以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態に係る施錠装置20は、業務用の冷蔵庫1に設けられている。冷蔵庫1は、例えば、組立式プレハブ冷蔵庫、冷凍庫、保管庫あるいは保冷庫およびプレハブ式クリーンルーム等である。なお、以下の説明では、図1に示す冷蔵庫1の正面を基準として、図1の左右方向、並びに各図の対応する方向を左右方向とし、図1の上下方向、並びに各図の対応する方向を上下方向とする。
冷蔵庫1は、前壁1aと、前壁1aに固定されるハンガーレール2と、ハンガーレール2に吊り下げられるスライド扉4と、スライド扉4の上側を押さえ込んで位置合わせする上部押さえ込み機構5と、スライド扉4の下側を押さえ込んで位置合わせする下部押さえ込み機構6とを備えている。
前壁1aには、出入口となる庫口3が形成されている。庫口3は、前壁1aの枠材15によって、矩形状に縁取られている。この枠材15を含む前壁1aは、庫口3を形成する壁面の一例である。なお、壁面は、前壁1aに限らず、側壁であってもよく、後壁であってもよい。
ハンガーレール2は、庫口3の上縁に沿って水平に延び、スライド扉4を左右にスライド可能にガイドしている。ハンガーレール2は、長手方向に配設された複数のL字状の取付金具10で前壁1aに固定されている。図2に示すように、ハンガーレール2は、中央部分から屈曲している。この中央部分からハンガーレール2の左半分は、傾斜部分2aを構成している。傾斜部分2aは、左側(スライド扉4が庫口3を閉じる方向における下流側)に向かうにつれて前壁1aに近接する方向に傾斜している。また、中央部分からハンガーレール2の右半分は、平行部分2bを構成している。平行部分2bは、全長にわたって、前壁1aと平行に延びている。
スライド扉4は、庫口3を開閉するために設けられ、扉吊り具8、9を介して、ハンガーレール2に吊り下げられている。扉吊り具8、9は、スライド扉4の幅方向両側に配置され、スライド扉4の上面にそれぞれ固定されている。公知の装置と同様に、吊り具8、9は、ハンガーレール2の長手方向に案内されて往復移動する。この往復移動により、スライド扉4は、庫口3を閉じる閉じ位置と、庫口3を開放する開放位置との間で移動することができる。図1は、スライド扉4が開放位置にある状態を示している。また、スライド扉4の背面には、シール部材16が取り付けられている。
図9を参照して、シール部材16は、断面が概ね円筒形になった中空の弾性部材(例えば、ゴム製品)である。シール部材16は、スライド扉4の輪郭に沿って、固定されている。庫口3をスライド扉4が閉じた時、シール部材16は、庫口3の枠材15の前面に圧接される。これにより、シール部材16は、スライド扉4が庫口3を閉じる位置にあるときに、庫口3とスライド扉4との間で圧縮される。圧縮されたシール部材16は、その反力によって、枠材15を押し付ける。これにより、シール部材16は、庫口3とスライド扉4との間の隙間をシールし、気密性を保持する。
自由状態におけるシール部材16の直径Fdや、シール部材16が圧縮されたときの撓み量pは、冷蔵庫1の仕様または規格(最初に設定される前壁1aとスライド扉4との間の対向間隔Dや、必要な気密性能等)に基づき、シール部材16の材質、シール部材16が圧縮されるときにシール部材16が枠材15を押し付けるときの面積や押し付け力等々、スライド扉4を閉じたときにシール性を確保する上で必要な条件を勘案して適宜決定される。
ところで、経時劣化により、シール部材16が塑性変形を来すと、シール部材16の直径Fdは、漸減し、それに伴って、撓み量pも低下する。撓み量pが低下すると、シール部材16が枠材15と当接する面積が低減し、シール部材16が枠材15を押し付けるときの押し付け力も低くなってシール性が低下する。シール部材16の劣化が大きくなると、シール部材16の交換が必要になるが、交換は必ずしも容易ではなく、また、構造上、シール部材16の交換ができない場合もある。一方、シール部材16の劣化の程度が小さい場合には、対向間隔Dを狭くすることによって、シール性を担保し、シール部材16を長期にわたって使用することができる。そこで、本実施形態においては、シール部材16が塑性変形を来している場合において、シール部材16の劣化が所定の範囲であると判断されるときは、後述するように上記対向間隔Dを変更することによって、塑性変形に伴う撓み量pの低減量を補い、シール性を確保する対策が講じられる。なお、シール部材16の劣化の程度は、シール部材16の変形度合(変形した寸法)や、対向間隔Dとの兼ね合いで決定される。
上部押さえ込み機構5は、スライド扉4の上部を押さえ込んで、スライド扉4と前壁1aとの間の気密性を高めるために設けられている。上部押さえ込み機構5は、スライド扉4に取り付けられた上ローラ11と、前壁1aに取り付けられた上部ガイドユニット12とを備えている。上ローラ11は、スライド扉4の幅方向中間部分において、スライド扉4の上端部に取り付けられている。上ローラ11は、鉛直軸回りに回転可能に取り付けられている。また、ガイドユニット12は、庫口3の幅方向中間部分において、庫口3の上縁近傍に取り付けられている。庫口3をスライド扉4で閉じるときに、上ローラ11は、上部ガイドユニット12の傾斜面に転がり接触し、上ローラ11を介してスライド扉4を前壁1a側へ接近させる機能を有する。
下部押さえ込み機構6は、スライド扉4の下部を押さえ込んで、スライド扉4と前壁1aとの間の気密性を高めるために設けられている。下部押さえ込み機構6は、床面に突設された下ローラ13と、一対の下部ガイドユニット14とを備えている。下ローラ13は、床面に鉛直線回りに回動可能に突設され、庫口3をスライド扉4が閉じているときにおいて、スライド扉4の前面の幅方向両側に対向する位置に配置されている。一対の下部ガイドユニット14は、スライド扉4の前面の上記幅方向両側に取り付けられている。庫口3をスライド扉4で閉じるときに、下ローラ13は、下部ガイドユニット14の傾斜面に転がり接触し、下ローラ13を介してスライド扉4を前壁1a側へ接近させる機能を有する。
なお、本実施形態においては、送りねじ機構等を用いることにより、L字状の取付金具10を前壁1aに取り付ける位置や、上部押さえ込み機構5および下部押さえ込み機構6を所定長さ(例えば、10mm)調整することができるようになっている。
これら取付金具10の取付位置や、上部押さえ込み機構5および下部押さえ込み機構6を調整することにより、庫口3をスライド扉4が閉じたときにおける、前壁1aとスライド扉4との間の前後の対向間隔Dを調整することができる。これにより、本実施形態では、庫口3をスライド扉4が閉じた場合に、庫口3の枠材15の前面にシール部材16が当接する位置を調整することができるので、経時劣化によって、シール部材16に塑性変形が生じ、シール部材16の撓み量pが変化したときでも、庫口3とスライド扉4との間の対向間隔D(図12参照)を確実にシールし、気密性を保持することが可能となる。
対向間隔Dを変更するために設定される調整値dは、冷蔵庫1の仕様または規格と、スライド扉4を閉じたときのシール性を確保する上で必要な諸条件と、シール部材16の仕様(例えば、シール部材16の直径や、塑性変形後のシール部材16の反力(シール部材16が圧縮されたときに枠材15を押し付けるときの押し付け力)の変化等)とに基づき、適宜決定される。
なお、冷蔵庫1の仕様または規格と、スライド扉4を閉じたときのシール性を確保する上で必要な諸条件とが確定されている場合において、シール部材16の材質と自由状態でのシール部材16の直径Fdとが決定されているときには、調整値dの最大寸法は、シール部材16の直径Fdに対する比率で決定することが可能になる。
次に、庫口3を閉じるスライド扉4を施錠する施錠装置20について、詳述する。
図1および図3を参照して、本実施形態に係る施錠装置20は、受けユニット40と、ロックユニット80とを備えている。受けユニット40は、スライド扉4の閉方向端面に固定されている。なお、ここで、「閉方向」とは、庫口3をスライド扉4が閉じる方向に移動するときの移動方向をいう(以下、上記移動方向を適宜「閉方向」ともいう。)。また、ロックユニット80は、前壁1aに固定されている。ロックユニット80が固定される位置は、上記閉方向において、枠材15の鉛直部分よりも下流側(図3における枠材15の左側)である。スライド扉4が庫口3を閉じると、図3に示すように、受けユニット40とロックユニット80とが左右方向に対向する。受けユニット40とロックユニット80とは、枠材15の鉛直部分を横切って、後述する機構により連結される。次にこれらのユニット40、80について詳述する。
まず、図4、図5、および図6を参照して、受けユニット40は、筐体41と、筐体41に保持される受け部材42と、筐体41と協働して受け部材42を保持する軸押さえ部材43と、筐体41に取り付けられて、筐体41に保持された受け部材42を付勢するばね部材44と、筐体41の外周を覆うカバー45と、筐体41をスライド扉4の閉方向端面に固定するねじ部材48とを備えている。
筐体41は、側面視長方形であり、受け部材42を収容するための空間(収容室41fおよびばね室41i)を有する金属製の構造体である。筐体41の長辺は、上下方向に沿って配置されている。筐体41の短辺は、前後方向に沿って配置される。筐体41の左右の厚みは、受け部材42を収容するために必要充分な寸法に設定されている。筐体41の後ろ側には、上下方向に沿って長く延びる長方形に開口する挿通孔41aが形成されている。挿通孔41aは、上記空間(収容室41fおよびばね室41i)と連通し、且つ受け部材42の一部を挿通させて、受け部材42を筐体41に組み付けるためのものである。挿通孔41a内の上下両側には、段部41qがそれぞれ形成されている。段部41qは、後述する軸押さえ部材43の板厚分だけ挿通孔41aの内奥側に窪んでいる。また、この段部41qには、それぞれ軸溝41b(図4に上内面の軸溝41bのみ図示)が形成され、挿通孔41aと連続している。軸溝41bは、後述するように、受け部材42を挿通孔41aに挿通させた際、受け部材42の軸部42aを支持する軸受部分を構成する部位である。筐体41の後ろ側には、一対の装着凹部41cが挿通孔41aと連続して形成されている。各装着凹部41cは、挿通孔41aの前端側の開口縁を後端とする四角形の輪郭を有し、筐体41の右側面の上下部分において後述する軸押さえ部材43の板厚分だけ窪んでいる。さらに、各装着凹部41cの中央部には、右側に突出する突起41eが一体形成されている。突起41eは、円形断面の軸形状に形成されている。
図5および図6を参照して、筐体41の左側面中央部分には、上記空間の一部として、後述する受け部材42のフック受け42bを収容する収容室41fが形成されている。収容室41fは、左側面視上下方向に長く延びる長方形に形成されている。収容室41fを形成する筐体41の側壁面には、前後に延びる長孔41gが上下二箇所形成されている。長孔41gは、筐体41をスライド扉4の端面4aに固定するためのねじ部材48(図9、図10、図12参照)を挿通するための挿通孔である。ここで、本実施形態に係るスライド扉4は、庫口3を閉じているときの前壁1aとの間のシール性を担保するため、前壁1aとの対向間隔Dが調整されるものである(図12参照)。詳しくは後述するように、このときの調整値dに対応して筐体41の取付位置を変更するため、各長孔41gの長手方向(前後方向)の寸法EL(図5参照)は、対向間隔Dを変更するために設定される調整値dの最大寸法よりも相当長く(例えば、ねじ部材48の直径の3−4倍程度。或いは、調整値dの最大寸法の2倍以上であってもよい。)前後方向に延びている。なお、調整値dの最大寸法は、上述のように、所定の条件下で、シール部材16の直径Fdと関連づけて決定することが可能になる。従って、各長孔41gの長手方向の寸法ELは、上記所定の条件下で、シール部材16の直径Fdと関連づけて決定されていることが好ましい。その場合には、個々のシール部材16の仕様に応じて好適な長さに各長孔41gの長手方向(前後方向)の寸法を設定し、施錠装置20の設計の自由度を高めることが可能となる。
本実施形態において、長孔41gの中心は、筐体41を前後に二分する中心線よりも僅かに前方にずれている。また、組付時において、長孔41gの前端側に後述するねじ部材48の初期の取付位置が設定されるように、筐体41とロックユニット80のフック部材83との相対的な位置が決定されている。そのため、長孔41gは、必要充分な長さで上記調整値dの最大寸法を吸収することが可能となっている。
収容室41fを形成する筐体41の側壁面のうち、上側の長孔41gを上下に分割するラインから上側の部位と、下側の長孔41gを上下に分割するラインから下側の部位とには、ローレット部41hがそれぞれ形成されている。ローレット部41hは、ローレット加工により、表面に微細な起伏を有する部位である。ローレット部41hの起伏形状は、周知の通り、種々の態様を取ることが可能であるが、本実施形態では、上下方向(すなわち、長孔41gの長手方向と直交する方向)に沿って延びる多数の線状の稜線を形成するように起伏した形状を呈している。上述のように、ローレット部41hは、長孔41gの周縁の筐体41部分の全域に設けている必要はなく、その一部の領域であってもよい。特にローレット加工が施される部位を本実施形態のように一部の領域に設定した場合には、外観上、ローレット部41hが露出せず、美感が向上する。尤も、美感やコスト上の問題がなければ、ローレット部41hは、筐体41の上記側壁面において、長孔41gの周縁全域に設けていてもよい。
装着時において、ねじ部材48を長孔41gに挿通することにより、ローレット部41hは、ねじ部材48の座面48aと対向する。また、ねじ部材48に図略のワッシャを挿通させている場合、ローレット部41hは、このワッシャの座面と対向する。従って、ねじ部材48の座面48a、または図略のワッシャの座面は、装着時において、ローレット部41hを圧壊する。そのため、本実施形態では、ローレット部41hが上下方向に沿う線状の稜線を形成する起伏であることと相俟って、筐体41の前後方向の移動を堅固に規制する。さらに、収容室41fの上下両側には、仕切り壁41nを介して、ばね室41iが形成されている。ばね室41iは、板ばね状に形成されたばね部材44を収容する室である。各ばね室41iは、側面でみて、前後に長く延びる長方形に形成されている。ばね部材44は、その長手方向が筐体41の前後に沿って配置され、基端側がビス46によってばね室41iに片持ち状に固定される板ばねである。ばね室41iの前方には、上記ビス46が螺合するねじ孔41jが形成されている。なお、図示の例では、ビス46とばね部材44との間に矩形のばね押さえ47が介装される。
図6に示すように、収容室41fと各ばね室41iとは、上下に配設されて前後に延びる一対の仕切り壁41nによって上下に区切られている。各仕切り壁41nの右側面には、挿通孔41aに臨む軸受部41pが形成されている。軸受部41pは、半円形状に窪み、筐体41に組み付けられた受け部材42の軸部42aが軸溝41bに軸支された際、軸溝41bとともに、軸部42aを支持する軸受として機能する。
上述のような筐体41の材質や、加工方法は、強度等を考慮して適宜選択できる。本実施形態では、耐久性、耐蝕性の観点から、筐体41は、ダイカスト製品であることが好ましい。この場合において、上記ダイカスト製品の材質としては、例えば、アルミニウム合金が好ましい。また、強度とともに、肉薄で精密な精度を得るため、上記ダイカスト製品の材質は、亜鉛合金が特に好ましい。
次に、図4および図7(A)(B)を参照して、受け部材42について説明する。なお、図7(A)(B)は、理解を容易にするため、筐体41の仕切り壁41nを省略して、収容室41fとばね室41iとが連通させた状態に図示している。
受け部材42は、上下に配置される軸部42aと、軸部42aと一体化されたフック受け42bとを備えている。軸部42aは、筐体41の右側から筐体41の挿通孔41aに対し、上下に沿って装着されることにより、軸部42aの両端部は、挿通孔41aと連続する軸溝41bに軸支される。
フック受け42bは、後述するフック部材83と係合することにより、施錠構造を構成する略長方形のフレーム状部位である。フック受け42bは、矩形の係止孔42cを形成している(図11(A)(C)参照)。フック受け42bの一方の長辺が、軸部42aの長手方向に沿って軸部42aと一体化されることにより、フック受け42bは、軸部42aに片持ち状に形成されている。
組付時において、フック受け42bは、図4に示すように、筐体41の右側から筐体41の挿通孔41aに対し、先端側から挿入される。これにより、軸部42aの両端部が、それぞれ軸溝41bに嵌入し、軸支される。フック受け42bの上下寸法は、筐体41の仕切り壁41nによって規定される収容室41fの上下寸法内に収まる長さに設定されている。
受け部材42は、軸部42aが筐体41の軸溝41bおよび軸受部41pに軸支された状態で、筐体41に組み付けられる。受け部材42は、ロック姿勢(図7(A)、図8(A))と退避姿勢(図7(B)、図8(B))との間で変位する。ロック姿勢において、フック受け42bは、筐体41から概ね90°以上傾斜して突出し、受け部材42の組付時においては、前壁1aに略沿った姿勢となる。これにより、後述するフック部材83は、フック姿勢にある受けユニット40と係合することができる(図10、図11(A)〜(C)参照)。よって、従来のようなチェーンや南京錠を用いた構造に比べて、操作性の高い施錠構造を提供することができる。一方、退避姿勢において、フック受け42bは、筐体41の収容室41f内に収容される。これにより、受けユニット40は、コンパクトに収まり、スライド扉4の美感が向上する。また、庫口3を通行する際に、受け部材42がじゃまになる恐れもない。ロック姿勢と退避姿勢との間のストロークは、筐体41によって規定される。
受け部材42が筐体41に組み付けられ、軸部42aが筐体41の軸溝41bおよび軸受部41pに軸支された状態において、軸部42aのうち、各ばね室41iに臨む部位には、当該ばね室41i内で軸部42aとともに回動するスリーブ部42dがそれぞれ形成されている。スリーブ部42dは、軸部42aよりも径方向に膨出し、且つ軸部42aと同心に形成されている。
図8(A)(B)を参照して、スリーブ部42dには、ばね部材44から力を受けるカム面42eが形成されている。カム面42eは、スリーブ部42dの一部を切り欠いて、別の部分を軸部42aの回転中心O回りに沿うリブ状に隆起させることにより、当該リブ状部位の外周面によって構成されている。カム面42eは、ロック姿勢と退避姿勢との間の全ストロークにおいて、ばね部材44の付勢力を受けることができる部位に形成されている。
カム面42eを形成する上記リブ状部位の周方向一端部は、第1の受圧部42fを構成している。この第1の受圧部42fは、受け部材42がロック姿勢にあるときに、軸部42aの回転中心Oを前後に二分する分割線Lよりも後方でばね部材44の付勢力F1を受ける。この結果、第1の受圧部42fは、図8(A)に示すように、受け部材42をロック姿勢に付勢する方向(図8(A)の方向からみて、軸部42aの時計回り方向)の力F1をばね部材44から受けることになる。そのため、受け部材42は、ロック姿勢に付勢され、筐体41によって規定されるストロークにおいて、ロック姿勢側の終端に保持される。
一方、カム面42eを形成する上記リブ状部位の周方向他端部は、第2の受圧部42gを構成している。この第2の受圧部42gは、受け部材42が退避姿勢にあるときに、上記分割線Lよりも前方でばね部材44の付勢力F2を受ける。この結果、第2の受圧部42gは、図8(B)に示すように、受け部材42を退避姿勢に付勢する方向(図8(B)の方向からみて、軸部42aの反時計回り方向)の力F2をばね部材44から受けることになる。そのため、受け部材42は、退避姿勢に付勢され、筐体41によって規定されるストロークにおいて、退避姿勢側の終端に保持される。
上述のような受け部材42の材質や、加工方法は、強度等を考慮して適宜選択できる。本実施形態では、耐久性、耐蝕性の観点から、受け部材42は、ダイカスト製品であることが好ましい。この場合において、上記ダイカスト製品の材質としては、例えば、アルミニウム合金が好ましい。また、強度とともに、肉薄で精密な精度を得るため、上記ダイカスト製品の材質は、亜鉛合金が特に好ましい。
軸押さえ部材43は、組付時において、筐体41に固定され、受け部材42を筐体41とともに支持する部材である。軸押さえ部材43は、筐体41の側面からみて、挿通孔41aおよび装着凹部41cの輪郭を縁取った概ね「凹」の字形の外観を呈する板状の部材である。軸押さえ部材43は、装着凹部41cに対応する一対の取付片43aと、挿通孔41aに対応する軸受部43bとを一体に有する。各取付片43aは、筐体41の装着凹部41cの輪郭に適合する四角形の輪郭を有している。また、各取付片43aは、装着凹部41cに突設された突起41eの挿通孔43cを形成している。さらに、軸受部43bは、筐体41の挿通孔41aの輪郭に適合して、挿通孔41aおよびその内奥側に形成された軸溝41bを塞ぐ長方形の輪郭を有している。また、組付時において、軸受部43bが受け部材42のスリーブ部42dに対向する部位には、当該スリーブ部42dと摺接する軸受面が形成されている。受け部材42を筐体41に組み付けた後、筐体41の右側から軸押さえ部材43を組み付けることにより、一対の取付片43aが装着凹部41cに嵌入し、軸受部43bが挿通孔41aに嵌入する。これにより、図7(A)(B)に示すように、軸押さえ部材43の右側面は、筐体41の右側面と面一に組み付けられる。また、軸受部43bは、受け部材42のスリーブ部42dの外周面を受け、軸受部材として機能する。さらに、装着凹部41cの突起41eは、組付後にプレス加工等により、圧壊される。図示の例において、各取付片43aの挿通孔43cは、右側面側がテーパ状に面取りされている。そのため、圧壊した突起41eの端部は、挿通孔43cの面取り部分に拡がり、軸押さえ部材43を止定する。
図7(A)(B)および図8(A)(B)を参照して、軸押さえ部材43の左側面には、軸部42aおよびスリーブ部42dの周面を受ける円弧面が形成されている。円弧面は、軸溝41bと協働して、軸部42aを軸支する軸受を構成する。
上述のような軸押さえ部材43の材質や、加工方法は、強度等を考慮して適宜選択できる。本実施形態では、耐久性、耐蝕性の観点から、軸押さえ部材43は、ダイカスト製品であることが好ましい。この場合において、上記ダイカスト製品の材質としては、例えば、アルミニウム合金が好ましい。また、強度とともに、肉薄で精密な精度を得るため、上記ダイカスト製品の材質は、亜鉛合金が特に好ましい。
図4および図7(A)(B)を参照して、ばね部材44は、ばね室41iごとにひとつずつ配設される板ばねである。ばね部材44の先端部は、受け部材42のスリーブ部42dのカム面42eをロック姿勢および退避姿勢のそれぞれの姿勢において付勢する。
次に、図4および図7(A)(B)を参照して、カバー45は、側板部45aと、周壁部45bと有し、筐体41を左側から覆う側面視長方形の外殻部材である。カバー45は、開口45cを形成している。開口45cは、中央部分が左右を開放するように大きく開くとともに後部側も開いている。また、開口45cの上下寸法は、筐体41の収容室41fのみを開く寸法に設定されている。このため、受け部材42は、開口45cを介して、筐体41の外側に突出することができるように構成されている。
カバー45の側板部45aは、筐体41の側面を覆う板状の部位である。
カバー45の周壁部45bは、側板部45aの周縁部から延設され、筐体41の外周面を覆う部位である。周壁部45bの適所には、複数の係止爪45e、45fが形成されている。一方、筐体41の外周部には、各係止爪45e、45fを係止させる溝41k、41mが形成されている。そして、図4に示すように、筐体41の左側面から、カバー45を嵌め合わすことにより、各係止爪45e、45fが溝41k、41mの周縁部に係止し、カバー45は、筐体41と一体化される。
上述のようなカバー45の材質や、加工方法は、強度等を考慮して適宜選択できる。本実施形態では、耐久性、耐蝕性の観点から、カバー45は、ダイカスト製品であることが好ましい。この場合において、上記ダイカスト製品の材質としては、例えば、アルミニウム合金が好ましい。また、強度とともに、肉薄で精密な精度を得るため、上記ダイカスト製品の材質は、亜鉛合金が特に好ましい。
次に、ロックユニット80について説明する。ロックユニット80は、受けユニット40と協働して、スライド扉4の施錠構造を構成する。かかる機能を奏するため、ロックユニット80は、受けユニット40と同じ高さにおいて、前壁1aに固定されている。
図3、図9、図10を参照して、ロックユニット80は、ベース部材81と、支承部材82と、フック部材83と、キーユニット84と、カバー85とを備えている金属製部材である。
ベース部材81は、スライド扉4の閉方向において、枠材15の鉛直部分よりも下流側(図3における枠材15の左側)に配置され、この位置で枠材15と当接している。ベース部材81は、取付部材としてのボルト86によって、前壁1aに固定されている。ボルト86は、前壁1aの裏面側、すなわち、冷蔵庫1の内側から前壁1aを貫通して前方に延び、ベース部材81のねじ部81aに螺合している。また、ボルト86の基部には、取っ手86aが固定されている。作業者は、この取っ手86aを把持してボルト86を回動し、ベース部材81からボルト86を螺脱させ、後方に引き抜くことができる。このため、ベース部材81は、冷蔵庫1の内側から取り外すことが可能になっている。なお、本実施形態において、ベース部材81は、枠材15の側面に当接した状態で前壁1aに固定される。そのため、ボルト86が一本のみであっても、ボルト86の回動時にベース部材81が連れ回りする恐れはない。
上述のようなベース部材81の材質や、加工方法は、強度等を考慮して適宜選択できる。本実施形態では、耐久性、耐蝕性の観点から、ベース部材81は、ダイカスト製品であることが好ましい。この場合において、上記ダイカスト製品の材質としては、例えば、アルミニウム合金が好ましい。また、強度とともに、肉薄で精密な精度を得るため、上記ダイカスト製品の材質は、亜鉛合金が特に好ましい。
支承部材82は、ベース部材81の前部に固定され、ベース部材81から前方に突出してベース部材81とともにフック部材83やキーユニット84を保持する構造体である。まず、フック部材83を支持するため、支承部材82には、シャフト87が取り付けられる。シャフト87は、鉛直軸に沿って支承部材82に固定され、フック部材83を鉛直線回りに軸支している。
図3、図9、図10、および図11(A)〜(C)を参照して、フック部材83は、シャフト87に軸支されるボス部83aと、このボス部83aの一接線方向に沿って突出する鉤部83bと、ボス部83aから、前記鉤部83bと所定の角度を有する別の接線方向に沿って突出する連結部83cとが一体化された金属製部材である。図3および図10に示すように、フック部材83は、スライド扉4を閉じている状態において、ボス部83aをシャフト87回りに回動させることにより、鉤部83bの先端側をロック姿勢にある受け部材42に近接する方向(図9、図10において、反時計回り方向)に回動させ、受け部材42のフック受け42bに鉤部83bを係止させることができるように構成されている。
上述のようなフック部材83の材質や、加工方法は、強度等を考慮して適宜選択できる。本実施形態では、耐久性、耐蝕性の観点から、フック部材83は、ダイカスト製品であることが好ましい。この場合において、上記ダイカスト製品の材質としては、例えば、アルミニウム合金が好ましい。また、強度とともに、肉薄で精密な精度を得るため、上記ダイカスト製品の材質は、亜鉛合金が特に好ましい。
ボス部83aは、シャフト87によって鉛直線回りに軸支される部位である。鉤部83bは、ボス部83aに対し、片持ち状に設けられた腕部83dと、この腕部83dの先端部分に形成された爪部83eとが一体に形成された部位である。腕部83dは、ボス部83aの一接線方向に沿っている。ボス部83aがシャフト87回りに回動すると、腕部83dもまた、ボス部83aと一体的に回動する。腕部83dが回動する範囲は、後述する連結部83cとキーユニット84によって規定される範囲(例えば、略10°)に設定されている。腕部83dの回動範囲内で鉤部83bの先端側がロック姿勢にある受け部材42に近接する回動方向において、爪部83eは、腕部83dの先端部から上記回動方向の下流側に向かって突出している。爪部83eの平面形状(図11(B)参照)は、上記回動方向の下流側に行くにつれて先端が細くなる方向に傾斜している。また、爪部83eの外側面(腕部83dの先端側に向く面)には、水平軸回りの円弧に沿う円弧面83f(図11(A)(C)参照)が形成されている。さらに、爪部83eの内側面(腕部83dのボス部83a側に向く面)には、腕部83dと概ね直角に屈曲する係止面83gが形成されている。
連結部83cは、ボス部83aを挟んだ腕部83dの反対側において、ボス部83aから水平に片持ち状に突出する部位である。連結部83cが組付時にベース部材81と対向する部位には、スプリングシート83hが形成されている。ベース部材81には、スプリングシート83hに対向するスプリングシート81bが形成されている。このスプリングシート81bと、連結部83cのスプリングシート83hとの間には、圧縮コイルばね88が介装される。コイルばね88は、鉤部83bの爪部83eがロック姿勢にある受け部材42に近接する方向(図9および図10において、反時計回り方向)にフック部材83を付勢する。また、連結部83cが組付時にベース部材81と反対側に向く部位には、キーユニット84からの力を受けるためのカム面83iが形成されている。カム面83iは、組付時において、キーユニット84のカム部材90と係合し、カム部材90から力を受けることにより、シャフト87を支点としてフック部材83全体をシャフト87回りに回動させる力点として機能する。カム面83iの形状は、キーユニット84との兼ね合いで種々の形状が考えられるが、本実施形態におけるカム面83iは、後述するキーユニット84のカム面90aの形状に適合するように、腕部83dの長手方向に対し、シャフト87回りに所定の角度をもって傾斜している。
キーユニット84は、フック部材83のカム面83iに係合するカム部材90と、カム部材90を支持するキーシリンダ91とを有している。カム部材90は、全体が円形断面であり、一方の端部が傾斜した斜切円柱形状を呈している。カム部材90の斜めになった端部は、フック部材83のカム面83iに常時当接するカム面90aを形成している。
キーシリンダ91は、カム部材90を保持する内筒と、この内筒を回動可能に支持する外筒とを有し、内筒の先端部に形成されたキー溝内に図略のキーを挿入して回動操作することにより、外部からカム部材90を中心線回りに回動操作するための公知のユニットである。カム部材90は、上記回動操作によって、カム面90aがフック部材83のカム面83iを後方へ押し込むロック解除姿勢(図9の姿勢)と、フック部材83のカム面83iと概ね平行に沿って、カム面83iへの押し込みを解除するロック姿勢(図10の姿勢)との間で回動する。
カム面90aがロック解除姿勢にあるとき、フック部材83の連結部83cは、圧縮コイルばね88の付勢力に抗して後方に押し込まれている。このため、鉤部83bの爪部83eは、図9に示すように、受け部材42から離反する方向に回動した離脱姿勢を取る。この図9に示す離脱姿勢においては、ロック姿勢にある受け部材42の係止孔42cから爪部83eが離脱し、スライド扉4の施錠が解除される。
一方、カム面90aがロック姿勢にあるとき、フック部材83は、圧縮コイルばね88の付勢力によって、係合姿勢を取る。この係合姿勢では、鉤部83bの爪部83eが図10に示すように、受け部材42に近接する方向に回動している。そのため、受け部材42が予めロック姿勢にある場合において、スライド扉4が庫口3を閉じているときは、受け部材42の係止孔42c内に爪部83eが入り込み、フック部材83が受け部材42と係合されてスライド扉4を施錠することができる。
カバー85は、ロックユニット80の外殻を構成する金属製の構造体である。カバー85は、前部にキーユニット84のキーシリンダ91を堅固に保持するスリーブ82aを有している。また、図示の例において、カバー85は、ベース部材81に対し、着脱可能に組み付けられている。これにより、種類の異なる複数の仕様のカバー85を同一のベース部材81に取り付け、ベース部材81の汎用性を高めるとともに、種々のニーズに適合したカバー85を選択することが可能になっている。カバー85の右側面には、開口85aが形成されている。開口85aは、受けユニット40の受け部材42を挿抜可能な大きさで開いている。
上述のようなカバー85の材質や、加工方法は、強度等を考慮して適宜選択できる。本実施形態では、耐久性、耐蝕性の観点から、カバー85は、ダイカスト製品であることが好ましい。この場合において、上記ダイカスト製品の材質としては、例えば、アルミニウム合金が好ましい。また、強度とともに、肉薄で精密な精度を得るため、上記ダイカスト製品の材質は、亜鉛合金が特に好ましい。
次に、受けユニット40およびロックユニット80を冷蔵庫1に組み付けた状態について説明する。
図9を参照して、受けユニット40は、スライド扉4の左側の閉方向端面4aに固定される。具体的には、筐体41の各長孔41gに、それぞれねじ部材48を左側面から挿通し、スライド扉4に形成されているねじ穴4bに螺合する。このとき、受けユニット40は、各長孔41gが前後方向に沿うように配置され、ねじ部材48によって固定される。そのため、後述するように、ねじ部材48によって締め付けられる位置を長孔41gの長手方向に沿って変更することにより、筐体41の取付位置を調整することが可能となる。
一方、ロックユニット80は、枠材15の左側に配置され、ボルト86によって、前壁1aの内側から固定される。枠材15は、前方に張り出しているが、カバー85は、平面でみて、この枠材の輪郭に沿って枠材15の前方にせり出している。カバー85の開口は、枠材15の前方で、スライド扉4に向かい開いている。
次に、受けユニット40とロックユニット80の動作について説明する。
施錠する際には、予め受け部材42を図9に示す退避姿勢からロック姿勢に変位させる。上述したように、受けユニット40のカバー45には、開口45cが形成されているので、作業者は、開口45cから受け部材42を把持して回動することにより、容易に受け部材42を退避姿勢からロック姿勢に変位させることができる。
この作業においては、受け部材42が図7(A)(B)、図8(A)(B)に示した分割線Lを越えた時点で、ばね部材44の付勢力が受け部材42を退避姿勢に付勢する方向からロック姿勢に付勢する方向にシフトする。そして、分割線Lを越えた後は、ばね部材44の付勢力によって加勢された状態で、受け部材42の姿勢をロック姿勢に変位させることができる。よって、作業者は、付勢力の切り替わりを感取しつつ、確実に受け部材42の姿勢を変位することができる。
受け部材42をロック姿勢に変位させた後、作業者がスライド扉4を左側に移動し、庫口3を閉じると、図10に示すように、スライド扉4は、後面が枠材15の前方に臨む位置で停止する。この状態では、スライド扉4に固定されたシール部材16が幾分撓んだ状態で枠材15の前方に押し付けられ、スライド扉4と枠材15との間の隙間をシールする。また、受けユニット40の受け部材42は、その先端部がロックユニット80の開口85aに幾分入り込んだ位置で停止する。この状態で、作業者が、ロックユニット80のキーユニット84を図略のキーによって回動操作し、カム部材90を図9のロック解除姿勢から図10のロック姿勢に変位させると、フック部材83は、図9の離脱姿勢から係合姿勢に変位する。この結果、フック部材83の鉤部83bが受け部材42の係止孔42c内に入り込み、フック部材83は、受け部材42と係合する。このフック部材83と受け部材42の係合により、スライド扉4が施錠される。なお、この実施形態では、フック部材83の鉤部83bの自由端部に、円弧状に突出する円弧面83fが形成されており、この円弧面83fは、フック部材83が係合姿勢にあるときに、ロック姿勢にある受け部材42のフック受け42bに対向している。一方、フック受け42bの先端部分は、先端側が突出する円弧状に形成されている。さらにまた、フック部材83は、専ら圧縮コイルばね88の付勢力のみによって、離脱姿勢側から係合姿勢に付勢されており、係合姿勢から離脱姿勢に変位する方向に対しては、カム部材90の規制を受けていない。そのため、フック部材83が係合姿勢にあるときに、ロック姿勢にある受け部材42のフック受け42bが左側(スライド扉4を閉じる方向)に移動し、フック部材83の円弧面83fに当接する、フック受け42bの押し込み力によって、フック部材83が一時的に退避姿勢に変位し、その後、鉤部83bの爪部83eがフック受け42bの先端部分を乗り越えて係止孔42cに係合するように作用する。この結果、ロック時においては、フック部材83をロック姿勢に変位した状態でスライド扉4を閉じるだけで、自動的に施錠することが可能となる。
ところで、仮に作業者等が、冷蔵庫1の庫内に入っているときに、不随意にスライド扉4が施錠されてしまった場合には、ボルト86の取っ手86aを回わし、ボルト86を庫内に引き出すことにより、ロックユニット80を取り外すことができる。図示の通り、フック部材83の爪部83eは、前壁1aの前方に向かって受け部材42に係合している。そのため、ロックユニット80が取り外されたときのロックユニット80の挙動は、そのままフック部材83を受け部材42から離脱させるように機能する。よって、庫内に作業者が閉じこめられた緊急時においても、迅速且つ確実にロック解除を図ることができる。
次に、上述したように、スライド扉4が閉じているとき、シール部材16は、枠材15に押し付けられている。このため、経時劣化により、シール部材16が塑性変形を来たし、シール性が低下する場合がある。そこで、本実施形態では、冷蔵庫1の上部押さえ込み機構5や下部押さえ込み機構6を調整し、スライド扉4が閉じる位置を変更して、シール性を維持することができるように構成されている。
図12を参照して、図12の左側のスライド扉4は、初期に設定された位置に配置されている。この場合には、スライド扉4と前壁1a(厳密には、前壁1aの枠材15)との間の対向間隔(前後方向の間隔)Dは、寸法D1に設定されている。
次に、図12の右側のスライド扉4は、経時劣化に対処するため、上記対向間隔D1よりも調整値dだけ後方に寄せた状態を示している。この結果、対向間隔Dは、寸法D1よりも調整値dだけ短い寸法D2に変更されている。
上述のような場合に、調整値dを吸収し、受けユニット40の位置を初期に設定されていた位置と同じ位置に調整する必要がある。本実施形態では、ねじ部材48と長孔41gとによって、調整値dを吸収できるように構成されている。
図4、図6および図12を参照して、上述したように、長孔41gは、組付時において、冷蔵庫1の前後方向に沿って延びている。このため、図12に示したように、スライド扉4が閉じる位置が調整された場合には、ねじ部材48を一旦緩めて、ねじ部材48が筐体41を止定する位置を長孔41gの長手方向に沿って前後に変更し、その後、ねじ部材48を再度締め付けることにより、調整値dを吸収し、対向間隔Dを調整した後の受けユニット40とロックユニット80の相対的な位置関係を初期に設定されていた位置関係と同じに調整することが可能になる。このように本実施形態では、一対の長孔41gおよびねじ部材48によって、対向間隔Dが調整される場合に調整された対向間隔Dに応じて受け部材42の位置がフック部材83に適合するように受けユニット40の取付位置を調整することが可能になる。
以上説明したように、本実施形態においては、スライド扉4が庫口3を閉じているときに、受け部材42とフック部材83とを係合させることによって、庫口3を閉じたスライド扉4を施錠し、スライド扉4を用いた冷蔵庫1のセキュリティを確保することができる。この受けユニット40とロックユニット80とによって、従来のようなチェーンや南京錠を用いて施錠する場合に比べて、施錠時の操作性が高くなり、外観が向上する。受けユニット40は、しかも、シール性担保のため、スライド扉4と前壁1aとの間の対向間隔Dが調整された場合に、調整された対向間隔Dに応じてねじ部材48と長孔41gとの相対的な位置を変更することができ、これによって、受け部材42の位置は、フック部材83に適合することが可能になる。加えて、スライド扉4と前壁1aとの間の対向間隔Dに対応して、フック部材83に対する受けユニット40の位置を調整する操作は、専ら、長孔41gとねじ部材48との相対位置を変更する作業によって実現できる。従って、簡素で実施が容易な機構で受け部材42とフック部材83とが係合する位置を調整することができる。よって、廉価な製品を提供することが可能になる。
また、各長孔41gの長手方向の寸法ELは、冷蔵庫1の仕様または規格と、スライド扉4を閉じたときのシール性を確保する上で必要な諸条件とが確定されている場合において、シール部材16の材質と自由状態でのシール部材16の直径Fdとが決定されているときに、シール部材16の直径Fdと関連づけて決定されていることが好ましい。その場合には、個々のシール部材16の仕様に応じて好適な長さに各長孔41gの長手方向(前後方向)の寸法を設定し、施錠装置20の設計の自由度を高めることが可能となる。
また、本実施形態に係る施錠装置20において、筐体41には、長孔41gを挿通するねじ部材48の頭部に対向し、且つこの対向方向に微細な起伏を有するローレット部41hが、当該長孔41gに沿って形成されている。このため本実施形態では、ねじ部材48を締結するときに、ねじ部材48の座面48a、または座面48aとローレット部41hとの間に介装された図略のワッシャが、微細な起伏を有するローレット部41hを圧壊する。そのため、ねじ部材48と筐体41との摩擦力が高くなる。これにより、ねじ部材48に大きな抵抗力が作用するので、ねじ部材48の滑り止めを図ることが可能になる。従って、ねじ部材48が筐体41を締め付けている力を長期間にわたり高く維持することができ、堅固な固定構造を提供することができる。一方、ねじ部材48を緩めたときには、簡単にねじ部材48の締め付け力が解除される。そのため、筐体41を動かして、筐体41の位置を調整する作業を容易に行うことができる。他方、筐体41の調整後に再度、ねじ部材48を締め付けた場合には、ねじ部材48の座面48a、または図略のワッシャの座面が改めてローレット部を圧壊するので、高い締め付け力を得ることができる。特に本実施形態では、ローレット部41hが上下方向に沿う線状の稜線を形成する起伏であることと相俟って、ねじ部材48の座面48a、または座面48aとローレット部41hとの間に介装される図略のワッシャの座面が、装着時において、ローレット部41hを圧壊することにより、筐体41の前後方向の移動を堅固に規制する。
また、本実施形態に係る施錠装置20において、受け部材42は、鉛直線回りに回動する軸部42aを含んでいる。この軸部42aの回動により、受け部材42は、スライド扉4の端面4aに対して起立することにより当該端面4aから突出するロック姿勢と、スライド扉4の端面4a側に対して倒伏することにより当該前壁1a側に退避する退避姿勢との間で変位することができる。このため本実施形態では、施錠が必要なときにのみ、受け部材42をスライド扉4の端面4aに対して起立させておくことができる。一方、スライド扉4が庫口3を開いているときは、受け部材42をスライド扉4の端面4a側に対して倒伏させて、退避姿勢を取ることができる。従って、冷蔵庫1の美感が向上するばかりでなく、庫口3の通行時に受け部材42がじゃまになる恐れもなくなる。
また、本実施形態に係る施錠装置20において、受けユニット40は、筐体41に取り付けられ、受け部材42をロック姿勢および退避姿勢のそれぞれの姿勢において付勢するばね部材44を含み、軸部42aは、ばね部材44と当接するカム面42eを含み、カム面42eは、受け部材42がロック姿勢にあるときには、受け部材42をロック姿勢に付勢するばね部材44の付勢力を受けるように構成された第1の受圧部42fと、受け部材42が退避姿勢にあるときには、受け部材42を退避姿勢に付勢するばね部材44の付勢力を受けるように構成された第2の受圧部42gとを含む。このため本実施形態では、受け部材42がロック姿勢にある場合、ばね部材44の付勢力は、第1の受圧部42fから受け部材42に伝達され、受け部材42は、ロック姿勢に加勢される。一方、受け部材42が退避姿勢にある場合、ばね部材44の付勢力は、第2の受圧部42gから受け部材42に伝達され、受け部材42は、退避姿勢に加勢される。従って、ばね部材44で受け部材42を付勢することにより、受け部材42の姿勢を安定させることができる。しかも、ロック姿勢と退避姿勢との間で受け部材42の姿勢が切り替わる過程で、ばね部材44の付勢力を受ける部位が第1の受圧部42fと第2の受圧部42gとの間で切り替わるたびに、作業者は、ばね部材44の付勢力が切り替わるのを感じ取る(いわゆるクリック感を得る)ことができ、操作の確実性を確保することが可能となる。
また、本実施形態に係る施錠装置20において、フック部材83は、鉛直線回りに回動する腕部83dと、腕部83dの先端部から回動方向に突出する爪部83eとを備え、受け部材42に対し、前壁1aに近接する方向へ回動することにより、離脱姿勢から係合姿勢に変位するものである。このため本実施形態では、スライド扉4が左開きのものであっても右開きのものであっても、同一の受けユニット40およびロックユニット80を採用することができる。このため、製品に汎用性を持たせることができ、部品管理や流通性が向上することになる。これに対し、例えば、特許文献2に開示されているように、壁面に対して直角な軸回りに回動する回動式のフックでは、左回りのものと右回りものとを個別に製造することが必要となり、部品管理や流通性に欠けることになる。
また、本実施形態に係る施錠装置20において、ロックユニット80は、前壁1aが区画する庫室の内側から当該ロックユニット80を前壁1aから取り外し操作可能な取付部材としてのボルト86によって前壁1aの外側に固定されている。このため本実施形態では、作業者等が冷蔵庫1の中にいる場合において、不随意にロックがかかったときに、作業者等は、冷蔵庫1の中からボルト86を操作することにより、ロックユニット80を強制的に前壁1aから離脱することができる。本実施形態では、フック部材83は、受け部材42に対し、前壁1aに近接する方向へ回動することにより、離脱姿勢から係合姿勢に変位するように構成されているので、ロックユニット80が前壁1aから外れるときの方向は、フック部材83が係合姿勢から離脱姿勢に移動する方向に沿うことになる。そのため、ロックユニット80が前壁1aから外れるときの動作は、フック部材83を係合姿勢から離脱姿勢に移動させる動作として作用する。これにより、緊急時に作業者等が冷蔵庫1の中から施錠装置20のロックを解除し、冷蔵庫1の外に出ることが可能になる。
なお、仮に、冷蔵庫1の前壁1aに沿って往復移動するかんぬきがロックユニットに用いられている場合には、当該ロックユニットが前壁1aから外れるときの方向が、かんぬきの移動方向と交差することになる。そのため、かんぬきを用いたロックユニットの場合には、たとえ、作業者等が冷蔵庫1の中からボルト86を操作して、ロックユニット80の解除を試みても、ロックユニット80の移動がかんぬきによって妨げられてしまい、かんぬきと受け部材42との離脱を確実に行うことが困難となるおそれがある。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはいうまでもない。
前記実施形態では、筐体は、その長孔の長手方向の寸法が調整値の最大寸法よりも長く設定され、この長く設定された範囲でねじ部材の初期取付位置を微調整できるように設定されているが、調整値の最大寸法に対応する範囲である調整範囲と、前記初期取付位置を設定可能な範囲である初期取付範囲との少なくとも境界を作業者に認識させる認識手段が設けられていても良い。
例えば、好ましい態様において、前記長孔の長手方向両端部のうち、前記壁面に近接する側を一端部とし、反対側を他端部とした場合において、前記ねじ部材に対し前記調整値の最大寸法が前記長孔の前記一端部から他端側に確保されるように、前記初期取付範囲を作業者に認識させる前記認識手段が前記筐体に設けられていてもよい。
そのような態様では、作業者が認識手段に基づいて長孔の初期取付位置を位置決めしやすくなり、作業性が向上する一方、所定の調整範囲が確保された状態で初期取付位置を設定することができるので、スライド扉が壁面に近接する方向に調整されたときの位置調整に対応する際に、長孔の一端部側を有効活用することができる。また、調整範囲の境界を認識することによって、ねじ部材の初期取付位置を微調整できる範囲である微調整範囲も確保されることから、筐体の汎用性を高め、使い勝手が良くなる。
前記認識手段は、作業者に調整値の最大寸法に対応する前記調整範囲を明示するものであっても良いが、作業者に前記初期取付範囲を認識させるものであることが好ましい。その場合には、初期取付範囲が作業者に認識されることによって、調整値の最大寸法の確保を確実なものにしつつ、作業者には、初期取付位置を位置決めする自由度を高めることが可能になる。
認識手段は、目視可能な目印であってもよく、またはねじ部材に長孔を位置決めするときの触覚によって認識可能な立体的構造であってもよく、また視覚によって認識されるものと触覚によって認識されるものとを組み合わせて構成されていてもよい。
目印としては、文字、図形、記号、立体的構造など視覚によって作業者に認識されるものが例示される。また、目印は、複数の文字や記号を組み合わせたものであってもよい。その場合には、より複雑な指示情報を作業者に提供し、所期の位置合わせを行うことができる。認識手段として目印を用いる場合、当該目印はねじ部材の頭部と重なる範囲に設けられているのが好ましい。この場合には、ねじ部材の頭部との重なりを視覚的に迅速に認識することができる。
立体的構造としては、長孔の周囲であってねじ部材の頭部と重なる範囲に形成された突起などの凹凸を利用したものが例示される。立体的構造は、目印として機能するばかりでなく、触覚によって作業者が認識できるものでもあり得る。例えば、立体的構造は、ローレット部の形状であってもよい。その場合には、認識手段に、触覚によって物理的にねじ部材に長孔を位置決めする位置決め機能を持たせることも可能となる。特に、前記ローレット部は、前記一端部から前記他端部に向かうに伴い、段階的に高さが低くなるように段差が設けられていてもよい。その場合には、ローレット部の段差によって、長孔の他端部側に初期取付位置を設定することができるばかりでなく、最初に長孔の他端部側が優先的に位置決めできるので、長孔の長手方向に沿う寸法を全体的に調整範囲として有効利用し、対向間隔の調整に対応することができる。
また、認識手段は、前記一端部に近接して、前記長手方向沿いに等配されている複数のマークまたは突起であってもよい。その場合には、複数のマークまたは突起のうち、長孔の一端部に最も近いものに基づいて、作業者は、初期取付位置の境界を認識することができる一方、対向間隔の変更に応じて受けユニットの位置を調整する際、マークまたは突起に基づいて精緻な微調整を行うことができる。
好ましい態様において、前記初期取付範囲は、前記長孔の中央部分から少なくとも前記他端部側に設定されている。この態様では、調整範囲を確保するに当たり、初期取付範囲が長孔の中央部分から少なくとも他端部側に設定されるので、調整範囲が比較的大きくなる範囲に初期取付位置を設定できる。しかも長孔の長手方向において、広い範囲で初期取付位置を設定することができる結果、施錠装置の汎用性を高めることができる。
好ましい態様において、初期取付範囲は、長孔の中間部分のみであってもよい。その場合には、弾性シールの取り替え等、スライド扉が前記壁面から離反する方向に調整された場合においても、長孔の他端部側を調整代として利用することが可能になる。
また、初期取付範囲は、長孔の中央部分よりも他端側に寄っている方が好ましい。その場合には、初期取付位置から長孔の一端部までの距離が長く設定される結果、より一層、長孔の長手方向の寸法を有効利用することができる。換言すれば、長孔の長手方向の寸法が比較的短く設定されている場合においても、調整範囲を大きく設定することができ、長期にわたり、対向間隔の変更に対応することが可能となる。
以下、図13を参照して、具体的に説明する。
上述のように、前記実施形態では、長孔41gの長手方向(前後方向)の寸法ELは、対向間隔D(図12参照)を変更するために設定される調整値dの最大寸法よりも相当長く設定されており、長孔41gの中心が筐体41を前後に二分する中心線よりも僅かに前方にずれていることと相俟って、調整値dの最大寸法に対応する範囲である調整範囲APが、長孔41gの後端側の一端部410から前方の他端部411側に確保されている。換言すれば、長孔41gの他端部411側には、ねじ部材48の初期取付位置を設定可能な範囲である初期取付範囲IPが確保されていることになる。図13の変形例では、前記調整範囲APと初期取付範囲IPとの境界を明確にするため、各長孔41gの一端部410側近傍には、認識手段としての複数のマーク41rが設けられている。
上側の長孔41gに設けられた複数のマーク41rは、当該長孔41gの下側近傍において、前後に等配されている。また、これら複数のマーク41rは、当該長孔41gの一端部411側に寄せて設けられている。下側の長孔41gの上側近傍においても、同様に複数のマーク41rが当該長孔41gの一端部411側に寄せて設けられている。
これら複数のマーク41rは、作業者に調整値dの最大寸法に対応する調整範囲APを明示する目印として機能している。換言すれば、作業者は、最前端のマーク41rを目印として、マーク41rのない範囲を初期取付範囲IPとして認識し、各長孔41gを最初に筐体41をねじ止めするときの初期取付位置をこの初期取付範囲IP内に位置決めすることも可能となる。
各マーク41rは、目視の可能な大きさの直径を有する円形を呈している。隣接するマーク41r同士の間隔は、例えば、1.5mmである。尤も、上記間隔は、図13の例に限定されない。マーク41rは、プレス加工時に筐体41の側壁に凹凸を打刻することにより、或いは、塗料を塗布することにより、形成される。なお、初期取付範囲IPの認識を容易にするため、初期取付範囲IPの適所に矢印等の記号や、「初期取付位置」等の文字を併記していてもよい。
図13の変形例において、初期取付範囲IPは、長孔41gの長手方向中央部分を含んでいる。よって、作業者は、長孔41gの長手方向中央部分から他端部411側の範囲で初期取付位置を調整することができる。このため図13の変形例において、最前端のマーク41rは、当該最前端のマーク41rから他端側411側を初期取付範囲IPとして認識させることができるばかりでなく、初期取付範囲IP内に、ねじ部材48の初期取付位置を微調整する範囲である微調整範囲を認識させる機能をも奏する。この結果、長孔41gの長手方向のほぼ全長を有効利用し、汎用性を高めることができる。
また、長孔41gの後端側では、一定間隔を隔てて複数のマーク41rが表示されている。そのため、作業者は、受けユニット40の位置を調整する際、マーク41rを目印に精緻な微調整を行うことができる。
さらに、マーク41rは、プレス加工による打刻または塗料によるものであることから、仮に、ねじ部材48がマーク41rの上に位置決めされる場合であっても、マーク41rがねじ部材48の位置合わせを妨げることはない。なお認識手段として、マーク41rのような目印を用いる場合、当該目印としてのマーク41rは、図13の実施形態のように、ねじ部材48の頭部と重なる範囲に設けられているのが好ましい。この場合には、ねじ部材48の頭部との重なりを視覚的に迅速に認識することができ、作業性の向上に寄与する。
なお、認識手段としてのマーク41rは、初期取付位置の開始位置と終了位置を示す二つだけであってもよい。また、認識手段としてのマーク41rは、特定の位置を示すものに限らず、初期取付範囲IP全体を示す矢印等、別の記号や図案を用いてもよい。その場合には、マークを一つだけ表記してもよい。また、マーク41rは、凹凸形状によって視認される突起のように立体的構造を有するものであってもよい。特に、マーク41rが、ねじ部材48と重なる範囲に設けられた凹凸としての突起で構成されている場合、マーク41rとねじ部材48とが当接するときの感触によって、作業者は、マーク41rの位置を認識し、作業性を高めることができる。
さらに認識手段は、マーク41rのような目印に限定されない。
次に、図14を参照して、認識手段の別の例として、ローレット部41hの高さを変更する構成について説明する。
図14に示すように、ローレット部41hのうち、長孔41gが形成されている範囲における部位41s、41t、41uは、長孔41gの長手方向にわたって三段階に高さが変更されている。このうち、最先端の部位41sが最も低く、次いで、中央の部位41t、後端の部位41uの順に高さが高くなっている。なお、各部位41s、41t、41uの深さや段差は、図14では、理解容易のため誇張して記載されているが、ローレット部41hの寸法は、例えば、先端(最深部分)の部位41sの深さh1が0.4mm程度であり、中央の部位41tの深さh2が0.3mm程度であり、後端(最浅部分)の部位41uの深さh3が0.2mm程度であり、段差(深さh3と深さh2との差、或いは深さh2と深さh1との差)がそれぞれ0.1mm程度である。無論、これらは、一例であって、例えば、最浅部分の深さを0.2mmよりも大きく0.5mm以下の範囲に設定し、段差を0.1mmよりも大きく〜0.5mm以下の範囲に設定してもよい。
図14に示したように、長孔41gの長手方向において、段差が形成されている場合には、各部位41s、41t、41uが、筐体41をねじ部材48によってスライド扉4に最初に取り付ける際に、ねじ部材48と長孔41gとの初期取付位置を作業者に認識させる認識手段として機能する。特に図14の場合には、高さの異なるローレット部41hの一部(部位41s、41t、41u)によって認識手段が構成されているので、目視による認識のみならず、ねじ部材48を物理的に位置決めする位置決め機能をも奏する。さらにまた、図示の例では、他端部411に対向する部位41sが最も低く設定され、後端に向かうに伴って、高さが高くなるようにローレット部41hの各部位41s、41t、41uが設定されているので、最初の作業時には、先端の部位41sが、優先的にねじ部材48を位置決めする部位として利用され得る。
なお、ローレット部41hの深さ(山の高さ)を部分的に変更する場合には、各部位41s、41t、41uの高さを図14の逆に設定してもよい。
さらに、図13のマーク41rと図14のローレット部41hとを組み合わせる等、認識手段は、視覚によって認識される目印と、触覚によって認識される立体的構造とを組み合わせてもよい。
また、具体的には、図示していないが、初期取付範囲は、長孔41gの中央部分に特定されていてもよい。その場合には、筐体41を前方にずらすための調整範囲APを確保しつつ、逆向きに筐体41をずらして位置調整を図る調整代をも確保することができる。無論、その場合においても、長孔41gの他端部411寄りに初期取付範囲が設定されるように初期取付範囲IPまたは初期取付位置を設定することが好ましい。その場合には、長孔41gの一端部410から前端側に確保される調整範囲APがより長く設定されるので、長孔41gの長手方向寸法を有効活用することができる。
なお、上述した実施形態および変形例においては、何れもスライド扉4に受けユニット40を取り付ける構造を採用しており、この受けユニット40に収容される受け部材42の姿勢を変位可能に構成していることから、スライド扉4に受け部材42を出没させるための凹部(埋め込み部)を設ける必要がない。そのため、施工が容易にでき、既設の冷蔵庫1に対しても後付けが容易になるという利点がある。