一致させている(ほぼ同一平面としている)。こうする事により、観察面、即ち、スライド700の上面部のXY位置を、外部にある位置基準(Xエリアスケール211及びYエリアスケール212)で高精度に管理する事が可能になる。XYクロスハッチ213は、Xエリアスケール211又はYエリアスケール212を代表する為に、これらと同一平面内に在る事が重要である。なお、実装上は、XYスケール板210の上面(マークが配置された面)とスライド700の上面が、Z方向に概ね0.5mmの範囲内に存在するようにすればよい。
Xエリアスケール211やYエリアスケール212のスケールパターンは、ステージベース260に対して固定された検出センサにより読み出される。検出センサとしては、X軸センサ271a、X軸中間センサ271b、Y軸センサ272a、Y軸中間センサ272bを有する。X軸中間センサ271bおよびY軸中間センサ272bはそれぞれX軸センサ271aおよびY軸センサ272aよりも原点位置の側に配置されている。なお、以下では、X軸センサ271aとX軸中間センサ271bを総称してX軸センサ271a,b、Y軸センサ272aとY軸中間センサ272bを総称してY軸センサ272a,bのように記載する。
以上のような構造により、ステージ200のXY座標が観察位置そのものに対して直接的に高精度に取得される。即ち、Xステージのリニアエンコーダから得たX方向に対する位置情報とYステージのリニアエンコーダから得たY方向に対するY位置情報とを合わせてステージのXY座標値を得るような、XYステージの軸(X軸またはY軸)毎の特定の一軸上の座標で座標値を代表する間接的方法は用いられない。本実施形態では、XY方向に移動する位置管理面ステージ(Xステージ)220の移動が直接、XYスケール板210により計測される。これにより例えば、機械的なあそびあるいは誤差に伴う、位置管理面ステージ220がX方向に移動する際のY方向への微小な位置ずれや、Yステージ240がY方向に移動する際のX方向への微小な位置ずれについても検出センサで検出できるため、位置管理の精度を大きく向上させることができる。Xエリアスケール211及びYエリアスケール212と、X軸センサ271a,b及びY軸センサ272a,bとのZ方向の位置関係には、図3(b)及び(c)に示すように二通りの方法がある。第1の方法である図3(b)では、X軸センサ271a,b、Y軸センサ272a,bがXYスケール板210の上側(対物レンズ側)に配置される。この場合、遮光膜214をXYスケール板210の下面に設ける必要がある。第2の方法である図3(c)では、X軸センサ271a,b、Y軸センサ272a,bがXYスケール板210の下側(Zベース130側)に配置される。この場合、遮光膜214はXYスケール板210の上面に設けられる。なお、XYクロスハッチ213はデジタルカメラ400により観察される必要があるため、XYクロスハッチ213の位置には遮光膜は配置されない。
第1の方法では、図3(b)に示されるように、X軸センサ271a,b、Y軸センサ272a,bは、ステージベース260に固定されたエル型部材207を介して位置管理面ステージ220上に張り出したセンサ取付け部材208の下面に実装される。X軸センサ271a,b、Y軸センサ272a,bの各々の検出面は、位置管理面ステージ220上のXエリアスケール211、Yエリアスケール212を読むべく下向きとなる。第2の方法では、図3(c)に示されるように、X軸センサ271a,b、Y軸センサ272a,bは、ステージベース260上に検出面を上向きにして、検出面が所定の高さとなるように実装される。最下位に位置するステージベース260上のX軸センサ271a,b、Y軸センサ272a,bは、Yステージ240、位置管理面ステージ220に設けられた所定サイズの孔を通して最上位にあるXエリアスケール211、Yエリアスケール212を下側から読む。なお、図3(b)に示した方法、図3(c)に示した方法の何れにも本発明を適用することが可能であるが、以下では、図3(c)に示した第2の方法を用いて実施形態を説明する。
なお、X軸センサ271a,b、Y軸センサ272a,bのXY方向の配置は、第1および第2の方法で共通である。X軸センサ271a,bのY方向の取付け位置は、顕微鏡の観察視野の視野中心170を通るX軸(ステージX軸203)上とし、X方向の位置検出精度を担保する。また、Y軸センサ272a,bの取付け位置は、顕微鏡の観察視野の視野中心170を通るY軸(ステージY軸204)上とし、Y方向の位置検出精度を担保する。
図4(a)、図4(b)にXYスケール板210と各検出センサとの関係を示す。本実施形態では、Xエリアスケール211とYエリアスケール212の各々を読み取るX軸センサ、Y軸センサを複数にして、中間で引き継ぐ方式とする。こうすることで、エリアスケールのサイズを狭くでき、ステージ200の小型化が可能になる。図4(a)は、視野中心170がXY初期化位置に有る場合であり、図4(b)は、視野中心170が観察対象領域の左下端に有る場合である。
また、X軸センサ271a,bおよびY軸センサ272a,bは、ステージベース260上に固定されていて、ステージベース260に対する、位置管理面ステージ220のX方向及びY方向の動きを検出可能である。Xエリアスケール211は、可動部である位置管理面ステージ220に固定され、X軸方向に位置管理面ステージ220のX軸方向への可動距離より短い所定長の幅を有するインクリメンタルのスケールである。同様に、Yエリアスケール212は、可動部である位置管理面ステージ220に固定され、Y軸方向に位置管理面ステージ220のY軸方向への可動距離より短い所定長の幅を有するインクリメンタルのスケールである。また、X軸センサ271a,bはX軸方向に、Xエリアスケール211のX軸方向の幅よりも短い間隔で並び、Xエリアスケール211を読み取る。Y軸センサ272a,bはY軸方向に、Yエリアスケール212のY軸方向の幅よりも短い間隔で並び、Yエリアスケール212を読み取る。このように、Xエリアスケール211の幅(X方向の長さ)は、X軸センサ271aと271bの間隔よりわずかに(本実施形態では2mmとする)長くなっている。同様に、Yエリアスケール212の幅(Y方向の長さ)もY軸センサ272aと272bの間隔よりわずかに長くなっている(本実施形態では2mmとする)。したがって、この2mmの間は、2つのX軸センサ(または2つのY軸センサ)が同時にXエリアスケール(またはYエリアスケール)上に存在するようになる。
次に、ステージ200の構成について説明する。まず、Xステージとしての位置管理面ステージ220について、図5を参照して説明する。図5(a)は位置管理面ステージ220の上面図(対物レンズ側からみた図)であり、図5(b)は位置管理面ステージ220の裏面図(Zベース130側から見た図)である。本実施形態では位置管理面ステージ220は、Yステージ240上をX方向に移動するXステージ機能を有する。
XYスケール板210のXエリアスケール211、Yエリアスケール212に対応する位置に、X軸センサ271a,b、Y軸センサ272a,bがエリアスケールをアクセス可能とするための開口221、222が設けられている。開口221,222の大きさはそれぞれXエリアスケール211、Yエリアスケール212を包含する大きさとする。
開口223は、コンデンサレンズ用開口224(コンデンサレンズを組込んだコンデンサレンズユニットのサイズよりも大きめにゆとりを持たせたサイズを有している)の中心が観察対象領域205内の全域にわたってXYステージに対して相対的に移動した場合に、コンデンサレンズ用開口224が位置管理面ステージ220を相対的に移動する範囲に設けられている。この開口223により、位置管理面ステージ220が観察対象領域205のいかなる位置に移動しても、コンデンサレンズユニット(コンデンサレンズを組込んだ筐体)は位置管理面ステージ220と干渉しない。
位置管理面ステージ220の裏側には、X軸クロスローラガイド231が、X軸方向と平行に2本配設されている。X軸クロスローラガイド231と対向するようにYステージ240上にX軸クロスローラガイド241(図6)が取り付けられており、これにより、位置管理面ステージ220がYステージ240によりX方向に摺動可能に支持される。Xスライダ232は、Yステージ240の対向面に組み込まれたX軸駆動モータ242(図6)の移動体であり、X軸駆動モータ242により位置管理面ステージ220はX軸方向に駆動される。すなわち、X軸駆動モータ242とXスライダ232とにより、例えば超音波によるリニアモータが構成される。
X軸ラックギア233はX摘み201と連動して回転するYステージ240上のX軸ピニオンギア244の回転により位置管理面ステージ220をX方向に移動する。なお、手動による位置管理面ステージ220のX方向への移動はラック&ピニオンに限る訳でなく、例えば、ワイヤ&プーリー方式などであっても良い。いずれにしろ、本実施形態では手動駆動、及び、電動駆動の両手段により位置管理面ステージ220をX方向に移動可能である。X初期位置マーク234は、ステージ200のXY初期化位置であるステージ原点206のX方向位置に対応している。
次に、図6を参照してYステージ240について説明する。図6(a)はYステージ240の上面図(位置管理面ステージ220側からみた図)であり、図6(b)はYステージ240の裏面図(Zベース130側から見た図)である。
図6(a)において、X軸クロスローラガイド241は、位置管理面ステージ220の裏面に配設されたX軸クロスローラガイド231とペアをなし、位置管理面ステージ220をX軸方向に摺動可能に支持する。X軸駆動モータ242は位置管理面ステージ220のXスライダ232を介して、位置管理面ステージ220をX方向に移動する。X軸ピニオンギア244は位置管理面ステージ220の裏面に設けられたX軸ラックギア233と噛み合わさり、その回転により位置管理面ステージ220をX軸方向へ移動する。X軸ピニオンギア244はX摘み201の回転にしたがって回転するので、ユーザはX摘み201を操作することで位置管理面ステージ220をX軸方向へ移動させることができる。X初期位置センサ243は、位置管理面ステージ220の裏面に設けられているX初期位置マーク234を検出する。本実施形態では、たとえばX初期位置センサ243は透過型フォトインタラプタで構成され、X初期位置マーク234は透過型フォトインタラプタの光軸を遮光する遮光板で構成される。X初期位置センサ243とX初期位置マーク234は、可動部である位置管理面ステージ220の可動範囲に設定されたX軸方向の原点位置を検出する原点検出部を構成する。
開口245は、ステージベース260に配置されたX軸センサ271a,bが、位置管理面ステージ220の開口221を介してXエリアスケール211にアクセスするための開口である。Yステージ240はステージベース260に対してXY方向のうちのY方向に移動するので、開口245はY方向に延びた形状となっている。同様に、開口246は、ステージベース260に設けられたY軸センサ272a,bが、位置管理面ステージ220の開口222を介してYエリアスケール212にアクセスするための開口である。また、開口247は、コンデンサレンズ用開口224(コンデンサレンズを組込んだコンデンサレンズユニットのサイズよりも大きめにゆとりを持たせたサイズを有している)の中心(コンデンサレンズの中心でもある)が観察対象領域205を移動した場合の、コンデンサレンズ用開口224が移動する領域に対応する。上述したようにYステージ240はXY方向のうちのY方向に移動するので、X軸方向には延びず、Y軸方向に延びた形状を有している。この開口247により、Yステージ240が観察対象領域205のY方向に移動しても、コンデンサレンズユニットと干渉しない。
Yステージ240の裏面(図6(b))において、Y軸クロスローラガイド251がY軸に平行に2本配設されている。Y軸クロスローラガイド251と対になるクロスローラガイドはステージベース260に取り付けられており、これにより、Yステージ240は、ステージベース260によりY方向に摺動可能に支持される。Yスライダ252は、ステージベース260の対向面に組み込まれたY軸駆動モータ264(図7)の移動体であり、Y軸駆動モータ264によりYステージ240はY軸方向に駆動される。Y軸駆動モータ264とYスライダ252とにより、例えば超音波によるリニアモータが構成される。
Y軸ピニオンギア254はY摘み202の回転にしたがって回転する。Y摘み202の回転により、ステージベース260上に固定されたY軸ラックギア263(図7)をY軸方向へ移動する。したがって、ユーザはY摘み202を操作することで手動によりYステージ240をY軸方向へ移動することができる。なお、手動によるステージのY方向移動はラック&ピニオンに限る訳でなく、例えば、ワイヤ&プーリー方式であっても良い。いずれにしろ、本実施形態では手動駆動、及び、電動駆動の両手段によりYステージ240をY方向に移動可能である。Yステージ240は、位置管理面ステージ220を支持したままで、ステージベース260に対しY方向に移動する。Y初期位置マーク253は、ステージ原点206のY方向位置に対応した位置に配置されたマークである。
次に、図7を参照してステージベース260について説明する。図7は、ステージベース260の上面図(ステージベース260をYステージ240側から見た図)である。ステージベース260上には、Xエリアスケール211を読むためのX軸センサ271a,bとYエリアスケール212を読むためのY軸センサ272a,bが取り付けられている。各センサは、位置管理面ステージ220に設けられたXYスケール板210のXエリアスケール211及びYエリアスケール212に対して所定の距離となるように台座(不図示)により高さ調整が為されている。また、上述のように、X軸センサ271a,bはステージ原点206を通るX軸上に設けられ、Y軸センサ272a,bは、ステージ原点206を通るY軸上に設けられている。
Y軸クロスローラガイド262は、Yステージ240の裏面に配設されたY軸クロスローラガイド251とペアを為し、Yステージ240をY軸方向に摺動可能に支持する。Y軸駆動モータ264はYステージ240(Yスライダ252)をY方向に電動により移動するためのモータである。Y軸ラックギア263は、Y軸ピニオンギア254の回転によりYステージ240をY方向に移動する。Y初期位置センサ265は、Yステージ240の裏面に配置されているY初期位置マーク253を検出する。本実施形態では、たとえばY初期位置センサ265は透過型フォトインタラプタで構成され、Y初期位置マーク253は透過型フォトインタラプタの光軸を遮光する遮光板で構成される。Y初期位置センサ265とY初期位置マーク253は、可動部である位置管理面ステージ220の可動範囲に設定されたY軸方向の原点位置を検出する原点検出部を構成する。開口261は、コンデンサレンズ用開口224(コンデンサレンズ147を組込んだコンデンサレンズユニットのサイズよりも大きめにゆとりを持たせたサイズ)に対応する。この開口261により、コンデンサレンズユニットはステージベース260と干渉しない。
開口261、247、223は、スライド上の観察位置にスライド下面からコンデンサレンズユニットを接近可能にするとともに、コンデンサレンズ147により集光された光源光を通過させる。なお、以上説明した各ステージに設けられた、X軸センサ271a,b、Y軸センサ272a,b、コンデンサレンズのための開口のサイズは、機械強度と精度が維持される限り、大きめであっても問題のないことは言うまでもない。
次に、ステージ200のX,Y軸方向の駆動制御の構成を説明する。なお、X軸方向の駆動制御とY軸方向の駆動制御は同様の構成で実現されるため、以下ではX軸方向の駆動制御について説明する。図8に、ステージ200の駆動を制御するステージ制御部のX軸制御のブロック図を示す。ステージ制御部は、ステージMPU280(Micro-processing unit)を有し、破線内に示す機能構成は、MPU280の内部の処理を示している。X軸駆動モータ242はYステージ240に固定されたコイルを有し、Xステージとしての位置管理面ステージ220に固定された磁石(Xスライダ232)を移動させる。X軸駆動回路282によりX軸駆動モータ242のコイルが駆動され、Xスライダ232を移動することにより位置管理面ステージ220をX軸方向に駆動する。
X軸センサ271aおよびX軸中間センサ271bは、位置管理面ステージ220上のXYスケール板210に配されたXエリアスケール211を読む。X軸センサ271aおよびX軸中間センサ271bの出力は、90度位相の異なるA相、B相の2つの正弦波である。X軸センサ271aのA相およびB相出力の2つのアナログ信号は、センサ近傍に設置された位置信号処理回路281aに入力される。位置信号処理回路281aでは、入力されたアナログ信号をデジタル化して一般的なインクリメンタルエンコーダ処理および分割処理を行なうことにより、スケールピッチ以下の分解能の位置信号であるカウント値を生成する。同様に、X軸中間センサ271bのA相およびB相出力の2つのアナログ信号は、センサ近傍に設置された位置信号処理回路281bに入力され、位置信号であるカウント値に変換される。これら位置信号処理回路281a,bの出力は、UARTの様なシリアルIF405によりステージMPU280と接続され、ステージMPU280からの一定の周期の要求により位置信号を出力する。
また、2つの位置信号処理回路281a,bは、それぞれに接続されたセンサの出力のA相、B相信号の振幅を測定し、所定レベル以下であるかどうかでスケールを読み取れるか否か、すなわち、センサ上にスケールが有るか否かの判断を行う。このスケール有無の判断結果は、シリアルIF405により、位置情報が送られるのと同時に、位置信号毎にスケール有無信号としてステージMPU280に送られる。シリアルIF405により送られるデータの構造は、例えば、3Byte(24bit)の符号付き位置情報と1byte(8bit)のステイタス情報で合計4Byte(32bit)の情報のやり取りとなる。ステイタス情報は、どのセンサから来た位置かを示すID(2bit)、スケール有無判断論理値(1bit)、その他エラー信号(5bit)を含む。
シリアルIF405で送られた位置信号処理回路281a,bの出力の2つの位置信号は、ステージMPU280内の位置信号合成部404により、合成した位置信号となり、減算器402に出力される。目標位置発生部401は、通信部408を介してコントローラ501から位置管理面ステージ220の移動先の指示、シリアルIF405で送られた位置信号、X方向の原点位置を検出する原点センサとしてのX初期位置センサ243の信号を入力する。目標位置発生部401は、たとえばコントローラ501から指定された目標位置を出力する。減算器402は、目標位置発生部401から出力された目標位置から、位置信号合成部404の出力である現在位置を減算する。減算器402の出力は、駆動信号処理部403において、PID等のフィルタ演算が施され、ステージMPU280のDAコンバータ(不図示)等により一定の周期でアナログ信号として出力され、X軸駆動回路282に入力される。ここまでの処理は、一定の周期の一周期期間内に行われる。X軸駆動回路282は、駆動信号処理部403からの信号に応じてX軸駆動モータを駆動する。こうして、位置管理面ステージ220が目標位置に移動する。なお、位置信号合成部404はX軸センサ271a、X軸中間センサ271bの信号に基づいて得られた位置管理面ステージ220の位置を通信部408を介してコントローラ501へ送信する。通信部408は、たとえばUSBケーブル13によりコントローラ501と接続されている。
次に、位置信号合成部404の内部処理について説明する。位置信号合成部404は、2つのセンサ(X軸センサ271a,b)からのスケールの読み取り値の引き継ぎ処理を行い、一つの連続した位置出力を行う。引き継ぎ処理は、ステージの原点検出処理の前後で異なり、原点検出処理の後は、ステージの原点から所定の位置(所定カウント値)で、引き継ぎを行う。引き継ぎにおいては、引き継ぐ前のセンサの位置出力に引き継いだ後のセンサ出力の引き継ぎ位置からの増分を加算することで、連続した位置信号とする。また、ステージの原点を検出する前は、上述したスケール有無の判断結果(位置信号処理回路281a,bより送信される)を用いて、乗り継ぎ処理を行う。詳細は原点検出シーケンスと共に後述する。
上述のように、X軸方向の原点センサであるX初期位置センサ243は、透過型フォトインタラプタで構成され、Yステージ240上に固定される。位置管理面ステージ220側に取り付けられた遮光板(X初期位置マーク234)が、透過型フォトインタラプタの光路をさえぎることで位置管理面ステージ220の原点位置が検出される。なお、原点の位置は、視野中心170が、図4(a)の状態になるような位置に設定されている。
次に、目標位置発生部401の動作について説明する。目標位置発生部401は、コントローラ501から目標位置が設定されると、目標位置までの距離に応じて、図9(a)のように加減速プランを設定する。この加減速プランは、例えば、加速期間、定速期間、減速期間により構成される。定速期間には、例えば、スケールの読み取り精度が維持される範囲で適切な速さの定速度値が設定される。停止状態から定速度になるまでは、一定の加速度で速度を速める。また、定速度の状態から停止までは、一定の加速度で速度を減じて停止する。定速度および加速度をそれぞれ所定の値に設定すると、加速期間で移動する距離(d1)、定速期間で移動する距離(d2)、減速期間で移動する距離(d3)が決まり、これらの移動距離の合計(d1+d2+d3)が、目標位置までの移動距離となる。これを図示すると、図9(b)の様になる。図9(b)は、移動時間と移動距離の関係を示す。
図9(b)は、最終目標位置まで、ステージを移動制御する際の制御目標位置を表す制御曲線であって、この曲線上の値を目標位置発生部401が随時出力することにより、精確にステージを移動制御し、最終の目標位置までの移動が為される。移動制御を位置で行うのは、位置(移動距離)の値はスケールの読み取り値により高精度に把握できることによる(時間管理は高精度にならない)。なお、図9(a)は、台形駆動となっているが、目標位置までの距離が短い時は、一定速度部分がない三角駆動となる(図9(a)の一点鎖線)。Y軸方向の位置管理面ステージ220の駆動制御については、X軸方向の制御と同じように構成されている。但し、ステージMPU280は、X軸、Y軸合わせてひとつで良い。
次に、本実施形態の原点復帰における移動制御のシーケンスについて図10、図11を用いて説明する。図10は、ステージ正面(Y軸方向)から見たX軸方向への位置管理面ステージ220(XYスケール板210)の動きをわかりやすくするために簡易的に表した図である。上述してきたように、XYスケール板210上にXエリアスケール211が形成されている。XYスケール板210は、位置管理面ステージ220上にあるが、この図では、ステージベース260に対するX軸方向の動きを説明するために省略している。また、Yステージ240も同様の理由で省略されている。ステージベース260上には、X軸センサ271aおよびX軸中間センサ271bが固定されている。原点センサとしてのX初期位置センサ243は、Yステージ240(不図示)上に固定されているが、X軸方向には動かないので、正面(Y軸方向)からみると、位置管理ステージベース158に対していつも同じ位置にある。
ステージの電源を投入した直後の状態では、図10(a)〜(d)の4つの状態が考えられる。図10(a)は、XYスケール板210が原点にある場合を示している。これは、図4(a)に示したように、視野中心170が、XYスケール板210の原点になるような位置であり、フォトインタラプタであるX初期位置センサ243を、位置管理面ステージにある遮光板がさえぎる位置にある場合である。また、図10(b)は、XYスケール板210が、X軸センサ271a上にのみある場合を示す。また、図10(c)は、XYスケール板210が、X軸センサ271aおよびX軸中間センサ271bの両方の上にある場合を示す。さらに、図10(d)は、XYスケール板210が、X軸中間センサ271b上にのみある場合を示している。
図10(e)は、X初期位置センサ243、X軸中間センサ271b上のスケールの有無信号、X軸センサ271a上のスケールの有無信号を2値で示したものである。フォトインタラプタであるX初期位置センサ243を、位置管理面ステージ220にあるX初期位置マーク234(遮光板)がさえぎる位置にある場合の原点センサの出力をHレベル、そうでない場合をLレベルとして表している。また、2つのX軸センサ271a,bに関して、スケールがセンサ上にある場合をHレベル、無い場合Lレベルとして表している。スケール有無信号はスケールの有無の判断結果を表す。また、最下段において、a領域はX初期位置センサ243がHレベルの領域(図10(a)の状態)を示している。また、b領域はX軸中間センサ271bがLレベル、X軸センサ271aがHレベルの領域(図10(b)の状態)を示している。また、c領域はX軸中間センサ271bとX軸センサ271aがともにHレベルの領域(図10(c)の状態)を示している。また、d領域はX軸中間センサ271bがHレベル、X軸センサ271aがLレベルの領域(図10(d)の状態)を示している。どの状態の場合も、図10の右方向(原点から遠ざかる方向)に進むと、位置カウント値が増加し、逆の場合減少するように動くものとする。
ここで、位置信号合成部404の原点検出前の各領域での動きを説明する。位置信号合成部404は、電源投入後は、ステージMPU280が所定のプログラムを実行することにより、原点検出モードとなっており、X軸センサ271aおよびX軸中間センサ271bの出力するスケール有無判断信号によって乗り継ぎを行う。X軸センサ271a,bのうちの一方のセンサのみがスケール上にある状態から、2つのセンサがスケール上にある状態に変化すると、位置信号合成部404は、直前の位置信号に新たにスケール上になったセンサの出力位置を加算することで位置信号を得る。
たとえば、初期に、図10(b)の状態にあったものが、図10(c)の状態になった場合を説明する。図10(b)の状態から位置管理面ステージ220を原点方向に移動した場合、X軸センサ271aによる読み取り位置は減少する方向となる。電源投入時には読み取り位置が0となっているので、原点方向への移動によりマイナスの位置になる。図10(c)の状態になったとき、つまり、X軸中間センサ271bのスケール有無信号がスケール有(Hレベル)に変化したときから、X軸中間センサ271bの位置が同様にマイナスになっていく。したがって、X軸中間センサ271bのスケール有無信号がLレベルからHレベルになった瞬間のX軸センサ271aにより読み取られた位置にX軸中間センサ271bの読み取り位置を加算していけば、電源投入時の位置からの位置情報となる。同様に、図10(d)の状態から、図10(c)の状態になる場合は、X軸中間センサ271bにより読み取られる位置はプラスになる。そして、図10(c)の状態になった瞬間、つまり、X軸センサ271aのスケール有無信号がスケール有(Hレベル)に変化した時からX軸センサ271aの読み取り位置もプラスになっていく。したがって、X軸センサ271aのスケール有無信号がスケール有(Hレベル)に変化した時のX軸中間センサ271bによる読み取り位置にX軸センサ271aの読み取り位置を加算していけば、電源投入時の位置からの位置情報となる。
次に、ステージMPU280による原点検出のシーケンスを図11のフローチャートを用いて説明する。なお、以下においても位置管理面ステージ220の原点復帰におけるX方向への動作を説明するが、Y方向にも同様の動作が実行される。以下の原点復帰は、位置管理面ステージ220の位置が不定となった場合に実行されるものであり、最も典型的には電源投入時に実行されるものである。但し、何らかの原因でスケールの読み取り値がリセットされた状態となった場合に原点復帰を実行するようにしてもよい。或いは、ユーザによる原点復帰の指示操作が検出された場合に実行されてもよい。
電源投入後、ステージMPU280は、まず位置管理面ステージ220が原点センサとしてのX初期位置センサ243により検出されているか否か(原点センサの範囲か否か)を確認する(ステップS51)。本実施形態では、透過型フォトインタラプタであるX初期位置センサ243が遮光板により遮光されている間、X初期位置センサ243の出力はHレベルとなる。したがて、X初期位置センサ243の出力がHレベルかどうかにより、図10(a)の状態かどうかが確認される。原点センサの範囲であった場合は、低速で原点(HレベルからLレベルへの切り替わりのタイミング)を探せばよいので、処理はステップS55に進む。この状態から、ステージMPU280は、位置管理面ステージ220を原点とは逆の方向へ低速移動させながら(ステップS55)原点検出を行う処理を繰り返す(ステップS56)。本実施形態では、X初期位置センサ243からの信号がHレベルからLレベルへの切り替わりのタイミングで位置管理面ステージ220が原点位置になったものとし、処理はステップS57へ進む。なお、HレベルからLレベルへの切り替わりを検出した後、再び位置管理面ステージ220を原点方向へ移動し、X初期位置センサ243からの信号がLレベルからHレベルへ切り替わった位置を原点位置としてもよい。
他方、ステップS51で原点センサの範囲に無いと判定された場合、ステージMPU280は、X軸センサ271aのスケール有無信号がスケール有(Hレベル)かどうかの確認を行う(ステップS52)。これは、シリアルIF405から入力される、X軸センサ271aのシリアル信号により確認できる。X軸センサ271a上にスケールがあった(スケール有無信号がHレベル)場合、ステージMPU280は、さらにX軸中間センサ271bのスケール有無信号がスケール有(Hレベル)かどうかの確認を行う(ステップS53)。これも、シリアルIF405から入力される、X軸中間センサ271bのシリアル信号により確認できる。
ステップS53によりX軸中間センサ271b上にスケールがある(スケール有無信号がHレベル)と判定された場合、スケールは図10(c)の状態にある。すなわち、可動部としての位置管理面ステージ220が、X軸センサ271aとX軸中間センサ271bの両方によってXエリアスケール211を読み取れる位置にある。X軸センサ271aとX軸中間センサ271bの間隔は、Xエリアスケール211のX方向の幅よりもわずかに(本実施形態では、たとえば2mmとする)短い間隔になっているので、この状態のXYスケール板210の位置はある程度の精度で限定される。したがって、この状態から原点までの距離も設計値によりある程度の精度(例えば、2mm以下)で決まる。そこで、X軸センサ271aとX軸中間センサ271bの両方によりXエリアスケール211が検出されている状態のうち、位置管理面ステージ220が最も原点位置に近い状態にある場合の原点位置までの距離から、原点位置の機械的なばらつきを減じた距離を所定距離としてあらかじめ設定する。ここで、最も原点位置に近い状態にある場合の原点位置までの距離とは、X軸センサ271aのスケール有無信号がHレベルからLレベルに変わる直前の位置から原点までの距離、つまり図10(e)に示される領域dの距離である。
ステージMPU280は、以上のようにして設定された所定距離を、X軸中間センサ271bが出力する現在位置から減じた位置を目標位置に設定する。そして、ステージMPU280は、X軸中間センサ271bの出力を用いて位置制御を行い、図9(a)に示したような台形駆動により、位置管理面ステージ220を目標位置へ高速移動する(ステップS54)。すなわち、位置管理面ステージ220を原点位置の方向へ所定距離移動させる。このとき、位置管理面ステージ220のX方向位置は、X軸中間センサ271bにより取得される。
ステップS54で設定された距離(目標位置)は、必ず原点手前までの距離となるので、原点を越えて機械的な端部にぶつかり機器を損傷するようなことはない。ステップS54における高速移動を終えると位置管理面ステージ220は原点手前で停止した状態となる。この状態から、ステージMPU280は、位置管理面ステージ220を原点方向へ低速移動しながら(ステップS55)原点検出を行う処理を繰り返す(ステップS56)。すなわち、X初期位置センサ243により位置管理面ステージ220が原点位置に到達したことを検出するまで、位置管理面ステージ220をステップS54における移動よりも低速で移動させる。X初期位置センサ243からの信号が変化(LレベルからHレベルもしくはその逆)したら、原点位置が検出されたとして位置管理面ステージ220の移動を停止する。そして、ステージMPU280は、X軸センサ271a,bによる位置カウンタを原点検出点で初期化(カウンタを0にする)し(ステップS57)、原点検出終了となる。
次に、ステップS53のX軸中間センサ271bのスケール有無信号がスケール有(Hレベル)かどうかの確認で、スケール無し(Lレベル)であった場合を説明する。この場合、スケールは、図10(b)の状態にあり、X軸センサ271aのみがスケール上にある状態にある。この場合、ステージMPU280は、目標位置を定めずに原点方向に、位置管理面ステージ220の高速移動を開始する(ステップS58)。なお、位置管理面ステージ220の位置は、X軸センサ271aにより得られる。つまり、図9(a)の台形駆動の加速度で加速を始めて、速度がVmaxに達したら等速駆動を行うように、位置管理面ステージ220を移動する駆動を行う。
ステージMPU280は、位置管理面ステージ220を移動しながら、X軸中間センサ271bがスケール上にあるかどうかの確認を行う(ステップS53)。ここで、ステップS52からステップS53に遷移した場合との違いは、位置管理面ステージ220がすでに高速に移動中であるということである。X軸中間センサ271bがスケール上にあることが検出される(スケール有無信号がHレベル)と、原点位置までのおおよその距離がわかる。ステージMPU280は、目標を定めない高速移動からで所定位置を目標にしたX軸中間センサ271bを用いた位置の読み取りによる高速移動に切り替え、位置管理面ステージ220を原点手前まで移動する(ステップS54)。以降は、ステップS55、S56、S57と前に説明した通りの処理を行い終了する。
次に、ステップS52においてX軸センサ271aがスケール無し(Lレベル)を出力していた場合を説明する。この場合、ステージMPU280は、X軸中間センサ271bのスケール有無信号がスケール有(Hレベル)かどうかの確認を行う(ステップS60)。ここで、スケールが無いと判断された場合、本来はあり得ない状態であり、何かしらの不具合が生じている可能性があるのでエラーとして終了する(ステップS59)。
X軸中間センサ271bのスケール有無信号からスケールがあると判断された場合は、図10(d)の状態にあり、X軸中間センサ271bのみがスケール上にある。この状態は、位置管理面ステージ220の現在の位置から原点位置までの距離がどれくらいあるかわからないので、原点に向けての高速移動は危険である。他方、原点と反対方向であれば、長い可動範囲がある。そこで、ステージMPU280は、目標位置をさだめずに原点とは逆方向に高速移動を行いながら(ステップS61)、X軸センサ271aのスケール有無信号がスケール有(Hレベル)かどうかを確認する(ステップS62)。X軸センサ271aがスケール上にない(Lレベル)場合は、高速移動を続ける(ステップS61)。X軸センサ271aのスケール有無信号がスケール有(Hレベル)になると、直ちに減速処理を行い位置管理面ステージ220の移動を停止する(ステップS63)。初期にどの位置にいたかで、高速移動中の速度が異なるため、また、減速処理により停止する位置が異なるので、位置管理面ステージ220の停止位置は、図10(c)もしくは図10(b)の状態になる。したがって、処理はステップS53へ進み、上述のように、位置管理面ステージ220の現在位置に応じた原点復帰処理を行う。
以上のように、実施形態のステージ装置、ステージ制御方法によれば、電源投入時におけるステージの初期位置がどの状態にあっても、高速に原点手前に移動し、低速に切り替えて原点検出を行うことができる。したがって、原点検出を高速にかつ精度を高く実行することができる。また、本実施形態では、引き継ぎによりスケール値を読み取る複数のセンサを用いて、位置管理面ステージ220の原点までのおおよその距離を判断し、原点近傍へ高速に移動し、原点近傍への移動後に低速で精度の高い原点検出を行う。そのため、原点復帰のための特別な構成を追加することなく、原点検出動作を高速にかつ正確に行うことができる。これにより、位置管理面ステージ220が使用できるまでの時間を短縮することが可能となり、たとえば電源投入時における顕微鏡の立ち上がり時間が短縮される。
なお、上記実施形態では、X軸方向の原点復帰について説明したが、Y軸方向についても同様である。また、上記実施形態では、X軸センサ271a,bの位置信号処理をセンサ毎に行い、ステージMPU280にシリアルIFで位置信号を送っているがこれに限られるものではない。たとえば、図12のように、X軸センサ271a,bの各々のアナログ出力を、ステージMPU280のADコンバータ407でデジタル信号に変換し、位置信号処理部406で処理するようにしてもよい。このようにした場合、外部の処理回路を減らすことができ、コスト削減が可能となる。
その他の実施形態として、X初期位置センサ243がX初期位置マーク234を検出するまで、高速で(例えばVmax:安全に実行可能な最大の速さで)移動させ、X初期位置センサ243がX初期位置マーク234を検出した場合に、急減速させることとしてもよい。この場合、急減速によってステージを停止させたとしても、X初期位置マーク234はX初期位置センサ243で検出可能な位置からは所定距離Δだけ離れた位置となる。そのため、ステージをX初期位置センサ243がX初期位置マーク234を検出可能な位置まで戻すこととなる。ステージを減速させるための加速度をa-とすると、X初期位置センサ243がX初期位置マーク234を検出してから時間t1=Vmax/|a-|の経過後にステージは停止する。したがって、その後、距離Δ=(Vmax^2)/2|a-|だけステージをそれまでとは逆向きに移動させることで、原点復帰が実現される。ここで加速度a-の大きさを、印加可能な最大の加速度とすることで高速な原点復帰が実現できる(実際には、a-は負値を取ることに留意されたい)。少なくとも、上述の実施形態(例えば図9を参照)のように原点の位置が正確に特定できていない場合に比べて、より急減速させることができるため、かかる制御は原点復帰の高速化に貢献することとなる。ステージをこのような制御で移動させることによって、上述の実施形態よりも原点復帰をより高速に行うことできる可能性がある。なおこの場合、X方向に対して、原点から少なくとも±Δの範囲で、ステージを移動させることが可能であるという機械的な要件を満たす必要がある。
なお、上述の、X初期位置マーク234がX初期位置センサ243の位置まで高速移動させる制御(以下「特定の制御」とする)はX方向について行うこととしたが、これに限らず、Y方向についても上記特定の制御を行うようにしてもよい。また別の実施形態では、Y方向については、上述した実施形態のようにセンサを複数設けるが、X方向については、特定の制御を行い、かつ、上述した実施形態のようにセンサを複数設けず、センサを1つとする構成(乗り継ぎを行わない構成)としてもよい。要は、特定の制御は、ステージの移動可能範囲と原点との位置関係、ステージを移動させる加速度の大きさ、ステージの最大移動速度、等の関係から、適宜利用することとしてもよい。
また別の実施形態では、上記特定の制御を別の形で実現する。上記特定の制御は、X初期位置センサ243がX初期位置マーク234を検出することに応じてステージを急減速させかつステージをそれまでとは逆向きに移動させるというものであった。これに対し本実施形態では、X初期位置センサ243が、X初期位置マーク234と既知の位置関係にあるその他のマークを検出した場合にステージを急減速させるというものである。ここで、既知の位置関係として、X初期位置マーク234と当該その他のマークとの距離を既知の値Δ´とすることができる。このようにすることで、上記特定の制御では急減速後少なくとも2Δだけステージを移動させる必要があるところ、急減速後少なくともΔ´の移動で原点に復帰させることができる。Δ´を2Δよりも小さい値とすれば、上記特定の制御よりも高速な原点復帰を実現可能となる。当該Δ´を上述の距離Δかそれよりも少し大きい値とすることで、原点復帰はより高速化できる。X初期位置マーク234と当該その他のマークとの距離Δ´をΔに近づければ近づけるほど、原点復帰に要する時間を短くすることができる。本実施形態では、上記特定の制御で必要であったような、「X方向に対して、原点から少なくとも±Δは、ステージが移動可能である」という要件を満たす必要はなくなる。なお、当該その他のマークを検出するセンサを、X初期位置センサ243とはまた別に設けることとしてもよい。一方で、上記特定の制御によれば、マークまたはセンサの数を増やすことなく、高速な原点復帰の制御を実現可能であるというメリットがある。
なお、上記実施形態では、顕微鏡に適用されるステージ装置を説明したがこれに限られるものではない。インクリメンタルスケールをセンサで読み取って位置管理を行うステージ装置であれば、本発明の適用が可能である。また、上記実施形態では、ステージベース260にX軸センサとY軸センサを搭載し、共通のXYスケール板210に形成されたXエリアスケール211、Yエリアスケール212を読み取る構成としたがこれに限られるものではない。たとえば、YステージにXステージのスケールを読み取るセンサを搭載し、ベースステージにYステージのスケールを読み取るセンサを搭載した、通常のXYステージにも本発明は適用可能である。
なお、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。