JP6481744B1 - 四輪駆動車の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】駆動力の配分を変更する制御と車両姿勢の制御とが重なったとしても、四輪駆動車の姿勢が不安定になることを抑制する。
【解決手段】配分制御部101は、前輪12Fと後輪12Rとに対するトルクの配分比を変更するために、カップリング28を制御する。姿勢制御部102は、操舵速度が増大したときに、エンジン14で生成された駆動力を低下させることにより車両に減速度を発生させて車両姿勢を制御する。エンジン制御部103は、配分制御部101が設定したトルクの配分比に基づいて、姿勢制御部102により低下されるトルクの低下の度合いを変更する。
【選択図】図8

Description

本発明は、四輪駆動車の制御装置に関するものである。
近年、熟練ドライバーと経験の浅いドライバーとの間で運転技量の差が出やすいコーナリング操作時において、ドライバーの技量に拘わらず、熟練ドライバーのようなコーナリング操作を実現するための車両姿勢制御が搭載された車両が知られている。
例えば、特許文献1には、車両の操舵時に、車両のヨーレートが増大するにつれて、駆動源の生成トルクのトルク低下量を増大させることで、車両に減速度を発生させ、これによって、操舵輪である前輪に十分な荷重を加え、前輪と路面との間の摩擦力を増加させ、ステアリングの切り込み操作に対する応答性を向上させ、コーナリング時におけるドライバーの操作性を向上させる技術が開示されている。
その一方で、主駆動輪のスリップ時に、駆動源の出力を主駆動輪のみに配分する二輪駆動状態から補助駆動輪にも配分させる四輪駆動状態に変更する四輪駆動車において、補助駆動輪への駆動ロスの増加及び燃費の悪化を最適化するために、主駆動輪と補助駆動輪との配分比を適切に設定する車両も知られている。
例えば、特許文献2では、主駆動輪のスリップ量が所定量以上である場合に、主駆動輪の駆動ロスが、補助駆動輪の駆動ロスと補助駆動輪への駆動源の出力配分による駆動ロスとの総和より大きい場合、補助駆動輪への駆動源の出力の分配を増加させる技術が開示されている。
特許第6112304号公報 特許第5793877号公報
しかし、四輪駆動車において車両姿勢制御を適用した場合、下記の課題が生じる。例えば、前輪のスリップに起因して前輪から後輪へ駆動力の配分比を増大させる制御の実行中に車両姿勢制御が実行されると、車両姿勢制御は前輪への荷重を増大させる方向に作用するため、後輪に対する荷重が不十分となり、四輪駆動車の姿勢が不安定になる可能性がある。
また、例えば、後輪のスリップに起因して後輪から前輪へ駆動力の配分比を増大させる制御の実行中に、車両姿勢制御が実行されると、前輪への荷重が過大になり、狙い通りの車両姿勢の制御が実現できなくなる可能性がある。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、車両姿勢制御が適用される四輪駆動車において、姿勢が不安定になることを抑制することを目的とする。
本発明の一態様に係る四輪駆動車の制御装置は、駆動源と、駆動輪と、補助駆動輪と、前記駆動源で生成された駆動力を、前記駆動輪と前記補助駆動輪とに配分する駆動力配分機構とを備える四輪駆動車の制御装置であって、
前記駆動輪は前輪であり、
前記補助駆動輪は後輪であり、
前記駆動力配分機構を制御することで、前記駆動輪と前記補助駆動輪との前記駆動力の配分を制御する配分制御部と、
操舵装置の操舵角に関連する操舵角関連値が増大したときに、前記駆動源で生成された駆動力を低下させることにより車両に減速度を発生させて車両姿勢を制御する姿勢制御部と、
前記配分制御部により設定された前記補助駆動輪への駆動力の配分が第1値の場合、前記第1値より前記補助駆動輪への駆動力の配分が小さい第2値が設定された場合に比べて、前記姿勢制御部により低下される前記駆動力の低下の度合いを大きくする駆動力変更部とを備える。
この構成によれば、駆動輪と補助駆動輪とに対する駆動力の配分に基づいて、車両姿勢を制御するために、姿勢制御部により設定される駆動力の低下の度合いが変更されるので、駆動輪及び補助駆動輪のそれぞれに対して適切な荷重を付与することができ、車両姿勢が不安定になることを抑制できる。
また、この構成によれば、前輪と後輪とに対する駆動力の配分に基づいて、車両姿勢を制御するために、姿勢制御部により設定される駆動力の低下の度合いが変更されるので、駆動輪及び補助駆動輪のそれぞれに対して適切な荷重を付与することができ、車両姿勢が不安定になることを抑制できる。
車両姿勢の制御中に補助駆動輪への駆動力の配分を増大させてしまうと、その分、駆動輪への荷重が低下するので、前輪への荷重が不足し、車両姿勢が不安定になるおそれがある。
この構成によれば、補助駆動輪への駆動力の配分が増大するほど、駆動力の低下の度合いが大きくされるので、前輪への荷重の不足が抑制され、車両姿勢が不安定になることを抑制できる。
上記態様において、前記駆動力変更部は、前記姿勢制御部による車両姿勢の制御中に、前記配分制御部により前記駆動力の配分が変更された場合、前記変更された配分に基づいて前記駆動力の低下の度合いを変更することが好ましい。
この構成によれば、車両姿勢の制御中に駆動力の配分が変更された場合、変更後の配分に基づいて駆動力の低下の度合いが変更されるので、駆動力の低下の度合いを変更後の配分に応じてダイナミックに設定できる。
上記態様において、前記駆動力変更部は、前記配分制御部による前記配分の変更量及び変更速度のうち少なくとも1つが所定値以上であるときに前記駆動力の低下の度合いの変更を実施することが好ましい。
例えば、スリップ量が僅かであり、駆動力の配分の変更量及び変更速度が僅かなシーンにおいては、車両姿勢の制御が支配的になるので、駆動力の低下の度合いを配分に応じて変更しなくても問題ないと考えられる。本構成は、このようなシーンにおいては、駆動力の低下の度合いが変更されないので、処理負荷を低減できる。
上記態様において、前記操舵装置は車両乗員により操作されるステアリングを含み、
前記姿勢制御部は、前記ステアリングの切り込み操作時に前記車両姿勢の制御を実施することが好ましい。
この構成によれば、乗員がステアリングの切り込み操作を行った時に車両姿勢の制御が実行されるため、ステアリング操作時における四輪駆動車の姿勢を安定させることができる。
上記態様において、前記操舵角関連値は、操舵装置の操舵速度であることが好ましい。
この構成によれば、四輪駆動車がコーナリング状態であることを速やかに検出できる操舵速度が操舵角関連値として採用されているので、コーナリング操作の開始直後に車両姿勢の制御を開始することができる。
本発明によれば、駆動力の配分を変更する制御と車両姿勢の制御とが重なったとしても、四輪駆動車の姿勢が不安定になることを抑制できる。
本発明の実施の形態に係る四輪駆動車の制御装置が適用された四輪駆動車の構成を概略的に示す図である。 本発明の実施の形態に係る四輪駆動車の制御装置の電気的構成を示すブロック図である。 前輪及び後輪に対するトルクの配分比と、エネルギー損失E1、エネルギー損失E2、及びエネルギー損失E3との関係を示すグラフである。 カップリングへの印加電流と、トルク伝達容量との関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態における制御装置を搭載した四輪駆動車が右旋回を行う場合の姿勢制御を説明するための波形図である。 本発明の実施の形態に係る四輪駆動車の制御装置の処理を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態における四輪駆動車の制御装置において、配分比と付加減速度との関係を示すグラフである。 付加減速度の第1変更方法を説明する波形図である。 付加減速度の第2変更方法を説明する波形図である。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る四輪駆動車の制御装置が適用された四輪駆動車1の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係る四輪駆動車1は、一対の前輪12Fと、一対の後輪12Rと、駆動源としてのエンジン14と、エンジン14の駆動力を前輪12F及び後輪12Rとに伝達するためのトランスミッション16と、トランスミッション16からの駆動力を車軸18を介して前輪12Fに伝達する前輪用デフ20と、後輪12Rに伝達する駆動力を取り出すトランスファ22と、トランスファ22からの駆動力を左右の後輪12Rに車軸24を介して伝達する後輪用デフ26とを備えている。
トランスファ22と後輪用デフ26とは、車体の前後方向に延びる駆動力伝達軸30と、後輪12Rに伝達されるトルクを変更するためのカップリング28とを介して連結されている。具体的には、トランスファ22の出力軸が駆動力伝達軸30の一端に連結され、駆動力伝達軸30の他端がカップリング28の入力軸に連結され、カップリング28の出力軸が後輪用デフ26の入力軸に連結されている。カップリング28は駆動力配分機構の一例である。
カップリング28は、前輪12Fと後輪12Rとがスリップすることなく同一の回転速度で回転している場合、エンジン14の駆動力を後輪12Rに分配しない。一方、カップリング28は、前輪12Fがスリップして前輪12Fと後輪12Rとの回転速度が一致しない場合、エンジン14の駆動力を後輪12Rへ伝達し、前輪12Fと後輪12Rとに駆動力を分配する。なお、本実施の形態に係る四輪駆動車1では、前輪12Fが駆動輪であり、後輪12Rが補助駆動輪である。
ここで、カップリング28は、例えば、複数のクラッチ板を含む電磁クラッチにより構成され、コントローラ100から出力される印加電流にしたがって、クラッチ板同士の締結力を調節することで、前輪12Fと後輪12Rとに対するエンジン14の駆動力の配分比、すなわち、トルクの配分比を調整する。
カップリング28は、コントローラ100の制御の下、エンジン14が生成するトルクの前輪12Fと後輪12Rとに対する分配比を調節することによって、後輪12Rに伝達されるトルクを変更する。
更に、四輪駆動車1は、前輪12Fの輪速を検出する前輪速センサ36と、後輪12Rの輪速を検出する後輪速センサ38と、カップリング28の作動を制御するコントローラ100とを備えている。前輪速センサ36によって検出される前輪12Fの輪速と、後輪速センサ38によって検出される後輪12Rの輪速とは、それぞれ、コントローラ100に入力される。前輪速センサ36及び後輪速センサ38を区別しない場合、車輪速センサ43と記述する。
更に、四輪駆動車1は、乗員が四輪駆動車1を操舵する際に回転させるステアリング40と、ステアリング40の操舵角度を検出する操舵角センサ41とを備える。操舵角センサ41によって検出された操舵角はコントローラ100に入力される。
図2は、本発明の実施の形態に係る四輪駆動車1の制御装置10の電気的構成を示すブロック図である。制御装置10は、図1に示す操舵角センサ41、車輪速センサ43、カップリング28、及びコントローラ100の他、アクセル開度センサ42、スロットル弁44、点火プラグ45、可変動弁機構46、及び燃料噴射装置47を備える。
コントローラ100には、エンジン14のトルク、変速段、及びトランスミッション16の出力軸の回転速度等の各種情報が入力される。本実施形態では、コントローラ100は、後述するように、これら各種情報に基づいてカップリング28の作動を制御する。
操舵角センサ41は、例えば、ステアリングシャフトに取り付けられ、操舵の向き、中立位置、及び転舵角に応じた信号をコントローラ100に出力する。操舵角センサ41は、例えば、ステアリングホイールと連動して回転する円盤状のスリット板と、スリット板を挟んで配置されたフォトインタラプタとで構成されている。
アクセル開度センサ42は、例えば、抵抗体の上を接点が摺動するポテンショ式の角度センサで構成され、アクセルペダルの変位量を検知して電気信号に変換してコントローラ100に出力する。
車輪速センサ43は、例えば、ブレーキドラムなどの回転部分に設けられた歯車状のロータと、ロータに対して一定の隙間を設けて配置され、コイル及び磁極等で構成されたセンシング部とを備え、ロータの回転により、コイルに発生する交流電圧に基づいて、車輪の回転速度を検出する。
スロットル弁44は、エンジン14への吸気量を調節する。点火プラグ45は、エンジン14のシリンダー内で火花を飛ばし燃料を点火させる。可変動弁機構46は、例えば、油圧式の可変動弁機構又は電動式の可変動弁機構で構成され、吸気バルブ及び排気バルブのそれぞれの開閉タイミングを調整する機構である。燃料噴射装置47は、エンジン14の吸気ポートに対して燃料を噴射する。
コントローラ100は、配分制御部101、姿勢制御部102、及びエンジン制御部103を備える。本実施の形態では、配分制御部101、姿勢制御部102、及びエンジン制御部103は、それぞれ独立したコンピュータで構成されてもよいし、一つのコンピュータにおいて実行される別のプログラムモジュールで構成されてもよい。配分制御部101〜エンジン制御部103を独立したコンピュータで構成する場合は、各コンピュータは相互に通信可能に接続されている。なお、エンジン制御部103は駆動制御部の一例に相当する。
配分制御部101は、前輪12Fと後輪12Rとに対するトルクの配分比を変更するために、カップリング28を制御する。ここで、配分制御部101は、特許文献2に記載された手法を用いて、配分比を決定すればよい。
具体的には、配分制御部101は、車輪速センサ43で検知された前輪12Fの輪速に基づいて前輪12Fのスリップ量を算出し、算出したスリップ量に基づいて前輪12Fのスリップによるエネルギー損失E1を算出する。また、配分制御部101は、車輪速センサ43で検知された後輪12Rの輪速に基づいて後輪12Rのスリップ量を算出し、算出したスリップ量に基づいて後輪12Rのエネルギー損失E2を算出する。また、配分制御部101は、エンジン14のトルクを後輪12Rへ伝達するトルク伝達機構の機械損失に基づくエネルギー損失E3を算出する。トルク伝達機構としては、例えば、図1のトランスファ22、駆動力伝達軸30、カップリング28、及び後輪用デフ26等が該当する。
そして、配分制御部101は、エネルギー損失E1が、エネルギー損失E1とエネルギー損失E2との和であるエネルギー損失(E2+E3)より大きい場合、後輪12Rへのトルクの配分比を増大させる。一方、配分制御部101は、エネルギー損失E1がエネルギー損失(E2+E3)以下の場合、前輪12Fへのトルクの配分比を増大させる。これによって、配分制御部101は、エネルギー損失E1がエネルギー損失(E2+E3)と等しくなるようにエンジン14のトルクの配分比を決定する。そして、配分制御部101は、決定した配分比でカップリング28を駆動させるための印加電流を生成し、カップリング28に出力する。
図3は、前輪12F及び後輪12Rに対するトルクの配分比と、エネルギー損失E1、エネルギー損失E2、及びエネルギー損失E3との関係を示すグラフである。図2において、縦軸はエネルギー損失を示し、横軸はトルクの配分比を示している。横軸において、前輪と後輪とのトルクの配分比は、前輪:後輪で示されている。横軸の左端は、前輪12Fと後輪12Rとの配分比が100:0を示しており、全てのトルクが前輪12Fに配分されている。横軸の右端は前輪12Fと後輪12Rとの配分比が50:50を示しており、前輪12Fと後輪12Rとに対するトルクの配分比は等しくされている。つまり、横軸においては左端から右端に向かうにつれて、後輪12Rへのトルクの配分比が0から50に向けて増大していく。
また、図3において、実線のグラフはエネルギー損失E1を示し、波線のグラフはエネルギー損失E2を示し、一点鎖線のグラフはエネルギー損失E3を示している。
図3に示すように、後輪12Rへのトルクの配分比が増大するにつれてエネルギー損失E1は、次第に減少している。これは、後輪12Rへのトルクの分配比が増大するにつれて、前輪12Fのスリップ量が減るからである。また、エネルギー損失E2はトルクの配分比が増大するにつれて次第に増大している。これは、後輪12Rへのトルクの配分比の増大に伴って後輪12Rのスリップ量が増大するからである。また、エネルギー損失E3はトルクの配分比が増大するにつれて次第に増大している。これは、後輪12Rへのトルクの配分比の増大に伴って後輪12Rへトルクを伝達する機構の機械的損失が増大するからである。なお、エネルギー損失E3の方がエネルギー損失E2に比べて全体的にエネルギー損失が大きいのは、後輪12Rへトルクを伝達する機構の機械的損失の方が、後輪12Rのスリップ量よりもエネルギー損失に寄与する割合が高いからである。
エネルギー損失E1〜E3の総和エネルギー損失(E1+E2+E3)は、エネルギー損失E1がエネルギー損失(E2+E3)と等しい場合に最小になることが知られている。したがって、配分制御部101は、エネルギー損失E1がエネルギー損失(E2+E3)と等しくなるように、カップリング28を制御することで、総和エネルギー損失(E1+E2+E3)を最小化する。
図4は、カップリング28への印加電流IDと、トルク伝達容量との関係を示すグラフであり、縦軸はカップリング28のトルク伝達容量を示し、横軸は印加電流IDを示している。図4に示すように、カップリング28は印加電流IDが増大するにつれてトルク伝達容量が増大する特性を備えている。トルク伝達容量は後輪12Rへのトルクの配分比を決定するパラメータであり、トルク伝達容量が増大するにつれて後輪12Rへのトルクの配分比が増大する。したがって、配分制御部101は、印加電流IDを増減させることにより、後輪12Rへのトルクの配分比を目的とする値に調整できる。
図2に参照を戻す。姿勢制御部102は、操舵装置の操舵角に関連する操舵角関連値が増大したときに、エンジン14で生成された駆動力(トルク)を低下させることにより車両に減速度を発生させて車両姿勢を制御する。
詳細には、姿勢制御部102は、操舵角センサ41が検出した操舵角を微分することで操舵速度を算出し、算出した操舵速度の増大に伴って姿勢制御開始条件が成立した場合、操舵速度に基づいてエンジン14で生成されるトルクの低下の度合いを示す付加減速度を算出する。操舵速度は、操舵角関連値の一例である。姿勢制御開始条件としては、例えば、操舵速度が所定の閾値Th1以上という条件が採用できる。閾値Th1としては、0又は0に一定のマージンを加えた値が採用できる。
また、姿勢制御部102は、操舵速度が減少し、姿勢制御終了条件を下回った場合、車両姿勢の制御を終了する。ここで、姿勢制御終了条件としては、操舵速度が閾値Th1未満という条件が採用できる。
図5は、本発明の実施形態における制御装置10を搭載した四輪駆動車1が右旋回を行う場合の車両姿勢制御を説明するための波形図である。
図5(A)は、右旋回を行う四輪駆動車1を概略的に示す平面図である。ここでは、四輪駆動車1が右旋回するシーンにおいて、位置Aから位置Bを経由して位置Cを通過するまでのシーンが示されている。
図5(B)は、図5(A)に示す右旋回を行う四輪駆動車1の操舵角の時間的推移を示す波形図である。図5(B)において横軸は時間を示し、縦軸は操舵角(deg)を示す。また、図5(B)において、操舵角が0であるステアリング40の中立位置に対して右向きの操舵角が正、左向きの操舵角が負で示されている。
図5(B)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、ステアリング40に対する右向きの操作量が増大されることにより右向きの操舵角が徐々に増大し、位置Bにおいて右向きの操舵角が最大となる。その後、ステアリング40の操作量が維持され、最大の操舵角が維持され、位置Cまで推移している。
図5(C)は、図5(B)に示す右旋回を行う四輪駆動車1の操舵速度の時間的推移を示す波形図である。図5(C)において、横軸は時間を示し、縦軸は操舵速度(deg/s)を示す。なお、図5(C)において、操舵速度は、0を基準に、右向きの操舵速度が正、左向きの操舵速度が負で示されている。ここでは、説明の便宜上、右向きの操舵速度を正、左向きの操舵速度を負で示しているが、本明細書では、右向きの操舵速度が増大する場合、及び左向きの操舵速度が増大する場合の両方の場合を合わせて、「操舵速度が増大する」と記述する。
四輪駆動車1の操舵速度は、操舵角の時間微分により表される。すなわち、図5(C)において、位置Aに対応する時刻t0から時刻t1までの期間において操舵速度がリニアに増大している。これは、この期間では操舵角が下に凸の二次関数に従って増大しているからである。
時刻t1から時刻t2までの期間において操舵速度は一定の値を維持している。これは、この期間では、操舵角がリニアに増大しているからである。
時刻t2から位置Bに対応する時刻t3までの期間において操舵速度はリニアに減少している。これは、この期間では操舵角が上に凸の二次関数に従って増大しているからである。
時刻t3から位置Cに対応する時刻t4までの期間では、操舵速度は0を維持している。これは、この期間では、操舵角が一定の値で推移しているからである。
図5(D)は、図5(C)に示す操舵速度に基づいて算出される付加減速度の時間的推移を示す波形図である。図5(D)において、横軸は時間を示し、縦軸は付加減速度(m/s)を示している。なお、図5(C)において、付加減速度は、例えば0を基準に、加速側が正、減速側が負で表されている。本実施の形態では、姿勢制御部102は、操舵速度が増大するにつれて付加減速度が負の方向に増大し、操舵速度が減少するにつれて付加減速度が0の方向に減少するように付加減速度を算出する。
時刻t0から時刻t1までの期間において、付加減速度は負の方向にリニアに増大している。これは、この期間において、操舵速度がリニアに増大しているからである。
時刻t1から時刻t2までの期間において、付加減速度は負の一定の値で推移している。これは、この期間において、操舵速度が一定の値で推移しているからである。
時刻t2から時刻t3までの期間において、付加減速度は0に向けてリニアに増大している。これは、この期間において操舵速度がリニアに減少しているからである。
時刻t3から時刻t4までの期間において、付加減速度は、0で推移している。これは、この期間において操舵速度が0で推移しているからである。
図5(E)は、図5(D)の付加減速度に基づいて算出されるトルク低下量の時間的推移を示す波形図である。図5(E)において、横軸は時間を示し、縦軸はトルク低下量(N・m)を示している。図5(E)では、トルク低下量は、負で表されている。トルク低下量の波形は、付加減速度と相似な形状を有している。
図5(F)は、図5(E)に示すトルク低下量に基づいて算出される最終目標トルクの時間的推移を示す波形図である。図5(F)において、横軸は時間を示し、縦軸は最終目標トルク(N・m)を示している。最終目標トルクは、目標Gに対応する目標トルク、すなわち、車両姿勢制御を実行しない場合の目標トルクから、図5(E)に示すトルク減少量を減じた値を有する。したがって、図5(F)においては、最終目標トルクは、目標Gに対応する目標トルクを基準として、トルク低下量と同じ波形を有している。
図5(G)は、図5(F)に示す最終目標トルクで四輪駆動車1を走行させたときの実ヨーレートの時間的推移を示す波形図である。図5(G)において、横軸は時間を示し、縦軸は実ヨーレート(rad/s)を示している。CWは時計回りの実ヨーレートを示し、CCWは反時計回りの実ヨーレートを示している。実ヨーレートは、実際に計測されたヨーレートである。実ヨーレートは、操舵切り込み中及び操舵保持中とも、操舵角に連動して推移していることが分かる。
位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、操舵速度が増大するにつれて図5(E)に示したようにトルク低下量が負の方向に増大すると、四輪駆動車1に制動作用が発生して、四輪駆動車1は前傾し、前輪12Fの荷重が増加する。その結果、前輪12Fと路面との間の摩擦力が増加するため、四輪駆動車1の回頭性が向上する。その結果、車両姿勢制御は、コーナリング時の操作性の向上を図ることができる。
図2に参照を戻す。エンジン制御部103は、配分制御部101が設定したトルクの配分比に基づいて、姿勢制御部102により低下されるトルクの低下の度合いを変更する。本実施の形態では、エンジン制御部103は、配分制御部101により設定された配分比が増大するにつれて、付加減速度が負の方向へ増大する度合いを増大させることにより、トルクの低下の度合いを変更する。これにより、後輪12Rへのトルクの配分比の増大中に車両姿勢制御を実施したとしても、前輪12Fへの荷重の不足が抑制され、車両姿勢が不安定になることを抑制できる。なお、本実施の形態では、トルクの低下の度合いの変更方法として、付加減速度を負の方向に増大させるに際しての変更速度を配分比が増大するにつれて増大させる第1変更方法と、配分比が増大するにつれて付加減速度のボトム値を負の方向に増大させる第2変更方法との少なくとも一方が採用できる。
また、エンジン制御部103は、姿勢制御部102が設定した付加減速度、又は、配分比に応じて変更された付加減速度からトルク低下量を算出する。ここで、トルク低下量とは、エンジン14の目標トルクに対して差し引くべきトルクの目標値を示す。これにより、四輪駆動車1に減速度が発生し、四輪駆動車1の姿勢が前傾し、前輪12Fの荷重が増大する結果、コーナリング時の操作性を向上を図ることができる。
また、エンジン制御部103は、車両姿勢制御が実行される場合、車輪速センサ43で検出された輪速(以下、車速と称する。)とアクセル開度センサ42により検出されたアクセル開度とから目標Gを算出する。ここで、目標Gとは、加速度と減速度とを含む概念である。
また、エンジン制御部103は、目標Gからエンジン14の目標トルクを算出し、目標トルクからトルク低下量を減じることで最終目標トルクを算出する。一方、エンジン制御部103は、車両姿勢制御が実行されない場合、目標Gから算出した目標トルクを最終目標トルクとして算出する。
また、エンジン制御部103は、最終目標トルクをエンジン14に生成させるためのスロットル弁44、点火プラグ45、可変動弁機構46、及び燃料噴射装置47の指令値をそれぞれ決定し、スロットル弁44、点火プラグ45、可変動弁機構46及び燃料噴射装置47のそれぞれを制御する。
図6は、本発明の実施の形態に係る四輪駆動車1の制御装置10の処理を示すフローチャートである。なお、図6のフローチャートは、所定の演算周期で繰り返し実行される。S1では、コントローラ100は、各種センサ信号を読み込む。ここでは、例えば、操舵角センサ41からの操舵角、アクセル開度センサ42からのアクセル開度、及び車輪速センサ43からの車速がセンサ信号として読み込まれる。
S2では、エンジン制御部103は、S1で読み込んだ車速及びアクセル開度から目標Gを設定する。ここで、エンジン制御部103は、車速及びアクセル開度に応じた目標Gが予め登録された目標Gマップをメモリーに記憶しておき、この目標Gマップを参照することで、現在の車速とアクセル開度とに対応する目標Gを設定すればよい。
S3では、エンジン制御部103は、目標Gからエンジン14の目標トルクを設定する。ここで、エンジン制御部103は、S2で設定した目標Gに対して、現在設定されている変速比などを考慮した所定の演算を行うことで、目標トルクを設定すればよい。
S4では、配分制御部101は、エネルギー損失E1〜E3をそれぞれ算出し、エネルギー損失E1がエネルギー損失(E2+E3)と等しくなるように、配分比を設定する。詳細には、配分制御部101は、エネルギー損失E1がエネルギー損失(E2+E3)よりも大きければ、前回設定した配分比を所定の分解能で増大させた値を今回の分配比として設定し、エネルギー損失E1がエネルギー損失(E2+E3)未満であれば、前回設定した配分比を所定の分解能で減少させた値を今回の配分比として設定する。また、配分制御部101は、エネルギー損失E1がエネルギー損失(E2+E3)と等しければ、直前に設定した配分比を今回の配分比として設定する。
S5では、姿勢制御部102は、S1で読み込んだ操舵角から操舵速度を算出し、操舵速度が閾値Th1以上であれば、姿勢制御開始条件が成立したと判定し(S5でYES)、処理をS6に進める。一方、姿勢制御部102は、操舵速度が閾値Th1未満であれば、姿勢制御開始条件が成立していないと判定し(S5でNO)、処理をS15に進める。
S6では、姿勢制御部102は、付加減速度マップを参照し、現在の操舵速度に対応する付加減速度を設定する。
S7では、エンジン制御部103は、配分制御部101により配分比を変更させる制御が実行中であるか否かを判定する。ここで、エンジン制御部103は、S4において、前回の配分比に対して今回の配分比が変更されていない場合、S7でYESと判定し、S4において、前回の配分比に対して今回の配分比が変更された場合、S7でNOと判定すればよい。
S8では、エンジン制御部103は、S4で設定された今回の配分比に基づいて、上述した第1変更方法及び第2変更方法の少なくとも一方を用いて付加減速度を変更する。図7は、本発明の実施の形態における四輪駆動車1の制御装置10において、配分比と付加減速度との関係を示すグラフである。図7において、縦軸は配分比を示し、横軸は付加減速度を示している。図7の縦軸の下端は、前輪と後輪との配分比が100:0を示し、縦軸の上方に向かうにつれて後輪12Rの配分比が増大され、前輪12Fと後輪12Rとの配分比が50:50に近づいていく。
図7に示すように、本実施の形態では、後輪12Rの配分比が増大するにつれて、付加減速度が負の方向に増大するように変更される。
ここでは、エンジン制御部103は、S6で設定された付加減速度を配分比に応じて変更しているが、本発明はこれに限定されず、エンジン制御部103は、操舵速度と配分比とに対応する付加減速度が予め対応付けられた付加減速度マップをメモリーに記憶しておき、この付加減速度マップを参照して配分比に応じて変更された付加減速度を設定してもよい。
S9では、エンジン制御部103は、付加減速度に連動してトルク低下量が変化するようにトルク低下量を算出する。例えば、エンジン制御部103は、付加減速度に対してトルクのディメンションに変換するための所定の係数を乗じることで、トルク低下量を算出すればよい。
S10では、エンジン制御部103は、S3で設定した目標トルクからS9で設定したトルク低下量を減じることで最終目標トルクを設定する。
S11では、エンジン制御部103は、S10で設定した最終目標トルクを実現するための目標吸気量と、目標燃料噴射量と、目標点火時期とをそれぞれ設定する。なお、最終目標トルクが決まると、目標吸気量、目標燃料噴射量、及び目標点火時期はそれぞれ一意に決定できる。そこで、エンジン制御部103は、最終目標トルクと、目標吸気量、目標燃料噴射量、及び目標点火時期との対応関係が予め登録された決定マップをメモリーに記憶しておき、この決定マップを参照することで、目標吸気量、目標燃料噴射量、及び目標点火時期をそれぞれ決定すればよい。
S12では、エンジン制御部103は、S11で設定した目標吸気量を実現するためのスロットル弁44の開度と可変動弁機構46の閉弁時期とを設定する。また、S12では、S11で設定した目標燃料噴射量を実現するための燃料噴射時間を設定する。
S13では、エンジン制御部103は、S12で設定した開度にするための指令値をスロットル弁44に出力する。また、S13では、エンジン制御部103は、S12で設定した閉弁時期で閉弁させるための指令値を可変動弁機構46に出力する。また、S13では、S12で設定した燃料噴射時間で燃料を噴射させるための指令値を燃料噴射装置47に出力する。また、S13では、S11で設定された目標点火時期で点火させるための指令値を点火プラグ45に出力する。
S14では、配分制御部101は、S4で設定した今回の配分比に応じた印加電流をカップリング28に出力する。
S15では、エンジン制御部103は、S3で設定した目標トルクを最終目標トルクとして設定し、処理をS11に進める。
図6のフローチャートを概観すると、姿勢制御開始条件が成立し、且つ、配分比が変更中である場合(S5でYES且つS7でNO)、後輪12Rへの配分比が増大するにつれて付加減速度が負の方向へ増大するように変更され(S8)、変更後の付加減速度にしたがって、目標トルクが減少される。
図8は、付加減速度の第1変更方法を説明する波形図である。図8(A)〜(D)は、それぞれ、操舵速度、付加減速度、トルク低下量、及び配分比の時間的推移を示している。図8(A)〜(D)において、縦軸はそれぞれ操舵速度、付加減速度、トルク低下量、及び配分比を示し、横軸は時間を示している。また、図8(D)において、縦軸の下端は、前輪と後輪との配分比が100:0の場合を示し、上側に向かうにつれて、配分比は50:50に近づいていく。
時刻t0では、エネルギー損失E1がエネルギー損失(E2+E3)と等しくなくなったため、配分制御部101により配分比を変更する制御が開始されている。この制御は、操舵速度が0になった後の時刻t6まで継続されている。このように、配分比を変更する制御は操舵速度とは無関係に実行されている。
時刻t1では、四輪駆動車1がカーブに侵入し、乗員によりステアリング40の操作が開始されている。そのため、操舵速度の増大が開始されている。
時刻t2では、操舵速度が閾値Th1より大きくなり、姿勢制御開始条件が成立したため、車両姿勢制御が開始されている。
図8(B)において、波形G81は、本件(第1変更方法)における付加減速度の時間的推移を示し、波形G82は、比較例の付加減速度の時間的推移を示している。
第1変更方法の基本的な考え方について説明する。第1変更方法を採用する場合、姿勢制御部102は、操舵速度を微分して得られる操舵加速度a1が増大するにつれて増大するように付加減速度の変更速度FV(a1)を決定し、決定した変更速度FV(a1)で予め定められたボトム値B(固定値)に向けて付加減速度が負の方向に増大するように付加減速度の波形を設定する。
なお、ここでは、変更速度FV(a1)が増大するとは、変更速度FV(a1)の絶対値が増大することを意味する、すなわち、付加減速度の傾きが急峻になることを意味する。
図8(B)に示す比較例の波形G82では、時刻t2〜t3の期間において、操舵速度が一定の割合で増大しており、操舵加速度a1が一定であるため、変更速度FV(a1)は一定の傾きでボトム値Bまで負の方向に増大している。比較例では、配分比に拘わらず、変更速度FV(a1)は変更されない。そのため、図8(C)の波形G84に示すように、トルク低下量も変更速度FV(a1)に応じた変更速度TV(a1)でボトム値Cに向けて負の方向に増大していることがわかる。
これに対して、本件(第1変更方法)では、配分比が増大するにつれて増大するように変更速度FV(a1)が補正され、補正された変更速度FV’(a1)にしたがって、付加減速度はボトム値Bに向けて減少される。詳細には、エンジン制御部103は、姿勢制御部102により設定された変更速度FV(a1)に対して配分比に応じて予め定められた補正係数αを乗じることで、変更速度FV’(a1)を算出すればよい。但し、αは1より大きな値を持つ。この場合、エンジン制御部103は、配分比が増大するにつれて補正係数αが増大するように配分比と補正係数αとの対応関係を示す補正係数マップをメモリーに記憶させておき、この補正係数マップを参照することで、現在設定されている配分比に対応する補正係数αを設定すればよい。
これにより、図8(B)に示す波形G81では、時刻t2〜t3の期間における変更速度FV’(a1)は比較例の変更速度FV(a1)よりも大きな傾きに設定されている。なお、時刻t2〜t3の期間では、操舵加速度a1が一定であるため、変更速度FV’(V)は一定の傾きを有している。
これに応じて、図8(C)の波形G83に示すように、トルク低下量も変更速度FV’(a1)に対応する変更速度TV’(a1)でボトム値Cに向けて負の方向に増大している。
次に、第1変更方法を採用した場合の図6のフローチャートについて補足する。図6のS6において、姿勢制御部102は、現在の操舵速度から操舵加速度a1を算出し、操舵加速度a1に対応する変更速度FV(a1)を決定し、変更速度FV(a1)でボトム値Bに向けて付加減速度が負の方向に増大するように付加減速度の波形を設定する。そして、姿勢制御部102は、現在の付加減速度がボトム値Bに到達していなければ、変更速度FV(a1)に演算周期Δtを乗じることで付加減速度の負の方向への増大量を算出し、その増大量を現在の付加減速度に負の方向に加えた値を、今回の付加減速度として設定すればよい。
また、S6において、姿勢制御部102は、現在の付加減速度がボトム値Bに到達していれば、操舵速度の減少が開始されるまで、付加減速度をボトム値Bに維持する。これにより、付加減速度は変更速度FV(a1)にしたがってボトム値Bまで減少されることになる。
一方、図6のS8では、エンジン制御部103は、S6で設定された変更速度FV(a1)に配分比に応じた補正係数αを乗じた変更速度FV’(a1)を算出し、この変更速度FV’(a1)にしたがってボトム値Bに向けて負の方向に増大するようにS6で設定された付加減速度の波形を変更する。そして、エンジン制御部103は、現在の付加減速度がボトム値Bに到達していなければ、変更速度FV’(a1)に演算周期Δtを乗じることで付加減速度の負の方向への増大量を算出し、その増大量を現在の付加減速度に負の方向に加えた値を、今回の付加減速度として設定すればよい。
また、エンジン制御部103は、現在の付加減速度がボトム値Bに到達していれば、付加減速度をボトム値Bに維持する。これにより、付加減速度は変更速度FV’(a1)にしたがってボトム値Bまで減少されることになる。
図9は、付加減速度の第2変更方法を説明する波形図である。図8(A)〜(D)は、それぞれ、操舵速度、付加減速度、トルク低下量、及び配分比の時間的推移を示している。図9では図8と同じシーンの波形図が示されている。
図9(B)において、波形G91は、本件(第2変更方法)における付加減速度の時間的推移を示し、波形G92は、比較例の付加減速度の時間的推移を示している。
第2変更方法の基本的な考え方について説明する。第2変更方法を採用する場合、姿勢制御部102は、操舵速度v1が増大するにつれて負の方向に増大するようにボトム値B(v1)を決定し、予め定められた変更速度FV(固定値)で決定したボトム値B(v1)に向けて付加減速度が負の方向に増大するように付加減速度の波形を設定する。
図9(B)に示す比較例の波形G92では、時刻t3で操舵速度の増大が終了しているため、時刻t3においてボトム値B(v1)が確定している。したがって、波形G92では、時刻t2〜t3の期間において付加減速度はボトム値B(v1)に向けて一定の変更速度FVで減少している。比較例では、配分比に拘わらず、ボトム値B(v1)は変更されない。そのため、図9(C)の波形G94に示すように、トルク低下量も一定の変更速度でボトム値C(v1)に向けて減少していることがわかる。
これに対して、本件(第2変更方法)では、配分比が増大するにつれて負の方向に増大するようにボトム値B(v1)が補正され、補正されたボトム値B’(v1)に向けて一定の変更速度FVで、付加減速度は負の方向に増大される。詳細には、エンジン制御部103は、姿勢制御部102により設定されたボトム値B(v1)に対して配分比に応じて予め定められた補正係数βを乗じることで、ボトム値B’(v1)を算出すればよい。但し、βは1より大きな値を持つ。この場合、エンジン制御部103は、配分比が増大するにつれて補正係数βが増大するように配分比と補正係数βとの対応関係を示す補正係数マップをメモリーに記憶させておき、この補正係数マップを参照することで、現在設定されている配分比に対応する補正係数βを設定すればよい。
これにより、図9(B)に示す波形G91では、時刻t3が経過しても、付加減速度の負の方向への増大が継続されている。そして、時刻t3の少し後の時刻t3’において、付加減速度がボトム値B’(v1)に到達している。ここで、波形G91では付加減速度が時刻t3ではなく時刻t3’にてボトム値B’(v1)に到達しているのは、波形G92と変更速度FVが同じであり、且つ、ボトム値B’(v1)がボトム値B(v1)よりも負の方向に大きいからである。これに伴って、図9(C)に示す本件の波形G93も時刻t3’においてボトム値C’(v1)に到達している。
波形G91では、時刻t3’以降も付加減速度は変更速度FVよりも緩やかな傾きを持つ変更速度FV2で負の方向に増大している。これは、操舵速度は一定にされているが、配分比の増大が継続されているからである。すなわち、ボトム値B’(v1)は、B(v1)×βの演算により決定されるが、配分比の増大に応じてβが増大するからである。これに伴って、図9(C)に示す本件の波形G93に示すように、トルク低下量も時刻t3’以降において緩やかな傾きで負の方向に増大している。
時刻t4に到達すると、操舵速度の減少が開始されるので、本件及び比較例とも付加減速度は0に向けて増大している。ここで、本件の方が比較例に比べて急峻な傾きで0に向けて増大しているのは、時刻t4での付加減速度は本件の方が比較例に対して負の方向に大きく、且つ、操舵速度が0になる時刻t5において付加減速度を0に戻すためである。
これに伴って、図9(C)の波形G93に示すように、トルク低下量も波形G94よりも急峻な傾きで0に向けて増大している。
次に、第2変更方法を採用した場合の図6のフローチャートについて補足する。図6のS6において、姿勢制御部102は、現在の操舵速度v1に対応するボトム値B(v1)を決定し、一定の変更速度FVでボトム値B(v1)に向けて付加減速度が負の方向に増大するように付加減速度の波形を設定する。そして、姿勢制御部102は、現在の付加減速度がボトム値B(v1)に到達していなければ、変更速度FVに演算周期Δtを乗じることで付加減速度の負の方向への増大量を算出し、その増大量を現在の付加減速度に負の方向に加えた値を、今回の付加減速度として設定すればよい。
また、S6において、姿勢制御部102は、現在の付加減速度がボトム値B(v1)に到達していれば、操舵速度の減少が開始されるまで、付加減速度をボトム値Bに維持する。これにより、付加減速度は変更速度FVにしたがってボトム値B(v1)まで減少されることになる。
一方、図6のS8では、エンジン制御部103は、S6で設定されたボトム値B(v1)に配分比に応じた補正係数βを乗じたボトム値B’(v1)を算出し、一定の変更速度FVでボトム値B’(v1)に向けて負の方向に増大するようにS6で設定された付加減速度の波形を変更する。そして、エンジン制御部103は、現在の付加減速度がボトム値B’(v1)に到達していなければ、変更速度FVに演算周期Δtを乗じることで付加減速度の負の方向への増大量を算出し、その増大量を現在の付加減速度に負の方向に加えた値を、今回の付加減速度として設定すればよい。これにより、付加減速度は変更速度FVにしたがってボトム値B’(v1)まで減少されることになる。
また、エンジン制御部103は現在の付加減速度がボトム値B’(v1)に到達していれば、以降、配分比に応じた変更速度FV2で付加減速度を負の方向に増大させていけばよい。
このように、本実施の形態によれば、前輪12Fと後輪12Rとに対するトルクの配分比の変更中において、車両姿勢の制御が実行された場合、配分比が増大するにつれてトルク低下量が負の方向に増大する度合いが増大される。そのため、例えば、後輪12Rへのトルクの配分比が増大されるシーンにおいて、車両姿勢制御を実施したとしても、前輪12Fへの荷重が不足して狙い通りの車両姿勢制御が実施できず、車両姿勢が不安定になる事態を抑制できる。また、例えば、前輪12Fへのトルクの配分比が増大されるシーンにおいて、車両姿勢制御を実施したとしても、前輪12Fへの荷重が過大になって狙い通りの車両姿勢制御が実施できず、車両姿勢が不安定になる事態を抑制できる。
(変形例)
(1)図6のS7において、エンジン制御部103は、配分制御部101による配分比の変更量の絶対値が閾値Th2以上である場合、S7でNOと判定し、配分比に応じて付加減速度を変更する処理を実行してもよい(S8)。一方、エンジン制御部103は、配分比の変更量の絶対値が閾値Th2よりも小さい場合、S7でYESと判定し、付加減速度を変更する処理を実行することなく、処理をS9に進めてもよい。
ここで、配分比の変更量とは、例えば、直前に設定した配分比と今回設定した配分比との差分、すなわち、直前に設定したトルク伝達容量と今回設定したトルク伝達容量との差分が該当する。閾値Th2としては、例えば、車両姿勢制御に対して影響を与えないほど配分比の変更量が小さいことを示す予め定められた値が採用される。ここで、配分比の変更量の絶対値に代えて、配分比の変更速度の絶対値が採用されてもよい。ここで、配分比の変更速度とは、直前に設定した配分比と今回設定した配分比との差分を演算周期で除した値を指す。この場合、閾値Th2’としては、例えば、車両姿勢制御に対して影響を与えないほど配分比の変更速度が小さいことを示す予め定められた値が採用される。
(2)上記実施の形態では、操舵速度が操舵角関連情報として採用されたが、本発明はこれに限定されず、ヨーレート又は横方向の加速度(横G)が操舵角関連情報として採用されてもよい。この場合、四輪駆動車1は、ヨーレートセンサ又は加速度センサを備えればよい。
(3)上記実施の形態では、車両姿勢制御はエンジン14を制御することで実現されているが、本発明はこれに限定されず、特許文献1と同様、電動モータの回生電力を用いて実現されてもよい。
1 四輪駆動車
10 制御装置
12F 前輪
12R 後輪
14 エンジン
16 トランスミッション
18 車軸
20 前輪用デフ
22 トランスファ
24 車軸
26 後輪用デフ
28 カップリング
30 駆動力伝達軸
36 前輪速センサ
38 後輪速センサ
40 ステアリング
41 操舵角センサ
42 アクセル開度センサ
43 車輪速センサ
44 スロットル弁
45 点火プラグ
46 可変動弁機構
47 燃料噴射装置
100 コントローラ
101 配分制御部
102 姿勢制御部
103 エンジン制御部

Claims (5)

  1. 駆動源と、駆動輪と、補助駆動輪と、前記駆動源で生成された駆動力を、前記駆動輪と前記補助駆動輪とに配分する駆動力配分機構とを備える四輪駆動車の制御装置であって、
    前記駆動輪は前輪であり、
    前記補助駆動輪は後輪であり、
    前記駆動力配分機構を制御することで、前記駆動輪と前記補助駆動輪との前記駆動力の配分を制御する配分制御部と、
    操舵装置の操舵角に関連する操舵角関連値が増大したときに、前記駆動源で生成された駆動力を低下させることにより車両に減速度を発生させて車両姿勢を制御する姿勢制御部と、
    前記配分制御部により設定された前記補助駆動輪への駆動力の配分が第1値の場合、前記第1値より前記補助駆動輪への駆動力の配分が小さい第2値が設定された場合に比べて、前記姿勢制御部により低下される前記駆動力の低下の度合いを大きくする駆動力変更部とを備える四輪駆動車の制御装置。
  2. 請求項記載の四輪駆動車の制御装置であって、
    前記駆動力変更部は、前記姿勢制御部による車両姿勢の制御中に、前記配分制御部により前記駆動力の配分が変更された場合、前記変更された配分に基づいて前記駆動力の低下の度合いを変更する四輪駆動車の制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載の四輪駆動車の制御装置であって、
    前記駆動力変更部は、前記配分制御部による前記配分の変更量及び変更速度のうち少なくとも1つが所定値以上であるときに前記駆動力の低下の度合いの変更を実施する四輪駆動車の制御装置。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の四輪駆動車の制御装置であって、
    前記操舵装置は車両乗員により操作されるステアリングを含み、
    前記姿勢制御部は、前記ステアリングの切り込み操作時に前記車両姿勢の制御を実施する四輪駆動車の制御装置。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の四輪駆動車の制御装置であって、
    前記操舵角関連値は、操舵装置の操舵速度である四輪駆動車の制御装置。
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