図1は、本発明の実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す模式図である。なお、図1に含まれる断面図及び側面図は、z方向正側が鉛直方向上方である。
ダイカストマシン1は、固定金型103及び移動金型105(以下、両者を合わせて「金型101」ということがある。)により構成されたキャビティCaに溶湯ML(溶融状態の金属)を射出し、溶湯MLを固化させてダイカスト品(成形品)を製造するための装置である。
ダイカストマシン1は、例えば、金型101の型開閉及び型締めを行う型締装置3と、キャビティCaに溶湯MLを射出する射出装置5と、ダイカスト品を移動金型105から押し出す押出装置7とを有している。ダイカストマシン1は、この他、特に図示しないが、例えば、上記の各装置を制御する制御装置を有している。
型締装置3は、例えば、固定金型103を保持する固定ダイプレート9と、ダイベース107を介して移動金型105を保持する移動ダイプレート11と、移動ダイプレート11を型開閉方向(x方向、固定ダイプレート9及び移動ダイプレート11の対向方向)において駆動可能な型開閉駆動装置13とを有している。なお、型締装置3は、この他、特に図示しないが、例えば、固定ダイプレート9と移動ダイプレート11とに架け渡される複数のタイバーを有している。ダイベースは、移動金型の一部として定義されることもあるが、本願では、便宜上、ダイベースと移動金型とは別部材であるものとする。
移動ダイプレート11が固定ダイプレート9に対して型開閉方向に駆動されることにより、金型101の型開閉がなされる。また、不図示のタイバーの一端が固定ダイプレート9及び移動ダイプレート11の一方に固定されるととともにタイバーの他端が引っ張られることにより、金型101の型締めがなされる。
なお、型締装置3は、型開閉駆動装置13の動力をトグル機構を介して移動ダイプレート11に伝達するトグル式のものであってもよいし、型開閉駆動装置13の動力を直接的に移動ダイプレート11に伝達する直圧式のものであってもよいし、型開閉を行うための駆動装置と型締を行うための駆動装置とが別個に設けられる複合式のものであってもよい。型開閉駆動装置13は、例えば、液圧シリンダ又は電動機により構成されている。
射出装置5は、キャビティCaに連通されるスリーブ15と、スリーブ15内を摺動可能なプランジャ17と、プランジャ17を駆動する射出駆動装置19とを有している。
ラドル21によりスリーブ15内に溶湯MLが供給され、プランジャ17がスリーブ15内をキャビティCa側へ前進することにより、溶湯MLがキャビティCaに射出、充填される。スリーブ15の先端は射出口の一例であり、金型101のうちのスリーブ15の先端が位置する部分は鋳込口の一例である。
なお、射出駆動装置19は、プランジャ17に連結された液圧シリンダを有する油圧式のものであってもよいし、プランジャ17にボールねじ機構等の伝達機構を介して接続された電動機を有する電動式のものであってもよいし、液圧シリンダと、そのピストン等を駆動する電動機とを有するハイブリッド式のものであってもよい。
押出装置7は、先端がダイカスト品に当接する複数の押出ピン23と、複数の押出ピン23の後端が固定された押出板25と、押出板25に固定された押出ロッド27と、押出ロッド27を駆動する押出シリンダ29とを有している。なお、押出装置7は、この他、特に図示しないが、押出板25を型開閉方向に案内するガイド軸等を有していてもよい。また、図1において、押出板25は、紙面上方側と下方側とで互いに異なる位置の断面が示されている。
キャビティCaに射出された溶湯MLが凝固してダイカスト品が形成されると、型締装置3によって金型101の型開きが行われる。この際、金型101の形状、及び、プランジャ17によってダイカスト品を押し出す動作(押出追従)等によって、ダイカスト品は移動金型105に残留する。そして、押出ピン23を移動金型105の表面から突き出させるように押出シリンダ29が駆動力を発揮すると、押出ピン23によってダイカスト品が移動金型105から押し出される。
押出ピン23は、移動金型105に型開閉方向に挿通されており、その先端が移動金型105の固定金型103側の表面から出入り可能である。複数の押出ピン23は、金型101内の形状(キャビティCaだけでなく、ランナ等を含む空間の形状)等に応じて適宜な位置及び本数で設けられている。
押出板25は、例えば、ダイベース107(移動金型105と移動ダイプレート11との間)に型開閉方向に移動可能に収容されており、また、押出ピン23側のピン側板31と、押出ロッド27側のロッド側板33とを有している。ピン側板31は、押出ピン23に固定されている。ロッド側板33は、押出ロッド27に固定されている。ピン側板31及びロッド側板33は、適宜な着脱機構によって互いに固定及びその解除が可能となっている。
ピン側板31及びロッド側板33が着脱可能となっていることにより、例えば、型締装置3に保持されている金型101を交換するときに、簡便に押出ピン23を交換することができる。
押出ピン23側のピン側板31に対する固定方法、押出ロッド27側のロッド側板33に対する固定方法、及び、ピン側板31及びロッド側板33の着脱方法は、公知の方法と同様とされてよい。
例えば、ピン側板31は、前側板35及び後側板37を有し、押出ピン23は、前側板35に挿通されるとともに、後端に設けられたフランジ部が前側板35と後側板37とに挟まれることにより、ピン側板31に固定されている。押出ロッド27は、特に図示しないが、例えば、押出ピン23のピン側板31に対する固定方法と同様の固定方法によってロッド側板33に固定されてもよいし、先端に形成された雄ねじ部がロッド側板33の一部に挿通されるとともにナットと螺合されることによって固定されてもよい。
ピン側板31及びロッド側板33の着脱機構は、例えば、クランプ機構によって構成されてよい。例えば、ピン側板31は、後方に突出し、その先端にフランジが形成されたクランプピン39を有し、ロッド側板33は、クランプピン39をクランプする不図示のクランプ部を有していてよい。ロッド側板33のクランプ部は、例えば、特に図示しないが、ロッド側板33が、押出ロッド27に固定される板と、当該板に対してスライドすることによってクランプピン39のフランジに係合する板とを有することによって構成されてよい。また、着脱機構は、例えば、ロッド側板33に設けられた電磁石によってピン側板31を吸着するマグネット式の機構によって構成されてもよい。
押出ロッド27は、移動ダイプレート11に型開閉方向に挿通されており、移動ダイプレート11に対して型開閉方向に移動可能である。複数の押出ロッド27は、ロッド側板33の形状及び大きさ等に応じて適宜な位置及び本数で設けられている。例えば、押出ロッド27は、上下左右の4箇所、又は、対角線方向の4箇所(4隅)に設けられている。
押出シリンダ29は、シリンダ部材41と、シリンダ部材41内に摺動可能に収容された不図示のピストンと、当該ピストンに固定されたピストンロッド43とを有している。特に図示しないが、シリンダ部材41内は、ピストンにより2つのシリンダ室に区画されており、その2つのシリンダ室に選択的に作動液が供給されることにより、押出シリンダ29は伸縮する。
押出シリンダ29は、例えば、移動ダイプレート11の移動金型105とは反対側に配置されている。そして、ピストンロッド43は、例えば、移動ダイプレート11に固定されている。シリンダ部材41は、移動ダイプレート11の移動金型105とは反対側に配置された取付板45を介して押出ロッド27に固定されている。なお、取付板45は、シリンダ部材41の一部とみなされてもよいが、本願では、便宜上、シリンダ部材41とは別の部材として説明する。
押出シリンダ29の伸縮は、取付板45、押出ロッド27及び押出板25を介して押出ピン23に伝達される。これにより、押出ピン23が移動金型105の固定金型103側の表面から出入りする。押出シリンダ29(押出ピン23)の移動範囲は、例えば、20〜30mmである。
図2(a)は、図1の領域IIにおける構成の詳細を示す断面図である。図2(b)は図2(a)に示した構成の分解斜視図である。なお、図2(a)及び図2(b)は、一の押出ロッド27に関する構成を図示しているが、他の押出ロッド27に関する構成も同様である。
移動ダイプレート11は、複数の押出ロッド27を挿通可能な複数の第1挿通孔47Aと、複数の第1挿通孔47Aに代えて複数の押出ロッド27を挿通可能な複数の第2挿通孔47Bと、を有している。なお、以下では、第1挿通孔47A及び第2挿通孔47Bを区別せずに、「挿通孔47」ということがある。
複数の第1挿通孔47Aは、例えば、押出ロッド27の本数と同数設けられ、また、型開閉方向に見て、複数の押出ロッド27のロッド側板33に対する配置(複数の押出ロッド27相互の位置関係)と同一の配置で移動ダイプレート11に設けられている。同様に、複数の第2挿通孔47Bは、例えば、押出ロッド27の本数と同数設けられ、また、型開閉方向に見て、押出ロッド27のロッド側板33に対する配置と同一の配置で移動ダイプレート11に設けられている。ただし、複数の第1挿通孔47Aの配置位置(配置パターン)と、複数の第2挿通孔47Bの配置位置(配置パターン)とは、型開閉方向に直交する所定方向(本実施形態では上下方向(z方向))に互いにずれている。
従って、押出ロッド27及びロッド側板33は、移動ダイプレート11に対する取り付けにおいて、複数の押出ロッド27が複数の第1挿通孔47Aに挿通された取付状態と、複数の押出ロッド27が複数の第2挿通孔47Bに挿通された取付状態とを選択可能となっている。そして、これにより、押出ロッド27及びロッド側板33の移動ダイプレート11に対する取付位置は、複数の第1挿通孔47Aの配置と複数の第2挿通孔47Bの配置との距離s1(図2(a))だけ所定方向(上下方向)に変更可能となっている。
また、移動ダイプレート11には、押出ロッド27を支持するための前方ブシュ49A及び後方ブシュ49B(以下、これらを区別せずに、「ブシュ49」ということがある。)が設けられている。前方ブシュ49Aは、移動ダイプレート11の固定ダイプレート側(x方向正側)に取り付けられており、後方ブシュ49Bは、移動ダイプレート11の固定ダイプレートとは反対側(x方向負側)に取り付けられている。
図3(a)は、移動ダイプレート11の前方ブシュ49Aが取り付けられる部分を示す正面図である。図3(b)は、前方ブシュ49Aを示す正面図である。なお、図3(b)では、前方ブシュ49Aが移動ダイプレート11に取り付けられたときの挿通孔47の位置も点線で示している。図3(a)及び図3(b)は前方ブシュ49Aに関する構成を示しているが、後方ブシュ49Bに関する構成も、図面に付した座標系の方向が異なるだけで、図3(a)及び図3(b)に示す構成と同様である。
図2及び図3(a)に示すように、移動ダイプレート11は、固定ダイプレート9側の面に、型開閉方向に見て、互いに同一の押出ロッド27に対応する第1挿通孔47A及び第2挿通孔47Bに重なり、前方ブシュ49Aが嵌合する前方凹部51Aを有している。同様に、移動ダイプレート11は、固定ダイプレート9とは反対側の面に、型開閉方向に見て、互いに同一の押出ロッド27に対応する第1挿通孔47A及び第2挿通孔47Bに重なり、後方ブシュ49Bが嵌合する後方凹部51Bを有している。以下、前方凹部51A及び後方凹部51Bを区別せずに、「凹部51」ということがある。
ブシュ49は、押出ロッド27を支持可能な支持孔49hを一つのみ有している。そして、ブシュ49は、凹部51に嵌合させる際の向きを型開閉方向に平行な軸回りに180度反転させることにより、支持孔49hが第1挿通孔47Aに重なる(第2挿通孔47Bに重ならない)取付状態と、第2挿通孔47Bに重なる(第1挿通孔47Aに重ならない)取付状態とを選択可能となっている。上記の反転の軸は、具体的には、例えば、第1挿通孔47Aと第2挿通孔47Bとの中間位置(ブシュ49の型開閉方向に見た図形重心)である。
なお、挿通孔47の径は、支持孔49hの径(押出ロッド27の径)よりも大きくされており、ブシュ49による押出ロッド27の支持を阻害しないようになっている。
ブシュ49の外形(凹部51の形状)、支持孔49hの形状及びブシュ49の各部寸法は適宜に設定されてよい。例えば、ブシュ49の外形は、第1挿通孔47A及び第2挿通孔47Bの並び方向を長手方向とする直方体状に構成されている。支持孔49hの断面形状は、例えば、円形である。直方体のブシュ49に円形の支持孔49hが形成された場合において、ブシュ49の最も薄い部分の厚さt1又はt2(図3(b))は、例えば、第1挿通孔47Aと第2挿通孔47Bとの間の最も薄い部分の厚さt0(図3(a))よりも厚い。
ブシュ49の移動ダイプレート11に対する固定は、適宜な方法によりなされてよい。例えば、凹部51の底面には雌ねじ部53(図3(a))が形成されており、ブシュ49には貫通孔49a(図3(b))が形成されており、不図示のボルトが貫通孔49aに挿通されて雌ねじ部53に螺合されることによって、ブシュ49は移動ダイプレート11に固定される。この場合において、雌ねじ部53及び貫通孔49aの数及び配置は適宜に設定されてよい。例えば、雌ねじ部53(及び貫通孔49a)は、複数設けられるとともに、ブシュ49を180°反転させても利用可能に、180°回転対称の位置に配置されている。
ブシュ49は、その支持孔49hが第1挿通孔47A及び第2挿通孔47Bの一方に重なる取付状態において第1挿通孔47A及び第2挿通孔47Bの他方に重なる(塞ぐ)領域に、雌ねじ部49bを有している。ブシュ49を凹部51から引き抜くときには、雌ねじ部49bに不図示のボルトが螺合され、これにより、ブシュ49に引張力を付与するための係合部が構成される。雌ねじ部49bの数及び位置は適宜に設定されてよい。また、雌ねじ部49bは、その全体がブシュ49により塞がれた挿通孔47に重なってもよいし、一部がブシュ49により塞がれた挿通孔47に重なってもよい。
図4(a)は図1の領域IVにおける構成の詳細を示す断面図である。図4(b)は図4(a)で示した構成の分解斜視図である。
上述のように、押出ロッド27は、移動ダイプレート11に対する取付位置を変更可能である。これに対応して、押出ロッド27は、取付板45に対する取付位置を変更可能であり、ひいては、押出シリンダ29に対する取付位置を変更可能である。具体的には、以下のとおりである。
取付板45は、複数の押出ロッド27を挿通(取付)可能な複数の第1取付孔55Aと、複数の第1取付孔55Aに代えて複数の押出ロッド27を挿通(取付)可能な複数の第2取付孔55Bと、を有している。なお、以下では、第1取付孔55A及び第2取付孔55Bを区別せずに、「取付孔55」ということがある。
複数の第1取付孔55Aは、例えば、押出ロッド27の本数と同数設けられ、また、型開閉方向に見て、複数の押出ロッド27のロッド側板33に対する配置と同一の配置で取付板45に設けられている。同様に、複数の第2取付孔55Bは、例えば、押出ロッド27の本数と同数設けられ、また、型開閉方向に見て、押出ロッド27のロッド側板33に対する配置と同一の配置で取付板45に設けられている。ただし、複数の第1取付孔55Aの配置位置(配置パターン)と、複数の第2取付孔55Bの配置位置(配置パターン)とは、複数の第1挿通孔47Aの配置位置と複数の第2挿通孔47Bの配置位置とのずれと同一の方向及び距離で互いにずれている。
従って、複数の押出ロッド27を複数の第1挿通孔47Aに挿通させたことに対応して、複数の押出ロッド27を複数の第1取付孔55Aに取り付け可能であり、複数の押出ロッド27を複数の第2挿通孔47Bに挿通させたことに対応して、複数の押出ロッド27を複数の第2取付孔55Bに取り付け可能である。すなわち、押出ロッド27及びロッド側板33の押出シリンダ29に対する取付位置は、距離s1(図2(a)及び図4(a))だけ所定方向(上下方向)に変更可能となっている。
押出ロッド27は、例えば、後端(x方向負側の端部)に、他の部分(ロッド本体27a)よりも径が小さい小径部27bを有し、小径部27bは、雄ねじ部27cを有している。そして、小径部27bが取付孔55に前方から後方へ(x方向正側から負側へ)挿通されるとともに、雄ねじ部27cが取付板45の背後(x方向負側)に配置されたナット57と螺合されることにより、押出ロッド27は取付板45に対して固定される。取付板45の前面(x方向正側)には、押出ロッド27の取付板45に対する固定をより好適に行うために取付部材59が配置されている。
図5(a)は、取付板45の取付部材59が取り付けられる部分を取付部材59の取付前の状態で示す正面図である。図5(b)は、図5(a)と同様の範囲を取付部材59の取付後の状態で示す正面図である。
図4及び図5に示すように、押出ロッド27の小径部27b(雄ねじ部27c)は、取付部材59の嵌合孔59hに挿通され、押出ロッド27のロッド本体27aと小径部27bとの間の段差部は、取付部材59のうちの嵌合孔59hの周囲部分に係合する。また、取付部材59は、取付板45のうちの取付孔55の周囲部分に係合する。この状態で、雄ねじ部27cにナット57が螺合されることによって、押出ロッド27は、取付板45に取り付けられる。
取付部材59は、押出ロッド27が第1取付孔55Aに取り付けられるときには、嵌合孔59hが第1取付孔55Aに重なるように取付板45に取り付けられ、押出ロッド27が第2取付孔55Bに取り付けられるときには、嵌合孔59hが第2取付孔55Bに重なるように取付板45に取り付けられる。具体的には、例えば、取付部材59は、型開閉方向に平行な軸回りに180度反転されることにより、嵌合孔59hが第1取付孔55Aに重なる取付状態と、第2取付孔55Bに重なる取付状態とを選択可能となっている。上記の反転の軸は、具体的には、例えば、第1取付孔55Aと第2取付孔55Bとの中間位置である。
ここで、取付孔55の径は、小径部27b(雄ねじ部27c)の径よりも大きい。また、嵌合孔59hの径は、取付孔55の径よりも小さく、例えば、小径部27bの径と同等である。また、取付部材59の外形の径は、ロッド本体27aの径よりも大きい。従って、ロッド本体27aと小径部27bとの間の段差部は、取付板45のうちの取付孔55の周囲部分よりも、取付部材59のうちの嵌合孔59hの周囲部分に係合しやすく、また、取付部材59は、前記の段差部よりも取付板45のうちの取付孔55の周囲部分に係合しやすくなっている。
取付部材59の外形、嵌合孔59h(小径部27b)の形状及び取付部材59の各部寸法は適宜に設定されてよい。例えば、取付部材59の外形は、嵌合孔59hが第1取付孔55A及び第2取付孔55Bの一方に重なるときに、第1取付孔55A及び第2取付孔55Bの他方の一部又は全部を覆わない大きさの矩形である。ただし、取付部材59は、第1取付孔55A及び第2取付孔55Bの他方を覆う大きさを有していてもよい。また、特に図示しないが、押出ロッド27及び取付部材59は、キー溝のような軸回りにおいて互いに係合する形状を有し、軸回りの相対回転が規制されていてもよい。
取付部材59の取付板45に対する固定は、適宜な方法によりなされてよい。例えば、取付板45には雌ねじ部61(図5(a))が形成されており、取付部材59には貫通孔59a(図5(b))が形成されており、不図示のボルトが貫通孔59aに挿通されて雌ねじ部61に螺合されることによって、取付部材59は取付板45に固定される。この場合において、雌ねじ部61及び貫通孔59aの数及び配置は適宜に設定されてよい。例えば、雌ねじ部61(及び貫通孔59a)は、複数設けられるとともに、取付部材59を180°反転させても利用可能に、180°回転対称の位置に配置されている。
以上のとおり、本実施形態では、ダイカストマシン1は、固定金型103を保持可能な固定ダイプレート9と、ダイベース107を介して移動金型105を保持可能であり、固定ダイプレート9に対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレート11と、移動金型105に型開閉方向に挿通され、先端が移動金型105から固定金型103側へ出入り可能な複数の押出ピン23と、複数の押出ピン23の後端に固定され、ダイベース107に収容される押出板25と、押出板25に固定され、移動ダイプレート11に型開閉方向に挿通される複数の押出ロッド27と、を有している。移動ダイプレート11は、複数の押出ロッド27を挿通可能な複数の第1挿通孔47Aと、複数の第1挿通孔47Aに代えて複数の押出ロッド27を挿通可能で、複数の第1挿通孔47Aに対して型開閉方向に直交する所定方向(z方向負側)に所定量(例えば、s1の量)ずれた複数の第2挿通孔47Bと、を有している。
従って、複数の押出ロッド27を複数の第1挿通孔47Aと複数の第2挿通孔47Bとに選択的に挿通することによって、押出ロッド27及び押出板25の取付位置を、第1挿通孔47Aと第2挿通孔47Bとのずれの方向及び距離で変更することができる。その結果、例えば、ダイカストマシン1において想定されている金型101の大きさよりも小さい金型101(並びに押出ピン23及びピン側板31)を、その鋳込口がダイカストマシン1の射出口に一致するように取り付けたときにも、その小さい金型101に対して好適な位置に押出ロッド27(及びロッド側板33)を位置させることができる。
例えば、型締力3500トンのダイカストマシンの射出口は、マシンセンタから下方400mmの位置にあり、型締力2250トンのダイカストマシンの射出口は、マシンセンタから下方350mmの位置にある。従って、型締力2250トンのダイカストマシン用の金型を型締力3500トンのダイカストマシンに、その鋳込口が射出口に一致するように取り付けると、金型の中心が50mm(400mm−350mm)だけ下方にずれる。一方、ピン側板31とロッド側板33とは、そのクランプ力の合力が金型の中心に一致することが好ましい。このような場合において、第1挿通孔47Aを型締力3500トンの金型101が取り付けられたときに使用し、第2挿通孔47Bを型締力2250トンの金型101が取り付けられたときに使用し、第1挿通孔47Aと第2挿通孔47Bとの距離s1(図2(a))を50mmとすれば、いずれの金型101が取り付けられたときにも、好適にクランプ力を作用させることができる。
なお、金型のダイプレートへの取り付けは、ボルト等を用いる公知の方法によってなされてよい。想定されている金型よりも小さい金型をダイプレートに取り付ける際には、ボルトの金型に対する位置、及び/又は、ボルトのダイプレートに対する位置を変えればよい。
また、本実施形態では、ダイカストマシン1は、移動ダイプレート11の固定ダイプレート9側に取り付けられ、複数の第1挿通孔47A又は複数の第2挿通孔47Bに挿通された複数の押出ロッド27を支持可能な複数の前方ブシュ49Aと、移動ダイプレート11の固定ダイプレート9とは反対側に取り付けられ、複数の第1挿通孔47A又は複数の第2挿通孔47Bに挿通された複数の押出ロッド27を支持可能な複数の後方ブシュ49Bと、を更に有している。
ここで、図6(a)は、比較例に係る移動ダイプレート211及びブシュ249を示す、図2(a)に対応する断面図である。図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb線における断面図である。図6(c)は、変形例に係る移動ダイプレート311及びブシュ349を示す図6(b)に対応する断面図である。
図6(a)及び図6(b)の比較例は、円筒形のブシュ249が移動ダイプレート211の厚さ全体に亘って設けられている構成である。図6(c)は、その比較例の構成を踏襲して、第1挿通孔347A及び第2挿通孔347Bのそれぞれに円筒形のブシュ(249)を設ける思想のものである。ただし、型締力が異なるダイカストマシンの射出口の位置の差(s1)が小さい場合等においては、2つのブシュ(249)がつながり、図6(c)に示すように、8の字状のブシュ349が構成される。別の観点では、図6(c)のブシュ349は、8の字の外縁のような形状の一つの挿通孔348を有している。
図6(a)及び図6(b)の比較例を踏襲した構成(このような構成も本願発明に含まれる)では、挿通孔を2つにすると、ブシュ249も2つになり、ブシュ249(又は349)の合計長さが単純に2倍になる。一方、ブシュは、比較的高精度に形成される必要があることなどから比較的高価である。従って、上記のような構成はコストが増加する。
しかし、本実施形態では、挿通孔47の両端に位置する2つのブシュ49で押出ロッド27を支持することから、ブシュ49の合計長さが短くなり、コスト削減が期待される。
また、図6(a)の比較例では、挿通孔247は、その全体に亘ってブシュ249が挿通されるから、挿通孔247の径は、ブシュ249の外径と同一の大きさを有しなければならない。図6(c)の変形例も同様であり、ひいては、型締力が異なるダイカストマシンの射出口の位置の差(s1)が小さい場合等において、第1挿通孔347Aと第2挿通孔347Bとがつながりやすい。そして、8の字の外縁のような形状の挿通孔348は、その形成及び保守管理が困難である。
しかし、本実施形態では、ブシュ49は挿通孔47の両端側に設けられるだけであるので、挿通孔47の径は、押出ロッド27の径よりも大きければ、ブシュ49の外径よりも小さくてもよい。その結果、第1挿通孔47Aと第2挿通孔47Bとがつながるおそれが低減される。すなわち、第1挿通孔47A及び第2挿通孔47Bの形成及び保守管理が困難になるおそれが低減される。
また、本実施形態では、移動ダイプレート11は、固定ダイプレート9側の面に、型開閉方向に見て、互いに同一の押出ロッド27に対応する第1挿通孔47A及び第2挿通孔47Bに重なり、複数の前方ブシュ49Aが嵌合する複数の前方凹部51Aと、固定ダイプレート9とは反対側の面に、型開閉方向に見て、互いに同一の押出ロッド27に対応する第1挿通孔47A及び第2挿通孔47Bに重なり、複数の後方ブシュ49Bが嵌合する複数の後方凹部51Bと、を有している。各ブシュ49は、押出ロッド27を支持可能な支持孔49hを一つのみ有し、凹部51に嵌合させる際の向きを型開閉方向に平行な軸回りに180度反転させることにより、支持孔49hが第1挿通孔47Aに重なり且つ第2挿通孔47Bに重ならない取付状態と、第1挿通孔47Aに重ならず且つ第2挿通孔47Bに重なる取付状態とを選択可能である。
ここで、図6(c)の変形例のように、支持孔349hを2つ設けることとすると、型締力が異なるダイカストマシンの射出口の位置の差(s1)が小さい場合等においては、2つの支持孔349hの距離が短くなる。その結果、ブシュ349は、その強度を確保する観点等からある程度の厚さ(例えば厚さt3)が確保されることが好ましいところ、2つの支持孔349h間の厚さt4は厚さt3よりも薄くなってしまい、又は、2つの支持孔249hはつながってしまう(8の字の外縁のような一つの支持孔が形成されてしまう)。
しかし、本実施形態では、支持孔49hを一つとしていることから、図6(c)の変形例において生じた厚さt4が小さくなる問題は生じない。すなわち、ブシュ49は強度を確保しやすい。特に、上記のように、挿通孔47の端部においてのみブシュ49を設け、ブシュ49の長さが短い場合においては、ブシュ49に加えられる応力が大きくなるから、この厚さの確保がブシュ49の強度確保の観点から有効である。また、支持孔49hは、比較的高精度に加工が行われる必要がある部分であり、この支持孔49hの数が減ることにより、コスト削減が期待される。
また、本実施形態では、ブシュ49は、支持孔49hが第1挿通孔47A及び第2挿通孔47Bの一方に重なる取付状態において第1挿通孔47A及び第2挿通孔47Bの他方に重なる領域に、雌ねじ部49bを有している。
従って、支持孔49hを一つにしてブシュ49の強度を確保しつつ、支持孔49hが設けられない部分を、ブシュ49を引っ張るためのボルトの取り付けに有効利用できる。
また、本実施形態のダイカストマシン1は、別の観点では、固定金型103を保持可能な固定ダイプレート9と、ダイベース107を介して移動金型105を保持可能であり、固定ダイプレート9に対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレート11と、移動金型105に型開閉方向に挿通され、先端が移動金型105から固定金型103側へ出入り可能な複数の押出ピン23と、複数の押出ピン23の後端に固定され、ダイベース107に収容される押出板25と、押出板25に固定され、移動ダイプレート11に型開閉方向に挿通される複数の押出ロッド27と、移動ダイプレート11に取り付けられ、複数の押出ロッド27を支持する複数のブシュ49と、を有している。各ブシュ49は、押出ロッド27を支持する支持孔49hを一つのみ有し、移動ダイプレート11に対する取り付けにおいて、第1の取付状態(例えば図2(a)に示す状態)と、当該第1の取付状態に対して支持孔49hの位置が型開閉方向に直交する所定方向(上下方向)に所定量(例えば、s1の量)ずれた第2の取付状態(不図示)とを選択可能である。
従って、ブシュ49の取付状態の変更によって、押出ロッド27の位置を変更することができる。その結果、例えば、ダイカストマシン1において想定されている金型101とは異なる大きさの金型101を、その鋳込口をダイカストマシン1の射出口に一致させて取り付けたときに、押出ロッド27の位置を金型101に対して好適な位置にすることができる。
また、本実施形態では、第2の取付状態は、第1の取付状態に対して、型開閉方向に平行で、支持孔49hの中心からずれた軸の回りにブシュ49を180度反転させた取付状態である。
従って、例えば、ブシュを平行移動させて取り付け直す場合(この場合も本願発明に含まれる)に比較して、ブシュ49の配置スペースが第1の取付状態と第2の取付状態とで重複しやすく、また、雌ねじ部53を第1の取付状態と第2の取付状態とで共通化できる。その結果、全体として小型化、簡素化乃至はコスト削減が図られる。
なお、以上の実施形態において、ダイカストマシン1は成形装置の一例であり、型締装置3及び押出装置7の組み合わせは開閉装置の一例であり、前方ブシュ49Aの支持孔49hは前方支持孔の一例であり、後方ブシュ49Bの支持孔49hは後方支持孔の一例である。第1挿通孔47A及び347A、並びに、第2挿通孔47B及び347Bは、第1挿通孔並びに第2挿通孔の一例であるが、図6(c)の変形例のように、押出ロッドが選択的に挿通される支持孔(349h)が2つ存在する場合においては、2つの支持孔を第1挿通孔及び第2挿通孔の一例と捉えることも可能である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機(成形装置)は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。液体は、油に限定されず、例えば水でもよい。
押出ロッドが挿通される挿通孔において、移動ダイプレートの構成によっては、ブシュと呼べるような部材が設けられていなくてもよい。また、図6を参照した説明から理解されるように、ブシュは、挿通孔の両端(別の観点では挿通孔の外側)に限らず、挿通孔の長さ全体に亘って設けられてもよい。また、第1挿通孔及び第2挿通孔のそれぞれに対応してブシュ(すなわち2つのブシュ)が設けられてもよいし、一のブシュが第1挿通孔及び第2挿通孔に選択的に取り付けられてもよいし、第1挿通孔及び第2挿通孔に共通のブシュにおいて、第1挿通孔及び第2挿通孔それぞれに対応して支持孔(すなわち2つの支持孔)が設けられてもよい(図6(c)参照)。なお、一のブシュが第1挿通孔及び第2挿通孔に選択的に取り付けられる思想と、第1挿通孔及び第2挿通孔に共通のブシュであって一つの支持孔を有するものの取付状態を変化させる思想(その具体的態様は実施形態に代表される)とは、互いに同一の実施態様を含んでいてもよい。
また、ブシュが設けられる場合において、第1挿通孔及び第2挿通孔はつながっていてもよい(図6(c)参照)。別の観点では、一つの挿通孔に対して、2つの支持孔を有するブシュ、又は、1つの支持孔を有し、取付状態を変化させる(例えば180°反転させる)ことができるブシュが設けられることなどによって、押出ロッドの位置を変更可能であってもよい。ただし、2つの支持孔を第1挿通孔及び第2挿通孔と捉えてもよいことは既述のとおりである。
第1挿通孔及び第2挿通孔に共通で一の支持孔を有するブシュの取付状態の変化は、実施形態のように180°反転であってもよいし、第1挿通孔と第2挿通孔とのずれに応じた平行移動であってもよい。ただし、180°反転であれば、雌ねじ部を共通化できる等の効果がある。また、一の支持孔を有する共通のブシュは、第1挿通孔及び第2挿通孔のうち支持孔に重ならない挿通孔を覆わなくてもよい(ブシュではないが取付部材59参照)。
押出ロッドの移動ダイプレートに対する位置の変更について、実施形態に限定されない旨を述べたが、押出ロッドに固定されるなどし、移動ダイプレートに対して相対的に型開閉方向に移動する部材(実施形態では取付板45又はシリンダ部材41)に対する押出ロッドの位置の変更についても同様である。
例えば、実施形態の取付部材(59)は、設けられなくてもよい。また、例えば、取付部材は、ブシュのように取付孔に挿入されてもよい。この場合において、取付部材は、取付孔(55)の端部(別の観点では取付孔の外側)に限らず、取付孔の両端又は取付孔の長さ全体に亘って設けられてもよい。また、例えば、第1取付孔及び第2取付孔のそれぞれに対応して取付部材(すなわち2つの取付部材)が設けられてもよいし、一の取付部材が第1取付孔及び第2取付孔に選択的に取り付けられてもよいし(この思想は、第1取付孔及び第2取付孔に共通の取付部材であって一つの嵌合孔を有するものの取付状態を変化させる思想と共通の態様を含んでよい。)、第1取付孔及び第2取付孔に共通の取付部材において、第1取付孔及び第2取付孔それぞれに対応して嵌合孔(すなわち2つの嵌合孔)が設けられてもよい。
また、例えば、取付部材が設けられる場合において、第1取付孔及び第2取付孔はつながっていてもよい。別の観点では、一つの取付孔に対して、2つの嵌合孔を有する取付部材、又は、1つの嵌合孔を有し、取付状態を変化させる(例えば180°反転させる)ことができる取付部材が設けられることなどによって、押出ロッドの位置を変更可能であってもよい。
また、例えば、第1取付孔及び第2取付孔に共通で一の嵌合孔を有する取付部材の取付状態の変化は、実施形態のように180°反転であってもよいし、第1取付孔と第2取付孔とのずれに応じた平行移動であってもよい。また、例えば、一の嵌合孔を有する共通の取付部材は、第1取付孔及び第2取付孔のうち嵌合孔に重ならない取付孔を覆ってもよい(取付部材ではないがブシュ49参照)。
さらに、押出ロッドの後端においては、押出ロッドの取付板に対する位置を変更可能とするのではなく、取付板をシリンダ部材41に対してスライド移動可能にするなど、押出ロッドの移動ダイプレートに対する位置の変更方法とは異なる方法が利用されてもよい。
押出ロッドを移動ダイプレートに対して相対的に駆動する駆動装置は、押出シリンダに限定されない。例えば、押出ロッドを(絶対座標系において)駆動する駆動装置に代えて、押出ロッドの後退を規制するストッパを設け、型開閉駆動装置によって移動ダイプレートを後退させることによって、相対的に押出ロッドを移動ダイプレートに対して前進させてもよい。また、押出シリンダに代えて、電動式の駆動装置が設けられてもよい。電動式の駆動装置は、回転式の電動機と、その回転を並進運動に変換する機構(例えばねじ機構)との組み合わせであってもよいし、リニアモータであってもよい。また、押出シリンダが設けられる場合においても、実施形態とは逆に、シリンダロッドが押出ロッド(取付板)に、シリンダ部材が移動ダイプレートに固定されてもよい。
押出板は、ロッド側板とピン側板とを着脱する機構を有するものに限定されない。例えば、押出板は、実施形態の後側板37と押出ロッドとが固定された態様のものであってもよい。