JP6472177B2 - 湿式分散器および微粒子の分散方法 - Google Patents

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本発明は、混合物中に含まれる、1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒とを少なくとも含む混合物中の微粒子を分散させる湿式分散器及び分散方法に関する。特に、コンタミネーション(CONTAMINATION(異物混入))がほとんど無く、短時間で均一に分散でき、且つ高分散することができる分散性能に優れ、更に、省エネルギーで生産性及び作業性に優れた湿式分散器及び微粒子の分散方法に関する。
メジアン径が1〜500nmのナノ微粒子は、製品または中間体の原材料として用いられており、当該微粒子を用いた微粒子材料は機能性が求められている。
一方、微粒子材料に機能性が求められるほど、媒体中の微粒子挙動を制御することが重要となる。すなわち、製品または中間体に加工処理されるまでの過程で、微粒子の凝集・分散を高精度で制御し、媒体中に十分にナノ微粒子を分散させることが必要となる。
従来、このような微粒子(凝集粒子)の分散には、高回転型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル等の分散器が用いられている。
しかし、高回転型ホモジナイザーによって微粒子を分散させる場合には、微粒子が分散媒中で凝集し易く、確実かつ良好に分散させることができなかった。さらに、ボールミル、ビーズミル等の分散器によって微粒子を高分散度かつ均一に分散させる場合には、長時間の分散処理が必要となり、更に非効率でエネルギーロスが多いものとなっていた。
さらに、ビーズミルやジェットミルを用いて、ナノ微粒子(凝集粒子)の分散も行われている。上記ビーズミルは、ボールミルに比べて、粒径が小さいビーズを用いるものである。また、ジェットミルは、高圧の空気又は蒸気を超高速ジェットとして粒子に衝突させ、粒子同士の衝撃によって数ミクロンのレベルの微粒子にまで粉砕するものである。
しかし、上記ビーズミルによる微粒子の分散では、冷却及び使用後の洗浄が必要となり、生産面及びコスト面の観点から、扱いづらいものであった。さらに、ビーズ同士等が接触してビーズの磨耗が生じ、その摩耗が原料に混入するといった、コンタミネーションが問題となっていた。また、ジェットミルによる微粒子の分散では、高動力となりエネルギーロスが大きく問題となっていた。
さらに、微粒子の分散方法として、オリフィスにスラリー(分散媒)を高圧・高速で通過させる方法や、超音波による分散方法が知られている。
上記オリフィスを利用する分散方法では、スラリー流路に、当該スラリー流路が急激に狭くなるオリフィス部を設け、微粒子を含むスラリーを超高速通過させる。そして、スラリーを収縮流とすることにより、スラリーに含まれる微粒子を分散させるものである。また、超音波による分散方法はスラリー(微粒子)と超音波とを接触させ、超音波の振動によって微粒子を分散させるものである。
しかし、上記オリフィス又は超音波の振動を用いて微粒子を分散させる場合にも、微粒子を極めて高度に分散することが要求される用途においては、分散性能が十分なものではなく、分散の限界(平均粒子径等)や作業時間の点で、満足の行く結果を得ることは期待できなかった。
ところで、短時間で高度かつ均一な分散を行う目的で、微粒子をコーティングしたコーティング粒子の製造等、微粒子の分散工程を有する各種の製品を高効率で製造する湿式分散器が報告されている(特許文献1)。
上記特許文献1の湿式分散器では、分散媒中に混合された微粒子を分散する湿式分散器であって、当該分散媒と微粒子との混合物の流入口および流出口ならびに当該流入口と流出口とを連通する流路を有する分散器本体と、当該流路の途中に形成されるオリフィスと、当該流路の途中の前記オリフィスの下流側かつ近傍に設けられる超音波発生手段とを有するものとなっている。
特開平05−168888号公報 国際公開第2005/013938号
上記特許文献1の分散器では、ビーズミル等のようにメディア(分散媒体)であるビーズ同士が接触するものではない。すなわち、メディアレスであるため、コンタミネーションがほとんど発生しない。さらに、低動力であることから消費エネルギーも少ない。したがって、従来の分散器に比べて評価に値するものといえる。
しかし、特許文献1の分散器を用いても、特許文献1の実施例にみられるように、1μm〜10μmの微粒子に分散することはできるが、分散媒中に混合された、メジアン径が1〜500nmのナノ微粒子を均一に分散することが難しく、ナノ微粒子を分散媒中に十分に分散させるために、数百回の分散処理が必要である。また、分散処理後、再凝集が起こり、メジアン径が200nm以下には分散が困難である。
さらに、高圧ホモジナイザーを用いて、3.5〜275MPa(500〜40000psi)処理圧力で乳化処理してなる、平均粒子径が10nm〜1000nmである薬物超微粒子の製造方法が報告されている(特許文献2)。しかし、特許文献2の製造方法で用いられるホモジナイザーは、エネルギー消費が高く、冷却作業を必要とするものである。さらに、冷却作業をする際の冷却設備等も必要となる。そのため、多量のエネルギーを消費し、即ち、エネルギーロスが大きく、生産性及び作業性の点で問題が生じている。
このように、従来の分散器及び分散方法では、上記のように問題が生じており、更なる改良が望まれる。
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、混合物中の微粒子を分散させる湿式分散器、及び分散方法を提供する。さらに、本発明の湿式分散器、及び分散方法は、メディアレス及び低動力であって、短時間でほとんどコンタミネーションの無い分散処理が可能であり、分散度及び分散強度を一定に制御でき、複雑流れ場、即ち混在された収縮流、せん断流、伸長流等が同時利用でき、分散媒中の微粒子を均一に分散できる。特に、エネルギーロスが少なく、生産性及び作業性に優れた湿式分散器及び分散方法である。
さらに、本発明の湿式分散器及び分散方法では、例えば、微粒子の凝集状態によって、多段階にすることも可能である。さらに、例えば、シリーズで、2段、3段、4段、5段等につなげる等、またパラレルで2段、3段等とすることで、処理量を増やす等、種々の設計が可能である湿式分散器、及び分散方法を提供する。さらに、弱い固結微粒子の凝集体についても、振動面の間隙に強制的に挟み、圧縮することによって解砕の機能を設けることも可能である分散方法を提供する。
本発明により、以下の湿式分散器及び分散方法が提供される。
[1] 1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒とを少なくとも含む混合物中の、前記微粒子を分散させる湿式分散器であって、
前記混合物の流入口および流出口ならびに前記流入口と前記流出口とを連通する流路を有すると共に、前記流路の途中に設けられ、前記混合物に収縮流、せん断流、伸長流が混在された流れ場を与える、振動体と前記流路との間隙とから構成される分散部を備え、
さらに、前記分散部の後に続く流路として、通過路が形成されてなり、
前記分散部にある前記振動体の面の形状は、振動体の周りから分散部の間隙に混合物が流入する円形に形成され
つ、前記振動体近傍の、前記通過路の入り口は、円形状、ノズル状、又はオリフィス状に形成されている湿式分散器。
[2] 前記1次粒子は、粒子状物質、又は繊維状物質を含む[1]に記載の湿式分散器。
[3] 前記微粒子、分散後の混合物中にメジアン径1〜500nmのナノ微粒子として、分散させる[1]又は[2]に記載の湿式分散器。
[4] 前記微粒子分散後の混合物中にメジアン径500nm〜10μmの処理後微粒子として、或いは、前記微粒子が分散後の混合物中に繊維径1〜100nm、長さが前記繊維径の100倍以上であるナノファイバーとして、分散させる[1]又は[2]に記載の湿式分散器。
[5] 記振動体の振動により、前記流路の間隙が連続的に変化すると共に、当該連続的に変化した流路の間隙を、前記混合物が通過する際に等距離を流れる通過路を有し、前記混合物に前記収縮流、前記せん断流、前記伸長流が混在された流れ場が与えられる[1]〜[4]のいずれかに記載の湿式分散器。
[6] 前記分散部にある前記振動体の面の形状が円形状であって、前記振動体の面の中心方向に向けてスリットが複数本形成されている、或いは、前記分散部にある前記振動体の面の形状が円形状であって、前記振動体の面の中心方向に向けて凸状の段部が複数本形成されている、或いは、前記分散部にある前記振動体の面の形状が円形状であって、前記振動体の面上に凹凸部が複数個形成されている、或いは、前記分散部にある前記振動体の面の形状が円形状であって、前記振動体の面上に凹凸部が複数個形成されていると共に、前記凹凸部のうちの凸部が、円心を中心にして、リング状に複数個形成されている[1]〜[5]のいずれかに記載の湿式分散器。
] 前記振動体と前記流路の最小間隙は0μmより大きく〜500μmである[1]〜[6]のいずれかに記載の湿式分散器。
] 前記振動体の振幅が10μm〜10mmである[1]〜[7]のいずれかに記載の湿式分散器。
] 前記振動体の振動数は10〜10,000Hzである[1]〜[]のいずれか1項に記載の湿式分散器。
10] 前記通過路の出口側かつ近傍に超音波発生手段を有し、前記超音波発生手段の周波数が20kHz〜10MHzである[1]〜[9]のいずれかに記載の湿式分散器。
11] 1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒とを少なくとも含む混合物中の、前記微粒子を分散する分散方法であって、分散処理前の前記混合物に繰り返し、前記流れ場を与える流れ場付与工程を有し、前記流れ場付与工程時に、前記混合物に等距離を移動させる分散場を含み、[1]〜[10]の湿式分散器を用いる微粒子の分散方法。
12] 前記1次粒子は、粒子状物質、又は繊維状物質を含む[11]に記載の分散方法。
13] 前記微粒子、分散後の混合物中にメジアン径1〜500nmのナノ微粒子として、前記混合物中に分散させる[11]又は[12]に記載の分散方法。
14] 前記微粒子分散後の混合物中にメジアン径500nm〜10μmの処理後微粒子として、或いは、前記微粒子が分散後の混合物中に繊維径1〜100nm、長さが前記繊維径の100倍以上であるナノファイバーとして、前記混合物中に分散させる[11]又は[12]に記載の分散方法。
15] さらに、前記流れ場付与工程後に、前記流れ場付与工程と異なる、収縮流、せん断流、伸長流が混在された流れ場を与える噴出分散工程、或いは、前記噴出分散工程後に、又は、前記流れ場付与工程後に、超音波振動を与えて混合物を分散させる超音波分散工程を有する[11]〜[14]のいずれかに記載の分散方法。
本発明の湿式分散器、及び分散方法によれば、混合物中の微粒子を分散させる湿式分散器、及び分散方法を提供できる。さらに、本発明の湿式分散器、及び分散方法によれば、分散媒体が不要であり、低動力であって、短時間でほとんどコンタミネーションの無い分散処理が可能であり、分散度及び分散強度を一定に制御でき、複雑流れ場、即ち制御された振動による収縮流、せん断流、伸長流等が同時利用でき、分散媒中のナノ微粒子を均一に分散できる。特に、従来の高圧ホモジナイザーによる分散処理のように、分散処理に伴う高温化もなく、冷却手段等の設備も不要、または、小型で良く、省エネルギーで、生産性及び作業性に優れた湿式分散器及び分散方法である。
さらに、本発明の湿式分散器及び分散方法では、例えば、微粒子の凝集状態によって、多段階にすることも可能である。さらに、例えば、シリーズで、2段、3段、4段、5段等につなげる等、またパラレルで2段、3段等とすることで、処理量を増やす等、種々の設計が可能である。さらに、弱く固結された微粒子(固結微粒子)の凝集体についても、振動面の間隙に強制的に挟み、圧縮することによって解砕の機能を設けることも可能である分散方法を提供する。
本発明の湿式分散器の側面方向からの見た際の断面図であって、流路の一部を透視して描いた湿式分散器の模式図である。 図1Aの平面図であって、流路の一部を透視して描いた模式図である。 図1Aの湿式分散器に混合物を送液した際の模式図であって、流路の一部を透視して描くと共に、振動体が流路を狭めた際の混合物の状態を説明する図である。 図1Aの湿式分散器に混合物を送液した際の模式図であって、流路の一部を透視して描くと共に、振動体が流路を広げた際の混合物の状態を説明する図である。 本発明の湿式分散器の別の実施形態であって、側面方向からの見た際の断面図であって、流路の一部を透視して描いた湿式分散器の模式図である。 図2Aの平面図であって、流路の一部を透視して描いた模式図である。 本発明の湿式分散器の側面方向からの見た際の断面図であって、図1Aの振動体が混合物に伸長場を与える状態を説明する模式図である。 本発明の湿式分散器を用いた分散処理の説明図であって模式図である。 本発明の湿式分散器における振動体の一例を示す斜視図であって模式図である。 本発明の湿式分散器における振動体の別の例を示す斜視図であって模式図である。 本発明の湿式分散器における振動体の別の例を示す斜視図であって模式図である。 本発明の湿式分散器における、振動体の平面図であって、当該振動体と伸長場をあたえられた混合物の関係を説明する模式図である。 図8Aの振動体を一部切欠き、混合物が移動する状態を説明した模式図である。 本発明の湿式分散器における振動体の別の例を示す平面図であって模式図である。 本発明の湿式分散器における振動体の別の例を示す側面図であって模式図である。 本発明の湿式分散器における振動体の別の例を示す平面図であって模式図である。 本発明の湿式分散器に使用する混合物(分散処理前の混合物)、及び本発明の湿式分散器によって分散処理された後の混合物の結果を示すグラフである。
以下、本発明の湿式分散器について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える湿式分散器を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
[1]本発明における湿式分散器:
本発明における湿式分散器は、図1A〜図1Dに示されるように、1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒とを少なくとも含む混合物中の、微粒子を分散させる湿式分散器1である。当該湿式分散器1は、上記混合物の流入口3および流出口5ならびに流入口3と流出口5とを連通する流路13を有すると共に、流路13の途中に設けられ、混合物に複雑流れ場を与える、振動体7と流路13との間隙から少なくとも構成される分散部10を備える湿式分散器1である。
[1−1]混合物:
本発明における湿式分散器において、分散処理前の「混合物」とは、主に、1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体(なお、凝集体には一部弱い固結粒子も含む)からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒とを少なくとも含むものとして構成される。すなわち、当該「混合物」には、(1)1次粒子と分散媒とを少なくとも含むもの、(2)1次小凝集粒子と分散媒とを少なくとも含むもの、(3)凝集体と分散媒とを少なくとも含むもの、(4)1次粒子及び1次小凝集粒子と、分散媒とを少なくとも含むもの、(5)1次粒子及び凝集体と、分散媒とを少なくとも含むもの、(6)1次小凝集粒子及び凝集体と、分散媒とを少なくとも含むもの、(7)1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体と、分散媒とを少なくとも含むものが含まれる。したがって、本明細書において、「1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子」には、上記(1)〜(7)のうちの態様のいずれかに当てはまるものとなる。
なお、上記「混合物」には、後述する「微粒子」、溶液の他に、分散処理で用いられる公知の添加剤等を含むものであってもよい。たとえば、界面活性剤、帯電制御剤等の分散後の、所定径のナノ粒子の分散安定剤等を含むものであってもよい。
また、本発明の湿式分散器を利用して分散される混合物の濃度は特に限定されるものではなく、微粒子の粒子径や、目的とする分散の程度、分散後の混合物の用途等に応じて適宜決定される。
(1次粒子、1次小凝集粒子、凝集体)
上記「1次粒子」は、特に限定されるものではないが、粒子状物質、又は繊維状物質を含むものであることが好ましい。更に、「繊維状物質」は自然又は人工的な素材から形成される細い糸状の物質を意味する。より好ましくは、上記「1次粒子」は、メジアン径が1〜500nmである粒子であって、分散処理前のものである。上記「1次小凝集粒子」とは、特に限定されるものではないが、好ましくは、メジアン径が1〜100nmである粒子が数個〜数千個集まり(凝集し)、また、一部凝集粒子を含み、粒子同士が混合して集合した状態であり、分散処理前のものを意味する。上記「凝集体」とは数mmのものもあり、特に限定されるものではないが、好ましくは、凝集状態としてメジアン径が1nm〜500nmである粒子が、数十〜数万個集まり(凝集し)、粒子同士が混合して集合した状態のものであって、分散処理前のものを意味する。「メジアン径」とは、分布の中央値に対応する粒子径を意味する。
(ナノ微粒子)
本発明における湿式分散器では、分散処理前の「微粒子」を、混合物中に分散させることができる。より好ましくは、分散処理前の「微粒子」を、分散後の混合物中にメジアン径1〜500nmのナノ微粒子として分散させることである。ここで、上記「ナノ微粒子」とは、上記「微粒子」が、分散処理によって、1〜500nmのメジアン径を有する1次粒子又は1次小凝集粒子となったものを意味する。
具体的には、(a)上記「ナノ微粒子」には、1次粒子単体のメジアン径が1〜500nmからなるものが含まれる。(b)更に、上記「ナノ微粒子」には、1次粒子が複数集まって凝集(集合)した状態のもの(1次粒子の集合体)であって、当該「凝集(集合)した状態」のメジアン径が1〜500nmからなるものも含まれる。(c)更に、当該「ナノ微粒子」には、上記(b)よりも、更に、1次粒子が複数集まって「1次小凝集粒子」となったものであって、当該「1次小凝集粒子」のメジアン径が1〜500nmからなるものも含まれる。
ここで、分散処理後のナノ微粒子のメジアン径1nm未満のものは、粒子径が小さ過ぎてしまい、分散処理が困難となる。さらに、分散処理後のナノ微粒子のメジアン径が、500nm超であると、ナノ微粒子としての特性を発揮できない場合がある。
(処理後微粒子、ナノファイバー)
更に、本発明における湿式分散器では、上記「微粒子」が、分散後の混合物中にメジアン径1〜500nmのナノ微粒子として、混合物中に分散させるものだけに限定されない。たとえば、本発明における湿式分散器では、分散処理前の上記「微粒子」を、上記「ナノ微粒子」として分散処理できるだけでなく、分散処理前の「微粒子」を、分散処理後の混合物中にメジアン径500nm〜10μmの微粒子(以下、適宜「処理後微粒子」という。)として、混合物中に分散できる場合も好ましい態様である。或いは、本発明における湿式分散器では、分散処理前の上記「微粒子」を、上記「ナノ微粒子」として分散処理できるだけでなく、分散処理前の「微粒子」が、繊維状物質である場合に、分散後の混合物中に繊維径1〜100nm、長さが繊維径の100倍以上であるナノファイバーとして、分散できる場合も好ましい態様である。
なお、上記「凝集体」、「1次粒子」、「1次小凝集粒子」、「ナノ微粒子(ナノ微粒子担体、小凝集粒子)」、及び「処理後微粒子」のメジアン径は、本明細書において、特に言及していない場合には、粒子径分布測定装置により測定した値である。更に、「ナノファイバー」の繊維径及び長さは、本明細書において、特に言及していない場合には、顕微鏡によって測定した値である。
なお、混合物に含まれる上記「微粒子」の材質は特に限定されるものではなく、分散処理に用いられる公知の溶質を「微粒子」としてもよい。好ましくは、たとえば、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛を挙げることができる。なお、上記分散処理前の「微粒子」と、分散処理後の「ナノ微粒子」、「処理後微粒子」、「ナノファイバー」は、メジアン径、繊維径、及び長さが異なるだけで、分散処理前と分散処理後において同じ材質である。
(溶液)
本発明における湿式分散器において、分散媒中の溶液は特に限定されるものではなく、分散処理に用いられる公知の溶液を用いることができる。好ましくは、水、エチルアルコール、メチルアルコール、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン等を挙げることができる。
なお、混合物は、所定の溶液と、所定の材料からなる「微粒子」を所定の混合比で投入し、これらを攪拌・分散し、当該混合物を得る。なお、必要に応じて、上記混合物に、界面活性剤、帯電制御剤等の分散後の、所定径のナノ粒子の分散安定剤等を加えるものであってもよい。このようにして、得られた混合物(分散処理前の混合物)を、送液ポンプ、或いは吸引ポンプ等によって、本発明の湿式分散器の流入口に送液し、分散処理される。
[1−2]湿式分散器の概略構成:
本発明における湿式分散器は、図1A〜1Dに示されるように、概ね、流入口3および流出口5ならびに流入口3と流出口5とを連通する流路13を有すると共に、流路13の途中に設けられ、混合物に複雑流れ場を与える、振動体7と流路13との間隙とから少なくとも構成される分散部10を備えるものとして概ね構成されている。なお、本明細書において、上記流入口3、上記流出口5、ならびに上記流入口3と上記流出口とを連通する上記流路13、更には、上記振動体7及び上記分散部10を含めた部分を「分散器本体15」と称する場合がある。ただし、当該「分散器本体15」には、これらの例に挙げた構成に限定されるものではなく、たとえば、後述する「超音波発生手段」等の構成が含まれる場合がある。
なお、以下では、分散処理後に混合物中に分散させて得られた対象の代表例として、「ナノ微粒子」を説明する。ただし、分散処理後に混合物中に分散させて得られる対象が「ナノ微粒子」に限定されるものではなく、適宜、「処理後微粒子」、「ナノファイバー」においても同様に当てはめることができる。
[1−2−1]流路:
本発明における湿式分散器1では、図1A〜1Dに示されるように、分散器本体15は、混合物の流入口3および流出口5ならびに流入口3と流出口5とを連通する流路13を有する。このような流路13を形成することによって、混合物が流入口3から流出口5を通過する過程で、混合物中の、分散処理前の微粒子を、分散処理後に、混合物中に十分かつ均質に分散されることになる。
上記「流入口3」は、「1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒とを少なくとも含む混合物」の、分散器本体15への供給口である。上記「流出口5」は、分散処理された「ナノ微粒子」を含む混合物を、分散器本体15から外部へ排出する排出口である。すなわち、本発明における湿式分散器において、「流路」は、「微粒子」の供給口から、「ナノ微粒子」の排出口までに亘って形成されている。
具体的には、本発明の湿式分散器では、図1C及び図1Dに示されるように、流入口3から振動体7が配設される分散部10前迄の流路13(流路領域)として「流路領域13C」を設けてもよい。更に、分散部10の後に続く流路13(流路領域)として、「通過路9(流路領域13E)」が形成される。更に、当該「通過路9(流路領域13E)」に続く後の流路13(流路領域)に、混合物を一時的に滞留させる「流路領域13F」を形成してもよい。さらに、当該「流路領域13F」に続く後の流路13(流路領域)、或いは、当該「通過路9(流路領域13E)」に続く後の流路13(流路領域)に、流出口5までの「流路領域13G」を形成してもよい。このように構成される場合には、流入口3から分散器本体15へ投入された混合物は、「流路領域13C」、「分散部10」、「通過路9(流路領域13E)」、「流路領域13F」、「流路領域13G」を順に通過し、最終的に本発明の湿式分散器(分散器本体15)の排出口5から外部へ、十分に分散された「ナノ微粒子」を含む混合物として排出されることになる。
ここで、上記「流路領域13C」を設ける場合には、当該「流路領域13C」存在する「微粒子」は、分散器本体15に送液される前の混合物に含まれる微粒子と、同じメジアン径を有する「微粒子」が混合物中に含まれた状態となっている。上記「分散部10」では、当該流路内で、混合物に振動体の複雑流れ場が与えられるため、「流路領域13C」よりもメジアン径が小さい微粒子が混合物中に含まれた状態となっている。更に、「通過路9(流路領域13E)」では、再び複雑流れ場が混合物に与えられるため、「分散部10」よりもメジアン径が小さいナノ微粒子が混合物中に含まれた状態となっている。
なお、「分散部10」は、図1Cでは、振動体7が矢印方向に振動して流路の間隙を狭めている状態となっている。当該「分散部10」への混合物の浸入は、流路の間隙の大きさに依存することから、図1Cでは、混合物が「分散部10」への浸入がある程度制限された状態を示している。これに対して、図1Dでは、「分散部10」は、振動体7が矢印方向に振動して、流路の間隙を広げている状態となっている。この場合には、「分散部10」への混合物の浸入量が増えることとなる。すなわち、本発明では、振動体の振動により、図1Cから図1Dのように、「分散部10」の間隙が大きくなったり、小さくなったりすることで、混合物に複雑流れ場を与えるものとなっている。その結果、「分散部10」における、混合物に含まれる「微粒子」のメジアン径は、「流路領域13C」に存在する場合と比較して、小さいものとなる。
さらに、図1C及び図1Dに示されるように、「分散部10」の後の「通過路9(流路領域13E)」では、混合物に再び複雑流れ場を与えられる。そのため、「通過路9(流路領域13E)」にある混合物の微粒子、及び「流路領域13F」にある混合物の微粒子は、所定メジアン径を有するナノ微粒子として分散処理された状態となっている。そのため、「分散部10」の混合物に含まれる微粒子と比較して、「通過路9(流路領域13E)」及び「流路領域13F」では、混合物に含まれるナノ微粒子のメジアン径は小さくなっている。なお、「流路領域13F」には、後述のように、ナノ微粒子の再凝集を防止できるように、超音波発生手段を設けてもよい。
なお、本発明の湿式分散器は、図1A〜図1Dの湿式分散器の例に限定されるものではない。たとえば、図2A〜図2Bに示されるように、図1A〜図1Dに示される「流路領域13C」「流路領域13G」の流路径を一部絞り込んだ流路領域13C’、流路領域13G’を形成してもよい。このように流路径を絞り込んだ流路領域を形成することで、混合体の流速を変えることができ、分散処理を効率的に行うことができる。
なお、図1A、図2Aの符号Aは分散前の混合体、符号Bは、分散後の混合体を示している。また、図1A、図2A中の符号Aから延伸した矢印は、混合物が流れる流路を示している。また、図1A、図1C、図1D、図2A中の符号Y1は、振動体が動く方向を示している。
分散器本体の形成材料は、上記混合物(分散処理前の混合物、及び分散処理後の混合物)に対して十分な耐食性を有するものであれば特に限定されるものではないが、好ましい材料として、例えば、鉄、鋼、耐食鋼、ステンレス、アクリル樹脂等を挙げることができる。
混合物の流入口3は、分散処理前の混合物を分散器本体15に導入しやすい形状、構造であれば特に限定されるものではなく、公知のものを利用できる。たとえば、4に示されるように、貯留槽17を設け、当該貯留槽17(貯留タンク17)と分散器本体15を、送液管19で接続すると共に、流入口3側に供給ポンプ21等を接続させてもよい。さらに、混合物の流出口5は、分散処理後の混合物を分散器本体15の外部に排出しやすい形状、構造であれば特に限定されるものではない。たとえば、回収槽23(回収タンク23)を設け、当該回収槽23と分散器本体15を送液管19で接続して、当該回収槽23に送液してもよい。また、分散処理前の混合物を流入口3に送液する場合に、流出口5側に吸引ポンプ等を接続して、流出側から吸引し、微粒子が分散処理前の混合物を流入口に送り込み、微粒子(ナノ微粒子)が分散処理後の混合物を流出口から排出するようにしてもよい。
分散処理前の混合物を流入口から流路に送り込む送液速度は、5〜500cm/sであることが好ましく、10〜100cm/sであることがより好ましい。このように送液速度を設定することで、混合物を十分に分散器本体に送り込むことができる。
一方、混合物を流入口から流路に送り込む送液速度が、5cm/s未満であると、混合物を十分に分散器本体に送り込むことができないか、後述の通過路(通過路の入り口側に形成されているオリフィス状の部分)において、混合物に更に複雑流れ場を十分に与えることができない場合がある。混合物の流入口から流路に送り込む送液速度が、500cm/s超であると、分散処理量を超過した量の混合物が、分散器本体に流入することがあり、この場合には、分散処理が十分に行えない場合がある。
混合物の送液量は、振動体の大きさ(直径)と流路の間隙と送液速度によって決定されることが好ましい。
[1−3]振動体および分散部:
本発明において、図1A〜図1Dに示されるように、振動体7は、流路の途中に設けられている。本発明の湿式分散器は、当該振動体と前記流路との間隙から構成される分散部を備えるものとなっている。すなわち、当該振動体は、振動体が配置されている流路の内壁と合わせて分散部10を構成し、流路13(流路の内壁)と振動体7の表面との間の間隙を混合物が通過する際に、混合物に複雑流れ場を与えるものとなっている。
以下で図を参照しながら、本発明の湿式分散器における振動体および分散部について説明する。なお、以下で説明される振動体においては、振動体の面の形状(表面)が円形状であるものを例に説明するが、この例に限定されるものではない。
より具体的には、流入口3より流入した混合物は、図1Aで示される分散処理前の混合物Aから延伸した矢印に沿うように、流出口5側に向かって流路を進みながら、振動体7が設けられている流路、すなわち、分散部10へと到達する。そして、分散部10において、分散処理前の微粒子等を含む混合物が、当該振動体7が設けられている流路を通過する際に、振動体7が振動し、当該振動により生じた複雑流れ場を、混合物に与えることができるように構成されている。
このように構成されることで、混合物中に混合された分散処理前の微粒子は、分散部10において、当該複雑流れ場の影響を受けることで、混合物中で分散が促進される。さらに、分散部10において、当該複雑流れ場を与えた混合物中の微粒子は、分散処理前の微粒子と比較して、分散が促進され、メジアン径を小さくさせることができる。
なお、上記「複雑流れ場を与えた混合物中の微粒子」には、複雑流れ場を与えた混合物中に含まれる「微粒子」のみならず、複雑流れ場によってメジアン径が小さくなったナノ微粒子が混合物(複雑流れ場が与えられた混合物)に含まれる場合には、当該ナノ微粒子も含まれる。
また、上述のように「複雑流れ場」とは、収縮流、せん断流、伸長流等の混在した流れが生じている場を意味する。「振動体と流路の間隙」とは、分散部10における振動体7と流路13の空間的な隙間を意味する。
振動体の面の形状は、特に限定されるものではないが、平面視において、円形状、楕円形状、多角形状、正多角形状であることが好ましく、円形状、正多角形状であることがより好ましい。さらに、振動体の面は、平滑面、凹凸面、テーパー面、緩やかな曲面であることが好ましい。なお、「平滑面」とは、振動体の表面が平で滑らかな面であることを意味する。「凹凸面」とは、振動体の表面が平らでなく面、出っ張っている部分やくぼんでいる部分がある面を意味する。「テーパー面」とは、振動体を断面で見た場合に、直線的に先細りの形になっている面、入り口(周辺)から出口(中央部)にかけて間隙が狭くなり、出口部にかけてより強い複雑流れができるような面を意味する。中央から流出しない例では、分散部において、振動体上を横から混合物が流れる場合には、分散部の入り口の高さがやや広く、分散部の出口が狭い間隙になるように、振動体の面の傾きが形成されている場合が、上記の別の例として挙げられる。「緩やかな曲面」とは、たとえば、中央から流出する振動体の表面が全体としてはテーパー状であるが、連続的に曲がった、直線的に変化しない滑らかではあるが平面でない面を意味する。
振動体が、流路側方向から見た際の表面形状が平面状に形成されていることも好ましい態様の一つである。振動体の表面が平面状に形成される場合には、当該振動体が振動する際に、分散部を通過する混合物に均一に複雑流れ場を与えることができる。すなわち、振動体の表面が平面状に形成されていると、振動体が配置されている流路の内壁側へ近づいたり離れたりすることで、振動体の表面と流路の内壁との間で間隙が一律に小さくなったり一律に大きくなったりするため、均一に混合物に複雑流れ場を与えることができる。
当該「振動体」は、ラバープレートを上下の円柱状の振動子(ピストン)で挟み込み、バイブレータまたは振動モーター等の振動器で振動を与えているが、この例に限定されるものではない。このように振動体7が構成されることにより、混合物に複雑流れ場を与え易くなり、混合物中に含まれる、微粒子等のメジアン径を小さくでき、混合物中で分散が促進する。
さらに、振動体の振動により、分散部10における、流路の間隙が連続的に変化すると共に、当該連続的に変化した流路の間隙を、混合物が通過する際に、混合物に複雑流れ場が与えられることが好ましい。振動体の振動により、流路の間隙が連続的に変化すると、当該連続的に変化する流路内を混合物が通過する際に、確実に混合物に複雑流れ場を与えることができる。すなわち、当該連続的に変化する流路内を混合物が通過する際に、当該混合物に混合された微粒子に複雑流れ場(複雑振動流れ場)を与えることができる。
上記「振動体の振動」とは、振動体が、状態が一意に定まらず揺れ動くことを意味する。好ましいのは、流路方向対向する方向であって、流路の間隙が連続的に変化する方向に揺れ動くことである。なお、振動体に振動を起こさせるものとしては、特に限定されるものではないが、たとえば、振動体がモーター等の動力源に接続され、振動体自身が揺れ動くものに限らず、振動体に振動子を組み込んで一体化させてもよい。このようにして、当該振動子がモーター等の動力源に接続され、振動子が揺れ動くことによって、振動体が揺れ動くものであってもよい。
「流路の間隙が連続的に変化する」とは、分散部10における振動体7と流路13の空間的な隙間が、大きくなったり小さくなったりすることを意味する。別言すれば、振動体の振動が生じている間、混合物を通過させる流路の空間的な隙間が、振動体の振動に対応して、連続的に大きくなったり、小さくなったりすることである。たとえば、図1Cに示されるように、振動体7の振動に伴い、振動体の表面と流路内の内壁との間隔が小さい状態であったものが、図1に示されるように、振動体の表面と流路内の内壁との間隔が大きく開いた状態となるもの等、を例として挙げられる。
「当該連続的に変化した流路の間隙を、前記混合物が通過する際」とは、振動体の振動に対応して、連続的に大きくなったり、小さくなったりして、分散部10における流路の空間的な隙間が変化している、当該流路の空間的な隙間を、混合物通過する際、を意味する。
このように、分散部10(振動体7と流路)の間隙が連続的に変化する方向、例えば、図1C及び図1Dに示されるように、振動体7が上下方向に振動すると、混合物を通過させる流路の間隙を変化させることができる。そのため、流路の間隙が変化する際に、通過させる混合物に複雑流れ場を付与することができる。さらに、通過させる混合物に複雑流れ場を付与することで、メディアレスかつ低動力で、しかもほとんどコンタミネーションが無く、混合物中に含まれる微粒子を、それぞれのメジアン径を小さくさせながら分散させることができる。そのため、少ないエネルギーで、生産性及び作業性に優れたナノ微粒子の分散を行える。
さらに、混合物が、分散部10の間隙(振動体の振動により連続的に変化した流路の間隙)を通過する際に、混合物が、進行と後退を交互に繰り返しながら、通過路方向へ移動して、混合物が当該流路の間隙を通過するように構成されることが好ましい。このように構成されることで、混合された分散処理前の微粒子の、混合物中での分散が促進される。さらに、複雑流れ場を十分に与えることができ、当該複雑流れ場を与えた混合物中の微粒子は、分散処理前の微粒子と比較して、分散が促進され、メジアン径を小さくさせることができる。
上記「混合物が、分散部10の間隙を通過する際」とは、振動体の振動に対応して、連続的に大きくなったり、狭くなったりしている、分散部10における流路の空間的な隙間を、混合物を通過する際、を意味する。「混合物が、進行と後退を交互に繰り返しながら、通過路方向へ移動して、」とは、混合物が、振動体が設けられている流路内(分散部10)を通過する際に、振動体が設けられている流路の出口方向に向かって当該混合物が進むことと、振動体が設けられている流路の入り口側方向に向かってさがる(戻る)ことを交互に繰り返しながら、徐々に混合物の進行方向(振動体が設けられている流路の出口方向)である、通過路方向へ移動することを意味する。すなわち、混合物が、振動体が設けられている流路内を通過する際に、振動体の上面(流路に対抗する側にある振動体の面)上を、混合物が往復運動をしながら、振動体が設けられている流路の出口方向(通過路が形成されている方向)に向かって、当該混合物が進むことを意味する。
具体的には、図3の(1)〜(6)に示されるように、振動体7の上下方向への振動が連続的に行われると、分散部10における、振動体7が設置されている流路の空間的な隙間は、連続的に大きくなったり、狭くなったりしている。当該流路の空間的な隙間を混合物が通過する際に、混合物に複雑流れ場が与えられることで、混合物の通過速度を変化させることができる。これにより、混合物内での微粒子の分散を促進させることができる。このように、微粒子(凝集体等)の形状も可変的となって、混合物内での微粒子の分散を促進させる。さらに、図3の(2)〜(5)に示されるように、振動体の振動周期、振幅、押しつけ圧、間隙間隔が可変的となるため、更に、混合物内での微粒子の分散を促進させる。
更に、図3の(2)〜(5)に示されるように、分散部10において、混合物に複雑流れ場が与えられる場合には、例えば、図8A及び図8Bに示されるように、混合物は往復運動を行いながら、通過路方向へと徐々に押し出されるように進むことになる。すなわち、混合物が振動体7の設置された流路の領域に到達すると、図8Aの振動体7の外周側に複数の矢印で示されるように、混合物が振動体7の中心方向に向かって進むことになる。さらに、混合物は、振動体の中央に進んだ後、振動体の中央から紙面の上方向を指している矢印方向にある通過路(図示せず)に向かって、進むことになる。ただし、図8Aの振動体7の外周側に複数の矢印で示されるように、混合物が振動体の中心方向に向かって進む場合には、図8Bに示されるような、往復運動を行いながら、振動体の中央に向かって進むこととなる。なお、図8Aでは、通過路が円形状の振動体の中心から鉛直方向上側(垂直方向上側)にある場合の、混合体の移動を示すものであり、混合物の移動はこの例に限定されるものではない。また、図8Bにおける、a、b、c、dの符号は、それぞれ混合物を意味する。そして、図8Bでは、混合物が振動体上を進む距離は、a<b<c<dの関係であること、さらに、|+a|>|−a’|の関係を示している。なお、|+a|は、混合物である「a」が、振動体の中央に向かって振動体上を進む距離を示し、|−a’|は、混合物である「a」が、振動体の中央に向かう方向とは逆方向に振動体上を進む距離を示している。
なお、図8Aは、本発明の湿式分散器における、振動体7の平面図であって、当該振動体7と複雑流れ場を与えられた混合物の関係を説明する模式図である。図8Bは、図8Aの振動体の一部を切欠いて、混合体の移動を模式的に示した説明図である。
さらに、振動体と流路の最小間隙は0μmより大きく〜500μmであることが好ましい。このような所定の大きさに振動体と流路の間隙を形成することで、複雑流れ場を混合物に十分に与えることができる。そのため、混合物の微粒子等の分散が促進される。「最小間隙」とは、分散部10において振動体7と流路13の間隙が最も小さくなった際の間隙を意味する。更に、分散前の混合物中の凝集体が数mm〜数百μmのメジアン径を有する場合でも、数百〜数十μmのメジアン径にまで分散させるために、本発明の湿式分散器を使うこともできる。ただし、当該数百〜数十μmのメジアン径にまで分散させる場合には、上記流路最小間隙は100μm〜5mmであることが好ましい。
さらに、混合物が通過する際に等距離を流れるように、後述の通過路は、分散部13から等距離に位置するように形成されることが好ましい。このように等距離に通過路が形成されることで、分散部13を通過する混合物のいずれにおいても、均一的に複雑流れ場を与えることができる。たとえば、図5に示されるような振動体7(37a)では、混合物が周囲から振動体7上に浸入する。そのため、円心Oの位置上に通過路が形成されると、混合物が振動体37aの周囲のいずれから浸入しても、複雑流れ場を与える距離が等しくなるため、均一な分散を促進させやすくなる。同様に、図6に示されるような矩形状の振動体7(37b)では、混合物が紙面上側方向の端部から振動体7に浸入し、紙面上方向の端部から流れ出すように形成されている。この場合においても、左側方向の端部から右方向の端部までの距離が等しくなるようにすると、均一な分散を促進させやすくなる。同様に、図7に示されるような三角形状の振動体7(37c)では、混合物が紙面上側方向の端部から振動体7に浸入し、紙面上方向の端部から流れ出すように形成されている。この場合においても、左側方向の端部から右方向の端部までの距離が等しくなるようにすると、均一な分散を促進させやすくなる。なお、上記「距離」とは、分散部の始端から分散部の終端までの距離(分散部の始端から通過路の入り口までの距離)を意味する。さらに、上記「等距離」は、厳密な迄の等しい距離に限定されるものではなく、±20%程度の誤差も許容範囲に含まれる。そのため、本発明の湿式分散器における「振動体」の表面形状には、円形状、矩形状、正多角形状(たとえば、正六角形状)等のみならず、楕円形状、多角形状(六角形状)等の形状も含まれる。
さらに、分散部13にある前記振動体の面の形状は、特に限定されるものではないたとえば、円形状、楕円形状、矩形状、正多角形状、又は三角形状からなる面を有する振動体を挙げることができる。さらに、分散部13にある振動体の面の形状は、流れが等距離となる矩形状、又は三角形状であることが好ましく、これらのうちでも、特に、分散部にある振動体の面の形状が円形状であることがより好ましい。分散部13にある面の形状を上記形状に形成することで、配置スペースに応じた湿式分散器を得ることができる。更に、分散部13にある面の形状が円形状であること、すなわち、分散部13にある面の形状が円形に形成され、円形の振動体7の周り(周囲)から分散部の間隙に混合物が流入するように形成されることが好ましい。
「分散部にある振動体の面の形状」とは、流路の一部を実質的に形成している振動体の面(振動体の表面)の形状であって、混合物が通過する面、或いは接触面の形状をいう。そして、振動体の表面は、平滑面、凹凸面、テーパ―面、緩やかな曲面等、あらゆる表面形状を取ることができる。
たとえば、分散部にある振動体の面の形が円形状の例としては、図5に示されるような振動体7(37a)を挙げることができる。分散部にある振動体7の面の形状が矩形状の例としては図6に示されるような振動体7(37b)を挙げることができる。たとえば、分散部にある振動体の面の形状が三角形状の例としては、図7に示されるような振動体7(37c)を挙げることができる。
たとえば、図5に示されるような、円形状の振動体7(37a)では、混合物は、振動体7(37a)の外周側から振動体7(37a)上へ浸入し、さらに、当該振動体7(37a)の中央(円心O)方向に向けて、混合物が移動する。そして、混合物は、振動体7(37a)の外周側から当該振動体7(37a)の中央(円心O)方向に向けて移動する際に、複雑流れ場を与えられた後、振動体7(37a)の中央(円心O)上に設けられた通過路を通過するように構成されている。
一方、図6に示されるような矩形状の振動体7(37b)、及び図7に示されるような三角形状の振動体7(37c)では、混合物は、紙面上、振動体の右側方向から混合物が浸入し、紙面上、当該振動体7(37b,37c)の左側方向の出口に向けて、混合物が移動する。そして、混合物は、振動体上を進みながら出口に向けて移動する際に、複雑流れ場を与えられた後、出口に設けられた通過路を通過するように構成されている。
さらに、図9Aに示されるように、流路側にある振動体7の面の形状が円形状であって、円の円心方向に向けてスリット8aが複数本形成されている、或いは、円の円心方向に向けて凸状の段部が複数本形成されていることが好ましい。このように構成されることで、混合物を所定の進行方向へガイド(案内)できやすくなる。さらに、所定のスリット8a又は段部によって、混合物に与える複雑流れ場をより複雑にすることができる。そのため、分散処理後の混合物中にナノ微粒子を確実に分散することができる。すなわち、振動体7の上下運動に応じた複雑流れ場を与えることに加えて、上記所定のスリット8a又は段部による、混合物をかき混ぜる動きをも生じさせることができる。そのため、分散を促進させることができる。
さらに、図9Bに示されるように、流路側にある振動体7の面の形状が、円形状であって、面上に凹凸部8bが複数個形成されているものも好ましい。所定の凹凸部8bを設けることによって、混合物に与える伸長場を複雑にすることができる。その結果、混合物中の微粒子等を確実に分散することができる。すなわち、振動体の上下運動に応じた複雑流れ場を与えることに加えて、上記所定の凹凸部8bによって、混合物をかき混ぜる動きを生じさせることができる。そのため、分散を促進させることができる。
さらに、図9Cに示されるように、凹凸部のうちの凸部が、円形状であって、円形状の円心を中心にして、リング状に複数個形成されていることが好ましい。すなわち、リング状の凹凸部8cが形成されていることが好ましい。このようにすることで、混合物に与える複雑流れ場をより複雑にすることができる。そのため、混合物中の微粒子等を確実に分散することができる。別言すれば、振動体の上下運動に応じた複雑流れ場を与えることに加えて、上記所定のリング状の凹凸部8cにより、混合物をかき混ぜる動きをも生じさせることができる。そのため、分散を促進させることができる。
振動体の振幅が10μm〜10mmであることが好ましい。このようにすることで、振動体上を通過する混合物に十分な伸長場を与えることができるため、混合物中の微粒子の分散を確実に促進させることができる。
一方、振動体の振幅が、10μm未満であると、混合物に複雑流れ場を十分に付与させることができない場合があり、分散を十分に促進させることができない場合がある。また、振動体の振幅が、10mm超であると、振幅が大き過ぎてしまい、十分な複雑流れ場を与える前に、混合物が振動体を通過しまう恐れがある。さらに、振動体を与える領域(区間)を拡大したりすることも必要になる。
振動体の振動数は10〜10,000Hzであることが好ましい。このようにすることで、振動体が設置されている流路内(振動体上)を通過する混合物に十分な複雑流れ場を与えることができるため、混合物中の微粒子の分散を確実に促進させることができる。
一方、振動体の振動数が、10Hz未満であると、振動が大き過ぎてしまい、混合物中の微粒子に十分な複雑流れ場を与える前に、混合物が振動体を通過してしまう恐れがある。また、振動体の振動数が、10,000Hz超であると、混合物に複雑流れ場を十分に付与させることができない場合がある。
なお、振動体は、1つに限定されるものではなく、複数の振動体を設けて、混合物に複雑流れ場を与える領域を長く形成してもよい。このようにすることで、混合物に複雑流れ場を十分に付与させることができる。さらに、振動体を複数設ける場合には、全ての振動体の振幅又は振動数等を同じ値にして複雑流れ場を与えるようにしてもよいし、それぞれ異なる値にして複雑流れ場を与えるようにしてもよい。
[1−4]通過路:
本発明における湿式分散器において、「通過路」は、図1A〜1Dに示されるように、混合物に複雑流れ場を与える「振動体7」の設置個所の、後に続く流路に設けられる。当該「通過路」は、上記振動を与えた混合物に、更に、複雑流れ場を与える流路となる。
通過路は、振動体によって複雑流れ場を与える方向に対して交差する方向に形成されている。このようにすることで、複雑流れ場を与えた混合物内の微粒子を、更に混合物中に十分に分散させることができる。一方、振動体によって複雑流れ場を与える方向に対して、沿う方向に形成されている場合には、混合物内において微粒子を分散させる効果を大きくできない場合がある。
さらに、通過路は、分散部から等距離に位置するように形成されることが好ましい。このように通過路が形成されることで、分散部のいずれの距離も一定にすることができるため、分散部において均一的に複雑流れ場を与えることができる。
さらに、振動体近傍の通過路の入り口は、円形状、ノズル状、又はオリフィス状に形成されていることが好ましい。このような形状に通過路の入り口を形成することで、分散部を通過した混合物に対して、更に通過路で複雑流れ場を十分に与えることができる。
[1−4−1]オリフィス:
上記通過路の入り口は、オリフィス状に形成されていることが好ましい。通過路の入り口が、オリフィス状に形成されていると、複雑流れ場を付与された混合物が、オリフィス状の通過路の入り口を通過する際に、再び複雑流れ場を混合物に与えることができる。すなわち、オリフィス状の通過路の入り口は、流路に対して、大幅に絞られた径を有している。そのため、オリフィス状の通過路の入り口を通過する際の混合物の流速が急激に早くなる。そのため、混合物中の微粒子(凝集粒子)に下流側に引き延ばす力が加わることにより、分裂破壊が起こる。そのため、混合物中の微粒子がより高度に分散される。さらに、振動体を設置して複雑流れ場を与えていた流路方向に対して交差する方向に形成されているため、混合物の流れ方向に対して交差する方向に、力が加えられるため、さらに、分裂破壊を促進させることができる。さらに、オリフィスを含めた通過路として構成してもよい。
通過路の入り口が、オリフィス状に形成されている場合に、当該オリフィス状の部分(領域)の材質は特に限定されるものではないが、当該オリフィス状の部分(領域)には、微粒子が分散されたスラリーが高速で通過するため、ほとんどコンタミネーションを生じさせないといった分散処理の観点から、耐摩耗性に優れた材料を適用することが好ましい。たとえば、超鋼合金、セラミック製であることが好ましい。
通過路の入り口が、オリフィス状に形成されている場合に、当該オリフィス状の部分(領域)の径が1〜50mmであることが好ましい。さらに、通過路の入り口が、オリフィス状に形成されている場合に、当該オリフィス状の部分(領域)の径が、振動体の径の1000分の1〜5分の1であって、0.1〜50mmであることがより好ましい。このようにすることで、当該オリフィス状の部分(領域)を通過する際の混合物の流速を制御でき、確実に、混合物中の微粒子(凝集粒子)に、下流側に引き延ばす力を加えることができ、複雑流れ場を混合物に与えることができる。そのため、混合物中の微粒子がより高度に分散される。
一方、通過路の入り口が、オリフィス状に形成されている場合に、当該オリフィス状の部分(領域)の径が1mm未満であると、当該オリフィス状の部分(領域)の、混合物の通過を妨げることがある。さらに、分散処理量が劣るものとなることがある。通過路の入り口が、オリフィス状に形成されている場合に、当該オリフィス状の部分(領域)の径が50mm超であると、オリフィスを出た後での複雑流れ場の効果が十分に発現せず、混合物に複雑流れ場を与えることができない場合がある。
通過路の入り口が、オリフィス状に形成されている場合に、当該オリフィス状の部分(領域)の形状は特に限定されるものではないが、円筒状の形状であることが好ましい。たとえば、図1A〜1Dに示されるように、通過路の入り口を、オリフィス状に形成する場合には、当該オリフィス状の部分(領域)の形状は、混合物の流れ方向に向かって漸次縮径する円錐形状を有する。このようなオリフィス状の部分(領域)は、接着剤、各種の固定部材、或いは凹部に嵌入される等の方法により、スラリー流路の所定位置に固定される。
さらに、通過路のうち、オリフィスは、公知の形状、即ち、ナイフエッジ状、円状、ノズル状に形成されることが好ましい。
[1−5]超音波発生手段:
さらに、流路の途中に設けられた通過路の、更に下流側かつ近傍に超音波発生手段を有することも好ましい。当該超音波発生手段を設けることで、これまで説明した「複雑流れ場」が与えられた混合物中の、分散処理されたナノ微粒子等が再び凝集状態となることを防ぐことができる。すなわち、混合物中のナノ微粒子等は、分散処理された後も、再凝集化しやすい性質(傾向)を有している。そのため、超音波手段による超音波振動を混合物に与えることで、再凝集化を防ぐようにしてもよい。さらに、上記「複雑流れ場」によって、十分に分散処理されなかった微粒子がある場合にも、当該超音波手段によって、混合物中の微粒子を高度に分散させることもできるため好ましい。
上記「超音波発生手段」は、超音波発信部と、混合物の流路内に配置される超音波ホーンとから概ね構成されることが好ましい。なお、超音波ホーンを用いる場合には、当該超音波ホーンは、液密に係合する固定部材や、図示しない超音波発信部の固定部材によって、分散器本体に保持されることが好ましい。
なお、超音波発信部は、コントローラに接続され、当該コントローラによって、発生する超音波を制御することが好ましい。
さらに、混合物が超音波に十分に接触するように、流路中の超音波ホーンの配置部分には、流路が広径した空間部が設けられ、流路はここより流出口に接続されることが好ましい。このようにして、超音波によって分散された混合物は、空間部を経て流出口より湿式分散器から排出され、分離処理後の混合物を貯留する回収タンク23に送られる。
このように本発明の湿式分散器に、超音波発生手段を設けることで、前述の振動体により、「複雑流れ場」による分散と、更にオリフィス状に形成された通過路の入り口を通過することにより混合物与えられた「複雑流れ場」による分散と、超音波による分散とを組み合わせて、微粒子の分散処理を行うことができる。
すなわち、振動体、つまり分散部による複雑流れ場により微粒子を分散後、通過路のオリフィス状に形成された部分(領域)を混合物が通過することにより、微粒子が更に分散される。更に続けて、超音波振動を与えることによる、ナノ微粒子の再凝集化等を防ぎ分散状態が維持される。或いは、超音波振動を与えることにより、仮に分散が十分でなかった場合においても、分散を更に行うことができる。このようにすることで、異なる分散機構(振動体、オリフィス、超音波)を有する三つの分散の相乗効果によって、従来の湿式分散器に比して、より高度な分散を行うことができる。
なお、上記超音波発生手段は特に限定されるものではなく、公知の超音波発生器がいずれも適用可能である。
なお、分散に利用する超音波の周波数や出力には特に限定されるものではないが、超音波発生手段の周波数が20kHz〜10MHzであることが好ましい。このような周波数にすることで、十分な分散を行うことができる。
一方、超音波発生手段の周波数が20kHz未満であると、可聴域の音の発生を防ぐことができない場合がある。また、超音波発生手段の周波数が10MHzであると、再凝集化を防ぐこと、或いは分散処理をすること以上に、超音波発生手段が過大となる。
[2]その他の構成:
さらに、所定の溶液と、所定の材料からなる「微粒子」を所定の混合比で投入して得られた混合物を、本発明の湿式分散器に投入する前に、予め、攪拌する混合物攪拌層を設けてもよく、更に、当該混合物攪拌層を、分散器本体の流入口に連通接続してもよい。さらに、送液ポンプ(供給ポンプ)、或いは吸引ポンプを適宜設置することが好ましい。
なお、混合物を送液する送液ポンプ特に限定されるものではないが、十分な排出量および吐出圧を有するものであればよく、公知のいわゆる送液ポンプを用いることができる。
[3]湿式分散器の使用方法:
まず、図1A〜図1D、図4に示されるように、混合物の流入口3および流出口5ならびに流入口3と流出口5とを連通する流路を有する分散器本体15をセッティングする。当該分散器本体15は、所定のハウジングを用意し、当該ハウジング内に、流路が形成されるようにし、振動体7と、通過路9を設けるように組み立てる。そして、当該流路の途中には、混合物に複雑流れ場を与える振動体7を設けて、分散部10を構成する。さらに、当該複雑流れ場の流れの方向に対して交差する方向に、通過路9(オリフィス状の通過路11)をセッティングする。当該通過路9は、複雑流れ場が与えられた混合物に再び複雑流れ場を与えことができるようにセッティングする。なお、上記振動体7をセッティングする際に、Oリング、ラバープレート等をセッティングしてもよい。このようにすることで、振動体7を振動させやすくなり、複雑流れ場を与え易くなる。
更に、所定の1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒とを少なくとも含む混合物を用意する。当該混合物流入口に投入する。たとえば、図4に示されるような貯留タンク17を設ける場合には、貯留タンク17に投入する。さらに、投入した混合物を、貯留タンク17から送液ポンプ21で、湿式分散器本体に送液する。このようにして、湿式分散器本体15に送液された混合物は、流路の流れに沿って、移動し、振動体7がセッティングされた領域を通過する際に、複雑流れ場が与えられる。さらに、複雑流れ場が与えられた混合物は、通過路9の入り口に設けられたオリフィス状の部分を通過する際に、再び複雑流れ場が与えられる。さらに通過路9の出口側近傍に、超音波振動手段がセッティングされる場合には、複雑流れ場が与えられた混合物に対して、さらに、当該超音波振動手段によって、超音波振動が与えられる。当該超音波振動が与えられた混合物は、再凝集化を防ぎ、更に、微粒子の分散を促進させることができる。このようにして、メジアン径が1〜500nmのナノ微粒子として分散された混合物は、湿式分散器本体15の外部に排出される。外部に排出された混合物は、送液管19を経由して、回収タンク23に貯留され、回収されることになる。なお、さらに、排出ポンプ等を設けて、微粒子が分散された混合物を、湿式分散器本体15の外部に排出してもよい。
[4]分散方法:
以下で、1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒とを少なくとも含む混合物中の、微粒子を分散する分散方法について説明する。なお、これまでの本発明の湿式分散器について説明された事項は以下の分散処理方法に適応できる。さらに、この分散処理方法として、好適に使用できる装置としては、これまで説明した、湿式分散器を挙げることができる。そのため、重複する記載は、本発明の湿式分散器の説明を参照されたい。
本発明における分散方法は、1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒とを少なくとも含む混合物中の、微粒子を分散する分散方法である。さらに、本発明における分散方法は、分散処理前の混合物に繰り返し複雑流れ場を与える複雑流れ場付与工程と、当該複雑流れ場付与工程時に、前記混合物に等距離を移動させる分散場を有する分散方法である。
[4−1]本発明の分散方法の概略:
本発明の分散方法は、混合物供給工程(S2)、混合物の複雑流れ場付与工程(S3)から概ね構成される。さらに、混合物調製工程(S1)を設けるとともに、上記混合物調製工程(S1)、得られた上記混合物を上記「混合物の複雑流れ場付与工程(S3)」に送液(供給)する「混合物供給工程(S2)」を設けてもよい。更に、「混合物の複雑流れ場付与工程(S3)」の後に、「混合物の複雑流れ場再付与工程(S4)」を設けてもよいし、「混合物の複雑流れ場付与工程(S3)」の後、或いは、上記「混合物の複雑流れ場再付与工程(S4)」の処理工程を設ける場合には、当該「混合物の複雑流れ場再付与工程(S4)」の処理工程の後に、混合物の超音波付与工程(S5)、混合物排出工程(S6)の工程を加えてもよい。ただし、この例に限定されるものではない。
「混合物調製工程(S1)」:
混合物調製工程は、1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒を少なくとも含むように、所定の混合比で調製して、混合物を得る工程である。当該混合物には、必要に応じて、「微粒子」、溶液の他に、界面活性剤、帯電制御剤等の分散後の、所定のメジアン径のナノ粒子の分散安定剤等を含むものであってもよい。さらに、得られた混合物(混合液)を攪拌処理する場合には、当該攪拌処理は、当該混合物調整工程(S1)に含まれる。
「混合物供給工程(S2)」:
混合物供給工程は、上記混合物調製工程(S1)で得られた混合物を、送液ポンプ、或いは吸引ポンプ等によって、たとえば、本発明の湿式分散器の流入口に送液する工程である。なお、流入口に送液する際の流量条件、及び送液速度は、本発明の湿式分散器と同様であり、流路径も本発明の湿式分散器と同様である。
「混合物の複雑流れ場付与工程(S3)」:
混合物の複雑流れ場付与工程は、振動体が設けられた流路に混合物が到達すると、振動体の振動によって、通過させる混合物に複雑流れ場を付与する工程である。混合物に複雑流れ場を与える方法としては、たとえば、振動体の振動によって、混合物を通過させる流路の間隙を変化させ、当該変化した流路の間隙によって生じる複雑流れ場を混合物に付与することが挙げられる。このように、混合物の複雑流れ場付与工程で、通過させる混合物に複雑流れ場を付与することで、コンタミネーションがほとんど無く、低動力にナノ微粒子を分散させることができる。なお、当該「混合物の複雑流れ場付与工程(S3)」は、具体的には、本発明の湿式分散器では、分散部で行われる処理工程である。そのため、分散部の説明を参照されたい。
「混合物の複雑流れ場再付与工程(S4)」:
混合物の複雑流れ場再付与工程は、混合物に複雑流れ場を与える「混合物の複雑流れ場付与工程(S3)」の、後に続く処理工程であり、混合物の複雑流れ場付与工程(S3)」で、振動を与え分散させた混合物に、再び、複雑流れ場を与える工程である。
上記混合物の複雑流れ場再付与工程(S4)では、上記複雑流れ場を与える方向に対して交差する方向に、混合物を通過させるとともに、当該複雑流れ場を与える方向に対して交差する方向を通過する際に、混合物に複雑流れ場を再び与えるものである。このようにすることで、混合物内において微粒子を十分に分散させることができるためである。一方、振動体によって複雑流れ場を与える方向に対して、沿う方向に形成されている場合には、混合物内において微粒子を分散させる効果を大きくできない場合がある。
なお、当該「混合物の複雑流れ場再付与工程(S4)」は、具体的には、本発明の湿式分散器では、通過路で行われる処理工程である。そのため、通過路の説明を参照されたい。
「混合物排出工程(S6)」:
混合物排出工程は、分散された混合物を流出口から排出する工程である。
「超音波付与工程(S5)」:
さらに、超音波付与工程を、混合物の複雑流れ場再付与工程(S4)と、混合物排出工程(S6)の間に加えて処理することで、確実に微粒子の分散を行うことができる。なお、超音波付与工程は、本発明の湿式分散器の超音波発生手段を参照されたい。
さらに、本発明の分散方法では、複雑流れ場付与工程では、混合物が進行と後退を繰り返しながら移動させる際に、混合物に複雑流れ場を与えるとともに、複雑流れ場再付与工程では、複雑流れ場付与工程で複雑流れ場を与えた混合物に、複雑流れ場の流れの方向に対して交差する方向に複雑流れ場を再び与えるように構成されることが好ましい。このようにすることで、混合物中に、混合された微粒子の分散が促進する。さらに、混合物中の微粒子の径は、振動体の設置個所を通過する前と比べると、通過した後ではメジアン径を小さくさせることができる。
更に、本発明の分散方法では、1次粒子は、粒子状物質、又は繊維状物質を含むことが好ましい。更に、微粒子が、分散後の混合物中にメジアン径1〜500nmのナノ微粒子として、混合物中に分散させることが好ましい。更に、微粒子が分散後の混合物中にメジアン径500nm〜10μmの処理後微粒子として、或いは、前記微粒子が分散後の混合物中に繊維径1〜100nm、長さが前記繊維径の100倍以上であるナノファイバーとして、混合物中に分散させることも好ましい態様である。更に、本発明の分散方法では、噴出分散工程又は超音波分散工程を有することが好ましい。このような処理工程を有することで、分散処理を確実に行うことができる。
当該「噴出分散工程」は、例えば、分散部で処理された混合物をオリフィス状に形成された通過路に通過させる際に、混合物を噴出させて、分散部で混合物に与えた複雑流れ場と異なる複雑流れ場を与える工程である。なお、当該「噴出分散工程」は、本発明の湿式分散器では、通過路で行われる処理工程であるため、「混合物の複雑流れ場再付与工程(S4)」ともいえる。さらに、「超音波分散工程」とは、本発明の湿式分散器では、超音波発生手段で行われる処理工程であるため、超音波発生手段の説明を参照されたい。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、実施例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。
図1A〜図1D、図4に示されるような湿式分散器1(湿式分散器本体15)を用いるとともに、凝集粒子(ヒュームドシリカ)を予め混合した原液を用い、分散処理前と分散処理後の混合物の分散状態を確認する実験を行った。
具体的には、図1A〜図1D、図4に示されるように、原液(混合物)が貯留されている貯留タンク17から、湿式分散器本体15へ混合物を送液できるように、送液管19で接続し、当該貯留タンク17と湿式分散器本体15の間に、供給ポンプ21を配置した。さらに、供給ポンプ21と湿式分散器本体15の間に、圧力計25を配置した。
供給ポンプ21は、プロミネント製 BT4B1602Sを使用した。供給ポンプ21の混合物(混合液)の送液量は1kg/時間(出力55%、パルス40%)となるようにセッティングした。さらに、圧力計25の送水圧は、0.04MPaとした。さらに、上記送液管は、4mmの径のものを使用した。
湿式分散器本体15としては、大川原化工機(株)製の分散モデル1を使用した。当該湿式分散器本体15は、以下のように構成されたものである。まず、振動器として、EXEN タービンバイブレータ BTP18を用い、振動体7に取り付けた。さらに、振動体7として、流路方向に対抗する面が円形状であって、全体として円柱状のものを用意した。当該円形状の面の直径は40mmである。当該振動体を、湿式分散器にセッティングした。なお、振動器は、空気を送り込むことにより上下運動をするように構成されており、振動器と空気取り込み口の間を空気送り込管33で連結するとともに、図4に示されるように。空気調整弁27、空気流量計29をセッティングした。さらに、ピストンに送り込む空気を開放するための、空気開放経路31を設けた。上記空気の送り込み量は、7.6リットル/minとした。振動体の振動周波数は、150Hzとした。
さらに、振動体7を設けた流路の下流側に、振動体7の振動の上下方向に対して平行方向に、通過路9を形成し、当該通過路9の入り口側をオリフィス状に形成した。当該通過路の入り口の径は0.5mmとした。オリフィス速度は141cm/sとした。
上記空気流量計は、SMC(株)製 PF2A−710−01−27−Mを用いた。振動計は、リオン(株)製 VM−80 振動計35aと、(株)小野測器 CF−350 FFTアナライザ35bを用いた。さらに、ヒュームドシリカは、TOKUYAMA REOLOSIL QS−102を用いた。
分散処理前の混合物(処理前の分散液)の固形分濃度は0.04%のものを使用した。なお、貯留タンク17に投入した際の、分散処理前の混合物を観察すると、混合物は、白濁しており、沈降スピードは速く、粗粒が沈降して分離している状態であった。
(結果)
本発明の湿式分散器による、分散処理前の混合物と分散処理後の混合物では、目視で懸濁状態が異なり、分散処理後の混合物の方が、長い間白濁していることが目視で明瞭に観察できた。さらに、湿式分散器による、分散処理前の混合液(混合物)と、分散処理後の混合液(混合物)を、夫々サンプル瓶に移して目視で比較すると、沈降物の状態が異なった。具体的には、分散処理後の混合液(混合物)の方が、沈降物が細かく、沈降速度が遅かった。
さらに、粒子径分布測定装置で、分散処理前の混合液(混合物)と、分散処理後の混合液(混合物)は、図10に示されるように、ヒュームドシリカの粒子(凝集体)の大きさに違いがあった。分散処理前の混合物(原液)は、200nmと1000nmにピークのある状態のものであったが、本発明の湿式分散器で混合物を1回のみ分散処理した後の混合物と、本発明の湿式分散器で混合物を2回のみ分散処理した後の混合物は、それぞれ約300nmにメジアン径のある分散状態となった。
(考察)
上記結果から、本発明の湿式分散器では、粒子のメジアン径又は小凝集粒子のメジアン径が1〜500nmの2次粒子又は2小凝集粒子として前記混合物中に分散できることが証明された。なお、本発明の湿式分散器で、1回のみ分散処理した混合物と、2回のみ分散処理した混合物の分散状態が大きく変わらなかったのは、この複雑流れ場力では粒子の凝集力とのバランスが取れていることが考えられる。
本発明は、凝集体、1次粒子又は1次小凝集粒子のいずれかと、分散媒を少なくとも含む混合物中の、凝集体、1次粒子又は前記1次小凝集粒子を、メジアン径が1〜300nmのナノ微粒子として前記混合物中に均一に分散させる湿式分散器及び微粒子の分散処理方法に広く用いることができる。
1:湿式分散器、3:流入口、5:流出口、7:振動体、8a:スリット、8b:凹凸部、8c:(リング状の)凹凸部、9:通過路、10:分散部、11:オリフィス状の通過路、13:流路、13C:流路領域、13C’:流路領域、13E:流路領域、13F:流路領域、13F’:流路領域,13G:流路領域,13G’流路領域,15A:分散器本体、15B:分散器本体、17:貯留槽(貯留タンク)、19:送液管、21:供給ポンプ、23:回収槽(回収タンク)、25:圧力計、27:空気調整弁、29:空気流量計、31:空気開放経路、33:空気送り込管、35a:振動計、37a:(円形状の)振動体、37b:(矩形状の)振動体、37c:(三角形状の)振動体、A:分散前の混合体、B:分散後の混合体、O:円心、Y1:振動体の動く方向、Y2:微粒子を含む混合物の流れ方向。

Claims (15)

  1. 1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒とを少なくとも含む混合物中の、前記微粒子を分散させる湿式分散器であって、
    前記混合物の流入口および流出口ならびに前記流入口と前記流出口とを連通する流路を有すると共に、前記流路の途中に設けられ、前記混合物に収縮流、せん断流、伸長流が混在された流れ場を与える、振動体と前記流路との間隙とから構成される分散部を備え、
    さらに、前記分散部の後に続く流路として、通過路が形成されてなり、
    前記分散部にある前記振動体の面の形状は、振動体の周りから分散部の間隙に混合物が流入する円形状に形成され、
    且つ、前記振動体近傍の、前記通過路の入り口は、円形状、ノズル状、又はオリフィス状に形成されている湿式分散器。
  2. 前記1次粒子は、粒子状物質、又は繊維状物質を含む請求項1に記載の湿式分散器。
  3. 前記微粒子を、分散後の混合物中にメジアン径1〜500nmのナノ微粒子として、分散させる請求項1又は2に記載の湿式分散器。
  4. 前記微粒子を分散後の混合物中にメジアン径500nm〜10μmの処理後微粒子として、或いは、前記微粒子が分散後の混合物中に繊維径1〜100nm、長さが前記繊維径の100倍以上であるナノファイバーとして、分散させる請求項1又は2に記載の湿式分散器。
  5. 前記振動体の振動により、前記流路の間隙が連続的に変化すると共に、当該連続的に変化した流路の間隙を、前記混合物が通過する際に等距離を流れる通過路を有し、前記混合物に前記収縮流、前記せん断流、前記伸長流が混在された流れ場が与えられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の湿式分散器。
  6. 前記分散部にある前記振動体の面の形状が円形状であって、前記振動体の面の中心方向に向けてスリットが複数本形成されている、或いは、前記分散部にある前記振動体の面の形状が円形状であって、前記振動体の面の中心方向に向けて凸状の段部が複数本形成されている、或いは、前記分散部にある前記振動体の面の形状が円形状であって、前記振動体の面上に凹凸部が複数個形成されている、或いは、前記分散部にある前記振動体の面の形状が円形状であって、前記振動体の面上に凹凸部が複数個形成されていると共に、前記凹凸部のうちの凸部が、円心を中心にして、リング状に複数個形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の湿式分散器。
  7. 前記振動体と前記流路の最小間隙は0μmより大きく〜500μmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の湿式分散器。
  8. 前記振動体の振幅が10μm〜10mmである請求項1〜7のいずれか1項に記載の湿式分散器。
  9. 前記振動体の振動数は10〜10,000Hzである請求項1〜8のいずれか1項に記載の湿式分散器。
  10. 前記通過路の出口側かつ近傍に超音波発生手段を有し、前記超音波発生手段の周波数が20kHz〜10MHzである請求項1〜9のいずれか1項に記載の湿式分散器。
  11. 1次粒子、1次小凝集粒子及び凝集体からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子と、分散媒とを少なくとも含む混合物中の、前記微粒子を分散する分散方法であって、分散処理前の前記混合物に繰り返し、前記流れ場を与える、流れ場付与工程を有し、前記流れ場付与工程時に、前記混合物に等距離を移動させる分散場を含み、
    本願請求項1〜10の湿式分散器を用いる微粒子の分散方法。
  12. 前記1次粒子は、粒子状物質、又は繊維状物質を含む請求項11に記載の分散方法。
  13. 前記微粒子を、分散後の混合物中にメジアン径1〜500nmのナノ微粒子として、前記混合物中に分散させる請求項11又は12に記載の分散方法。
  14. 前記微粒子を分散後の混合物中にメジアン径500nm〜10μmの処理後微粒子として、或いは、前記微粒子が分散後の混合物中に繊維径1〜100nm、長さが前記繊維径の100倍以上であるナノファイバーとして、前記混合物中に分散させる請求項11又は12に記載の分散方法。
  15. さらに、前記流れ場付与工程後に、前記流れ場付与工程と異なる、収縮流、せん断流、伸長流が混在された流れ場を与える噴出分散工程、或いは、前記噴出分散工程後に、又は、前記流れ場付与工程後に、超音波振動を与えて混合物を分散させる超音波分散工程を有する請求項11〜14のいずれか1項に記載の分散方法。
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